JP6512757B2 - 被検物質の定量方法及びそのための定量デバイス - Google Patents

被検物質の定量方法及びそのための定量デバイス Download PDF

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Description

本発明は、免疫測定等に適用することができる、被検物質の定量を可算個レベルで実現する超高感度分析方法及びそれに用いられる定量デバイスに関する。
従来より、生体内に存在する様々な物質や、細菌やウイルス等の病原体を免疫測定により定量することが、各種疾病の診断等のために広く用いられている。免疫測定法として、固相に第1抗体を固相化し、これと被検試料中の抗原とを抗原抗体反応させて抗原を第1抗体に結合させ、洗浄後、この抗原と抗原抗体反応する、酵素標識された第2の抗体とを反応させ、洗浄後、標識酵素の酵素反応を利用して発色させ、発色の程度を測定する、酵素免疫測定法(Enzyme-linked Immunosorbent Assay, ELISA)と呼ばれる方法が広く用いられている。ELISAに用いられる固相としては、マイクロプレートのウェルやビーズ等が広く用いられている。しかしながら、マイクロプレートやビーズ等を用いた従来のELISAでは、多量の被検試料が必要であり、1個の細胞が持つ被検物質量を測定したり、被検物質を可算個レベルで定量したりすることはできない。また、抗原抗体反応に要する反応時間も、通常、数十分から数時間程度と長い。
一方、基板上に設けた微細な流路内で、様々な化学反応を行うことが最近広く研究されている。このような、マイクロスケールの微細空間は、混合・反応時間の短縮化、試料・試薬量の大幅な低減、小型デバイス化などを実現するものとして、診断・分析などの分野での利用が期待されている。例えば、数センチメートル角のガラス基板(マイクロチップ)上に、深さが数百μm以下の溝からなるマイクロチャネル(マイクロ流路)を形成して、別の基板と接合することでこのマイクロチャネルに液体を漏れ無く流すことを可能にする。また、チャネル内面に生体物質や触媒、電極などの機能性材料を部分的に修飾することで、所望の機能を付与してさまざまな化学システムを集積化することが提案され、実用化されている。このマイクロチャネルを構成する基板材料としては、高い強度、耐溶剤性、検出のための光学的透明性を有するガラス材料が望まれる。しかし、後述するようにガラスは基板同士の接合に高温条件(石英ガラスでは1000℃以上)を必要とするため、機能を付与するために修飾した生体物質や触媒、電極が熱損傷にとどまらず全て焼失してしまう。そのため、従来一方の基板には接合しやすいエラストマーなど別の基板が用いられて、ガラス基板のみでチャネルを構成することが困難であった。
本願発明者らは、先に、酸素プラズマ照射と四フッ化メタンを用いて、ガラス基板同士を100℃以下の低温で堅固に接合できることを見出し、この技術を用いて、2枚のガラス基板の接合面に微細な流路を形成した機能性デバイスを発明し、特許出願した(特許文献1)。しかしながら、特許文献1には、被検物質を高感度、好ましくは可算個レベルで測定する具体的な方法は記載されていない。
WO 2014/051054 A1
本発明の目的は、短時間で、被検物質を高感度、好ましくは可算個レベルで定量可能な新規な定量方法及びそれに用いられる定量デバイスを提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、基板に形成する微細な流路のサイズや、抗体等の特異結合物質を固定化する領域の長さを最適化すると共に、流路に流通させる被検試料の流速を、被検物質の拡散係数に応じた特定の流速で流通させることにより、被検物質を可算個レベルで定量可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、第1の基板と、該第1の基板と接合される第2の基板と、該第1及び第2の基板の接合面に形成され、該第1及び第2の基板の外部に連通する流路と、該流路の一部領域であって、被検物質に特異的に結合する第1の特異結合物質が固定化された特異結合物質固定化領域とを具備し、前記流路の高さが10nm〜10μm、前記特異結合物質固定化領域の長さが1μm〜10cmである、試料中の被検物質の定量デバイスの前記流路に前記試料を流通させて該試料中の前記被検物質を、前記第1の特異結合物質に結合させる工程と、
前記特異結合物質固定化領域を洗浄後、前記被検物質に特異的に結合する、標識された第2の特異結合物質を前記流路に流通させて前記第1の特異結合物質に結合した被検物質と第2の特異結合物質とを結合させる工程と、
前記特異結合物質固定化領域を洗浄後、被検物質に結合した標識を定量する工程とを含み、前記試料の流速が、下記の式[I]
5 ≦ (2Dτ) 1/2 /d [I]
(式中、Dは被検物質の拡散係数(m 2 /s)、τは特異結合物質固定化領域上に被検物質の分子が滞在する平均時間(s)、dは流路の深さ(m))
を満足させる流速である、試料中の被検物質の定量方法
を提供する。
本発明の方法によれば、極めて微量の被検試料を用い、数秒以内という短時間で、被検物質を特異結合物質固定化領域に確実に捕捉することができ、超高感度に、好ましい態様では、可算個レベルで定量することが可能である。したがって、本発明の方法によれば、従来の免疫測定等に比較して、測定感度を桁違いに高めることができ、また、測定に要する時間や被検試料の量もピコリットル以下(フェムトリットルからアットリットル)に大幅に少なくすることができる。微量化についてはピコリットルレベルの試料量である単一細胞の分析に非常に適していると考えられる。
下記実施例1で行った、ガラス基板上に抗体を選択的に固定化する方法を模式的に説明する図である。 下記実施例1で行った免疫測定法を模式的に説明する図である。 下記実施例1で行った方法に用いたデバイスの写真(a)、VUV照射時間と水の接触角の関係を示す図(b)及び照射時間と結合エネルギーの関係(c)を示す図である。 下記実施例1で得られた、拡張ナノ流路中で、蛍光標識抗原により可視化された、分子捕捉領域の蛍光像及び長手方向の強度曲線(a)及び捕捉領域及び非捕捉領域における、タンパク質吸着に対するPEGの効果を示す図(b)である。 下記実施例1で得られた、結合抗原量の経時変化を抗原濃度別に示す図(a)及び導入した抗原分子の数と捕捉速度の関係を示す図(b)である。黒丸はPBSについての結果、白丸は10倍希釈ウシ血清についての結果を示す。 下記実施例1で行った強度検量実験を模式的に示す図(a)、抗原濃度と蛍光強度の関係を示す検量線(b)、導入した抗原分子と捕捉された抗原分子の数の経時変化を示す図(c)(抗原濃度は7.6nM)、導入及び捕捉された分子数に基づき算出された捕捉効率の経時変化を示す図(d)である。 下記実施例2で行った、サンドイッチELISAの方法を模式的に示す図であり、(a)は試料液注入後の反応を模式的に示し、(b)は標識の酵素反応を模式的に示す。下のグラフは、(a)二示す4分子の抗原が捕捉された場合の、TLMシグナルの経時変化を模式的に示す図である。 下記実施例2で行った、サンドイッチELISAの結果得られたTLMシグナルの経時変化を、導入した抗原分子数ごとに示す図である。
本発明の方法に用いられる定量デバイスは、第1の基板と、該第1の基板と接合される第2の基板と、該第1及び第2の基板の接合面に形成され、該第1及び第2の基板の外部に接続される流路を具備する。第1の基板及び第2の基板は、高い強度、耐溶剤性、検出のための光学的透明性の観点から、ガラス基板であることが好ましい。ガラス基板としては、例えば、広く用いられているスライドガラスや、従来から用いられているマイクロ流路チップのガラス基板等を利用することができるが、これに限定されるものではない。ガラス基板同士は、本願発明者らが先に発明した、酸素プラズマ照射と四フッ化メタンを用いる(特許文献1)ことにより低温で堅固に接合させることができるが(下記実施例参照)、この方法に限定されず事前に修飾した化学物質の機能を保持できる接合方法であれば広く用いることができる。なお、流路は、第1及び第2の基板の接合面に形成されるが、これは、(1)流路を第1の基板の表面に形成し、表面が平滑な第2の基板と接合する、(2)流路を第2の基板の表面に形成し、表面が平滑な第1の基板と接合する、又は(3)流路を第1及び第2の基板の両者の表面の対応する位置にそれぞれ形成し、両者の基板を接合して、一本の流路がそれらの接合面に形成されるようにしてもよい。流路は、下記実施例に具体的に記載するように1本のみであってもよいが、特許文献1に記載されるとおり、複数(通常、2本〜数百本程度)の流路を形成してもよい。
本発明の方法において、流路の高さ(深さ)が重要であり、10nm〜10μm、好ましくは10nm〜1000nm、さらに好ましくは、20nm〜400nm程度である。この時、下限10nmはガラスに囲まれた水溶液において、液体から固体になる境界の目安を示しており、液体や壁面の材質にも依存する。なお、流路の高さ(深さ)が1000nm以下の流路を、本明細書において「拡張ナノ流路」と呼ぶことがある。また、流路の高さが1000nmを超える流路を本明細書において「マイクロ流路」と呼ぶことがある。このような高さの流路、好ましくは拡張ナノ流路に、後述する式[I]を満足する条件で試料を流通させれば、極めて高感度に被検物質を測定することが可能になる。また、従来10分以上かかっていた反応時間を数秒で終了することや、単一細胞体積ピコリットル以下の試料量で測定できるなど、非常に大きな効果が得られることもわかった。流路の幅は、特に限定されないが、微量の試料で測定することを可能とし、抗体等の特異結合物質の量を節約する観点から、通常、10nm〜100μmであり、好ましくは1μm〜10μm程度である。また、流路の長さは特に限定されず、通常、10μm〜100mm程度である。流路は基板の外部に連通している。流路が拡張ナノ流路の場合には、後述のように、好ましくはマイクロ流路を介して基板外部に連通している。
流路の一部領域には、被検物質に特異的に結合する第1の特異結合物質が固定化され、「特異結合物質固定化領域」を形成している。ここで、特異結合物質は、試料中の被検物質と特異的に結合する物質であり、例えば、被検物質が抗原の場合には、該抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片、被検物質が抗体の場合には、該抗体と抗原抗体反応する抗原が挙げられる。もっとも、本発明の方法は、免疫測定に限定されるものではなく、例えば、リガンド又はレセプター、DNA等の核酸を特異結合物質として固定化し、リガンド−レセプター間の特異結合や、核酸の相補鎖同士の結合等を利用して、リガンド、レセプター、核酸等を定量することも可能である。
「特異結合物質固定化領域」の長さは、高感度な定量を短時間で達成する観点から、1μm〜10cm、好ましくは1μm〜1000μm、さらに好ましくは、50μm〜300μm程度である。なお、流路、特に拡張ナノ流路の一部領域のみに第1の特異結合物質を固定化する好ましい方法は、公知であり(特許文献1)、下記実施例にも具体的に記載されている。すなわち、基板同士を接合する前に、拡張ナノ流路を形成した基板の表面の全面にAPTES(アミノプロピルトリエトキシシラン:シランカップリング剤)をコーティングし、フォトマスクを用いて、特異結合物質固定化領域以外の領域にコーティングされたAPTESに真空紫外線光を照射してAPTESを選択的に除去し、特異結合物質固定化領域のアミノ基を利用して第1の特異結合物質を共有結合させることができる。もっとも、第1の特異結合物質を固定化する方法は、これに限定されるものではなく、基板同士を接合する前に、従来から広く用いられている物理吸着を行うことやコンタクトプリンティング法により行う等によっても可能である。第1の特異結合物質を固定化後、非特異吸着を防止するために、流路の全体を、ポリエチレングリコール(PEG)や、市販のブロッキング剤などによりブロッキング処理することが好ましい。
流路が拡張ナノ流路である場合、定量デバイスには、流路として、上記した拡張ナノ流路のみが形成されていてもよいが、試料液を注入したり、排出したりする操作を容易にするために、拡張ナノ流路に、深さや幅がより大きなマイクロ流路が接続されていることが好ましい(下記実施例参照、特許文献1)。マイクロ流路のサイズは、特に限定されないが、通常、深さが1μm〜1000μm程度、幅が1μm〜1000μm程度である。
本発明の方法では、上記定量デバイスの流路に試料を流通させて該試料中の被検物質を、前記第1の特異結合物質に結合させる。流路が拡張ナノ流路であり、上記したマイクロ流路が存在する場合には、マイクロ流路に試料液を注入し、マイクロ流路に接続される拡張ナノ流路に試料を流通させる。この際、下記の式[I]
5 ≦ (2Dτ)1/2/d [I]
(式中、Dは被検物質の拡散係数(m2/s)、τは特異結合物質固定化領域上に被検物質の分子が滞在する平均時間(s)、dは流路の深さ(m))
が満足される流速で試料を流通させることが好ましい。Dの拡散係数(m2/s)自体は、当業者にとって周知であり、該デバイスが用いる温度に依存する値である。被検物質のDは、濃度勾配を利用した従来の周知の拡散係数の測定等により測定することができる。また、文献(Small, 8(8),1237-1242(2012))に掲載されているように、拡張ナノ空間やマイクロ空間で直接測定してもよい。特定の試料に含まれる被検物質を、特定の定量デバイスで定量する場合、D及びdは定数となるので、変数はτのみであり、τは、流路を流通する試料の平均流速と特異結合物質固定化領域の長さから直ちに算出可能であるので、特定の試料に含まれる被検物質を、特定の定量デバイスで定量する場合、上記式[I]は、試料の流速や流量を適切に選択することにより達成することができる。試料の流速や流量は、マイクロ流路チップの分野で常用されている定量ポンプを用いて試料を注入することにより容易に調節可能である。なお、この工程の反応温度は、被検物質と第1の特異結合物質との反応に適した温度であり、例えば、抗原抗体反応の場合や、レセプターとリガンドの反応の場合、通常、室温〜37℃であり、核酸相補鎖間の反応の場合には、特異的なハイブリダイゼーションを達成するのに適した温度(例えば、50℃〜60℃)である。
なお、上記式[I]は、つぎのようにして導かれた。すなわち、鋭意検討の結果、表面への目的分子の捕捉は、目的分子と壁面が単位時間あたりの衝突回数に依存すると考えた。このデバイスでは、分子が特異結合物質固定化領域を通過する場合にどの程度特異結合物質と衝突できるかであると考えられる。この時、従来のブラウン運動の理論から、通過時間τあたりの目的分子の平均移動距離は(2Dτ)1/2で与えられる。すなわち、この平均移動距離と流路深さの比(2Dτ)1/2/dが衝突回数を決めるファクターであると考えられる。従来、どの程度の衝突回数があれば確実に目的分子を捕捉できるか未知であったが下記のように本実施例から捕捉効率がこのファクターに依存することを見出した。
上記式[I]の右辺の値は、10以上であることが好ましく、さらには30以上であることが好ましい。この値が30以上であれば、被検物質の分子は、ほぼ100%が第1の特異結合物質に結合する。なお、上記式[I]の右辺の値が5の場合には捕捉率が数%になることを確認しており、この程度であれば、被検物質の定量は可能である。なお、下記実施例1では、Dが40μm2/s、τが1.8秒、dが200nmであり、単位を上記の通りに修正して計算すると、式[I]の右辺は60になる。また、下記実施例2では、Dが40μm2/s、τが10秒、dが800nmであり、単位を上記の通りに修正して計算すると、式[I]の右辺は35になる。右辺の値の上限は特に限定されないが、測定を迅速に行う観点また微量試料の測定を行う観点から、通常、1000以下であり、好ましくは100以下である。また、試料中の被検物質の濃度は被検物質の定量が可能な範囲であれば特に限定されないが、好ましい態様では、0.1pM〜10pM程度の低濃度でも定量可能である。
次に、特異結合物質固定化領域を緩衝液等で洗浄後、被検物質に特異的に結合する、標識された第2の特異結合物質を前記流路に流通させて前記第1の特異結合物質に結合した被検物質と第2の特異結合物質とを結合させる。ここで、第2の特異結合物質は、被検物質が第1の特異結合物質と結合した状態で、被検物質と特異的に結合する物質であり、被検物質が抗原の場合には、該抗原と抗原抗体反応する抗体又はその抗原結合性断片、被検物質が抗体の場合には、該抗体と抗原抗体反応する抗原や抗体(標識されていない場合は、さらに標識された別の抗体を反応させる)、被検物質が核酸の場合には、第1の特異結合性物質(核酸)とハイブリダイズしていない一本鎖領域に相補的な核酸等やこれら拡散を認識する抗体(標識されていない場合は、さらに標識された別の抗体を反応させる)などが挙げられる。
第2の特異結合物質を反応させる際の流速条件としては、好ましくは、第1の特異結合物質と結合させる条件と同等か、低流速であることが好ましい。反応温度は、被検物質と第1の特異結合物質との反応と同様、被検物質と第2の特異結合物質との反応に適した温度である。
標識としては、従来からサンドイッチ免疫測定に用いられている周知の標識を用いることができ、酵素標識、蛍光標識、化学発光標識などが挙げられる。これらのうち、酵素標識及び蛍光標識は、容易に高感度な定量が可能である(下記実施例参照)ので好ましい。特に、基質と反応して発色する酵素を標識として用いると、発色した物質を微分干渉熱レンズ顕微鏡を用いて定量することが可能であり、被検物質を可算個単位で定量することが可能になるので、測定感度を著しく高めることができ好ましい。基質と反応して発色する酵素としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)や、アルカリフォスファターゼ(ALP)等の、酵素反応により発色する、従来からELISAに常用されている酵素を用いることができる。酵素標識の方法自体は、周知である。これらのうち、HRPを標識酵素とし、3,3',5,5'-テトラメチルベンチジン(TMB)を基質として用いた場合には、酵素のターンオーバー数(1秒間当りに何個の分子を酵素反応させるか)が大きい(6000回転/s程度)ことが実験からわかり、可算個レベルの超高感度な定量が可能となり、好ましい。
次に、特異結合物質固定化領域を緩衝液等で洗浄後、第2の特異結合物質を介して被検物質に結合した標識を定量する。標識の定量自体は、免疫測定分野において周知の方法により行うことができる。その基質と反応して発色する酵素を標識とする場合、標識酵素の基質液を流通させ、酵素をその基質と酵素反応させて発色させる。この際、酵素反応は、試料の流通を停止した状態で行うことが測定感度及び再現性の観点から好ましい。停止時間は、上記数式[I]を満足するように適宜設定されるが、通常、15秒〜4分程度、好ましくは、30秒〜2分程度でよい。反応温度等の他の条件は、周知のELISAと同様でよい。
次に、酵素反応により基質から生成される、発色した物質を微分干渉熱レンズ顕微鏡(DIC-TLM)で定量する。DIC-TLM自体は公知である(文献:Analytical Chemistry, 81, 9802-9806 (2009))。拡張ナノ流路などの微小空間での微分干渉熱レンズ顕微鏡による定量では、前記特異結合物質固定化領域で測定を行うと信号値が大きく変化して、定量が困難であることがわかった。そこで、特異結合物質固定化領域の下流の領域で行うことが、定量の再現性の観点から好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
1.1.抗体パターニング法
熱接合の過程で機能性分子が熱に伴い損傷するのを防ぐため低温接合を利用した。この方法により、フッ素を含む酸素プラズマ表面活性化による25〜100℃でのガラス−ガラス接合が可能となる。しかしながら、この酸素プラズマ表面活性化プロセスは、官能基や抗体等の表面修飾分子を損傷する。ここでは、抗体を固定化するための官能基をパターニングし、接合させるガラス表面を活性化するため、高い光子エネルギー(λ=172nm)による強い酸化効果を有する真空紫外線(VUV)光を使用した。
図1は、拡張ナノ流路における抗体パターニング操作の概略図を示す。抗体を固定化する官能基を導入するため、石英ガラス基板(第1の基板)の表面全体を、気相中においてアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)で修飾し、均一なAPTES層を形成した。クロムフォトマスクを介して VUV光を照射すると、高エネルギーのVUV光を吸収する酸素ガス分子から発生した反応性酸素種がAPTESを酸化的に分解する。このガラス表面は超親水性となり、APTESの分解後に活性化されるため、高圧流通系を用いるナノ流体制御に重大な意味をもつ強いガラス−ガラス接合を達成可能である。抗体固定化領域の大きさと位置を設計し調節するため、フォトマスクを用いて 基板エリアの一部をVUV光照射からマスキングすることにより、部分的に修飾されたAPTES層を形成した。VUV光を使用する利点は、パターン形成と表面活性化を同時に達成可能できる点である。
次いで、APTESをパターニングした基板(第1の基板)を、マイクロ流路及びナノ流路を含む上部ガラス基板(第2の基板)と接触させ、この基板をフッ素含有酸素プラズマにより活性化した。その後、APTESパターンとナノ流路を直交するように配列させた。各ナノ流路の幅、深さ及び長さは、それぞれ3.3μm、200nm、及び2mmであり、十分な分析用データを得るために、50本のナノ流路を平行に作製した。基板を5000Nの力で比較的低温の100℃にて2時間加圧することにより接合させた。ナノ流路表面に非特異的タンパク質が吸着する可能性を低減するため、物理吸着した場合には他の修飾表面上へのタンパク質吸着を有意に低減させることが示されたトリメトシキシラン−ポリ(エチレングリコール)(PEG)で表面を化学修飾した。接合後、流路表面の露出シリカ領域とAPTES領域をシラン化PEGで修飾した。下記2.3節に詳述するように、この修飾は抗体の表面密度に大きくは影響しなかったが、APTES領域をPEG修飾から完全には遮蔽しなかったため、APTES領域が部分的に修飾された。APTES分子のアミノ基と抗体をグルタルアルデヒドを用いて架橋することにより、捕捉抗体を化学的に固定化した。残った反応性基をエタノールアミンでブロックした。基板の接合と抗体パターニングのための化学修飾に関する実験詳細の全てを実験の部に記載する。
1.2.ナノ流体制御のための耐圧性能評価
ナノ流体用のイムノアッセイデバイスは、液体体積と液体交換の調節により標的分子を導入し捕捉するために、圧力駆動型の流体制御を要する。これにより、免疫化学的反応体を他の分子から適切に分離することが可能となる。本目的のための実験装置の概略図を図2に示す。前述のように、液流は圧力駆動型の流通系により制御した。バイアルに含まれた液体の流れをコンプレッサーに接続した圧力制御装置により調節した空気圧により導入した。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製のキャピラリーをマイクロ流路(幅500μm×深さ6μm)の入口と出口に接続した。マイクロ流路とナノ流路の溶液を迅速に交換するために、マイクロ流路の両端を貫通孔を通して外部と接続した。この溶液を、マイクロ流路の一方の入口に圧力をかけることによりナノ流路に導入した。次いで、提案方法を用いて作製されたデバイスが漏出なく圧力駆動型の流体制御を可能とするか否かを検討した。
作製したデバイス(図3(a))は空隙や縞のない均一な接合を示した。VUV光照射で達成された表面活性化の程度を調べることにより耐圧性能を評価し、水の接触角を測定することによりガラス−ガラス接合エネルギーに対するその効果を評価した。図3(b)に示されるように、VUV光により発生した活性酸素種によりAPTES分子が分解するため、VUV光の照射時間tが増えるにつれて基板上の水の接触角が小さくなる。APTES表面は、既に報告された結果と同様に初期にはわずかに疎水性であり、70°以下の接触角を示した。t=10分になるまでには、その表面は5°未満の接触角を示す超親水性となり、表面は完全に活性化された。この表面活性化の程度はガラス−ガラス接合エネルギーに強く影響した。
接合エネルギーの測定結果を図3(c)に示す。接合エネルギーは、接合強度の評価に広く使用される標準方法である亀裂開口試験を用いて測定した。接合エネルギーの測定に加え、フルオレセイン溶液の導入後の観察により漏出を評価した。これらの試験結果は、表面が活性化される程、接合エネルギーが高くなることを示した。t=0分(即ち、APTES修飾されたガラス表面とプラズマ励起されたガラス表面の間の接合)では、接合エネルギーは0.16J/mであり、50kPa未満の圧力で漏出が観察された。t=12分では、接合エネルギーは0.89J/mであり、2MPaを超える圧力でも漏出は観察されなかった。照射により得られた強い接合は親水性活性表面上の高いシラノール基密度に起因する。典型的なサイズ寸法(幅及び深さ10nm、長さ1mm以下)のナノ流路に、fL/秒の速度で流体を流すのに必要な圧力は数百kPaのオーダーであるため、このデバイスは圧力駆動流における漏出に強く、イムノアッセイの実験で使用できると結論できた。
1.3.フェムトリットル量の反応空間の立証
フェムトリットル量の反応空間を構築するためには、デバイス表面を精密に設計する必要がある。拡張ナノ流路の表面積/体積比が大きいため、標的分子の非特異的吸着は試料の著しい損失をもたらし、その結果定量分析を妨げる場合がある。一般にタンパク質は露出したシリカ表面上に不可逆的に吸着し、捕捉抗体と標的抗原の著しい非特異的吸着をもたらす。従って、非特異的吸着を低減するために、シラノール基にシラン化PEGを直接結合させる方法を選択する。設計通りに分子捕捉領域(即ち、抗体固定化領域)(特異結合物質固定化領域)が形成されたことを立証するため、抗原過剰条件下で蛍光標識抗原を結合させて固定化抗体を間接的に視覚化した。本目的のために、抗マウスIgG(抗体)とDylight488標識マウスIgG(抗原)を使用した。可視化前には、キャピラリーとマイクロ流路及びナノ流路の表面を2%BSAのPBS溶液で30分間ブロックした。68nMの抗原溶液を用いた反応と反応緩衝液による洗浄の後に、分子補足領域(特異結合物質固定化領域)を観察した。図4(a)に示すように、蛍光強度の像と線プロファイルの両方において明確なコントラストが観察された。測定幅130μmはVUV光照射工程で使用されたフォトマスクの設計幅135μmとほぼ同じであったため、抗体固定化表面は十分調節可能である。VUV光の屈折により生じるAPTESパターンの不均一性により、パターン幅のわずかな減少と、パターン両端における強度の段階的変化が生じた。ナノ流路の閉塞と漏出は観察されなかった。上記結果は、分子補足領域を予め設定した場所に構築でき、免疫化学反応場体積86fLで成功したことを示した。この反応場体積は抗体が固定化されマイクロビーズが充填されたマイクロ流路の反応量(10nL)より5桁小さい。
拡張ナノ流路のPEG修飾の有効性を測定するために、分子補足領域と他の領域の平均蛍光強度をPEG修飾した流路とPEG非修飾の流路の両方において測定した。バックグラウンドを差し引いた結果を図4(b)に示す。PEG分子がタンパク質を著しく拒絶したため、PEG修飾された非補足領域の蛍光強度は、露出シリカの蛍光強度よりも百倍低い、殆ど電気的なバックグラウンドレベルまで有意に低下した。PEG修飾した補足領域とPEG非修飾の補足領域の強度のわずかな差は、APTES分子内の未反応シラノール基に対しPEGが結合したことに起因する。APTES内の少量のPEGは、捕捉抗体と標的抗原の間の結合を低減できる。以上の結果から、ナノ流路のPEG修飾は極めて有効であった。
1.4.拡張ナノ流路における高効率な免疫化学反応
マイクロ流体デバイス又は96ウェルプレートのような従来のイムノアッセイフォーマットにおける反応空間の大きさ(μmからmmスケール)とは対照的に、拡張ナノ流路(nmスケール)の大きさは、数秒間にわたる拡散距離よりもはるかに小さい。このような条件下では、拡散距離が短いため、導入された抗原は固定化抗体と必然的に相互作用し、その結果反応は非常に効率的となり、標的分子をロスすることなく補足できる。これは拡張ナノ流路における分子補足に特有の特徴であり、この特徴により拡張ナノ流路は極めて少量の分析物の定量に理想的に適合したものとなる。
反応を定量的に検討するために、表面結合した抗原の経時的変化量を、種々の濃度の抗原溶液を制御された流速で連続流通下に導入した場合の蛍光強度変化を測定することにより評価した。抗原導入前には、キャピラリーとマイクロ流路及びナノ流路の表面を2%BSAのPBS溶液で30分間ブロックした。2%BSAと0.05%Tween20を含む10mMPBSを用いて68nMからの三段階希釈により抗原溶液を調製し、調べた抗原濃度は0、2.5、7.6、23及び68nMであった。1mg/mLのフルオレセイン緩衝溶液の平均速度(68μm/秒)を測定して実験的に求めた流速は45fL/秒であった。この平均流速は、ハーゲン‐ポアズイユ流と仮定した圧力損失から算出した理論値と一致した。各抗原溶液の通過により生じた蛍光強度を測定した後、グリシン/HCl緩衝液を用いてpHを2.4まで低下させることにより結合抗原を除去し、再生した表面を再び使用した。図5(a)には、各濃度の抗原について、固定化領域全体の蛍光強度変化を3秒間隔でプロットしたものを示す。t=0は反応出発点であり、導入された抗原が分子補足領域に到達した時間である。これはナノ流路入口と分子補足領域の間の流速と距離(1mm以下)から算出した。t=0における強度を差し引くことにより強度増加をプロットした。プロットした値は5本のナノ流路の平均を表し、エラーバーは±2αを表す。蛍光強度の変化は導入した抗原の濃度に明確に対応した。最も高濃度の抗原(68nM)では、全ての結合部位が80秒未満で飽和した。固定化抗体のない領域の強度も測定したが、増加は観察されなかった。フォトブリーチングにより生じた蛍光強度の低下を、プラトーにおける強度のわずかな低下から推定した。1回の測定の間の総露光時間はわずか5秒であったため、強度は3ケタ小さく、フォトブリーチングの影響は無視できた。
初期の抗原結合率、即ち、補足率を検討することにより、抗原の濃度依存性を調べる。補足率は次のようにして求めた。補足抗体結合部位の表面密度の日差変動を訂正するために、0〜68nMの溶液の強度を、捕捉抗体の殆ど全てが蛍光標識抗原分子に結合した濃度である68nMでのプラトー値を用いて正規化した。数時間の間の一連の希釈試料の測定の間には、利用可能な結合部位は変化しなかったと推定した。最小二乗法を用いて0〜18秒の間の正規化数の線形適合から求めた傾きを補足率と定義した。反応の特異性を測定するために、Dylight488標識マウスIgGを加えたウシ血清の10倍希釈物も評価した。図5(b)には、補足開始後最初の18秒間の補足率を導入分子の絶対数と濃度に対してプロットしたものを示す。補足率と導入した抗原分子数の間には強い関連があった。利用可能な結合部位[抗体]の数は反応の最初の18秒間で急速に減少するため、抗原濃度が高い場合には、補足率は直線的増加を想定した予想値よりも低かった。ウシ血清の場合と同じ濃度依存性が示されたため、反応は固定化抗体に対し特異的であった。仮に抗原分子が固定化抗体に非特異的に結合した場合には、血清試料(多くの不純物を含む)中の補足率は、PBS中の補足率よりも低くなるべきである。最初の18秒間に流路を通過する試料の量は810fLであり、分子の絶対数に基づく検出限界は3zmolであった。
抗体抗原反応の効率を確認するため、導入分子数に対する表面結合分子数として定義された分子補足率を評価し、パーセンテージで表した。導入分子数は、濃度、流速及び流れ持続時間から算出した。表面結合分子を評価するのは困難であったが、それらの数は、校正プロセスにより測定した蛍光強度から推定した。図6(a)に示すように、ナノ流路を満たす同種の蛍光標識抗原溶液の強度を測定することにより、蛍光強度の検量線を作成した。検出領域の大きさは、図5に要約した実験で使用した検出領域の大きさと同じであり、全体の蛍光強度を検出領域全域にわたって導き出した。励起光(2.2μm)の共焦点長はナノ流路の深さ(200nm)よりも長かったことから、ナノ流路における全ての分子を検出できるため、溶液の濃度が任意の値の場合には、検出領域における分子数を算出可能である。得られた検量線(図6(b))を用いて、強度を分子数に変換した。
図6(c)は、7.6nMの抗原濃度での数千個の分子の範囲内における導入分子と補足分子の数の差(エラーバー:±2α)をプロットしたものである。導入分子数を示す線の傾きと補足分子数を示す線の傾きは殆ど同じである。各ポイントにおける補足効率をプロットしたものを図6(d)に示す。他のポイントについては大きな誤差が観察されたが、極めて高い値(100%近く)が得られ、例えば、t=27秒では補足効率は95±20%であった。比較的大きな誤差は、検出の低いSB比(強度値から0.16として算出)が原因であると考えられた。表面結合抗原からの弱いシグナル強度は、溶媒が関係するバックグラウンドシグナル、ガラス基板及び光学散乱に大きな影響を受けた。補足領域内のAPTES層に対する抗原の非特異的吸着の定量は困難であったが、抗体抗原反応の間の抗原の非特異的吸着の可能性を最小化するために、2%BSAと0.05%Tween20を抗原溶液に添加したため、その効果は無視できるほど小さいと考える。また、エタノールアミンによるキャッピング、PEG修飾、及びBSAの物理吸着により表面をブロックした。実験で使用した表面ブロッキング法は、非特異的吸着を最小化するためにイムノアッセイで一般的に使用されている。
これらのデータを説明するために、ナノ流路の深さを分子補足領域を通過する間の標的抗原の拡散距離と比較した。分子が分子補足領域を通過するのに必要な移動時間tは、補足領域の流速と長さから算出すると1.8 秒であった。tが1.8秒の間の拡散距離L(μm)は、式L=(2Dt)1/2(式中IgGの拡散係数(D)=40μm/s)から12μmと計算された。計算された拡散距離は200nmの深さよりもはるかに(1桁)大きかった。従って、導入分子が固定化抗体と相互作用することは間違いなく、その結果高い補足効率が得られる。流路の大きさは最適化しなかったが、補足効率を下げることなく必要な試料量を低減するために、流路の大きさを更に小さくすることは可能である。しかし、十分な流れの形成に必要な圧力は(MPaまで)著しく増加し、修飾とアッセイの間にナノ流路が閉塞するリスクも高まる。
本研究で記載したデバイスの性能を、マイクロ流路に充填したマイクロビーズ上に固定化した抗体を用いる従来のイムノアッセイと比較した結果を表1にまとめた。本研究では、反応量を5桁(86fLまで)減少させ、試料量を6桁(810fLまで)減少させた。加えて、感度(検出可能な分子の絶対数に基づく)を酵素増幅の必要なく(3zmolまで)5桁増加させた。このように、単一細胞の体積ピコリットルよりはるかに少ない試料量を用いた分子補足を実証した。今後の研究においては、単一細胞内のいくつかの標的分子を分析するために、pM濃度の検出に対する感度を改善すべきである。検出可能量の蛍光発生基質又は発色基質は、酵素反応を用いる化学増幅によって、更に少ない標的分子から産生されるため、感度を改善するための有効な方法の1つは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)の導入である。
2. 実験の部
原材料及び化学薬品:APTESは東京化成工業(日本、東京)から購入した。グルタルアルデヒド(25%)は和光純薬工業(日本、大阪)から購入した。トリメトシキシラン−PEG(シラン−PEG、MW=5kDa)はNANOCS(米国、ニューヨーク州、ニューヨーク)から購入した。モノクロナール抗マウスIgG2a(ab131231)及びマウスIgG2aアイソタイプコントロール(クローン20102)抗体は、アブカム(日本、東京)及びR&Dシステムズ(米国、ミネソタ州、ミネアポリス)からそれぞれ購入した。蛍光染料Dylight488を用いたマウスIgG2aの標識は、サーモフィッシャーサイエンティフィック(米国、マサチューセッツ州、ウォルサム)から購入したDylight488マイクロスケール抗体標識キットを用いて行った。グルタルアルデヒド(2.5%)の10mMホウ酸塩緩衝溶液(pH7.0)を抗体の固定化に使用した。反応緩衝液は、2%のウシ血清アルブミンと0.05%のTween20を含む10mMのPBS(pH7.4)であり、抗体が固定化された表面を再生するのに使用した緩衝液はpH2.4のグリシン/HClであった。ウシ血清はコージンバイオ株式会社(日本、埼玉県)から購入した。全ての溶液は、流路の閉塞を防ぐため0.22μmのシリンジフィルターで濾過した。
流路の作製:別途記載したように、拡張ナノ流路を、電子ビームリソグラフィー及びプラズマエッチングにより、VIOSIL−SQ溶融石英ガラス基板(厚み0.7mmx幅70mmx長さ30mm、信越化学工業株式会社、日本)上に作製した。走査型電子・原子間力顕微鏡により、拡張ナノ流路は、幅3.3μm、深さ200nm及び長さ2mmと測定された。全部で50本のナノ流路を平行に作製した。ナノ流路の両端を、従来のUVフォトリソグラフィー技術を用いて作製した幅が500μm、深さが6μmのマイクロ流路に接続した。
抗体パターニングのための化学修飾:溶融石英ガラス基板を気相中にてAPTESで修飾した。修飾前に、基板をピラニア溶液(硫酸:過酸化水素=2:1)に10分間浸漬させた。この基板を完全にすすぎ、超純水中で超音波処理し、気流で乾燥させた。この清浄なシリカ基板を、200μLのAPTES溶液を含むバイアルと共にセパラブルフラスコに入れ、次いでセパラブルフラスコを密閉し、真空ポンプを用いて真空にした。このフラスコを120℃のオイルバス中で加熱した。2時間の反応後、基板をフラスコから取り除き、無水トルエン中で5分間超音波処理した。その後、基板をエタノール、次いで超純水ですすぎ、気流下で乾燥させた。APTESで修飾された基板を自製のステンレススチール容器に入れ、クロムマスク(マスク全体は30mmx30mmであり、クロムエリアはマスク中心部の135μmx3mmであった)で覆った。この容器の上にVUV光ランプ・ハウジング(E500−172−120−A2、株式会社エキシマ、日本)を置き、光強度の減衰を最小化するために、基板から数mm以内に光源を置いた。この基板に VUV光を5mW/cmの強度で0〜15分間照射した。既に報告したように、照射後、APTESでパターンニングされた基板を超純水ですすぎ、気流下で乾燥させた。この基板を、フッ素強化プラズマにより表面が活性化されたマイクロ流路と拡張ナノ流路を含む別のシリカ基板と接合させた。簡単に述べると、ピラニア溶液で洗浄後、流路を有するきれいなシリカ基板をプラズマ容器に入れ、フッ素含有酸素プラズマ(60Pa O、250W パワー)で40秒間処理した。基板をプラズマ容器から取り出し、APTESパターンニングした基板と接触させた。基板の接合強度を高めるために、このデバイスを、ボンディング機(ボンドテック株式会社、日本)を用い、5,000N及び100℃にて2時間加圧した。接合させたデバイスを室温(25℃)で24時間保持した。抗体固定化のための全ての試薬を、200kPaの圧力駆動流により流路に導入した。0.1wt%トリメトシキシラン−PEGの水/エタノール(5/95)溶液を流路に1時間通し、その後流路をエタノールと水で10分間洗浄した。APTESと抗体をタンパク質のアミノ基を介して化学的に架橋させるため、2.5%グルタルアルデヒドの10mMホウ酸塩緩衝液を流路に2時間通し、次いで25μg/mL捕捉抗体のPBS溶液に1時間通した。0.5MのNaClを含む0.5Mエタノールアミン溶液(pH8.3)を流路に10分間通し、残存する反応性基をブロックした。
接触角の測定:VUV照射したAPTES表面の純水の接触角を接触角計(DM−500、協和界面科学、日本)を用いて測定した。
免疫化学反応の蛍光観察:蛍光標識抗原を使用して固定化抗体を視覚化し、抗体活性を確認した。標的抗原溶液の導入前に、流路を反応緩衝液で満たした。次いで、標的抗原溶液をマイクロ流路の一方からナノ流路に導入した。再生緩衝液への変更はバイアルを変更することにより達成した。電荷結合素子(CCD)カメラ(C9100−13、浜松ホトニクス株式会社、日本)を備えた倒立蛍光顕微鏡(IX71、オリンパス、日本)を使用してナノ流路の蛍光顕微鏡写真を得た。水銀ランプを用いて誘発された励起から生じた蛍光シグナルを、開口数0.60の40倍対物レンズを用いて集めた。経時的な観察のために、励起光路においてCCDカメラと開閉シャッターを同期化することにより、露光時間100msでの励起光の照射を最小化した。得られた顕微鏡写真をAquacosmosソフトウェア(浜松ホトニクス株式会社)を用いて分析した。顕微鏡写真の任意配置での検出窓における全強度を決定した。モーター駆動ステージにより、空間分解能0.1μmで設定位置の観察が可能となった。
実施例2 DIC-TLMを用いるサンドイッチ免疫測定
実施例1と同様な方法により、実施例1と同様なデバイスを作製した。デバイスの拡張ナノ流路部分を模式的に図7に示す。拡張ナノ流路の高さは800nm、幅は2μmであり、APTESを選択的にコーティングした特異物質結合領域の長さは3mmであった。APTES上に固定化した第1の特異結合物質は、抗マウスIgGポリクローナル抗体であった。抗マウスIgGポリクローナル抗体を固定化後、PBS中2% BSA溶液で30分間処理してブロッキングを行った。
以下の操作は全て20℃で行った。実施例1と同様にして試料液を注入した。試料液は、PBS中に、抗原であるマウスIgG抗体を含む溶液であり、抗原濃度は、0(抗原を含まない)、0.2pM、0.4pM、0.8pM又は1.7pMであり、体積は16pLであった(166fL/秒の流速で95秒間流通、圧力25kPa)。この濃度と体積では、試料液中に含まれる抗原の分子数は、それぞれ、0個、2個、4個、8個及び16個となる。実施例1と同様にして拡張ナノ流路を緩衝液で洗浄後(400kPa、30秒)、HRP標識した抗マウスIgG2aヤギポリクローナル抗体(Abcam社製)のPBS中溶液(濃度100pM)を25kPaで30秒間流通させた。拡張ナノ流路を上記と同様に洗浄後、基質溶液(1.7mMのTMB(商品名SureBlue TMB-1(米国KLM社製)及び0.02%の過酸化水素を緩衝液中に含む)を拡張ナノ流路に導入し(500kPa、30秒)、この状態で60秒間液の流通を停止し、酵素反応を行わせた。60秒経過後、緩衝液を再流通させ、特異結合物質固定化領域の下流端から1.5mm下流(図7参照)の位置で、酵素反応生成物である青色色素をDCI-TLMで測定した。
用いたDIC-TLMは、2個のレーザー発振装置と他の光学装置を具備する公知のものである。励起ビームは、波長660nmのダイオード励起固体レーザー(Ignis660(商品名)、Laser Quantum社製)であり、出力は205mWであり、その強度は、変調周波数3.30kHzの機械的チョッパーにより調節した。プローブビームはYAGレーザーの波長532nmの輝線であった。両者のビームは、Glan-Thomsonプリズムにより線形的に偏光させ、偏光面は、二分の一波長板で回転させた。2本のビームは、光二色性ミラーにより共軸化した。プローブビームは、DICプリズムにより、直交偏光する2本のビームに分けた。一方、励起ビームは、偏光を制御することにより、第1のDICプリズムにより分割しなかった。分割したプローブビームと、励起ビームは両者とも対物レンズ(40x, N.A. 0.75)により焦点を合わせ、試料を通過させた。プローブビームのみを、下部DICプリズム及び偏光フィルターにより干渉した。干渉プローブビーム及び励起ビームの両者とも集光レンズで集光し、フィルターを通した。プローブビーム強度のみをフォトダイオードで監視した。ロックイン増幅器(5610B(商品名), 横浜のNF社)を用いて、フォトダイオードからの予め増幅したシグナルを同期的に増幅した。ロックイン増幅器の時間定数は1秒であり、データは0.2秒ごとに獲得した。シグナルの大きさは、パソコンに記録した。
酵素反応の生成物である青色色素の分子が存在しない場合、干渉によりプローブビームの強度はゼロである。色素分子が励起ビームを吸収して発熱した場合、溶媒の屈折率が局所的に変化し、一方の分割プローブビームについてのみ、位相変化をもたらす。これにより、分割プローブビーム間で位相差が生じ、この位相差が新たな偏光成分を生成する。この成分のみがシグナルとして検出される。シグナルは、試料の吸光度に比例する。
結果を図8に示す。図8に示されるように、シグナルのピーク高さは、試料中の抗原(目的分子)の分子数に応じて変化している。これにより、この方法で、試料中の抗原分子を可算個レベルで定量できることが明らかになった。従来の分析デバイスでは濃度の定量であり、分子数で100万分子程度を必要としていた。しかし、本発明の方法やデバイスを用いると、可算個レベルで定量可能であるという、著しい性能の向上が見出された。

Claims (7)

  1. 第1の基板と、該第1の基板と接合される第2の基板と、該第1及び第2の基板の接合面に形成され、該第1及び第2の基板の外部に連通する流路と、該流路の一部領域であって、被検物質に特異的に結合する第1の特異結合物質が固定化された特異結合物質固定化領域とを具備し、前記流路の高さが10nm〜10μm、前記特異結合物質固定化領域の長さが1μm〜10cmである、試料中の被検物質の定量デバイスの前記流路に前記試料を流通させて該試料中の前記被検物質を、前記第1の特異結合物質に結合させる工程と、
    前記特異結合物質固定化領域を洗浄後、前記被検物質に特異的に結合する、標識された第2の特異結合物質を前記流路に流通させて前記第1の特異結合物質に結合した被検物質と第2の特異結合物質とを結合させる工程と、
    前記特異結合物質固定化領域を洗浄後、被検物質に結合した標識を定量する工程とを含み、前記試料の流速が、下記の式[I]
    5 ≦ (2Dτ)1/2/d [I]
    (式中、Dは被検物質の拡散係数(m2/s)、τは特異結合物質固定化領域上に被検物質の分子が滞在する平均時間(s)、dは流路の深さ(m))
    を満足させる流速である、試料中の被検物質の定量方法。
  2. 前記試料の流速が、上記式[I]の右辺の値が30以上となる流速である請求項1記載の方法。
  3. 前記流路が、高さ10nm〜1000nmの拡張ナノ流路である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記第1の特異結合物質が抗体若しくはその抗原結合性断片又は抗原であり、前記被検物質が抗原又は抗体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記標識が酵素標識であり、該酵素は、その基質と反応して発色する酵素であり、標識酵素と、その基質を酵素反応させて発色させる工程をさらに含み、前記標識の定量は、酵素反応の結果発色した物質を微分干渉熱レンズ顕微鏡で定量することにより行われる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記酵素反応は、試料の流通を停止した状態で行う請求項5記載の方法。
  7. 前記微分干渉熱レンズ顕微鏡による定量は、前記特異結合物質固定化領域よりも下流の領域で行う請求項5記載の方法。
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