以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
<歪み検出センサ素子>
図1の歪み検出センサ素子1は、長手方向の伸縮により抵抗値が変化する帯状の歪み検出センサ素子である。当該歪み検出センサ素子1は、帯状の歪みセンサ10を備え、長手方向の両端部に一対のストッパー20が付設されている。
(歪みセンサ)
歪みセンサ10としては、特に限定されず公知の歪みセンサを用いることができるが、中でも図2に示すカーボンナノチューブ(CNT)膜を用いた歪みセンサが好ましい。CNT膜を用いた歪みセンサは、一対の電極を離反又は接近させる方向(電極配設方向)に伸張又は収縮すると、CNT膜の電気抵抗が変化することにより、歪みを感知することができる。また、CNT膜が有するCNT繊維束の配向方向としては、CNT膜の抵抗変化のリニアリティが高いことから、電極配設方向と略同一方向であるとよい。
CNT膜を用いた歪みセンサ10は、細長いシート状、つまり帯状の弾性体11と、この弾性体11の長手方向両端部の表面に積層される一対の電極シート12と、弾性体11の長手方向両端部の裏面に電極シート12に対向して積層される一対の挟持シート13と、弾性体11、電極シート12及び挟持シート13の周面に配設される導電材14とを主に備える。弾性体11は、一方向に配向する複数のCNT繊維を有するCNT膜11aと、このCNT膜11aの両面に積層され、弾性体11の最外面を形成する一対の絶縁性エラストマー層11bとを有する。
弾性体11は、平面視において、長手方向両端部の電極シート12及び挟持シート13が積層される非伸縮領域Anと、この一対の非伸縮領域Anの間の伸縮領域Asとに区分けされる。非伸縮領域Anは、電極シート12及び挟持シート13に挟持されることによって伸縮が防止される。これにより、弾性体11の電極シート12からの剥離、つまり弾性体11と電極シート12との間の電気的分離を防止することができる。一方、伸縮領域Asは、電極シート12及び挟持シート13により伸縮が阻害されず自由に伸縮可能である。この伸縮領域Asの短手方向の幅は、非伸縮領域Anの幅より小さい。
弾性体11の平均長さ(一対の非伸縮領域An及び伸縮領域Asの合計長さ)としては、特に限定されず、歪みセンサ10を用いる測定対象に応じて自由に選択することができるが、例えば1cm以上20cm以下とすることができる。
弾性体11の伸縮領域Asの平均長さは、歪みセンサ10を用いる測定対象に応じて自由に選択することができる。弾性体11の伸縮領域Asの平均長さとしては、例えば2mm以上18cm以下とすることができる。
一方、弾性体11の各非伸縮領域Anの平均長さは、特に限定されないが、例えば3mm以上5cm以下とすることができる。
弾性体11の伸縮領域Asの平均幅は、歪みセンサ10を用いる測定対象に応じて自由に選択することができる。弾性体11の伸縮領域Asの平均幅の下限としては、1mmが好ましく、1cmがより好ましい。一方、弾性体11の伸縮領域Asの平均幅の上限としては、10cmが好ましく、5cmがより好ましい。弾性体11の伸縮領域Asの平均幅が前記下限未満である場合、CNT膜11aの抵抗値が過度に大きくなるおそれや、ばらついたりするおそれがある。逆に、弾性体11の伸縮領域Asの平均幅が前記上限を超える場合、歪みセンサ10が大きくなるため、適用可能な測定対象が過度に限定されるおそれがある。
一方、弾性体11の非伸縮領域Anの平均幅は、後述する電極シート12及び挟持シート13に合わせて選択されるが、例えば2mm以上10cm以下とされる。
弾性体11の平均厚さとしては、特に限定されず、歪みセンサ10に要求される引張強度等に応じて適宜選択されるが、例えば30μm以上3mm以下とすることができる。
CNT膜11aは、両端部分が絶縁性エラストマー層11bと導電材14とに挟持された状態で固定されている。CNT膜11aは、一方向(一対の電極シート12の対向方向)に配向する複数のCNT繊維からなる。CNT繊維がこのように配向していることにより一対の電極シート12が離れる方向へ歪みが加わった場合に、CNT繊維の切断、離間、CNT繊維の切断空間(ギャップ)の伸縮等が起こり、歪みセンサ10により抵抗変化を得ることができる。
このようなCNT膜11aは、前記複数のCNT繊維からなる複数のCNT繊維束及びこの複数のCNT繊維束の周面を被覆する樹脂層を有する。つまり、CNT繊維束は複数のCNT繊維から構成され、このCNT繊維束の周囲を樹脂層が被覆している。
より具体的には、CNT繊維束は、CNT繊維からなるバンドル構造となっており、CNT繊維束の任意の横断面においては、切断されないCNT繊維と、CNT繊維が切断、離間したギャップの両方が存在することになる。CNT繊維のギャップが広がると、残された切断されないCNT繊維は伸びることになり、それによっても抵抗変化が発生する。またこのギャップ内の圧力は大気圧よりも低い(負圧である)と考えられ、当該歪センサ1の収縮時(歪の解放時)にはこのギャップの収縮力によって歪センサの収縮が付勢される。さらに、このギャップ内ではCNT繊維同士やCNT繊維と周囲の樹脂との摩擦が低減されるため、樹脂の残留応力等によってCNT繊維の動きが制限され難い。
各CNT繊維束は、複数のCNT繊維からなる。ここで、CNT繊維とは、1本の長尺のCNTをいう。また、CNT繊維束は、CNT繊維の端部同士が連結する連結部を有する。CNT繊維同士は、これらのCNT繊維の長手方向に連結している。このようにCNT膜11aにおいて、CNT繊維同士がその長手方向に連結してなるCNT繊維束を用いることで、CNT繊維束の配向方向長さの大きいCNT膜11aを形成することができ、歪みセンサ10の長手方向の長さを大きくし、感度を向上させることができる。
前記樹脂層は樹脂を主成分とし、複数のCNT繊維束の周面を被覆する層である。樹脂層の主成分となる樹脂としては、後述する絶縁性エラストマー層11bと同様とできる。
また前記樹脂層は、水性エマルジョンを用いて形成されることが好ましい。水性エマルジョンとは、分散媒の主成分が水であるエマルジョンをいう。つまり、樹脂層は、樹脂を水に分散した水性エマルジョンを乾燥することにより形成することが好ましい。CNTは疎水性が高ため、樹脂層を水性エマルジョンを用いて形成すると、例えば塗工や浸漬によりこの樹脂層を設けることで、樹脂層がCNT繊維束の内部の一部に部分的に含浸してCNT繊維束の周囲に充填された状態とすることができる。このようにすることで、樹脂層を形成する樹脂がCNT繊維束に完全にしみ込んで、CNT膜の抵抗変化に影響を及ぼすことを抑制し、樹脂層の存在によるCNT膜11aの歪に対する感度の低下を抑えることができる。
CNT膜11aの平均厚さとしては、特に限定されないが、例えばCNT膜11aの平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、10μmがより好ましい。また、CNT膜11aの平均厚さの上限としては、5mmが好ましく、1mmがより好ましい。CNT膜11aの平均厚さが前記下限未満である場合、このような薄膜の形成が困難になるおそれや、歪みセンサ10の抵抗が上昇し過ぎるおそれがある。一方、CNT膜11aの平均厚さが前記上限を超える場合、歪みに対する感度が低下するおそれがある。
CNT膜11aの密度の下限としては、0.8g/cm3が好ましく、1g/cm3がより好ましい。また、CNT膜11aの密度の上限としては、1.8g/cm3が好ましく、1.5g/cm3がより好ましい。CNT膜11aの密度が前記下限未満である場合、CNT膜11aの抵抗値が高くなるおそれがある。一方、CNT膜11aの密度が前記上限を超える場合、十分な抵抗変化が得られないおそれがある。
なお、CNT膜11aは、CNT繊維を平面状に略平行に配置した単層構造からなってもよいし、多層構造からなってもよい。ただし、ある程度の導電性を確保するためには、多層構造とすることが好ましい。
CNT繊維を構成するCNT単繊維としては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができるが、導電性等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがより好ましい。
絶縁性エラストマー層11bは弾性体11の両面を覆い、CNT膜11aを保護する。絶縁性エラストマー層11bに用いるエラストマー材料としては、合成樹脂、ゴム等を挙げることができる。これらの中でも合成樹脂が好ましい。
前記合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリメチルメタアクリル(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)等を挙げることができる。
また、前記ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(U)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、フッ素ゴム(FKM)、PDMS等を挙げることができる。
絶縁性エラストマー層11bの平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましい。また、絶縁性エラストマー層11bの平均厚さの上限としては、5mmが好ましく、2mmがより好ましい。絶縁性エラストマー層11bの平均厚さが前記下限未満である場合、歪みセンサ10の強度が不足し、当該歪み検出センサ素子1に強い外力が作用した際に破損するおそれがある。一方、絶縁性エラストマー層11bの平均厚さが前記上限を超える場合、当該歪み検出センサ素子1が大きくなり過ぎ、取扱いが困難になるおそれがある。
電極シート12は、非伸縮領域Anの表面を覆うよう弾性体11の表面に積層されている。この電極シート12は、歪みセンサ10の検出信号を電気的に取り出すための端子として使用される。また、電極シート12は、歪みセンサ10の使用中に実質的に伸縮せず、非伸縮領域Anの伸縮を防止する。なお、「実質的に伸縮しない」とは、歪みセンサ10を用いた測定中における電極シート12の伸縮率の伸縮領域Asの伸縮率に対する比が、1/100以下、好ましくは1/1000以下であることを意味する。
また、歪みセンサ10を用いた測定中における電極シート12の伸縮率に対する伸縮領域Asの伸縮率の比の桁数としては、測定における有効数値の桁数より大きいことが好ましく、2桁以上大きいことがより好ましい。
具体的には、電極シート12の幅1cmあたり10Nの引張荷重を加えたときの伸び率の上限としては、20%が好ましく、10%がより好ましい。一方、電極シート12の幅1cmあたり10Nの引張荷重を加えたときの伸び率の下限は、特に限定されない。電極シート12の幅1cmあたり10Nの引張荷重を加えたときの伸び率が前記上限を超える場合、歪みセンサ10を用いた測定の際に非伸縮領域Anが不規則に伸長し、CNT膜11aの抵抗値の変化率をばらつかせることにより、検出精度を低下させるおそれがある。
電極シート12としては、十分な非伸縮性(引張強度)と導電性とを有するものであれば特に限定されないが、例えば金属箔、導電性織布等が使用される。また、電極シート12は、少なくとも外面に配置される導電層と、非伸縮性を付与する補強材層とを有する積層体であってもよい。前記金属箔の材質としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等が挙げられる。また、前記導電性織布としては、導電性を有する金属やカーボンの繊維を含むものが使用できる。
電極シート12の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、電極シート12の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。電極シート12の平均厚さが前記下限未満である場合、曲げ等により電極シート12が破断するおそれがある。逆に、電極シート12の平均厚さが前記上限を超える場合、当該歪センサ1が不必要に厚くなるおそれや、非伸縮領域Anの可撓性が不足して測定対象に適切に貼着できないおそれがある。
挟持シート13は、非伸縮領域Anの裏面を覆うよう弾性体11の裏面に積層されている。この挟持シート13は、電極シート12と同様に、歪みセンサ10の使用中に実質的に伸縮せず、非伸縮領域Anの伸縮を防止する。つまり、挟持シート13は、電極シート12との間に弾性体11の非伸縮領域Anを挟み込むことで、非伸縮領域Anの伸縮をより確実に防止する。このため、挟持シート13を備えることにより、歪みセンサ10は、弾性体11の非伸縮領域Anと伸縮領域Asとがより明確に区分される。従って、歪みセンサ10は、弾性体11の伸縮量と、CNT膜11aの電気抵抗値との相関が高く、歪の検出精度に優れる。
挟持シート13の材質としては、十分な非伸縮性を有するものであればよく、導電性のものであってもよく、絶縁性のものであってもよい。具体的には、挟持シート13としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等を主成分とする樹脂製シート、ガラスクロス等の織布等を使用することができ、電極シート12と同様のものを使用することもできる。また、挟持シート13として、予め粘着剤が積層された市販の粘着テープを使用してもよい。
挟持シート13の平均厚さの下限としては、20μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、挟持シート13の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。挟持シート13の平均厚さが前記下限未満である場合、曲げ等により挟持シート13が破断するおそれがある。逆に、挟持シート13の平均厚さが前記上限を超える場合、歪みセンサ10が不必要に厚くなるおそれや、非伸縮領域Anの可撓性が不足して測定対象に適切に貼着できないおそれがある。
導電材14は、少なくとも弾性体11及び電極シート12の周面に配設され、CNT膜11aと複数の電極シート12との電気的接続を確保する。歪みセンサ10では、導電材14は、弾性体11、電極シート12及び挟持シート13の周面が平面視において重複する部分、つまり弾性体11における長手方向両側の端面及び非伸縮領域Anの短手方向両側の端面に配設されている。
この導電材14は、図2に示すように、電極シート12の表面の周縁部から挟持シート13の裏面の周縁部までを覆うよう、弾性体11、電極シート12及び挟持シート13の周面に盛り付けられることが好ましい。
弾性体11の周面における導電材14の弾性体11の周面の法線方向の平均厚さとしては、導電材14の機械的及び電気的接続強度が得られればよく、特に限定されないが、例えば導電性接着剤の硬化により形成する場合には10μm以上1mm以下とされる。
(ストッパー)
一対のストッパー20は、それぞれ板状であり、長方形状の一方の面が当該歪み検出センサ素子1の長手方向の側面と当接する。また、一対のストッパー20の長手方向が当該歪み検出センサ素子1の短手方向と一致し、一対のストッパー20の短手方向が当該歪み検出センサ素子1の厚さ方向と一致し、一対のストッパー20の厚さ方向が当該歪み検出センサ素子1の長手方向に一致する。また、一対のストッパー20は、それぞれ短手方向の両端に歪みセンサ10の短手方向に突出する突起部を有している。さらに、一対のストッパー20は一対の電極シート12にそれぞれ電気的に接続される一対の端子を兼ねている。
ストッパー20は、可撓性を有するとよい。このようにストッパー20が可撓性を有することで、ストッパー20の係合により当該歪み検出センサ素子1を固定する際に例えばストッパー20を曲げて係合位置に押し込めることができる。従って、当該歪み検出センサ素子1をより容易に固定することができる。この場合、ストッパー20の材質としては、フレキシブル基板や金属薄膜を用いることができる。
前記フレキシブル基板としては、例えば絶縁性を有する合成樹脂のフィルムに導電性を有する導体の薄膜を積層したものを挙げることができる。この時、前記導体薄膜を歪みセンサ10の電極シート12に当接するように前記フレキシブル基板を配設することで、歪みセンサ10の電極シート12とフレキシブル基板の導体薄膜とが電気的に接続され、ストッパー20が端子として機能する。前記合成樹脂としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。また、前記導体としては、銅、アルミニウム、銀、金等を挙げることができる。
また、前記金属薄膜の金属としては、例えばアルミニウムや銅を挙げることができる。
ストッパー20が可撓性を有さない場合の材質としては、アルミニウムや銅等の金属や導電性ポリアミド系樹脂等の導電性樹脂を用いることができる。
ストッパー20の平均厚さの下限としては、100μmが好ましく、500μmがより好ましい。また、ストッパー20の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、800μmがより好ましい。ストッパー20の平均厚さが前記下限未満である場合、ストッパー20の強度が不足するため、当該歪み検出センサ素子1の固定が不十分となるおそれがある。一方、ストッパー20の平均厚さが前記上限を超える場合、当該歪み検出素子センサ1の取扱いが困難となるおそれがある。
ストッパー20の平均幅の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。また、ストッパー20の平均幅の上限としては、1cmが好ましく、5mmがより好ましい。ストッパー20の平均幅が前記下限未満である場合、ストッパー20の強度が不足するため、当該歪み検出センサ素子1の固定が不十分となるおそれがある。一方、ストッパー20の平均幅が前記上限を超える場合、当該歪み検出センサ素子1が大きくなり過ぎるため、取扱いが困難になるおそれがある。なお、ストッパー20の「幅」とは、歪みセンサ10の厚さ方向の長さを意味する。
ストッパー20の突起部は、後述する基材に係合することで、当該歪み検出センサ素子1を基材に固定するための突起である。前記突起部は、ストッパー20の一部であり、歪みセンサ10の短手方向に突出する。
また、ストッパー20の突起部が突出する長さ(突出長さ)の下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。また、突起部の突出長さの上限としては、2cmが好ましく、1cmがより好ましい。突起部の突出長さが前記下限未満である場合、ストッパー20が係合位置から外れやすくなるおそれがある。一方、突起部の突出長さが前記上限を超える場合、ストッパー20の剛性低下により当該歪み検出センサ素子1の固定力が不足するおそれがある。
(歪み検出センサ素子の製造方法)
当該歪み検出センサ素子1は、例えば歪みセンサ10を準備する工程と、ストッパー20を付設する工程により製造することができる。
歪みセンサ準備工程では、例えば以下の方法により歪みセンサ10を準備する。すなわち、歪みセンサ10は、CNT膜11a及び絶縁性エラストマー層11bを有する弾性体11を形成する工程と、弾性体11の表裏面に電極シート12及び挟持シート13を積層する工程と、少なくとも弾性体11及び電極シート12の周面に跨って導電材14を形成する工程とを備える方法により製造することができる。
まず、弾性体形成工程において、絶縁性エラストマー層11bとCNT膜11aとの積層構造を形成する。この積層構造は、いずれかの層に他の層を形成する材料を塗工等により形成してもよく、各層の融着又は溶着により形成してもよく、弾性接着剤を用いた各層の接着により形成してもよい。
次に、電極シート及び挟持シートの積層工程において、電極シート12及び挟持シート13を弾性体11へ積層する。電極シート12及び挟持シート13の弾性体11への積層方法としては、例えば接着剤を用いることができる。この接着剤としては、例えば粘着剤、硬化性接着剤、熱可塑性接着剤等が使用できる。前記粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤等が挙げられる。また、前記硬化性接着剤としては、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
対向し合う電極シート12と挟持シート13とは、例えばボルト、リベット、クランプ等の締結部材により挟持されてもよい。この締結部材は、電極シート12、弾性体11及び挟持シート13を貫通してもよい。また、締結部材は、測定対象に歪みセンサ10を固定するための部材と兼用されてもよい。
導電材の形成工程では、少なくとも弾性体11及び電極シート12の周面に跨って導電材14を形成する。導電材14は、例えば導電性接着剤の硬化、メッキ、金属の蒸着等により形成することができ、中でも硬化性のバインダー中に導電性粒子を分散した導電性接着剤の硬化によることが簡便である。
なお、歪みセンサ10としては、市販されている歪みセンサを用いることもできる。
ストッパー付設工程では、ストッパー20を歪みセンサ10に付設する。ストッパー20の付設方法としては、特に限定されないが、例えばストッパー20を歪みセンサ10に接着する方法を挙げることができる。ストッパー20と歪みセンサ10とを接着する接着剤は、ストッパー20が電極シート12と電気的に接続される端子を兼ねるため、導電性を有するものであり、例えば導電性ゴム系接着剤等を挙げることができる。
ストッパー20と歪みセンサ10の電極シート12との電気的接続性を高めるため、ストッパー20に歪みセンサ10の端部と係合する凹部を設けて接着してもよい。この凹部に導電性接着剤を塗布した後、歪みセンサ10の端部を係合させて、ストッパー20と歪みセンサ10とを接着することで、ストッパー20と歪みセンサ10の電極シート12と接触面積が大きくなり、ストッパー20と歪みセンサ10の電極シート12との電気的接続性を高めることができる。
<外力検出アレイモジュール>
図3に示す外力検出アレイモジュール101は、二次元検出面に作用する外力を検出する。当該外力検出アレイモジュール101は、二次元検出面に縦方向にストライプ状に配設される複数の第1検出線121及び横方向にストライプ状に配設される複数の第2検出線122を有する。また、当該外力検出アレイモジュール101は、検出された外力を処理する処理手段130を備える。
(検出線)
この第1検出線121及び第2検出線122上にはそれぞれ複数の当該歪み検出センサ素子1が間隔を開けて配設されている。具体的には、当該外力検出アレイモジュール101は図4に示すように外力により撓むエラストマー材料製のチューブ状基材140を第1検出線121及び第2検出線122上に有し、このチューブ状基材140の内側に複数の当該歪み検出センサ素子1がそのストッパー20で係合されている。また、複数の当該歪み検出センサ素子1は、歪みセンサ10の表面が一方の面側(外力が作用する面側)に向くように配設されている。さらに、複数の当該歪み検出センサ素子1のストッパー20には、それぞれ配線150が接続されている。
(基材)
チューブ状基材140の主成分であるエラストマー材料としては、可撓性を有する限り特に限定されないが、例えば歪みセンサ10の絶縁性エラストマー層11bのエラストマー材料として挙げたゴム、合成樹脂等を挙げることができる。ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50%質量以上の成分である。
チューブ状基材140の平均内径としては、当該歪み検出センサ素子1に用いられる歪みセンサ10の絶縁性エラストマー層11bの平均幅と同等の平均内径とすることが好ましく、当該歪み検出センサ素子1を内挿できる範囲で前記平均幅よりもやや小さい平均内径とすることがより好ましい。具体的にはチューブ状基材140の平均内径は、1mm以上5cm以下とできる。チューブ状基材140の平均内径が前記下限未満である場合、チューブ状基材140内に当該歪み検出センサ素子1を配設できないおそれがある。一方、チューブ状基材140の平均内径が前記上限を超える場合、このチューブ状基材140に係合する当該歪み検出センサ素子1が大きくなり過ぎるおそれがある。
チューブ状基材140の平均肉厚の下限としては、100μmが好ましく、500μmがより好ましい。また、チューブ状基材140の平均肉厚の上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましい。チューブ状基材140の平均肉厚が前記下限未満である場合、チューブ状基材140の強度が不足するおそれがある。一方、チューブ状基材140の平均肉厚が前記上限を超える場合、チューブ状基材140が外力を吸収し易くなるため、当該歪み検出センサ素子1に外力が十分に伝わらないおそれがある。なお、チューブ状基材140の「平均肉厚」とは、チューブ状基材140の外径と内径との平均差の1/2を意味する。
チューブ状基材140の長さは、二次元検出面の縦横の長さにより決まるが、例えば50cm以上2m以下とできる。
チューブ状基材140は、ストッパー20が係合可能な複数の凹部又は貫通孔である係合孔140aを有する。係合孔140aは、ストッパー20を固定できる形状であり、具体的にはチューブ状基材140の係合孔140aに係合したストッパー20がチューブ状基材140の外面と交差する位置でのストッパー20の断面形状と略同一であるとよい。
また、係合孔140aは、その中心軸がチューブ状基材140の中心軸と交差するように設けるとよい。このように係合孔140aを設けることで、係合孔140aによりチューブ状基材140の強度が低下することを抑止できる。
複数の係合孔140aの間隔としては、ストッパー20が係合可能である限り特に限定されないが、例えば隣り合う係合孔140aの間隔を一対のストッパー20の間隔とすることができる。このように隣り合う係合孔140aの間隔を一対のストッパー20の間隔とすることで任意の隣り合う係合孔140aを用いて当該歪み検出センサ素子1を固定することができるので、当該歪み検出センサ素子1間の間隔の調整が比較的容易に行える。また、使用されない係合孔140aを比較的少なくすることができるので、チューブ状基材140の強度が低下することを抑止できる。
また、当該歪み検出センサ素子1の一対のストッパー20間の距離及びこの一対のストッパー20が係合する一対の係合孔140a間の距離を調整することで、チューブ状基材140により二次元検出面を構成した際に当該歪み検出センサ素子1にプリテンションを加えることもできる。具体的には、加えたいプリテンションの大きさに応じて係合孔140a間の距離をストッパー20間の距離より大きくするとよい。
複数の当該歪み検出センサ素子1は、ストッパー20をチューブ状基材140の係合孔140aに係合させることで、チューブ状基材140の内側に間隔を開けて配設されている。このようにストッパー20をチューブ状基材140の係合孔140aに係合させることで、より確実に当該歪み検出センサ素子1を固定できる。また、当該歪み検出センサ素子1をチューブ状基材140の内側に配設することで、衝撃、水分、埃等からチューブ状基材140により当該歪み検出センサ素子1が保護される。
当該歪み検出センサ素子1の配設方法としては、当該歪み検出センサ素子1のストッパー20が可撓性を有する場合、例えば突起部を曲げてチューブ状基材140の端部の開口から配設位置まで当該歪み検出センサ素子1を押し込み、突起部を広げて係合孔140aに係合させる方法で行える。
なお、ストッパー20が可撓性を有しない場合や当該歪み検出センサ素子1の配設を容易化する場合、チューブ状基材140の当該歪み検出センサ素子1の配設位置に当該歪み検出センサ素子1を挿入可能な切れ込みを設けてもよい。ストッパー20が可撓性を有する場合、この切れ込みを通じて突起部を曲げた当該歪み検出センサ素子1をチューブ状基材140の端部の開口から配設位置まで押し込み、突起部を広げて係合孔140aに係合させることで、当該歪み検出センサ素子1をより容易に配設することができる。また、ストッパー20が可撓性を有しない場合、この切れ込みを設けることで、前記切れ込みから当該歪み検出センサ素子1を配設することができる。
前記切れ込みは、当該歪み検出センサ素子1の裏面側に設けるとよい。このように前記切れ込みを裏面側に設けることで、チューブ状基材140による当該歪み検出センサ素子1の保護効果の低下を抑止できる。ここで、歪み検出センサ素子1の「裏面」とは、歪みセンサ10の絶縁性エラストマー層11bの表面と反対側の面を意味する。
また、前記切れ込みは、当該外力検出アレイモジュール101の外力が作用する面とは反対の面側に設けるとよい。このように前記切れ込みを前記外力が作用する面とは反対の面側に設けることで、チューブ状基材140による当該歪み検出センサ素子1の保護効果の低下を抑止できる。
縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上の複数のチューブ状基材140は、図5に示すようにネットを形成している。すなわち、1の方向のチューブ状基材140は、これと交差する方向のストライプ状に配列される複数のチューブ状基材140の前側、後側で交互に交差する。ここで、「前側」とは、当該歪み検出センサ素子1の表面側を意味し、「後側」とはその反対側を意味する。
また、当該歪み検出センサ素子1は、係合されるチューブ状基材140が後側となる交差位置を跨がないように配設されるとよい。このように配設することで、当該歪み検出センサ素子1の感度が低下することを抑止できる。当該歪み検出センサ素子1が交差位置を跨がないような配設は、縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上の複数のチューブ状基材140の配設間隔を調整することで実現できる。このため、チューブ状基材140の配設間隔は、当該歪み検出センサ素子1のストッパー20間の距離の1倍以上1.5倍以下とするとよく、具体的には2cm以上30cm以下とできる。
(配線)
上述のように一対のストッパー20は一対の端子を兼ねており、この一対の端子は歪センサの電極に接続されるので、配線150により当該歪み検出センサ素子1が検出した外力を抵抗変化として取り出すことができる。
配線150は、個別に当該歪み検出センサ素子1の信号を取り出す結線としてもよいが、図4に示すように複数の当該歪み検出センサ素子1が直列接続となるように結線してもよい。当該歪み検出センサ素子1を直列接続することで、配線150が短く単純になるため、断線故障等が抑止できる。一方、当該歪み検出センサ素子1の信号を個別配線により取り出すことで、外力が作用した歪み検出センサ素子1を特定できるため、当該外力検出アレイモジュール101中の外力が作用した位置を特定できる。なお、作用する外力の大きさが一定である場合は、当該歪み検出センサ素子1が直列接続されたチューブ状基材140であっても、異なる抵抗変化率を持つ歪み検出センサ素子1を配設することで、外力が作用した位置を特定することもできる。また、作用する外力の大きさがある特定の大きさであることが明確である場合にも同様に位置検出が可能になる。
縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上の複数のチューブ状基材140の両端には、それぞれ一対の縦方向の第1検出線121用の配線ターミナル111a、一対の横方向の第2検出線122用の配線ターミナル111bが配設されている。この縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122用の配線ターミナル111a、111bには、それぞれ縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上のチューブ状基材140の配線が集積されている。このため、第1検出線121及び第2検出線122上で検出される外力の情報は、当該歪み検出センサ素子1の抵抗値の変化情報としてこの配線ターミナル111a、111bから取得することができる。
(処理手段)
処理手段130は、縦方向の第1検出線121上で検出された外力を処理する縦方向処理部131、横方向検出線122上で検出された外力を処理する横方向処理部132、縦方向処理部131と横方向処理部132との情報から外力の大きさ等を判定する判定部133、及び判定結果を表示する表示部134を主に備える。
縦方向処理部131は、縦方向の配線ターミナル111aと接続されており、外力が作用した縦方向のチューブ状基材140の位置、その抵抗変化量等を取得する。これにより外力が作用した横方向の位置を特定でき、その抵抗変化量から外力の強さが特定できる。外力の作用状態によっては、複数の縦方向のチューブ状基材140に外力が作用することがあるが、その場合は全ての情報を取得するとよい。また、当該歪み検出センサ素子1の信号を個別配線により取り出し当該歪み検出センサ素子1を並列接続している場合は、縦方向処理部131により縦方向の位置も特定できる。
横方向処理部132は、横方向の配線ターミナル111bと接続されており、外力が作用したチューブ状基材140の位置、その抵抗変化量等を取得する。これらの情報から外力が作用した縦方向の位置及び外力の強さを特定できる。
縦方向処理部131及び横方向処理部132としては、例えば公知のインターフェイス機器や測定器を組み合わせてものが利用できる。
判定部133は、縦方向処理部131及び横方向処理部132と接続されており、縦方向処理部131と横方向処理部132との情報から外力の大きさを判定する。また、判定部133は、縦方向処理部131及び横方向処理部132で取得した外力が作用した位置を組み合わせることで、二次元検出面内で外力が作用した位置を判定できる。この判定部133としては、例えば公知のパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
なお、判定部133は、外力を作用した物体が回転を伴っている場合、その回転方向を判定することも可能である。具体的には、例えば縦方向の外力の大きさが横方向の外力の大きさよりも大きい場合、判定部133は縦方向の回転が加わっていると判断できる。さらに判定部133は、外力の大きさの非対称性から回転の向き、例えば上から下方向であるのか、下から上方向であるのかを判定することもできる。
さらに、外力の大きさとその外力を与えた物体の速度との関係を予め取得し判定部133に格納しておくことで、判定部133は、その取得情報から外力を与えた物体の速度を判定することもできる。
表示部134は、判定部133の判定結果を表示する。表示部134としては、公知のディスプレイを用いることができる。
<利点>
当該歪み検出センサ素子1は長手方向両端部に一対のストッパー20が付設されているので、このストッパー20を固定することで、歪み検出できるように当該歪み検出センサ素子1を任意の場所に容易に固定できる。このため当該歪み検出センサ素子1は、外力が作用する位置に外力を直接検出可能に配設することできる。さらに、ストッパー20が長手方向両端部に付設されることで当該歪み検出センサ素子1の長手方向の伸縮を阻害し難いため、当該歪み検出センサ素子1は、検出感度に優れる。
また、一対のストッパー20が、一対の電極シート12にそれぞれ電気的に接続される一対の端子を兼ねることにより、ストッパー20を固定することで端子位置が固定されるため、端子から容易に配線150を引き出すことができる。
当該外力検出アレイモジュール101は、当該歪み検出センサ素子1を用いるので、外力を直接歪みセンサ10で受けて検出することができる。また、当該外力検出アレイモジュール101は、二次元検出面にストライプ状に配設される複数の第1検出線121及び第2検出線122上に複数の当該歪み検出センサ素子1が間隔を開けて配設されているので、これら複数の当該歪み検出センサ素子の検出情報から作用した外力の大きさ等を特定できる。
さらに、当該外力検出アレイモジュール101は、二次元検出面上に外力の作用により撓むエラストマー材料製のチューブ状基材140を有し、このチューブ状基材140に当該歪み検出センサ素子1がそのストッパー20で係合されていることで、外力が作用した際にチューブ状基材140の撓みにより当該歪み検出センサ素子1の伸縮が増加し、当該歪み検出センサ素子1の検出感度がさらに向上する。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
<歪み検出センサ素子>
図6の歪み検出センサ素子2は、長手方向の伸縮により抵抗値が変化する帯状の歪み検出センサ素子である。当該歪み検出センサ素子2は、図2に示す歪みセンサ10を備え、長手方向の両端部に一対のストッパー21が付設されている。なお、第1実施形態と同一の構成要素は同一の番号を付し、以降の説明を省略する。
(ストッパー)
一対のストッパー21は、それぞれ当該歪み検出センサ素子2の短手方向が軸方向と一致する柱状である。第2実施形態のストッパー21の軸方向の平均高さは、当該歪み検出センサ素子2の短手方向の長さと略等しい。すなわちストッパー21は、短手方向の突起を有さない。
ストッパー21は導電性を有する。また、ストッパー21は、歪みセンサ10の端部と係合する凹部を1の側面に有し、歪みセンサ10の端部をその凹部で挟持する。このようにストッパー21は、その凹部により歪みセンサ10の端部を挟持することで、歪みセンサ10の電極シート12と電気的に接触している。従って、一対のストッパー21は一対の電極シート12にそれぞれ電気的に接続される一対の端子を兼ねている。
ストッパー21の材料としては導電性を有する限り特に限定されないが、例えばアルミニウムや銅等の金属を用いることができる。また、ストッパー21は可撓性を有してもよく、有さなくともよい。
ストッパー21の底面の形状は、特に限定されないが、例えば歪みセンサ10と長手方向が一致し、前記凹部を有する長方形状とできる。このようにストッパー21の底面をこのような長方形状とすることで、当該歪み検出センサ素子2を後述するチューブ状基材141に固定する際、隣接する当該歪み検出センサ素子2との配線151による接続をより確実に行うことできる。
前記底面の歪みセンサ10の長手方向の平均長さの下限としては、2mmが好ましく、3mmがより好ましい。また、前記底面の歪みセンサ10の長手方向の平均長さの上限としては、2cmが好ましく、1cmがより好ましい。前記底面の歪みセンサ10の長手方向の平均長さが前記下限未満である場合、ストッパー21の凹部で歪みセンサ10の端部を挟持することが困難となるおそれがある。一方、前記底面の歪みセンサ10の長手方向の平均長さが前記上限を超える場合、隣接する当該歪み検出センサ素子2の歪み検出センサ10間の距離が広くなり過ぎ、十分な検出情報が得られないおそれがある。
前記底面の歪みセンサ10の厚さ方向の平均長さの下限としては、1mmが好ましく、2mmがより好ましい。また、前記底面の歪みセンサ10の厚さ方向の平均長さの上限としては、1cmが好ましく、5mmがより好ましい。前記底面の歪みセンサ10の厚さ方向の平均長さが前記下限未満である場合、隣接する当該歪み検出センサ素子2と配線151で電気的に接続する際の接触抵抗が高くなり、当該歪み検出センサ素子2の検出感度が低下するおそれがある。一方、前記底面の歪みセンサ10の厚さ方向の平均長さが前記上限を超える場合、当該歪み検出センサ素子1が大きくなり過ぎるため、取扱いが困難になるおそれがある。
<外力検出アレイモジュール>
第2実施形態に係る外力検出アレイモジュールは、第1実施形態に係る外力検出アレイモジュール101と同様に構成できる。つまり、当該外力検出アレイモジュールは、二次元検出面に縦方向にストライプ状に配設される複数の第1検出線及び横方向にストライプ状に配設される複数の第2検出線を有する。また、当該外力検出アレイモジュールは、検出された外力を処理する処理手段を備える。
(検出線)
この第1検出線及び第2検出線上にはそれぞれ複数の当該歪み検出センサ素子2が間隔を開けて配設されている。具体的には、当該外力検出アレイモジュールは、図7に示す外力により撓むエラストマー材料製のチューブ状基材141を検出線上に有し、このチューブ状基材141の内側に複数の当該歪み検出センサ素子2がそのストッパー21及びストッパー21を圧接する一対の金具161により固定されている。また、複数の当該歪み検出センサ素子2は、歪みセンサ10の表面が一方の面側(外力が作用する面側)に向くように配設されている。さらに、チューブ状基材141はその内側に板状の配線151を有し、この配線151は隣接する2つの当該歪み検出センサ素子2のストッパー21に当接している。つまり、配線151はチューブ状基材141とストッパー21とに挟持されている。
(基材)
当該歪み検出センサ素子2は、チューブ状基材141の内側に固定されている。当該歪み検出センサ素子2のそれぞれのストッパー21は、このチューブ状基材141の外側で当該歪み検出センサ素子2の表面及び裏面側から一対の金具161で挟持し圧接されている。また、隣接する当該歪み検出センサ素子2のストッパー21を近接配置し、さらにこれらの隣接するストッパー21の表面に配線151を当接するように配設することで、一対の金具161によりこれらの隣接するストッパー21を固定すると共に電気的に接続することができる。これにより、隣接する当該歪み検出センサ素子2の位置ずれを生じ難くできる。
チューブ状基材141の材質、平均内径、平均肉厚、及び長さは、第1実施形態のチューブ状基材140と同様とすることができる。
金具161は、板状であり、その表面がチューブ状基材141等を介してストッパー21の凹部のある側面と垂直な側面側に配設されている。この金具161は、例えばネジ止めにより固定され、当該歪み検出センサ素子2を挟持する。金具161の材質としては、特に限定されないが、例えば強度や腐食性の観点からステンレスが好ましい。
金具161の平面形状としては、ストッパー21を固定できる限り特に限定されないが、例えば円形状や方形状とできる。また、金具161の直径(方形状の場合は1辺)としては、1cm以上3cm以下とすることができる。金具161の直径が前記下限未満である場合、ストッパー21が十分に固定できず、当該歪み検出センサ素子2が位置ずれを起こすおそれがある。一方、金具161の直径が前記上限を超える場合、外力が金具161に作用する場合が増加し、当該歪み検出センサ素子2による外力の検出が不十分となるおそれがある。
また、金具161の平均厚さとしては、ストッパー21を固定できる限り特に限定されないが、例えば0.5mm以上5mm以下とできる。金具161の平均厚さが前記下限未満である場合、金具161の強度が不足するおそれがある。一方、金具161の平均厚さが前記上限を超える場合、外力が金具161に作用する場合が増加し、当該歪み検出センサ素子2による外力の検出が不十分となるおそれがある。
図8に示すように縦方向の第1検出線及び横方向の第2検出線上の複数のチューブ状基材141は、第1実施形態のチューブ状基材140と同様のネットを形成している。
この時、図8に示すように縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上のチューブ状基材141の交差位置に金具161が配設されるようにネットを形成するとよい。このようにネットを形成することで、具体的には、縦方向の第1検出線上のチューブ状基材141、その内側に配設される当該歪み検出センサ素子2及び配線151と、横方向の第2検出線上のチューブ状基材141、その内側に配設される当該歪み検出センサ素子2及び配線151とが一対の金具161で固定される。このように固定することで、金具161の使用個数を減らせる。また、縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上のチューブ状基材141が交差位置で連結できるので、より確実に当該歪み検出センサ素子2を検出線上に固定できる。
(配線)
配線151は導電板であり、その一方の面151aが隣接する当該歪み検出センサ素子2のストッパー21の凹部のある側面と垂直な1の側面に重ね合わさるように当接し、隣接するストッパー間をチューブ状基材141の内側で電気的に接続する。
配線151の材料としては、導電性を有する限り特に限定されないが、例えばストッパー21と同じ金属を用いることができる。
配線151がストッパー21に当接する面151aの形状としては、ストッパー21間の電気的な接続ができる限り特に限定されないが、例えば方形状とできる。この場合、前記当接する面151aの一方の辺の長さは、ストッパー21の軸方向の平均高さと略一致するとよく、他方の辺の長さは、ストッパー21の底面の歪みセンサ10の長手方向の平均長さの2倍の長さと略一致するとよい。このように前記当接する面151aの2辺の長さを前記長さとすることにより、隣接するストッパー21の当接面全体を配線151で覆うことができるので、比較的低抵抗で隣接するストッパー間を電気的に接続できる。
配線151の当接面に垂直方向の平均厚さの下限としては、300μmが好ましく、500μmがより好ましい。また、配線151の平均厚さの上限としては、1mmが好ましく、800μmがより好ましい。配線151の平均厚さが前記下限未満である場合、配線151の抵抗が大きくなり当該歪み検出センサ素子2の検出感度が低下するおそれや、配線151の強度が不足し断線するおそれがある。一方、配線151の平均厚さが前記上限を超える場合、金具161により圧接し難くなるおそれがある。
なお、当該外力検出アレイモジュールの配線ターミナル及び処理手段は、第一実施形態と同一のものを用いることができるので、説明を省略する。
<利点>
第2の実施形態に係る外力検出アレイモジュールは、チューブ状基材141に係合孔を設けることなく当該歪み検出センサ素子2を固定するので、係合孔によるチューブ状基材141の強度低下を防止できる。
[第3実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。
<歪み検出センサ素子>
図9の歪み検出センサ素子3は、長手方向の伸縮により抵抗値が変化する帯状の歪み検出センサ素子である。当該歪み検出センサ素子3は歪みセンサ10を備え、長手方向の両端部において歪みセンサ10の基板の一部が裏面側に略垂直に屈曲する屈曲部16を有しており、その先端部に一対のストッパー20が付設されている。つまり、一対のストッパー20は、当該歪み検出センサ素子3の長手方向の両端部に付設されている。なお、第1実施形態と同一の構成要素は同一の番号を付し、以降の説明を省略する。
歪みセンサ10の屈曲部16が歪みセンサ10の裏面から厚さ方向に突出する部分の平均長さは、後述するシート状基材142の厚さ方向に係合できる長さによって決まるが、例えば1cm以上3cm以下とできる。
また、屈曲部16は、歪みセンサ10の電極シート12とストッパー20とを電気的に接続する配線部を有する。あるいは、歪みセンサ10の導電材14を歪みセンサ10の両端部まで延伸し、歪みセンサ10の電極シート12がストッパー20と当設する位置に形成されていてもよい。このように歪みセンサ10の電極シート12とストッパー20とを電気的に接続することで、一対のストッパー20が電極シート12にそれぞれ電気的に接続される一対の端子を兼ねる。
<外力検出アレイモジュール>
第3の実施形態に係る外力検出アレイモジュールは、シート状基材142を有し、このシート状基材142が図10に示す二次元検出面を構成する。当該外力検出アレイモジュールは二次元検出面に横方向にストライプ状に配設される複数の当該歪み検出センサ素子3を有し、縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122が構成されている。
シート状基材142は、外力により撓むエラストマー材料製であるとよく、その材料としては、第一実施形態のチューブ状基材141と同様のものを用いることができる。
シート状基材142の平面視形状は、二次元検出面を構成できる限り特に限定されないが、例えば1辺が50cm以上2m以下の方形状とすることができる。
シート状基材142の平均厚さの下限としては、3mmが好ましく、5mmがより好ましい。また、シート状基材142の平均厚さの上限としては、10mmが好ましく、8mmがより好ましい。シート状基材142の平均厚さが前記下限未満である場合、シート状基材142の強度が不足するおそれがある。一方、シート状基材142の平均厚さが前記上限を超える場合、当該外力検出アレイモジュールの取扱いが困難となるおそれがある。
シート状基材142は、ストッパー20が係合可能な複数の凹部又は貫通孔である係合孔142aを有する。また、シート状基材142は、係合孔142a以外に空気抜きの開口等を有してもよい。
係合孔142aの形状は、ストッパー20を固定できればよい。具体的には係合孔142aは平面視形状で、縦方向の長さが屈曲部16の短手方向の長さと略同一であり、横方向の長さが屈曲部16の厚さと略同一であるとよい。
シート状基材142の複数の係合孔142aの間隔としては、ストッパー20が係合可能である限り特に限定されないが、例えば第1実施形態の係合孔140aの間隔と同様とできる。
複数の当該歪み検出センサ素子3は、ストッパー20をシート状基材142の係合孔142aに係合させることで、シート状基材142の一方の面(表面)側に歪みセンサ10が位置するように間隔を開けて配設されている。また、係合孔142aが貫通孔である場合は、シート状基材142の裏面側にストッパー20が位置するように間隔を開けて配設される。
シート状基材142の配線はストッパー20に接続されており、例えば複数の当該歪み検出センサ素子3が縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122上で直列接続されるように配線されている。具体的には、図10(a)に示すように当該歪み検出センサ素子3を縦方向の第1検出線上に配設される当該歪み検出センサ素子3の群と、複数のストッパー20が横方向の第2検出線上に配設される当該歪み検出センサ素子3の群とに分け、それぞれの群のストッパー20を当該歪み検出センサ素子3が直列接続となるように配線するとよい。このように縦方向と横方向との直列接続配線を備えることで、当該外力検出アレイモジュールは、外力の位置の特定をより容易に行える。
なお、当該外力検出アレイモジュールの配線ターミナル及び処理手段は、第一実施形態と同一のものを用いることができるので、説明を省略する。
<利点>
第3の実施形態に係る外力検出アレイモジュールは、直接当該歪み検出センサ素子3に外力が作用するので、検出感度が向上する。また、1の当該歪み検出センサ素子3が縦方向の第1検出線121及び横方向の第2検出線122の両方を構成するので、少ない歪み検出センサ素子で外力を検出することができる。また、当該外力検出アレイモジュールは、シート状基材によって二次元検出面を構成するので、ネットで構成する場合に比べて取扱いが容易である。
[その他の実施形態]
本実施形態は前記構成からなり、前述の利点を奏するものであったが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
前記第1実施形態では、板状の突起部を有するストッパーについて説明したが、突起部は板状に限定されず、例えば図11に示すように、ストッパー20が歪み検出センサ素子4の内側に曲がった鈎状の突起部を有してもよい。このように鈎状の突起部を有することで、ストッパー20が基材に係合した際にこの鈎部に係合孔の端部が挟み込まれ、より確実に歪み検出センサ素子4を固定できると共に、係合孔による基材の強度低下を抑止できる。
前記実施形態では、ストッパーが歪みセンサの電極と電気的に接続される端子を兼ねる場合を説明したが、これは必須の構成要件ではない。例えば歪みセンサの電極から直接配線を引き出し歪み検出センサ素子を接続する構成であってもよい。
前記第2実施形態では、金具による圧接でストッパーを固定する場合を示したが、ストッパーの固定方法はこれに限定されず、融着による固定等を用いてストッパーを基材に固定してもよい。融着による固定の場合、例えばストッパーを熱可塑性樹脂により形成し、熱融着することで基材に固定することができる。または、少なくともストッパーを固定する部分に熱収縮チューブを配設し、熱収縮チューブを加熱することによりストッパーを固定してもよい。
前記第3実施形態では、外力検出アレイモジュールとして歪み検出センサ素子に直接外力が作用する構成としたが、歪み検出センサ素子を被覆し、保護してもよい。
シート状基材の歪み検出センサ素子を保護する構成としては、例えば断面が半円状のチューブにより歪み検出センサ素子を被覆する構成や、歪み検出センサ素子を内側に配設したチューブ状基材をシート状基材に接着することで歪み検出センサ素子を配設する構成を挙げることができる。
前記第3実施形態では、外力検出アレイモジュールとしてシート状基材に開けた係合孔等に直接当該歪み検出センサ素子を固定する場合を示したが、係合孔を設けず歪み検出センサ素子を接着等によりシート状基材に貼り付けてもよい。
前記実施形態では、外力検出アレイモジュールが縦方向及び横方向の2方向に検出線を有する場合を示したが、いずれか一方のみであってもよい。
第1実施形態や第2実施形態のチューブ状基材に繊維等を歪み検出センサ素子と並行して内包することで、歪み検出センサ素子を保護してもよい。
また、外力検出アレイモジュールは、光ファイバ等の発光部材を歪み検出センサ素子と並行して内包することで、判定部の結果に基づいて例えば二次元検出面上での外力作用位置を明示するように発光させる機能を有することもできる。
前記実施形態では、歪みセンサのCNT膜として、CNT繊維束が樹脂層で被覆されているものを説明したが、CNT繊維束は樹脂層で被覆されていなくともよい。