JP6458813B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鉄損の小さい方向性電磁鋼板を得ることができる方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、方向性電磁鋼板の鉄損低減や磁歪騒音低減を実現するためには、被膜張力を確保する必要があり、その観点から、フォルステライトを主体とする下地被膜による張力付与が重要である。
従来より、下地被膜に関しては、被膜外観と密着性の観点からの改善方法が種々提案されている。例えば、焼鈍分離剤の主成分MgOに添加物を混合させる方法が知られている。
すなわち、焼鈍分離剤の主成分MgOに添加物を混合させる方法として、特許文献1には、MgOにTiO2を添加する方法が、特許文献2には、MgOにSr化合物を添加する方法が、そして特許文献3には、MgOに、TiO2、SnO2およびSr化合物を複合添加する方法が、それぞれ提案されている。
特公昭51-12451号公報 特公昭57-32716号公報 特開平9-291313号公報
しかしながら、従来の方法では、被膜外観と被膜密着性確保の観点における優位性に主眼がおかれていて、方向性電磁鋼板の鉄損低減や磁歪騒音低減を実現するために重要な被膜張力の観点からの改善は、注目されていなかった。
ここで、方向性電磁鋼板の製造工程中、下地被膜は、最終仕上焼鈍時に形成されるものであるが、最終仕上焼鈍では同時に、二次再結晶を完了させる必要がある。
すなわち、被膜張力を改善する効果があるものであっても、二次再結晶に対しては悪影響を及ぼすことがあり、両者の最適条件が揃わない場合がある。特に、分解温度が二次再結晶温度と重なる物質のSnO2やSnOについては、被膜張力を改善する効果があることが分かっていても、その添加量を増やすと、二次再結晶がしにくくなることが知られており、通常、添加量は、MgOに対し、3%以下に抑えられている。
本発明は、上記した問題を有利に解決するもので、焼鈍分離剤中に、SnO2またはSnOをMgOに対し、質量%で2〜10%含有させ、かつ圧延方向の下地被膜張力を3MPa以上確保することで、鉄損の低い方向性電磁鋼板を得ることができる製造方法を提案することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.01〜0.5%、およびSn:0%超0.05%以下を含有すると共に、sol.Alを100質量ppm以下、S、SeおよびNをそれぞれ50質量ppm以下に低減し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブに、1300℃以下の低温スラブ加熱を施したのち、熱延板焼鈍を行い、ついで、冷間圧延を施して最終板厚とした後、連続式の一次再結晶焼鈍を施して脱炭焼鈍を行い、さらに、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布して下地被膜を形成するバッチ式の最終仕上焼鈍を行った後、平坦化焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記焼鈍分離剤中に、SnO2および/またはSnOをMgO:100質量%に対し、2〜10質量%の範囲で含有させると共に、
上記平坦化焼鈍の際、炉内張力を、1.2kgf/mm2以下
とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記鋼スラブが、さらに質量%で、
Ni:0.005〜1.50%、
Sb:0.005〜0.50%、
Cu:0.01〜0.50%、
P:0.005〜0.50%、
Cr:0.01〜1.50%および
Mo:0.01〜0.50%
のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成からなる前記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、被膜張力を改善する効果があるSnO2またはSnOを、焼鈍分離剤中に多く含有させることが可能となる。その結果、鉄損の小さい方向性電磁鋼板を得ることができるので、その工業的価値は極めて高い。
反り量と被膜張力との関係を示す図である。 SnO2/MgOの値と被膜張力および鉄損との関係を示す図である。 平坦化焼鈍時の炉内張力と鉄損との関係を示す図である。 平坦化焼鈍時の炉内張力と被膜張力との関係を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明を由来するに至った実験結果について説明する。なお、鋼板成分、焼鈍分離剤の成分に関する「%およびppm」表示は特に断らない限り質量%および質量ppmを意味するものとする。
発明者らは、鉄損の小さい方向性電磁鋼板を得るに当たって、下地被膜張力の改善に着目し、下地被膜張力を改善する方策について鋭意検討した。その結果、発明者らは、被膜形成に有用であることが知られ、AlNなどのインヒビターを鋼スラブ中に含有させる方法では添加量や脱炭焼鈍の条件などに制約の多かった、SnO2の適用を想起し、試みることとした。
(実験1)
C:0.025%、Si:3.3%、Mn:0.06%、Sb:0.03%を含有し、Alを70ppm、Nを40ppmとし、S、Seおよび0を20ppm以下に低減した、インヒビターフリーの成分系の鋼スラブを、1210℃に加熱し、熱間圧延して2.7mm厚に仕上げた。続いて、熱延板焼鈍を、1065℃で30秒保持し、1000〜750℃を冷却速度:20℃/秒、750〜300℃を冷却速度:40℃/秒で急冷する条件で行った。熱延板焼鈍後、最高到達温度が220℃の冷間圧延を行って、0.29mmの最終板厚に仕上げた。
続いて、連続式の脱炭焼鈍を、露点:53℃、水素:55体積%、窒素:45体積%の雰囲気にて、840℃で100秒均熱する条件で行った。
さらに、MgO:100%に対して、TiO2:3%、SrSO4:1.6%、Mg2SO4:1.2%を添加したMgOを主体とする焼鈍分離剤に対して、さらに、SnO2を添加し、SnO2の含有量を種々変更する実験を行った。
焼鈍分離剤を塗布後は、最終仕上焼鈍を、水素雰囲気にて1200℃で10時間保持する方法で行い、最後に、乾燥した窒素と水素の混合雰囲気にて、835℃で20秒の平坦化焼鈍を行って、形状矯正を行った。平坦化焼鈍際の炉内張力は、8.8MPa(0.91kgf/mm2)とした。
なお、下地被膜張力を評価するため、コーティングは行わなかった。
得られた製品板を用いて、圧延方向の磁束密度(B8)と鉄損(W17/50)を測定した。さらに、被膜張力を評価するため、圧延方向に280mm、幅方向に30mmのサンプルを切り出し、片面の下地被膜を酸洗で除去し、以下に示す(1)式を用いて反り量の測定値から被膜張力を算出した。
σ’=Ed/2R ・・・(1)
ここに、(1)式中、
E:ヤング率
d:板厚(mm)
R≒L2/2a (曲率半径)
a:反り量(mm)
L:反り測定長さ
σ’:被膜張力
をそれぞれ意味し、
上記実験では、
反り測定長さ(L)を250mmとし、
Eの値は132GPaを用いた。
RD方向(圧延方向)とTD方向(圧延方向に直角な方向)のそれぞれの反り量と被膜張力との関係を図1に示す。なお、実験1での製品板の磁束密度(B8)は、全条件で1.92〜1.93Tが確保されていることが確認されている。
図2に、SnO2の含有量、被膜張力、鉄損の関係を示す。SnO2の含有量が、MgO:100%に対して2〜10%の範囲になると、W17/50=1.00W/kg以下の良好な鉄損が得られており、かつその範囲で3MPa以上の被膜張力が確保できていることが分かる。
他方、被膜の外観を観察すると、MgO:100%に対し、SnO2の含有量が12%以上になった場合に、被膜欠損(キラキラ)が発生した。従来では、SnO2の分解に伴う酸素の放出により、インヒビター成分の表面酸化が促進されて二次再結晶不良が発生したが、本発明のように、インヒビターフリー成分を用いる方法では、被膜張力の観点からの最適添加量は8%であり、二次再結晶発現に関係なく増量が可能であることが分かった。
さらに、被膜張力確保の観点から、平坦化焼鈍における炉内張力と素材成分の関係に関しても留意する必要があることが分かった。
被膜張力は、高温にて被膜形成後、常温まで冷却した際の被膜と地鉄の収縮の程度の違い、すなわち、熱膨張係数の差によって発生するものであるが、平坦化焼鈍では、鋼板の形状を矯正する必要があり、張力付与が必須である反面、必要以上の張力を付与して鋼板が伸びると、熱膨張係数差に起因する被膜張力が減殺されてしまう。従って、本発明では、被膜張力確保の観点から、平坦化焼鈍の際に炉内で鋼板に付与する張力を11.8MPa(1.21kgf/mm2)以下とすることが肝要である。
また、鋼板の伸びを抑制するため、鋼板自体の熱間強度確保も、被膜張力確保のために有効である。
特に、Snの添加は、熱間強度を向上し、平坦化焼鈍における鋼板の伸びを抑制し、被膜張力を向上する効果があるため、添加量が多いほうが有利である。しかしながら、Snを鋼スラブに含有させる場合、あまりに多量の含有は、熱間での脆化を引き起こし、へゲが発生しやすくなる作用もあるため、鋼スラブへの含有量は、0.15%以下にするのが好ましい。
一方、本発明に従う鋼板成分の場合、焼鈍分離剤中へのSnO2の添加は、鋼板中のSn含有量を増やす手段として有効である。ここに、焼鈍分離剤中のSnO2の含有量が、MgO:100%に対して、8%の場合、鋼板中のSn含有量は約0.03%上昇するが、その際のSnは、被膜張力強化のほか、比抵抗向上にも、Siとほぼ同等の効果がある。
このため、鋼板中のSn含有量をへゲが発生しにくい0.05%までとなるように、焼鈍分離剤中にSnO2の形で添加する手段は、鉄損を小さくするための極めて有効な手段と考えられる。
以降、本発明のその他の構成要件について、その規定理由を説明する。
本発明における鋼スラブは、公知の方法、例えば、製鋼−連続鋳造(あるいは、造塊−分塊圧延)によって製造される。その際、鋼スラブの成分組成については、以下のように規定される。
Cは、炭化物制御によって一次再結晶集合組織を改善するために有用な元素であるため、0.10%以下に規定する。C含有量が、これよりも大きくなると製品板となるまでに脱炭するのが困難になって、製品板にて磁気時効が起こり、磁気特性が低下するからである。
Siは、電気抵抗を高めることで鉄損を低減するのに有用な元素であり、その効果を得るために2.0%以上添加する。一方、4.5%を超えると、冷間圧延中に割れるなどのトラブルが生じて通板が困難になるため、上限を4.5%に規定する。
Mnは、熱間圧延時の加工性を向上する効果があるため、0.01%以上添加する。一方、0.5%を超えると、一次再結晶集合組織が悪化し、ゴス方位に集積した二次再結晶粒が得られにくくなって、磁気特性が低下する。このため、0.5%以下に規定する。
本発明では、インヒビター元素であるAlは100ppm以下、また、N、S、Seについては50ppm以下、好ましくは30ppm以下に低減することが、良好に二次再結晶させる上で重要である。また、その他の窒化物形成元素であるTi、Nb、B、TaおよびV等についても、それぞれ50ppm以下に低減することが鉄損の劣化を防ぎ、良好な加工性を確保する上で有効である。
鉄損を低減する目的で、鋼スラブにSnを添加してもよいが、熱間圧延時に脆化を引き起こしてヘゲが発生しやすくなるため、鋼スラブに添加する際のSn含有量は、0.15%以下とするのが好ましいことは先にも述べたとおりである。
本発明では、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために、Niを添加することができる。ここに、Niの添加量が0.005%未満であると磁気特性の向上量が小さくなる一方で、1.50%を超えると、二次再結晶が不安定になって磁気特性が劣化するので、添加量は、0.005〜1.50%とするのが好ましい。
さらに、本発明では、鉄損特性を向上させる目的で、Sb:O.005〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:O.005〜0.50%、Cr:O.01〜1.50%およびMo:O.01〜0.50%のうち一種をそれぞれ単独で、または二種以上を複合して添加することができる。それぞれの添加量が下限量より少ない場合には鉄損向上効果がない一方で、上限量を超えると二次再結晶粒の発達が抑制される。
上記成分を含有する鋼スラブは、溶製し、造塊・分塊法あるいは連続鋳造法で鋼スラブにしてもよいし、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片にしてもよい。
このような鋼スラブあるいは薄鋳片を1300℃以下に加熱(低温スラブ加熱)して熱間圧延し、熱延板焼鈍を行う。熱延板焼鈍を行った後、圧延(冷間圧延あるいは温間圧延)を行って、冷延板とする。圧延の際の鋼板の温度を100〜250℃に上昇させること、あるいは、冷間圧延の途中で100〜250℃での時効処理を1回または複数回行うことは、ゴス方位の組織を発達させる上で有効である。
続いて、連続式の脱炭焼鈍を行う。連続式の脱炭焼鈍は、750〜900℃の湿潤水素雰囲気にて行い、Cを50ppm以下、好ましくは30ppm以下に低減するようにする。
脱炭焼鈍後にはMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布した後、下地被膜(フォルステライト被膜)を形成させるバッチ式の最終仕上焼鈍を行う。
本発明では、鉄損を小さくするため、焼鈍分離剤中にSnO2をMgO:100%に対して、〜10%の範囲で含有させて、3MPa以上の被膜張力を確保する。2%未満では被膜張力を確保できず、鉄損の低減が不十分になる一方で、10%を超えると被膜形成不良が発生しやすくなるからである。なお、本発明では、SnO2の代わりにSnOを用いても同様の効果が得られる。また、本発明において、MgOを主体とするとは、焼鈍分離剤中にMgOが内数で50質量%以上含まれていることを言い、本発明に規定する以外の残部は、通常、焼鈍分離剤として用いられているものおよび不可避的不純物である。
本発明では、最終仕上焼鈍の際の温度を、フォルステライト被膜形成のため、1000℃以上とするのが好ましい。
さらに、最終仕上焼鈍後には、平坦化焼鈍を行って鋼板の形状を矯正する。平坦化焼鈍の際に、炉内で鋼板に付与する張力を11.8MPa(1.2kgf/mm2)以下とすると、鋼板の伸びを抑制して被膜張力を確保する上で有効であるため、本発明では、平坦化焼鈍の際に、炉内で鋼板に付与する張力(炉内張力)を11.8MPa(1.2kgf/mm2)以下とする。なお、炉内張力以外の平坦化焼鈍の条件は、常法に従えば良い。
また、鋼スラブ中にSnを添加したり、あるいは焼鈍分離剤中にSnO2またはSnOを含有させるようにしたりすることも、鋼板の伸びを抑制して被膜張力を強化するのに有効である。
平坦化焼鈍を行った後に、鋼板の表面に絶縁コーティングを施してもよい。特に、鉄損を小さくするためには、燐酸塩とコロイダルシリカを混合させた張力コーティングを行うのが好ましい。
(実施例1)
C:0.024%、Si:3.3%、Mn:0.05%を含有し、Alを75ppm、Nを41ppmとし、S、Seおよび0を20ppm以下に低減したインヒビターフリーの成分系の鋼スラブA、およびC:0.024%,Si:3.3%、Mn:0.05%、Sn:O.05%を含有し、Al:70ppm、Nを40ppmとし、S、Seおよび0を20ppm以下に低減したインヒビターフリーの成分系の鋼スラブBを、それぞれ1220℃に加熱して熱間圧延し、2.5mm厚に仕上げた。ついで、熱延板焼鈍を、1025℃で30秒保持し、1000〜750℃を冷却速度:20℃/秒、750〜300℃を冷却速度:40℃/秒で急冷する条件で行った。熱延板焼鈍後、最高到達温度が200℃の冷間圧延を行って0.26mmの最終板厚に仕上げた。
続いて、連続式の脱炭焼鈍を、露点:53℃、水素:55体積%、窒素:45体積%の雰囲気にて、840℃で100秒保持する条件で行った。
さらに、MgO:100%に対して、TiO2:3%、SrSO4:1.6%、Mg2SO4:1.2%を添加したMgOを主体とする焼鈍分離剤に、さらに、SnO2を添加し、SnO2の含有量を、MgO:100%に対して8%とする実験を行った。
最終仕上焼鈍は、水素雰囲気にて、1200℃で10時間保持する条件で行った。
最終仕上焼鈍後、乾燥した窒素と水素の混合雰囲気にて、850℃で30秒保持する平坦化焼鈍を行い、形状矯正を施した。平坦化焼鈍における炉内張力を、5.9〜12.7MPa(0.6〜1.31(kgf/mm2))の範囲で変化させた。
かようにして得られた製品板を用いて、圧延方向の磁束密度(B8)と鉄損(W17/50)を測定した。さらに、被膜張力を評価するため、圧延方向に280mm、幅方向に30mmのサンプルを切り出し、片面の下地被膜を酸洗で除去し、前掲した(1)式を用いて反り量の測定値から被膜張力を算出した。
製品の磁束密度の測定結果は、1.92〜1.94Tの範囲であった。
また、図3に、平坦化焼鈍時の炉内張力と鉄損との関係を示す。さらに、図4に、平坦化焼鈍時の炉内張力と被膜張力との関係を示す。
図3によれば、平坦化焼鈍時の炉内張力を11.8MPa(1.2kgf/mm2)以下とし、同時にSnを添加することで鉄損が小さくなることが分かる。また、図4によれば、平坦化焼鈍時の炉内張力を11.8MPa(1.2kgf/mm2)以下とし、同時にSnを添加することで被膜張力が増大することが分かる。
(実施例2)
表1に示される成分の鋼スラブを1230℃に加熱し、熱間圧延して2.4mmに仕上げた。熱延板焼鈍を、1050℃で30秒保持し、1000〜750℃を20℃/秒、750〜300℃を40℃/秒で急冷する条件で行った。熱延板焼鈍後、最高到達温度が220℃の冷間圧延を行って0.26mmの最終板厚に仕上げた。
続いて、連続式の脱炭焼鈍を、露点:55℃、水素:55体積%、窒素:45体積%の雰囲気にて、850℃で100秒保持する方法で行った。
さらに、MgO:100%に対して、TiO2:3%、SrSO4:1.6%、Mg2SO4:1.2%を添加したMgOを主体とする焼鈍分離剤に対し、さらに、SnOを添加し、SnOの含有量を、MgO:100%に対し、5%とする実験を行った。
最終仕上焼鈍は、水素雰囲気にて、1200℃で10時間保持する方法で行った。
最終仕上焼鈍後、乾燥した窒素と水素の混合雰囲気にて、850℃で30秒保持する平坦化焼鈍を行い、形状矯正した。平坦化焼鈍における炉内張力は6.9MPa(0.7kgf/mm2)で行った。
かようにして得られた製品板を用い、圧延方向の磁束密度(B8)と鉄損(W17/50)を測定した。
かかる評価により得られた結果を、表1に併記する。
Figure 0006458813
表1によれば、本発明で規定されるインヒビターフリー成分の鋼スラブにおいて、平坦化焼鈍時の炉内張力を11.8MPa(1.2kgf/mm2)以下とし、同時にSnOを添加することで鉄損が改善できることが分かる。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0〜4.5%、Mn:0.01〜0.5%、およびSn:0.05〜0.15%を含有すると共に、sol.Alを100質量ppm以下、S、SeおよびNをそれぞれ50質量ppm以下に低減し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブに、1300℃以下の低温スラブ加熱を施したのち、熱延板焼鈍を行い、ついで、冷間圧延を施して最終板厚とした後、連続式の一次再結晶焼鈍を施して脱炭焼鈍を行い、さらに、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布して下地被膜を形成するバッチ式の最終仕上焼鈍を行った後、平坦化焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記焼鈍分離剤中に、SnO2および/またはSnOをMgO:100質量%に対し、2〜10質量%の範囲で含有させると共に、
    上記平坦化焼鈍の際、炉内張力を、1.1kgf/mm2以下
    とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼スラブが、さらに質量%で、
    Ni:0.005〜1.50%、
    Sb:0.005〜0.50%、
    Cu:0.01〜0.50%、
    P:0.005〜0.50%、
    Cr:0.01〜1.50%および
    Mo:0.01〜0.50%
    のうちから選んだ少なくとも1種を含有する組成からなる請求項1に記載の方向性電磁鋼
    板の製造方法。
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