以下、図示した実施例に基づいて本発明の開閉器を説明する。なお、下記はあくまでも実施の例であって、発明の内容を下記具体的態様に限定することを意図する趣旨ではない。発明自体は、特許請求の範囲の記載を満たす範囲内で種々の態様に変形することが可能である。また、以下に示す実施例では開閉器として、ばね操作式のガス遮断器を挙げて説明するが、ばね操作式の真空遮断器にも適用されることは言うまでもない。更に、遮断器以外の断路器や接地開閉器にも適用可能である。
図1に、本発明の開閉器として、ばね操作式のガス遮断器1を一部断面して示す。
該図に示す如く、本実施例のばね操作式のガス遮断器1は、円筒状の接地容器2を架台3上に設置され、この円筒形の接地容器2には絶縁性のガス、例えば、SF6ガスが規定の圧力で封入されている。接地容器2の軸方向中間部から斜め上方には、ブッシング4及び5が突出している。変電所や開閉所の中の電線を接続して電路を構成する導体が、ブッシング4及び5の中に収納されている。また、架台3の側部には、ガス遮断器1のばね操作器15が収納されている操作箱6が取り付けられている。
接地容器2内には、固定接触子7及び可動接触子8からなる接点が収納されており、図1は、接点の投入状態を示す。即ち、可動接触子8が固定接触子7に接しており、遮断動作で可動接触子8が固定接触子7から離れる(開極)。可動接触子8は、固定接触子7との接触端と反対側の端部で絶縁材から成る絶縁ロッド9に接続されている。接地容器2には、回転自在に支持された回転軸10に第1のリンク11及び第2のリンク12の一端が固定されている。第1のリンク11の他端は、絶縁材ロッド9の一端と接続し、第2のリンク12の他端は、操作器側に繋がる第3のリンク13と接続している。
操作箱6内には、回動自在に支持されたばね操作器15の主軸14が配置され、この主軸14に第4のリンク16が接続され、第4のリンク16の他端は、第3のリンク13に接続されている。主軸14を中心としてばね操作器15の部品が配置されており、その構成については後述する。なお、59は、後述するギア列の摩耗を監視する摩耗監視装置である。
このように構成されたガス遮断器1では、電流が図示を省略した電力系統からブッシング5に供給され、電流は、ブッシング5から接地容器2内の接点に導かれ、下流側のブッシング4を経て再び電力系統に供給される。
落雷などで電力系統に事故が発生すると、ガス遮断器1に遮断指令が入力され、ばね操作器15が起動して、主軸14及び第4のリンク16を反時計回りに回転させ、第3のリンク13を下方に移動させる。そして、第2のリンク12及び回転軸10、第1のリンク11が反時計回りに回転して絶縁ロッド9を左方に移動させ、可動接触子8を固定接触子7から離して接点を開く(開極)。これにより、電力系統の下流側への供給を遮断する。
図2乃至図4を用いて、本実施例のガス遮断器1のばね操作器15について説明する。
図2は、ばね操作器15の遮断ばね17及び投入ばね18が共に圧縮されている投入状態を示す図である。
図2において、圧縮された遮断ばね17の駆動力は、主レバー19を介して第2遮断ラッチ20及び第1遮断ラッチ21に伝達され、第1遮断ラッチ21と遮断トリガ22とが係合することで保持されている。同様に、投入ばね18の駆動力は、カム23を介して投入ラッチ24に伝達され、投入ラッチ24と投入トリガ25とが係合することで保持されている。そして、遮断トリガ22、投入トリガ25に当接可能に開路用電磁石26、閉路用電磁石27が配置されている。
投入ばね18の周りでは、カム軸28の一端にカム23が、他端には最終段(第3段目)の大歯車29が接続されている。投入ばね18は、リンク30を介してカム23に接続されている。図2の状態から投入ばね18が解放される際には、カム23及び第3段目の大歯車29が反時計回りに回動し、解放された投入ばね18を圧縮する際にも、カム23及び第3段目の大歯車29を反時計回りに回動させる。
図5の右半分に、投入動作で投入ばね18が解放された状態から再び圧縮する過程でのギア列の構成を示す。
該図に示す如く、駆動源のモータ31に締結された軸32に第1段目の小歯車33が接続され、第1段目の小歯車33と第1段目の大歯車34とで第1段目の歯車対が構成される。また、第2段目が第2段目の小歯車35と第2段目の大歯車36とで構成される。最終の第3段目が第3段目の小歯車37と第3段目の大歯車29とで構成される。なお、本実施例においては、ギア列が3段で構成されているが、2段以下でも4段以上であってもよい。
図5において、投入ばね圧縮指令がスイッチ38に入力されると、電源39からモータ31への通電が開始され、ギア列56が回転し始める。図5に示した状態から第3段目の大歯車29及びカム23が反時計回りに約180°回転すると、図示を略したリミットスイッチが作動することでモータ31への通電が切断される。このとき、投入ばね18は圧縮状態にあり、そのばね力が解放されようとするが、投入カム23と投入ラッチ24及び投入ラッチ24と投入トリガ25とが係合することで保持される(図2の状態)。
投入ばね圧縮動作中のモータ31の電流測定波形40を図6に示す。通電開始時にはインラッシュ電流が流れ、通電切断時にサージ電流が発生する。また、投入ばね圧縮動作の中間(第3段目の大歯車29及びカム23が約90°回転)でモータ電流が最大となる。これは、投入ばね18の圧縮に伴い、投入ばね18のリンク30の姿勢が変化し、カム23が約90°回転した状態でカム軸28に対して、投入ばね18によるモーメントが最大となるためである。
図1に示したガス遮断器1の開閉操作について説明する。始めに、図7に示す開閉操作用の電気回路と図8に示すシーケンスを説明し、次に図2乃至図4を用いて機構の動作を説明する。
図7に示した電気回路は、遮断部接点が切状態(固定接触子7と可動接触子8が開状態)のものであり、上位系統からガス遮断器1に閉路指令がスイッチ41aに入力されると、操作電源42から閉路用電磁石27に通電され、閉路動作が開始される。電気回路に接続された補助開閉器43は、図示を略したリンク機構により主レバー19(図2参照)に接続されており、開閉操作に伴う主レバー19の回動により補助開閉器43のa接点43a及びb接点43bが駆動される。閉路操作では、遮断部の固定接触子7と可動接触子8が閉極する際に補助開閉器43のb接点43bがOFFになり、補助開閉器43のa接点43aがONになる。一方、開路操作では、固定接触子7と可動接触子8が開極する際に補助開閉器43のa接点43aがOFFになり、補助開閉器43のb接点43bがONになる。
ガス遮断器1の開路操作は、ガス遮断器1の投入状態において、開路指令がスイッチ41bに入力されると開路用電磁石26が励磁され、開路用電磁石26のプランジャが突出し、遮断トリガ22を押圧して、遮断トリガ22と第1遮断ラッチ21との係合が外れる。すると、第1遮断ラッチ21と第2遮断ラッチ20の係合も外れて、主レバー19が遮断ばね17の駆動力により反時計回りに回転して、図3に示す遮断状態となる。また、図1に示したリンク機構を介して、遮断部の固定接触子7と可動接触子8が開かれる(開極)。
ガス遮断器1の閉路操作は、ガス遮断器1の遮断状態において、閉路指令が入力されると閉路用電磁石27が励磁され、閉路用電磁石27のプランジャが突出し、投入トリガ25を押圧して、投入トリガ25と投入ラッチ24との係合が外れる。すると、投入ラッチ24とカム23との係合が外れて、カム23が投入ばね18の駆動力により反時計回りに回転する。そして、カム23の回動に伴い、カム23の外周面が主レバー19のローラ19aに当接して、主レバー19を時計回りに回転させて遮断ばね17を圧縮しつつ、リンク機構を介して遮断部の固定接触子7と可動接触子8を投入する(閉極)。
なお、投入動作においては、ギア列56の第3段目の大歯車29が駆動側、第3段目の小歯車37が被駆動となって駆動される。しかしながら、第3段目の小歯車37が締結される軸44に、図示を略した一方向歯車が接続されており、第3段目の小歯車37からモータ31側への第2段目には、トルクが伝達されないように構成している。
投入ばね圧縮機構におけるギア列56の摩耗監視装置59の構成について、図5を用いて説明する。
図5において、摩耗監視装置59は、監視対象のガス遮断器1に対して、ギア列56を駆動するモータ31の電流を、可動接触子8と固定接触子7の開極又は閉極ごとに測定する測定部45と、この測定部45で測定された情報に基づいて、可動接触子8と固定接触子7の開極又は閉極回数(操作回数)及びモータ31の電流最大値を算出する診断部46と、この診断部46で算出された可動接触子8と固定接触子7の開極又は閉極回数(操作回数)に対するモータ31の最大電流値を基に、ギア列56の摩耗進展を判定する判定部47とから構成されている。
また、ばね操作器15のモータ31を駆動する電気回路上には、変流器48が設けられており、内部にシャント抵抗器を備えることでコイルへの通電電流を検出し、測定部45に入力する。また、測定部45には、ばね操作器15内のストロークを測定(主軸14の角変位を回転ポテンションメータで測定するか、或いは遮断ばね17のリンク17A又はばね受け17Bの直線変位をリニアモータポテンションメータなどで測定)するストロークセンサ49や開路用電磁石26内の遮断用電磁石コイル電流センサ50、閉路用電磁石27内の投入用電磁石コイル電流センサ51、補助開閉器43からの補助接点出力52などが接続される。測定部45に入力されたセンサの情報は、診断部46に引き渡される。
まず、ギア列56の異常摩耗以外の判定事例について説明する。即ち、ギア列56の異常摩耗以外の判定は、開閉指令が入力されるタイミングを、開路用電磁石26及び閉路用電磁石27のコイル電流の立ち上がりから算出し、前述したストロークセンサ49或いは補助開閉器43などの情報(ばね操作器15内のストロークや補助開閉器43からの電圧出力)により、開極或いは閉極までの動作時間を診断部46で算出して蓄積する。ガス遮断器1の操作回数の増加に伴い、開極時間の変化が微少であるにも関わらず閉極時間が単調増加する傾向が現れた場合には、判定部47が投入動作のみに関連する投入ばね18或いは投入カム23など投入ばね18の周りに異常有りと判定し、この判定結果を外部に出力する。
次に、投入ばね圧縮機構のギア列56の異常摩耗の判定事例について説明する。即ち、投入ばね圧縮機構のギア列56の異常摩耗の判定は、診断部46において、モータ31の電流測定波形40から最大電流値を算出する際に、インラッシュ電流及び通電切断時のサージ電流の影響を排除するため、電流測定値に対して移動平均処理を行う。図6には、モータの電流測定波形40と移動平均後の電流波形53を示しており、これからモータ電流の最大値Imaxを算出し、データを蓄積する。移動平均処理に関しては、モータ電流を、例えば、100Hzのサンプリングレートで収録した際には、100点程度で行うとよい。
診断部46に蓄積されたガス遮断器1の操作回数Nとモータ電流の最大値Imaxとの関係を模式的に図9に示す。本実施例においては、以下に示す3ケースを想定した。
ケース1は、ガス遮断器1の運転開始から操作回数が200〜300回程度までモータ電流の最大値Imaxが単調増加して閾値を越える場合である。これは、ばね操作器15の組立調整ミスなどでギアが片当りするなど噛み合いが悪い場合に相当する。
ケース2は、操作回数が約200〜300回までモータ電流の最大値Imaxが増加するが閾値以下であり、その後はモータ電流の最大値Imaxが減少、増加を繰り返しながら閾値を越える場合である。例えば、ばね操作器15のギアの組立状態は良好であるが、運転開始から操作回数が300回程度までは初期摩耗があり、その後は馴染み、更に多数回操作でギア歯面の潤滑が不足して摩耗が進展する場合に相当する。
つまり、ギア歯面に固体潤滑被膜を焼成させて、ギアを固体潤滑被膜同士摺動状態としてもギア歯先での局所的な過大接触応力により固体潤滑被膜が徐々に剥離していき、数千回の操作後に金属素地が出現する事象が想定される。金属素地同士の摺動では摩擦係数が大きく、摩耗が急速に進展することから、モータ電流の最大値Imaxが増減を繰り返す不安定な状況になり、ついには閾値を越えると考えられる。
ケース3は、操作回数が約200〜300回までモータ電流の最大値Imaxが緩やかに増加し、その後はモータ電流の最大値Imaxがほぼ一定値をとる場合である。この場合には、ギアの初期摩耗があるが、その後は多数回操作を行っても混合潤滑状態が保たれる場合、例えば、固体潤滑被膜の剥離が歯先の極めて限定された範囲だけに留まる場合が想定される。
操作回数の増加に伴うモータ電流の最大値Imaxの勾配が正で、モータ電流の最大値Imaxが閾値を越えた場合、ギア列56の摩耗が進展したと判定部47が決定し、ギア列56の点検警告を外部に出力する。
以上に述べたギア列56の摩耗進展のケース1−3について、判定のフローを示すと図10のようになる。
本実施例によれば、操作毎のモータ電流を測定すると共に、移動平均の最大電流値の履歴を蓄積し、操作回数に対する最大電流値の勾配及び閾値にてギア列56の異常摩耗を判定することができるので、ギア列56のメンテナンス時期を把握することができると共に、ガス遮断器1の信頼性を向上できる。また、ストロークセンサ49などを用いて操作毎の開閉極時間を算出するので、投入ばね圧縮機構のギア列56での異常と、投入ばね18周りの機構系の異常を区別することができる。
従って、投入ばね圧縮機構を有するものであっても、ギア列56の摩耗進展を検出して適切な交換時期を把握することができるので、より信頼性の高いガス遮断器1を得ることができる。