JP6519728B2 - レタスの褐変性を抑制するためのdna - Google Patents

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Description

本発明は、レタスの褐変性を抑制するためのDNAに関する。また、本発明は、該DNAを有するレタスの細胞、該細胞を有するレタスの植物体、該植物体の子孫又はクローン、並びにそれらの繁殖材料に関する。さらに、本発明は、褐変性が抑制されたレタスの製造方法、レタスにおける褐変性を判定する方法、及び褐変性が抑制されたレタスを育種する方法にも関する。
近年の生活スタイルの変化により食の外部化が進み、外食・中食の利用率が年々増加している。また、それに伴い、加工・業務用野菜の需要量も拡大傾向にある。主要野菜におけるその割合は、約56%(重量ベース、2010年農林水産政策研究所報告による)にのぼる。このような社会的変化において、特に、加工・業務用野菜として安定需要が見込まれるレタスは、作付面積が増加傾向にあり、今後もその傾向が継続すると推測されている。
しかしながら、レタスに損傷等を与えると、その部分は褐色に変化(褐変)し、腐敗し易くなることがよく知られている。したがって、レタスを加工・業務用野菜等として加工する際には、この褐変が問題となる。
褐変は、葉緑体等に含まれているポリフェノールオキシダーゼ(以下、「PPO」とも称する)と、その基質である液胞中のフェノール性化合物とが、葉の切断等で細胞が破壊されることにより、両者が接触して生じることが明らかになっている。
この生化学的メカニズムに着目し、特許文献1には、ポリフェノールオキシダーゼをコードする遺伝子を単離し、その配列を決定したことが開示されている。そして、同文献には、かかる配列の決定に伴い、該遺伝子に対するアンチセンス核酸の設計が可能となり、ひいては該核酸を利用したアンチセンス法によって、レタス等における褐変を抑制できることが示唆されている。
特表平11−505709号公報
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、ポリフェノールオキシダーゼの酵素活性が安定的に低下しており、損傷等を受けた際に褐変しにくいレタスを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく、先ず、レタスのプロトプラストに、炭素イオンビームを照射することにより突然変異誘導処理を施した。そして、培養可能なレタスのカルス)を898個得た。次に、これらすべてのカルスに対して、TILLING法による分析を行い、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)遺伝子領域に変異が導入されたと考えられるカルス2個を選抜することができた。更に、これら2個のカルスからレタスの個体を再生させ、そのうちの1のカルス由来の個体においてPPOの酵素活性が半分程度低下していることを明らかにした。そして、PPOの活性が低下した個体から自殖種子を得て、その後代をTILLING法及びPPO酵素活性測定法で評価することにより、PPO活性がほとんどない個体を得ることができた。
次に、PPO酵素活性がほとんどないレタスの葉を切断し、予冷処理を施した後、その褐変の程度を肉眼観察及び分光測色法にて評価した。その結果、PPO酵素活性がほとんどないレタス切断面の褐変の程度は、PPO遺伝子領域に変異が導入されていない従来品種より、低褐変性を示した。
更に、PPO酵素活性がほとんどないレタスのPPO遺伝子領域の配列を決定したところ、PPO構造遺伝子の5’側最初の塩基であるアデニンを1番目とすると、380番目の塩基が、活性が正常な(変異していない)PPO構造遺伝子(配列番号:1に記載のヌクレオチド配列からなるDNA)では、シトシンであるのに対して、活性がほとんど認められないPPO構造遺伝子(配列番号:3に記載のヌクレオチド配列からなるDNA)では、アデニンであることが明らかになった。すなわち、PPOタンパク質において、最初のメチオニンを1位とすると127位のアミノ酸がプロリンから他のアミノ酸に置換されることによって、当該酵素の活性が著しく低下することが明らかになった。
レタスのPPOタンパク質において、その酵素活性に必要な機能ドメインは、210位以降の領域にあり(例えば、211〜247位のアミノ酸からなる領域は、1番目の銅結合ドメインであり、348〜385位のアミノ酸からなる領域は2番目の銅結合ドメインであり)、また細胞質で発現させたPPOタンパク質を葉緑体に移行させるための、トランジットペプチドは1〜94位にある。このように、前述の127位のアミノ酸及びその周辺の領域に関しては、PPOタンパク質の機能等に寄与することは何ら明らかにされておらず、当該部位のアミノ酸を置換することにより、PPOタンパク質の活性を著しく抑制できたことは、極めて驚くべきことであった。
以上の通り、PPOタンパク質(配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質)の127位のプロリンを他のアミノ酸に置換することによって、該酵素の活性を抑制し、褐変性が抑制されたレタスを作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、レタスの褐変性を抑制するためのDNAに関する。また、本発明は、該DNAを有するレタスの細胞、該細胞を有するレタスの植物体、該植物体の子孫又はクローン、並びにそれらの繁殖材料に関する。さらに、本発明は、褐変性が抑制されたレタスの製造方法、レタスにおける褐変性を判定する方法、及び褐変性が抑制されたレタスを育種する方法にも関し、より詳しくは以下の通りである。
(1) 配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応するプロリンが他のアミノ酸に変異しているレタスポリフェノールオキシダーゼをコードする、DNA。
(2) 褐変性が抑制されたレタスの製造方法であって、レタスポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入する工程を含む、方法。
(3) (1)に記載のDNAを有するレタスの細胞。
(4) (3)に記載の細胞を有するレタスの植物体。
(5) (4)に記載の植物体の子孫又はクローンである、植物体。
(6) (4)又は(5)に記載の植物体の繁殖材料。
(7) レタスにおける褐変性を判定する方法であって、
被検レタスが有する、ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸が、プロリンから他のアミノ酸への置換を伴うDNAの変異を検出する工程を含む、方法。
(8) 褐変性が抑制されたレタスを育種する方法であって、
(a)褐変性が抑制されているレタスの品種と任意の品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における褐変性を、(7)に記載の方法により判定する工程、及び
(c)褐変性が抑制されていると判定された個体を選抜する工程、を含む方法。
本発明によれば、ポリフェノールオキシダーゼの酵素活性が安定的に低下しており、損傷等を受けた際に褐変しにくいレタスを提供することが可能となる。
カットレタス(葉)における褐変の程度について、127位のプロリンを他のアミノ酸に置換したポリフェノールオキシダーゼを有するレタスを観察した結果を示す写真である。 カットレタス(葉)における褐変の程度について、野生型のレタスを観察した結果を示す写真である。
<レタスの褐変性を抑制するための、DNA及び薬剤>
後述の実施例において示されたように、ポリフェノールオキシダーゼの127位のプロリンを他のアミノ酸に置換することによって、該酵素の活性を抑制し、レタスの褐変性を抑制できることを見出した。
したがって、本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応するプロリンが他のアミノ酸であるレタスポリフェノールオキシダーゼをコードする、DNA(以下、「低褐変性型DNA」とも称する)を提供する。
本発明において「レタス」とは、キク科アキノゲシ属に属する植物(Lactuca Sativa)であり、ヘッドレタス(L.s.var.capitata)、立レタス(L.s.var.longifolia)、葉レタス(L.s.var.crispa)、茎レタス(L.s.var.angustana)等が含まれる。
レタスの「褐変性」とは、レタスの損傷部位等において、後述のポリフェノールオキシダーゼがフェノール性化合物を酸化し、ケトン性化合物が生じることにより、当該部位が褐色に変化(褐変)する性質を意味する。
「レタスポリフェノールオキシダーゼ」とは、レタスが有するフェノール性化合物中のヒドロキシ基を酸化する酵素であり、典型的には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質(配列番号:1に記載のヌクレオチド配列からなるDNAがコードするタンパク質)である。また、自然界においてヌクレオチド配列が変異することにより、タンパク質のアミノ酸配列の変化が生じ得ることは理解されたい。さらに、本発明にかかる「レタスポリフェノールオキシダーゼ」は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応するプロリン以外に、人工的に変異が導入されているものであってもよい。すなわち、本発明にかかる「レタスポリフェノールオキシダーゼ」には、「配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質」も含まれる。ここで「複数」とは、特に制限はないが、通常1〜1200個、好ましくは1〜60個、より好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜20個、特に好ましくは1〜10個(例えば、1〜8個、1〜4個、1〜2個)である。
「対応する部位」とは、ヌクレオチド及びアミノ酸配列解析ソフトウェア(GENETYX−MAC、Sequencher等)やBLAST(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を利用し、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と、他品種に由来するPPO等のアミノ酸配列とを整列させた際に、配列番号:2に記載のアミノ酸配列における127位と同列になる部位のことである。
本発明において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位における「他のアミノ酸」とは、ポリフェノールオキシダーゼの活性を抑制し、レタスの褐変性を抑制でき得る限り特に制限はないが、好ましくはヒスチジン、リジン、アルギニンであり、より好ましくはヒスチジンである。
本発明のDNAが、レタスの褐変性を抑制できるか否かは、例えば、後述の通り、本発明にかかるDNA変異を導入(配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応するプロリンを他のアミノ酸に置換)したレタス(変異体)を調製し、その葉を切断し、さらに予冷処理(例えば、15℃で暗所に4日間保存)し、その後、該DNA導入前の野生型における褐変の程度と比べて低いか否かを検定することにより判定することができる。
なお、褐変の程度の評価は、例えば、後述の実施例に記載の通り、肉眼観察によって行うことができる。また、後述の実施例に記載の通り、切断したレタスの葉を予冷処理し、その処理前後の葉からクロロフィル等の色素を抽出除去し、それら残渣について分光測色計にて測色し、予冷処理前後における差(色差)を褐変の程度として評価することもできる。分光測色方法による評価に関し、前記変異体における色差が前記野生型のそれと比べて低ければ(例えば、Welchのt検定等の統計解析において有意に低いことが認められれば)、本発明のDNAが、レタスの褐変性を抑制できると判定することができるが、前記変異体における色差が前記野生型のそれの50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。
また、褐変性はポリフェノールオキシダーゼの酵素活性に依存するものであるから、後述の実施例において示すような、ポリフェノールオキシダーゼ酵素活性測定法による分析において、前記変異体の酵素活性が前記野生型のそれと比べて低いか否かを検定することにより判定することができる。なお、ポリフェノールオキシダーゼ酵素活性に関し、前記変異体の酵素活性が前記野生型のそれの50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。また、「褐変性の抑制」には、褐変性及びポリフェノールオキシダーゼの酵素活性が野生型のそれらと比較して低いことのみならず、完全にそれらが失活していることも含まれる。
本発明の低褐変性型DNAは、天然のDNAに人為的に変異が導入されたDNAであってもよく、人工的に設計されたヌクレオチド配列からなるDNAであってもよく、また天然のDNAにおいて自然に変異が生じたDNAであってもよい。さらに、その形態について特に制限はなく、cDNAの他、ゲノムDNA、及び化学合成DNAが含まれる。これらDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、レタスからゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作製し、これを展開して、ポリフェノ―ルオキシダ―ゼ遺伝子のヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1に記載のヌクレオチド配列)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、ポリフェノ―ルオキシダ―ゼ遺伝子に特異的なプライマーを作製し、これを利用したPCRを行うことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、レタスから抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。そして、このように調製したDNAに、ポリフェノールオキシダーゼの127位のプロリンを他のアミノ酸に置換する変異を導入することは、当業者であれば、公知の部異特異的変異導入法を利用することで行うことができる。部異特異的変異導入法としては、例えば、Kunkel法(Kunkel,T.A.、Proc Natl Acad Sci USA、1985年、82巻、2号、488〜492ページ)、SOE(splicing−by−overlap−extention)−PCR法(Ho,S.N.,Hunt,H.D.,Horton,R.M.,Pullen,J.K.,and Pease,L.R.、Gene、1989年、77巻、51〜59ページ)が挙げられる。また、当業者であれば、予めポリフェノールオキシダーゼの127位のプロリンを他のアミノ酸に置換してあるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を人工的に設計し、該配列情報に基づき、自動核酸合成機を用いて、本発明のDNAを化学的に合成することもできる。
また、後述の通り、このようにして調製されたDNAを植物細胞内に導入することで、該細胞内のゲノム上のポリフェノールオキシダーゼ遺伝子座と、該DNAとの間で相同組換えが生じ、127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入することができる。この場合、当該DNAはポリフェノールオキシダーゼの全長をコードする必要はなく、導入する変異を中心としてポリフェノールオキシダーゼ遺伝子座と相同組換えが生じ得る長さの、該遺伝子座に相同なヌクレオチド配列を有していればよい。このようなDNAは、通常、導入する変異の両側には各々、500〜10000ヌクレオチド(好ましくは1000〜7000ヌクレオチド、より好ましくは2000〜5000ヌクレオチド、さらに好ましくは約3000ヌクレオチド(例えば、2500〜3500ヌクレオチド))からなる該遺伝子座に相同なヌクレオチド配列を有するものである。
本発明の低褐変性型DNAは、該DNAを含むDNA構築物の形態であってもよい。DNA構築物としては、例えば、ベクター、より具体的には、バイナリーベクター系のベクター、pSMA系のベクター、pUC系ベクター、又はCaMV、インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスベクターが挙げられる。また、DNA構築物には、上述の相同組換えが生じた細胞を選抜するためのマーカー遺伝子を含むものであってもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子が挙げられる。
また、本発明においては、前記低褐変性型DNAは、他の成分と混合して用いてもよい。他の成分としては特に制限はなく、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤が挙げられる。また、後述のアグロバクテリウムを介する方法を用いる場合においては、前記DNAが導入されたアグロバクテリウムを含有するものであってもよい。そして、このように他の成分と混合することにより、本発明の低褐変性型DNAを、レタスの褐変性を抑制するための薬剤として好適に用いることができる。
<褐変性が抑制されたレタスの製造方法>
後述の実施例において示す通り、炭素イオンビームを照射することにより、レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入することにより、褐変性が抑制されたレタスを得ることができた。
したがって、本発明は、褐変性が抑制されたレタスの製造方法であって、レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入する工程を含む、方法を提供するものである。
本発明の方法において導入される「変異」としては、レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸がプロリンから他のアミノ酸に置換させる変異であればよい。すなわち、当該部位のアミノ酸をコードするDNAが、プロリンをコードするコドン(CCT、CCC、CCA及びCCG)から他のアミノ酸をコードするコドンに変化する変異であればよく、好ましくは、ヒスチジンをコードするコドン(CAT及びCAC、より好ましくはCAT)に変化する変異である。
レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAへの変異の導入は、上述の通り、本発明の低褐変性型DNAをレタスの細胞に導入することによって行うことができる。すなわち、導入された該DNAと、該細胞内のゲノム上のポリフェノールオキシダーゼ遺伝子座との間で相同組換えが生じることにより、127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入することができる。DNAをレタスの細胞に導入する方法としては特に制限はなく、アグロバクテリウムを介する方法、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、パーティクルガン法等、当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
また、レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAへの変異の導入は、物理的変異導入法、化学的変異剤を用いる方法、トランスポゾン等をゲノムDNAに導入する方法、ジンクフィンガーヌクレアーゼやTALEN等のDNA二重鎖切断酵素を用いる方法によっても行うことができるが、これらに限定はされない。
物理的変異導入法としては、例えば、イオンビーム照射、X線照射、ガンマ線照射、電子線照射、中性子線照射が挙げられ(Hayashiら、Cyclotrons and Their Applications、2007年、第18回国際会議、237〜239ページ、及び、Kazamaら、Plant Biotechnology、2008年、25巻、113〜117ページ参照のこと)、特に限定はされない。変異導入効率が高く、また誘導する変異の数が1であることの頻度が高い(目的とする変異以外に付随する他の変異が生じにくい)という観点から、イオンビーム照射(例えば、炭素イオンビーム照射、ネオンイオンビーム照射、アルゴンイオンビーム照射)が好ましく、炭素イオンビーム照射がより好ましい。
化学的変異剤を用いる方法としては、例えば、化学変異剤によって種子等を処理する方法(Zwar及びChandler、Planta、1995年、197巻、39〜48ページ等 参照)が挙げられる。化学変異剤としては特に制限はないが、エチルメタンスルホート(EMS)、N−エチル−N−ニトロソウレア(ENU)、N−メチル−N−ニトロソウレア(NNU)、アジ化ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ヒドリキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトログアニジン(MNNG)、N−メチル−N’−ニトロソグアニジン(NTG)、O−メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、蟻酸及びヌクレオチド類似体が挙げられる。
トランスポゾン等をゲノムDNAに導入する方法としては、例えば、TOS17等のトランスポゾン、T−DNA等をレタスのゲノムDNAに挿入する方法が挙げられる(Kumarら、Trends Plant Sci.、2001年、6巻、3号、127〜134ページ、及び、Tamaraら、Trends in Plant Science、1999年、4巻、3号、90〜96ページ 参照)。
DNA二重鎖切断酵素を用いる方法とは、内因性の修復機序を刺激する、DNA二本鎖切断酵素を利用する方法のことであり、例えば、エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN(登録商標、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)、トランスポザーゼ、部位特異的リコンビナーゼが挙げられる。ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術については、Le Provostら、Trends in Biotechnology、2009年、28巻、3号。134〜141ページ、Duraiら、Nucleic Acids Research、2005年、33巻、18号、5978〜5990ページ、及び、Liuら,Biotechnology and Bioengineering、2010年、106巻、97〜105ページ 参照のこと。また、TALENに関する技術は、Millerら、Nature Biotechnology、2011年、29巻、2号、143〜148ページ、米国特許第8440431号明細書、米国特許第8440432号明細書、及び、米国特許第8450471号明細書 参照のこと。
特に、ZFNやTALENを用いて、レタスのゲノムDNAに変異を導入する場合、それらのDNA二本鎖切断酵素によってゲノムDNAが二重鎖切断を受けるゲノム塩基配列上の位置を適宜選択できることは当業者に知られている。また、これらDNA二本鎖切断酵素によってゲノムDNAが二本鎖切断を受けた後にゲノムDNAの再結合が生じるが、その際一定の確率で切断が起こった位置に塩基置換等が起こることも当業者に知られている。したがって、例えば、ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNA中にDNA二本鎖切断を生じさせるように設計されたDNA二本鎖切断酵素をレタスの細胞に導入することによって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入することができる。
以上の方法により変異が導入されたレタスについては、公知の方法により、レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて前記部位に変異が導入されていることを確認することができる。公知の方法としては、SNP、ヌクレオチド多型又はヌクレオチド変異を検出するための方法が挙げられ、より具体的には、PCRダイレクトシークエンシング法、dCAPS法、RFLP法、PCR−SSCP、ASOハイブリダイゼーション法、変性剤濃度勾配ゲル電気得移動法(DDGE),MALDI−TOF/MS法、ゲノムDNAマイクロアレイによる分析法が挙げられる。
また、変異が導入されていることを確認する他の方法として、TILLING(標的誘導型ゲノム特定位傷害、Targeting Induced Local Lesions IN Genomes)が挙げられる(Sladeら、Transgenic Res.、2005年、14巻、109〜115ページ、及び、Comaiら、Plant J.、2004年、37巻、778〜786ページ 参照)。
TILLING法では、ミスマッチ対認識酵素(CEL1、エンドヌクレアーゼ等)でヌクレオチド二重鎖において塩基対を形成していない変異部位を切断することにより、変異塩基の位置を同定することができる。具体的には、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異が導入された可能性があるレタス由来のヌクレオチドプールのDNAを鋳型として、変異を検出しようとする領域を特異的に増幅するプライマーセットを用いてPCRによる増幅を行う。次いで、得られた増幅産物を熱変性で一本鎖とした後、冷却して再度巻き戻させることで変異型遺伝子と野生型遺伝子との増幅DNA鎖間で形成されたヘテロ二重鎖を含む二本鎖DNAプールを調製し、これをミスマッチ対認識酵素で処理して変異部位を切断する。そして、前記増幅産物から切断部位に応じて異なる長さのDNA断片を生成させ、これを電気泳動することにより、増幅産物に加えて変異部位での切断で生じた異なる長さのDNA断片のバンドが検出される。さらに、変異を含むことが示されたレタスの系統から抽出したDNAについて変異部位を含むDNA断片を核酸増幅し、それについて塩基配列を決定・解析すれば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異が導入されたかどうかを調べることができる。
また、上述の方法により変異が導入されたレタスと野生型のレタスとを交配させ、戻し交配を行うことにより、前記部位以外のDNAに導入された変異を除去することもできる。
本発明において、レタスのポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおける、前記変異の導入は、上述の方法等に応じ、種々のレタス植物体、レタス種子又はレタス細胞に対して行うことができる。レタス細胞には、レタス由来の培養細胞の他、レタス植物体中の細胞も含まれる。さらに、種々の形態のレタス由来の細胞、例えば、プロトプラスト、葉の切片、懸濁培養細胞、カルス、未熟胚、花粉等が含まれる。
また、このようにして変異が導入されたレタスの細胞を再生させることにより、褐変性が抑制されたレタスの植物体を得ることができる。細胞からのレタス植物体の再生は、細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能であり、例えば、文献(T.Nishioら、Japan.J. Breed.、1988年、38巻、165〜171ページ、S.Enomotoら、Plant Cell Reports、1990年、9巻、6〜9ページ)に記載の方法が挙げられる。
さらに、このようにして、一旦、褐変性が抑制されたレタスの植物体が得られれば、該植物体から有性生殖又は無性生殖により子孫を得ることが可能である。さらに、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。
<レタスの細胞、植物体、子孫及びクローン、並びにそれらの繁殖材料>
上述の通り、本発明には、レタスのポリフェノールオキシダーゼにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位がプロリン以外のアミノ酸であるタンパク質をコードするDNAを有するレタスの細胞、当該細胞を有するレタスの植物体、該レタスの子孫及びクローン、並びに、それらの繁殖材料が含まれる。
また、本発明の細胞、植物体、子孫及びクローン、並びにそれらの繁殖材料は各々、本発明の低褐変性型DNAをヘテロで保持していてもよく、またホモで保持していてもよいが、褐変性の抑制をより強められ、より効率的に育種を進められるという観点から、ホモで保持していることが好ましい。
<レタスにおける褐変性を判定する方法>
後述の実施例において示す通り、レタスにおける褐変性と、ポリフェノールオキシダーゼにおける127位のプロリンから他のアミノ酸への置換を伴うDNAの変異との間に相関があることが明らかになった。
したがって、本発明は、レタスにおける褐変性を判定する方法であって、被検レタスが有する、ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸が、プロリンから他のアミノ酸への置換を伴うDNAの変異を検出する工程を含む、方法を提供する。
本発明の検出対象である「ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸が、プロリンから他のアミノ酸への置換を伴うDNAの変異」については、上述の通りである。また、かかる変異の検出も、上述の通り、SNP、ヌクレオチド多型又はヌクレオチド変異を検出するための公知の方法を利用して行うことができる。
そして、かかる方法において、ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸がコードするDNAが、プロリン以外のアミノ酸をコードしていることが検出されたならば、その被検レタスは野生型のレタスよりも褐変性が抑制されたレタス、すなわち低褐変性の形質を有するレタスであると判定することができる。
<褐変性が抑制されたレタスを育種する方法>
本発明は、上述の褐変性の判定方法を利用した、褐変性が抑制されたレタスを育種する方法をも提供する。すなわち、本発明は、褐変性が抑制されたレタスを育種する方法であって、
(a)褐変性が抑制されているレタスの品種と任意の品種とを交配させる工程、
(b)工程(a)における交配により得られた個体における褐変性を、上述の褐変性の判定方法により判定する工程、及び
(c)褐変性が抑制された個体であると判定された個体を選抜する工程、を含む方法をも提供する。
褐変性が抑制されたレタスの品種としては特に制限はないが、上述の<褐変性が抑制されたレタスの製造方法>により作製されたレタスが挙げられる。また、該品種と交配させる「任意の品種」としては、例えば、褐変性を抑制したい野生型のレタスが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明の育種方法を利用すれば、褐変性が抑制されたレタスの品種を、種子や幼植物の段階で選抜することが可能となり、当該形質を有する品種の育成を、短期間で行うことが可能となる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
低褐変性の形質を有するレタスを作製するため、褐変の原因であるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の活性を抑制するための変異を導入すべく、以下の通り、レタスに突然変異誘導処理を施し、PPO遺伝子に変異が導入されたものを選抜した。
先ず、レタス(品種:ラウンド)を、Nishioらの方法(Japan.J.Breed.,38:165〜171(1988))に沿って、処理することにより、レタス単細胞(以下、「レタスプロトプラスト」とも称する)を調製した。
次に、調製したレタスプロトプラストに、炭素イオンビーム(135MeV/核子、0.5〜5Gy、照射したときの線エネルギー付与:23KeV/μm)にて照射することにより、突然変異誘導処理を施した。その結果、培養可能なレタス細胞(以下、「カルス」とも称する)を、898個得た。
これらすべてのカルスに対して、標的遺伝子が一部欠損等した変異体を選抜する方法(以下、「TILLING法」とも称する)で選抜を行った。すなわち先ず、前記カルスから、常法に従ってゲノムDNAを抽出した。次に、調製したゲノムDNAを鋳型として、以下のPCR条件にてPPO遺伝子領域を増幅した。
滅菌済み蒸留水(SDW) 5.95μlと、EX−Taqバッファー 0.9μlと、dNTPs(2.5mM)0.7μlと、プライマー−L(10pmol/μl) 0.2μlと、プライマー−R(10pmol/μl) 0.2μlと、EX−Taq(タカラバイオ株式会社製、5U/μl) 0.05μlと、ゲノムDNA(20〜50ng/μl) 1μlとを混合して得られた計9μlの反応溶液を、94℃にて2分間加熱した後、94℃にて30秒、65℃にて30秒及び72℃で1分を30サイクル行い、さらに72℃にて5分間加熱した後、4℃にて静置した。なお、このPCRに用いたプライマーの配列は以下の通りである
プライマーL:GGCTTCTCTCGCCTTGTCTA(配列番号:5)
プライマーR:GGGAACCAGCTGAATCTTGA(配列番号:6)。
そして、このようにして得られたPCR産物の有無を1.5%アガロース電気泳動で確認した。
次に、Transgenomic社製 サーベイヤー(SURVEYOR、登録商標)遺伝子変異検出キットを使用して、前記PCR産物 6.0μlと、0.15M MgCl 0.6μlと、エンハンサー 0.25μlと、CelIヌクレアーゼ 0.25μlとを、42℃にて60分間反応させた。次いで、ストップソリューション 0.7μlを加えて、CelIヌクレアーゼによる該PCR産物におけるミスマッチ対の切断反応を停止させた。そして、このようにして得られた反応産物を2%SFRゲルの電気泳動に供し、PPO遺伝子領域における変異の有無を検出した。その結果、PPO遺伝子領域が変異したと考えられるカルス2個を得ることができた。
更に、これら2個のカルスから、Nishioらの方法(Japan.J. Breed.,38:165〜171(1988))によりレタス個体を誘導した。そして、これら再生させたレタス個体に関し、PPO酵素活性測定法を行った。すなわち先ず、酵素活性測定のためのサンプルを以下の通りに調製した。
結球開始期前(外葉発育期)のレタスにおいて、葉の長さ1cm以上で最も生長点に近い葉を1番目とした際に、3番目の葉からサンプリングチューブを用いて直径約1cmのリーフディスクを採取した。採取箇所は、葉先端部から約3cmの部分とした。次いで、採取したリーフディスクに0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)0.3mlを加え、市販の抽出用ペッスルを用いて葉を潰した後、前記緩衝液を0.9ml加え、20600g、4℃の条件下にて30分間、遠心分離を行った。このようにして得られた上澄み液を粗酵素液とした。そして、Bradford法により該粗酵素液のタンパク質量を定量して、0.025mg/mlになるように希釈し、調製した。
次に、このようにして調製した0.025mg/ml粗酵素液 150μlに基質(20mMカフェ酸 75μl)を加え、25℃にて1分間反応させた。次いで、この反応産物における波長420nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(TECAN社製、InfiniteM200pro)を用いて測定し、反応の前後における吸光度の増加を求め、さらに1分あたりの吸光度0.1の増加を1Uとし、PPO酵素活性を算出した。
この結果、炭素イオンビームを照射していない個体におけるPPO酵素活性は、43.0U/mgタンパク質(2個体の平均値)であった。一方、前記2カルスのうちの1のカルスから再生させて得られた個体(以下、「照射個体」とも称する)におけるPPO酵素活性は、18.9U/mgタンパク質(3個体の平均値)であった。このように、変異を導入する前のものと比較して、前記個体において、PPO酵素活性は半分以下に低下していることが明らかになった。
そして、PPO活性の低下が検出された前記照射個体から自殖種子を得て、その後代を前記TILLING法及びPPO酵素活性測定法で評価した。なお、照射個体後代のPPO酵素活性の測定は、サンプルとして、収穫適期に採取した結球葉の次の葉(つまり、最も若い外葉)を用い、さらに吸光度測定の対象とした粗酵素液の濃度を0.1mg/mlとした以外は、上記PPO酵素活性測定方法に沿って行った。
その結果、照射個体におけるPPO酵素活性は14.1U/mgタンパク質(2個体の平均値)であったが、該個体の後代(以下、「変異個体」とも称する)におけるPPO酵素活性は0.17U/mgタンパク質(2個体の平均値)であった。すなわち、このようにして、PPO活性がほとんどない個体を得ることができた。なお、この変異個体は、変異したPPO遺伝子が染色体で対になっているため、理論上PPO活性がほとんどないという形質は、後代でも安定すると考えられる。
次に、以下に示す方法にて、前記変異個体のレタス切断面における褐変の評価、並びに前記変異個体のPPO遺伝子領域の塩基配列を決定することを試みた。
(1)PPO酵素活性がほとんどないレタス切断面の褐色変化の程度の評価
前記変異個体及び野生型の個体に関し、カットレタスを調製し、一定期間が経過したそれらの切断面の褐色変化の程度を評価した。
先ず野性型のレタス個体において、結球葉で最も外側から10枚目までの葉で、先端から6割の部分を、ナショナル製SpeedCutterMK−K74を用いてカットレタスを調製した。また、変異個体については、結球しないため、野性型の外葉と同枚数を除去後、10枚目までの葉を供試し、前記同様にカットレタスを調製した。そして、調製したカットレタスを、ビニール袋(幅20cm×長さ30cm)、に入れ、室温にて3日間放置した。そして、レタスの切断面における褐色の程度を肉眼にて観察した。
その結果、図1及び2に示す通り、PPO酵素活性がほとんどない変異個体の切断面の褐色変化程度は、PPO遺伝子領域が変異していない野生型の個体(従来品種)より低褐変性を示した。
次に、PPO酵素活性がほとんどないレタス切断面の褐色変化を、分光測色法により分析した。すなわち先ず、前記肉眼観察の際と同様にカットレタスを調製した。次いで、調製したカットレタスの半分は、50ml容遠沈管に入れ、−20℃で保存した。残り半分を、プラントボックス(W60mm×D60mm×H95mm)に入れ、15℃の暗所にて4日間放置し、その後同じく遠沈管に入れ−20℃保存した。そして、このような保存処理を施したサンプルに99.5%エタノールを入れ、ホモジナイザーを用いてクロロフィル等を抽出した。遠心分離をして上澄みを除去し、さらに未使用のエタノールを添加し、クロロフィル等の色が認められなくなるまで繰り返し、粉体残渣を乾燥させた。そして、このようにして調製して得られた粉体の測色は、コニカミノルタ株式会社製分光測色計CM−5を用い、行った。測定タイプはシャーレ測定とし、測定径は3mmとした。
その結果、野生型のカットレタスにおける調製直後の粉体と4日放置後の粉体との色差(ΔE*ab)は、17.1(5個体平均)であった。一方、変異個体における色差は8.3(4個体平均)であり、t検定(Welchの方法)において、1%水準で有意差が認められた。
したがって、上記肉眼観察における結果同様に、PPO酵素活性がほとんどない変異個体の切断面の褐色変化の程度は、PPO遺伝子領域が変異していない野生型の個体(従来品種)より有意に抑制されていることが確認された。
(2)酵素活性がほとんどないPPO遺伝子領域の塩基配列の決定
酵素活性がほとんどない前記変異個体の葉から定法に従って、核DNAを調製し、ダイレクト シークエンシング法によりPPO遺伝子の塩基配列を決定した。その結果、PPO構造遺伝子の5’側最初の塩基であるアデニンを1番目とすると、380番目の塩基が、活性が正常な(変異していない)PPO構造遺伝子(配列番号:1に記載のヌクレオチド配列からなるDNA)では、シトシンであるのに対して、活性がほとんど認められないPPO構造遺伝子(配列番号:3に記載のヌクレオチド配列からなるDNA)は、アデニンであった。なお、PPOをコードする遺伝子においては、種々の作物においてイントロンがないという報告がされている(総説:村田ら、日本食品科学工学会誌、1998年、第45巻、第3号、177〜185ページ)。
したがって、PPOタンパク質において、最初のメチオニンを1位とすると127位のアミノ酸がプロリンから他のアミノ酸に置換されることによって、当該酵素の活性が著しく低下することが明らかになった。
以上説明したように、本発明によれば、レタスのポリフェノールオキシダーゼにおいて、127位のアミノ酸をプロリンから他のアミノ酸に置換させることによって、レタスの褐変性を抑制することができる。
したがって、本発明は、加工・業務用野菜等の製造過程において問題となる褐変を抑制することにおいて優れているため、外食・中食に供される加工・業務用野菜の提供において有用である。
配列番号:5及び6
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列

Claims (8)

  1. 配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応するプロリンが他のアミノ酸に変異しているレタスポリフェノールオキシダーゼをコードし、かつ当該他のアミノ酸がヒスチジンである、DNA。
  2. 褐変性が抑制されたレタスのスクリーニング方法であって、レタスポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位のアミノ酸をコードするDNAに変異を導入し、褐変性が抑制されたレタスを選抜する工程を含む、方法。
  3. 請求項1に記載のDNAを有するレタスの細胞。
  4. 請求項3に記載の細胞を有するレタスの植物体。
  5. 請求項4に記載の植物体の子孫又はクローンであり、かつ請求項1に記載のDNAを有する植物体。
  6. 請求項1に記載のDNAを有する、請求項4又は5に記載の植物体の繁殖材料。
  7. レタスにおける褐変性を判定する方法であって、
    被検レタスが有する、ポリフェノールオキシダーゼをコードするDNAにおいて、配列番号:2に記載のアミノ酸配列の127位又は該部位に対応する部位におけるプロリンからヒスチジンへの置換を伴うDNAの変異が、検出される場合に、前記被検レタスを野生型のレタスよりも褐変性が抑制されたレタスであると判定する工程を含む、方法。
  8. 褐変性が抑制されたレタスを育種する方法であって、
    (a)褐変性が抑制されているレタスの品種と任意の品種とを交配させる工程、
    (b)工程(a)における交配により得られた個体における褐変性を、請求項7に記載の方法により判定する工程、及び
    (c)褐変性が抑制されていると判定された個体を選抜する工程、を含む方法。
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