詳細な説明
上記で提案し、以下さらに詳細に説明する様々な概念は、任意の特定の実現方法に限定されないため、数多くのやり方のいずれかで実現され得る。具体的な実現および適用の例が主に例示目的のために提供される。
開示されるシステムおよび方法は概して細胞培養システムに関する。より具体的に、システムおよび方法は、生体模倣環境中で複数の組織タイプを培養し、相互接続することを可能にする。生体模倣環境内で臓器特異的組織タイプを培養し、各臓器系を生理学的に有意なやり方で相互接続することにより、インビボ細胞集団の応答を実質的に模倣するインビトロ細胞に対して実験を実施することができる。いくつかの実施形態において、システムは、臓器系が毒素または薬物のような物質に対してどのように反応するのかを観察するために使用される。システムは、そのような物質の正確で制御された送達を可能し、それが、いくつかの実施形態において、ヒトにおける薬物の生体模倣投与が模倣されることを可能にする。
図1は、細胞培養システム100を示す。細胞培養システム100はインキュベータ104内に細胞培養プラットフォーム102を含む。細胞培養システム100はまた、細胞培養プラットフォーム102内の細胞を観察するための複数のセンサ106および顕微鏡108を含む。制御コンピュータ110が制御装置112を使用して細胞培養プラットフォーム102中の流体およびガスの流れを制御する。流体流およびガス流は、それぞれ、少なくとも一つの流体ポンプ114および少なくとも一つのガスポンプ116によって生成される。流体は、細胞培養プラットフォーム102を通って流れる前には、流体貯留部118に貯蔵され、細胞培養プラットフォーム102を通って流れたことに応答して、廃棄貯留部120に貯蔵される。
上記のように、細胞培養システム100は細胞培養プラットフォーム102を含む。細胞培養プラットフォーム102およびその部品は、図2〜9に関連してさらに説明されるが、簡単にいうと、細胞培養プラットフォーム102は、細胞および/または組織を培養するためのモジュール式プラットフォームである。以下に説明するように、細胞培養プラットフォーム102は制御プレート、流体フロープレートおよび複数の細胞培養容器を含む。いくつかの実施形態において、制御プレートは再使用可能であり、細胞の培養および観察に使用されるアクチュエータ、弁およびセンサを含む。いくつかの実施形態において、流体フロープレートおよび/または細胞培養容器は使い捨てである。
細胞培養プラットフォーム102はインキュベータ104内に収容されている。インキュベータ104は、細胞および/または組織の培養に寄与する環境を細胞培養プラットフォーム102内に維持する。いくつかの実施形態において、インキュベータ104は、所定の温度、湿度、二酸化炭素レベル、酸素レベルまたはそれらの任意の組み合わせを制御および/または維持する。たとえば、インキュベータ104は、ヒト呼吸器系内の状態を模倣する状態を細胞培養プラットフォーム102内に維持するように構成可能であり得る。もう一つの例において、インキュベータ104は、細胞培養プロトコルによって概説されるような、標準的な細胞培養環境を維持するように構成されている。たとえば、インキュベータ104は、約32℃〜約37℃の温度を約50%〜約100%の湿度とともに維持することができる。いくつかの実施形態において、インキュベータ104は、細胞培養プラットフォーム102内で細胞によって生成されたガスを除去する。インキュベータ104はまた、複数のアクセスポート(図示せず)を含む。ポートは、センサ接続、フローラインおよび他のラインが、インキュベータ104内の制御された環境に影響することなく、外部環境からインキュベータ104の内部に通過することを許す。
これらの実施形態のいくつかにおいて、細胞培養システム100は独立型インキュベータ104を含まない。そのような実施形態において、細胞培養プラットフォーム102の細胞培養容器は可逆的に封止され、各細胞培養容器内に適切な環境条件を維持する加熱および他の要素を含む。
細胞培養システム100はまた、複数のセンサ106を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるセンサ106の一つまたは複数は細胞培養プラットフォーム102内に収容される(またはその部品)。センサ106のさらなる説明が、その使用および配置を含め、以下に記載される。簡潔にいうと、センサ106は、細胞培養プラットフォーム102内の一つまたは複数のパラメータを観察するために使用されることができる。たとえば、センサ106は、バイオマーカ、流量、圧力、温度、ガス組成(たとえば酸素および二酸化炭素レベル)、化学組成(たとえば薬物、毒素および代謝産物濃度)、pHレベル、電気的パラメータ(たとえば経上皮電気抵抗)またはそれらの任意の組み合わせを観察することができる。いくつかの実施形態において、センサは、細胞培養プラットフォーム102および/またはインキュベータ104内のシステムパラメータ(たとえば環境条件)を制御する際に制御コンピュータ110によるフィードバックのために使用される。
同じく図1に示すように、細胞培養システム100は顕微鏡108を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養プラットフォーム102の少なくとも一部分は、細胞培養プラットフォーム102内の細胞および/または組織の目視検査を可能にするように構成されている。たとえば、細胞培養プラットフォーム102の部品は、実質的に明澄な材料から製造されている、および/またはビューポートを含む。顕微鏡108は、細胞培養プラットフォーム102中で培養される細胞および/または組織を見るために使用される。いくつかの実施形態において、顕微鏡108は、細胞培養プラットフォーム102内の細胞および/または組織の静止画または動画を記録するように構成されている。いくつかの実施形態において、顕微鏡108は、光学顕微鏡、共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡または概して細胞画像化および分析の分野で使用される任意のタイプの顕微鏡である。
細胞培養システム100はさらに、制御コンピュータ110および制御装置112を含む。概して、制御コンピュータ110は、細胞培養システム100の、本明細書に記載される部品を制御する。いくつかの実施形態において、制御コンピュータ110は汎用コンピューティング装置である。たとえば、制御コンピュータ110は、ラップトップ、タブレットコンピュータまたはスマートフォンであることができる。他の実施形態において、制御コンピュータ110は専用コンピュータ装置であり、一つまたは複数のプロセッサおよび少なくとも一つのコンピュータ読み取り可能な媒体、たとえばハードドライブ、コンパクトディスクまたは他の記憶装置を含む。プロセッサ実行可能な命令がコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されている。命令は、実行されると、制御コンピュータ110に、本明細書に記載される機能および方法を実行させる。たとえば、制御コンピュータ110は、流体ポンプ114を制御することにより、細胞培養プラットフォーム102に出入りする流体の流れを制御する。上記のように、いくつかの実施形態において、制御コンピュータ110は、複数のセンサ106からデータを受信し、受信されたデータに応じてシステム条件を維持する。制御コンピュータ110は、ユーザからの要求に応じて、センサおよび他のデータをコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶する。いくつかの実施形態において、制御コンピュータ110は、ユーザがユーザインタフェースを介して特定のシステムパラメータをセットすることを可能にする。
制御コンピュータ110は、制御装置112を介して細胞培養システム100の他の部品とインタフェースする。いくつかの実施形態において、制御装置112は、制御コンピュータ110または細胞培養プラットフォーム102の部品であり、ハードウェアおよび/またはソフトウェアとして実現される。他の実施形態において、制御装置112は、USB、FireWireまたは類似の接続を介して制御コンピュータ110および細胞培養システム100の様々な部品とインタフェースする独立型装置である。
制御装置は複数の入力および複数の出力を含み、それらを介して制御装置は細胞培養システム100の様々な部品とインタフェースする。制御装置112の複数の入力および出力はデジタルおよび/またはアナログ入力および出力であることができる。いくつかの実施形態において、制御装置112は少なくとも一つのプロセッサを含む。制御装置112は、少なくとも一つのプロセッサを使用して、入力を制御コンピュータ112に送信する前に入力を前処理する。たとえば、制御装置112は、センサデータを制御コンピュータ110に送信する前にセンサデータを「プレフィルタリング」または圧縮し得る。さらに他の実施形態においては、制御装置112が制御コンピュータ110からの命令なしでも細胞培養システム100を制御することができるような命令が制御装置112にロードされる。いくつかの実施形態においては、細胞培養システム100の動作が所定の範囲を逸脱したとき、制御装置112および/またはコンピュータ110がユーザに警告する。たとえば、制御コンピュータ110がインキュベータ104中の温度低下を検出したとき、制御コンピュータ110はユーザに警報を送信し得る。
再び図1を参照すると、細胞培養システム100は少なくとも一つの流体ポンプ114および少なくとも一つのガスポンプ116を含む。流体ポンプ114およびガスポンプ116(集合的に単にポンプと呼ぶ)は流体および/またはガスを細胞培養プラットフォーム102の中に流す。余分な流体は流体貯留部118に貯蔵され、細胞培養プラットフォーム102を通って流れたのち廃棄物貯留部に貯められることができる。他の実施形態において、流体は細胞培養プラットフォーム102中で再循環させられる。図示するように、ポンプは細胞培養プラットフォーム102から独立している。以下に記載するように、いくつかの実施形態において、ポンプは細胞培養プラットフォーム102内に収容される。ポンプは、ぜん動ポンプ、シリンジポンプ、一連のアクチュエータ(すなわち空気ポンプ)またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、ポンプは、滑らかな流れ、拍動性の流れ、周期的な流れまたはそれらの任意の組み合わせを細胞培養プラットフォーム102中に発生させるように構成されている。さらに他の実施形態において、ポンプは指向性であり、かつ細胞培養プラットフォーム102内で逆止め弁として働くことができる。たとえば、拍動性の流れ中に流れを所定の流れ方に強制し、逆流させないために、一方向ポンプが細胞培養プラットフォーム102内に含まれることができる。
前記ポンプは、流体を細胞培養プラットフォーム102に通し、以下に記載される細胞培養容器に入れるように流す。例示的な流体は、増殖培地(または細胞の増殖および維持のための他の流体)、検査物質、毒素、薬物(たとえば抗生物質、ワクチン、生物製剤および医学的対策)またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、ポンプは、細胞培養プラットフォーム102内の細胞に所定の剪断力を誘発するように構成されている。剪断力は、生理学的状態を模倣するために、または実験目的のために選択され得る。たとえば、上皮細胞は、適切な剪断力の下で培養されると、より生理学的に表現的な細胞障壁を形成し得る。いくつかの実施形態において、ポンプが流体を流す流量は、循環系の部分で一般的に見られる血液流量を模倣するように選択される。
次に図2を参照すると、図2は、細胞培養プラットフォーム102の部品を示す略図である。細胞培養プラットフォーム102の個々の部品は図4〜9に関連して詳細に説明される。簡単な導入として、細胞培養プラットフォーム102は、制御プレート202、流体フロープレート204および複数の細胞培養容器206(1)〜206(n)を含む。流体フロープレート204は制御プレート202に結合され、複数の細胞培養容器206(1)〜(n)は流体フロープレート204の上に結合されている。細胞培養プラットフォーム102はさらに、複数の流体および/またはガス入口/出口ポート208を含む。図示するように、ポート208は制御プレート202の部品である。他の実施形態においては、制御プレート202、流体フロープレート204および/または細胞培養容器206(1)〜206(n)それぞれが一つまたは複数のポート208を含む。
細胞培養プラットフォーム102の概説を続けると、細胞培養プラットフォーム102は、細胞および/または組織を培養するために使用される。いくつかの実施形態において、これは、様々な臓器系からの複数のタイプの細胞および/または組織の培養を含む。いくつかの実施形態において、以下に記載するように、細胞培養容器206は、細胞および/または組織を支持し、培養するための三次元細胞培養足場を含むように構成されている。細胞培養プラットフォーム102の残りのプレートは、細胞培養容器206(1)〜206(n)内で培養される細胞/組織間の相互作用(たとえば流体連絡)を促進し、細胞培養容器206が生理学的に有意なやり方で相互接続されることを可能にする。
いくつかの実施形態において、細胞培養プラットフォーム102の部品は互いに可逆的に結合される。たとえば、細胞培養プラットフォーム102の部品は、クラップ、スクリュー、真空、接着剤またはそれらの任意の組み合わせによって互いに結合されることができる。いくつかの実施形態において、細胞培養容器206を流体フロープレート204に結合するために使用される結合要素(たとえばスクリュー)が流体フロープレート204も通過して、流体フロープレート204を制御プレート202に結合する。
特定の実施形態において、細胞培養プラットフォーム102の部品の一つまたは複数は使い捨ておよび/または再使用可能である。たとえば、制御プレート202は、制御装置112への制御接続、センサ接続、アクチュエータ、カスタム部品またはそれらの任意の組み合わせを収容し得、使い捨て流体フロープレート204および使い捨て細胞培養容器206とともに再使用されることを意図したものである。
いくつかの実施形態において、使い捨て要素は、低コストの加工法、たとえば機械加工、射出成形またはエンボス加工を使用して製造される受動構造を含む。いくつかの実施形態において、これらの受動構造は、制御プレート202内のアクチュエータを介して制御される。いくつかの実施形態において、制御プレート202は、使い捨て流体フロープレート204および細胞培養容器206をモジュール式に加え得る基礎を提供する。
図3Aは、細胞培養プラットフォーム102をさらに詳細に示すソリッドモデルである。図示するように、八つの細胞培養容器206が流体フロープレート204に結合され、この流体フロープレートが逆に制御プレート202に結合されている。制御プレート202は、第一のタイプの細胞培養容器206(a)および第二のタイプの細胞培養容器206(b)を含む。
図3Bは、細胞培養プラットフォーム102を示す図3Aのモデルの側面図である。いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は可逆的に結合される蓋302および306で密封される。蓋302はポート304を含み、このポートは、いくつかの実施形態において、気体および/または液体を細胞培養容器206(b)の中に流すために使用される。蓋306は、封着される蓋であり、ポートを含まない。図示するように、細胞培養容器206はスクリュー308によって流体フロープレート204に結合される。
以下、図4〜9を参照しながら、図2、3Aおよび3Bの制御プレート202、流体フロープレート204および細胞培養容器206それぞれを順次さらに詳細に説明する。
図2、3Aおよび3Bを参照して上述したように、細胞培養プラットフォーム102は制御プレート202を含む。概して、制御プレート202は、流体フロープレート204および/または細胞培養容器206とインタフェースする再使用可能なコネクタ、アクチュエータおよび/またはセンサを含む。いくつかの実施形態において、再使用可能な制御プレート202におけるコネクタ、アクチュエータおよび/またはセンサの配置は、細胞と直に相互作用する細胞培養プラットフォーム102の部分を実験後に処分することができる一方、より高価な部品を再使用することができるため、コスト節約を提供する。以下に記載するように、いくつかの実施形態において、制御プレート202はプラスチックまたは多層プリント回路板から製造される。
いくつかの実施形態において、制御プレート202は、5〜10、10〜30、30〜50、50〜100または100〜200のアクチュエータを含む。アクチュエータは、流体フロープレート204および/または細胞培養容器206を通過する流体流を制御するために使用され、いくつかの実施形態において、ポンプとして使用される。アクチュエータは、制御プレート202、流体フロープレート204および/または細胞培養容器206内の弁をアクティブ化することによって流体流を制御する。アクチュエータがポンプとして構成されているいくつかの実施形態において、ポンプは、約100nL〜約500nL、約500nL〜1000nLまたは約1000nL〜約2000nL/minの流体を流路に通してポンピングする。他の実施形態において、ポンプは、480,000nL/minまでの流量を生じさせることができる。アクチュエータポンプによって誘発される流れは、連続的、単発的および/または往復運動的な流れプロフィールを有することができる。
いくつかの実施形態において、ポンプは、所定の投与量の毒素、検査物質、薬物(たとえば抗生物質、ワクチン、生物製剤および医学的対策)またはそれらの任意の組み合わせを流体フロープレート204および/または細胞培養容器206に注入するように構成されている。たとえば、ポンプとして構成されたアクチュエータは、所定のサイクルで(たとえば1日一回、1日三回、1時間に一回など)、肝細胞を含む細胞培養容器にインスリン投与量を送達するように構成され得る。いくつかの実施形態において、ポンプとして構成されたアクチュエータは、流体フロープレート204および/または細胞培養容器206から所定の量の流体試料を抜き取る。たとえば、アクチュエータは、細胞培養容器中の薬物、分析対象物もしくは毒素または他の生物学的に関連する物質の濃度を測定することができるよう、1時間ごとに100nLを細胞培養容器から抜き取り得る。
様々な実施形態において、アクチュエータは、空気式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、弁またはそれらの組み合わせである。アクチュエータアクティブ化の機構は、図9Aに関連してさらに説明され、流体試料を注入する、または抜き取るためのポンプとして働くときのアクチュエータの機構は、図9Bに関連して説明される。簡潔にいうと、アクチュエータは、ピストンによって駆動される膜を含む。アクチュエータは、アクティブ化されると、ピストンおよび膜を、アクチュエータの上に配置された流路の中へと駆動する。膜は、流路を通過する流体の流れをそらす。いくつかの実施形態において、電磁アクチュエータのアクティブ化は、特定のセンサ用途、たとえば経上皮電気抵抗に干渉し得る熱または電磁ノイズを誘発するおそれがあるため、いくつかの実施形態においては空気式アクチュエータが使用される。
アクチュエータは、細胞培養プラットフォーム102を通過する流体のカスタマイズされた制御を可能にする。アクチュエータ中の膜の使用は、制御プレート202の再使用可能部品からの生物学的流体の分離を可能にする。いくつかの実施形態において、アクチュエータ(および/またはポンプ構造)中に使用される可撓性膜は、非限定的に、ポリイミド系およびポリウレタン系の材料から製造される。いくつかの実施形態においては、制御プレート202の上面の実質全部または少なくとも大きな部分が膜で覆われる。
いくつかの実施形態において、制御プレート202は、細胞培養容器206および/または流体フロープレート204と結合(または嵌合)する一定のフォームファクタを含む。以下に記載するように、流体フロープレート204および細胞培養容器206は、所与の実験の必要性に応じて異なるふうに構成されることができる。これらの実施形態において、制御プレート202の標準化フォームファクタは、制御プレート202への他のモジュール式部品の混成および適合を可能にする。
先に述べたように、制御プレート202は一つまたは複数のセンサ106および/またはセンサ接続を含む。たとえば、制御プレート202は、流量計、ガスセンサ、pHセンサ、温度センサ、経上皮電気抵抗(TEER)センサまたはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、流量センサは熱流量センサである。特定の実施形態において、センサ206は、ポリイミド基板に実装され、上記の膜によって流体から切り離される。
センサ接続(またはセンサ拡張ポート)を含む実施形態において、本明細書に記載されるセンサ106は、実験の要件に基づいて制御プレート202に加えられる。たとえば、流れ実験を実施する研究者は、流量センサだけを制御プレート202に取り付けることを選択し得、pHセンサのような他のセンサをなしで済ませ得る。いくつかの実施形態において、センサ106を拡張ポートから切り離すことによってセンサ106を取り外すことは、制御プレート202の滅菌の前に制御プレート202の壊れやすい部品を取り外すことを可能にすることにより、制御プレート202を再使用しやすくする。いくつかの実施形態において、センサ拡張ポートは、制御装置112のための入出力ポートであり、制御プレート202へのカスタムセンサの接続を可能にする。
いくつかの実施形態において、制御プレート202は少なくとも一つの加熱要素を含む。加熱要素は、細胞培養容器206の一つまたは複数内に構成可能な温度を維持するために用いられる。いくつかの実施形態において、加熱要素の使用および密閉された細胞容器206は、各細胞培養容器206内に所定のマイクロコンディションを維持することができるため、インキュベータ104なしで実験を実施することを可能にする。
さらに他の実施形態において、制御プレート202は補助的な物質送達モジュールを含む。モジュールは、制御プレートに接続し、細胞培養容器206の一つまたは複数への特定の物質の投与を可能にする。
先に説明した制御プレート202をさらに説明するために、図4A〜4Cが制御プレート202の例示的実施形態を示す。当業者は、以下に記載される様々な制御プレートの特徴が、本明細書に記載されるその他の制御プレートのいずれにも適用され得ることを認めるであろう。
図4Aは、空気式制御プレート400を示す平面図である。制御プレート400は、流体フロープレート204内の流路に作用するための複数のアクチュエータ402を含む。制御プレート400はまた、複数のアクチュエータ402を制御するための複数の空気ポート404を含む。制御プレート400はさらに、流体キャパシタとして働く複数のキャパシタサポート410を、ポート開口部をまたいで張られた可撓性弁またはポンピング膜(その動作は以下さらに詳細に説明する)とともに含む。加えて、真空入口408が、制御プレート400全体に分散した複数の真空ポート406と流体受容的に連絡している。動作中、制御プレート400を流体フロープレート204上に配置したのち、吸引を真空入口108に加え、真空ポート406を介して分散させることができる。すると、制御プレート400は、真空ポート406を介して流体フロープレート204と吸引的に係合し得る。いくつかの実施形態において、機械的クランプまたはファスナ(たとえばスクリュー、クリップなど)を使用して、流体フロープレート204への制御プレート400の係合をさらに強化することができる。
上記のように、制御プレート400は複数の空気式アクチュエータ402を含む。図示するように、制御プレート400は、四つの4ポート型定容積型ポンプ412に分割された20のアクチュエータを含む。各定容積型ポンプ412は、流体フロープレート204中の二つの流路の交点に一致する。アクチュエータ402(a)は、定容積型ポンプ412の中心に位置し、流体(たとえば気体または液体)を交点の四つのブランチに通して駆動する。各アクチュエータ402(b)〜405(e)は、交点のそれぞれのブランチの中への流体の流れを制御する。定容積型ポンプ412は、図4D〜4Fに関連してさらに詳細に説明される。
いくつかの実施形態において、キャパシタポート410の一つまたは複数はビューポートとしても働く。ビューポートは、最終的には細胞培養プラットフォーム102に結合される細胞培養容器206の背面側への光学的アクセスを可能にするパススルー(またはバイア)である。そのような実施形態において、いくつかのビューポートは流体キャパシタとしても働き得(たとえば光学的に透明な弁またはポンピング膜を含み得)、一方で、他のビューポートは単にビューポートである(たとえば、膜を含まない)。いくつかの実施形態において、制御プレート400、流体フロープレート204および/または細胞培養容器206は、ビューポートなしでも細胞培養物が光学的にアクセス可能であるように光学的に明澄な材料から製造される。いくつかの実施形態において、細胞培養システム100の部品は実質的に光学的に明澄であり、複数のビューポートを含む。
図4Bは、制御プレート400の内部空気流路を示す断面図である。図示するように、制御プレート400は流路414(1)〜414(6)を含む。流路414(1)は真空入口408に対応する。流路414(2)〜414(6)はそれぞれ空気ポート404の一つに対応し、上記アクチュエータ402(a)〜402(e)のための制御流路として働く。図4Bは、各定容積型ポンプ412が同じ制御流路414(2)〜414(6)に接続され、したがって同調して作動することを示す。いくつかの実施形態において、定容積型ポンプ412の各アクチュエータ402、制御プレート202は個別に制御可能である。
流路414(1)は、流体(たとえば液体または気体)を真空ポート406に送るための複数のステムを含む。第一の真空ポート406(b)は、第二の真空ポート406(a)に比べて大きい直径を含む。したがって、より大きな第一の真空ポート406(b)に対応するステム416は、真空ポート406(b)を通過する増大した流量を支持するためのより大きな直径を含む。それに比べ、真空ポート406(a)に対応するステム418は相対的に小さな直径を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるステム416および418ならびに流体流路は約1〜5mm、約5〜10mmおよび約15〜25mmの直径を有する。
上記のように、いくつかの実施形態において、アクチュエータは電磁アクチュエータである。図4Cは、電磁アクチュエータ452を有する制御プレート450の等角図である。制御プレート450は、プリント回路板454上に製造され、制御プレート400と同様に、複数のキャパシタポート410を含む。加えて、制御プレート450は、上の層に含まれる流体から制御プレート450の電子部品を保護する膜456を含む。膜456はまた、制御プレート450と流体フロープレート204との間のシールが電子部品を環境湿度(たとえば、たとえばインキュベータ中の湿気)から保護することを許す。制御プレート450はまた、複数の電気コネクタ458を含む。図示するように、制御プレート450は流体流路を含まない。
いくつかの実施形態において、電磁アクチュエータは、制御プレート400に比べて小さな相対的フットプリントを可能にする。いくつかの実施形態において、アクチュエータ452は、それが組み込むピストンのための固定された機械的ストッパとの双安定動作のために実現される。これは、アクチュエータが再現可能な行程容積を有し、係合・非係合遷移中のみパワーを要することを可能にする。先に示したように、いくつかの実施形態において、細胞培養プラットフォーム102内の電気部品をなくす、またはその数を減らすことが望まれるとき、空気式アクチュエータを有する制御プレート400が使用される。たとえば、実験者が電気生理学的実験を実行し、制御プレート202の電気部品が電気生理学記録に干渉するならば、実験者は、空気系のシステムを使用することを選択し得る。
制御プレート450はまた、複数のコネクタ458を含む。いくつかの実施形態において、コネクタ458は、アクチュエータ452をアクティブ化するために制御プレート450を制御装置112に電気的に結合するために使用される。他の実施形態において、コネクタ458は、センサ106を制御プレート450および最終的には制御コンピュータ110に接続するために使用される。いくつかの実施形態において、空気式実施形態はまた、センサ106の接続のためのコネクタ458を含む。
再び図2、3Aおよび3Bを参照すると、細胞培養プラットフォーム102は流体フロープレート204を含む。流体フロープレート204は、複数の流路およびその中に画定されたポンプチャンバを含む。流体フロープレート204は制御プレート202と細胞培養容器206との間のインタフェースとして働く。たとえば、流体フロープレート204は、その背面で、制御プレート400のアクチュエータとインタフェースする。すると、流体流は制御プレート202によって流体フロープレート204に通され、そこで、流体は細胞培養容器206に送られることができる。
いくつかの実施形態において、流体フロープレート204は、透明な、化学的に安定かつ機械的に頑丈な熱可塑性材料、たとえばポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリスルホンまたは他の類似材料から構築される。流体フロープレート204の材料は、化学的不安定性および化学的吸収を避けるように選択される。
いくつかの実施形態において、流体フロープレート204を通過する流れに対する動的制御は、制御プレート202の上記アクチュエータを使用して達成される。たとえば、ユーザは、流体を閉じる、流体の流量を制御する、または流体を流路から離れさせるために、特定のアクチュエータをアクティブ化することができる。
いくつかの実施形態において、流体フロープレート204は使い捨てである。他の実施形態において、流体フロープレート204はまた、本明細書に記載されるようなアクチュエータ、センサおよび/または「再使用可能」部品を含む。
図4Dは、制御プレート400からの例示的な定容積型ポンプ412の拡大略図を示す。定容積型ポンプ412は、その中心に、流体フロープレート204中に配置された置換チャンバに動作的に係合した置換ポンプ460を含む。流体フロープレート204中の四つの流路464が置換チャンバから放射状に延びている。流体フロープレート204中の膜弁462および制御プレート400上に配置された対応するアクチュエータが各流路464と直列状態にある。
定容積型ポンプ412は置換ポンプ460を含む。置換ポンプ460および膜弁462は、図4Eおよび4Fに関連してさらに説明される。簡潔にいうと、置換ポンプ460は定容積型ポンプ412の中心の近くに位置する。いくつかの実施形態において、置換ポンプ460は、膜を流体フロープレート204上の置換チャンバの内外へと駆動することによって流れを発生させるアクチュエータである。膜の撓みが置換チャンバ内に正または負の圧を発生させ、それが流体流を置換チャンバに押し通す。いくつかの実施形態において、アクチュエータは空気式アクチュエータ、電磁アクチュエータまたは圧電アクチュエータである。他の実施形態において、膜の作動は、膜の非流体側のヘッドスペース中に部分真空または高圧を空気的に発生させることによって達成される。いくつかの実施形態において、空気式流体ラインによってアクティブ化される空気式アクチュエータに比べて、電磁アクチュエータは、アクチュエータの電気的制御を可能にすることにより、制御プレートの複雑さを減らす。いくつかの実施形態において、アクチュエータは、双安定性動作のために実現され、ピストンのための固定された機械的ストッパを有する。これは、アクチュエータが、再現可能な行程容積を有し、係合・非係合遷移中のみパワーを要することを可能にする。
いくつかの実施形態において、置換ポンプ460の各行程は、約0.05N〜約2N、約0.25N〜約1.5Nまたは約0.75N〜約1.25Nの力を発生させる。置換ポンプ460の各行程中の膜の作動距離は約50μm〜約500μm、約100μm〜約400μmまたは約200μm〜約300μmである。
いくつかの実施形態において、定容積型ポンプ412は、アクチュエータの1行程あたり約0.1μL〜約2.0μL、約0.5μL〜約1.5μLまたは約0.75μL〜約1.25μLの流体を押し退ける。この流体押し退けが、約0.1μL/sec〜約25μL/sec、約0.1μL/sec〜約20μL/sec、約0.1μL/sec〜約15μL/sec、約0.1μL/sec〜約10μL/sec、約0.1μL/sec〜約5μL/secまたは約0.1μL/sec〜約1μL/secの流量を発生させる。
定容積型ポンプ412はまた、複数の膜弁462を含む。図示するように、定容積型ポンプ412は四つの膜弁462を含む。いくつかの実施形態において、定容積型ポンプ412は、それぞれが異なる流路464に結合された4〜12の弁または4〜8の弁を含む。置換ポンプ460と同様に、膜弁462は、膜を駆動するアクチュエータを含む。図4E、4Fおよび図12に関連してさらに詳細に説明される過程において、膜弁462は、膜を流路464の中へと駆動して、膜弁462の互いからの両側で流路464の二つの部分を封止することにより、それが取り付けられている流路464を閉じる。いくつかの実施形態において、膜弁462は常時開(NO)であり、他の実施形態において、膜弁462は常時閉(NC)である。NO膜弁462は非アクティブ化されたとき、NO膜弁462はそれが結合されている流路464を通過する流体流を可能にする。逆に、NC弁462はアクティブ化されたとき、NC弁462はそれが結合されている流路464を通過する流体流を阻止する。いくつかの実施形態において、膜弁462内のばねまたは永久磁石が、NC弁462がそのデフォルト位置にあるとき閉位置を維持するために必要な静的力を提供する。たとえば、相対的に高圧の流体流がNC弁を開状態にすることもできるが、弁の静的力が、弁462が動かされるまで、弁462がその閉状態にとどまることを保証する。
膜弁462(および置換ポンプ460)は上記制御装置112によって制御される。膜弁462の制御は、定容積型ポンプ412を通過する12の可能な流体経路(すなわち、各膜弁462から定容積型ポンプ412の各他の膜弁462への流体経路)を可能にする。弁の多重化制御は、一度に複数の流体経路に沿う一定の流量を可能にする。弁の多重化制御とは、置換弁460の各行程サイクルごとに、開状態および閉状態の膜弁462の構成が交換される(したがって、定容積型ポンプ412を通過する異なる流体経路を選択する)ことをいう。いくつかの実施形態においては、複数の流体キャパシタが各流体流路464に結合されて、定容積型ポンプ412が多重化セットの流体経路を通って循環するとき、各多重化流体経路に沿う定容積型ポンプ412からの出力流が拍動性の流れから定容積の流れへと変換される。たとえば、膜弁462は、置換ポンプ460の第一行程で、流体を流体貯留部から細胞培養容器に注入するように構成され、膜弁462は、置換ポンプ460の第二行程で、定容積型ポンプ412が細胞培養容器から流体を抜き取り、その流体を廃棄物貯留部の中に捨てるように構成され得る。
定容積型ポンプ412はさらに複数の流路464を含む。いくつかの実施形態において、流路464は、約0.1mm〜約1.5mm、約0.1mm〜約1mmまたは約0.1mm〜約0.5mmの幅および高さを有する。いくつかの実施形態においては、一つまたは複数の流体キャパシタ(たとえばキャパシタポート410)が各流路464と直列に結合される。流体キャパシタは、置換ポンプ460によって生成される拍動性の流れを定常流に変換する。定容積型ポンプ412を通過する流れは、RC回路としてモデル化されることができる。いくつかの実施形態において、流体キャパシタのキャパシタンスは、流路464の時定数(τ)が置換ポンプ460のスイッチング周波数の約5倍の大きさになるように選択される。時定数(τ)は、電気RC回路と同じく、流路の抵抗×流路と直列にある流体キャパシタのキャパシタンスとして計算される。以下に記載するように、いくつかの実施形態において、細胞培養容器は、細胞培養容器内の細胞が環境ガスに暴露され得るよう、開放型である。細胞培養容器が開放型であるとき、定容積型ポンプ412を使用して、細胞培養容器があふれないことを保証することが重要である。開放型細胞培養容器において、細胞培養容器内の圧力は増大しない。したがって、いくつかの実施形態においては、細胞培養容器に注入される流体の量に実質的に等しい量の流体が細胞培養容器から受動的に流れ出すことはない。しかし、定容積型ポンプ412内に生じる負圧が、定容積型ポンプ412が、それが開放型細胞培養容器に注入する流体の量に等しい量の流体を開放型細胞培養容器から抜き取ることを可能にする。
図4Eは、例示的な定容積型ポンプ470の断面図を示す。定容積型ポンプ470は、置換ポンプ471および四つの弁472(そのうちの二つを断面図で示す)を含む。弁472および置換ポンプ471のピストン473は、膜474を撓ませるように構成されている。定容積型ポンプ470はまた、流体フロープレート204中に配置された流路475および置換チャンバ476を含む。膜474が流体層477(たとえば流体フロープレート204中)と作動層478(たとえば制御プレート202中)との間に挟まれている。
上記のように、定容積型ポンプ470は置換ポンプ471および弁472を含む。いくつかの実施形態において、置換ポンプ471および弁472はアクチュエータである。たとえば、置換ポンプ471および弁472は電磁、圧電または空気式アクチュエータである。置換ポンプ471および弁472は、約2mm〜約15mm、約5mm〜約10mmまたは約7mm〜約10mmの直径を有する。図示するように、弁472(a)が非アクティブ化され、置換ポンプ471がその非アクティブ化状態に戻ると、置換チャンバ476中に真空が発生する。図示するように、これが流体を置換チャンバ476の中に吸い込む。
定容積型ポンプ470はまた、膜474を含む。図4Eに示すNO弁構成中、膜474は、弁472によって撓ませられると、流路を閉鎖する(弁472(b)によって示すように)。いくつかの実施形態において、膜474は、作動層478の実質全面にかけて積層される膜シートである。他の実施形態において、膜474は、置換ポンプ471および弁472それぞれの部品であり、制御プレート内の唯一の層ではない。いくつかの実施形態において、膜474は高温ポリウレタン、フルオロポリマーエラストマーまたは合成ゴムである。たとえば、膜474はViton(登録商標)(DuPont製(本社所在地:Wilmington, Delaware))を含むことができる。膜は、約25μm〜約300μm、約50μm〜約250μm、約100μm〜約200μmまたは約100μm〜約150である。膜の材料は、(1)弁472が閉位置にあるとき弁472を通過する流れが実質的に起こらず、(2)材料が不活性であり、(3)材料が化学物質を吸収せず、(4)材料が耐疲労性であり、(5)材料が非粘着性であり(すなわち、長期間閉じていた後でも弁膜は相対的に容易に開く)、(5)滅菌過程を通して所望の性質を維持する、またはそれらの任意の組み合わせであるように選択される。いくつかの実施形態において、膜は、材料の非粘着性を高めるために処理される。いくつかの実施形態において、膜は研磨剤で処理される(たとえばサンドブラスト、研磨またはサンダー仕上げ)。いくつかの実施形態において、膜の表面は、アルミナ、チタニア、ジルコニア(金属酸化物)またはそれらの組み合わせで化学的に処理される。表面処理は、厚さ約50〜約400オングストロームの表面層を生成する。
定容積型ポンプ470はまた、作動層478を含む。いくつかの実施形態において、作動層478は、ポリイミド類、たとえばKaptonまたはアクリル樹脂から形成される。いくつかの実施形態において、作動層478は、複数の層をいっしょに結合することによって形成される。たとえば、空気流路が個々のポリイミド層の中に送られてもよい。そして、送られたポリイミド層は、フェノール系ブチラール、ポリウレタン(PU)またはアクリル樹脂(PMMA)を含む接着層によっていっしょに結合されて、空気流路がその中に延びる固体作動層478を形成する。電気的アクチュエータ(たとえば電磁アクチュエータ)を用いる実施形態においては、パワーおよび信号トレースが作動層を通って延びる。
定容積型ポンプ470はまた、流体層477(たとえば流体フロープレート204)を含む。流体層477は流体流路(たとえば流路475)を含む。流体層477はまた、置換チャンバ476を含む。いくつかの実施形態において、流体層477は、クラスVI熱可塑性樹脂、たとえば、非限定的に、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリウレタン(PU)、バイトンまたはそれらの組み合わせから形成される。
図4Fは、例示的な定容積型ポンプ480の断面図を示す。定容積型ポンプ480はNO弁構成を示す。定容積型ポンプ480は、セグメント化された流路483を含む。定容積型ポンプ480はまた、置換ポンプ481および四つの弁482(そのうちの二つを図4Fに示す)を含む。定容積型ポンプ480は、流体層477と作動層478との間に挟まれた膜474を含む。
定容積型ポンプ480は置換ポンプ481および弁482を含む。NO弁構成において、弁482および置換ポンプ481は、膜の作動層478側に真空を加えることによってアクティブ化される(すなわち開放される)。図4Fに示すように、置換ポンプ481の置換チャンバ484は作動層478内にある。いくつかの実施形態において、置換チャンバ484の床は凹状であり、置換ポンプ481に真空が加えられたとき、膜474は置換チャンバ484の床の形に適合する。
次に、例示的な流体フロープレート500の等角図を示す図5Aを参照する。流体フロープレート500の上面は複数の凹部(またはほぞ穴)504を含む。以下に記載するように、細胞培養容器206は、合致する凸部(またはほぞ)を含む。ほぞ穴504とほぞとが連結し、細胞培養容器206をフローポート502と正しく整列させる。図示するように、フローポート502はほぞ穴504のサブセットに含まれる。いくつかの実施形態において、各ほぞ穴504はフローポート502を含む。
図示するように、再び図3Aおよび3Bを参照すると、流体フロープレート500は六つの細胞培養容器206を支持する。いくつかの実施形態において、流体フロープレート500は、1〜10、10〜20、20〜50、50〜100の細胞培養容器206を支持する。
図5Bは、図5Aの流体フロープレート500の断面図を示す。断面図によって示されるように、流体フロープレート500は複数の流体流路508を含む。いくつかの実施形態において、流体流路508は一つまたは複数のフローポート502を他の流体流路508に接続する。したがって、いくつかの実施形態において、流体流路508は、一つまたは複数の細胞培養容器206を接続する、および/または、一つの細胞培養容器206の異なる部分を相互接続する。いくつかの実施形態において、流体フロープレート500は複数の層を含み、そのそれぞれがさらなる流体流路508を含む。たとえば、流体フロープレート500は、第一の軸に沿って延びる流体流路508の第一の層と、第一の軸に対して直交に延びる流体流路508の第二のセットとを含み得る。
再び図2、3Aおよび3Bを参照すると、細胞培養プラットフォーム102は複数の細胞培養容器206(1)〜(n)(nは細胞培養容器の数である)を含む。上記のように、様々な細胞培養プラットフォーム102が1〜10、10〜20、20〜50または50〜100の細胞培養容器206を支持することができる。いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、特定の細胞タイプおよび/または特定の臓器タイプからの細胞を収容するように構成されている。いくつかの実施形態において、特定の臓器タイプからの細胞は、その特定の臓器に関連する複数の細胞タイプを含む。たとえば、細胞培養容器206が臓器細胞を収容するように構成されているとき、細胞培養容器は、ヘンレ係蹄の細い部分の細胞、尿細管細胞、集合尿細管細胞および糸球体傍細胞を培養するように構成されることができる。特定の臓器タイプに関連する複数の細胞タイプを用いるいくつかの実施形態においては、その臓器に関連する第一の細胞タイプが透過膜の上で培養され、その臓器に関連する第二の細胞タイプが透過膜の下で培養される。
いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、細胞培養容器206の内部構成にかかわらず、共通の外部フォームファクタを含む。たとえば、各細胞培養容器206は、細胞培養容器206を流体フロープレート202上の任意の細胞培養容器スロットに配置することができるよう、所定の位置に上記ほぞおよび流体ポートを含むことができる。
いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、特定の細胞および/または臓器組織タイプを支持するように構成される。いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、特定の細胞および/または臓器タイプの三次元細胞増殖を可能にするための特定の足場または構造を含み得る。他の実施形態において、細胞培養容器206は、所定の流量を細胞培養容器206に提供することにより、および/または所定の流体(たとえば特定の培地混合物)を細胞培養容器206に提供することにより、特定の細胞および/または臓器組織タイプを支持するように構成される。たとえば、高い剪断力を必要とする細胞タイプは、複数の入力ポートおよび複数の出力ポートを有する細胞培養容器206中で培養することができる。複数の入力および出力ポートは、相対的に大きな量の流体が細胞培養容器206を通って流れ、それにより、相対的に大きな剪断力を細胞培養容器206内の細胞に加えることを可能にする。いくつかの実施形態において、剪断力をほとんどまたは全く要しない細胞は、一つのポートを有する細胞培養容器中で培養され得、栄養素は、流体流からの力を受けずにその一つのポートを通って培養容器中に拡散する。
他の実施形態において、生理学的要件に基づき、細胞は、培地の中に沈められた足場中または気液界面の膜上で培養される。たとえば、肺からの肺胞細胞は、細胞の背面側に栄養素を供給しながらも細胞の上側に空気を提供するように設計されている細胞培養容器206中に配置され得る。もう一つの例において、肝細胞は、肝細胞層および膜を通って貯留部まで拡散が起こることができるように貯留部の上の透過膜上で培養され得る。
以下さらに詳細に説明するように、いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、一つまたは複数の細胞培養インサートのためのスロットを含む。細胞培養インサートは、細胞培養容器206中で培養される細胞を収容する。細胞培養インサートは、取り外し可能であり、個々の培養物が細胞培養システム100の外で接種され、増殖することを可能にする。たとえば、ある会社が、事前に接種された細胞培養インサートを販売し得、それを研究者が購入し、次いで細胞培養システム100に挿入する。
いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、半透過膜によって分けられた複数のコンパートメントを含む。いくつかの実施形態において、膜は、界面化学、機械的剛性およびインビボ組織の多孔性を表す特定のマトリックス成分を含むことができる。いくつかの実施形態において、細胞は直に膜上で培養される。
細胞培養プラットフォーム102のその他の部品と同じく、いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は使い捨てである。細胞培養容器206は、ポリスチレンおよび/またはポリイミドのような光学的に透明な材料から製造される。細胞培養容器206の材料は、従来のマイクロフルイディクス材料に比べ、安定であり、細胞培養物および生物学的流体と適合性である。たとえば、いくつかの実施形態において、細胞培養容器206はPDMSから製造される。いくつかの実施形態において、使い捨て細胞培養容器部品は、熱可塑性樹脂、たとえばポリスチレン、ポリカーボネート、環式オレフィンコポリマー(COC)またはそれらの任意の組み合わせから製造される。いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、直接機械加工、エンボス加工、射出成形によって製造され、またはそれらの任意の組み合わせを使用し得る。いくつかの実施形態において、制御プレート202および/または流体フロープレート204は、上記加工法と同様な加工法により、上記材料と同様な材料を用いて製造される。
いくつかの実施形態において、細胞培養容器206および/または流体フロープレート204は逆止め弁を含む。逆止め弁は、実験中に細胞培養容器206が流体フロープレート204から一時的に取り外されることを可能にする。たとえば、ユーザは、細胞培養容器206を細胞培養プラットフォーム102から取り外して、取り外された細胞培養容器206内の細胞に対して別個の実験または試験を実施し得る。
いくつかの実施形態において、上記流体貯留部118および/または廃棄物貯留部120は、細胞培養容器206と同じフォームファクタを有することができ、流体貯留部118および/または廃棄物貯留部120が細胞培養プラットフォーム102にモジュール式に加えられることを可能にする。すると、流体フロープレート204および制御プレート202は、増殖培地または他の流体(たとえば薬物または毒素)を貯留部から細胞培養プラットフォーム102の他の部品に流すことができる。
以下に記載するように、いくつかの実施形態において、細胞培養容器206は、生理学的系モデルごとにカスタマイズされた足場構造を含む。いくつかの実施形態において、足場(細胞培養インサートとも呼ばれる)は、個々のモデルが細胞培養プラットフォーム102とは別々に開発され、実際の実施のために個別に供給されることを可能にする。
いくつかの実施形態において、特定の細胞培養容器206のために専用の薬物貯蔵および送達が必要になり得る(たとえば、肝細胞を培養する細胞培養容器206にインスリンを送達するとき)。これらの実施形態は、特定の培養ウェルの上記蓋に装着されたカスタムモジュールを含むことができる。たとえば、図3Bを参照すると、蓋302上のポート304は、細胞培養容器206(b)の内部への物質の送達を可能にするために使用され得る。いくつかの実施形態において、送達モジュールは、制御プレート202によって、および/または直に制御装置112によって制御される。
図6A〜6Dは、様々な例示的細胞培養容器の略図を示す。図示するように、各細胞培養容器600、610、620および630は入口ポート602および出口ポート604を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養容器は複数の入口ポート602および/または複数の出口ポート604を含む。特定の実施形態において、細胞培養容器206の各ポートは、制御プレート202中に一つまたは複数のアクチュエータを有する流体フロープレート204を構成することにより、入口ポート602または出口ポート604であるように構成される。
各細胞培養容器600、610、620および630はまた、細胞培養インサート606を含む。上記のように、細胞培養インサート606は細胞のオフプラットフォーム培養を可能にする。細胞培養容器は、細胞培養インサート606を定位置に固定するスロットを含む。いくつかの実施形態において、細胞培養インサートの下面は半透過膜を含み、その上で細胞が培養される。
図6Aは、底部流608のために構成された細胞培養容器600を示す。上記のように、いくつかの細胞は特定の流れおよび/または剪断力に応答する。たとえば、肝細胞の細胞集団は、剪断力に暴露されるならば、インビボ肝細胞をより近く模倣し得る。透過膜を有する細胞培養インサート606を用いることにより、細胞培養容器600の構成は、細胞の基底膜を流れ、ひいては前記剪断力に暴露する。いくつかの実施形態において、底部流は、背面がガスに暴露されることを許す。たとえば、このタイプの構成は、肺胞組織を模倣するために使用され得る。この例においては、肺胞上皮細胞が細胞培養インサート606中で培養される。細胞がその上面に沿ってガスに暴露されるとき、底部流608を通して栄養素が細胞に供給される。
図6Bおよび6Cは、それぞれ細胞培養容器610および620を示す。細胞培養容器610および620は、上部流を提供するように構成されている。細胞培養容器610は、一段高い細胞培養インサート606を含む。一段高い細胞培養インサート606は、細胞を通過してインサート606(b)の下に位置する貯留空間611に入る拡散を可能にする。いくつかの実施形態において、細胞培養容器620の細胞培養構成は、腸上皮細胞を培養するために使用される。図6Dは、細胞培養容器630を示す。細胞培養容器630は、細胞培養インサート606の上下で流れを許すように構成されている。
図7Aは、図3Aの細胞培養容器206(b)に類似した細胞培養容器630の一つの例示的実施形態の等角図を示す。外部的に、細胞培養容器700の各壁は、細胞培養容器700を蝶ねじによって流体フロープレート204に固定するために使用される凹部を含む。細胞培養容器700の内部は上部流れ区域704および細胞培養区域706を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養区域704の床は半透過膜である。
図7Bは、細胞培養容器700の等角破断図を示す。破断によって明らかにされるように、細胞培養容器700は下部流れ区域708を含む。流体はポート710を通って下部流れ区域708に出入りする。矢印712が、細胞培養容器700中の一つの可能な流れパターンを示す。任意で、蓋714が細胞培養容器700に結合される。蓋714は、細胞培養容器700と同様な材料で製造される。いくつかの実施形態において、蓋714は、細胞培養区域706内の細胞への光学的アクセスを提供するために透明である。蓋714はまた、複数のアクセスポート716を含む。いくつかの実施形態において、アクセスポート716は、気体および/または液体を上部流れ区域704に導入するために使用される。いくつかの実施形態において、気体および/または液体は、制御プレート202および/または流体フロープレート204を介してアクセスポート716に供給される。他の実施形態において、アクセスポート716への気体および/または液体の供給は細胞培養プラットフォーム102から独立している。いくつかの実施形態において、細胞培養容器700は、肺組織を培養するために使用される。たとえば、肺細胞が細胞培養区域706内で培養される。下部流れ区域中の栄養素は細胞培養区域706の半透過膜を通って細胞に拡散する。ヒトの肺内のガスを模倣するガスがアクセスポート716を介して上部流れ区域704の中に通される。
図8は、細胞培養容器206のもう一つの実施形態を示す。図8は、図3Aの細胞培養容器206(a)に類似した細胞培養容器800の平面図を示す。細胞培養容器800は入口ポート802を含む。細胞培養容器800に入る流体流は、壁804を回って出口806に向けて送られる。出口806は、細胞培養インサートを固定するための上記スロットに類似したスロット808内に凹んでいる。細胞培養容器800中、流体流の一部分が細胞および細胞培養インサートの膜を通って流れて出口806に達する。凹部810が、過剰な流体が細胞培養インサートをバイパスし、直に出口806に流れることを可能にする。いくつかの実施形態においては、細胞培養容器800に類似する細胞培養容器が、剪断力の存在下、肝細胞のような細胞を培養するために使用される。
図9Aは、流体フロープレート204中の流体経路を制御するために制御プレート202に含めるのに適したアクチュエータ900の断面図を示す。アクチュエータ900は制御プレート902内に収容される。流路906を含む流体フロープレート904が制御プレート902に結合されている。流路906を閉じるために、アクチュエータ900はそのピストンを上向きに駆動する。上記のように、膜908がアクチュエータを流体フロープレート904の流体から切り離す。ピストンは、ひとたび配置されたならば、流路の上の凹部910に突入する。これがシールを形成して流路906を閉じる。
図9Aはまた、流体キャパシタ912を示す。いくつかの実施形態においては、一つまたは複数の流体キャパシタ912が細胞培養プラットフォーム102の流路に含まれる。流体キャパシタ912は、それが取り付けられる流路を通過する流体流を平滑化する。流体キャパシタ912は、キャビティ916の上の膜914を含む。拍動性の波動(または他の非平滑流)に応答して、膜914はキャビティ916の中へと変形する。キャビティ916の中への流路の拡大が拍動性の波動を減速させ、流路を通過する流れを平滑化する。
図9Bは、細胞培養システムのための流体試料を注入する、および/または抜き取るように構成された例示的なアクチュエータの断面図を示す。図9Bに示すように、流体流路950が細胞培養容器952の下に延びている。注入/抜き取り(I/W)モジュール954が流路950の一端に結合されている。I/Wモジュール954は第一のアクチュエータ956を含み、第一のアクチュエータは、アクティブ化されると、I/Wモジュール954を流体流路950から封止する。第一のアクチュエータ956の機構は、図9Aに示す上記アクチュエータ908に類似している。簡潔にいうと、第一のアクチュエータ956は、膜962を流体流路950の上の凹部に押し込み、それがシールを形成し、I/Wモジュール954を流体チャネル950から封鎖する。I/Wモジュール954はまた、第二の膜964に結合されている第二のアクチュエータ958を含む。I/Wモジュール954はまた、注入のための流体および/または抜き取り後の流体を貯蔵するための貯留部960を含む。いくつかの実施形態において、I/Wモジュール954はまた、貯留部960からの流体の注入および/または抜き取りを可能にするためのアクセスポート(図示せず)を含む。
流体流路950から試料を抜き取る(シッピング(sipping)とも呼ぶ)ために、第一のアクチュエータ954が下降する。第一のアクチュエータ954が下降すると、流体がI/Wモジュール954に入ることができる。第二のアクチュエータ958がそのピストンを引き戻し、第二の膜964を上向きに駆動する。膜964の上昇動が貯留部960中に真空を発生させ、その真空が流体を流体流路950から貯留部960の中へと吸い込む。流体を流体流路950に注入する場合にも同様な過程が起こる。流体注入中、第二のアクチュエータ958がそのピストンを延ばし、貯留部960中の圧力を増大させる。第一のアクチュエータ956が流体流路950へのアクセスを開くことに応答して、圧力増大が貯留部960中の流体をI/Wモジュール954の外に押し出し、流体流路950に押し込む。
いくつかの実施形態において、I/Wモジュール954は、流体を流体流路950から抜き取るために第二のアクチュエータ958を必要としない。たとえば、流体流路950中に存在する流れが流体を貯留部960に押し込み得る。いくつかの実施形態において、I/Wモジュール954は、上記流体フロープレート、細胞培養容器または制御プレートの部品である。たとえば、I/Wモジュール954は、細胞培養容器の部品であり得、流体を注入し得る、または流体を細胞培養容器から直に抜き取り得る。他の実施形態において、I/Wモジュール954は細胞培養プラットフォームとは別個のモジュールであり、細胞培養容器および/または流体フロープレートのいずれかにモジュール式に加えられ得る。
図10は、複数の細胞を培養する方法1000のフローチャートを示す。いくつかの実施形態において、方法1000は、臓器系の相互作用をインビトロで試験するために使用される。方法1000は、第一および第二の細胞培養容器を提供する工程(工程1001)を含む。方法1000はまた、細胞培養プラットフォームを提供する工程(工程1002)を含む。第一のタイプの細胞を第一の細胞培養容器に配置し、第二のタイプの細胞を第二の細胞培養容器に配置する(工程1003)。次いで、細胞培養容器を細胞培養プラットフォームに結合し(工程1004)、第一および/または第二の細胞培養容器への流体経路(流体回路とも呼ばれる)を構成する(工程1005)。方法1000はまた、流体を細胞培養プラットフォームに通して第一および第二の細胞培養容器まで流す工程(工程1006)を含む。
上述したように、方法1000は、第一および第二の細胞培養容器の提供(工程1001)および細胞培養プラットフォームの提供(工程1002)から始まる。第一および第二の細胞培養容器は、図2〜3Bおよび6A〜8に関連して上述した細胞培養容器に類似していることができる。いくつかの実施形態において、第一および第二の細胞培養容器は異なるふうに構成されている。たとえば、第一の細胞培養容器は、第一の臓器からの組織(たとえば肺組織)を培養するように構成されることができ、第二の細胞培養容器は、第二の臓器からの組織(たとえば肝組織)を培養するように構成されることができる。たとえば、第一の細胞培養容器は、図7Aに示す細胞培養容器700であり得、第二の細胞培養容器は、図8に示す細胞培養容器800であり得る。いくつかの実施形態において、細胞培養プラットフォームは先に説明した細胞培養プラットフォーム102である。いくつかの実施形態においては、方法1000を開始する前に、一つまたは複数の細胞培養容器がすでに細胞培養プラットフォーム102に結合されている。
次に、第一のタイプの細胞を第一の細胞培養容器中に配置し、第二のタイプの細胞を第二の細胞培養容器中に配置する(工程1003)。いくつかの実施形態において、工程1001で選択された細胞培養容器構成は、ユーザが工程1003で使用する予定である細胞のタイプに応じる。いくつかの実施形態において、ユーザは、特定の細胞タイプを特定の細胞培養容器構成と組み合わせることにより、臓器系を模倣することができる。たとえば、ユーザは、肺胞細胞を、気液界面を提供する細胞培養容器構成(たとえば、図7Aおよび7Bに示す細胞培養容器700)と組み合わせることを選択し得る。
いくつかの実施形態において、第一および第二の細胞タイプは異なる細胞タイプである。これらの実施形態において、ユーザは、複数の臓器系を模倣するために、様々な細胞タイプおよび細胞培養容器構成を組み合わせ得る。いくつかの実施形態において、臓器系は、肝臓、肺または腎臓の二つ以上に相当する。以下に記載するように、いくつかの実施形態においては、複数の臓器系のモジュール式組み合わせが、ユーザがそれらの臓器系の相互作用を研究することを可能にする。他の実施形態において、ユーザは、相互接続された複数の臓器系を培養する細胞培養プラットフォームを使用して、薬物投与および薬物取り込みを研究することができる。
次に、第一および第二の細胞培養容器を細胞培養プラットフォームに結合する(工程1004)。いくつかの実施形態において、図2〜3Bに関連して上述したように、細胞培養容器は、制御プレートと細胞培養容器との間の界面として働く流体フロープレートに結合される。いくつかの実施形態において、細胞培養容器は制御プレートおよび/または流体フロープレートに可逆的に結合される。
方法1000はさらに、第一および第二の細胞培養容器の間に流体回路を構成する工程(工程1005)を含む。上記のように、いくつかの実施形態においては、アクチュエータが制御プレートに結合される(または制御プレート内にある)。アクチュエータのアクティブ化が流体フロープレートおよび/または細胞培養容器中の少なくとも一つの弁を制御する。細胞培養プラットフォーム中の一つまたは複数のアクチュエータをアクティブ化することにより、ユーザは、第一および第二の細胞培養容器の間で流体流を送る流体回路を構成する。
制御プレートへの第一および第二の細胞培養容器の結合に応じて、流体を細胞培養プラットフォームに通して第一および第二の細胞培養容器に流す(工程1006)。いくつかの実施形態において、流体は、流体フロープレートとの界面で細胞培養プラットフォームに入る。さらに他の実施形態において、流体は、細胞培養容器の一つまたは複数を通って細胞培養プラットフォームに入る。いくつかの実施形態においては、流体を細胞培養プラットフォームに通して流す工程が、細胞培養プラットフォームを通過する流体の再循環を構成する。いくつかの実施形態において、流体は増殖培地、血液、ガスまたはそれらの任意の組み合わせである。
いくつかの実施形態において、方法1000はさらに、第三の細胞タイプを第三の細胞培養容器の中に配置し、次いで、第一および第二の培養容器に加えて、またはそれらの代わりに、第三の細胞培養容器を細胞培養プラットフォームに結合する工程を含む。他の実施形態において、方法1000はまた、一つまたは複数のアクチュエータをアクティブ化することにより、工程1006で形成された流体回路を再構成する工程を含む。たとえば、アクチュエータの一つまたは複数をアクティブ化することにより、第三の細胞培養容器を含むように上記流体回路を再構成することができる。他の実施形態において、方法1000は、細胞培養プラットフォーム内の第一、第二および/または第三の細胞培養容器を再配置する、および/または取り外す工程を含む。さらに他の実施形態において、方法1000は、細胞培養プラットフォーム102内のパラメータを計測する工程を含む。たとえば、細胞培養容器の一つ中の温度および/または流体回路中の流量を計測し得る。いくつかの実施形態においては、計測を実施するために、細胞培養容器が細胞培養プラットフォーム102から一時的に取り外される。他の実施形態においては、細胞培養容器が永久的に取り出され、類似の、または異なる細胞または臓器組織タイプを収容する細胞培養容器と交換される。
当業者は、いくつかの実施形態において、方法1000の上記方法工程を異なる順序で実施してもよく、または方法工程の一つもしくは複数を省略してもよいことを理解するであろう。たとえば、一つの実施形態において、流体回路は、細胞培養容器を細胞培養プラットフォームに結合する前に構成されてもよい。同様な例において、ユーザは、事前に構成された流体流路を含み、したがって、ひとたび細胞培養プラットフォームに結合されたならば構成される必要のない流体フロープレートを購入してもよい。
図11は、上記システムの使用事例の例示的略図を示す。図は、いくつかの実施形態において薬物候補を調査するために使用されるシステム1100を示す。システム1100は、四つの臓器系に対応する細胞を培養する細胞培養プラットフォームに対応する。いくつかの実施形態において、一つまたは複数の細胞培養容器が各臓器系に対応する。システム1100の四つの臓器系は、気管気管支組織1102、肺胞組織1104、小腸組織1106および肝組織1108を含む。制御プレート中のアクチュエータに対応する複数の弁1110および定容積型ポンプ1112を使用して、システム1100を実現するために使用される二つの循環回路が流体フロープレート中に形成される。第一の回路1114は循環器(または心臓血管)系を表す。第一の回路1114は、各臓器系1102、1104、1106および1108に栄養素を提供する。いくつかの実施形態において、栄養素および他の化学物質を各臓器系1102、1104、1106および1108に運ぶために使用される流体は、増殖培地、血液または血液分析対象物である。第二の回路1116(破線として示す)は小腸組織1106および肝組織1108だけに結合されている。第二の回路1116、小腸組織1106および肝組織1108はリンパ系に対応し、廃棄物および他の物質を第一の回路1114からろ過する。
システム1100中、システム1100を実現するために使用される各細胞培養容器は、図6Dに示す細胞培養容器630と同様に、上部流および底部流を提供する。たとえば、肺胞組織1104および気管気管支組織1102に対応する細胞培養容器中、細胞は、細胞培養容器の下チャンバを通って流れる、第一の回路1114からの流体によって栄養素を提供される。細胞培養容器の上チャンバ中、肺胞組織1104および気管気管支組織1102は酸素に暴露される。一つの側での酸素への暴露およびもう一方の側での第一の回路1114の流体への暴露が、肺胞組織1104および気管気管支組織1102の細胞が、CO2を除去しながら流体を酸素化することを可能にする。
小腸組織1106および肝組織1108に対応する細胞培養容器中の底部流もまた、第一の回路1114から生じる。上記のように、第一の回路1114からの流体は、それぞれの組織に栄養素を供給するために使用される。小腸組織1106および肝組織1108に対応する細胞培養容器中、上部流は、第二の回路1116からの流れの成分である。小腸組織1106および肝組織1108は、第一の回路1114の流体から栄養素を受けることに加えて、第一の回路1114の流体をろ過し、ろ過された廃棄物を第二の回路1116の流体に移送し、そこで廃棄物はシステム1100から除去されることができる。
生体模倣環境内(たとえば、温度、湿度および他のパラメータがインビボ条件を模倣する上記のような細胞培養容器内)で臓器特異的組織タイプを培養し、各臓器系を生理学的に有意なやり方で相互接続することにより、インビボ細胞集団の応答を実質的に模倣するインビトロ細胞に対して実験を実施することができる。たとえば、薬物送達システム1120を介して所定の量の薬物をシステム1100に導入することができる。システム1100の第一の回路1114は、薬物送達システム1120から出発して、各臓器系1102、1104、1106および1108に薬物を輸送する。矢印1250は、薬物が第一の回路1114を通ってたどる経路を示す。細胞は、薬物が第一の回路1114を通って流れるとき、薬物を取り込む。加えて、薬物のいくらかは、システム1100を通って循環するとき、第一の回路1114の流体からろ別される。たとえば、肺胞組織1104は、第一の回路1114の流体からCO2を除去するとき、薬物のいくらかをオフガスとして除去し得る。また、肝組織1108は、第一の回路1114の流体から薬物をろ別し、次いで、その薬物を第二の回路1116の流体に移送し得る。
薬物がシステム1100を通って流れるとき、いくつかの計測を実施することができる。たとえば、ユーザは、第一の回路1114中の流体のpHを観察して、薬物が流体を塩基性または酸性にしているかどうかを決定し得る。ユーザは、第二の回路1116の流体中に集められた廃棄物をサンプリングして、投薬量が高すぎるかどうかを決定し得る。たとえば、ユーザは、第二の回路1116の流体中に薬物が実質的に存在しない点まで投薬量を下げる実験を実施し得る。いくつかの実施形態において、第二の回路1116の流体中の実質的な量の薬物は、多すぎる量の薬物がシステム1100に導入されていることを示す。
いくつかの実施形態において、ユーザは、組織系の一つに対応する細胞培養容器の一つを一時的に取り出し、上記顕微鏡を用いて細胞培養容器中の細胞を検査し得る。たとえば、ユーザは、細胞を顕微鏡で検査して、薬物が細胞を損傷しているかどうかを決定し得る。いくつかの実施形態において、ユーザは、細胞培養プラットフォームから細胞培養容器を取り出すことなく細胞培養容器内の細胞を検査することができる。
図12は、流体を定容積型ポンプに通して流す例示的方法1200のフローチャートを示す。第一に、定容積型ポンプを有する細胞培養システムを提供する(工程1201)。方法1200は、第一の膜弁を閉じる工程(工程1202)を含む。次いで、流体を置換チャンバに吸い込む(工程1203)。次いで、第二の膜弁を閉じ(工程1204)、第一の膜弁を開く(工程1205)。置換チャンバを空にする(工程1206)。最後に、流体を定容積型ポンプの外に流す(工程1206)。
図4Dを参照して上述したように、方法1200は、細胞培養システムの提供から始まる(工程1201)。細胞培養システムは、図4Dに示す定容積型ポンプ412に類似した定容積型ポンプを作動させる制御プレートを含む。定容積型ポンプは、中央の置換ポンプおよび置換ポンプから放射状に延びる複数の流路を含む。図4Dに示すように、いくつかの実施形態において、定容積型ポンプは四つの流路を含む。膜弁が各流路と直列に結合している。また、いくつかの実施形態においては、流体キャパシタが流路の一つまたは複数と直列に結合している。
方法1200はまた、第一の膜弁を閉じる工程(工程1202)を含む。図4Eおよび4Fに関連して上述したように、NO構成において、流体流路は、膜弁をアクティブ化することによって閉じられ、NC構成において、流体流路は、膜弁がそのデフォルト状態にあるとき、閉じられている。第一の膜弁は、方法1200の最終工程において流体が透過する膜である。たとえば、図4Dを参照して、膜弁462(a)が細胞培養容器の入力に結合され、膜弁462(d)が細胞培養容器の出力に結合され、弁362(b)が流体貯留部に結合され、弁362(c)が廃棄物貯留部に結合され、各弁362がNC弁であると仮定する。流体が細胞培養容器の中に流されるならば、工程1202で、弁262(a)を閉じる。送り先流路の弁を閉じると、次の工程で置換チャンバを満たす流体が、この例においては細胞培養容器から来ないことが保証される。
次に、方法1200は、流体を置換チャンバに吸い込む工程(工程1203)を含む。流体は、置換ポンプの膜を撓ませることによって置換チャンバに吸い込まれる。置換チャンバへの流体の吸い込みは、置換ポンプのインストロークと呼ばれる。膜の撓みは置換チャンバ内に真空を発生させ、それにより、置換チャンバが、開状態の膜弁を有する、置換チャンバに結合された流体流路のいずれかからの流体で満たされるようにする。たとえば、上記例を続けると、膜弁362(a)、362(c)および362(d)を閉じて、置換チャンバが流体貯留部からの液体で満たされるようにし得る。
方法1200は、第二の膜弁を閉じる工程(工程1204)を含む。ひとたび置換チャンバが流体で満たされたならば、第二の膜弁を閉じる。第二の膜弁は、置換チャンバを満たすための流体を提供した流体流路に結合される−たとえば、上記例においては弁362(b)。
方法1200はまた、第一の膜弁を開く工程(工程1205)を含む。いくつかの実施形態において、第二の膜弁を閉じる工程(工程1204)および第一の膜弁を開く工程(工程1205)は実質的に同時に起こる。
第一の膜弁の開放に応答して、置換チャンバを空にする(工程1206)。流体は、置換ポンプのアウトストロークによって置換チャンバから排出される。アウトストローク中の置換ポンプによる膜の撓みが置換チャンバを加圧して、流体を置換チャンバの外に押し出す。次に、方法1200は、流体を第一の流路に通して流す工程(工程1206)を含む。加圧された置換チャンバは、流体を、第一の流路の開いた弁に通し、第一の流路の中に流れさせる。
いくつかの実施形態において、上記方法は、異なる弁の組み合わせを使用して流体を4ポート型定容積型ポンプの第二の流体経路に沿って流すことによって繰り返される。たとえば、図4Dを参照しながら上記例を続けると、置換ポンプ460の第二のインストロークで、膜弁462(b)が閉じられ、膜弁462(d)が開かれて、細胞培養からの廃棄物を置換チャンバに吸い込む。置換ポンプ460の第二のアウトストロークで、膜弁462(d)が閉じられ、膜弁462(c)が開かれて、廃棄物流体を廃棄物貯留部に流し込む。
先で説明した様々な試料培養または他の実験システムは、たとえば流体含量を調整するための定期的な流体循環および混合の手順および機構を含むことができる。一つの構成において、循環および混合は、二つの流体貯留部に接続されたポンプ(たとえば4ポート定容積型ポンプ)により、流体が二つの貯留部の間を流れるとき流体を混合することによって達成することができる。そのようなシステムにおいて、一つの貯留部における流体蓄積分は他方の貯留部における流体枯渇分と一致する。しかし、流体循環が長期にわたり定期的に実施されるならば、前進ポンピング速度と後退ポンピング速度との間または前進時間間隔と後退時間間隔との間の任意の非対称性が貯留部中の流体レベルの漸増的変化を生じさせる。そのようなポンピング非対称性から生じる潜在的問題は、流体枯渇および開放型流体チャンバにおいては潜在的に流体のあふれを含む。
図13は、例示的実施形態の流体循環・混合システム1300の概念図を示す。流体混合システム1300は、流体を複数のチャンバに通し(たとえば、図2に示す流体フロープレート204を介して細胞培養容器206に通し)、各チャンバ内で一定範囲の流体量を維持しながら循環させるように構成されている。システム1300は、第一のチャンバ1302、第二のチャンバ1312およびポンプ1320を含む。第一のチャンバ1302および第二のチャンバ1312の少なくとも一つは、その中に配置された流体1308が空気に暴露されるような開放型流体容器である。すなわち、第一のチャンバ1302および第二のチャンバ1312は、密封または他のやり方で外部環境から封止されていない。外部環境は、たとえば、チャンバを収容する、より大きな囲いまたは大気を含むことができる。
第一のチャンバ1302および第二のチャンバ1312は、所定の範囲内の量の流体1308を個別に収容するように構成されている。流体1308は、所与の実験または他の用途に適するように選択または構成された液状媒体である。たとえば、流体1308は、主として、チャンバに収容された一つまたは複数の試料(たとえば、生きた組織であってもよいし、または生きた組織でなくてもよい)に水分を提供するように働き得る。もう一つの構成において、流体1308は、所与のチャンバ中の生きた試料に栄養素の供給源を提供するように働き得る。さらに別の構成において、流体1308は、所与のチャンバ中の生きた組織に対する治療化合物の有効性を試験するための送達媒体として働き得る。当業者は、流体の循環がいくつかのさらなる目的のいずれかを果たすことができることを認めるであろう。
第一のチャンバ1302は第一の試料1310を含み、第二のチャンバ1312は第二の試料1318を含む。第一の試料1310および第二の試料1318はそれぞれ、流体1308またはその中の分析対象物の存在に依存または反応する、あるいは一定量の流体1308の存在を伴う試験に付される、生物学的または化学的に活性の物質である。たとえば、第一の試料1310および第二の試料1318のいずれかまたは両方は、流体1308の存在において細胞性因子(たとえば、サイトカインおよびホルモンを含む傍分泌および内分泌因子)を能動的に生成する生きた細胞(たとえば気管気管支組織1102、肺胞組織1104、小腸組織1106および肝組織1108)を含み得る。そのような例において、細胞性因子の生成は、実験的に望ましくないやり方で流体1308の静的体積の組成を変化させることができる(たとえば、流体1308中の細胞性因子の総濃度に影響する)。もう一つの例において、第一の試料1310および第二の試料1318の一方または両方は、流体1308を介して提供される栄養素または被検化合物を代謝し得、そのようなものとして、一定期間後に流体1308中の栄養素または被検化合物を補充することに依存し得る。
そのようなものとして、第一のチャンバ1302および第二のチャンバ1312はそれぞれ、所定範囲の量の流体を収容するように構成されている。第一のチャンバ1302は、最大では流体1308の所定の第一レベル1304に対応し、最小では流体1308の所定の第二レベル1306に対応する範囲の量の流体1308を収容するように構成されている。他方、第二のチャンバ1312は、最大では流体1308の所定の第三のレベル1314に対応し、最小では流体1308の所定の第四のレベル1316に対応する範囲の量の流体1308を収容するように構成されている。各範囲は、実験パラメータによって、または第一の試料1310および第二の試料1318の必要性によって決定される。
ポンプ1320は、第一のチャンバ1302を第二のチャンバ1312に流体的に結合する一つまたは複数の流体導管に動作的に係合した流体圧操作装置(たとえば流体ポンプ114)である。そのようなものとして、ポンプ1320は、第一のチャンバ1302から流体1308を抜き取り、それを第二のチャンバ1312に提供し、かつ、第二のチャンバ1312から流体1308を抜き取り、それを第一のチャンバ1302に提供し得る。ポンプ1320、その制御論理回路(図示せず)および対応する流体導管は、各チャンバ中の流体1308のレベルが、第一のレベル1304および第二のレベル1306によって画定される範囲または第三のレベル1314および第四のレベル1316によって画定される範囲を超えないように構成される。先で説明したように、いくつかの構成において、ポンプ1320は、流体フロープレート204および制御プレート202内の構造中に配置され、それを利用し得る。
たとえば、第一のチャンバ1302中の流体1308は、はじめ第一のレベル1304に配置され、第二のチャンバ1312中の流体1308は、はじめ第四のレベル1316に配置される。第一の期間ののち、ポンプ1320は、第一のチャンバ1302から流体1308を吸引し、吸引した流体1308を第二のチャンバ1312に提供する。ポンプ1320および対応する導管は、流体1308が、第二のレベル1306に達するまでのみ、第一のチャンバ1302から吸引されるように構成されている。そのようなものとして、ポンプ1320は、流体1308を、第三のレベル1314に達するまでのみ、第二のチャンバに提供する。第二の期間ののち、ポンプ1320は、第一のチャンバ1302中の流体1308を第一のレベル1304に戻し、第二のチャンバ1312中の流体1308を第四のレベル1316に戻す。ポンプ1320および対応する導管は、ポンプ1320の作動の速度、頻度または持続時間の任意の変動にかかわらず流体1308の量の範囲が維持されるように構成されている。システム1300に関するさらなる特徴および詳細は以下さらに詳細に説明する。
図14Aは、レベリング装置を含む流体循環・混合システムの第一の構成1400を示す。第一の構成1400は、第一のチャンバ1402(たとえば第一のチャンバ1302)を第二のチャンバ1412(たとえば第二のチャンバ1312)に連絡的に結合する流体シッパ1420を含む。第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412は、概ね非反応性かつ化学的に不活性である材料、たとえばガラス、特定のプラスチック、金属または金属合金で構成されている。第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412はそれぞれ、一定量の流体1408(たとえば流体1308)と、それぞれ第一の試料1410(たとえば第一の試料1310)および第二の試料1418(たとえば第二の試料1318)とを含む。第一のチャンバ1402中の流体1408は、第一の最高レベル1404と第二の最低レベル1406との間で交互に位置して、所望の流体量の第一の範囲を画定し、一方で、第二のチャンバ1412中の流体1408は、第三の最高レベル1414と第四の最低レベル1416との間で交互に位置して、所望の流体量の第二の範囲を画定する。
流体シッパ1420は、流体ポンプ1426に動作的に係合している概ね非反応性または化学的に不活性の材料(たとえばステンレス鋼)で形成された中空の流体導管である。流体フロープレート204および/または制御プレート202を組み込むいくつかの構成において、流体シッパ1420は、それぞれのプレートポートに結合され、変形性のOリングを介してそれに流体的に封着され得る。流体シッパ1420は、第一のチャンバ1402中に配置された第一端1422のオリフィスと、第二のチャンバ1412中に配置された第二端1424のオリフィスとを含む。流体シッパ1420のボディ部分は、第一端1422から延びて第一のチャンバ1402の上部を出、第二のチャンバ1412の上部へと横切り、第二のチャンバ1412の上部に入り、第二端1424のオリフィスで終端する。第一端1422のオリフィスは、第一のチャンバ1402中、所望の流体量の第一の範囲の下限に一致する深さに配置されている。図示する構成において、第一端1422のオリフィスは、第二のレベル1406に一致する深さに配置されている。いくつかのそのような構成において、第一端1422の深さまたは第二のレベル1406の高さは、流体1408の特性および流体シッパ1420に使用される材料を考慮するように調節される。たとえば、流体1408の接着性および粘着性が、第一端1422におけるメニスカスの形成から生じる、第一のチャンバ1402中の量の可変性を生じ得る。そのようなものとして、流体1408の接着特性および粘着特性が公知であるならば、第二のレベル1406の高さまたは第一端1422の深さを相応に調節し得る。さらに、いくつかのそのような構成において、第一端1422は、第一端1422における接着効果を減らすための疎水性コーティング(たとえば酸化マンガンポリスチレン、酸化亜鉛ポリスチレン、炭素ナノチューブ構造、シリカナノコーティングなど)または界面活性剤を含むことができる。第二端1424および第四のレベル1416でも同様な戦略を相応に使用し得る。
動作中、第一のチャンバ1402は、はじめ第一のレベル1404で流体1408を含有し、第二のチャンバは、はじめ第四のレベル1416で流体1408を含有する。そのようなものとして、はじめに、流体シッパ1420の第一端1422を第一のチャンバ1402中の流体1408の中に沈める。ポンプ1426が第一のチャンバ1402から流体1408を吸引し、その流体1408を第二のチャンバ1412に提供する。流体1408は、第一のチャンバ1402中の流体1408のレベルが第二のレベル1406に低下するまで、第一のチャンバ1402から第二のチャンバ1412に流れ続ける。第一のチャンバ1402中の流体1408が第二のレベル1406に達すると、第一端1422は実質的に露呈し(すなわち、沈んだ状態ではなく)、そのため、第一端1422のオリフィスを通して流体1408の代わりに空気が吸引される。そのようなものとして、ポンプ1426は、第二のレベル1406よりも上では、さらなる流体1408を第一のチャンバ1402から吸引することはできない。他方で、ポンプ1426は、その後、第二のチャンバ1412から吸引して、第二端1424(今や流体1408中に第三のレベル1414で沈められている)のオリフィスを通して流体を吸い込み、その流体を第一端1422のオリフィスに通して第一のチャンバ1412に提供することができる。ポンプ1426は、流体1408が第三のレベル1414から第四のレベル1416に低下するまで、第二のチャンバ1412から流体1408を吸引し続け、第四のレベルで、第二の開口1424を通して流体1408の代わりに空気が吸引される。
図14Bは、レベリング装置を含む流体循環・混合システムの第一の構成1400の実例1401を提供する。実例1401は、第一のチャンバ1402を第二のチャンバ1412に連絡的に結合する流体シッパ1420を含む。第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412は、同じくらいの量の流体(たとえば300μL)または異なる量の流体(たとえば、第一のチャンバ1402には300μL、第二のチャンバ1412には500μL)を保持するように構成され得る。第一端1422は、はじめ第一のチャンバ1402中の流体1408の中に沈められ、第二端1424は、第二のチャンバ1412中に第四のレベル1416で配置される。実例1401において、流体シッパ1420はまた、サブシステム貯留部1428に連絡的に係合している。サブシステム貯留部1428は、実例1401が他の混合・流体レベリングシステムと流体連絡することを可能にする。たとえば、サブシステム貯留部1428は、流体シッパ1420と流体受容的かつ提供的に連絡していることに加え、サブシステム貯留部1428は流体入口1432と流体受容的に連絡し、出口1430と流体提供的に連絡している。流体入口1432および流体出口1430はそれぞれ他の流体貯留部と連絡的に係合しており、そのようなものとして、流体1408は、入口1432および出口1430を介して第一のチャンバ1402、第二のチャンバ1412および他の混合・レベリングシステムの間で交換され得る。流体交換は、流体シッパ1420、出口1430、入口1432またはサブシステム貯留部1428の一つまたは複数と流体連絡した対応する流体ポンプ(たとえば、いくつかの構成においては、先で説明した4ポート型定容積型ポンプ412を含む流体ポンプ1426)によって実施されることができる。
図14Cは、レベリング装置を含む流体循環・混合システムの第二の構成1403を示す。第二の構成1403は、第二の構成1403が流体シッパ1420の代わりに流体スノーケル1434を含むことを除き、図14Aの第一の構成1400に実質的に類似している。流体スノーケル1434は、第一のチャンバ1402を第二のチャンバ1412に連絡的に結合する流体導管である。流体スノーケル1434は、第一のチャンバ1402中、第二のレベル1406に第一端1436を含み、第一のチャンバの床部に向かって延び、床部を貫通する。流体スノーケル1434のボディ部分は第一のチャンバ1402の床部から第二のチャンバ1412の床部まで延びる。流体スノーケル1434の第二端1438は第四のレベル1416で始まり、第二のチャンバ1412の床部に向かって延び、床部を貫通する。そのようなものとして、流体スノーケル1434は、第一端1436からボディ部分および第二端1438まで延びる連続的な流体導管である。
動作中、第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412の両方の中に配置された流体スノーケル1434の部分が流体1408の中に沈められる。一つの構成において、第一のチャンバ1408中の流体1408は、はじめ第一のレベル1404に配置される。そのようなものとして、第一のチャンバ1402中の流体1408のレベルは、はじめ第一端1436よりも上である。第二のチャンバ1412中の流体1408は、はじめここでは第二端1438と同じレベルである第四のレベル1416にある。流体スノーケル1434に動作的に係合したポンプ1440が、第一端1436に配置されたオリフィスを通して第一のチャンバ1402から流体1408を吸引し、その流体1408を、第二端1438に配置されたオリフィスに通して第二のチャンバ1412に提供する。ポンプ1440は、流体1408が第一のレベル1404から第二のレベル1406に低下するまで、第一のチャンバ1402から流体1408を移送し続ける。第二のレベル1406に達すると、第一端1436のオリフィスはもはや沈んだ状態ではなく、したがって、ポンプ1440は第一端1436を通して流体1408の代わりに空気を吸い込み始める。そのようなものとして、第一のチャンバ中の流体1408のレベルは第二のレベル1406よりも下には低下しない。その後、この過程を逆転させて、第二のチャンバ1412中で第三のレベル1414にある流体1408を、第四のレベル1416に達するまで、第一のチャンバ1402に戻すことができる。
図14Dは、レベリング装置を含む流体循環・混合システムの第二の構成1403の実例1405を提供する。流体スノーケル1434の第一端1436は、はじめ第一のチャンバ1402中の流体1408の中に沈められ、一方で、第二端1438は第二のチャンバ1412中に露呈する。加えて、図14Bに示す実例1401と同様に、流体スノーケル1434は、サブシステム貯留部1428と流体提供的かつ受容的に連絡している。そのようなものとして、流体1408は、入口1432および出口1430を介して第一のチャンバ1402、第二のチャンバ1412および他の流体システムの間で交換され得る。図14Bの実例1401と同様に、流体交換は、流体スノーケル1434、出口1430、入口1432またはサブシステム貯留部1428の一つまたは複数と流体連絡した対応する流体ポンプ(たとえば、いくつかの構成においては、先で説明した4ポート型定容積型ポンプ412を含む流体ポンプ1426)によって実施されることができる。
図14Eは、レベリング装置を含む流体循環・混合システムの第三の構成1407を示す。第三の構成1407は、第三の構成1407が流体シッパ1420の代わりに余水路1442を含むことを除き、図14Aの第一の構成1400に実質的に類似している。余水路1442は、第一のチャンバ1402と第二のチャンバ1412との間の流体移動経路である。余水路1442は、第一のチャンバ1402中に配置された第一の流路1448と、第二のチャンバ1412中に配置された第二の流路1454とを含む。第一の流路1448は、第一の流路1448を取り囲み、かつ第一のチャンバ1402の残りから切り離す第一の内壁1446によって画定される。第一の内壁1446はまた、余水路1442の第一端1444にオリフィスを画定する。第一端1444のオリフィスは第二のレベル1406に配置されている(たとえば、第一の内壁1446の高さが第二のレベル1406と一致する)。他方、第二の内壁1452は第二の流路1454を画定し、相応に、第二のチャンバ1412中、第二端1450にオリフィスがある。流体導管1456が第一の流路1448を第二の流路1454に連絡的に結合する。加えて、ポンプ1458が流体導管1456に動作的に結合されている。
動作中、第一のチャンバ1402は、はじめ流体1408を第一のレベル1404で収容する。第一のレベル1404は第一の内壁1446よりも高いため、第一の流路1448は、はじめ同じく満たされている。他方、第二のチャンバ1412は、はじめ流体1408を第四のレベル1416で収容する。ポンプ1456は、第一の流路1448から流体1408を吸い込み、その流体1408を第二の流路1454に提供する。ひとたび第二の流路1454が満たされたならば(すなわち、いくつかの構成において該当し得るように、第二の流路1454が、はじめに空である場合)、流体1408は第二のチャンバ1412も満たし始める。ポンプ1458が作動しているとき、第一のチャンバ1402中の流体1408は第一のレベル1404から第二のレベル1406に低下する。ひとたび第二のレベル1406に達したならば、第一の内壁1446が、さらなる流体1408が第一の流路1448に入ることを防ぐ。加えて、この点で、ポンプ1458は、第一の流路1448をそれが空になるまで水抜きし続ける。いくつかの構成において、ひとたび第二のレベル1406に達し、第一の流路1448が水抜きされたならば、第二のチャンバ1412中の流体1408は第三のレベル1414に達する。この過程を逆にして、第二のチャンバ1412中の流体1408を第三のレベル1414から第四のレベル1416に減らし、第二の流路1454を水抜きし、他方で、第一の流路1448を満たし、第一のチャンバ1402中の流体1408の量を第二のレベル1406から第一のレベル1404に増すことができる。
図14Fは、レベリング装置を含む流体循環・混合システムの第三の構成1407の実例1409を提供する。ここでもまた、実例1401および1405と同様に、第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412は、余水路1442と一体化しているサブシステム貯留部1428と流体提供的かつ受容的に連絡している。そのようなものとして、たとえば、流体1408は、第一の流路1448から第一の流体導管1460(すなわち、第一の流路1448とサブシステム貯留部1428との間に配置された、第一の導管1456の第一のセグメント)およびサブシステム貯留部1428の中に移動することができる。そして、流体1408は、第二の流体導管1462(すなわち、サブシステム貯留部1428と第二の流路1454との間に配置された、流体導管1456の第二のセグメント)、次いで第二の流路1454に流れ込み得る。流体1408は、同様にして、第二の流路1454から第一の流路1448に戻り得る。加えて、流体1408は、入口1432からサブシステム貯留部1428の中に、または出口1430を介してサブシステム貯留部1428の外に流れ得る。実例1409中の流体交換は、第一の流体導管1460、第二の流体導管1462、出口1430、入口1432またはサブシステム貯留部1428の一つまたは複数と流体連絡した対応する流体ポンプ(たとえば、いくつかの構成においては、先に説明した4ポート型定容積型ポンプ412を含む流体ポンプ1426)によって実施されることができる。
図14A〜14Fは、類似した流体レベリング装置を用いる二つのチャンバを含む流体循環・混合システムの例示的な略図を含む。しかし、当業者は、同じシステム内の異なるチャンバ中で異なる流体レベリング装置を用いることができることを認めるであろう。たとえば、一つのシステムは、一つのチャンバ中の流体シッパをもう一つのチャンバ中の流体スノーケルと流体連絡した状態で含むことができる。もう一つの例として、もう一つのシステムは、一つのチャンバ中の余水路をもう一つのチャンバ中の流体シッパと流体連絡した状態で含むことができる。所与の用途の必要性に合うように構成され得る他の組み合わせが可能である。
図15は、例示的態様にしたがって複数の流体循環・混合サブシステムを組み込んだ流体混合回路1500の概念図を示す。流体混合回路1500は、制御された量の流体(たとえば流体1408)を複数のチャンバに通して循環させるように構成されている。図示する構成において、回路1500は、流体混合貯留部1502、第一のサブシステム1508、第二のサブシステム1512、第三のサブシステム1516、第四のサブシステム1522および制御装置1526を含む。
制御装置1526は、データ処理および非一時的データ記憶媒体を、本明細書に記載された機能を実行するように構成された対応する論理とともに含む。いくつかの構成において、図1の制御コンピュータ110は制御装置1526として働く。加えて、制御装置1526は、作動させることができる回路1500の少なくとも一つの部品(たとえば制御プレート202)と動作的に係合している。そのようなものとして、制御装置1526は、複数の流体ポンプ、たとえば回路1500中に配置されたポンプの動作のタイミング、持続時間および頻度ならびに以下に説明されるような一つまたは複数の弁(たとえば膜弁462)を通過する流体流れ方向を調整するように構成され得る。
たとえば、第一の流体チャンバは、第一の流体量に対応する第一の流体高さまで満たされ、第一の流体高さは、第一の流体チャンバの最小流体量に対応する最低流体高さよりも大きい。第二の流体チャンバは、第二の流体量に対応する第二の流体高さまで満たされ、第二の流体高さは、第二の流体チャンバの最小流体量に対応する最低流体高さに等しい。流体レベリング導管(たとえば、図14A〜14Fに示すシステムのいずれか一つごとにある)および流体ポンプが第一の流体チャンバを第二の流体チャンバに流体的に係合させて、流体レベリング導管のオリフィスが各チャンバ中でそれぞれの最低流体高さに配置されるようにする。
この例において、制御装置1526は流体ポンプに連絡的に係合している。制御装置1526は、ポンプに、ポンピング期間中、流体を第一のチャンバから第二のチャンバに提供させ、次いで、次のポンピング期間中、流体を第二のチャンバから第一のチャンバに提供させるポンピングサイクルを実行して、実験または培養の過程でポンピングサイクルを繰り返すように構成されている。この例において、各サイクル中に第一のチャンバから第二のチャンバにポンピングされる流体の実際量は、意図せずに、第二のチャンバから第一のチャンバにポンピングされる流体の実際量よりも大きい(たとえば、ポンプの不整合性、導管形状、抵抗などのせいで)。その結果、各連続ポンピングサイクルの過程で、第二のチャンバから第一のチャンバに提供される流体よりも多くの流体が第一のチャンバから第二のチャンバに提供される。最終的に、第一のチャンバ中の流体レベルは、第一のチャンバから第二のチャンバへのポンピング期間中の対応する最低流体高さに一致し、その点で、流体レベリング導管オリフィスは空気に暴露される。その点で、ポンプは、流体の代わりに空気を吸い込み、または失速し、第一のチャンバ中の流体は最低流体高さよりも下には低下しない。さらに、各後続の第一のチャンバから第二のチャンバへのポンピング期間は、流体が吸い込まれる期間および空気が吸い込まれる期間またはポンプが失速する期間の両方を含むため、その後は、第二のチャンバから第一のチャンバへのポンピング期間によって画定される、より少ない量の流体しか交換されない。
各サブシステムは、流体を混合貯留部1502および他のサブシステムと交換するように構成された少なくとも一つの流体チャンバを含む。いくつかの構成において、サブシステムの一つまたは複数は、流体レベリング装置(たとえば、第一の構成1400、第二の構成1403または第三の構成1407に類似した)を含む。そのようなものとして、いくつかのそのような構成において、各サブシステムは、流体導管(たとえば、いくつかの構成において、サブシステムチャンバ1428を含む)および対応する流体ポンプ(たとえばポンプ1426、1440または1458)を組み込む、流体混合・レベリングサブチャンバ(たとえば第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412)へと細分され得る。たとえば、第一のサブシステム1508は、第一のサブシステム流体回路に動作的に係合した第一のサブシステムポンプ1510を含む(すなわち、流体混合・レベリングサブチャンバの間で流体を交換する)。他方、第二のサブシステム1512は第二のサブシステムポンプ1514を含み、第三のサブシステム1516は第三のサブシステムポンプ1518を含み、第四のサブシステム1522は第四のサブシステムポンプ1524を含む。そのようなものとして、そのような構成において、各サブシステムは、少なくとも一つのチャンバ中の流体を所定の範囲内の流体量で交換し、混合するように構成されている。
加えて、いくつかの構成において、回路1500そのものが流体循環・レベリングシステムとして作動し、混合貯留部1502が循環チャンバの一つとして作動する。そのような構成においては、混合貯留部1502中の流体を抜き取り、混合貯留部1502中に配置されたレベリング装置(たとえば流体シッパ、流体スノーケルまたは余水路)を介して所定の範囲内の量で補充することができる。他方、各サブシステム中の流体は、混合貯留部1502と交換される所定の範囲の量に基づいて決定されるそれぞれの量範囲内で変動するであろう。
各サブシステムは、試料と、その試料を中に確実に収容するように構成された対応する構造とを、含み得る。たとえば、一つのサブシステムは気管気管支組織試料を含むことができ、もう一つのサブシステムは肺胞組織試料を含むことができ、もう一つのサブシステムは小腸組織試料を含むことができ、さらに別のサブシステムは肝組織試料を含むことができる(たとえば、それぞれ、図11の試料1102、1104、1106および1108)。いくつかのそのような構成において、サブシステムは、体の血液循環系を模倣するようなやり方で互いに並列および/または直列に流体的に結合され得る。
混合貯留部1502は、試料を含まないが、各サブシステム中を循環させられる流体(たとえば流体1408)を含む流体チャンバ(たとえば流体貯留部118)である。混合貯留部1502および各サブシステムは互いに直接的または間接的に係合することができる。たとえば、回路1500に示すように、混合貯留部1502は、第一のサブシステム1508および第二のサブシステム1512と並列に配置されている。第三のサブシステム1516および第四のサブシステム1522は直列に配置され、それらがいっしょになって、第一のサブシステム1508および第二のサブシステム1512に対して並列に配置されている。いくつかの構成において、回路1500のサブシステムは、各サブシステム内に収容された組織タイプに基づいて人体の血液循環系を模倣するように配置されている。第一の回路ポンプ1506が、混合貯留部1502から流体を吸い込み、その流体を第一のサブシステム1508、第二のサブシステム1512および第三のサブシステム1516に提供する。第二の回路ポンプ1520が流体を第三のサブシステム1516から第四のサブシステム1522に提供する。最終的に、第三の回路ポンプ1504が流体を第一のサブシステム1508、第二のサブシステム1512および第四のサブシステム1522から混合貯留部1502に提供する。さらに、混合貯留部1502は、一つまたは複数のポンプ(たとえば1504および/または1506)に流体的に結合され得る流体レベリング装置(たとえば流体シッパ、流体スノーケルまたは余水路)を含み得る。
さらに、回路1500は、各サブチャンバと直列に配置され、制御装置1526と電気的に連絡した複数の流体弁1528。そのようなものとして、制御装置1526は、特定の弁1528を選択的に開閉することにより、回路1500中の流体流の方向を決定することができる。たとえば、制御装置1526は、第一の回路ポンプ1506を作動させ、第一のサブシステム1508および第二のサブシステム1512の両方よりも上流の弁を閉じ、第三のサブシステム1516よりも上流の一つまたは複数の弁を開くことにより、混合貯留部1502からの流体を第三のサブシステム1516へとまっすぐ流れさせることができる。制御装置1526は、流体を特定のサブシステムの間で流れさせることができる。一例においては、第四の回路ポンプ1530が第一のサブシステム1508よりも上流に配置される。制御装置1526は、第四のサブシステム1522よりも上流かつ混合貯留部1502よりも上流の弁1528を閉じ、第一のサブシステム1508と第二のサブシステム1512との間の弁を開き、第四の回路ポンプ1530を作動させ、それにより、流体を第二のサブシステム1512から第一のサブシステム1508に提供することができる。
当業者が認めるように、回路1500は、本明細書の中で説明される概念を組み込む多くの可能な構成の一つでしかない。他の構成は貯留部の使用を組み込まない場合もある。他の構成は、並列のみまたは直列のみに配置されたサブシステムを含み得る。いくつかの構成は、サブシステムポンプまたはサブシステム流体レベリング装置を含まない。さらに、いくつかの構成は複数の制御装置を含み、それらの制御装置が、たとえば、一つまたは複数のそれぞれのポンプを、他のポンプおよび制御装置の動作を考慮しながら、または考慮せずに、個別に制御してもよい。回路1500は、たとえば図11に示すように、人体の血液循環系を模倣するように構成され得る。これらおよび他の可能な構成の間で一貫していることは、複数の流体チャンバ中の流体量が所定の範囲内にとどまるような、複数の流体チャンバ間での流体の混合および循環である。
図16は、例示的態様にしたがって流体を流体循環・混合システムに通して循環させ、混合する例示的方法1600のフローチャートを示す。例示的方法1600は、流体回路を構成する工程(すなわち工程1602)を含む。方法1600はさらに、供給ポンプを作動させる工程(すなわち工程1604)、循環ポンプを作動させる工程(すなわち工程1606)および戻しポンプを作動させる工程(すなわち1608)を含む。いくつかの構成において、工程1602、1604および1608は、1602で流体回路が構成されたのち繰り返されることができるサイクルを画定する。これらの工程は以下さらに詳細に説明する。
工程1602で、流体回路を構成する。流体回路は、混合貯留部(たとえば混合貯留部1502)および少なくとも一つの開放型流体チャンバ(たとえば細胞培養容器206、たとえば、第一のチャンバ1402および第二のチャンバ1412に類似した一つまたは複数のチャンバ)を含むように構成されている。混合貯留部は、一つまたは複数の流体ポンプ(たとえば4ポート型定容積型ポンプ412)および弁を含み得る流体導管のネットワークを介して各開放型流体チャンバと流体連絡している。たとえば、流体導管およびポンプは流体フロープレート(たとえば流体フロープレート204)内に配置され得る。いくつかのそのような構成において、細胞培養容器の形態の開放型流体チャンバは、流体フロープレートの、各開放型流体チャンバを混合貯留部に流体的に結合する一つまたは複数の流体ポートおよび対応する流体流路を含む区分に結合されている。開放型流体チャンバは、混合貯留部に対して直列、並列または直列かつ並列に配置された開放型流体チャンバを有する流体回路を形成するように構成され得る。さらに、開放型流体チャンバおよび/または混合貯留部は、各チャンバおよび貯留部中のそれぞれの最小流体量に対応する最低流体レベルで配置されたオリフィスを有する流体レベリング導管(たとえば、図14A〜14Fに示す例示的構成に記載されているような)を含む。
流体回路は、各流体チャンバおよび混合貯留部に流体的に係合した一つまたは複数の流体ポンプ(たとえばポンプ1504、1506、1510、1514、1518、1524)を含むように構成されている。流体ポンプは、対応する制御装置(たとえば制御装置1526)によって決定されるような、流体流を生じさせるのに十分な圧力差を発生させるように構成されている。いくつかの流体ポンプは、二つの方向の流体流を交互に発生させるように構成され得、一方で、他の流体ポンプは、単一方向の流体流のみを提供するように構成されている(たとえば、二つのチャンバの間で流体を交換するためには二つの一方向ポンプが必要である)。加えて、回路は、回路中の様々なポンプの動作を調整するための一つまたは複数の制御装置を含むことができる。たとえば、所与の回路は、回路中のすべての流体ポンプの動作を統制する単一の制御装置を含むようにアセンブルされることができる。もう一つの回路は、様々な個々のポンプまたはポンプの群を作動させる複数の制御装置を含むようにアセンブルされることができる。所与の制御装置は、一つまたは複数の流体ポンプの時間、頻度、持続時間および速度(すなわち、発生する流体流量)を決定するように構成され得る。
1604で、少なくとも一つの供給ポンプを作動させる。供給ポンプは、混合貯留部と流体受容的に連絡し、かつ少なくとも一つの開放型流体チャンバ(たとえば第一の回路ポンプ1506)と流体提供的に連絡しているポンプである。少なくとも一つの供給ポンプは、制御装置によって動かされ、流体を混合貯留部から少なくとも一つの開放型流体チャンバに流れさせる。レベリング導管が、流体レベルが混合貯留部中の最小流体量よりも下に低下することを防ぐ。そのようなものとして、流体は、所定の範囲内で(すなわち、最小流体量まで)混合貯留部から吸い取られることができる。加えて、開放型流体チャンバが直列に配置されている構成において、少なくとも一つの供給ポンプは、上流側チャンバと流体受容的に連絡し、下流側チャンバ(たとえば第二の回路ポンプ1520)と流体提供的に連絡しているポンプを含み得る。そのようなものとして、流体は、1604で、上流側チャンバから下流側チャンバに流れ得る。
1606で、循環ポンプを作動させる。いくつかの構成において、少なくとも一つの開放型流体チャンバは、サブシステム(たとえば、図15に示す、第一のサブシステム1508、第二のサブシステム1512、第三のサブシステム1518および第四のサブシステム1524)へと編成された複数の開放型流体チャンバであり、各サブシステムは、それぞれ流体レベリング導管およびサブシステムポンプ(たとえばサブシステムポンプ1510、1514、1518および1524)によって互いに流体的に結合された少なくとも二つの開放型流体チャンバを含む。そのような構成において、各サブシステムポンプは循環ポンプであり、制御装置によって決定されるように、流体を所与のサブシステム内の各チャンバの間で流れさせる。加えて、各サブシステムの各チャンバ中のレベリング導管は、回路ポンプが作動しているとき各チャンバ中で流体が最小流体量よりも下に低下することを防ぐ。
1608で、少なくとも一つの戻しポンプを作動させる。戻しポンプは、少なくとも一つの開放型流体チャンバと流体受容的に連絡し、かつ混合貯留部(たとえば第三の回路ポンプ1504)と流体提供的に連絡している。戻しポンプが制御装置によって動かされると、戻しポンプは、流体を少なくとも一つの開放型流体チャンバから混合貯留部の中に戻らせる。いくつかの構成においては、供給ポンプを作動させる工程1604、循環ポンプを作動させる工程1606および戻しポンプを作動させる工程1608を周期的に繰り返して、流体を、1602でアセンブルされた流体回路に通して循環させ、混合し得る。
本明細書の中で利用される用語「実質的に」および類似の用語は、本開示の主題が関連する技術分野の当業者による一般的かつ受け入れられた用法と調和する広い意味を有することを意図したものである。本開示を考察する当業者には、これらの用語が、記載された特定の特徴の説明を可能にすることを意図したものであり、それらの特徴の範囲を、提供されたとおりの数値範囲に限定することを意図したものではないことが理解されよう。したがって、これらの用語は、記載された主題の非実質的または些細な修飾または変形が本開示の範囲内であるとみなされるべきであることを示すものと解釈されるべきである。
さらに、本明細書の中で利用される用語「流体」は、本開示の主題が関連する技術分野の当業者による一般的かつ受け入れられた用法と調和する広い意味を有することを意図したものである。特に、本開示を考察する当業者には、「流体」が、流れを示すことができる物質を考慮し、気体状態、液体状態または様々な物質状態にある成分の組み合わせである物質を含み得ることが理解されよう。
他の例示的態様にしたがって様々な要素の向きが異なり得るが、そのような変更は本開示によって包含されることを意図したものであることが留意されよう。開示された態様の特徴が他の開示された態様に組み込まれることもできることが認められる。
様々な例示的態様に示されるような装置またはそれらの部品の構造および構成が例示的でしかないことに留意することが重要である。いくつかの態様だけが本開示において詳細に説明されているが、本開示を考察する当業者は、開示される主題の新規な教示および利点を実質的に逸脱することなく多くの修飾(たとえば、様々な要素のサイズ、寸法、構造、形状および割合、パラメータの値、取り付け構造、材料使用、色、向きなどの変更)が可能であることを容易に理解するであろう。たとえば、一体に形成されているように示された要素が複数のパーツまたは要素で構成されてもよく、要素の配置が逆転または他のやり方で変更されてもよく、別々の要素または位置の性質または数が変更または多様にされてもよい。代替態様にしたがって任意の過程または方法工程の順番または順序が変更または再順序付けされてもよい。本開示の範囲を逸脱することなく、様々な例示的態様の設計、作動条件および構成において他の置換、修飾、変更および省略が加えられてもよい。
様々な発明的態様が本明細書に記載され、例示されてきたが、当業者は、機能を実行するための、および/または結果および/または本明細書に記載される利点の一つまたは複数を得るための多様な他の機構および/または構造を容易に構想し、そのような変形および/または修飾それぞれは、本明細書に記載される発明的態様の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、別段記されない限り、本明細書に記載された任意のパラメータ、寸法、材料および構成は例示的であることを意図したものであり、実際のパラメータ、寸法、材料および/または構成は、発明的教示が使用される具体的な用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験を使用するだけで、本明細書に記載される特定の発明的態様の多くの等価物を認識する、または確認することができるであろう。したがって、前記態様は例として提示されただけであり、特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、発明的態様を、具体的に記載され、特許請求される以外のやり方で実施し得ることが理解されよう。本開示の発明的態様は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法それぞれに関する。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相反するものではないならば、二つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせが本開示の発明的範囲内に含まれる。
本明細書および特許請求の範囲の中で使用される単数形不定冠詞は、そうではないことが明らかに指示されない限り、「少なくとも一つの」を意味するものと理解されるべきである。
特許請求の範囲は、その旨述べられない限り、記載された順序または要素に限定されるものと読まれるべきではない。特許請求の範囲の精神および範囲を逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更が当業者によって加えられ得ることが理解されよう。以下の特許請求の範囲およびその等価物の精神および範囲に入るすべての態様が特許請求される。