以下、添付図面を参照して、本発明に係る多方向スイッチについて詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は多方向スイッチ1の平面図であり、図2は多方向スイッチ1の底面図であり、図3は多方向スイッチ1の正面図であり、図4は多方向スイッチ1の分解斜視図である。
多方向スイッチ1は、貫通孔10Tを有するカバー10を上面に備え、多方向スイッチ1を操作するための操作部21の一部が貫通孔10Tから突出している。多方向スイッチ1の底面には、電極80a、80b、81a、81b、82a、82bが配置されている。
多方向スイッチ1は、図4中の上方から順次、カバー10と、緩衝部材11aと、枠体12と、緩衝部材11bと、金属板40と、緩衝部材11cと、基板13とが、積層及び接着されている。当該積層体内のスペースには、操作体20の一部と、レバー30a、30bと、コイルバネ50a、50bとが収容されている。
図5は、カバー10の平面図である。
カバー10は、平面図視において約12mm四方の略正方形の外周を有する略板状の部材であり、内部に貫通孔10Tを有する。カバー10の厚みは約0.15mmである。カバー10は、例えば金属から成るが、他の素材から成るものであってもよい。
図6は、緩衝部材11aの平面図である。
緩衝部材11aは、略正方形の外周を有する略板状の部材であり、内部に貫通孔11aR、11aS、11aTを有する。緩衝部材11aの厚みは約0.05mmである。緩衝部材11aは、例えば金属から成るが、他の素材から成るものであってもよい。緩衝部材11aの上面はカバー10の底面に接着される。
図7は、緩衝部材11bの平面図である。
緩衝部材11bは、略正方形の外周を有する略板状の部材であり、内部に貫通孔11bP、11bQ、11bR、11bS、11bTを有する。緩衝部材11bの厚みは約0.1mmである。緩衝部材11bは、例えば樹脂から成るが、他の素材から成るものであってもよい。
図8は、緩衝部材11cの平面図である。
緩衝部材11cは、略正方形の外周を有する略板状の部材であり、内部に貫通孔11cR、11cS、11cTを有する。緩衝部材11cの厚みは約0.05mmである。緩衝部材11cは、例えば樹脂から成るが、他の素材から成るものであってもよい。緩衝部材11cの上面は緩衝部材11bの底面に接着され、緩衝部材11cの下面は基板13の上面に接着される。
図9は、枠体12の平面図である。
枠体12は、略正方形の外周を有する略板状の部材であり、内部に貫通孔12Tを有する。枠体の厚みは約0.45mmである。枠体12は、例えば樹脂から成るが、他の素材から成るものであってもよい。貫通孔12Tの一部は、平面視において細長く凹んだガイド部12a、12b、12c、12dとして構成されている。枠体12の一部は、回動防止部14a、14b、15a、15bとして機能する。枠体12の上面は緩衝部材11aの底面に接着され、枠体12の下面は緩衝部材11bの上面に接着される。
図10は基板13の平面図である。
基板13は、略正方形の基材13aと、スペーサ部材13bと、タクトスイッチ60、71、72と、保護シート13cとを備える。タクトスイッチ60、71、72は、基材13a上に載置されており、基材13a上でタクトスイッチ60、71、72の周囲には、スペーサ部材13bが載置される。保護シート13cは、タクトスイッチ60、71、72及びスペーサ部材13b上に載置される。基材13aの厚みは約0.2mmであり、タクトスイッチ60、71、72及びスペーサ部材13bの厚みはそれぞれ約0.1mmであり、保護シート13cの厚みは約0.05mmである。
基板13は、溝部13R、13Sを有する。溝部13R、13Sは、基材13aから成る底面と、スペーサ部材13b及び保護シート13cから成る側壁とを備える溝状構造になっている。図2に示す様に、基材13aのスペーサ部材13bが載置される面とは反対側の面には、電極80a、80b、81a、81b、82a、82bが設けられている。電極80a、80b、81a、81b、82a、82bは、タクトスイッチ60、71、72のオンオフ動作を検出するための外部回路に接続される。
図11は、配線パターンを説明するための図である。
図11に示す図は、基板13のうち、保護シート13cと、ドーム状ばね60c、71c、72cとが除かれたものを、カバー10側から観た平面図である。当該図には、電極80a、80b、81a、81b、82a、82bが基材13a及びスペーサ部材13b越しに透視される様子が点線で示されている。
タクトスイッチ60は、導電性の第1固定接点60aと、導電性の第2固定接点60bと、導電性のドーム状ばね60cとを備える。第1固定接点60aは円形で、基材13a上に載置される。第2固定接点60bは環状で、基材13a上に、第1固定接点60aを囲む様に載置される。ドーム状ばね60cは、縁を第2固定接点60bに当接させており、第1固定接点60aに当接せずに第1固定接点60aを覆っている(図18(a)参照)。
タクトスイッチ71は、導電性の第1固定接点71aと、導電性の第2固定接点71bと、導電性のドーム状ばね71cとを備える。第1固定接点71aは円形で、基材13a上に載置される。第2固定接点71bは環状で、基材13a上に、第1固定接点71aを囲む様に載置される。ドーム状ばね71cは、縁を第2固定接点71bに当接させており、第1固定接点71aに当接せずに第1固定接点71aを覆っている(図18(b)参照)。
タクトスイッチ72は、導電性の第1固定接点72aと、導電性の第2固定接点72bと、導電性のドーム状ばね72cとを備える。第1固定接点72aは円形で、基材13a上に載置される。第2固定接点72bは環状で、基材13a上に、第1固定接点72aを囲む様に載置される。ドーム状ばね72cは、縁を第2固定接点72bに当接させており、第1固定接点72aに当接せずに第1固定接点72aを覆っている(図18(c)参照)。
基材13aの内部には、基材13aの面方向に沿って内部配線パターン84Aが設けられている。内部配線パターン84Aは、基材13a内の導通路83aを介して第1固定接点60aと電気的に導通し、又、基材13a内の導通路83bを介して電極80aと電気的に導通している。したがって、第1固定接点60aは電極80aと電気的に導通している。
基材13aの内部には、基材13aの面方向に沿って内部配線パターン84Bが設けられている。内部配線パターン84Bは、基材13a内の導通路83cを介して第2固定接点60bと電気的に導通し、又、基材13a内の導通路83dを介して電極80bと電気的に導通している。したがって、第2固定接点60bは電極80bと電気的に導通している。
同様にして、第1固定接点71aは、内部配線パターン84C及び導通路83e、83fを介して、電極81aと電気的に導通し、第2固定接点71bは、内部配線パターン84D及び導通路83g、83hを介して、電極81bと電気的に導通している。
同様にして、第1固定接点72aは、内部配線パターン84E及び導通路83i、83jを介して、電極82aと電気的に導通し、第2固定接点72bは、内部配線パターン84F及び導通路83k、83lを介して、電極82bと電気的に導通している。
図12(a)は操作体20の平面図であり、図12(b)は操作体20を方向20Fから観た図である。
操作体20は、平面視略S字状をしており、アーム23a、23b及び突起部24a、24bを備える。操作体20は、基板13に対向する面とは反対側の面の中央部に操作部21を、基板13に対向する面の中央部に突起部22をそれぞれ備える。操作体20のうち操作部21と突起部22を除いた部分の厚みは、約0.4mmである。
図13(a)はレバー30aの平面図であり、図13(b)はレバー30aを方向30aFから観た図である。
レバー30aの厚みは、約0.3mmである。レバー30aは、軸部材34aを通すための貫通孔33aを有する。レバー30aは、貫通孔33aを挟んで、アーム31aと、アーム32aとを備える。
図14(a)はレバー30bの平面図であり、図14(b)はレバー30bを方向30bFから観た図である。
レバー30bの厚みは、約0.3mmである。レバー30bは、軸部材34bを通すための貫通孔33bを有する。レバー30bは、貫通孔33bを挟んで、アーム31bと、アーム32bとを備える。
図15(a)は金属板40の平面図であり、図15(b)は図15(a)に示すEE’線に沿った断面図であり、図15(c)は図15(a)に示すFF’線に沿った断面図である。
金属板40は、平面図視において約9.5mm×約7mmの略長方形の外周を有する略板状の部材であり、凹部40W、40X、40Y、40Z、及び、貫通孔40R、40Sを有する。金属板40は、例えばステンレス鋼板(SUS板)などの弾性係数の大きい物質から成る金属板である。金属板40の厚みは、約0.05mmである。
金属板40は、凹部40W、40X及び可動中心46aに画された可動部42aと、凹部40Y、40Z及び可動中心46bに画された可動部42bと、貫通孔40R、40S及び線43a、43bに画された可動部43とを備える。
可動部42aは、金属板40と所定の角度θ1をなしており、可動中心46aの周りを弾性的に可動する。可動部42aは、樹脂による凸成形、又は、金属プレスによる成形がなされた突起部45aを備える。可動部42bは、金属板40と所定の角度θ2をなしており、可動中心46bの周りを弾性的に可動する。可動部42bは、樹脂による凸成形、又は、金属プレスによる成形がなされた突起部45bを備える。
可動部43は、平面図視において略十文字をしており、金属板40の上下方向に弾性的に撓む。
金属板40の下面のうち可動部42a、42bを除いた部分は、基板13の上面に接着される。
図16(a)はコイルバネ50aの平面図であり、図16(b)はコイルバネ50bの平面図である。
コイルバネ50aは、例えば、ステンレス鋼(SUS304WPB)を素材とし、線径50adが約0.12mm、コイル径50aDが約0.61mm、自由長(無荷重時の長さ)50aLが約7.2mm、有効巻数50aNが18巻、ばね定数50akが約0.436N/mmである。コイルバネ50bは、例えば、ステンレス鋼(SUS304WPB)を素材とし、線径50bdが約0.12mm、コイル径50bDが約0.61mm、自由長(無荷重時の長さ)50bLが約7.2mm、有効巻数50bNが18巻、ばね定数50bkが約0.436N/mmである。
次に、多方向スイッチ1の構造を説明する。
図17は、多方向スイッチ1の平面透視図である。
操作体20は、操作が行われていない状態においては、初期位置に配置される。ここで初期位置は、図17に示す様に、多方向スイッチ1の平面視における略正方形状の外周の略中心である。操作体20のアーム23aは枠体12のガイド部12aに、又、操作体20のアーム23bは枠体12のガイド部12bに、それぞれガイドされている。ガイド部12aの長手方向とガイド部12bの長手方向は平行であるため、操作体20は、ガイド部12a、12bに平行な方向S1と、方向S1とは逆の方向S2へスライド可能である。
レバー30aは、軸部材34aの周りを回動可能なように、軸部材34aによって緩衝部材11b上に固定されている。アーム31aは、操作体20の突起部24aと当接している。アーム32aは、片側をコイルバネ50aの一端と当接させ、その反対側を回動防止部14aに当接させている。
レバー30bは、軸部材34bの周りを回動可能なように、軸部材34bによって緩衝部材11b上に固定されている。アーム31bは、操作体20の突起部24bと当接している。アーム32bは、片側をコイルバネ50bの一端と当接させ、その反対側を回動防止部14bに当接させている。
コイルバネ50aは、枠体12のガイド部12cにガイドされている。コイルバネ50aの一端は、ガイド部12cの端部に固定され、コイルバネ50aの他端は、レバー30aのアーム32aに当接している。
コイルバネ50bは、枠体12のガイド部12dにガイドされている。コイルバネ50bの一端は、ガイド部12dの端部に固定され、コイルバネ50bの他端は、レバー30bのアーム32bに当接している。
図18(a)は図1に示すAA’線に沿った断面図であり、図18(b)は図1に示すBB’線に沿った断面図であり、図18(c)は図1に示すCC’線に沿った断面図であり、図18(d)は図1に示すDD’線に沿った断面図である。
タクトスイッチ60は、操作体20の突起部22、及び、金属板40の可動部43の下部に配置されている。タクトスイッチ71は、金属板40の可動部42aの下部に配置されている。タクトスイッチ72は、金属板40の可動部42bの下部に配置されている。
次に、多方向スイッチ1のプッシュ操作時の動作を説明する。
図19は、多方向スイッチ1のプッシュ操作時の動作を説明するための図である。
図19には、プッシュ操作時の、多方向スイッチ1の図1に示すAA’線に沿った断面図が示されている。ユーザが操作部21によって操作体20を方向Pへプッシュ操作すると、操作体20は方向Pへ押し下げられる。すると、突起部22が、可動部43に当接しながら可動部43を下方へ撓ませる。可動部43は、下方へ撓みながら、保護シート13cを介してドーム状ばね60cを方向Pへ押し下げる。すると、ドーム状ばね60cは、クリック感を生じさせながら反転し、第1固定接点60aに接触する。ドーム状ばね60cが第1固定接点60aに接触すると、第1固定接点60aと第2固定接点60bが導通し、タクトスイッチ60がオンになる。
次に、ユーザがプッシュ操作を止めると、可動部43は弾性力によって、可動部43に接着されている保護シート13cと共に、初期位置へ復帰する。すると、可動部43は、突起部22に当接しながら操作体20を方向Pとは逆の方向へ押し上げ、やがて操作体20は初期位置へ復帰する。そして、ドーム状ばね60cが弾性力によって初期位置に復帰し、ドーム状ばね60cと第2固定接点60bの接触が解消されることにより、第1固定接点60aと第2固定接点60bの導通が解消され、タクトスイッチ60がオフになる。
次に多方向スイッチ1の方向S1へのスライド操作時の動作を説明する。
図20(a)及び図20(b)は、多方向スイッチ1の方向S1へのスライド操作時の動作を説明するための図である。図20(a)は、方向S1へのスライド操作時の多方向スイッチ1の平面透視図であり、図20(b)は図20(a)に示すGG’線に沿った多方向スイッチ1の断面図である。
ユーザが操作部21によって操作体20を方向S1へスライド操作すると、操作体20は方向S1へスライドする。やがて、突起部24aがレバー30aに当接する。そして、操作体20は、突起部24aをレバー30aに当接させながら、レバー30aを回動軸K1を中心に正方向R1aに回動させる。ここで、回動軸K1は、貫通孔33aの中心を通り、緩衝部材11bの面方向と略垂直であるものとする。
レバー30aが回動軸K1を中心として正方向R1aに回動すると、やがてアーム31aが可動部42aに当接する。さらにレバー30aが回動すると、アーム31aは可動部42aを、可動中心46aを軸にして保護シート13cに向かって押し下げ、やがて、突起部45aが保護シート13cに当接する。アーム31aが可動部42aをさらに押し下げると、可動部42aは保護シート13cを介してドーム状ばね71cを押し下げる。すると、ドーム状ばね71cは、クリック感を生じさせながら反転し、第1固定接点71aに接触する。ドーム状ばね71cが第1固定接点71aに接触すると、第1固定接点71aと第2固定接点71bが導通し、タクトスイッチ71がオンになる。レバー30aの回動は、アーム31aが回動防止部15aに当接すると止まるが、アーム31aが回動防止部15aに当接する前にユーザがスライド操作を止めても止まる。
一方で、コイルバネ50aは、レバー30aが回動軸K1を中心として正方向R1aに回動すると、アーム32aを介して圧縮される。
多方向スイッチ1において、可動部42aは、回動軸K1について可動中心46aから正方向R1aに配置される。そして、可動部42aは、金属板40に対して所定の角度θ1をもって可動中心46aを起点として起き上がり、レバー30aが回動時に通過する空間内に配置されている。そして、可動部42aは、レバー30aが回動軸K1を中心として正方向R1aに回動すると、レバー30aによって押し下げられる。このような構造によれば、レバー30aは、可動部42aに妨げられることなくスムーズに回動できるため、レバー30aの厚みを小さくすることが可能となる。
次に、ユーザが方向S1へのスライド操作を止めて、操作部21を離すと、コイルバネ50aが弾性力によってレバー30aのアーム32aを押し戻し、レバー30aを正方向R1aとは逆の逆方向R2aへ回動させる。同時に、レバー30aは、突起部24aに当接して操作体20を方向S1とは逆の方向へ押し戻していく。この時さらに、可動部42aは弾性力によって、逆方向R2aへ回動するレバー30aのアーム31aに当接しながら、再び起き上がっていく。やがて、金属板40と可動部42aとの角度が所定の角度θ1になると、可動部42aの起き上がりはそこで止まり、アーム31aと可動部42aとの当接は解消され、レバー30aはさらに逆方向R2aへの回動を続ける。やがて、レバー30aのアーム32aが回動防止部14aに当接すると、レバー30aの逆方向R2aへの回動は止まり、操作体20は初期位置で止まる。
レバー30aは回動防止部14aに当接すると、それ以上に、操作体20を押し戻すことはできないため、操作体20は安定的に初期位置に付勢される。
次に多方向スイッチ1の方向S2へのスライド操作時の動作を説明する。
図21(a)及び図21(b)は、多方向スイッチ1の方向S2へのスライド操作時の動作を説明するための図である。図21(a)は、方向S2へのスライド操作時の多方向スイッチ1の平面透視図であり、図21(b)は図21(a)に示すHH’線に沿った多方向スイッチ1の断面の拡大図である。
ユーザが操作部21によって操作体20を方向S2へスライド操作すると、操作体20は方向S2へスライドする。やがて、突起部24bがレバー30bに当接する。そして、操作体20は、突起部24bをレバー30bに当接させながら、レバー30bを回動軸K2を中心に正方向R1bに回動させる。ここで、回動軸K2は、貫通孔33bの中心を通り、緩衝部材11bの面方向と略垂直であるものとする。
レバー30bが回動軸K2を中心として正方向R1bに回動すると、やがてアーム3131bが可動部42bに当接する。さらにレバー30bが回動すると、アーム31bは可動部42bを、可動中心46bを軸にして保護シート13cに向かって押し下げ、やがて、突起部45bが保護シート13cに当接する。アーム31bが可動部42bをさらに押し下げると、可動部42bは保護シート13cを介してドーム状ばね72cを押し下げる。すると、ドーム状ばね72cは、クリック感を生じさせながら反転し、第1固定接点72aに接触する。ドーム状ばね72cが第1固定接点72aに接触すると、第1固定接点72aと第2固定接点72bが導通し、タクトスイッチ72がオンになる。レバー30bの回動は、アーム31bが回動防止部15bに当接すると止まるが、アーム31bが回動防止部15bに当接する前にユーザがスライド操作を止めても止まる。
一方で、コイルバネ50bは、レバー30bが回動軸K2を中心として正方向R1bに回動すると、アーム32bを介して圧縮される。
多方向スイッチ1において、可動部42bは、回動軸K2について可動中心46bから正方向R1bに配置される。そして、可動部42bは、金属板40に対して所定の角度θ2をもって可動中心46bを起点として起き上がり、レバー30bが回動時に通過する空間内に配置されている。そして、可動部42bは、レバー30bが回動軸K2を中心として正方向R1bに回動すると、レバー30bによって押し下げられる。このような構造によれば、レバー30bは、可動部42bに妨げられることなくスムーズに回動できるため、レバー30bの厚みを小さくすることが可能となる。
次に、ユーザが方向S2へのスライド操作を止めて、操作部21を離すと、コイルバネ50bが弾性力によってレバー30bのアーム32bを押し戻し、レバー30bを正方向R1bとは逆の逆方向R2bへ回動させる。同時に、レバー30bは、突起部24bに当接して操作体20を方向S2とは逆の方向へ押し戻していく。この時さらに、可動部42bは弾性力によって、逆方向R2bへ回動するレバー30bのアーム31bに当接しながら、再び起き上がっていく。やがて、金属板40と可動部42bとの角度が所定の角度θ2になると、可動部42bの起き上がりはそこで止まり、アーム31bと可動部42bとの当接は解消され、レバー30bはさらに逆方向R2bへの回動を続ける。やがて、レバー30bのアーム32bが回動防止部14bに当接すると、レバー30bの逆方向R2bへの回動は止まり、操作体20は初期位置で止まる。
レバー30bは回動防止部14bに当接すると、それ以上に、操作体20を押し戻すことはできないため、操作体20は安定的に初期位置に付勢される。
コイルバネ50a、50bは、それぞれレバー30a、30bを介して、操作体20を互いに逆の方向から初期位置に付勢している。したがって、コイルバネ50aの弾性力とコイルバネ50bの弾性力に差が生じても、コイルバネ50a、50bにレバー30a、30bを回動防止部14a、14bに押しつける弾性力がある限り、平常時において操作体20が安定的に初期位置に付勢される。
次に、多方向スイッチ1における方向S1へのスライド操作時の、スライド操作のストローク長とコイルバネの圧縮量との関係を説明する。なお、多方向スイッチ1における方向S2へのスライド操作時の、スライド操作のストローク長とコイルバネの圧縮量との関係も同様であるので、その説明を省略する。
図17に示す様に、多方向スイッチ1では、レバー30aに対する操作体20の作用点SA1からレバー30aの回動軸K1までの距離L1aは、レバー30aに対するコイルバネ50aの作用点CA1から回動軸K1までの距離L2aよりも長く設計されている。実際に測定してみると、L1aは約2.56mm、L2aは約1.08mmであり、L1a>L2aの関係が満たされている。なお、スライド操作によるL1a及びL2aの変化は、無視できる程小さいものとする。
図20(a)に示す様に、多方向スイッチ1における方向S1へのスライド操作時の、スライド操作のストローク長St1は、スライド操作開始時の操作部21の中心Ssと、スライド操作終了時の操作部21の中心Sf1との距離に等しい。コイルバネ50aの圧縮量δ1は、スライド操作開始時のコイルバネ50aとレバー30aとの当接点Cs1と、スライド操作終了時のコイルバネ50aとレバー30aとの当接点Cf1との距離に等しい。
実際に測定してみると、St1は約1.18mmであり、δ1は約0.69mmであった。したがって、スライド操作のストローク長St1に対するコイルバネ50aの圧縮量δ1の比は、(δ1/St1)=約0.58<1である。
多方向スイッチ2は、比較の為の多方向スイッチである。
多方向スイッチ2における方向S1へのスライド操作時の、スライド操作のストローク長とコイルバネの圧縮量の関係を説明する。なお、多方向スイッチ2における方向S2へのスライド操作時の、スライド操作のストローク長とコイルバネの圧縮量との関係も同様であるので、その説明を省略する。
図22(a)及び図22(b)は、多方向スイッチ2の方向S1へのスライド操作時の動作を説明するための図である。図22(a)は、多方向スイッチ2の平面透視図であり、図22(b)は、方向S1へのスライド操作時の多方向スイッチ2の平面透視図である。
多方向スイッチ2は、レバー30c、30dと、軸部材34c、34dと、コイルバネ50c、50dとを備え、その他の構成は多方向スイッチ1と基本的に同様である。
レバー30cに対する操作体20の作用点SA3からレバー30cの回動軸K3までの距離L1cは、レバー30cに対するコイルバネ50cの作用点CA3から回動軸K3までの距離L2cに等しくなるように設計されている。実際に測定してみると、L1c及びL2c共に、約2.56mmであった。
多方向スイッチ2における方向S1へのスライド操作時の、スライド操作のストローク長St3は、スライド操作開始時の操作部21の中心Ssと、スライド操作終了時の操作部21の中心Sf3との距離に等しい。コイルバネ50cの圧縮量δ3は、スライド操作開始時のコイルバネ50cとレバー30cとの当接点Cs3と、スライド操作終了時のコイルバネ50cとレバー30cとの当接点Cf3との距離に等しい。
実際に測定してみると、St3は約1.18mmであり、δ3は同じく約1.18mmであった。したがって、スライド操作のストローク長St3に対するコイルバネ50cの圧縮量δ3の比は、(δ3/St3)=1である。
以上より、(δ1/St1)<(δ3/St3)であるから、多方向スイッチ2と比較すると、多方向スイッチ1においては、スライド操作のストローク長を維持しつつ、コイルバネの圧縮量を小さくすることができた。