<第1実施形態>
図1は、本発明の立体物検出装置1を適用した一実施の形態に係る車両の概略構成図であり、本例の立体物検出装置1は、自車両Vの運転者が運転中に注意を払うべき他車両、例えば、自車両Vが車線変更する際に接触の可能性がある他車両を障害物として検出する装置である。特に、本例の立体物検出装置1は自車両が走行する車線の隣の隣接車線(以下、単に隣接車線ともいう)を走行する他車両を検出する。また、本例の立体物検出装置1は、検出した他車両の移動距離、移動速度を算出することができる。このため、以下説明する一例は、立体物検出装置1を自車両Vに搭載し、自車両周囲において検出される立体物のうち、自車両Vが走行する車線の隣の隣接車線を走行する他車両を検出する例を示すこととする。同図に示すように、本例の立体物検出装置1は、車両周囲の映像を結像させるレンズ11を備えたカメラ10と、車速センサ20と、計算機30と、レンズ11を洗浄するレンズ洗浄装置100とを備える。本実施形態のカメラ10は、車両の周囲、具体的には車両の後方、右後方、左後方の映像を撮像する。なお、レンズ洗浄装置100については、第2実施形態において説明する。
カメラ10は、図1に示すように自車両Vの後方における高さhの箇所において、光軸が水平から下向きに角度θとなるように自車両Vに取り付けられている。カメラ10は、この位置から自車両Vの周囲環境のうちの所定領域を撮像する。本実施形態において自車両Vの後方の立体物を検出するために設けられるカメラ10は一つであるが、他の用途のため、例えば車両周囲の画像を取得するための他のカメラを設けることもできる。車速センサ20は、自車両Vの走行速度を検出するものであって、例えば車輪に回転数を検知する車輪速センサで検出した車輪速から車速度を算出する。計算機30は、車両後方の立体物を検出するとともに、本例ではその立体物について移動距離及び移動速度を算出する。
図2は、図1の自車両Vの走行状態を示す平面図である。同図に示すように、カメラ10は、所定の画角aで車両後方を撮像する。このとき、カメラ10の画角aは、自車両Vが走行する車線に加えて、その左右の車線についても撮像可能な画角に設定されている。撮像可能な領域には、自車両Vの後方であり、自車両Vの走行車線の左右隣の隣接車線上の検出対象領域A1,A2を含む。なお、本実施形態における車両後方には、車両の真後ろだけではなく、車両の後ろ側の側方をも含む。撮像される車両後方の領域は、カメラ10の画角に応じて設定される。一例ではあるが、車長方向に沿う車両の真後ろをゼロ度とした場合に、真後ろ方向から左右0度〜90度、好ましくは0度〜70度等の領域を含むように設定できる。
図3は、図1の計算機30の詳細を示すブロック図である。図3においては、接続関係を明確とするためにカメラ10、車速センサ20、照度センサ21及びレンズ洗浄装置100についても図示する。
図3に示すように、計算機30は、視点変換部31と、位置合わせ部32と、立体物検出部33と、立体物判断部34と、レンズ状態判断部38と、制御部39と、スミア検出部40とを備える。本実施形態の計算機30は、差分波形情報を利用した立体物の検出ブロックに関する構成である。本実施形態の計算機30は、エッジ情報を利用した立体物の検出ブロックに関する構成とすることもできる。この場合は、図3に示す構成のうち、位置合わせ部32と、立体物検出部33から構成される検出ブロック構成Aを、破線で囲んだ輝度差算出部35と、エッジ線検出部36と、立体物検出部37から構成される検出ブロック構成Bと置き換えて構成することができる。もちろん、検出ブロック構成A及び検出ブロック構成Bの両方を備え、差分波形情報を利用した立体物の検出を行うとともに、エッジ情報を利用した立体物の検出も行うことができるようにすることができる。検出ブロック構成A及び検出ブロック構成Bを備える場合には、例えば明るさなどの環境要因に応じて検出ブロック構成A又は検出ブロック構成Bのいずれかを動作させることができる。以下、各構成について説明する。
なお、本実施形態では、立体物検出装置1の計算機30がレンズ状態判断部38を備える構成としたが、レンズ洗浄装置100の制御装置110がレンズ状態判断部38を備える構成としてもよい。この場合、計算機30は、レンズ状態判断部38からレンズ状態の判断結果を取得する。
《差分波形情報による立体物の検出》
本実施形態の立体物検出装置1は、車両後方を撮像する単眼のカメラ1により得られた画像情報に基づいて車両後方の右側検出領域又は左側検出領域に存在する立体物を検出する。
視点変換部31は、カメラ10による撮像にて得られた所定領域の撮像画像データを入力し、入力した撮像画像データを鳥瞰視される状態の鳥瞰画像データに視点変換する。鳥瞰視される状態とは、上空から例えば鉛直下向きに見下ろす仮想カメラの視点から見た状態である。この視点変換は、例えば特開2008−219063号公報に記載されるようにして実行することができる。撮像画像データを鳥瞰視画像データに視点変換するのは、立体物に特有の鉛直エッジは鳥瞰視画像データへの視点変換により特定の定点を通る直線群に変換されるという原理に基づき、これを利用すれば平面物と立体物とを識別できるからである。なお、視点変換部31による画像変換処理の結果は、後述するエッジ情報による立体物の検出においても利用される。
位置合わせ部32は、視点変換部31の視点変換により得られた鳥瞰画像データを順次入力し、入力した異なる時刻の鳥瞰画像データの位置を合わせる。図4は、位置合わせ部32の処理の概要を説明するための図であり、(a)は自車両Vの移動状態を示す平面図、(b)は位置合わせの概要を示す画像である。
図4(a)に示すように、現時刻の自車両VがV1に位置し、一時刻前の自車両VがV2に位置していたとする。また、自車両Vの後側方向に他車両VXが位置して自車両Vと並走状態にあり、現時刻の他車両VXがV3に位置し、一時刻前の他車両VXがV4に位置していたとする。さらに、自車両Vは、一時刻で距離d移動したものとする。一時刻前とは、現時刻から予め定められた時間(例えば1制御周期)だけ過去の時刻であってもよいし、任意の時間だけ過去の時刻であってもよい。
このような状態において、現時刻における鳥瞰画像PBtは図4(b)に示すようになる。この鳥瞰画像PBtでは、路面上に描かれる白線については矩形状となり、比較的正確に平面視された状態となるが、位置V3にある他車両VXの位置については倒れ込みが発生する。また、一時刻前における鳥瞰画像PBt−1についても同様に、路面上に描かれる白線については矩形状となり、比較的正確に平面視された状態となるが、位置V4にある他車両VXについては倒れ込みが発生する。既述したとおり、立体物の鉛直エッジ(厳密な意味の鉛直エッジ以外にも路面から三次元空間に立ち上がったエッジを含む)は、鳥瞰視画像データへの視点変換処理によって倒れ込み方向に沿った直線群として現れるのに対し、路面上の平面画像は鉛直エッジを含まないので、視点変換してもそのような倒れ込みが生じないからである。
位置合わせ部32は、上記のような鳥瞰画像PBt,PBt−1の位置合わせをデータ上で実行する。この際、位置合わせ部32は、一時刻前における鳥瞰画像PBt−1をオフセットさせ、現時刻における鳥瞰画像PBtと位置を一致させる。図4(b)の左側の画像と中央の画像は、移動距離d’だけオフセットした状態を示す。このオフセット量d’は、図4(a)に示した自車両Vの実際の移動距離dに対応する鳥瞰視画像データ上の移動量であり、車速センサ20からの信号と一時刻前から現時刻までの時間に基づいて決定される。
また、位置合わせ後において位置合わせ部32は、鳥瞰画像PBt,PBt−1の差分をとり、差分画像PDtのデータを生成する。ここで、差分画像PDtの画素値は、鳥瞰画像PBt,PBt−1の画素値の差を絶対値化したものでもよいし、照度環境の変化に対応するために当該絶対値が所定の閾値pを超えたときに「1」とし、超えないときに「0」としてもよい。図4(b)の右側の画像が、差分画像PDtである。この閾値pは、予め設定しておいてもよいし、後述する制御部39のレンズ状態判断部38の検出結果に応じた制御命令に従い変更してもよい。
図3に戻り、立体物検出部33は、図4(b)に示す差分画像PDtのデータに基づいて立体物を検出する。この際、本例の立体物検出部33は、実空間上における立体物の移動距離についても算出する。立体物の検出及び移動距離の算出にあたり、立体物検出部33は、まず差分波形を生成する。立体物の時間あたりの移動距離は、立体物の移動速度の算出に用いられる。そして、立体物の移動速度は、立体物が車両であるか否かの判断に用いることができる。
差分波形の生成にあたって本実施形態の立体物検出部33は、差分画像PDtにおいて検出領域を設定する。本例の立体物検出装置1は、自車両Vの運転手が注意を払う他車両であり、特に、自車両Vが車線変更する際に接触の可能性がある自車両Vが走行する車線の隣の車線を走行する他車両を検出対象物として検出する。このため、画像情報に基づいて立体物を検出する本例では、カメラ1により得られた画像のうち、自車両Vの右側及び左側に二つの検出領域を設定する。具体的に、本実施形態では、図2に示すように自車両Vの後方の左側及び右側に矩形状の検出領域A1,A2を設定する。この検出領域A1,A2において検出された他車両は、自車両Vが走行する車線の隣の隣接車線を走行する障害物として検出される。なお、このような検出領域A1,A2は、自車両Vに対する相対位置から設定してもよいし、白線の位置を基準に設定してもよい。白線の位置を基準に設定する場合に、移動距離検出装置は、例えば既存の白線認識技術等を利用するとよい。
また、立体物検出部33は、設定した検出領域A1,A2の自車両V側における辺(走行方向に沿う辺)を接地線L1,L2(図2)として認識する。一般に接地線は立体物が地面に接触する線を意味するが、本実施形態では地面に接触する線でなく上記の如くに設定される。この場合であっても、経験上、本実施形態に係る接地線と、本来の他車両VXの位置から求められる接地線との差は大きくなり過ぎず、実用上は問題が無い。
図5は、図3に示す立体物検出部33による差分波形の生成の様子を示す概略図である。図5に示すように、立体物検出部33は、位置合わせ部32で算出した差分画像PDt(図4(b)の右図)のうち検出領域A1,A2に相当する部分から、差分波形DWtを生成する。この際、立体物検出部33は、視点変換により立体物が倒れ込む方向に沿って、差分波形DWtを生成する。図5に示す例では、便宜上検出領域A1のみを用いて説明するが、検出領域A2についても同様の手順で差分波形DWtを生成する。
具体的に説明すると、立体物検出部33は、差分画像DWtのデータ上において立体物が倒れ込む方向上の線Laを定義する。そして、立体物検出部33は、線La上において所定の差分を示す差分画素DPの数をカウントする。ここで、所定の差分を示す差分画素DPは、差分画像DWtの画素値が鳥瞰画像PBt,PBt−1の画素値の差を絶対値化したものである場合は、所定の閾値を超える画素であり、差分画像DWtの画素値が「0」「1」で表現されている場合は、「1」を示す画素である。
立体物検出部33は、差分画素DPの数をカウントした後、線Laと接地線L1との交点CPを求める。そして、立体物検出部33は、交点CPとカウント数とを対応付け、交点CPの位置に基づいて横軸位置、すなわち図5右図の上下方向軸における位置を決定するとともに、カウント数から縦軸位置、すなわち図5右図の左右方向軸における位置を決定し、交点CPにおけるカウント数としてプロットする。
以下同様に、立体物検出部33は、立体物が倒れ込む方向上の線Lb,Lc…を定義して、差分画素DPの数をカウントし、各交点CPの位置に基づいて横軸位置を決定し、カウント数(差分画素DPの数)から縦軸位置を決定しプロットする。立体物検出部33は、上記を順次繰り返して度数分布化することで、図5右図に示すように差分波形DWtを生成する。
なお、図5左図に示すように、立体物が倒れ込む方向上の線Laと線Lbとは検出領域A1と重複する距離が異なっている。このため、検出領域A1が差分画素DPで満たされているとすると、線Lb上よりも線La上の方が差分画素DPの数が多くなる。このため、立体物検出部33は、差分画素DPのカウント数から縦軸位置を決定する場合に、立体物が倒れ込む方向上の線La,Lbと検出領域A1とが重複する距離に基づいて正規化する。具体例を挙げると、図5左図において線La上の差分画素DPは6つあり、線Lb上の差分画素DPは5つである。このため、図5においてカウント数から縦軸位置を決定するにあたり、立体物検出部33は、カウント数を重複距離で除算するなどして正規化する。これにより、差分波形DWtに示すように、立体物が倒れ込む方向上の線La,Lbに対応する差分波形DWtの値はほぼ同じとなっている。
差分波形DWtの生成後、立体物検出部33は一時刻前の差分波形DWt−1との対比により移動距離を算出する。すなわち、立体物検出部33は、差分波形DWt,DWt−1の時間変化から移動距離を算出する。
詳細に説明すると、立体物検出部33は、図6に示すように差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtn(nは2以上の任意の整数)に分割する。図6は、立体物検出部33によって分割される小領域DWt1〜DWtnを示す図である。小領域DWt1〜DWtnは、例えば図6に示すように、互いに重複するようにして分割される。例えば小領域DWt1と小領域DWt2とは重複し、小領域DWt2と小領域DWt3とは重複する。
次いで、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎にオフセット量(差分波形の横軸方向(図6の上下方向)の移動量)を求める。ここで、オフセット量は、一時刻前における差分波形DWt−1と現時刻における差分波形DWtとの差(横軸方向の距離)から求められる。この際、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎に、一時刻前における差分波形DWt−1を横軸方向に移動させた際に、現時刻における差分波形DWtとの誤差が最小となる位置(横軸方向の位置)を判定し、差分波形DWt−1の元の位置と誤差が最小となる位置との横軸方向の移動量をオフセット量として求める。そして、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量をカウントしてヒストグラム化する。
図7は、立体物検出部33により得られるヒストグラムの一例を示す図である。図7に示すように、各小領域DWt1〜DWtnと一時刻前における差分波形DWt−1との誤差が最小となる移動量であるオフセット量には、多少のバラつきが生じる。このため、立体物検出部33は、バラつきを含んだオフセット量をヒストグラム化し、ヒストグラムから移動距離を算出する。この際、立体物検出部33は、ヒストグラムの極大値から立体物の移動距離を算出する。すなわち、図7に示す例において立体物検出部33は、ヒストグラムの極大値を示すオフセット量を移動距離τ*と算出する。なおこの移動距離τ*は、自車両Vに対する他車両VXの相対移動距離である。このため、立体物検出部33は、絶対移動距離を算出する場合には、得られた移動距離τ*と車速センサ20からの信号とに基づいて、絶対移動距離を算出することとなる。
なお、ヒストグラム化にあたり立体物検出部33は、複数の小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けをし、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量を重みに応じてカウントしてヒストグラム化してもよい。図8は、立体物検出部33による重み付けを示す図である。
図8に示すように、小領域DWm(mは1以上n−1以下の整数)は平坦となっている。すなわち、小領域DWmは所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が小さくなっている。立体物検出部33は、このような小領域DWmについて重みを小さくする。平坦な小領域DWmについては、特徴がなくオフセット量の算出にあたり誤差が大きくなる可能性が高いからである。
一方、小領域DWm+k(kはn−m以下の整数)は起伏に富んでいる。すなわち、小領域DWmは所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が大きくなっている。立体物検出部33は、このような小領域DWmについて重みを大きくする。起伏に富む小領域DWm+kについては、特徴的でありオフセット量の算出を正確に行える可能性が高いからである。このように重み付けすることにより、移動距離の算出精度を向上することができる。
なお、移動距離の算出精度を向上するために上記実施形態では差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割したが、移動距離の算出精度がさほど要求されない場合は小領域DWt1〜DWtnに分割しなくてもよい。この場合に、立体物検出部33は、差分波形DWtと差分波形DWt−1との誤差が最小となるときの差分波形DWtのオフセット量から移動距離を算出することとなる。すなわち、一時刻前における差分波形DWt−1と現時刻における差分波形DWtとのオフセット量を求める方法は上記内容に限定されない。
図3に戻り、計算機30はスミア検出部40を備える。スミア検出部40は、カメラ10による撮像によって得られた撮像画像のデータからスミアの発生領域を検出する。なお、スミアはCCDイメージセンサ等に生じる白飛び現象であることから、こうしたスミアが生じないCMOSイメージセンサ等を用いたカメラ10を採用する場合にはスミア検出部40を省略してもよい。
図9は、スミア検出部40による処理及びそれによる差分波形DWtの算出処理を説明するための画像図である。まずスミア検出部40にスミアSが存在する撮像画像Pのデータが入力されたとする。このとき、スミア検出部40は、撮像画像PからスミアSを検出する。スミアSの検出方法は様々であるが、例えば一般的なCCD(Charge-Coupled Device)カメラの場合、光源から画像下方向にだけスミアSが発生する。このため、本実施形態では画像下側から画像上方に向かって所定値以上の輝度値を持ち、且つ、縦方向に連続した領域を検索し、これをスミアSの発生領域と特定する。
また、スミア検出部40は、スミアSの発生箇所について画素値を「1」とし、それ以外の箇所を「0」とするスミア画像SPのデータを生成する。生成後、スミア検出部40はスミア画像SPのデータを視点変換部31に送信する。また、スミア画像SPのデータを入力した視点変換部31は、このデータを鳥瞰視される状態に視点変換する。これにより、視点変換部31はスミア鳥瞰画像SBtのデータを生成する。生成後、視点変換部31はスミア鳥瞰画像SBtのデータを位置合わせ部33に送信する。また、視点変換部31は一時刻前のスミア鳥瞰画像SBt−1のデータを位置合わせ部33に送信する。
位置合わせ部32は、スミア鳥瞰画像SBt,SBt−1の位置合わせをデータ上で実行する。具体的な位置合わせについては、鳥瞰画像PBt,PBt−1の位置合わせをデータ上で実行する場合と同様である。また、位置合わせ後、位置合わせ部32は、各スミア鳥瞰画像SBt,SBt−1のスミアSの発生領域について論理和をとる。これにより、位置合わせ部32は、マスク画像MPのデータを生成する。生成後、位置合わせ部32は、マスク画像MPのデータを立体物検出部33に送信する。
立体物検出部33は、マスク画像MPのうちスミアSの発生領域に該当する箇所について、度数分布のカウント数をゼロとする。すなわち、図9に示すような差分波形DWtが生成されていた場合に、立体物検出部33は、スミアSによるカウント数SCをゼロとし、補正された差分波形DWt’を生成することとなる。
なお、本実施形態において立体物検出部33は、車両V(カメラ10)の移動速度を求め、求めた移動速度から静止物についてのオフセット量を求める。静止物のオフセット量を求めた後、立体物検出部33は、ヒストグラムの極大値のうち静止物に該当するオフセット量を無視したうえで、立体物の移動距離を算出する。
図10は、立体物検出部33により得られるヒストグラムの他例を示す図である。カメラ10の画角内に他車両VXの他に静止物が存在する場合に、得られるヒストグラムには2つの極大値τ1,τ2が現れる。この場合、2つの極大値τ1,τ2のうち、いずれか一方は静止物のオフセット量である。このため、立体物検出部33は、移動速度から静止物についてのオフセット量を求め、そのオフセット量に該当する極大値について無視し、残り一方の極大値を採用して立体物の移動距離を算出する。
なお、静止物に該当するオフセット量を無視したとしても、極大値が複数存在する場合、カメラ10の画角内に他車両VXが複数台存在すると想定される。しかし、検出領域A1,A2内に複数の他車両VXが存在することは極めて稀である。このため、立体物検出部33は、移動距離の算出を中止する。
次に差分波形情報による立体物検出手順を説明する。図11及び図12は、本実施形態の立体物検出手順を示すフローチャートである。図11に示すように、まず、計算機30はカメラ10による撮像画像Pのデータを入力し、スミア検出部40によりスミア画像SPを生成する(S1)。次いで、視点変換部31は、カメラ10からの撮像画像Pのデータから鳥瞰画像PBtのデータを生成すると共に、スミア画像SPのデータからスミア鳥瞰画像SBtのデータを生成する(S2)。
そして、位置合わせ部33は、鳥瞰画像PBtのデータと、一時刻前の鳥瞰画像PBt−1のデータとを位置合わせすると共に、スミア鳥瞰画像SBtのデータと、一時刻前のスミア鳥瞰画像SBt−1のデータとを位置合わせする(S3)。この位置合わせ後、位置合わせ部33は、差分画像PDtのデータを生成すると共に、マスク画像MPのデータを生成する(S4)。その後、立体物検出部33は、差分画像PDtのデータと、一時刻前の差分画像PDt−1のデータとから、差分波形DWtを生成する(S5)。差分波形DWtを生成後、立体物検出部33は、差分波形DWtのうち、スミアSの発生領域に該当するカウント数をゼロとし、スミアSによる影響を抑制する(S6)。
その後、立体物検出部33は、差分波形DWtのピークが第1閾値α以上であるか否かを判断する(S7)。この第1閾値αは、予め設定しておき、図3に示す制御部39の制御命令に従い変更することもできるが、その詳細については後述する。ここで、差分波形DWtのピークが第1閾値α以上でない場合、すなわち差分が殆どない場合には、撮像画像P内には立体物が存在しないと考えられる。このため、差分波形DWtのピークが第1閾値α以上でないと判断した場合には(S7:NO)、立体物検出部33は、立体物が存在せず、障害物としての他車両が存在しないと判断する(図12:S16)。そして、図11及び図12に示す処理を終了する。
一方、差分波形DWtのピークが第1閾値α以上であると判断した場合には(S7:YES)、立体物検出部33は、立体物が存在すると判断し、差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割する(S8)。次いで、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けを行う(S9)。その後、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎のオフセット量を算出し(S10)、重みを加味してヒストグラムを生成する(S11)。
そして、立体物検出部33は、ヒストグラムに基づいて自車両Vに対する立体物の移動距離である相対移動距離を算出する(S12)。次に、立体物検出部33は、相対移動距離から立体物の絶対移動速度を算出する(S13)。このとき、立体物検出部33は、相対移動距離を時間微分して相対移動速度を算出すると共に、車速センサ20で検出された自車速を加算して、絶対移動速度を算出する。
その後、立体物検出部33は、立体物の絶対移動速度が10km/h以上、且つ、立体物の自車両Vに対する相対移動速度が+60km/h以下であるか否かを判断する(S14)。双方を満たす場合には(S14:YES)、立体物検出部33は、立体物が他車両VXであると判断する(S15)。そして、図11及び図12に示す処理を終了する。一方、いずれか一方でも満たさない場合には(S14:NO)、立体物検出部33は、他車両が存在しないと判断する(S16)。そして、図11及び図12に示す処理を終了する。
本実施形態では自車両Vの後側方を検出領域A1,A2とし、自車両Vが走行中に注意を払うべきである自車両の走行車線の隣を走行する隣接車線を走行する他車両VXを検出すること、特に、自車両Vが車線変更した場合に接触する可能性がある否かに重点を置いている。自車両Vが車線変更した場合に、自車両の走行車線の隣の隣接車線を走行する他車両VXと接触する可能性がある否かを判断するためである。このため、ステップS14の処理が実行されている。すなわち、本実施形態にけるシステムを高速道路で作動させることを前提とすると、立体物の速度が10km/h未満である場合、たとえ他車両VXが存在したとしても、車線変更する際には自車両Vの遠く後方に位置するため問題となることが少ない。同様に、立体物の自車両Vに対する相対移動速度が+60km/hを超える場合(すなわち、立体物が自車両Vの速度よりも60km/hより大きな速度で移動している場合)、車線変更する際には自車両Vの前方に移動しているため問題となることが少ない。このため、ステップS14では車線変更の際に問題となる他車両VXを判断しているともいえる。
また、ステップS14において立体物の絶対移動速度が10km/h以上、且つ、立体物の自車両Vに対する相対移動速度が+60km/h以下であるかを判断することにより、以下の効果がある。例えば、カメラ10の取り付け誤差によっては、静止物の絶対移動速度を数km/hであると検出してしまう場合があり得る。よって、10km/h以上であるかを判断することにより、静止物を他車両VXであると判断してしまう可能性を低減することができる。また、ノイズによっては立体物の自車両Vに対する相対速度を+60km/hを超える速度に検出してしまうことがあり得る。よって、相対速度が+60km/h以下であるかを判断することにより、ノイズによる誤検出の可能性を低減できる。
ステップS14において他車両VXを判断するための相対移動速度の閾値は任意に設定することができる。たとえば、−20km/h以上、100km/h以下を相対移動速度の閾値として設定することができる。ここで負の下限値は、検出物が自車両VXの後方に移動する、つまり、検出物が後方に流れていく状態であるときの移動速度の下限値である。この閾値は、適宜に予め設定することができるが、後述する制御部39の制御命令に従い変更することができる。
さらに、ステップS14の処理に代えて、絶対移動速度がマイナスでないことや、0km/hでないことを判断してもよい。また、本実施形態では自車両Vが車線変更した場合に接触する可能性がある否かに重点を置いているため、ステップS15において他車両VXが検出された場合に、自車両の運転者に警告音を発したり、所定の表示装置により警告相当の表示を行ったりしてもよい。
また、ステップS15において、立体物検出部33により検出された立体物が所定時間T以上に渡って継続して検出されるか否かを判断する。そして、その立体物が所定時間T以上に渡って継続して検出される場合には、ステップS16に進み、その立体物を右側検出領域A1又は左側検出領域A2に存在する他車両であると判断する。他方、そうでない場合には、ステップS17に進み、他車両は存在しないと判断する。
このように、本例の差分波形情報による立体物の検出手順によれば、視点変換により立体物が倒れ込む方向に沿って、差分画像PDtのデータ上において所定の差分を示す画素数をカウントして度数分布化することで差分波形DWtを生成する。ここで、差分画像PDtのデータ上において所定の差分を示す画素とは、異なる時刻の画像において変化があった画素であり、言い換えれば立体物が存在した箇所であるといえる。このため、立体物が存在した箇所において、立体物が倒れ込む方向に沿って画素数をカウントして度数分布化することで差分波形DWtを生成することとなる。特に、立体物が倒れ込む方向に沿って画素数をカウントすることから、立体物に対して高さ方向の情報から差分波形DWtを生成することとなる。そして、高さ方向の情報を含む差分波形DWtの時間変化から立体物の移動距離を算出する。このため、単に1点の移動のみに着目するような場合と比較して、時間変化前の検出箇所と時間変化後の検出箇所とは高さ方向の情報を含んで特定されるため立体物において同じ箇所となり易く、同じ箇所の時間変化から移動距離を算出することとなり、移動距離の算出精度を向上させることができる。
また、差分波形DWtのうちスミアSの発生領域に該当する箇所について、度数分布のカウント数をゼロとする。これにより、差分波形DWtのうちスミアSによって生じる波形部位を除去することとなり、スミアSを立体物と誤認してしまう事態を防止することができる。
また、異なる時刻に生成された差分波形DWtの誤差が最小となるときの差分波形DWtのオフセット量から立体物の移動距離を算出する。このため、波形という1次元の情報のオフセット量から移動距離を算出することとなり、移動距離の算出にあたり計算コストを抑制することができる。
また、異なる時刻に生成された差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割する。このように複数の小領域DWt1〜DWtnに分割することによって、立体物のそれぞれの箇所を表わした波形を複数得ることとなる。また、小領域DWt1〜DWtn毎にそれぞれの波形の誤差が最小となるときのオフセット量を求め、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量をカウントしてヒストグラム化することにより、立体物の移動距離を算出する。このため、立体物のそれぞれの箇所毎にオフセット量を求めることとなり、複数のオフセット量から移動距離を求めることとなり、移動距離の算出精度を向上させることができる。
また、複数の小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けをし、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量を重みに応じてカウントしてヒストグラム化する。このため、特徴的な領域については重みを大きくし、特徴的でない領域については重みを小さくすることにより、一層適切に移動距離を算出することができる。従って、移動距離の算出精度を一層向上させることができる。
また、差分波形DWtの各小領域DWt1〜DWtnについて、所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が大きいほど、重みを大きくする。このため、最大値と最小値との差が大きい特徴的な起伏の領域ほど重みが大きくなり、起伏が小さい平坦な領域については重みが小さくなる。ここで、平坦な領域よりも起伏の大きい領域の方が形状的にオフセット量を正確に求めやすいため、最大値と最小値との差が大きい領域ほど重みを大きくすることにより、移動距離の算出精度を一層向上させることができる。
また、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量をカウントして得られたヒストグラムの極大値から、立体物の移動距離を算出する。このため、オフセット量にバラつきがあったとしても、その極大値から、より正確性の高い移動距離を算出することができる。
また、静止物についてのオフセット量を求め、このオフセット量を無視するため、静止物により立体物の移動距離の算出精度が低下してしまう事態を防止することができる。また、静止物に該当するオフセット量を無視したうえで、極大値が複数ある場合、立体物の移動距離の算出を中止する。このため、極大値が複数あるような誤った移動距離を算出してしまう事態を防止することができる。
上記実施形態において、自車両Vの車速を車速センサ20からの信号に基づいて判断しているが、これに限らず、異なる時刻の複数の画像から速度を推定するようにしてもよい。この場合、車速センサが不要となり、構成の簡素化を図ることができる。
また、上記実施形態においては撮像した現時刻の画像と一時刻前の画像とを鳥瞰図に変換し、変換した鳥瞰図の位置合わせを行ったうえで差分画像PDtを生成し、生成した差分画像PDtを倒れ込み方向(撮像した画像を鳥瞰図に変換した際の立体物の倒れ込み方向)に沿って評価して差分波形DWtを生成しているが、これに限定されない。例えば、一時刻前の画像のみを鳥瞰図に変換し、変換した鳥瞰図を位置合わせした後に再び撮像した画像相当に変換し、この画像と現時刻の画像とで差分画像を生成し、生成した差分画像を倒れ込み方向に相当する方向(すなわち、倒れ込み方向を撮像画像上の方向に変換した方向)に沿って評価することによって差分波形DWtを生成してもよい。すなわち、現時刻の画像と一時刻前の画像との位置合わせを行い、位置合わせを行った両画像の差分から差分画像PDtを生成し、差分画像PDtを鳥瞰図に変換した際の立体物の倒れ込み方向に沿って評価できれば、必ずしも明確に鳥瞰図を生成しなくともよい。
《エッジ情報による立体物の検出》
次に、図3に示す立体物の検出ブロックAに代えて動作させることが可能である、立体物の検出ブロックBについて説明する。立体物の検出ブロックBは、輝度差算出部35、エッジ線検出部36及び立体物検出部37で構成されるエッジ情報を利用して立体物を検出する。図13は、図3のカメラ10の撮像範囲等を示す図であり、図13(a)は平面図、図13(b)は、自車両Vから後側方における実空間上の斜視図を示す。図13(a)に示すように、カメラ10は所定の画角aとされ、この所定の画角aに含まれる自車両Vから後側方を撮像する。カメラ10の画角aは、図2に示す場合と同様に、カメラ10の撮像範囲に自車両Vが走行する車線に加えて、隣接する車線も含まれるように設定されている。
本例の検出領域A1,A2は、平面視(鳥瞰視された状態)において台形状とされ、これら検出領域A1,A2の位置、大きさ及び形状は、距離d1〜d4に基づいて決定される。同図に示す例の検出領域A1,A2は台形状に限らず、図2に示すように鳥瞰視された状態で矩形など他の形状であってもよい。
ここで、距離d1は、自車両Vから接地線L1,L2までの距離である。接地線L1,L2は、自車両Vが走行する車線に隣接する車線に存在する立体物が地面に接触する線を意味する。本実施形態においては、自車両Vの後側方において自車両Vの車線に隣接する左右の車線を走行する他車両VX等(2輪車等を含む)を検出することが目的である。このため、自車両Vから白線Wまでの距離d11及び白線Wから他車両VXが走行すると予測される位置までの距離d12から、他車両VXの接地線L1,L2となる位置である距離d1を略固定的に決定しておくことができる。
また、距離d1については、固定的に決定されている場合に限らず、可変としてもよい。この場合に、計算機30は、白線認識等の技術により自車両Vに対する白線Wの位置を認識し、認識した白線Wの位置に基づいて距離d11を決定する。これにより、距離d1は、決定された距離d11を用いて可変的に設定される。以下の本実施形態においては、他車両VXが走行する位置(白線Wからの距離d12)及び自車両Vが走行する位置(白線Wからの距離d11)は大凡決まっていることから、距離d1は固定的に決定されているものとする。
距離d2は、自車両Vの後端部から車両進行方向に伸びる距離である。この距離d2は、検出領域A1,A2が少なくともカメラ10の画角a内に収まるように決定されている。特に本実施形態において、距離d2は、画角aに区分される範囲に接するよう設定されている。距離d3は、検出領域A1,A2の車両進行方向における長さを示す距離である。この距離d3は、検出対象となる立体物の大きさに基づいて決定される。本実施形態においては、検出対象が他車両VX等であるため、距離d3は、他車両VXを含む長さに設定される。
距離d4は、図13(b)に示すように、実空間において他車両VX等のタイヤを含むように設定された高さを示す距離である。距離d4は、鳥瞰視画像においては図13(a)に示す長さとされる。なお、距離d4は、鳥瞰視画像において左右の隣接車線よりも更に隣接する車線(すなわち2車線隣りの車線)を含まない長さとすることもできる。自車両Vの車線から2車線隣の車線を含んでしまうと、自車両Vが走行している車線である自車線の左右の隣接車線に他車両VXが存在するのか、2車線隣りの車線に他車両VXが存在するのかについて、区別が付かなくなってしまうためである。
以上のように、距離d1〜距離d4が決定され、これにより検出領域A1,A2の位置、大きさ及び形状が決定される。具体的に説明すると、距離d1により、台形をなす検出領域A1,A2の上辺b1の位置が決定される。距離d2により、上辺b1の始点位置C1が決定される。距離d3により、上辺b1の終点位置C2が決定される。カメラ10から始点位置C1に向かって伸びる直線L3により、台形をなす検出領域A1,A2の側辺b2が決定される。同様に、カメラ10から終点位置C2に向かって伸びる直線L4により、台形をなす検出領域A1,A2の側辺b3が決定される。距離d4により、台形をなす検出領域A1,A2の下辺b4の位置が決定される。このように、各辺b1〜b4により囲まれる領域が検出領域A1,A2とされる。この検出領域A1,A2は、図13(b)に示すように、自車両Vから後側方における実空間上では真四角(長方形)となる。
図3に戻り、視点変換部31は、カメラ10による撮像にて得られた所定領域の撮像画像データを入力する。視点変換部31は、入力した撮像画像データに対して、鳥瞰視される状態の鳥瞰画像データに視点変換処理を行う。鳥瞰視される状態とは、上空から例えば鉛直下向き(又は、やや斜め下向き)に見下ろす仮想カメラの視点から見た状態である。この視点変換処理は、例えば特開2008−219063号公報に記載された技術によって実現することができる。
輝度差算出部35は、鳥瞰視画像に含まれる立体物のエッジを検出するために、視点変換部31により視点変換された鳥瞰視画像データに対して、輝度差の算出を行う。輝度差算出部35は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線に沿った複数の位置ごとに、当該各位置の近傍の2つの画素間の輝度差を算出する。輝度差算出部35は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線を1本だけ設定する手法と、鉛直仮想線を2本設定する手法との何れかによって輝度差を算出することができる。
鉛直仮想線を2本設定する具体的な手法について説明する。輝度差算出部35は、視点変換された鳥瞰視画像に対して、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する第1鉛直仮想線と、第1鉛直仮想線と異なり実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する第2鉛直仮想線とを設定する。輝度差算出部35は、第1鉛直仮想線上の点と第2鉛直仮想線上の点との輝度差を、第1鉛直仮想線及び第2鉛直仮想線に沿って連続的に求める。以下、この輝度差算出部35の動作について詳細に説明する。
輝度差算出部35は、図14(a)に示すように、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、検出領域A1を通過する第1鉛直仮想線La(以下、注目線Laという)を設定する。また輝度差算出部35は、注目線Laと異なり、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、検出領域A1を通過する第2鉛直仮想線Lr(以下、参照線Lrという)を設定する。ここで参照線Lrは、実空間における所定距離だけ注目線Laから離間する位置に設定される。なお、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する線とは、鳥瞰視画像においてはカメラ10の位置Psから放射状に広がる線となる。この放射状に広がる線は、鳥瞰視に変換した際に立体物が倒れ込む方向に沿う線である。
輝度差算出部35は、注目線La上に注目点Pa(第1鉛直仮想線上の点)を設定する。また輝度差算出部35は、参照線Lr上に参照点Pr(第2鉛直板想線上の点)を設定する。これら注目線La、注目点Pa、参照線Lr、参照点Prは、実空間上において図14(b)に示す関係となる。図14(b)から明らかなように、注目線La及び参照線Lrは、実空間上において鉛直方向に伸びた線であり、注目点Paと参照点Prとは、実空間上において略同じ高さに設定される点である。なお、注目点Paと参照点Prとは必ずしも厳密に同じ高さである必要はなく、注目点Paと参照点Prとが同じ高さとみなせる程度の誤差は許容される。
輝度差算出部35は、注目点Paと参照点Prとの輝度差を求める。仮に、注目点Paと参照点Prとの輝度差が大きいと、注目点Paと参照点Prとの間にエッジが存在すると考えられる。このため、図3に示したエッジ線検出部36は、注目点Paと参照点Prとの輝度差に基づいてエッジ線を検出する。
この点をより詳細に説明する。図15は、輝度差算出部35の詳細動作を示す図であり、図15(a)は鳥瞰視された状態の鳥瞰視画像を示し、図15(b)は、図15(a)に示した鳥瞰視画像の一部B1を拡大した図である。図15についても検出領域A1のみを図示して説明するが、検出領域A2についても同様の手順で輝度差を算出する。
カメラ10が撮像した撮像画像内に他車両VXが映っていた場合に、図15(a)に示すように、鳥瞰視画像内の検出領域A1に他車両VXが現れる。図15(b)に図15(a)中の領域B1の拡大図を示すように、鳥瞰視画像上において、他車両VXのタイヤのゴム部分上に注目線Laが設定されていたとする。この状態において、輝度差算出部35は、先ず参照線Lrを設定する。参照線Lrは、注目線Laから実空間上において所定の距離だけ離れた位置に、鉛直方向に沿って設定される。具体的には、本実施形態に係る立体物検出装置1において、参照線Lrは、注目線Laから実空間上において10cmだけ離れた位置に設定される。これにより、参照線Lrは、鳥瞰視画像上において、例えば他車両VXのタイヤのゴムから10cm相当だけ離れた他車両VXのタイヤのホイール上に設定される。
次に、輝度差算出部35は、注目線La上に複数の注目点Pa1〜PaNを設定する。図15(b)においては、説明の便宜上、6つの注目点Pa1〜Pa6(以下、任意の点を示す場合には単に注目点Paiという)を設定している。なお、注目線La上に設定する注目点Paの数は任意でよい。以下の説明では、N個の注目点Paが注目線La上に設定されたものとして説明する。
次に、輝度差算出部35は、実空間上において各注目点Pa1〜PaNと同じ高さとなるように各参照点Pr1〜PrNを設定する。そして、輝度差算出部35は、同じ高さ同士の注目点Paと参照点Prとの輝度差を算出する。これにより、輝度差算出部35は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線に沿った複数の位置(1〜N)ごとに、2つの画素の輝度差を算出する。輝度差算出部35は、例えば第1注目点Pa1とは、第1参照点Pr1との間で輝度差を算出し、第2注目点Pa2とは、第2参照点Pr2との間で輝度差を算出することとなる。これにより、輝度差算出部35は、注目線La及び参照線Lrに沿って、連続的に輝度差を求める。すなわち、輝度差算出部35は、第3〜第N注目点Pa3〜PaNと第3〜第N参照点Pr3〜PrNとの輝度差を順次求めていくこととなる。
輝度差算出部35は、検出領域A1内において注目線Laをずらしながら、上記の参照線Lrの設定、注目点Pa及び参照点Prの設定、輝度差の算出といった処理を繰り返し実行する。すなわち、輝度差算出部35は、注目線La及び参照線Lrのそれぞれを、実空間上において接地線L1の延在方向に同一距離だけ位置を変えながら上記の処理を繰り返し実行する。輝度差算出部35は、例えば、前回処理において参照線Lrとなっていた線を注目線Laに設定し、この注目線Laに対して参照線Lrを設定して、順次輝度差を求めていくことになる。
図3に戻り、エッジ線検出部36は、輝度差算出部35により算出された連続的な輝度差から、エッジ線を検出する。例えば、図15(b)に示す場合、第1注目点Pa1と第1参照点Pr1とは、同じタイヤ部分に位置するために、輝度差は、小さい。一方、第2〜第6注目点Pa2〜Pa6はタイヤのゴム部分に位置し、第2〜第6参照点Pr2〜Pr6はタイヤのホイール部分に位置する。したがって、第2〜第6注目点Pa2〜Pa6と第2〜第6参照点Pr2〜Pr6との輝度差は大きくなる。このため、エッジ線検出部36は、輝度差が大きい第2〜第6注目点Pa2〜Pa6と第2〜第6参照点Pr2〜Pr6との間にエッジ線が存在することを検出することができる。
具体的には、エッジ線検出部36は、エッジ線を検出するにあたり、先ず下記の数式1に従って、i番目の注目点Pai(座標(xi,yi))とi番目の参照点Pri(座標(xi’,yi’))との輝度差から、i番目の注目点Paiに属性付けを行う。
[数1]
I(xi,yi)>I(xi’,yi’)+tのとき
s(xi,yi)=1
I(xi,yi)<I(xi’,yi’)−tのとき
s(xi,yi)=−1
上記以外のとき
s(xi,yi)=0
上記数式1において、tは閾値を示し、I(xi,yi)はi番目の注目点Paiの輝度値を示し、I(xi’,yi’)はi番目の参照点Priの輝度値を示す。上記数式1によれば、注目点Paiの輝度値が、参照点Priに閾値tを加えた輝度値よりも高い場合には、当該注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘1’となる。一方、注目点Paiの輝度値が、参照点Priから閾値tを減じた輝度値よりも低い場合には、当該注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘−1’となる。注目点Paiの輝度値と参照点Priの輝度値とがそれ以外の関係である場合には、注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘0’となる。この閾値tは、予め設定しておき、図3に示す制御部39が発する制御命令に従い変更することもできるが、その詳細については後述する。
次にエッジ線検出部36は、下記数式2に基づいて、注目線Laに沿った属性sの連続性c(xi,yi)から、注目線Laがエッジ線であるか否かを判定する。
[数2]
s(xi,yi)=s(xi+1,yi+1)のとき(且つ0=0を除く)、
c(xi,yi)=1
上記以外のとき、
c(xi,yi)=0
注目点Paiの属性s(xi,yi)と隣接する注目点Pai+1の属性s(xi+1,yi+1)とが同じである場合には、連続性c(xi,yi)は‘1’となる。注目点Paiの属性s(xi,yi)と隣接する注目点Pai+1の属性s(xi+1,yi+1)とが同じではない場合には、連続性c(xi,yi)は‘0’となる。
次にエッジ線検出部36は、注目線La上の全ての注目点Paの連続性cについて総和を求める。エッジ線検出部36は、求めた連続性cの総和を注目点Paの数Nで割ることにより、連続性cを正規化する。エッジ線検出部36は、正規化した値が閾値θを超えた場合に、注目線Laをエッジ線と判断する。なお、閾値θは、予め実験等によって設定された値である。閾値θは予め設定しておいてもよいし、後述する制御部39のレンズ状態判断部38の判断結果に応じた制御命令に従い変更してもよい。
すなわち、エッジ線検出部36は、下記数式3に基づいて注目線Laがエッジ線であるか否かを判断する。そして、エッジ線検出部36は、検出領域A1上に描かれた注目線Laの全てについてエッジ線であるか否かを判断する。
[数3]
Σc(xi,yi)/N>θ
図3に戻り、立体物検出部37は、エッジ線検出部36により検出されたエッジ線の量に基づいて立体物を検出する。上述したように、本実施形態に係る立体物検出装置1は、実空間上において鉛直方向に伸びるエッジ線を検出する。鉛直方向に伸びるエッジ線が多く検出されるということは、検出領域A1,A2に立体物が存在する可能性が高いということである。このため、立体物検出部37は、エッジ線検出部36により検出されたエッジ線の量に基づいて立体物を検出する。さらに、立体物検出部37は、立体物を検出するに先立って、エッジ線検出部36により検出されたエッジ線が正しいものであるか否かを判定する。立体物検出部37は、エッジ線上の鳥瞰視画像のエッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。エッジ線上の鳥瞰視画像の輝度変化が閾値よりも大きい場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものと判断する。一方、エッジ線上の鳥瞰視画像の輝度変化が閾値よりも大きくない場合には、当該エッジ線が正しいものと判定する。なお、この閾値は、実験等により予め設定された値である。
図16は、エッジ線の輝度分布を示す図であり、図16(a)は検出領域A1に立体物としての他車両VXが存在した場合のエッジ線及び輝度分布を示し、図16(b)は検出領域A1に立体物が存在しない場合のエッジ線及び輝度分布を示す。
図16(a)に示すように、鳥瞰視画像において他車両VXのタイヤゴム部分に設定された注目線Laがエッジ線であると判断されていたとする。この場合、注目線La上の鳥瞰視画像の輝度変化はなだらかなものとなる。これは、カメラ10により撮像された画像が鳥瞰視画像に視点変換されたことにより、他車両VXのタイヤが鳥瞰視画像内で引き延ばされたことによる。一方、図16(b)に示すように、鳥瞰視画像において路面に描かれた「50」という白色文字部分に設定された注目線Laがエッジ線であると誤判定されていたとする。この場合、注目線La上の鳥瞰視画像の輝度変化は起伏の大きいものとなる。これは、エッジ線上に、白色文字における輝度が高い部分と、路面等の輝度が低い部分とが混在しているからである。
以上のような注目線La上の輝度分布の相違に基づいて、立体物検出部37は、エッジ線が誤判定により検出されたものか否かを判定する。立体物検出部37は、エッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値よりも大きい場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものであると判定する。そして、当該エッジ線は、立体物の検出には使用しない。これにより、路面上の「50」といった白色文字や路肩の雑草等がエッジ線として判定されてしまい、立体物の検出精度が低下することを抑制する。
具体的には、立体物検出部37は、下記数式4,5の何れかにより、エッジ線の輝度変化を算出する。このエッジ線の輝度変化は、実空間上における鉛直方向の評価値に相当する。下記数式4は、注目線La上のi番目の輝度値I(xi,yi)と、隣接するi+1番目の輝度値I(xi+1,yi+1)との差分の二乗の合計値によって輝度分布を評価する。下記数式5は、注目線La上のi番目の輝度値I(xi,yi)と、隣接するi+1番目の輝度値I(xi+1,yi+1)との差分の絶対値の合計値よって輝度分布を評価する。
[数4]
鉛直相当方向の評価値=Σ[{I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)}2]
[数5]
鉛直相当方向の評価値=Σ|I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)|
なお、数式5に限らず、下記数式6のように、閾値t2を用いて隣接する輝度値の属性bを二値化して、当該二値化した属性bを全ての注目点Paについて総和してもよい。
[数6]
鉛直相当方向の評価値=Σb(xi,yi)
但し、|I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)|>t2のとき、
b(xi,yi)=1
上記以外のとき、
b(xi,yi)=0
注目点Paiの輝度値と参照点Priの輝度値との輝度差の絶対値が閾値t2よりも大きい場合、当該注目点Pa(xi,yi)の属性b(xi,yi)は‘1’となる。それ以外の関係である場合には、注目点Paiの属性b(xi,yi)は‘0’となる。この閾値t2は、注目線Laが同じ立体物上にないことを判定するために実験等によって予め設定されている。そして、立体物検出部37は、注目線La上の全注目点Paについての属性bを総和して、鉛直相当方向の評価値を求めて、エッジ線が正しいものかを判定する。
次に、本実施形態に係るエッジ情報を利用した立体物検出方法について説明する。図17及び図18は、本実施形態に係る立体物検出方法の詳細を示すフローチャートである。なお、図17及び図18においては、便宜上、検出領域A1を対象とする処理について説明するが、検出領域A2についても同様の処理が実行される。
図17に示すように、先ずステップS21において、カメラ10は、画角a及び取付位置によって特定された所定領域を撮像する。次に視点変換部31は、ステップS22において、ステップS21にてカメラ10により撮像された撮像画像データを入力し、視点変換を行って鳥瞰視画像データを生成する。
次に輝度差算出部35は、ステップS23において、検出領域A1上に注目線Laを設定する。このとき、輝度差算出部35は、実空間上において鉛直方向に伸びる線に相当する線を注目線Laとして設定する。次に輝度差算出部35は、ステップS24において、検出領域A1上に参照線Lrを設定する。このとき、輝度差算出部35は、実空間上において鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、注目線Laと実空間上において所定距離だけ離れた線を参照線Lrとして設定する。
次に輝度差算出部35は、ステップS25において、注目線La上に複数の注目点Paを設定する。この際に、輝度差算出部35は、エッジ線検出部36によるエッジ検出時に問題とならない程度の数の注目点Paを設定する。また、輝度差算出部35は、ステップS26において、実空間上において注目点Paと参照点Prとが略同じ高さとなるように、参照点Prを設定する。これにより、注目点Paと参照点Prとが略水平方向に並ぶこととなり、実空間上において鉛直方向に伸びるエッジ線を検出しやすくなる。
次に輝度差算出部35は、ステップS27において、実空間上において同じ高さとなる注目点Paと参照点Prとの輝度差を算出する。次にエッジ線検出部36は、上記の数式1に従って、各注目点Paの属性sを算出する。次にエッジ線検出部36は、ステップS28において、上記の数式2に従って、各注目点Paの属性sの連続性cを算出する。次にエッジ線検出部36は、ステップS29において、上記数式3に従って、連続性cの総和を正規化した値が閾値θより大きいか否かを判定する。正規化した値が閾値θよりも大きいと判断した場合(S29:YES)、エッジ線検出部36は、ステップS30において、当該注目線Laをエッジ線として検出する。そして、処理はステップS31に移行する。正規化した値が閾値θより大きくないと判断した場合(S29:NO)、エッジ線検出部36は、当該注目線Laをエッジ線として検出せず、処理はステップS31に移行する。この閾値θは予め設定しておくことができるが、制御部39に制御命令に応じて変更することもできる。
ステップS31において、計算機30は、検出領域A1上に設定可能な注目線Laの全てについて上記のステップS23〜ステップS30の処理を実行したか否かを判断する。全ての注目線Laについて上記処理をしていないと判断した場合(S31:NO)、ステップS23に処理を戻して、新たに注目線Laを設定して、ステップS31までの処理を繰り返す。一方、全ての注目線Laについて上記処理をしたと判断した場合(S31:YES)、処理は図18のステップS32に移行する。
図18のステップS32において、立体物検出部37は、図17のステップS30において検出された各エッジ線について、当該エッジ線に沿った輝度変化を算出する。立体物検出部37は、上記数式4,5,6の何れかの式に従って、エッジ線の輝度変化を算出する。次に立体物検出部37は、ステップS33において、エッジ線のうち、輝度変化が所定の閾値よりも大きいエッジ線を除外する。すなわち、輝度変化の大きいエッジ線は正しいエッジ線ではないと判定し、エッジ線を立体物の検出には使用しない。これは、上述したように、検出領域A1に含まれる路面上の文字や路肩の雑草等がエッジ線として検出されてしまうことを抑制するためである。したがって、所定の閾値とは、予め実験等によって求められた、路面上の文字や路肩の雑草等によって発生する輝度変化に基づいて設定された値となる。
次に立体物検出部37は、ステップS34において、エッジ線の量が第2閾値β以上であるか否かを判断する。なお、この第2閾値βは、予め実験等によって求めておいて設定しておき、図3に示す制御部39が発する制御命令に従い変更することもできるが、その詳細については後述する。例えば、検出対象の立体物として四輪車を設定した場合、当該第2閾値βは、予め実験等によって検出領域A1内において出現した四輪車のエッジ線の数に基づいて設定される。エッジ線の量が第2閾値β以上であると判定した場合(S34:YES)、立体物検出部33により検出された立体物が所定時間T以上に渡って継続して検出される場合(S35:YES)、立体物検出部37は、ステップS36において、検出領域A1内に立体物が存在すると検出する(S36)。一方、エッジ線の量が第2閾値β以上ではないと判定した場合(S34:NO)、立体物検出部33により検出された立体物が所定時間T以上に渡って継続して検出されなかった場合(S35:NO)、立体物検出部37は、検出領域A1内に立体物が存在しないと判断する(S37)。この第2閾値βは予め設定しておくことができるが、制御部39に制御命令に応じて変更することもできる。なお、検出された全ての立体物は、自車両Vが走行する車線の隣の隣接車線を走行する他車両VXであると判断してもよいし、他車両VXの特徴として、検出した立体物の自車両Vに対する相対速度を考慮して隣接車線を走行する他車両VXであるか否かを判断してもよい。
以上のように、本実施形態のエッジ情報を利用した立体物の検出方法によれば、検出領域A1,A2に存在する立体物を検出するために、鳥瞰視画像に対して実空間において鉛直方向に伸びる線分としての鉛直仮想線を設定する。そして、鉛直仮想線に沿った複数の位置ごとに、当該各位置の近傍の2つの画素の輝度差を算出し、当該輝度差の連続性に基づいて立体物の有無を判定することができる。
具体的には、鳥瞰視画像における検出領域A1,A2に対して、実空間において鉛直方向に伸びる線分に該当する注目線Laと、注目線Laとは異なる参照線Lrとを設定する。そして、注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとの輝度差を注目線La及び参照線Laに沿って連続的に求める。このように、点同士の輝度差を連続的に求めることにより、注目線Laと参照線Lrとの輝度差を求める。注目線Laと参照線Lrとの輝度差が高い場合には、注目線Laの設定箇所に立体物のエッジがある可能性が高い。これによって、連続的な輝度差に基づいて立体物を検出することができる。特に、実空間において鉛直方向に伸びる鉛直仮想線同士との輝度比較を行うために、鳥瞰視画像に変換することによって立体物が路面からの高さに応じて引き伸ばされてしまっても、立体物の検出処理が影響されることはない。したがって、本例の方法によれば、立体物の検出精度を向上させることができる。
また、本例では、鉛直仮想線付近の略同じ高さの2つの点の輝度差を求める。具体的には、実空間上で略同じ高さとなる注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとから輝度差を求めるので、鉛直方向に伸びるエッジが存在する場合における輝度差を明確に検出することができる。
更に、本例では、注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとの輝度差に基づいて注目点Paに属性付けを行い、注目線Laに沿った属性の連続性cに基づいて当該注目線Laがエッジ線であるかを判断するので、輝度の高い領域と輝度の低い領域との境界をエッジ線として検出し、人間の自然な感覚に沿ったエッジ検出を行うことができる。この効果について詳細に説明する。図19は、エッジ線検出部36の処理を説明する画像例を示す図である。この画像例は、輝度の高い領域と輝度の低い領域とが繰り返される縞模様を示す第1縞模様101と、輝度の低い領域と輝度の高い領域とが繰り返される縞模様を示す第2縞模様102とが隣接した画像である。また、この画像例は、第1縞模様101の輝度が高い領域と第2縞模様102の輝度の低い領域とが隣接すると共に、第1縞模様101の輝度が低い領域と第2縞模様102の輝度が高い領域とが隣接している。この第1縞模様101と第2縞模様102との境界に位置する部位103は、人間の感覚によってはエッジとは知覚されない傾向にある。
これに対し、輝度の低い領域と輝度が高い領域とが隣接しているために、輝度差のみでエッジを検出すると、当該部位103はエッジとして認識されてしまう。しかし、エッジ線検出部36は、部位103における輝度差に加えて、当該輝度差の属性に連続性がある場合にのみ部位103をエッジ線として判定するので、エッジ線検出部36は、人間の感覚としてエッジ線として認識しない部位103をエッジ線として認識してしまう誤判定を抑制でき、人間の感覚に沿ったエッジ検出を行うことができる。
さらに、本例では、エッジ線検出部36により検出されたエッジ線の輝度変化が所定の閾値よりも大きい場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものと判断する。カメラ10により取得された撮像画像を鳥瞰視画像に変換した場合、当該撮像画像に含まれる立体物は、引き伸ばされた状態で鳥瞰視画像に現れる傾向がある。例えば、上述したように他車両VXのタイヤが引き伸ばされた場合に、タイヤという1つの部位が引き伸ばされるため、引き伸ばされた方向における鳥瞰視画像の輝度変化は小さい傾向となる。これに対し、路面に描かれた文字等をエッジ線として誤判定した場合に、鳥瞰視画像には、文字部分といった輝度が高い領域と路面部分といった輝度が低い領域とが混合されて含まれる。この場合に、鳥瞰視画像において、引き伸ばされた方向の輝度変化は大きくなる傾向がある。したがって、本例のようにエッジ線に沿った鳥瞰視画像の輝度変化を判定することによって、誤判定により検出されたエッジ線を認識することができ、立体物の検出精度を高めることができる。
次に、レンズ状態判断部38について説明する。本実施形態のレンズ状態判断部38は、カメラ10の撮像画像に基づいて、レンズ11に泡が付着した所定の泡付着状態であるかを判断する。本実施形態では、後述するレンズ洗浄装置100を用いてレンズ11を洗浄する。レンズ11の洗浄時には、泡が発生し、レンズ11に付着する。この洗浄に用いられる洗浄液は、水又は洗剤を含む水である。洗剤は、界面活性剤、キレート剤、酵素などの洗浄成分を含む。洗剤、特に界面活性剤を含む洗剤を用いると、洗浄時に泡が発生する。また、水を用いて洗浄した場合であっても、レンズ11表面に残留した洗剤や有機物により泡が生じる場合がある。
ここで、レンズ11に泡が付着し、レンズ11が所定の泡付着状態であるか否かを判断するための、代表的な3つの手法を説明する。
第1の手法は、泡の像に対応するエッジの態様に基づいて、レンズ11が所定の泡付着状態であるか否かを判断する手法である。まず、本実施形態のレンズ状態判断部38は、カメラ10の撮像画像から所定の曲率値域のエッジを検出する。泡の存在に起因して検出されるエッジは、円弧に近似した曲率を示す傾向がある。このため、検出対象となる曲率値域は、円の曲率を基準に定義する。本実施形態のレンズ状態判断部38は、撮像画像から所定の曲率値域のエッジが検出された場合に、レンズ11に泡が付着している状態であると判断する。次に、本実施形態のレンズ状態判断部38は、所定の曲率値域のエッジが、1フレームの撮像画像内に所定数以上検出された場合に、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断する。レンズ11に付着した泡の数が少なければ、立体物や他車両の誤検出を誘引する可能性は低く、他方、撮像画像から所定の曲率値域のエッジが所定数以上検出され、レンズ11に多くの泡が付着している泡付着状態である場合には、立体物や他車両の誤検出を誘引する可能性が高いからである。
第2の手法は、自車両のバンパーなどの像に対応するエッジの変化に基づいて、レンズ11が所定の泡付着状態であるか否かを判断する手法である。まず、本実施形態のレンズ状態判断部38は、設置位置、撮像特性が特定されたカメラ10により撮像された基準画像のエッジを記憶する。基準画像は、カメラ10の撮像画像に常に映り込む、自車両のバンパー、自車両のナンバープレート、又は自車両のカメラ10のカバーなどの固定物のエッジに対応する画像である。カメラ10のレンズ11に泡が付着している場合には、記憶している基準画像のエッジに変化が生じる。例えば、レンズ11に泡が付着していると、その泡が固定物のエッジに対応する画像を乱すので、バンパーなどの固定物のエッジがはっきり見えなくなる。具体的には、基準画像から得られるエッジの長さ(平均値などの代表値)が短くなる、連続するエッジとして統合されたエッジの本数が少なくなるといった現象がみられる。本実施形態のレンズ状態判断部38は、記憶している基準画像のエッジに比べて所定量以上の変化があった場合は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断する。本来であれば固定物については基準画像と同じエッジが検出されるところ、レンズ11の泡の像が撮像画像に影響を与え、基準画像とは異なるエッジが検出されているからである。レンズ11に付着した泡の数が少なく、基準画像のエッジの変化が小さければ、立体物や他車両の誤検出を誘引する可能性は低く、他方、レンズ11に多くの泡が付着し、基準画像のエッジの変化が大きければ、立体物や他車両の誤検出を誘引する可能性が高いからである。
第3の手法は、撮像画像の明るさの変化に基づいて、レンズ11が所定の泡付着状態であるか否かを判断する手法である。まず、本実施形態のレンズ状態判断部38は、設置位置、撮像特性が特定されたカメラ10の撮像画像の明るさを記憶する。本実施形態では、撮像画像の明るさとして、撮像画像全体の明るさの平均値を記憶する。この撮像画像の明るさは、車両外部の明るさに対応づけて記憶してもよい。地域や時刻に応じて車両外部の明るさには差があり、撮像画像の明るさに影響を与えるからである。カメラ10のレンズ11に泡が付着している場合には、記憶している撮像画像の明るさに変化が生じる。レンズ11に泡が付着している場合には泡が光を拡散するため、撮像画像の明るさは明るくなる。車載されるカメラ10には一般に外界の明るさの影響を抑制するために保護用のケースに遮光板が設けられており、遮光板により覆われる部分に対応する部分の明るさは低く抑制され、撮像画像全体の明るさの平均値を低下させる。しかし、レンズ11に泡が付着していると、遮光板に覆われる部分にも反射した光が入射し、撮像画像全体の明るさの平均値を高くする傾向がみられる。発明者らの実験によれば、レンズ11に水が付着していても、遮光板に覆われる部分にまで光を反射させることはなく、撮像画像全体の明るさの変化は小さい。レンズ11に付着した異物が泡である場合に、撮像画像の明るさが有意に変化する。本実施形態ではこの特性を利用し、撮像画像全体の明るさが明るく変化した場合には、レンズ11に泡が付着したと判断する。そして、本実施形態のレンズ状態判断部38は、記憶している撮像画像の明るさが所定値以上明るくなった場合は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断する。撮像画像の明るさの変化が小さく、レンズ11に付着した泡が少量であれば、立体物や他車両の誤検出を誘引する可能性は低く、他方、撮像画像の明るさの変化が所定値以上であり、レンズ11に多量の泡が付着している場合には立体物や他車両の誤検出を誘引する可能性が高いと判断する。
本実施形態のレンズ状態判断部38は、以上説明した手法により、レンズ11が所定の泡付着状態であるか否かを判断し、その判断結果を立体物検出部33、37、立体物判断部34、又は制御部39へ送出する。
ここで、洗浄後のレンズ11の状態及び洗浄後の撮像画像について説明する。
図20Aは、レンズ11を洗浄した直後のレンズ11の状態を説明するための図であり、図20Bは、レンズ11を洗浄した直後の撮像画像K1の一例を示す図である。また、図21Aはレンズを洗浄した後、所定時間走行後のカメラのレンズの状態を説明するための図であり、図21Bはレンズを洗浄した後、所定時間走行後に撮像された撮像画像K2の一例を示す図である。なお、本実施形態のレンズ11は、撮像対象物と撮像素子との間に介在する透光性のある部材であって、光の屈折により光路を制御する機能を有するものに加えて、保護用のカバーなどをも含む。
図20A、図21Aに示すように、レンズ11を介して得られる画像情報K1、K2は、自車両Vが走行する道路の路面RDの像と、この路面RDの上に広がる後方の空SKの像とを含む。図20A、図21Aの下側の映像はライセンスプレートLP、バンパーBPの像であり、上側の薄墨の部分はカメラ10のケースCに対応する像である。また、レンズ11に泡が付着すると、レンズ11を介して撮像される画像情報に影響を与える。特に、ライセンスプレートLPの像のエッジや、ケースCの像のエッジに影響を与える。さらに、レンズ11に泡が付着すると、泡が光を反射させ、ケースCに覆われる部分にも光を送り込み、レンズ11を介して撮像される画像情報の明るさが変化する。
図20Aに示すように、レンズ11の洗浄直後には、洗浄により発生した泡が、レンズ11の表面全体に離散的に付着する。レンズ11に泡が付着すると、レンズ11を介して撮像される画像情報には泡の像が映り込む。図20Bは、レンズ11の洗浄直後に撮像された撮像画像K1おける、洗浄により発生した泡の分布を示す。泡BUは、撮像画像K1の全体に離散的に分布する。
発明者らの実験によれば、レンズ11の洗浄後に車両が走行すると、レンズ11上の泡は、撮像画像の中央部0からレンズ11の周縁方向に向かって移動する傾向が見られる。レンズ11の洗浄後に、自車両が走行すると、図21Aに示すように、レンズ11上の泡は、レンズ11のケースCとの境界やレンズ11の縁に集まることが確認された。図21Bは、レンズ11の洗浄後、車両が走行した後に撮像された撮像画像K2おける、洗浄により発生した泡の分布を示す。さらに時間が経過すると、泡は吹き飛ばされたり、割れたりしてレンズ11上から消失する。
レンズ11上の泡BUは、所定の領域に集合する。泡BUが集合する領域は、撮像画像K2の中央部0から所定距離以上離隔した所定の領域である。本実施形態では、識別のために、この領域を「周縁領域」と称する。中央部0から離隔する所定距離は、中央部0から方向ごとに定義できる。例えば、中央部0から+x方向に所定距離x1だけ離隔した位置に所定の領域、つまり「周縁領域」を定義してもよいし、中央部0から−x方向に所定距離x2だけ離隔した位置に領域、つまり「周縁領域」を定義してもよい。距離x1とx2は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。同様に、中央部0から+y方向に所定距離y1だけ離隔した位置に周縁領域を定義してもよいし、中央部0から−y方向に所定距離y2だけ離隔した位置に周縁領域を定義してもよい。距離y1とy2は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。特に限定されないが、本実施形態では、図21Bに示す、列k1〜k3及び行m1〜m6に対応する領域(薄墨で示すEB1領域)を周縁領域として定義する。本実施形態では、図21Bに示す、列k13〜k15及び行m1〜m6に対応する領域を周縁領域(薄墨で示すEB2領域)として定義する。本実施形態では、行m1〜m2及び列k1〜k15に対応する領域(薄墨で示すEB3領域)を周縁領域として定義する。本実施形態では、行m5〜m6及び列k1〜k15に対応する領域を周縁領域として定義する。なお、周縁領域を定義する距離はx方向、y方向に限定されず、中央部0の周囲360度のいずれの方向においても定義できる。中央部0を基準に定義された円弧や楕円弧の外側(レンズ11の縁側)を周縁領域として定義してもよい。
発明者らの実験によると、特に、撮像画像K2のうち所定の上側領域に、泡が集合する傾向が見られた。上側領域とは、撮像画像K2の中央部0から所定距離以上離隔するとともに、自車両Vの車体(バンパー、ナンバープレート)から+y方向に、所定距離以上離隔した領域である。このため、本実施形態では、行m1〜m2及び列k1〜k15に対応する領域を周縁領域EB3として定義する。
泡BUは、時間の経過に伴いレンズ11の表面を移動する。特に自車両Vが走行すると速く移動する。洗浄後の撮像画像には、レンズ11の洗浄により生じた泡BUの像が映り込む。そして、泡BUの像BUは泡の移動に伴い移動する。泡が付着したレンズ11により撮像された画像情報K1、K2は、自車両Vの移動とともに刻々変化する。このため、移動する泡の像BUのエッジは、画像情報K1、K2において自車両Vに対して相対的に移動する物体のエッジとして検出される可能性がある。
レンズ状態判断部38により、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、撮像画像に影響を与える可能性がある。図20A、図21Aに示すような泡BUが付着したレンズ11を介して撮像された画像情報K2を用いて画像変換処理を行うと、泡の像BUに応じた差分波形情報やエッジ情報が導出される。このような画像情報に基づいて上述した手法で差分波形情報又はエッジ情報を算出し、立体物検出処理を行うと洗浄液の泡の像Wを他車両VXの像と誤認識する場合がある。
発明者らの実験によれば、自車両Vの車速が速いほど、発生した泡BUがレンズ11上を移動する速度は速い傾向があることが分かった。また、自車両Vの車速が速いほど、泡BUが周縁領域EBへ至る時間は短いことが分かった。自車両Vの車速が速いほど、泡BBUがレンズ11の表面から消失する時間も早いことが分かった。
《立体物の最終判断》
図3に戻り、本実施形態における立体物の判断手法について説明する。本例の立体物検出装置1は、上述した2つの立体物検出部33(又は立体物検出部37)と、立体物判断部34と、レンズ状態判断部38と、制御部39とを備える。立体物判断部34は、立体物検出部33(又は立体物検出部37)による検出結果に基づいて、検出された立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであるか否かを最終的に判断する。立体物検出部33(又は立体物検出部37)、立体物判断部34は、制御部39の指令に従い、レンズ状態判断部38の判断結果を反映させた立体物の検出を行う。
立体物判断部34について説明する。本実施形態の立体物判断部34は、立体物検出部33、37において検出された立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであるか否かを最終的に判断する。具体的に、立体物判断部34は、差分波形情報から抽出される差分波形のピークの数、ピーク値などが所定値域であり、立体物の移動速度が所定値域以内であるときに、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであるか否かを最終的に判断する。立体物判断部34は、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると判断される状態が所定時間以上継続した場合に、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると最終的に判断してもよい。
立体物検出部37は、エッジ情報から抽出されるエッジの連続性、総和の正規化した値、エッジ線の量などが所定値域であるときに、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであるか否かを最終的に判断する。立体物検出部37は、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると判断される状態が所定時間以上継続した場合に、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると最終的に判断してもよい。
また、本実施形態の立体物判断部34は、検出された立体物の相対速度のばらつきが所定のばらつき評価値域以内であるときに、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると判断する。具体的には、各フレームの撮像画像から算出された立体物の相対速度の標準偏差などのばらつきの評価値が所定のばらつき評価値域以内である場合に、立体物が検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると判断する。
カメラ10のレンズ11に異物が付着している場合には、この異物に対応する画像に基づいて立体物が誤検出される場合がある。しかし、レンズ11の異物に起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきは、実際に存在する立体物に起因して検出される立体物(実像)のばらつきに比べて小さい。また、道路の路肩側に配される草木などの自然物や建造物の影などに起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきは、実際に存在する立体物に起因して検出される立体物(実像)のばらつきに比べて大きい。本実施形態では、この特性に基づいて、所定のばらつき評価値域を定義する。本実施形態におけるばらつき評価値域の下限値RLは、レンズ11に付着した異物に起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきの代表値(平均値、中央値、最頻値など)よりも大きい値とする。一方、ばらつき評価値域の下限値RUは、道路の路肩側に配される草木などの自然物や建造物の影などに起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきの代表値(平均値、中央値、最頻値など)よりも小さい値とする。ばらつき評価値域の幅RWは、ばらつき評価値域の下限値RLからばらつき評価値域の下限値RUの間である。
上述した立体物の判断は、立体物の検出結果に基づいて行われるので、立体物の検出結果は立体物の判断結果に影響を与える。つまり、立体物の検出処理において、立体物が検出されたという結果が出力されることが抑制されれば、立体物が他車両であるとする結果の出力は抑制される。他方、立体物の検出処理において、立体物が検出されたという結果が出力されることが促進されれば、立体物が他車両であるとする結果の出力は促進される。
立体物判断部34が、検出された立体物は検出領域A1,A2に存在する他車両VXであると判断した場合には、乗員への報知などの処理が実行される。この立体物判断部34は、制御部39の制御命令に従い、検出された立体物が他車両VXであると判断することを抑制することができる。制御部39は、レンズ状態判断部38の判断結果に応じて制御命令を生成する。
ところで、図20A,B、図21A,Bに示すように、レンズ11に泡BUが付着すると、レンズ11を介して取得される撮像画像に影響が生じる。本実施形態では、レンズ11に付着した泡BUが立体物の判断結果に及ぼす影響を低減させるため、レンズ状態判断部38によりレンズ11が、上述の所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出されること、及び検出された立体物が他車両であると判断されることを抑制する。
本実施形態の制御部39は、レンズ11が、上述の所定の泡付着状態であると判断された場合に、レンズ11に付着した泡BUの存在に起因して検出された立体物を誤って他車両VXと判断することを防止するための制御命令を生成し、立体物検出部33、37、立体物判断部34に対して送出する。本実施形態の計算機30はコンピュータであるため、立体物検出処理、立体物判断処理、レンズ状態判断処理に対する制御命令はそれぞれの処理のプログラムに予め組み込んでもよいし、実行時に送出してもよい。
本実施形態の制御部39は、以下の手法により、立体物が検出されることを抑制する。本実施形態において「立体物」には「他車両VX」を含む。制御部39は、立体物が検出されること、検出された立体物が他車両であると判断されることを抑制する。
第1に、本実施形態の制御部39は、レンズ状態判断部38によりレンズ11が、上述の所定の泡付着状態であると判断された場合には、カメラ10の撮像画像において定義された所定の周縁領域に含まれる画像に基づいて立体物が検出されることを抑制する。上述したように、レンズ11に付着した泡BUは、自車両Vが走行すると中央部0から離隔する方向へ移動する。そして、図21A及び図21Bに示すように、中央部0から所定距離以上離れた領域である周縁領域EBに留まる傾向がある。周縁領域EBに移動した泡BUは重なり合い、高密度に存在するので、立体物検出及び立体物判断の精度を低下させる可能性がある。このため、本実施形態の制御部39は、図21Bに示すように撮像画像K2の左側周縁部EB1、右側周縁部EB2、又は上側周縁部EB3に、周縁領域EBを設定する。もちろん、カメラ10の位置やレンズ11の形状に応じて、左側周縁部EB1、右側周縁部EB2、又は上側周縁部EB3のうち、二つ以上を組み合わせて設定してもよい。制御部39は、この周縁領域EBから立体物が検出され、検出された立体物が他車両であると判断されることを抑制する。
具体的に、制御部39は、この周縁領域EBをマスクし、画像情報を立体物判断に用いられる情報として取得しないようにしてもよい。制御部39は、取得した撮像画像から周縁領域EBに対応する画像情報を削除してもよい。制御部39は、周縁領域EBに対応する画像情報に基づいて立体物検出処理又は立体物判断処理を行う際に、立体物検出処理又は立体物判断処理において用いる閾値を、周縁領域EB以外の領域に対応する画像情報に基づく各処理の閾値と異なる値としてもよい。なお、この閾値の変更により立体物の検出、他車両の判断を抑制する手法については、後にまとめて説明する。
このように、本実施形態では、撮像画像の外周側に予め定義された周縁領域EBから立体物が検出され、検出された立体物が他車両であると判断されることを抑制するので、泡BUが留まる可能性の高い領域の画像情報から立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制できる。この結果、レンズ11に付着した泡BUに起因する像を、立体物(他車両を含む)と誤判断されることを抑制できる。一方、周縁領域EB以外の領域については、立体物が検出されること、及び検出された立体物が他車両であると判断されることを抑制しないので、レンズ11に付着した泡BUの影響を抑えつつ、泡BUの影響の低い画像情報から立体物の検出及び立体物の判断を継続して行うことができる。この結果、信頼性の高い立体物検出結果を出力できる。
また、発明者らの実験によれば、レンズ11上の泡は、レンズ11の下側や左右横側よりも、上側へ移動する傾向が相対的に高いことが確認された。レンズ11の上側とは、重力方向とは略反対方向に沿う方向である。このため、本実施形態の制御部39は、図22Aに示すように、撮像画像又はレンズ11の中央部から上側に所定距離だけ離隔した部分に対応する周縁領域EBを定義する。本実施形態において、制御部39は、カメラ10のケースCの周縁Fに沿って周縁領域EBを設定する。本実施形態の制御部39は、この周縁領域EBから立体物が検出され、検出された立体物が他車両であると判断されることを抑制させる。周縁領域EBは、撮像画像の中央部0を基準に定義してもよいし、レンズ11の中央部に基づいて定義してもよい。このように、本実施形態では、車載のカメラ10のレンズ11に付着した泡BUの動きの傾向に基づいて、撮像画像又はレンズ11の中央部から上側に所定距離だけ離隔した位置に周縁領域EBを定義する。このため、レンズ11上において泡が存在する確率の高い部分で捉えられた画像情報に基づいて立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制できる。この結果、レンズ11に付着した泡BUに起因する像を、立体物(他車両を含む)と誤判断されることを防止できる。
本実施形態の制御部39は、立体物の検出のために設定された検出領域A1,A2において、自車両Vからの距離に応じて立体物が検出されることを抑制する。制御部39は、自車両Vからの距離が第1距離である場合における立体物が検出されることを抑制する程度は、自車両からの距離が第1距離より近い第2距離である場合における立体物が検出されることを抑制する程度よりも高い。検出領域A1,A2において、自車両Vから遠い場所のほうが、自車両から近い場所よりも立体物が検出されることを強く抑制する。自車両Vからの距離が遠い位置に対応する検出領域A1,A2においては、立体物(他車両を含む)が検出されにくくなる。検出領域A1,A2において、自車両Vから離隔するほど立体物(他車両を含む)が検出されにくくするように、立体物が検出されることを抑制するようにしてもよい。制御部39は、検出領域A1,A2に対応する画像情報に基づいて立体物検出処理又は立体物判断処理を行う際に、立体物検出処理又は立体物判断処理において用いる閾値を、自車両Vからの距離が相対的に遠い領域のほうが、自車両Vからの距離が相対的に近い領域よりも、立体物(他車両を含む)が検出され難い値とする。なお、この閾値の変更により立体物の検出、他車両の判断を抑制する手法については、後にまとめて説明する。
図22Bに示すように、制御部39は、ライセンスプレートLPから消失点に向かう矢印EXに沿って離隔する方向EX1に沿って所定の距離ごとに、ライセンスプレートLPの近傍から検出領域A1の区画E4,区画E3、区画E2、区画E1を設定する。区画E4,区画E3、区画E2、区画E1の各区画の距離は一定であってもよいし、漸減する距離であってもよいし、漸増する距離であってもよい。また、レンズ11の特性等に応じて、検出領域A1の中央側の区画E2、区画E3の距離を、近傍端の区画E4、遠方端の区画E1の距離よりも長く設定してもよい。ここでは自車両Vの右側後方の検出領域A1を例に説明するが、自車両Vの左側後方の検出領域A2についても同様に適用できる。制御部39は、ライセンスプレートLPから離隔する方向EX2に沿って所定の距離ごとに、ライセンスプレートLPの近傍から検出領域A2の区画E4,区画E3、区画E2、区画E1を設定できる。
このように、本実施形態では、自車両Vから離隔するに従い、立体物(他車両を含む)の検出を抑制する。このため、泡BUが留まりやすい部分(レンズ11の上側)において捉えられた撮像画像に基づいて立体物が存在すると判断されることを相対的に強く抑制できる。その一方で、制御部39は、検出領域A1,A2のうち自車両Vに近い領域においては立体物が存在すると判断されることを相対的に緩やかに抑制する。これにより、レンズ11上の泡BUの影響を抑制しつつも、自車両Vに近い部分における立体物(他車両を含む)については相対的に検出されやすくできる。この結果、信頼性の高い立体物検出結果を出力できる。
第2に、本実施形態の制御部39は、レンズ状態判断部38によりレンズ11が、上述の所定の泡付着状態であると判断された場合には、検出された自車両Vの速度に応じて立体物が検出されることを抑制する。第1の手法と同様に、立体物が検出されることには、立体物が存在すると判断されること、及び立体物が他車両であると判断されることを含む。本実施形態の制御部39は、検出された自車両Vの第1速度における立体物が検出されることを抑制する度合を、第1速度よりも高い第2速度における立体物が検出されることを抑制する度合よりも高くする。速度が低い場合には、速度が高い場合よりも立体物が検出されること、検出された立体物が他車両であると判断されることを強く抑制する。もちろん、速度が低いほど、立体物が検出されること、検出された立体物が他車両であると判断されることを強く抑制するようにしてもよい。本実施形態において、自車両Vの速度は、自車両Vが備える車速センサ20により取得される。
先述したように、レンズ11に付着した泡BUは、撮像画像の中央部0、つまりレンズ11の中央部分からその周囲に向かって移動する。泡BUはレンズ11の縁から外側へ移動し、レンズ11の表面から消失する。発明者らの実験によると、自車両Vの速度が低い場合よりも高い方場合のほうが、レンズ11上から泡BUが消失しやすい傾向があることが確認された。自車両Vの速度が遅いほうが、レンズ11上に泡BUが留まる傾向がある。この知見に基づき、本実施形態の制御部39は、検出された自車両Vの第1速度において立体物が検出されることを抑制する程度を、第1速度よりも高い第2速度において立体物が検出されることを抑制する程度よりも強くする。ここで、抑制の程度の強弱は、閾値等の調整により実現する。閾値を高く変更することにより、立体物(他車両を含む)が検出され難くなるという場合を例にすると、抑制の程度を強めるには閾値をより高く変更する。変更前後の差が大きいほど、抑制の程度は強められる。車速と、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制する程度との関係は、特に限定されず、図23Aに示すパターン1のように、直線的な関係であってもよいし、同図のパターン2に示すように、多段階的な変化を示す関係であってもよいし、同図のパターン3に示すように、曲線的な変化を示す関係であってもよい。このように、自車両Vの速度が低く、レンズ11上の泡BUが残留しやすい環境においては、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制する。これにより、泡BUの発生のみならず、車速によって変化する泡BUが消滅する環境までをも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
本実施形態において、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制する程度は、検出が抑制される上述の周縁領域EBを広くすることにより調節できる。具体的に、本実施形態の制御部39は、検出された第1速度における周縁領域EBの面積を、第1速度よりも高い第2速度における周縁領域EBの面積よりも広くする。速度が低い場合に、速度が高い場合よりも周縁領域EBを広く設定することにより、立体物が検出されることを抑制することができる。このように、自車両Vの速度が低く、レンズ11上の泡BUが残留しやすい環境においては、周縁領域EBを広くするので、車速に応じた泡BUが消滅する環境をも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
第3に、本実施形態の制御部39は、レンズ状態判断部38によりレンズ11が、上述の所定の泡付着状態であると判断された場合には、第1明るさにおける立体物が検出されることを抑制する度合は、第1明るさよりも明るい第2明るさにおける立体物が検出される度合よりも強くする。検出された自車両Vの周囲の明るさが相対的に暗い場合には、明るい場合よりも立体物が検出されることを抑制する。第1の手法と同様に、立体物が検出されることには、立体物が存在すると判断されること、及び立体物が他車両であると判断されることを含む。本実施形態の制御部39は、検出された自車両Vの周囲の第1明るさにおける立体物が検出されることを抑制する度合は、第1明るさよりも明るい第2明るさにおける立体物が検出されることを抑制する度合よりも強くする。明るさが暗い場合には、明るさが明るい場合よりも立体物(他車両を含む)が検出されることを強く抑制する。本実施形態において、自車両Vの周囲の明るさは、自車両Vが備える照度センサ21により取得される。制御部39は、自車両Vの存在する地点と現在時刻に基づいて、自車両Vの周囲の明るさを推測してもよい。このとき、制御部39は、日没時刻、日出時刻を参照して、正確な自車両Vの周囲の明るさを推測してもよい。制御部39は、天気情報を参照して、自車両Vの周囲の明るさを推測してもよい。
発明者らの実験によると、周囲の明るさが暗いほど、レンズ11に付着した泡BUが立体物の検出処理の結果の精度に与える影響は大きいことが確認された。この知見に基づき、本実施形態の制御部39は、検出された自車両Vの周囲の明るさが暗い場合のほうが、明るい場合よりも立体物が検出されることを抑制する。車速と、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制する程度との関係は、特に限定されず、図23Bに示すパターン1のように、直線的な関係であってもよいし、同図のパターン2に示すように、多段階的な変化を示す関係であってもよいし、同図のパターン3に示すように、曲線的な変化を示す関係であってもよい。このように、自車両Vの周囲の明るさが暗く、レンズ11上の泡BUの影響により誤検出が発生しやすい環境においては、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制する。これにより、自車両Vの周囲の明るさの環境までをも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
本実施形態において、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制する程度は、検出が抑制される上述の周縁領域EBを広くすることにより調節できる。具体的に、本実施形態の制御部39は、検出された自車両Vの周囲の第1明るさにおける周縁領域EBの面積を、第1明るさよりも明るい第2明るさにおける周縁領域EBの面積よりも広くすることにより、立体物が検出されることを抑制させる。このように、自車両Vの周囲の明るさが暗く、レンズ11上の泡BUが立体物の検出結果に影響を与える環境においては、周縁領域EBを広くするので、撮像時の明るさの環境をも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
本実施形態の計算機30は、光源検出部301をさらに備える。本実施形態の光源検出部301は、自車両Vの後方に存在する光源を検出する。具体的に、光源検出部301は、自車両Vの後方を走行する他車両VXのヘッドライト、自車両Vが走行する道路の街灯などの光源に対応する高輝度領域を検出する。光源検出部301は、撮像画像の輝度分布を算出し、相対的に他の領域よりも輝度が高い領域を抽出する。そして、抽出された領域のうち、所定の輝度値以上の輝度を示す領域を高輝度領域として検出する。高輝度領域を検出するための閾値である「所定の輝度値」は、実験によって計測された他車両VXのヘッドライト、街灯などの明るさに応じて設定される。また、「所定の輝度値」は、自車両VXの明るさが低い夜間などにおいて、実験によって計測された他車両VXのヘッドライト、街灯などの明るさに応じて設定することが好ましい。本実施形態の光源検出部301は、相対的に他の領域よりも輝度が高く、所定の輝度値以上の輝度を示す領域のうち、所定の面積(画素数)以上である領域を高輝度領域として検出する。高輝度領域を検出するための閾値である「所定の面積(画素数)」は、カメラ10の撮像特性、検出領域A1,A2の位置及び大きさに応じて設定できる。具体的に、実験によって計測された他車両VXのヘッドライト、街灯などの対応する高輝度領域の大きさに応じて設定される。実験によって計測された。
本実施形態の光源検出部301は、検出した高輝度領域の画像上の大きさに基づいて、自車両Vと光源との距離を計測する。光源が他車両VXのヘッドライトであるときには、光源検出部301は、検出した高輝度領域の画像上の大きさに基づいて、自車両Vと他車両VXとの距離を計測する。自車両Vに搭載されたカメラ10の撮像画像に基づいて、他車両VXのヘッドライト、街灯などの光源を検出する手法、及び自車両Vから光源までの距離の計測手法は、特に限定されず、本願出願時に知られた手法を適宜に用いることができる。
本実施形態の制御部39は、検出された光源と車両との距離に応じて立体物が検出されることが抑制される際の抑制の程度を緩和する。光源が検出された場合には、泡BUの影響による誤検出の可能性が低下するので、立体物の検出を抑制する必要性が低減するからである。本実施形態の制御部39は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離における抑制の緩和の度合は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離よりも長い第2距離における抑制の緩和の度合よりも強くする。光源が自車両に近い(自車両Vから光源までの距離が短い)ほど、立体物が検出されることが抑制される際の抑制の程度を緩和してもよい。発明者らの実験によると、光源に基づく後方他車両VXの検出結果の信頼性は高い。自車両Vの後方に存在する光源が検出された場合には、自車両Vの後方に他車両Vxが存在する可能性が高い。本実施形態の制御部39は、自車両Vの後方の光源が検出された場合には、レンズ11の泡が存在することによって生じる誤検出が発生しにくいと判断し、立体物が検出されにくくなるように設定された抑制制御の程度を緩和する。具体的には、立体物が検出されにくくなるように高く変更された閾値を低く変更し、立体物が検出されにくくなるように低く変更された閾値を高く変更する。また、立体物が検出されにくくなるように狭く設定された閾値域を広く変更する。このように、自車両Vの後方の光源が検出された場合には、光源との距離が近い場合には、遠い場合よりも、他車両VXの検出が抑制される程度を緩和する。自車両Vの後方の光源が検出された場合には、光源との距離が近い場合には、他車両VXはデフォルトの条件で検出されるようにする。これにより、レンズ11に付着した泡BUの影響を排除しつつ、他車両VXを高い精度で検出することができる。
本実施形態の制御部39は、自車両Vの後方の光源が検出された場合には、レンズ11の泡が存在することによって生じる誤検出が発生しにくいと判断し、立体物検出部33、37に立体物が検出されにくくなるように広く設定された周縁領域EBを狭くさせる。制御部39は、車両の後方に存在する光源と自車両Vとの距離に応じて周縁領域EBの面積の縮小の程度を決定する。立体物検出部33、37は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離における周縁領域EBの面積を縮小する程度は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離よりも長い第2距離における周縁領域EBの面積を縮小する程度よりも大きくする。このように、自車両Vの後方の光源が検出された場合には、光源との距離が近い場合ほど、他車両VXの検出が抑制される周縁領域EBの面積を縮小する。つまり、自車両Vの後方の光源が検出された場合には、光源との距離が近い場合の方が、光源と距離が遠い場合よりも、他車両VXはデフォルトの条件で検出されるようにする。これにより、レンズ11に付着した泡BUの影響を排除しつつ、他車両VXを高い精度で検出することができる。
上述したとおり、立体物検出部33、37により立体物が検出されること及び/又は立体物判断部37により立体物が他車両であると判断されること(他車両が検出されることと同義)を抑制するために、制御部39は各処理に用いられる各閾値を初期値、標準値その他の設定値に比べて検出がされ難くなるように変更し、又は各閾値と比較される出力値を検出がされ難くなるように変更する。
なお、立体物が検出されることを抑制するという処理を緩和する場合には、抑制処理時に変更した各閾値を初期値、標準値その他の設定値へ近づくように戻し、各閾値と比較される出力値を検出がされ易くなるように変更する。
具体的な処理の内容は、以下のとおりである。
差分波形情報を用いて立体物を検出する立体物検出部33が、差分波形情報が所定の第1閾値α以上であるときに立体物を検出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出され難いように第1閾値αを高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部33に出力する。
同じく、立体物検出部33が、差分波形情報が所定の第1閾値α以上であるときに立体物を検出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、鳥瞰視画像の差分画像上において所定の差分を示す画素数をカウントして度数分布化された値を低く変更して出力させる制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部38に出力する。
また、差分波形情報を用いて立体物を検出する立体物検出部33が閾値p以上の画素値を示す画素数を所定の差分を示す画素数として抽出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出され難いように閾値pを高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出手部38に出力する。
同じく、立体物検出部33が閾値p以上の画素値を示す画素数を所定の差分を示す画素数として抽出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、鳥瞰視画像を視点変換した際に立体物が倒れ込む方向に沿って、差分画像上において抽出される画素数を低く変更して出力する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部38に出力する。たとえば、制御部39は、立体物検出部33(又は立体物検出部37)による立体物が存在するという検出結果、又は立体物判断部34による立体物が最終的に他車両VXであるという判断結果が出ることを抑制するために、検出領域A1,A2を部分的にマスクし、又は検出や判断に用いられる閾値や出力値を調整する。
エッジ情報を用いて立体物を検出する立体物検出部37が所定閾値t以上の輝度差を示す画素に基づいてエッジ線を抽出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出され難いように所定閾値tを高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部37に出力する。
同じく、エッジ情報を用いて立体物を検出する立体物検出部37が所定閾値t以上の輝度差を示す画素に基づいてエッジ線を抽出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、画素の輝度値を低く変更して出力する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部37に出力する。
エッジ情報を用いて立体物を検出する立体物検出部37がエッジ情報に含まれる閾値θ以上の長さを有するエッジ線に基づいて立体物を検出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出され難いように閾値θを高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部37に出力する。
同じく、エッジ情報を用いて立体物を検出する立体物検出部37がエッジ情報に含まれる閾値θ以上の長さを有するエッジ線に基づいて立体物を検出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、検出したエッジ情報のエッジ線の長さの値を低く変更して出力させる制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部37に出力する。
エッジ情報を用いて立体物を検出する立体物検出部37がエッジ情報に含まれる所定長さ以上のエッジ線、例えば閾値θ以上の長さを有するエッジ線の本数が第2閾値β以上であるか否かの判断に基づいて立体物を検出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出され難いように第2閾値βを高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部37に出力する。
エッジ情報を用いて立体物を検出する立体物検出部37がエッジ情報に含まれる所定長さ以上のエッジ線、例えば閾値θ以上の長さを有するエッジ線の本数が第2閾値β以上であるか否かの判断に基づいて立体物を検出する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、検出した所定長さ以上のエッジ線の本数を低く出力する制御命令を生成し、この制御命令を立体物検出部37に出力する。
また、立体物判断部34は、検出された立体物の移動速度が予め設定された所定速度以上であるときに、この立体物を他車両であると判断する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物が検出され難いように立体物を他車両であると判断する際の下限となる所定速度を高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物判断部34に出力する。
同じく、立体物判断部34は、検出された立体物の移動速度が予め設定された所定速度以上であるときに、この立体物を他車両であると判断する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物を他車両であると判断する際の下限となる所定速度と比較される立体物の移動速度を低く変更して出力する制御命令を生成し、当該制御命令を立体物判断部34に出力する。
また、立体物判断部34が、検出された立体物の移動速度が予め設定された所定速度未満であるときに、この立体物を他車両であると判断する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物を他車両であると判断する際の上限となる所定速度を低く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物判断部34に出力する。
同じく、立体物判断部34検出された立体物の移動速度が予め設定された所定速度未満であるときに、この立体物を他車両であると判断する場合において、制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、立体物を他車両であると判断する際の上限となる所定速度と比較される立体物の移動速度を高く変更する制御命令を生成し、この制御命令を立体物判断部34に出力する。
なお、ここで「移動速度」は、立体物の絶対速度、および自車両に対する立体物の相対速度を含む。立体物の絶対速度は立体物の相対速度から算出してもよいし、立体物の相対速度は立体物の絶対速度から算出してもよい。
以下、図24A〜図24Cのフローチャートに基づいて、本実施形態の立体物検出装置1の制御手順を説明する。
図24Aは、周縁領域EBの設定により、立体物が検出されることを抑制する処理の制御手順を示すフローチャートである。
まず、図24Aに示すステップS61において、レンズ状態判断部38は、レンズ11に泡が付着し、所定の泡付着状態であるか否かを判断する。立体物検出の抑制処理を行うか否かを判断するために定義される「泡付着状態」は、先述したように、泡BUの特徴的なエッジの検出数及び/又は検出密度、自車両Vのバンパーや、ナンバープレート、カメラ10のケースのように固定的な物体のエッジの変化量、画像全体の泡の明るさの変化量に基づいて定義することができる。
レンズ11に泡BUが付着し、それが所定の「泡付着状態」と評価された場合には、ステップS62に進み、立体物の検出が抑制される周縁領域EBを設定する。周縁領域EBは、撮像画像の中央から所定距離だけ離隔した領域とすることができる。特に本実施形態では、レンズ11の上側(自重方向とは反対側)の領域に設定する。
ステップS63において、立体物が検出されることを抑制する処理が実行される。制御部39からの指令に従い、立体物検出部33、37は、周縁領域EBをマスクし、この周縁領域EBに対応する画像情報から立体物を検出しない。
同様に、ステップS64において、立体物が検出されることを抑制する処理が実行される。制御部39からの指令に従い、立体物検出部33、37は、周縁領域EBに対応する画像情報から立体物を検出する処理を行う際に、立体物検出に用いられる各種の閾値を立体物が検出され難いように変更し、各種閾値と比較される出力値を立体物が検出され難いように変更して出力する。
ちなみに、第1閾値αは、図11のステップS7において、差分波形DWtのピークを判断するためのである。閾値θは、図17のステップS29における各注目点Paの属性の連続性cの総和を正規化した値(エッジの長さ)を判断する閾値であり、第2閾値βは、図18のステップ34におけるエッジ線の量(本数)を評価する閾値である。このように、判断の閾値を高く変更することにより、自車両Vの走行車線の隣を走行する他車両VXが検出されにくいように検出感度が調整されるため、レンズ11に付着した異物を他車両VXとして誤検出することを防止することができる。その他の閾値については、上述したように変更する。
ステップ641において、制御部39の指令に従い、立体物検出部33、37は、検出領域A1,A2に対応する画像情報から立体物を検出する処理を行う際に、自車両V(ライセンスプレート等)からの距離が離隔するに従い、立体物検出に用いられる各種の閾値を立体物が検出されにくいように変更し、各種閾値と比較される出力値を立体物が検出されにくいように変更して出力する。本実施形態の制御部39は、鳥瞰視画像の差分画像上において所定の差分を示す画素数をカウントして度数分布化された値を低く出力する制御命令を立体物検出部33に出力する。鳥瞰視画像の差分画像上において所定の差分を示す画素数をカウントして度数分布化された値とは、図11のステップS5において生成される差分波形DWtの縦軸の値である。
また、本実施形態の制御部39は、検出したエッジ情報を低く出力する制御命令を立体物検出部37に出力する。検出したエッジ情報とは、図17のステップS29における各注目点Paの属性の連続性cの総和を正規化した値であるエッジ線の長さのほか、図18のステップ34におけるエッジ線の量である。制御部39は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断されると、所定の周縁領域の撮像画像から立体物として検出しないように、次回の処理においては立体物が検出されにくいように、各注目点Paの属性の連続性cの総和を正規化した値又はエッジ線の量を低く変更する。このように、出力値を低くすることにより、自車両Vの走行車線の隣を走行する他車両VXが検出されにくいように検出感度を調整できるため、レンズ11に付着した異物を隣の車線を走行する他車両VXとして誤検出することを防止することができる。
続くステップS65において、差分波形情報又はエッジ情報に基づいて立体物(他車両)検出する。さらにステップS66において、ステップS65において検出された立体物が他車両VXであるか否かを判断し、立体物が他車両VXである場合には、ステップS67において他車両が存在する旨の判断結果を出力し、立体物が他車両VXでない場合には、ステップS68において他車両は存在しない旨の判断結果を出力する。ステップS65及びステップS66における処理は、先に図11及び12において説明した差分波形情報に基づく他車両VXの検出処理、同じく図17及び図18において説明したエッジ情報に基づく他車両VXの検出処理と共通する。また、ステップS65において立体物が検出されてない場合には、他車両は存在しないと判断してもよいし、立体物の検出処理を終了してもよい。
図24Bは、自車両Vの車速に応じて、立体物が検出されることを抑制する処理の制御手順を示すフローチャートである。
まず、図24Bに示すステップS61において、図24Aにおいて説明した手法と同様の手法により、レンズ状態判断部38は、レンズ11に泡が付着し、所定の泡付着状態であるか否かを判断する。
レンズ状態判断部38が、レンズ11に泡BUが付着し、それが所定の「泡付着状態」と評価した場合には、ステップS71に進む。ステップS71において、制御部39は、自車両Vの車速を車速センサ20から取得する。続くステップS72において、立体物検出部33、37に立体物の検出が抑制される周縁領域EBを設定する。周縁領域EBは、上述した手法により設定する。
ステップS73において、立体物が検出されることを抑制する処理が実行される。制御部39からの指令に従い、立体物検出部33、37は、車速が低いほど周縁領域EBを広く設定する。そして、立体物検出部33、37は、周縁領域EBをマスクし、この周縁領域EBに対応する画像情報から立体物を検出しない。
同様に、ステップS74において、立体物が検出されることを抑制する処理が実行される。制御部39からの指令に従い、立体物検出部33、37は、周縁領域EBに対応する画像情報から立体物を検出する処理を行う際に、立体物検出に用いられる各種の閾値を高くし、各種閾値と比較される出力値を低く出力する。閾値及び出力値の変更は上述した手法により行う。
そして、ステップS65〜S68の処理を行う、ステップS65〜S68の処理は、図24Aにおいて説明したステップS65〜S68の処理と同じ手順である。
図24Cは、自車両Vの周囲の明るさに応じて、立体物が検出されることを抑制する処理の制御手順を示すフローチャートである。
まず、図24Cに示すステップS61において、図24Aにおいて説明した手法と同様の手法により、レンズ状態判断部38は、レンズ11に泡が付着し、所定の泡付着状態であるか否かを判断する。
レンズ状態判断部38が、レンズ11に泡BUが付着し、それが所定の「泡付着状態」と評価した場合には、ステップS81に進む。ステップS71において、制御部39は、自車両Vの周囲の明るさを照度センサ21から取得する。続くステップS82において、立体物検出部33、37に立体物の検出が抑制される周縁領域EBを設定する。周縁領域EBは、上述した手法により設定する。
ステップS83において、立体物が検出されることを抑制する処理が実行される。制御部39からの指令に従い、立体物検出部33、37は、自車両Vの周囲の明るさが暗いほど周縁領域EBを広く設定する。そして、立体物検出部33、37は、周縁領域EBをマスクし、この周縁領域EBに対応する画像情報から立体物を検出しない。
同様に、ステップS84において、立体物が検出されることを抑制する処理が実行される。制御部39からの指令に従い、立体物検出部33、37は、周縁領域EBに対応する画像情報から立体物を検出する処理を行う際に、立体物検出に用いられる各種の閾値を高くし、各種閾値と比較される出力値を低く出力する。閾値及び出力値の変更は上述した手法により行う。そして、ステップS65〜S68の処理を行う、ステップS65〜S68の処理は、図24Aにおいて説明したステップS65〜S68の処理と同じ手順である。
以上のとおり構成され、動作する本発明の本実施形態に係る立体物検出装置1、立体物検出方法によれば、以下の効果を奏する。
[1]本発明の本実施形態の立体物検出装置1によれば、レンズ11に泡BUが付着し、所定の泡付着状態であると判断された場合には、撮像画像において定義された所定の周縁領域EBに含まれる画像に基づいて立体物が検出されることを抑制するので、レンズ11に付着した泡BUが立体物の検出結果に及ぼす影響を低減させるので、高い精度で立体物を検出できる。つまり、本発明の本実施形態の立体物検出装置1によれば、泡BUが留まる可能性の高い領域の画像情報から立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制できるので、レンズ11に付着した泡BUに起因する像を、立体物(他車両を含む)と誤判断されることを低減させることができる。この結果、信頼性の高い立体物検出結果を出力できる。
[2]本発明の本実施形態の立体物検出装置1によれば、検出された自車両Vの第1速度における立体物が検出されることを抑制する度合を、第1速度よりも高い第2速度における立体物が検出されることを抑制する度合よりも高くする。これにより、自車両Vの速度が低く、レンズ11上の泡BUが残留しやすい環境においては、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制できる。この結果、車速に応じた泡BUの消滅環境を考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
[3]本発明の本実施形態の立体物検出装置1によれば、検出された自車両Vの周囲の第1明るさにおける立体物が検出されることを抑制する度合は、第1明るさよりも明るい第2明るさにおける立体物が検出されることを抑制する度合よりも強くする。これにより、自車両Vの周囲の明るさが暗く、レンズ11上の泡BUの影響により誤検出が発生しやすい環境においては、立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制できる。この結果、泡BUの影響度合いを増減させる自車両Vの周囲の明るさの環境を考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
[4]本発明の本実施形態の立体物検出装置1では、車速又は明るさに応じて所定の周縁領域EBに含まれる画像に基づいて立体物が検出されることを抑制するので、自車両Vの周囲の明るさの環境までをも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
[5]本発明の本実施形態の立体物検出装置1では、検出された速度に応じて周縁領域EBの面積を決定し、検出された第1速度における周縁領域EBの面積を、第1速度よりも高い第2速度における周縁領域EBの面積よりも広くする。このように、自車両Vの速度が低く、レンズ11上の泡BUが残留しやすい環境においては、周縁領域EBを広くするので、車速に応じた泡BUが消滅する環境をも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
[6]本発明の本実施形態の立体物検出装置1では、検出された第1明るさにおける周縁領域EBの面積を、第1明るさよりも明るい第2明るさにおける周縁領域EBの面積よりも広くする。このように、自車両Vの周囲の明るさが暗く、レンズ11上の泡BUが立体物の検出結果に影響を与える環境においては、周縁領域EBを広くするので、撮像時の明るさの環境をも考慮して、適切に立体物(他車両を含む)の検出を抑制できる。
[7]本発明の本実施形態の立体物検出装置1は、撮像画像のうち重力方向とは略反対方向に沿って所定距離以上離隔した所定の上側領域に周縁領域EBを設定するので、レンズ11上において泡が存在する確率の高い部分で捉えられた画像情報に基づいて立体物(他車両を含む)が検出されることを抑制できる。この結果、レンズ11に付着した泡BUに起因する像を、立体物(他車両を含む)と誤判断されることを防止できる。
[8]本発明の本実施形態の立体物検出装置1は、検出領域A1,A2において、自車両Vから遠い場所のほうが、自車両から近い場所よりも立体物が検出されることを強く抑制する。このため、泡BUが留まりやすい部分において捉えられた撮像画像に基づいて立体物が存在すると判断されることを相対的に強く抑制しつつ、泡BUが溜まらない部分においては通常どおりの手法で立体物の存在を判断できる。この結果、信頼性の高い立体物検出結果を出力できる。
[9]本発明の本実施形態の立体物検出装置1は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離における抑制の緩和の度合は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離よりも長い第2距離における抑制の緩和の度合よりも強くする。本実施形態の立体物検出装置1は、自車両Vの後方の光源が検出された場合には、レンズ11の泡が存在することによって生じる誤検出が発生しにくいと判断し、立体物が検出されにくくなるように設定された抑制制御の程度を緩和する。これにより、レンズ11に付着した泡BUの影響を排除しつつ、他車両VXを高い精度で検出することができる。
[10]本発明の本実施形態の立体物検出装置1は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離における周縁領域EBの面積を縮小する程度は、検出された光源から自車両Vまでの第1距離よりも長い第2距離における周縁領域EBの面積を縮小する程度よりも大きくする。自車両Vの後方の光源が検出された場合には、光源との距離が近い場合の方が、光源と距離が遠い場合よりも、他車両VXはデフォルトの条件で検出されるようにする。これにより、レンズ11に付着した泡BUの影響を排除しつつ、他車両VXを高い精度で検出することができる。
[11]本発明の本実施形態の立体物検出装置1は、異なる時刻の鳥瞰視画像の位置を鳥瞰視上で位置合わせし、当該位置合わせされた鳥瞰視画像の差分画像に基づいて生成された差分波形情報に基づいて、高い精度で立体物を検出できる。
[12]本発明の本実施形態の立体物検出装置1は、鳥瞰視画像に視点変換した際に立体物が倒れ込む方向に沿って検出されたエッジ情報に基づいて、高い精度で立体物を検出できる。
[13]本発明の本実施形態の立体物検出方法を使用すると、上述した立体物検出装置1と同様の作用効果を奏する。
上記カメラ10は本発明に係る撮像手段に相当し、上記視点変換部31は本発明に係る画像変換手段に相当し、上記位置合わせ部32、立体物検出部33、立体物判断部34、制御部39は本発明に係る立体物検出手段に相当し、上記輝度差算出部35,エッジ線検出部36、立体物検出部37、立体物判断部34、及び制御部39は本発明に係る立体物検出手段に相当し、上記レンズ状態判断部38はレンズ状態判断手段に相当し、上記車速センサ20は車速センサに相当し、照度センサ21は明るさ検出手段に相当し、光源検出部301は光源検出手段に相当する。上記レンズ洗浄装置100はレンズ洗浄手段に相当し、上記洗浄装置の制御装置110は洗浄制御手段に相当し、制御装置110のレンズ状態判断部38は、レンズ状態判断手段に相当する。
本発明における「分布情報」は、視点変換部31(画像変換手段)により得られた鳥瞰視画像上で、鳥瞰視画像に視点変換した際に立体物が倒れ込む方向において輝度差が所定の閾値以上の画素の分布に関する情報である。「分布情報」は、本発明における「差分波形情報」と「エッジ情報」を少なくとも含む。
本実施形態における位置合わせ部32は、異なる時刻の鳥瞰視画像の位置を鳥瞰視上で位置合わせし、その位置合わせされた鳥瞰視画像を得るが、この「位置合わせ」処理は、検出対象の種別や要求される検出精度に応じた精度で行うことができる。同一時刻及び同一位置を基準に位置を合わせるといった厳密な位置合わせ処理であってもよいし、各鳥瞰視画像の座標を把握するという程度の緩い位置合わせ処理であってもよい。
<第2実施形態>
以下、本実施形態のカメラ装置1000について説明する。
第2実施形態のカメラ装置1000の実施の態様の一例を、図3に示す。本実施形態において、第1実施形態の立体物検出装置1と共通する部分については、重複した説明を避けるため、その記載を援用する。本実施形態のレンズ洗浄装置100については、第1実施形態において説明した立体物検出装置1に適用する例を説明するが、カメラ装置1000の撮像画像を用いる各種の走行支援装置に適用することができる。
本実施形態のカメラ装置1000は、カメラ10と、レンズ洗浄装置100とを備える。本実施形態のカメラ装置1000は、第1実施形態において説明した立体物検出装置1を備えてもよい。第1実施形態では、レンズ11の洗浄により生じた泡が立体物検出処理の判断結果の精度に与える影響を低減させる手法を、立体物検出処理を制御する観点から説明した。本実施形態に係るカメラ装置1000は、レンズ洗浄装置100がレンズ11を洗浄することにより生じた泡が、立体物の検出結果に与える影響を低減させる手法を、レンズ11の洗浄方法を制御する観点から説明する。
まず、図25〜図30に基づいて、本実施形態のカメラ装置1000が備えるレンズ洗浄装置100の一例を説明する。図25は、本発明の一実施形態に係る車載カメラのレンズ洗浄装置の構成を示すブロック図である。図25に示すように、本実施形態に係るレンズ洗浄装置100は、洗浄液を蓄積する洗浄液タンク2と、該洗浄液タンク2に蓄積された洗浄液を送り出す洗浄液ポンプ3と、圧縮空気を送り出す空気ポンプ5と、カメラ10のレンズ面に向けて洗浄液、圧縮空気、或いは洗浄液と圧縮空気との混合を吐出するノズル7と、を備えている。レンズ洗浄装置100は、洗浄液タンク2に蓄えられた洗浄液を用いて、レンズ11を洗浄する。
更に、洗浄液ポンプ3にて送出される洗浄液を、該洗浄液を蓄積する二次タンク13に導く洗浄液配管4と、空気ポンプ5にて送出される圧縮空気を、ノズルユニット22のノズル7に導く空気配管6と、洗浄液ポンプ3及び空気ポンプ5の作動を制御する制御装置110と、を備えている。
図26(a)は、車両の後部に搭載されるカメラ10に、本実施形態に係るレンズ洗浄装置100を設置した状態を示す斜視図、図26(b)は、図26(a)に示すレンズ洗浄装置100を「A」方向から見た図である。図26(a)に示すように、車両後部に固定されたカメラ10の側部近傍には、やはり車両後部に固定されてレンズ11の表面を洗浄するノズルユニット22が設けられている。ノズルユニット22には、レンズ11の表面に向けて洗浄液及び圧縮空気を噴出するノズル7、及びキャップ7dが設けられている。ノズル7は、図26(b)に示すように、その先端部に洗浄液及び圧縮空気を噴出する2個の吐出口10a,10bが設けられている。即ち、ノズル7の吐出口10a,10bよりレンズ11の表面に向けて洗浄液及び圧縮空気を噴出することにより、レンズ11の表面に付着した異物を除去する構成とされている。
図27は、図26(a)に示すノズルユニット22の一部破断斜視図である。図27に示すように、ノズルユニット22の先端側に設けられるノズル7には、その中央部に圧縮空気を導入する空気通路12が設けられ、該空気通路12の左右両側には、洗浄液を導入する洗浄液通路11a,11bが設けられている。また、空気通路12、及び洗浄液通路11a,11bの先端はカメラ10のレンズ11の表面を向くように、略直角に屈曲している。
更に、洗浄液通路11a,11bの上流側には、洗浄液を一時的に蓄積する二次タンク13が設けられている。該二次タンク13の側部には、洗浄液配管4を接続するためのプラグ13a、及び空気配管6を接続するためのプラグ13bが設けられており、このうちプラグ13bは、二次タンク13の下方に設けられた流路を介して空気通路12に接続されている。即ち、プラグ13bを経由してノズルユニット22内に導入される圧縮空気は直接空気通路12に導入される。
また、プラグ13aは、二次タンク13に接続されており、該プラグ13aを経由して供給される洗浄液は、二次タンク13の上方から内部に流入する。この際、プラグ13aから二次タンク13に接続される配管は、図30(b)の符号23に示すように、鉛直方向を向いている。この配管23の詳細については後述する。
また、図27に示すように、二次タンク13の底部は、2系統の洗浄液通路11a,11bに接続されている。従って、図25に示した空気ポンプ5より送出される圧縮空気は、空気配管6を経由してノズル7の空気通路12に導入され、一方、洗浄液ポンプ3より送出される洗浄液は、二次タンク13に蓄積された後に、2系統の洗浄液通路11a,11bに導入されることになる。
図28(b)は、ノズル先端部の詳細な構成を示す説明図であり、図28(a)に示す符号P1の部分の断面図を示している。図28(b)に示すように、ノズル7の先端部は中央に空気通路12が設けられ、該空気通路12を挟むように、2つの洗浄液通路11a,11bが設けられている。
各洗浄液通路11a,11bは、先端部15a,15bに接続されており、この際、先端部15a,15bの流路面積は洗浄液通路11a,11bの流路面積よりも小さくされている。従って、洗浄液通路11a,11bを流れる洗浄液は、先端部15a,15b内で流速が速くなる。
一方、空気通路12の先端は、2つの先端部14a,14bに分岐している。先端部14a,14bの流路面積は、空気通路12の流路面積よりも小さくされている。従って、空気通路12を流れる圧縮空気は、先端部14a,14bを通過する際に流速が速くなる。
そして、一方の洗浄液通路11aの先端部15aと、空気通路12の一方の先端部14aが合流して合流路16aとされ、この先端が吐出口10a(図26(b)参照)とされている。また、他方の洗浄液通路11bの先端部15bと空気通路12の他方の先端部14bが合流して合流路16bとされ、この先端が吐出口10b(図26(b)参照)とされている。この際、合流路16aと合流路16bは、先端側に向けて互いに広がる方向を向いている。
従って、図25に示す洗浄液ポンプ3より送出された洗浄液が二次タンク13内に蓄積され、且つ、空気ポンプ5より圧縮空気が送出されると、圧縮空気が流速を高めて噴射され、更に、圧縮空気が噴射されることにより洗浄液通路11a,11bが負圧となって二次タンク13に蓄積された洗浄液を吸引する。このため、圧縮空気及び洗浄液が2つの合流路16a,16bを経由して吐出口10a,10bから噴射され、レンズ11の表面に吹き付けられる。この際、洗浄液と圧縮空気が混合した液体は図29に示すように、広がる方向に噴射されることになり、レンズ11の表面全体を洗浄することができる。
また、図28(b)に示すように、ノズル7の先端部の噴射面7aは、その周囲の側面7bよりも前方に突起した構成とされている。従って、吐出口10a,10bより噴射される洗浄液がノズル7の側面7bに付着することを防止できる。具体的には、図29の符号P2,P3に示す領域に洗浄液が付着することを防止できる。
図30(b)は、図30(a)に示すノズルユニット22を「D」方向から見た断面図である。図30(b)に示すように、ノズル7の底面7cと、カメラ10の表面との間には、若干の隙間が設けられている。更に、隙間の幅は、奥側に向かうに連れて狭くなるように構成されている。このような構成により、ノズル7の底面7cとカメラ10の上面1bとの間に洗浄液が侵入した場合でも、この洗浄液は表面張力によってノズル7とカメラ10の隙間部分の奥側に徐々に押し出され、カメラ10の正面視の左右側から外部に放出されることになる。つまり、ノズル7の底面7cとカメラ10の上面1bとの間に若干の隙間が存在することにより、洗浄液が滞留して固形化する等の問題を回避できる。
また、図30(b)に示すように、ノズル7の上流側に設けられる二次タンク13の上部には、該二次タンク13内に洗浄液を供給するための供給口13cが設けられ、該供給口13cには、鉛直方向を向く配管23が設けられている。そして、該配管23が図27に示したプラグ13aに接続される。配管23が鉛直方向を向くことにより、洗浄液ポンプ3(図25参照)より洗浄液の供給が停止している場合には、管路中に蓄積された洗浄液が不規則に二次タンク13内に流入することを回避できる。即ち、二次タンク13内が空になった状態で、振動などに起因して二次タンク13内に洗浄液が流入することを防止することができる。
また、二次タンク13の上面には逆止弁24が設けられている。逆止弁24は、例えばアンブレラ弁であり、二次タンク13内の圧力が負圧になった場合には弁が解放されて通気孔25から外気が導入され、二次タンク13内の圧力が正圧になった場合には、弁が閉鎖されて外気への放出を防止する構成とされている。
更に、図30(b)に示すように、二次タンク13の底面13dは前側(図中左側)に向けて下降するように傾斜しており、更に、二次タンク13の出口配管、及びノズル7に設けられる洗浄液通路11a,11b、空気通路12(図27参照)も同様に、前側に向けて下降するように傾斜する構成とされている。このような構成とすることにより、二次タンク13内に蓄積された洗浄液は一定の場所に滞留することがなく、各部位の傾斜により確実に下流側へと流れることになる。
次に、レンズ洗浄装置100の洗浄動作を制御する制御装置110について説明する。図31に、本実施形態のレンズ洗浄装置100の概略構成を示す。図31に示すように、レンズ洗浄装置100は、洗浄液を少なくとも一時的に蓄える洗浄液タンク2と、洗浄液タンク2から供給される洗浄液を搬送する流路3と、流路3の端部に形成され、レンズ11の表面に洗浄液Wを吐出する吐出口10a、10bと、外部から供給された気体を圧縮するエアコンプレッサ5と、圧縮気体を搬送する管6と、管6の端部に形成され、レンズ11の表面に気体Eを吹き付ける噴出口14a、14bと、を備える。
レンズ洗浄装置100の上記各構成の動作は、制御装置110が制御する。制御装置110は、レンズ状態判断部38と、温度取得部111と、車速取得部112とを有する。制御装置110は、予め定義された所定のレンズ洗浄工程に従う制御プログラムをレンズ洗浄装置100に実行させる。レンズ洗浄装置100は、制御装置110の指令の下に、レンズ洗浄工程に従い、レンズ11を洗浄する。なお、本実施形態では、レンズ洗浄装置100の制御装置110がレンズ状態判断部38を備える構成としたが、立体物検出装置1の計算機30がレンズ状態判断部38を備える構成としてもよい。この場合、レンズ洗浄装置100は、立体物検出装置1の計算機30が備えるレンズ状態判断部38からレンズ状態の判断結果を取得する。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、洗浄液と圧縮空気を噴射してレンズ11を洗浄する洗浄モードと、圧縮空気のみを送出してレンズ11に付着した水滴を除去する乾燥モード、及び洗浄液を断続的にレンズ11の表面吐出してレンズ11の表面を湿潤させる湿潤モードの3つのモードを有する。
ここで、基本的な動作について説明する。洗浄モードでは、時刻t1にて洗浄液ポンプ3及び空気ポンプ5を共に駆動させると、洗浄液タンク2に貯留されている洗浄液が洗浄液配管4を経由して二次タンク13に供給され、該二次タンク13内に洗浄液が蓄積される。また、空気ポンプ5より送出される圧縮空気は、空気配管6を経由して図27に示すノズル7内の空気通路12に導入され、その後、この圧縮空気は図28(b)に示す先端部14a,14bから合流路16a,16bに向けて送出される。この際、先端部14a,14bは、空気通路12よりも流路面積が小さく設定されているので、先端部14a,14bでは空気の流速が速くなる。従って、合流路16a,16bの下流側となる洗浄液通路11a,11bの先端部15a,15bが負圧となり、二次タンク13内に蓄積された洗浄液が吸引され、吸引された洗浄液は洗浄液通路11a,11bを経由して合流路16a,16bに流入する。
その結果、合流路16a,16bより洗浄液がミスト状となって圧縮空気と共に噴射される。従って、合流路16a,16bの先端となる吐出口10a,10bから、ミスト状の洗浄液を噴射してレンズ11の表面に吹き付けることができる。このため、レンズ11の表面に付着した異物を、ミスト状の洗浄液と空気圧力との相乗作用により除去できる。つまり、洗浄モードでは、空気ポンプ5を作動させて、吐出口10a,10bより圧縮空気を噴射し、且つ、圧縮空気の噴射により生じる負圧にて洗浄液通路11a,11bに供給される洗浄液を吸引して吐出口10a,10bより洗浄液を噴射し、噴射した圧縮空気及び洗浄液によりレンズ面11を洗浄する。
また、二次タンク13内の洗浄液がすべて噴射されると、その後は圧縮空気のみが噴射され、この圧縮空気によりレンズ11に付着した水滴を除去できる。
乾燥モードについて説明する。乾燥モードでは、二次タンク13内に洗浄液が蓄積されていない状態で、空気ポンプ5のみを駆動させる。具体的には、洗浄液ポンプ3を停止させ、空気ポンプ5を時間t10〜t11(例えば、2秒)で駆動させる。すると、圧縮空気は空気通路12の先端部14a,14b、及び合流路16a,16bを経由して吐出口10a,10bより噴射され、レンズ11の表面に吹き付けられる。その結果、カメラ10のレンズ11の表面に付着した水滴を空気圧により除去することができる。
この際、二次タンク13に連結される配管23は、図30(b)に示すように、ほぼ鉛直方向を向いており、また、二次タンク13の底面13d、及び洗浄液の配管が下方に向いて傾斜しているので、二次タンク13内、及びその配管に洗浄液は残留しない。このため、圧縮空気が噴射されて二次タンク13内が負圧となった場合でも、洗浄液が合流路16a,16b側に導入されることを防止でき、圧縮空気に洗浄液が混入することを防止できる。このため、圧縮空気を噴射してレンズ11に付着した水滴を除去する際に、圧縮空気に混入した洗浄液が再びレンズ11に付着するという問題の発生を回避することができる。即ち、乾燥モードでは、洗浄液の供給が遮断された状態で空気ポンプ5より空気配管6に圧縮空気を供給し、吐出口10a,10bから圧縮空気を噴射することにより、レンズ11の表面を洗浄する。
次に、レンズ湿潤モードについて説明する。レンズ湿潤モードは、洗浄液ポンプ3から二次タンク13内に洗浄液を供給し、更に、空気ポンプ5を断続的に駆動させることにより、レンズ11の表面に洗浄液を吐出する。具体的には、時間t20〜t21で洗浄液ポンプ3を駆動させて二次タンク13に洗浄液を蓄積し、その後、時刻t22にて空気ポンプ5を時間T1の間に断続的に複数回駆動させ、洗浄液を少量ずつレンズ11の表面に滴下する。例えば、時間t22〜t23を30msecとしてレンズ11の表面に少量(例えば、0.25ml)ずつ洗浄液を滴下する。
本実施形態におけるレンズ洗浄工程の内容は特に限定されないが、本実施形態のレンズ洗浄工程は、準備工程である洗浄液補充工程と、レンズ湿潤工程と、洗浄工程と、乾燥工程とを含む。
図32は、本実施形態のレンズ洗浄工程を示すタイムチャートである。本実施形態のレンズ洗浄工程では、洗浄工程の実施に必要な洗浄液を予め洗浄液タンク2へ補充する「洗浄液補充工程A」と、レンズ11の表面を湿潤させるために洗浄液Wをレンズ11に吐出する「レンズ湿潤工程B」、洗浄液Wをレンズ11に吐出してレンズ11表面の汚れを洗い流す「洗浄工程C」、洗浄液Wを蒸発させてレンズ11の表面を乾燥させる「乾燥工程D」が、A→B→C→Dの順で繰り返し実行される。本実施形態の「レンズ湿潤工程B」は、洗浄液をレンズ11の表面の全体にいきわたらせるために、洗浄液の吐出及びエアの吹き付けが所定間隔で複数回にわたって行われる。これにより洗浄液はレンズ11の表面に間欠的に吹き付けられる。各工程の具体的な動作は、先述した各モードの動作に準ずる。
図32に示すように、制御装置110は、タイミングTG0で洗浄に必要な洗浄液を洗浄液タンク2に送り込む。本実施形態の洗浄液タンク2は、レンズ洗浄工程に用いられる洗浄液を一時的に蓄える。本実施形態では、1.0mlの洗浄液を洗浄液タンク2に蓄える。洗浄処理が開始されると、まず「レンズ湿潤工程B」を実行する。この「レンズ湿潤工程A」では、20s間隔で洗浄液を間欠的にレンズ11の表面に吐出する。本実施形態では、0.25mlの洗浄液を20s間隔で3回吐出する。また、本実施形態では、洗浄液の吐出に同期させてエアを吐出する。エアの吹き付けのタイミングは洗浄液の吐出のタイミングと同じでもよいし、若干遅延させたタイミングでもよい。
洗浄液タンク2に蓄える洗浄液の量は洗浄工程に応じて適宜に決定する。本実施形態の制御装置110は、レンズ洗浄工程中においてレンズ上に洗浄液を吐出する回数に、1回に吐出さられる洗浄液の量を乗じた吐出総量より大きい量となるように、洗浄液タンク101に蓄える洗浄液の液量を決定する。図23に示す洗浄工程に例では、制御装置110は、レンズ上に洗浄液を吐出する回数(3回)に、1回に吐出される洗浄液の量(0.25ml)を乗じた吐出総量(0.75ml)よりも大きい量である1.0mlの洗浄液を、洗浄液タンク2に蓄える。3回の洗浄液の吐出が終了したタイミングで、0.25mlの洗浄液が洗浄タンク101に残る。この残った洗浄液はエアの吹き付けを伴わず、レンズ11の表面に漏洩する。エアの吹き付けを伴わなければ、洗浄液を吐出したときに生じる泡の量は少ない。また、この最後にレンズ11上に漏れ出る洗浄液は、先のエア吹き付けを伴って吐出された洗浄液によってレンズ11の表面に形成された泡を流し去る。
本実施形態では、このように、レンズ上に洗浄液を吐出する回数に、1回に吐出される洗浄液の量を乗じた吐出総量より大きい量を洗浄液タンク2に蓄えるので、レンズ湿潤工程Bの最後に洗浄液タンク2からレンズ11の表面に洗浄液を漏れ出させることができる。そして、洗浄液タンク2から漏れ出した洗浄液により、レンズ11の表面に残る泡を流し去ることができる。
制御装置110は、「レンズ湿潤工程B」をタイミングTG2で終了させ、その後に「洗浄工程C」を開始し、2秒〜10秒程度の間、洗浄液Wをレンズ11の表面に吐出する。本実施形態では、3秒間の洗浄処理P10を行う。その完了タイミングTG3の後に、「乾燥工程D」を開始し、30秒程度の間、気体をレンズ11の表面に吹き付ける乾燥用エア吹き付け処理P20を行う。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、レンズ状態判断部38により、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、レンズ洗浄工程における吐出タイミングの間隔を、所定の泡付着状態でないと判断された場合よりも長く変更する。
本実施形態のレンズ状態判断部38の動作は、第1実施形態と共通するので、第1実施形態における説明を援用する。また、レンズ状態判断部38のレンズ11が「所定の泡付着状態であるか否か」の判断手法は第1実施形態と共通するので、第1実施形態における説明を援用する。また、本実施形態では、図3に示すように、レンズ洗浄装置100の制御装置110がレンズ状態判断部38を備える。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合に、図32に示すレンズ洗浄工程のうち、レンズ湿潤工程Bにおける洗浄液の吐出タイミングP1と吐出タイミングP2との間隔、及び/又は吐出タイミングP2と吐出タイミングP3との間隔を、所定の泡付着状態でないと判断された場合よりも長く変更する。図32に示す例では、3回の吐出を行う例を示している。延長の対象となる吐出タイミングは一対の吐出タイミングの間隔であってもよいし、二対以上の複数の間隔であってもよい。また、一対となる吐出タイミングの間隔が複数ある場合には、そのうちの一部の間隔について延長処理をしてもよいし、全部の間隔について延長処理をしてもよい。複数の間隔について延長処理をする場合には、各間隔の延長の程度は同じであってもよいし、異なる程度で延長してもよい。延長後の間隔(時間)は、延長前の間隔(所定の泡付着状態でないと判断された場合の間隔)に所定の付加時間を加えて決定してもよいし、延長前の間隔(所定の泡付着状態でないと判断された場合の間隔)に所定の係数(>1.0)を乗じて決定してもよい。
所定の泡付着状態でないと判断された場合の吐出タイミングの間隔を延長させる時間の長さ(付加時間の長さ、に乗じる係数の大きさ)は、レンズ11の大きさ、曲率、レンズ洗浄装置100の洗浄性能などによって適宜に決定することができる。本実施形態では、レンズ11の泡付着状態の状態変化に応じて延長時間の長さ(付加時間の長さ、乗じる係数の大きさ)を設定する。第1の手法としては、泡BUに対応する像の変化に応じて延長時間の長さを決定できる。例えば、泡BUの像に起因するエッジの数の減少率が高いほど延長時間を短くし、泡BUの像に起因するエッジの数の減少率が低いほど、延長時間を長くできる。泡BUに起因するエッジ数が減少率が高ければ、泡が消えるまでの時間は短いと推測できるからである。第2の手法として、バンパーなどの固定物のエッジの変化に応じて延長時間の長さを決定できる。例えば、固定物に対応するエッジの長さの増加率が高いほど延長時間を短くし、固定物に対応するエッジの長さの増加率が低いほど延長時間を長くする。固定物に対応するエッジの長さの増加率が高ければ、泡BUの影響によりぼやけていた固定物が明確に見えるようになる(泡が消える)までの時間は短いと推測できるからである。第3の手法として、泡BUの存在に起因する撮像画像の明るさの変化に応じて延長時間の長さを決定できる。例えば、撮像画像の明るさの低下率が大きいほど延長時間を短くし、撮像画像の明るさの増加率が大きいほど延長時間を長くする。泡BUの影響による撮像画像の明るさの低下率が高ければ、泡が消えるまでの時間は短いと推測できるからである。
延長処理前の間隔は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断されなかった場合に実行される洗浄液の吐出タイミングの間隔である。所定の泡付着状態であると判断されなかった場合の吐出タイミングの間隔は、レンズ洗浄工程において予め定義されたデフォルトの時間(間隔)であってもよいし、レンズの洗浄モードに応じて適用される時間(間隔)であってもよい。
第1実施形態において図20A〜図21Bにおいて説明したように、レンズ11を洗浄すると、その表面に泡BUが付着する。レンズ11に泡BUが付着し、所定の泡付着状態となる場合がある。所定の泡付着状態であるレンズ11に、さらに洗浄液を吐出すると、泡の上に泡が形成されてしまい、レンズ11から泡が消失するまでの時間が長くなる。本実施形態では、所定の泡付着状態のレンズ11に、さらに洗浄液を吐出しないように、洗浄液の吐出タイミングの間隔を所定の泡付着状態でないと判断された場合の吐出タイミングよりも長く変更する。これにより、泡の上に泡が形成されることを防止できる。この結果、レンズ11を洗浄液を用いて洗浄しつつ、レンズ11上に付着した泡が迅速に消失するようにできる。
発明者らは、実験により、レンズ11の洗浄工程において、泡BUがレンズ11上に残留する傾向が強まる洗浄条件を特定した。発明者らは、洗浄工程において、前回の洗浄により生じた泡が消えないうちに次回の洗浄用の洗浄液をレンズ11に吐出すると、泡の上に新たな泡が形成され、泡が消えるまでの時間が長くなる傾向を確認した。泡の上に泡が形成されると、比較的長い時間に渡ってレンズ11の上から泡が消えず、レンズ11上に残留する泡の量が増加する傾向がある。洗浄液を一回吐出してレンズ11上に泡を形成した場合と、洗浄液を2回吐出してレンズ11上に泡を形成した場合とを比較したところ、レンズ11上の泡の体積が略同一となるように調整しても、泡が形成されてから消えるまでの時間は、洗浄液を2回吐出してレンズ11上に泡を形成した場合の方が、洗浄液を一回吐出してレンズ11上に泡を形成した場合よりも長かった。明確な理由は不明であるが、洗浄液を複数回吐出することにより泡を形成した場合には、先に形成された泡が新たな泡に覆われる状態となり、泡が破壊されにくくなる可能性がある。
先述した第1実施形態では、立体物が検出されることを抑制する処理を行うことにより、レンズ11に泡が付着したときに立体物の検出に泡が与える影響を低減させる手法を説明した。本実施形態では、泡が消えにくくなる状態の前段階である、泡の上に泡が形成される状態となることを抑制する洗浄法方法を提案することにより、レンズ11の上に泡が残留しないようにできる。レンズ11に泡が残留すると、泡の像が撮像画像に影響を与えるため、第1実施形態において説明した立体物の検出の精度を低下させる可能性がある。本実施形態では、洗浄液の泡がレンズ11上に残留しないようにレンズ11を洗浄するので、泡に起因する像のノイズが撮像画像に含まれないようにすることができる。この結果、得られた撮像画像に基づいて、立体物を高い精度で検出できる。
また、本実施形態のレンズ洗浄装置100は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、レンズ洗浄工程における洗浄液の吐出量を増量する。増量される吐出量は、レンズ11が所定の泡付着状態ではない場合に適用される吐出量である。吐出タイミングの間隔が延長されることにより、延長後の次の延長タイミングにおいてはレンズ11上の泡BUは減少乃至消失している。ここに、相対的に多量の洗浄液を吐出することにより、残留していた泡BUをレンズ11上から無くすことができる。また、1回の吐出量を増量すると、洗浄液タンク2に蓄えた洗浄液は一定量であるので、一洗浄工程における吐出可能な回数が減少する。吐出回数が減少すると、一洗浄工程における吐出タイミングの間隔は長くなる。つまり、吐出量を増量させることにより、吐出タイミングの間隔を延長するのと同様の作用効果を奏する。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、温度取得部111を有する。温度取得部111は、レンズ11の洗浄環境における温度を取得する。温度取得部111は、外気温、洗浄液温度、レンズ11の温度を、レンズ11の洗浄環境の温度として取得する。各温度を計測するための温度計を配してもよい。本実施形態の温度取得部111は、自車両Vが備える温度計から温度の情報を取得する。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、検出された温度に応じて吐出タイミングの間隔を決定する。吐出タイミングを決定するにあたり、レンズ洗浄装置100は、温度取得部111により検出された第1温度における吐出タイミングの間隔を、第1温度よりも低い第2温度における吐出タイミングの間隔よりも長くする。この温度に基づく吐出タイミングの間隔の延長処理は、延長前の吐出タイミングの間隔について行ってもよいし、延長後の間隔について行ってもよい。延長後の吐出タイミングの間隔を延長する場合には、延長処理時に、所定の泡付着状態でないと判断された場合の吐出タイミングの間隔に付加される時間を長くしてもよいし、延長処理時に所定の泡付着状態でないと判断された場合の吐出タイミングの間隔に乗じる係数(>1.0)を大きくしてもよい。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、温度と吐出タイミングの間隔(時間)との対応関係を予め記憶する。温度と吐出タイミングの間隔(時間)との対応関係温は、特に限定されず、図33Aに示すパターン1のように、直線的な関係であってもよいし、同図のパターン2に示すように、多段階的な変化を示す関係であってもよいし、同図のパターン3に示すように、曲線的な変化を示す関係であってもよい。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、洗浄環境における温度が高い場合には、洗浄環境における温度が低い場合よりも、吐出タイミングの間隔を長くする。洗浄環境における温度が高いと、洗浄液に泡が生じやすく、生じた泡は消えにくい。本実施形態では高温状態においては、吐出タイミングの間隔を相対的に長くするので、泡が減少乃至消失してから次の洗浄液の吐出を行うことができる。この結果、泡の上に泡が形成される状態とならないように、レンズ11を洗浄できる。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、車速取得部112を有する。車速取得部112は、自車両Vの速度を取得する。本実施形態の車速取得部112は、自車両Vが備える車速センサ20から温度の情報を取得する。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、検出された車速に応じて吐出タイミングの間隔を決定する。吐出タイミングを決定するにあたり、レンズ洗浄装置100は、車速取得部112により検出された第1車速における吐出タイミングの間隔を、第1車速よりも高い第2車速における吐出タイミングの間隔よりも長くする。この車速に基づく吐出タイミングの間隔の延長処理は、所定の泡付着状態でないと判断された場合の吐出タイミングの間隔について行ってもよいし、延長後の間隔について行ってもよい。延長後の吐出タイミングの間隔を延長する場合には、延長処理時に、所定の泡付着状態でないと判断された場合の準間隔に付加される時間を長くしてもよいし、延長処理時に、所定の泡付着状態でないと判断された場合の間隔に乗じる係数(>1.0)を大きくしてもよい。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、車速と吐出タイミングの間隔(時間)との対応関係を予め記憶する。車速と吐出タイミングの間隔(時間)との対応関係温は、特に限定されず、図33Bに示すパターン1のように、直線的な関係であってもよいし、同図のパターン2に示すように、多段階的な変化を示す関係であってもよいし、同図のパターン3に示すように、曲線的な変化を示す関係であってもよい。
本実施形態のレンズ洗浄装置100は、車速が低い場合には、車速が高い場合よりも、吐出タイミングの間隔を長くする。車速が速いと、泡が吹き飛ばされやすくなり、レンズ11の表面から泡が消えやすくなる。他方、車速が低いと、泡が吹き飛ばされることなくレンズ11上に留まる傾向がある。本実施形態では車速が低い状態においては、吐出タイミングの間隔を相対的に長くするので、泡が減少乃至消失してから次の洗浄液の吐出を行うことができる。この結果、泡の上に泡が形成される状態とならないように、レンズ11を洗浄できる。また、車速が高い場合には、路面の砂などが激しく巻き上げられるので、レンズ11は汚れやすい。本実施形態では車速が速いときには、遅いときよりも洗浄液の供給タイミングが相対的に短いので、洗浄液をレンズ11に吐出して、こまめに砂などを洗い流すことができる。
以下、図34のフローチャートに基づいて、本実施形態の洗浄装置100の制御装置110の制御手順を説明する。
まず、ステップS91において、本実施形態のレンズ状態判断部38は、レンズ11に付着する泡の状態を判断する。レンズ11の状態の判断手法は、第1実施形態における判断手法と共通するので、その説明を援用する。ステップS92において、レンズ状態判断部38によりレンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合には、ステップS93へ進む。
ステップS93において、本実施形態の制御装置110は、所定の泡付着状態でないと判断された場合の吐出タイミングの間隔を延長する。吐出タイミングの間隔の延長量は、レンズの泡付着状態の変化に応じて決定できる。ステップS94において、制御装置110は、所定の泡付着状態でないと判断された場合に適用される洗浄液の吐出量を増量する。ステップS93の後、ステップS94をスキップしてステップS95へ進んでもよい。
ステップS92に戻り、本実施形態のレンズ状態判断部38によりレンズ11が所定の泡付着状態ではないと判断された場合には、ステップS99に進む。ステップS99において、制御装置110は、所定の泡付着状態でないと判断された場合に適用される吐出タイミングの間隔を維持する。ステップS100において、制御装置110は、所定の泡付着状態でないと判断された場合に適用される洗浄液の吐出量を維持する。ステップS99の後、ステップS100をスキップしてステップS95へ進んでもよい。
ステップS95において、本実施形態の制御装置110は、洗浄環境における温度に応じて、所定の泡付着状態でないと判断された場合に適用される吐出タイミングの間隔及び/又は吐出量を補正する。
ステップS95において、本実施形態の制御装置110は、車速に応じて、所定の泡付着状態でないと判断された場合に適用される吐出タイミングの間隔及び/又は吐出量を補正する。ステップS94の処理とステップS95の処理は、両方実行されてもよいし、一方のみが実行されてもよい。
ステップS97において、本実施形態の制御装置110は、洗浄開始タイミングを判断し、洗浄開始タイミングになったら、ステップS98へ進み洗浄処理を実行する。
以上のとおり構成され、動作する本発明の本実施形態に係るカメラ装置1000、レンズ洗浄装置100、レンズ洗浄方法によれば、以下の効果を奏する。
[1]本実施形態のカメラ装置1000によれば、レンズが所定の泡付着状態である場合には、さらに洗浄液を吐出しないように、洗浄液の吐出タイミングの間隔を、所定の泡付着状態でないと判断された場合における吐出タイミングの間隔よりも長く変更する。これにより、泡の上に泡が形成されることを防止できる。この結果、レンズ11を洗浄液を用いて洗浄しつつ、レンズ11上に付着した泡が迅速に消失するようにできる。
[2]本実施形態のカメラ装置1000は、レンズ11が所定の泡付着状態であると判断された場合に、レンズ洗浄工程における洗浄液の吐出量を増量する。吐出タイミングの間隔が延長されることにより、延長後の次の延長タイミングにおいてはレンズ11上の泡BUは減少乃至消失している。ここに、相対的に多量の洗浄液を吐出することにより、残留していた泡BUをレンズ11上から無くすことができる。
[3]本実施形態のカメラ装置1000は、洗浄環境における温度が高い場合には、洗浄環境における温度が低い場合よりも、吐出タイミングの間隔を長くする。洗浄環境における温度が高いと、洗浄液に泡が生じやすく、生じた泡は消えにくい。本実施形態では高温状態においては、吐出タイミングの間隔を相対的に長くするので、泡が減少乃至消失してから次の洗浄液の吐出を行うことができる。この結果、泡の上に泡が形成される状態とならないように、レンズ11を洗浄できる。
[4]本実施形態のカメラ装置1000は、車速が低い場合には、車速が高い場合よりも、吐出タイミングの間隔を長くする。車速が速いと、泡が吹き飛ばされやすくなり、レンズ11の表面から泡が消えやすくなる。他方、車速が低いと、泡が吹き飛ばされることなくレンズ11上に留まる傾向がある。本実施形態では車速が低い状態においては、吐出タイミングの間隔を相対的に長くするので、泡が減少乃至消失してから次の洗浄液の吐出を行うことができる。この結果、泡の上に泡が形成される状態とならないように、レンズ11を洗浄できる。
[5]本実施形態のカメラ装置1000は、洗浄液タンク2に、レンズ上に洗浄液を吐出する回数に、1回に吐出される洗浄液の量を乗じた吐出総量より大きい量の洗浄液を蓄えるので、レンズ湿潤工程Bの最後に洗浄液タンク2からレンズ11の表面に洗浄液を漏れ出させることができる。そして、洗浄液タンク2から漏れ出した洗浄液により、レンズ11の表面に残る泡を流し去ることができる。これにより、レンズ11の表面に泡を残留させないようにすることができる。
[6]本実施形態のレンズ洗浄方法を使用すると、上述したレンズ洗浄装置100を備えたカメラ装置1000と同様の作用効果を奏する。
上記カメラ10は本発明に係る撮像手段に相当し、上記レンズ状態判断部38はレンズ状態判断手段に相当し、上記車速センサ20は車速センサに相当し、照度センサ21は明るさ検出手段に相当し、上記レンズ洗浄装置100はレンズ洗浄手段に相当し、上記洗浄制御装置110は洗浄制御手段に相当し、制御装置110のレンズ状態判断部38は、レンズ状態判断手段に相当する。上記温度取得部111は、温度取得手段に相当し、上記車速取得部112は、車速取得手段に相当する。