JP6459040B2 - 金属板、金属板の製造方法、および金属板を用いて蒸着マスクを製造する方法 - Google Patents

金属板、金属板の製造方法、および金属板を用いて蒸着マスクを製造する方法 Download PDF

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Description

本発明は、複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板に関する。また本発明は、金属板の製造方法に関する。また本発明は、複数の貫通孔が形成されたマスクを、金属板を用いて製造する方法に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が300ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、フルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば450ppi以上であることが求められる。
応答性の良さや消費電力の低さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔を含む蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板に対して蒸着マスクを密着させ、次に、密着させた蒸着マスクおよび基板を共に蒸着装置に投入し、有機材料などの蒸着を行う。蒸着マスクは一般に、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に貫通孔を形成することにより、製造され得る(例えば、特許文献1)。例えば、はじめに、金属板上にレジスト膜を形成し、次に、レジスト膜に露光マスクを密着させた状態でレジスト膜を露光してレジストパターンを形成し、その後、金属板のうちレジストパターンによって覆われていない領域をエッチングすることにより、貫通孔が形成される。
特開2004−39319号公報
蒸着マスクを用いて有機材料を基板に蒸着させる蒸着工程を1回実施する度に、蒸着マスクを廃棄してしまうと、蒸着工程に要するコストが嵩んでしまう。従って、蒸着マスクは、複数回の蒸着工程において繰り返し使用されることが好ましい。この場合、蒸着マスクの表面や蒸着マスクの貫通孔の壁面に蒸着材料がある程度堆積する度に、蒸着マスクを洗浄する洗浄工程を実施することになると考えられる。
ところで上述のように、蒸着工程は、基板に対して蒸着マスクを密着させた状態で実施される。従って、基板に対向する蒸着マスクの表面に錆などの異物が生じていると、異物によって基板に傷がついてしまう。しかしながら、蒸着マスクを洗浄する上述の洗浄工程は、蒸着マスクに錆などの異物が生じることを誘発する可能性の高い工程である。
表面の錆びを抑制する方法としては、例えばステンレス鋼で採用されているように、空気中の酸素と結合して表面に不動態被膜を形成することができるクロムなどの元素を合金に添加することが考えられる。しかしながら、本件発明者らが鋭意研究を行ったところ、クロムの添加によって防錆性が改善される反面、クロムの添加に起因して蒸着マスクの寸法精度や位置精度が低下し得ることを見出した。このような課題は、上述の特許文献1においては認識されていないものである。
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、高い寸法精度および位置精度を維持することができ、かつ高い防錆性を有する蒸着マスクを製造するために用いられる金属板を提供することを目的とする。また本発明は、金属板の製造方法およびマスクの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法であって、
前記蒸着マスクの前記貫通孔は、前記金属板をエッチングすることによって形成されるものであり、
前記金属板の製造方法は、
ニッケルおよびクロムを含む鉄合金からなる母材を圧延する圧延工程と、
圧延された前記母材をアニールして前記金属板を得るアニール工程と、を備え、
前記金属板に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときに、前記金属板は、34〜38質量%のニッケルと、0.1〜0.3質量%のクロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金からなり、
前記金属板の厚みは、10〜50μmの範囲内である、金属板の製造方法である。
本発明による金属板の製造方法において、前記アニール工程は、前記圧延された母材を長手方向に引っ張りながら実施されてもよい。
本発明による金属板の製造方法において、前記アニール工程は、大気環境下よりも低い分圧で存在する酸素ガスと、不活性ガスとを含む雰囲気下で実施されてもよい。
本発明は、複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板であって、
前記マスクの前記貫通孔は、前記金属板をエッチングすることによって形成されるものであり、
前記金属板に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときに、前記金属板は、34〜38質量%のニッケルと、0.1〜0.3質量%のクロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金からなり、
前記金属板の厚みは、10〜50μmの範囲内である、金属板である。
本発明は、複数の貫通孔が形成された蒸着マスクを製造する方法であって、
金属板を準備する工程と、
前記金属板上にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記金属板のうち前記レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングし、前記金属板に、前記貫通孔を画成するようになる凹部を形成するエッチング工程と、を備え、
前記金属板に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときに、前記金属板は、34〜38質量%のニッケルと、0.1〜0.3質量%のクロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金からなり、
前記金属板の厚みは、10〜50μmの範囲内である、蒸着マスクの製造方法である。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記金属板は、所定の方向に延びる長尺状の金属板であり、前記蒸着マスクは、前記長尺状の金属板が延びる方向に沿って配列された複数の有効領域を有し、前記有効領域はそれぞれ、複数の前記貫通孔を含んでいてもよい。
本発明による蒸着マスクの製造方法において、前記金属板の熱膨張係数は、好ましくは25℃において0.70〜2.00×10−6/Kの範囲内である。
本発明によれば、高い寸法精度および位置精度を維持することができ、かつ高い防錆性を備えた蒸着マスクを得ることができる。このため、基板上に付着される蒸着材料の位置精度を十分に維持しながら、錆びによって基板が傷ついてしまうことを抑制することができる。
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例を示す概略平面図である。 図2は、図1に示す蒸着マスク装置を用いて蒸着する方法を説明するための図である。 図3は、図1に示された蒸着マスクを示す部分平面図である。 図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。 図5は、図3のV−V線に沿った断面図である。 図6は、図3のVI−VI線に沿った断面図である。 図7は、図4に示す貫通孔およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。 図8(a)(b)は、熱膨張によって蒸着マスクがその長手方向に膨張する様子を示す図である。 図9(a)は、母材を圧延して、所望の厚さを有する金属板を得る工程を示す図であり、図9(b)は、圧延によって得られた金属板をアニールする工程を示す図である。 図10は、図1に示す蒸着マスクの製造方法の一例を全体的に説明するための模式図である。 図11は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、金属板上にレジスト膜を形成する工程を示す断面図である。 図12は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、レジスト膜に露光マスクを密着させる工程を示す断面図である。 図13は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図14は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図15は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図16は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図17は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図18は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図19は、蒸着マスクの製造方法の一例を説明するための図であって、法線方向に沿った断面において長尺金属板を示す図である。 図20は、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の変形例を示す図である。 図21は、第1〜第10巻き体から得られた長尺金属板の組成を分析した結果を示す図である。 図22は、第1〜第10巻き体から切り出された第1〜第10サンプルにおいて、洗浄に起因して生じる錆びを観察した結果を示す図である。 図23は、第1〜10巻き体から切り出された第1〜第10片において、熱膨張係数を測定した結果を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図19は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。以下の実施の形態およびその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクの製造方法を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクの製造方法に対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、例えば「金属板」は、「金属シート」や「金属フィルム」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
(蒸着マスク装置)
まず、製造方法対象となる蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例について、主に図1〜図6を参照して説明する。ここで、図1は、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す蒸着マスク装置の使用方法を説明するための図である。図3は、蒸着マスクを第1面の側から示す平面図であり、図4〜図6は、図3の各位置における断面図である。
図1及び図2に示された蒸着マスク装置10は、略矩形状の金属板21からなる複数の蒸着マスク20と、複数の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられたフレーム15と、を備えている。各蒸着マスク20には、互いに対向する第1面21aおよび第2面21bを有する金属板21を少なくとも第1面21aからエッチングすることにより形成された貫通孔25が、多数設けられている。この蒸着マスク装置10は、図2に示すように、蒸着マスク20が蒸着対象物である基板、例えばガラス基板92の下面に対面するようにして蒸着装置90内に支持され、基板への蒸着材料の蒸着に使用される。
蒸着装置90内では、不図示の磁石からの磁力によって、蒸着マスク20とガラス基板92とが密着するようになる。蒸着装置90内には、蒸着マスク装置10の下方に、蒸着材料(一例として、有機発光材料)98を収容するるつぼ94と、るつぼ94を加熱するヒータ96とが配置されている。るつぼ94内の蒸着材料98は、ヒータ96からの加熱により、気化または昇華してガラス基板92の表面に付着するようになる。上述したように、蒸着マスク20には多数の貫通孔25が形成されており、蒸着材料98はこの貫通孔25を介してガラス基板92に付着する。この結果、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98がガラス基板92の表面に成膜される。
上述したように、本実施の形態では、貫通孔25が各有効領域22において所定のパターンで配置されている。なお、カラー表示を行いたい場合には、貫通孔25の配列方向(前述の一方向)に沿って蒸着マスク20(蒸着マスク装置10)とガラス基板92とを少しずつ相対移動させ、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に蒸着させていってもよい。
なお、蒸着マスク装置10のフレーム15は、矩形状の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられている。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように蒸着マスクを張った状態に保持する。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定されている。
蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される。従って、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および基板92も加熱される。この際、蒸着マスク、フレーム15および基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、基板92としてガラス基板92が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の材料として、鉄に34〜38質量%のニッケルを加えた鉄合金を用いることができる。なお本明細書において、「〜」という記号によって表現される数値範囲は、「〜」という符号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34〜38質量%」という表現によって画定される数値範囲は、「34質量%以上かつ38質量%以下」という表現によって画定される数値範囲と同一である。
(蒸着マスク)
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、金属板21からなり、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20の金属板21は、規則的な配列で貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含んでいる。周囲領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、基板へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではない。例えば、有機EL表示装置用の有機発光材料の蒸着に用いられる蒸着マスク20においては、有効領域22は、有機発光材料が蒸着して画素を形成するようになる基板(ガラス基板92)上の区域、すなわち、作製された有機EL表示装置用基板の表示面をなすようになる基板上の区域に対面する、蒸着マスク20内の領域のことである。ただし、種々の目的から、周囲領域23に貫通孔や凹部が形成されていてもよい。図1に示された例において、各有効領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。
図示された例において、蒸着マスク20の複数の有効領域22は、蒸着マスク20の長手方向と平行な一方向に沿って所定の間隔を空けて一列に配列されている。図示された例では、一つの有効領域22が一つの有機EL表示装置に対応するようになっている。すなわち、図1に示された蒸着マスク装置10(蒸着マスク20)によれば、多面付蒸着が可能となっている。
図3に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。この金属板21に形成された貫通孔25の一例について、図3〜図6を主に参照して更に詳述する。
図4〜図6に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の法線方向に沿った一方の側となる第1面20aと、蒸着マスク20の法線方向に沿った他方の側となる第2面20bと、の間を延びて、蒸着マスク20を貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスクの法線方向における一方の側となる金属板21の第1面21aの側から金属板21に第1凹部30がエッチングによって形成され、金属板21の法線方向における他方の側となる第2面21bの側から金属板21に第2凹部35が形成され、この第1凹部30および第2凹部35によって貫通孔25が形成されている。
図3〜図6に示すように、蒸着マスク20の第1面20aの側から第2面20bの側へ向けて、蒸着マスク20の法線方向に沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第1凹部30の断面積は、しだいに小さくなっていく。図3に示すように、第1凹部30の壁面31は、その全領域において蒸着マスク20の法線方向に対して交差する方向に延びており、蒸着マスク20の法線方向に沿った一方の側に向けて露出している。同様に、蒸着マスク20の法線方向に沿った各位置における蒸着マスク20の板面に沿った断面での各第2凹部35の断面積は、蒸着マスク20の第2面20bの側から第1面20aの側へ向けて、しだいに小さくなっていてもよい。第2凹部35の壁面36は、その全領域において蒸着マスク20の法線方向に対して交差する方向に延びており、蒸着マスク20の法線方向に沿った他方の側に向けて露出している。
なお、図4〜図6に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。接続部41は、蒸着マスクの法線方向に対して傾斜した第1凹部30の壁面31と、蒸着マスクの法線方向に対して傾斜した第2凹部35の壁面36とが合流する張り出し部の稜線によって、画成されている。そして、接続部41は、蒸着マスク20の平面視において最も貫通孔25の面積が小さくなる貫通部42を画成する。
図4〜図6に示すように、蒸着マスクの法線方向に沿った他方の側の面、すなわち、蒸着マスク20の第2面20b上において、隣り合う二つの貫通孔25は、蒸着マスクの板面に沿って互いから離間している。すなわち、後述する製造方法のように、蒸着マスク20の第2面20bに対応するようになる金属板21の第2面21b側から当該金属板21をエッチングして第2凹部35を作製する場合、隣り合う二つの第2凹部35の間に金属板21の第2面21bが残存するようになる。
一方、図4〜図6に示すように、蒸着マスクの法線方向に沿った一方の側、すなわち、蒸着マスク20の第1面20aの側において、隣り合う二つの第1凹部30が接続されている。すなわち、後述する製造方法のように、蒸着マスク20の第1面20aに対応するようになる金属板21の第1面21a側から当該金属板21をエッチングして第1凹部30を形成する場合、隣り合う二つの第1凹部30の間に、金属板21の第1面21aが残存しないようになる。すなわち、金属板21の第1面21aは、有効領域22の全域にわたってエッチングされている。このような第1凹部30によって形成される蒸着マスク20の第1面20aによれば、図2に示すように蒸着マスク20の第1面20aが蒸着材料98に対面するようにしてこの蒸着マスク20を用いた場合に、蒸着材料98の利用効率を効果的に改善することができる。
図2に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、図4に二点鎖線で示すように、蒸着マスク20の第1面20aが蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置し、蒸着マスク20の第2面20bがガラス基板92に対面する。したがって、蒸着材料98は、次第に断面積が小さくなっていく第1凹部30を通過してガラス基板92に付着する。図4に矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94からガラス基板92に向けてガラス基板92の法線方向に沿って移動するだけでなく、ガラス基板92の法線方向に対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98の多くは、貫通孔25を通ってガラス基板92に到達するよりも前に、第1凹部30の壁面31に到達して付着する。この場合、ガラス基板92上の貫通孔25に対面する領域内には、蒸着材料98が到達しやすい領域と到達しにくい部分が生じてしまう。従って、蒸着材料の利用効率(成膜効率:ガラス基板92に付着する割合)を高めて高価な蒸着材料を節約し、且つ、高価な蒸着材料を用いた成膜を所望の領域内に安定してむらなく実施するためには、斜めに移動する蒸着材料98を可能な限りガラス基板92に到達させるように蒸着マスク20を構成することが重要になる。すなわち、蒸着マスク20のシート面に直交する図4〜図6の断面において、貫通孔25の最小断面積を持つ部分となる接続部41と、第1凹部30の壁面31の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向に対してなす最小角度θ1(図4参照)を、十分に大きくすることが有利となる。
角度θ1を大きくするための方法の1つとして、蒸着マスク20の厚みを小さくし、これによって、第1凹部30の壁面31や第2凹部35の壁面36の高さを小さくすることが考えられる。すなわち、蒸着マスク20を構成するための金属板21として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みの小さな金属板21を用いることが好ましいと言える。
角度θ1を大きくするためのその他の方法として、第1凹部30の輪郭を最適化することも考えられる。たとえば本実施の形態によれば、隣り合う二つの第1凹部30の壁面31が合流することにより、他の凹部と合流していない点線で示された壁面(輪郭)を有する凹部と比較して、この角度θ1を大幅に大きくすることができている(図4参照)。以下、その理由について説明する。
第1凹部30は、後に詳述するように、金属板21の第1面21aをエッチングすることにより形成される。エッチングによって形成される凹部の壁面は、一般的に、浸食方向に向けて凸となる曲面状となる。したがって、エッチングによって形成された凹部の壁面31は、エッチングの開始側となる領域において切り立ち、エッチングの開始側とは反対側となる領域、すなわち凹部の最も深い側においては、金属板21の法線方向に対して比較的に大きく傾斜するようになる。一方、図示された蒸着マスク20では、隣り合う二つの第1凹部30の壁面31が、エッチングの開始側において合流しているので、二つの第1凹部30の壁面31の先端縁32が合流する部分43の外輪郭が、切り立った形状ではなく、面取された形状となっている。このため、貫通孔25の大部分をなす第1凹部30の壁面31を、蒸着マスクの法線方向に対して効果的に傾斜させることができる。すなわち角度θ1を大きくすることができる。
本実施の形態による蒸着マスク20によれば、有効領域22の全域において、第1凹部30の壁面31が蒸着マスクの法線方向に対してなす傾斜角度θ1を効果的に増大させることができる。これにより、蒸着材料98の利用効率を効果的に改善しながら、所望のパターンでの蒸着を高精度に安定して実施することができる。
限定はされないが、本実施の形態による蒸着マスク20は、450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合に特に有効なものである。以下、図7を参照して、そのような高い画素密度の有機EL表示装置を作製するために求められる蒸着マスク20の寸法の一例について説明する。図7は、図4に示す蒸着マスク20の貫通孔25およびその近傍の領域を拡大して示す断面図である。
図7において、蒸着マスク20の厚みが符号tで表されている。なお厚みtは、隣り合う二つの第1凹部30が合流することによって削り取られた部分を無視した場合の蒸着マスク20の厚みである。従って厚みtは、金属板21の厚みであると言うこともできる。また図7においては、貫通孔25の形状に関連するパラメータとして、蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの、蒸着マスク20の法線方向に沿った方向における距離が符号rで表されている。さらに、蒸着マスク20の貫通孔25の寸法が符号rで表されている。寸法rは、平面視の場合の貫通孔25の寸法である。例えば、上述のように第1凹部30の壁面31と第2凹部35の壁面36とが接続される接続部41が存在する場合、接続部41によって囲まれた領域の寸法が、貫通孔25の寸法rとなる。450ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、貫通孔25の寸法rは、例えば20〜50μmの範囲内に設定される。このように本実施の形態においては、高い画素密度の有機EL表示装置に対応すべく、貫通孔25の寸法rが、従来の蒸着マスクの場合に比べて小さく設定されている。
上述のように、蒸着材料のうち貫通孔の壁面に付着するものの比率を低くし、これによって蒸着の精度を向上させるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることが有効である。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の厚み(すなわち金属板21の厚み)tは、50μm以下に、例えば10〜50μmの範囲内に設定される。
また上述のように、本実施の形態における貫通孔25の寸法rは従来よりも小さい。このため、蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの距離rが寸法rに比べて比較的に大きいものであると、第2凹部35の壁面36に付着してしまう蒸着材料の比率が高くなってしまうと考えられる。この点を考慮し、本実施の形態において、好ましくは蒸着マスク20の第2面20bから接続部41までの距離rは、6μm以下に設定される。
ところで、高い画素密度の有機EL表示装置を作製する上では、上記厚みt、距離rおよび寸法rのようなパラメータだけでなく、以下に説明するように、蒸着マスク20の第2面20bの表面状態も重要になると考えられる。例えば図7においては、蒸着マスク20の第2面20b上に、符号45が付された異物が存在している。このような異物45は、例えば蒸着マスク20の第2面20bが部分的に錆びてしまうことによって生じ得る。以下、この異物を錆び45とも称する。このような錆び45が生じると、上述のように、錆び45の厚みの分だけ貫通孔25が基板92から遠ざかってしまい、この結果、基板92に対する蒸着マスク20の貫通孔25の位置が有意にずれてしまうことになる。このため、基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまうことが考えられる。また、錆び45によって基板92が傷ついてしまい、これによって基板92上の電気的な配線を断線させてしまうということも考えられる。従って、高い画素密度の有機EL表示装置を作製する上では、錆び45などの異物が生じにくい蒸着マスク20をいかに安定に製造することができるか、という点が重要になる。本件発明者らが鋭意研究を重ねた結果、錆びの抑制は、蒸着マスク20すなわち金属板21を構成する材料の組成の最適化によって実現され得ることを見いだした。具体的には、後述するように、金属板21を構成する材料にクロムを添加することが有効であることを見出した。
ところで従来、蒸着マスク20用の金属板21を構成する材料の組成は、その熱膨張係数を基板92の熱膨張係数と同等の値にする、という点に主眼をおいて設定されてきた。また本実施の形態においては、多面付蒸着を可能にするため、蒸着マスク20が、その長手方向に沿って配列された複数の有効領域22を有している。この場合、蒸着マスク20の熱膨張係数が基板92の熱膨張係数からわずかにずれただけでも、蒸着マスク20の長手方向の一端側に存在する有効領域22または他端側に存在する有効領域22の少なくとも一方の位置が、熱膨張によって基板92に対して大きく変化ことになる。
図8(a)(b)は、蒸着マスク20の有効領域22の位置が熱膨張によって変化する様子を誇張して示す図である。図8(a)は、常温状態での蒸着マスク20を示しており、図8(b)は、高温状態での蒸着マスク20、すなわち熱によって膨張した状態の蒸着マスク20を示している。図8(a)(b)に示すように、蒸着マスク20の長手方向に沿って複数の有効領域22が配列されている場合、蒸着マスク20の長手方向の一端側に存在する有効領域22または他端側に存在する有効領域22の少なくとも一方は、熱膨張の影響を大きく受けることになる。
ここで本件発明者らが鋭意研究を重ねた結果、鉄に34〜38質量%のニッケルを加えた鉄合金においては、その熱膨張係数が、添加されるクロムの量に対して非常に敏感に変化することがわかった。従って、クロムの添加量は、蒸着マスク20に錆び45が生じることを抑制するという点だけでなく、蒸着マスク20の熱膨張係数を基板92の熱膨張係数と同等の値にするという点も考慮して、緻密に設定される必要がある。これらの点を満たすことができる具体的な組成については後述する。
次に、このような構成からなる本実施の形態とその作用および効果について説明する。ここでは、はじめに、蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法について説明する。次に、得られた金属板を用いて蒸着マスクを製造する方法について説明する。その後、得られた蒸着マスクを用いて基板上に蒸着材料を蒸着させる方法について説明する。
(金属板の製造方法)
はじめに図9(a)(b)を参照して、金属板の製造方法について説明する。図9(a)は、母材を圧延して、所望の厚さを有する金属板を得る工程を示す図であり、図9(b)は、圧延によって得られた金属板をアニールする工程を示す図である。
〔圧延工程〕
はじめに図9(a)に示すように、34〜38質量%のニッケルおよびクロムを含む鉄合金から構成された母材55を準備し、この母材55を、一対の圧延ロール56a,56bを含む圧延装置56に向けて、矢印D1で示す搬送方向に沿って搬送する。一対の圧延ロール56a,56bの間に到達した母材55は、一対の圧延ロール56a,56bによって圧延され、この結果、母材55は、その厚みが低減されるとともに、搬送方向に沿って伸ばされる。これによって、厚みtの長尺金属板64を得ることができる。図9(a)に示すように、長尺金属板64をコア61に巻き取ることによって巻き体62を形成してもよい。厚みtの具体的な値は、好ましくは上述のように50μm以下に、例えば10〜50μmの範囲内になっている。
なお図9(a)は、圧延工程の概略を示すものに過ぎず、圧延工程を実施するための具体的な構成や手順が特に限られることはない。例えば圧延工程は、母材55を構成するインバー材の結晶配列を変化させる温度以上の温度で母材を加工する熱間圧延工程や、インバー材の結晶配列を変化させる温度以下の温度で母材を加工する冷間圧延工程を含んでいてもよい。また、一対の圧延ロール56a,56bの間に母材55や長尺金属板64を通過させる際の向きが一方向に限られることはない。例えば、図9(a)(b)において、紙面左側から右側への向き、および紙面右側から左側への向きで繰り返し母材55や長尺金属板64を一対の圧延ロール56a,56bの間に通過させることにより、母材55や長尺金属板64を徐々に圧延してもよい。
〔スリット工程〕
その後、圧延工程によって得られた長尺金属板64の幅方向における両端をそれぞれ3mm以上かつ5mm以下の範囲にわたって切り落とすスリット工程を実施してもよい。このスリット工程は、圧延に起因して長尺金属板64の両端に生じ得るクラックを除去するために実施される。このようなスリット工程を実施することにより、長尺金属板64が破断してしまう現象、いわゆる板切れが、クラックを起点として生じてしまうことを防ぐことができる。
〔アニール工程〕
その後、圧延によって長尺金属板64内に蓄積された残留応力を取り除くため、図9(b)に示すように、アニール装置57を用いて長尺金属板64をアニールする。アニール工程は、図9(b)に示すように、長尺金属板64を搬送方向(長手方向)に引っ張りながら実施されてもよい。すなわち、アニール工程は、いわゆるバッチ式の焼鈍ではなく、搬送しながらの連続焼鈍として実施されてもよい。アニール工程が実施される期間は、長尺金属板64の厚みや圧延率などに応じて適切に設定されるが、例えば500℃で60秒にわたってアニール工程が実施される。なお上記「60秒」は、アニール装置57中の500℃に加熱された空間を長尺金属板64が通過することに要する時間が60秒であることを意味している。
アニール工程を実施することにより、残留歪がある程度除去された、厚みtの長尺金属板64を得ることができる。なお厚みtは通常、蒸着マスク20の周囲領域23内の最大厚みTbに等しくなる。
なお、上述の圧延工程、スリット工程およびアニール工程を複数回繰り返すことによって、厚みtの長尺の金属板64を作製してもよい。また図9(b)においては、アニール工程が、長尺金属板64を長手方向に引っ張りながら実施される例を示したが、これに限られることはなく、アニール工程を、長尺金属板64がコア61に巻き取られた状態で実施してもよい。すなわちバッチ式の焼鈍が実施されてもよい。なお、長尺金属板64がコア61に巻き取られた状態でアニール工程を実施する場合、長尺金属板64に、巻き体62の巻き取り径に応じた反りの癖がついてしまうことがある。従って、巻き体62の巻き径や母材55を構成する材料によっては、長尺金属板64を長手方向に引っ張りながらアニール工程を実施することが有利である。
なお上述の連続焼鈍は、バッチ式の焼鈍に比べて工程のスループットを高めることができるというメリットをもたらすが、反面、バッチ式の焼鈍に比べて残留歪の除去の程度が不十分になるというデメリットを有している。
〔切断工程〕
その後、長尺金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定範囲にわたって切り落とし、これによって、長尺金属板64の幅を所望の幅に調整する切断工程を実施する。このようにして、所望の厚みおよび幅を有する長尺金属板64を得ることができる。
〔検査工程〕
その後、得られた長尺金属板64を構成する材料の組成を検査する検査工程を実施する。長尺金属板64の組成を検査する方法としては、蛍光X線分析法(以下、XRF法とも称する)を用いることができる。XRF法とは、X線を試料に照射することによって試料から放出される蛍光X線の波長やスペクトルを測定し、試料の構成元素の種類や存在量に関する知見を得る方法である。この場合、各構成元素の比率は質量%で算出される。
XRF法を用いて長尺金属板64の組成を測定した後、長尺金属板64中のクロムの比率が以下の条件(1),(2)をいずれも満たす長尺金属板64のみを、後述する蒸着マスク20の製造工程において使用するという、長尺金属板64の選別を実施する。ここで「クロムの比率」は、長尺金属板64に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときの質量%として表される。なお長尺金属板64には、クロムの他に、34〜38質量%のニッケルと、残部の鉄および不可避の不純物が含まれている。
(1)長尺金属板64中のクロムの比率が、0.1質量%以上であること。
(2)長尺金属板64中のクロムの比率が、0.3質量%以下であること。
以下、上記の条件(1)、(2)についてそれぞれ説明する。
上記の条件(1)は、長尺金属板64の表面に錆び45が生じることを抑制するための条件である。なお上述のように、錆び45は、長尺金属板64の表面のうち基板92に密着する側の面、すなわち第2面64bに生じた場合に、より大きな悪影響を及ぼす。
後述する実施例によって支持されるように、本件発明者らは、0.1質量%以上のクロムを含むニッケル系鉄合金を用いることにより、長尺金属板64の第2面64bすなわち蒸着マスク20の第2面20bに錆び45が生じることを有効に抑制することができることを見いだした。この理由は特には限定されないが、例えばステンレス鋼で採用されているように、クロムが空気中の酸素と結合して表面に不動態被膜を形成したことによるものと考えられる。
一方、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、後述する実施例において示すように、長尺金属板64中のクロムの比率が0.30質量%を超えると、長尺金属板64の熱膨張係数が急激に増加することを見出した。上記の条件(2)は、このような知見に基づいて導き出されたものである。なお基板92として一般に用いられるガラスの熱膨張係数を考慮すると、蒸着マスク20すなわち長尺金属板64の熱膨張係数は、25℃において0.70〜2.00×10−6/Kの範囲内であることが好ましい。後述するように、この範囲内の熱膨張係数を有する長尺金属板64は、クロムの比率を0.10〜0.30質量%の範囲内に設定することにより作製され得る。
なお本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、アニール工程の際の雰囲気を適切にすることにより、長尺金属板64の表面近傍(以下、表面層とも称する)におけるクロムの濃度を、表面層よりも内側の部分(以下、バルク層とも称する)におけるクロムの濃度よりも高くすることができることを見出した。具体的には、大気環境下よりも低い分圧で存在する酸素ガスと、窒素ガスなどの不活性ガスとを含む雰囲気下でアニール工程を実施することにより、クロムをバルク層から表面層へ拡散させることができた。従って、XRF法を用いて測定された長尺金属板64のクロムの比率が例えば0.10質量%である場合、この長尺金属板64の表面層におけるクロムの比率は少なくとも0.10質量%以上であると言える。
上述の拡散現象を裏付ける論文として、例えば、「Plating and Surface Finishing」の1993年11月号の63〜68頁に計掲載された、「Diffusion Behavior of Copper Through Electroplated Silver Leadframes」と題する、Shinichi Wakabayashiらの論文がある。この論文には、基材として用いた42合金と、42合金上に形成された0.3μmの厚みの銅めっき層と、銅めっき層の上に形成された4.6μmの厚みの銀めっき層と、を含むサンプルを用いて、銅の拡散挙動を観察した結果が記載されている。この論文には、窒素および微量の酸素を含む雰囲気下で上記サンプルを加熱したところ、雰囲気中の酸素濃度に応じて、銅の拡散挙動が異なっていたことが報告されている。具体的には、酸素濃度0.5%以下の窒素雰囲気下では、銅が銀めっき層内を拡散し、結果として、銀めっき層の表面のうち銅めっき層とは反対側に位置する表面(すなわち雰囲気に接している表面)に、銅の酸化物層(CuOまたはCuOの層)が形成されたことが報告されている。一方、酸素濃度5%以上の窒素雰囲気下では、銅めっき層の雰囲気に接している表面ではなく、銅めっき層と銀めっき層との界面に、銅の酸化物層が形成されたことが報告されている。このことからは、酸素濃度0.5%以下の窒素雰囲気下では、銀中での銅の拡散が生じており、一方、酸素濃度5%以上の窒素雰囲気下では、銀中での銅の拡散は生じずに銀中での酸素の拡散が生じていると言える。いずれの結果からも、銅および酸素は互いに引き寄せ合うものであることがわかる。また、銀中での銅の拡散は、雰囲気中の酸素が銅めっき層中の銅を引き寄せようとする力を駆動力として生じていたと考えられる。
上記論文に記載されているのは、銀中での銅の拡散である。しかしながら、銅の酸化還元電位は銀の酸化還元電位よりも低く、またクロムの酸化還元電位は鉄およびニッケルの酸化還元電位よりも低いことを考慮すると、本実施の形態においても同様の拡散メカニズムによってクロムが長尺金属板64の表面層に集まってきたことが考えられる。すなわち、アニール工程の際の雰囲気中の酸素の濃度を適切に調整すれば、雰囲気中の酸素が長尺金属板64中のクロムを引き寄せて酸化物を形成しようとする力を利用して、表面層におけるクロムの濃度を高くすることが可能であると言える。なお、アニール工程の際の雰囲気中の酸素の具体的な濃度は、当業者であれば目的の組成に応じて適切に設定可能であると思料する。
なお上述の説明においては、上述の条件(1),(2)に基づいて長尺金属板64を検査する検査工程を、長尺金属板64の選別を行うために利用する例を示したが、条件(1),(2)の利用方法がこれに限られることはない。
例えば、上述の条件(1),(2)は、アニール温度やアニール時間などの、長尺金属板64を製造するための条件を最適化するために利用されてもよい。具体的には、様々なアニール温度やアニール時間で長尺金属板64を製造し、得られた各長尺金属板64中のクロム濃度を分析し、そして分析結果と条件(1),(2)とを照らし合わせることによって、条件(1),(2)を満たし得る適切な製造条件を設定する、という作業のために、条件(1),(2)が利用されてもよい。この場合、実際の製造工程において得られた長尺金属板64の全てに対して、条件(1),(2)に基づく選別を実施する必要はない。例えば、一部の長尺金属板64に対してのみ、条件(1),(2)に関する抜き取り検査を実施してもよい。若しくは、製造条件がいったん設定された後は、条件(1),(2)に関する検査が全く実施されなくてもよい。
(蒸着マスクの製造方法)
次に、上述のようにして選別された長尺金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に図10〜図19を参照して説明する。以下に説明する蒸着マスク20の製造方法では、図10に示すように、長尺金属板64が供給され、この長尺金属板64に貫通孔25が形成され、さらに長尺金属板64を断裁することによって枚葉状の金属板21からなる蒸着マスク20が得られる。
より具体的には、蒸着マスク20の製造方法、帯状に延びる長尺の金属板64を供給する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺の金属板64に施して、長尺金属板64に第1面64aの側から第1凹部30を形成する工程と、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングを長尺金属板64に施して、長尺金属板64に第2面64bの側から第2凹部35を形成する工程と、を含んでいる。そして、長尺金属板64に形成された第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合うことによって、長尺金属板64に貫通孔25が作製される。図11〜図19に示された例では、第2凹部35の形成工程が、第1凹部30の形成工程の前に実施され、且つ、第2凹部35の形成工程と第1凹部30の形成工程の間に、作製された第2凹部35を封止する工程が、さらに設けられている。以下において、各工程の詳細を説明する。
図10には、蒸着マスク20を作製するための製造装置60が示されている。図10に示すように、まず、長尺金属板64をコア61に巻き取った巻き体62が準備される。そして、このコア61が回転して巻き体62が巻き出されることにより、図10に示すように帯状に延びる長尺金属板64が供給される。なお、長尺金属板64は、貫通孔25を形成されて枚葉状の金属板21、さらには蒸着マスク20をなすようになる。
供給された長尺金属板64は、搬送ローラー72によって、エッチング装置(エッチング手段)70に搬送される。エッチング手段70によって、図11〜図19に示された各処理が施される。なお本実施の形態においては、長尺金属板64の幅方向に複数の蒸着マスク20が割り付けられるものとする。すなわち、複数の蒸着マスク20が、長手方向において長尺金属板64の所定の位置を占める領域から作製される。この場合、好ましくは、蒸着マスク20の長手方向が長尺金属板64の圧延方向(図8における矢印D1の方向)に一致するよう、複数の蒸着マスク20が長尺金属板64に割り付けられる。
まず、図11に示すように、長尺金属板64の第1面64a上(図11の紙面における下側の面上)および第2面64b上にネガ型の感光性レジスト材料を含む塗布液を塗布して、レジスト膜65c、65dを形成する。
次に、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにした露光マスク85a、85bを準備し、露光マスク85a、85bをそれぞれ図12に示すようにレジスト膜65c、65d上に配置する。露光マスク85a、85bとしては、例えば、レジスト膜65c、65dのうちの除去したい領域に光を透過させないようにしたガラス乾板が用いられる。その後、真空密着によって露光マスク85a、85bをレジスト膜65c、65dに十分に密着させる。
なお感光性レジスト材料として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
その後、レジスト膜65c、65dを露光マスク85a、85b越しに露光する。さらに、露光されたレジスト膜65c、65dに像を形成するためにレジスト膜65c、65dを現像する(現像工程)。以上のようにして、図13に示すように、長尺金属板64の第1面64a上にレジストパターン(単に、レジストとも呼ぶ)65aを形成し、長尺金属板64の第2面64b上にレジストパターン(単に、レジストとも呼ぶ)65bを形成することができる。なお現像工程は、レジスト膜65c、65dの硬度を高めるためのレジスト熱処理工程を含んでいてもよい。レジスト熱処理工程においては、例えば、300℃の温度条件下で5分間の加熱処理を行う。
次に、図14に示すように、長尺金属板64上に形成されたレジストパターン65bをマスクとして、エッチング液(例えば塩化第二鉄溶液)を用いて、長尺金属板64の第2面64b側からエッチングする。例えば、エッチング液が、搬送される長尺金属板64の第2面64bに対面する側に配置されたノズルから、レジストパターン65b越しに長尺金属板64の第2面64bに向けて噴射される。この結果、図14に示すように、長尺金属板64のうちのレジストパターン65bによって覆われていない領域で、エッチング液による浸食が進む。以上のようにして、第2面64bの側から長尺金属板64に多数の第2凹部35が形成される。
その後、図15に示すように、エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、形成された第2凹部35が被覆される。すなわち、エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって、第2凹部35が封止される。図15に示す例において、樹脂69の膜が、形成された第2凹部35だけでなく、第2面64b(レジストパターン65b)も覆うように形成されている。
次に、図16に示すように、長尺金属板64に対して第2回目のエッチングを行う。第2回目のエッチングにおいて、長尺金属板64は第1面64aの側のみからエッチングされ、第1面64aの側から第1凹部30の形成が進行していく。長尺金属板64の第2面64bの側には、エッチング液に対する耐性を有した樹脂69が被覆されているからである。したがって、第1回目のエッチングにより所望の形状に形成された第2凹部35の形状が損なわれてしまうことはない。
エッチングによる浸食は、長尺金属板64のうちのエッチング液に触れている部分において行われていく。従って、浸食は、長尺金属板64の法線方向(厚み方向)のみに進むのではなく、長尺金属板64の板面に沿った方向にも進んでいく。この結果、図17に示すように、エッチングが長尺金属板64の法線方向に進んで第1凹部30が第2凹部35と接続するだけでなく、レジストパターン65aの隣り合う二つの孔66aに対面する位置にそれぞれ形成された二つの第1凹部30が、二つの孔66aの間に位置するブリッジ部67aの裏側において、合流する。
図18に示すように、長尺金属板64の第1面64aの側からのエッチングがさらに進む。図18に示すように、隣り合う二つの第1凹部30が合流してなる合流部分43がレジストパターン65aから離間して、レジストパターン65a下となる当該合流部分43において、エッチングによる浸食が金属板64の法線方向(厚さ方向)にも進む。これにより、蒸着マスクの法線方向に沿った一方の側へ向けて尖っていた合流部分43が、蒸着マスクの法線方向に沿った一方の側からエッチングされ、図18に示すように面取される。これにより、第1凹部30の壁面31が蒸着マスクの法線方向に対してなす傾斜角度θ1を増大させることができる。
このようにして、エッチングによる長尺金属板64の第1面64aの浸食が、長尺金属板64の有効領域22をなすようになる全領域内において、進む。これにより、有効領域22をなすようになる領域内における長尺金属板64の法線方向に沿った最大厚みTaが、エッチング前における長尺金属板64の最大厚みTbより薄くなる。
以上のようにして、長尺金属板64の第1面64aの側からのエッチングが予め設定した量だけ進んで、長尺金属板64に対する第2回目のエッチングが終了する。このとき、第1凹部30は長尺金属板64の厚さ方向に沿って第2凹部35に到達する位置まで延びており、これにより、互いに通じ合っている第1凹部30および第2凹部35によって貫通孔25が長尺金属板64に形成される。
その後、図19に示すように、長尺金属板64から樹脂69が除去される。樹脂膜69は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去することができる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、図19に示すように、樹脂69と同時にレジストパターン65a,65bも除去される。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69とは別途にレジストパターン65a,65bを除去してもよい。
このようにして多数の貫通孔25を形成された長尺金属板64は、当該長尺金属板64を狭持した状態で回転する搬送ローラー72,72により、切断装置(切断手段)73へ搬送される。なお、この搬送ローラー72,72の回転によって長尺金属板64に作用するテンション(引っ張り応力)を介し、上述した供給コア61が回転させられ、巻き体62から長尺金属板64が供給されるようになっている。
その後、多数の凹部61が形成された長尺金属板64を切断装置(切断手段)73によって所定の長さおよび幅に切断することにより、多数の貫通孔25が形成された枚葉状の金属板21が得られる。
以上のようにして、多数の貫通孔25を形成された金属板21からなる蒸着マスク20が得られる。ここで本実施の形態によれば、金属板21の第1面21aは、有効領域22の全域にわたってエッチングされている。このため、蒸着マスク20の有効領域22の厚みを小さくし、かつ、第1面21a側に形成される二つの第1凹部30の壁面31の先端縁32が合流する部分43の外輪郭を、面取された形状とすることができる。従って、上述の角度θ1を大きくすることができ、このことにより、蒸着材料の利用効率および蒸着の位置精度を向上させることができる。
(蒸着方法)
次に、得られた蒸着マスク20を用いてガラス基板92上に蒸着材料を蒸着させる方法について説明する。はじめに図2に示すように、蒸着マスク20を基板92に対して密着させる。この際、図1に示すように、複数の蒸着マスク20をフレーム15に張設することによって、蒸着マスク20の面がガラス基板92の面に平行になるようにする。その後、るつぼ94内の蒸着材料98を加熱することにより、蒸着材料98を気化または昇華させる。気化または昇華した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通ってガラス基板92に付着する。この結果、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98がガラス基板92の表面に成膜される。
ここで本実施の形態によれば、上述の条件(1)により、蒸着マスク20の表面のうちガラス基板92に密着される第2面20bに錆び45が生じることを抑制することができる。このため、錆び45によってガラス基板92が傷ついてしまい、これによってガラス基板92上の電気的な配線を断線させてしまうことを抑制することができる。また、錆び45の厚みの分だけ貫通孔25の位置がガラス基板92からずれてしまい、この結果、ガラス基板92上に付着する蒸着材料98の寸法精度や位置精度が低下してしまうことを防ぐことができる。
また本実施の形態によれば、上述の条件(2)により、蒸着マスク20の熱膨張係数をガラス基板92の熱膨張係数と同等の値にすることができる。このため、蒸着工程の際、熱膨張に起因して蒸着マスク20の有効領域22の位置がガラス基板92に対して変化してしまうことを抑制することができる。このことにより、蒸着マスク20に割り付けられた複数の有効領域22の全てに関して、高い位置精度で蒸着材料98をガラス基板92に付着させることが可能になる。
本実施の形態によれば、これらのことにより、ガラス基板92上に付着される蒸着材料98の位置精度を十分に維持しながら、錆び45によってガラス基板92が傷ついてしまうことを抑制することができる。
なお本実施の形態において、金属板21の第1面21aが、有効領域22の全域にわたってエッチングされる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、有効領域22の一部においてのみ金属板21の第1面21aがエッチングされてもよい。
また本実施の形態において、長尺金属板64の幅方向に複数の蒸着マスク20が割り付けられる例を示した。また、蒸着工程において、複数の蒸着マスク20がフレーム15に取り付けられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図20に示すように、金属板21の幅方向および長手方向の両方に沿って格子状に配置された複数の有効領域22を有する蒸着マスク20が用いられてもよい。この場合であっても、上記の条件(1)、(2)を満たす長尺金属板64を用いることにより、蒸着マスク20に錆び45が生じてしまうことを抑制し、かつ、熱膨張に起因して蒸着マスク20の有効領域22の位置がガラス基板92に対して変化してしまうことを抑制することができる。これによって、蒸着工程において、ガラス基板92上に付着される蒸着材料98の位置精度を十分に維持しながら、錆び45によってガラス基板92が傷ついてしまうことを抑制することができる。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(第1巻き体)
はじめに、34〜38質量%のニッケルと、クロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金から構成された母材を準備した。次に、母材に対して上述の圧延工程、スリット工程、アニール工程および切断工程を実施することにより、長尺金属板が巻き取られた巻き体(第1巻き体)を製造した。
具体的には、はじめに、第1熱間圧延工程および第1冷間圧延工程をこの順で行う第1圧延工程を実施し、次に、長尺金属板の幅方向における両端をそれぞれ3mm以上かつ5mm以下の範囲にわたって切り落とす第1スリット工程を実施した。その後、長尺金属板を構成する元素の結晶配列を変化させる温度以上の温度で、所定時間にわたって長尺金属板を連続焼鈍する第1アニール工程を実施した。さらに、第1アニール工程を経た長尺金属板に対して、第2冷間圧延工程を含む第2圧延工程を実施し、次に、長尺金属板の幅方向における両端をそれぞれ3mm以上かつ5mm以下の範囲にわたって切り落とす第2スリット工程を実施した。その後、長尺金属板を構成する元素の結晶配列を変化させる温度以上の温度で、所定時間にわたって長尺金属板を連続焼鈍する第2アニール工程を実施した。これによって、所望の厚みを有する、約600mm幅の長尺金属板64を得た。上述の第1アニール工程および第2アニール工程は、大気に対して少なくとも部分的に開放された空間において、窒素ガスを連続的に導入しながら実施した。その後、長尺金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定範囲にわたって切り落とし、これによって、長尺金属板64の幅を所望の幅、具体的には500mm幅に最終的に調整する切断工程を実施した。
なお、冷間圧延工程は、圧延油を用いてクーリングしながら行った。冷間圧延工程の後には、長尺金属板を洗浄する洗浄工程を行った。洗浄工程の後には、上述のスリット工程を実施した。なお、長尺金属板の厚みは25μmとした。
〔組成の分析〕
その後、シャーを用いて長尺金属板64を所定の範囲で、例えば30×30mmの範囲で切り出して第1試料を得た。次に、XRF法を用いて、第1試料の組成を分析した。測定器としては、Rigaku製の波長分散型XRF装置RIX−3100を用いた。組成分析の条件は以下のとおりである。
試料に入射させたX線の条件:Rh管球、4.0kW(50kV、80mA)
測定径:20mmφ
測定雰囲気:真空(13Pa)
測定範囲(測定対象元素):5B〜92U
定量方法:ファンダメンタルパラメータ法
XRF法による測定の結果、第1試料中のクロムの比率は0.03質量%であった。
上述の測定結果と、上述の条件(1),(2)とを照らしあわせたところ、第1巻き体から得られた第1試料においては、条件(1)が満たされていなかった。従って第1試料が取り出された第1巻き体は、蒸着マスクを製造するための素材として用いることができないものであると判定される。
〔洗浄に対する耐性の評価〕
上述の第1巻き体の長尺金属板を、シャーを用いて200×200mmの範囲で切り出して、第1サンプルを得た。次に、アルカリ性の脱脂剤を用いて、第1サンプルの表面の脱脂処理を実施した。その後、有機溶剤、例えばn−メチルピロリドンを用いて、第1サンプルの洗浄処理を実施した。次に、実体顕微鏡を用いて、第1サンプルの表面に錆びが生じているかどうかを観察した。実体顕微鏡の倍率は20倍に設定した。この場合、10μmφ以上の寸法を有する錆びを検知可能である。結果、錆びは生じていなかった。
その後、第1サンプルに対して、有機溶剤を用いた上述の洗浄処理を繰り返し実施した。洗浄処理は、合計で50回実施した。また、5回目、10回目、20回目、30回目、40回目および50回目の洗浄処理の後には、上述の1回目の洗浄処理の後の場合と同様に、実体顕微鏡を用いて、第1サンプルの表面に錆びが生じているかどうかを観察した。結果、10回目の洗浄の後に、1個の錆びが観察された。また、20回目の洗浄の後および30回目の洗浄の後には、それぞれ12個および56個の錆びが観察された。40回目の洗浄の後および50回目の洗浄の後には、計測が不可能な程度の多数の錆びが観察された。
なお、蒸着マスク20の実際の運用においては、蒸着マスク20の表面や蒸着マスク20の貫通孔25の壁面に蒸着材料がある程度堆積する度に、有機溶剤を用いた洗浄処理が一般に実施される。また、蒸着マスク20の表面に生じる錆びは、主にこの洗浄処理に起因して生じると考えられる。従って、第1サンプルに対する上述の洗浄処理は、蒸着マスク20の実際の運用方法を想定して第1サンプルの防錆性を評価するためのものである。
〔熱膨張係数の測定〕
上述の第1巻き体の長尺金属板の熱膨張係数を測定した。具体的には、シャーを用いて長尺金属板64を所定の範囲で切り出して第1片を得た。次に、第1片に引っ張り荷重をかけた状態で第1片を加熱することにより、第1片の熱膨張係数を測定した。なお引っ張り荷重の方向は、長尺金属板64の長手方向、すなわち蒸着マスク20の長手方向に一致している。すなわち、得られる熱膨張係数は、蒸着マスク20の長手方向に一致する方向における熱膨張係数であると言える。引っ張り荷重は、153.86mN/mmに設定した。測定器としては、株式会社日立ハイテクサイエンス製のTMA/7100を用いた。測定は、30〜355℃の温度範囲で実施した。具体的には、昇温速度5℃/分で温度を30℃から355℃まで上昇させながら、0.5秒のサンプリング間隔で測定を行った。
測定の結果、第1片の25℃における熱膨張係数は0.71×10−6−1であった。
(第2〜第10巻き体)
第1巻き体の場合と同様にして、34〜38質量%のニッケルと、クロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金から構成された母材を用いて、第2巻き体〜第10巻き体を製造した。さらに、第1巻き体の場合と同様にして、第2巻き体〜第10巻き体に関して、組成の分析、洗浄に対する耐性の評価、および、熱膨張係数の測定を実施した。
(各巻き体の判定結果のまとめ)
第1巻き体〜第10巻き体の長尺金属板の組成の分析結果を図21に示す。図21に示すように、第4〜第7巻き体においては、判定結果が「○」となった。すなわち、上述の条件(1),(2)がいずれも満たされていた。一方、第1〜第3巻き体および第8〜第10巻き体においては、判定結果が「×」となった。すなわち、上述の条件(1)または(2)の少なくとも1つが満たされていなかった。具体的には、第1〜第3巻き体においては、上述の条件(1)が満たされていなかった。また、第8〜第10巻き体においては、上述の条件(2)が満たされていなかった。
(洗浄に対する耐性の評価結果のまとめ)
第1巻き体〜第10巻き体の長尺金属板から切り出したサンプルに対して実施した、上述の洗浄に対する耐性の評価結果を図22に示す。図22に示すように、第4巻き体〜第10巻き体の長尺金属板から切り出された、クロムの含有比率が0.10質量%以上であるサンプルについては、50回目の洗浄後の評価においても錆びが観察されなかった。一方、第1巻き体〜第3巻き体の長尺金属板から切り出された、クロムの含有比率が0.10質量%未満であるサンプルについては、錆びが観察された。
(熱膨張係数の測定結果のまとめ)
第1巻き体〜第10巻き体の長尺金属板から切り出した片を用いて実施した、熱膨張係数の測定結果を図23に示す。図23に示すように、第1巻き体〜第7巻き体の長尺金属板から切り出された、クロムの含有比率が0.30質量%以下である片については、25℃における熱膨張係数が0.70〜2.00×10−6/Kの範囲内になっていた。一方、第8巻き体〜第10巻き体の長尺金属板から切り出された、クロムの含有比率が0.30質量%を超える片については、25℃における熱膨張係数が2.00×10−6/Kを超えていた。
図21、図22および図23の対比から分かるように、上述の条件(1),(2)に基づく判定結果と、洗浄に対する耐性の評価結果および熱膨張係数の測定結果の良否とは完全に一致していた。すなわち、上述の条件(1),(2)を利用することにより、高い位置精度で蒸着材料を基板に付着させることができ、かつ高い防錆性を備えた蒸着マスクを得ることができると言える。すなわち、上述の条件(1),(2)は、長尺金属板64を選別するための有力な判断手法であると考える。
20 蒸着マスク
21 金属板
21a 金属板の第1面
21b 金属板の第2面
22 有効領域
23 周囲領域
25 貫通孔
30 第1凹部
31 壁面
35 第2凹部
36 壁面
41 接続部
41a 欠け
43 合流部分
45 錆び
55 母材
56 圧延装置
57 アニール装置
61 コア
62 巻き体
64 長尺金属板
64a 長尺金属板の第1面
64b 長尺金属板の第2面
64c 第1表面層
64d 第2表面層
64e バルク層
92 基板(ガラス基板)

Claims (7)

  1. 複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法であって、
    前記蒸着マスクの前記貫通孔は、前記金属板をエッチングすることによって形成されるものであり、
    前記金属板の製造方法は、
    ニッケルおよびクロムを含む鉄合金からなる母材を圧延する圧延工程と、
    圧延された前記母材をアニールして前記金属板を得るアニール工程と、を備え、
    前記金属板に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときに、前記金属板は、34〜38質量%のニッケルと、0.26〜0.30質量%のクロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金からなり、
    前記金属板の厚みは、10〜50μmの範囲内である、金属板の製造方法。
  2. 前記アニール工程は、前記圧延された母材を長手方向に引っ張りながら実施される、請求項1に記載の金属板の製造方法。
  3. 前記アニール工程は、大気環境下よりも低い分圧で存在する酸素ガスと、不活性ガスとを含む雰囲気下で実施される、請求項2に記載の金属板の製造方法。
  4. 複数の貫通孔を形成して蒸着マスクを製造するために用いられる金属板であって、
    前記蒸着マスクの前記貫通孔は、前記金属板をエッチングすることによって形成されるものであり、
    前記金属板に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときに、前記金属板は、34〜38質量%のニッケルと、0.26〜0.30質量%のクロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金からなり、
    前記金属板の厚みは、10〜50μmの範囲内である、金属板。
  5. 複数の貫通孔が形成された蒸着マスクを製造する方法であって、
    金属板を準備する工程と、
    前記金属板上にレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
    前記金属板のうち前記レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングし、前記金属板に、前記貫通孔を画成するようになる凹部を形成するエッチング工程と、を備え、
    前記金属板に含まれる各構成元素の質量の合計を100質量%としたときに、前記金属板は、34〜38質量%のニッケルと、0.26〜0.30質量%のクロムと、残部の鉄および不可避の不純物と、を含む鉄合金からなり、
    前記金属板の厚みは、10〜50μmの範囲内である、蒸着マスクの製造方法。
  6. 前記金属板は、所定の方向に延びる長尺状の金属板であり、
    前記蒸着マスクは、前記長尺状の金属板が延びる方向に沿って配列された複数の有効領域を有し、
    前記有効領域はそれぞれ、複数の前記貫通孔を含む、請求項5に記載の蒸着マスクの製造方法。
  7. 前記金属板の熱膨張係数が、25℃において0.70〜2.0×10−6/Kの範囲内である、請求項5または6に記載の蒸着マスクの製造方法。
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