JP6443727B2 - アルミニウム合金−セラミックス複合材 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム合金−セラミックス複合材に関するものである。
近年、基地相となる金属に、セラミックスの繊維や粒子等を強化材とする金属−セラミックス複合材が注目されている。金属−セラミックス複合材は、アルミニウムやアルミニウム合金など基材となる金属が有する強度、延性、靭性、成形性及び熱伝導性等と、強化材である炭化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナなどの繊維や粒子からなるセラミックスが有する剛性、耐摩耗性、低熱膨張性等を併せもつために、軽量、高剛性、耐摩耗性、高熱伝導、低熱膨張などが要求される輸送用機器部品、電子部品等のさまざまな用途の製品に利用されている。特に、基地相となる金属をアルミニウム合金とした、アルミニウム合金−セラミックス複合材は、軽量で、低熱膨張率と高熱伝導率を兼備したパワーエレクトロニクス向け放熱基板として、その需要が年々高まっている。さらに、放熱基板にはその上に搭載された半導体などの熱が伝達し、80〜150℃、将来的には150℃を超える温度になることが推定されるが、半導体が使用されていないときは室温に戻る。このように加熱・冷却の熱サイクルが生じた場合でも、熱膨張係数の異なる金属とセラミックスであっても初期の低熱膨張率と高熱伝導率を長い期間維持できる放熱基板も求められるようになってきた。
アルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法には、従来から粉末冶金法や、セラミックスで成形された多孔質の予備成形体であるプリフォームに、基材となる溶融アルミニウム合金を浸透させる浸透法などがある。このうち浸透法は、プリフォームに基材となるアルミニウム合金溶湯(以下、溶湯ともいう。)を浸透させて複合材を製造する方法である。浸透法には、浸透させる圧力によって、溶湯を加圧して強制的にプリフォームに浸透させる加圧浸透法と、大気圧下で溶湯をプリフォームに浸透させる非加圧浸透法に大別される。さらに、非加圧浸透法には、窒素ガス雰囲気中で浸透させる、いわゆるランキサイド法と、大気雰囲気中で浸透させる非加圧浸透法(以下、自発浸透法ともいう。)がある。
例えば、特許文献1に加圧浸透法によって高剛性で高熱伝導のセラミックス複合材料を得る発明が開示されている。特許文献1によると、剛性を示すヤング率は金属−セラミックス界面の状態に大きく影響され、この界面に隙間や剛性と熱電率が低い物質が介在しているとマトリックス金属やセラミックスの配合から予想される値を大きく下回ることがある。特に、複合材料中のセラミックスの割合を多くする場合、セラミックス粒子間の結合剤として用いられるシリカがセラミックス粒子と金属との間に介在し、ヤング率を低下させることから、添加するシリカの量と熱処理の条件を検討し、金属−セラミックス界面に介在するシリカ成分を調整した結果、高熱伝導(165〜183W/(m・K))のアルミニウム合金−セラミックス複合材料を得たとしている。
また、非特許文献1では、水ガラスでSiC粒子を相互に結合させたプリフォームに、自発浸透でアルミニウム合金を浸透させて得たアルミニウム合金−セラミックス複合材において、マトリックスのアルミニウム合金とSiC粒子との間をAl,Si,Mgを含む複合酸化物からなる約1μmの厚さをもつ中間相が、SiC表面を隙間なく覆っていて、この中間層を介してSiCとマトリックスとが接着しているように見えると記載されたアルミニウム合金−セラミックス複合材が開示されている。

特開2012−12665号公報
山浦秀樹,「SiC粒子強化Al合金複合材料の作製における自発浸透機構とその材料特性」,早稲田大学,2006年7月,博士論文,p.34−41
本発明が解決しようとする課題は、特に放熱基板に好適な、高い熱伝導率をもち長期間の温度サイクル下においても熱伝導率が低下しにくいアルミニウム合金−セラミックス複合材を提供することである。
本発明者らは鋭意研究した結果、アルミニウム合金−セラミックス複合材を構成するセラミックス粒子相とアルミニウム合金からなる基地相との境界に介在する中間相の構成と、より好適にはその厚さを制御することにより、上述の課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
すなわち本発明は、Al及びMgを含むアルミニウム合金を主体とした基地相と、前記基地相に分散した、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちのいずれか1種以上からなるセラミックス粒子相と、前記基地相と前記セラミックス粒子相との間に介在する中間相とを有し、前記中間相は、Al及び/又はMgを主成分とする酸化物相と、前記基地相のうち前記酸化物相へ侵入した部分である金属相とを含み、前記金属相の少なくとも一部は、前記セラミックス粒子相に接触しているアルミニウム合金−セラミックス複合材である。
上記アルミニウム合金−セラミックス複合材において、前記酸化物相に含まれる元素としてのSiは、前記酸化物相に対して10質量%以下であることが好ましい。
加えて、前記金属相はネットワーク状をなしており、前記酸化物相は、前記金属相の隙間を埋めるように配置されていることが好ましい。
さらに、前記複合材の任意の切断面において、前記金属相が前記セラミックス粒子相に接触している長さが前記セラミックス粒子相の周長に対して10%以上であることがより好ましい。
さらに加えて、前記複合材の任意の切断面において、前記酸化物相の外縁を滑らかに結んだ仮想線と前記セラミックス粒子相の外周との間に挟まれた領域である前記中間相の厚さは400nm以下であることが好ましい。
さらに加えて、前記複合材の任意の切断面において、前記中間相は、前記酸化物相の外縁を滑らかに結んだ仮想線と前記セラミックス粒子相の外周との間に挟まれた領域である前記中間相の面積に対して2.5%以下の面積の空隙部を含むことが好ましい。
本発明により、室温で高い熱伝導率をもち、長期間の熱サイクル下でも熱伝導率が低下しにくい、特に放熱基板として好適なアルミニウム合金−セラミックス複合材が提供される。
本発明に係る中間相の構成を説明する概略図である。 本発明における中間相の一の形態と測定方法を説明する図である。
本発明者らは、アルミニウム合金−セラミックス複合材(以下、複合材ともいう。)を構成するセラミックス粒子相とアルミニウム合金からなる基地相との境界に介在する中間相の構成に着目し本発明に至った。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明のアルミニウム合金−セラミックス複合材は、セラミックス粒子相、アルミニウム合金からなる基地相と、前記基地相に分散した、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちのいずれか1種以上からなるセラミックス粒子相と、前記セラミックス粒子相と基地相の間に介在する、Al及び/又はMgを主成分とする酸化物相と、前記基地相のうち前記酸化物相へ侵入した部分である金属相とを含む中間相から構成される。
(セラミックス粒子相)
セラミックス粒子相は、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系、又は窒化物系のセラミックス粒子のうち1種以上で構成されている。粒子の形態としては、短繊維や長繊維といった形態も含む。具体的には、炭化ケイ素等の炭化物系のセラミックス粒子、酸化ケイ素等の酸化物系のセラミックス粒子又は窒化ケイ素等の窒化物系のセラミックス粒子のいずれかの単体、又はそれらが混在したものである。なお、アルミニウム合金−セラミックス複合材においての所望の性能が得られる限りにおいて、アルミナなどの、元素としてSiを含まない粒子が混在していてもよい。
(基地相)
基地相を構成するアルミニウム合金は、Mgを含むアルミニウム合金であって、Al−Mg系、Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu−Mg系などが適用できる。なお、アルミニウム合金−セラミックス複合材において所望の性能を確保できる限りにおいて、Fe、Ni、Cr、Mn等の不純物元素を含んでいてもよい。また、基地相は前記アルミニウム合金の母相以外にも、前記アルミニウム合金の凝固、冷却に伴って晶出又は析出する相、すなわち、例えば、初晶Si、共晶Si、Mg化合物、Fe化合物、Mn化合物、Ni化合物、Cr化合物なども含んでよい。
(中間相)
次に中間相について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る中間相の構成を説明する概略図であり、基地相とセラミックス粒子相との界面近傍を拡大した模式図で示す。図1において、中間相3は、ハッチングで示す酸化物相3aの外縁を滑らかに結んだ破線で示す仮想線5(以下、外縁線ともいう。)と、濃灰色で示すセラミックス粒子相1の外周1aとの間に挟まれた領域で定義される。すなわち中間相3は、基地相2とセラミックス粒子相1との間に介在して、少なくとも酸化物相3aが存在する領域である。本発明に係る中間相3は、基地相2から酸化物相3aに侵入する形態の金属相3bを含んでいる形態となっているので、中間相3の熱伝導が大きくなる。なお、熱伝導率の観点からは、領域Aで示すように金属相3bが互いに交差するようにネットワーク状をなし、酸化物相3aが金属相3bの隙間を埋めるように配置されている形態であることがより好ましい。
このように基地相2から酸化物相3aに侵入する形態の金属相3bを含む形態の中間相の熱膨張率は、酸化物相3aのみで構成される中間相の熱膨張率よりも基地相の熱膨張率に近い値となるため、長期間の熱サイクルを受けたときに中間相と基地相との熱膨張差による剥離が生じにくい効果がある。なお、中間相3には黒色で示す空隙部3cを含んでいてもよいが、空隙部の中間相の面積に占める好ましい割合は2.5%以下である。2.5%を超えると、複合材の熱伝導率の低下が顕著になって好ましくない。
加えて、金属相3bがセラミックス粒子相1に直接に接触している部分4(以下、接触部分ともいう。)が存在すると、基地相2とセラミックス粒子相1との間の熱伝達が良好になって、複合材の熱伝導率の増大に寄与するので好ましい。セラミックス粒子相の外周1aの長さに占める接触部分4の長さの和の好ましい割合は10%以上である。
さらに加えて、中間相3を構成する酸化物相3aは、SiOよりも熱伝導率が大きいAl及び/又はMgを主成分とする酸化物相であることが好ましく、酸化物相3aに占めるSiOはSi当量で10質量%以下であることが好ましい。
加えて、中間相3の厚さは小さいほど、基地相2とセラミックス粒子相1との間の熱伝導が良好になる。中間相3の好ましい厚さは400nm以下である。但し、後述する本発明の複合材を製造する方法において、セラミックス粒子を成形して焼成可能な最低限の酸化物量は必要であって、この最低限の酸化物量に相当する酸化物相の厚さは10nmである。このため中間相の厚さの下限は10nmである。
図2は本発明における中間相の一の形態と測定方法を説明する図である。図2(a)はアルミニウム合金−炭化ケイ素複合材における10000倍に拡大した走査型電子顕微鏡(以下、SEMともいう。)の写真の例で、炭化ケイ素(以下、SiCともいう。)粒子相11を囲む明白色を呈する物質が酸化物相13aである。この例のように、複合材の任意の切断面をSEMで500〜50000倍で観察すると、酸化物相13aはセラミックス粒子相11(本例ではSiC粒子相)と基地相12(本例ではアルミニウム合金母相12aと共晶Si相12bとからなる。)との間に偏在し、また周囲より明度が大きく観察されるので容易に識別可能である。
図2(b)は、図2(a)で示す領域Bの50000倍の拡大写真である。図2(b)において破線で示す外縁線15とSiC粒子相の外周16とに挟まれた領域が中間相13であって、明白色を呈する酸化物相13aに向かって基地相12の一部が金属相13bとして侵入した形態である。なお、外縁線15を定義するにあたっては、例えば領域Cで示すような、基地相12から侵入した金属相13bがセラミックス相11に接触していて酸化物相13aが不連続になっている部分は、分断された酸化物相の外縁端部であるa1とa2を直線で結んで外縁線15を画定する。
(中間相の厚さとその測定方法)
中間相の厚さとその測定方法の一例を以下に示すが、観察手段や拡大の倍率はこの限りではなく、また、観察視野数と測定箇所の数も、測定値のばらつきが著しく大きくならない程度に適宜増減させてもよい。
まず、SEMにて100〜400倍でセラミックス粒子相が存在する任意の一の視野から中間相を測定するセラミックス粒子を10個選定する。次いで、これらのうち一のセラミックス粒子相について、中間相の厚さに応じて5000〜50000倍、必要に応じて100000倍に拡大し、中間相の厚さを測定しようとする部位を8か所選定する。この選定部位は一のセラミックス粒子相の外周長(以下、周長ともいう。)を概ね8等分する部位であるのが好ましい。選定した8か所について外縁線からセラミックス粒子相までの垂線の長さの平均値、すなわち一のセラミックス粒子相の中間相の平均厚さを得る。この方法を一の視野で選定したセラミックス粒子相10個について行い、10個のセラミックス粒子相それぞれの中間相の平均厚さを得る。そして同様の測定を任意の5視野について実施し、合計で50個のセラミックス粒子相それぞれの中間相の平均厚さを得る。これら50個のセラミックス粒子相それぞれの中間相の平均厚さを平均した値を、中間相の厚さとする。
(金属相とセラミックス粒子相との接触部分の割合)
金属相とセラミックス粒子相とが接触している部分とその割合の測定方法の一例を以下に示す。観察手段や拡大の倍率はこの限りではなく、また、観察視野数と測定箇所の数も、測定値のばらつきが著しく大きくならない程度に適宜増減させてもよい。
中間相の測定方法と同様に、SEMにて100〜400倍でセラミックス粒子相が存在する任意の一の視野から中間相を測定するセラミックス粒子相を10個選定する。次いで、これらのうち一のセラミックス粒子相について、金属相とセラミックス相との接触部分の長さに応じて5000〜50000倍、必要に応じて100000倍に拡大し、この観察画像から一のセラミックス粒子相における接触部分の長さの和を当該のセラミックス粒子相の周長で除した値を、前記一のセラミックス粒子相の接触部分の割合とする。この方法を一の視野で選定したセラミックス粒子相10個について行い、10個のセラミックス粒子相それぞれについての接触部分の割合を得る。そして同様の測定を任意の5視野について実施し、合計で50個のセラミックス粒子相それぞれの接触部分の割合を得る。これら50個のセラミックス粒子相の接触部分の割合を平均した値を、接触部分の割合とする。
(中間相における空隙とその割合の測定方法)
次に、中間相に占める空隙部(以下、空隙部ともいう)の割合の測定方法の一例を示す。観察手段や拡大の倍率はこの限りではなく、また、観察視野数も、測定値のばらつきが著しく大きくならない程度に適宜増減させてもよい。
中間相の測定方法と同様に、SEMにて100〜400倍でセラミックス粒子相が存在する任意の一の視野から中間相を測定するセラミックス粒子相を10個選定する。次いで、これらのうち一のセラミックス粒子相について、中間相に観察される空隙部の大きさによって、5000〜50000倍、必要に応じて100000倍に拡大して撮影する。この一のセラミックス粒子相について、中間相に存在する空隙の面積を中間相の面積で除した値を、前記一のセラミックス粒子相における空隙部の割合とする。空隙部は他の部位よりも最も黒色を強く呈するので容易に識別可能である。なお、面積の測定方法は、コンピュータによる2値化されたピクセル数をカウントして行う画像処理等の公知の方法を用いることができる。この方法を一の視野で選定したセラミックス粒子相10個について行い、10個のセラミックス粒子相それぞれについての空隙部の割合を得る。そして同様の測定を任意の5視野について実施し、合計で50個のセラミックス粒子相について空隙部の割合を得る。これら50個のセラミックス粒子相の空隙部の割合を平均した値を、空隙部の割合とする。
(アルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法)
次に、本発明の複合材を製造する方法の好ましい一例について以下に説明する。但し、本発明に係る複合材は、以下に説明する製造方法で製造された物に限定されるものではない。
本発明のアルミニウム合金−セラミックス複合材の製造方法は、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちのいずれか1種以上のセラミックス粒子を成形して成形体を作製する成形工程と、前記成形体を焼成して焼成体を作製する焼成工程と、前記焼成体をMgを含むアルミニウム合金溶湯に浸漬して前記焼成体の空隙に前記アルミニウム合金溶湯を浸透させる浸透工程と、を含むアルミニウム合金―セラミックス複合材の製造方法である。
前記製造方法において、前記焼成体を構成する前記セラミックス粒子相の表面に存在する酸化物相はクリストバライトを含むことが好ましい。
また、前記製造方法において、前記成形工程は、前記セラミックス粒子100質量部あたり0〜0.5質量部のSiOを含むバインダーを混合して成形することが好ましい。
また、前記製造方法において、前記浸透工程は、10分以上の浸透時間であることが好ましい。さらに、前記製造方法において、前記浸透工程は大気雰囲気において大気圧下で行う、自発浸透法であることが好ましい。以下に、詳細を説明する。
(セラミックス粒子)
セラミックス粒子は、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちの1種以上を使用する。粒子の形態としては、短繊維や長繊維といった形態も含む。具体的には、炭化ケイ素等の炭化物系のセラミックス粒子、酸化ケイ素等の酸化物系のセラミックス粒子又は窒化ケイ素等の窒化物系のセラミックス粒子のいずれかの単体、又はそれら2種以上の混合物である。セラミックス粒子に元素として少なくともSiを含むようにした理由は、複合材を自発浸透法で製造する場合に、セラミックス粒子の表面にSiOが形成されていることが必要であるため、Siを含まないバインダーを用いて成形する場合に、焼成時にセラミックス粒子に含まれるSiが酸化して生成されるSiOを、浸透工程において利用できるようにするためである。なお、複合材において所望の性能が得られる限りにおいて、アルミナなどの、元素としてSiを含まない粒子も混在させてよい。
(バインダー)
バインダーは、上記セラミックス粒子100質量部に対してSiOが0〜0.5質量部含む水溶液を使用する。ここでSiOが0質量部の場合の水溶液とは、SiOを含まない水溶液、すなわち水である。SiOを含む水溶液とする場合は、SiO源として市販のコロイダルシリカ、水ガラス等を使用できる。セラミックス粒子100質量部に対して0.5質量部以下のSiO含有量であれば、複合材としたときの中間相を、Al及び/又はMgを主成分とする酸化物相と、基地相のうち前記酸化物相へ侵入した部分である金属相とを含む形態にすることができる。これは、焼成工程において、セラミックス粒子の表面を覆うSiOのうちの適量が結晶多形の一つであるクリストバライトに変化することがその一因と考えられる。なお、バインダーに含まれるSiOがセラミックス粒子100質量部に対し0.5質量部を超えると、中間相の厚さが大きくなり、また酸化物相に占めるSiOの割合も大きくなるので、複合材の熱伝導率が低下するので好ましくない。なお、上記バインダーは、複合材として所望の性能を得られる限りにおいて、アルミナや酸化マグネシウムなどSiO以外の物質を含んでもよい。
(アルミニウム合金)
アルミニウム合金は、上記したようにMgを含むアルミニウム合金であって、Al−Mg系、Al−Si−Mg系、Al−Si−Cu−Mg系などが適用できる。Mgを含むことで、浸透工程において、セラミックス粒子からなるプリフォームへの溶湯の浸透が容易になり、その結果、セラミックス粒子表面を覆っているSiOからAl−Mg−O系酸化物への酸化還元反応も促進されるので好ましい。なお、Mgの含有量としては、1.0〜5.0質量%が好適であり、さらに好ましくは、2.5〜5.0質量%である。また、上記アルミニウム合金は、アルミニウム合金−セラミックス複合材としたときの所望の性能を確保できる限りにおいて、Fe、Ni、Cr、Mn等の不純物元素を含んでもよい。
以下に、本発明を具体的に実施した例について表1〜3を参照しつつ説明する。
[実施例1]
セラミック粒子は、JIS R 6001に規定の粒度指数F80及びF150であるSiCを、それぞれ質量比2:1で混合したものを使用した。バインダーには、SiOを含まない水溶液、すなわち水をSiC100gあたり6g(SiC100質量部に対し0質量部のSiO)を添加し、5分間混合して混合体を得た。次いでキャビティ形状が縦100mm、横50mm、深さ50mmである鋼製の成形型に前記混合体を充填してハンドリングが可能な程度までつき固めて成形後、抜型して成形体を得た。次いで、この成形体を加熱炉に装入して850℃で5時間保持した後、100℃になるまで炉内で冷却後、炉から取出して室温まで放冷して焼成体を得た。
得られた焼成体の表層から5mm角の試験片を採取し、エネルギー分散型X線分析装置を具えたSEM(以下、SEM−EDXともいう。)にてSiCの表面を観察して構成元素を分析した結果、SiC表面には10nmの厚さのSiOが存在していた。そこで、X線回折装置((株)リガク製、機種名SmartLab)にてSiCの表面のSiOを詳細に分析した。回折角(2θ)が5°〜90°の範囲でX線(Cu−Kα)を照射させながら、回折強度が強いピークを示す回折角(2θ)を走査速度2°/分、サンプリング幅0.02°で測定した(以下、他の実施例、比較例についても同様の方法で測定した。)。その結果、実施例1の焼成体に存在するSiOは、石英ガラス、トリディマイト、及びクリストバライトの3種類の結晶多形からなっており、回折ピークの面積から求めたSiOに占めるクリストバライトの割合は40質量%であった。
次いで、焼成体を鋼製の浸漬治具に装填し、850℃の大気中にて加熱保持による予熱を行った。
アルミニウム合金溶湯(以下、溶湯ともいう。)は質量比でAl−12%Si−3%Mgの成分組成とし、黒鉛るつぼからなる保持炉を使用して溶製し、800℃に保持した(変動範囲は上下5℃以内とした)。
焼成体は、前記浸漬治具に装填した状態で大気雰囲気において大気中で溶湯に浸漬した。浸漬したプリフォームに溶湯が浸透したことを検知するために、浸漬したプリフォームに質量センサーを取り付けて溶湯の浸透に伴う浮力の変化を計測する方法(例えば、中江秀雄著,「濡れ、その基礎とものづくりへの応用」,産業図書株式会社,2011年7月25日,p.120,図9.15参照。)を採用した(他の実施例と比較例についても同様。)。この検知方法でプリフォーム内に溶湯が浸透したことを確認した後、溶湯が浸透したプリフォームを浸透治具ごと取出し、鋼性の冷却板上で室温まで空冷して、アルミニウム合金−セラミックス複合材を得た。プリフォーム内への溶湯の浸透を検知してからプリフォームを溶湯から引き上げるまでの期間の長さ(以下、浸漬時間ともいう。)は10分とした。
セラミックス粒子相と基地相の間に介在する中間相の厚さは、得られた複合材を切断し、前述した一連の方法で観察し測定した(他の実施例と比較例についても同様。)。
実施例1の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相と、セラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは10nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。また、金属相の一部はSiC粒子まで達しており、金属相とSiC粒子との接触部分の割合は80%であった。また、中間相には、中間相の面積に対して0.5%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM−EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物であり、Siは検出されなかった。
次に、実施例1の複合材から、直径10mm、厚さ3mmの試験片を採取し、室温(25℃)及び150℃における熱伝導率をXeフラッシュ熱拡散率測定器((株)NETZCH社製)を用いて測定した(他の実施例、比較例についても同様。)。その結果、25℃における熱伝導率は220W/(m・K)、150℃における熱伝導率は169W/(m・K)(25℃における熱伝導率の76.8%に相当)であった。
さらに、実施例1の複合材に、−40℃で30分間保持し、次いで150℃で30分間保持するサイクル(温度切り替えに要する時間は30秒とした。)を5000回与える耐久試験を行った(他の実施例、比較例についても同様。以下、耐久試験ともいう。)。次いで、直径10mm、厚さ3mm試験片を採取し、室温(25℃)及び150℃における熱伝導率を測定した結果、25℃では218W/(m・K)、150℃での熱伝導率は165W/(m・K)(25℃における熱伝導率の75.7%に相当)であった。実施例1の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては2W/(m・K)、150℃においては4W/(m・K)低下しており、(耐久試験前の熱伝導率−耐久試験後の熱伝導率)/耐久試験前の熱伝導率×100(%)の式で算出される耐久試験による熱伝導率の劣化率(以下、熱伝導率劣化率という場合がある。)は、25℃においては0.91%、150℃においては2.37%であった。
[実施例2]
実施例2は、焼成工程においては1100℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例2の焼成体のSiC粒子の表面には75nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は52質量%であった。
実施例2の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相と、セラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは100nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。また、金属相の一部はSiC粒子まで達しており、金属相とSiC粒子との接触部分の割合は50%であった。また、中間相には、中間相の面積に対して0.7%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM−EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物であり、Siは検出されなかった。
耐久試験前の実施例2の複合材の熱伝導率は、25℃においては217W/(m・K)、150℃においては168W/(m・K)(25℃における熱伝導率の77.4%に相当)であった。 耐久試験後の実施例2の複合材の熱伝導率は、25℃においては215W/(m・K)、150℃においては164W/(m・K)(25℃における熱伝導率の76.2%に相当)であった。実施例2の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては2W/(m・K)、150℃においては4W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては0.92%、150℃においては2.38%であった。
[実施例3]
実施例3は、焼成工程においては1130℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を20分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例3の焼成体のSiC粒子の表面には110nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は65質量%であった。
実施例3の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相と、セラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは120nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。また、金属相の一部はSiC粒子まで達しており、金属相とSiC粒子との接触部分の割合は35%であった。また中間相には、中間相の面積に対して1.0%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物であり、Siは検出されなかった。
耐久試験前の実施例3の複合材の熱伝導率は、25℃においては208W/(m・K)、150℃においては161W/(m・K)(25℃における熱伝導率の77.4%に相当)であった。耐久試験後の実施例4の複合材の熱伝導率は、25℃においては206W/(m・K)、150℃においては158W/(m・K)(25℃における熱伝導率の76.6%に相当)であった。実施例3の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては2W/(m・K)、150℃においては3W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては0.96%、150℃においては1.86%であった。
[実施例4]
実施例4は、焼成工程においては1300℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例4の焼成体のSiC粒子の表面には180nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は80質量%であった。
実施例4の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相と、セラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは250nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。また、金属相の一部はSiC粒子まで達しており、金属相とSiC粒子との接触部分の割合は18%であった。また中間相には、中間相の面積に対して2.0%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物であり、Siは検出されなかった。
耐久試験前の実施例4の複合材の熱伝導率は、25℃においては206W/(m・K)、150℃においては159W/(m・K)(25℃における熱伝導率の77.2%に相当)であった。耐久試験後の実施例4の複合材の熱伝導率は、25℃においては204W/(m・K)、150℃においては156W/(m・K)(25℃における熱伝導率の76.4%に相当)であった。実施例4の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては2W/(m・K)、150℃においては3W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては0.97%、150℃においては1.89%であった。
[実施例5]
実施例5は、焼成工程においては1450℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例5の焼成体のSiC粒子の表面には310nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は90質量%であった。
実施例5の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相と、セラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは380nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。また、金属相の一部はSiC粒子まで達しており、金属相とSiC粒子との接触部分の割合は14%であった。また、中間相には、中間相の面積に対して2.0%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物であり、Siは検出されなかった。
耐久試験前の実施例5の複合材の熱伝導率は、25℃においては200W/(m・K)、150℃においては154W/(m・K)(25℃における熱伝導率の77.0%に相当)であった。 耐久試験後の実施例5の複合材の熱伝導率は、25℃においては198W/(m・K)、150℃においては151W/(m・K)(25℃における熱伝導率の76.2%に相当)であった。実施例5の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては2W/(m・K)、150℃においては3W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては1.00%、150℃においては1.95%であった。
[実施例6]
実施例6は、バインダーとしてコロイダルシリカを水で希釈した水溶液を使用し、その添加量はSiC100質量部に対し0.46質量部のSiOとなる量とし、焼成工程においては1130℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、実施例6の焼成体のSiC粒子の表面には290nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は50質量%であった。
実施例6の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相とセラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは350nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。また、金属相の一部はSiC粒子まで達しており、金属相とSiC粒子との接触部分の割合は10%であった。また、中間相には、中間相の面積に対して1.0%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物が主体であったが、5質量%のSiも検出された。
耐久試験前の実施例6の複合材の熱伝導率は、25℃においては201W/(m・K)、150℃においては151W/(m・K)(25℃における熱伝導率の75.1%に相当)であった。耐久試験後の実施例6の複合材の熱伝導率は、25℃においては198W/(m・K)、150℃においては148W/(m・K)(25℃における熱伝導率の74.7%に相当)であった。実施例6の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては3W/(m・K)、150℃においては3W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては1.49%、150℃においては1.99%であった。
参考例7]
参考例7は、バインダーとしてコロイダルシリカを水で希釈した水溶液を使用し、その添加量はSiC100質量部に対し0.80質量部のSiOとなる量とし、焼成工程においては1100℃で2時間保持とし、浸漬工程においては浸漬時間を30分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、参考例7の焼成体のSiC粒子の表面には420nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は45質量%であった。
参考例7の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相とセラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは450nmであった。中間相には、酸化物相に基地相から侵入した部分である金属相がネットワーク状をなしており、金属相の隙間を埋めるように酸化物相が配置された様相を呈していた。なお、金属相はSiC粒子までは達していなかった。また、中間相には、中間相の面積に対して2.4%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物が主体であったが、10質量%のSiも検出された。
耐久試験前の参考例7の複合材の熱伝導率は、25℃においては192W/(m・K)、150℃においては144W/(m・K)(25℃における熱伝導率の75.0%に相当)であった。耐久試験後の参考例7の複合材の熱伝導率は、25℃においては188W/(m・K)、150℃においては138W/(m・K)(25℃における熱伝導率の73.5%に相当)であった。参考例7の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては4W/(m・K)、150℃においては6W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては2.08%、150℃においては4.17%であった。
[比較例1]
比較例1は、バインダーとしてコロイダルシリカの原液を使用し、その添加量はSiC100gあたり10g(SiC100質量部に対し2.0質量部のSiOとなる量)とし、焼成工程においては1050℃で2時間保持とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、比較例1の焼成体のSiC粒子の表面には1300nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は28質量%であった。
比較例1の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相とセラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは1450nmであった。中間相はほぼ酸化物相からなり、基地相から酸化物相に侵入する金属相は観られなかった。また、中間相には、中間相の面積に対して3.1%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物が主体であったが、15質量%のSiも検出された。
耐久試験前の比較例1の複合材の熱伝導率は、25℃においては174W/(m・K)、150℃においては126W/(m・K)(25℃における熱伝導率の72.4%に相当)であった。耐久試験後の比較例1の複合材の熱伝導率は、25℃においては171W/(m・K)、150℃においては120W/(m・K)(25℃における熱伝導率の70.2%に相当)であった。比較例1の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては3W/(m・K)、150℃においては6W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては1.73%、150℃においては4.76%であった。
[比較例2]
比較例2は、バインダーとして水ガラス水溶液(富士化学製の2号水ガラスに水を質量比で1:2で希釈したもの)を使用し、その添加量はSiC100gあたり4.5g(SiC100質量部に対し0.75質量部のSiOとなる量)とし、焼成工程においては850℃で2時間保持とし、浸漬工程における浸漬時間を7分とした以外は、実施例1と同様の方法で複合材を得た。なお、比較例2の焼成体のSiC粒子の表面には1200nmの厚さのSiOが存在していて、SiOに占めるクリストバライトの割合は0質量%であった。
比較例2の複合材を、SEMにて20000〜50000倍で観察したところ、アルミニウム合金を主体とした基地相とセラミックス粒子相との間に介在する中間相が観察された。中間相の厚さは1350nmであった。中間相はほぼ酸化物相からなり、基地相から酸化物相に侵入する金属相は観られなかった。また、中間相には、中間相の面積に対して2.8%の面積の空隙部が観察された。中間相に含まれる酸化物相の構成元素をSEM-EDXで分析すると、AlとMgを含む酸化物が主体であったが、20質量%のSiも検出された。
耐久試験前の比較例2の複合材の熱伝導率は、25℃においては178W/(m・K)、150℃においては131W/(m・K)(25℃における熱伝導率の73.6%に相当)であった。耐久試験後の比較例2の複合材の熱伝導率は、25℃においては174W/(m・K)、150℃においては124W/(m・K)(25℃における熱伝導率の71.3%に相当)であった。比較例2の複合材の耐久試験前後の熱伝導率は、25℃においては4W/(m・K)、150℃においては7W/(m・K)低下しており、熱伝導率劣化率は、25℃においては2.24%、150℃においては5.34%であった。
Figure 0006443727
Figure 0006443727
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1(11) セラミックス粒子相
2(12) 基地相
3(13) 中間相
3a(13a) 酸化物相
3b(13b) 金属相
3c 空隙部
4 接触部分
5 外縁線
12a アルミニウム合金母相
12b 共晶Si相
a1,a2 酸化物相の外縁端部

Claims (6)

  1. Al及びMgを含むアルミニウム合金を主体とした基地相と、前記基地相に分散した、元素として少なくともSiを含む炭化物系、酸化物系又は窒化物系のうちのいずれか1種以上からなるセラミックス粒子相と、前記基地相と前記セラミックス粒子相との間に介在する中間相とを有し、前記中間相は、Al及び/又はMgを主成分とする酸化物相と、前記基地相のうち前記酸化物相へ侵入した部分である金属相とを含み、前記金属相の少なくとも一部は、前記セラミックス粒子相に接触していることを特徴とするアルミニウム合金−セラミックス複合材。
  2. 前記酸化物相に含まれる元素としてのSiが前記酸化物相に対して10質量%以下である請求項1に記載のアルミニウム−セラミックス複合材。
  3. 前記金属相はネットワーク状をなしており、前記酸化物相は、前記金属相の隙間を埋めるように配置されている請求項1又は2に記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
  4. 前記複合材の任意の切断面において、前記金属相が前記セラミックス粒子相に接触している長さが前記セラミックス粒子相の周長に対して10%以上である請求項1乃至3のいずれかに記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
  5. 前記複合材の任意の切断面において、前記酸化物相の外縁を滑らかに結んだ仮想線と前記セラミックス粒子相の外周との間に挟まれた領域である前記中間相の厚さが400nm以下である請求項1乃至のいずれかに記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
  6. 前記複合材の任意の切断面において、前記中間相は、前記酸化物相の外縁を滑らかに結んだ仮想線と前記セラミックス粒子相の外周との間に挟まれた領域である前記中間相の面積に対して2.5%以下の面積の空隙部を含む請求項1乃至のいずれかに記載のアルミニウム合金―セラミックス複合材。
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