JP6521822B2 - 塗料の流動シミュレーション方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塗料の流動シミュレーション方法、特に、塗料の焼き付け工程時における塗料の流れを予測する塗料の流動シミュレーション方法に関する。
複雑な表面形状を有する自動車の車体を塗装する際には、塗料を貯めた処理槽に車体を沈めながら、処理槽と車体の間に電圧を印加して車体の表面に塗料の電着膜を形成する電着塗装が施される。そして、電着塗装を施した後には、水洗工程によって電着膜の表面に残る塗料や隙間に溜まった塗料が洗い流され、車体を乾燥炉に搬入して電着膜を硬化させる高温焼き付けが実施される。
しかし、残留塗料が十分に洗い流されずに高温焼き付けを実施した場合には、加熱により塗料の粘度が低下して垂れ落ちることでの塗装欠陥、いわゆる二次タレ(流れ)が発生してしまうおそれがあった。このような二次タレの発生は、研磨作業や塗装作業等の補修が必要となり自動車の製造コストを増大させる要因となっていた。この問題を解決するためには、二次タレの発生をできる限り抑制し、また、二次タレが発生しても塗装品質に影響を与えない位置に二次タレを導くことで、上述の補修を最小限にする車体構造を設計する方法が考えられる。このような車体構造を設計するために、車体構造から二次タレの発生状況を予測する流動シミュレーション技術が存在している。
例えば、特許文献1には、車体に存在する塗料のタレを予測する塗料の流動シミュレーション方法が開示されている。具体的には、車体の表面形状を多角形からなる平面要素の集合体に変換し、各平面要素の頂点である節点のうち一の節点を対象とする節点(以下、対象節点)とする。そして、対象節点を共有する各平面要素が有する他の節点を対象節点についての隣接節点と設定し、対象節点に存在する塗料の移動量を演算することで、対象節点の塗料の焼き付け工程時における塗料のタレを予測している。これにより、車体構造から二次タレの発生状況を予測する塗料の流動シミュレーション技術を開発することで、二次タレによる品質低下を招くことのない車体構造の設計が図られている。
特許第5372528号公報
しかしながら、特許文献1の塗料の流動シミュレーション方法においては、対象節点とその対象節点に対向する要素との間の距離については考慮がされていなかった。そのため、対象節点とその対象節点に対向する要素が近接し、両者の間に塗料が残留してしまう場所(いわゆる板合わせ構造部)が把握されておらず、そのような場所を形成しないようにするための塗料のタレの予測が十分に行われていなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料が残留する場所を把握することで塗料の流れを的確に予測することを可能とする精度の高い塗料の流動シミュレーション方法を提供することにある。
上記目的を解決するため請求項1に係る発明は、
被塗装物の表面形状を多角形からなる平面要素の集合体に変換し、前記各平面要素の頂点である節点のうち一の節点を対象節点aとし、該対象節点aに存在する塗料の焼き付け工程時における流れを予測する塗料の流動シミュレーション方法において、
前記対象節点aを共有する前記各平面要素から伸ばした法線の傾きの平均値の傾きを有する平均法線を前記対象節点aから伸ばしたときに到達する前記平面要素を対向平面要素Xとし、前記伸ばした平均法線の長さを対向要素距離daとし、
前記対向要素距離daを、前記対象節点aと前記対向平面要素Xとの間に塗料の残留が発生する距離として予め設定された残留基準距離Dと比較し、
前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下である場合は、前記塗料が前記対象節点aと前記対向平面要素Xとの間に双方に接触した状態で残留すると予測することを特徴とする。
この構成によれば、対向要素距離daと残留基準距離Dを比較することで、対象節点aと対向平面要素Xとの間で塗料が残留してしまう場所を予測することが可能となる。被塗装物の設計段階において塗料が残留する場所が形成されないように表面形状の設計変更等を行うことができ、塗料の焼き付け工程における塗料の二次タレの発生の抑制が行われる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗料の流動シミュレーション方法において、前記対象節点aの塗料の流れの予測は、前記対象節点aを共有する各平面要素の前記対象節点a以外の節点を前記対象節点aについての隣接節点と設定し、前記対象節点aにおける塗料の移動量を演算することにより行い、
前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下である場合に、前記塗料の移動量の演算は、前記対向平面要素X及び該対向平面要素Xに隣接する平面要素が有する前記節点を前記隣接節点に加えて行うことを特徴とする。
この構成によれば、対向要素距離daが残留基準距離D以下であるような場所(以下、板合わせ構造部)例えば、車両のボンネットのアウターパネルとインナーパネルが重なり合わさっているような場所において、アウターパネル面上の対象節点aに対向するインナーパネル面上の節点が隣接節点として設定される。これらの隣接節点を塗料が移動する可能性の有る節点として設定することで、板合わせ構造部における塗料の流れを的確に再現することができ、塗料の焼き付け工程における塗料の流れについて精度の高いシミュレーションを行うことを可能とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の塗料の流動シミュレーション方法において、前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下でありかつ前記対象節点aの全下流隣接節点における前記対向要素距離が前記残留基準距離D以上である場合において、前記塗料の焼き付け工程時に前記対象節点aに残留する塗料が前記対象節点a上で移動することなく残留した状態で保持される塗料の限界量を残留限界量VLaとして演算し、前記対象節点aの塗料の残留量Vaが前記残留限界量VLa以下である場合には、前記対象節点aに残留する塗料は、前記対象節点aから移動しないと予測することを特徴とする。
この構成によれば、板合わせ構造部における対象節点a上の塗料には、塗料が対象節点aと対向平面要素Xの双方に接触した状態で、界面張力が働いている。この力によって対象節点a上の塗料は、移動せずに対象節点a上に残留した状態が維持されている。対象節点aに残留する塗料の量(残留量Va)が残留限界量VLa以下である場合は、塗料は界面張力により対象節点aの位置から移動しないと設定することで、塗料に作用する界面張力を考慮し、塗料の流れの予測を的確に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の塗料の流動シミュレーション方法において、
前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下でありかつ前記対象節点aの全下流隣接節点における前記対向要素距離が前記残留基準距離D以上であり、かつ、前記対象節点aの塗料の残留量Vaが前記残留限界量VLaより大きい場合であって、前記対象節点aについての前記隣接節点のうち、前記対象節点aよりも重力方向下側に位置する下位隣接節点が存在し、かつ前記下位隣接節点のうち上向き面に位置する下位隣接節点が存在する場合には、前記上向き面に位置する下位隣接節点のうち、最も傾斜が大きい面に位置する最大傾斜隣接節点に前記対象節点aに残留する塗料が移動すると予測することを特徴とする。
この構成によれば、下位隣接節点が複数個存在する場合に、その全ての下位隣接節点に塗料が移動すると予測するのではなく、下位隣接節点のうち、下向き面に位置する下位隣接節点には塗料は移動しないと予測する。そして、上向き面に位置する下位隣接節点の中でも、最も傾斜が大きい面に位置する最大傾斜隣接節点に塗料が移動すると予測する。下位隣接節点のうちどの下位隣接節点に塗料が移動するかについて予測することで塗料の流れの予測を的確に行うことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の塗料の流動シミュレーション方法において、
前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下であり、かつ、前記対象節点aの塗料の残留量Vaが前記残留限界量VLaより大きい場合であって、前記対象節点aについての前記隣接節点のうち、前記対象節点aよりも重力方向下側に位置する下位隣接節点が存在しない場合には、前記対象節点aに存在する塗料は前記対象節点aから滴下して移動すると予測することを特徴とする。
この構成によれば、対象節点aに下位隣接節点が存在しない場合には、対象節点aに存在する塗料は対象節点aから滴下して移動すると予測することで、板合わせ構造部における塗料の移動をより的確に予測することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項2から5の何れか一項に記載の塗料の流動シミュレーション方法において、
前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下であり、かつ、前記対向要素距離da、前記対象節点aが存在する平面と同一平面に位置する前記下位隣接節点nについての対向要素距離d、及び前記対象節点aに対して重力方向上側に位置する隣接節点mについての対向要素距離dの大きさの関係がd<da<dを充足する場合であって、前記対象節点aにおける前記塗料が所定の突沸条件を充たす場合には、前記塗料の突沸により、前記塗料は前記隣接節点mの方向に移動するものと予測することを特徴とする。
この構成によれば、板合わせ構造部であって、互いに対向するパネル間の距離が重力方向下方向に漸次減少していくような場所に対象節点aが位置し、所定の突沸条件を充たす場合には、塗料は対象節点aの上方に位置する隣接節点mの方向に移動すると予測することで、塗料が突沸するときの塗料の移動方向を予測することができ、塗料の突沸現象を考慮した塗料の流れの予測をより的確に行うことができる。
本発明によれば、塗料が対向配置された双方の平面要素に接触した状態で残留する場所の予測が可能となる。したがって、双方の平面要素間(すなわち板合わせ構造部間)の塗料の移動の予測を付加することで、板合わせ構造部における一方の平面要素から他方の平面要素への塗料の移動を予測することができる。これにより、被塗装物上におけるより実情に即した塗料の流れを予測することが可能となり、被塗装物の設計段階において、塗料が残留が生じないように表面形状の設計変更を行うことができる。さらに、塗料の焼き付け工程における塗料の二次タレの発生の抑制することで、塗料の二次タレによる補修の必要性をなくし、車両の製造コストを削減することが可能となる。
車体の塗装ラインを示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る流動シミュレーション方法を実行するための流動シミュレーション装置を示すブロック図である。 本発明の実施の形態に係る塗料の流動シミュレーション方法において、スタートから対象節点aと対向平面要素Xaとの間の塗料の残留判定(ステップS8)までの手順を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る塗料の流動シミュレーション方法において、対象節点aと対向平面要素Xaとの間の塗料の残留判定(ステップS8)からタイマのリセット処理(ステップS15)までの手順を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態に係る流動シミュレーション方法において、タイマのリセット処理(ステップS15)からエンドまでの手順を示すフローチャートである。 (A)は本発明の実施の形態に係る被塗装物である車体の一部の斜視図であり、(B)は(A)におけるIa−Ia線断面図であり、(C)は(B)における部分Aの拡大斜視図であり、車体の表面形状から変換された多角形からなる平面要素の集合体を示している。 複数の平面要素を部分的に抜き出した模式図である。 対象節点aについての対向要素距離daを算出する方法の説明図である。 対象節点aについての隣接節点を設定する方法の説明図である。 (A)は対象節点aについての支配面積Sの説明図であり、(B)は対象節点aと隣接節点b4との間の節点間距離La→b4の説明図である。 (A)〜(C)は異なる車両の搬送角度において対象節点aと隣接節点b4との間の傾斜角が変化することを示す説明図である。 (A)は対象節点aにおける塗料移動(流出)量を示す説明図であり、(B)は対象節点aの塗料移動(流入)量を示す説明図である。 板合わせ構造部における液垂れ判定処置を実行する際の手順を示すフローチャートである。 板合わせ構造部に位置する対象節点aにおける塗料の残留量Vが残留限界量VLa以下である場合において、対象節点aに残留する塗料は対象節点aの位置から移動しないことを示す説明図である。 板合わせ構造部に位置する対象節点aにおける塗料の残留量Vが保持限界量VLaより大きい場合であって、対象節点aに下位隣接節点が存在する場合の対象節点aに残留する塗料の移動方向を示す説明図である。 板合わせ構造部に位置する対象節点aにおける塗料の残留量Vが保持限界量VLaより大きい場合であって、対象節点aに下位隣接節点が存在しない場合には、対象節点aに残留する塗料は対象節点aの位置から滴下して移動することを示す説明図である。 塗料が突沸する場合の塗料の移動方向を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は車体100の塗装ライン102を示す概略図であり、図1には電着塗装工程から焼付工程までの塗装ライン102が示されている。図1に示すように、電着塗装工程においては、被塗装物としての車体100に対して電着塗装を施すための処理槽104が設けられている。この処理槽104は電着塗料で満たされており、塗装時にはハンガ106に吊り下げられた車体100が処理槽104に沈められるようになっている。処理槽104内には図示しない電極が配置されており、車体100と電極とに対して電圧を印加することにより、車体100の表面には電着塗膜が形成されることになる。そして、処理槽104から引き上げられた車体100は、複数のスプレーノズル108を備える水洗工程に案内される。この水洗工程においては、スプレーノズル108から車体100に向けて洗浄液を噴射することにより、車体100に存在している余分な塗料やゴミ等が除去されるようになっている。続いて、水洗工程を通過した車体100は、加熱乾燥炉であるオーブン110に搬入される。このオーブン110を通過する車体100に対して赤外加熱や熱風加熱を施すことにより、車体100を所定の焼付温度まで加熱して電着塗膜を硬化させるとともに車体100に定着させることが可能となっている。なお、加熱された空気の流出を抑制してエネルギ効率を高めるため、オーブン110の中間部位は高い位置に設置されている。
以下、車体100に存在する塗料の垂れを予測する流動シミュレーション方法について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る流動シミュレーション方法を実行するための流動シミュレーション装置200を示すブロック図である。図2に示すように、流動シミュレーション装置200には、制御部202が設けられており、システムバス204を介して入力部206、表示部208及び記憶部210と互いに通信可能となっている。入力部206で入力された塗料の粘性や、オーブン110の設定温度等の各種条件のデータは、記憶部210に記憶される。記憶されたデータを用いて、制御部202に設けられたCPUが、ROMやHDD等に保存されている流動シミュレーションプログラムを実行させ、その流動シミュレーションの結果を表示部208に表示させる。
制御部202は、対向要素距離da演算手段、残留基準距離D設定手段、d≦D判定手段、塗料残留判定手段、隣接節点設定手段、支配面積Sa演算手段、節点間距離L演算手段、傾斜角α演算手段、水平角θa演算手段、初期膜厚thoa演算手段、初期残留量Voa演算手段、残留限界量VLa演算手段、塗料移動量演算手段、液垂れ判定処理手段、突沸演算手段として機能するようになっており、流動シミュレーション装置200により車体100に存在する塗料の垂れ(流れ)を予測することが可能となっている。なお、予測とは、コンピュータ上で模擬実験をすること、すなわちシミュレーションを行うことをいう。
図3〜5は流動シミュレーション装置200によって実行される流動シミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。図3は、対象節点aと対向平面要素Xとの間の塗料の残留を予測するまでの手順を示しており、ステップS1では、各種計算条件データが読み込まれる。この計算条件データとしては、流動シミュレーションの実行間隔(例えば、100秒間隔)、流動シミュレーションの終了時間T(例えば、3600秒)、オーブン110の温度条件(例えば、0〜200秒までは60℃、200〜600秒までは100℃、600〜3600秒までは170℃)、車体100の搬送角度条件(例えば、0〜200秒までは水平方向に対して30°、200〜3400秒までは水平方向に対して0°、3400〜3600秒までは水平方向に対して−30°)等が読み込まれている。
続くステップS2では、車体データとして車体100の表面形状を読み込み、多角形からなる平面要素の集合体に変換したモデル(以下、変換モデル10)が読み込まれる。変換モデル10は、車両100の表面形状を有限要素法によって四角形や三角形等の多角形からなる複数の平面要素の集合体に変換して計算する数値計算モデルである。この変換モデル10として、例えば、車体衝突変形流動シミュレーション等で用いられる二次元の数値計算モデルを流用することが可能である。
図6(A)は本実施の形態に係る被塗装物である車体100の一部を示しており、同図(B)は同図(A)に示すIa−Ia線の断面図である。同図(B)に示すようにボンネットのインナーパネル100aの端部がボンネットのアウターパネル100bの折り返された端部に挟まれた状態で互いに結合している。同図(C)は、同図(B)に示す部分Aの拡大斜視図であり、インナーパネル100aの面100a−1とアウターパネル100bの面100b−1は互いに対向した状態で密接している。
図7は変換モデル10を構成する複数の平面要素を部分的に抜き出して示している。図7に示すように、変換モデル10が備える各平面要素の頂点には節点が配置されており、節点毎に、X座標値、Y座標値、Z座標値が特定されている。
続くステップS3では、対象節点aにおける対向要素距離dが演算される。図8は対象節点aについての対向要素距離dを演算する方法を示している。図8は、図6(C)に示したインナーパネル100aの面100a−1とアウターパネル100bの面100b−1を説明のために互いに離間させ、面100a−1及び面100b−1の一部をそれぞれ拡大して示したものである。
対向要素距離dを演算する方法は、初めに、一の節点を対象節点aとして設定し、対象節点aを共有する4つの平面要素I、II、III、IVについてそれぞれ法線N、NII、NIII、NIVを求める。求めた4本の法線Nの傾きの平均値の傾きを有する平均法線Maを対象節点aから伸ばし、平均法線Maと交差する平面要素を対向平面要素Xとする。平均法線Maが対向平面要素Xに到達して交差する点を到達点Yとし、到達点Yと対象節点aの間の距離を対向要素距離dとして演算する。
続くステップS4では、データベースから本実施の形態の条件に合う残留基準距離Dを読み込んで設定をする。残留基準距離Dは、節点と該節点についての対向平面要素Xとの間で双方に接触した状態で塗料が残留してしまう場合における対向要素距離dの大きさである。残留基準距離Dの値は、上述の水洗工程における水圧等の洗浄能力、塗料の粘性等の性質、パネル表面の性質、オーブン110の温度等の要因によって異なる。予め実験などによって求められた様々な条件における残留基準距離Dがデータベースにストアされており、実施の形態の条件に合った残留基準距離Dをデータベースから読み込むことで残留基準距離Dを設定する。例えば、本実施の形態では残留基準距離Dの値は0.5mmとする。
続くステップS5では、対象節点aについての隣接節点の設定が行われ、対象節点aを共有する各平面要素の対象節点a以外の節点を隣接節点として設定する。図9は、対象節点aについて隣接節点を設定する方法が示されている。ステップS5における隣接節点の設定は、従来と同様の方法によって行われ、対象節点aが位置する面100b−1と同じ面上に位置し、対象節点aを共有する要素I、II、III、IVが有する対象節点a以外の節点b1〜b8を、対象節点aの隣接節点と設定する。
続くステップS6では、対象節点aにおける対向要素距離dが残留基準距離D以下であるか否かを判定する。対向要素距離daが残留基準距離D以下ではない、すなわち、対向要素距離daが残留基準距離Dよりも大きいと判定された場合には、続くステップにおいて、ステップS5で設定した隣接節点に基づいて特許文献1に示されるような塗料の流動シミュレーションが行われる。すなわち、車両に作用する重力方向を基準とした隣接節点間の傾斜角と車両に残留する塗料に作用する温度に基づいて隣接節点間における塗料の移動量を演算することで塗料の流れを予測している。
一方で、対向要素距離daが残留基準距離D以下であると判定された場合には、ステップS7に続く。ステップS7においては、ステップS5で設定した隣接節点に加えて、対象節点aが位置する面と対向する側の面に位置する対向平面要素Xa及び対向平面要素Xaに隣接する平面要素が有する節点を隣接節点として設定する。
本実施の形態において特徴的なことは、対向要素距離dが残留基準距離Da以下であると判定された場合には、対象節点aが位置する面と同じ側の面に位置する節点だけではなく、対象節点aが位置する面と対向する側の面に位置する節点も隣接節点と設定したことである。
図9は、対向要素距離dが残留基準距離D以下である場合の対象節点aについての隣接節点の設定方法を示している。対向要素距離dが残留基準距離D以下である場合は、上述の従来の方法により設定される節点b1〜b8に加えて、対象節点aが位置する側の面100b−1と対向する側の面100a−1上に存在する対向平面要素X及び対向平面要素Xに隣接する要素が有する節点c1〜c16も対象節点aの隣接節点として設定される。
対象節点aが位置する面と対向する側の面に位置する節点も隣接節点と設定することで、対向要素距離daが残留基準距離D以下となるような場所(以下、板合わせ構造部)例えば、車両のボンネットのアウターパネルとインナーパネルが重なり合わさっている場所において、アウターパネルのインナーパネルに対向する側の面上に位置する対象節点aに存在する塗料が、対向するインナーパネル側に位置する節点を塗料が移動する可能性の有る節点として設定することで、塗料の二次タレ挙動についてより精度の高い流動シミュレーションを行うことができる。
続くステップS8では、ステップS6において対向要素距離dが残留基準距離D以下であると判定された場合には、対象節点aと対向平面要素Xaとの間に塗料が残留していると判定する。
塗料が残留する場所を予測することで、車両の設計段階において対向要素距離dが残留基準距離Dよりも大きくなるように形成したり、対象節点aと対向平面要素Xaとの間の塗料の移動を考慮して表面形状を変更する等の設計変更を行うことができ、塗料の焼き付け工程における塗料の二次タレの発生を抑制することができる。
続くステップS9では、対象節点aにおける支配面積Saが演算され、各隣接節点との節点間距離Lが演算される。図10(A)は、対象節点aの支配面積Saを示しており、同図(B)は、対象節点aと隣接節点b4との節点間距離La→b4を示している。同図(A)に示すように、対象節点aの支配面積Saは、対象節点aと各隣接節点b1〜b8との中間位置を結ぶことによって区画された部分の面積である。なお、対象節点aについての支配面積Saを演算するときには、対象節点aが位置する面と対向する側の面に位置する隣接節点は考慮しないものとする。また、図10(B)に示すように、対象節点aと隣接節点b4の各座標値に基づいて節点間距離La→b4が演算される。
続いて、ステップS10では、各節点の座標値に基づいて、隣接する節点毎に水平面を基準とした傾斜角αが演算される。基準となる水平面は重力方向Gに直交する面であるため、ステップS10を実行することにより、重力方向Gを基準とした傾斜角αが演算されることになる。図11(A)〜(C)は、対象節点aと隣接節点b4間の傾斜角αa→b4を示す説明図であり、車体100の搬送角度に応じた傾斜角αa→b4の変化を示している。
図1に示すように、焼付工程においては、車体100の搬送角度が経過時間に応じて変化するため、車体100の変換モデル10に作用する重力方向Gも変化することになる。このため、図11(A)〜(C)に示すように、搬送角度(重力の作用方向)の変化に応じて傾斜角αa→b4が変化することになる。なお、焼付工程における車体100の搬送角度は、ステップS1において計算条件データの搬送角度条件として読み込まれており、ステップS10においては経過時間毎に搬送角度条件を参照しながら傾斜角αa→b4を演算することになる。なお、傾斜角αa→b4の場合の塗料移動量ν(a、b4)の演算方法については後述する。
続いてステップS11では水平角θを演算する。対象節点aにおける水平角θaは、対象節点aから伸ばした平均法線Maと対象節点aにおける重力方向の直線により挟まれた角度のことである。
続いてステップS12では、初期膜厚th及び初期残留量Vを演算する。対象節点aにおける初期膜厚th0aは、本実施の形態においては、例えば、0.5daと近似する。これにより、初期残留量Vは支配面積S×初期膜厚th×2で表せるので、初期残留量V0aはSa×dとなる。
続いてステップS13では、対象節点aにおける残留限界量VLaを演算する。ここで、残留限界量VLaは、塗料の平均膜厚k×Saで表され、対象節点aに残留する塗料が対象節点a上で移動することなく残留した状態で保持される塗料の限界量である。
なお、塗料の平均膜厚kの値は、塗料の粘性や支配面積Sa等によって変化し、予め実験などから求められた様々な条件における値がストアされているデータベースから本実施の形態における条件に合う値を読み取ることで設定される。例えば、本実施の形態では平均膜厚kの値は0.5〜1.5とする。
続いてステップS14では、初期膜厚th0aをthta、初期残留量Vtaがそれぞれ現在の初期膜厚及び初期残留量として格納し、ステップS15では、流動シミュレーション時間を計測するタイマtのリセット処理が実施される。
続いてステップS16では、時間tにおける傾斜角αを演算し、ステップS17では、水平角θを演算する。
続いてステップS18では、対象節点aにおける所定時間後の塗料流出量(塗料移動量)Voutが演算され、続くステップS19では、対象節点aにおける所定時間後の塗料流入量(塗料移動量)Vinが演算される。図12(A)は、対象節点aにおける塗料流出量Voutを示しており、図12(B)は、対象節点aにおける塗料流入量Vinを示している。
ステップS5において対向要素距離daが残留基準距離D以下であり、対象節点aの隣接節点はb1〜b8に加え、c1〜c16も隣接節点と設定されるので、対象節点aと隣接節点b1〜b8、c1〜c16間の塗料の流出入量を検討する必要がある。図12(A)に示すように、対象節点aの重力方向下側に位置する隣接節点b3、b4、b5、b6、c2、c3、c9、c10、c11、c12、c13、c14に対しては、対象節点aから塗料が流出すると予測され、図12(B)に示すように、対象節点aの重力方向上側に位置する隣接節点b1、b2、b7、b8、c1、c4、c5、c6、c7、c8、c15c、c16からは、対象節点aに対して塗料が流入すると予測される。しかし、隣接節点b3、b4、b5、b6のうち、b3及びb4については、それぞれの対向要素距離db3及びdb4はともに残留基準距離Dよりも大きいので、対象節点aに存在している塗料はb3及びb4には流出しないものと予測する。
対象節点aからの塗料流出量Voutは以下の式(1)によって表され、対象節点aに対する塗料流入量Vinは以下の式(2)によって表される。
out=νt+1 (a,b5) +νt+1 (a,b6)+νt+1(a,c2)+νt+1(a,c3) +νt+1 (a,c9) +νt+1 (a,c10) +νt+1(a,c11)+νt+1(a,c12) +νt+1 (a,c13) +νt+1 (a,c14)…(1)
in=νt+1 (b1,a) +νt+1 (b2,a)+νt+1 (b7,a)+νt+1(b8,a) +νt+1(a,c1)+νt+1(a,c4) +νt+1 (a,c5) +νt+1 (a,c6) +νt+1(a,c7)+νt+1(a,c8) +νt+1 (a,c15) +νt+1 (a,c16)…(2)
なお、νt+1(a,b5)は、対象節点aから節点b5への塗料の流出量を示しており、νt+1 (b1,a)は、節点b1から対象節点aへの塗料の流入量を示している。
次いで、所定時間後における塗料移動量(塗料流出量,塗料流入量)νt+1の演算方法について具体的に説明する。以下の式(3)に示すように、所定時間後の塗料移動量νt+1は、現在の塗料残留量Vに対して、温度Tに基づく関数F(F(t))、傾斜角αに基づく関数F(α)、節点間距離Lに基づく関数F(L)、対向要素距離dに基づく関数Fe(d)を乗算することによって演算される。すなわち、式(4),(5)に示すように、温度Tが上昇するほど塗料の粘度が低下することから、関数F(F(t))によって塗料移動量νt+1が増加するように演算される。また、式(6)に示すように、傾斜角αが急勾配になるほど、関数F(α)よって塗料移動量νt+1が増加するように演算される。式(7)に示すように、節点間距離Lが近くなるほど、関数F(L)によって塗料移動量νt+1が増加するように演算される。さらに、式(8)に示すように、対向要素距離dが小さくなるほど塗料移動量νt+1が増加するように演算される。
このような手順によって、各隣接節点間における塗料移動量νt+1を演算した上で、式(1),(2)に示されるように、複数の隣接節点間での塗料移動量νt+1を加算することにより、前述した塗料流出量Voutや塗料流入量Vinが求められることになる。
νt+1=V・F(F(t))・F(α)・F(L)・Fe(d) …(3)
(T)=a・T +b・T+c …(4)
(t)=T(t) …(5)
(α)=A・sinα+B …(6)
(L)=C/L …(7)
e(d)=γ/(1+ed/dset) …(8)
ここで、Vは現在の塗料残留量であり、Tは車体100に作用する温度であり、tはタイマ時刻であり、αは傾斜角であり、Lは節点間距離であり、dは対向要素距離である。
また、a〜c、A〜C、γ及びdsetは実験によって求められる係数である。
続いて、ステップS20では、以下の式(9)に従って、節点毎に所定時間後の塗料残留量Vt+1が演算される。すなわち、節点に残留していた当初の塗料残留量Vから、ステップS18で演算された塗料流出量Voutを減算する一方、ステップS19で演算された塗料流入量Vinを加算するようにしている。これにより、所定時間後の対象節点aにおける塗料残留量Vt+1が求められることになる。
t+1=V−Vout+Vin …(9)
続いて、ステップS21では、板合わせ構造部における液垂れ判定処理が行われる。板合わせ構造部における液垂れ判定処理は、図13に示すフローチャートに従って行われる。
ステップS101では、板合わせ構造部における対象節点aにおける塗料残留量Vtaが、残留限界量VLaよりも大きいか否かについて判定する。ステップS101において塗料残留量Vtaが残留限界量VLaよりも大きいと判定された場合にはステップS102に進む。
続くステップS102では、対象節点aについて、対象節点aよりも重力方向下側に位置する下位隣接節点が存在するか否かについて判定する。ステップS102において、対象節点aに下位隣接節点が存在すると判定された場合には、ステップS103に進む。続くステップS103では、上述の下位隣接節点が上向き面に存在するか否かについて判定する。ステップS103において上向き面に存在すると判定された場合には、ステップS104に進む。
続くステップS104では、上述の上向き面に存在する下位隣接節点のうち、一の下位隣接節点が、最も傾斜が大きい面上に位置する最大傾斜隣接節点であるか否かについて判定する。ステップS104において、最大傾斜隣接節点であると判定された場合には、ステップS105に進む。
続くステップS105では、対象節点aに存在する塗料は、上述の最大傾斜隣接節点に移動すると判定される。一方で、一の下位隣接節点が最大傾斜隣接節点ではないと判定された場合には、ステップS106において、対象節点aに存在する塗料は、その一の下位隣接節点には移動しないと判定される。
上述のステップS103において、上向き面に位置する下位隣接節点が存在せず、下位隣接節点は下向き面に位置すると判定された場合には、ステップS107に進む。続くステップS107では、対象節点aに存在する塗料は対象節点aの位置からその下位隣接節点に移動すると判定される。
また、上述のステップS102において、対象節点aに下位隣接節点が存在しないと判定された場合には、ステップS108に進む。続くステップS108では、対象節点aに存在する塗料は、対象節点aの位置から滴下すると判定される。
さらに、上述のステップS101において、塗料残留量Vtaは残留限界量VLa以下であると判定された場合には、ステップS109に進む。続くステップS109では、対象節点aに存在する塗料は、対象節点aから流下することはなく残留すると判定される。
上述のステップS105において、対象節点aに存在する塗料が最大傾斜隣接節点に移動する場合を例に説明する。図15には、対向する2つのパネルが示されており、対象節点aについての対向要素距離daは残留基準距離D以下であり、対象節点aの塗料残留量Vtaは残留限界量VLaよりも大きい状態を示している(ステップS101)。
対象節点aには隣接節点e、f、gを含む複数個の下流点が存在する(ステップS102)。なお、対象節点aの下流点は、隣接節点e、f、g以外にも存在するが、説明のために隣接節点e、f、gのみを代表して示している。本実施の形態においては、隣接節点が上向き面又は下向き面に位置するかの判断方法として、例えば、水平角θを用いて判断をしている。すなわち、水平角θが90度であれば、隣接節点は水平面に存在し、90度未満であれば、その隣接節点は下向き面に存在し、90度より大きいときはその隣接節点は上向き面に存在すると判断される。
隣接節点gの水平角θeは90度より小さいが、隣接節点f及びgのそれぞれの水平角θe、θは共に90度以上である(ステップS103)。水平角θeとθとを比較すると、水平角θeの方が90度に近い(ステップS104)ので、対象節点aに存在する塗料は隣接節点eの方向に移動すると判定される(ステップS105)。
対象節点aの下位隣接節点であれば、その全ての下位隣接節点に塗料が移動すると予測するのではなく、その下位隣接節点の中でも、下向き面に位置する隣接節点eには塗料は移動しないものと予測し、さらに上向き面に位置する隣接節点f、g等の中でも、より垂直状態の面に位置する隣接節点fの方向に塗料が移動すると予測することで、どの下位隣接節点の方向に移動するかを限定してより的確に予測することができ、精度の高い流動シミュレーションを可能とすることができる。
また、上述のステップS102において、対象節点aに下位隣接節点が存在しないと判定された場合を例に説明する。図16は、板合わせ構造部に位置する対象節点aにおける塗料残留量Vtaが保持残留量VLaよりも大きい状態を示している(ステップS101)。対象節点aには下位隣接節点は存在しないので(ステップS102)、対象節点aに存在する塗料は対象節点aの位置から真下に滴下すると判定される(ステップS108)。
これにより、対象節点aに下位隣接節点が存在しない場合には、対象節点aに存在する塗料は対象節点aから滴下すると予測することで、板合わせ構造部における塗料の移動をより的確に予測することができ、より精度の高い流動シミュレーションを可能とすることができる。
さらに、上述のステップS101において、対象節点aにおける塗料残留量Vtaが残留限界量VLaよりも大きくはないと判定された場合を例に説明する。図14は、板合わせ構造部に位置する対象節点aについての塗料残留量Vtaが残留限界量VLa以下である状態を示している(ステップS101)。この状態において、塗料は対象節点aよりも重力方向上側に位置する隣接節点cの方向から対象節点aに流入するが、対象節点aの下位隣接節点であり、対向要素距離dが残留基準距離D以下である隣接節点bの方向には塗料は流下しないと判定される(ステップS109)。
板合わせ構造部において対象節点aに存在する塗料には界面張力による力が働いている。この力によって対象節点a上の塗料は移動せずにその場に留まろうとしている。対象節点aに残留する塗料が所定の量を超えるまでは、塗料は界面張力により対象節点aの位置から隣接節点bの方向に移動しないと設定することで、界面張力を考慮した塗料の二次タレ挙動を予測し、より精度の高い流動シミュレーションを行うことができる。
続いて、ステップS23に進み、流動シミュレーション時間を計測するタイマtのカウント処理が実施される。このカウント処理においては、計算条件データとして読み込まれた流動シミュレーションの実行間隔 (例えば100秒)が、タイマtに対して加算されることになる。続いて、ステップS24では、計算条件データとして読み込まれた終了時間(例えば3600秒)Tをタイマtが上回るか否かが判定される。ステップS24において、タイマtが終了時間Tを下回ると判定された場合には、再びステップS16から節点毎の傾斜角αtaが演算されることになる。一方、ステップS24において、タイマtが終了時間Tに達したと判定された場合には、ステップS25に進み、演算結果(塗料存在量の時間推移,塗料残留箇所、塗料突沸箇所等)が表示部204を構成するディスプレイ等に表示されることになる。
このように、板合わせ構造部に位置する対象節点aについての対向要素距離dを演算することで塗料が残留する場所を予測し、対象節点aに付加隣接節点を設定することで板合わせ構造部において特徴的に発生する塗料の挙動について予測することで、焼付工程における二次タレの発生状況を的確に予測することが可能となる。これにより、設計段階において二次タレの発生状況を捉えることができるため、試作等の開発コストを抑制しながら、二次タレを考慮した車体構造を採用することが可能となる。また、二次タレの発生状況を捉えることができるため、二次タレを発生させないように塗装ライン102の水洗工程におけるスプレーノズル108の仕様を適切に設定することができ、車両の製造コストを引き下げることが可能となる。
なお、本発明は上記実施の形態に示した範囲に限定されるものではなく、発明の要旨内で種々の変形が可能である。例えば、板合わせ構造部において塗料が突沸したときの塗料の移動方向を予測する演算を行ってもよい。この板合わせ構造部突沸演算のステップは、例えば、ステップS21とステップS22の間に挿入して行うことができる。板合わせ構造部であって、塗料が溜まる場所では、加熱された塗料が様々な要因によって突沸を起こすことが経験的に知られている。図17は、板合わせ構造部において塗料の突沸による移動方向を示している。板合わせ構造部100cは、対向する2つの面100c−1、100c−2の間の距離が重力方向下方向に漸次縮小している場所である。上述の判定方法は、面100c−1上の対象節点aについて対向要素距離daを求め、続いて、対象節点aを含む要素に属し、対象節点aよりも重力方向上方向に位置する他の節点mについて対向要素距離d及び、対象節点aを含む要素に属する下位隣接節点nについて対向要素距離dを求める。対象節点aの対向要素距離daが残留基準距離D以下であり、対向要素距離dと対向要素距離dとの関係がd>da>dを充足する場合は、塗料は突沸により対象節点aの場所から重力方向上方向に飛んで移動するものと設定する。例えば、対象節点aの対向要素距離daが残留基準距離D以下である場合は、上述のように対象節点aにおける塗料の初期膜厚th0aを0.5daと近似すると、対象節点aの塗料残留量V0aは、Sa×0.5da×2と近似され、塗料残留量Vが、対象節点aにおいて塗料の突沸が生じる突沸臨界残留量Vを超える場合には、対象節点aにおいて突沸が生ずると予測され、節点mに塗料残留量V0aの70%が移動すると予測される。
これにより、塗料の突沸が生じる場所と突沸が生じた場合の塗料の移動方向を予測することで、板合わせ構造部で特徴的に発生する塗料の突沸現象を考慮た塗料の移動の予測を的確に行うことができる。
また、対象節点aの対向要素距離daが、残留基準距離D以下である場合には、塗料の対象節点aにおける初期膜厚th0を0.5daと設定しているが、車体100の平面形状及び塗料の粘度等、種々の条件に応じて他の数値、例えば0.6da等と設定してもよい。
さらに、対向要素距離daが、残留基準距離D以下である場合には、対向平面要素X及び該対向平面要素Xに隣接する平面要素が有する他の節点を対象節点aについての付加隣接節点と設定したが、車両100の平面形状等、その他の条件に応じて上述の節点に加えて他の節点も付加隣接節点と設定してもよい。被塗装物として車体を挙げているが、これに限られることはなく、ケース等の他の部品であっても良いことはいうまでもない。
10 変換モデル
d 対向要素距離
a 対象節点
N 法線
M 平均法線
X 対向平面要素
Y 到達点
D 残留基準距離
b1〜b8、c1〜c16、m、n 節点
S 支配面積
L 節点間距離
α 傾斜角
G 重力方向
θ 水平角
th0 初期膜厚
0 初期残留量
残留限界量
突沸臨界残留量
k 平均膜厚
in 塗料流入量(塗料移動量)
out 塗料流出量(塗料移動量)
ν 塗料移動量
T 温度

Claims (6)

  1. 被塗装物の表面形状を多角形からなる平面要素の集合体に変換し、前記各平面要素の頂点である節点のうち一の節点を対象節点aとし、該対象節点aに存在する塗料の焼き付け工程時における流れを予測する塗料の流動シミュレーション方法において、
    前記対象節点aを共有する前記各平面要素から伸ばした法線の傾きの平均値の傾きを有する平均法線を前記対象節点aから伸ばしたときに到達する前記平面要素を対向平面要素Xとし、前記伸ばした平均法線の長さを対向要素距離daとし、
    前記対向要素距離daを、前記対象節点aと前記対向平面要素Xとの間に塗料の残留が発生する距離として予め設定された残留基準距離Dと比較し、
    前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下である場合は、前記塗料が前記対象節点aと前記対向平面要素Xとの間に双方に接触した状態で残留すると予測することを特徴とする塗料の流動シミュレーション方法。
  2. 前記対象節点aの塗料の流れの予測は、
    前記対象節点aを共有する各平面要素の前記対象節点a以外の節点を前記対象節点aについての隣接節点と設定し、前記対象節点aにおける塗料の移動量を演算することにより行い、
    前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下である場合に、前記塗料の移動量の演算は、前記対向平面要素X及び該対向平面要素Xに隣接する平面要素が有する前記節点を前記隣接節点に加えて行うことを特徴とする請求項1に記載の塗料の流動シミュレーション方法。
  3. 前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下であり、かつ前記対象節点aの全下流隣接節点における前記対向要素距離が前記残留基準距離D以上である場合において、前記塗料の焼き付け工程時に前記対象節点aに残留する塗料が前記対象節点a上で移動することなく残留した状態で保持される塗料の限界量を残留限界量VLaとして演算し、
    前記対象節点aの塗料の残留量Vaが前記残留限界量VLa以下である場合には、前記対象節点aに残留する塗料は、前記対象節点aから移動しないと予測することを特徴とする請求項2に記載の塗料の流動シミュレーション方法。
  4. 前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下であり、かつ前記対象節点aの全下流隣接節点における前記対向要素距離が前記残留基準距離D以上であり、かつ、前記対象節点aの塗料の残留量Vaが前記残留限界量VLaより大きい場合であって、
    前記対象節点aについての前記隣接節点のうち、前記対象節点aよりも重力方向下側に位置する下位隣接節点が存在し、かつ前記下位隣接節点のうち上向き面に位置する下位隣接節点が存在する場合には、
    前記上向き面に位置する下位隣接節点のうち、最も傾斜が大きい面に位置する最大傾斜隣接節点に前記対象節点aに残留する塗料が移動すると予測することを特徴とする請求項2又は3に記載の塗料の流動シミュレーション方法。
  5. 前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下であり、かつ、前記対象節点aの塗料の残留量Vaが前記残留限界量VLaより大きい場合であって、
    前記対象節点aについての前記隣接節点のうち、前記対象節点aよりも重力方向下側に位置する下位隣接節点が存在しない場合には、
    前記対象節点aに存在する塗料は前記対象節点aから滴下して移動すると予測することを特徴とする請求項2又は3に記載の塗料の流動シミュレーション方法。
  6. 前記対向要素距離daが前記残留基準距離D以下であり、かつ、
    前記対向要素距離da
    前記対象節点aが存在する平面と同一平面に位置する前記下位隣接節点nについての対向要素距離d、及び前記対象節点aに対して重力方向上側に位置する隣接節点mについての対向要素距離dの大きさの関係がd<da<dを充足する場合であって、前記対象節点aにおける前記塗料が所定の突沸条件を充たす場合には、
    前記塗料の突沸により、前記塗料は前記隣接節点mの方向に移動するものと予測することを特徴とする請求項2から5の何れか一項に記載の塗料の流動シミュレーション方法。
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