JP6508510B2 - 炭素繊維強化複合材料成形体およびその製造方法、並びに炭素繊維強化複合材料成形体の修復方法 - Google Patents

炭素繊維強化複合材料成形体およびその製造方法、並びに炭素繊維強化複合材料成形体の修復方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維強化複合材料成形体およびその製造方法、並びに該成形体の使用に伴う劣化部分の簡易な修復方法に係わり、具体的には前記成形体中の炭素繊維を直接加熱し、その結果生じる炭素繊維の温度上昇を利用して炭素繊維近傍の樹脂を溶融あるいは軟化させて、成形時や繰り返し応力等により生じた炭素繊維と樹脂との隙間を埋設した成形体およびその製造方法、並びに修復方法に関するものである。
炭素繊維を用いた複合材料は、軽量でありながら強度や耐衝撃性などの力学的特性に優れているため、航空機部材および自動車部材など多くの分野で利用されている。特に軽量で高い力学特性が求められる航空機部材用途としては好適に用いられる。この成形方法としては、主にプリプレグ法が採用されている。
プリプレグ法とは、炭素繊維に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させてシート状の中間基材(以下、プリプレグという)を作成し、このプリプレグを所望の形状に裁断、積層し、含浸樹脂を硬化させることにより炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPという)を得る手法である。
プリプレグ法を使用する製法については、例えば、炭素繊維とガラス転移温度が硬化温度より10℃以上高い液状エポキシ樹脂を用いる製造方法(特許文献1)、炭素繊維が束状で実質的に2次元配向している炭素繊維シート等の成形材料において、特定のエポキシ化合物と特定の3級アミン化合物等を特定比率で含むサイジング剤を炭素繊維に塗布し、マトリックス樹脂と炭素繊維との接着性を高めた方法(特許文献2)の他、非常に多数の提案がある。
これらの方法によれば高性能のCFRPを確実に成形できる利点があるものの、一旦プリプレグを加熱硬化させるという工程が必要であり、生産性における改良の余地がある。
一方、製造工程簡素化を実現するために、炭素繊維及びマトリックス樹脂を含有する樹脂組成物を、射出成形法又は圧縮成形法により母材上に直接成形する製造方法(特許文献3)や、所定範囲の体積抵抗率を有する炭素繊維チョップドストランドと熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物(特許文献4)を製造する方法、特定の熱伝導率及び形状を有するピッチ係炭素繊維に合成樹脂からなるマトリックスを含浸せしめ、炭素繊維の充填率が増加し、厚さ方向の熱伝導率が改善されたCFRP(特許文献5)、などが提案されている。
前記の提案による熱可塑性樹脂をマトリックスとする炭素繊維強化熱可塑性樹脂複合材(以下、CFRTPという。なお、本明細書において「CFRP」との表記は、特にことわりのない限り、「CFRTP」も含むものとする。)は、加熱により可塑化させて射出成形できることから高サイクル成形が可能で、生産性が高く、複雑形状を高精度に成形できる。この射出成形に利用される炭素繊維は、プリプレグ法に利用される炭素繊維よりも一般に短い不連続繊維であるために、成形体強度への影響は、炭素繊維同士の絡み合いによる機能付与だけでなく、繊維と樹脂との一体化に依るところが大きいと考えられる。
しかし、射出成形では樹脂の流動に伴い炭素繊維も移動することから、繊維の配向や分散の不均一が生じることがあり、実成形体では単純な引張試験片形状で得られる強度に比べ、低い強度しか達成できないことがある。
また、熱可塑性樹脂は溶融状態であっても水よりもかなり粘度の高い状態であり、樹脂が炭素繊維間へ浸透し難く、繊維との接着性も必ずしも良好でないものが多い。炭素繊維の周りに樹脂が十分に接触した状態で成形体が得られれば良いが、両者の熱膨張性や流動性の差異や樹脂の収縮によって、炭素繊維とその周囲の樹脂との間に隙間が発生することがあり、これが成形体の機械的な物性に影響を及ぼすことが考えられる。
また、連続繊維で強化したCFRPであっても、プレスによる曲げ加工などにより成形体中で炭素繊維と樹脂が密着不十分になることも想定される。さらに、成形体の使用時における繰り返し負荷や衝撃等により、内部構造に劣化・損傷が発生することもあり、これを適当に修復することができれば、コスト低下や継続的・長期的な使用を可能にすることができる。
特開2003−26820号公報 特開2013−117003号公報 特開平10−278070号公報 特開2006−152023号公報 特開2008−208490号公報 特開2014−139300号公報 特開2002−13069号公報
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、樹脂をマトリックスとするCFRP成形体内の炭素繊維と樹脂との界面接着強度を改善する方法、並びにCFRP成形体の使用による劣化・損傷等に伴う機械的強度の低下を修復する方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明のCFRP成形体は、樹脂をマトリックスとし、該成形体の厚さ方向における断面において、炭素繊維の断面積に対する、該炭素繊維と周囲の樹脂までとの間の空隙部分の面積比が、100:10〜100:0の範囲内であることを特徴とする。
CFRP成形体はいわば樹脂の海の中に炭素繊維の島が形成された状態であり、炭素繊維の周りに樹脂が密着していることが好ましい。特にCFRTP成形体において射出成形に利用される炭素繊維は、連続繊維ではなく不連続繊維(短鎖)を用いるために、繊維同士の絡み合いによる強度に期待するだけでなく、炭素繊維と樹脂との協働により機械的強度の向上を図ることが望まれる。しかし、射出成形過程で流動化した樹脂の海には炭素繊維が適当な密度で分散しており、炭素繊維の表面に対する樹脂の濡れ性が悪い場合や樹脂の収縮が大きい場合には、樹脂と繊維との間に密着していない空隙を生じるおそれがある。
従来技術としては、繊維の表面に樹脂の濡れ性改善のために無水マレイン酸系化合物やウレタン系化合物などの集束剤を付着させたり(特許文献6)、炭素繊維の製造プロセス中に樹脂との相熔性に優れたエポキシ樹脂やウレタン樹脂などのサイズ剤を予め添加する方法(特許文献7)も採られているが、再利用の炭素繊維を使用する場合や樹脂収縮には必ずしも有効とは言い難い。
そこで、本発明では、CFRPを所望の形状に成形した後に、1.6MHz〜2.2MHzの高周波を10分以内の時間照射し、電磁誘導加熱により、CFRP成形体内の炭素繊維を加熱して、該繊維の発熱により周囲の樹脂を選択的に再溶融あるいは軟化させ繊維と樹脂との界面での接着をより密にすることとした。この処理によって成形体の厚さ方向における断面において、炭素繊維の断面積に対する、該炭素繊維と周囲の樹脂までとの間の空隙部分の面積比が、100:10〜100:0、好ましくは空隙部分の面積を0とし、炭素繊維と樹脂とが協働して成形体の機械的強度を向上させることができる。
また本発明の修復方法は、CFRP成形体に対して使用期間内の劣化や損傷部等の補修を要する箇所に1.6MHz〜2.2MHzの高周波を10分以内の時間照射し、電磁誘導加熱する工程を含むことにより成形体の補修をすることを特徴とする。
従来、成形体の機械的強度が低下したり、損傷等して使用に困難を来す場合には新しい成形体に交換する必要があった。本発明の修復方法によれば新たに成形体を交換する必要がなく、維持管理が容易かつ低コストで行うことができ、高周波装置を小型化すれば場合によっては使用現場でそのまま修理することもできる。
本発明のCFRP成形体は、通常の成形工程だけで得られる成形体よりも成形体内の炭素繊維と樹脂との界面がより密着していることによって同じ外観・形状・寸法でありながら、機械的強度を向上させることができる。特にCFRTP成形体に関しては、炭素繊維の体積含有率も低くなるので、繊維と樹脂との協働による機能向上が認められ得る。
また、本発明の製造方法では既存設備に対して電磁誘導加熱工程を追加するだけであるので、導入が容易である。さらに本発明の修復方法によれば、損傷を受けた必要な箇所だけを簡便に修理することができるので、成形体の一部分の不良を理由に全体を破棄する必要もないので経済的である。
図1は、本発明の成形体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真である。(a)は高周波による処理を行う前、(b)は高周波処理後を示す。 図2は、電磁誘導加熱装置の一例を示す概念図である。 図3は、本発明の成形体の3点曲げ試験の結果を示す図である。 図4は、高周波処理を行う前の5つのサンプルに関する成形体断面のSEM観察写真である。 図5は、高周波処理を行う前の成形体のX線観察(3D)画像である。
本発明の樹脂をマトリックスとするCFRP成形体は、該成形体の厚さ方向における断面において、炭素繊維の断面積に対する、該炭素繊維と周囲の樹脂までとの間の空隙部分の面積比が、100:10〜100:0の範囲内、より好ましくは空隙部分が確認できないことである。
本発明のCFRPのマトリックス樹脂は、特に限定されるものではないが、射出成形体に好適な熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。従って、CFRTP成形体に対して好適であると言える。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記「成形体の厚さ方向」とは、成形体の適当な箇所から成形体の厚さ方向に向かって垂直に切断して観察することを意味する。ただし、切断面に位置する炭素繊維の配置によっては、同じ形状の炭素繊維であっても断面積が異なってくる。例えば円柱形状の炭素繊維を考えてみる。円柱に対して、垂直な断面は真円であり何処で切断面をみても同じ断面積であるが、斜めに切断した場合には楕円になるので斜めの程度(角度)によって断面積が増減する。また、円柱の高さ方向からの垂直な断面は長方形であり、円の直径に沿って切断した場合の長方形が最も断面積が大きく、そこから離れるに従って長方形の面積が小さくなる。それだけでなく、円柱の高さ方向から斜めに断面を見ると、半円、半楕円などの形状を取り得る。
そこで、本発明の「炭素繊維の断面積」とは、柱状あるいは糸状の炭素繊維の太さ方向の垂直断面と定義する。すなわち前記の例で、円柱形状の炭素繊維であれば、円柱に対して垂直な断面(真円)を意味することとなる。これによって、成形体の切断面に現れる各炭素繊維の配置が異なっても、計測対比する「炭素繊維の断面積」は常に一定の値となる。
また、対比する「空隙部分の面積」とは、前記定義の炭素繊維の断面と同一平面上における、繊維の周縁から樹脂までの間の空隙部分の面積を意味する。三次元の空間である空隙部分は、炭素繊維の断面積(二次元)との関係において、同一平面上でなければ適切に対比することが困難であり、このように対比することによって、繊維と樹脂との界面接着の程度を把握し易いからである。
より具体的には図1に示す。この図は、本発明のCFRTP成形体断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察写真である。(a)図において円柱形状の炭素繊維が、周囲の樹脂との間に空隙部分を有して存在していること、(b)図において前記の空隙部分が消失している(従って、炭素繊維の断面積:空隙部分の面積=100:0である)ことが分かる。
本発明において好適なCFRTP成形体の製造方法としては、所定の形状に射出成形した後、成形体の任意の箇所に対して1.6MHz〜2.2MHzの高周波を10分以内の時間照射するという電磁誘導加熱工程を加えるだけで良い。従来の射出成形工程に、単に電磁誘導加熱工程を追加するだけであるため、これまでの製造工程に容易に導入可能である。前記工程では、CFRTP成形体内の炭素繊維が電磁誘導により渦電流を発生し、抵抗によって発熱する電磁誘導加熱を利用している。熱可塑性樹脂をマトリックスとして炭素繊維が分散されているので、電気を通しやすい炭素繊維のみが発熱する。従って、炭素繊維の量、長さ、分散状態などが発熱量に直接影響すると考えられる。
なお、電磁誘導加熱をCFRTPのプレス成形時に利用することが報告されている(「材料」(Journal of the Society of Materials, Japan),Vol.58,No.7,pp642-648,July 2009)。この文献のCFRPは、繊維の交差が多い連続繊維を用いており、〜500KHzの周波数であっても、時間をかければある程度の加熱はされる。しかし、本発明のように射出成形後の後処理に使用するものではなく、また、繊維長さが短く、交差も少ない不連続繊維が分布する射出成形品では、高周波誘導加熱の周波数範囲は、MHz帯でなければ、炭素繊維を効率的に発熱させることが困難である。本発明では、最も効率良く、炭素繊維を発熱させる0.6MHz〜2.2MHz、好ましくは1.6MHz〜2.2MHzを用いることが望ましい。
本発明の電磁誘導加熱工程では、射出成形時の金型内における樹脂が溶融から冷却する過程で成形される場合とは異なり、炭素繊維の周囲の樹脂のみを選択的に加熱することとなる。すなわち、射出成形時には樹脂全体が流動可能であるのに対して、電磁誘導加熱時には炭素繊維からある程度離れた位置の樹脂は固体状態を維持し、繊維周囲の限定された樹脂だけが溶融する。また、溶融することにより樹脂の体積が大きくなるが、空隙部分を除いては増大した樹脂の行き場がない。そのため、溶融樹脂と繊維とは強制的に密着させられることとなる。しかも部分的な加熱であるために、溶融樹脂は周囲の非加熱樹脂によって射出成形時における冷却速度よりも早く冷却されるのである。
このように、電磁誘導加熱による、部分的溶融樹脂、急加熱、急冷却、限定された空間などの要因によって、仮に炭素繊維と樹脂とが濡れ性の悪い関係であったとしても、両者の界面接着強度をより強固にすることができる。この効果によって、CFRP成形体の機械的強度を向上させることができるのである。
しかも前記加熱処理は成形体全体に対して行っても、溶融する樹脂は炭素繊維の近傍に位置する樹脂だけに留めることができるので、成形体全体の寸法、形状に影響を及ぼすことがない。すなわち、射出成形型を新たに作り直す必要がないので、正味の追加投資は、電磁誘導装置に限定され、この製造工程を従来設備に導入し易いのである。
前記電磁誘導加熱工程は、出荷前のCFRP成形体に対して行うだけでなく、使用中の成形体に対しても行うことができる。使用時に受けた負荷や衝撃によって成形体内の炭素繊維と樹脂との間に亀裂(空隙部分や、空隙がなくても接着していない状態も含む)が生じた場合などに、当該部分に前記電磁誘導加熱を行うのである。異種の組合せからなる複合材料では、劣化や損傷は炭素繊維と樹脂との界面に発生しやすく、これがCFRP成形体全体の破壊の起点となる。このような起点を適度に補修することができれば、成形体の長期に渡る使用が可能となる。そこで、本発明の補修方法は、CFRP成形体に対し、前記成形体の補修を要する箇所に0.6MHz〜2.2MHz、好ましくは1.6MHz〜2.2MHzの高周波を10分以内の時間照射し、電磁誘導加熱する工程を含むものである。
補修を要する箇所は、外観上明確であるとは限らない。そのような場合には、過去にCFRP成形体を使用中に破損した箇所を目安としたり、使用中に衝撃を与えた箇所や繰り返し負荷のかかる箇所を対象として定期的に本発明の補修方法を行うことにより、成形体全体の破壊が起きる前に予防的措置を講ずることもできる。
本発明の電磁誘導加熱工程に使用する装置について説明する。電磁誘導加熱装置は、CFRP成形体を回動可能に固定する保持手段と、CFRP成形体を高周波電磁誘導加熱する手段とを有している。図2にこの装置の概要を示す。CFRTP成形体1は装置の保持手段2によって磁界3に対する相対位置を保持され、所定の方向から磁界を作用させることができる。保持手段はCFRTP成形体を処理時に固定し或いは所定の向きに方向付けすることができれば良く、特別な構造を有している必要はない。磁界を作用させても発熱しない材質であれば、例えば成形体を載置することのできるガラス製の台のような物であっても良いのである。
保持手段を回転あるいは前後左右に移動させることで、成形体の所定部位を選択的に加熱することができる。例えば、射出成形において溶融したCFRTPの合流部に接合痕が表れている(ウエルドといわれる)箇所を集中的に加熱したり、成形体の薄肉部と厚肉部、平坦面と段差を有する面などを処理することで強度的に弱いと推定される箇所を狙ってより短時間で電磁誘導加熱工程を完了させるのである。このように製品の機能向上と製造効率の両立を図ることで、低価格・高品質のCFRP成形体を供給することができる。
CFRTP成形体に磁界3を作用させる電磁誘導加熱手段は、高周波電流を供給する供給部(図示せず)と磁界を発生する誘導加熱コイル4とからなる。このような高周波電磁誘導加熱の具体例としては、ワイエス電子工業(株)の電磁誘導装置(電源部IH−052W、発信部IH−052M−FC)などが好適である。この装置では、電界効果トランジスタによる誘電加熱用の高周波インバータで、低ノイズ化を達成し、このインバータによって、2MHzという超高周波数帯域を利用することができる。これによって、従来は磁性金属の加熱が主であった電磁誘導加熱で、非磁性金属や炭素繊維などの急速短時間加熱が可能となったのである。なお、図2では磁界3を太い点線の下向きの矢印で、概念的に示しているが、これはあくまでイメージ図である。
CFRTP成形体1の内部には、炭素繊維5が分散されているが、磁界3の作用している領域(図2では、点線の円6で示している)内の炭素繊維5’は、誘導加熱により温度が上昇していく。磁界により炭素繊維内を流れる渦電流と電気抵抗によりジュール熱が発生するためである。
図2に示すような構成の装置を用いてCFRTP成形体を電磁誘導加熱処理した結果を以下に示す。
(実施例1)
ポリプロピレンをマトリクスとし、炭素繊維の長さが約3.5mmで炭素繊維含有率約30重量%のペレット(三菱レイヨン製 PYROFIL PP-C-30A)を用いて、射出成形機(日精樹脂工業(株)のNEX110−12E)を使用して、CFRTP成形体を成形した。
前記成形体に対して、ワイエス電子工業(株)の電磁誘導装置(電源部IH−052W、発振部IH−052M−FC、コイルは内径φ30mmで巻き数は2である)を用いて、2.0MHzの周波数で5分間照射した。電磁誘導加熱処理を行ったもの(本発明)と、行わないもので3点曲げ試験(JISK7074)に準拠してスパン60mmで試験を行った結果を図3に示す。なお、図1に示すSEM観察写真の(a)が射出成形のみのもの、(b)が電磁誘導加熱処理を行ったものである。
図3より、射出成形だけのものに比べて本発明の処理工程を経た成形体は、約10%の曲げ弾性率の向上が認められた。従って、電磁誘導加熱によって炭素繊維の周囲に樹脂を密着させることで機械的強度の向上が図れることが判る。
(実験例1)
図4には、実施例1で使用したと同じCFRTP成形体について高周波による処理を行う前の5つのサンプル(I〜V)を、切断してそのSEM観察写真を示している。なお、各写真の点線で囲った四角部分は、炭素繊維とその周囲の樹脂との空隙部分の面積を計算に使用した箇所を示したものである。この炭素繊維の断面積との比率を下記の表1に示す。
表に示すように、射出成形等の条件にもよるが、炭素繊維の断面積を100とすると、樹脂との空隙部分の面積は10よりも大きい部分がかなりの割合で存在し、以外にも炭素繊維と樹脂との密着性に問題があることが判る。
(実験例2)
図5には、実施例1で使用したと同じCFRTP成形体について高周波による処理を行う前のサンプルを、(株)島津製作所のマイクロフォーカスX線CT装置(inspeXio SMX-100CT)で測定(X線管電圧:80kV、ボクセル当量長:0.004mm/voxel)したときの3D画像を示している。図中立方体が成形体を、より白く見える箇所が空隙部分を示している。射出成形の条件にもよるが、このように成形体内部には、かなりの空隙部分が生じているもとの推定された。
以上説明したように本発明のCFRP成形体は、通常の射出成形の製造工程に、電磁誘導加熱の処理工程を加えるだけで、簡単かつ短時間の処理によって成形体の機能向上に寄与することができる。
CFRPを使用した射出成形の製造プロセスに本発明の製造方法を利用することが可能で、簡易的に導入できるので、様々な用途に利用されるCFRP成形体に適用できる。
また、電磁誘導加熱装置全体として小型化が可能で、設置場所を問わず小規模の製造現場でも導入可能であり、実際にCFRP成形体を使用している現場に持って行って、成形体の強度回復や修繕に利用することもできる。
1 CFRTPの成形品
2 保持手段
3 磁界
4 コイル
5、5’ 炭素繊維
6 磁界の作用している領域

Claims (2)

  1. 樹脂をマトリックスとする炭素繊維強化複合材料を所定の形状に射出成形する工程、
    射出成形後に任意の箇所に対して、1.6MHz〜2.2MHzの高周波を10分以内の時間照射し、電磁誘導加熱する工程を含み、
    前記電磁誘導加熱した箇所を、該成形体の厚さ方向における断面において、
    炭素繊維の断面積に対する、該炭素繊維と周囲の樹脂までとの間の空隙部分の面積比が、100:10〜100:0の範囲内とし、
    該成形体全体の寸法、形状には変化がない
    ことを特徴とする、炭素繊維強化複合材料の射出成形体の製造方法。
  2. 炭素繊維強化複合材料の射出成形体に対して、
    補修を要する箇所に1.6MHz〜2.2MHzの高周波を10分以内の時間照射し、電磁誘導加熱することにより、
    該成形体の厚さ方向における断面において、
    炭素繊維の断面積に対する、該炭素繊維と周囲の樹脂までとの間の空隙部分の面積比が、100:10〜100:0の範囲内とし、
    該成形体全体の寸法、形状には変化がない
    ことを特徴とする、炭素繊維強化複合材料の射出成形体を補修する方法。
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