JP6507542B2 - バイオマーカーを用いた組換えタンパク質生産量の予測方法 - Google Patents

バイオマーカーを用いた組換えタンパク質生産量の予測方法 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質生産の分野に関する。さらに詳しくは、宿主細胞において生産される組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法に関する。
組換えタンパク質の生産過程では、研究分野のみならず、バイオ医薬品の製造において、高生産性細胞の選択を必要とする。宿主細胞の染色体はヒストンのアセチル化や高度な凝集等により遺伝子の発現が制御されており、ベクターを用いて細胞を形質転換する場合、挿入される染色体の場所によって遺伝子の発現量は大きく異なる。そのため形質転換細胞において目的とする組換えタンパク質遺伝子の発現量ひいては生産量は細胞ごとに大きく異なる。
細胞ごとに組換えタンパク質の生産量を定量し、細胞をスクリーニングするためには継代培養を必要とするため、目的の組換えタンパク質を高レベルで生産する形質転換細胞の選別に膨大な労力と時間を要している。
加えて、組換えタンパク質を高レベルで生産する細胞でも、血清存在下で樹立した生産株を製造のために無血清馴化する場合や、導入遺伝子が安定導入された細胞を選択するために添加した抗生剤を除去する場合、さらに長期に継代培養する場合など、培養を継続するうちに次第に生産量が低下する例が少なからず存在する。これは、遺伝子サイレンシングにより組換えタンパク質遺伝子の発現が抑制されるためと考えられる。ランダムにインテグレーションされる場合、目的とする組換えタンパク質遺伝子のゲノム導入位置を制御することは通常不可能であるため、遺伝子サイレンシングの効果による生産量の低下を予測することは極めて困難である。
上述の理由より、当該分野において、組換えタンパク質の生産量レベルと相関し、かつ迅速に検出可能なバイオマーカーを同定することが要求されている。一方、組換えタンパク質の発現と相関するバイオマーカーについての研究は少数の報告があるのみであり(特許文献1、非特許文献1)、顕著な進展はみられていない。本発明は、組換えタンパク質の生産量レベルを予測し、組換えタンパク質の生産性が高い細胞を迅速、かつ効率よく選別するためのバイオマーカーを同定することでこの要求に貢献する。
WO2011/057239(特表2013−510324)
Padraig Doolan et al., Biotechnol.J, 7, 516−526(2012)
本発明の目的は、動物細胞、特に哺乳類細胞において、組換えタンパク質の生産性が高い細胞を迅速、かつ効率よく選別するための効果的なバイオマーカーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、組換えタンパク質の産生に広く使用されているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、組換えタンパク質の生産量の変化と相関して発現量が変化する遺伝子として、Inositol phosphates(以下、イノシトールリン酸とも表記する。)の代謝に関連するタンパク質群をコードする遺伝子を見出した。この知見を基に、バイオマーカーとして、前記タンパク質群から選ばれる1つ以上のタンパク質の生産量、または、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定することで、組換えタンパク質の生産レベルを迅速かつ簡便に予測できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
項1.
組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法であって、宿主細胞としてイノシトールリン酸の代謝に関連するタンパク質群から選ばれる1つ以上のタンパク質を発現する能力を有する細胞を用い、前記宿主細胞による前記タンパク質の生産量、または、前記宿主細胞による前記タンパク質をコードするDNAの発現量を定量することによって、前記組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法。
項2.
イノシトールリン酸の代謝に関連するタンパク質が、Inositol pyrophosphate phosphatase(以下、イノシトールポリリン酸ホスファターゼとも表記する。)(EC 3.1.3.56またはEC 3.1.3.62)である、項1に記載の方法。
項3.
イノシトールリン酸の代謝に関連するタンパク質が、Inositol polyphosphate−5−phosphatase(以下、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼとも表記する。)(EC 3.1.3.56)である、項1に記載の方法。
項4.
宿主として動物細胞を用いる、項1から3のいずれかに記載の方法。
項5.
宿主として哺乳類細胞を用いる、項4に記載の方法。
項6.
宿主としてCHO細胞を用いる、項5に記載の方法。
項7.
DNAの発現量の定量を、定量PCRを用いて行う、項1から6のいずれかに記載の方法。
項8.
宿主が発現するイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼが、配列番号3または4で示されるアミノ酸配列を有する、項7に記載の方法。
項9.
宿主が発現するイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼをコードするDNAが、配列番号1または2で示される塩基配列である、項7に記載の方法。
本発明によって、目的とする組換えタンパク質の生産量を直接定量するよりも迅速に、組換えタンパク質の生産量レベルを予測し、効率的に組換えタンパク質を高生産する細胞を選択することができる。また、バイオマーカーの発現量の定量方法は特に限定されないが、定量PCR(Quantitative polymerase chain reaction、本明細書ではqPCRとも表す。)を用いた定量を行うことで、組換えタンパク質の生産量を、ELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)等を行いて直接定量するよりも迅速かつ簡便に、予測することができる。
選択用薬剤(Puromycin)除去後に、抗体産生能が低下した細胞と選択用薬剤除去をしていない抗体産生能を維持した細胞について、次世代シークエンサーを用いたRNAseq解析から、Inositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量の差を算出した結果を示した図である。 複数(n=5)の細胞株において、組換えタンパク質の生産量をELISAで定量した結果とInositol polyphosphate−5−phosphataseの発現をqPCRで定量した結果を比較した図である。組換えタンパク質の生産量についてPuromycin除去前の値を基準に除去後の値と比較した倍率をX軸に、Inositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量を、Puromycin除去前の値を基準に除去後の値と比較した倍率をY軸にプロットした。図中の1から5の数字は細胞株の番号を示す。 経日的に組換えタンパク質の生産量が減少した結果を示した図である。組換えタンパク質の生産量はELISAで定量した。 図3に示した経日的に組換えタンパク質の生産量が減少した細胞株におけるInositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量の変化を示した図である。Inositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量はqPCRで定量した。 5つの細胞株において、ELISAを用いて定量した組換えタンパク質生産量を示した図である。図中の1から5は細胞株の番号を示す。 図5に示した細胞株におけるInositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量をqPCRで定量した結果を示した図である。図中の1から5の数字は細胞株の番号を示す。 組換えタンパク質の生産をELISAで定量した図5の結果と、Inositol polyphosphate−5−phosphataseの発現をqPCRで定量した図6の結果との相関を示した図である。図中の1から5の数字は細胞株の番号を示す。 図7のY軸について、各細胞株でのInositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量を細胞株3のInositol polyphosphate−5−phosphataseの発現量で除した値に変更した図である。図中の1から5の数字は細胞株の番号を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の実施形態の一つは、組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法であって、宿主細胞としてイノシトールリン酸の代謝に関連するタンパク質群から選ばれる1つ以上のタンパク質を発現する能力を有する細胞を用い、バイオマーカーとして、前記宿主細胞の前記タンパク質の生産量、または、前記宿主細胞の前記タンパク質をコードする遺伝子の発現量を定量することによって、前記組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法である。
本発明において、「組換えタンパク質」は、宿主細胞に導入された組換え発現ベクター(宿主−ベクター系)により行われる遺伝子の転写および翻訳の結果、生産されたタンパク質を指す。本発明の生産量の予測方法等に適用できる前記タンパク質の種類は特に限定されない。たとえば、研究分野やバイオ医薬品などの分野で有用な種々のタンパク質に適用することができる。具体的には、IgG抗体などが挙げられる。
本発明において、イノシトールリン酸の代謝に関連するタンパク質は特に限定されない。例えば、イノシトールポリリン酸ホスファターゼ、ホスファチジルイノシトールキナーゼ、ホスホリパーゼCなどの酵素が挙げられるが、好ましくはイノシトールポリリン酸ホスファターゼ(EC 3.1.3.56またはEC 3.1.3.62)である。その中でも、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼ(EC 3.1.3.56)が好ましい。
イノシトールリン脂質代謝は,細胞外の情報を細胞内に伝える主要な機構であり、イノシトールポリリン酸ホスファターゼ(EC 3.1.3.56またはEC 3.1.3.62)はイノシトールリン脂質代謝を制御する酵素の一つである。現在のところイノシトールポリリン酸ホスファターゼの全ての機能が知られているわけではないが、イノシトールポリリン酸ホスファターゼは直接または間接に組換えタンパク質の生産に関与しているようである。イノシトールポリリン酸ホスファターゼの機能については、本発明におけるバイオマーカーとしての正確さを決定するための要件ではない。
本発明を実施する際に用いられる宿主細胞としては、イノシトールリン酸の代謝に関連するタンパク質群から選ばれる1つ以上のタンパク質を発現する能力を有する細胞であれば特に限定されない。
例えば、組換えタンパク質の産生に一般的に用いられるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)や、マウスミエローマ細胞(NSO)、ベビーハムスターキドニー細胞(BHK)、ヒト繊維肉腫細胞(HT1080)、COS細胞などの細胞が例示されるが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が好適に使用される。ただし、上述の宿主細胞に限定されるものではなく、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル、ブタなどの動物由来の細胞なども対象とすることができる。また、酵母、昆虫細胞などを用いたタンパク質生産システムにおける実施にも応用しうる。前記宿主細胞は、CHO細胞等において予め無血清馴化を済ませた細胞であってもよい。これらの細胞は市販のものを入手することができる。
本発明の方法に用いる組換えタンパク質発現ベクターは特に限定されない。例えば、プラスミドベクターであることができる。また、これに限らず、例えば、ウイルスベクター、コスミドベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)及び他の非プラスミドベクターも使用できる。これらのベクターは市販のものを入手することができる。例えばMammalian PowerExpress System(Toyobo社製)が挙げられる。
本発明における「バイオマーカー」の一例であるイノシトールポリリン酸ホスファターゼは、NGS(next generation sequencer、次世代シーケンサー)を用いたRNAシークエンス(RNA−seq)による発現差解析(シークエンスしたRNA配列断片の数をサンプル間で比較する方法)及びqPCRを用いた解析で、組換えタンパク質の生産量との相関を確認し、同定したものである。
なお、NGSとは、一般的に、近年市場に現れたDNAシークエンサーの内、サンガー法を原理とするキャピラリーシークエンサーと対比される一群の装置の総称であり、例えば、イルミナ社のMiSeqやHiSeqなどがある。
本発明の方法において、宿主が発現するイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼのアミノ酸配列は特に限定されない。例えば、配列番号3または4で示されるアミノ酸配列が示される。また、宿主が発現するイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼをコードするDNAの塩基配列も特に限定されない。例えば、配列番号1または2で示される塩基配列が示される。
なお、細胞種が変われば、配列も変わる。
宿主細胞にCHO−K1細胞を用いる場合、バイオマーカーとして、好ましくは配列番号1および2内の塩基配列、もしくは配列番号3および4内のアミノ酸配列を利用することができる。
組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法は特に限定されない。例えば、バイオマーカーの発現量を確認することができる方法を用いて、基準試料の発現量と被検試料の発現量との相対比較(発現差解析)を行う。
前記発現差解析においてバイオマーカーの発現量を確認することができる方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述の実施例1に示すCHO−K1細胞株のような、組換えタンパク質の生産量とバイオマーカーの発現量とが相関しており、かつ、培養時にある特定の薬剤(実施例1ではピューロマイシン)が存在する場合と存在しない場合とで前記生産量および前記発現量に差がある細胞株を用いて、前記生産量および前記発現量の低い条件で培養したものを基準試料とし、前記生産量および前記発現量の高い条件で培養したものを被検試料として発現量の比較を行えばよい。
また、発現差解析における基準試料および被検試料の設定は、サンプリングポイントの異なる同じ細胞株由来の試料間で行っても良いし、由来となる細胞株が異なっていても良い。
また経時的にサンプリングした同じ細胞株由来の試料を、基準試料及び被検試料として用いる場合、イノシトールポリリン酸ホスファターゼの経時的な発現変化の傾向から、組換えタンパク質生産量レベルの変化を予測することが可能である。
組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法として、具体的には以下の方法が例示できる。
<組換えタンパク質の生産量予測方法>
(1)基準とする試料の組換えタンパク質量を定量するステップ。
(2)基準とする(1)と同試料のイノシトールポリリン酸ホスファターゼの発現を定量するステップ。
(3)組換えタンパク質の生産量を予測したい被検試料のイノシトールポリリン酸ホスファターゼの発現量を定量するステップ。
(4)基準試料と、被検試料とで、イノシトールポリリン酸ホスファターゼの発現量を比較するステップ。
(5)組換えタンパク質生産量とイノシトールポリリン酸ホスファターゼの発現量は比例するため、基準試料の既知の組換えタンパク質生産量から、被検試料での組換えタンパク質生産量レベルを予測するステップ。
バイオマーカーの発現量を確認する方法は特に限定されず、定性的な方法、定量的な方法のいずれであってもよいが、定量的な方法が好ましい。定量の対象は特に限定されないが、例えば、バイオマーカーのmRNA転写物のレベルまたはタンパク質のレベルであってよい。例えば、前記宿主細胞による前記タンパク質の生産量、または、前記宿主細胞による前記タンパク質をコードするDNAの発現量などが発現量確認の物差しとして挙げられる。
これらは、NGSを用いたRNA−seqによる発現差解析、qPCRを用いた解析、DNAマイクロアレイを用いた発現差解析およびELISA等の方法で定量することができるが、迅速に定量できることからqPCRを用いて行うことが好ましい。
本発明により、細胞選抜に要する日数を短縮することで、短時間、高効率に組換えタンパク質高生産細胞を取得することが可能になり、従来技術と比べて顕著な効果を示す。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1:組換えタンパク質生産低下株におけるNGSを用いた発現差解析
組換えタンパク質生産量と発現量が相関関係にあるバイオマーカーをスクリーニングする目的でNGSを用いた発現差解析を行った。
組換えタンパク質の産生に広く使用されているCHO細胞系統を以下の実施例全体を通して利用した。本実施例には、ヒト化IgG抗体遺伝子とピューロマイシン(以下、Puromycinとも記載する。)耐性遺伝子を含むベクターを用いて形質転換し、シングルクローン化したヒト化IgG抗体産生CHO−K1細胞(理研バイオリソースセンター、No.RCB0285)由来系統を用いた。
CHO細胞系統では、薬剤選択マーカー発現カセットを用いた薬剤選択に使用される薬剤であるピューロマイシンを除去することにより組換えタンパク質の生産量が低下する細胞株が少なからず存在する。そこで、本実施例ではさらに、前記細胞系統から、宿主細胞の培養時に、ピューロマイシンを除去することで、組換えタンパク質であるヒト化IgG抗体の生産量が27mg/Lから1mg/Lに著しく低下した細胞株を選抜した。
この細胞株を用いて、培養時のピューロマイシンの存在時・非存在時におけるヒト化IgG抗体の生産量の差をバイオマーカー候補の発現量と比較することにより、組換えタンパク質生産量と発現量が相関関係にあるバイオマーカーをスクリーニングすることができる。
宿主細胞の培養時に、ピューロマイシンを除去することで、組換えタンパク質(ヒト化IgG抗体)の生産量が27mg/Lから1mg/Lに著しく低下した細胞株から、ピューロマイシン除去前後で、それぞれ全RNAを抽出し、TruSeq Standard mRNA調製キット(illumina社製)を用いてサンプルを調製した。調製したサンプルを用いて、ピューロマイシン除去を行ったサンプルと行わなかったサンプルでNGSを用いたRNA−seq解析を実施した。NGSはMiSeq(illumina社製)を用いた。解析は、CLC Genomics Workbench(CLCBio社製)を用いた。
その結果、ピューロマイシン除去前後で発現量に差がある遺伝子群の情報を得た。得られた結果のうち、本発明におけるバイオマーカーであるイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼ(EC 3.1. 3.56)の発現量の差を図1に示す。図中の値はピューロマイシン除去前の値を基準に除去後の値と比較した倍率を示す。−22.2倍は、ピューロマイシン除去後の値が除去前の値の1/22.2に低下したことを示す。
上記の発現差解析では、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼ以外のイノシトールリン酸の代謝に関連する遺伝子も確認されたが、NGSで十分な発現量かつ、明確な発現量の差があったのは、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼのみであった。
実施例2:複数細胞株を用いたqPCR解析
実施例1より、ピューロマイシンの有無で発現量に差があったイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼについて、組換えタンパク質の生産量レベルとの相関を確認する目的で、ピューロマイシン除去後の組換えタンパク質の生産量レベルが異なる複数の細胞株で、qPCRを用いて発現量を確認した。(ピューロマイシン除去前の細胞株由来の試料を基準試料、ピューロマイシン除去後の細胞株由来の試料を被検試料とした。)
各細胞株のピューロマイシン除去前後の組換えタンパク質の生産量はELISAを行い定量した。具体的には、1000倍希釈したAffinity Purified Goat anti−Human IgG−Fc Coating Antibody(Bethyl Laboratories社製)を固相化したELISAプレートに、培養上清を添加し、室温で2時間インキュベートした。次に、Wash Solution(50mM Tris、0.14M NaCl、0.05% Tween20、pH8.0)で3回洗浄し、10000倍希釈したHRP Conjugated Goat anti−Human IgG−Fc Detection Antibody(Bethyl Laboratories社製)を100μL添加して室温で1時間インキュベートした後、さらにWash Solutionで3回洗浄し、TMB+Substrate−chromogen(DAKO社製)で5分間反応させた。100μLの1N硫酸を加えて反応停止後、プレートリーダー(主波長450nm、副波長620nm)で吸光度を測定した。標準品から作成した検量線をもとに抗体濃度を算出した。なお、標準品として、Human Reference Serum(Bethyl Laboratories社製)を使用した。
一方、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量はqPCRを用いて定量した。具体的には、各細胞株のピューロマイシン除去前後の全RNAをそれぞれ鋳型にしてReverTra Ace −α−(Toyobo社製)を用いてcDNAを合成した。qPCRは、THUNDERBIRD qPCR Mix(Toyobo社製)を用いて、各6pmolのプライマー(イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼ用のペア:配列番号5および6、β−actin用のペア:配列番号7および8)を含む20μLの反応液をそれぞれ調製した。反応は95℃、1分の前反応の後、「95℃、15秒→60℃、30秒」を40サイクル繰り返すスケジュールでリアルタイムPCR装置(Applied Biosystems 7500 Fast リアルタイムPCRシステム)を用いて行った。イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量をβ−actinの発現量で除して補正した相対定量値を用いて比較を行った。
結果を図2に示す。組換えタンパク質の生産量またはイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量について、ピューロマイシン除去前の値を基準に除去後の値と比較した倍率をプロットした。ピューロマイシン除去前後の組換えタンパク質の生産量差とイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量差との相関係数は0.96(n=5)であり、高い相関があることが示唆された。
実施例3:経日変化の確認
実施例2より、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量が組換えタンパク質の生産量と高い相関を示すことが示唆されたが、組換えタンパク質の生産量の変化後、時間を要してイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量変化が起きている場合、組換えタンパク質の生産レベルを迅速に予測する用途に利用することができない。そのため、組換えタンパク質の生産レベルとイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量の変化との関係を時間的に確認した。
CHO−K1細胞を培地(FBS 10%、Puromycin 7.5μg/mL、培地はBalanCDTMCHOGROWTH Aに8mMになるようにL−Glutamineを加えたもの)で培養後、ピューロマイシン除去を行い、ピューロマイシン除去後、経日的にサンプリングした。組換えタンパク質の生産量をELISAで、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量をqPCRで定量した。ELISA及びqPCRは実施例2記載の方法で実施した。(ピューロマイシン除去前の細胞株由来の試料を基準試料、ピューロマイシン除去後の細胞株由来の試料を被検試料とした。)
組換えタンパク質の生産量が経日的に低下した細胞株の各タイムポイントでの組換えタンパク質の生産量を図3に示す。同タイムポイントでのイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量を図4に示す。組換えタンパク質(ヒト化IgG抗体)の生産量はピューロマイシン除去前(Pre)で34mg/L、ピューロマイシン除去8日目(Day8)で38mg/L、12日目(Day12)で27mg/L、14日目(Day14)で8mg/Lであった。一方、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量をβ−actinの発現量で除して相対定量した値を、ピューロマイシン除去前を基準に除去後と比較した倍率は、Day8で1.8倍、Day12で−1.5倍、Day14で−1.5倍であった。Day12で組換えタンパク質がわずかに低下した時点で、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼは明らかな減少に転じた。この結果は、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼが減少傾向であることから、組換えタンパク質量も低下傾向である(今後大きく低下する)と予測できる可能性を示す。よってイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼをバイオマーカーとして用いることで、ELISAを行い組換えタンパク質の生産量を確認するより、簡便かつ迅速に組換えタンパク質の生産量低下を予測できることが示唆された。
実施例4:細胞株間での比較
実施例2及び3では、本来のイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量が細胞株によって大きく異なる可能性を考慮し、同じ細胞株で組換えタンパク質の生産量変化前後の発現差を基準として、組換えタンパク質の生産量変化と比較した。つまり、実施例2及び3の場合、細胞株ごとに、事前のサンプリングを行い、ベースとなるイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量を確認する労力を要する。そこで、組換えタンパク質の生産量低下前の事前サンプリングを行うことなく、組換えタンパク質の生産量レベルを予測可能か検討した。
イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量及び組換えタンパク質の生産量の定量は実施例2及び3に記載の方法で行った。
組換えタンパク質(ヒト化IgG抗体)生産量を図5に、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量を図6に示す。ELISAにより定量した各細胞株の組換えタンパク質生産量と、qPCRで定量した各細胞株のイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量をβ−actinの発現量で除した相対定量値とで比較すると相関係数は0.85(n=5)であり高い相関を示した(図7)。よって、異なる細胞株間でも、ベースとなるイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量は比較的一定であり、組換えタンパク質の生産量変化前に事前サンプリングを行わなくても、組換えタンパク質の生産量を予測できることが示唆された。
組換えタンパク質の生産性が高い細胞の選抜にイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼを用いる場合、例えば図8で、組換えタンパク質生産量が20mg/L以下である細胞株番号3のイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量をβ−actinの発現量で除した相対定量値を組換えタンパク質生産量低値の基準とし、組換えタンパク質の生産量レベルを予測したい細胞株のイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの発現量をβ−actinの発現量で除した相対定量値と比較する(抗体の発現量が低い細胞株番号3が基準試料となる。)。予測したい細胞株の値が組換えタンパク質の生産量が低い株(細胞株番号3)の値の2倍に満たない場合は、組換えタンパク質の生産量が低い、あるいは低下する細胞株であると判定して除外することで、組換えタンパク質を高発現する細胞株を簡便に選別することができる。図8の場合、組換えタンパク質生産量が50mg/Lを超える細胞株番号5のみが選別されることになる。
本発明は迅速に組換えタンパク質の生産量レベルを予測し、生産量が低い細胞を除去することを可能とする。これにより、研究分野のみならず、抗体医薬品の製造等において、高効率発現株を容易に選抜できるようになる。

Claims (4)

  1. 組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法であって、イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼ(Inositol polyphosphate−5−phosphataseとも表記する)を発現する能力を有するCHO細胞を宿主細胞として用い、前記宿主細胞による前記イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼの生産量、または、前記宿主細胞による前記イノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼをコードするDNAの発現量を定量することによって、前記組換えタンパク質の生産量レベルを予測する方法。
  2. DNAの発現量の定量を、定量PCRを用いて行う、請求項1に記載の方法。
  3. 宿主が発現するイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼが、配列番号3または4で示されるアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 宿主が発現するイノシトールポリリン酸−5−ホスファターゼをコードするDNAが、配列番号1または2で示される塩基配列である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
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