JP6507152B2 - 光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光のエネルギーを細胞内エネルギーに変換することのできる光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母およびその利用に関する。
生体や環境にやさしいクリーンなエネルギーが望まれる時代にあって、無尽蔵に存在する光エネルギーを利用する太陽電池や、光エネルギーを有機物として蓄積した植物体をエネルギー源や化成品の発酵原料として用いようとするバイオリファイナリーの研究が盛んである。また、光合成細菌や藍藻などの光合成能を有する微生物を用いて、光エネルギーを用いて有用物質を生産させる研究が行なわれている。しかし、これらの微生物は概して増殖速度が遅いことや、代謝経路の全貌が不明確であることが、実用化するうえでの課題となっている。一方で、増殖速度が速い大腸菌や出芽酵母などの発酵微生物に代謝工学的な改良を施し、医薬品や食品、化粧品、燃料、ポリマー原料等の様々な有用物質の発酵生産性を向上させる研究が行なわれている。しかし、目的物質の生産性が向上するにつれ、野生株とは異なる偏った負荷を課せられたこれらの発酵微生物が、しばしば細胞内エネルギー(ATP:Adenosine triphosphate)不足に陥り、生育の低下や目的物質の生産性の頭打ちに直面することが多い。
ロドプシンを光捕獲核酸として組み込んだ微生物が示されており、光捕獲および炭素固定の効率を遺伝的に改善することによって、ならびにフォトバイオリアクター内で増やすための増殖特性を最適化することによって、光合成生物を安定して利用する経路を操作するための方法および組成物について開示がある(特許文献1)。特許文献1では、光独立栄養生物を高光合成生物に変換することを可能にしていることが示されており、段落番号0062において光独立栄養生物として真核生物の植物および藻類、並びに原核生物のラン藻類、緑色硫黄細胞、緑色非硫黄細胞、紅色硫黄細胞、および紅色非硫黄細胞が例示されている。さらに、段落番号0063から0070に至って各種微生物が具体的に例示されているものの、酵母に係る記載はない。
ハロバクテリウム・サリナルム(Halobacterium salinarium)由来の光駆動プロトンタンパク質であるバクテリオロドプシンを、ミトコンドリアに発現させたシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)について開示がある(非特許文献1)。ここでは、モデル生物であるS. pombeを用いて膜タンパク質のプロトン濃度勾配依存的な物質のミトコンドリア輸送活性やミトコンドリアへの局在化やホールディングの研究を行うためのモデルが報告されているが、エネルギー産生に係る記載はない。
有用物質の発酵生産性を向上し、増殖速度が速く、細胞内エネルギー状態が改善されている微生物の開発が望まれている。
特表2011-516029号公報
Proc. Natl. Acad. Sci. USA. Vol. 91, pp. 9367-9371 (1994)
本発明は、光のエネルギーを細胞内エネルギーに変換することのできる光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法および当該光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を提供することを課題とする。さらに、当該光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を用いたATPの産生方法および産生されたATPを利用する代謝産物の産生方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、光エネルギーを利用できないサッカロミセス亜門酵母に、光合成生物工学的に光リン酸化能を付与することで光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を創製することにより、光エネルギーを利用可能にする新しい光駆動有用物質生産宿主細胞が得られた。より具体的には、光駆動プロトンポンプタンパク質であるロドプシンにミトコンドリア局在化シグナルを付加したものを、サッカロミセス亜門酵母のミトコンドリアに発現させることで、本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を作製することに成功し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.ロドプシンをコードする核酸およびミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸をサッカロミセス亜門酵母に導入することを特徴とする光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
2.ロドプシンが、デルタロドプシン、バクテリオロドプシン、センサリーロドプシンI、センサリーロドプシンII、プロテオロドプシン、チャンネルロドプシンI、チャンネルロドプシンII、ハロロドプシン、キサントロドプシン、ナトリウムポンプ型ロドプシンから選択されるいずれかのロドプシンである、前項1に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
3.ロドプシンが、デルタロドプシンである、前項2に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
4.デルタロドプシンが、ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンである、前項3に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
5.ミトコンドリア局在化シグナルが、5-アミノレブリン酸シンターゼ由来のシグナルである、前項1〜4のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
6.以下の工程を含む、前項4または5に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法:
1)ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンをコードする核酸と5-アミノレブリン酸シンターゼをコードする核酸を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
2)上記1)の核酸が組み込まれたサッカロミセス亜門酵母を培養する工程。
7.以下の工程を含む、前項4または5に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法:
1)ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンをコードする核酸を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
2)さらに、5-アミノレブリン酸シンターゼをコードする核酸を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
3)上記1)および2)の核酸が組み込まれたサッカロミセス亜門酵母を培養する工程。
8.サッカロミセス亜門酵母が、サッカロミセス・セレビシエである、前項1〜7のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
9.前項1〜8のいずれかに記載の作製方法により作製された光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
10.デルタロドプシンをコードする核酸と、ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸が組み込まれてなる光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
11.サッカロミセス亜門酵母に組み込まれたデルタロドプシンをコードする核酸に基づき、当該サッカロミセス亜門酵母のミトコンドリアにデルタロドプシンが発現していることを特徴とする、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
12.デルタロドプシンが、ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンである、前項10または11に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
13.ミトコンドリア局在化シグナルが、5-アミノレブリン酸シンターゼ由来のシグナルである、前項10〜12のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
14.サッカロミセス亜門酵母が、サッカロミセス・セレビシエである、前項10〜13のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
15.前項9〜14のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を培養することを特徴とする、ATPの産生方法。
16.前項15に記載のATPの産生方法により得られるATPを利用することを特徴とする当該光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母代謝産物の産生方法。
17.光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母代謝産物が、グルタチオン、トレハロースおよび/またはコハク酸である前項16に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母代謝産物の産生方法。
18.前項9〜14のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を宿主とし、所望のタンパク質をコードする遺伝子を組込み、培養することを特徴とする所望のタンパク質の製造方法。
ミトコンドリアでは、電子を内膜に伝達させて、水素イオン(H+:プロトン)を膜間スペース(膜間腔)に輸送し(電子伝達系)、生じるプロトン濃度勾配(電位差、pH差)を用いて、酸化的リン酸化によって共役的にATPの合成が行われる。通常、出芽酵母を含むサッカロミセス亜門酵母は細胞内に光駆動プロトン輸送タンパク質、即ちロドプシンを有さないため、ATPの合成において光エネルギーを利用することはできない。一方、本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、ロドプシンをサッカロミセス亜門酵母のミトコンドリアに機能的に発現させることで、光エネルギーを細胞内の化学エネルギーへ変換する機能を有する(図1参照)。本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母によれば、ミトコンドリアに局在しないロドプシンを組み込んだサッカロミセス亜門酵母と比較して、細胞内のATP濃度は約1.5〜2倍に高まった。また、産生されたグルタチオンも同様に約2倍に高まった。これらの結果より、本発明の方法により作製された光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は光駆動高エネルギー宿主細胞として利用可能である。
本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母におけるミトコンドリアの概念図である。ミトコンドリアでのATP産生の概念を示す図でもある。 ATPをエネルギー源とするグルタチオンの産生概念図である。 酵母ミトコンドリアでのdRの発現を確認した写真図である。(実験例1) dRmitおよびdRcytについて、各種ストレスを与えて培養したときの増殖能を確認した結果図である。(実験例2) dRmitおよびdRcytについて、各種ミトコンドリア呼吸鎖酵素阻害剤を加えた条件下で培養したときの増殖能を確認した結果図である。(実験例3) dRmitおよびdRcytについて、ミトコンドリア内のATP濃度を確認した結果図である。(実験例4) dRmitおよびdRcytについて、グルタチオン(GSH)の産生能を確認した結果を示す図である。併せて、細胞内のATP濃度および細胞内グルコースの消費量を測定した結果を示す図である。(実験例5) dR+(dRmit)について、トレハロースおよびコハク酸の産生能を確認した結果を示す図である。(実施例2)
本発明は、光のエネルギーを細胞内エネルギーに変換することのできる光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母およびその利用に関する。本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、ロドプシンのN末端にサッカロミセス亜門酵母のミトコンドリア局在化シグナルを付与し、サッカロミセス亜門酵母に導入することで作製することができる。
本明細書において「サッカロミセス亜門酵母」は、サッカロミセス亜門に属する酵母であれば、特に制限はなく、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・フラギリス(Saccharomyces fragilis)、サッカロミセス・ルーキシー(Saccharomyces rouxii)などのサッカロミセス属、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)などのキャンディダ属、ピキア(Pichia)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属、ヤロイワ(Yarrowia)属、ハンゼニュラ(Hansenula)属、エンドマイセス(Endomyces)属などの酵母が挙げられる。中でも、サッカロミセス属、キャンディダ属、またはピキア属の酵母が好ましく、サッカロミセス属のサッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)、キャンディダ属のキャンディダ・ユーティリス(C. utilis)がより好ましく、最も好ましくはS. cerevisiaeである。出芽酵母を含むサッカロミセス亜門酵母は、物質生産や研究の広範さにおいて分裂酵母よりも実用面での有用性と実験面での利便性を有するという特徴がある。
本明細書において「ロドプシン」とは、ロドプシンはオプシン(Opsin)というタンパク質とビタミンAであるレチナール(Retinal)の複合体であり、光受容体タンパク質をいう。ロドプシンの種類としては、例えばデルタロドプシン(Delta-rhodopsin:dR) 、バクテリオロドプシン(アーキアロドプシン、クルックスロドプシンを含む)、センサリーロドプシンI、センサリーロドプシンII、プロテオロドプシン(pR)、チャンネルロドプシンI、チャンネルロドプシンII、ハロロドプシン、キサントロドプシン、ナトリウムポンプ型ロドプシンなどが挙げられる。例えば、デルタロドプシンやバクテリオロドプシンは光照射によりプロトンを細菌の内部から外部へ汲み出す機能を有し、ハロロドプシンは光により塩素イオンを取り込む機能を有する。本発明のロドプシンは、好ましくはデルタロドプシンやバクテリオロドプシンであり、より好ましくはデルタロドプシンである。デルタロドプシンは、ハロテリジェナ・タークメニカ(Haloterrigena turkmenica, Haloterrigenasp. Arg-4)由来のものが挙げられる。大腸菌に発現させたH. turkmenica由来のデルタロドプシンについて報告がある(Biochem Biophys Res Commun 2006, 341: 285-290, GeneBank Accession No. AB00962)。
本明細書において、「ロドプシンをコードする核酸」とは、上述のロドプシンを発現可能な配列からなる核酸をいう。また、発現されるロドプシンは、必ずしも完全長のロドプシンでなくてもよく、光エネルギーにより活性化し、電子伝達機構の活性化によりプロトン濃度勾配やATPなどの細胞内エネルギーが産生しうる長さであればよい。このような機能を有するロドプシンをコードする核酸であればよい。
本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、上記サッカロミセス亜門酵母に導入したロドプシンを、サッカロミセス亜門酵母ミトコンドリアの内膜に発現させることで達成される。ロドプシンをサッカロミセス亜門酵母ミトコンドリア内膜に発現させる方法として、ロドプシンをコードする核酸と共にミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸をサッカロミセス亜門酵母に導入することによって達成される。本明細書において、「ミトコンドリア局在化シグナル」とは、サッカロミセス亜門酵母のミトコンドリアに局在的に発現していることが知られているタンパク質のN末端シグナル配列であればよく特に限定されない。例えば、ヘム合成経路の酵素である5-アミノレブリン酸シンターゼ(ALA合成酵素)由来のシグナル配列を利用することができ、より具体的にはALA合成酵素Hem1のN末端シグナル配列が挙げられる。ALA合成酵素Hem1のN末端シグナル配列を利用することができる。
本明細書において、ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸とは、上述のミトコンドリア局在化シグナルを発現可能な配列を含む核酸であればよく、特に制限されない。ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸は、具体的には例えばALA合成酵素Hem1のN末端シグナル配列としては、開始コドンから制限酵素StuIサイトまでのALA合成酵素Hem1のN末端シグナル配列を利用することができる。
本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、具体的には、以下の1)および2)の工程によって作製することができる。
1)「ロドプシンをコードする核酸」と「ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸」を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
2)上記1)の核酸が組み込まれたサッカロミセス亜門酵母を培養する工程。
「ロドプシンをコードする核酸」および「ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸」のサッカロミセス亜門酵母への導入の方法は、自体公知の方法により導入することができる。例えばこれらの核酸を発現しうる発現ベクターをサッカロミセス亜門酵母へ導入することにより行うことができる。「ロドプシンをコードする核酸」および/または「ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸」を挿入する発現ベクターは、宿主であるサッカロミセス亜門酵母において複製保持され、上記遺伝子を発現し得る自律複製型ベクターであってもよいし、サッカロミセス亜門酵母の染色体に組み込まれる、染色体組み込み型プラスミドベクターであってもよい。自律複製型ベクターおよび染色体組み込み型プラスミドベクターは、宿主であるサッカロミセス亜門酵母において保持され、かつ機能するものであれば制限なく利用することができる。ベクターとしては、例えば、pGYRや酵母由来のプラスミドYEp352GAP、YEp51、pSH19などを挙げることができる。染色体組み込み型プラスミドベクターとしては、pAURなどを挙げることができる。調製したプラスミドベクターは自体公知の方法、例えば酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法等の手法によりサッカロミセス亜門酵母に導入し、形質転換体を作製することができる。
形質転換体からなるサッカロミセス亜門酵母を常法により、培養、増殖させることで「光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母」を回収することができる。培養の条件は、酵母形質転換体の生育に適した条件において適宜設定することができる。形質転換体の培養に用いる栄養培地としては、炭素源、窒素源、無機物、および必要に応じ使用菌株の必要とする微量栄養素を程よく含有するものであれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。培養法としては、特に限定されないが、液体培養法がよく、回分培養、流加培養、連続培養または灌流培養のいずれを用いてもよい。工業的には通気攪拌培養法が好ましい。培養温度とpHは、使用する形質転換体の増殖に最も適した条件を選べばよい。培養時間は微生物が増殖し始める時間以上の時間であればよい。例えば、温度20〜40℃、好ましくは25〜35℃、pH 2〜9、好ましくは5〜8、培養日数0.5〜7日間から選ばれる条件で振盪または通気攪拌して培養することができる。サッカロミセス亜門酵母の増殖を確認する方法は特に制限はないが、たとえば、培養物を採取して顕微鏡で観察してもよいし、吸光度で観察してもよい。また、培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5〜20ppmが好ましい。そのために、通気量を調節したり、撹拌したり、通気に酸素を追加することができる。
本発明は、「光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母」にも及ぶ。光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、製法に限定されず、ロドプシンをコードする核酸およびミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸が組み込まれてなる光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母であればよいが、好適には上記方法により作製された光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母である。さらに本発明は、サッカロミセス亜門酵母に組み込まれたデルタロドプシンをコードする核酸に基づき、当該サッカロミセス亜門酵母のミトコンドリアにデルタロドプシンが発現していることを特徴とする、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母にも及ぶ。
本発明の「光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母」は、サッカロミセス亜門酵母のミトコンドリア内膜にロドプシンを発現させたものであるので、当該ミトコンドリアに本来の酸化的リン酸化に加え、光駆動ATP合成能が付与されているものである(図1参照)。この光駆動ATP合成ミトコンドリアを保持した酵母を用いて、ATP駆動反応によって有用物質を産生させることもできる。具体的には、その生合成において直接または間接的にATPをエネルギー源とする、工業上有用とされている物質であればいずれでもよく、該物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、ビタミン、糖、糖アルコール、アルコール、有機酸、生理活性低分子化合物および脂質などをあげることができる。より具体的には以下があげられる。タンパク質としては、イノシンキナーゼ、Glutamate 5-kinase (EC 2.7.2.11)、Glutamate-5-semialdehyde dehydrogenase (EC 1.2.1.41)、Pyrroline-5-carboxylate reductase (EC 1.5.1.2)、γ−グルタミルシステイン合成酵素(EC 6.3.2.2)、グルタチオン合成酵素(EC 6.3.2.3)、ヒト顆粒球コロニー刺激因子、キシロースレダクターゼ、P450などをあげることができる。ペプチドとしてはグルタチオン、アラニルグルタミンなどをあげることができ、ポリペプチドとしては、ポリリジン、ポリグルタミン酸をあげることができる。アミノ酸としては、L-アラニン、グリシン、L-グルタミン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-リジン、L-メチオニン、L-スレオニン、L-ロイシン、L-バリン、L-イソロイシン、L-プロリン、L-ヒスチジン、L-アルギニン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-システイン、L-3-ヒドロキシプロリン、L-4-ヒドロキシプロリン、5-アミノレブリン酸などをあげることができる。核酸としては、イノシン、グアノシン、イノシン酸、グアニル酸などをあげることができる。ビタミンとしては、リボフラビン、チアミン、アスコルビン酸などをあげることができる。糖としては、トレハロース、キシロースなどをあげることができ、糖アルコールとしては、キシリトールなどをあげることができ、アルコールとしてはエタノールなどをあげることができ、有機酸としては乳酸、コハク酸などをあげることができる。生理活性低分子化合物としてはグルタチオン、S-アデノシルメチオニンなどをあげることができ、脂質としては、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などをあげることができる。
本発明は、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を培養することを特徴とする、ATPの産生方法にもおよび、当該光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母から産生される有用産物、即ちATPをエネルギー源とする代謝産物、例えばグルタチオンの産生方法にも及ぶ。ATPをエネルギー源とするグルタチオンの産生概念図を図2に示す。
本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母によれば、ミトコンドリアに局在しないロドプシンを組み込んだサッカロミセス亜門酵母と比較して、細胞内のATP濃度は約1.5〜2倍に高いものを得ることができる。従来の発酵生産プロセスでは、酵母を用いて遺伝子組換え技術や代謝等により得られる目的物質の生産性が向上するにつれ、生存環境や野生株とは異なる偏った負荷を課せられたこれらの発酵微生物が、しばしば細胞内エネルギー(ATP)不足に陥り、生育の低下や目的物質の生産性の頭打ちに直面することが多かった。一方、本発明の方法により作製された光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、このような問題を解決し、生育が優れ、目的物質の高い生産性が期待される。本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母は、光駆動高エネルギー宿主細胞としても利用可能である。本発明は、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を宿主とし、所望のタンパク質をコードする遺伝子を組込み、培養することを特徴とする所望のタンパク質の製造方法にも及ぶ。
本発明の理解を深めるために、本発明の内容を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことは明らかである。
(実施例1)光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製
本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を、Saccharomyces cerevisiae BY4741(ATCC201388)を用いて作製した。S. cerevisiae BY4741のミトコンドリアにデルタロドプシン(以下、デルタロドプシンを単に「dR」ともいう。)を発現させた。
1)pGK426-dRcytの作製
H. turkmenica (JCM 9743, Riken BRC)由来のdRをコードする核酸(DNA)を、以下に示すプライマーを用いてPCRにより増幅して得た。
5'- GGCAGTCGACATGTGTTACGCTGCTCTAGC-3'(配列番号1)(SalI制限酵素認識部位下線)
5'- ATCTAGATCAGGTCGGGGCAGCCGTCG-3' (配列番号2)(XbaI制限酵素認識部位下線)
増幅して得たDNAをSalI制限酵素およびXbaI制限酵素を用いて消化し、pGK426ベクターに導入し、pGK426-dRcytを作製した。
2)pGK426-dRmitの作製
S. cerevisiaeのミトコンドリア局在化シグナルとして、ALA合成酵素Hem1をコードする核酸(DNA)、即ちhem1遺伝子(DNA)を用いた。以下に示すプライマーを用いてPCRにより増幅して得た。
5'-GGCCGCTAGCATGCAACGCTCCATTTTTGC-3'(配列番号3) (NheI制限酵素認識部位下線)
5'-GGCCGGATCCTTACTGCTTGATACCACTAGAAAC-3'(配列番号4)
増幅して得たDNAをNheI制限酵素およびStuI制限酵素を用いて消化し、上記1)で作製したpGK426-dRcytに導入し、pGK426-dRmitを得た。
3)形質転換体の作製
酢酸リチウム法によりS. cerevisiae BY4741(ATCC201388)上述の各ベクターを導入し、形質転換を行った。得られたS. cerevisiae 形質転換体を各々「dRcyt」、「dRmit」といい、以下の各実験例に供し、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の確認を行った。
4)上記S. cerevisiae 形質転換体を合成デキストロース(SD)培地中で30℃で24時間好気的に培養し、本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を作製した。
(実験例1)酵母ミトコンドリアでのdR発現の確認
本実験例では、dRmitを用いて、酵母ミトコンドリアでのdRの発現を確認した。 dRmitの細胞内局在を分析するために、EGFP(緑色蛍光タンパク質)は、dRのC末端にタグ付けした。ミトコンドリアは、ミトトラッカーレッドCMXRos 、特にミトコンドリアを染色する蛍光色素で染色した。図3に示すように、EGFPからの強い蛍光はミトコンドリア内で観察された。この結果から、dRmitが正常に発現し、S. cerevisiaeのミトコンドリアに局在していることが示唆された。このことより、酵母の細胞質でdRを発現するdRcytと区別された。
(実験例2)S. cerevisiae BY4741形質転換体の増殖
本実験例ではdRmitおよびdRcytについて、各種ストレスを与えて培養したときの増殖能を確認した(図4A,B,C)。各培養は、原則として10μMのtrans-レチナールを含むSD培地中で、dim light (=0.04μmol m-2 s-1)の光照射条件にて、30℃、撹拌175 rpmの好気条件で24〜96時間行なった。
1)各種光照射強度条件による培養
dRmitについて、各種光照射強度条件で培養したときの増殖を確認した。光の照射は、 darkness (=0μmol m-2 s-1), dim light (=0.04μmol m-2 s-1) およびbright light (=100μmol m-2 s-1)とした。増殖度は培養液の菌体濃度(OD600)測定値より確認した。その結果、各種光照射強度の違いによるdRmitの増殖度に違いは殆ど認められなかった(図4A)。
2)好気条件による培養
dim light (=0.04μmol m-2 s-1)の光照射条件にて、好気条件(撹拌175 rpm)によりdRcytおよびdRmitの培養を行った。その結果、dRcytおよびdRmitの増殖に違いは殆ど認められなかった(図4B)。
3)嫌気的条件による培養
培養液中の酸素の代わりにN2を密閉した培養容器に充填させ、dim light (=0.04μmol m-2 s-1)の光照射条件にて、嫌気的条件によりdRcytおよびdRmitの培養を行った。
その結果、dRcytおよびdRmitの増殖に違いは殆ど認められなかった(図4C)。
(実験例3)S. cerevisiae BY4741形質転換体の増殖(2)
本実験例では、dRmitおよびdRcytについて、ミトコンドリア呼吸鎖酵素阻害剤を加えた条件下で培養したときの増殖能を確認した。ミトコンドリア呼吸系におけるプロトンポンプ阻害剤であるアンチマイシンA(antimycin A)または、F0F1-ATP合成酵素阻害剤であるCCCP(carbonylcyanide-mchlorophenylhydrazone)若しくはDCCD(N,N'-Dicyclohexylcarbodiimide)の存在下で培養したときの増殖能を確認した。dRmitおよびdRcytの培養は、10μMのtrans-レチナールを含むSD培地中で、dim light (=0.04μmol m-2 s-1)の光照射条件にて、30℃、撹拌175 rpmの条件で24時間行なった。増殖度は、EnVision Multilabel Reader 2104(PerkinElmer社)を用いて培養液の菌体濃度(OD600)より確認した。
その結果、アンチマイシンA存在下 (0〜0.4 mM)で培養した場合は、dRcytに比べてdRmitはアンチマイシンAによる増殖阻害の影響が軽減されることが確認された(図5A)。一方、CCCP存在下 (0〜0.4 mM) 若しくはDCCD存在下 (0〜0.4 mM) で培養した場合には、何れの細胞も増殖が抑制されたことが確認された(図5B,C)。このことより、dRmitは光駆動によりミトコンドリア呼吸系におけるプロトンポンプの作用を補強しうることが確認された。一方、プロトン濃度勾配をATPに変換するF0F1-ATP合成酵素はdRmitの増殖にも必要であることが確認された。
(実験例4)S. cerevisiae BY4741形質転換体のミトコンドリア内ATP濃度
本実験例では、dRmitおよびdRcytについて、ミトコンドリア内のATP濃度を確認した。ミトコンドリア内でのATP産生経路は図1に示す通りである。
dRmitおよびdRcytの培養は、10μMのtrans-レチナールを含むSD培地中で、dim light (=0.04μmol m-2 s-1) の光照射条件にて、30℃、撹拌175 rpmの条件で24時間行なった。その後1.2 mg/gの湿細胞重量当たりZymolyase-20T(生化学工業)で酵母の細胞壁を消化した後で一晩を30℃で処理し、遠心分離により上清を除去しペレットを得た。ペレットをさらに界面活性剤1-O-n-octyl-β-D-glucopyranoside (2%) を加え、室温で一晩おいた。得られたサンプルをさらに遠心分離操作を行い上清から細胞抽出液を得、ATP測定用サンプルとした。ATP量は、市販のATP測定キット(プロメガ社)を用いてルシフェラーゼ発光法で測定した。
その結果、dRmitではdRcytに比べて、約1.5培のATP濃度があることが確認された(図6)。この結果より、dRをミトコンドリアに導入することで、細胞内のATP濃度が上昇することが確認され、dRmitは光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母としての性質を備えていることが確認された。
(実験例5)S. cerevisiae BY4741形質転換体のグルタチオンの産生
本実験例では、10μMのtrans-レチナールを含むSD培地中で、dim light (=0.04μmol m-2 s-1)の光照射条件にて、30℃、撹拌175 rpmの条件で培養したdRmitおよびdRcytについて、グルタチオン(GSH)の産生能を確認した。細胞内のグルタミン酸塩(glutamate)からGSHの産生経路は図2に示す通りであり、GSHの産生量は、グルタミン酸塩濃度、システイン濃度、グリシン濃度およびATP濃度に依存する。
GSHの測定のために、培養24時間目および96時間目の培養物を得、遠心分離により発酵ブロスを除去した細胞懸濁液について、EnVision Multilabel Reader 2104(PerkinElmer社)を用いて当該細胞懸濁液の菌体濃度(OD600)を測定し、0.5になるよう蒸留水を用いて調整した。次いで、細胞懸濁液を5分間95℃で加熱し、遠心分離により細胞破砕物を除去し、GSH濃度を解析した。GSH量は、市販のGSH測定キット(同仁化学社)を用いてDTNB (5-5'-dithiobis[2-nitrobenzoic acid])による呈色法で測定した。
ATPの測定は、培養24時間目および96時間目の培養物を得、実験例4と同様に行った。
グルコース濃度は、培養24時間目および96時間目の培養物を得、遠心分離を行い、沈殿を除去し、市販のキットGlucose C-II Test Kit(和光純薬)を用いて測定した。
上記測定の結果、培養96時間目においてdRmitでのGSH濃度はdRcytでのGSH濃度に比べて2倍以上であり(図7A)、ATP量についてはdRmitでの濃度はdRcytでの濃度に比べて1.5倍以上程度であった(図7B)。グルコースの消費はdRmitおよびdRcytでほぼ同様であり、培養96時間目では完全に消費されていた(図7C)。このことから、dRmitはATPおよびグルコースの消費に比べて、効率的にGSHを産生していると考えられた。
(実施例2)S. cerevisiae BY4741形質転換体のトレハロースおよびコハク酸の産生
実施例1で作製したS. cerevisiae 形質転換体について、トレハロースおよびコハク酸の産生量を確認した。上記の実験例5では、試験管において5 mLの培養液内で「dRcyt」および「dRmit」を各々培養したのに対し、本実施例では500 mL用量の坂口フラスコ内で50 mLの培養液内で「dRcyt」および「dRmit」を各々培養した。本実施例では、「dRcyt」はコントロールとし、「dRmit」を「dR+」とした。培養液の量が異なる以外は、培養液、細胞密度、光照射条件、温度等の培養条件は実験例と同手法により行った。
培養24時間目のコントロールでの産生量を100とし、各々について48時間及び72時間培養したときのトレハロースおよびコハク酸の産生量を測定した。菌の処理方法およびトレハロースの産生量およびコハク酸の産生量は、J. Biosci Bioeng. <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22280965#> Vol.113, pp. 665-673 (2011))の方法に従った。
その結果、トレハロースについては、培養72時間目においてコントロールと比較してdR+では500倍近くの産生量の増加が確認された(図8)。また、コハク酸についてはコントロールの産生量が培養時間の経過とともに減少しているのに対し、dR+では培養24時間目よりも48時間目の方が高い産生量を示し、培養72時間目でも産生量の減少はほとんど認められなかった(図8)。
以上詳述したように、本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母によれば、ミトコンドリアに局在しないロドプシンを組み込んだサッカロミセス亜門酵母と比較して、細胞内のATP濃度は約2倍に高まった。また、産生されたグルタチオンの濃度についても同様に約2倍に高まった。これらの結果より、本発明の方法により作製された光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母が、光駆動高エネルギー宿主細胞として利用可能である。
本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の代謝産物として得られるグルタチオンは、活性酵素の消去作用、解毒作用など生体にとって重要な化合物であり、医薬品、食品、化粧品、農業用途で注目されている。本発明の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母によれば、グルタチオンに限らず、ATPのエネルギーを要する生体触媒反応は多種存在する為、様々なATP駆動プロセスに利用可能である。また、細胞内ATP濃度の高まりは、細胞の生育速度や最終密度の増加、酵素量の増加や代謝全体の改善などが期待できる。光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母はATP駆動プロセスに限らず様々な有用物質生産への利用が可能な普遍的な物質生産宿主になり得る。

Claims (20)

  1. デルタロドプシンをコードする核酸およびミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸をサッカロミセス亜門酵母に導入することを特徴とする光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
  2. デルタロドプシンが、ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンである、請求項1に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
  3. ミトコンドリア局在化シグナルが、5−アミノレブリン酸シンターゼ由来のシグナルである、請求項1または4に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
  4. 以下の工程を含む、請求項4または5に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法:
    1)ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンをコードする核酸と5−アミノレブリン酸シンターゼをコードする核酸を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
    2)上記1)の核酸が組み込まれたサッカロミセス亜門酵母を培養する工程。
  5. 以下の工程を含む、請求項4または5に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法:
    1)ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンをコードする核酸を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
    2)さらに、5−アミノレブリン酸シンターゼをコードする核酸を、サッカロミセス亜門酵母に導入する工程;
    3)上記1)および2)の核酸が組み込まれたサッカロミセス亜門酵母を培養する工程。
  6. サッカロミセス亜門酵母が、サッカロミセス・セレビシエである、請求項1、4〜7のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
  7. 請求項1、4〜8のいずれかに記載の作製方法により作製された光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  8. デルタロドプシンをコードする核酸と、ミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸が組み込まれてなる光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  9. サッカロミセス亜門酵母に組み込まれたデルタロドプシンをコードする核酸に基づき、当該サッカロミセス亜門酵母のミトコンドリアにデルタロドプシンが発現していることを特徴とする、光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  10. デルタロドプシンが、ハロテリジェナ・タークメニカ由来のデルタロドプシンである、請求項10または11に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  11. ミトコンドリア局在化シグナルが、5−アミノレブリン酸シンターゼ由来のシグナルである、請求項10〜12のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  12. サッカロミセス亜門酵母が、サッカロミセス・セレビシエである、請求項10〜13のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  13. 請求項9〜14のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を培養することを特徴とする、ATPの産生方法。
  14. 請求項15に記載のATPの産生方法により得られるATPを利用することを特徴とする当該光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母代謝産物の産生方法。
  15. 光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母代謝産物が、グルタチオン、トレハロースおよび/またはコハク酸である請求項16に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母代謝産物の産生方法。
  16. 請求項9〜14のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母を宿主とし、所望のタンパク質をコードする遺伝子を組込み、培養することを特徴とする所望のタンパク質の製造方法。
  17. デルタロドプシンをコードする核酸およびミトコンドリア局在化シグナルをコードする核酸をサッカロミセス亜門酵母に導入して、該デルタロドプシンをミトコンドリアに発現させることを特徴とする光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
  18. ミトコンドリア局在化シグナルが、酵母ミトコンドリア局在化シグナルである、請求項1、4〜8又は19のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母の作製方法。
  19. ミトコンドリア呼吸系におけるプロトンポンプ作用が増強されてなる請求項9〜14のいずれかに記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
  20. デルタロドプシンを細胞質に発現させたサッカロミセス亜門酵母と比較してミトコンドリア呼吸系におけるプロトンポンプ作用が増強されてなる、請求項21に記載の光駆動高エネルギーサッカロミセス亜門酵母。
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