次に、添付図面に基づいて、本発明に係る広帯域円偏波アンテナの実施形態につき説明する。
図1は、本発明に係る広帯域円偏波アンテナの第1実施形態を示すもので、図中に示してある寸法(単位はmm)は、モーメン法による電磁界解析シミュレータIE3D(Zeland社)での設計例であり、反射係数(S11)が−10dB以下、正面方向の軸比ARが2(3dB)以下となるように最適化した。
広帯域円偏波アンテナ1は、誘電体基板2の一方の面(例えば、第1面2a)をアンテナ素子配設面として、この第1面2aに同一形状の第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32を点対称となるように形成し、対称点に位置する給電部4にて第1,第2アンテナ素子31,32へ給電する。なお、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32は対称構造であるから、給電部4から平衡給電を行うことが望ましい。
誘電体基板2は、比誘電率εr=2.17、tanδ=0.0008で、厚さ0.8mmの広さ無限の基板であり、その第1面2a側に厚さ0.035mmの銅箔で第1,第2アンテナ素子31,32を形成する。
第1アンテナ素子31は、短辺である上底311と、長辺である下底312と、上底311および下底312と直角に交わる直交脚313と、直交脚313と対向位置にある斜脚314の4辺で囲まれた略台形状のアンテナ素子である。また、下底312には所要幅で突出する給電接続突部315を形成し、この給電接続突部315の突出端から給電する。なお、下底312において、給電接続突部315よりも直交脚313側となる直交脚側底部312aの長さは、給電接続突部315よりも斜脚314側となる斜脚側底部312bの長さよりも十分短い(図1の設計例では、12.74mm:47.23mm)。
上記第1アンテナ素子31と同一形状である第2アンテナ素子32は、短辺である上底321と、長辺である下底322と、上底321および下底322と直角に交わる直交脚323と、直交脚323と対向位置にある斜脚324の4辺で囲まれた略台形状のアンテナ素子で、下底322には所要幅で突出する給電接続突部325を形成し、この給電接続突部325よりも直交脚323側となる直交脚側底部322aの長さは、給電接続突部325よりも斜脚324側となる斜脚側底部322bの長さよりも十分短い。
上記のように構成した広帯域円偏波アンテナ1は、給電部4に対して点対称に配置した第1,第2アンテナ素子31,32がダイポールのような平衡アンテナとして動作し、下底313,323方向の電流と、直交脚313,323方向の電流とが、それぞれほぼ1/4周期ずれて発生し、交互に向きを変えて増減することで、両電流による合成電磁界の向きが一定方向に回転してゆき、円偏波が発生するものと考えられる。また、アンテナ素子の両面には、それぞれ旋回方向の異なる円偏波が発生する。
例えば、図2に示すように、Y軸−方向の電流が先位相で、X軸+方向の電流が後位相である場合、誘電体基板2の第1面2a側(Z軸+方向)に左旋円偏波が発生し、反対の第2面2b側(Z軸−方向)に右旋円偏波が発生する。ここで、誘電体基板2の第2面2b側から周波数の約1/4波長だけ離隔した位置に反射板5を配置することにより、第2面2b側に放射される右旋円偏波の逆旋となる左旋円偏波を反射して打ち消し、第1面2a側(Z軸+方向)のみの単指向性となるように構成できる。なお、反射板5に代えて、周波数選択性遮蔽材やメタマテリアルを用いれば、誘電体基板2からの配設距離を1/4波長よりも短くしても単指向性を得ることができる。
上記のように構成した第1実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1の反射係数(S11)と軸比ARの周波数特性をIE3Dで計算した結果を図3に示す。これと対比するために、第1,第2アンテナ素子31,32から各々給電接続突部315,325を削除して、下底312,322に給電部4を接続した仮想モデルの各周波数特性を破線で示す。図3(a)にて両者の反射係数特性を比較すると、第1,第2アンテナ素子31,32に幅9.44mmの給電接続突部315,325を形成することで、広帯域での整合を実現できることが分かる。なお、図3(b)にて両者の軸比特性はほぼ一致しており、円偏波特性は給電構造にあまり影響されず、第1,第2アンテナ素子の台形状でほぼ決まることが分かる。
次に、第2実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1′を図4に基づき説明する。この広帯域円偏波アンテナ1′は、誘電体基板2の第2面2b側に第2アンテナ素子2′を形成し、その給電部4′は、第1,第2アンテナ素子31,32′の中心でピン給電する構造である。同図中の寸法は、反射係数(S11)が−10dB以下、軸比ARが2以下の特性となるように給電接続突部315,325を最適化した寸法であり、給電接続突部315,325は、誘電体基板2を挟んで一部(突出端より0.84mmの範囲)が重なっている。なお、本実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1′の第2アンテナ素子32′は、誘電体基板2の第2面2bに形成することから、第1面2aに形成する第1アンテナ素子31と同一形状ではなく、X軸もしくはY軸に対して線対称の形状とする。かくすることで、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32′は、誘電体基板2を挟んで点対称の関係を保持できる。
上記のように構成した第2実施形態に係る広帯域アンテナ1′の反射係数(S11)と軸比ARの周波数特性をIE3Dで計算した結果を図5に示す。これと対比するために、第1実施形態として示した基本構成(給電接続突部315,325の間隙から2.00mm幅で給電する構成)の各周波数特性を破線で示す。
図5より、誘電体基板2の第1面2aに第1アンテナ素子31を、第2面2bに第2アンテナ素子32を各々配置した広帯域円偏波アンテナ1′においても、基本構成の広帯域円偏波アンテナ1と同様の整合および軸比の特性を得られることが分かる。すなわち、広帯域円偏波アンテナ1′のように、第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32′を異なる面に配置した場合は、給電接続突部315,325を約0.84mm重ねた場合に、広帯域での整合を実現し、軸比をよくすることができる。このように、給電接続突部315,325の重なる構成が必要なのは、厚さが0.8mmの誘電体基板2が第1アンテナ素子31と第2アンテナ素子32′との間に介在することから、両アンテナ素子間の結合を強くするためであると考えられる。また、給電接続突部315,325の重なり具合によって軸比の周波数特性はほとんど影響を受けないが、反射係数の周波数特性は影響を受け易いと考えられる。
以上の結果より、第1,第2アンテナ素子31,32に給電接続突部315,325を設けて給電部4と接続する構成を採ることで、広帯域に整合が得られることが分かった。以降に示す計算では、給電接続突部315,325の突出端の全幅にて給電されるよう簡易化したモデルを使うものとする。
図6に示す第3実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1″は、無限大の誘電体基板2に代えて、有限サイズ(110mm×50mm)の誘電体基板2″を用いたものである。なお、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32の最適化寸法は、第1実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1の第1,第2アンテナ素子31,32と同一である。
上記のように構成した第3実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1″の反射係数(S11)と軸比ARの周波数特性を、有限要素法による電磁界解析シミュレータHFSS(ansoft社)とIE3Dで計算した結果を図7に示す。HFSSで計算しても、IE3Dによる計算結果の特性がほぼ再現される。特に、軸比の周波数特性は良く一致している。
そして、HFSSによる計算結果では、反射係数(S11)が−10dB以下となる周波数範囲は1.3GHz〜6.2GHzであり、比帯域131%となる。また、軸比の絶対利得ARがほぼ3dB以下となる周波数範囲は2.1GHz〜6.2GHzであり、比帯域98.8%で実現できることが分かる。なお、広帯域円偏波アンテナ1″に用いる第1,第2アンテナ素子31,32の上底311,321の長さ約6cmは、最低整合周波数1.3GHzに対して約0.26波長、最高整合周波数6.2GHzに対して1.24波長である。
第3実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1″の指向性を図8〜図11に示す。
図8(a)は、2.2GHzで動作させた広帯域円偏波アンテナ1″により発生した左旋円偏波における絶対利得のφ=0°面(X−Z面)とφ=90°面(Y−Z面)のカット面パターンをHFSSで計算した結果である。図8(b)は、2.2GHzで動作させた広帯域円偏波アンテナ1″により発生した右旋円偏波における絶対利得のφ=0°面(X−Z面)とφ=90°面(Y−Z面)のカット面パターンをHFSSで計算した結果である。
以下同様に、図9(a)は3.3GHz動作時に発生した左旋円偏波のφ=0°とφ=90°のカット面パターン、図9(b)は3.3GHz動作時に発生した右旋円偏波のφ=0°とφ=90°のカット面パターン、図10(a)は4.4GHz動作時に発生した左旋円偏波のφ=0°とφ=90°のカット面パターン、図10(b)は4.4GHz動作時に発生した右旋円偏波のφ=0°とφ=90°のカット面パターン、図11(a)は5.5GHz動作時に発生した左旋円偏波のφ=0°とφ=90°のカット面パターン、図11(b)は5.5GHz動作時に発生した右旋円偏波のφ=0°とφ=90°のカット面パターンを、それぞれHFSSで計算した結果である。
これら図8〜図11に示された広帯域円偏波アンテナ1″の指向性からすると、動作周波数が高くなると、左旋円偏波のφ=0°面(X−Z面)のビーム幅がφ=90°面(Y−Z面)に比べ狭くなることが分かる。これは、動作周波数が高くなると、電流分布が複雑になるとともに、アンテナの大きさが波長に比べて大きくなるため、方向により電磁界が強めあったり弱めあったりしやすくなるためと考えられる。
ここで、広帯域円偏波アンテナ1″を2.2GHz、3.3GHz、4.4GHz、5.5GHzで動作させたとき、第1,第2アンテナ素子31,32上の電流の様子をHFSSで計算し、その瞬時的な電流の様子を図12〜図15に示す。第1,第2アンテナ素子31,32を流れる電流の向きは複雑であるが、給電部41に対して第2アンテナ素子32から第1アンテナ素子31への電流の向きは一定であり、ダイポールアンテナと同様に、周期的に電流が変化する。
なお、図12〜図15では電流の強さが示されていないが、第1,第2アンテナ素子31,32の内部よりも辺縁に沿った輪郭部で電流が強く、また、ダイポールアンテナと同様に、給電部41の周辺で電流が強く、給電部41から遠ざかるほど電流は弱くなる傾向にある。このことから、広帯域円偏波アンテナ1″の動作においては、第1アンテナ素子31における直交脚側底部312aと直交脚313に沿った向きの電流、および第2アンテナ素子32における直交脚側底部322aと直交脚323に沿った向きの電流が強く、円偏波の発生に大きく関与していると考えられる。また、その他の部分の電流は全体として相殺され、円偏波の発生への関与は弱いものと考えられる。
例えば、図12〜図15において、便宜上、前述した図2と同様に、X軸における第1アンテナ素子31側を+方向、第2アンテナ素子32側を−方向、Y軸における第1アンテナ素子31の斜脚314側を+方向、第1アンテナ素子32の斜脚324側を−方向に設定すると、図12〜図15に示した瞬時には、第1アンテナ素子31における直交脚側底部312aと第2アンテナ素子32における直交脚側底部322aに沿ったY軸の−方向に向かう電流が強く、第1アンテナ素子31における直交脚313と第2アンテナ素子32における直交脚323に沿ったX軸の+方向に向かう電流は弱い状態である。
上述した図12〜図15は各周波数における位相0の瞬時の全体的な電流分布を示していたのに対して、図16は、全周波数に共通する、円偏波発生に関わる主要な電流を矢印で、位相0から2πまでの瞬時ごとに、模式的に示した円偏波発生の原理説明図である。なお、図16では表示を省略したが、各図の紙面手前側をZ軸+方向、紙面奥側をZ軸−方向とする。図16(a1)〜(e1)に示した矢印以外の部分の電流は、弱く、周波数によって複雑であるので、矢印以外の部分の電流によりZ軸+方向に発生する電磁界は全体としてほぼ相殺されると考えられる。
供給電源の位相0における円偏波発生に関わる電流分布を示す図16(a1)では、第1アンテナ素子31における直交脚側底部312aと第2アンテナ素子32における直交脚側底部322aに沿ったA1方向の電流が支配的となり、図16(a2)に示すように、Z軸+方向にはX軸+方向の強い磁界が発生する。この後、A1方向の電流は徐々に弱まると共に、第1アンテナ素子31における直交脚313と第2アンテナ素子32における直交脚323に沿ったB1方向の電流が徐々に強まり、A1方向の電流とB1方向の電流による合成電磁界の向きは、X軸+方向からY軸+方向へと徐々に傾いてゆく。
そして、π/2における図16(b1)では、第1アンテナ素子31における直交脚313と第2アンテナ素子32における直交脚323に沿ったB1方向の電流が支配的となり、図16(b2)に示すように、Z軸+方向にはY軸+方向の強い磁界が発生する。この後、B1方向の電流は徐々に弱まると共に、第1アンテナ素子31における直交脚側底部312aと第2アンテナ素子32における直交脚側底部322aに沿ったA2方向(A1の逆方向)の電流が徐々に強まり、B1方向の電流とA2方向の電流による合成電磁界の向きは、Y軸+方向からX軸−方向へと徐々に傾いてゆく。
そして、πにおける図16(c1)では、第1アンテナ素子31における直交脚313と第2アンテナ素子32における直交脚323に沿ったA2方向の電流が支配的となり、図16(c2)に示すように、Z軸+方向にはX軸−方向の強い磁界が発生する。この後、A2方向の電流は徐々に弱まると共に、第1アンテナ素子31における直交脚313と第2アンテナ素子32における直交脚323に沿ったB2方向(B1の逆方向)の電流が徐々に強まり、A2方向の電流とB2方向の電流による合成電磁界の向きは、X軸−方向からY軸−方向へと徐々に傾いてゆく。
そして、3π/2における図16(d1)では、第1アンテナ素子31における直交脚313と第2アンテナ素子32における直交脚323に沿ったB2方向の電流が支配的となり、図16(d2)に示すように、Z軸+方向にはY軸−方向の強い磁界が発生する。この後、B2方向の電流は徐々に弱まると共に、第1アンテナ素子31における直交脚側底部312aと第2アンテナ素子32における直交脚側底部322aに沿ったA1方向の電流が徐々に強まり、B2方向の電流とA1方向の電流による合成電磁界の向きは、Y軸−方向からX軸+方向へと徐々に傾いてゆく。
そして、2πにおける図16(e1)では、第1アンテナ素子31における直交脚側底部312aと第2アンテナ素子32における直交脚側底部322aに沿ったA1方向の電流が支配的となり、図16(e2)に示すように、Z軸+方向にはX軸+方向の強い磁界が発生する。なお、上述した広帯域円偏波アンテナ1,1′,1″の何れも、送信時と受信時で可逆性が成り立つので、円偏波の受信時には、給電部4より受信信号を取り出せる。
以上のように、広帯域円偏波アンテナ1,1′,1″の何れにおいても、第1,第2アンテナ素子31,32に生ずるX軸方向の電流とY軸方向の電流が交互に向きを変えて増減してゆくことにより、生じた合成電磁界の向きが1周期で1回転し、円偏波が放射されるのである。円偏波の旋回方向は、直交する2つの向きの電流のどちらが先位相になるかで定まる。また、Z軸−側では、第1,第2アンテナ素子31,32に生ずる電流による合成電磁界の回転方向は逆向きになるので、Z軸+方向に左旋円偏波が発生する場合には、Z軸−方向に右旋円偏波が発生する。
なお、生じた円偏波の軸比が適正な範囲となるためには、Y軸方向の電流A1,A2およびY軸方向の電流B1,B2の強さと各電流の増減変化の度合いが等しくなるように第1,第2アンテナ素子31,32の各部寸法を設計しておく必要があり、下底312,322に沿った向きの電流と同程度の電流が直交脚313,323を流れるようにするためには、少なくとも、給電部4から直交脚313,323までの長さ(直交脚側下底312a,322aの長さ)が、給電部4から斜脚までの長さ(斜脚側下底312b,322bの長さ)よりも十分短くなるように設定することが必要条件である。
図17に示すのは、第3実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1″を試作した外観図である。本試作例では、バランを用いずに同軸ケーブル6で給電した。その反射係数(S11)の周波数特性の測定結果を、前述したHFSSによる計算結果とあわせて図18に示す。本試作例はバランを付けていないので、測定結果には平衡−不平衡変換によるリプルが生じているが、整合帯域は実験結果と計算結果でよく似ており、1GHz付近の特性はよく一致している。なお、図2のように反射板5を背部に設置してもリプルは解消しなかった。
次に、誘電体基板2の有無による周波数特性の影響について考える。図19に示すのは、第3実施形態に係る広帯域円偏波アンテナ1″から110mm×50mmの誘電体基板2″を取り除いた場合の周波数特性をHFSSで計算した結果で、対比のために広帯域円偏波アンテナ1″の周波数特性も破線で示してある。誘電体がないと、反射係数(S11)の周波数特性では、4.4GHz付近で共振が現れ、この4.4GHz付近で軸比が劣化する。一方、誘電体基板2″を有する広帯域円偏波アンテナ1″に見られる3.2GHz付近の共振は、基板なしでは少し低周波数化する。また、基板なしでは6.2GHz付近で整合と軸比が改善する。結果として、誘電体基板2″を有する広帯域円偏波アンテナ1″に比べて誘電体基板なしのものは、全体として整合は改善するものの、4.4GHz付近の軸比が3dBを超えてしまい、基板ありの軸比特性よりも劣化する。
次に、第1,第2アンテナ素子31,32の各部のサイズを変化させることで生ずる特性変化について考える。なお、第1,第2アンテナ素子31,32の各部のサイズを変化させた場合の特性変化に着目する場合、誘電体による特性への依存性を排除しておくことが望ましいので、以降では、広帯域円偏波アンテナ1″から誘電体基板2″を取り除いたものを基準構成とし、この基準構成の第1,第2アンテナ素子31,32に対して各部寸法を変化させた場合の特性をHFSSで計算するものとした。
第1,第2アンテナ素子31,32の各部のサイズを変化させるパラメータを図20に示す。図20において、上底311,321と斜脚314,324との交接点を直交脚313,323から離隔させる方向へ延ばすことを「RU+」、その逆に縮めることを「RU−」、下底321,322と斜脚314,324との交接点を直交脚313,323から離隔させる方向へ延ばすことを「RD+」、その逆に縮めることを「RD−」、直交脚313,323を斜脚314,324から離隔させる方向へ延ばすことを「L+」、その逆に縮めることを「L−」、上底311,321を下底312,322から離隔させる方向へ延ばすことを「U+」、その逆に縮めることを「U−」、下底312,322を上底311,321から離隔させる方向へ延ばすことを「D+」、その逆に縮めることを「D−」、給電接続突部315,325の幅FDWを給電中心に対して均等に広げることを「FDW+」、その逆に均等に縮めることを「FDW−」と定義する。
図21に示すのは、第1,第2アンテナ素子31,32において、上底311,321と斜脚314,324との交接点(上底311,321の斜脚側端部)をRU方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示し、(a)は反射係数(S11)の周波数特性図、(b)は軸比ARの周波数特性図である。なお、上底311,321の斜脚側端部をRU+5mmした場合には、上底311,321が若干長くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干急峻になり、上底311,321の斜脚側端部をRU−5mmした場合には、上底311,321が若干短くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干緩やかになる。
図21(a)から、以下のことが読み取れる。上底311,321の斜脚側端部をRU方向へ+5mmすると、基準構成における反射係数(S11)に現れている4.4GHz付近の共振周波数が若干低周波数へシフトし、4GHz付近の整合が改善するものの、2GHz付近の整合はわずかに劣化する。一方、上底311,321の斜脚側端部をRU方向へ−5mmしても、基準構成における反射係数(S11)と近似した特性を呈するものの、3GHzより高い周波数では基準構成よりも劣化してしまう。
また、図21(b)から、以下のことが読み取れる。上底311,321の斜脚側端部をRU方向へ+5mmすると、5GHz付近の軸比が基準構成よりも改善し、逆に上底311,321の斜脚側端部をRU方向へ−5mmした場合は、5GHz付近の軸比が基準構成よりも劣化する。なお、上底311,321の斜脚側端部をRU方向へ+5mmしても、−5mmしても、6.5GHz付近の軸比は基準構成よりも劣化する。
以上のことから、第1,第2アンテナ素子31,32における上底311,321の斜脚側端部をRU方向へ増減させても、基準構成での特性に比べて際立った改善はみられず、反射係数特性と軸比特性のバランスからすれば、基準構成の寸法が適しているものと考えられる。
図22に示すのは、第1,第2アンテナ素子31,32において、下底312,322と斜脚314,324との交接点(下底312,322の斜脚側端部)をRD方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示し、(a)は反射係数(S11)の周波数特性図、(b)は軸比ARの周波数特性図である。なお、下底312,322の斜脚側端部をRU+5mmした場合には、下底312,322が若干長くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干緩やかになり、下底312,322の斜脚側端部をRU−5mmした場合には、下底312,322が若干短くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干急峻になる。
図22(a)から、以下のことが読み取れる。下底312,322の斜脚側端部をRD方向へ+5mmすると、基準構成における反射係数(S11)に現れている4.4GHz付近の共振周波数が低周波数へシフトし、4GHz付近の整合が改善するものの、2GHz付近の整合はわずかに劣化する。一方、下底312,322の斜脚側端部をRD方向へ−5mmすると、基準構成における反射係数(S11)に現れている4.4GHz付近の共振周波数が高周波数へシフトし、4GHz付近の整合が劣化する。
また、図22(b)から、以下のことが読み取れる。下底312,322の斜脚側端部をRD方向へ+5mmすると、3GHz付近の軸比は基準構成よりも改善するが、4GHz以上の軸比は基準構成よりも劣化する。一方、下底312,322の斜脚側端部をRD方向へ−5mmすると、4GHz以上の軸比は基準構成よりも改善するが、3GHz付近の軸比は基準構成よりも劣化する。
以上のことから、第1,第2アンテナ素子31,32における下底312,322の斜脚側端部をRD方向へ増減させても、基準構成での特性に比べて際立った改善はみられず、反射係数特性と軸比特性のバランスからすれば、基準構成の寸法が適しているものと考えられる。
図23に示すのは、第1,第2アンテナ素子31,32において、直交脚313,323をL方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示し、(a)は反射係数(S11)の周波数特性図、(b)は軸比ARの周波数特性図である。なお、直交脚313,323をL+5mmした場合には、上底311,321および直交脚側下底312a,322aが若干長くなり、直交脚313,323をL−5mmした場合には、上底311,321および直交脚側下底312a,322aが若干短くなる。
図23(a)から、以下のことが読み取れる。直交脚313,323をL方向へ+5mmすると、4.7GHz以上で反射係数(S11)が−10dBを超えるほど劣化する。一方、直交脚313,323をL方向へ−5mmすると、2GHz付近で反射係数(S11)が−10dBを超えるほど劣化する。
また、図23(b)から、以下のことが読み取れる。直交脚313,323をL方向へ+5mmすると、2GHz以下の軸比が改善するものの、3GHz付近と5.4GHz以上の軸比は基準構成よりも劣化する。一方、直交脚313,323をL方向へ−5mmすると、3GHz付近では軸比が改善するものの、その他の範囲では基準構成よりも軸比が劣化する。
以上のことから、直交脚313,323をL方向へ増減させる量を調整することで、基準構成よりも4.5GHz付近の軸比を改善できる可能性があると考えられる。そこで、直交脚313,323をL方向へ+3mmした場合の反射係数(S11)の周波数特性と軸比ARの周波数特性を図24に示す。
図24に示す結果より、直交脚313,323をL方向へ+3mmすると、基準構成の軸比特性に生じていた4.5GHz付近の劣化を改善することができ、誘電体基板2がない構造の場合でも、2GHz〜6GHzの広帯域で良好な軸比を実現できる。なお、直交脚313,323をL方向へ+3mmすると、反射係数(S11)が基準構成よりも劣化してしまうが、図3にて示したように、給電接続突部315,325の有無は軸比特性にほぼ影響を与えることなく反射係数特性を改善できることから、給電接続突部315,325についてのパラメータを併せて調整することにより、広帯域の整合を実現できる可能性がある。
図25に示すのは、第1,第2アンテナ素子31,32において、上底311,321をU方向へ5mm増減させた場合の特性変化を示し、(a)は反射係数(S11)の周波数特性図、(b)は軸比ARの周波数特性図である。なお、上底311,321をU+5mmした場合には、直交脚313,323および斜脚314,324が若干長くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干急峻になる。逆に、上底311,321をU−5mmした場合には、直交脚313,323および斜脚314,324が若干短くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干緩やかになる。
図25(a)から、以下のことが読み取れる。上底311,321をU方向へ+5mmすると、基準構成における反射係数(S11)よりも2GHz付近の整合が改善されるものの、それ以外の範囲では基準構成よりも整合が劣化する。一方、上底311,321をU方向へ−5mmすると、基準構成における反射係数(S11)よりも4GHz付近の整合が改善されるものの、それ以外の範囲では基準構成よりも整合が劣化する。
また、図25(b)から、以下のことが読み取れる。下底312,322の斜脚側端部をU方向へ+5mmすると、2GHz付近までは軸比が基準構成よりも若干改善されているが、それ以上の範囲では軸比が基準構成よりも劣化する。一方、上底311,321をU方向へ−5mmすると、約3GHz〜4GHzの範囲では軸比が基準構成よりも改善されているが、それ以外の範囲では軸比が基準構成よりも劣化する。
以上のことから、第1,第2アンテナ素子31,32における上底311,321をU方向へ増減させても、基準構成での特性に比べて際立った改善はみられず、反射係数特性と軸比特性のバランスからすれば、基準構成の寸法が適しているものと考えられる。
図26に示すのは、第1,第2アンテナ素子31,32において、下底312,322をD方向へ0.5mm増加させた場合と、1.0m減らした場合の特性変化を示し、(a)は反射係数(S11)の周波数特性図、(b)は軸比ARの周波数特性図である。なお、下底312,322をD+0.5mmした場合には、直交脚313,323および斜脚314,324が若干長くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干急峻になり、給電接合突部315,325の突出量が0.76mmから0.26mmに減る。加えて、相対向する第1アンテナ素子31の下底312と第2アンテナ素子32の下底322との離隔距離が1.58mmから0.58mmに縮まる。逆に、下底312,322をD−1.0mmした場合には、直交脚313,323および斜脚314,324が若干短くなると共に、斜脚314,324の傾斜が若干緩やかになり、給電接合突部315,325の突出量が0.76mmから1.76mmに増える。加えて、相対向する第1アンテナ素子31の下底312と第2アンテナ素子32の下底322との離隔距離が1.58mmから3.58mmに広がる。
図26(a)から、以下のことが読み取れる。下底312,322をD方向へ+0.5mmすると、基準構成における反射係数(S11)よりも約5.5GHzまでの整合が劣化する。一方、下底312,322をD方向へ−1.0mmすると、基準構成における反射係数(S11)よりも約2.7GHzまでの整合が改善されるものの、それ以上の範囲では基準構成よりも整合が劣化する。
また、図26(b)から、以下のことが読み取れる。下底312,322の斜脚側端部をD方向へ+0.5mmすると、約2.4GHzまでは基準構成と同程度の軸比特性を得られるものの、それ以上の範囲では軸比が基準構成よりも劣化する。一方、下底312,322をD方向へ−1.0mmすると、3GHz付近では軸比が基準構成よりも改善されているが、約5.5GHz以上では軸比が基準構成よりも劣化する。
以上のことから、第1,第2アンテナ素子31,32における下底312,322をD方向へ増減させても、基準構成での特性に比べて際立った改善はみられず、反射係数特性と軸比特性のバランスからすれば、基準構成の寸法が適しているものと考えられる。
図27に示すのは、第1,第2アンテナ素子31,32において、給電接続突部315,325の幅FDWを4mm増減した場合の特性変化を示し、(a)は反射係数(S11)の周波数特性図、(b)は軸比ARの周波数特性図である。なお、給電接続突部315,325をFDW+4mmした場合には、給電接続突部315,325の幅が給電中心からY軸+側に2mm、Y軸−側に2mm広がる。逆に、給電接続突部315,325をFDW−4mmした場合には、給電接続突部315,325の幅が給電中心からY軸+側に2mm、Y軸−側に2mm狭まる。
図27(a)から、以下のことが読み取れる。給電接続突部315,325の幅FDWを+4mmすると、約4.8GHz以上で反射係数(S11)が基準構成よりも改善されるが、それ以下の範囲では基準構成よりも劣化する。逆に、給電接続突部315,325の幅FDWを−4mmすると、約2.8GHzまで反射係数(S11)が基準構成よりも改善されるが、それ以上の範囲では基準構成よりも劣化する。
また、図27(b)から、以下のことが読み取れる。給電接続突部315,325の幅FDWを+4mmすると、約2.5GHzまでは基準構成と同等の軸比特性が得られるものの、それ以上では軸比が基準構成よりも若干劣化する。一方、給電接続突部315,325の幅FDWを−4mmすると、約2.5GHzまでは基準構成と同等の軸比特性であるが、それ以上では基準構成よりも軸比が若干改善する。
以上のことから、第1,第2アンテナ素子31,32における給電接続突部315,325をFDW方向へ増減させると、反射係数特性が基準構成に比べて高周波側もしくは低周波側で改善されることから、給電接続突部315,325の幅をパラメータとして調整すれば、目的とする周波数帯に適した広帯域の反射係数特性を得られる可能性があると考えられる。
以上、本発明に係る広帯域円偏波アンテナを幾つかの実施形態に基づき説明したが、本発明は、これらの実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての広帯域円偏波アンテナを権利範囲として包摂するものである。