(ビニルエーテル化合物(A))
本発明のモノマー組成物は、カチオン重合性モノマーとして、上記式(a-1)及び/又は(a-2)で表される環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と、脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物とを含有する。
上記式(a-1)及び/又は(a-2)で表される環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物は、公知のビニルエーテル化合物の製造方法を利用して製造することができる。例えば、上記式(a-1)で表される化合物は、遷移金属化合物の存在下、2−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタンと、ビニルエステル化合物(例えば、プロピオン酸ビニル)とを反応させることにより製造することができる。また、式(a-2)で表される化合物は、2−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチル−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタンに代えてイソソルビドを使用する以外は上記と同様の方法により製造することができる。
前記脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物における脂環には、単環式炭化水素環、多環式炭化水素環(スピロ炭化水素環、環集合炭化水素環、架橋環式炭化水素環、縮合環式炭化水素環、架橋縮合環式炭化水素環)、及びこれらが単結合又は連結基を介して結合した環が含まれる。
前記単環式炭化水素環としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン環等のC5-12シクロアルカン環;シクロヘキセン環等のC5-12シクロアルケン環等を挙げることができる。
前記スピロ炭化水素環としては、例えば、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロビシクロヘキサン環等のC5-16スピロ炭化水素環等を挙げることができる。
前記環集合炭化水素環としては、例えば、ビシクロヘキサン等のC5-12シクロアルカン環を2個以上含む環集合炭化水素環等を挙げることができる。
前記架橋環式炭化水素環としては、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)等の2環式炭化水素環;ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環等の3環式炭化水素環;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環等の4環式炭化水素環等を挙げることができる。
前記縮合環式炭化水素環としては、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環等の5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環を挙げることができる。
前記架橋縮合環式炭化水素環には、ジエン類の二量体(例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等のシクロアルカジエンの二量体)や、その水素添加物等を挙げることができる。
前記連結基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
本発明の脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物としては、なかでも、下記式(a-3)で表される化合物を使用することが、速硬化性を維持しつつ、水分による硬化阻害を抑制することができる点で好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(式中、環Zは下記式(z-1)〜(z-5)
から選択される環であり、n、n’は同一又は異なって、0以上の整数を示す)
前記式(a-3)中のn、n’は同一又は異なって、0以上の整数を示し、好ましくは0〜10の整数、特に好ましくは0〜3の整数である。
脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物としては、特に、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、水添ビスフェノールF型ジビニルエーテル、水添ビフェニルジビニルエーテル、水添ビスフェノールA型ジビニルエーテル、及びトリシクロデカンジメタノールジビニルエーテルから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。本発明においては、例えば、商品名「CHDVE」(日本カーバイド工業(株)製)、「4CH−DVE」((株)ダイセル製)等の市販品を使用することができる。
本発明のモノマー組成物は、上記ジビニルエーテル化合物以外にも他のビニルエーテル化合物を含有していても良いが、モノマー組成物に含まれる全ビニルエーテル化合物に占める上記式(a-1)及び/又は(a-2)で表される環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物の合計含有量は、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは85重量%以上である。
前記他のビニルエーテル化合物としては、例えば、下記式(a-4)で表される化合物を挙げることができる。
R−(O−CH=CH2)t (a-4)
(式中、Rはt価の炭化水素基、複素環式基、又はこれらが単結合若しくは連結基を介して結合した基を示し、tは1以上の整数を示す)
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が含まれる。
1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜3)程度のアルキニル基等を挙げることができる。
1価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基、パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基等の架橋環式炭化水素基等を挙げることができる。
1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基を挙げることができる。
t価の炭化水素基としては、上記1価の炭化水素基の構造式から(t−1)個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
上記炭化水素基は、種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基等]を有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
前記複素環式基を構成する複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキセタン環等の4員環;フラン環、テトラヒドロフラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、γ−ブチロラクトン環等の5員環;4−オキソ−4H−ピラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環等の6員環;ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、4−オキソ−4H−クロメン環、クロマン環、イソクロマン環等の縮合環;3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環等の架橋環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環等の5員環;4−オキソ−4H−チオピラン環等の6員環;ベンゾチオフェン環等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環等の5員環;ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の6員環;インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環等の縮合環等)等を挙げることができる。上記複素環式基は、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)等を有していてもよい。t価の複素環式基としては、上記複素環の構造式からt個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
前記連結基としては、例えば、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、シリル結合(−Si−)、及びこれらが複数個連結した基等を挙げることができる。
他のビニルエーテル化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、イソペンチルビニルエーテル、tert−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、イソヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ヘプチルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エトキシメチルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル、2−ブトキシエチルビニルエーテル、アセトキシメチルビニルエーテル、2−アセトキシエチルビニルエーテル、3−アセトキシプロピルビニルエーテル、4−アセトキシブチルビニルエーテル、4−エトキシブチルビニルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルジメタノールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、シクロヘキシルエチルビニルエーテル、メンチルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、ノルボルネニルビニルエーテル、1−アダマンチルビニルエーテル、2−アダマンチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、1−ナフチルビニルエーテル、2−ナフチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、ジエチレングリコールエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(オキセタン化合物(B))
本発明のモノマー組成物は、カチオン重合性モノマーとして、単官能オキセタン化合物を少なくとも含むオキセタン化合物(B)を含有する。オキセタン化合物(B)は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記単官能オキセタン化合物としては、例えば、下記式(b)で表される化合物を挙げることができる。
(式中、R’は1価の有機基を示す)
式(b)中のR’における1価の有機基には、1価の炭化水素基、1価の複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基等)、置換カルバモイル基(N−アルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基等)、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基等)、及びこれらの2以上が単結合又は連結基を介して結合した1価の基が含まれる。1価の炭化水素基、1価の複素環式基、及び連結基としては、上記式(a-4)中のRと同様の例を挙げることができる。
本発明の単官能オキセタン化合物の具体例としては、下記式(b-1)〜(b-11)で表される化合物を挙げることができる。
本発明においては、例えば、「アロンオキセタン OXT−101」、「アロンオキセタン OXT−212」、「アロンオキセタン OXT−211」、「アロンオキセタン OXT−213」、「アロンオキセタン OXT−610」(以上、東亞合成(株)製)等の市販品を使用することができる。
本発明のモノマー組成物は、単官能オキセタン化合物と共に多官能オキセタン化合物[例えば、1,4−ビス([(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル)ベンゼン、ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル等]も含有していてもよいが、モノマー組成物に含まれる全オキセタン化合物に占める単官能オキセタン化合物の割合は、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは85重量%以上である。
(その他のカチオン重合性モノマー)
本発明のモノマー組成物は、カチオン重合性モノマーとして、上記ビニルエーテル化合物(A)及びオキセタン化合物(B)以外にも他のカチオン重合性モノマーを含有していても良い。他のカチオン重合性モノマーとしては、例えば、エポキシ化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物(例えば、ビニル化合物等)、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
本発明のモノマー組成物としては、なかでも、エポキシ化合物(C)を含有することが、幅広い基材に対して優れた密着性を有する(すなわち、幅広い基材選択性を有する)硬化物を形成することができる点で好ましい。
エポキシ化合物(C)としては、例えば、芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物;脂環式グリシジルエーテル系エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等);脂肪族グリシジルエーテル系エポキシ化合物;グリシジルエステル系エポキシ化合物;グリシジルアミン系エポキシ化合物;シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ化合物(以後、「脂環式エポキシ化合物」と称する場合がある);エポキシ変性シロキサン化合物等を挙げることができる。エポキシ化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のエポキシ化合物(C)としては、基材密着性に優れた硬化物を形成することができ、特に、インクジェット用インクに使用した場合は、傷つき難く、剥がれ難く、美しい印字を長期に亘って維持することができる点で、脂環式エポキシ化合物を少なくとも含有することが好ましく、なかでも、脂環式エポキシ化合物をモノマー組成物に含まれる全エポキシ化合物の30重量%以上含有することが好ましく、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
上記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、下記式(c)で表される化合物を挙げることができる。
上記式(c)中、R1〜R18は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す。
R1〜R18におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
R1〜R18における炭化水素基としては、前記式(a-4)中のRと同様の例を挙げることができる。
R1〜R18における酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、上述の炭化水素基における少なくとも1つの水素原子が、酸素原子を有する基又はハロゲン原子で置換された基等を挙げることができる。上記酸素原子を有する基としては、例えば、ヒドロキシル基;ヒドロパーオキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ基等のC1-10アルコキシ基;アリルオキシ基等のC2-10アルケニルオキシ基;C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、ハロゲン原子、及びC1-10アルコキシ基から選択される置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基(例えば、トリルオキシ、ナフチルオキシ基等);ベンジルオキシ、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-10アシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-10アルコキシカルボニル基;C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、ハロゲン原子、及びC1-10アルコキシ基から選択される置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基等);ベンジルオキシカルボニル基等のC7-18アラルキルオキシカルボニル基;グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のC1-10アシル基;イソシアナート基;スルホ基;カルバモイル基;オキソ基;これらの2以上が単結合又はC1-10アルキレン基等を介して結合した基等を挙げることができる。
R1〜R18におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ基等のC1-10アルコキシ基を挙げることができる。
前記アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C2-10アルケニルオキシ基、C6-14アリールオキシ基、C1-10アシルオキシ基、メルカプト基、C1-10アルキルチオ基、C2-10アルケニルチオ基、C6-14アリールチオ基、C7-18アラルキルチオ基、カルボキシル基、C1-10アルコキシカルボニル基、C6-14アリールオキシカルボニル基、C7-18アラルキルオキシカルボニル基、アミノ基、モノ又はジC1-10アルキルアミノ基、C1-10アシルアミノ基、エポキシ基含有基、オキセタニル基含有基、C1-10アシル基、オキソ基、及びこれらの2以上が単結合又はC1-10アルキレン基等を介して結合した基等を挙げることができる。
上記式(c)中、Xは単結合又は連結基を示す。前記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート基(−O−CO−O−)、アミド基(−CONH−)、及びこれらが複数個連接した基等を挙げることができる。
上記二価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3〜18の二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。炭素数3〜18の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
上記式(c)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタンや、下記式(c-1)〜(c-8)で表される化合物等を挙げることができる。尚、下記式(c-5)、(c-7)中のn1、n2は、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(c-5)中のLは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である。
脂環式エポキシ化合物には、上記式(c)で表される化合物の他に、下記式(c-9)で表される、分子内に脂環と2個以上のエポキシ基を有し、且つ2個以上のエポキシ基のうち1個がシクロヘキセンオキシド基である化合物も含まれる。
脂環式エポキシ化合物には、更に、下記式(c-10)、(c-11)で表される3個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物や、下記式(c-12)〜(c-14)で表されるシクロヘキセンオキシド基を1個有し、他にエポキシ基を有しない脂環式エポキシ化合物も含まれる。尚、下記式(c-10)、(c-11)中のn
3〜n
8は、同一又は異なって1〜30の整数を示し、下記式(c-14)中のR
19、R
20は、同一又は異なって炭素数1〜31の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す。
本発明においては、エポキシ化合物(C)として、特に基材(例えば、ガラス)に対する密着性に優れる点で、上記式(c)で表される、1分子中にシクロヘキセンオキシド基を2個有する化合物を少なくとも含有することが好ましく、特に、上記式(c-1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートを少なくとも含有することが好ましい。
また、硬化物に高い表面硬度と耐熱性を所望する場合は、エポキシ化合物(C)としてエポキシ変性シロキサン化合物を含有していてもよい。
前記エポキシ変性シロキサン化合物としては、例えば、エポキシ変性ポリオルガノシルセスキオキサンや、エポキシ変性シリコーン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
エポキシ変性ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、例えば、下記式(c-15)、(c-16)で表される構成単位を有する化合物(ランダム構造、かご型構造、及びはしご型構造の化合物を含む)等を挙げることができる。
また、エポキシ変性シリコーンには環状構造、及び鎖状構造の化合物が含まれる。環状構造を有するエポキシ変性シリコーンは、例えば、下記式(c-17)で表される。また、鎖状構造を有するエポキシ変性シリコーンは、例えば、下記式(c-18)で表される。
上記式中、R21〜R37は、同一又は異なって、水素原子、又はオキシラン環を有していてもよい炭化水素基を示す。炭化水素基としては上記式(a-4)中のRと同様の例を挙げることができる。また、上記式(c-17)中のm1、及び上記式(c-18)中のm2は、同一又は異なって、1以上の整数である。m1及びm2が2以上の整数である場合、(c-17)中のm1個のR26、及びR27はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。(c-18)中のm2個のR32、及びR33はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、ポリオルガノシルセスキオキサンに含まれるR21〜R23の少なくとも1つ、及び環状構造を有するシリコーンに含まれるR24〜R29の少なくとも1つ、及び鎖状構造を有するシリコーンに含まれるR30〜R37の少なくとも1つはオキシラン環を有する炭化水素基(例えば、シクロヘキセンオキシド基を有する炭化水素基、又はグリシジル基を有する炭化水素基)である。
エポキシ変性シロキサン化合物の含有量は、モノマー組成物に含まれる全エポキシ化合物の、例えば1〜100重量%であり、上限は、好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%、最も好ましくは60重量%である。下限は、好ましくは5重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは20重量%である。
[モノマー組成物]
本発明のモノマー組成物は、ビニルエーテル化合物(A)、及びオキセタン化合物(B)を含有するモノマー組成物であって、ビニルエーテル化合物(A)として上記式(a-1)及び/又は(a-2)で表される環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と、脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物とを含有し、オキセタン化合物(B)として単官能オキセタン化合物を含有する。
環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物の合計含有量は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全カチオン重合性モノマー)の例えば10〜80重量%、好ましくは20〜80重量%、特に好ましくは30〜70重量%、最も好ましくは30〜60重量%である。環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物の合計含有量が上記範囲を上回ると、基材密着性に優れた硬化物が得られ難くなる傾向がある。一方、環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物の合計含有量が上記範囲を下回ると、速硬化性が得られ難くなる傾向がある。
前記環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物の含有量(2種含有する場合はその総量)は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全カチオン重合性モノマー)の、例えば5重量%以上、30重量%未満程度、好ましくは10重量%以上、30重量%未満、特に好ましくは10〜25重量%である。環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物の含有量が多すぎると、該モノマー組成物に光酸発生剤を配合して得られる硬化性組成物は、水分による硬化阻害を防止することが困難となる傾向がある。一方、環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物の含有量が少なすぎると、速硬化性が得られ難くなる傾向がある。
前記環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物の含有量の比(重量比、前者:後者)は、例えば90:10〜10:90程度、好ましくは80:20〜20:80、より好ましくは75:25〜30:70、特に好ましくは75:25〜40:60である。環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物と脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物を上記割合で配合することにより、速硬化性を有し、且つ水分による硬化阻害を抑制することができるモノマー組成物を得ることができる。環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物の含有量が過剰となると、水分による硬化阻害を抑制することが困難となる傾向がある。一方、脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物の含有量が過剰となると、速硬化性が得られ難くなる傾向がある。
単官能オキセタン化合物の含有量は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全カチオン重合性モノマー)の例えば10〜70重量%程度、好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。単官能オキセタン化合物を上記範囲で含有するモノマー組成物に光酸発生剤を配合して得られる硬化性組成物は、紫外線を照射すると水分存在下でも速やかに硬化して、優れた基材密着性を有する硬化物を得ることができる。一方、単官能オキセタン化合物の含有量が上記範囲を上回ると、速硬化性が得られ難くなる傾向があり、単官能オキセタン化合物の含有量が上記範囲を下回ると、基材密着性が低下する傾向がある。
本発明のモノマー組成物はエポキシ化合物(C)を含有することが好ましく、エポキシ化合物(C)の含有量は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全カチオン重合性モノマー)の例えば5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。エポキシ化合物(C)を上記範囲で含有するモノマー組成物に光酸発生剤を配合して得られる硬化性組成物は、紫外線を照射すると水分存在下でも速やかに硬化して、優れた基材密着性を有する硬化物を得ることができる。
さらに、単官能オキセタン化合物とエポキシ化合物(C)の合計含有量は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全カチオン重合性モノマー)の例えば15〜80重量%程度、好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜70重量%、最も好ましくは45〜70重量%である。
本発明のモノマー組成物は上記化合物以外にも、他のカチオン重合性モノマーを含有していてもよいが、他のカチオン重合性モノマーの含有量はモノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全カチオン重合性モノマー)の30重量%以下程度であり、好ましくは20重量%以下である。
本発明のモノマー組成物は、上記ビニルエーテル化合物(A)、オキセタン化合物(B)、及び必要に応じて他のカチオン重合性モノマー(例えば、エポキシ化合物(C)等)を、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用して均一に混合することにより製造することができる。尚、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、上記モノマー組成物と光酸発生剤を含有する。
(光酸発生剤)
光酸発生剤は光の照射によって酸を発生させる化合物であり、光カチオン重合開始剤とも称される。光酸発生剤は、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなり、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物、メタロセン錯体、鉄アレーン錯体等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4−ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、トリ−p−トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)を挙げることができる。
光酸発生剤のアニオン部としては、例えば、BF4 -、CF3SO3 -、CH3C6H4SO3 -、CH3(NO2)C6H4SO3 -、B(C6F5)4 -、PF6 -、[(Rf)kPF6-k]-(Rf:水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基、k:1〜5の整数)、AsF6 -、SbF6 -、SbF5OH-、ハロゲン系アニオン、スルホン酸系アニオン、カルボン酸系アニオン、硫酸アニオン等を挙げることができる。
本発明の光酸発生剤としては、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
本発明においては、例えば、商品名「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」、「サイラキュアUVI−6990」、「サイラキュアUVI−950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「イルガキュア250」、「イルガキュア261」、「イルガキュア264」、「イルガキュア270」、「イルガキュア290」(以上、BASF社製)、「CG−24−61」(チバガイギー社製)、「アデカオプトマーSP−150」、「アデカオプトマーSP−151」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI−2064」、「CI−2639」、「CI−2624」、「CI−2481」、「CI−2734」、「CI−2855」、「CI−2823」、「CI−2758」、「CIT−1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI−2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トルイルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI−102」、「BBI−101」、「BBI−103」、「MPI−103」、「BDS−105」、「TPS−103」、「MDS−103」、「MDS−105」、「MDS−203」、「MDS−205」、「DTS−102」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」、「BMS−105」、「TMS−105」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI−100P」、「CPI−101A」、「CPI−110P」、「CPI−110A」、「CPI−210S」(以上、サンアプロ(株)製)、「UVI−6992」、「UVI−6976」(以上、ダウ・ケミカル社製)等の市販品を使用できる。
上記モノマー組成物の含有量は、本発明の硬化性組成物全量(100重量%)の、例えば50〜99.9重量%程度、好ましくは70〜99.5重量%である。
また、本発明の硬化性組成物における光酸発生剤の含有量は、モノマー組成物100重量部に対して、例えば0.1〜20重量部程度、好ましくは0.5〜10重量部である。
本発明の硬化性組成物は無溶剤系であること、即ち溶剤を含有しないことが、乾燥性を向上することができる点、溶剤により劣化し易い基材にも適用可能となる点、及び溶剤の揮発による臭気の発生を防止することができる点で好ましく、溶剤の含有量は硬化性組成物全量(100重量%)の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
本発明の硬化性組成物はモノマー組成物と光酸発生剤以外にも必要に応じて他の成分を含有していても良く、例えば、周知慣用の増感剤(例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン類、アントラセン類、チオキサントン化合物類、レーザ色素類等)、増感助剤、酸化防止剤、アミン類等の安定化剤等を挙げることができる。特に、本発明の硬化性組成物をUV−LEDを照射して硬化させる用途に使用する場合には、増感剤、及び必要に応じて増感助剤を含有することが、光酸発生剤の紫外線光吸収率を向上して硬化性を向上することができる点で好ましく、これらの含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、硬化性組成物全量(100重量%)の、例えば0.05〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明の硬化性組成物の表面張力(25℃、1気圧下における)は、例えば10〜50mN/m程度、好ましくは15〜40mN/m、特に好ましくは15〜30mN/mである。また、本発明の硬化性組成物の粘度[25℃、せん断速度10(1/s)における]は、例えば1〜1000mPa・s程度、好ましくは3〜400mPa・s、特に好ましくは5〜50mPa・s、最も好ましくは10〜30mPa・sである。そのため、本発明の硬化性組成物は吐出性若しくは充填性に優れる。
また、本発明の硬化性組成物は、酸素や水分の存在下でも紫外線を照射することにより速やかに硬化して硬化物を形成することができる。そのため、紫外線硬化型インクジェット用インクに使用した場合は、滲みや臭気の発生を防止することができ、印字品質に優れたインク被膜を形成することができる。
前記紫外線の光源としては、光を照射することにより、硬化性組成物中に酸を発生させることができる光源であれば良く、例えば、UV−LED、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置等を使用することができる。紫外線照射量(積算光量)は、例えば10〜1000mJ/cm2程度である。
本発明の硬化性組成物は、紫外線を照射した後に、更に加熱処理を施しても良い。加熱処理を施すことにより、硬化度をより一層向上させることができる。加熱処理を施す場合、加熱温度は40〜200℃程度であり、加熱時間は1分〜15時間程度である。また、紫外線を照射した後に、室温(20℃)で1〜48時間程度静置することでも硬化度を向上させることができる。
更に、本発明の硬化性組成物は、幅広い基材[例えば、ガラス、金属(例えば、アルミニウム箔、銅箔等)、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等)、天然ゴム、ブチルゴム、発泡体(例えば、ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等)、木材、織布、不織布、布、紙(例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、和紙等)、シリコンウェハ、セラミック等、及びこれらの複合体等]に対して優れた密着性を有する硬化物を形成することができる。
本発明の硬化性組成物は上記特性を有するため、紫外線硬化型インクジェット用インク材料、塗料、接着剤、封止材、土木建築材料、積層板等の電気電子部品、フォトレジスト、ソルダーレジスト、多層配線板用層間構成材、絶縁材料、コンクリート建造物の補修材、注型用材料、シーラント、光造形用材料、レンズや光導波路等の光学材料等として好適に使用することができる。
本発明の硬化性組成物は、特に、紫外線硬化型インクジェット用インク材料(例えば、紫外線硬化型インクジェット用透明インク)として使用することが好ましい。本発明の硬化性組成物からなる紫外線硬化型インクジェット用透明インクは、顔料及び/又は染料を添加することにより種々の顔料及び/又は染料インク(顔料インク、染料インク、又は顔料と染料とを含有するインク)を形成することができる。また、プライマーインクやニスコート用インク(顔料及び/又は染料インクを塗布する前や後に塗布することより、顔料及び/又は染料インクが基材表面に定着しやすくなり、高発色・高画質なインク被膜を形成することを可能とし、更にインクの裏抜け防止や耐候性、耐水性を向上することができるインク)としても使用可能である。
[紫外線硬化型インクジェット用インク]
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インク(特に、顔料及び/又は染料インク)は、上記硬化性組成物(=紫外線硬化型インクジェット用透明インク)と顔料及び/又は染料を含有する。
(顔料)
顔料としては、一般に顔料として知られている色材であって、硬化性組成物中に分散可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。顔料の平均粒子径は、300nm以下程度であることが吐出性、インク飛翔性、及び印字再現性に優れる点で好ましい。顔料は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
顔料は、発色・着色性に加えて、磁性、蛍光性、導電性、又は誘電性等を併せて有するものであってもよい。この場合には、画像に様々な機能を付与することができる。
使用可能な顔料としては、例えば、土製顔料(例えば、オーカー、アンバー等)、ラピスラズリ、アズライト、白亜、胡粉、鉛白、バーミリオン、ウルトラマリン、ビリジャン、カドミウムレッド、炭素顔料(例えば、カーボンブラック、カーボンリファインド、カーボンナノチューブ等)、金属酸化物顔料(例えば、鉄黒、コバルトブルー、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄等)、金属硫化物顔料(例えば、硫化亜鉛等)、金属硫酸塩、金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属粉末(例えば、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、亜鉛粉末等)等の無機顔料;不溶性アゾ顔料(例えば、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、モノアゾバイオレット、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ピラゾロン顔料等)、溶性アゾ顔料(例えば、アゾイエローレーキ、アゾレーキレッド等)、ベンズイミダゾロン顔料、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料、キナクリドン顔料(例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等)、ペリレン顔料(例えば、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等)、ペリノン顔料(例えば、ペリノンオレンジ等)、イソインドリノン顔料(例えば、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等)、イソインドリン顔料(例えば、イソインドリンイエロー等)、ジオキサジン顔料(例えば、ジオキサジンバイオレット等)、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料(例えば、キノフタロンイエロー等)、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料(例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等)、染料レーキ顔料等の有機顔料;無機蛍光体や有機蛍光体等の蛍光顔料等を挙げることができる。
(染料)
前記染料としては、例えば、ニトロアニリン系、フェニルモノアゾ系、ピリドンアゾ系、キノフタロン系、スチリル系、アントラキノン系、ナフタルイミドアゾ系、ベンゾチアゾリルアゾ系、フェニルジスアゾ系、チアゾリルアゾ系染料等を挙げることができる。
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクにおける顔料及び/又は染料の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、硬化性組成物100重量部に対して、例えば0.5〜20重量部程度、好ましくは1〜10重量部である。
さらに、本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクは、上記顔料又は染料の分散性を向上するために分散剤を含有してもよい。分散剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、イオン系界面活性剤、帯電剤、高分子系分散剤(例えば、商品名「Solsperse24000」、「Solsperse32000」、アビシア社製)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記分散剤の含有量は、顔料及び/又は染料100重量部に対して、例えば1〜50重量部程度、好ましくは3〜30重量部である。
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクは、上記硬化性組成物を含有するため、空気雰囲気下で、湿度条件や被印刷物を特に限定することなく、且つ臭気の発生を抑制しつつ、非常に高精細なインク被膜を高速に形成することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物としてのONB−DVE 25重量部、脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物としての4CH−DVE 25重量部、セロキサイド2021P 20重量部、OXT−212 30重量部、及び光酸発生剤 5重量部を混合して、硬化性組成物(1)[表面張力(25℃、1気圧下における):20.1mN/m、粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における):14mPa・s]を得た。
(硬化性評価)
得られた硬化性組成物(1)をガラス板に塗布し(塗膜厚み:5μm)、光源として水銀キセノンランプ(商品名「LC8 LIGHTNINGCURE L9588」、浜松ホトニクス(株)製)を使用して紫外線を照射して、タックが無くなるまで(具体的には、塗膜表面をキムワイプ(登録商標)で擦った際に、べとついたり、ガラス板から剥がれたりしない状態となるまで)の積算光量(=水非含有硬化性組成物の硬化に要する積算光量:mJ/cm2)を測定して、硬化性を評価した。
(水分存在下における硬化性評価)
得られた硬化性組成物(1)100重量部に水5重量部を添加し、撹拌して水含有硬化性組成物(1)を調製した。
硬化性組成物(1)に代えて水含有硬化性組成物(1)を使用した以外は上記(硬化性評価)と同様にしてタックが無くなるまでの積算光量(mJ/cm2)を測定し、下記式から水添加による積算光量の増加率を算出して、下記基準から水分存在下における硬化性を評価した。
積算光量の増加率(%)={(水含有硬化性組成物の硬化に要する積算光量/水非含有硬化性組成物の硬化に要する積算光量)−1}×100
水分存在下における硬化性の評価基準
積算光量の増加率が20%以上:硬化性不良(×)
積算光量の増加率が10%以上、20%未満:硬化性良好(○)
積算光量の増加率が10%未満:硬化性極めて良好(◎)
(基材密着性評価)
得られた硬化性組成物(1)を基板(ガラス板又はPET板)に塗布し(塗膜厚み:5μm)、光源として水銀キセノンランプを使用してタックが無くなるまで紫外線を照射して、塗膜/ガラス板積層体、及び塗膜/PET板積層体を得た。
得られた積層体の塗膜面に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目を碁盤目状に入れて、1mm角の切片を100個有する試料を作成し、切片上にセロハンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン(株)製、幅24mm)を2kgローラーを1往復することにより貼り合わせ、20℃環境下で、該セロハンテープを基板に対して垂直な方向に素早く引っ張って剥がし、剥がれずに残った切片の数から下記基準に従って密着性を評価した(JIS K−5400、1990年準拠)。
基材密着性の評価基準
基板から剥離した切片の数が0個以上、15個以下:基材密着性極めて良好(○)
基板から剥離した切片の数が16個以上、30個以下:基材密着性良好(△)
基板から剥離した切片の数が31個以上、100個以下:基材密着性不良(×)
実施例2〜22、比較例1〜7
モノマー組成物を表に記載の処方に変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を下記表にまとめて示す。
実施例及び比較例で使用した化合物は下記の通りである。
<環状エーテル骨格を有するジビニルエーテル化合物>
ONB−DVE:下記式(a-1)で表される化合物、商品名「ONB−DVE」、(株)ダイセル製
ISB−DVE:下記式(a-2)で表される化合物、商品名「ISB−DVE」、(株)ダイセル製
<脂環骨格を有するジビニルエーテル化合物>
4CH−DVE:シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、商品名「4CH−DVE」、(株)ダイセル製
CHDMDVE:シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、商品名「CHDMDVE」、日本カーバイド工業(株)製
TCDDVE:トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル
HBisF−DVE:水添ビスフェノールF型ジビニルエーテル
HBisA−DVE:水添ビスフェノールA型ジビニルエーテル
HBP−DVE:水添ビフェニルジビニルエーテル
<その他のビニルエーテル化合物>
TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル、商品名「TEGDVE」、日本カーバイド工業(株)製
<エポキシ化合物>
セロキサイド2021P:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製
X−22−163:両末端エポキシ変性シリコーン、エポキシ基当量:200g/mol、商品名「X−22−163」、信越化学工業(株)製
EP0409:エポキシ(=グリシジルオキシエチル)変性ポリオルガノシルセスキオキサン、分子量1337.88、商品名「EP0409」、豊通ケミプラス(株)製
<オキセタン化合物>
OXT−212:単官能オキセタン化合物、3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、商品名「アロンオキセタン OXT−212」、東亞合成(株)製
OXT−221:多官能オキセタン化合物、ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、商品名「アロンオキセタン OXT−221」、東亞合成(株)製
<光酸発生剤>
商品名「CPI−110P」、サンアプロ(株)製、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファートおよびチオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビス(ヘキサフルオロホスファート)の混合物(99.5/0.5)