以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る車両走行制御情報収集装置1を適用した車両を示すブロック図である。本例の車両走行制御情報収集装置1は、少なくとも走行制御情報処理装置10とGPSセンサ12と方位センサ13とを備え、車両制御装置11、気象情報センタ14及びナビゲーション装置15からの各種情報を取得する構成とされている。なお、GPSセンサ12及び方位センサ13は、車両に搭載されたものを共用してもよい。本例の車両走行制御情報収集装置1は、車両に搭載されるほか、車両以外のたとえば情報センタに設置されてもよい。以下の実施形態では、図1に示す各構成要素が車両に搭載されたものとして本発明を説明する。なお、本例の車両には、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関のみを原動機とするもののほか、駆動用モータのみを原動機とする電気自動車や、内燃機関と駆動用モータを原動機とするハイブリッド車が含まれる。
本例のGPSセンサ12は、グローバルポジショニングシステム(Global Positioning System,全地球測位網)における複数のGPS衛星からの信号を受信するGPS受信機であり、三次元測位法により当該GPSセンサ12の位置(緯度・経度)を検出し、これを走行制御情報処理装置10へ出力する。本例のGPSセンサ12は、複数の車両のそれぞれに搭載されて、当該車両の現在位置の検出信号を走行制御情報処理装置10へ出力する。なお、ナビゲーション装置15にもGPSセンサが必要とされるので、ナビゲーション装置15のGPSセンサと共用してもよい。
本例の方位センサ13は、ジャイロコンパスや磁気コンパスなど方位を検出するものであり、複数の車両のそれぞれに搭載されて当該車両の進行方向(前進方向)の検出信号を走行制御情報処理装置10へ出力する。なお、ナビゲーション装置15にも方位センサが必要とされるので、ナビゲーション装置15の方位センサと共用してもよい。
車両制御装置11は、アクセルペダルの踏込量に基づく負荷要求に対して車両の原動機(内燃機関や駆動用モータ)の出力トルクを制御したり、ブレーキペダルの踏込量に基づく制動要求に対して車両の制動力を制御したり、ステアリングの操作量に基づく操舵要求に対して操舵輪の操舵角を制御したり、車両の走行状態を総合的に制御するコントロールユニットである。このため、車両の走行状態を逐次検出するためのセンサ類が当該車両に設けられ、その検出信号が車両制御装置11に出力される。ここでは、本例の車両走行制御情報収集装置1に出力される走行状態の検出センサについてのみ説明するが、この他にも車両の制御に必要とされるセンサ類が設けられている。
車速センサ111は、ドライブシャフトなどの駆動系の回転速度を計測し、これに基づいて車両の走行速度(以下、車速ともいう)を検出するものであり、検出信号は車両制御装置11に出力される。
原動機出力推定センサ112は、原動機が内燃機関である場合は当該内燃機関の出力トルクを推定するセンサであり、原動機が駆動用モータである場合は当該駆動用モータの出力トルクを推定するセンサである。また原動機が内燃機関と駆動用モータである場合は、その出力配分比に応じて総合的な出力トルクを推定するセンサである。たとえば、内燃機関が原動機である場合には、アクセルペダルの踏込量に応じて吸入空気量が制御されるので、内燃機関の吸気通路に設けられたエアフローメータが原動機出力推定センサ112に該当する。また、駆動用モータが原動機である場合には、アクセルペダルの踏込量に応じて駆動用モータに流れる電流が制御されるので、駆動用モータに設けられた電流センサが原動機出力推定センサ112に該当する。
CU間通信センサ113は、車載された複数のコントロールユニットを結ぶ通信回線の状態を検出するセンサであり、本例では車両制御装置11と変速機コントローラ119との間の通信、車両制御装置11とトラクションコントローラ118との間の通信、車両制御装置11と横滑り防止装置121との間の通信、車両制御装置11とアンチロックブレーキシステム122との間の通信の状態を検出するものである。具体的には、車両制御装置11から通信確認信号を出力しその応答信号を確認することなどによって通信状態の良否が検出される。
走行レンジセンサ114は、変速機のシフトレバー位置を検出し、当該シフトレバー位置が、走行レンジ、駐車レンジ、後退レンジ又は中立レンジの何れかであるかを車両制御装置11に出力する。
潤滑油温度センサ115は、内燃機関の潤滑油の循環系に設けられた温度センサであり、潤滑油の温度を検出して車両制御装置11に出力する。冷却水温度センサ116は、内燃機関の冷却水の循環系に設けられた温度センサであり、冷却水の温度を検出して車両制御装置11に出力する。これらはいずれも、内燃機関が安定した作動状態にあるか否かを判定するためのセンサ類である。
ブレーキセンサ117は、ブレーキペダルの踏込量を検出して車両制御装置11に出力するものであり、車両に制動力が作用しているか否かを判定するためのセンサである。トラクションコントローラ118は、車両速度と各タイヤの回転速度などからタイヤの空転を把握し、原動機からの駆動力を一時的に低減又は調節してタイヤの空転状態を解消するための制御システムであり、トラクションコントロールが作動しているか否かを車両制御装置11に出力する。
変速機コントローラ119は、自動変速機の変速制御を実行するものであり、円滑な変速操作を実現するために、変速中においては原動機からの駆動力を一時的に調節する。変速機コントローラ119は、変速中のトルク制御の要求信号を車両制御装置11に出力する。
ステアリング操作量センサ120は、ステアリングの操作角を検出して車両制御装置11に出力する。横滑り防止装置(VDC,Vehicle Dynamics Control)121は、ドライバーの運転操作や車両速度を検出して、ブレーキや原動機出力の制御を自動的に行い、滑りやすい路面、カーブを曲がるとき、又は障害物を回避するときに車両の横滑りを軽減するものであり、原動機のトルク制御の要求信号を車両制御装置11に出力する。
アンチロックブレーキシステム(ABS)122は、急ブレーキや低摩擦路でのブレーキ操作において、車輪がロックすることによる滑走の発生を低減する装置であり、間欠制動制御の要求信号を車両制御装置11に出力する。
気象情報センタ14は、外部装置として設置され、風力、積雪、路面凍結といった車両の走行に影響する情報を、通信回線網を介して走行制御情報処理装置10へ出力する。ナビゲーション装置15は、地図データベース、GPSセンサ、方位センサを含み、現在位置周辺の地図データをディスプレイに表示するとともに、設定された目的地までの走行経路を案内する。ナビゲーション装置15と走行制御情報処理装置10は接続され、ナビゲーション装置15から適宜情報が出力される。
車両制御装置11は、各種センサ類111〜122により検出された車両の走行状態に基づいて、車両の走行制御に係る道路属性情報を検出し、GPSセンサ12は、当該道路属性情報を検出した地点の位置情報を検出し、方位センサ13は、当該道路属性情報を検出した車両の進行方向を検出し、これら道路属性情報と位置情報と進行方向は走行制御情報処理装置10に出力され、当該走行制御情報処理装置10は、道路属性情報及び位置情報を車両の進行方向に関連付ける処理を実行する。
本例でいう車両の走行制御に係る道路属性情報とは、車両の走行制御に利用できる道路の形状(道路勾配や道路曲率)のほか、車両の走行制御に利用できる道路の設置環境に依る走行速度や走行時間などを含むものであり、車両の走行制御に利用できる情報の全てを含む趣旨である。また車両の走行制御とは、自動変速機の変速制御、原動機の出力制御、バッテリの充放電制御、目的地までの経路選択など、予め取得された道路属性情報によって近い将来の走行状態を先読みすることで、エコ又は円滑な走行を実現する制御をいう。
次に、本例の車両走行制御情報収集装置1によって実行される車両走行情報の収集処理のうち、代表的な道路勾配情報と道路曲率情報と平均車速情報それぞれの収集処理について具体的に説明する。
《道路勾配情報収集処理》
図2A〜図2Dは、道路勾配情報の収集処理手順を示すフローチャートである。以下、各フローチャートに記述されたロジックは、車両走行制御情報収集装置1のROMに制御プログラムとして記録され、所定時間周期で読み出されてスタートからエンドまで1回の演算が実行されるものである。
道路勾配情報は、自動変速機の変速制御や走行駆動モータの充放電制御などの各種走行制御に利用することができる。たとえば、現在走行している先に上り勾配(上り坂)があることが事前にわかっていれば、その手前でのアップシフトを禁止する変速制御を実行することで、頻繁な変速を抑制することができる。またたとえば、現在走行している先に下り勾配(下り坂)があることが事前にわかっていれば、その区間で走行駆動モータによる電力回生ができるので、その下り勾配までの間にバッテリ電力を充分に消費できる。すなわちハイブリッド車両であれば走行駆動モータによる走行(いわゆるEVモード)が継続でき、ガソリン燃料の省エネを図ることができる。ただし、道路勾配情報は、2つの地点X1,X2と、その区間の勾配αがわかっても、これを利用する車両の走行方向によって上り勾配になる場合と下り勾配になる場合とがあり、単に区間X1,X2と勾配αの情報だけでは走行制御に利用できない。このため、本例の車両走行制御情報収集装置1では、区間X1,X2と勾配αに加えて走行方向の情報を収集し、これらを関連付けて出力したり記憶したりする。
図2Aは、道路勾配情報を収集するためのメインルーチンであり、まずステップS201では勾配を演算する。図2Bは、この勾配の演算処理の詳細を示すサブルーチンであり、本例では、原動機(内燃機関や走行駆動モータ)の出力と実際の車両の加速度をそれぞれ検出し、その差分の負荷を勾配とみなす方法を用いるものとする。ステップS221〜S238は、車両の走行状態を検出する各種センサが正常に作動しているか否かを判定し、全てのセンサが正常に作動している場合にのみ勾配の計測を行い、何れかのセンサに異常がある場合は勾配の計測を中止する。
すなわち、ステップS221では、GPSセンサ12による自車両位置の認識が正常に行われているかを判定する。GPSセンサ12による自車両位置認識が正常である場合はステップS222へ進み、異常である場合はステップS240へ進む。次のステップS222では、方位センサ13による自車両の進行方位の認識が正常に行われているかを判定する。方位センサ13による自車両の進行方位認識が正常である場合はステップS223へ進み、異常である場合はステップS240へ進む。これらGPSセンサ12や方位センサ13が異常である場合は、現在位置と進行方向を検出できず、こうした状況で走行制御情報を収集しても不却って正確な情報を収集する結果となるため、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。なお、勾配非計測フラグは、勾配の計測を実行しない旨の0又は1で定義されるフラグであって、本例では勾配の計測を行わないフラグを1とする。
次のステップS223では、車速センサ111が正常に作動しているかを判定し、正常である場合はステップS224へ進み、異常である場合はステップS240へ進む。次のステップS224では、エアフローメータなどの原動機出力推定センサ112が正常に作動しているかを判定し、正常である場合はステップS225へ進み、異常である場合はステップS240へ進む。これら車速センサ111や原動機出力推定センサ112が異常であると、勾配演算の元となる車両の加速度と原動機の出力が求められないので、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS225では、CU間通信センサ113によるコントロールユニット間の通信が正常であるかを判定し、正常である場合はステップS226へ進み、異常である場合はステップS240へ進む。コントロールユニット間通信が正常でないと、走行制御情報処理装置10と、エンジンコントローラおよび駆動系コントローラを含む車両制御装置11やナビゲーション装置15との協調を行うことができず、上記ステップS221〜S224の処理が実行不可能であるため、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS226では、走行レンジセンサ114による走行モードが走行レンジかを判定し、走行レンジである場合はステップS227へ進み、走行レンジ以外の駐車レンジ、後退レンジ、又は中立レンジである場合はステップS240へ進む。本例の走行制御情報は車両が前進走行する場合の情報を対象とするため、車両が前進方向へ走行していないときの情報収集は無意味であるから、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS227では、潤滑油温度センサ115による原動機及び駆動系の潤滑油温度が所定範囲内であることを判定し、所定温度範囲内である場合はステップS228へ進み、当該範囲内にない場合はステップS240へ進む。原動機や駆動系の潤滑油温度が所定範囲外にある場合は、勾配を演算する際の摩擦力その他の負荷の推定において、想定している誤差要因が許容誤差範囲を外れることがあり、演算された勾配の精度が低下するため、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
これと同様の趣旨で、ステップS228では、冷却水温度センサ116による原動機及び駆動系の冷却水温度が所定範囲内であることを判定し、所定温度範囲内である場合はステップS229へ進み、当該範囲内にない場合はステップS240へ進む。またステップS229では車両制御装置11からの出力信号によるイグニッションスイッチONからの経過時間が所定時間を経過しているかを判定し、所定時間を経過している場合はステップS230へ進み、経過していない場合はステップS240へ進む。車両が標準的な運用状態にあり、その結果、勾配を演算する際の摩擦力その他の負荷の推定において、想定している誤差要因が許容誤差範囲にあることを確認したときのみ走行制御情報を収集し、そうでない場合は演算された勾配の精度が低下するため、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS230では、車両制御装置11からの出力信号により原動機が停止中又は始動中でないことを判定し、停止中及び始動中以外である場合はステップS231へ進み、停止中又は始動中である場合はステップS240へ進む。原動機が停止していると原動機の出力推定は不可能であり、また原動機が始動中であっても原動機出力の推定が困難であるから、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS231では、ブレーキセンサ117によりブレーキが作動していないことを判定し、ブレーキが作動していない場合はステップS232へ進み、ブレーキが作動している場合はステップS240へ進む。ブレーキが作動すると、勾配を演算する際の原動機の出力と実際の車両の加速度の差分が、求めようとする勾配によるものなのか、それともブレーキによるものかを判断することができない。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS232では、トラクションコントローラ118によるトラクション制御が作動していないことを判定し、作動していない場合はステップS233へ進み、作動している場合はステップS240へ進む。また次のステップS233では、変速機コントローラ119による変速中トルク制御の要求がないことを判定し、制御要求がない場合はステップS234へ進み、制御要求がある場合はステップS240へ進む。これらトラクション制御や変速中トルク制御が作動していると、原動機の出力を調整するため、原動機の出力推定誤差が大きくなる。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS234では、車速センサ111による車速信号が計測判定閾値以上であることを判定し、閾値以上である場合はステップS235へ進み、閾値未満である場合はステップS240へ進む。車速センサ111は、停車中においては信号が出力されず、その車速センサ固有の車速になるまで加速度を推定するための必要精度を満たすことができない。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS235では、車速センサ111により演算される車両加速度が計測判定閾値以下であることを判定し、閾値以下である場合はステップS236へ進み、閾値を超える場合はステップS240へ進む。車両の加速度が大きい場合は、原動機が過渡的な動作をしているので、原動機の出力推定誤差が大きくなる。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS236では、車両制御装置11からの出力信号によりトルクコンバータのロックアップ機構が作動していることを判定し、作動している場合はステップS237へ進み、作動していない場合はステップS240へ進む。トルクコンバータのロックアップ機構が非作動であると、伝達トルクの推定誤差が大きくなるため、原動機による駆動力の推定誤差が大きくなるおそれがある。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS237では、気象情報センタ14からの情報により強風情報がないことを判定し、強風情報がない場合はステップS238へ進み、強風情報がある場合はステップS240へ進む。強風のなかを走行すると、その車速での走行負荷が標準状態に対して変動するため、勾配の演算精度が低下する。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
次のステップS238では、気象情報センタ14からの情報により積雪又は路面凍結情報がないことを判定し、積雪又は路面凍結情報がない場合はステップS239へ進み、積雪又は路面凍結情報がある場合はステップS240へ進む。積雪又は路面凍結のなかを走行すると車輪の空転が発生することがあるため、駆動軸の回転から実際の車両の加速度を推定する場合の精度が低下する。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS240へ進み、勾配非計測フラグをセットする。
以上のステップS221〜S238の条件をすべて満たしたときのみ、ステップS239にて、勾配演算式から勾配を演算する。なお、勾配の演算は、勾配=((原動機出力による駆動力−その車速での走行負荷)/標準車重−車速信号による加速度)/重力加速度の演算式に従い求めることができる。なお、以上のステップS221〜S238の条件のいずれかが満足されなかった場合には、ステップS240にて勾配非計測フラグを1にセットする。
図2Aに戻り、ステップS202では、ステップS201で求められた勾配を、それまでのルーチン(S201〜S211)で求められた勾配に積算して標高差を演算する。なお、勾配には上り勾配と下り勾配の正負があるので、このときの積算は勾配の正負を含めた積算とする。すなわち、それまでの積算により上り勾配となっていても、一時的に下り勾配となって正負が逆になれば減算となる。
次のステップS203では、GPSセンサ12にて検出されたその地点X1が勾配情報を記憶すべき記憶点かを判定する。なお、ここでいう記憶点は情報の出力点であってもよい。図2Cは、このステップS203の勾配記録点の判定演算処理の詳細を示すサブルーチンである。この勾配記録点の判定演算処理は、勾配の演算をそのまま継続するか、あるいはそれまでの演算で求められた勾配を記録するかを判定するものである。
図2CのステップS251では、まず勾配の判定を実行する。図2Dは、図2CのステップS251の勾配の判定手順の詳細を示すサブルーチンであり、ここでは上り勾配は正の値、下り勾配は負の値とする。ステップS271では、図2BのステップS239により求められた勾配の演算値αを入力し、次のステップS272ではこの勾配の演算値αを、予め設定された下り判定閾値α1(負の所定値)と比較し、下り判定閾値α1を超える場合はステップS273へ進み、下り判定閾値α1以下である場合はステップS276へ進む。次のステップ273では、勾配の演算値αを、予め設定された上り判定閾値α2(正の所定値)と比較し、上り判定閾値α2以上である場合はステップS274へ進み、上り判定閾値α2未満である場合はステップS275へ進む。
ステップS272にて勾配の演算値αが下り判定閾値α1以下であると判定された場合には(α≦α1)、ステップS276にて下り勾配であると判定し、ステップS273にて勾配の演算値αが上り判定閾値α2以上であると判定された場合には(α≧α2)、ステップS274にて上り勾配であると判定する。また、ステップS273にて勾配の演算値αが下り判定閾値α1より大きく、上り判定閾値α2未満であると判定された場合には(α1<α<α2)、ステップS275にて、上り勾配及び下り勾配のいずれでもない、すなわち平坦路であると判定する。
図2CのステップS252へ戻り、前回のルーチンで判定された勾配判定と、今回のルーチンで判定された勾配判定が等しいか(変化がないか)を判定し、判定された勾配が同じ勾配(上り勾配か下り勾配か平坦路か)である場合は、ステップS253へ進み、異なる勾配である場合はステップS258へ進む。収集する走行制御情報の元となる情報に、上り勾配、下り勾配又は平坦路が混在する場合に、その区間の平均値等を用いると高精度の走行制御が実現できないため、勾配の種類が変化した時点でそれまでに求められた勾配の演算値を記録するべくステップS258→S260へ進むが、勾配の種類が同じであればさらに勾配の計測を継続するべくステップS253へ進む。
次のステップS253では、ナビゲーション装置15の地図データベースから現地点が道路の分岐点でないことを判定し、分岐点でない場合はステップS254へ進み、分岐点である場合はステップS258へ進む。図8は、複数の道路が交錯する状況の一例を示す図であり、道路の分岐点の近傍では、一方の道路Xと他方の道路Yとを誤認識する可能性がある。たとえば図8に示すように、GPSセンサ12により認識した地点が2つの道路の中間地点Pである場合に、自車両が道路Xを走行しているのか道路Yを走行しているのかを識別できずに誤認識するおそれがある。この誤認識を防止するためには同じ道路を走行した場合の勾配情報であることを担保する必要がある。このため、現地点が道路の分岐点である場合はそれまでに求められた勾配の演算値を記録すべくステップS258→S260へ進むが、道路の分岐点でない場合はさらに勾配の計測を継続すべくステップS253へ進む。
次のステップS254では、前回のルーチンで判定された道路種別と、今回のルーチンで判定された道路種別が等しいか(変化がないか)を判定し、判定された道路種別が同じ道路(高速道路か一般国道か県道以下か)である場合は、ステップS255へ進み、異なる道路である場合はステップS258へ進む。高速道路と一般国道や県道は、立体的に重なって設けられていることがあり、こうした場合には一方の道路と他方の道路とを誤認識する可能性があり、この誤認識を防止するためには同じ道路を走行した場合の勾配情報であることを担保する必要がある。このため、道路種別が変化した時点でそれまでに求められた勾配の演算値を記録すべくステップS258→S260へ進むが、道路種別が同じであればさらに勾配の計測を継続すべくステップS253へ進む。
次のステップS255では、車両制御装置(車輪速センサ)からの出力信号により走行距離を演算し、次のステップS256では、当該ルーチンの走行距離が、予め設定されたサンプリング区間距離に達していないことを判定し、サンプリング区間距離に達していない場合はステップS275へ進み、サンプリング区間距離に達した場合はステップS258へ進む。なお、ステップS255〜S256にて走行距離とサンプリング区間距離とを比較し、勾配の計測を継続すべきかどうか判定するのは、例えば、勾配の種類も道路種別も変化していない状況が長距離区間続いたとき、データに変化がないのか、それとも計測不能状態にあったのかを識別するためである。次のステップ257では、勾配記録点判定フラグをリセット(→0)する。なお、勾配記録点判定フラグは、図2AのステップS204において、フラグ=1の場合にそれまでの勾配を記録し(ステップS204においてYes)、フラグ=0の場合には記録しないものとする(ステップS204においてNo)。
ステップS252〜S254,S256の判定のいずれかがNoである場合は、ステップ258へ進むが、このステップS258では,GPSセンサ12による自車位置認識が継続していることを判定し、継続している場合はステップS260へ進み、1つの計測区間が終了したとみなして、勾配記録点判定フラグをセット(→1)する。一方、ステップS258にて自車位置認識が継続していないと判定された場合には、正確な走行制御情報が得られないのでステップS259へ進んで勾配非計測フラグをセットする(→1)。
図2AのステップS204へ戻り、勾配記録点判定フラグが1であるかを判定し、1である(現地点が記録点である)場合はステップS205へ進み、収集した情報の記録処理へ進む。一方、勾配記録点判定フラグが0である(現地点は記録点でない)場合はステップS210へ進み、GPSセンサ12による自車位置認識の継続を確認し、ステップS211にて原動機の使用状況を確認したのち、次のルーチンの処理に移行する。
勾配記録点判定フラグが1である場合に、次のステップS205では勾配非計測フラグが0であることを判定し、0である場合はステップS206へ進み、1である場合はステップS206の処理を実行しないでステップS207へ進む。ステップS206では、標高差、測定位置、進行方向方位、車両形式、原動機形式、原動機の使用状況、勾配測定方法、自車位置認識精度、計測回数、道路種別数、前回の記録点位置、区間距離を記憶する。なお、ステップS202において勾配の演算値から2つの記録地点間の標高差を求め、S206にて当該標高差を記憶したが、ステップS202を省略し、ステップS206にて勾配の演算値を記憶してもよい。
次のステップS207では、今回のルーチンの計測区間が終了したので次のルーチンの計測区間に備えて、勾配非計測フラグをクリアする(→0)。続けて、ステップS208では、原動機の使用状況、前回の履歴である自車位置認識、道路種別履歴、勾配判定履歴、走行距離をリセットする。また続けて、ステップS209では、同一区間の計測回数をカウントアップする。以上のステップS201〜S209の処理を繰り返すことで、その車両が走行した際の道路勾配と進行方向と検出位置とを関連付けた走行制御情報が得られることになる。またこれに加えて、車両形式、原動機形式、原動機の使用状況、勾配測定方法、自車位置認識精度、計測回数、道路種別数、前回の記録点位置、区間距離などの情報も関連付けられる。
次に、上述した図2A〜図2Dに示す走行制御情報収集処理を複数の車両にて実行し、こうして得られた道路の勾配又は当該勾配を積算して得られる標高差を、計測位置情報に合わせて統計処理する一例と、その地点の勾配を求めるための平均処理の一例について、図3A及び図3Bを参照して説明する。図3A及び図3Bに示す処理は、上述した図2A〜図2Dのロジックとは異なり、例えば統計処理操作開始命令といった、ある特定の操作によって開始され、任意のタイミングで十分な時間をかけて演算されるものである。
図3AのステップS301では、その統計処理操作にて勾配情報を求めようとしている地点の、たとえば半径R以内の周辺位置に対して、同一道路上の勾配情報を抽出する。目的とする地点の位置情報から半径R=50mであるかどうかを定め、前回の記憶点情報と、目的とする車両の進行方向から、同一道路上の勾配情報かどうかを判断することができる。どのくらいの範囲Rで勾配情報を抽出するかについては、例えばGPSセンサ12の一般的な精度である半径R=50mに相当する範囲を検索するものとする。これにより、同一道路を同じ進行方向に向かうものとして記録された複数の勾配情報が抽出される。
次のステップS302では、ステップS301で抽出された複数の勾配情報について、さらに車両重量を含む車両形式による絞込みを行う。車両形式が同一、又は少なくとも標準の車両重量が同等である車両から得られた勾配情報を抽出して用いた方が走行制御の精度が高くなるからである。
ステップS303は、ステップS317の処理と併せて、ステップS302にて抽出された複数の勾配情報の全てについて、ステップS304〜S316を順次実行するためのステップである。
次のステップS304では、勾配を計測した車両の原動機の種類によって、勾配情報に対する信頼度を示す重み係数を設定する。電気自動車やハイブリッド車のようにモータで走行しているときに計測したものである場合は、ステップS305へ進んでモータの重み係数を設定し、内燃機関で走行しているときに計測したものである場合は、ステップS306へ進んでエンジンの重み係数を設定する。一般に、内燃機関走行に比べてモータ走行の方がトルクの実現精度が高いので、道路の勾配情報及び標高差も信頼度が高いと言える。このため、モータの重み係数を内燃機関の重み係数より大きくすることが望ましい。
次のステップS307では、勾配の計測方式が車両の負荷から推定したものか、あるいは加速度センサ(いわゆるGセンサ)による計測かを判定し、加速度センサにより計測した場合はステップS308へ進んでGセンサの重み係数を設定し、車両の負荷から推定した場合はステップS309へ進んで負荷推定の重み係数を設定する。一般に、車両の負荷から推定した場合に比べて加速度センサで計測した場合の方が勾配の精度は高く、信頼度が高いと言える。このため、加速度センサの重み係数を負荷推定の重み係数より大きく設定することが望ましい。
次のステップS310では、勾配を測定したときの位置の計測精度を評価して、高精度な位置計測ができている場合はステップS311へ進んで高精度測定位置の重み係数を設定し、高精度な位置計測ができていない場合はステップS312へ進んで低精度測定位置の重み係数を設定する。一般に、GPSセンサにおいては、受信している衛星の数などにより、位置の計測精度が異なる。このため、たとえば受信した衛星数がN1以上である場合は高精度の測定位置とし、N1未満である場合は低精度の測定位置とすることができ、このとき高精度測定位置の重み係数を低精度測定位置の重み係数より大きく設定することが望ましい。
次のステップS313では、その目的とする地点での勾配の計測回数を評価し、N回以上の多数の計測を行った地点である場合にはステップS314へ進んで高頻度測定の重み係数を設定し、N回未満の少数の計測しか行っていない地点である場合はステップS315へ進んで低頻度測定の重み係数を設定する。測定回数が多いほど勾配の精度が高いので、高頻度の重み係数を低頻度の重み係数より大きく設定することが望ましい。
次のステップS316では、上述したステップS304〜S315により勾配の精度に影響するパラメータに対して重み係数が設定されたものについて、幾何平均処理を行う。図7は、車両の重量による勾配のばらつき(縦軸)とその頻度(横軸)の関係を示す図である。本例のように(図2BのステップS239)、車両の加速度と原動機の負荷とを比較することで勾配を求める方式の場合には、バラつきの要因となる代表的なパラメータが車両重量となる。同じ勾配でも車両重量が重くなると、原動機の負荷に対して車両の加速度が小さくなるので、見かけ勾配が大きいように推定してしまう。したがって、演算に用いる標準重量に対して、実際の車両重量の分布は重い側に偏っていることが想定される。また、演算に用いる標準重量に対して車両重量が軽い側、すなわち勾配の小さい側にバラつく場合においては、車両の重量が乾燥重量より小さくなることは想定できないので、ある勾配に対してその推定値のばらつきは、大きい側に偏った分布となる。一般に、複数のデータを統計処理する場合には、算術平均処理をすることが多いが、このような偏った分布になる場合には、必ずしも算術平均値が母集団を代表しているとは限らず、例えば、最頻値や幾何平均値を用いた方が母集団を代表する、すなわち真値に近い値となることが考えられる。また、必ず最小値の下限が存在することから、最小値を取って代表値とする方法も考えられる。こうしたことから、本例では勾配の演算値に対して重み付け処理を行ったのちこれらの幾何平均値を求めることとし、これを車両の走行制御に利用する。
図3Bは、上述した図2A〜図2Dに示す走行制御情報収集処理を複数の車両にて実行し、こうして得られた道路の勾配又は当該勾配を積算して得られる標高差を、順次追加および更新する際の平均処理を示すものであり、図3Aと同様、日々集まるデータに対して、更新処理をするために、ある特定の操作によって呼び出され、任意のタイミングで十分な時間をかけて演算されるものである。
ステップS321では、そのときのデータ群から今回追加する勾配情報を抽出し、ステップS322〜S326の間で、以下の処理S323〜S325を全ての勾配情報が通るようにループを回す。ステップS323では、前回までの勾配情報から得られたそれまでの平均値とそれまでの標準偏差に対して、今回の勾配の絶対値が平均値±3×標準偏差の範囲に入っているかどうかを判定する。この範囲に入っている場合にはステップS324へ進み、この勾配の値を採用して前回のデータに加えた平均処理を行う。この範囲に入っていない場合にはステップS325へ進み、誤差データのカウントアップを行って、この勾配の値を不採用とする。以上のステップS322〜S326を繰り返して、前回までの勾配情報に対して、追加データを加えた平均値を求める。
次のステップS327では、誤差データのカウントが初期化閾値を超えたかを判定し、初期化閾値を超えた場合はステップS328へ進み、ステップS327〜S331の間で、それ以下の処理S329〜S330を全ての勾配情報が通るようにループを回す。誤差データのカウントが初期化閾値以下である場合はステップS328〜S332の処理を実行しないで当該ルーチンを終了する。
ステップS329では、前回までの勾配情報から得られたそれまでの平均値とそれまでの標準偏差に対して、今回の勾配の絶対値が平均値±3×標準偏差の範囲に入っていないかどうかを判定する。この範囲に入っていない場合にはステップS330へ進み、前回のデータを除いた平均値処理をし、新たな平均値を求める。ステップS332では、誤差データのカウントを初期化し、次回以降の誤差判定に備える。以上の図3Bに示す処理は、複数の車両により順次追加される勾配情報が、それまでの値に対して誤差が大きい場合は、ステップS323及びS352によって平均演算には不採用とする一方で、誤差が大きい勾配情報が初期化閾値を超えるほど多い場合は、それまでの平均値を破棄して新たな平均値を求め、これを勾配情報とするものである。
次に、上述した図3A及び図3Bに示す統計処理及び平均処理により蓄積された勾配情報を車両の走行制御に利用する一例を説明する。図4は、車両走行制御情報収集装置1により収集された車両走行制御情報を利用した走行制御の一例を示すフローチャートである。この処理は、所定時間周期で読み出されてスタートからエンドまで1回の演算が実行されるものである。
ステップS401では、自車両の位置情報と進行方向に基づいて、進行方向の前方直近の記録点の位置情報を検索して取得する。次のステップS402では、取得された記録点の位置情報が、自車両の現在位置(現在地点)と一致しているかを判定し、現在位置と記録点の位置が一致している場合はステップS403へ進み、一致していない場合は当該処理を終了し、それまでの走行制御情報を維持する。
ステップS403では、自車両の進行方位と自車両の位置情報と道路種別から、現在走行中の道路の進行方向にある走行制御情報検索する。ここでいう走行制御情報とは、上述した勾配情報のほか、以下に示す道路曲率情報や平均車速情報などの走行制御に利用できる道路属性情報が含まれる。そして、ステップS404では、その検索結果を用いて、前方所定距離間の走行制御情報を更新して、その走行制御情報により車両の走行制御を実行する。
《道路曲率情報収集処理》
図5A〜図5Dは、道路曲率情報の収集処理手順を示すフローチャートである。以下、各フローチャートに記述されたロジックは、車両走行制御情報収集装置1のROMに制御プログラムとして記録され、所定時間周期で読み出されてスタートからエンドまで1回の演算が実行されるものである。
道路曲率情報も、上述した道路勾配情報と同様に、自動変速機の変速制御や走行駆動モータの充放電制御などの各種走行制御に利用することができる。たとえば、現在走行している先の道路曲率が事前にわかっていれば、その手前でダウンシフトの変速制御を実行することで、スムーズな運転を実現することができる。ただし、道路曲率情報は、2つの地点X1,X2と、その区間の曲率βがわかっても、これを利用する車両の走行方向によって右廻りになる場合と左廻りになる場合とがあり、単に区間X1,X2と曲率βの情報だけでは走行制御に適切に利用できない。このため、本例の車両走行制御情報収集装置1では、区間X1,X2と曲率βに加えて走行方向の情報を収集し、これらを関連付けて出力したり記憶したりする。なお、道路曲率は、車両制御装置11の各種データから推定することは不可能ではないものの誤差が大きいので、適切な間隔で道路上の位置情報とその接続情報を設定し、幾何学的に曲率を求める方法を採用する。すなわち、本例では、走行中の道路において曲線路を検出し、その曲率に合わせて適切な間隔で道路上の位置情報とその接続情報を収集するものとする。
図5Aは、道路曲率情報を収集するためのメインルーチンであり、まずステップS501では道路曲率を演算する。図5Bは、この道路曲率の演算処理の詳細を示すサブルーチンであり、ステップS511〜S510は、車両の走行状態を検出する各種センサが正常に作動しているか否かを判定し、全てのセンサが正常に作動している場合にのみ道路曲率の計測を行い、何れかのセンサに異常がある場合は道路曲率の計測を中止する。
すなわち、ステップS511では、GPSセンサ12による自車両位置の認識が正常に行われているかを判定する。GPSセンサ12による自車両位置認識が正常である場合はステップS512へ進み、異常である場合はステップS522へ進む。次のステップS512では、方位センサ13による自車両の進行方位の認識が正常に行われているかを判定する。方位センサ13による自車両の進行方位認識が正常である場合はステップS513へ進み、異常である場合はステップS522へ進む。これらGPSセンサ12や方位センサ13が異常である場合は、現在位置と進行方向を検出できず、こうした状況で走行制御情報を収集しても不却って正確な情報を収集する結果となるため、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。なお、曲率非計測フラグは、曲率の計測を実行しない旨の0又は1で定義されるフラグであって、本例では曲率の計測を行わないフラグを1とする。
次のステップS513では、ステアリング操作量センサ120が正常に作動しているかを判定し、正常である場合はステップS514へ進み、異常である場合はステップS522へ進む。ステアリング操作量センサ120に異常があると、曲線路の判定ができないからである。次のステップS514では、CU間通信センサ113によるコントロールユニット間の通信が正常であるかを判定し、正常である場合はステップS515へ進み、異常である場合はステップS522へ進む。コントロールユニット間通信が正常でないと、走行制御情報処理装置10と、エンジンコントローラおよび駆動系コントローラを含む車両制御装置11やナビゲーション装置15との協調を行うことができず、上記ステップS511〜S514の処理が実行不可能であるため、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
次のステップS515では、走行レンジセンサ114による走行モードが走行レンジかを判定し、走行レンジである場合はステップS516へ進み、走行レンジ以外の駐車レンジ、後退レンジ、又は中立レンジである場合はステップS522へ進む。本例の走行制御情報は車両が前進走行する場合の情報を対象とするため、車両が前進方向へ走行していないときの情報収集は無意味であるから、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
次のステップS516では、ブレーキセンサ117によりブレーキが作動していないことを判定し、ブレーキが作動していない場合はステップS517へ進み、ブレーキが作動している場合はステップS522へ進む。ブレーキが作動すると、車両の姿勢が道路に沿っていることの保証がないため、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
次のステップS517では、トラクションコントローラ118によるトラクション制御、横滑り防止制御装置(VDC)121による横滑り防止制御、アンチロックブレーキシステム(ABS)122によるアンチロックブレーキ制御が作動していないことを判定し、何れもが作動していない場合はステップS518へ進み、何れかが作動している場合はステップS522へ進む。これらトラクション制御、横滑り防止制御又はアンチロックブレーキ制御が作動していると、車両の姿勢が道路に沿っていることの保証がないため、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
次のステップS518では、車速センサ111による車速信号が計測判定閾値以上であることを判定し、閾値以上である場合はステップS519へ進み、閾値未満である場合はステップS522へ進む。低速でのステアリング操作は、道路曲率と無関係であることが少なくない。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
次のステップS519では、車速センサ111により演算される車両加速度が計測判定閾値以下であることを判定し、閾値以下である場合はステップS520へ進み、閾値を超える場合はステップS522へ進む。車両の加速度が大きい場合は、車両の姿勢が道路に沿っていることの保証がないため、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
次のステップS520では、気象情報センタ14からの情報により積雪又は路面凍結情報がないことを判定し、積雪又は路面凍結情報がない場合はステップS521へ進み、積雪又は路面凍結情報がある場合はステップS522へ進む。積雪又は路面凍結のなかを走行すると車輪の空転が発生することがあるため、駆動軸の回転から実際の車両の加速度を推定する場合の精度が低下する。したがって、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS522へ進み、曲率非計測フラグをセットする。
以上のステップS511〜S520の条件をすべて満たしたときのみ、ステップS521にて、道路曲率演算式から道路曲率を演算する。すなわち、従来公知のステアリング操作量と走行距離を用いた幾何学演算により道路曲率を求めることができる。なお、以上のステップS511〜S520の条件のいずれかが満足されなかった場合には、ステップS522にて勾配非計測フラグを1にセットする。
図5Aに戻り、ステップS502では、GPSセンサ12にて検出されたその地点X1が道路曲率情報を記憶すべき記憶点かを判定する。なお、ここでいう記憶点は情報の出力点であってもよい。図5Cは、このステップS502の曲率記録点の判定演算処理の詳細を示すサブルーチンである。この曲率記録点の判定演算処理は、曲率の演算をそのまま継続するか、あるいはそれまでの演算で求められた曲率を記録するかを判定するものである。
図5CのステップS531では、まず曲線路の判定を実行する。図5Dは、図5CのステップS531の曲線路の判定手順の詳細を示すサブルーチンであり、ここでは右廻りの曲線路と左回りの曲線路とを、ステアリング操作方向にたとえば正負を付すことにより区別する。ステップS551では、図5BのステップS521により求められた道路曲率の演算値rを入力し、次のステップS522ではこの道路曲率の演算値rを、予め設定された左回転判定閾値r1(正の所定値)と比較し、左回転判定閾値r1以上の場合はステップS556へ進み、左回転判定閾値r1未満である場合はステップS553へ進む。次のステップ553では、道路曲率の演算値rを、予め設定された右回転判定閾値r2(負の所定値)と比較し、右回転判定閾値r2以下の場合はステップS554へ進み、右回転判定閾値r2を超える場合はステップS555へ進む。
ステップS552にて道路曲率の演算値rが左回転判定閾値r1以上であると判定された場合には(r≧r1)、ステップS556にて左回転の曲線路であると判定し、ステップS553にて道路曲率の演算値rが右回転判定閾値r2以下であると判定された場合には(r≦r2)、ステップS554にて右回転の曲線路であると判定する。また、ステップS553にて道路曲率の演算値rが左回転判定閾値r1未満で、右回転判定閾値r2より大きいと判定された場合には(r2<r<r1)、ステップS555にて、左回転及び右回転の曲線路のいずれでもない、すなわち直線路であると判定する。
図5CのステップS532へ戻り、前回のルーチンで判定された曲率判定と、今回のルーチンで判定された曲率判定が等しいか(変化がないか)を判定し、判定された曲率が同じ曲率(左回転か右回転か直線路か)である場合は、ステップS533へ進み、異なる曲率である場合はステップS539へ進む。収集する走行制御情報の元となる情報に、左回転、右回転又は直線路が混在する場合に、その区間の平均値等を用いると高精度の走行制御が実現できないため、道路曲率の種類が変化した時点でそれまでに求められた曲率の演算値rを記録するべくステップS539→S541へ進むが、道路曲率の種類が同じであればさらに曲率の計測を継続するべくステップS533へ進む。
次のステップS533では、前回のルーチンにおける進行方位と今回のルーチンにおける進行方位の差分の絶対値が方位変化閾値未満であることを判定し、方位変化閾値未満である場合はステップS534へ進み、方位変化閾値以上である場合はステップS539へ進む。進行方位の差分の絶対値が方位変化閾値を超えるほど大きくなると適切な間隔で記録点を設定できないからである。
次のステップS534では、ナビゲーション装置15の地図データベースから現地点が道路の分岐点でないことを判定し、分岐点でない場合はステップS535へ進み、分岐点である場合はステップS539へ進む。道路の分岐点の近傍では、一方の道路と他方の道路とを誤認識する可能性があり、この誤認識を防止するためには同じ道路を走行した場合の曲率情報であることを担保する必要がある。このため、現地点が道路の分岐点である場合はそれまでに求められた曲率の演算値を記録すべくステップS539→S541へ進むが、道路の分岐点でない場合はさらに曲率の計測を継続すべくステップS535へ進む。
次のステップ535では、前回のルーチンで判定された道路種別と、今回のルーチンで判定された道路種別が等しいか(変化がないか)を判定し、判定された道路種別が同じ道路(高速道路か一般国道か県道以下か)である場合は、ステップS536へ進み、異なる道路である場合はステップS539へ進む。高速道路と一般国道や県道は、立体的に重なって設けられていることがあり、こうした場合には一方の道路と他方の道路とを誤認識する可能性があり、この誤認識を防止するためには同じ道路を走行した場合の曲率情報であることを担保する必要がある。このため、道路種別が変化した時点でそれまでに求められた曲率の演算値を記録すべくステップS539→S541へ進むが、道路種別が同じであればさらに曲率の計測を継続すべくステップS536へ進む。
次のステップS536では、車両制御装置(車輪速センサ)からの出力信号により走行距離を演算し、次のステップS537では、当該ルーチンの走行距離が、予め設定されたサンプリング区間距離に達していないことを判定し、サンプリング区間距離に達していない場合はステップS538へ進み、サンプリング区間距離に達した場合はステップS539へ進む。なお、ステップS535〜S536にて走行距離とサンプリング区間距離とを比較し、曲率の計測を継続すべきかどうか判定するのは、例えば、曲率の種類も道路種別も変化していない状況が長距離区間続いたとき、データに変化がないのか、それとも計測不能状態にあったのかを識別するためである。次のステップ538では、曲率記録点判定フラグをリセット(→0)する。なお、曲率記録点判定フラグは、図5AのステップS503において、フラグ=1の場合にそれまでの曲率を記録し(ステップS503においてYes)、フラグ=0の場合には記録しないものとする(ステップS503においてNo)。
ステップS532〜S535,S537の判定のいずれかがNoである場合は、ステップ539へ進むが、このステップS539では,GPSセンサ12による自車位置認識が継続していることを判定し、継続している場合はステップS541へ進み、1つの計測区間が終了したとみなして、勾配記録点判定フラグをセット(→1)する。一方、ステップS539にて自車位置認識が継続していないと判定された場合には、正確な走行制御情報が得られないのでステップS540へ進んで曲率非計測フラグをセットする(→1)。
図5AのステップS503へ戻り、曲率記録点判定フラグが1であるかを判定し、1である(現地点が記録点である)場合はステップS504へ進み、収集した曲率情報の記録処理へ進む。一方、曲率記録点判定フラグが0である(現地点は記録点でない)場合はステップS509へ進み、GPSセンサ12による自車位置認識の継続を確認したのち、次のルーチンの処理に移行する。
曲率記録点判定フラグが1である場合に、次のステップS504では曲率非計測フラグが0であることを判定し、0である場合はステップS505へ進み、1である場合はステップS505の処理を実行しないでステップS506へ進む。ステップS505では、道路曲率、測定位置、進行方向方位、自車位置認識精度、計測回数、道路種別数、前回の記録点位置、区間距離を記憶する。
次のステップS506では、今回のルーチンの計測区間が終了したので次のルーチンの計測区間に備えて、曲率非計測フラグをクリアする(→0)。続けて、ステップS507では、前回の履歴である自車位置認識、道路種別履歴、曲率判定履歴、走行距離をリセットする。また続けて、ステップS508では、同一区間の計測回数をカウントアップする。以上のステップS501〜S508の処理を繰り返すことで、その車両が走行した際の道路曲率と進行方向と検出位置とを関連付けた走行制御情報が得られることになる。またこれに加えて、自車位置認識精度、計測回数、道路種別数、前回の記録点位置、区間距離などの情報も関連付けられる。
《平均車速情報収集処理》
図6A〜図6C、平均車速情報の収集処理手順を示すフローチャートである。以下、各フローチャートに記述されたロジックは、車両走行制御情報収集装置1のROMに制御プログラムとして記録され、所定時間周期で読み出されてスタートからエンドまで1回の演算が実行されるものである。
車両が2つの地点X1,X2の区間を走行する際の平均車速である平均車速情報も、上述した道路勾配情報や道路曲率情報と同様に、自動変速機の変速制御や走行駆動モータの充放電制御などの各種走行制御に利用することができる。たとえば、現在走行している先の平均車速が速いことが事前にわかっていれば、その手前でアップシフトの変速制御を実行することで、スムーズな運転を実現することができる。ただし、平均車速情報は、2つの地点X1,X2と、その区間の平均車速vがわかっても、これを利用する車両の走行方向によって上り車線になる場合と下り車線になる場合とがあり、たとえば、車両の渋滞程度が上り車線と下り車線で相違するなど、単に区間X1,X2と平均車速vの情報だけでは走行制御に適切に利用できない。このため、本例の車両走行制御情報収集装置1では、区間X1,X2と平均車速vに加えて走行方向の情報を収集し、これらを関連付けて出力したり記憶したりする。なお、平均車速は、時系列での変化が大きいので、1つの地点での値を求めることより、ある区間X1,X2を設定して、その区間での平均を求めることが望ましい。また、上述した勾配や曲率とは異なり、中立点を挟んで大小入れ替わることのない数値であり、0点に対して必ず正の値が得られるので、数値の正負の判定は必要がない。したがって、本例では、車速を検出し、その値を適切な間隔での平均値を収集するものとする。
図6Aは、平均車速情報を収集するためのメインルーチンであり、まずステップS601では平均車速を演算する。図6Bは、この平均車速の演算処理の詳細を示すサブルーチンであり、ステップS611〜S617は、車両の走行状態を検出する各種センサが正常に作動しているか否かを判定し、全てのセンサが正常に作動している場合にのみ平均車速の計測を行い、何れかのセンサに異常がある場合は平均車速の計測を中止する。
すなわち、ステップS611では、GPSセンサ12による自車両位置の認識が正常に行われているかを判定する。GPSセンサ12による自車両位置認識が正常である場合はステップS612へ進み、異常である場合はステップS621へ進む。次のステップS612では、方位センサ13による自車両の進行方位の認識が正常に行われているかを判定する。方位センサ13による自車両の進行方位認識が正常である場合はステップS613へ進み、異常である場合はステップS621へ進む。これらGPSセンサ12や方位センサ13が異常である場合は、現在位置と進行方向を検出できず、こうした状況で走行制御情報を収集しても不却って正確な情報を収集する結果となるため、情報記録を行うことなくステップS621へ進み、車速非計測フラグをセットする。なお、車速非計測フラグは、平均車速の計測を実行しない旨の0又は1で定義されるフラグであって、本例では平均車速の計測を行わないフラグを1とする。
次のステップS613では、車速センサ111が正常に作動しているかを判定し、正常である場合はステップS614へ進み、異常である場合はステップS621へ進む。車速センサ111に異常があると、平均車速の判定ができないからである。次のステップS614では、CU間通信センサ113によるコントロールユニット間の通信が正常であるかを判定し、正常である場合はステップS615へ進み、異常である場合はステップS621へ進む。コントロールユニット間通信が正常でないと、走行制御情報処理装置10と、エンジンコントローラおよび駆動系コントローラを含む車両制御装置11やナビゲーション装置15との協調を行うことができず、上記ステップS611〜S613の処理が実行不可能であるため、情報記録を行うことなくステップS621へ進み、車速非計測フラグをセットする。
次のステップS615では、走行レンジセンサ114による走行モードが走行レンジかを判定し、走行レンジである場合はステップS616へ進み、走行レンジ以外の駐車レンジ、後退レンジ、又は中立レンジである場合はステップS621へ進む。本例の走行制御情報は車両が前進走行する場合の情報を対象とするため、車両が前進方向へ走行していないときの情報収集は無意味であるから、情報記録を行うことなくステップS621へ進み、車速非計測フラグをセットする。
次のステップS616では、車両制御装置11からの出力信号により原動機が停止中又は始動中でないことを判定し、停止中及び始動中以外である場合はステップS617へ進み、停止中又は始動中である場合はステップS621へ進む。原動機が停止していると車両も停車し、また原動機が始動中であっても原動機の出力が不安定であるから、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS621へ進み、車速非計測フラグをセットする。
次のステップS617では、トラクションコントローラ118によるトラクション制御、横滑り防止制御装置(VDC)121による横滑り防止制御、アンチロックブレーキシステム(ABS)122によるアンチロックブレーキ制御が作動していないことを判定し、何れもが作動していない場合はステップS618へ進み、何れかが作動している場合はステップS621へ進む。これらトラクション制御、横滑り防止制御又はアンチロックブレーキ制御が作動していると、車速が不安定であるため、このような状況における情報収集を避けるべく、情報記録を行うことなくステップS621へ進み、車速非計測フラグをセットする。
以上のステップS611〜S617の条件をすべて満たしたときのみ、ステップS618にて車速の計測値を積算し、次のステップ619にて積算回数をカウントし、次のステップS620にて平均車速を演算する。なお、平均車速の演算は、平均車速=車速の積算値/積算回数×サンプリング時間の演算式に従い求めることができる。なお、以上のステップS611〜S617の条件のいずれかが満足されなかった場合には、ステップS621にて車速非計測フラグを1にセットする。
図6Aに戻り、ステップS602では、GPSセンサ12にて検出されたその地点X1が勾配情報を記憶すべき記憶点かを判定する。なお、ここでいう記憶点は平均車速情報の出力点であってもよい。図5Cは、このステップS602の平均車速記録点の判定演算処理の詳細を示すサブルーチンである。この平均車速記録点の判定演算処理は、平均車速の演算をそのまま継続するか、あるいはそれまでの演算で求められた平均車速を記録するかを判定するものである。平均車速が変化する際の要因と考えられるのは、制限速度、分岐点及び道路種別であることから、これらの変化が大きい場合は平均車速を記録し、変化が小さい場合は平均車速の計測を継続するものとする。また、渋滞などにより停車状態(車速=0)が続いた場合を想定し、所定時間が経過したか、もしくは車速データの積算回数が所定回数以上になった場合にはタイムアウトと判定し、記録点を設定しながら、次回の記録ルーチンでは、時間経過以外の記録点となるまで、記録しないこととする。このようにすることにより、渋滞等で停車状態が続いた場合にも、同じ場所で、車速が0となるデータを計測し続けることを防止できる。
図6CのステップS631では、ナビゲーション装置15の出力から、前回のルーチンにおける制限速度と今回のルーチンにおける制限速度が同等であることを判定し、同等である場合はステップS632へ進み、同等でない場合はステップS640へ進む。制限速度が変化すればそれにともない車速も変化するからである。
次のステップS632では、ナビゲーション装置15の地図データベースから現地点が道路の分岐点でないことを判定し、分岐点でない場合はステップS633へ進み、分岐点である場合はステップS640へ進む。道路の分岐点の近傍では、一方の道路と他方の道路とを誤認識する可能性があり、この誤認識を防止するためには同じ道路を走行した場合の平均車速情報であることを担保する必要がある。このため、現地点が道路の分岐点である場合はそれまでに求められた平均車速の演算値を記録すべくステップS640→S643へ進むが、道路の分岐点でない場合はさらに平均車速の計測を継続すべくステップS633へ進む。
次のステップ633では、前回のルーチンで判定された道路種別と、今回のルーチンで判定された道路種別が等しいか(変化がないか)を判定し、判定された道路種別が同じ道路(高速道路か一般国道か県道以下か)である場合は、ステップS634へ進み、異なる道路である場合はステップS640へ進む。高速道路と一般国道や県道は、立体的に重なって設けられていることがあり、こうした場合には一方の道路と他方の道路とを誤認識する可能性があり、この誤認識を防止するためには同じ道路を走行した場合の平均車速情報であることを担保する必要がある。このため、道路種別が変化した時点でそれまでに求められた平均車速の演算値を記録すべくステップS640→S643へ進むが、道路種別が同じであればさらに平均車速の計測を継続すべくステップS634へ進む。
次のステップS634では、車両制御装置(車輪速センサ)からの出力信号により走行距離を演算し、次のステップS635では、当該ルーチンの走行距離が、予め設定されたサンプリング区間距離に達していないことを判定し、サンプリング区間距離に達していない場合はステップS636へ進み、サンプリング区間距離に達した場合はステップS640へ進む。なお、ステップS634〜S635にて走行距離とサンプリング区間距離とを比較し、平均車速の計測を継続すべきかどうか判定するのは、例えば、進行方向も道路種別も変化していない状況が長距離区間続いたとき、データに変化がないのか、それとも計測不能状態にあったのかを識別するためである。
次のステップS636では、車速データの積算回数が積算回数上限値より少ないことを判定し、少ない場合はステップS637へ進み、多い場合はステップS638へ進む。ステップS638にて、前回のルーチンにおいて車速計測タイムアウトフラグが1に設定されていない場合もステップS637へ進む。車速計測タイムアウトフラグとは、渋滞中などのように、予め設定された車速計測時間を超える時間を過ぎても走行距離がサンプリング区間距離に達せず、車速データの積算回数が上限値を超えた場合に車速記録点としないための制御フラグである。
すなわち、ステップS635にて走行距離がサンプリング区間距離未満であるにも拘らず、ステップS636にて積算回数が上限値を超えた場合に(ステップS636のNo)、ステップS638にて、前回のルーチンにおいてステップS639を通過していなければ、すなわち車速計測タイムアウトフラグが0であれば、ステップS639へ進み、車速計測タイムアウトフラグを1に設定したのち、ステップS641→S643に進んで車速記録点判定フラグを1に設定する。すなわち、車速記録点として記録するが、次のルーチンにおいて、ステップS636→S638に進んだ際に、前回のルーチンにて車速計測タイムアウトフラグが1に設定されているので、当該ステップS638においてYesとなり、ステップS637へ進んで、車速記録点としての記録を行わない。これにより、渋滞等で停車状態が続いた場合にも、同じ地点又は近似する地点で車速が0又は0に近似するデータを計測し続けることを防止できる。
次のステップ637では、車速記録点判定フラグをリセット(→0)する。なお、車速記録点判定フラグは、図6AのステップS603において、フラグ=1の場合にそれまでの平均車速を記録し(ステップS603においてYes)、フラグ=0の場合には記録しないものとする(ステップS603においてNo)。
ステップS631〜S633,S635の判定のいずれかがNoである場合は、ステップ640へ進むが、このステップS640では、車速計測タイムアウトフラグを0にリセットし、次のステップS641では、GPSセンサ12による自車位置認識が継続していることを判定し、継続している場合はステップS643へ進み、1つの計測区間が終了したとみなして、車速記録点判定フラグをセット(→1)する。一方、ステップS641にて自車位置認識が継続していないと判定された場合には、正確な走行制御情報が得られないのでステップS642へ進んで車速非計測フラグをセットする(→1)。
図6AのステップS603へ戻り、車速記録点判定フラグが1であるかを判定し、1である(現地点が記録点である)場合はステップS604へ進み、収集した平均車速情報の記録処理へ進む。一方、車速記録点判定フラグが0である(現地点は記録点でない)場合はステップS909へ進み、GPSセンサ12による自車位置認識の継続を確認したのち、次のルーチンの処理に移行する。
車速記録点判定フラグが1である場合に、次のステップS604では車速非計測フラグが0であることを判定し、0である場合はステップS605へ進み、1である場合はステップS605の処理を実行しないでステップS606へ進む。ステップS605では、平均車速、測定位置、進行方向方位、取得日時、自車位置認識精度、計測回数、前回の記録点位置、区間距離を記憶する。平均車速は、道路種別などの道路形状や道路形状にともなう制限速度に影響されるほか、上り車線か下り車線かといった地理的条件による渋滞状況にも影響されるので、本例では特に平均車速の取得日時をも関連付けて記憶する。
次のステップS606では、今回のルーチンの計測区間が終了したので次のルーチンの計測区間に備えて、車速非計測フラグをクリアする(→0)。続けて、ステップS607では、前回の履歴である自車位置認識、道路種別履歴、走行距離をリセットする。また続けて、ステップS608では、同一区間の計測回数をカウントアップする。以上のステップS601〜S608の処理を繰り返すことで、その車両が走行した際の平均車速と進行方向と検出位置とを関連付けた走行制御情報が得られることになる。またこれに加えて、自車位置認識精度、計測回数、道路種別数、前回の記録点位置、区間距離などの情報も関連付けられる。
以上のように、本例の車両走行制御情報収集装置1によれば、各種センサ類111〜122及び車両制御装置11により検出された車両の走行状態に基づいて、車両の走行制御に係る道路属性情報(たとえば道路勾配α,道路曲率β,平均車速v)を検出し、GPSセンサ12により道路属性情報を検出した位置情報を検出するとともに、方位センサ13により道路属性情報を検出した走行方向を検出し、走行制御情報処理装置10により道路属性情報と位置情報が車両の進行方向に関連付けられて収集、記録又は出力される。したがって、進行方向と位置情報をキーにして道路属性情報を抽出すれば、同じ二地点区間であっても、上り勾配と下り勾配との識別、上り車線と下り車線との識別、右折方向と左折方向との識別といったことが可能な道路属性情報となる。その結果、自動変速機の変速制御や電気自動車又はハイブリッド車の充放電制御といった車両の走行制御への利用が期待できる。
また本例の車両走行制御情報収集装置1によれば、仕様が異なる複数の車種によって走行状態に基づく道路属性情報を検出するが、図2AのステップS206に示すように、道路属性情報と位置情報を車両の進行方向に関連付けする際に、車両形式や原動機形式といった車種の情報も収集、記録又は出力する。したがって、同一車種を同定するとともに、同定された車種ごとに、車両の進行方向に関連付けられた道路属性情報及び位置情報を分類してもよい。こうすることで、走行制御に利用するに際し、自車両と同一車種の道路属性情報を用いることで、高精度の走行制御が実現できる。
なお、収集された複数の道路属性情報を車種別に分類することに代えて、道路属性情報を収集する際に、ある特定の車種を選別し、当該車種についてのみ道路属性情報を収集してもよい。この場合についても、走行制御に利用するに際し、自車両と同一車種の道路属性情報を用いることで、高精度の走行制御が実現できる。
また本例の車両走行制御情報収集装置1において、走行方向が同一又は類似である道路属性情報を分類してもよい。たとえば、ある特定の道路を上り方向及び下り方向に走行している車両により取得された道路属性情報及び位置情報を、進行方向が上り方向である道路属性情報及び位置情報と、進行方向が下り方向である道路属性情報及び位置情報とに分類してもよい。またはこれに代えて、道路属性情報及び位置情報を取得する際に、ある特定された進行方向(同一又は類似の方向)についてのみこれらの情報を取得してもよい。こうすることで、走行制御に利用するに際し、情報の抽出錯誤を防止したり収集情報量を最小限にしたりすることができる。なお、進行方向が類似するとは、その方向が所定の角度範囲を有することを意味する。
また本例の車両走行制御情報収集装置1において、ナビゲーション装置15の地図データベース又は専用の地図データベースに対し、収集された車両の進行方向に関連付けられた道路属性情報及び位置情報を反映してもよい。車両の走行状態に基づいて収集された道路属性情報を地図データベースに反映すれば、現地を実測して地図データを作成することに比べて、簡単かつ低コストで、しかも勾配などの三次元情報が付加された地図データが得られることになる。
また本例の車両走行制御情報収集装置1において、収集された車両の進行方向に関連付けられた道路属性情報及び位置情報を走行制御に利用するにあたり、先行車両で収集された道路属性情報を、同じ進行方向の後続車両に出力してもよい。
上記車両制御装置11は本発明に係る走行制御情報検出手段に相当し、上記GPSセンサ12は本発明に係る位置情報検出手段に相当し、上記方位センサ13は本発明に係る進行方向検出手段に相当し、上記走行制御情報処理装置10は本発明に係る情報処理手段に相当し、上記ナビゲーション装置15は本発明に係る地図情報記憶手段に相当する。