JP6453245B2 - Glut4エンドサイトーシス抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、糖尿病治療効果を有するリン脂質化合物、より詳細には1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)を有効成分として含有する糖尿病治療薬等に関する。
糖尿病は、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が高くなり、尿にも糖が出る病気である。インスリンは、膵臓のβ細胞で産生、分泌され、肝臓や筋肉でグルコースからグリコーゲン(貯蔵型のグルコース)への合成を促進し、肝臓でのグリコーゲンからグルコースへの分解を抑えて、血糖値の上昇を抑える。
糖尿病は、過食、運動不足、肥満、ストレス、遺伝的素因が主たる理由で患者が増えている。
糖尿病はインスリンが絶対的に不足する1型糖尿病と相対的に不足する2型糖尿病に大別される。1型の治療にはインスリン注射が基本であり、2型の治療には食事、運動療法が基本であるが、血糖のコントロールが悪い場合には2型でも薬物療法が必要になる。薬物療法としては経口糖尿病治療薬あるいはインスリンが用いられるが、いずれも副作用の点、QOLの点等から改善が求められている。
また、内臓脂肪の蓄積に起因して高血圧、高脂血症、糖尿病等の生活習慣病が発症した状態をメタボリックシンドロームと称し、動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳梗塞等)の発症リスクを高めるものとして広く認知されるようになっている。従って糖尿病を予防・治療することができれば、必然的にメタボリックシンドロームの予防・治療に有効である。
リン脂質は、種々の生物学的活性を有し、例えばある種のリン脂質は認知機能の改善や神経変性疾患に有効であることが報告されている。例えば、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンや1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが、スコポラミンによって誘導された空間学習障害及び記憶障害、あるいは軽度の認知障害や痴呆を改善することが報告されている(非特許文献1、2)。
また、ホスファチジルエタノールアミンは、生体膜の主要成分の1つであるリン脂質であり、ホスファチジルセリン等とともに健康食品として市販されているが、ホスファチジルエタノールアミンの中でも、特にジリノレオイル・ホスファチジルエタノールアミン(脂肪酸として2つのリノール酸を含む)が、細胞死誘導抑制活性、特に小胞体ストレス抑制活性を有すること、当該活性により、ジリノレオイル・ホスファチジルエタノールアミンが医薬用途、特に神経変性疾患の予防および/または治療のために使用され得ることが報告されている(特許文献1)。
また、生体膜モデルやリポソーム調製等に用いられるリン脂質も報告されている。
特開2005−247728号公報
Yaguchi T, Nagata T, Nishizaki T. Dilinoleoylphosphatidylcholine ameliorates scopolamine-induced impairment of spatial learning and memory by targeting alpha-7 nicotinic ACh receptors. Life Sci 2009;84:263-6 Yaguchi T, Nagata T, Nishizaki T. 1-Palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine improves cognitive decline by enhancing long-term depression. Behav Brain Res 2009;204:129-32
本発明は、糖尿病治療効果において、新規な作用機序を有する化合物を見出し当該化合物の医薬用途を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)が糖尿病治療に有用な優れた薬理作用を有することを見出して本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]DOPEを有効成分として含有する、GLUT4(グルコーストランスポーター4)エンドサイトーシス抑制剤。
[2]GLUT4エンドサイトーシスの抑制がPKCα活性化抑制によるものである、上記[1]記載の剤。
[3]DOPEを有効成分として含有する、PKCα活性化抑制剤。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の剤を含む、糖尿病治療薬。
[5]DOPEを有効成分として含有する、糖尿病治療薬。
[6]糖尿病が2型糖尿病である、上記[4]又は[5]記載の治療薬。
[7]DOPEを有効成分として含有する、メタボリックシンドローム治療薬。
[8]研究用試薬である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[9]有効量のDOPEをそれを必要とする対象に投与することを含む、糖尿病の治療方法。
[10]糖尿病が2型糖尿病である、上記[9]記載の方法。
[11]GLUT4エンドサイトーシスを抑制することを特徴とする、上記[9]記載の方法。
[12]GLUT4エンドサイトーシスの抑制がPKCα活性化抑制によるものである、上記[11]記載の方法。
[13]糖尿病の治療に使用するためのDOPE。
[14]糖尿病が2型糖尿病である、上記[13]記載のDOPE。
[15]GLUT4エンドサイトーシスを抑制することを特徴とする、上記[13]記載のDOPE。
[16]GLUT4エンドサイトーシスの抑制がPKCα活性化抑制によるものである、上記[15]記載のDOPE。
[17]DOPEで細胞を処理することを特徴とする、GLUT4エンドサイトーシスを抑制する方法。
[18]GLUT4エンドサイトーシスの抑制がPKCα活性化抑制によるものである、上記[17]記載の方法。
[19]有効量のDOPEをそれを必要とする対象に投与することを含む、メタボリックシンドロームの治療方法。
DOPEは、糖尿病の治療に優れた薬理作用(タンパク質リン酸化酵素Cα(PKCα)活性化抑制作用、グルコーストランスポーター4(GLUT4)のエンドサイトーシス抑制作用及び血糖値低下作用)を有し、従って糖尿病治療薬として有用である。またかかる薬理作用に基づいて種々の試薬としても有用である。
図1は、分化した3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞において、DOPEがGLUT4の細胞膜分布を増加させる作用を有することを示したグラフである。各種リン脂質誘導体で処理しない(Control)か、あるいは1μMで処理して20分後、細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった。グラフ中、各カラムは、比:(細胞膜画分におけるc−mycのシグナル強度)/(全細胞におけるc−mycのシグナル強度)の平均値(±SD)を表している(各実験においてn=4)。P値、ANOVA (ボンフェローニ補正)。NS; not significant. DOPE; 1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine、DAPE; 1,2-diarachidonoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine、DPPE; 1,2-dipalmitoleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine、DLPE; 1,2-dilinoleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine。 図2は、DOPEのGLUT4細胞膜分布増加作用が、GLUT4のエンドサイトーシスを抑制することによるものであることを示したグラフである。3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞をインスリン(100 nM)で30分間(-30 〜 0 min)処理し、次いで、洗い流してインスリンを除去し(0 min)、DOPE(10 mM)を細胞外溶液に添加した。120分間インキュベートした後、細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった。グラフ中、各カラムは、比:(細胞膜画分におけるc−mycのシグナル強度)/(全細胞におけるc−mycのシグナル強度)の平均値(±SD)を表している(各実験においてn=4)。P値、ANOVA (ボンフェローニ補正)。NS; not significant. 図3は、PKCαをノックダウンすることにより、GLUT4細胞膜分布が増加することを示したグラフである。ネガティブコントロールであるNC siRNA(NC)又はPKCα siRNA(PKCα KD)をトランスフェクトした3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった。グラフ中、各カラムは、比:(細胞膜画分におけるc−mycのシグナル強度)/(全細胞におけるc−mycのシグナル強度)の平均値(±SD)を表している(各実験においてn=4)。P値、unpaired t-test. 図4は、PKCαをノックダウンすることにより、GLUT4のエンドサイトーシスが抑制され、GLUT4細胞膜分布が増加することを示したグラフである。ネガティブコントロールであるNC siRNA(NC)又はPKCα siRNA(PKCα KD)をトランスフェクトした3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞をインスリン(100 nM)で30分間(-30 〜 0 min)処理し、次いで、洗い流してインスリンを除去した(0 min)。120分間インキュベートした後、細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった。グラフ中、各カラムは、比:(細胞膜画分におけるc−mycのシグナル強度)/(全細胞におけるc−mycのシグナル強度)の平均値(±SD)を表している(各実験においてn=4)。P値、ANOVA (ボンフェローニ補正)。NS; not significant. 図5は、DOPEそれ自身はPKC活性化に関与しないが、TPAによって活性化されたPKCαを抑制する作用を有することを示したグラフである。無細胞系で、PKC活性をモニタリングした。(A)DOPE非存在下あるいは存在下(100μM)で所定のPKCアイソザイムを評価した。グラフ中、各カラムは、PKC活性(pmol/min)の平均値(±SEM)を表している(n=4)。P値、DOPE非存在下での各PKCアイソザイム活性化と比べて、Dunnett’s test.(B)DOPEの非存在下(コントロール)あるいは存在下(100μM)、TPAの非存在下あるいは存在下(1μM)でPKCαの活性を評価した。グラフ中、各カラムは、PKCα活性(pmol/min)の平均値(±SEM)を表している(n=4)。P値、Dunnett’s test.TPA; 12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate 図6は、DOPEがC57BL/KsJ−leprdb/leprdbマウスにおいて血清グルコースレベルを低下させることを示すグラフである。マウスをグルコース飢餓の状態で12時間置いた後、グルコース(2g/kg)を経口投与し、所定の時間に血液を回収して血清グルコースアッセイを行なった。グルコースを投与する30分前に所定の濃度(0-10 mg/kg)でDOPEを経口投与した。グラフ中、各ポイントは血清グルコース濃度の平均値(±SEM)を表している(各実験においてn=5)。P値、Fisher's PLSD(制約付最小有意差検定)
本発明において有効成分として用いられる1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(本明細書中、必要に応じてDOPEと省略)は、以下の構造式を有する。DOPEは生体膜モデルやリポソーム調製に用い得ることが知られているが、それ自体に特定の効能を有することは報告されていない。
DOPEは、自体公知の方法によって製造することができる。また、DOPEには光学異性体が存在するが、このような異性体及びそれらの混合物の全てが本発明の範囲に含まれる。DOPEは商業的にも入手可能であり、例えばAvanti Polar Lipids (Alabaster, AL, USA)等から市販されている。
本発明においてDOPEはまた、その塩として用いられてもよい。かかる塩は、特に限定されないが、医薬又は食品として許容され得る塩が好ましく、例えば無機塩基(例、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属;アルミニウム、アンモニウム)、有機塩基(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン)、無機酸(例、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸)、有機酸(例、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、塩基性アミノ酸(例、アルギニン、リジン、オルニチン)又は酸性アミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)との塩などが挙げられる。
本明細書中で用いられる場合、被験体は哺乳動物であり得る。このような哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、げっ歯類(例、マウス、ラット、モルモット)、ペット(例、イヌ、ネコ、ウサギ)、使役動物又は家畜(例、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ)が挙げられるが、ヒトが好ましい。
DOPEは、実施例にてデータで示されるように、(1)PKCα活性化抑制作用、(2)GLUT4のエンドサイトーシス抑制作用、及び(3)血糖値低下作用を有する。
(1)PKCα活性化抑制作用
PKCは、レセプターではないセリン−トレオニンプロテインキナーゼの最大遺伝子ファミリーの一つとして同定された(Kikkawa et al., J. Biol. Chem., 257, 13341 (1982))。多数の生理的シグナリングメカニズムが、この酵素によるものであると考えられている。PKC遺伝子ファミリーは、現在、4つのサブグラウンドに分類される以下の遺伝子から構成される:1)古典的なPKCα、β、βおよびγ、2)新規なPKCδ、ε、ηおよびθ、3)異型のPKCζ、λ、ηおよびι、並びに4)PKCμ。PKCαは2つのC1ドメイン(C1a,C1b)とC2ドメイン及び触媒ドメインで構成されている。PKCαは癌等において他のPKCと全く異なる挙動を取り、発癌に極めて重要なシグナルであることが報告されている。従って、PKCα活性化抑制剤は抗癌剤として使用できる可能性がある。
さらに、本願発明ではPKCα活性化抑制がGLUT4のエンドサイトーシスを抑制する作用を誘導することを明らかにした。従って、PKCα活性化抑制剤は糖尿病治療薬として使用できる可能性がある。
(2)GLUT4のエンドサイトーシス抑制作用
脂肪細胞や骨格筋細胞に発現するGLUT4は、インスリンの刺激がない場合は細胞膜上にはほとんど露出しておらず、細胞内の小胞群に組み込まれた状態で存在している。インスリンの刺激は、この細胞内小胞に存在するGLUT4の細胞膜上への運搬を促進することにより、細胞膜表面に露出するGLUT4の量を増加させ、グルコースを細胞内へ取り込むことにより血糖値を下げる。インスリンによって誘導される糖の取り込み亢進は生理的に重要であるが、糖尿病の場合にはこの生理現象に著しい障害が生じていることが知られている。インスリンの刺激がなくなるとGLUT4は再び細胞膜上から細胞内の小胞群へと内部移行する(エンドサイトーシス)。
何らかの原因で膵臓のβ細胞が死滅することで、インスリン分泌障害をきたし糖尿病になる(1型糖尿病)。現在、1型糖尿病の治療は体外からインスリンを注射するしか手だてがない。一方、インスリン刺激に応答した糖取り込みが著しく減弱(インスリン抵抗性=インスリン反応性の減弱)することも糖尿病発症の引き金となる(2型糖尿病)。2型糖尿病の治療には、インスリン分泌刺激剤、腸管での糖吸収阻害剤、2糖類分解抑制剤、DPP−4阻害剤、PPARγ活性化剤等が用いられている。
糖の細胞内への取込みが、細胞膜上のGLUT4を介することから、細胞膜上のGLUT4の分布を増加する、あるいは減少を抑える作用を有する薬剤は、糖の細胞内取り込みを亢進することを可能とし、1型、2型糖尿病に関わらず糖尿病治療薬としてその効果が期待できる。
ここで、「細胞」とはグルコースを取込むことができる細胞であれば特に限定されないが、脂肪細胞、骨格筋細胞、肝細胞等が挙げられる。
(3)血糖値低下作用
DOPEはインスリンを必要とせずに血糖値を低下させることができるので、2型糖尿病の治療に有用である。
これらの優れた薬理作用により、本発明は糖尿病の予防及び/又は治療薬として、またメタボリックシンドロームの予防及び/又は治療薬として有用である(以下、本発明の医薬とも称する)。本明細書中で用いられる場合、「予防」とは、症状を示さない被験体において、該症状が顕在化するのを防ぐことを意味し、「治療」とは、症状を示す被験体において、該症状を軽減すること、あるいは該症状の悪化を防ぐこと又は遅延させることを意味する。
DOPEのかかる薬理作用により、本発明はPKCα活性化を抑制する方法、GLUT4のエンドサイトーシスを抑制する方法、糖尿病の予防及び/又は治療方法、並びにメタボリックシンドロームの予防及び/又は治療方法(以下、単に本発明の方法とも称する)を提供することができる。
本明細書中で用いられる場合、DOPEで処理する対象となる細胞は、GLUT4を発現し、グルコースを取込むことができる細胞であれば特に限定されないが、脂肪細胞、骨格筋細胞、肝細胞等が挙げられる。これらの細胞は前駆細胞から自体公知の手法により分化誘導したものであってもよい。例えば脂肪細胞は3T3L1線維芽細胞から分化誘導され得る。
ここで「処理」とは、上記細胞とDOPEとを必要十分な時間接触させることであり、その時間は所望される効果や用いる細胞の種類によっても異なるが、通常、0.1〜3時間、好ましくは0.2〜2時間程度である。簡便には、DOPEを含有する培養液中で当該細胞を培養することによって実施される。
本発明の医薬は、治療する各々の個別の患者の年齢及び状態に応じて変動するが、静脈内投与の場合には、DOPEの1日用量としてヒト又は動物の体重1kg当たり0.001〜100mg、筋肉内投与の場合には、DOPEの1日用量としてヒト又は動物の体重1kg当たり0.001〜10mg、経口投与の場合には、DOPEの1日用量としてヒト又は動物の体重1kg当たり0.01〜100mgが、糖尿病の予防及び/又は治療のため、あるいはメタボリックシンドロームの予防及び/又は治療のために一般的に与えられる。
本発明の医薬は、有効成分であるDOPE以外に、任意の添加物、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定化剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されない。
一つの実施態様において、本発明の医薬は経口投与に好適な製剤として処方され得る。経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、顆粒剤、散剤又は錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
別の実施態様において、本発明の医薬は非経口的な投与に好適な製剤として処方され得る。非経口的な投与(例、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、局所注入など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張無菌の注射液剤があり、これには抗酸化剤、緩衝液、制菌剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解又は懸濁すればよい状態で保存することもできる。
DOPEは、食品として提供することができる。有効成分であるDOPEは、上述の通り、哺乳動物(例、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)に対して(1)PKCα活性化抑制作用、(2)GLUT4のエンドサイトーシス抑制作用、及び(3)血糖値低下作用を有し、糖尿病の予防・治療、あるいはメタボリックシンドロームの予防・治療に効果的な機能性食品として提供することができる。
本発明において「食品」とは、医薬品及び医薬部外品以外の全ての飲食物を意味する。例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、及びいわゆるサプリメントを含むが、これらに限定されない。
本発明の医薬あるいは食品は、該医薬あるいは該食品の単位摂取量又はその分割量が個別に包装又は充填されたもの、あるいは多数の単位摂取量又はその分割量が包括的に包装又は充填されたものであり得る。
本発明の医薬あるいは食品が、単一の製剤あるいは食品として提供される場合には、該医薬あるいは食品の単位摂取量又はその分割量は、DOPEの単位摂取量又はその分割量である。
単位摂取量又はその分割量が個別に包装又は充填された医薬あるいは食品としては、例えば、単位摂取量又はその分割量を、通常の包装物(例えば、PTP(press through packing)シート、紙容器、フィルム(例、プラスチックフィルム)容器、ガラス容器、プラスチック容器)中に別々に包装又は充填したものが挙げられる。このように個別に包装又は充填された医薬あるいは食品は、さらに組み合わされて、1つの容器(例えば、紙容器、フィルム(例、プラスチックフィルム)容器、ガラス容器、プラスチック容器)中に一緒に包装又は充填されていてもよい。多数の単位摂取量又はその分割量が包括的に包装又は充填された医薬あるいは食品としては、例えば、多数の錠剤又はカプセル剤が区分されることなく1つの容器(例えば、紙容器、フィルム(例、プラスチックフィルム)容器、ガラス容器、プラスチック容器)中に包装又は充填されたものが挙げられる。本発明の医薬あるいは食品はまた、単位摂取量又はその分割量を、長期間の摂取に十分な数で含み得るが、例えば食品の場合であれば3日以上、好ましくは7日、10日、14日又は21日以上あるいは1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月以上の摂取に十分な数で含み得る。
さらに、DOPEは、上述の通り、(1)PKCα活性化抑制作用、(2)GLUT4のエンドサイトーシス抑制作用、及び(3)血糖値低下作用を有し、従って各種試薬としても提供され得る。当該試薬としては、具体的には、PKCα活性抑制剤、GLUT4エンドサイトーシス抑制剤等が挙げられる。当該試薬は、従来にない新しい作用メカニズムを有する、副作用の軽減された、及び/又はより効果が増強された、糖尿病やメタボリックシンドロームの予防及び/又は治療薬を開発する有用なツールとなる。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら制限されるものではない。
実施例1:DOPEが有するGLUT4のエンドサイトーシス抑制作用の検証
(材料と方法)
1.細胞培養
GLUT4mycを発現する3T3L1−GLUT4myc線維芽細胞株を用いた。当該細胞は、ヒトc−MYCエピトープ(14アミノ酸)を第1エクトドメインに挿入して構築される。細胞を10%(v/v)ウシ血清、ペニシリン(最終濃度,100 U/ml)及びストレプトマイシン(最終濃度, 0.1 mg/ml)を添加したDulbecco’s Modified Eagles Medium(DMEM)中、5%CO及び95%空気の湿気のある環境で37℃で培養した。細胞がコンフルエントな状態に到達したら(0日目)、線維芽細胞から脂肪細胞へと分化させるために、培地を、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS),1μMデキサメサゾン,0.5mM 3−イソブチル−メチル−キサンチン及び0.1mg/mlインスリンを添加したDMEMに交換した。3日目、7日目及び11日目で、10%(v/v)FBSを添加したDMEMに培地交換した。14日目で、脂肪細胞へと分化した細胞を実験に使用した。
2.GLUT4動員のモニタリング
3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞を0.2%(w/v)ウシ血清アルブミンを含有し、10mMグルコースを添加したKrebs-Ringer-HEPES buffer[136 mM NaCl, 4.7 mM KCl, 1.25 mM CaCl2, 1.25 mM MgSO4及び20 mM HEPES, pH 7.5]中、37℃で1時間インキュベートした。細胞を1%(v/v)プロテアーゼインヒビターカクテル(Nacalai Tesque, Kyoto, Japan)を含む氷冷したミトコンドリアバッファー[210 mM マンニトール, 70mM シュクロース, 及び1 mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA), 10 mM HEPES, pH 7.5]中、ソニケーションによりホモジナイズした。続いて、ホモジネートを4℃で5分間、3,000rpmで遠心分離した。上清をさらに4℃で15分間、11,000rpmで遠心分離した。回収した上清を4℃で60分間、100,000gで超遠心分離し、細胞質画分と細胞膜画分に分離した。上清を細胞質画分として、ペレットを細胞膜画分としてそれぞれ用いた。細胞質成分及び細胞膜成分が首尾よく分離できたかどうかは細胞質成分のマーカーであるLDHに対する抗体と、細胞膜成分のマーカーであるカドヘリンに対する抗体とを用いたウェスタンブロット解析によって確認した。
各画分の蛋白質濃度はBCA蛋白質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を用いて測定した。細胞膜画分の蛋白質を1%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するミトコンドリアバッファーに再懸濁した。各画分の蛋白質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離し、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜に転写した。ブロッティング膜は5%(w/v)BSAを含むTBS−T[150 mM NaCl, 0.1% (v/v) Tween20及び20 mM Tris, pH7.5]でブロッキングし、抗c−myc抗体(Merck Millipore, Darmstadt, Germany)と反応させ、その後ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体と反応させた。免疫反応性は、ECLキット(Invitrogen)を用いて検出し、化学発光検出システム(chemiluminescence detection system; GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を用いて可視化した。シグナル密度は画像解析ソフト(Image Gauge software; GE Healthcare)を用いて測定した。
3.siRNA(small interfering RNA)の構築とトランスフェクション
Akt1/2 siRNAはSanta Cruz Biotechnology, Inc. (Santa Cruz, CA, USA)から購入した。PKCα siRNA(PKCα KD)及びネガティブコントロールであるsiRNA(NC)はAmbion (Carlsbad, CA, USA)から購入した。
PKCα用のsiRNAの配列としては、5'-GAACGUGCAUGAGGUGAAAtt-3' (配列番号1)及び5'-UUUCACCUCAUGCACGUUCtt-3' (配列番号2)を用いた。
NC siRNAは、同じGC含量及び核酸組成を有するスクランブル配列を用いた。
各siRNAの細胞へのトランスフェクションにはリポフェクトアミン試薬(Invitrogen)を用いた。トランスフェクション48時間後の細胞を実験に用いた。
4.ウェスタンブロッティング
3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞を0.2%(w/v)ウシ血清アルブミンを含有し、10mMグルコースを添加したKrebs-Ringer-HEPES buffer[136 mM NaCl, 4.7 mM KCl, 1.25 mM CaCl2, 1.25 mM MgSO4及び20 mM HEPES, pH 7.5]中、37℃で1時間インキュベートした。細胞を各種ホスホエタノールアミンの存在下又は非存在下で10分間インキュベートした。次いで、細胞を1%(v/v)プロテアーゼインヒビターカクテルを含む溶解バッファー[150 mM NaCl, 20 mM エチレンジアミン四酢酸, 0.5% (v/v) Nonidet P-40 及び 50 mM Tris, pH 7.4]で溶解し、4℃で5分間、3,000rpmで遠心分離した。上清を全細胞溶解物として用いた。
ウェスタンブロッティングのために、蛋白質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分離し、ポリビニリデンジフルオライド膜に転写した。ブロッティング膜は5%(w/v)BSAを含むTBS−T[150 mM NaCl, 0.1% (v/v) Tween20及び 20 mM Tris, pH7.5]でブロッキングし、続いて、それぞれphospho-Thr308-Akt1/2[pT308]、phospho-Ser-Akt1/2[pS473]、Akt1/2に対する抗体(Cell Signaling Technology, Inc., Danvers, MA, USA)、あるいはβ−アクチンに対する抗体(Sigma, St. Louis, MO, USA)と反応させた。洗浄後、膜をホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ウサギIgG抗体と反応させた。免疫反応性は、ECLキット(GE Healthcare, Piscataway, NJ, USA)を用いて検出し、化学発光検出システム(chemiluminescence detection system;GE Healthcare)を用いて可視化した。各サンプルの蛋白質濃度はBCAプロテインアッセイキット(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を用いて測定した。
5.GLUT4内部移行(取込み)アッセイ
3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞を0.2%(w/v)BSAを含有し、10mMグルコースを添加したKrebs-Ringer-HEPES buffer中、37℃で3時間インキュベートし、次いで細胞を100nMのインスリンと37℃で30分間インキュベートした。氷冷したKrebs-Ringer-HEPES bufferで3回洗浄した後、細胞を予め温めておいたKrebs-Ringer-HEPES buffer中、DOPEの存在下又は非存在下、37℃で120分間培養した。
(結果)
各種リン脂質誘導体で処理しない(Control)か、あるいは処理した細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった結果を図1に示す。DOPEで処理した場合のみ有意に細胞膜におけるGLUT4の分布を増加させた。この結果は、DOPEがGLUT4の細胞膜分布を増加させる作用があり、他のリン脂質誘導体にはその作用がないことを示している。
インスリンで前処理(洗い流して除去)した後にDOPE処理した(あるいは未処理の)細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった結果を図2に示す。DOPE非存在下では、インスリン刺激でGLUT4は細胞膜上に輸送されるが、120分後にはエンドサイトーシスにより細胞内へ取込まれた。これに対して、DOPE存在下では、インスリン刺激で輸送された細胞膜上GLUT4のエンドサイトーシスが抑制されていた。
ネガティブコントロールであるNC siRNA(NC)又はPKCα siRNA(PKCα KD)をトランスフェクトした3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった結果を図3に示す。PKCα siRNAをトランスフェクションした細胞の細胞膜におけるGLUT4分布が有意に増加していた。この結果は、PKCαノックダウンにより細胞膜上GLUT4分布が増加することを示している。換言すると、PKCαは細胞膜上GLUT4分布を減少させることを示唆している。
ネガティブコントロールであるNC siRNA(NC)又はPKCα siRNA(PKCα KD)をトランスフェクトした3T3L1−GLUT4myc脂肪細胞を用い、インスリンで前処理(洗い流して除去)した後にDOPE処理した(あるいは未処理の)細胞を溶解し細胞質(C)画分と細胞膜(M)画分に分離し、次いで抗c−myc抗体を用いてウェスタンブロッティングを行なった結果を図4に示す。
インスリン刺激でGLUT4は細胞膜上に輸送され、その後、エンドサイトーシスにより細胞内へ取込まれ、細胞膜上のGLUT4が減少するが、PKCα siRNAをトランスフェクションした細胞では当該減少が抑制された。この結果は、インスリン刺激で輸送された細胞膜上GLUT4のエンドサイトーシスがPKCαノックダウンで抑制されることを示している。換言すれば、PKCαはGLUT4エンドサイトーシスを刺激することを示唆している。
実施例2:DOPEが有するPKCα活性化抑制作用の検証
(材料と方法)
セルフリーPKCアッセイ
無細胞系でのPKC活性は、既報(Kanno T et al. J Lipid Res 2006;47:1146-1156)に記載された方法によって定量した。要すれば、合成PKC基質ペプチド(10μM)を20mM Tris−HCl(pH 7.5),5mM酢酸マグネシウム,10μM ATPを含むメディウム中、DOPE(100μM)の存在下又は非存在下、1μMのTPA(12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate)の存在下又は非存在下で、30℃、5分間種々のPKCアイソザイムと反応させた。PKC−δや−ε等の新規なPKCに対してはCa2+−freeのメディウムを用い、それ以外のPKCアイソザイムに対しては100μM CaClを含むメディウムを用いた。逆相HPLC(LC-10ATvp, Shimadzu Co., Kyoto, Japan)に負荷し、基質ペプチドのピークと新しい生成物のピークを214nmの吸光度で測定した。リン酸化されていないPKC基質ペプチドとリン酸化されているPKC基質ペプチドの面積を測定し(総面積は本実施例で用いたPKC基質ペプチドの濃度に相当する)、リン酸化された基質ペプチドの量を算出した。1分間当たりにリン酸化された基質ペプチドの量(pmol/1 min) をPKC活性の指標として用いた。
(結果)
結果を図5に示す。この結果は、DOPEそれ自身はPKC活性化に関与しないが、TPAによって活性化されたPKCαを抑制する作用があることを示している。
実施例3:DOPEが有する血糖値低下作用の検証
(材料と方法)
グルコース耐性テスト
C57BL/KsJ−leprdb/leprdbマウス(雌性、8週齢)(CLEA Japan; Tokyo, Japan)を用いた。グルコース耐性テストは12時間飢餓状態のマウスで行なった。グルコース(2 g/ml/kg body weight)を強制経口投与し、その時点を0hとした。グルコースを投与する30分前に、DOPE(0, 0.1, 1, 10mg/kg)を経口投与した。DOPE(0mg/kg)には食塩水を用いた。30、60、及び90分の時点で尾静脈から血液(10μl)を回収し、得られた血液から血漿サンプルを調製しp−アミノベンジルエチルエステル(ABEE)で標識した、各血漿サンプルを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(LC-10ATvp; Shimadzu Co., Kyoto, Japan)に負荷した。グルコース濃度は、標準グルコース溶液を用いて作成されたピーク面積/濃度の検量線から算出した。
(結果)
結果を図6に示す。この結果は、DOPEが2型糖尿病モデルマウスに対して用量依存性に血糖値を下げる作用があることを示している。
以上の結果より、PKCα活性化を抑制→GLUT4の細胞内輸送(エンドサイトーシス)の抑制→細胞膜上のGLUT4分布の増加→細胞外から細胞内への糖取込み増加→糖尿病治療への適用、というDOPEの有する糖尿病やメタボリックシンドローム治療における有用性が明らかになった。
配列番号1:siRNA
配列番号2:siRNA
DOPEは、糖尿病の治療に優れた薬理作用(タンパク質リン酸化酵素Cα(PKCα)活性化抑制作用、グルコーストランスポーター4(GLUT4)のエンドサイトーシス抑制作用及び血糖値低下作用)を有し、従って糖尿病治療薬として有用である。またかかる薬理作用に基づいて種々の試薬としても有用である。
本出願は、日本で出願された特願2014−007232(出願日2014年1月17日)を基礎としておりその内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (8)

  1. 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを有効成分として含有する、GLUT4エンドサイトーシス抑制剤。
  2. GLUT4エンドサイトーシスの抑制がPKCα活性化抑制によるものである、請求項1記載の剤。
  3. 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを有効成分として含有する、PKCα活性化抑制剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤を含む、糖尿病治療薬。
  5. 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを有効成分として含有する、糖尿病治療薬。
  6. 糖尿病が2型糖尿病である、請求項4又は5記載の治療薬。
  7. 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンを有効成分として含有する、メタボリックシンドローム治療薬。
  8. 研究用試薬である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤
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