JP6269925B2 - 炭素繊維強化複合材料の検査方法および検査装置 - Google Patents

炭素繊維強化複合材料の検査方法および検査装置 Download PDF

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Description

本発明は、炭素繊維強化複合材料成形体の品質検査およびその検査に使用する検査装置に係わり、具体的には前記成形体中の炭素繊維を直接加熱し、その結果生じる表面温度の応答を観察することで、迅速かつ簡便に成形体内における繊維の分散等の状態をモニタリングする方法および装置に関するものである。
炭素繊維を用いた複合材料は、軽量でありながら強度や耐衝撃性などの力学的特性に優れているため、航空機部材および自動車部材など多くの分野で利用されている。特に軽量で高い力学特性が求められる航空機部材用途としては好適に用いられる。この成形方法としては、主にプリプレグ法が採用されている。
プリプレグ法とは、炭素繊維に、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させてシート状の中間基材(以下、プリプレグという)を作成し、このプリプレグを所望の形状に裁断、積層し、含浸樹脂を硬化させることにより炭素繊維強化複合材料(以下、CFRPという)を得る手法である。
プリプレグ法を使用する製法については、例えば、炭素繊維とガラス転移温度が硬化温度より10℃以上高い液状エポキシ樹脂を用いる製造方法(特許文献1)、炭素繊維が束状で実質的に2次元配向している炭素繊維シート等の成形材料において、特定のエポキシ化合物と特定の3級アミン化合物等を特定比率で含むサイジング剤を炭素繊維に塗布し、マトリックス樹脂と炭素繊維との接着性を高めた方法(特許文献2)の他、非常に多数の提案がある。
これらの方法によれば高性能のCFRPを確実に成形できる利点があるものの、一旦プリプレグを加熱硬化させるという工程が必要であり、生産性における改良の余地がある。
一方、製造工程簡素化を実現するために、炭素繊維及びマトリックス樹脂を含有する樹脂組成物を、射出成形法又は圧縮成形法により母材上に直接成形する製造方法(特許文献3)や、所定範囲の体積抵抗率を有する炭素繊維チョップドストランドと熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物(特許文献4)を製造する方法、特定の熱伝導率及び形状を有するピッチ係炭素繊維に合成樹脂からなるマトリックスを含浸せしめ、炭素繊維の充填率が増加し、厚さ方向の熱伝導率が改善されたCFRP(特許文献5)、などが提案されている。
前記の提案による熱可塑性樹脂をマトリックスとするCFRPは、加熱により可塑化させて射出成形できることから高サイクル成形が可能で、生産性が高く、複雑形状を高精度に成形できる。しかし、射出成形では樹脂の流動に伴い炭素繊維も移動することから、繊維の配向や分散の不均一が生じることがあり、実成形品では単純な引張試験片形状で得られる強度に比べ、低い強度しか達成できないことがある。
さらに、製造工程で繊維が偏って分散したり、特定の方向に配向して、複合材料の力学特性がばらつくという問題があった。逆に、積極的に配向利用し、配向を制御して力学特性を向上させる方法も検討されているなど、内部の繊維の状態は、成形体の物性に密接に関連している。
また、溶融樹脂が合流して融着痕となるウエルドが発生する場合、炭素繊維を含有する材料を使用する方が、炭素繊維を含有しない材料を用いたものに比べて、ウエルドによる強度低下などの影響が大きくなるという問題もあった。
このため、射出成形による成形品の力学特性などを確保するには、製造条件がどのように影響しているのかを、成形品ごとに迅速に測定して試験結果に反映させることが重要であり、量産化後は、製造ラインに製品の品質を保証する検査工程を導入する必要がある。CFRPの検査方法としては、配向角の異なる複数のプライ数を有するCFRPのプライ間の剥離欠陥を、渦電流を用いて検出する方法(特許文献6)、CFRPにフラッシュランプの熱線を照射して瞬時に加熱したのち照射を止め、フラッシュランプの熱線照射に同期させて熱的非定常時におけるCFRP表面からの熱放射エネルギーを赤外線サーモグラフ装置により画像入力し、表面温度分布の時間変化を測定することによりCFRPの欠陥部位を検出する方法(特許文献7)などの他、X線CTにより成形品の繊維の配向や分布を可視化する方法がある。
例えば、フラッシュライトなどを用いて瞬間的に対象物の表面温度を上昇させ、その後の検体の表面の温度分布変化から内部欠陥を特定する方法(パルスサーモグラフィー法と呼ばれる)は、非破壊検査実施の簡便さを特徴としている。光を照射後、赤外線カメラにより温度分布の経時変化を観察するだけであり、瞬時に広い面をカバーすることも可能である。しかし、時間とともに温度が均一化するので、表面近傍の浅い欠陥の検出にしか利用し難いという課題がある。
また、X線を用いたCTでは、分解能が数十μmであり、繊維1本の直径が約6μmと細い炭素繊維に対しては、繊維を明瞭に観察できないことに加え、測定時間に数十分から数時間かかる。空間分解能の良いマイクロフォーカスX線を用いたCTの場合には、解像度は上がるものの、観察できる製品の大きさが制限され、測定に時間がかかることに変わりがない。しかも、これらはX線を用いるため遮蔽する必要があり、また装置も高価である。
特開2003−26820号公報 特開2013−117003号公報 特開平10−278070号公報 特開2006−152023号公報 特開2008−208490号公報 特開平9−72884号公報 特開平10−96705号公報
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、樹脂をマトリックスとするCFRP内の炭素繊維の状態の差を、製造現場で製品検査に用いることができる簡便で短時間に検出する方法および検査装置を提供することを目的とする。
すなわち、射出成形の仕掛品について、仕掛かり前後の成形品で同じ繊維状態にあるかどうか、あるいは外気温の変化などで型温が変化した場合の成形品中の繊維状態が同じであるかどうかなどを、製造現場で製品検査に使用できる数分程度の短時間で検査する方法を提供することを目的とする。炭素繊維の絶対長や配向分布などを定量測定する方法ではなく、同一成形体の部位による繊維の状態或いは別々の成形体の内部で繊維の状態が同一であるかどうかを簡易迅速に判断する方法である。
前記課題を解決するために、本発明のCFRPの検査方法は、樹脂をマトリックスとするCFRP内部の炭素繊維の状態について、周波数範囲が1.6MHz〜2.2MHzの高周波を用いてCFRPの検査部位を電磁誘導加熱する工程、炭素繊維の配向を検出する場合には、前記加熱工程の際に、電磁誘導コイルによる生じる磁界の方向と材料の検査部位の方向が変化するように回転させる工程を含み、前記CFRPの検査部位の温度変化を測定する工程、前記温度変化の結果からCFRP内における炭素繊維の状態として、該繊維の交差、配向、分散度合、繊維長、繊維量のうちの少なくとも一つの物性が、他の検査部位或いは他のCFRPと相違するか否かを検出する工程を含むことを特徴とする。
電磁誘導加熱により、CFRP内の炭素繊維のみが加熱され、炭素繊維の発熱により起きる成形品の温度上昇をモニタすることによって、内部にある炭素繊維の状態が、他の検査対象と同一か否かを比較するのである。CFRP内の炭素繊維の加熱、発熱状態は、炭素繊維の量、繊維長に起因する繊維の重なり具合、磁界と繊維のなす角度などにより変化する。また、炭素繊維の分布の違い等により成形品表面への熱伝導経路に差が生じる。従って、成形品単位で内部の炭素繊維の形態、分散度合、繊維長、繊維量が異なれば、成形品表面の測定位置が同じであっても温度応答(昇温速度や上昇温度)が異なるので、温度応答を測定することによって内部炭素繊維の状態の違いを検出できる。
また、本発明の検査装置は、CFRPと磁界との相対位置を任意に設定できる回動可能な保持手段と、前記CFRPの検査部位を、周波数範囲が1.6MHz〜2.2MHzの高周波を用いて電磁誘導加熱により、検査部位内の炭素繊維のみを加熱する高周波電磁誘導加熱手段と、前記CFRPの検査部位の温度変化を測定する測定手段と、前記温度変化の結果からCFRP内における炭素繊維の状態として、該繊維の交差、配向、分散度合、繊維長、繊維量のうちの少なくとも一つの物性が、他の検査部位或いは他のCFRPと相違するか否かを検出する検出手段とを有することを特徴とする。
CFRPに磁界を作用させるにあたり、CFRPの測定物単位で比較するために、検査対象ごとに同一の測定条件(磁界との相対位置、被検体の測定表面の位置など)で評価する必要があり、位置関係の測定条件を設定するために回動可能な保持手段を有する。また磁界の方向に対して回転させて温度変化を測定することによって内部炭素繊維の配向の差が検出できる。この温度変化の測定にあたっては、サーモビューアなどの非接触式温度計などが適用できる。
本発明の検査方法および検査装置によれば、高周波を用いてCFRP内の炭素繊維を直接加熱し、その結果生じる被検体の表面温度応答から、射出成形品の物性に大きく影響する成形品中の炭素繊維の長さや配向・分布等において、成形品ごとにバラツキがあるか否かを、非破壊で、簡易迅速に検出することができる。
図1は、繊維形態の違いによる炭素繊維の発熱の差を示す図である。 図2は、繊維状態の違いによる炭素繊維の発熱の差を示す図である。 図3は、繊維長さによる炭素繊維の発熱の差を示す図である。 図4は、炭素繊維含有量による炭素繊維の発熱の違いを示す図である。 図5は、本発明の検査装置の一例について、その概要を示す図である。 図6は、CFRP射出成形品のX線CT画像である。 図7は、CFRP射出成形品中の炭素繊維の長さヒストグラムと累積頻度を示す図である。 図8は、射出成形時にスクリュー回転数を変えて成形したCFRP射出成形品中の平均繊維長を示す図である。 図9は、射出成形時にスクリュー回転数を変えて成形したCFRP射出成形品の表面温度の時間変化を示す図である。 図10は、射出成形時にスクリュー回転数を変えて成形したCFRP射出成形品の引張試験の結果を示す図である。 図11は、一方向ゲートから成形した引張試験片の繊維配向を示すX線CT画像である。 図12は、磁界と成形体の射出方向の成す角度を0°および90°となるように成形体を設置した場合の、成形体表面温度の時間変化を示す図である。 図13は、ウエルドを有する成形体の二次元温度画像である。
本発明の樹脂をマトリックスとするCFRPの検査方法は、以下の3工程を含むことを特徴とする。(1)CFRPの検査部位を、高周波を用いて電磁誘導加熱する工程、(2)CFRPの検査部位の表面温度を測定する工程、(3)温度変化の結果から、CFRP内の炭素繊維の状態が、他の検査部位或いは他のCFRPと相違するか否かを検出する工程、である。
本発明の検査対象となるCFRPのマトリックス樹脂は、特に限定されるものではないが、特に熱可塑性樹脂を用いた場合に有効である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記検査の(1)の工程では、CFRP内の炭素繊維が電磁誘導により渦電流を発生し抵抗によって発熱する電磁誘導加熱を利用している。熱可塑性樹脂をマトリックスとして炭素繊維が分散されているので、電気を通しやすい炭素繊維のみが発熱する。従って、炭素繊維の量、長さ、分散状態などが発熱量に直接影響すると考えられる。
なお、電磁誘導加熱をCFRPのプレス成形時に利用することが報告されている(「材料」(Journal of the Society of Materials, Japan),Vol.58,No.7,pp642-648,July 2009)。この文献のCFRPは、繊維の交差が多い連続繊維を用いており、〜500KHzの周波数であっても、時間をかければある程度の加熱はされる。しかし、本発明のように検査に使用するものではなく、また、繊維長さが短く、交差も少ない不連続繊維が分布する射出成形品では、高周波誘導加熱の周波数範囲は、MHz帯でなければ、炭素繊維を効率的に発熱させることが困難である。本発明では、最も効率良く、炭素繊維を発熱させる1.6MHz〜2.2MHzを用いることが望ましい。
(2)の工程では、前記発熱量の変化を、表面温度を測定することで直接計測する。実際の温度を数値として計測する他に、CFRPから放射される赤外線を分析し、熱分布を図として画像化することでも良い。計測器としては、非接触の放射温度計や、電磁誘導の影響を受けない光ファイバー式温度計などを利用することができる。
(3)の工程では、(2)で測定した温度の上昇速度や、到達温度などを、他の検査部位或いは他の被検体の結果と比較して、相違するか否かで、各検査部位或いは各検体間で内部炭素繊維の状態に差異があるかどうかを判定する。特に射出成形などの製造工程では、製品ごとの品質が均一化されていることが重要であり、短時間で成形品の検査が完了する必要がある。本発明では、前記の通りCFRP内の炭素繊維の分布状態を非破壊で、かつ簡単な工程で検査することが可能であり、量産化された製造ラインにこの検査方法を導入することによって、不良品の市場への流通を防止することができる。
本発明の(1)の工程では炭素繊維の電磁誘導加熱を利用しており、実際に炭素繊維の状態が発熱にどのように影響しているのかを知ることによって、成形品ごとの均一性の他に、CFRPの成形品内部における炭素繊維の分布状態をある程度予測することができると思われる。成形品の機械的な物性に直接影響する炭素繊維の分散状態を知ることができれば、製造方法の最適条件を決定したり、高精度の品質保証に繋がる。そこで、いくつかのモデル的な炭素繊維を用いてこれを浸漬した水温の変化を測定し、その予測可能性について以下に検証した。
図1は、直交平織した炭素繊維と、一方向にのみ束ねた炭素繊維とを、それぞれイオン交換水中に浸し、高周波を用いて加熱した結果の水温上昇を示した図である。イオン交換水はCFRPにおける熱可塑性樹脂のマトリックスと考えれば良い。また、温度測定には高周波による電磁誘導の影響を受けないガラス製液柱温度計を使用した。
横軸に加熱時間(分)、縦軸に測定温度(℃)で表すと、図に示すように直交平織の炭素繊維を含む方が温度上昇速度も速く、到達温度も高いことが判る。このことから、射出成形品についても、炭素繊維の形態(繊維交差や配向)の差異によって温度上昇に違いが見られることが予測できる。
図2には、サイジング剤を除去して分散状態を均一化した場合と不均一の場合とで比較した結果を示している。この結果から明らかに均一分散系の方が、温度上昇が速く、炭素繊維の分散状体が温度応答にかなり影響することがわかる。従って、成形品についても炭素繊維の分散の違いは、本発明の方法により容易に検出することができると予測される。
図3には、長さが3mm〜30mmの間で異なる炭素繊維を用いた場合の水温上昇を測定した結果である。図に示されるように、概ね炭素繊維が長くなると、温度上昇が速く、加熱されやすいことがわかる。ただし、10mmを超える長さになると差が明確に現れ難くなり、繊維長以外の要因(繊維の方向など)が寄与すると考えられる。
図4には、炭素繊維の長さや分散状態を揃えて、繊維の混合量のみを変化させたときの水温上昇の変化を示した。図に示されるように、炭素繊維の量が多いほど温度上昇が速く、加熱されやすいことがわかる。
図1〜4に示される結果から、炭素繊維の形態や分散、長さ、量により高周波誘導加熱の温度応答が異なることが明らかとなった。すなわち、射出成形品中で変動する炭素繊維の絡み合い状態、分散状態などが温度上昇に反映され、測定温度から逆に炭素繊維の状態を予測することの可能性が示唆されたのである。
次に、本発明の検査装置に関して説明する。検査装置は、CFRPを回動可能に固定する保持手段と、CFRPを高周波電磁誘導加熱する手段と、CFRPの温度変化を測定する手段と、CFRP内の炭素繊維の状態が、他のCFRPと相違するか否かを検出する手段とを有している。
図5に、CFRPの検査装置の概要を示す。CFRP1は検査装置の保持手段2によって磁界3に対する相対位置を保持され、所定の方向から磁界を作用させることができる。保持手段はCFRPを測定時に固定し或いは所定の向きに方向付けすることができれば良く、特別な構造を有している必要はない。磁界を作用させても発熱しない材質であれば、例えばCFRPを載置することのできるガラス製の台のような物であっても良いのである。
CFRPの測定に際して、保持手段を回転あるいは前後左右に移動させることで、成形品の所定部位における炭素繊維の分散状態等の違いを検出することもできる。例えば、射出成形において溶融したCFRPの合流部に接合痕が表れている(ウエルドといわれる)箇所と、ウエルドの無い箇所とで、内部の炭素繊維の状態が相違しているのか否か、または、(境界領域における放熱条件等の補正が必要になるが、)成形品の薄肉部と厚肉部、平坦面と段差を有する面などで違いはあるのか等、を検査することも可能なのである。このように成形品ごとの相違を検証するだけでなく、同一の成形品における所定部位ごとに検査することで、目的とする成形品の品質向上に反映させることができる。
CFRPに磁界3を作用させる電磁誘導加熱手段は、高周波電流を供給する供給部(図示せず)と磁界を発生する誘導加熱コイル4とからなる。このような高周波電磁誘導加熱の具体例としては、ワイエス電子工業(株)の電磁誘導装置(電源部IH−052W、発信部IH−052M−FC)などが好適である。この装置では、電界効果トランジスタによる誘電加熱用の高周波インバータで、低ノイズ化を達成し、このインバータによって、2MHzという超高周波数帯域を利用することができる。これによって、従来は磁性金属の加熱が主であった電磁誘導加熱を、非磁性金属や炭素繊維などの急速短時間加熱が可能となったのである。なお、図5では磁界3を太い点線の下向きの矢印で、概念的に示しているが、これはあくまでイメージ図である。
CFRP1の内部には、炭素繊維5が分散されているが、磁界3の作用している領域(図5では、点線の円6で示している)内の炭素繊維5’は、誘導加熱により温度が上昇していく。磁界により炭素繊維内を流れる渦電流と電気抵抗によりジュール熱が発生するためである。
この温度上昇を、例えば放射温度計(キーエンス社製FT−H20)などの温度変化測定手段7により計測する。温度変化測定手段は、サーモビューア等に代表される赤外線カメラであり、熱源となるCFRPが発する遠赤外線を受光する。このときの受光した遠赤外線の強度に応じて、被検体の温度を測定し、その測定結果を画像データなどにして、検出手段(図示せず)に送信する。
検出手段では、現在測定中のCFRPの温度変化のデータをそのままグラフ化或いは画像化して出力したり、過去に測定したCFRPの温度変化のデータとの差異を表示することによって、CFRPの成形品間での均一性や、同一成形品内における部位ごとの均一性を評価することができる。
図5に示すような構成の装置を用いて、CFRPの射出成形品について温度応答特性の評価を行った結果を以下に示す。
(実施例1)
表1に示すように炭素繊維含有率(重量%)の異なる2種類のペレットを用いて、射出成形計量時のスクリュー回転数を2種の速度で行った計4種類の異なる試験片を作製した。ペレットは、ポリプロピレンをマトリクスとし炭素繊維をそれぞれの重量%で含む(三菱レイヨン製 PYROFIL PP-C-10AおよびPP-C-30A)。射出成形機は日精樹脂工業(株)のNEX110−12Eを使用して、スクリュー回転数を調整した。また、試験片形状は、JISK7162に準拠した1号型引張試験片とした。
これらの作製した試験片において、どのように炭素繊維が分散し、配向し、長さが変化しているかを断面の光学顕微鏡観察、X線−CTなどで確認した。試験片中の繊維長さ分布の測定は、試験片のマトリクス樹脂を灰化させて、繊維のみを取りだし、マイクロスコープで400本の繊維長さを測定することにより行った。また、X線−CT測定は、マイクロフォーカス線源(スカイスキャン社製 SkyScan 1172α)を用いて行った。なお、測定に要する時間は約4時間/1試験片であった。
図6に試験片No.3と試験片No.4のX線−CT画像を示す。試験片に対するX、Y方向は図に示す通りである。その結果、炭素繊維の配向や分散には大きな差が生じていないことが確認された。
一方、炭素繊維の長さには、明らかに差が生じていた。繊維の長さの評価の一例として、試験片No.1について、成形品の炭素繊維長さの分布に関するヒストグラムを図7に示す。
ヒストグラムの右側の縦軸は累積度数(%)を示し、長短の炭素繊維が一様に分布する場合には傾きが45°の直線となる。図7では、短い炭素繊維が多く累積度数の立ち上がりが早くなっていることがわかる。
こうして評価した4つの試験片について、炭素繊維の平均繊維長さと累積度数の変化を図8に示す。図に示すように、試験片No.1>試験片No.2>試験片No.3>試験片No.4の順に炭素繊維の長さが短くなっていることが判る。従って、射出成形時の計量(ホッパーから投入したCFRPを、スクリュー前部へ溜める操作)時の混練条件によって、炭素繊維の長さが、実際の成形品において異なってくることが確認できた。
この試験片を用いて、本発明の検査方法にしたがって温度変化の測定を行った。高周波電磁誘導加熱は、ワイエス電子工業(株)の電磁誘導装置(電源部IH−052W、発振部IH−052M−FC)を用い、コイルは内径φ30mmで巻き数は2である。試験片の表面温度は、放射温度計((株)キーエンス製、FT−H20)を用いて各試験片の同一箇所を測定した。図9に各試験片の温度上昇の変化を示す。
図9より、炭素繊維の含有量については、当然のことながら30重量%のものが、10重量%のものよりも昇温速度が速く、含有量の差は顕著に検出可能であることが判る。また、同じ含有量でも炭素繊維長さの短い方が、長いものよりも昇温速度、到達温度ともに高くなることも示された。従って、本発明の方法によれば、非破壊で、炭素繊維の分布状態の違いが検出できることが判る。
次に、同じ試験片を用いて、成形品の引張試験を行った。試験機は、(株)オリエンテック社製テンシロン万能材料試験機(型番RTC−1350A ロードセル:50kN)を用い、試験条件はJISK7162に準拠した。その結果を図10に示す。
図10の結果より、試験で用いた炭素繊維長さの範囲においては、炭素繊維含有量が同じであれば、繊維長さは引張試験の結果に殆ど影響を与えないことが判る。この結果から、本発明の検査方法の方が、引張試験による評価よりも、成形品の品質について敏感に評価できる可能性が高いことが示された。
(実施例2)
表1に示す試験片No.3と同様の条件で試験片を作製した。試験片は、長手方向片側のゲートから一方向に樹脂を流動させて成形している。図11に示すX線CT画像からもわかるように、流れ方向(すなわち、試験片長手方向)に、繊維がほぼ配向している。
この試験片の長手方向をコイル4の中心軸方向(z方向)と90°をなすように向けてコイルの中央に設置し、表面温度を測定した(90°)。また、同じ試験片を90°回転し、試験片長手方向がコイル中心軸方向(z方向)と0°をなすように向けて、コイル中央位置に設定して、表面温度を測定した(0°)。0°および90°のそれぞれについて、温度測定の結果を図12に示す。
繊維配向がある場合には、コイルと繊維配向の相対角度を変えることにより、昇温挙動に差が生じていることがわかる。磁界と繊維方向が直交する90°配置(A)の方が、磁界と繊維方向が並行する0°配置(B)よりも昇温速度が速く、高い温度で平衡する。このことから、コイルにより生じる磁界の方向と試験片の方向が変化するように試験片を回転させて測定すれば、配向の有無と合わせて、繊維の配向方向も推定することができる。
(実施例3)
炭素繊維含有量を30重量%とし、スクリューの回転数を150rpmに設定して計量したCFRPの材料を使用して、意図的にウエルドを発生させた試験片と、ウエルドを発生させない試験片を作製した。
ウエルドを発生させた試験片の引張試験の強度は、ウエルドを発生させていない試験片に比較して1/10以下であった。CFRPの場合、ウエルドの影響で著しく強度低下が起きることがわかる。
この各試験片について、温度検出には、温度分布が二次元画像で得られるサーモグラフィー((株)アピステFSV−1200−L16)を用いた。試験片の設置位置は、実施例1と同様であり、温度測定は、コイル下方から行った。図13に示すように、熱画像からウエルドの位置で温度が大きく異なっていることが確認できる。また、ウエルドの左右で温度が異なっていることも確認できる。このように、繊維の分布を温度分布から知ることができる。
上記のようにウエルド部は強度への影響が大きく、その影響度合いは被検体を破壊する強度試験よりも、本発明のように非破壊で測定することにより感度高く評価することが可能と思われる。また、孔やボスなどが存在しウエルドの発生が避けられない成形品の場合には、このウエルドの評価が重要な課題と考えられる。
また、サーモグラフィーを用いて、同一形状の異なる製品において、同一箇所の熱画像を測定し、差画像をとることにより、繊維分布の差が生じている箇所をより明確に検出することも可能と考えられる。さらに、望遠系のレンズを用いたりすることで、検査対象エリアの範囲や空間分解能を変えることも可能である。
以上説明したように本発明の方法によれば、非破壊でかつ短時間、しかも(場合によっては)他の方法よりも検出感度の高い評価が可能と思われる。
CFRPを使用した量産化技術のための製造プロセスの条件検討に本発明の方法を利用することが可能で、簡易的に評価できるので、技術開発のスピードアップに大いに貢献することが期待できる。
また、実際の製造ラインに本発明の方法および装置を組み込むことによって、成形品の品質保証、ラインの異常発生の検出などを簡易・迅速に行うことができる。装置全体としても小型化が可能であり、設置場所を問わず小規模の製造現場でも導入可能である。
1 CFRPの成形品
2 保持手段
3 磁界
4 コイル
5、5’ 炭素繊維
6 磁界の作用している領域
7 温度変化測定手段

Claims (2)

  1. 樹脂をマトリックスとする炭素繊維強化複合材料内部の炭素繊維の状態を非破壊で検査する方法であって、
    炭素繊維強化複合材料の検査部位を、周波数範囲が1.6MHz〜2.2MHzの高周波を用いて電磁誘導加熱により、検査部位内の炭素繊維のみを加熱する工程、
    炭素繊維の配向を検出する場合には、前記加熱工程の際に、電磁誘導コイルによる生じる磁界の方向と材料の検査部位の方向が変化するように回転させる工程を含み、
    前記炭素繊維強化複合材料の検査部位の温度変化を測定する工程、
    前記温度変化の結果から炭素繊維強化複合材料内における炭素繊維の状態として、該繊維の交差、配向、分散度合、繊維長、繊維量のうちの少なくとも一つの物性が、他の検査部位或いは他の炭素繊維強化複合材料と相違するか否かを検出する工程、
    を含むことを特徴とする炭素繊維強化複合材料の検査方法。
  2. 樹脂をマトリックスとする炭素繊維強化複合材料を回動可能に固定する保持手段と、
    前記炭素繊維強化複合材料の検査部位を、周波数範囲が1.6MHz〜2.2MHzの高周波を用いて電磁誘導加熱により、検査部位内の炭素繊維のみを加熱する高周波電磁誘導加熱手段と、
    前記炭素繊維強化複合材料の検査部位の温度変化を測定する測定手段と、
    前記温度変化の結果から炭素繊維強化複合材料内における炭素繊維の状態として、該繊維の交差、配向、分散度合、繊維長、繊維量のうちの少なくとも一つの物性が、他の検査部位或いは他の炭素繊維強化複合材料と相違するか否かを検出する検出手段と、
    を有することを特徴とする炭素繊維強化複合材料の検査装置。
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