JP6478637B2 - 超音波探触子 - Google Patents
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Description
従来用いられている超音波探触子は、板状の振動子の平面部から送・受信される超音波について測定する機構となっており、送・受信部分を測定対象の表面に接触させて使用されることが多い(図3)。
超音波探触子を用いて厚み方向に計測する場合、従来例では図9に示すように、コンクリート壁の対向する箇所に送受信用の超音波探触子を配置して行う。最短距離を計測するには、両側の位置を正確に特定する必要があり、位置合わせを確認することは困難である。また、壁の厚みの実測も困難であり、設計図の数字を採用する外ない状況である。裏面側にアクセスできない状況では、測定困難になる。
さらに、測定対象の表面と内部で特性が異なる場合(例えば、表面から乾燥などの影響を受けるコンクリート構造物)では、表面での測定ではその内部の超音波伝搬速度を正確に把握することはできない。
このような場合に、測定対象を削孔して、その孔内の所定の深さ位置に超音波探触子を接触させることにより内部の超音波伝搬速度を測定する方法が提案されている(特許文献1:特許第4686068号公報)。削孔はドリルなどによる円孔として設けられることが多く、従来の平面部から超音波を送・受信する超音波探触子を用いた場合には、図3(b)のように凹曲面測定用のウエッジを介しての測定となる。
ダムや原子力施設など表裏面に送受信用の超音波探触子を設置できない場合は、同一面側から削孔して、2つの超音波探触子の発信面と受信面を対向配置することになる。精緻な測定をするためには、対向面が垂直になるように正確に形成する必要があり、ドリルなどによって形成された円形の孔の円周面に超音波探触子をあてることとなり、平面に対置することができない。従来使用されているコンクリートの超音波測定器エルソニックII((株)東横エルメス社製)では、超音波探触子の寸法は径60.5mm、長さ73mmであり、測定のためには設置孔は超音波探触子の長さ以上の削孔径が必要となる。コンクリート構造物には鉄筋が入っているので、大きな開口を削孔する場合は鉄筋の切断が必要となる場合もある。鉄筋切断作業自体容易でなく、また、構造物に対するダメージも発生するリスクがある。
したがって、図3(b)のような、従来例の測定方法では削孔径が大きくなってしまい、測定対象物に与える損傷が大きい。また、超音波探触子の平面部全体から同時に超音波が送信されても湾曲面による厚み分の差が発生して、ウエッジの各部分から対象物に超音波が伝わるタイミングは同じではない。このため、削孔とウエッジが部分的に接触する場合には、孔内への接触箇所の違いによって測定結果に差が生じうる。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.振動子ケース内に円筒形の振動子が2個挿入され、振動子の筒の周面から伝搬する超音波を送・受信可能な超音波探触子。
2.掘削された孔に挿入される超音波探触子であって、振動子の周波数が20〜500kHzであり、振動子の外径が6〜28mmであることを特徴とする、1.に記載の超音波探触子。
3.1.又は2.に記載されている超音波探触子が筐体の先端に装着されており、2個設けられている振動子の中心からグリップ側に向けて目盛が設けられている挿入型超音波探触子。
4.測定対象物に対して複数の円形の孔を形成し、
該孔に3.記載の挿入型超音波探触子を目盛りを用いて測定深さまで挿入して、1つの超音波探触子を発信器とし、他の超音波探触子を受信器とし、
送受信器間の超音波伝搬速度を測定する方法。
5.測定対象物がコンクリート構造物であることを特徴とする4.に記載の測定方法。
2.送・受信部の面から円周方向に同時に超音波を送信可能であるため、接触箇所による測定結果の差異は生じない。したがって、測定対象の表面からある深さにおける超音波伝搬速度をより正確に測定することが可能である。
3.円筒形の超音波探触子から、円周方向に超音波が発信され、円周面で受信するので、送信部と受信部の対向面は正確な対称面を形成する必要がない。送信器と受信器の間の距離によって、超音波の伝搬速度を測定できる。
また、円形の孔に円筒形の超音波探触子を挿入して超音波を発信するので、湾曲面を有するウエッジを使用する平面の超音波探触子に比べて、測定距離誤差を小さくして正確な測定値を得ることができる。従来例では、振動子の平面部全体から同時に超音波が送信されても、孔の内周面に超音波を伝搬するために使用する湾曲面を有するウエッジ部分からは、超音波がウエッジの厚みの差がある分対象物に対して同時に送信されないため、削孔と曲面を有するウエッジが接触する場合には孔内への接触箇所の違いによる測定結果の差が生じうる。
4.物質の力学特性、材質などによって、固有の伝搬速度を示すので、伝搬速度を測定することにより、ヤング係数、コンクリートの圧縮強度などを推定することができる。ダムや原子力施設、壁面などのコンクリート構造物の診断が可能となる。経年変化の診断に伴う削孔の累積ダメージが小さくて済む。
長期間使用するダム、原子力プラント、建築物などのコンクリート構造物などの検査測定に有効である。
本発明の円筒形の超音波探触子は、図1に示すように円筒形であって、周面から超音波を発信する。周面から超音波を発信するので、湾曲した対象面に超音波を照射する場合、対象面に沿うことができるので適している。
円筒形の超音波探触子には円筒形の振動子が収納されており、図1に模式的に示すように円周方向(実線矢印)と長さ方向(破線矢印)に振動する。円筒形の超音波探触子は、円周方向の振動を利用し、送受信部側面から円周方向に均一に伝搬する超音波を送受信する機構を備えている。発生する超音波の周波数は、振動子の長さ寸法に依拠し、直径には関係しない。検査のための挿入する孔の直径は、振動子の直径に影響を受けるが、振動子の長さ寸法には影響を受けないため、振動子の周波数と削孔の径は任意に設定することが可能である。
本発明の超音波探触子は、特に小径の削孔のような湾曲面での測定及び比較的低い周波数の超音波に適している。
なお、現実的な製作上、振動子の直径が小さすぎると、探触子の製作や剛性の確保がむずかしくなるので、使いやすいサイズに設定される。対象物がコンクリート構造物であれば、その削孔に使用されているドリルによって形成される穴の大きさに合わせて設計するのが現実的である。
円筒形の振動子1を振動子ケース2に挿入し、振動子ケース2の基端側に縮径して設けた挿入部23を連結筐体3の先端側から挿入して、両者に設けた結合用孔22、32の位置合わせをして、ネジで固定して、挿入型超音波探触子5を形成する。振動子はPZT製である。図4に示す振動子1は2個の円筒形振動子が並列されており、中間にハイカコルクが設けられている。これは連続した一つの振動子で形成することも可能である。
挿入型超音波探触子5の筐体には、振動子中心位置51を始端とする目盛54がグリップ部側に向けて付されている。振動子中心位置51は、挿入されている振動子の振動子中心12と一致し、超音波の発信中心であって、測定箇所の挿入位置が容易に確認できる。
振動子1にはリード線11が設けられており、振動子ケース2にもリード線21が設けられている。振動子1のリード線11は振動子ケース2のリード線21に連結されるように構成され、連結筐体3の基端部から挿入型超音波探触子5の外部に延出している。挿入連結筐体3は円筒形であり、挿入型超音波探触子5の基端部には蓋53が設けられ、蓋53を介してケーブルが接続され、コンピュータやディスプレイと連結される。
なお、グリップ部52には、滑り止め用のローレット55が設けられている。
挿入型超音波探触子の外形は、コンクリート構造物に穴を形成する手段として、回転ドリルが効率的で一般的に用いられるので、円形の穴に挿入しやすい円筒形が好ましい。コンクリート構造物のコンクリート本体の強度を知るには、表面の劣化部分を除き、鉄筋のかぶり厚さより深い位置のコンクリート強度を調査対象とすることが適している。挿入型超音波探触子の長さ(目盛部分)は、この調査対象となる深さ以上に形成する。
本実施態様では、コンクリート構造物の開口用ドリルの大きさに合わせて、超音波探触子の挿入外径を決定し、それに適合する振動子を設定する。具体的には、振動子の直径は6〜28mm、長さは5〜15mm、連結筐体の先端側外径は10〜30mm、目盛部分の長さは10〜30cm、全長は20〜40cm程度に設定している。
一方、超音波の速度が物質の密度やヤング係数などによって変化するので、この計測された速度を元に、ヤング係数、さらにヤング係数に対応する圧縮強度を求めることにより、測定対象であるコンクリート構造物の強度を得ることができる。
実施例1〜3の超音波探触子と市販されている平面部での測定に用いられる超音波探触子であるエルソニックII(東横エルメス(社)製)を用いて検証試験を行った。
エルソニックIIは、図6に示す外形を備えている。外径60.5mm、長さ73mmの筐体の後端にケーブルがついている。
コンクリート製角柱□150×560mmを作成し、間隔を400mm離して直径30mmの貫通孔111a、111bを設けた。このテスト用コンクリート角柱110の平面概略図を図7に示す。使用したコンクリートは、水セメント比40〜65%の普通コンクリートである。
テスト用コンクリート角柱110を用い、材齢3〜91日において超音波の伝搬速度を測定した。実施例1〜3の超音波探触子105a、105bは貫通孔111a、111bに超音波発信中心が深さ75mmに位置するように挿入し、測定距離400mmで測定し、エルソニックII112a、112bは角柱の長辺方向(間隔560mm)及び短辺方向(間隔150mm)での測定を行った。
測定位置を図7(a)、図7(b)に示す。図7(a)は平面視の概略であり、図7(b)は正面視の概略である。
図8に示されるように各実施例とエルソニックIIは1.00〜1.01と高い一致性を確認することができた。十分に従来の超音波測定装置と同等の性能を発揮している。
なお、エルソニックIIは長辺と短辺の2方向を測定したデータを用いているが、長短による伝搬速度の異方性は認められなかった。
また、建築学会では探触子の周波数20〜200kHzとされ、標準的なものは50〜100kHzである。超音波の周波数を大きくすると波長が短くなり、粗骨材界面で超音波が分散しやすくなり、測定精度の低下をもたらす可能性があるので、200kHz以下の超音波を使用することが適している。
したがって、建設分野では現実に即しており、十分に有効である。
さらに、円形開口を設けて超音波伝搬速度を測定する利用分野においては、建設関連にとどまらず利用可能である。
11 リード線
12 振動子中心
2 振動子ケース
21 リード線
22 結合用孔
23 挿入部
3 連結筐体
32 結合用孔
5 挿入型超音波探触子
51 振動子中心位置
52 グリップ部
53 蓋
54 目盛
55 ローレット
100 測定対象物
101 削孔A
102 削孔B
105a、105b 本発明の超音波探触子
110 コンクリート角柱
111a、111b 貫通孔
112a、112b 従来例の探触子
Claims (5)
- 振動子ケース内に円筒形の振動子が2個挿入され、振動子の筒の周面から伝搬する超音波を送・受信可能な超音波探触子。
- 掘削された孔に挿入される超音波探触子であって、振動子の周波数が20〜500kHzであり、振動子の外径が6〜28mmであることを特徴とする、請求項1に記載の超音波探触子。
- 請求項1又は2に記載されている超音波探触子が筐体の先端に装着されており、2個設けられている振動子の中心からグリップ側に向けて目盛が設けられている挿入型超音波探触子。
- 測定対象物に対して複数の円形の孔を形成し、
該孔に請求項3記載の挿入型超音波探触子を目盛りを用いて測定深さまで挿入して、1つの超音波探触子を発信器とし、他の超音波探触子を受信器とし、
送受信器間の超音波伝搬速度を測定する方法。 - 測定対象物がコンクリート構造物であることを特徴とする請求項4に記載の測定方法。
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