以下に、本発明の実施の形態にかかる集中電圧制御装置および集中電圧制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、本発明にかかる実施の形態の配電系統電圧制御システムの構成の一例を示した図である。図1において、電圧制御機器1は例えば変電所に設置された配電用変圧器としてのLRTである。電圧制御機器1にはローカル電圧制御装置11が接続されており、ローカル電圧制御装置11は電圧制御機器1を制御する。電圧制御装置であるローカル電圧制御装置11は、例えば電圧制御機器1と一体的にまたは併設することができる。ローカル電圧制御装置11は、電圧制御機器1の制御量を調整することにより、具体的にはタップ位置を調整することにより、電圧制御機器1を制御する。また、ローカル電圧制御装置11は、通信機能を有し、通信ネットワーク7に接続されている。
電圧制御機器1の二次側には母線2が接続されている。母線2には2本の配電線4−1,4−2が並列に接続されている。配電線4−1,4−2は、高圧系統の配電線である。図1では、2本の配電線4−1,4−2が接続される例を示したが、母線2に接続される配電線の数は、2本に限定されず、何本でもよい。
配電線4−1は、一端が遮断器3−1を介して母線2に接続されている。配電線4−1上の複数箇所には、配電線4−1の電圧および潮流を計測する電圧潮流計測装置10がそれぞれ設置されている。なお、図1では、配電線4−1に電圧潮流計測装置10が複数設置される例を示しているが、電圧潮流計測装置10は1つであってもよい。電圧潮流計測装置10は、配電線4−1に接続され、接続箇所における電圧および潮流を計測する。電圧潮流計測装置10は通信機能を有し、通信ネットワーク7に接続されている。電圧潮流計測装置10は、計測により得られた計測値を計測情報として、通信ネットワーク7を介して例えば定期的に集中電圧制御装置8に送信する。集中電圧制御装置8は、対象とする系統範囲について目標とする電圧分布および目標となる電圧分布になる各電圧制御機器の動作状態を決め、各電圧制御機器に指令値を与える。なお、集中電圧制御装置8は、対象とする系統範囲を所管する営業所または制御所などに設置することができる。
また、配電線4−1上には、電圧降下補償用のSVRである電圧制御機器5が接続されている。この電圧制御機器5には、電圧制御機器5を制御するローカル電圧制御装置15が接続されている。ローカル電圧制御装置15は、例えば電圧制御機器5と一体的にまたは併設することができる。ローカル電圧制御装置15は、電圧制御機器5の制御量を調整することにより、具体的にはタップ位置を調整することにより、電圧制御機器5を制御する。また、ローカル電圧制御装置15は、通信機能を有し、通信ネットワーク7に接続されている。
また、配電線4−1上には、静止型無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)である電圧制御機器6が接続されている。この電圧制御機器6には、電圧制御機器6を制御するローカル電圧制御装置16が接続されている。ローカル電圧制御装置16は、例えば電圧制御機器6と一体的にまたは併設することができる。ローカル電圧制御装置16は、電圧制御機器6の制御量を調整することにより、具体的には無効電力出力を調整することにより、電圧制御機器6を制御する。また、ローカル電圧制御装置16は、通信機能を有し、通信ネットワーク7に接続されている。
配電線4−2は、一端が遮断器3−2を介して母線2に接続されている。配電線4−2上の複数個所には、配電線4−1と同様に、配電線4−2の電圧および潮流を計測する電圧潮流計測装置10がそれぞれ設置されている。
配電線4−1,4−2は高圧系統の配電線であり、配電線4−1,4−2にはそれぞれ柱上変圧器などの変圧器を介して低圧系統を構成する低圧配電線が接続されている。低圧配電線には負荷9が接続される。図1では、変圧器の図示を省略している。さらに太陽光発電装置などである発電機17が接続される。なお、図1では、負荷9および発電機17のうちの一部を図示しており、配電線4−1,4−2に接続される負荷9および発電機17の数はいくつであってもよい。また、負荷9および発電機17以外に、低圧配電線に蓄電池などが接続されていてもよい。ただし、本実施の形態は、低圧系統に分散型電源が含まれていない場合でも適用することができる。なお、以下では、分散型電源として例えば太陽光発電装置を例に説明する。また、配電系統の電圧制御とは、高圧系統の電圧制御を意味する。この配電系統は、電圧制御機器1,5,6、ローカル電圧制御装置11,15,16、母線2、遮断器3−1,3−2、配電線4−1,4−2、および電圧潮流計測装置10を備えて構成される。
なお、電圧制御機器の設置台数は、図1で図示した例に限定されない。また、電圧制御機器は、図1に例示したLRT,SVR,SVC等の他、例えば、ShR分路リアクトル(Shunt Reactor:ShR)、無効電力調整機能付のPCS(Power Conditioning System:パワーコンディショナ)などを構成に応じて設けることができる。また、図1では、集中電圧制御装置8により制御される電圧制御機器を図示しているが、これらの電圧制御機器以外に、集中電圧制御装置8により制御されない電圧制御機器が配電線4−1,4−2に接続されていてもよい。また、図1の例では、集中電圧制御装置8により制御されない電圧制御機器としてLRT,SVR,SVCの3種類を図示しているが、これらの3種類全てが集中電圧制御装置8により制御されていなくてもよく、LRT,SVR,SVCのうちの少なくとも1つが集中電圧制御装置8により制御されていればよい。
集中電圧制御装置8は、通信ネットワーク7を介して、ローカル電圧制御装置11,15,16および電圧潮流計測装置10とそれぞれ接続されている。通信ネットワーク7は、例えば専用のネットワークであり、配電系統を監視制御することを目的として配設されている。集中電圧制御装置8は、電圧潮流計測装置10から送信された計測情報に基づき、各ローカル電圧制御装置が制御する目標となる指令値を第1の周期である集中制御周期で決定し、通信ネットワーク7を介して各ローカル電圧制御装置に対してそれぞれ個別に指令する。集中制御周期は、例えば1時間周期とすることができる。集中電圧制御装置8は、電圧制御機器を制御するローカル電圧制御装置に対して、指令値として電圧範囲を規定する電圧上限値および電圧下限値(以下、電圧上下限値ともいう。)を指令する。
変圧器型の電圧制御機器を制御する各ローカル電圧制御装置は、集中電圧制御装置8からの電圧上下限値の指令、すなわち電圧上下限値指令に基づき、当該電圧上下限値の間に電圧を維持するように制御対象である電圧制御機器を制御する。各ローカル電圧制御装置は、集中電圧制御装置8からの電圧上下限値の指令を受けるごとに、電圧上限値および電圧下限値を更新し設定する。例えば、ローカル電圧制御装置11は、集中電圧制御装置8から指令された電圧上下限値に基づき、当該電圧上下限値が適用される集中制御周期の期間内においては、電圧制御機器1の二次側の電圧が当該電圧上下限値の間内に収まるように電圧制御機器1の制御量すなわちタップ位置の変更量を集中制御周期よりも短い第2の周期であるローカル制御周期で調整する。なお、本実施の形態では、集中電圧制御装置8が変圧器型の電圧制御機器を制御する各ローカル電圧制御装置へ電圧上下限値を指令する例を説明するが、制御目標値および不感帯を指令してもよい。また、集中電圧制御装置8が変圧器型の電圧制御機器を制御する各ローカル電圧制御装置へタップ位置を指令してもよい。
また、変圧器型の電圧制御機器がローカル電圧制御装置によりLDC制御により制御されてもよい。LDC制御とは、電圧制御機器で計測した電圧/電流情報を元に、電流が大きいほど配電線末端の電圧が下がるという推定に基づいて、負荷側の全地点の電圧を適正範囲内に収めるための妥当な負荷側電圧を算出するものである。集中電圧制御装置8は、LDC制御をローカル電圧制御装置に対しては、LDC制御に用いるためのパラメータ、例えば制御の目標値と不感帯とを指示するようにしてもよい。
無効電力調整型の電圧制御機器を制御する各ローカル電圧制御装置は、集中電圧制御装置8から指令された電圧上下限値に基づいて、電圧が電圧上下限値に収まるように電圧制御機器が出力する無効電力を決定し無効電力調整型の電圧制御機器へ指示する。無効電力調整型の電圧制御機器は、ローカル電圧制御装置から指示された無効電力を発生させるとともに、例えば数秒から数十秒周期の短周期の電圧変動を除去するように動作する。または、集中電圧制御装置8が、無効電力調整型の電圧制御機器の制御目標となる無効電力を決定し、この無効電力を無効電力調整型の電圧制御機器へ指令してもよい。
集中電圧制御装置8は上述したように、高圧系統の配電線に接続され当該配電線の電圧を制御する電圧制御機器を制御するローカル制御装置へ制御目標値を指令する。以下の例では、この制御目標値は電圧上下限値であるとして説明するが、制御目標値は電圧上下限値に限定されず、ローカル制御装置における制御の目標を決定する情報であればよい。図2は、集中電圧制御装置8の内部構成の一例を示した図である。図2に示すように、集中電圧制御装置8は、制御部20と、制御部20に接続された記憶部27と、制御部20、記憶部27、および通信ネットワーク7に接続されて各ローカル電圧制御装置と通信する送受信部30と、表示部28と、入力部29とを備えている。
制御部20は、負荷発電量予測部21、負荷発電量予測値補正部22、適正電圧範囲更新部23、最適電圧分布決定部24、電圧上下限値決定部25および表示制御部26を備えている。負荷発電量予測部21は、翌日などの将来の配電系統の負荷/発電量分布を例えば集中制御周期ごとに予測する。負荷/発電量とは、純粋な負荷量から発電量を際し引いた量に相当する。負荷/発電量が正の値の場合に負荷量であり、負の値の場合に発電量となる。なお、負荷/発電量分布を予測する方法の一例を後述するが、負荷/発電量分布の予測方法としてはどのような方法を用いてもよい。負荷発電量予測値補正部22は、集中制御周期の期間内における負荷/発電量分布の予測値を、その直前の集中制御周期の期間内における負荷/発電量分布の実績値と当該期間内における予測値との比較結果に基づいて補正する。ここで、負荷/発電量分布の実績値は、計測情報に基づいて算出される。
適正電圧範囲更新部23は、後述する区間ごとに、適正電圧範囲を更新する。適正電圧範囲更新部23は、例えば、入力部29が適正電圧範囲の更新後の値の入力を受け付けた場合、この情報に基づいて適正電圧範囲を更新する。適正電圧範囲は、高圧系統の区間ごとに設定される集中電圧制御における高圧系統の電圧の制御範囲である。また、以下、本実施の形態では高圧系統の電圧の制御範囲を低圧換算した値を適正電圧範囲と呼び、高圧系統の電圧の制御範囲そのもの、すなわち適正電圧範囲を高圧換算した範囲を高圧適正電圧範囲と呼ぶ。言い換えると、適正電圧範囲は、高圧適正電圧範囲をあらかじめ定められた比に基づいて低圧系統の電圧範囲に換算した値である。なお、低圧換算とは、後述するように、6600Vを105Vに置き換える換算である。適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲を変更した場合、変更した適正電圧範囲に対応させて高圧適正電圧範囲も変更する。すなわち、適正電圧範囲更新部23は、区間を単位として高圧適正電圧範囲を更新する。したがって、入力部29が受け付けた適正電圧範囲の更新後の値は、高圧適正電圧範囲の更新後の値を示す情報である。なお、適正電圧範囲の詳細は後述する。適正電圧範囲の初期値は、需要家端の電圧が定められた範囲に維持されるように定められる。以下の説明では、需要家端の電圧を95〜107Vに維持する場合を例に説明する。例えば、適正電圧範囲の初期値は、低圧系統における電圧降下を8Vと見積もり、95〜107Vの範囲から低い方から8V分を除いた範囲、すなわち103〜107Vと定めておく。適正電圧範囲の初期値は、記憶部27にあらかじめ格納されている。
適正電圧範囲の初期値は、配電線4−1,4−2内で一律に設定されてもよいし、区間ごとに異なっていてもよい。適正電圧範囲の初期値の設定方法については後述する。
最適電圧分布決定部24は、補正された負荷/発電量分布の予測値に基づいて潮流計算を行うとともに、無効電力調整型の電圧制御機器の指令可能範囲を考慮して、配電系統の電圧分布を評価する評価関数の値を最良にする最良解を探索することにより、当該集中制御周期の期間内の最適電圧分布および各電圧制御機器の最適制御量を決定する。なお、最適電圧分布とは、制約条件を満たしかつ評価関数が最適となる系統各点での電圧分布である。最適制御量とは、最適電圧分布が実現されるように各電圧制御機器に指令される制御量である。
電圧上下限値決定部25は、決定された最適電圧分布に基づき、当該集中制御周期の期間内における各ローカル電圧制御装置の制御目標電圧範囲の上限および下限である電圧上下限値を決定し、通信ネットワーク7を介してこれを各ローカル電圧制御装置に指令する。なお、電圧上下限値決定部25による電圧上下限値を決定する処理の詳細については後述するが、概略は次の通りである。
まず、電圧上下限値決定部25は、ローカル電圧制御装置ごとに予め割り当てられた電圧制御責任範囲に関する情報を記憶部27から取得する。ここで、電圧制御責任範囲は、配電線4−1または4−2上の範囲または区間であって、当該範囲内における電圧の制御について、当該範囲を割り当てられたローカル電圧制御装置またはこれに接続された電圧制御機器がその責任を負う範囲である。
無効電力調整型の電圧制御機器は、当該電圧制御機器の電源側、すなわち配電用変圧器がある側である上流側に変圧器型の電圧制御機器が存在する場合には、この変圧器型の電圧制御機器の変圧器の負荷側すなわち下流側までの範囲、および、当該電圧制御機器の負荷側の範囲を電圧制御責任範囲とし、負荷側にさらに別の電圧制御機器が存在する場合は、当該別の電圧制御機器の電源側までを電圧制御責任範囲に含める。変圧器型の電圧制御機器は、例えば当該変圧器の負荷側を電圧制御責任範囲とするが、負荷側に別の電圧制御機器が存在する場合は、当該別の電圧制御機器の電源側までをその電圧制御責任範囲とする。なお、電圧制御責任範囲の設定方法は上記の例に限定されない。
また、上述したように、区間ごとに高圧適正電圧範囲が予め設定されている。電圧制御機器の最適電圧は、その電圧制御責任範囲の区間に設定された高圧適正電圧範囲内に入るように求められる。最適電圧と適正電圧の下限値との差分を電圧下限余裕量と呼び、適正電圧の上限値と最適電圧との差分を電圧上限余裕量と呼ぶ。
電圧上下限値決定部25は、最適電圧分布決定部24で求めた最適電圧と不感帯幅に基づいて電圧上下限値を決定する。最適電圧に不感帯幅の半分を加えたものを電圧上限値とし、最適電圧から不感帯幅の半分を引いたものを電圧下限値とする。
以上述べたように、最適電圧分布決定部24および電圧上下限値決定部25は、配電線の区間ごとに定められた高圧適正電圧範囲内に該区間の電圧を維持するよう制御目標値を決定する制御指令決定部である。
なお、上述した通り、電圧上下限値を指令する替わりに、求めた最適電圧を制御目標値として指令するようにしてもよいし、制御目標値および不感帯を指定するようにしてもよい。この場合には、集中電圧制御装置8は、電圧上下限値決定部25を備えなくてもよく、最適電圧分布決定部24が、制御目標値、または制御目標値および不感帯を、送受信部30を介してローカル電圧制御装置へ指令する。
表示制御部26は、表示部28に表示するための画像データを生成するための情報を記憶部27から読み出し、読み出した情報に基づいて画像データを生成して表示部28へ出力する。また、表示制御部26は、入力部29が受け付けた入力と記憶部27に記憶されている、画像データを生成するための情報とに基づいて、表示部28に表示する画像データを生成して表示部28へ出力する。なお、記憶部27に格納されている画像データを生成するための情報は、配電線を地理的に投影した図である配電系統図を生成するための配電線の位置情報、後述する区間ごとの適正電圧範囲の上下限値および適正電圧範囲の中間値などを含む。
送受信部30は、通信ネットワーク7を介して各ローカル電圧制御装置と通信を行う通信部である。送受信部30は、電圧上下限値決定部25から電圧上下限値を受け取ると、対応するローカル電圧制御装置へ該電圧上下限値を送信する。また、送受信部30は、通信ネットワーク7を介して電圧潮流計測装置10から計測情報を受信し、受信した計測情報を記憶部27に格納する。
表示部28は、表示制御部26から入力された画像データに基づいて、配電系統を地理的な位置に対応して表示したものである配電系統図、適正電圧範囲の上下限値を地理的な位置に対応して表示したもの、などを画面に表示する。
入力部29は、操作者により入力を受け付け、入力により指示された情報を制御部20へ渡す。入力部29は、後述するように、例えば、表示部28に表示する画面、すなわち画像を切替える指示、適正電圧範囲の変更指示を受け付ける。また、入力部29は、区間ごとに、適正電圧範囲の更新後の値、すなわち高圧適正電圧範囲の更新後の値を示す情報の入力を受け付ける。
集中電圧制御装置8は、具体的には、例えば計算機システム(コンピュータ)である。この計算機システム上で集中電圧制御プログラムが実行されることにより、計算機システムが集中電圧制御装置8として機能する。図3は、本実施の形態の集中電圧制御装置8として機能する計算機システムの構成例を示す図である。図3に示すように、この計算機システムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105とを備え、これらはシステムバス106を介して接続されている。
図3において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、本実施の形態の集中電圧制御プログラムを実行する。入力部102は、キーボード、マウス、タッチパネルなどで構成され、計算機システムのユーザーが、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム,処理の過程で得られた必要なデータ,などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、計算機システムのユーザーに対して各種画面を表示する。通信部105は、通信ネットワーク7との接続の機能を有し、通信ネットワーク7を介して、電圧潮流計測装置10との間の送受信処理を実施する。なお、図3は、一例であり、計算機システムの構成は図3の例に限定されない。
ここで、本実施の形態の集中電圧制御プログラムが実行可能な状態になるまでの計算機システムの動作例について説明する。上述した構成をとる計算機システムには、例えば、CD(Compact Disc)−ROM/DVD(Digital Versatile Disc)−ROMドライブ(図示せず)にセットされたCD−ROM/DVD−ROMから、集中電圧制御プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、集中電圧制御プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された集中電圧制御プログラムが記憶部103の所定の場所に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の集中電圧制御処理を実行する。
なお、本実施例においては、CD−ROM/DVD−ROMを記録媒体として、集中電圧制御処理を記述したプログラムすなわち集中電圧制御プログラムを提供しているが、これに限らず、計算機システムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、例えば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
図2に示した制御部20は、図3に示した制御部101に相当する。図2に示した負荷発電量予測部21、負荷発電量予測値補正部22、適正電圧範囲更新部23、最適電圧分布決定部24、電圧上下限値決定部25および表示制御部26は、図3に示した制御部101に含まれる。図2の記憶部27は、図3に示した記憶部103の一部である。図2に示した通信部26は、図3に示した送受信部105に相当する。図2に示した入力部29は、図3に示した入力部102に相当し、図2に示した出力部28は、図3に示した表示部104に相当する。
次に、本実施の形態の適正電圧範囲の設定方法について説明する。配電線4−1,4−2は変圧器を介して低圧系統が接続され、低圧系統には負荷9、発電機17などが接続される。上述した通り、電気事業者は、低圧系統内の需要家端の電圧を、定められた電圧範囲に維持するよう義務づけられている。図4は、低圧系統の負荷および発電機の接続例を示す図である。図5は、本実施の形態の適正電圧範囲を説明するための図である。図4では、左側の需要家では、柱上変圧器などである変圧器18を介して負荷9が接続され、右側の需要家では変圧器18を介して発電機17が接続されている。なお、図4では、1つの変圧器18に接続される負荷9または発電機17は1つであるが、1つの変圧器18に接続される負荷9または発電機17の数は1つに限定されない。また、1つの変圧器18に負荷9および発電機17が接続されていてもよい。
図4に示すように、需要家端の電圧をVLとし、この需要家端に対応する高圧系統の電圧をVHとする。図5の右図は、VLの電圧範囲を示し、図5の左図は、VLの電圧範囲に対応するVHの電圧範囲を示し、図5の中央図は、低圧換算したVHの電圧範囲を示している。ここで、低圧換算とは、6600Vを105Vに置き換える換算であり、具体的には、高圧系統の電圧に105/6600を乗算することである。ここで、需要家端の電圧VLに対して定められた電圧範囲は、図5に示すように95〜107Vであるとする。図5に示すように95〜107Vを高圧換算した範囲が、図5の左図に示す電圧範囲200となる。高圧換算は、上述した低圧換算と逆の処理である。図5の中央図に示す電圧範囲201は、電圧範囲200を低圧換算した値である。
一般に、集中電圧制御では、入力として高圧系統の各点の電圧を維持する範囲すなわち適正電圧範囲を定めておく。この適正電圧範囲は、高圧系統の電圧に対する範囲であるが、本実施の形態では、この適正電圧範囲を、低圧換算した値で表示するとともに、適正電圧範囲を、操作者から低圧換算した値で入力を受け付けるように構成する。これは、上述したように、操作者が低圧系統内での電圧降下または電圧上昇を考慮して適正電圧範囲を変更する際に、適正電圧範囲が低圧換算した値であった方が、電圧降下または電圧上昇を反映しやすいためである。
図5の説明に戻り、図5の中央図に示す電圧範囲201は、95〜107Vとなるが、電圧範囲201を適正電圧範囲として設定して集中電圧制御を実施すると、低圧系統における電圧降下および電圧上昇が考慮されないことになる。このため、例えば、図5に示したように、電圧範囲201から第1の範囲202を除いた第2の範囲203を適正電圧範囲の初期値として設定する。図5の例では、第1の範囲202として、低圧系統における電圧降下の分を設定した例を示しており、第1の範囲202は、電圧降下側に設けられる。例えば、低圧系統における電圧降下の分を8Vとすると、第1の範囲202は8Vである。図5の中央図のVmaxは適正電圧範囲の上限値を示し、Vminは、適正電圧範囲の下限値を示す。図5の左図のVHmaxはVmaxの高圧換算値であり、VHminはVminの高圧換算値である。集中電圧制御装置8は、設定された適正電圧範囲を高圧換算して、集中電圧制御の各点に設定する適正電圧範囲として用いる。高圧換算された適正電圧範囲を、以降、適宜高圧適正電圧範囲とよぶ。
図5に示した例では、低圧系統における電圧降下を考慮したが、実際には、図4に示すように、発電機17が低圧系統に接続されている場合もある。また、このような場合に、図5の第2の範囲203として示したように、電圧の高い側に偏って適正電圧範囲を設定していると、集中電圧制御により電圧が高めに制御される。このため、発電機17の発電量によっては、接続される需要家の受電端では107Vを超えることも考えられる。また、実際には第2の範囲203より広い範囲を制約条件として集中電圧制御を行ってもよい状況にもかかわらず、第2の範囲203が狭すぎるために、集中電圧制御において最適解が求められない、すなわち電圧が高圧適正電圧範囲から逸脱する箇所が生じるといった事態が発生することも考えられる。
このため、本実施の形態では、適正電圧範囲を変更可能なように構成する。具体的には、適正電圧範囲の初期値を記憶部27にあらかじめ記憶させておき、初期状態では適正電圧範囲を記憶部27に記憶されている初期値に設定する。その後、操作者の入力に応じてまたは変更の契機となる条件を満たした場合に自動的に、適正電圧範囲を変更する。適正電圧範囲の初期値としては、例えば、上述したように、電圧降下を考慮した値を設定しておく。適正電圧範囲の初期値は、配電線4−1,4−2内で一律の値を設定してもよいし、一律でなくてもよい。例えば、柱上変圧器などの変圧器に設定されるタップ位置に応じて適正電圧範囲の初期値を定めておいてもよい。配電系統の電圧は、配電系統に接続された負荷9により下流にいくに従って降下するため、変圧器のタップ位置は、この電圧降下を考慮して設定されることがある。例えば、最上流に位置する変圧器は、6600Vを105Vに変換するようにタップ位置が設定されているとする。下流では、高圧系統の電圧が降下するため、例えば6600Vを107Vに変換するようタップ位置が設定される。このように、標準的な負荷を考慮して電圧降下を見積もり、見積もった電圧降下に応じて変圧器にタップ位置をあらかじめ設定しておく。例えば、タップ位置が6600Vを105Vに変換するように設定されている場合は、適正電圧範囲の初期値を103〜107Vに設定し、タップ位置が6600Vを105Vに変換するように設定されている場合は、適正電圧範囲の初期値を99〜107Vに設定しておく。
適正電圧範囲の変更は、配電線内の区間の単位であってもよく、配電線単位であってもよい。図6は、適正電圧範囲の変更する単位である区間の一例を示す図である。図6は、配電線4−1内の区間ごとに適正電圧範囲を変更な例を示しており、図6の例では区間A1〜A5の適正電圧範囲を個別に変更可能である。区間A1〜A5は、柱上変圧器単位であってもよいし、変電所単位であってもよい。柱上変圧器単位とは、例えば柱上変圧器から次の柱上変圧器までの範囲であってもよいし、各柱上変圧器を中間の位置となるように定められた区間であってもよい。
また、適正電圧範囲の変更方法の例としては、以下が挙げられる。
(ア)操作者からの入力により適正電圧範囲を変更する。
(イ)太陽光発電設備の発電量の予測値に基づいて適正電圧範囲を変更する。
(ウ)時間帯により適正電圧範囲を変更する。
(エ)電圧違反が生じた区間のまたは電圧違反が生じると予測される区間の適正電圧範囲を変更する。
上記(ア)から(エ)の例のうち、まず(ア)の方法の具体例について説明する。本実施の形態の集中電圧制御装置8は、表示部28に配電系統図を表示可能である。図7は、表示部28に表示された配電系統図の一例を示す模式図である。図7には、各配電線の位置が地理的に表示されている。図7の白抜きの四角は、制御所、すなわち集中電圧制御装置8が設置されている場所を示す。図7の左下の適正電圧上下限値表示と記載された矩形は、マウスまたはキーボードなどにより押下可能なボタンを示している。操作者がこのボタンを押下すると、入力部29は、適正電圧上下限値を表示する要求が入力されたことを検知し、適正電圧上下限値を表示する要求を受け付ける。入力部29は、適正電圧上下限値を表示する要求を受け付けると、表示制御部26に適正電圧上下限値を表示する要求を受け付けたことを通知する。
表示制御部26は、入力部29から適正電圧上下限値を表示する要求を受け付けたことを通知されると、電圧上下限値をどのような形式で表示するかの選択を促す画面に対応する画像データを生成して表示部28へ出力する。表示部28は、入力された画像データに基づいて電圧上下限値をどのような形式で表示するかの選択を促す画面を表示する。図8は、電圧上下限値をどのような形式で表示するかの選択を促す画面の一例を示す図である。図8の例では、図7の左下部分を拡大して示しており、適正電圧上下限値表示と記載されたボタンを押下すると右側の上限値表示、中間値表示および下限値表示と記載された矩形を表示する。これらの矩形は、押下されることにより該当する要求が入力されたことを示すボタンである。なお、適正電圧範囲の中間値とは、適正電圧範囲の上限値と下限値との平均値となる値である。
例えば、図8に示した上限値表示のボタンが押下されると、入力部29は上限値、すなわち適正電圧範囲の上限値を表示することが要求されたことを検知し、上限値を表示する要求を受け付ける。入力部29は、適正電圧範囲の上限値を表示する要求を受け付けると、表示制御部26に適正電圧範囲の上限値を表示する要求を受け付けたことを通知する。表示制御部26は、入力部29から適正電圧範囲の上限値を表示する要求を受け付けたことを通知されると、適正電圧範囲の上限値を表示するための画像データを生成して表示部28へ出力する。表示部28は、入力された画像データに基づいて適正電圧範囲の上限値を表示する。中間値表示または下限値表示のボタンの押下により、中間値表示または下限値表示の表示が要求された場合も、同様の手順により、適正電圧範囲の中間値または適正電圧範囲の下限値が表示部28により表示される。なお、区間ごとの適正電圧範囲の中間値、上限値および下限値は、記憶部27に適正電圧範囲の現在の中間値、上限値および下限値として記憶されている。上述した通り、適正電圧範囲の初期値も記憶部27に記憶されているが、初期値とは別に適正電圧範囲の現在の中間値、上限値および下限値も記憶部27に記憶される。適正電圧範囲の現在の中間値、上限値および下限値は、初期状態では、適正電圧範囲の初期値に対応した値が格納される。適正電圧範囲が変更された場合には、記憶部27に記憶されている適正電圧範囲の現在の中間値、上限値および下限値も更新される。なお、図8は、電圧上下限値をどのような形式で表示するかの選択を促す画面の一例であり、実際の画面は図8の例に限定されず、電圧上下限値をどのような形式で表示するかの選択の受付方法も上述した方法に限定されない。
図9は、適正電圧範囲の中間値の表示画面の一例を示す図である。図9は、図7に示した配電系統図において、各配電線の区間ごとに設定されている適正電圧の中間値を表示したものである。図9では、実線、破線、一点鎖線といった線種により、適正電圧の中間値を示しているが、実際には、表示部28は、色分けにより適正電圧の上限値を示す。例えば、表示される画面では、実際には、破線は赤であり、実線は黄色であり、一点鎖線は青である。例えば、配電線の色が赤、黄色、青の順に、それぞれ適正電圧の中間値が、それぞれ第1の値、第2の値、第3の値であることを示す。なお、第1の値>第2の値>第3の値である。図9の例では、このように、3つの中間値の値を色分けにより表示した例を示している。適正電圧範囲の上限値、下限値についても同様に色分けにより表示することができる。また、適正電圧範囲が初期値の状態を黄色で表示し、初期値より高く設定されている区間を赤で表示し、初期値より低く設定された区間を青で表示するようにしてもよい。なお、適正電圧範囲の上下限値および中間値の色分けの方法は上述の例に限定されない。例えば、4種類以上の値を色分けにより表示できるようにしてもよい。また、色分けの替わりに、異なる線種を用いる、線の太さを異ならせるなどにより適正電圧範囲の上下限値を表示してもよい。また、適正電圧範囲の上下限値の値自体を配電線の各区間に対応する箇所に表示するようにしてもよい。
図10は、図9の表示例において設定されている適正電圧範囲の上下限値および中間値の一例を示す図である。図10は、図9に示した位置310,311,312に対応する適正電圧範囲の上下限値および中間値を示している。また、図9に示した画面において、入力部29の一部であるマウスにより、位置310がクリックされると図10の310の下に示した適正電圧範囲の上下限値および中間値を示す図が表示されるようにしてもよい。同様に、位置311,312がクリックされると図10の位置311,312の下に示した適正電圧範囲の上下限値および中間値を示す図がそれぞれ表示されるようにしてもよい。以上のように、表示部28は、区間ごとに適正電圧範囲の値に応じて色付けされた配電線を示す画像を表示する。
また、上述したようにタップ位置の初期値が柱上変圧器ごとに異なる場合、タップ位置の初期値に対応して適正電圧範囲の上下限値が設定されることがある。この場合、初期状態において、区間により適正電圧範囲の上下限値が異なることになる。したがって、初期状態からの変更を認識可能なように、初期状態に設定されている区間は適正電圧範囲の上下限値の実際の値によらず、同一色で表示するようにしてもよい。例えば、適正電圧範囲の中間値を表示する場合、初期値に設定されている区間は黄色で表示し、中間値が初期値より高い値に設定されている区間は赤で表示し、中間値が初期値より低い値に設定されている区間は青で表示する。
上述したように、適正電圧範囲の上下限値または中間値を色分けにより表示し、また、画面をクリックすることで、各区間に設定されている適正電圧範囲の上下限値または中間値を表示することで、操作者は設定されている適正電圧範囲を視認しやすくなる。また、同様に、図9に示した位置310,311,312がクリックまたは押下されることで、適正電圧範囲を変更する画面に遷移するようにしてもよい。具体的には、表示制御部26が、入力部29から図9に示した位置310がクリックされたことを通知されると、位置310に対応する図10の画面を表示する。そして、表示制御部26は、図10の画面において、上限値を示す値である107Vの107を編集可能な画面となるよう表示部28へ指示する。そして、107の値が入力部29の一部であるキーボードなどにより変更されると、入力部29が、変更された値を受け付け、受け付けた値を、対応する区間を示す情報とともに適正電圧範囲更新部23へ通知する。適正電圧範囲更新部23は、記憶部27に格納されている適正電圧範囲のうち通知された区間の現在の上下限値を、変更された値に更新する。適正電圧範囲更新部23は、変更された値に基づいて中間値を算出し、記憶部27に格納されている適正電圧範囲の現在の中間値を更新する。適正電圧範囲更新部23は、変更後の適正電圧範囲の現在の上下限値を高圧換算し、該当する区間の高圧適正電圧範囲を前述の高圧換算した値、すなわち変更された適正電圧範囲に対応する値に変更する。
また、位置310,311,312をクリックまたは押下すると、図11に示した画面を表示することにより、適正電圧範囲の上限値および下限値の入力を受け付けてもよい。図11は、適正電圧範囲の上限値および下限値の入力を受け付ける画面の一例を示す図である。図11の下線で示した部分は数字を入力可能なエリアであり、入力部29の一部であるキーボードなどによりこの部分に数字が入力されると、入力部29は入力された数字を、対応する区間を示す情報とともに適正電圧範囲更新部23へ通知する。適正電圧範囲更新部23の処理は上記の例と同様である。
また、図9の左下部に示したように、配電系統図表示と記載されたボタンを設け、配電系統図の表示へ遷移することを選択できるようにしてもよい。
操作者は、適正電圧範囲の上限値および下限値の変更をする際に、例えば、太陽光発電設備の有無、時間帯などを考慮して、電圧上昇が生じることが予測される区間では、適正電圧範囲の上限値を初期値より低い値に設定する。また、電圧上昇が生じることが予測される区間では、適正電圧範囲の下限値も初期値より低い値に設定してもよい。また、操作者は、低圧系統の配電線の長さなどに応じて、低圧系統における電圧降下が、適正電圧範囲の初期値の算出の際に仮定した電圧降下より少ないと予想される場合には、適正電圧範囲の下限値を初期値より低い値に設定することにより適正電圧範囲を広げてもよい。また、集中電圧制御装置8は、太陽光発電設備の設置個所を図9の画面上に表示して、太陽光発電設備の設置個所が操作者により視覚的に把握できるようにしてもよい。
図12は、本実施の形態の集中電圧制御装置8における集中電圧制御処理にかかる全体処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲を初期値に設定する(ステップS1)。具体的には、適正電圧範囲更新部23は、記憶部27に格納されている適正電圧範囲の初期値を読み出し、読み出した値を区間ごとに記憶部27に現在の適正電圧範囲の上下限値として格納する。また、適正電圧範囲更新部23は、区間ごとに、現在の適正電圧範囲の上下限値に基づいて中間値を算出し、中間値を現在の適正電圧範囲の中間値として格納する。また、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲の上下限値を高圧換算して高圧適正電圧範囲の上下限値を記憶部27に格納する。
次に、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧上下限値、すなわち適正電圧範囲の上限値および下限値の変更があったか否かを判断する(ステップS2)。ステップS2は、適正電圧範囲の上限値および下限値の少なくとも一方の変更があった場合に、適正電圧上下限値の変更があったと判断する。具体的には、適正電圧範囲更新部23は、入力部29から適正電圧範囲の上下限値の変更を受け付けたことを通知されたか否かに基づいて、適正電圧上下限値の変更があったか否かを判断する。
適正電圧上下限値の変更があった場合(ステップS2 Yes)、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧上下限値を変更する(ステップS3)。具体的には、適正電圧範囲更新部23は、上述したように記憶部27に格納されている適正電圧範囲のうち通知された区間の現在の上下限値を、変更された値に更新する。適正電圧範囲更新部23は、変更された値に基づいて中間値を算出し、記憶部27に格納されている適正電圧範囲の現在の中間値を更新する。また、適正電圧範囲更新部23は、変更後の適正電圧範囲の現在の上下限値を高圧換算し、該当する区間の高圧適正電圧範囲を前述の高圧換算した値、すなわち変更された適正電圧範囲に対応する値に変更する。
そして、負荷発電量予測値補正部22は、電圧上下限値指令の生成処理の処理タイミングであるか否かを判断する(ステップS4)。具体的には、集中電圧制御周期ごとに電圧上下限値指令の生成処理を行う場合、負荷発電量予測値補正部22は、前回電圧上下限値指令の生成処理を行ってから集中制御周期が経過したか否かを判断する。
電圧上下限値指令の生成処理の処理タイミングである場合(ステップS4 Yes)、負荷発電量予測値補正部22、最適電圧分布決定部24および電圧上下限決定部25は、電圧上下限値指令の生成処理を実施し(ステップS5)、ステップS2へ戻る。
ステップS2で、適正電圧上下限値の変更がないと判断した場合(ステップS2 No)、ステップS4へ進む。ステップS4で、電圧上下限値指令の生成処理の処理タイミングでないと判断した場合(ステップS4 No)、ステップS2へ戻る。
図13は、本実施の形態の集中電圧制御処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施の形態では、1日ごとに、将来の配電系統の負荷/発電量分布を予測する。なお、ここでは、1日ごとに、将来の配電系統の負荷/発電量分布を予測する例を示すが、1日ごとの替わりに半日ごとまたは数日ごとなどであってもよく、将来の配電系統の負荷/発電量分布を予測する単位は1日ごとに限定されない。ここでは、1日ごとに将来の配電系統の負荷/発電量分布を予測するとし、図13は、1日分の動作を示している。図13に示すように、負荷発電量予測部21は、記憶部27に保存された配電系統各点の負荷発電量データから、翌日の例えば1時間ごとの配電系統の負荷/発電量分布と短周期変動を予測する(ステップS10)。なお、負荷発電量予測部21は、電圧潮流計測装置10から受信した計測情報に基づいて、隣り合う計測点間で潮流の平均値の差分をとることなどにより、配電系統各点における負荷/発電量を求める。この配電系統各点における負荷/発電量を負荷発電量データとして記憶部27に保存しておくとする。負荷発電量データは、計測情報に基づいて適宜更新される。負荷発電量データは、計測情報に基づいて算出されなくてもよく、例えば、配電線のどの部分にどの設備および負荷が配置されるかを示す設備データ、各負荷に対応する契約電力、太陽光発電設備のパネル容量などに基づいて算出されたモデルに基づいて決定されてもよい。
この際、具体的には、例えば、負荷発電量予測部21は、負荷量と発電量を分離して予測するため、まず、記憶部27に保存されている負荷発電量データのうち快晴時間帯の負荷発電量データのみを使用し、これから理論発電量(太陽光発電定格容量、太陽光パネル設置角、緯度、日時、予想気温、および発電効率から算出)を除いて純粋な負荷量である実績負荷量を算出する。
負荷発電量予測部21は、実績負荷量を例えば複数日分集め、同一曜日(平日/休日区分)、同一時間帯の負荷量と気温との相関を求めておく。この相関は、回帰分析などにより求めた関係式、またはテーブルなどにより保持しておく。そして、負荷発電量予測部21は、この相関と翌日の予想気温から翌日1時間ごとの配電系統各点の負荷量を予測する。また、翌日の発電量については、翌日の天候予測に基づいた理論発電量とし、負荷発電量予測部21は、予測負荷量から予測発電量を差し引いて、翌日1時間ごとの配電系統各点の負荷発電量データを作成する。
次に、負荷発電量予測値補正部22は、将来1時間の配電系統の負荷/発電量の予測値を補正する(ステップS11)。具体的には、負荷発電量予測値補正部22は、過去1時間の配電系統各点の負荷/発電量の平均値について、過去1時間に受信した計測情報に基づいて算出される実績値と予測値とを比較してその比率を求め、この比率を将来1時間の負荷/発電量の予測値に乗ずることにより、将来1時間の系統各点の負荷/発電量の予測値を補正する。これにより、予測値の精度が向上することが期待される。
次に、最適電圧分布決定部24は、ステップS11で作成した将来1時間の配電系統各点の補正後の負荷/発電量の予測値に基づき、将来1時間の配電系統の最適電圧分布を決定する(ステップS12)。なお、この1時間は集中制御周期を示している。この処理の詳細は、図14を用いて後述する。なお、ステップS11の負荷/発電量の予測値を補正する処理を省略し、最適電圧分布決定部24が、ステップS10で作成した翌日の配電系統各点の負荷/発電量の予測値に基づいて、将来1時間の配電系統の最適電圧分布を決定するようにしてもよい。
次に、電圧上下限値決定部25は、配電系統の最適電圧分布に基づき、将来1時間の各ローカル電圧制御装置の電圧上限値および電圧下限値を算出する(ステップS13)。
次に、電圧上下限値決定部25は、電圧制御機器を制御する各ローカル電圧制御装置に対して電圧上限値および電圧下限値を指令し(ステップS14)、ステップS11へ戻る。上述した処理のうち、ステップS11からステップS14の処理が、図12で述べた電圧上下限値指令生成処理に相当する。
次に、図13のステップS12の処理の詳細について説明する。図14は、図13のステップS12の処理の詳細を説明するためのフローチャートであり、将来1時間の配電系統の最適電圧分布を計算するためのフローを表している。
まず、最適電圧分布決定部24は、各電圧制御機器における制御限界(変圧器型の電圧制御機器の場合はタップ上下限)と電圧の短周期変動を考慮した電圧余裕に対する閾値とを設定する(ステップS21)。電圧余裕に対する閾値は任意の値を設定することができる。また、最適電圧分布決定部24は、各点の高圧適正電圧範囲の上下限値を記憶部27から読み出す。
次に、最適電圧分布決定部24は、各電圧制御機器の制御量を初期設定する(ステップS22)。この際、最適電圧分布決定部24は、変圧器型の電圧制御機器の場合はタップ位置を例えば1時間前の最適電圧分布計算時の算出値とする。ただし、前回算出値がない場合は、最適電圧分布決定部24は、タップ位置をニュートラル値に設定する。
次に、最適電圧分布決定部24は、配電系統各点の負荷/発電量分布の予測に基づき、設定された各電圧制御機器の制御量での潮流計算を行い、配電系統各点の電圧を算出する(ステップS23)。
次に、最適電圧分布決定部24は、潮流計算の結果に基づき配電系統の評価を行う(ステップS24)。具体的には、最適電圧分布決定部24は、配電系統の評価項目について設定された評価関数すなわち目的関数の値を評価することにより、配電系統の評価を行う。ここで、第一優先の評価項目は、配電系統各点での電圧の高圧適正電圧範囲(高圧適正電圧上限値および高圧適正電圧下限値)からの違反量すなわち逸脱量である。すなわち、最適電圧分布は、第一に、配電系統各点での電圧の適正電圧範囲からの違反量の総和が最小となるように決定される。
また、第二優先の評価項目は、例えば配電系統各点での電圧余裕、すなわち高圧適正電圧上下限値までの余裕量である。配電系統各点での電圧余裕が小さいと、僅かな電圧変動で適正電圧範囲から逸脱して頻繁に電圧制御機器が動作してしまう。従って、電圧余裕の総和が大きいほど高評価とする。最小値をとる場合に最適とする評価関数を使用する場合には、以下のように定義する電圧余裕減少量を用いて電圧余裕を評価する。電圧余裕減少量は、電圧余裕が十分に大きい場合にゼロになり、電圧余裕が小さくなるほど大きくなるように、以下のようにして計算する。
電圧余裕減少量=閾値−電圧余裕 電圧余裕 < 閾値 の場合
電圧余裕減少量=0 電圧余裕 >= 閾値 の場合
…(1)
閾値は、ステップS21で設定した値であり、例えば、適正電圧範囲の幅の20%程度に定める。
電圧余裕<閾値の場合で、電圧値が適正電圧範囲内である場合は、適正電圧範囲からの逸脱すなわち電圧違反とはならないものの、電圧余裕違反、すなわち短周期変動分の電圧余裕を確保できでいない状態となるため、電圧余裕>=閾値であることが望ましい。
第三優先の評価項目は、電圧制御機器の制御量のその初期設定値からの変化量の総和とすることができる。ここで、電圧制御機器の制御量のその初期設定値からの変化量は、変圧器型の電圧制御機器の場合は、タップ位置の初期設定タップ位置からの差である。当該変化量の総和を小さくすることにより、電圧制御機器の動作回数の低減につながる。
さらに、第四優先の評価項目は、配電系統全体の送電ロス(有効電力ロス+無効電力ロス)とすることができる。送電ロスが小さいほど高評価とする。なお、送電ロスは、有効電力ロスが大半を占め、電圧が高いほどロスが小さくなるが、その分、第二優先の配電系統各点での上限値側の電圧余裕が小さくなるため、配電系統各点の電圧上下限値にかなりの余裕がある場合に評価することの意味がある評価項目である。
評価関数は、第一優先の評価項目について設定してもよいが、第一優先から第四優先のうち2つ以上の項目について設定することもできる。この場合、各々の評価関数に重みを付けて和をとったものを全体の評価関数とする。さらに、配電系統に応じて高次の優先項目についても評価関数に含めることができる。評価関数は、例えば最小値をとるときに最も最適化(高評価)されるように構成することができる。
例えば、第一優先〜第四優先の全評価項目に基づいて評価関数を設定する場合、以下の式(2)のように評価関数を定めることができる。Wp,W1,W2,W3は、重み付け係数である。
評価関数値
= 配電系統各点の電圧上下限違反量の総和 × Wp
+ 変圧器ごとの電圧制御責任範囲内の各点の
上限側電圧余裕減少量の最大値 × W1
+ 変圧器ごとの電圧制御責任範囲内の各点の
下限側電圧余裕減少量の最大値 × W1
+ 前回指令時からの変圧器目標電圧変更量 × W2
+ 送電ロス × W3 …(2)
図14の説明に戻り、最適電圧分布決定部24は、所定回数の探索を行ったか否かを判定し(ステップS25)、所定回数の探索を行った場合には(ステップS25 Yes)、処理を終了し、所定回数の探索を行っていない場合には(ステップS25 No)、ステップS26の処理に進む。
次に、ステップS26では、最適電圧分布決定部24は、各電圧制御機器の制御量を例えば1単位変更して、ステップS23と同様に配電系統各点の電圧算出、およびステップS24と同様に配電系統の評価を行い、これを全ての電圧制御機器について実施して評価結果を比較し、最も評価が改善するよう電圧制御機器の制御量を設定変更する(ステップS26)。制御量を1単位変更するとは、例えばタップを1段上げるまたは下げることである。最適化のアルゴリズムについては例えば特開2010−250599号公報等に開示されている方法を用いることができる。ステップS26の実施後は、ステップS25へ戻る。
以上のようにして、所定回数の探索の後、最適電圧分布決定部24は、評価関数の値を最良にする最良解として、将来1時間の配電系統の最適電圧分布および各電圧制御機器の最適制御量を決定することができる。
次に、図13のS13の処理の詳細について説明する。まず、変圧器型の電圧制御機器については、例えば、次のように、電圧制御責任範囲を設定して、電圧制御責任範囲内における、最適電圧と高圧適正電圧範囲の下限値VHminとの差の絶対値である電圧下限余裕量のうちの最小の値(lm_min)、および最適電圧と高圧適正電圧の上限値VHmaxとの差の絶対値である電圧上限余裕量のうちの最小の値(um_min)に基づいて、電圧上下限値を決定することができる。
具体的には、変圧器型の電圧制御機器は、当該電圧制御機器の電源側(上流側)に変圧器型の電圧制御機器が存在する場合には、この変圧器型の電圧制御機器の変圧器の負荷側(下流側)までの範囲、および、当該電圧制御機器の負荷側の範囲を電圧制御責任範囲とし、負荷側にさらに別の電圧制御機器が存在する場合は、当該別の電圧制御機器の電源側までを電圧制御責任範囲に含める。
例えば、ローカル電圧制御装置11の電圧制御責任範囲は、電圧制御機器1の負荷側から電圧制御機器5までの範囲であり、配電線4−1に接続された低圧系統(図1では図示せず)を含む。ローカル電圧制御装置11の電圧制御責任範囲のうちの最適電圧と高圧適正電圧の下限値VHminとの差の絶対値である電圧下限余裕量のうちの最小の値をlm_minとし、最適電圧と高圧適正電圧の上限値VHmaxとの差の絶対値である電圧上限余裕量のうちの最小の値をum_minとする。このとき、電圧上下限値決定部25は、電圧制御機器6の最適電圧の値にum_minを加えたものを制御目標電圧範囲の電圧上限値とし、電圧制御機器1の最適電圧の値からlm_minを差し引いたものを制御目標電圧範囲の電圧下限値とする。
このように、電圧制御機器1の設置箇所近傍における電圧上下限余裕量のみならず、その電圧制御責任範囲内の各点における電圧上下限余裕量も考慮して決定されているので、ローカル電圧制御装置11自体は制御目標電圧範囲内で電圧制御機器5をローカル制御するにもかかわらず、広域の電圧制御責任範囲で適正電圧の維持が可能となる。
なお、以上述べた集中電圧制御処理は一例であり、集中電圧制御処理の具体的処理内容は上記の例に限定されない。例えば、計測情報を用いずに、設備データに基づいて負荷発電量を予測してもよい。
次に、適正電圧範囲の変更方法のうち(ア)の例以外の例ついて説明する。上述した適正電圧範囲の変更方法のうち(イ)の例について説明する。(イ)の例は、上述したように、太陽光発電設備の発電量の予測値に基づいて適正電圧範囲を変更する方法である。発電機17のうち太陽光発電設備の発電量は、日射量に応じて変化する。本実施の形態では、日射量すなわち太陽光発電設備の発電量に基づいて適正電圧範囲を変更する。具体的には、次のような処理を実施する。
図15は、日射量の時間変化の一例を示す図である。日射量は、天候、季節などによっても変化するが、晴天の場合には、時刻に依存して変化する。図15に示すような日射量の時刻に依存した変化を仮定することにより、発電量の時刻による変化を仮定することができる。図15では、時刻に対する日射量を示しているが太陽光発電設備による発電量が日射量に正比例すると仮定すれば、太陽光発電設備による発電量の時間変化の形状は日射量の時間変化と同様となる。図15に例示したような日射量の時間変化を一日の日射量の最大値Smaxを1として正規化する。時刻の関数である正規化した日射量をSL(t)とする。なお、tは時刻を示す。太陽光発電設備による発電量が日射量に正比例すると仮定すれば、発電量の時間変化を正規化した、すなわち一日の太陽光発電設備による発電量の最大値を1として正規化したものをPS(t)とすると、PS(t)=SL(t)と表すことができる。
本実施の形態では、SL(t)すなわちPS(t)をあらかじめ定めておき、SL(t)を時刻と日射量との対応を示すテーブル、または時刻の関数として記憶部27に記憶させておく。このテーブルまたは関数は、時刻と配電線に接続される太陽光発電設備による発電量の推定値との対応を示す情報である発電量情報である。そして、適正電圧範囲更新部23が、記憶部27から読み出したSL(t)を示すテーブルまたは関数と、現在の時刻tnとに基づいて、現在の時刻tnの正規化された発電量SL(tn)を求め、正規化された発電量に基づいて適正電圧範囲を変更する。具体的には、太陽光発電設備による発電量が最大値となる場合の電圧上昇VSを、区間ごとに定めておく。そして、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲の上限値Vmaxおよび適正電圧範囲の下限値Vminを、以下の式(3)、(4)に従って更新する。
Vmax=Vmax−VS×SL(tn) …(3)
Vmin=Vmin−VS×SL(tn) …(4)
なお、上記の例では、適正電圧範囲の上限値および下限値を更新したが、適正電圧範囲の上限値と適正電圧範囲の下限値とのうちいずれか一方を更新するようにしてもよい。
さらに、配電系統内に日射量を計測している箇所があることも考えられる。このような場合には、集中電圧制御装置8は、計測された日射量に基づいて、計測した地点に対応する区間の適正電圧範囲を補正してもよい。この場合、集中電圧制御装置8は、計測された日射量Smと計測位置を取得し、対応する区間の日射量Smを上記のSL(t)の算出の際に仮定した一日の日射量の最大値Smaxで割った値、すなわちSm/Smaxを求める。そして、集中電圧制御装置8は、計測位置に対応する区間の適正電圧範囲を、上記の式(3)、(4)におけるSL(tn)の替わりにSm/Smaxを用いて更新する。なお、集中電圧制御装置8は、計測された日射量および計測位置を、通信ネットワーク7経由で取得してもよいし、オフラインで取得してもよい。
また、集中電圧制御装置8は、各区間に対応する天候を示すデータである天候データを取得して、天候データに基づいて、各区間の適正電圧範囲を補正してもよい。天候データは、気象情報を提供する機関または会社などから入手するようにしてもよいし、操作者が入力してもよい。例えば、天候が晴れ、曇り、雨の場合に対応して、それぞれSL(tn)に対して乗算する値を定めておき、天候に応じて、式(3)、(4)の右辺のSL(tn)にこの値を乗算する。例えば、晴れ、曇り、雨の順に、乗算する値を1,0.5,0とそれぞれ定めておく。
次に、上述した適正電圧範囲の変更方法のうち(ウ)の例について説明する。(ウ)の例は、上述したように、時間帯により適正電圧範囲を変更する。上記の(イ)の方法も、(ウ)の一部であると考えることもできる。すなわち上記(イ)の例では、計算式により適正電圧範囲を更新したが、太陽光発電設備による発電量に応じてあらかじめ時間帯ごとに適正電圧範囲を定めておくこともできる。また、発電量だけでなく負荷量についても、時間変化する可能性があるため、これらの変化を考慮した低圧系統での電圧上昇および電圧降下を時間帯ごとにモデル化し、時間帯ごとに適正電圧範囲を定めておいてもよい。
図16は、時間帯と適正電圧範囲の対応の一例を示す図である。図16では、1日のうちの時間帯、すなわち時刻を3つに分け、時刻に応じて適正電圧範囲の上下限値が格納された上下限値データを記憶部27にあらかじめ格納しておく。図16の例では、データ#1、データ#2、データ#3の3つの上下限値データを記憶部27にあらかじめ格納しておく。また、図16に示す対応を記憶部27に保持しておく。適正電圧範囲更新部23は、現在の時刻と、図16に示した対応とに基づいて上下限値データをデータ#1、データ#2、データ#3のうちから選択し、選択した上下限値データを適正電圧範囲の上下限値として設定する。
次に、上述した適正電圧範囲の変更方法のうち(エ)の例について説明する。(エ)の方法は、電圧違反が生じた区間のまたは電圧違反が生じると予測される区間の適正電圧範囲を変更する方法である。ここでいう電圧違反とは、高圧系統の電圧の推定値または計測値が高圧適正電圧範囲から逸脱すること、低圧系統の電圧の計測値が適正電圧範囲から逸脱すること、および需要家端の電圧が定められた電圧範囲を逸脱することを含む。
まず、高圧系統の電圧の推定値または計測値が高圧適正電圧範囲から逸脱する場合について説明する。電圧違反が生じた区間の高圧系統の電圧の推定値は、例えば、上述した集中電圧制御処理において算出された最適電圧である。高圧系統の電圧の計測値は、電圧潮流計測装置10により計測された電圧である。適正電圧範囲更新部23は、高圧系統の電圧の推定値または計測値電圧が高圧適正電圧範囲から逸脱したか否かを判断し、逸脱した場合には、対応する区間の適正電圧範囲を変更する。また、適正電圧範囲更新部23は、高圧適正電圧範囲を変更後の適正電圧範囲に基づいて更新する。高圧適正電圧範囲の上限値を上回る逸脱が発生した場合には、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲の上限値を上昇させるよう適正電圧範囲を更新する。適正電圧範囲の上限値を上昇させる方法は、どのような方法でもよいが、例えば、あらかじめ定めておいた固定値を適正電圧範囲の上限値に加算する方法を用いることができる。高圧適正電圧範囲の下限値を下回る逸脱が発生した場合には、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲の下限値を低下させるよう適正電圧範囲を更新する。ただし、上限値の更新および下限値の更新は、95V〜107Vの範囲内で行われる。すなわち、適正電圧範囲の上限値を上昇させると107Vを超える場合には適正電圧範囲の上限値の変更は行わない。適正電圧範囲の上限値を低下させると95Vを下回る場合には適正電圧範囲の下限値の変更は行わない。
次に、低圧系統の電圧の計測値が適正電圧範囲から逸脱する例について説明する。例えば、柱上変圧器などの変圧器が低圧側の電圧を測定している場合に、この電圧を、集中電圧制御装置8が取得可能であるとする。適正電圧範囲更新部23は、取得した電圧が適正電圧範囲から逸脱している場合に、対応する区間の適正電圧範囲を変更する。適正電圧範囲の上下限値の変更方法は、上記の高圧系統の電圧の推定値または計測値が高圧適正電圧範囲から逸脱した場合と同様である。
次に、需要家端の電圧が定められた電圧範囲を逸脱する例について説明する。太陽光発電設備は、需要家端の電圧が定められた電圧範囲を超えると、発電を停止するように構成されている場合がある。このような場合、発電が停止することにより、定められた電圧範囲を逸脱したことを需要家が認識し、電気事業者へ通知することがある。集中電圧制御装置8の操作者が、このような通知に基づいて、定められた電圧範囲を逸脱が生じた箇所に対応する区間で電圧違反が生じたことを示す情報を入力部29により入力する。入力部29は入力された情報を適正電圧範囲更新部23に通知し、適正電圧範囲更新部23は適正電圧範囲を変更する。例えば、太陽光発電設備の発電が停止した場合には、定められた電圧範囲の上限を超えたと考えられるため、適正電圧範囲更新部23は、適正電圧範囲を低下側にずらすように適正電圧範囲を変更する。適正電圧範囲を低下側にずらす方法としては、適正電圧範囲の上限値を低下させる方法を用いてもよいし、適正電圧範囲の上限値および下限値を低下させる方法を用いてもよい。
また、集中電圧制御装置8は、高圧系統の電圧の予測値または計測値を高圧系統の電圧の現況として表示部28に表示するようにしてもよい。すなわち、表示部28は、配電線の電圧に応じて色付けされた配電線を示す画像を表示してもよい。これにより、上述した電圧違反が生じている区間、電圧違反が生じる可能性のある区間を把握することができ、上述した(ア)の方法により操作者が適正電圧範囲を変更する場合に、現況を考慮して適正電圧範囲を変更することができる。図17は、高圧系統の電圧の現況の表示例を示す図である。また、集中電圧制御装置8は、低圧系統の電圧の予測値または計測値が得られる場合には、集中電圧制御装置8は、低圧系統の電圧の予測値または計測値である低圧系統の電圧を、低圧系統の電圧に応じて配電線を色付けすることにより表示してもよい。同様に、需要家端の電圧が定められた電圧範囲を超えたことが通知された区間を表示部28に表示するようにしてもよい。
また、電圧違反の生じた区間、すなわち需要家端の電圧が定められた電圧範囲を超えたことが通知された区間または高圧系統の電圧の予測値または計測値が高圧適正電圧範囲内にない区間がある場合、適正電圧範囲更新部23は、表示制御部26にアラーム表示することを指示し、表示制御部26が表示部28にアラーム表示を指示してもよい。また、電圧違反の生じた区間がある場合、適正電圧範囲更新部23は、電圧違反が生じた区間を、図17に示した電圧の現況の画面上に、または別の画面上に表示させるように表示制御部26に指示してもよい。電圧違反が生じた区間の表示方法としては、電圧の逸脱が生じたことを示すあらかじめ定めた色で、該当する区間を色付けする方法、電圧の逸脱が生じたことを示すマークを該当する区間に表示する方法などがある。例えば、表示部28は、電圧の逸脱が生じた区間を、電圧の逸脱が生じたことを示すあらかじめ定めた色で色付けした配電線を示す画像を表示する。
また、集中電圧制御装置8は、電圧違反が生じたことを示す情報が得られた場合、この情報に基づいて、高圧系統の電圧と低圧系統とのうちの少なくとも一方の電圧の表示の際に、電圧値を変更して表示してもよい。例えば、太陽光発電設備の発電が停止したという通知が需要家からあり、操作者により電圧違反が生じたことを示す情報が入力された場合、高圧系統の電圧を計測値または予測値より一定値上昇させた値として表示してもよい。
また、図17の左下部に示したように、配電系統図表示、適正電圧上下限値表示と記載されたボタンをそれぞれ設け、配電系統図、適正電圧上下限値の表示へそれぞれ遷移することを選択できるようにしてもよい。
以上のように、適正電圧範囲の変更方法は複数の方法が考えられるが、これらのうちの1つの方法を適用してもよいし、これらのうち2つ以上を組み合わせて適用してもよい。
以上のように、本実施の形態では、集中電圧制御における入力となる適正電圧範囲を、区間ごとに変更可能とした。このため、適正電圧範囲の設定の自由度を高めることができる。これにより、太陽光発電設備の発電量、低圧系統における電圧降下の見積もりと実際の電圧降下との差異などが生じた場合でも、適切に適正電圧範囲を設定することができ、集中電圧制御を過度に高精度化することなく電圧違反を低減させることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。