JP6518480B2 - 気泡塔型スラリー床反応装置 - Google Patents
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Description
また、下降領域を下降するスラリーの流速は、上昇領域を上昇するスラリーの流速より大きくなるため、流速の大きい下降するスラリーが、下降領域から上昇領域に、反応塔の底部に沿って流入する際に、上昇領域に対応する反応塔の底部に堆積する虞のある触媒粒子を撹拌する。それにより、反応塔の底部に触媒粒子が偏在することが抑制され、反応塔内全体に均一に触媒粒子が分散することになり、高いCO転化率を得ることが可能となる。
図1に示すように、FT合成は、FT合成装置14を用いて行われる。FT合成装置14は、圧縮機15、ヒータ16、反応器17、及び凝縮器18を備えている。
圧縮機15では、不純物を含まない合成ガス(H2、CO)を、約0.9MPaまで圧縮する。
そして、ヒータ16により、合成ガス(H2、CO)を、約280℃にまで加熱する。
こうして、高温・高圧状態となった合成ガス(H2、CO)は、反応器17に送られる。
尚、ヒータ16による加熱は反応器17での発熱反応が生じない起動時に用いられ、FT合成が始まるとヒータ16が切れる。
反応器17では、高温・高圧状態となった合成ガス(H2、CO)を、鉄やコバルト等の触媒粒子が分散した溶媒中に泡状にして通すことにより、FT合成反応を生起してガス状の炭化水素に変換する。
凝縮器18には、反応器17で生成されたガス状の合成炭化水素が送られる。ガス状の合成炭化水素は、凝縮器18で間接冷却されることにより凝縮され、液体燃料である液体状の合成炭化水素として回収される。同時に、未反応の合成ガス(H2、CO)やメタン、エタン等の軽質ガスが分離回収される。
尚、本発明による気泡塔型スラリー床反応装置17は、上述の反応器17として用いられる。本実施形態ではH2とCOを合成ガスとして軽油を生成することを目標として開発した反応器について説明する。
ガス噴出部25が、合成ガス供給部22に形成されており、合成ガスは、合成ガス供給部22のガス噴出部25を介して、スラリーに供給される。ガス噴出部25には、下方を向いたガス噴出口26が複数個設けられている。そして、ガス噴出口26から下方の反応塔21の底部に向けて、合成ガスは吹き込まれる。尚、ガス噴出口26が下方を向いているため、スラリー中の触媒粒子が沈降して、ガス噴出口26が閉塞することを抑制できる。また、底部に向いたガス噴出口26からの合成ガス流に起因するスラリーの撹拌効果により、反応塔21の底部に堆積あるいは偏在している触媒粒子を分散させることができる。
冷却管24には、冷却媒体が、外管24aの開放端側から外管24aと内管24bの隙間に導入される。導入された冷却媒体は、外管24aと内管24bの隙間を下方に移動しながら、FT合成の発熱反応により高温になっているスラリーから、外管24aを介して反応熱を吸収し除去する。その後、外管24aの閉鎖端にまで達した冷却媒体は、折り返して内管24bに導入され上方に向けて移動し、冷却管24から送出される。このように、外管24aは熱交換外管として、内管24bは冷却媒体送出管として夫々機能する。尚、冷却媒体としては、空気や水或いは水蒸気等が用いられ、冷却管24の外管24aの素材には、熱伝導率の大きい銅、ステンレス等を用いるのが好ましい。
また、断面積の違いにより下降領域を下降するスラリーの流速は、上昇領域を上昇するスラリーの流速より大きくなるため、流速の大きい下降するスラリーが、下降領域から上昇領域に、反応塔21の底部に沿って流入する際に、上昇領域に対応する反応塔21の底部に堆積する虞のある触媒粒子を撹拌する。それにより、反応塔21の底部に触媒粒子が偏在することが抑制され、反応塔21内全体に均一に触媒粒子が分散することになり、高いCO転化率を得ることが可能となる。ここで、CO転化率とは、反応器17へ供給される合成ガス中のCOのモル数と反応器17のFT合成で利用されたCOのモル数の比である。
尚、スラリーが上昇する上昇流の流速は、合成ガスの供給量により調整することができ、5cm/秒程度が好ましい。
スラリーの上昇流を外側領域31に発生させるために、合成ガスは反応塔21の底部であって外側領域31に供給されている。そのため、内側領域32と比較して、外側領域31のスラリー中でのFT合成反応の方が、活発に行われることになる。そして、それに伴い、反応による発熱量も外側領域31の方が多くなる。
しかし、外側領域31を上昇するスラリーの方が、内側領域32を下降するスラリーより、冷却管24と接触する面積が大きくなっているため、反応熱を効率よく除去することができ、それにより、反応が安定し、高いCO転化率を得ることができるようになっている。
また、合成ガスは、上昇領域に対応する領域に供給されるため、上昇領域に対応する領域にあるスラリーと合成ガスとは、エアリフト効果により上昇しながら混合し合う。その一方で、ガス噴出口26から吹き込まれる合成ガスの一部を、下降領域にあるスラリー中に冷却管24を下方から回り込むようにして補給する目的で、冷却管24の下端をガス噴出口26の上方の近い位置に配置するようにしてもよい。
図3(a),(b)に示すように、反応塔21の内部に、筒状を形成する第1の冷却管群27を複数形成し、各筒状で区画された外側領域31を区画する外側領域区画冷却管群としての第2の冷却管群28が反応塔21の軸心に沿う姿勢で所定間隔を隔て配設されるようにしてもよい。図3(a)では第1の冷却管群27が4つ形成され、外側領域21が第2の冷却管群28により4つに等分形成されている。図3(b)では第1の冷却管群27が5つ形成され、外側領域21が第2の冷却管群28で4つに分割されている。何れの態様でも、より冷却効果を高めるために、反応塔21内周側にさらに冷却管28Aを設けてもよい。
また、外側領域31は、第1の冷却管群27に加えて、第2の冷却管群28によっても冷却されることになるため、さらに効率よく反応熱を除去することができ、それにより、反応がいっそう安定し、より高いCO転化率が得られる可能性がある。
例えば、図4(a)に示すように、5本の冷却管24で筒状を形成してもよい。また、冷却管24同士の間隙を邪魔板29aで部分的に接続するようにしてもよい。部分的に接続された邪魔板29aは、冷却管24同士の間隙を規制する規制部材として設けられている。この規制部材は筒状を維持する補充部材としての役割を持つ。
また、図4(b)に示すように、冷却管24同士の間隙に邪魔管29bを挿入してもよい。
上昇領域あるいは下降領域となる外側領域31と内側領域32とを領域区画することは、筒状を形成するように所定間隔を隔てて冷却管24を配設するだけでなく、筒状を形成する冷却管24同士の間隙を規制する規制部材を設けることによっても実現でき、所定間隔に限定されずに冷却管の配置が可能になり、装置設計の自由度が増すことになる。
実験に用いた装置は、図2(a),(b)に示した気泡塔型スラリー床反応装置17である。
合成ガスは、H2/CO=1で、ガス流量4m3N/hで供給した。溶媒として用いた液体炭化水素は、ポリアルファオレフィンであった。触媒は、鉄系のものを使用した。触媒量Wに対するガス流量Fの指標を示すW/Fはおおむね10とした。冷却管24同士の間隔は、10mmとした。反応温度を280℃、反応圧力を0.9MPaに夫々調整し、FT合成の実験を行った。
実験の結果、得られた合成炭化水素は軽油であり、FT合成におけるCO転化率は、96〜98%であった。
15:圧縮機
16:ヒータ
17:反応器(気泡塔型スラリー床反応装置)
18:凝縮器
21:反応塔
22:合成ガス供給部
23:ガス排出部
24:冷却管(冷却部材)
24a:外管
24b:内管
25:ガス噴出部
26:ガス噴出口
27:第1の冷却管群
28:第2の冷却管群
29a:邪魔板(規制部材)
29b:邪魔管(規制部材)
31:外側領域
32:内側領域
Claims (6)
- 液体炭化水素中に固体の触媒粒子を懸濁させたスラリーを収容する反応塔と、
前記反応塔の下部に配置され合成ガスを供給する合成ガス供給部と、
前記反応塔の上部に配置され合成ガスから生成されたガス状炭化水素を排出するガス排出部と、
前記反応塔の内部に配設された複数の冷却部材と、
を備えている気泡塔型スラリー床反応装置であって、
前記冷却部材が、前記反応塔の軸心に沿う姿勢で、平面視で筒状の空間となる内側領域とその外側領域とを区画するように所定間隔を隔てて環状に配設された複数本の冷却管で構成され、前記スラリーが主に上昇する上昇領域が前記外側領域に形成され、上昇したスラリーが主に下降する下降領域が前記内側領域に形成されている気泡塔型スラリー床反応装置。 - 前記上昇領域と前記下降領域を区画形成する冷却管群が前記反応塔の内部に分散して複数配置されている請求項1記載の気泡塔型スラリー床反応装置。
- 前記上昇領域と前記下降領域を区画形成する冷却管群が前記反応塔の内部に複数配置され、各冷却管群で区画された前記外側領域を区画するように、前記反応塔の軸心に沿う姿勢で所定間隔を隔て配設された外側領域区画冷却管群を備えている請求項1記載の気泡塔型スラリー床反応装置。
- 前記冷却管群より下方に前記合成ガス供給部が配置され、前記上昇領域に対応する領域に合成ガスが供給されるように前記合成ガス供給部にガス噴出部が形成されている請求項1から3の何れかに記載の気泡塔型スラリー床反応装置。
- 前記上昇領域の断面積が前記下降領域の断面積よりも大きくなるように構成されている請求項1から4の何れかに記載の気泡塔型スラリー床反応装置。
- 前記上昇領域と前記下降領域を区画形成する冷却管群を構成する冷却管同士の上下方向に形成される間隙を部分的に消失させる板状部材または管状部材が設けられている請求項1から5の何れかに記載の気泡塔型スラリー床反応装置。
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