JP6443727B2 - アルミニウム合金−セラミックス複合材 - Google Patents
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セラミックス粒子相は、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系、又は窒化物系のセラミックス粒子のうち1種以上で構成されている。粒子の形態としては、短繊維や長繊維といった形態も含む。具体的には、炭化ケイ素等の炭化物系のセラミックス粒子、酸化ケイ素等の酸化物系のセラミックス粒子又は窒化ケイ素等の窒化物系のセラミックス粒子のいずれかの単体、又はそれらが混在したものである。なお、アルミニウム合金−セラミックス複合材においての所望の性能が得られる限りにおいて、アルミナなどの、元素としてSiを含まない粒子が混在していてもよい。
基地相を構成するアルミニウム合金は、Mgを含むアルミニウム合金であって、Al−Mg系、Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu−Mg系などが適用できる。なお、アルミニウム合金−セラミックス複合材において所望の性能を確保できる限りにおいて、Fe、Ni、Cr、Mn等の不純物元素を含んでいてもよい。また、基地相は前記アルミニウム合金の母相以外にも、前記アルミニウム合金の凝固、冷却に伴って晶出又は析出する相、すなわち、例えば、初晶Si、共晶Si、Mg化合物、Fe化合物、Mn化合物、Ni化合物、Cr化合物なども含んでよい。
次に中間相について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る中間相の構成を説明する概略図であり、基地相とセラミックス粒子相との界面近傍を拡大した模式図で示す。図1において、中間相3は、ハッチングで示す酸化物相3aの外縁を滑らかに結んだ破線で示す仮想線5(以下、外縁線ともいう。)と、濃灰色で示すセラミックス粒子相1の外周1aとの間に挟まれた領域で定義される。すなわち中間相3は、基地相2とセラミックス粒子相1との間に介在して、少なくとも酸化物相3aが存在する領域である。本発明に係る中間相3は、基地相2から酸化物相3aに侵入する形態の金属相3bを含んでいる形態となっているので、中間相3の熱伝導が大きくなる。なお、熱伝導率の観点からは、領域Aで示すように金属相3bが互いに交差するようにネットワーク状をなし、酸化物相3aが金属相3bの隙間を埋めるように配置されている形態であることがより好ましい。
中間相の厚さとその測定方法の一例を以下に示すが、観察手段や拡大の倍率はこの限りではなく、また、観察視野数と測定箇所の数も、測定値のばらつきが著しく大きくならない程度に適宜増減させてもよい。
金属相とセラミックス粒子相とが接触している部分とその割合の測定方法の一例を以下に示す。観察手段や拡大の倍率はこの限りではなく、また、観察視野数と測定箇所の数も、測定値のばらつきが著しく大きくならない程度に適宜増減させてもよい。
次に、中間相に占める空隙部(以下、空隙部ともいう)の割合の測定方法の一例を示す。観察手段や拡大の倍率はこの限りではなく、また、観察視野数も、測定値のばらつきが著しく大きくならない程度に適宜増減させてもよい。
次に、本発明の複合材を製造する方法の好ましい一例について以下に説明する。但し、本発明に係る複合材は、以下に説明する製造方法で製造された物に限定されるものではない。
セラミックス粒子は、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちの1種以上を使用する。粒子の形態としては、短繊維や長繊維といった形態も含む。具体的には、炭化ケイ素等の炭化物系のセラミックス粒子、酸化ケイ素等の酸化物系のセラミックス粒子又は窒化ケイ素等の窒化物系のセラミックス粒子のいずれかの単体、又はそれら2種以上の混合物である。セラミックス粒子に元素として少なくともSiを含むようにした理由は、複合材を自発浸透法で製造する場合に、セラミックス粒子の表面にSiO2が形成されていることが必要であるため、Siを含まないバインダーを用いて成形する場合に、焼成時にセラミックス粒子に含まれるSiが酸化して生成されるSiO2を、浸透工程において利用できるようにするためである。なお、複合材において所望の性能が得られる限りにおいて、アルミナなどの、元素としてSiを含まない粒子も混在させてよい。
バインダーは、上記セラミックス粒子100質量部に対してSiO2が0〜0.5質量部含む水溶液を使用する。ここでSiO2が0質量部の場合の水溶液とは、SiO2を含まない水溶液、すなわち水である。SiO2を含む水溶液とする場合は、SiO2源として市販のコロイダルシリカ、水ガラス等を使用できる。セラミックス粒子100質量部に対して0.5質量部以下のSiO2含有量であれば、複合材としたときの中間相を、Al及び/又はMgを主成分とする酸化物相と、基地相のうち前記酸化物相へ侵入した部分である金属相とを含む形態にすることができる。これは、焼成工程において、セラミックス粒子の表面を覆うSiO2のうちの適量が結晶多形の一つであるクリストバライトに変化することがその一因と考えられる。なお、バインダーに含まれるSiO2がセラミックス粒子100質量部に対し0.5質量部を超えると、中間相の厚さが大きくなり、また酸化物相に占めるSiO2の割合も大きくなるので、複合材の熱伝導率が低下するので好ましくない。なお、上記バインダーは、複合材として所望の性能を得られる限りにおいて、アルミナや酸化マグネシウムなどSiO2以外の物質を含んでもよい。
アルミニウム合金は、上記したようにMgを含むアルミニウム合金であって、Al−Mg系、Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu−Mg系などが適用できる。Mgを含むことで、浸透工程において、セラミックス粒子からなるプリフォームへの溶湯の浸透が容易になり、その結果、セラミックス粒子表面を覆っているSiO2からAl−Mg−O系酸化物への酸化還元反応も促進されるので好ましい。なお、Mgの含有量としては、1.0〜5.0質量%が好適であり、さらに好ましくは、2.5〜5.0質量%である。また、上記アルミニウム合金は、アルミニウム合金−セラミックス複合材としたときの所望の性能を確保できる限りにおいて、Fe、Ni、Cr、Mn等の不純物元素を含んでもよい。
セラミック粒子は、JIS R 6001に規定の粒度指数F80及びF150であるSiCを、それぞれ質量比2:1で混合したものを使用した。バインダーには、SiO2を含まない水溶液、すなわち水をSiC100gあたり6g(SiC100質量部に対し0質量部のSiO2)を添加し、5分間混合して混合体を得た。次いでキャビティ形状が縦100mm、横50mm、深さ50mmである鋼製の成形型に前記混合体を充填してハンドリングが可能な程度までつき固めて成形後、抜型して成形体を得た。次いで、この成形体を加熱炉に装入して850℃で5時間保持した後、100℃になるまで炉内で冷却後、炉から取出して室温まで放冷して焼成体を得た。
実施例2は、焼成工程においては1100℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例2の焼成体のSiC粒子の表面には75nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は52質量%であった。
実施例3は、焼成工程においては1130℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を20分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例3の焼成体のSiC粒子の表面には110nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は65質量%であった。
実施例4は、焼成工程においては1300℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例4の焼成体のSiC粒子の表面には180nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は80質量%であった。
実施例5は、焼成工程においては1450℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例5の焼成体のSiC粒子の表面には310nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は90質量%であった。
実施例6は、バインダーとしてコロイダルシリカを水で希釈した水溶液を使用し、その添加量はSiC100質量部に対し0.46質量部のSiO2となる量とし、焼成工程においては1130℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例6の焼成体のSiC粒子の表面には290nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は50質量%であった。
参考例7は、バインダーとしてコロイダルシリカを水で希釈した水溶液を使用し、その添加量はSiC100質量部に対し0.80質量部のSiO2となる量とし、焼成工程においては1100℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、参考例7の焼成体のSiC粒子の表面には420nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は45質量%であった。
比較例1は、バインダーとしてコロイダルシリカの原液を使用し、その添加量はSiC100gあたり10g(SiC100質量部に対し2.0質量部のSiO2となる量)とし、焼成工程においては1050℃で2時間保持とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、比較例1の焼成体のSiC粒子の表面には1300nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は28質量%であった。
比較例2は、バインダーとして水ガラス水溶液(富士化学製の2号水ガラスに水を質量比で1:2で希釈したもの)を使用し、その添加量はSiC100gあたり4.5g(SiC100質量部に対し0.75質量部のSiO2となる量)とし、焼成工程においては850℃で2時間保持とし、浸漬工程における浸漬時間を7分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、比較例2の焼成体のSiC粒子の表面には1200nmの厚さのSiO2が存在していて、SiO2に占めるクリストバライトの割合は0質量%であった。
2(12) 基地相
3(13) 中間相
3a(13a) 酸化物相
3b(13b) 金属相
3c 空隙部
4 接触部分
5 外縁線
12a アルミニウム合金母相
12b 共晶Si相
a1,a2 酸化物相の外縁端部
Claims (6)
- Al及びMgを含むアルミニウム合金を主体とした基地相と、前記基地相に分散した、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちのいずれか1種以上からなるセラミックス粒子相と、前記基地相と前記セラミックス粒子相との間に介在する中間相とを有し、前記中間相は、Al及び/又はMgを主成分とする酸化物相と、前記基地相のうち前記酸化物相へ侵入した部分である金属相とを含み、前記金属相の少なくとも一部は、前記セラミックス粒子相に接触していることを特徴とするアルミニウム合金−セラミックス複合材。
- 前記酸化物相に含まれる元素としてのSiが前記酸化物相に対して10質量%以下である請求項1に記載のアルミニウム−セラミックス複合材。
- 前記金属相はネットワーク状をなしており、前記酸化物相は、前記金属相の隙間を埋めるように配置されている請求項1又は2に記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
- 前記複合材の任意の切断面において、前記金属相が前記セラミックス粒子相に接触している長さが前記セラミックス粒子相の周長に対して10%以上である請求項1乃至3のいずれかに記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
- 前記複合材の任意の切断面において、前記酸化物相の外縁を滑らかに結んだ仮想線と前記セラミックス粒子相の外周との間に挟まれた領域である前記中間相の厚さが400nm以下である請求項1乃至4のいずれかに記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
- 前記複合材の任意の切断面において、前記中間相は、前記酸化物相の外縁を滑らかに結んだ仮想線と前記セラミックス粒子相の外周との間に挟まれた領域である前記中間相の面積に対して2.5%以下の面積の空隙部を含む請求項1乃至5のいずれかに記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
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