先ず始めに、本発明に係る無線通信デバイスにおける各種態様の構成について記載する。
本発明に係る第1の態様の無線通信デバイスは、
所定の通信周波数を有する高周波信号を送受信するための無線通信デバイスであって、
インダクタンス成分を有するアンテナパターンと、
前記アンテナパターンに電気的に接続されたRFIC素子と、
前記アンテナパターンの複数箇所において、前記アンテナパターンのそれぞれ対向する特定の対向領域同士を容量結合してLC並列共振回路を構成する容量結合部と、を備える。
上記のように構成された第1の態様の無線通信デバイスは、無線通信デバイスが付された商品が通信周波数よりも高い周波数の帯域の電磁波に照射された場合でも、無線通信デバイスにおける放電の発生が抑制され、無線通信デバイスが付された商品における発火の危険性を防止することができる。
なお、アンテナパターンは直線形状および曲線形状のどちらでもよい。それぞれの対向領域を有する連続したアンテナパターンは、一方のアンテナパターンの延びる方向と交差する方向に他方のアンテナパターンが存在していればよい。したがって、連続したアンテナパターンに存在するそれぞれの対向領域は、互いに平行に位置している場合や、いずれか一方が傾いている場合を含み、さらには、互いに曲線同士で対向していてもよい。
本発明に係る第2の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが、複数の折り返し部分を有するミアンダ状に形成され、前記LC並列共振回路を構成する前記容量結合部は、前記アンテナパターンにおける隣り合う折り返し部分を容量結合するよう構成されてもよい。
本発明に係る第3の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが、誘電体で構成されたアンテナ基材の一方の面に設けられ、前記容量結合部は、前記アンテナ基材の他方の面に設けられてもよい。
本発明に係る第4の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンと前記容量結合部が、アンテナ基材の一方の面上に設けられ、前記容量結合部は、前記それぞれ対向する特定の対向部分の間に配置された導体板でもよい。
本発明に係る第5の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンと前記容量結合部が、アンテナ基材の一方の面上に誘電体を介して積層されてもよい。
本発明に係る第6の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路の線路長が、前記所定の通信用の周波数の1/2波長より短く形成されてもよい。
本発明に係る第7の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路の線路長が、電磁波加熱に用いられる周波数の1/2波長より短く形成されてもよい。
本発明に係る第8の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路が、前記所定の通信周波数よりも高い周波数を共振周波数としてもよい。
本発明に係る第9の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路が、電磁波加熱に用いられる周波数を共振周波数としてもよい。
本発明に係る第10の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路が、電磁波加熱に用いられる周波数の帯域として2.4〜2.5GHzの帯域の周波数を共振周波数としてもよい。
本発明に係る第11の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが、前記容量結合部の線幅より狭い線幅を有してもよい。
本発明に係る第12の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが、複数の折り返し部分を有するミアンダ状に形成され、前記ミアンダの振幅方向において、前記アンテナパターンの長さは前記容量結合部の長さよりも長くてもよい。
本発明に係る第13の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが形成された樹脂製のアンテナ基材を備えてもよい。
本発明に係る第14の態様の無線通信デバイスは、前記樹脂製のアンテナ基材に貼り付けられた、前記アンテナ基材よりも耐熱性のフィルムを備えてもよい。
本発明に係る第15の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンは、2つのダイポールエレメントを有するダイポールアンテナで構成され、前記ダイポールエレメントのそれぞれに前記LC並列共振回路を構成する前記容量結合部が設けられてもよい。
本発明に係る第16の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路を構成する前記アンテナパターンの電流経路の一部が、当該電流経路における他の部位より細く形成されてもよい。
本発明に係る第17の態様の無線通信デバイスは、前記LC並列共振回路を構成する前記アンテナパターンの電流経路の一部が、当該電流経路における他の部位より薄く形成されてもよい。
本発明に係る第18の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが、UHF帯を通信周波数とするよう構成されてもよい。
本発明に係る第19の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンが、HF帯を通信周波数とするよう構成されてもよい。
本発明に係る第20の態様の無線通信デバイスは、前記容量結合部がない場合の前記アンテナパターンによる共振周波数が、前記通信周波数よりも高くてもよい。
本発明に係る第21の態様の無線通信デバイスは、通信用の周波数を有する高周波信号を送受信するための無線通信デバイスであって、互いに対向する対向領域を有するアンテナパターンと、前記アンテナパターンに電気的に接続されたRFICチップと、前記アンテナパターンのそれぞれの対向領域間に配置されたループ状の導体パターンと、を備え、前記導体パターンの周長は、前記通信用の周波数の2分の1波長より小さい。
上記のように構成された第1の態様の無線通信デバイスは、無線通信デバイスが付された商品が通信周波数よりも高い周波数の帯域の電磁波に照射されると、ループ状の導体パターンが磁界アンテナとして磁界を発生させる。これにより、通信周波数よりも高い周波数の帯域の電磁波を受けるアンテナパターンの近接した位置で、磁界アンテナが形成される。これにより、アンテナパターンは、通信周波数よりも高い周波数帯域でのアンテナ放射効率が劣化し、アンテナパターンが受信するエネルギーを低減させることができる。この結果、無線通信デバイスが付された商品における発火の危険性を防止することができる。
本発明に係る第22の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンは、ミアンダ形状に形成され、前記アンテナパターンのそれぞれの前記対向領域は、互いに平行な直線部分を有してもよい。
本発明に係る第23の態様の無線通信デバイスは、前記導体パターンは、前記アンテナパターンの隣り合うそれぞれの折り返し部分の間に配置されてもよい。
本発明に係る第24の態様の無線通信デバイスは、前記導体パターンは長手方向と短手方向を有し、前記導体パターンの長手方向の長さは、電磁波加熱に用いられる周波数の1/4波長以下に形成されてもよい。
本発明に係る第25の態様の無線通信デバイスは、複数の前記導体パターンが、前記アンテナパターンのそれぞれの前記対向領域の間に、互いに間隔をおいて配置されてもよい。
本発明に係る第26の態様の無線通信デバイスは、前記アンテナパターンに前記通信用周波数よりも高い周波数の電磁波が照射されると、前記複数の導体パターンの間における前記アンテナパターンのぞれぞれの前記対向領域間において電位差が大きくなってもよい。
本発明に係る第27の態様の無線通信デバイスは、それぞれ周長の異なる前記導体パターンが、前記アンテナパターンの直線部分に沿って配置されてもよい。
本発明に係る第28の態様の無線通信デバイスは、前記導体パターンを間に挟む前記対向領域を含む前記アンテナパターンの一部および前記導体パターンによる第1共振周波数と、前記導体パターンの隣に配置された別の導体パターンを間に挟む対向領域を含む前記アンテナパターンの別の一部および前記別の導体パターンによる第2共振周波数と、が異なってもよい。
本発明に係る第29の態様の無線通信デバイスは、前記第1共振周波数は、電磁波加熱に用いられる周波数を共振周波数としてもよい。
本発明に係る第30の態様の無線通信デバイスは、前記第1共振周波数は、電磁波加熱に用いられる周波数の帯域として2.4GHz以上2.5GHz以下の帯域の周波数を共振周波数としてもよい。
本発明に係る第31の態様の無線通信デバイスは、前記導体パターンの周長と前記通信用の周波数よりも高い前記第1共振周波数の2分の1波長との差は、前記導体パターンの周長と前記通信用の周波数の2分の1波長との差に比べて小さくてもよい。
無線通信デバイスが付された商品を販売するコンビニエンスストアやスーパーでは、食品、日用雑貨品などの多種多様な商品が取り扱われる。近年、コンビニエンスストアに関して、購入した商品の会計、および袋詰めを自動化する「無人コンビニエンスストア」の実用化に向けて、各種実験が行われている。
「無人コンビニエンスストア」における商品会計の自動化のためには、無線通信デバイスである「RFIDタグ」を全ての商品に付して対応することが考えられている。「無人コンビニエンスストア」においては、「RFIDタグ」が付された商品を収容した買い物カゴが精算台に置かれると、「RFIDタグ」からの情報が読み取られて商品代金が表示されるシステムである。購入者は、商品代金として所定位置に現金を投入するか、クレジットカードを差し込んで支払いを済ませて、自動的に買い物袋に詰められた商品を受け取ることにより、「無人コンビニエンスストア」における商品の購入を完了することができる。
以下、本発明に係る無線通信デバイスの具体的な例示としての実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態の無線通信デバイスである「RFIDタグ」が付される商品として弁当を例示として説明するが、本発明に係る無線通信デバイスが付される商品としては、所謂「コンビニエンスストア」などの販売店において取り扱われる全ての商品が対象である。本発明においては、同じ構成を有する無線通信デバイスが全ての商品に対して付される商品販売システムに関するものである。
なお、以下の実施の形態において説明する電磁波加熱装置としては、誘電加熱を行う所謂「電子レンジ」で説明するが、本発明おける電磁波加熱装置としては誘電加熱を行う機能を有する加熱装置が対象となる。
《実施の形態1》
図1は、本発明に係る実施の形態1の無線通信デバイスであるRFIDタグ1を示す平面図である。RFIDタグ1は、UHF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信(送受信)するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能な構成である。ここでUHF帯とは、860MHzから960MHzの周波数帯域である。ここで、UHF帯の通信周波数は本発明における「通信用の第1の周波数」の一例である。RFIDタグ1は、後述するRFICパッケージ2と、アンテナパターン3と、容量結合部である線間容量パターン4と、誘電体であるアンテナ基材5と、を含む。実施の形態1のRFIDタグ1において、アンテナ基材5としては、可撓性を有する難燃性フィルム材料が用いられており、略矩形状に形成されている。また、アンテナ基材5が難燃性フィルム材料でない場合は、アンテナ基材5のフィルム厚を38μm以下の薄さにしてもよい。これにより、アンテナ基材5は、燃焼するまでに溶けて変形するので、基材形状を保て無いようにすることができる。アンテナパターン3の線幅は、100μmから300μmであり、特に150μm以下にする事で、アンテナ基材5が変形する時に同時に断線しやすくすることができる。アンテナ基材5の表面(第1主面)には、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料の膜体により作製されたアンテナパターン3が形成されている。また、アンテナ基材5の表面(第1主面)に形成されたアンテナパターン3には、RFICパッケージ2が実装されており、RFICパッケージ2とアンテナパターン3が電気的に接続されている。なお、電気的に接続とは、高周波信号が伝達され、動作可能なように互いが接続あるいは結合されていることを意味し直流的に接続されていることに限定されるわけではない。
なお、実施の形態1におけるアンテナ基材5として用いられる難燃性フィルム材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などの樹脂材料にハロゲン系難燃材料の添加や、難燃性コーティング材料の塗工を行ったフィルムが用いられる。また、アンテナ基材5の材料としては、耐熱性を有するPEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂などの高機能を有する樹脂材料を用いることも可能である。更に、誘電体であるアンテナ基材5に対しては、耐熱性材料の膜体を更に設けて、アンテナパターン3と線間容量パターン4との間のアンテナ基材5としての耐熱性を更に高めた構成としてもよい。
一方、アンテナ基材5の裏面(第2主面)には、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料により作製された線間容量パターン4が容量結合部として形成されている。アンテナ基材5の裏面(第2主面)に形成された線間容量パターン4は、インダクタンス成分を有するアンテナパターン3の複数箇所において、アンテナパターン3の特定の領域同士を容量結合している。その結果、アンテナパターン3の一部分で構成されたインダクタンス成分と、線間容量パターン4とアンテナパターン3の一部分との間に形成されたキャパシタンス成分とによりLC並列共振回路Sが構成されており、このLC並列共振回路Sが複数形成されて、実質的に直列および並列に接続された構成となっている。なお、図1においては、アンテナ基材5として透明材料を用いた例を示しており、アンテナ基材5の表裏に形成されたアンテナパターン3および線間容量パターン4(図1においては破線表示)が表示されている。なお、アンテナ基材5としては透明材料を用いる必要はなく、少なくともアンテナパターン3と線間容量パターン4との間で所望のキャパシタンスを有する容量結合が可能な材料であればよい。
図2は、アンテナ基材5の表面(第1主面)および裏面(第2主面)を示している。図2Aがアンテナ基材5の表面(第1主面)に形成されたアンテナパターン3を示しており、図2Bがアンテナ基材5の裏面(第2主面)に形成された容量結合部である線間容量パターン4を示している。
図2Aに示すように、実施の形態1におけるアンテナパターン3には、RFICパッケージ2と接触して電気的に接続するための2つのランドパターン6(6a、6b)が設けられている。また、アンテナパターン3は、第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bを有しており、ダイポール型の電界アンテナを構成している。
図2Aに示すように、第1アンテナ素子3aは、略線状の形状パターンを有しており、第1ランドパターン6aから導出して、ミアンダ状に延設されている。第1ランドパターン6aの延設方向は、アンテナ基材5の長手方向の一端に向かっており、第1ランドパターン6aの延設方向の先端部はアンテナ基材5の長手方向の端部に配設されている。第1アンテナ素子3aは、通信周波数のλ/4の長さを有する。通信周波数が、例えば、920MHzの場合、第1アンテナ素子3aにおける第1ランドパターン6aからアンテナ基材5の端部までの長さは、約80mmである。
アンテナパターン3の第2アンテナ素子3bは、第2ランドパターン6bから導出してアンテナ基材5の長手方向の他端に向かってミアンダ状に延設されているが、第2アンテナ素子3bの延設方向の先端部には幅広部7が形成されている。この幅広部7は、商品に貼り付けられる部分となり、商品外面に金属材料が表れている商品、例えば缶製品に貼り付けられた場合には、その商品外面をアンテナの一部として機能させるものである。
図2Bに示すように、アンテナ基材5の裏面(第2主面)に形成された容量結合部としての線間容量パターン4は、実施の形態1の構成においては、形状の異なる複数の線間容量電極4a、4bを有している。線間容量パターン4は、幅広形状の第1線間容量電極4aと、幅狭形状の第2線間容量電極4bとを有している。幅広形状の第1線間容量電極4aは、ミアンダ状の第1アンテナ素子3aにおける特定の対向領域3aa同士を容量結合しており、同様にミアンダ状の第2アンテナ素子3bにおける特定の対向領域3ba同士を容量結合している。第1線間容量電極4aは、少なくとも第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bにおける隣接する折り返し部分を容量結合するよう配設されている。
一方、幅狭形状の第2線間容量電極4bは、第1アンテナ素子3aにおける特定の領域と、第2アンテナ素子3bにおける特定の領域とを容量結合するよう設けられている。また、幅狭形状の第2線間容量電極4bは、第1ランドパターン6aと、第1アンテナ素子3aにおける特定の領域とを容量結合するよう設けられており、また、第2ランドパターン6bと、第2アンテナ素子3bにおける特定の領域(幅広部7を含む)とを容量結合するよう設けられている。
上記のように構成された、アンテナ基材5の表面(第1主面)に形成されたアンテナパターン3、およびアンテナ基材5の裏面(第2主面)に形成された線間容量パターン4においては、電界の集中を防止する形状を有しており、特に屈曲部分および外周部分の縁部分においては鋭角の部分はなく、全て緩やかな曲面で構成されている。
なお、実施の形態1におけるRFIDタグ1は、例えば、「コンビニエンスストア」において取り扱われている全ての商品が対称であり、全ての商品に対して同一の構成のRFIDタグ1が用いられる。このため、実施の形態1における商品の例示としては、電磁波加熱装置である「電子レンジ」により加熱される弁当を用いて説明する。このような弁当に対しても、商品外面の金属材料をアンテナの一部として機能させる幅広部7を有するRFIDタグ1が用いられる。図3Aは絶縁体材料で構成されている商品の例示として弁当8に対してRFIDタグ1が付された場合を示す斜視図である。図3Bは商品外面が金属材料で構成されている例として、金属缶14にRFIDタグ1が付された例を示している。
図4は、アンテナパターン3のランドパターン6(6a、6b)上に実装されるRFICパッケージ2の構成を示す分解斜視図である。図4に示すように、実施の形態1におけるRFICパッケージ2は、三層からなる多層基板で構成されている。具体的には、RFICパッケージ2の多層基板は、ポリイミド、液晶ポリマなどの樹脂材料から作製されており、可撓性を有する三つの絶縁シート12A、12B、12Cが積層されて構成されている。絶縁シート12A、12B、12Cは、平面視が略四角形状であり、実施の形態1においては略長方形の形状を有している。図4に示すRFICパッケージ2は、図1に示したRFICパッケージ2を裏返して三層を分解した状態を示している。
図4に示すように、RFICパッケージ2は、三層の基板(絶縁シート12A、12B、12C)上において、RFICチップ9と、複数のインダクタンス素子10A、10B、10C、10Dと、アンテナパターン3に接続される外部接続端子11(11a、11b)と、が所望の位置に形成されている。
外部接続端子11(11a、11b)は、最下層(アンテナパターン3に対向する基板)となる第1絶縁シート12Aに形成されており、アンテナパターン3のランドパターン6(6a、6b)に対向する位置に形成されている。4つのインダクタンス素子10A、10B、10C、10Dは、第2絶縁シート12Bおよび第3絶縁シート12Cに2つずつ分かれて形成されている。即ち、最上層(図4においては最も下に記載されている層)となる第3絶縁シート12Cには第1インダクタンス素子10Aおよび第2インダクタンス素子10Bが形成されており、中間層となる第2絶縁シート12Bには第3インダクタンス素子10Cおよび第4インダクタンス素子10Dが形成されている。
実施の形態1におけるRFICパッケージ2においては、外部接続端子11(11a、11b)および4つのインダクタンス素子10A、10B、10C、10Dは、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料により作製される導体パターンにより構成される。
図4に示すように、RFICチップ9は、最上層である第3絶縁シート12C上に長手方向(図4におけるX方向)の中央部分に実装されている。RFICチップ9は、シリコンなどの半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。第3絶縁シート12C上の一方側(図4においてはX軸方向の左側)において渦巻き状に形成されている第1インダクタンス素子10Aは、RFICチップ9の一方の入出力端子9aにランド10Aaを介して接続されている。第3絶縁シート12C上の他方側(図4においてはX軸方向の右側)において渦巻き状に形成されている第2インダクタンス素子10Bは、RFICチップ9の他方の入出力端子9bにランド10Baを介して接続されている。
中間層である第2絶縁シート12B上の一方側(図4においてはX軸方向の左側)には、渦巻き状の第3インダクタンス素子10Cが形成されており、第2絶縁シート12B上の他方側(図4においてはX軸方向の右側)には、渦巻き状の第4インダクタンス素子10Dが形成されている。渦巻き状の第3インダクタンス素子10Cの外周側の端部と、渦巻き状の第4インダクタンス素子10Dの外周側の端部は直接接続されている。一方、第3インダクタンス素子10Cの内周側の端部(ランド10Ca)は、第2絶縁シート12Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体を介して、第3絶縁シート12C上の渦巻き状の第1インダクタンス素子10Aの内周側の端部(ランド10Ab)に接続されている。また、第3インダクタンス素子10Cの内周側の端部(ランド10Ca)は、最下層となる第1絶縁シート12Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体を介して、第1絶縁シート12A上の第1外部接続端子11aに接続されている。
第4インダクタンス素子10Dの内周側の端部(ランド10Da)は、第2絶縁シート12Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体を介して、第3絶縁シート12C上の渦巻き状の第2インダクタンス素子10Bの内周側の端部(ランド10Bb)に接続されている。また、第4インダクタンス素子10Dの内周側の端部(ランド10Da)は、最下層となる第1絶縁シート12Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体を介して、第1絶縁シート12A上の第2外部接続端子11bに接続されている。
第1絶縁シート12A上の第1外部接続端子11aは、アンテナ基材5上に形成された第1アンテナ素子3aの第1ランドパターン6aに接続されるよう配設されている。また、第1絶縁シート12A上の第2外部接続端子11bは、アンテナ基材5上に形成された第2アンテナ素子3bの第2ランドパターン6bに接続されるよう配設されている。
また、中間層である第2絶縁シート12Bには、第3絶縁シート12C上に実装されたRFICチップ9が収容される貫通孔13が形成されている。RFICチップ9は、半導体材料により形成されており、第1インダクタンス素子10Aと第2インダクタンス素子10Bとの間、および第3インダクタンス素子10Cと第4インダクタンス素子10Dとの間に配設されている。このため、RFICチップ9がシールドとして機能しており、第1インダクタンス素子10Aと第2インダクタンス素子10Bとの間における磁界結合および容量結合が抑制されており、同様に、第3インダクタンス素子10Cと第4インダクタンス素子10Dとの間における磁界結合および容量結合が抑制されている。その結果、実施の形態1におけるRFICパッケージ2においては、通信信号の通過帯域が狭くなることが抑制されており、通過帯域を広いものとしている。
図5は、実施の形態1のRFIDタグ1において、RFICパッケージ2が接続されるアンテナパターン3に対して容量結合される容量結合部である線間容量パターン4を回路図記号で模式的に示した図である。図5に示すように、アンテナパターン3は、RFICパッケージ2が実装されたランドパターン6から複数の折り返し部分を有して蛇行するミアンダ状の第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bが延設されて構成されている。即ち、第1ランドパターン6aからはミアンダ状の第1アンテナ素子3aが、アンテナ基材5における最終的に長手方向(+X方向)の一方の端部に向かって延設されている。また、第2ランドパターン6bからはミアンダ状の第2アンテナ素子3bが、アンテナ基材5における最終的に長手方向(−X方向)の他方の端部に向かって延設されている。なお、第2アンテナ素子3bの延設方向の先端部分の領域は、商品に対する貼り付部分となる幅の広い幅広部7となっており、例えば缶製品などの金属部分に貼り付けてアンテナとしての特性を更に高める領域となる。
図5に示すように、第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bにおける特定の領域同士を容量結合する線間容量パターン4は、容量が大きい第1線間容量電極4aと、第1線間容量電極4aに比べて容量が小さい第2線間容量電極4bと、を有する。第1線間容量電極4aは、第1アンテナ素子3aにおける特定の領域を容量結合して、第1線間容量電極4aおよび第1アンテナ素子3aにより構成される最小経路となるループ回路をLC並列共振回路Sとしている。即ち、第1アンテナ素子3aの経路に対し直列および並列に複数のLC並列共振回路Sが形成されている。同様に、第1線間容量電極4aは第2アンテナ素子3bにおける特定の領域を容量結合しており、第2アンテナ素子3bの経路に対し直列および並列に複数のLC並列共振回路Sが形成されている。
実施の形態1のRFIDタグ1は、使用される商品として、例えばコンビニエンスストアにおける弁当などを対象としているため、RFIDタグ1が調理用の電磁波加熱装置である所謂「電子レンジ」等により誘電加熱される場合が想定される。「電子レンジ」において用いられている電磁波(マイクロ波の使用周波数)は、通信周波数より高い周波数の帯域である2.4〜2.5GHzの周波数の帯域であるため、この周波数帯域のレベルに対して、実施の形態1のRFIDタグ1においては大幅に減衰させるための回路として「帯域除去フィルタ」が設けられている。「帯域除去フィルタ」は、通信周波数よりも高い周波数の帯域を減衰させるフィルタ回路であり、実施の形態1のRFIDタグ1においては、例えば、1.1GHzより高い周波数帯域を減衰させる。特に、「電子レンジ」において用いられている加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)を、大幅に減衰させる。
図5に示すように、実施の形態1のRFIDタグ1においては、第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bのそれぞれ経路に沿って多段(複数)のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。複数のLC並列共振回路SにおけるそれぞれのLC並列共振回路Sは、2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されている。また、それぞれのLC並列共振回路Sの線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短く設定されている。また図5に示すように、LC並列共振回路Sは直列回路および並列回路を構成するように配置されて、各LC並列共振回路Sは互いに磁気結合または電界結合するように形成されており、2.4〜2.5GHz帯の広い帯域で大幅に電磁波のレベルを減衰させている。なお、図6は、実施の形態1のRFIDタグ1における複数のLC並列共振回路Sの一部構成例を擬似的な等価回路で示した図である。図7は、実施の形態1の無線通信デバイスにおける複数のLC並列共振回路の全体的な構成の一例を等価回路で示した図である。
図8は、実施の形態1のRFIDタグ1に関して行ったシミュレーション実験の結果を示す周波数特性図である。図9は、実施の形態1のRFIDタグ1に関するシミュレーション実験におけるスミスチャートである。図8に示す周波数特性図において、▽m1で示す0.86GHzの周波数では、給電レベルが−10.2dBであり、▽m2で示す0.92GHzの周波数では、給電レベルが−9.1Bであった。また、「電子レンジ」において用いられている加熱用電磁波の周波数である、▽m3で示す2.4GHzの周波数では、−49.6dBであり、▽m4で示す2.5GHzの周波数では、−49.4dBであり、大幅に減衰されていることが理解できる。また、2.4〜2.5GHzに限らず、通信周波数より高い周波数の帯域を減衰することも理解できる。例えば、約1.2GHz以上の周波数に関して、−30dB以上に減衰されている。
また、図9で示すスミスチャートに示すように、▽m1で示す0.86GHzの周波数、および▽m2で示す0.92GHzの周波数においては、インピーダンス特性に関して受信可能な状態である。なお、実施の形態1のRFIDタグ1に関しては、▽m3で示す2.4GHzの周波数、および▽m4で示す2.5GHzの周波数においては、略短絡状態(スミスチャートにおいて、左端の0Ω点にマーカーがある)であることがシミュレーション実験により得られている。
上記のように、実施の形態1のRFIDタグ1においては、UHF帯の通信周波数(900MHz帯、例えば920MHz)を有する高周波信号(無線信号)が送受信可能な周波数帯域であり、電磁波加熱装置である「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4〜2.5GHz)では給電レベルが大幅に減衰(約−50dB)される周波数帯域であることが理解できる。
実施の形態1のRFIDタグ1では、「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4〜2.5GHz)が大幅に減衰(約−50dB)されるが、給電レベルとしては完全にゼロではない。即ち、実施の形態1のRFIDタグ1が「電子レンジ」により商品と共に誘電加熱されたとき、アンテナパターン3(3a、3b)には極微少な電流が流れる。
図10は、実施の形態1のRFIDタグ1において、UHF帯の通信周波数(920MHz)の信号を受信したときの電流の流れ方(図10A)と、「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信したときの電流の流れ方(図10B)について、シミュレーション実験により得られた図である。図10においては、受信したときにアンテナパターン3(3a、3b)および線間容量パターン4(4a、4b)に流れる電流の大きさをカラー色にて示された結果を白黒の無彩色にて示している。このため、図10においては判別が容易ではないが、発明者らの実験結果から明らかに、加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信したときに流れる電流は、通信周波数(920MHz)の信号を受信したときに流れる電流に比べて大幅に小さくなっていた。図10においては、アンテナパターン3(3a、3b)における色が図10Aの方が図10Bに比べて濃くなっており、通信周波数(920MHz)の信号を受信したときの電流が加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信したとき電流に比べて多いことが理解できる。
図11は、アンテナパターン3および線間容量パターン4(第1線間容量電極4a)が、加熱周波数(2.4GHz)を有する信号を受信したとき、それぞれのパターン(3、4)において電流が流れようとする向きを示した図である。図11において、実線の矢印Pが、加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信したときに、アンテナパターン3に流れる電流の向きを示している。また、破線の矢印Qは、実線の矢印Pで示す電流がアンテナパターン3に流れたとき、アンテナパターン3と線間容量パターン4とで構成される複数のLC並列共振回路Sである「帯域除去フィルタ」において流れる電流の向きを示している。
図11に示すように、RFIDタグ1が誘電加熱されて加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信し、アンテナパターン3において実線の矢印Pで示す電流が流れたとき、複数のLC並列共振回路SにおけるそれぞれのLC並列共振回路Sにおいては、破線の矢印Qで示す電流がアンテナパターン3に流れようとする。即ち、それぞれのLC並列共振回路Sにおいては、アンテナパターン3に流れる電流の向きP(実線の矢印)とは逆向き(破線の矢印Q)の電流が流れようとする。その結果、アンテナパターン3とLC並列共振回路Sにおいて流れようとする電流は互いに相殺する状態となり、アンテナパターン3が電磁波加熱装置の電力を受けて大電流を流すことで、アンテナパターン3が高温に発熱する現象を抑えることができる。また、RFIDタグ1の構成においては、アンテナパターン3が部分的に発熱しアンテナパターン3が部分的に昇華することによりアンテナパターン3の一部が断線したとしても、LC並列共振回路Sはアンテナパターン全体に形成されているため、断線により分離したアンテナパターン3が電磁波加熱装置の電力を受けても、電磁波加熱装置によりアンテナパターン3に大電流が流れる現象を抑えることができる。即ち、RFIDタグ1の構成においては、図11に示すLC並列共振回路Sとアンテナパターン3の関係が成立するため、最終的にアンテナパターン3が電磁波加熱装置の電力を受けられなくなるほどの短いアンテナパターン片に断線(分割)されるまで、電磁波加熱装置によりアンテナパターン3に大電流が流れる現象を抑えていく。これにより、実施の形態1のRFIDタグ1が加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信しても、アンテナパターン3に流れる電流は大幅(例えば、約−50dB)に減衰されることになる。更に、アンテナパターン3の折り返し部分に配置された線間容量電極4aを有するLC並列共振回路Sのループ回路においては、アンテナパターン3に流れる電流と相殺されない電流が線間容量電極4aに流れる。この電流により磁界が生じるため、LC並列共振回路Sに給電された電力の一部は磁界エネルギーとして損失する。この結果、実施の形態1のRFIDタグ1においては、複数のLC並列共振回路Sである「帯域除去フィルタ」により、加熱周波数(2.4GHz)の帯域に対しては大幅に減衰できる回路構成となる。なお、実施の形態1のRFIDタグ1においては、電磁波加熱装置である「電子レンジ」で用いられる加熱周波数の帯域(2.4〜2.5GHz)に対して同様に大幅に減衰できる回路構成となっている。
図12は、実施の形態1のRFIDタグ1に関する全方位に対する利得を示す図である。図12におけるX方向は、RFIDタグ1におけるRFICパッケージ2の長手方向を示している。図12に示すように、RFIDタグ1は、Y方向およびZ方向における利得が高くなっており、Y方向およびZ方向においては広い指向性を有している。なお、RFICパッケージ2においては、その長手方向(X方向)のみが他の方位に比べて利得が多少低いが、全体的に広い指向性を有している。
なお、実施の形態1のRFIDタグ1においては、アンテナパターン3と線間容量パターン4とにより構成される複数のLC並列共振回路Sにおける全てのLC並列共振回路Sが、電磁波加熱装置で使用する周波数帯域(2.4〜2.5GHz)の周波数に対して共振するよう設定されているが、本発明においてはLC並列共振回路Sの全てを電磁波加熱装置で使用する周波数と共振させる必要はない。RFIDタグ1が電磁波加熱装置で誘電加熱された場合において、アンテナパターン3に流れる電流を大幅に減衰できる構成であればよい。
以上のように、実施の形態1のRFIDタグ1は、所定の通信周波数を有する高周波信号を送受信するための無線通信デバイスであって、インダクタンス成分を有するアンテナパターン3と、アンテナパターン3に電気的に接続されたRFICチップ9と、アンテナパターン3の複数箇所において、アンテナパターン3のそれぞれ対向する特定の対向領域3aa同士を容量結合してLC並列共振回路を構成する容量結合部としての線間容量パターン4と、を備える。これだけの構成により、通信周波数よりも高い周波数の電磁波がRFIDタグ1に照射されても、LC並列共振回路Sが帯域除去フィルタとして機能するので、照射された通信周波数よりも高い電磁波を大幅に減衰することができる。
実施の形態1の無線通信デバイスであるRFIDタグ1においては、誘電体の両側に設けた金属膜体であるアンテナパターン3および容量結合部である線間容量パターン4により複数のLC並列共振回路Sで構成された「帯域除去フィルタ」が設けられている。このため、実施の形態1のRFIDタグ1は、電磁波加熱装置で使用する周波数帯域(2.4〜2.5GHz)の周波数に対して大幅に減衰することができる構成となっている。
なお、アンテナパターン3に線間容量パターン4が形成されていることで、RFIDタグ1の共振周波数がUHF帯の通信周波数に調整されている。線間容量パターン4が形成されていない場合のアンテナパターン3による共振周波数は通信周波数よりも高く、例えば、約1.1GHzである。
また、実施の形態1のRFIDタグ1が電磁波加熱装置で誘電加熱されたとき、アンテナパターン3と線間容量パターン4とにより構成された最小経路となるループ回路に電流が流れるため、このループ回路は電磁波加熱装置の周波数では小型の磁界アンテナとなっており、電磁波加熱装置が放射する電界エネルギーを受信しにくい構成である。これによりループ回路単体では、電磁波加熱装置により発火しにくく、更に受電した電界エネルギー(電力)を磁界エネルギーとして損失できる構成となっている。この結果、実施の形態1のRFIDタグ1においては、誘電加熱時において給電レベルを大幅に減衰できる構成となる。給電レベルが大幅に減衰しても、微少にアンテナパターン3に流れる電流でアンテナパターン3が徐々に加熱されるが、アンテナパターン3の線幅を100μmから300μm程度にすることで、アンテナパターン3はアンテナ基材5の変形により断線し易くできる。これにより、アンテナパターン3の加熱によりアンテナ基材5が変形して、アンテナパターン3が断線するので、アンテナパターン3が誘電加熱の電磁波を受けなくなるまで、アンテナパターン3が断線していくので、RFIDタグが誘電過熱されてもタグ全体が燃えない。
また、実施の形態1のRFIDタグ1は、アンテナパターン3および線間容量パターン4が曲面形状で構成されて電界の集中が抑制される形状を有しており、更に幅広形状の第1線間容量電極4aが、少なくとも第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bにおける隣接する折り返し部分を容量結合する構成であるため、電磁波加熱装置でRFIDタグ1が誘電加熱されたとき、特に第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bの折り返し部分における電界の集中が抑制された構成である。
上記のように構成されているため、実施の形態1のRFIDタグ1が付された商品を電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱した場合においても、RFIDタグ1における放電の発生が大幅に抑制されており、商品における発火の危険性を防止することができる。
《実施の形態2》
以下、本発明に係る実施の形態2の無線通信デバイスであるRFIDタグ21について説明する。実施の形態2のRFIDタグ21に関しては、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態2の説明において、前述の実施の形態1と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態2のRFIDタグ21において、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点は、アンテナパターン23の構成であり、その他の構成は実施の形態1のRFIDタグ1と実質的に同じである。図13は、実施の形態2のRFIDタグ21の構成を示す平面図である。RFIDタグ21は、UHF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。
実施の形態2のRFIDタグ21において、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点は、線状のアンテナパターン23における特定の領域の断面形状(延設方向に直交する方向で切断した断面形状)が小さく形成されている点である。実施の形態2におけるRFICパッケージ2およびアンテナ基材5は実施の形態1のRFIDタグ1のものと実質的に同じである。
前述の実施の形態1において説明したように、RFIDタグ21が電磁波加熱装置である「電子レンジ」において誘電加熱された場合には、RFIDタグ21は、「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の給電レベルを大幅に減衰(約−50dB)する構成である。このようにRFIDタグ21においては、加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の給電レベルを大幅に減衰(約−50dB)する構成であるが、給電レベルがゼロではないため、アンテナパターン23においては極微少な電流が流れる。この結果、アンテナパターン23は、自身の抵抗により発熱することになる。特に、無線通信デバイスであるRFIDタグが「電子レンジ」により誘電加熱される時間が長時間(数分間)である場合には、アンテナパターン自体が高温度となり、アンテナ基材などにおいて発火するおそれが皆無ではない。
実施の形態2においては、無線通信デバイスであるRFIDタグ21が「電子レンジ」により誘電加熱される時間が長時間(数分間)である場合には、アンテナパターン23の特定部位が昇華して切断する構成である。実施の形態2のRFIDタグ21は、線状のアンテナパターン23における特定部位(断路形成部C)の断面積が小さく形成されている。即ち、アンテナパターン23における断路形成部Cは、アンテナパターン23における特定部位の延設方向に直交する方向で切断した断面の断面積が他の部位より小さく形成されている。断面積を小さくする断路形成部Cの構成としては、アンテナパターン23の線路を細く(狭く)する、または薄くすることにより形成することができる。
断路形成部Cの具体的な構成としては、例えば、アンテナパターン23における特定部位の配線幅を他の部位に比べて、例えば、100μmから50μm程度に部分的に細く形成する構成や、厚みを9μmから6μmに薄くする構成である。このように、アンテナ基材5が変形する時に断線し易いやすい箇所を形成する。このようにアンテナパターン23において断面積を他の部位より小さく形成する断路形成部Cとしては、「帯域除去フィルタ」として構成されるLC並列共振回路Sにおける容量結合部である線間容量パターンの間の部位が好ましい。複数のLC並列共振回路SにおけるそれぞれのLC並列共振回路Sは、2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されており、それぞれのLC並列共振回路Sの線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短く、更には加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/4波長(λ/4)以下になるよう設定されている。図13においては、断路形成部Cとして、LC並列共振回路Sを構成する線間容量パターン4の間のアンテナパターン3の線路上に形成した例を示す。
従って、RFIDタグ21が「電子レンジ」により長時間誘電加熱されて、アンテナパターン23の断路形成部Cが昇華して切断した場合には、アンテナパターン23の断線された各部分の線長が加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/4波長(λ/4)以下になるので、加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)で電磁波を受け取りにくくなり、当該LC並列共振回路Sにおいては「電子レンジ」で用いられる加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)による更なる温度上昇が防止される。
なお、実施の形態2のRFIDタグ21においては、アンテナパターン23が温度上昇してアンテナ基材5が温められた場合においても、アンテナパターン23と線間容量パターン24との間の誘電容量が確実に確保されるように、アンテナパターン23と線間容量パターン24との間に設けられているアンテナ基材5として、耐熱性ラベルシール、例えばポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの耐熱温度が200℃以上で、5分以上の耐久性を有する材料が用いられている。また、アンテナ基材5とアンテナパターン23との間、および/またはアンテナ基材5と線間容量パターン24との間において、耐熱性を更に高めるために、耐熱性材料により形成された膜体を介在させてもよい。
上記のように構成された実施の形態2のRFIDタグ21においては、当該RFIDタグ21が付された商品が電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱された場合においても、RFIDタグ21における発火の危険性が防止されており、安全性および信頼性の高い無線通信デバイスとなる。
《実施の形態3》
以下、本発明に係る実施の形態3の無線通信デバイスであるRFIDタグ31について説明する。実施の形態3のRFIDタグ31に関しては、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態3の説明において、前述の実施の形態1と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態3のRFIDタグ31において、実施の形態1のRFIDタグ1と大きく異なる点は、ミアンダ状のアンテナパターン33の形状である。図14は、実施の形態3のRFIDタグ31の構成を示す平面図である。RFIDタグ31は、UHF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。
実施の形態3のRFIDタグ31においては、実施の形態1のRFIDタグ1と比較して、RFIDタグ31の平面視形状がより細長く形成されており、その中央にRFICパッケージ2が実装されている。即ち、RFIDタグ31のアンテナ基材35が細長い形状を有しており、アンテナ基材35の中央に実装されたRFICパッケージ2の両側にアンテナパターン33(第1アンテナ素子33aおよび第2アンテナ素子33b)が設けられている。第1アンテナ素子33aは、アンテナ基材35における長手方向の一方側の領域(図14においては右側領域)に形成されており、長手方向の一端に向かってミアンダ状に延設されている。一方、第2アンテナ素子33bは、アンテナ基材35における長手方向の他方側の領域(図14においては左側領域)に形成されており、長手方向の他端に向かってミアンダ状に延設されている。
実施の形態3のRFIDタグ31において、容量結合部である線間容量パターン34は、ミアンダ状の第1アンテナ素子33aおよび第2アンテナ素子33bにおける隣接する折り返し部分を容量結合するように設けられている。このように、実施の形態3のRFIDタグ31においては、インダクタンス成分を有する第1アンテナ素子33aおよび第2アンテナ素子33bのそれぞれの経路に沿って多段(複数)のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。実施の形態3における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されている。また、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、その前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短く設定されている。
実施の形態3のRFIDタグ31は、アンテナパターン33と線間容量パターン34とにより構成された最小経路となるループ回路において、対向する折り返し部分に設けた線間容量パターン34の間の線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短く、さらに「電子レンジ」で用いられる周波数帯(2.4〜2.5GHz)の波長(λ)の1/4波長以下となるように形成されている。即ち、第1アンテナ素子33aおよび第2アンテナ素子33bの経路における折り返し部分の間の線路長は、その周波数帯(2.4〜2.5GHz)の波長(λ)の1/4波長(λ/4:約30〜34mm)以下に短く設定されている。このため、実施の形態3のRFIDタグ31としては、幅が狭い小さなテープ状の簡単な構成となり、取り扱いが容易で低価格な無線通信デバイスを構築することが可能となる。
図15は、実施の形態3の変形例を示すものであり、RFICチップ9がアンテナパターン43上に実装されたRFIDタグ41の構成を示す平面図である。RFIDタグ41は、UHF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。図15に示すRFIDタグ41は、RFICチップ9がループ部40に形成されたアンテナパターン43上に実装されている構成以外は、図14に示したRFIDタグ31と同様の構成を有している。即ち、RFIDタグ41のアンテナ基材45が細長い形状を有しており、アンテナ基材45の中央に形成されたループ部40の両側にアンテナパターン43(第1アンテナ素子43aおよび第2アンテナ素子43b)が設けられている。RFIDタグ41においても、インダクタンス成分を有する第1アンテナ素子43aおよび第2アンテナ素子43bのそれぞれ経路に沿って多段(複数)のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。
図15に示したRFIDタグ41における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されており、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短くなるよう設定されている。
また、図15に示したRFIDタグ41は、ミアンダ状の第1アンテナ素子43aおよび第2アンテナ素子43bの経路において、折り返し部分に設けた線間容量パターン44の間の線路長が1/4波長(λ/4:約30〜34mm)以下に設定されており、RFIDタグ41は、幅が狭いテープ状の形状を有し、取り扱いが容易で、商品陳列において購入者にとって目障りとならない無線通信デバイスとなる。
以上のように、実施の形態3におけるRFIDタグ31および41においては、当該RFIDタグ31および41が付された商品が電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱された場合においても、RFIDタグ21における発火の危険性が防止されており、安全性および信頼性が高く、且つ商品陳列に邪魔にならず、取り扱いが容易な無線通信デバイスとなる。
なお、実施の形態3において説明したRFIDタグ31および41においては、前述の実施の形態2において説明した断路形成部Cをアンテナパターン33および43に形成した構成としてもよい。また、実施の形態3のRFIDタグ31および41は、アンテナパターン3および線間容量パターン4において電界の集中を抑制するために角部分が曲面形状で構成されている。
《実施の形態4》
以下、本発明に係る実施の形態4の無線通信デバイスであるRFIDタグ51について説明する。実施の形態4のRFIDタグ51に関しては、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態4の説明において、前述の実施の形態1と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
図16Aは、実施の形態4のRFIDタグ51の構成を示す平面図である。RFIDタグ51は、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。図16Bは、実施の形態4のRFIDタグ51におけるアンテナパターン(コイルパターン)53の構成を等価回路で示した図である。
図16Aに示すように、RFIDタグ51は、RFICチップ9およびコンデンサ素子52が設けられたループ部50の整合回路を有するアンテナパターン53を備えている。また、ループ部50の整合回路においては、RFICチップ9と対向する位置にコンデンサ素子52が接続されている。RFIDタグ51におけるアンテナパターン53のアンテナ素子53aは、ループ部50から延設されて、渦巻き状に形成されている。図16Aに示すアンテナ素子53aにおいては、ループ部50から時計方向に内巻きに導出している。アンテナ素子53aの導出端部となる先端部分は、ブリッジパターン56を介してループ部50の整合回路に直接接続されている。なお、ブリッジパターン56とアンテナパターン53との間には耐熱性の電気的絶縁材料で形成された絶縁パターン57が配設されており、ブリッジパターン56とアンテナパターン53との間の絶縁状態が確保されている。
また、ループ部50の整合回路から導出する渦巻き状のアンテナ素子53aにおいては、隣接する経路間を容量結合する複数の容量結合部である線間容量パターン54が、アンテナ素子53aの経路に沿って所定間隔で設けられている。線間容量パターン54とアンテナ素子53aとの間には耐熱性の電気的絶縁材料で形成された絶縁パターン57が配設されており、線間容量パターン54とアンテナ素子53aとの間の絶縁状態が確保されている。
上記のように、実施の形態4のRFIDタグ51においては、インダクタンス成分を有するアンテナ素子53aの経路に沿って多段(複数)のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。RFIDタグ51における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されており、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短くなるよう設定されている。
実施の形態4のRFIDタグ51においては、アンテナ基材55の表面(第1主面)にアンテナパターン53と容量結合部である線間容量パターン54が誘電体である絶縁パターン57を介して積層される構成である。また、アンテナ基材55の表面(第1主面)において、アンテナパターン53上に絶縁パターン57を介してブリッジパターン56が形成されて、RFIDタグ51におけるアンテナが構成されている。このため、複数のパターン(53、57、56、および54)をアンテナ基材55の同一面上に形成する構成であり、RFIDタグ51の製作が容易な構成となっている。なお、実施の形態4のRFIDタグ51においては、アンテナ基材55としては誘電体で構成される必要はなく、例えば紙材により構成することも可能である。
前述の実施の形態1において、図11を用いて説明したように、実施の形態4のRFIDタグ51においても、複数のLC並列共振回路Sで構成された「帯域除去フィルタ」により、加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の帯域の周波数に対して、大幅に減衰できる回路構成となっている。従って、実施の形態4の無線通信デバイスであるRFIDタグ51においては、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信することができる構成であると共に、当該RFIDタグ51が付された商品を電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱した場合においても、RFIDタグ51における放電の発生が大幅に抑制されており、商品における発火の危険性を確実に防止することが可能な構成となっている。
《実施の形態5》
以下、本発明に係る実施の形態5の無線通信デバイスであるRFIDタグ61について説明する。実施の形態5のRFIDタグ61に関しては、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態5の説明において、前述の実施の形態1と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
図17Aは、実施の形態5のRFIDタグ61の構成を示す平面図である。RFIDタグ61は、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。図17Bは、実施の形態5のRFIDタグ61におけるアンテナパターンを含む2つのコイルパターン(63、73)の構成を等価回路で示した図である。
図17Aに示すように、実施の形態5のRFIDタグ61は、2つのコイルパターン(63、73)を備えた共振ブースタ回路が構成されている。RFIDタグ61における一方のコイルパターン(一次側コイルパターン)73は、RFICチップ9およびコンデンサ素子72が設けられたループ部70の整合回路を有する。ループ部70の整合回路においては、RFICチップ9がコンデンサ素子72と対向する位置に接続されている。コイルパターン(一次側コイルパターン)73は、ループ部70から渦巻き状に導出されており、その導出端部である先端部分は、ブリッジパターン74を介してループ部70の整合回路に直接接続されている。コイルパターン(一次側コイルパターン)73は、ループ部70から時計回りの方向に内巻きに導出している。
なお、アンテナ基材65の裏面(第2主面)側にブリッジパターン74を形成して、アンテナ基材65を貫通する層間接続導体を介して、コイルパターン(一次側コイルパターン)73の導出端部である先端部分とループ部70とを接続してもよい。若しくは、ブリッジパターン74をアンテナ基材65の表面(第1主面)側に形成する場合には、ブリッジパターン74と一次側コイルパターン73との間に耐熱性の電気的絶縁材料で形成された絶縁パターンを配設して、ブリッジパターン74と一次側コイルパターン73との間の絶縁状態を確保する構成としてもよい。
また、実施の形態5のRFIDタグ61における他方のコイルパターン(二次側コイルパターン)63は、コイルパターン(一次側コイルパターン)73を取り囲むように形成されており、時計回りの方向に内巻きに形成されたアンテナ素子63aが構成されている。このアンテナパターン63における渦巻き状のアンテナ素子63aにおいては、隣接する経路間を容量結合する複数の容量結合部である線間容量パターン64が、アンテナ素子63aの経路に沿って所定間隔で設けられている。
実施の形態5のRFIDタグ61におけるアンテナパターン63は、アンテナ基材65の表面(第1主面)に形成されている。一方、容量結合部である線間容量パターン64は、誘電体で構成されたアンテナ基材65の裏面(第2主面)に形成されており、アンテナパターン63のアンテナ素子63aにおける特定領域に対して容量結合している。また、アンテナパターン63のアンテナ素子63aにはコンデンサ素子62が設けられている。渦巻き状のアンテナ素子63aにおける外側端部と内側端部とは、アンテナ基材65を貫通する層間接続導体66を介して、アンテナ基材65の裏面(第2主面)に形成された導電経路パターン67により電気的に直接接続されている。なお、アンテナ基材65の裏面(第2主面)に形成される線間容量パターン64および導電経路パターン67は同時に形成することが可能である。
上記のように、実施の形態5のRFIDタグ61においては、インダクタンス成分を有するアンテナパターン63におけるアンテナ素子63aの経路に沿って多段(複数)のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。RFIDタグ61における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されている。また、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短くなるよう設定されている。
上記のように構成された実施の形態5のRFIDタグ61は、複数のLC並列共振回路Sで構成された「帯域除去フィルタ」により、加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の帯域の周波数に対して、大幅に減衰できる回路構成となっている。従って、実施の形態5の無線通信デバイスであるRFIDタグ61においては、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信することができる構成であると共に、当該RFIDタグ61が付された商品を電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱した場合においても、RFIDタグ61における放電の発生が大幅に抑制されており、商品における発火の危険性を確実に防止することが可能な構成である。
以上のように、各実施の形態において具体的な構成を用いた説明したように、これらの実施の形態によれば、無線通信デバイスが付された商品が、誤って無線通信デバイスが付されたまま電磁波加熱装置において加熱された場合においても、無線通信デバイスにおける放電の発生が抑制されており、無線通信デバイスの発火、さらには無線通信デバイスが付された商品における発火の危険性を防止することが可能な安全性および信頼性の高い無線通信デバイスを提供することができる。従って、本発明は、食品、日用雑貨品などの多種多様な商品を取り扱うコンビニエンスストアなどの販売店において、購入した商品の会計、および袋詰めを自動化するシステムを構築することが可能となり、「無人コンビニエンスストア」の実用化に向けて、大きく前進させることができる無線通信デバイスを提供するものである。
《実施の形態6》
以下、本発明に係る実施の形態6の無線通信デバイスであるRFIDタグについて図18を参照して説明する。図18は、実施の形態6のRFIDタグ81の構成を示す平面図である。
実施の形態6のRFIDタグ81に関しては、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態6の説明において、前述の実施の形態1と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。また、実施の形態6のRFIDタグ81について下記に記載した構成以外の構成は実施の形態1のRFIDタグ1と実質的に同じである。
実施の形態1のRFIDタグ1は、アンテナ基材5の表面にアンテナパターン3を形成し、裏面に容量結合部である線間容量パターン4を形成している。これに対して、実施の形態6のRFIDタグ81は、アンテナ基材5の表面にアンテナパターン83と線間容量パターン85との両方を形成している。
アンテナ基材5の表面に、電界放射型のアンテナパターンであるアンテナパターン83が形成されている。アンテナパターン83は、複数の折り返し部分83acを有して蛇行するミアンダ状のアンテナパターンを有する第1アンテナ素子83aと、幅広部7と接続される第2アンテナ素子83bとを有する。アンテナパターン83の折り返し部分83acとは、アンテナパターン83の延びる方向が反転する箇所である。アンテナ素子83aは複数の折り返し部分83acを有する。第1アンテナ素子83aは、アンテナ基材5の幅方向(Y方向)と平行な直線部分83aaを有する。第1アンテナ素子83aの隣り合う直線部分83aaの間および隣り合う折り返し部分83ac間に線間容量パターン85が形成されている。アンテナ素子83aと線間容量パターン85との間隔は、例えば、150μmである。
線間容量パターン85は、アンテナパターン83と同様に、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料により形成されている。アルミニウム箔で形成する場合、線間容量パターン85の厚みは、例えば、6μmである。また、線間容量パターン85は、ループ状に形成されている。
線間容量パターン85は、アンテナ基材5の幅方向(Y方向)において長さの異なる、線間容量パターン85aと85bとを備える。線間容量パターン85aおよび85bは長手方向と短手方向を有し、線間容量パターン85aおよび85bの長手方向の長さは、例えば、電磁波加熱に用いられる周波数の1/4波長以下に短く形成されている。アンテナパターン83のミアンダの振幅方向(Y方向)において、第1アンテナ素子83aの長さWaは線間容量パターン85aの長さWc1、および線間容量パターン85bの長さWc2よりも長い。線間容量パターン85は、細長い閉じたループパターンで構成されている。したがって、磁界アンテナとして動作する場合、アンテナコイルのQ特性は悪くなっており、磁気損失により磁界エネルギーを熱に変換する作用がある。この熱によりアンテナ基材5は、溶ける又は炭化するなどにより変形し、線間容量パターン85が断線するとともに、アンテナパターン83の一部が断線する。
実施の形態6におけるアンテナパターン83には、RFICパッケージ2と接触して電気的に接続するための2つのランドパターン6(6a、6b)が設けられている。これにより、RFICパッケージ2の有するRFICチップ9とアンテナパターン83が電気的に接続されている。また、アンテナパターン83は、第1アンテナ素子83aおよび第2アンテナ素子83bを有しており、ダイポール型の電界アンテナを構成している。
第1アンテナ素子83aは、略線状の形状パターンを有しており、第1ランドパターン6aから導出して、ミアンダ状に延設されている。第1アンテナ素子83aの延設方向は、アンテナ基材5の長手方向の一端に向かっている。第1アンテナ素子83aの延設方向の先端部はアンテナ基材5の長手方向の端部に配設されている。
アンテナパターン83の第2アンテナ素子83bは、第2ランドパターン6bから導出してアンテナ基材5の長手方向の他端に向かって直線状に延設され、第2アンテナ素子83bの延設方向の先端部には幅広部7が形成されている。この幅広部7は、商品に貼り付けられる部分となり、商品外面に金属材料が表れている商品、例えば缶製品に貼り付けられた場合には、その商品外面をアンテナの一部として機能させるものである。
第1アンテナ素子83aは、例えば、アンテナ基材5の幅方向(Y方向)と平行で、ミアンダの振幅方向に延びる直線部分83aaを有する。直線部分83aaは、アンテナ基材5の幅方向(Y方向)において線間容量パターン85a、85bの間で、アンテナ基材5の長手方向(X方向)に隣り合う直線部分83aa間において、線間容量パターン85a、85bを介せずに対向している部分である対向部83cを有する。また、線間容量パターン85aと線間容量パターン85bとを、アンテナパターン83がアンテナ基材5の長手方向に延びるのに応じて交互に直線部分83aa間に配置することで、対向部83cの位置がアンテナ基材5の幅方向にそれぞれシフトされる。
ランドパターン6の周囲には、ループ状のシールドパターン87が形成されている。シールドパターン87は、アンテナパターン3と同様に、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料により形成されている。シールドパターン87は、完全に閉じたループ状の第1シールドパターン87aと、一部が途切れている第2シールドパターン87bを備える。
第1シールドパターン87aは、線間容量パターン85a、85bより長辺が短い完全に閉じたループ状パターンである。この正方形に近いパターンは、通信周波数より高い周波数の帯域の電磁波を受信しても発火しない程の長辺で形成されている。この第1シールドパターン87aには、第1アンテナ素子83a及びランドパターン6a、6b間に電流が流れることにより発生する磁界を打ち消す方向に電流が流れる。この第1シールドパターン87aは、線間容量パターン85a、85bより正方形に近いので、このパターンで構成されるインダクタンス素子のQ特性は、線間容量パターン85a、85bで形成されるインダクタンス素子のQ特性より高くなり、磁気損失による発熱や発火を抑えやすくなる。これにより、第1シールドパターン87aは、アンテナ基材5の長手方向中央部に配置されているので、通信周波数より高い周波数の帯域の電磁波が照射されても、断線に至るような渦電流による発熱ない。
また、第2シールドパターン87bは、一部が途切れている。このパターンにも第1アンテナ素子83a及びランドパターン6a、6b間に電流が流れることにより発生する磁界を打ち消す方向に電流が流れる。しかしこのパターンは一部が途切れているので、通信周波数より高い周波数の帯域の電磁波が照射されることで、この途切れている部分で放電が起こり、火花が発生するのでアンテナ基材5の放電部のアンテナ電極が局部的に昇華する。この昇華する位置の近傍にアンテナパターンがあるので、基材が昇華すると同時に近傍のアンテナパターンを断線させる機能を有する。
第1アンテナ素子83aの第1ランドパターン6aから延在する延在部83abと第2ランドパターン6bから延在する第2アンテナ素子83bとは互いに交差する方向、例えば直交する方向に配置されている。これにより、第1アンテナ素子の延在部83abと、第2アンテナ素子83bとの間で電位差が発生するのを低減することができる。
上記のように構成された、アンテナ基材5の表面に形成されたアンテナパターン83、線間容量パターン85、および、シールドパターン87においては、電界の集中を防止する形状を有しており、特に屈曲部分および外周部分の縁部分においては鋭角の部分はなく、全て緩やかな曲面で構成されている。
実施の形態1では、RFICパッケージ2がアンテナパターン83上に実装された形態を例示したが、RFICチップ9を直接アンテナパターン83上に実装してもよい。また、このとき、RFICパッケージ2において複数のインダクタンス素子10A、10B、10C、10Dと構成されていたインダクタを、ループ状のパターンとしてアンテナ基材5上に構成してもよい。
図19Aは、図18のアンテナパターン83の一部を示す平面図である。図19Bは、図19Aに示されるアンテナパターン83の等価回路図である。図19Cは、通信周波数より高い高周波数の帯域の電磁波を受信したときに、図19Aに流れる電流を示す説明図である。
図19Bに示すように、第1アンテナ素子83aにおける特定の領域同士に容量を発生させる線間容量パターン85は、線間容量パターン85aと、線間容量パターン85aに比べて周長が短い線間容量パターン85bと、を有する。線間容量パターン85aおよび85bは、アンテナパターン83のそれぞれの対向領域の間に、アンテナパターン83の延びる方向に沿って互いに間隔をおいて配置されている。線間容量パターン85aおよび85bは、第1アンテナ素子83aにおける特定の対向領域間に容量を発生させる。したがって、第1アンテナ素子83aの互いに対向する対向部分の間に配置された線間容量パターン85aによりLC並列共振回路Sを構成している。別の言い方をすると、線間容量パターン85を間に挟む対向領域を含むアンテナパターン83の一部および線間容量パターン85によりLC並列共振回路Sを構成している。また、第1アンテナ素子83aの経路に対し直列および並列に複数のLC並列共振回路Sが形成されている。これらの複数のLC並列共振回路Sは、通信周波数より高い周波数の帯域の周波数で共振する。
インダクタンスLmは、第1アンテナ素子83aに分布的に存在しているインダクタンス成分を示す。また、インダクタンスLnは、線間容量パターン85に分布的に存在しているインダクタンス成分を示す。それぞれ対向する、第1アンテナ素子83aのインダクタンスLmと線間容量パターン85のインダクタンスLnとは磁界結合している。第1アンテナ素子83aと線間容量パターン85との間には、静電容量Cs1を有する。隣り合う第1アンテナ素子83aのそれぞれの直線部分83aaと線間容量パターン85との間に静電容量Cs1がそれぞれ有するので、これらの静電容量Cs1により、隣り合う第1アンテナ素子83aの直線部分83aa間が容量結合する。この隣り合う直線部分83aa間の静電容量をCs2とする。第1アンテナ素子83aの配線パターンの間に線間容量パターン85を配置することにより、線間容量パターン85がない第1アンテナ素子83aの対向部83cの部分は、渦電流を打ち消す部分が無いので、隣り合う直線部分83aa間の磁界が相殺されず過電流による電位差が最大となる。
アンテナパターン83に通信周波数より高い周波数の帯域の電磁波が照射されると、図19Cに示すように、静電容量Cs2により、第1アンテナ素子83aには、対向部83cを境として逆向きの電流が流れる。この電流により、対向部83c間の電位差が大きくなる。
また、第1アンテナ素子83aと線間容量パターン85とは電磁界結合により、線間容量パターン85内に隣り合う第1アンテナ素子83aとは逆向きの渦電流が流れる。また、この渦電流を原因として磁界が発生する。この磁界の発生により、LC並列共振回路に給電された電力の一部は磁界エネルギーとなり、線間容量パターン85の磁気損失により熱を発生して徐々にエネルギー損失する。このように、通信周波数より高い周波数の帯域を減衰することができるので、LC並列共振回路が帯域除去フィルタとして機能する。
実施の形態6のRFIDタグ81は、使用される商品として、例えばコンビニエンスストアにおける弁当などを対象としているため、RFIDタグ81が調理用の電磁波加熱装置である所謂「電子レンジ」等により誘電加熱される場合が想定される。「電子レンジ」において用いられている電磁波であるマイクロ波の使用周波数は、通信周波数より高い周波数の帯域である2.4〜2.5GHzの周波数の帯域である。したがって、この周波数帯域のレベルに対して、実施の形態6のRFIDタグ81においては大幅に減衰させるための回路として「帯域除去フィルタ」が設けられている。「帯域除去フィルタ」は、通信周波数よりも高い周波数の帯域を減衰させるフィルタ回路である。実施の形態6のRFIDタグ81においては、例えば、1.1GHzより高い周波数帯域を減衰させる。特に、「電子レンジ」において用いられている加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)を、大幅に減衰させる。「帯域除去フィルタ」は、ループ状の導体パターンをアンテナパターンの対向領域間に配置することで構成される。また電界放射型アンテナの近傍に加熱用電磁波の周波数で磁界アンテナとなる閉じたループ状の導体パターンを配置する事で、加熱用電磁波の周波数における電界放射アンテナのアンテナ放射効率を大幅に減衰させ、加熱用電磁波のエネルギーを受信しにくくしている。ここでループ状の導体パターンの周長は通信に使用されるUHF帯の周波数の1/2波長より小さい。これにより、UHF帯の周波数より高い周波数において磁界アンテナとして振る舞い、UHF帯の周波数より高い周波数の帯域における放射効率を減衰させることができる。また、ループ状の導体パターンの周長と通信に使用されるUHF帯の周波数の1/2波長の差に比べて、ループ状の導体パターンの周長と加熱用電磁波の周波数の1/2波長の差が小さくてもよい。これにより、UHF帯の周波数近傍に比べて、加熱用電磁波の周波数近傍における放射効率を減衰させることができる。
帯域除去フィルタの動作原理についてさらに詳しく説明する。図18および図19Bに示すように、実施の形態6のRFIDタグ81においては、ループ状の導体パターンである線間容量パターン85がアンテナパターン83の対向領域間に配置されることで、第1アンテナ素子83aの経路に沿って複数のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。また、複数のLC並列共振回路SにおけるそれぞれのLC並列共振回路Sは、2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して並列共振することで磁界アンテナとして動作するよう設定されている。また、それぞれのLC並列共振回路Sの線路長は、「電子レンジ」において用いられている加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)の1/2波長(λ/2)より短くなるように設定されている。また、LC並列共振回路Sは直列回路および並列回路を構成するように配置されて、各LC並列共振回路Sは互いに磁気結合または電界結合するように形成されており、2.4〜2.5GHz帯の広い帯域で磁界アンテナとして動作する事で、電界アンテナとして動作する第1アンテナ素子83aの近傍に複数の磁界アンテナを構成する。この磁界アンテナと電界アンテナとして動作する第1アンテナ素子83a間は静電容量で結合しているので、第1アンテナ素子83aはパターンの各部分が、それぞれ部分的に磁界アンテナとして動作することになる。この為、電界アンテナパターンである第1アンテナ素子83aのアンテナ放射特性が急激に劣化する。また電界アンテナパターンである第1アンテナ素子83aの受信エネルギーは、磁界アンテナで熱に消費される。これにより電界アンテナパターンの電磁波の受信レベルを減衰させており、また発熱箇所の分散を行っている。また線間容量パターン85aおよび85bの周長は、加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)の1/2波長(λ/2)より短くなるように設定されている。
図28は、実施の形態6のRFIDタグ81に関して行ったシミュレーション実験の結果を示す周波数特性図である。図29は、実施の形態1のRFIDタグ81に関するシミュレーション実験におけるスミスチャートである。図28に示すアンテナ放射効率の周波数特性図において、▽m1で示す0.86GHzの周波数では、給電レベルが−10dBであり、▽m2で示す0.92GHzの周波数では、給電レベルが−9.6dBであった。また、「電子レンジ」において用いられている加熱用電磁波の周波数である、▽m3で示す2.4GHzの周波数では、−53dBであり、▽m4で示す2.5GHzの周波数では、−54dBであり、大幅に減衰されていることが理解できる。また、2.4〜2.5GHzに限らず、通信周波数より高い周波数の帯域を減衰することも理解できる。例えば、約1.2GHz以上の周波数に関して、−30dB以上に減衰されている。
また、図29で示すスミスチャートに示すように、▽m1で示す0.86GHzの周波数、および▽m2で示す0.92GHzの周波数においては、インピーダンス特性に関して受信可能な状態である。なお、実施の形態6のRFIDタグ81に関しては、▽m3で示す2.4GHzの周波数、および▽m4で示す2.5GHzの周波数においては、略短絡状態(スミスチャートにおいて、左端の0Ω点にマーカーがある)であることがシミュレーション実験により得られている。
上記のように、実施の形態6のRFIDタグ81においては、UHF帯の通信周波数(900MHz帯、例えば920MHz)を有する高周波信号(無線信号)が送受信可能な周波数帯域であり、電磁波加熱装置である「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4〜2.5GHz)では給電レベルが大幅に減衰(約−50dB)される周波数帯域であることが理解できる。これは電磁波加熱装置1000Wのパワーが0.1W以下に減衰されている事を示し、急激な過熱が起こりにくく発火しにくい事を示している。
このように、実施の形態6のRFIDタグ81では、「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4〜2.5GHz)が大幅に減衰(約−50dB)されるが、給電レベルとしては完全にゼロではない。即ち、実施の形態1のRFIDタグ81が「電子レンジ」により商品と共に誘電加熱されたとき、アンテナパターン83(3a、3b)には微小な電流が流れる。この微小電流は、容量結合によりアンテナパターン83から線間容量パターン85に伝達され、磁界アンテナを形成する線間容量パターン85の磁気損失により熱を発生して徐々にエネルギー損失していく。これにより、アンテナ基材5は、溶融又は炭化により変形し、線間容量パターン85および/又はアンテナパターン83の一部が断線する。このアンテナパターン83の断線箇所が、線間容量パターン85の閉じたループ間で断線する事で、加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の1/4波長(λ/4)以下の電気長にアンテナパターン83を分断する。このパターン断線によりアンテナパターン83が、更に加熱周波数(2.4〜2.5GHz)を受信しにくくしている。
図30Aは、実施の形態6のRFIDタグ81において、UHF帯の通信周波数(920MHz)の信号を受信したときの電流の流れ方について、シミュレーション実験により得られた図である。図30Bは、「電子レンジ」で使用される加熱周波数(2.4GHz)の信号を受信したときの電流の流れ方について、シミュレーション実験により得られた図である。図30Aおよび図30Bにおいては、受信したときにアンテナパターン83(3a、3b)および線間容量パターン4(4a、4b)に流れる電流の大きさをカラー色にて示された結果を白黒の無彩色にて示している。図30Aに示すように、UHF帯の電界が照射されると、アンテナパターン83のアンテナ素子83aに電流が集中し、アンテナ素子83aがアンテナとして機能していることが理解される。また、図30Bに示すように、2.4GHzの電界が照射されると、アンテナパターン83のアンテナ素子83aと、線間容量パターン85aおよび85bと、シールドパターン87とそれぞれに、エネルギーが分散されているのが理解される。
図31Aは、実施の形態6のRFIDタグ81に関する全方位に対する利得を示す図である。図31AにおけるX方向は、RFIDタグ81におけるRFICパッケージ2の長手方向を示している。図31Aおよび図31Bに示すように、RFIDタグ81は、Y方向およびZ方向における利得が高くなっており、Y方向およびZ方向においては広い指向性を有している。なお、RFICパッケージ2においては、その長手方向(X方向)のみが他の方位に比べて利得が多少低いが、全体的に広い指向性を有している。
なお、実施の形態6のRFIDタグ81においては、アンテナパターン83と線間容量パターン85とにより構成される複数のLC並列共振回路Sにおける全てのLC並列共振回路Sが、電磁波加熱装置で使用する周波数帯域(2.4〜2.5GHz)の周波数に対して共振するよう設定されているが、本発明においてはLC並列共振回路Sの全てを電磁波加熱装置で使用する周波数と共振させる必要はない。RFIDタグ81が電磁波加熱装置で誘電加熱された場合において、アンテナパターン83に流れる電流を大幅に減衰できる構成であればよい。
以上のように、実施の形態6の無線通信デバイスであるRFIDタグ81は、通信用の、例えば900MHz帯の第1の周波数を有する高周波信号を送受信するための無線通信デバイスである。RFIDタグ81は、互いに対向する対向領域である直線部分83aaを有するアンテナパターン83の第1アンテナ素子83aと、アンテナパターン83に電気的に接続されたRFICチップ9とを備える。また、RFIDタグ81は、第1アンテナ素子83aのそれぞれの対向領域間に配置されたループ状の導体パターンである線間容量パターン85aと、を備える。線間容量パターン85aの周長は、第1の周波数の電磁波の2分の1波長より小さい。アンテナパターン83および線間容量パターン85によりLC並列共振回路Sの「帯域除去フィルタ」が構成されている。このため、第1の周波数よりも高い、第2の周波数の電磁波がRFIDタグ81に照射されても、線間容量パターン85aが磁界アンテナとして磁界を発生させるので、第2の周波数の電磁波のエネルギーを削減することができる。線間容量パターン85aがRFIDタグ81に1つでも配置されていれば、線間容量パターン85aの周囲に照射されるエネルギーを低減することができるので、線間容量パターン85aの周囲の商品が燃え上がるのを防止することができる。
また、実施の形態1のRFIDタグ81が電磁波加熱装置で誘電加熱されたとき、ループ形状の線間容量パターン85に誘導電流が流れる。これにより、この線間容量パターン85が電磁波加熱装置の周波数では小型の磁界アンテナとなり、電磁波加熱装置が放射する電界エネルギーを反射して受信しにくい構成である。この結果、RFIDタグ81では、電磁波加熱装置により発火しにくく、更に受電した電界エネルギー(電力)を磁界エネルギーとして反射または損失できる構成となっている。したがって、実施の形態1のRFIDタグ81においては、誘電加熱時において給電レベルを大幅に減衰できる構成となる。
また、RFIDタグ81は、ループ状の導体パターンである線間容量パターン85a、85bを複数個備えることで、アンテナパターン83においても、アンテナパターン83の周囲に照射されるエネルギーをさらに低減することができる。また、隣り合う線間容量パターン85aと85bとのそれぞれの周長が異なるので、線間容量パターン85aと85bは、それぞれの磁界アンテナの周波数が異なり、全体として2.4GHzから2.5GHz帯域以上の広帯域な磁界アンテナを構成する。線間容量パターン85aを間に挟む対向領域を含むアンテナパターン83の一部および線間容量パターン85aによる第1共振周波数と、線間容量パターン85aの隣に配置された別の線間容量パターン85bを間に挟む対向領域を含むアンテナパターン83の別の一部および線間容量パターン85bによる第2共振周波数と、が異なる。これにより、RFIDタグが商製品に貼りつけられることで、商製品の誘電率などによる共振周波数のズレがおきても、電界アンテナに干渉する磁界アンテナを構成することが可能となり、電磁波エネルギーを低減することができる。
なお、アンテナパターン83に線間容量パターン85が形成されていることで、RFIDタグ81の共振周波数は微調整されている。例えば線間容量パターン85が形成されていない場合のアンテナパターン83の共振周波数(880MHz)に比べ、線間容量パターン85が形成されていることで共振周波数(約920MHz)と数10MHz程度、アンテナ共振周波数が高くなる。
また、実施の形態1のRFIDタグ81は、アンテナパターン83および線間容量パターン85が曲面形状で構成されて電界の集中が抑制される形状を有しており、さらに線間容量パターン85aが、少なくとも第1アンテナ素子83aおよび第2アンテナ素子83bにおける隣接する折り返し部分83acの間に配置されているので、電磁波加熱装置でRFIDタグ81が誘電加熱されたとき、特に、第1アンテナ素子83aの折り返し部分83acにおける電界の集中が抑制された構成である。
上記のように構成されているため、実施の形態1のRFIDタグ81が付された商品を電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱した場合においても、RFIDタグ81における放電の発生が大幅に抑制されており、商品における発火の危険性を防止することができる。
また、対向部83c間の電位差がある大きさを超えると、対向部83c間で放電する。したがって、例えば電子レンジのようなエネルギーの大きい電磁波が照射された場合、対向部83c間において放電し、対向部83cが放電の熱により断線する。第1アンテナ素子83aは、放電により断線する程度の抵抗を持つように設計されている。また、アンテナ基材5は、放電の熱により変形可能な厚みを有する。アンテナ基材5の厚みは、例えば、38μmである。アンテナ基材5の変形にしたがって、アンテナ基材5上のアンテナパターン3の形状も変形するので、照射される電磁波との共振が妨げられる。
また、アンテナ基材5として、PETフィルムを用いる場合、対向部83c間で電界が強くなるエネルギーにより対向部83cにおけるアンテナ基材5が溶融する。対向部83cにおけるアンテナパターン3の直下のアンテナ基材5が溶融することにより、アンテナパターンが引っ張られて断線する。したがって、対向部83c間で放電が発生する前にアンテナパターン3が対向部83cにて断線する。
これらの断線は、アンテナ基材5全体が加熱される前の初期の段階で複数の対向部83cの箇所で同時に発生する。したがって、第1アンテナ素子83aが同時に複数箇所で断線するので、第1アンテナ素子83aに電流が流れなくなり、アンテナ基材5全体の温度が上昇して発火するのを防止することができる。
また、線間容量パターン85aと線間容量パターン85b間におけるアンテナ素子83aの直線部分83aaの一端である対向部83cから他端である次の対向部83cまでの長さは、その加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/4波長(λ/4)以下に設定されている。したがって、各対向部83cで断線した場合、それぞれ細かく断線したアンテナ素子83aは、加熱用電磁波の周波数の電波を吸収しにくいので、断線した後でさらにアンテナパターン83で放電が発生するのを防止することができる。
また、対向部83cの位置がアンテナ基材5の長手方向(X方向)の位置に応じてアンテナ基材5の幅方向(Y方向)に互い違いにシフトして位置するので、第1アンテナ素子83a上の断線部分も互い違いに発生する。これにより、アンテナ基材5上において、断線による発熱箇所を分散させて断線部分が繋がって発火するのを防止することができる。
また、静電容量Cs2は、隣り合う第1アンテナ素子83aの直線部分83aa間にのみ形成される。すなわち、アンテナ基材5の長手方向に1つ以上の直線部分83aaを越えて第1アンテナ素子83aの直線部分83aa間には静電容量は形成されない。したがって、対向部83cが断線した場合に、1本以上の直線部分83aaを越えて直線部分83aa間に電流が流れるのを防止することができる。
また、アンテナ基材5の片面に、アンテナパターン83と線間容量パターン85を形成しているので、製造工程においてパターン形成のエッチング工程を片面だけにすることができる。また、線間容量パターン85を、アンテナ基材5の裏面に形成してもよい。また、線間容量パターン85は、隣り合う第1アンテナ素子83aのそれぞれの直線部分83aa間の対向する方向に2つ以上配置してもよい。
《実施の形態7》
以下、本発明に係る実施の形態7の無線通信デバイスであるRFIDタグ91について、図20を参照して説明する。図20は、実施の形態7のRFIDタグ91の構成を示す平面図である。
実施の形態7のRFIDタグ91に関しては、実施の形態6のRFIDタグ81との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態7の説明において、前述の実施の形態6と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態6のRFIDタグ81は、第1アンテナ素子83aの直線部分83aa間に、第1アンテナ素子83aの延びる方向に沿って2つの線間容量パターン85a、85bを備えていたが、3つ以上の線間容量パターンを備えてもよい。実施の形態7のRFIDタグ91は、一例として3つの線間容量パターンを備える。実施の形態6の線間容量パターン85a、85bの長手方向(Y方向)の長さは、アンテナパターン83の直線部分83aaの約半分の長さであったが、実施の形態7の線間容量パターン85c、85dの長手方向の長さはさらに短い。また、実施の形態6のRFIDタグ81は、第2シールドパターンを備えていたが、実施の形態7のRFIDタグ91は、シールドパターンが全て第1シールドパターン87aである。その他の構成は実施の形態1のRFIDタグ1と実質的に同じである。
線間容量パターン85bを、それよりも長手方向の長さの短い線間容量パターン85c、85dに分割して配置することで、対向部83cの箇所を増やすことができ、放電が発生する箇所を増やすことができる。これにより、通信周波数より高い周波数の帯域の種類に応じて、放電箇所を変えることができる。
実施の形態7の構成によっても、通信周波数より高い周波数を受信すると、線間容量パターン85a、85cおよび85dに渦電流が発生し磁界が発生するので、給電された電力の一部は磁界エネルギーとして損失する。また、対向部83c間の電位差を増加させ、やがて放電させて、第1アンテナ素子83aを断線することができるので、RFIDタグ1全体が発火するのを防止することができる。
《実施の形態8》
以下、本発明に係る実施の形態8の無線通信デバイスであるRFIDタグ101について、図21を参照して説明する。図21は、実施の形態8のRFIDタグ101の構成を示す平面図である。
実施の形態8のRFIDタグ101に関しては、実施の形態7のRFIDタグ91との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態8の説明において、前述の実施の形態7と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態7のRFIDタグ91は、第1ランドパターン6aと第2ランドパターン6bとが、アンテナ基材5の幅方向に並べて配置されていたが、実施の形態8のRFIDタグ101は、第1ランドパターン6aと第2ランドパターン6bとが、アンテナ基材5の長手方向に並べて配置されている。その他の構成は実施の形態7のRFIDタグ91と実質的に同じである。
実施の形態8の構成によっても、通信周波数より高い周波数を受信すると、線間容量パターン85a、85cおよび85dに渦電流が発生し磁界が発生するので、給電された電力の一部は磁界エネルギーとして損失する。また、対向部83c間の電位差を増加させ、やがて放電させて、第1アンテナ素子83aを断線することができるので、RFIDタグ1全体が発火するのを防止することができる。
《実施の形態9》
以下、本発明に係る実施の形態9の無線通信デバイスであるRFIDタグ111について、図22を参照して説明する。図22は、実施の形態9のRFIDタグ111の構成を示す平面図である。
実施の形態9のRFIDタグ111に関しては、実施の形態6のRFIDタグ81との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態9の説明において、前述の実施の形態6と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態6のRFIDタグ81は、第1ランドパターン6aと第2ランドパターン6bとが、アンテナ基材5の幅方向に並べて配置されていたが、実施の形態9のRFIDタグ111は、第1ランドパターン6aと第2ランドパターン6bとが、アンテナ基材5の長手方向に並べて配置されている。また、第2アンテナ素子83bが、第2ランドパターン6bから導出してアンテナ基材5の長手方向の他端に向かってミアンダ状に延設されている。その他の構成は実施の形態1のRFIDタグ1と実質的に同じである。
実施の形態9の構成によっても、通信周波数より高い周波数を受信すると、線間容量パターン85a、85bに渦電流が発生し磁界が発生するので、給電された電力の一部は磁界エネルギーとして損失する。また、対向部83c間の電位差を増加させ、やがて放電させて、第1アンテナ素子83aを断線することができるので、RFIDタグ111全体が発火するのを防止することができる。
《実施の形態10》
以下、本発明に係る実施の形態10の無線通信デバイスであるRFIDタグ141について図23を参照して説明する。図23は、実施の形態10のRFIDタグ141の構成を示す平面図である。
実施の形態10のRFIDタグ141に関しては、実施の形態7のRFIDタグ91との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態10の説明において、前述の実施の形態7と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態10におけるRFIDタグ141は、第1ランドパターン6aおよび第2ランドパターン6bのそれぞれから、アンテナ基材5の長手方向に沿って蛇行するミアンダ形状のアンテナパターン143が形成されている。ミアンダ形状のアンテナパターン143の振幅方向は、例えば、アンテナ基材5の幅方向と平行である。アンテナパターン143は、ミアンダ形状の第1アンテナ素子83aと、第1アンテナ素子83aをRFICパッケージ2の中心を略中心として点対称に配置された第2アンテナ素子83dとを有する。なお、第2アンテナ素子83dがミアンダ形状であれば、第1アンテナ素子83aと第2アンテナ素子83dとは、点対称でなくても、線対称でもよい。折り曲げ部83dcを有するミアンダ形状の第2アンテナ素子83dが、第2ランドパターン6bからアンテナ基材5における最終的に長手方向(−X方向)の他方の端部に向かって延設されている。
第1アンテナ素子83aの隣り合う直線部分の間には、線間容量パターン85が形成されている。実施の形態7と同様に、線間容量パターン85は、3つの線間容量パターン85a、85c、85dを備え、それぞれ第1アンテナ素子83aのミアンダの振幅に応じて、配置順を交互にして配置されている。また、第2アンテナ素子83dの隣り合う直線部分83daの間にも、同様に、線間容量パターン85が形成されている。
実施の形態10におけるRFIDタグ141は、例えば、非金属製の商品に貼り付ける場合に適している。例えば、商品が弁当の場合、弁当には金属部分がないので、幅広部7を有するRFIDタグよりも、ミアンダ形状のアンテナ素子を2つ有するRFIDタグ141の方が、通信周波数での通信特性が向上する。また、RFIDタグ141は、通信周波数よりも高い周波数を受信しても、RFIDタグ91同様に、線間容量パターン85a、85cおよび85dに渦電流が発生し磁界が発生するので、給電された電力の一部は磁界エネルギーとして損失する。また、対向部83c間の電位差を増加させ、やがて放電させて、第1アンテナ素子83aを断線することができるので、RFIDタグ141全体が発火するのを防止することができる。
《実施の形態11》
以下、本発明に係る実施の形態12の無線通信デバイスであるRFIDタグ151について図24を参照して説明する。図24は、実施の形態11のRFIDタグ151の構成を示す分解斜視図である。
実施の形態11のRFIDタグ151に関しては、実施の形態10のRFIDタグ141との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態11の説明において、前述の実施の形態10と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態10のRFIDタグ141のアンテナ基材5は、実施の形態1のアンテナ基材5と同様に難燃性のアンテナ基材5を用いているが、実施の形態11では、実施の形態1で例示している難燃性のアンテナ基材5を用いる替わりに、通常のアンテナ基材153と難燃性のベース基材155とを備える。アンテナ基材153の下面には両面テープ等の粘着剤を介してベース基材155に貼り合わされる。なお、実施の形態11のRFIDタグ151のアンテナパターン143等の他の構成は、実施の形態10のRFIDタグ141と同様である。
アンテナ基材153は、例えば、PETフィルムであり、難燃性のものでなくてもよい。アンテナ基材153の厚みは、例えば、38μmである。ベース基材155は、アンテナ基材153よりも難燃性を有し、例えば、耐熱200℃程度の難燃性を有する。ベース基材155は、例えば、ポリエステル系フィルムである。ベース基材155の厚みは、例えば、25から50μm程度である。
また、第1アンテナ素子83aおよび第2アンテナ素子83dの線幅は、例えば、125μmである。第1ランドパターン6aから先端までの第1アンテナ素子83aの抵抗値は、例えば、5Ωから15Ωである。第2アンテナ素子83dの抵抗値も同様である。第1アンテナ素子83aおよび第2アンテナ素子83dがこの程度の抵抗値を有することで、通信周波数より高い周波数を受信した場合に、対向部83cで断線しやすくなる。線間容量パターン85a、85c、および85dの線幅は、第1および第2アンテナ素子83a、83dよりも細く、例えば、100μmである。
このような構成により、RFIDタグ151が、通信周波数よりも高い周波数を受信すると、そのエネルギーが大きい場合、アンテナパターン143が電磁波エネルギーを受信することでアンテナパターンが高温に過熱される。特に、対向部83cのいずれかで高温になりやすい。高温になったアンテナの一部が微小な火花放電を起こし、高温に過熱されたアンテナパターン143の一部は昇華し、その熱により高温になったアンテナパターン143に隣接するアンテナ基材153も溶け出したり、縮むことで基材形状を保てなくなり、アンテナパターン143を断線させる。高温に過熱された周囲のアンテナ基材153が溶け出したり、縮むことで、その近傍のベース基材155は難燃性であるので、燃えずに溶け出す。この溶けたベース基材155が、微小な火花放電を起こした周囲のアンテナパターン143の金属導体の周りをコーティングする。これにより、RFIDタグ151が放電や熱による変形により全体的に縮んで湾曲しても、断線したアンテナパターン143は、絶縁体である溶けたベース基材155の一部により包まれているので、アンテナパターン143同士が離間した状態を保ち、アンテナパターン143同士が接触することを抑えることができる。これにより、通信周波数よりも高い周波数を受信するアンテナパターンが再構成されるのを防止することができる。また、アンテナパターン143の配線間の絶縁性を維持することができる。
ベース基材155を有さない場合、難燃性ではないアンテナ基材153が放電点周囲で溶けて縮むと、アンテナパターン143を構成する金属導体同士が接触する場合がある。断線により、通信周波数よりも高い周波数の受信ができなくなっていたアンテナパターンが、接触により、新たなパターンのアンテナパターンが形成される。これにより、通信周波数よりも高い周波数を再び受信することが可能となり、この新たなアンテナパターンの一部がさらに放電するおそれがある。このようにして、ベース基材155を有さないRFIDタグ151は、連続的に放電が発生するおそれがある。
実施の形態11のRFIDタグ151であれば、アンテナ基材153に安価なフィルムを採用することができ、また、ベース基材155も安価な耐熱性フィルムを採用することができるので、コストダウンを図ることができる。また、アンテナパターン143の一部が放電し、その周囲のアンテナ基材153が溶けたとしても、溶けたベース基材155が断線したアンテナパターン143の周囲を包むので、断線状態を維持することができる。したがって、アンテナパターン143が、再び通信周波数よりも高い周波数を受信することができない。また、溶けたベース基材155がアンテナパターン143を包み込むことで、溶けた熱によりRFIDタグ151が変形しても再度ショートして新たなアンテナパターンを構成するのを防止することができる。なお、実施の形態1で例示された難燃性のアンテナ基材5の素材をベース基材155として採用してもよい。
《実施の形態12》
以下、本発明に係る実施の形態12の無線通信デバイスであるRFIDタグ161について図25を参照して説明する。図25は、実施の形態12のRFIDタグ161の構成を示す平面図である。
実施の形態12のRFIDタグ161に関しては、実施の形態7のRFIDタグ91との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態12の説明において、前述の実施の形態12と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態12のRFIDタグ161のように、幅広部7を有するRFIDタグは、商品に貼り付けられる際に、商品とRFIDタグ161との重なり領域が幅広部7の領域内であることが好ましい(図3B参照)。RFIDタグ161においては、アンテナパターン83は、アンテナ基材5と空気による誘電率を想定して設計されている。したがって、RFIDタグ161が、幅広部7の領域を越えて、アンテナパターン83側に重なるように商品に貼り付けられると、アンテナパターン83の一部の誘電率が想定されていた誘電率と異なる誘電率となる。この結果、受信される波長を短縮するゾーンが形成されるので、通信周波数よりも高い周波数においても電磁波エネルギーが集中するゾーンが形成される。
例えば、陶磁器のような誘電体の大きな商品に、幅広部7の領域よりもアンテナパターン83側が重なるようにRFIDタグ161が貼り付けられると、RFIDタグ161の通信周波数の周波数ズレだけでなく、電磁波エネルギーの集中が引き起こされる。これにより、RFIDタグ161の誘電体と重なっているゾーンは、電磁波エネルギーの集中により過熱が集中し、発火するおそれがある。
そこで、実施の形態12のRFIDタグ161は、商品への貼り付け位置をわかりやすくするために、アンテナ基材5から長手方向において幅広部7とは反対方向に延在する折り曲げ部165およびカバー部163を備える。折り曲げ部165およびカバー部163は、アンテナ基材5と一体成形されている。折り曲げ部165は、外縁に幅方向内方に向けてそれぞれ切り欠き165aが形成されている。折り曲げ部165は、アンテナ基材5の幅方向に沿ってミシン目167を有し、ミシン目167のそれぞれの先端は、切り欠き165aと接続されている。なお、ミシン目167の替わりに、V溝などの折りやすい構造が形成されていてもよい。
幅広部7の外周の全長または対角の長さは、通信周波数よりも高いある特定の周波数の波長の1/4波長よりも短く設計されている。例えば、電磁波加熱装置(電子レンジ)の周波数の波長の1/4波長よりも短く設計する場合、幅広部7の大きさは、例えば、長手方向の長さLaが10mmであり、幅方向の長さLbが18mmである。
商品への貼り付け位置として、幅広部7のアンテナパターン83側の端辺は許容されるが、少しでもアンテナパターン83側を商品と重なって貼り付けられると周波数ズレが引き起こされる。そこで、例えば、長さLaの10%の長さである1mmの長さを安全マージンの長さLa2とし、商品に貼り付ける長手方向の長さLa1として残りの9mmとしてもよい。幅広部7のアンテナパターン83側の端辺からこの長さLa2の位置におけるアンテナ基材5の幅方向に沿う直線を、商品への取り付け線MLとする。
カバー部163は、ミシン目167に沿ってアンテナパターン83を覆うように折り曲げた際に、折り曲げ部165とは反対側の端辺がちょうど取り付け線MLに重なるような大きさに形成されている。RFIDタグ161の全面に両面テープが貼り付けられており、ミシン目167に沿ってカバー部163が折り曲げられると、カバー部163はアンテナパターン83上に貼り付けられる。
図26は、カバー部163が、ミシン目167に沿って折り曲げられたRFIDタグ161の平面図である。カバー部163の端辺がちょうど取り付け線MLに位置するので、幅広部7の長さLa2の領域がカバー部163に覆われ、幅広部7の長さLa1の領域が露出している。図27に示すように、カバー部163の端辺を例えば金属缶14などの商品端部に沿って貼り付けることで、周波数ズレを起こすことのないように適切にRFIDタグ161を商品に貼り付けることができる。
なお、上述したように、RFIDタグ161がカバー部163や折り曲げ部165を有さなくても、取り付け線MLよりもアンテナパターン83側と逆側のRFIDタグ161の表面に粘着剤が塗布されており、単に、取り付け線MLを商品の端部に沿って貼り付けるような注意書きをRFIDタグ161の裏側に記載しておいてもよい。また、矢印等記号を用いて取り付け線MLでの貼り付けをわかりやすく表示してもよい。
《実施の形態13》
以下、本発明に係る実施の形態13の無線通信デバイスであるRFIDタグ168について説明する。実施の形態13のRFIDタグ168に関しては、実施の形態6のRFIDタグ81との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態13の説明において、前述の実施の形態6と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態13のRFIDタグ168において、実施の形態6のRFIDタグ81と大きく異なる点は、ミアンダ状のアンテナパターン169の形状である。図32は、実施の形態13のRFIDタグ168の構成を示す平面図である。RFIDタグ168は、UHF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。
実施の形態13のRFIDタグ168においては、実施の形態6のRFIDタグ81と比較して、RFIDタグ168の平面視形状がより細長く形成されており、その中央にRFICパッケージ2が実装されている。即ち、RFIDタグ168のアンテナ基材170が細長い形状を有しており、アンテナ基材170の中央に実装されたRFICパッケージ2の両側にアンテナパターン169(第1アンテナ素子169aおよび第2アンテナ素子169b)が設けられている。第1アンテナ素子169aは、アンテナ基材170における長手方向の一方側の領域(図32においては右側領域)に形成されており、長手方向の一端に向かってミアンダ状に延設されている。一方、第2アンテナ素子169bは、アンテナ基材170における長手方向の他方側の領域(図32においては左側領域)に形成されており、長手方向の他端に向かってミアンダ状に延設されている。
実施の形態13のRFIDタグ168において、線間容量パターン171は、ミアンダ状の第1アンテナ素子169aおよび第2アンテナ素子169bにおける隣接する折り返し部169ac間、折り返し部169bc間にそれぞれ容量が発生するように設けられている。したがって、実施の形態8のRFIDタグ168において、実施の形態1のRFIDタグ81の対向部83cに対応するのは、折り返し部169acおよび折り返し部169bcになる。このように、実施の形態13のRFIDタグ168においては、インダクタンス成分を有する第1アンテナ素子169aおよび第2アンテナ素子169bのそれぞれの経路に沿って複数のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。実施の形態13における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されている。また、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、その加熱用電磁波の周波数(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/2波長(λ/2)より短くなるように設定されている。
実施の形態13のRFIDタグ168は、幅が狭い小さなテープ状の簡単な構成となり、取り扱いが容易で低価格な無線通信デバイスを構築することが可能となる。
図33は、実施の形態13の変形例を示すものであり、RFICチップ9がアンテナパターン173上に実装されたRFIDタグ172の構成を示す平面図である。RFIDタグ172は、UHF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。図33に示すRFIDタグ172は、RFICチップ9がループ部177に形成されたアンテナパターン169上に実装されている構成以外は、図32に示したRFIDタグ168と同様の構成を有している。即ち、RFIDタグ172のアンテナ基材174が細長い形状を有しており、アンテナ基材174の中央に形成されたループ部177の両側にアンテナパターン173(第1アンテナ素子173aおよび第2アンテナ素子173b)が設けられている。RFIDタグ172において、線間容量パターン175は、ミアンダ状の第1アンテナ素子173aおよび第2アンテナ素子173bにおける隣接する折り返し部分173ac間、折り返し部分173bc間にそれぞれ容量が発生するように設けられている。RFIDタグ172においても、インダクタンス成分を有する第1アンテナ素子173aおよび第2アンテナ素子173bのそれぞれ経路に沿って複数のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。
図33に示したRFIDタグ172における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されており、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、その加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/2波長(λ/2)より短くなるように設定されている。
従って、図33に示したRFIDタグ172は、RFIDタグ41は、幅が狭いテープ状の形状を有し、取り扱いが容易で、商品陳列において購入者にとって目障りとならない無線通信デバイスとなる。
以上のように、実施の形態13におけるRFIDタグ168および172においては、当該RFIDタグ168および172が付された商品が電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱された場合においても、RFIDタグ168および172における発火の危険性が防止されており、安全性および信頼性が高く、且つ商品陳列に邪魔にならず、取り扱いが容易な無線通信デバイスとなる。
なお、実施の形態13において説明したRFIDタグ168および172は、アンテナパターン169および173と、線間容量パターン171および175において電界の集中を抑制するために角部分が曲面形状で構成されている。
《実施の形態14》
以下、本発明に係る実施の形態14の無線通信デバイスであるRFIDタグ181について説明する。実施の形態14のRFIDタグ181に関しては、実施の形態6のRFIDタグ81との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態14の説明において、前述の実施の形態6と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
図34Aは、実施の形態9のRFIDタグ181の構成を示す平面図である。RFIDタグ181は、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。図19Bは、実施の形態9のRFIDタグ181におけるアンテナパターン(コイルパターン)183の構成を等価回路で示した図である。ここでHF帯とは、13MHz以上15MHz以下の周波数帯域である。
図34Aに示すように、RFIDタグ181は、RFICチップ9およびコンデンサ素子182が設けられたループ部187の整合回路を有するアンテナパターン183を備えている。また、ループ部187の整合回路においては、RFICチップ9と対向する位置にコンデンサ素子182が接続されている。RFIDタグ181におけるアンテナパターン183のアンテナ素子183aは、ループ部187から延設されて、渦巻き状に形成されている。図34Aに示すアンテナ素子183aにおいては、ループ部187から時計方向に内巻きに導出している。アンテナ素子183aの導出端部となる先端部分は、ブリッジパターン186を介してループ部187の整合回路に直接接続されている。なお、ブリッジパターン186とアンテナパターン183との間には耐熱性の電気的絶縁材料で形成された絶縁パターン188が配設されており、ブリッジパターン186とアンテナパターン183との間の絶縁状態が確保されている。
また、ループ部187の整合回路から導出する渦巻き状のアンテナ素子183aにおいては、隣接する経路間において容量を発生させる複数の線間容量パターン185が、アンテナ素子183aの経路に沿って予め定められた間隔で設けられている。
アンテナ素子183aの内側には、ループ状のシールドパターン189が形成されている。シールドパターン189は、アンテナパターン183と同様に、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料により形成されている。シールドパターン189は、完全に閉じたループ状であるが、一部が途切れているシールドパターンであってもよい。
上記のように、実施の形態14のRFIDタグ181においては、インダクタンス成分を有するアンテナ素子183aの経路に沿って複数のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。RFIDタグ181における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されており、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、その加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/2波長(λ/2)より短くなるように設定されている。
実施の形態14のRFIDタグ181においては、アンテナ基材184の表面にアンテナパターン183と線間容量パターン185が積層される構成である。また、アンテナ基材184の表面において、アンテナパターン183上に絶縁パターン188を介してブリッジパターン186が形成されて、RFIDタグ181におけるアンテナが構成されている。このため、複数のパターン(183、185、および186)をアンテナ基材55の同一面上に形成する構成であり、RFIDタグ51の製作が容易な構成となっている。なお、実施の形態14のRFIDタグ181においては、アンテナ基材184としては誘電体で構成される必要はなく、例えば紙材により構成することも可能である。
前述の実施の形態6において、図19Cを用いて説明したように、実施の形態14のRFIDタグ181においても、複数のLC並列共振回路Sで構成された「帯域除去フィルタ」により、加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の帯域の周波数に対して、大幅に減衰できる回路構成となっている。従って、実施の形態14の無線通信デバイスであるRFIDタグ181においては、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信することができる構成であると共に、当該RFIDタグ181が付された商品を電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱した場合においても、RFIDタグ181における放電の発生が大幅に抑制されており、商品における発火の危険性を確実に防止することが可能な構成となっている。
《実施の形態15》
以下、本発明に係る実施の形態15の無線通信デバイスであるRFIDタグ191について説明する。実施の形態15のRFIDタグ191に関しては、実施の形態6のRFIDタグ81との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態15の説明において、前述の実施の形態6と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
図35Aは、実施の形態15のRFIDタグ191の構成を示す平面図である。RFIDタグ191は、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信するよう構成されており、広い周波数帯域で無線通信可能に構成されている。図35Bは、実施の形態10のRFIDタグ191におけるアンテナパターンを含む2つのコイルパターン(193、203)の構成を等価回路で示した図である。
図35Aに示すように、実施の形態15のRFIDタグ191は、2つのコイルパターン(193、203)を備えた共振ブースタ回路が構成されている。RFIDタグ191における一方のコイルパターン(一次側コイルパターン)203は、RFICチップ9およびコンデンサ素子202が設けられたループ部200の整合回路を有する。ループ部200の整合回路においては、RFICチップ9がコンデンサ素子202と対向する位置に接続されている。コイルパターン(一次側コイルパターン)203は、ループ部200から渦巻き状に導出されており、その導出端部である先端部分は、ブリッジパターン204を介してループ部200の整合回路に直接接続されている。コイルパターン(一次側コイルパターン)203は、ループ部200から時計回りの方向に内巻きに導出している。
なお、アンテナ基材194の裏面側にブリッジパターン204を形成して、アンテナ基材194を貫通する層間接続導体を介して、コイルパターン(一次側コイルパターン)203の導出端部である先端部分とループ部200とを接続してもよい。若しくは、ブリッジパターン204をアンテナ基材194の表面側に形成する場合には、ブリッジパターン204と一次側コイルパターン203との間に耐熱性の電気的絶縁材料で形成された絶縁パターンを配設して、ブリッジパターン204と一次側コイルパターン203との間の絶縁状態を確保する構成としてもよい。
また、実施の形態15のRFIDタグ191における他方のコイルパターン(二次側コイルパターン)であるアンテナパターン193は、コイルパターン(一次側コイルパターン)203を取り囲むように形成されており、時計回りの方向に内巻きに形成されたアンテナ素子193aが構成されている。このアンテナパターン193における渦巻き状のアンテナ素子193aにおいては、隣接する経路間に容量を発生させる複数の線間容量パターン195が、アンテナ素子193aの経路に沿って所定間隔で設けられている。
実施の形態15のRFIDタグ191におけるアンテナパターン193および線間容量パターン195は、アンテナ基材194の表面に形成されている。また、アンテナパターン193のアンテナ素子193aにはコンデンサ素子192が設けられている。渦巻き状のアンテナ素子193aにおける外側端部と内側端部とは、アンテナ基材194を貫通する層間接続導体196を介して、アンテナ基材194の裏面に形成された導電経路パターン197により電気的に直接接続されている。
アンテナ素子193aの内側には、ループ状のシールドパターン199が形成されている。シールドパターン199は、アンテナパターン193と同様に、アルミニウム箔、銅箔などの導電材料により形成されている。シールドパターン199は、完全に閉じたループ状であるが、一部が途切れているシールドパターンであってもよい。
上記のように、実施の形態15のRFIDタグ191においては、インダクタンス成分を有するアンテナパターン193におけるアンテナ素子193aの経路に沿って複数のLC並列共振回路Sが形成されており、これらのLC並列共振回路Sが「帯域除去フィルタ」を構成している。RFIDタグ191における複数のLC並列共振回路SのそれぞれのLC並列共振回路Sにおいても、「電子レンジ」で使用される2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されている。また、それぞれのLC並列共振回路Sにおける線路長は、その加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/2波長(λ/2)より短くなるように設定されている。
上記のように構成された実施の形態15のRFIDタグ191は、複数のLC並列共振回路Sで構成された「帯域除去フィルタ」により、加熱周波数(2.4〜2.5GHz)の帯域の周波数に対して、大幅に減衰できる回路構成となっている。従って、実施の形態15の無線通信デバイスであるRFIDタグ191においては、HF帯の通信周波数(キャリア周波数)を有する高周波信号で無線通信することができる構成であると共に、当該RFIDタグ191が付された商品を電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱した場合においても、RFIDタグ191における放電の発生が大幅に抑制されており、商品における発火の危険性を確実に防止することが可能な構成である。
《実施の形態16》
以下、本発明に係る実施の形態16の無線通信デバイスであるRFIDタグ211について説明する。実施の形態16のRFIDタグ211に関しては、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態16の説明において、前述の実施の形態1と同様の構成、作用および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
実施の形態16のRFIDタグ211において、実施の形態1のRFIDタグ1との相違点は、容量結合部としての線間容量パターン214がアンテナパターン3と同一面(表面)に形成されている点であり、その他の構成は実施の形態1のRFIDタグ1と実質的に同じである。図36は、実施の形態16のRFIDタグ211の構成を示す平面図である。
線間容量パターン214は、幅広板形状の第1線間容量電極214aと、幅狭板形状の第2線間容量電極214bとを有している。幅広形状の第1線間容量電極214aは、ミアンダ状の第1アンテナ素子3aにおける特定の対向領域3aa同士を容量結合しており、同様にミアンダ状の第2アンテナ素子3bにおける特定の対向領域3ba同士を容量結合している。第1線間容量電極214aは、少なくとも第1アンテナ素子3aおよび第2アンテナ素子3bにおける隣接する折り返し部分3acおよび3bcをそれぞれ容量結合するよう配設されている。
一方、幅狭形状の第2線間容量電極214bは、第1アンテナ素子3aにおける特定の領域と、第2アンテナ素子3bにおける特定の領域とを容量結合するよう設けられている。また、幅狭形状の第2線間容量電極214bは、第1ランドパターン6aと、第1アンテナ素子3aにおける特定の領域とを容量結合するよう設けられており、また、第2ランドパターン6bと、第2アンテナ素子3bにおける特定の領域(幅広部7を含む)とを容量結合するよう設けられている。
第1線間容量電極214aは、第1アンテナ素子3aにおいて対向するそれぞれの対向領域3aaを容量結合して、第1線間容量電極214aおよび第1アンテナ素子3aの一部により構成されるループ回路が形成される。このループ回路がLC並列共振回路Sである。第2線間容量電極214bは、第2アンテナ素子3bにおいて対向するそれぞれの対向領域3baを容量結合して、第2線間容量電極214bおよび第2アンテナ素子3bの一部により構成されるループ回路が形成される。このループ回路でLC並列共振回路Sが形成されている。
複数のLC並列共振回路SにおけるそれぞれのLC並列共振回路Sは、2.4〜2.5GHzの周波数帯域の周波数に対して共振するよう設定されており、それぞれのLC並列共振回路Sの線路長は、前記所定の通信周波数に用いられる周波数の1/2波長より短く、更には加熱用電磁波(2.4〜2.5GHz)の周波数帯域の1/2波長(λ/2)より短くなるよう設定されている。
上記のように構成された実施の形態16のRFIDタグ211においては、当該RFIDタグ211が付された商品が電磁波加熱装置(電子レンジ)において誘電加熱された場合においても、RFIDタグ211における発火の危険性が防止されており、安全性および信頼性の高い無線通信デバイスとなる。
本発明は、上記各実施の形態のものに限らず、次のように変形実施することができる。
(1)上記実施の形態1において、第1アンテナ素子83aの対向領域は直線部分83aaであるが、これに限られない。例えば、第1アンテナ素子83aが曲線状に形成されている場合、互いに対向する曲線状のアンテナパターンの間に線間容量パターン85を配置してもよい。また、第1アンテナ素子83aの対向領域は直線部分83aaである場合でも、それぞれの直線部分83aaが平行にではなく、一方の直線部分83aaが他方の直線部分83aaに対して傾いて配置されていてもよい。
(2)また、各実施の形態のRFIDタグにおけるアンテナパターンおよび線間容量パターンなどの導体パターンにおいては、電界の集中を抑制するために角部分などが滑らかな曲面で構成されている。
本発明をある程度の詳細さをもって各実施の形態において説明したが、これらの実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各実施の形態における要素の組合せや順序の変化は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。