図1は本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を備えた油圧ショベルを示す側面図、図2は本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を示す概略図である。図1において、油圧ショベル100は、クローラ式の走行装置を備えた下部走行体1Cと、下部走行体1Cの上に旋回装置を介して旋回可能に設けた上部旋回体1Bとを備えている。上部旋回体1Bにはオペレータが搭乗するキャビン103が配置されている。また、上部旋回体1Bの前側には、フロント作業装置1Aの基端部が回動可能に取付けられている。
フロント作業装置1Aは、ブーム1、アーム2、バケット3を有する多関節構造であり、ブーム1はブームシリンダ4の伸縮により上部旋回体1Bに対して上下方向に回動し、アーム2はアームシリンダ5の伸縮によりブーム1に対して上下及び前後方向に回動し、バケット3はバケットシリンダ6の伸縮によりアーム2に対して上下及び前後方向に回動する。
次に、図2に示す概略図における駆動装置のシステム構成を説明する。ここでは、ブームシリンダ4とアームシリンダ5を駆動する駆動装置を例に説明する。
図2において、動力源であるエンジン8の駆動軸は、動力を配分する動力伝達装置9に接続されている。動力伝達装置9には、閉回路ポンプであって、両傾転可変容量形油圧ポンプである第1油圧ポンプ10aと、第2油圧ポンプ10bと、第3油圧ポンプ10cと、開回路ポンプであって、片傾転固定容量型油圧ポンプである低圧ポンプ12とが接続されている。
第1油圧ポンプ10a〜第3油圧ポンプ10cは、それぞれ流量調整手段として一対の入出力ポートを持つ両傾転斜板機構と、斜板の傾斜角を調整してポンプ押しのけ容積を調整するするレギュレータ10ax,10bx,10cxを備えている。レギュレータ10ax,10bx,10cxは、コントローラ15から通信線を介して受信したポンプ吐出流量指令値に従って、第1油圧ポンプ10a〜第3油圧ポンプ10c第の吐出流量をそれぞれ制御する。
第1油圧ポンプ10aの吐出ポートは、流路20又は21を介して流路切換回路としての切換弁11a,11bに接続されている。切換弁11a,11bはコントローラ15からの制御信号線を介した信号により、流路の流通及び遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。
切換弁11aは、流路30,31,26,27を介してブームシリンダ4に接続されていて、切換弁11aが流通状態になると、第1油圧ポンプ10aはブームシリンダ4と流路20,21,30,31,26,27を介して接続されている。
切換弁11bは、流路32,33,28,29を介してアームシリンダ5に接続されていて、切換弁11bが流通状態になると、第1油圧ポンプ10aはアームシリンダ5と流路20,21,32,33,28,29を介して接続されている。
また、流路20と流路21には、回路の最大圧力を設定するために設けられたリリーフ弁13a,13bと、流れを逆止するためのチェック弁14a,14bとが設けられている。リリーフ弁13aと13bとの間とチェック弁14aと14bとの間には、流路40の一端側が接続されていて、流路40の他端側は、低圧ポンプ12の吐出ポートに接続されている。
また、流路26と27には、回路の最大圧力を設定するために設けられたリリーフ弁13g,13hと、流れを逆止するためのチェック弁14g,14h,14k,14lとが設けられている。リリーフ弁13gと13hとの間とチェック弁14gと14hとの間とチェック弁14kと14lとの間には、流路41の一端側が接続されていて、流路41の他端側は、低圧ポンプ12の吐出ポートに接続されている。
また、流路28と29には、回路の最大圧力を設定するために設けられたリリーフ弁13i,13jと、流れを逆止するためのチェック弁14i,14j,14m,14nとが設けられている。リリーフ弁13iと13jとの間とチェック弁14iと14jとの間とチェック弁14mと14nとの間には、流路41の一端側が接続されていて、流路41の他端側は、低圧ポンプ12の吐出ポートに接続されている。
低圧ポンプ12の吐出ポートは、流路40を介して各油圧ポンプの流路20〜25のチェック弁/リリーフ弁回路に接続され、流路41を介してブームシリンダ4とアームシリンダ5の流路26〜29のチェック弁/リリーフ弁回路に接続されている。
低圧ポンプ12の吸入ポートは、流路42を介して作動油タンクに接続されている。低圧ポンプ12の吐出ポートには、リリーフ弁13kを介して作動油タンクに連通する逃がし流路43が接続されている。
同様に、第2油圧ポンプ10bの吐出ポートは、流路22又は23を介して流路切換回路としての切換弁11c,11dに接続されている。切換弁11c,11dはコントローラ15からの制御信号線を介した信号により、流路の流通及び遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。
切換弁11cは、流路30,31,26,27を介してブームシリンダ4に接続されていて、切換弁11cが流通状態になると、第2油圧ポンプ10bはブームシリンダ4と流路22,23,30,31,26,27を介して接続されている。
切換弁11dは、流路32,33,28,29を介してアームシリンダ5に接続されていて、切換弁11dが流通状態になると、第2油圧ポンプ10bはアームシリンダ5と流路22,23,32,33,28,29を介して接続されている。
また、流路22と流路23には、回路の最大圧力を設定するために設けられたリリーフ弁13c,13dと、流れを逆止するためのチェック弁14c,14dとが設けられている。リリーフ弁13cと13dとの間とチェック弁14cと14dとの間には、流路40が接続されていて、流路40の他端側は、低圧ポンプ12の吐出ポートに接続されている。
同様に、第3油圧ポンプ10cの吐出ポートは、流路24又は25を介して流路切換回路としての切換弁11e,11fに接続されている。切換弁11e,11fはコントローラ15からの制御信号線を介した信号により、流路の流通及び遮断が制御され、信号が無い場合は遮断状態に制御される。
切換弁11eは、流路30,31,26,27を介してブームシリンダ4に接続されていて、切換弁11eが流通状態になると、第3油圧ポンプ10cはブームシリンダ4と流路24,25,30,31,26,27を介して接続されている。
切換弁11fは、流路32,33,28,29を介してアームシリンダ5に接続されていて、切換弁11fが流通状態になると、第3油圧ポンプ10cはアームシリンダ5と流路24,25,32,33,28,29を介して接続されている。
また、流路24と流路25には、回路の最大圧力を設定するために設けられたリリーフ弁13e,13fと、流れを逆止するためのチェック弁14e,14fとが設けられている。リリーフ弁13eと13fとの間とチェック弁14eと14fとの間には、流路40が接続されていて、流路40の他端側は、低圧ポンプ12の吐出ポートに接続されている。
また、本実施の形態における駆動装置は、操作系統として、コントローラ15に接続された操作レバー式の操作装置16a,16bを備えている。操作装置16aの上下操作がブームシリンダ4の操作に対応し、操作装置16bの上下操作がアームシリンダ5の操作に対応する。コントローラ15は、操作装置16a,16bの操作量に応じてブームシリンダ4とアームシリンダ5のそれぞれの要求流量を演算し、この要求流量に応じてそれぞれの要求ポンプ個数を演算する要求流量及び要求ポンプ個数演算部15Aと、所定の条件において、要求ポンプ個数を新たな数値へ更新する要求ポンプ個数更新演算部15Bと、更新後の要求ポンプ個数と要求流量から使用ポンプ個数と使用流量を演算する使用流量及び使用ポンプ個数演算部15Cとを備え、操作装置16a,16bからの操作量などの情報に基づき、切換弁11a〜11fの切換と、油圧ポンプ10a〜10cの流量を制御する。
次に、本実施の形態における動作の概要について図2及び3を用いて説明する。図3は本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態における油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続関係の優先度を規定したテーブルの一例を示す表図である。
例えば第1油圧ポンプ10aからの圧油によって、ブームシリンダ4を伸長させる場合、第1油圧ポンプの流路20側のポートから油が吐出される。このとき、第1油圧ポンプ10aとブームシリンダ4の流路上にある切換弁11aを流通状態に切換ることで、当該ポートとブームシリンダ4のヘッド側油室が接続される。そして、ブームシリンダ4のロッド側油室からの戻り油は第1油圧ポンプ10aのもう一方のポートから吸い込まれる。
このように、油圧ポンプの接続先変更などの過渡的な状態を除き、ある油圧ポンプは多くとも1つの油圧アクチュエータに接続されるため、従来のように絞り弁を用いた分流による損失がなく、省エネ効果が得られる。このように油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続及び変更が繰り返される油圧システムでは、その接続及び変更に一定の規則が必要になる。
本実施の形態においては、図3で一例として示すような、各油圧アクチュエータに対し各油圧ポンプが接続する順番、及び、複合動作における油圧ポンプ個数配分の取り決めを表すテーブル(油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続関係の優先度を規定したテーブル)を規則として使用し、これらの演算を使用流量及び使用ポンプ個数演算部15Cで行う。
例えば、ブームシリンダ4のみを動作させる場合、操作装置16aを操作すると、図3のブームの列の優先度が1である第1油圧ポンプ10aがブームシリンダ4に接続される。そして、操作装置16aの操作量が増加してある閾値を超えると、優先度が2である第3油圧ポンプ10cがブームシリンダ4に接続され、さらに、操作装置16aの操作量が増加すると、優先度が3である第2油圧ポンプ10bがブームシリンダ4に接続される。同様に、アームシリンダ5のみを動作させる場合には、操作装置16bの操作量の増加に伴い、油圧ポンプは、第2油圧ポンプ10b、第1油圧ポンプ10a、第3油圧ポンプ10cの順にアームシリンダ5に接続される。
また、3個全ての油圧ポンプ10a〜10cがアームシリンダ5に接続されている状態の下で、操作装置16aを操作してブームシリンダ4の操作量を増加する複合動作を行うと、図3のブームの列の優先度が1である第1油圧ポンプ10aの使用が要求される。
しかし、第1油圧ポンプ10aは既にアームシリンダ5に接続されているので、優先度によるポンプ個数の配分が行われる。すなわち、第1油圧ポンプ10aは、アームシリンダ5に対する優先度は2であるのに対して、ブームシリンダ4に対する優先度は、それより高い1である。このことにより、第1油圧ポンプ10aは、アームシリンダ5から遮断されて、ブームシリンダ4へ接続し直される。
その後、ブームシリンダ4の操作量を更に増加させると、第3油圧ポンプ10cがアームシリンダ5から遮断されて、ブームシリンダ4へ接続し直される。しかし、第2油圧ポンプ10bの優先度は、図3に示すようにアームシリンダ5が優先度1、ブームシリンダ4が優先度3となっているため、第2油圧ポンプ10bはアームシリンダ5に接続されたままになる。
このように、コントローラ15の使用流量及び使用ポンプ個数演算部15Cが、接続の優先度を用いて油圧ポンプ個数を適切に配分することで、複合動作時でも各油圧アクチュエータを安定して動作させることができる。
次に、本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を構成するコントローラ15の制御について図面を用いて説明する。図4は本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を構成するコントローラの処理内容を示すフローチャート図、図5Aは本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を構成するコントローラのブーム要求流量の演算に用いられる関数の一例を示す特性図、図5Bは本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を構成するコントローラのアーム要求流量の演算に用いられる関数の一例を示す特性図、図6Aは本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を構成するコントローラのブームの要求ポンプ個数の演算に用いられる関数の一例を示す特性図、図6Bは本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態を構成するコントローラのアームの要求ポンプ個数の演算に用いられる関数の一例を示す特性図、図7は本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態における要求流量と更新前後の使用流量との関係の一例を示す特性図である。
図4に示すフローチャート図は、コントローラ15の1周期制御における制御フローを示す。なお図中(ステップS1)は、コントローラ15内の要求流量及び要求ポンプ個数演算部15Aによる処理であり、(ステップS2)〜(ステップS5)の処理は、コントローラ15内の要求ポンプ個数更新演算部15Bによる処理を示している。また、(ステップS6)は、コントローラ15内の使用流量及び使用ポンプ個数演算部15Cによる処理である。
コントローラ15の要求流量及び要求ポンプ個数演算部15Aは、操作部材である操作装置16a,16bの操作量に応じて、各油圧アクチュエータの要求流量Fdと要求ポンプ個数Ndとを演算する(ステップS1)。具体的には、各油圧アクチュエータの要求流量Fd=(Fd1,Fd2)を演算する。Fd1,Fd2はブームシリンダ4,アームシリンダ5のそれぞれの要求する流量であってこの要求流量と油圧ポンプの定格流量との比で表される定格ポンプ個数値で示す。また、要求流量Fdに基づき各油圧アクチュエータが要求するポンプの個数Nd=(Nd1,Nd2)を演算する。なお、油圧ポンプの定格流量とは、予め定められたポンプの最大吐出流量である。
要求流量Fdは、図5Aと図5Bに示すように、操作装置16a,16bの操作量に応じて決定される。例えば、ある時刻においてブームシリンダ4、アームシリンダ5の操作量がそれぞれ全操作量の40%、60%であるとする。(ステップS1)において、この操作量に対し、図5A,図5Bで定める特性線図により、要求流量Fdはブームシリンダ4が定格流量の油圧ポンプ1.2個分、アームシリンダ5が定格流量の油圧ポンプ1.8個分と定まる。このことを以下Fd=(1.2,1.8)と表す。なお、上述した要求流量と、油圧ポンプの定格流量との比を定格ポンプ個数値という。
上述したように、本実施の形態においては、1の油圧ポンプは、複数の油圧アクチュエータには接続されないため、ブームシリンダ4とアームシリンダ5は互いに重複せずに油圧ポンプを要求する。そして、図6A,図6Bで定める特性線図により、要求流量Fd(定格流量の油圧ポンプの個数分で示す)に対する要求ポンプ個数は、ブームシリンダ4は2個、アームシリンダ5は2個となり、要求ポンプ個数Nd=(2,2)と表す。
図4に戻り、コントローラ15の要求ポンプ個数更新演算部15Bは、要求流量Fdに基づき、各油圧アクチュエータが使用することができる油圧ポンプ個数の組合せである要求ポンプ個数候補Nd´1=(Nd1´1,Nd´12),Nd´2=(Nd2´1,Nd2´2),・・・・・,Nd´m=(Ndm´1,Ndm´2)を演算する(ステップS2)。具体的には、ある要求流量に対し、それぞれの成分について小数点以下を切り上げまたは切り捨てした整数を成分ごとに組合せたもののうち、合計がポンプ総数を超えないものを要求ポンプ個数候補とする。すなわち、前述のFd=(1.2,1.8)に対して小数点以下を切り上げまたは切り捨てした整数を成分ごとに組合せたものは22=4通りあり、それぞれNd1´=(2,2),Nd2´=(2,1),Nd3´=(1,2),Nd4´=(1,1)である。このうち合計がポンプ総数である3を超えないものとして、Nd2´=(2,1),Nd3´=(1,2),Nd4´=(1,1)が要求ポンプ個数候補となる。
図7は、縦軸にアームシリンダ5の流量(定格流量の油圧ポンプの個数値)を示し、横軸にブームシリンダ4の流量(定格流量の油圧ポンプの個数値)を示している。図7に示すように、要求ポンプ個数候補はNd2´、Nd3´、Nd4´の3つであって、要求ポンプ個数候補は要求流量Fd周辺の格子点としてそれぞれ演算されている。
図4に戻り、コントローラ15の要求ポンプ個数更新演算部15Bは、全ての要求ポンプ個数候補Nd´に対し、要求流量Fdとの距離D2=(Fd,Nd´2),・・・・,Dm=(Fd,Nd´m)を演算する(ステップS3)。具体的には、要求ポンプ個数候補Nd´と要求流量Fdとの差Dをそれぞれ演算する。本実施の形態では、差Dを、ある油圧アクチュエータにおける要求ポンプ個数候補Nd´と要求流量Fd(定格ポンプ個数値で示す)の2次元平面上での距離として定義する。したがって、差Dは、図7に示すように、それぞれD2=(Fd,Nd2´)=(1.2−2)2+(1.8−1)2=1.28,同様にD3=(Fd,Nd3´)=0.08,D4=(Fd,Nd4´)=0.68と算出できる。
図4に戻り、コントローラ15の要求ポンプ個数更新演算部15Bは、(ステップS3)において演算した距離(差D)が最小である要求ポンプ個数候補Nd´と要求流量Fdとに基づき、要求流量候補Fd´(定格ポンプ個数値で示す)を演算する(ステップS4)。具体的には、差D2乃至D4のうち、最小のものは0.08である差D3なので、差D3に対応する要求ポンプ個数候補Nd3´と要求流量Fdから、要求流量候補Fd´を演算する。本実施の形態においては、要求ポンプ個数候補Nd´と要求流量Fdの成分ごとの最小値をとったものを要求流量候補Fd´とする。要求流量Fdと要求ポンプ個数候補Nd3´は、Fd=(1.2,1.8)、Nd3´=(1,2)であるので、要求流量候補Fd´は、以下のように算出される。
Fd´=(min(1.2,1.0),min(1.8,2.0))=(1.0,1.8)。
コントローラ15の要求ポンプ個数更新演算部15Bは、要求ポンプ個数Ndを(ステップS4)において演算した要求ポンプ個数候補Nd´に更新し、要求流量Fdを(ステップS4)において演算した要求流量候補Fd´に更新する(ステップS5)。具体的には、要求ポンプ個数Ndを差Dが最小である要求ポンプ個数候補Nd3´に更新し、要求流量Fdを要求流量候補Fd´に更新する。すなわち、更新後の要求ポンプ個数はNd=(1,2)、要求流量はFd=(1.0,1.8)になる。
コントローラ15の使用流量及び使用ポンプ個数演算部15Cは、(ステップS5)における更新後の要求ポンプ個数Nd,要求流量Fd(定格ポンプ個数値で示す)に対して、各油圧アクチュエータが動作するための使用ポンプ数Na及び使用流量Fa(定格ポンプ個数値で示す)をそれぞれ演算する(ステップS6)。この演算方法は、図3で説明した油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続関係の優先度を規定したテーブルに基づいて行われる。具体的には、要求ポンプ個数がNd=(1,2)なので、ブームシリンダ4に油圧ポンプが1個、アームシリンダ5に油圧ポンプが2個要求され、使用ポンプ個数Na=(1,2)となり、図3の優先度から、ブームシリンダ4に第1油圧ポンプ10aが、アームシリンダ5に第2油圧ポンプ10bと第3油圧ポンプ10cが使用される。また、要求流量(定格ポンプ個数値で示す)がFd=(1.0,1.8)なので、使用流量(定格ポンプ個数値で示す)Fa1=(1.0,1.8)となる。
コントローラ15は、(ステップS6)で算出した使用ポンプ個数Naと使用流量Faに基づき、油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続切換を実行するために、切換弁と油圧ポンプに指令信号を出力する(ステップS7)。具体的には、コントローラ15は、図2に示す第1油圧ポンプ10aのレギュレータ10axにポンプの最大流量1.0個分の指令信号を、第2油圧ポンプ10bのレギュレータ10bxにポンプの最大流量1.0個分の指令信号を、第3油圧ポンプ10cのレギュレータ10cxにポンプの0.8個分の指令信号を、それぞれ出力する。また、コントローラ15は、第1油圧ポンプ10aとブームシリンダ4を接続する切換弁11aと、第2油圧ポンプ10bとアームシリンダ5を接続する切換弁11dと、第3油圧ポンプ10cとアームシリンダ5を接続する切換弁11fとにそれぞれ流通指令を出力し、それ以外の切換弁には指令信号を出力せず遮断状態とする。
次に、本実施の形態における本発明の作用効果の理解を容易にするために、従来例における操作量増大時の油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続切換を説明する。具体的には、図4で説明したフローチャート図において、要求ポンプ個数更新演算部15Bが実行する(ステップS2)から(ステップS5)を除いた流れとなる。
まず、(ステップS1)として、操作部材である操作装置16a,16bに応じて、各油圧アクチュエータの要求流量Fdと要求ポンプ個数Ndとを演算し、要求流量Fd=(1.2,1.8)、要求ポンプ個数Nd=(2,2)となる。
次に、図4の(ステップS6)として、要求ポンプ個数Nd=(2,2)に対して使用ポンプ個数Naの演算をすると、図3より、ブームシリンダ4が第1油圧ポンプ10a及び第3油圧ポンプ10cを使用し、アームシリンダ5が第2油圧ポンプ10bを使用することになる。したがって、使用ポンプ個数Na=(2,1)となる。この結果、使用流量Fa2は、Fa2=(1.2,1.0)となる。
(ステップS7)として、算出した使用ポンプ個数Naと使用流量Faに基づき、油圧ポンプと油圧アクチュエータの接続切換を実行するために、切換弁と油圧ポンプに指令信号を出力する。
このような、従来例と本実施の形態における油圧システムの挙動について図7を用いて比較する。図7は縦軸にアームシリンダ5の流量(定格ポンプ個数値で示す)を示し、横軸にブームシリンダ4の流量(定格ポンプ個数値で示す)を示している。また、太線で囲まれた領域(太線部分を含む)は、使用流量がとり得る値の範囲を示す。なお、使用流量がとり得る値の範囲はポンプの吸収トルクの変動に従い変動し得る。
上述したように、本実施の形態の場合及び従来例の場合も、操作量はブームシリンダ4が40%、アームシリンダ5が60%を想定していて、要求流量(定格ポンプ個数値で示す)はFd=(1.2,1.8)である。この条件の下に本実施の形態においては、使用流量(定格ポンプ個数値で示す)をFa1=(1.0,1.8)とするのに対して、従来技術によった場合は、使用流量(定格ポンプ個数値で示す)がFa2=(1.2,1.0)となる。
本実施の形態においては、ブームシリンダ4に対して、使用流量Fa1が要求流量Fdに対して、17%(0.2)減となり、これに応じた速度低下が予想される。一方、従来技術においては、アームシリンダ5に対して、使用流量Fa2が要求流量Fdに対して、44%(0.8)減となり、大幅な速度低下が予想される。このことから、本実施の形態では、従来技術よりもより操作量に近い流量配分が可能となり、操作性を向上できる。
また、使用流量(定格ポンプ個数値で示す)の合計は本実施の形態では1.8+1.0=2.8であるが、従来技術によれば1.0+1.2=2.2である。このように、本実施の形態によれば、従来技術に比べ使用流量を増加することができるので、作業速度を増加できる。
上述した本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態によれば、作業機械の複合動作時において、要求する作動油流量のみが異なるようなわずかな操作量の変化に対しても、使用する油圧ポンプの個数を追従変化させるので、操作性の向上及び作業速度の増加が図れる。
なお、本実施の形態においては、要求ポンプ個数候補Nd´と要求流量Fdとの差Dをある油圧アクチュエータにおける要求ポンプ個数候補Nd´と要求流量Fdの2次元平面上での距離として定義して説明したが、これに限るものではなく他の演算方法によっても良い。
他の演算方法として図8を用いて説明する。図8は本発明の作業機械の駆動装置の第1の実施の形態における要求流量と更新前後の使用流量との関係の他の例を示す特性図である。図8においては、要求ポンプ個数候補Nd´を、要求流量Fdの各油圧アクチュエータ間における比率と等しい比率の使用流量であって、かつ使用流量がとり得る範囲の最大値と重なる使用流量に対応するものとしている。このことにより、使用流量Fa1は図8に示すようにFa1=(1.0,1.5)となる。この結果、要求流量Fdの比である1.2:1.8=2:3と等しい比率で各油圧アクチュエータを動作させることも可能となる。