JP6455328B2 - 積層造形方法 - Google Patents

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Description

本発明は積層造形方法に関する。
近年、無機材料もしくは有機材料からなる粉末材料にレーザビームを照射し、焼結または溶融固化させることにより、3次元形状の積層造形物を製造する積層造形装置が注目されている。具体的には、ステージ上に粉末材料を敷き詰めて粉末層を形成する工程と、この粉末層の所定領域にレーザビ−ムを照射して焼結または溶融固化させることにより硬化層を形成する工程とを繰り返す。これにより、多数の硬化層を積層一体化して3次元形状の造形物を製造することができる。
特許文献1には、効率的な原料粉末供給を可能とする3次元造形物の製造方法が開示されている。特許文献1に開示されている3次元造形物の製造方法は、ステージ上に粉末材料を敷き詰めて粉末層を形成する工程と、この粉末層の所定領域にレーザビ−ムを照射して焼結または溶融固化させることにより硬化層を形成する工程とを繰り返して3次元造形物を形成する。
特開2012−246541号公報
3次元造形物を形成する積層造形方法では、ステージの上に粉末層を積層する工程と、粉末層の所定箇所の粉末を固化する工程と、を繰り返すことでステージの上に3次元造形物を形成する。ここで、積層造形装置のステージの周囲は側壁で囲まれており、ステージの上の全ての領域に粉末層を積層した場合は、積層された粉末層の周囲全てが側壁で囲まれるので、積層された粉末層が崩落することはない。
一方、形成する3次元造形物のサイズが小さい場合は、ステージの上の全ての領域に粉末層を積層すると原料粉末が無駄になる。このため、このような場合は、ステージの上の一部の領域に粉末層を積層することで、3次元造形物を形成する際の原料粉末の量を少なくすることができる(図9参照)。
しかしながら、ステージの上の一部の領域に粉末層を積層した場合は、積層された粉末層の側面が側壁に囲まれない箇所が生じ(図9の符号120参照)、当該箇所において粉末層が崩落するおそれがあるという問題がある。
上記課題に鑑み本発明の目的は、粉末層を積層する際に粉末層が崩落することを抑制することが可能な積層造形方法を提供することである。
本発明にかかる積層造形方法は、ステージの上に粉末層を積層する工程と、前記粉末層の所定箇所の粉末を固化する工程と、を繰り返すことで前記ステージの上に3次元造形物を形成する。前記粉末層を積層する工程では、前記積層された粉末層の少なくとも一端部が、前記3次元造形物の近傍から前記ステージ側に向かって傾斜する傾斜面を有するように各々の粉末層を積層する。このとき、前記傾斜面と水平面との成す傾斜角度が、前記粉末層を構成している粉末材料に基づき決定された安息角以下となるようにしている。
本発明にかかる積層造形方法では、積層された粉末層の少なくとも一端部(積層された粉末層の側面のうち側壁に囲まれていない箇所)が、3次元造形物の近傍からステージ側に向かって傾斜する傾斜面を有するように各々の粉末層を積層している。このとき、この傾斜面と水平面との成す傾斜角度が、粉末層を構成している粉末材料に基づき決定された安息角以下となるようにしているので、積層された粉末層の端部が崩落することを抑制することができる。
本発明にかかる積層造形方法において、前記積層された粉末層は、前記3次元造形物が形成される造形領域と、前記積層された粉末層の前記一端部を含み、前記造形領域と隣接しているマージン領域と、を備えていてもよく、前記マージン領域における前記各々の粉末層の水平方向における長さをx、前記傾斜面と水平面との成す傾斜角度をα(αは安息角以下である)、前記積層する粉末層の最大高さをHmax、既に積層された粉末層の高さをH(z)とした場合、前記マージン領域における前記各々の粉末層の長さxを下記の式1で求めた値としてもよい。
Figure 0006455328
各々の粉末層の長さxを式1で求めた値とすることで、傾斜面と水平面との成す傾斜角度を安息角以下とすることができ、積層された粉末層の端部が崩落することを抑制することができる。
本発明にかかる積層造形方法において、前記粉末層を積層する工程は、前記粉末層を積層するスキージに2層分の粉末材料を充填する工程と、前記スキージを水平方向と平行な往方向に移動して第n層(nは1以上の整数)の粉末層を形成する工程と、前記第n層の粉末層の所定箇所の粉末を固化した後、前記スキージを前記往方向と逆方向である復方向に移動して第n+1層の粉末層を形成する工程と、を備えていてもよい。
このように、1回の粉末材料の充填で粉末層を2層形成する(すなわち、スキージを往復させて粉末層を2層形成する)ようにすることで、工程を簡略化することができる。
本発明にかかる積層造形方法において、前記積層された粉末層の内部に埋設されたセンサを用いて前記積層された粉末層の前記傾斜面方向への内部応力を測定する工程を更に備えていてもよく、前記測定された内部応力が所定の閾値を超えている場合、前記傾斜面の前記傾斜角度を小さくするようにしてもよい。
このように、センサを用いて粉末層の傾斜面方向への内部応力を測定することで、粉末層の崩落を事前に検知することができ、粉末層の崩落を確実に抑制することができる。
本発明にかかる積層造形方法において、前記センサは前記粉末層の積層方向に伸びるように配置されており、前記粉末層の積層に応じて前記センサを前記積層方向に変位させてもよい。
このようにセンサの高さを調整することで、粉末層の内部応力を正確に測定することができる。
本発明により、粉末層を積層する際に粉末層が崩落することを抑制することが可能な積層造形方法を提供することができる。
実施の形態1にかかる積層造形装置の概要を説明するための図である。 図1に示す積層造形装置が備える造形部の詳細を説明するための断面図である。 図1に示す積層造形装置が備える造形部の詳細を説明するための上面図である。 実施の形態1にかかる積層造形方法を説明するためのフローチャートである。 実施の形態1にかかる積層造形方法を説明するためのフローチャートである(図4に示すフローチャートの造形処理(ステップS4)に対応)。 実施の形態1にかかる積層造形方法を説明するための断面図である(第1層目を形成する工程)。 実施の形態1にかかる積層造形方法を説明するための断面図である(第2層目を形成する工程)。 実施の形態1にかかる積層造形方法を用いて積層された粉末層の詳細を説明するための断面図である。 本発明の課題を説明するための図である。 実施の形態1にかかる積層造形方法の他の構成例を説明するための断面図である。 実施の形態2にかかる積層造形方法を説明するための断面図である。 実施の形態2にかかる積層造形方法を説明するためのフローチャートである。
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる積層造形装置1を説明するための図である。本実施の形態にかかる積層造形方法は、図1に示す積層造形装置1を用いて実施することができる。図1に示すように、積層造形装置1は、ベース11、定盤(ステージ)12、造形槽13、造形槽支持部14、造形槽駆動部15、支柱16、支持部17、レーザスキャナ18、光ファイバ19、レーザ発振器20、スキージ30、粉末ガイド部35、粉末分配器37、及び粉末供給部39を備える。
ベース11は、定盤12及び支柱16を固定するための台である。ベース11は、定盤12が載置される上面が水平になるように、床面に設置される。
定盤12は、ベース11の水平な上面に載置、固定されている。定盤12の上面も水平であって、この定盤12の上面、つまりステージ(以下、ステージ12とも記載する)に粉末層26が形成されて、3次元造形物27が形成されていく。図1の例では、定盤12は、四角柱状の部材である。図1に示すように、定盤12の上面の周縁全体に、水平方向に張り出したフランジ状の凸部12aが形成されている。凸部12aの外周面が全体に亘り造形槽13の内側面と接触しているため、定盤12の上面(ステージ)及び造形槽13の内側面に囲われた空間(造形部25)に、積層された粉末層26を保持することができる。本実施の形態において、粉末材料は、例えば金属材料やセラミック材料等の無機材料、樹脂などの有機材料である。
造形槽13は、ステージ12の上に積層された粉末層26の側面の一部を、造形槽13の内側の側壁で保持する筒状の部材である。造形槽13の上部開口端である造形部25に粉末層26を形成し、この粉末層26にレーザビーム22を照射することにより硬化層を形成する。また、造形槽13は、上下方向(z軸方向)に移動可能に設置されている。つまり、硬化層を形成する度に造形槽13をステージ12に対して一定量ずつ上昇させ、3次元造形物27を形成していく。
造形槽支持部14は、造形槽13のフランジ部13aの上面が水平となるように、フランジ部13aの下面を支持している支持部材である。造形槽支持部14は、造形槽13を上下方向(z軸方向)に移動させる造形槽駆動部15の連結部15cに連結されている。
造形槽駆動部15は、造形槽13を上下方向に移動させるための駆動機構である。造形槽駆動部15は、ベース11からz軸方向に立設された支柱16に固定されている。造形槽駆動部15は、モータ15a、ボールねじ15b、連結部15cを備える。モータ15aが駆動すると、z軸方向に延設されたボールねじ15bが回転する。そして、ボールねじ15bが回転すると、ボールねじ15bに沿って、連結部15cが上下方向に移動する。これにより、造形槽13が上下方向(z軸方向)に移動する。
レーザスキャナ18は、造形槽13の上部開口端である造形部25に形成された粉末層26に対して、レーザビーム22を照射する。レーザスキャナ18は、不図示のレンズ及びミラーを備えており、レーザビーム22を水平面(xy平面)上において走査することができる。つまり、水平面上の任意の箇所の粉末材料を選択的に加熱して固化することができる。レーザビーム22は、レーザ発振器20において生成され、光ファイバ19を介して、レーザスキャナ18に導入される。レーザスキャナ18は、支持部17に固定されている。
スキージ30は、造形部25に粉末材料を供給して粉末層26を形成する。スキージ30は、図1のy軸方向に伸びる第1のスキージ31および第2のスキージ32を用いて構成することができる(図3の上面図参照)。第1及び第2のスキージ31、32の間には粉末材料を保持するための空隙33が形成されている。
粉末ガイド部35は、粉末分配器37から供給された粉末材料をスキージ30の空隙33に導く。粉末分配器37は、粉末供給部39から配管38を介して供給された粉末材料を計量し、所定の量の粉末材料を粉末ガイド部35を介してスキージ30の空隙33に投入する。スキージ30は、空隙33に所定の量の粉末材料を保持し、その後、水平方向(x軸方向)に移動することで、造形部25に粉末層26を形成する。
本実施の形態にかかる積層造形装置1は、スキージ30を用いてステージ12の上に粉末層26を積層する工程と、積層された粉末層26の所定箇所の粉末を固化する工程と、を繰り返すことで、ステージ12の上に3次元造形物27を形成する(図5のフローチャート参照)。以下で説明する本実施の形態にかかる積層造形方法では、ステージ12の上の一部の領域に粉末層26を積層して3次元造形物27を形成する場合について説明する。
図2、図3はそれぞれ、図1に示した積層造形装置1が備える造形部25の詳細を説明するための断面図、及び上面図である。図2、図3に示すように、積層された粉末層26は、造形領域51とマージン領域52とを備える。造形領域51は3次元造形物27が形成される領域であり、例えば3次元造形物27を形成するための設計ソフトを用いて設定することができる。マージン領域52は、造形領域51と隣接している領域であり、造形領域51の端部53における粉末層の崩落を抑制するために設けられている領域である。
図3に示すように、積層された粉末層26のうちx軸マイナス側における端部は造形槽13の側壁13_1と接しており、y軸プラス側における端部は造形槽13の側壁13_2と接しており、y軸マイナス側における端部は造形槽13の側壁13_3と接している。つまり、積層された粉末層26の側面のうちx軸プラス側以外の側面が、造形槽13の側壁13_1〜13_3に囲まれている。
図2に示すように、マージン領域52には、3次元造形物27の近傍からステージ12側に向かって傾斜している傾斜面45が形成されている。このとき、傾斜面45と水平面(xy平面)との成す傾斜角度αは、粉末層26を構成している粉末材料に基づき決定された安息角以下とする。安息角とは、粉末材料を積層した際に当該積層された粉末層の傾斜面が自発的に崩れることなく安定を保つことができる傾斜面の最大角度である。この安息角は、粉末の粒径、粉末の形状(粉末の角の丸み)等に基づいて決定される値である。
このように、マージン領域52に傾斜面45を形成する際に、傾斜面45と水平面との成す傾斜角度αが安息角以下となるようにすることで、積層された粉末層26が崩落することを抑制することができる。
例えば、粉末層26を形成する際に、マージン領域52における各々の粉末層の長さxを下記の式で求めた値とする。ここで、xはマージン領域52における各々の粉末層26のx軸方向における長さ、αは傾斜面45と水平面との成す傾斜角度(αは安息角以下である)、Hmaxは積層する粉末層の最大高さ、H(z)は既に積層された粉末層の高さ(zは既に積層された層の数)である。
Figure 0006455328
例えば、傾斜角度αを40度、積層する粉末層の最大高さHmaxを200mmとした場合、マージン領域52における第1層目の粉末層の長さxは、上記式1より239mmとなる。また、所定の数の粉末層を形成し、例えば既に積層された粉末層の高さH(z)が100mmである場合は、次に積層する粉末層のマージン領域52における長さxは、上記式1より120mmとなる。このように、式1に、傾斜角度α、積層する粉末層の最大高さHmax、既に積層された粉末層の高さH(z)を代入することで、各々の粉末層のマージン領域52における長さxを求めることができる。
ここで、積層する粉末層の最大高さHmaxは、3次元造形物27の高さに対応している。例えば、積層する粉末層の最大高さHmaxは3次元造形物27の高さと同一としてもよい。また、3次元造形物27を形成した後の後工程において機械加工を施す場合は、その加工代を見込んだ高さに設定してもよい。
また、マージン領域52における第1層目の粉末層の長さx(つまりマージン領域52のx軸方向における最大長さ。このとき、H(0)=0となる)は、傾斜角度αおよび積層する粉末層の最大高さHmaxに応じて変化する。例えば、傾斜角度αを40度とした場合は、マージン領域52における第1層目の粉末層の長さxは表1に示すようになる。また、傾斜角度αを50度とした場合は、マージン領域52における第1層目の粉末層の長さxは表2に示すようになる。
Figure 0006455328
Figure 0006455328
表1、表2に示すように、粉末層の最大高さHmaxが高くなるほど、マージン領域52における第1層目の粉末層の長さx(つまりマージン領域52のx軸方向における最大長さ)は長くなる。また、傾斜角度αが大きくなるほど、マージン領域52における第1層目の粉末層の長さx(つまりマージン領域52のx軸方向における最大長さ)は短くなる。
次に、本実施の形態にかかる積層造形方法の一例について、図4、図5に示すフローチャート、及び図6、図7に示す断面図を用いて具体的に説明する。図4に示すように、3次元造形物を形成する際は、まず3次元造形物の形成に必要な各々のデータを積層造形装置1の制御部に入力する(ステップS1)。
具体的には、形成する3次元造形物の寸法データや粉末材料の安息角データ等を入力する。例えば、形成する3次元造形物の3次元CAD(computer aided design)データを入力することで、造形領域51および粉末層の最大高さHmaxが決定される。そして、安息角データによって決定された傾斜角度α(安息角以下)、及び粉末層の最大高さHmaxを上記式1に代入することでマージン領域52(第1層目の粉末層のx軸方向の長さxに対応)が決定される。安息角データについては、粉末材料と当該粉末材料に応じた安息角とを対応付けたテーブルを予め準備して制御部に保存しておき、制御部に粉末材料の種類を入力することで、安息角が自動的に決定されるようにしてもよい。
次に、第n層目と第n+1層目(nは1以上の整数)の処理を開始する(ステップS2)。初期値はn=1であるので、まずは第1層目と第2層目の処理を開始する。次に、第1層目と第2層目の粉末層を形成する際のスキージ30の移動量を計算する(ステップS3)。具体的には、上記式1に傾斜角度α、積層する粉末層の最大高さHmax、既に積層された粉末層の高さH(z)(初期値はH(0)=0)を代入してマージン領域52における長さxを求める。そして、この求めたxに造形領域51の長さx(図2参照)を加えることで、スキージ30のx軸方向における移動量(x+x)を決定することができる。
次に、第1層目および第2層目の造形処理を行う(ステップS4)。図5は、造形処理(ステップS4)の詳細を説明するためのフローチャートである。図5に示すように、まず第1層目の粉末層を積層する(ステップS11)。具体的には、図6(a)に示すように、まずスキージ30の空隙に粉末材料40を充填する。スキージ30の空隙に充填する粉末材料40の量は、ステップS3で求めたスキージ30の移動量(x+x)に対応した量とする。つまり、本実施の形態では、1回の粉末材料の充填で粉末層を2層形成する(すなわち、スキージ30を往復させて粉末層を2層形成する)ので、スキージ30の空隙には粉末層2層分の粉末材料を充填する。
その後、図6(a)に示すように、造形槽13をz軸方向に移動して、ステージ12の上面55と造形槽13のフランジ部の上面56との間に段差を形成する。そして、図6(b)に示すように、スキージ30をx軸プラス側(往方向)に移動して、造形領域51およびマージン領域52に粉末層61を形成する。このとき、粉末層61の上面と造形槽13のフランジ部の上面56とが同一面となる(つまり、段差がなくなる)。また、スキージ30には2層目の粉末層を形成するための粉末材料40が残っている。
次に、第1層目の粉末層の所定箇所を固化する(図5のステップS12)。具体的には、図6(c)に示すように、粉末層61の所定箇所62にレーザビ−ム22を照射して粉末層61の所定箇所62(硬化層)を選択的に加熱して固化する。
次に、第2層目の粉末層を積層する(図5のステップS13)。具体的には、図7(a)に示すように、造形槽13をz軸方向に移動して、第1層目の粉末層61の上面57と造形槽13のフランジ部の上面56との間に段差を形成する。そして、図7(b)に示すように、スキージ30をx軸マイナス側(復方向)に移動して、造形領域51およびマージン領域52に粉末層65を形成する。このとき、粉末層65の上面と造形槽13のフランジ部の上面56とが同一面となる(つまり、段差がなくなる)。
次に、第2層目の粉末層の所定箇所を固化する(図5のステップS14)。具体的には、図7(c)に示すように、粉末層65の所定箇所66にレーザビ−ム22を照射して粉末層65の所定箇所66(硬化層)を選択的に加熱して固化する。
図5〜図7に示した処理により、第1層目および第2層目の造形処理(図4のステップS4)が完了する。
次に、図4のステップS5に示すように、積層された粉末層が最大高さHmaxに達したか否かを判断する。既に積層された粉末層の高さH(z)は、例えばステップS1で入力処理したデータを用いて計算することで求めることができる。具体的には、3次元CADのデータから1層の粉末層の高さが決定されるので、この1層の粉末層の高さに、既に積層された粉末層の層数を乗算することで、既に積層された粉末層の高さH(z)を求めることができる。また、既に積層された粉末層の高さH(z)は、積層された粉末層の画像を撮影し、この画像を解析することで求めてもよい。また、センサを用いて既に積層された粉末層の高さH(z)を求めてもよい。
既に積層された粉末層の高さH(z)が粉末層の最大高さHmaxに達した場合は、3次元造形物を形成する処理を終了する(ステップS5:Yes)。一方、既に積層された粉末層の高さH(z)が粉末層の最大高さHmaxに達していない場合は(ステップS5:No)、nの値を2だけ増加させて(ステップS6)、ステップS2からステップS5の処理を繰り返す。
上記で説明した例では、第2層目(z=2)の粉末層まで形成している状態であるので、既に積層された粉末層の高さH(2)は最大高さHmaxに達していない。よって、n=1+2=3として(ステップS6)、第3層目と第4層目の処理を開始する(ステップS2)。
次に、第3層目と第4層目の粉末層を形成する際のスキージ30の移動量を計算する(ステップS3)。具体的には、上記式1に傾斜角度α、積層する粉末層の最大高さHmax、既に積層された粉末層の高さH(2)を代入してマージン領域52における長さxを求める。そして、この求めたxに造形領域51の長さx(図2参照)を加えて、スキージ30のx方向における移動量(x+x)を決定する。
次に、第3層目および第4層目の造形処理を行う(ステップS4)。造形処理については、図5のフローチャート、及び図6、図7の断面図を用いて説明した場合と同様であるので、重複した説明は省略する。
そして、ステップS5において、既に積層された粉末層が最大高さHmaxに達したか否かを判断する。既に積層された粉末層の高さH(z)が粉末層の最大高さHmaxに達した場合は、3次元造形物を形成する処理を終了する(ステップS5:Yes)。一方、既に積層された粉末層の高さH(z)が粉末層の最大高さHmaxに達していない場合は(ステップS5:No)、ステップ6に進み、更にステップS2からステップS5の処理を繰り返す。このような処理を繰り返すことで、3次元造形物を形成することができる。
図8は、積層された粉末層の詳細を説明するための断面図である。図8に示す断面図では、6層の粉末層が積層されている状態を示している。上記で説明した積層造形方法では、スキージ30に粉末材料40を充填した後、スキージ30を往復させて粉末層を形成している。このとき、スキージ30には2層分の粉末材料40を充填しているので、スキージ30を1往復させる毎に粉末層が2層形成される。ここで、スキージ30は充填されている粉末材料40を連続的に放出するように構成されているので(粉末材料40の放出を止める機構がない)、図7(a)、(b)に示すように、第1層目の粉末層61のx軸プラス側の端部(終点)と、第2層目の粉末層65のx軸プラス側の端部(開始点)の水平方向における位置が同一となる。つまり、第1層目の粉末層61の長さ(x+x)と第2層目の粉末層65の長さ(x+x)が同一となる。
このように、スキージ30に2層分の粉末材料40を充填し、スキージ30を1往復させる毎に粉末層を2層形成する場合は、第n層目の粉末層のx軸プラス側の端部と、第n+1層目の粉末層のx軸プラス側の端部の位置が同一となる。しかし、粉末材料の粒子径は約20〜50μmであり、また各々の粉末層の厚さも約20〜50μmと同程度であるため、第n層目の粉末層のx軸プラス側の端部と、第n+1層目の粉末層のx軸プラス側の端部の位置を同一としても、粉末層の崩落は抑制される。
上記で説明した例では、図8に示すように、第n層目と第n+1層目の粉末層の長さを同一とし、nの値が図4のステップS6で増加する毎に第n層目と第n+1層目の粉末層の長さ(x+x)を短くして傾斜面45を形成している。換言すると、粉末層を2層形成する毎に、粉末層のマージン領域52における長さxを短くすることで傾斜面45を形成している。
また、上記で説明した積層造形方法では、スキージ30に粉末材料40(2層分)を充填した後、スキージ30を往復させて粉末層を2層形成している場合について説明した。しかし本実施の形態では、スキージ30を往復させて粉末層を形成する際に、1往復毎に粉末層を1層形成するようにしてもよい。
つまり、スキージ30に1層分の粉末材料を充填し、スキージ30を往復させて粉末層を1層形成し(つまり、往路で粉末層を形成し、復路では粉末層を形成しない)、粉末層の所定箇所を固化し、再度、スキージ30に1層分の粉末材料を充填し、スキージ30を往復させて粉末層を1層形成し、粉末層の所定箇所を固化する動作を繰り返すことで3次元造形物27を形成してもよい。この場合は、図4に示したフローチャートのステップS2を「第n層の処理を開始(初期値n=1)」とし、ステップS6を「n=n+1」とする。
図9は、本発明の課題を説明するための図である。図9に示すように、ステージ12の上の一部の領域に粉末層126を積層した場合は、積層された粉末層126の側面が側壁に囲まれない箇所120が生じ、当該箇所120において粉末層126が崩落するおそれがあるという問題があった。
そこで本実施の形態にかかる積層造形方法では、図2に示すように、積層された粉末層26の側面のうち側壁に囲まれていない箇所(マージン領域52)が、3次元造形物27の近傍からステージ12側に向かって傾斜する傾斜面45を有するように各々の粉末層26を積層している。このとき、この傾斜面45と水平面との成す傾斜角度αが、粉末層26を構成している粉末材料に基づき決定された安息角以下となるようにしているので、積層された粉末層26の端部(マージン領域52)が崩落することを抑制することができる。
特に、スキージ30を往復させて粉末層を2層形成する場合は、次のような問題が生じる。スキージ30を往復させて粉末層を2層形成する場合は、予めスキージ30の空隙に粉末層2層分の粉末材料40を充填する。しかし、図9に示すように、スキージ30をx軸プラス方向(往方向)に移動して第n層目の粉末層を形成した後、第n層目の粉末層の端部153で粉末層が崩落すると、第n層目の粉末層の端部153側に位置しているスキージ30から粉末材料40が放出され続ける。このため、スキージ30をx軸マイナス方向(復方向)に移動して第n+1層目の粉末層を形成する際に、粉末材料40が不足してしまうという問題が生じる。
しかし、上記で説明した本実施の形態にかかる積層造形方法を用いることで、積層された粉末層の端部が崩落することを抑制することができるので、スキージ30をx軸マイナス方向(復方向)に移動して第n+1層目の粉末層を形成する際に、粉末材料40が不足してしまうという問題を解決することができる。
次に、図10を用いて、本実施の形態にかかる積層造形方法の他の構成例について説明する。図10に示す構成例では、ワーク72の上に3次元造形物75を連続的に形成する場合について説明する。積層造形装置は3次元形状の積層造形物を高精度に製造することができる。このため、ワーク72の上に精度が必要な3次元造形物75を連続的に形成する場合にこの技術を用いることができる。
図10に示すように、まず、ワーク72と土留71をステージの上に配置する。土留71の高さはワーク72の高さと同一とする。土留71は、y軸方向に伸びるように配置されている。その後、土留71と造形槽13の側壁13_1とで囲まれている空間に粉末材料73を敷き詰める。このとき、ワーク72の上面と粉末材料73の上面とが同一面となるようにする。
その後、図4、図5に示したフローチャートにしたがって、ワーク72および粉末材料73の上に粉末層26を積層する工程と、粉末層26の所定箇所の粉末を固化する工程とを繰り返すことで、ワーク72の上に3次元造形物75を形成する。なお、3次元造形物75を形成する積層造形方法については、上記で説明した場合と同様であるので重複した説明は省略する。
以上で説明した本実施の形態にかかる発明により、粉末層を積層する際に粉末層が崩落することを抑制することが可能な積層造形方法を提供することができる。
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、センサを用いて粉末層の内部応力を測定している点が実施の形態1で説明した積層造形方法と異なる。これ以外は実施の形態1で説明した積層造形方法と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図11は、本実施の形態にかかる積層造形方法を説明するための断面図であり、実施の形態1で説明した図10の構成に対応している。図11に示すように、ステージ12の上にはワーク72と土留71が配置されている。土留71と造形槽13の側壁13_1とで囲まれている空間には粉末材料73が敷き詰められている。そして、粉末層26を積層する工程と、粉末層26の所定箇所の粉末を固化する工程とを繰り返すことで、ワーク72の上に3次元造形物75を形成する。
本実施の形態では、マージン領域52の粉末層26の内部にセンサ81を埋設し、このセンサ81を用いて粉末層26の傾斜面85方向(x軸方向)への内部応力σを測定している。そして、この測定値に基づいて傾斜面85の傾斜角度を調整している。センサ81は粉末層26の積層方向に伸びるように配置されており、粉末層26の積層に応じてセンサ81を積層方向に変位可能に構成されている。センサ81には、例えば水平方向の応力を測定可能な応力センサを用いることができる。
図12は、本実施の形態にかかる積層造形方法を説明するためのフローチャートである。3次元造形物を形成する際は、まず3次元造形物の形成に必要な各々のデータを積層造形装置1の制御部に入力する(ステップS21)。なお、図12のフローチャートのステップS21は、図4に示したフローチャートのステップS1と同様であるので、重複した説明は省略する。本実施の形態では、ステップS21において、更に崩落の閾値を入力する。ここで、崩落の閾値とは、粉末層26の内部応力σの値がこれ以上高くなると粉末層26が崩落する危険性があることを示す閾値である。崩落の閾値は、予め実験やシミュレーション等によって決定することができる。
次に、第n層目と第n+1層目(nは1以上の整数。初期値はn=1)の処理を開始する(ステップS22)。次に、第n層目と第n+1層目の粉末層を形成する際のスキージ30の移動量を計算する(ステップS23)。なお、図12に示すフローチャートのステップS22、S23は、図4に示したフローチャートのステップS2、S3に対応している。
次に、センサ81で測定された粉末層26の内部応力σの値(センサ測定値)が閾値を超えたか否か判断する(ステップS24)。センサ81で測定された粉末層26の内部応力σの値が閾値を超えていない場合は(ステップS24:No)、センサ81の高さを調整(ステップS26)した後、造形処理(ステップS27)を開始する。センサ81の高さを調整する際は、粉末層26の積層に応じてセンサ81を積層方向に変位させる。このとき、センサ81の上端部がスキージ30と衝突しないように、且つ、センサ81がレーザビ−ム22の熱の影響を受けないように、センサ81の高さを調整する。このようにセンサ81の高さを調整することで、粉末層26の内部応力σを正確に測定することができる。造形処理(ステップS27)については、図4のフローチャートに示したステップS4(図5のフローチャート参照)と同様である。
そして、造形処理(ステップS27)後、積層された粉末層が最大高さHmaxに達したか否かを判断する。既に積層された粉末層の高さH(z)が粉末層の最大高さHmaxに達した場合は、3次元造形物を形成する処理を終了する(ステップS28:Yes)。一方、既に積層された粉末層の高さH(z)が粉末層の最大高さHmaxに達していない場合は(ステップS28:No)、ステップ29に進み、更にステップS22からステップS28の処理を繰り返す。このような処理を繰り返すことで、3次元造形物を形成することができる。なお、図12に示すフローチャートのステップS28、S29はそれぞれ、図4のフローチャートに示したステップS5、S6と同様である。
また、ステップS24において、センサ81で測定された粉末層26の内部応力σの値が閾値を超えている場合は(ステップS24:Yes)、積層された粉末層26が崩落するおそれがあるので、スキージ30の移動量を再計算する(ステップS25)。例えば、図11に示すように、粉末層86を積層する際に、センサ81で測定された粉末層26の内部応力σの値が閾値を超えていると判断された場合、粉末層86以降の粉末層の傾斜面の傾斜角度βが傾斜角度αよりも小さくなるようにする(βは安息角よりも小さい角度)。このように、粉末層86以降の粉末層の傾斜面の傾斜角度βを小さくすることで、積層された粉末層26が崩落することを抑制することができる。
以上で説明したように、本実施の形態にかかる積層造形方法では、粉末層26の内部にセンサ81を埋設し、このセンサ81を用いて粉末層26の傾斜面85方向への内部応力σを測定している。そして、この測定値が崩落の閾値を超えた場合、傾斜面85の傾斜角度が小さくなるようにしている。よって、粉末層26の崩落を事前に検知することができるので、粉末層26の崩落を確実に抑制することができる。
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
1 積層造形装置
11 ベース
12 定盤(ステージ)
13 造形槽
14 造形槽支持部
15 造形槽駆動部
16 支柱
17 支持部
18 レーザスキャナ
19 光ファイバ
20 レーザ発振器
22 レーザビーム
25 造形部
26 粉末層
27 3次元造形物
30 スキージ
31 第1のスキージ
32 第2のスキージ
33 空隙
35 粉末ガイド部
37 粉末分配器
38 配管
39 粉末供給部
45 傾斜面
51 造形領域
52 マージン領域

Claims (6)

  1. ステージの上に粉末層を積層する工程と、前記粉末層の所定箇所の粉末を固化する工程と、を繰り返すことで前記ステージの上に3次元造形物を形成する積層造形方法であって、
    前記積層された粉末層は、前記3次元造形物が形成される造形領域と、前記造形領域と隣接すると共に前記造形領域の端部における前記粉末層の崩落を抑制可能なマージン領域と、を備え、
    前記粉末層を積層する工程では、前記マージン領域が、前記3次元造形物の近傍から前記ステージ側に向かって傾斜する傾斜面を有するように各々の粉末層を積層し、
    前記マージン領域において、前記傾斜面と水平面との成す傾斜角度は、前記粉末層を構成している粉末材料に基づき決定された安息角以下であり、
    前記マージン領域における粉末層の水平方向における長さは、
    形成する前記3次元造形物のデータを用いて前記造形領域における粉末層の最大高さを決定する工程と、
    前記粉末層を構成する粉末材料に基づいて前記安息角を決定する工程と、
    前記決定された最大高さと前記決定された安息角とに基づいて前記マージン領域における粉末層の長さを決定する工程と、を用いて予め求められ、
    前記粉末層を積層する工程では、前記マージン領域における粉末層の長さが前記予め求められた粉末層の長さとなるように、前記各々の粉末層を積層する、
    積層造形方法。
  2. 記マージン領域における前記各々の粉末層の水平方向における長さをx、前記傾斜面と水平面との成す傾斜角度をα(αは安息角以下である)、前記積層する粉末層の最大高さをHmax、既に積層された粉末層の高さをH(z)とした場合、前記マージン領域における前記各々の粉末層の長さxを下記の式で求めた値とする、請求項1に記載の積層造形方法。
    Figure 0006455328
  3. 前記粉末層を積層する工程は、
    前記粉末層を積層するスキージに2層分の粉末材料を充填する工程と、
    前記スキージを水平方向と平行な往方向に移動して第n層(nは1以上の整数)の粉末層を形成する工程と、
    前記第n層の粉末層の所定箇所の粉末を固化した後、前記スキージを前記往方向と逆方向である復方向に移動して第n+1層の粉末層を形成する工程と、を備える、
    請求項1または2に記載の積層造形方法。
  4. ワークと、当該ワークと同一の高さの土留と、を前記ステージの上に配置し、
    前記土留と造形槽の側壁とで囲まれている空間に、前記ワークの上面と前記土留の上面と粉末材料の上面とが同一面となるように粉末材料を敷き詰め、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の積層造形方法を用いて前記ワークの上に前記3次元造形物を形成する、
    積層造形方法。
  5. 前記積層された粉末層の内部に埋設されたセンサを用いて前記積層された粉末層の前記傾斜面方向への内部応力を測定する工程を更に備え、
    前記測定された内部応力が所定の閾値を超えている場合、前記傾斜面の前記傾斜角度を小さくする、
    請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層造形方法。
  6. 前記センサは前記粉末層の積層方向に伸びるように配置されており、前記粉末層の積層に応じて前記センサを前記積層方向に変位させる、請求項に記載の積層造形方法。
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