≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る立体物検出装置1を搭載した車両の概略構成図である。本実施形態に係る立体物検出装置1は、自車両V1が車線変更する際に接触の可能性がある隣接車線に存在する立体物(他車両V2などの立体物)を検出することを目的とする。本実施形態に係る立体物検出装置1は、図1に示すように、カメラ10と、車速センサ20と、計算機30とを備える。
カメラ10は、図1に示すように、自車両V1の後方における高さhの箇所において、光軸が水平から下向きに角度θとなるように自車両V1に取り付けられている。カメラ10は、この位置から自車両V1の周囲環境のうちの所定領域を撮像する。車速センサ20は、自車両V1の走行速度を検出するものであって、例えば車輪に回転数を検知する車輪速センサで検出した車輪速から車速度を算出する。計算機30は、自車両後方に存在する他車両の検出を行う。
図2は、図1の自車両V1の走行状態を示す平面図である。同図に示すように、カメラ10は、所定の画角aで車両後方側を撮像する。このとき、カメラ10の画角aは、自車両V1が走行する車線に加えて、その左右の車線(隣接車線)についても撮像可能な画角に設定されている。
図3は、図1の計算機30の詳細を示すブロック図である。なお、図3においては、接続関係を明確とするためにカメラ10、車速センサ20についても図示する。
図3に示すように、計算機30は、視点変換部31と、位置合わせ部32と、立体物検出部33と、輝度検出部34と、路面状態推測部35と、光源検出部36とを備える。以下に、それぞれの構成について説明する。
視点変換部31は、カメラ10による撮像にて得られた所定領域の撮像画像データを入力し、入力した撮像画像データを鳥瞰視される状態の鳥瞰画像データに視点変換する。鳥瞰視される状態とは、上空から例えば鉛直下向きに見下ろす仮想カメラの視点から見た状態である。この視点変換は、例えば特開2008−219063号公報に記載されるようにして実行することができる。撮像画像データを鳥瞰視画像データに視点変換するのは、立体物に特有の鉛直エッジは鳥瞰視画像データへの視点変換により特定の定点を通る直線群に変換されるという原理に基づき、これを利用すれば平面物と立体物とを識別できるからである。
位置合わせ部32は、視点変換部31の視点変換により得られた鳥瞰視画像データを順次入力し、入力した異なる時刻の鳥瞰視画像データの位置を合わせる。図4は、位置合わせ部32の処理の概要を説明するための図であり、(a)は自車両V1の移動状態を示す平面図、(b)は位置合わせの概要を示す画像である。
図4(a)に示すように、現時刻の自車両V1がP1に位置し、一時刻前の自車両V1がP1’に位置していたとする。また、自車両V1の後側方向に他車両V2が位置して自車両V1と並走状態にあり、現時刻の他車両V2がP2に位置し、一時刻前の他車両V2がP2’に位置していたとする。さらに、自車両V1は、一時刻で距離d移動したものとする。なお、一時刻前とは、現時刻から予め定められた時間(例えば1制御周期)だけ過去の時刻であってもよいし、任意の時間だけ過去の時刻であってもよい。
このような状態において、現時刻における鳥瞰視画像PBtは図4(b)に示すようになる。この鳥瞰視画像PBtでは、路面上に描かれる白線については矩形状となり、比較的正確に平面視された状態となるが、他車両V2(位置P2)については倒れ込みが発生する。また、一時刻前における鳥瞰視画像PBt−1についても同様に、路面上に描かれる白線については矩形状となり、比較的正確に平面視された状態となるが、他車両V2(位置P2’)については倒れ込みが発生する。既述したとおり、立体物の鉛直エッジ(厳密な意味の鉛直エッジ以外にも路面から三次元空間に立ち上がったエッジを含む)は、鳥瞰視画像データへの視点変換処理によって倒れ込み方向に沿った直線群として現れるのに対し、路面上の平面画像は鉛直エッジを含まないので、視点変換してもそのような倒れ込みが生じないからである。
位置合わせ部32は、上記のような鳥瞰視画像PBt,PBt−1の位置合わせをデータ上で実行する。この際、位置合わせ部32は、一時刻前における鳥瞰画像PBt−1をオフセットさせ、現時刻における鳥瞰視画像PBtと位置を一致させる。図4(b)の左側の画像と中央の画像は、移動距離d’だけオフセットした状態を示す。このオフセット量d’は、図4(a)に示した自車両V1の実際の移動距離dに対応する鳥瞰視画像データ上の移動量であり、車速センサ20からの信号と一時刻前から現時刻までの時間に基づいて決定される。
また、位置合わせ後において位置合わせ部32は、鳥瞰視画像PBt,PBt−1の差分をとり、差分画像PDtのデータを生成する。ここで、本実施形態において、位置合わせ部32は、照度環境の変化に対応するために、鳥瞰視画像PBt,PBt−1の画素値の差を絶対値化し、当該絶対値が所定の差分閾値th以上であるときに、差分画像PDtの画素値を「1」とし、絶対値が所定の差分閾値th未満であるときに、差分画像PDtの画素値を「0」とすることで、図4(b)の右側に示すような差分画像PDtのデータを生成することができる。
また、本実施形態において、位置合わせ部32は、異なる時刻の鳥瞰視画像の位置を鳥瞰視上で位置合わせし、その位置合わせされた鳥瞰視画像を得るが、この「位置合わせ」処理は、検出対象の種別や要求される検出精度に応じた精度で行うことができる。たとえば、同一時刻及び同一位置を基準に位置を合わせるといった厳密な位置合わせ処理であってもよいし、各鳥瞰視画像の座標を把握するという程度の緩い位置合わせ処理であってもよい。
そして、立体物検出部33は、図4(b)に示す差分画像PDtのデータに基づいて、差分波形を生成する。この際、立体物検出部33は、実空間上における立体物の移動距離についても算出する。立体物の検出および移動距離の算出にあたり、立体物検出部33は、まず差分波形を生成する。
差分波形の生成にあたって立体物検出部33は、差分画像PDtにおいて検出領域(検出枠)を設定する。本例の立体物検出装置1は、自車両V1が車線変更する際に接近する可能性がある他車両V2を検出することを目的とするものである。このため、本例では、図2に示すように自車両V1の後側方に矩形状の検出領域(検出枠)A1,A2を設定する。なお、このような検出領域A1,A2は、自車両V1に対する相対位置から設定してもよいし、白線の位置を基準に設定してもよい。白線の位置を基準に設定する場合に、立体物検出装置1は、例えば既存の白線認識技術等を利用するとよい。
また、立体物検出部33は、図2に示すように、設定した検出領域A1,A2の自車両V1側における辺(走行方向に沿う辺)を接地線L1,L2として認識する。一般に接地線は立体物が地面に接触する線を意味するが、本実施形態では地面に接触する線でなく上記の如くに設定される。なおこの場合であっても、経験上、本実施形態に係る接地線と、本来の他車両V2の位置から求められる接地線との差は大きくなり過ぎず、実用上は問題が無い。
図5は、立体物検出部33による差分波形の生成の様子を示す概略図である。図5に示すように、立体物検出部33は、位置合わせ部32で算出した差分画像PDt(図4(b)の右図)のうち検出領域A1,A2に相当する部分から、差分波形DWtを生成する。この際、立体物検出部33は、視点変換により立体物が倒れ込む方向に沿って、差分波形DWtを生成する。なお、図5に示す例では、便宜上検出領域A1のみを用いて説明するが、検出領域A2についても同様の手順で差分波形DWtを生成する。
具体的に説明すると、まず立体物検出部33は、差分画像PDtのデータ上において立体物が倒れ込む方向上の線Laを定義する。そして、立体物検出部33は、線La上において所定の差分を示す差分画素DPの数をカウントする。本実施形態では、所定の差分を示す差分画素DPは、差分画像PDtの画素値が「0」「1」で表現されており、「1」を示す画素が、差分画素DPとしてカウントされる。
立体物検出部33は、差分画素DPの数をカウントした後、線Laと接地線L1との交点CPを求める。そして、立体物検出部33は、交点CPとカウント数とを対応付け、交点CPの位置に基づいて横軸位置、すなわち図5右図の上下方向軸における位置を決定するとともに、カウント数から縦軸位置、すなわち図5右図の左右方向軸における位置を決定し、交点CPにおけるカウント数としてプロットする。
以下同様に、立体物検出部33は、立体物が倒れ込む方向上の線Lb,Lc…を定義して、差分画素DPの数をカウントし、各交点CPの位置に基づいて横軸位置を決定し、カウント数(差分画素DPの数)から縦軸位置を決定しプロットする。立体物検出部33は、上記を順次繰り返して度数分布化することで、図5右図に示すように差分波形DWtを生成する。
ここで、差分画像PDtのデータ上における差分画素PDは、異なる時刻の画像において変化があった画素であり、言い換えれば立体物が存在した箇所であるといえる。このため、立体物が存在した箇所において、立体物が倒れ込む方向に沿って画素数をカウントして度数分布化することで差分波形DWtを生成することとなる。特に、立体物が倒れ込む方向に沿って画素数をカウントすることから、立体物に対して高さ方向の情報から差分波形DWtを生成することとなる。
なお、図5左図に示すように、立体物が倒れ込む方向上の線Laと線Lbとは検出領域A1と重複する距離が異なっている。このため、検出領域A1が差分画素DPで満たされているとすると、線Lb上よりも線La上の方が差分画素DPの数が多くなる。このため、立体物検出部33は、差分画素DPのカウント数から縦軸位置を決定する場合に、立体物が倒れ込む方向上の線La,Lbと検出領域A1とが重複する距離に基づいて正規化する。具体例を挙げると、図5左図において線La上の差分画素DPは6つあり、線Lb上の差分画素DPは5つである。このため、図5においてカウント数から縦軸位置を決定するにあたり、立体物検出部33は、カウント数を重複距離で除算するなどして正規化する。これにより、差分波形DWtに示すように、立体物が倒れ込む方向上の線La,Lbに対応する差分波形DWtの値はほぼ同じとなっている。
差分波形DWtの生成後、立体物検出部33は、生成した差分波形DWtに基づいて、隣接車線に存在している他車両の検出を行う。ここで、図6は、立体物検出部33による立体物の検出方法を説明するための図であり、差分波形DWtおよび立体物を検出するための閾値αの一例を示している。立体物検出部33は、図6に示すように、生成した差分波形DWtのピークが、当該差分波形DWtのピーク位置に対応する所定の閾値α以上であるか否かを判断することで、検出領域A1,A2に立体物が存在するか否かを判断する。そして、立体物検出部33は、差分波形DWtのピークが所定の閾値α未満である場合には、検出領域A1,A2に立体物が存在しないと判断し、一方、差分波形DWtのピークが所定の閾値α以上である場合には、検出領域A1,A2に立体物が存在すると判断する。
また、立体物検出部33は、現時刻における差分波形DWtと一時刻前の差分波形DWt−1との対比により、立体物の移動速度を算出する。すなわち、立体物検出部33は、差分波形DWt,DWt−1の時間変化から、立体物の移動速度を算出する。さらに、立体物検出部33は、自車両V1の移動速度に対する立体物の相対移動速度も算出する。
詳細に説明すると、立体物検出部33は、図7に示すように差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtn(nは2以上の任意の整数)に分割する。図7は、立体物検出部33によって分割される小領域DWt1〜DWtnを示す図である。小領域DWt1〜DWtnは、例えば図7に示すように、互いに重複するようにして分割される。例えば小領域DWt1と小領域DWt2とは重複し、小領域DWt2と小領域DWt3とは重複する。
次いで、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎にオフセット量(差分波形の横軸方向(図7の上下方向)の移動量)を求める。ここで、オフセット量は、一時刻前における差分波形DWt−1と現時刻における差分波形DWtとの差(横軸方向の距離)から求められる。この際、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎に、一時刻前における差分波形DWt−1を横軸方向に移動させた際に、現時刻における差分波形DWtとの誤差が最小となる位置(横軸方向の位置)を判定し、差分波形DWt−1の元の位置と誤差が最小となる位置との横軸方向の移動量をオフセット量として求める。そして、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量をカウントしてヒストグラム化する。
図8は、立体物検出部33により得られるヒストグラムの一例を示す図である。図8に示すように、各小領域DWt1〜DWtnと一時刻前における差分波形DWt−1との誤差が最小となる移動量であるオフセット量には、多少のバラつきが生じる。このため、立体物検出部33は、バラつきを含んだオフセット量をヒストグラム化し、ヒストグラムから移動距離を算出する。この際、立体物検出部33は、ヒストグラムの極大値から立体物(他車両V2)の移動距離を算出する。すなわち、図8に示す例において、立体物検出部33は、ヒストグラムの極大値を示すオフセット量を移動距離τ*と算出する。このように、本実施形態では、オフセット量にバラつきがあったとしても、その極大値から、より正確性の高い移動距離を算出することが可能となる。なお、移動距離τ*は、自車両に対する立体物(他車両V2)の相対移動距離である。このため、立体物検出部33は、絶対移動距離を算出する場合には、得られた移動距離τ*と車速センサ20からの信号とに基づいて、絶対移動距離を算出することとなる。そして、立体物検出部33は、算出した立体物の相対移動距離および絶対移動距離に基づいて、立体物の相対移動速度および絶対移動速度を算出する。
このように、本実施形態では、異なる時刻に生成された差分波形DWtの誤差が最小となるときの差分波形DWtのオフセット量から立体物(他車両V2)の移動距離を算出することで、波形という1次元の情報のオフセット量から移動距離を算出することとなり、移動距離の算出にあたり計算コストを抑制することができる。また、異なる時刻に生成された差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割することで、立体物のそれぞれの箇所を表わした波形を複数得ることができ、これにより、立体物のそれぞれの箇所毎にオフセット量を求めることができ、複数のオフセット量から移動距離を求めることができるため、移動距離の算出精度を向上させることができる。また、本実施形態では、高さ方向の情報を含む差分波形DWtの時間変化から立体物の移動距離を算出することで、単に1点の移動のみに着目するような場合と比較して、時間変化前の検出箇所と時間変化後の検出箇所とが高さ方向の情報を含んで特定されるため立体物において同じ箇所となり易く、同じ箇所の時間変化から移動距離を算出することとなり、移動距離の算出精度を向上させることができる。
なお、ヒストグラム化にあたり立体物検出部33は、複数の小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けをし、小領域DWt1〜DWtn毎に求めたオフセット量を重みに応じてカウントしてヒストグラム化してもよい。図9は、立体物検出部33による重み付けを示す図である。
図9に示すように、小領域DWm(mは1以上n−1以下の整数)は平坦となっている。すなわち、小領域DWmは所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が小さくなっている。立体物検出部33は、このような小領域DWmについて重みを小さくする。平坦な小領域DWmについては、特徴がなくオフセット量の算出にあたり誤差が大きくなる可能性が高いからである。
一方、小領域DWm+k(kはn−m以下の整数)は起伏に富んでいる。すなわち、小領域DWmは所定の差分を示す画素数のカウントの最大値と最小値との差が大きくなっている。立体物検出部33は、このような小領域DWmについて重みを大きくする。起伏に富む小領域DWm+kについては、特徴的でありオフセット量の算出を正確に行える可能性が高いからである。このように重み付けすることにより、移動距離の算出精度を向上することができる。
なお、移動距離の算出精度を向上するために上記実施形態では差分波形DWtを複数の小領域DWt1〜DWtnに分割したが、移動距離の算出精度がさほど要求されない場合は小領域DWt1〜DWtnに分割しなくてもよい。この場合に、立体物検出部33は、差分波形DWtと差分波形DWt−1との誤差が最小となるときの差分波形DWtのオフセット量から移動距離を算出することとなる。すなわち、一時刻前における差分波形DWt−1と現時刻における差分波形DWtとのオフセット量を求める方法は上記内容に限定されない。
なお、本実施形態において立体物検出部33は、自車両V1(カメラ10)の移動速度を求め、求めた移動速度から静止物についてのオフセット量を求める。静止物のオフセット量を求めた後、立体物検出部33は、ヒストグラムの極大値のうち静止物に該当するオフセット量を無視したうえで、立体物の移動距離を算出する。
図10は、立体物検出部33により得られるヒストグラムの他の例を示す図である。カメラ10の画角内に立体物の他に静止物が存在する場合に、得られるヒストグラムには2つの極大値τ1,τ2が現れる。この場合、2つの極大値τ1,τ2のうち、いずれか一方は静止物のオフセット量である。このため、立体物検出部33は、移動速度から静止物についてのオフセット量を求め、そのオフセット量に該当する極大値について無視し、残り一方の極大値を採用して立体物の移動距離を算出する。これにより、静止物により立体物の移動距離の算出精度が低下してしまう事態を防止することができる。
なお、静止物に該当するオフセット量を無視したとしても、極大値が複数存在する場合、カメラ10の画角内に立体物が複数台存在すると想定される。しかし、検出領域A1,A2内に複数の立体物が存在することは極めて稀である。このため、立体物検出部33は、移動距離の算出を中止する。これにより、本実施形態では、極大値が複数あるような誤った移動距離を算出してしまう事態を防止することができる。
さらに、本実施形態において、立体物検出部33は、差分波形DWtに基づいて立体物を検出した後に、自車両V1の移動速度に対する立体物の相対移動速度に基づいて、検出した立体物が検出対象物であるか否かを判断する。ここで、本実施形態では、自車両V1が車線変更する際に接近する可能性のある他車両V2を検出することを目的とするものである。そこで、以下においては、検出対象物として、後方から自車両V1に接近する他車両V2を検出する場面を例示して説明する。
自車両V1に接近する他車両V2を検出対象物として検出するため、立体物検出部33は、検出した立体物の中から、静止物である立体物や自車両V1から離れていく他車両V2を除外する。具体的には、立体物検出部33は、立体物の相対移動速度が所定の判定基準速度tv以上であるか否かを判断することで、検出対象物である他車両V2を検出する。なお、判定基準速度tvは、相対移動速度の検出誤差を考慮して、0Km/h以下の速度とすることが好適である。
すなわち、立体物が静止物であり、自車両V1が時速60Km/hで走行している場合には、自車両V1に対する立体物の相対移動速は「−60Km/h」となる。また、自車両V1が時速60Km/hで走行しており、他車両V2が時速40Km/hで走行している場合には、他車両V2は自車両V1から離れていくこととなり、この場合、自車両V1に対する他車両V2の相対移動速度は「−20Km/h」となる。そこで、立体物検出部33は、たとえば、判定基準速度tvを「−10Km/h」と設定し、立体物の相対移動速度がこの判定基準速度tv「−10Km/h」以上であるか否かを判断することで、相対移動速度が判定基準速度tv「−10Km/h」以上である立体物を、検出対象物である他車両V2として検出することができる。これにより、立体物検出部33は、静止物や自車両V1から離れる他車両V2を検出対象物から除外し、自車両V1に接近する他車両V2を検出対象物として適切に検出することができる。
また、降雨などにより路面に水膜が形成されている場合には、路面上の水面に映り込んだ立体物や光源の虚像が検出対象物として誤検出されしまう場合がある。そこで、本実施形態に係る立体物検出部33は、降雨などにより路面に水膜が形成されているか否かを判断し、路面に水膜が形成されていると判断した場合には、路面上の水面に映り込んだ立体物や光源の虚像が検出対象物として誤検出されないように、上述した判定基準速度tvの値を制御する。
すなわち、昼間や夜の繁華街など自車両V1周辺が明るい環境においては、降雨などにより路面に水膜が形成されている場合に、建物や街路樹などの立体物が路面の水面に映り込んでしまい、水面に映り込んだ建物や街路樹などの立体物の虚像を、自車両V1の後方に存在する他車両V2として誤検出してしまうおそれがある。特に、水面に映り込んだ立体物がカメラ10から遠く離れるほど、カメラ10から見た立体物の角速度は小さくなるため、カメラ10からは、水面に映り込んだ立体物の虚像が自車両V1に追従して移動しているように見えてしまう。そのため、水面に映り込んだ立体物の虚像の相対移動速度が判定基準速度tv以上として算出されてしまい、水面に映り込んだ建物や街路樹などの立体物の虚像が自車両V1に接近する他車両V2として誤検出されてしまう場合がある。
そこで、本実施形態において、立体物検出部33は、このような誤検出を防止するために、検出対象物である立体物の検出条件を変更する。具体的には、立体物検出部33は、図11に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、自車両V1周辺の明るさが明るいものと判断し、判定基準速度tvを高い値に変更する。図11は、撮像画像の輝度と判定基準速度との関係の一例を示す図である。たとえば、図11に示す例において、立体物検出部33は、撮像画像の輝度がtl1以下である場合には、判定基準速度tvをtv1に設定し、撮像画像の輝度がtl1よりも高いtl2以上である場合には、判定基準速度tvをtv1よりも高い値のtv2に変更する。また、立体物検出部33は、撮像画像の輝度がtl1よりも高くt12よりも低い場合には、tv1からtv2の範囲内において、撮像画像の輝度が高くなるほど判定基準速度を高い値に設定する。
このように、立体物検出部33は、遠く離れた建物や街路樹などの立体物が路面の水面に映り込み易い、昼間や夜の繁華街などの自車両V1周辺が明るい環境において、検出対象物である立体物の検出が抑制されるように、判定基準速度tvを高い値に変更する。これにより、たとえば、カメラ10から離れた建物や街路樹などの立体物が路面の水面に映り込み、水面に映り込んだ立体物の虚像の相対移動速度が比較的速い速度で算出されてしまう場合でも、このような建物や街路樹などの立体物の虚像を、検出対象物である立体物として誤検出してしまうことを有効に抑制することができる。
たとえば、図11に示す例において、tv1が「−10Km/h」であり、tv2が「−2Km/h」であり、水面に映り込んだ立体物がカメラ10から遠く建物や街路樹などであり、水面に映り込んだこのような立体物の虚像の相対移動速度が「−8Km/h」である場合に、判定基準速度tvをtv1からtv2に変更することで、立体物の虚像の相対移動速度「−8Km/h」は変更後の判定基準速度tv2「−2Km/h」未満となり、このような水面に映り込んだ立体物の虚像を検出対象物として検出してしまうことを抑制することが可能となる。
なお、路面上の水面にはカメラ10から近い距離の建物などの立体物も映り込む場合がある。しかしながら、カメラ10から見た場合に、このような立体物の角速度は大きくなるため、カメラ10から近い立体物の虚像は自車両V1から直ぐに離れていくように見える。そのため、カメラ10に近い立体物の虚像の相対移動速度は、カメラ10から離れた立体物の虚像の相対移動速度よりも遅い速度で算出されるため、カメラ10から離れた立体物の虚像の誤検出を抑制するために設定した判定基準速度tvを用いることで、カメラ10から近い立体物の虚像の誤検出も抑制することができる。
さらに、夕方や夜間などの自車両V1周辺が暗い環境においては、降雨などにより路面に水膜が形成されている場合でも、カメラ10から離れた建物や街路樹などの立体物は水面に映り込みにくい。一方、カメラ10から近い建物や街路樹などの立体物や、カメラ10から近い街灯などの光源が路面の水面に映り込む傾向がある。上述したように、カメラ10から近い立体物や光源は、カメラ10から見た場合の角速度が大きくなるため(自車両V1の後方に直ぐに移動するように見えるため)、このような立体物や光源の相対移動速度は遅い速度として算出される。そのため、夕方や夜間などの自車両V1周辺が暗い環境では、判定基準速度tvを高い値に設定しなくても(たとえば、図11に示す例において判定基準値tvをtv1からtv2に変更しなくても)、カメラ10から近い立体物や光源の虚像の相対移動速度が判定基準速度tv未満となり易いため、カメラ10から近い立体物や光源の虚像を自車両V1に接近する他車両V2として誤検出してしまうことを十分に抑制することができる。
さらに、本実施形態において、立体物検出部33は、判定基準速度tvを設定した後に、立体物が検出されなくなった場合(水面に映り込んだ立体物が検出されなくなった場合)には、設定した判定基準速度tvを初期値に戻す。たとえば、図11に示す例において、立体物検出部33が、撮像画像の輝度がtl2以上であるため、判定基準速度tvを初期値tv1からtv2に変更した場合には、立体物が検出されなくなった後に、設定した判定基準速度tv2を初期値tv1に戻す。
また、本実施形態において、立体物検出部33は、判定基準速度tvを初期値に戻す場合には、判定基準速度tvを変更後の値のままで保持しておく時間を、検出対象物の検出を抑制するための抑制時間として設定し、この抑制時間が経過した後に、判定基準速度tvを初期値に戻す。
ここで、図12は、撮像画像の輝度と抑制時間との関係の一例を示す図である。立体物検出部33は、図12に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、抑制時間を長い時間に設定する。たとえば、図12に示す例において、立体物検出部33は、撮像画像の輝度がtl1以下である場合には抑制時間をT1に設定し、撮像画像の輝度がtl1よりも高いtl2以上である場合には抑制時間をt1よりも長いT2に設定する。また、立体物検出部33は、撮像画像の輝度がtl1よりも高くt12よりも低い場合には、T1からT2の範囲内において、撮像画像の輝度が高くなるほど抑制時間を長く設定する。
上述したように、自車両V1周辺が明るい環境においては、カメラ10から離れた立体物も水面に映り込み易くなる。また、この場合に、路面に複数の水膜が存在する場合には、それぞれの水膜に、カメラ10から離れた同一の立体物が映り込んでしまう傾向にある。そのため、路面に複数の水膜が存在する場合には、自車両V1がそれぞれの水膜の近傍を走行するたびに、自車両V1から離れた同一の立体物が検出されてしまうこととなる。このような場面において、立体物が検出されたタイミングで判定基準速度tvを高くし、立体物が検出されなくなったタイミングで判定基準速度tvを元の速度に戻す処理を繰り返し行ってしまうと、自車両の走行速度や水膜が存在する位置の距離間隔によっては、判定基準速度tvを高い値に変更する処理が間に合わずに、水面に映り込んだ立体物の虚像を他車両V2として誤検出してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、撮像画像の輝度が高いほど、変更した判定基準速度tvを初期値に戻すまでの時間、すなわち、立体物の検出を抑制する抑制時間を長い時間に設定する。このように、撮像画像の輝度に対応して、立体物の検出条件である抑制時間を変更することで、路面に水膜が複数存在する環境においても、水面に映り込んだ建物や街路樹などの立体物の虚像を他車両V2として誤検出してしまうことをより抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態において、立体物検出部33は、自車両V1周辺が暗い環境において、ネオンや街灯などの高輝度光源を検出した場合には、図13に示すように、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvを高い値に設定する。
すなわち、夜間や夕方などの自車両V1周辺が暗い環境においては、ネオンや街灯などの高輝度光源が、カメラ10から離れていても路面の水面に映り込む場合がある。このような場合に、カメラ10からは、水面に映り込んだ光源の虚像が自車両V1に追従するように見えるため、水面に映り込んだ光源の虚像の相対移動速度が判定基準速度tv以上で検出されてしまい、このような水面に映り込んだ光源の虚像を、自車両V1に接近する他車両V2として誤検出してしまう場合がある。
そこで、立体物検出部33は、撮像画像の輝度が低い場合に、高輝度光源を検出した場合には、図13に示すように、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvを高く設定する。これにより、水面に映り込んだ光源の虚像を、自車両V1に接近する他車両V2として誤検出してしまうことを有効に抑制することができる。たとえば、図13に示す例において、立体物検出部33は、撮像画像の輝度がtl1以下である場合に、判定基準速度tvをtv1よりも高い値のtv1’に設定する。また、立体物検出部33は、撮像画像の輝度がtl1よりも大きくtl2よりも小さい場合においても、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvの値を大きい値に設定する。なお、撮像画像の輝度がtl2以上であり、自車両V1周辺が十分に明るい場合には、このような高輝度光源による影響は少なくなるため、判定基準速度tvの値を、高輝度光源を検出していない場合と同様の値に設定する。
なお、高輝度光源を検出した場合に変更する判定基準速度の値tv1’は、図13に示す値に限定されない。たとえば、高輝度光源の大きさに応じて、図14(A)に示すように、高輝度光源を検出した場合に変更する判定基準速度の値tv1’をtv2と同じ値に設定してもよいし、あるいは、図14(B)に示すように、高輝度光源を検出した場合に変更する判定基準速度の値tv1’をtv2よりも大きい値に設定してもよい。図14は、高輝度光源を検出した場合における、撮像画像の輝度と判定基準速度との関係の他の例を示す図である。
また、立体物検出部33は、高輝度光源を検出した場合に、図13に示すように、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvを高い値に設定した場合には、高輝度光源が検出されなくなった時点で、判定基準速度tvを撮影画像の輝度に応じた元の値に戻す。すなわち、図11に示すように、路面に水膜が形成されていると判断され、判定基準速度tvを撮影画像の輝度に応じて変更した場合には、水面に映り込んだ立体物の虚像が検出されなくなってから所定の抑制時間が経過するまでは、判定基準速度tvは初期値に戻されないが、図13に示すように、高輝度光源を検出した場合には、高輝度光源が検出されなくなって直ぐに、判定基準速度tvが撮影画像の輝度に応じた元の値に戻される。
なお、上述した判定基準速度tvの設定は、左右後方の検出領域A1,A2において同様に行うことができる。また、立体物検出部33は、上述した判定基準速度tvの設定を、左右後方の検出領域A1,A2のいずれか一方のみで行う構成としてもよい。さらに、本実施形態では、撮影画像全体の輝度の平均値を撮影画像の輝度として検出しているが、たとえば、撮影画像右側の領域の輝度の平均値に基づいて、右後方の検出領域A1における判定基準速度tvを設定し、撮影画像左側の領域の輝度の平均値に基づいて、左後方の検出領域A2における判定基準速度tvを設定する構成としてもよい。
図3に戻り、輝度検出部34は、撮像画像の輝度を検出する。たとえば、輝度検出部34は、カメラ10で撮像された撮像画像全体の輝度の平均値を、撮像画像の輝度として算出することができる。また、輝度検出部34は、撮像画像のうちの所定領域、たとえば路面や背景に対応する画像領域の輝度の平均値を、撮像画像の輝度として算出することができる。
さらに、本実施形態において、輝度検出部34は、カメラ10により撮像画像が撮像される度にカメラ10から最新の撮像画像を取得し、新たに取得した撮像画像の輝度を算出する。そして、輝度検出部34は、直近数フレーム分の撮像画像の輝度の平均値を、撮像画像の輝度として算出する。そして、輝度検出部34は、算出した撮像画像の輝度を、自車両V1周辺の明るさを示す指標として、立体物検出部33に送信する。
路面状態推測部35は、降雨などにより路面に水膜が形成されている状態であるか否かを推測する。具体的には、路面状態推測部35は、ワイパーの動作状況に基づいて、降雨などにより路面に水膜が形成されているか否かを推測することができる。たとえば、路面状態推測部35は、ワイパーの動作頻度を三段階(Off,Low,Hi)で設定可能な場合に、ワイパーがHiからLow、またはHiまたはLowからOffに切り替えられた場合には、今まで雨が降っており、路面に水膜(水たまり)が形成されている可能性が高いものと推測する。また、路面状態推測部35は、ワイパーの動作頻度がHiである場合には、強い雨が降っているために、路面に水膜が形成されている可能性が高いものと推測してもよい。このように、路面状態推測部35は、ワイパーの動作状態に基づいて降雨状態を推測することで、路面に水膜が形成されているか否かを適切に推測することができる。
また、路面状態推測部35による路面の状態の推測方法は、上記方法に限定されず、たとえば、以下のように、路面に水膜が形成されている状態であるか否かを判定することができる。具体的には、路面状態推測部35は、雨滴センサ(不図示)に、赤外光をレンズに向けて照射させて、照射した赤外光が雨滴により減衰した減衰量を検出させることで、レンズ表面における雨滴量を検出させることができ、この検出の結果、雨滴量が一定量以上である場合に、降雨により路面に水膜が形成されていると推測してもよい。あるいは、ナビゲーション装置を介して、天気情報を取得することで、降雨により路面に水膜が形成されているか否かを推測してもよい。
さらに、路面状態推測部35は、画像のテクスチャ分析の結果から、路面に形成された水膜などに建物などの像が移り込んだ虚像であるか否かを判断することで、路面に水膜が形成されているか否かを判断することができる。
具体的には、路面状態推測部35は、鳥瞰視画像を視点変換した際に立体物が倒れ込む方向に沿う判定線(図5のLa,Lbなど)のうち、差分波形情報においてカウントされた度数が所定値以上である一つの基準判定線(例えばLa)を特定し、基準判定線(La)上の画像領域の輝度と基準判定線と隣り合う判定線を含む一又は複数の比較判定線(Lb,Lc,・・・)上の画像領域の輝度との輝度差が所定値未満であるか否かを判断し、輝度差が所定値未満である場合には、画像領域を含む領域において検出された立体物は虚像であると判断する。輝度差の比較は、基準判定線(La)上のある一画素又はこの画素を含む画像領域の輝度と、比較判定線(Lb,Lc,・・・)のある一画素又はこの画素を含む画像領域の輝度とを比較することができる。また、輝度差は、図5に示す差分波形情報における所定の差分を示す画素数又は度数分布化された値に基づいて判断することができる。このように、路面状態推測部35は、路面の水膜に周囲構造物が映り込んだ虚像の画像は、コントラストが低いという特徴を利用して、検出された立体物に対応する像が実像であるのか虚像であるのかを判断し、これにより、路面に水膜が形成されている状態であるか否かを適切に推測することができる。
光源検出部36は、カメラ10により撮像された撮像画像から、ネオンや街灯などの高輝度光源を検出する。たとえば、光源検出部36は、撮像画像のうち、所定値以上の輝度を有する画素が所定の画素数以上まとまっている領域を、高輝度光源として検出することができる。また、光源検出部36は、撮像画像の平均輝度よりも所定値以上大きい輝度の画素領域を高輝度光源領域として検出する構成としてもよい。なお、光源検出部36による高輝度光源の検出結果は、立体物検出部33に送信される。
特に、本実施形態では、ネオンや街灯などの高輝度光源がカメラ10から離れていても路面の水面に映り込む場合があり、このような場合に、水面に映り込んだ光源の虚像を他車両として誤検出してしまうことを抑制するために、高輝度光源を検出している。そのため、光源検出部36は、ネオンや街灯など、カメラ10から離れていても路面の水面に映り込む可能性のある光源を高輝度光源として検出することが望ましい。反対に、車のヘッドライトの光はカメラ10から遠くなると拡散してしまい路面の水面に映り込みにくいため、たとえば、エッジなどに基づいて、このような光源を高輝度光源として検出しないようにすることが好適である。
次に、本実施形態に係る立体物検出処理について説明する。図15は、第1実施形態の立体物検出処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する立体物検出処理は、図16に示す判定基準速度設定処理と並行して行われる。これにより、後述するように、図15に示す立体物検出処理のステップS112において、図16に示す判定基準速度設定処理において設定された判定基準速度tvを用いて判断が行われることとなる。
図15に示すように、まず、計算機30により、カメラ10から撮像画像のデータの取得が行われ(ステップS101)、視点変換部31により、取得した撮像画像のデータに基づいて、鳥瞰視画像PBtのデータが生成される(ステップS102)。
次いで、位置合わせ部32は、鳥瞰視画像PBtのデータと、一時刻前の鳥瞰視画像PBt−1のデータとを位置合わせをし、差分画像PDtのデータを生成する(ステップS103)。具体的には、位置合わせ部32は、鳥瞰視画像PBt,PBt−1の画素値の差を絶対値化し、当該絶対値が所定の差分閾値th以上であるときに、差分画像PDtの画素値を「1」とし、絶対値が所定の差分閾値th未満であるときに、差分画像PDtの画素値を「0」とする。
その後、立体物検出部33は、差分画像PDtのデータから、画素値が「1」の差分画素DPの数をカウントして、差分波形DWtを生成する(ステップS104)。そして、立体物検出部33は、差分波形DWtのピークが所定の閾値α以上であるか否かを判断する(ステップS105)。差分波形DWtのピークが閾値α以上でない場合、すなわち差分が殆どない場合には、撮像画像内には立体物が存在しないと考えられる。このため、差分波形DWtのピークが閾値α以上でないと判断した場合には(ステップS105=No)、立体物検出部33は、立体物が存在しないと判断する(ステップS115)。そして、ステップS101に戻り、図15に示す処理を繰り返す。
一方、差分波形DWtのピークが閾値α以上であると判断した場合には(ステップS105=Yes)、立体物検出部33により、隣接車線に立体物が存在すると判断され、ステップS106に進み、立体物検出部33により、差分波形DWtが、複数の小領域DWt1〜DWtnに分割される。次いで、立体物検出部33は、小領域DWt1〜DWtn毎に重み付けを行い(ステップS107)、小領域DWt1〜DWtn毎のオフセット量を算出し(ステップS108)、重みを加味してヒストグラムを生成する(ステップS109)。
そして、立体物検出部33は、ヒストグラムに基づいて自車両V1に対する立体物の移動距離である相対移動距離を算出する(ステップS110)。次に、立体物検出部33は、相対移動距離から立体物の絶対移動速度を算出する(ステップS111)。このとき、立体物検出部33は、相対移動距離を時間微分して相対移動速度を算出するとともに、車速センサ20で検出された自車速を加算して、絶対移動速度を算出する。
ステップS112では、立体物検出部33により、ステップS110で算出した立体物の相対移動速度と判定基準速度tvとが比較される。なお、このステップS112においては、図16に示す判定基準速度設定処理において設定された判定基準速度tvが用いられる。
そして、比較の結果、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上であると判断された場合には、ステップS113に進み、さらに、立体物が自車両V1に接近する他車両V2であるか否かの判断が行われる。一方、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv未満であると判断された場合には、ステップS115に進み、立体物は自車両V1に接近する他車両V2ではないと判断される。
ステップS113では、立体物検出部33により、立体物の絶対移動速度が10Km/h以上、且つ、自車両V1に対する立体物の相対移動速度が+60Km/h以下であるか否かの判断が行われる。双方を満たす場合には(ステップS113=Yes)、立体物検出部33は、検出した立体物は隣接車線に存在する他車両V2であり、隣接車線に他車両V2が存在すると判断する(ステップS114)。一方、いずれか一方でも満たさない場合には(ステップS113=No)、立体物検出部33は、隣接車線に他車両V2が存在しないと判断する(ステップS115)。
なお、本実施形態では自車両V1の左右後方を検出領域A1,A2とし、自車両V1が車線変更した場合に接近する可能性があるか否かに重点を置いている。このため、ステップS113の処理が実行されている。すなわち、本実施形態にけるシステムを高速道路で作動させることを前提とすると、他車両V2の速度が10km/h未満である場合、たとえ他車両V2が存在したとしても、車線変更する際には自車両V1の遠く後方に位置するため問題となることが少ない。同様に、他車両V2の自車両V1に対する相対移動速度が+60km/hを超える場合(すなわち、他車両V2が自車両V1の速度よりも60km/hより大きな速度で移動している場合)、車線変更する際には自車両V1の前方に移動しているため問題となることが少ない。このため、ステップS113では車線変更の際に問題となる他車両V2を判断しているともいえる。
また、ステップS113において他車両V2の絶対移動速度が10km/h以上、且つ、他車両V2の自車両V1に対する相対移動速度が+60km/h以下であるかを判断することにより、以下の効果がある。例えば、カメラ10の取り付け誤差によっては、静止物の絶対移動速度を数km/hであると検出してしまう場合があり得る。よって、10km/h以上であるかを判断することにより、静止物を他車両V2であると判断してしまう可能性を低減することができる。また、ノイズによっては他車両V2の自車両V1に対する相対速度を+60km/hを超える速度に検出してしまうことがあり得る。よって、相対速度が+60km/h以下であるかを判断することにより、ノイズによる誤検出の可能性を低減できる。
さらに、ステップS113の処理に代えて、他車両V2の絶対移動速度がマイナスでないことや、0km/hでないことを判断してもよい。また、本実施形態では自車両V1が車線変更した場合に接近する可能性がある否かに重点を置いているため、ステップS114において自車両に接近する他車両V2が検出された場合に、自車両の運転者に警告音を発したり、所定の表示装置により警告相当の表示を行ったりしてもよい。
なお、他車両V2の絶対移動速度が10km/h以上であるか、他車両V2の自車両V1に対する相対移動速度が+60km/h以下であるかを判断する際の各速度は一例であり、この速度に限定されるものではない。たとえば、他車両V2の絶対移動速度が20km/h以上、且つ、自車両V1に対する他車両V2の相対移動速度が+50km/h以下である場合に、立体物は検出対象である他車両V2であると判断することができる。
次に、図16に示す判定基準速度設定処理について説明する。上述したように、判定基準速度設定処理は、図15に示す立体物検出処理と並行して行われ、この判定基準速度設定処理において設定された判定基準速度tvが、図15に示す立体物検出処理のステップS112において用いられる。
図16に示すように、まず、ステップS201では、路面に水膜が形成されているか否かの判断が行われる。具体的には、まず、路面状態推測部35が、降雨などにより路面に水膜が形成されている状態であるか否かを推測する。そして、立体物検出部33は、路面状態推測部35の推測結果に基づいて、路面に水膜が形成されている状態であるか否かを判断する。路面に水膜が形成されている状態であると判断された場合には、ステップS202に進み、一方、路面に水膜が形成されている状態ではないと判断された場合には、ステップS207に進む。
ステップS202〜S204では、路面に水膜が形成されている状態であると判断されているため、水面に映り込んだ立体物や光源の虚像を検出対象物として誤検出してしまうことを抑制するために、判定基準速度tvを設定する処理が行われる。
具体的には、まず、ステップS202において、撮像画像の輝度の検出が行われる。たとえば、輝度検出部34は、直近数フレーム分の撮像画像の輝度の平均値を、撮像画像の輝度として検出する。そして、輝度検出部34は、検出した撮像画像の輝度を、自車両V1周辺の明るさを示す指標として、立体物検出部33に送信する。
ステップS203では、高輝度光源の検出が行われる。具体的には、光源検出部36が、撮像画像に基づいて、ネオンや街灯などの高輝度光源の検出を行う。そして、光源検出部36は、高輝度光源の検出結果を、立体物検出部33に送信する。
ステップS204では、立体物検出部33により、ステップS202で検出した撮像画像の輝度と、ステップS203での高輝度光源の検出結果に基づいて、判定基準速度の設定が行われる。具体的には、立体物検出部33は、高輝度光源を検出していない場合には、図11に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、判定基準速度tvを高い値に変更する。また、立体物検出部33は、撮像画像の輝度が低い場合において、ネオンや街灯などの高輝度光源を検出した場合には、図13に示すように、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvを高い値に設定する。
なお、立体物検出部33は、高輝度光源が検出できて、判定基準速度tvを高輝度光源が検出されていない場合よりも高い値に設定した後も、高輝度光源の検出を繰り返し行っており、高輝度光源が検出されなくなると直ぐに、判定基準速度tvを高輝度光源が検出されていない場合の元の値に戻す処理を行う。
続いて、ステップS205では、立体物検出部33により、検出対象物の検出を抑制する抑制時間の設定が行われる。具体的には、立体物検出部33は、図12に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、抑制時間を長い時間に設定する。
そして、ステップS206では、立体物検出部33により、ステップS205で設定された抑制時間が経過したか否かの判断が行われる。抑制時間が経過していない場合には、ステップS204で設定した判定基準速度tvを維持したまま待機し、抑制時間が経過した後に、ステップS207に進み、立体物検出部33により、判定基準速度tvが初期値に設定される。
以上のように、第1実施形態では、自車両の移動速度に対する立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上であるか否かを判断し、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上である立体物を検出対象物として検出することで、たとえば、静止物や自車両V1から離れていく他車両V2を、自車両V1に接近する他車両V2として検出してしまうことを有効に抑制することができる。
また、本実施形態では、図11に示すように、撮像画像の輝度が高いほど判定基準速度tvを高い値に設定することで、遠くの建物や街路樹などの立体物が路面の水面に映り込み易い、昼間や夜の繁華街などの自車両V1周辺が明るい環境においても、このような建物や街路樹などの立体物の虚像を、検出対象物として誤検出してしまうことを有効に抑制することができる。
さらに、本実施形態では、図12に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、立体物の検出を抑制する抑制時間を長く設定することで、路面に水膜が複数存在する環境において、仮に、立体物が検出されたタイミングで判定基準速度tvを高くし、立体物が検出されなくなったタイミングで判定基準速度tvを元の速度に戻す処理を繰り返し行った場合に、判定基準速度tvを高い値に変更する処理が間に合わずに水面に映り込んだ立体物の虚像を他車両V2として検出してしまうような場合でも、高い値に変更された判定基準速度tvが抑制時間だけ維持されるため、水面に映り込んだ建物や街路樹などの立体物の虚像を他車両V2として誤検出してしまうことをより抑制することが可能となる。
加えて、本実施形態では、撮像画像の輝度が低い場合において、高輝度光源を検出した場合には、図13に示すように、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvを高い値に設定する。これにより、本実施形態では、夜間や夕方などの自車両V1周辺が暗い環境下において、ネオンや街灯などの高輝度光源がカメラ10から離れていても、ネオンや街灯などの光源が路面の水面に映り込んでしまう場合でも、このような光源の虚像を、検出対象物として誤検出してしまうことを有効に抑制することができる。
《第2実施形態》
続いて、第2実施形態に係る立体物検出装置1aについて説明する。第2実施形態に係る立体物検出装置1aは、図17に示すように、第1実施形態の計算機30に代えて、計算機30aを備えており、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態と同様である。ここで、図17は、第2実施形態に係る計算機30aの詳細を示すブロック図である。
第2実施形態にかかる立体物検出装置1aは、図17に示すように、カメラ10と計算機30aとを備えており、計算機30aは、視点変換部31、輝度差算出部37、エッジ線検出部38、立体物検出部33a、輝度検出部34、路面状態推測部35、および光源検出部36から構成されている。以下に、第2実施形態に係る立体物検出装置1aの各構成について説明する。なお、視点変換部31、輝度検出部34、路面状態推測部35、および光源検出部36については、第1実施形態と同様の構成であるため、その説明は省略する。
図18は、図17のカメラ10の撮像範囲等を示す図であり、図18(a)は平面図、図18(b)は、自車両V1から後側方における実空間上の斜視図を示す。図18(a)に示すように、カメラ10は所定の画角aとされ、この所定の画角aに含まれる自車両V1から後側方を撮像する。カメラ10の画角aは、図2に示す場合と同様に、カメラ10の撮像範囲に自車両V1が走行する車線に加えて、隣接する車線も含まれるように設定されている。
本例の検出領域A1,A2は、平面視(鳥瞰視された状態)において台形状とされ、これら検出領域A1,A2の位置、大きさ及び形状は、距離d1〜d4に基づいて決定される。なお、同図に示す例の検出領域A1,A2は台形状に限らず、図2に示すように鳥瞰視された状態で矩形など他の形状であってもよい。
ここで、距離d1は、自車両V1から接地線L1,L2までの距離である。接地線L1,L2は、自車両V1が走行する車線に隣接する車線に存在する立体物が地面に接触する線を意味する。本実施形態においては、自車両V1の後側方において自車両V1の車線に隣接する左右の車線を走行する他車両V2等(2輪車等を含む)を検出することが目的である。このため、自車両V1から白線Wまでの距離d11及び白線Wから他車両V2が走行すると予測される位置までの距離d12から、他車両V2の接地線L1,L2となる位置である距離d1を略固定的に決定しておくことができる。
また、距離d1については、固定的に決定されている場合に限らず、可変としてもよい。この場合に、計算機30aは、白線認識等の技術により自車両V1に対する白線Wの位置を認識し、認識した白線Wの位置に基づいて距離d11を決定する。これにより、距離d1は、決定された距離d11を用いて可変的に設定される。以下の本実施形態においては、他車両V2が走行する位置(白線Wからの距離d12)及び自車両V1が走行する位置(白線Wからの距離d11)は大凡決まっていることから、距離d1は固定的に決定されているものとする。
距離d2は、自車両V1の後端部から車両進行方向に伸びる距離である。この距離d2は、検出領域A1,A2が少なくともカメラ10の画角a内に収まるように決定されている。特に本実施形態において、距離d2は、画角aに区分される範囲に接するよう設定されている。距離d3は、検出領域A1,A2の車両進行方向における長さを示す距離である。この距離d3は、検出対象となる立体物の大きさに基づいて決定される。本実施形態においては、検出対象が他車両V2等であるため、距離d3は、他車両V2を含む長さに設定される。
距離d4は、図18(b)に示すように、実空間において他車両V2等のタイヤを含むように設定された高さを示す距離である。距離d4は、鳥瞰視画像においては図18(a)に示す長さとされる。なお、距離d4は、鳥瞰視画像において左右の隣接車線よりも更に隣接する車線(すなわち2車線隣りの隣隣接車線)を含まない長さとすることもできる。自車両V1の車線から2車線隣の車線を含んでしまうと、自車両V1が走行している車線である自車線の左右の隣接車線に他車両V2が存在するのか、2車線隣りの隣隣接車線に隣他車両が存在するのかについて、区別が付かなくなってしまうためである。
以上のように、距離d1〜距離d4が決定され、これにより検出領域A1,A2の位置、大きさ及び形状が決定される。具体的に説明すると、距離d1により、台形をなす検出領域A1,A2の上辺b1の位置が決定される。距離d2により、上辺b1の始点位置C1が決定される。距離d3により、上辺b1の終点位置C2が決定される。カメラ10から始点位置C1に向かって伸びる直線L3により、台形をなす検出領域A1,A2の側辺b2が決定される。同様に、カメラ10から終点位置C2に向かって伸びる直線L4により、台形をなす検出領域A1,A2の側辺b3が決定される。距離d4により、台形をなす検出領域A1,A2の下辺b4の位置が決定される。このように、各辺b1〜b4により囲まれる領域が検出領域A1,A2とされる。この検出領域A1,A2は、図18(b)に示すように、自車両V1から後側方における実空間上では真四角(長方形)となる。
輝度差算出部37は、鳥瞰視画像に含まれる立体物のエッジを検出するために、視点変換部31により視点変換された鳥瞰視画像データに対して、輝度差の算出を行う。輝度差算出部37は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線に沿った複数の位置ごとに、当該各位置の近傍の2つの画素間の輝度差を算出する。輝度差算出部37は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線を1本だけ設定する手法と、鉛直仮想線を2本設定する手法との何れかによって輝度差を算出することができる。
ここでは、鉛直仮想線を2本設定する具体的な手法について説明する。輝度差算出部37は、視点変換された鳥瞰視画像に対して、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する第1鉛直仮想線と、第1鉛直仮想線と異なり実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する第2鉛直仮想線とを設定する。輝度差算出部37は、第1鉛直仮想線上の点と第2鉛直仮想線上の点との輝度差を、第1鉛直仮想線及び第2鉛直仮想線に沿って連続的に求める。以下、この輝度差算出部37の動作について詳細に説明する。
輝度差算出部37は、図19(a)に示すように、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、検出領域A1を通過する第1鉛直仮想線La(以下、注目線Laという)を設定する。また輝度差算出部37は、注目線Laと異なり、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、検出領域A1を通過する第2鉛直仮想線Lr(以下、参照線Lrという)を設定する。ここで参照線Lrは、実空間における所定距離だけ注目線Laから離間する位置に設定される。なお、実空間で鉛直方向に伸びる線分に該当する線とは、鳥瞰視画像においてはカメラ10の位置Psから放射状に広がる線となる。この放射状に広がる線は、鳥瞰視に変換した際に立体物が倒れ込む方向に沿う線である。
輝度差算出部37は、注目線La上に注目点Pa(第1鉛直仮想線上の点)を設定する。また輝度差算出部37は、参照線Lr上に参照点Pr(第2鉛直板想線上の点)を設定する。これら注目線La、注目点Pa、参照線Lr、参照点Prは、実空間上において図19(b)に示す関係となる。図19(b)から明らかなように、注目線La及び参照線Lrは、実空間上において鉛直方向に伸びた線であり、注目点Paと参照点Prとは、実空間上において略同じ高さに設定される点である。なお、注目点Paと参照点Prとは必ずしも厳密に同じ高さである必要はなく、注目点Paと参照点Prとが同じ高さとみなせる程度の誤差は許容される。
輝度差算出部37は、注目点Paと参照点Prとの輝度差を求める。仮に、注目点Paと参照点Prとの輝度差が大きいと、注目点Paと参照点Prとの間にエッジが存在すると考えられる。特に、第2実施形態では、検出領域A1,A2に存在する立体物を検出するために、鳥瞰視画像に対して実空間において鉛直方向に伸びる線分として鉛直仮想線を設定しているため、注目線Laと参照線Lrとの輝度差が高い場合には、注目線Laの設定箇所に立体物のエッジがある可能性が高い。このため、図17に示すエッジ線検出部38は、注目点Paと参照点Prとの輝度差に基づいてエッジ線を検出する。
この点をより詳細に説明する。図20は、輝度差算出部37の詳細動作を示す図であり、図20(a)は鳥瞰視された状態の鳥瞰視画像を示し、図20(b)は、図20(a)に示した鳥瞰視画像の一部B1を拡大した図である。なお図20についても検出領域A1のみを図示して説明するが、検出領域A2についても同様の手順で輝度差を算出する。
カメラ10が撮像した撮像画像内に他車両V2が映っていた場合に、図20(a)に示すように、鳥瞰視画像内の検出領域A1に他車両V2が現れる。図20(b)に図20(a)中の領域B1の拡大図を示すように、鳥瞰視画像上において、他車両V2のタイヤのゴム部分上に注目線Laが設定されていたとする。この状態において、輝度差算出部37は、先ず参照線Lrを設定する。参照線Lrは、注目線Laから実空間上において所定の距離だけ離れた位置に、鉛直方向に沿って設定される。具体的には、本実施形態に係る立体物検出装置1aにおいて、参照線Lrは、注目線Laから実空間上において10cmだけ離れた位置に設定される。これにより、参照線Lrは、鳥瞰視画像上において、例えば他車両V2のタイヤのゴムから10cm相当だけ離れた他車両V2のタイヤのホイール上に設定される。
次に、輝度差算出部37は、注目線La上に複数の注目点Pa1〜PaNを設定する。図20(b)においては、説明の便宜上、6つの注目点Pa1〜Pa6(以下、任意の点を示す場合には単に注目点Paiという)を設定している。なお、注目線La上に設定する注目点Paの数は任意でよい。以下の説明では、N個の注目点Paが注目線La上に設定されたものとして説明する。
次に、輝度差算出部37は、実空間上において各注目点Pa1〜PaNと同じ高さとなるように各参照点Pr1〜PrNを設定する。そして、輝度差算出部37は、同じ高さ同士の注目点Paと参照点Prとの輝度差を算出する。これにより、輝度差算出部37は、実空間における鉛直方向に伸びる鉛直仮想線に沿った複数の位置(1〜N)ごとに、2つの画素の輝度差を算出する。輝度差算出部37は、例えば第1注目点Pa1とは、第1参照点Pr1との間で輝度差を算出し、第2注目点Pa2とは、第2参照点Pr2との間で輝度差を算出することとなる。これにより、輝度差算出部37は、注目線La及び参照線Lrに沿って、連続的に輝度差を求める。すなわち、輝度差算出部37は、第3〜第N注目点Pa3〜PaNと第3〜第N参照点Pr3〜PrNとの輝度差を順次求めていくこととなる。
輝度差算出部37は、検出領域A1内において注目線Laをずらしながら、上記の参照線Lrの設定、注目点Pa及び参照点Prの設定、輝度差の算出といった処理を繰り返し実行する。すなわち、輝度差算出部37は、注目線La及び参照線Lrのそれぞれを、実空間上において接地線L1の延在方向に同一距離だけ位置を変えながら上記の処理を繰り返し実行する。輝度差算出部37は、例えば、前回処理において参照線Lrとなっていた線を注目線Laに設定し、この注目線Laに対して参照線Lrを設定して、順次輝度差を求めていくことになる。
このように、第2実施形態では、実空間上で略同じ高さとなる注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとから輝度差を求めることで、鉛直方向に伸びるエッジが存在する場合における輝度差を明確に検出することができる。また、実空間において鉛直方向に伸びる鉛直仮想線同士の輝度比較を行うために、鳥瞰視画像に変換することによって立体物が路面からの高さに応じて引き伸ばされてしまっても、立体物の検出処理が影響されることはなく、立体物の検出精度を向上させることができる。
図17に戻り、エッジ線検出部38は、輝度差算出部37により算出された連続的な輝度差から、エッジ線を検出する。例えば、図20(b)に示す場合、第1注目点Pa1と第1参照点Pr1とは、同じタイヤ部分に位置するために、輝度差は、小さい。一方、第2〜第6注目点Pa2〜Pa6はタイヤのゴム部分に位置し、第2〜第6参照点Pr2〜Pr6はタイヤのホイール部分に位置する。したがって、第2〜第6注目点Pa2〜Pa6と第2〜第6参照点Pr2〜Pr6との輝度差は大きくなる。このため、エッジ線検出部38は、輝度差が大きい第2〜第6注目点Pa2〜Pa6と第2〜第6参照点Pr2〜Pr6との間にエッジ線が存在することを検出することができる。
具体的には、エッジ線検出部38は、エッジ線を検出するにあたり、先ず下記式1に従って、i番目の注目点Pai(座標(xi,yi))とi番目の参照点Pri(座標(xi’,yi’))との輝度差から、i番目の注目点Paiに属性付けを行う。
[式1]
I(xi,yi)>I(xi’,yi’)+tのとき
s(xi,yi)=1
I(xi,yi)<I(xi’,yi’)−tのとき
s(xi,yi)=−1
上記以外のとき
s(xi,yi)=0
上記式1において、tはエッジ閾値を示し、I(xi,yi)はi番目の注目点Paiの輝度値を示し、I(xi’,yi’)はi番目の参照点Priの輝度値を示す。上記式1によれば、注目点Paiの輝度値が、参照点Priに閾値tを加えた輝度値よりも高い場合には、当該注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘1’となる。一方、注目点Paiの輝度値が、参照点Priからエッジ閾値tを減じた輝度値よりも低い場合には、当該注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘−1’となる。注目点Paiの輝度値と参照点Priの輝度値とがそれ以外の関係である場合には、注目点Paiの属性s(xi,yi)は‘0’となる。
次にエッジ線検出部38は、下記式2に基づいて、注目線Laに沿った属性sの連続性c(xi,yi)から、注目線Laがエッジ線であるか否かを判定する。
[式2]
s(xi,yi)=s(xi+1,yi+1)のとき(且つ0=0を除く)、
c(xi,yi)=1
上記以外のとき、
c(xi,yi)=0
注目点Paiの属性s(xi,yi)と隣接する注目点Pai+1の属性s(xi+1,yi+1)とが同じである場合には、連続性c(xi,yi)は‘1’となる。注目点Paiの属性s(xi,yi)と隣接する注目点Pai+1の属性s(xi+1,yi+1)とが同じではない場合には、連続性c(xi,yi)は‘0’となる。
次にエッジ線検出部38は、注目線La上の全ての注目点Paの連続性cについて総和を求める。エッジ線検出部38は、求めた連続性cの総和を注目点Paの数Nで割ることにより、連続性cを正規化する。そして、エッジ線検出部38は、正規化した値が閾値θを超えた場合に、注目線Laをエッジ線と判断する。なお、閾値θは、予め実験等によって設定された値である。
すなわち、エッジ線検出部38は、下記式3に基づいて注目線Laがエッジ線であるか否かを判断する。そして、エッジ線検出部38は、検出領域A1上に描かれた注目線Laの全てについてエッジ線であるか否かを判断する。
[式3]
Σc(xi,yi)/N>θ
このように、第2実施形態では、注目線La上の注目点Paと参照線Lr上の参照点Prとの輝度差に基づいて注目点Paに属性付けを行い、注目線Laに沿った属性の連続性cに基づいて当該注目線Laがエッジ線であるかを判断するので、輝度の高い領域と輝度の低い領域との境界をエッジ線として検出し、人間の自然な感覚に沿ったエッジ検出を行うことができる。この効果について詳細に説明する。図21は、エッジ線検出部38の処理を説明する画像例を示す図である。この画像例は、輝度の高い領域と輝度の低い領域とが繰り返される縞模様を示す第1縞模様101と、輝度の低い領域と輝度の高い領域とが繰り返される縞模様を示す第2縞模様102とが隣接した画像である。また、この画像例は、第1縞模様101の輝度が高い領域と第2縞模様102の輝度の低い領域とが隣接すると共に、第1縞模様101の輝度が低い領域と第2縞模様102の輝度が高い領域とが隣接している。この第1縞模様101と第2縞模様102との境界に位置する部位103は、人間の感覚によってはエッジとは知覚されない傾向にある。
これに対し、輝度の低い領域と輝度が高い領域とが隣接しているために、輝度差のみでエッジを検出すると、当該部位103はエッジとして認識されてしまう。しかし、エッジ線検出部38は、部位103における輝度差に加えて、当該輝度差の属性に連続性がある場合にのみ部位103をエッジ線として判定するので、エッジ線検出部38は、人間の感覚としてエッジ線として認識しない部位103をエッジ線として認識してしまう誤判定を抑制でき、人間の感覚に沿ったエッジ検出を行うことができる。
図17に戻り、立体物検出部33aは、エッジ線検出部38により検出されたエッジ線の量に基づいて立体物を検出する。上述したように、本実施形態に係る立体物検出装置1aは、実空間上において鉛直方向に伸びるエッジ線を検出する。鉛直方向に伸びるエッジ線が多く検出されるということは、検出領域A1,A2に立体物が存在する可能性が高いということである。このため、立体物検出部33aは、エッジ線検出部38により検出されたエッジ線の量に基づいて立体物を検出する。具体的には、立体物検出部33aは、エッジ線検出部38により検出されたエッジ線の量が、所定の閾値β以上であるか否かを判断し、エッジ線の量が所定の閾値β以上である場合には、エッジ線検出部38により検出されたエッジ線は、立体物のエッジ線であるものと判断する。
さらに、立体物検出部33aは、立体物を検出するに先立って、エッジ線検出部38により検出されたエッジ線が正しいものであるか否かを判定する。立体物検出部33aは、エッジ線上の鳥瞰視画像のエッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値tb以上である否かを判定する。エッジ線上の鳥瞰視画像の輝度変化が閾値tb以上である場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものと判断する。一方、エッジ線上の鳥瞰視画像の輝度変化が閾値tb未満である場合には、当該エッジ線が正しいものと判定する。なお、この閾値tbは、実験等により予め設定された値である。
図22は、エッジ線の輝度分布を示す図であり、図22(a)は検出領域A1に立体物としての他車両V2が存在した場合のエッジ線及び輝度分布を示し、図22(b)は検出領域A1に立体物が存在しない場合のエッジ線及び輝度分布を示す。
図22(a)に示すように、鳥瞰視画像において他車両V2のタイヤゴム部分に設定された注目線Laがエッジ線であると判断されていたとする。この場合、注目線La上の鳥瞰視画像の輝度変化はなだらかなものとなる。これは、カメラ10により撮像された画像が鳥瞰視画像に視点変換されたことにより、他車両のタイヤが鳥瞰視画像内で引き延ばされたことによる。一方、図22(b)に示すように、鳥瞰視画像において路面に描かれた「50」という白色文字部分に設定された注目線Laがエッジ線であると誤判定されていたとする。この場合、注目線La上の鳥瞰視画像の輝度変化は起伏の大きいものとなる。これは、エッジ線上に、白色文字における輝度が高い部分と、路面等の輝度が低い部分とが混在しているからである。
以上のような注目線La上の輝度分布の相違に基づいて、立体物検出部33aは、エッジ線が誤判定により検出されたものか否かを判定する。たとえば、カメラ10により取得された撮像画像を鳥瞰視画像に変換した場合、当該撮像画像に含まれる立体物は、引き伸ばされた状態で鳥瞰視画像に現れる傾向がある。上述したように、他車両V2のタイヤが引き伸ばされた場合に、タイヤという1つの部位が引き伸ばされるため、引き伸ばされた方向における鳥瞰視画像の輝度変化は小さい傾向となる。これに対し、路面に描かれた文字等をエッジ線として誤判定した場合に、鳥瞰視画像には、文字部分といった輝度が高い領域と路面部分といった輝度が低い領域とが混合されて含まれる。この場合に、鳥瞰視画像において、引き伸ばされた方向の輝度変化は大きくなる傾向がある。そのため、立体物検出部33aは、エッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値tb以上である場合には、当該エッジ線が誤判定により検出されたものであり、当該エッジ線は、立体物に起因するものではないと判断する。これにより、路面上の「50」といった白色文字や路肩の雑草等がエッジ線として判定されてしまい、立体物の検出精度が低下することを抑制する。一方、立体物検出部33aは、エッジ線に沿った輝度変化が所定の閾値tb未満である場合には、当該エッジ線は、立体物のエッジ線であると判断し、立体物が存在するものと判断する。
具体的には、立体物検出部33aは、下記式4,5の何れかにより、エッジ線の輝度変化を算出する。このエッジ線の輝度変化は、実空間上における鉛直方向の評価値に相当する。下記式4は、注目線La上のi番目の輝度値I(xi,yi)と、隣接するi+1番目の輝度値I(xi+1,yi+1)との差分の二乗の合計値によって輝度分布を評価する。下記式5は、注目線La上のi番目の輝度値I(xi,yi)と、隣接するi+1番目の輝度値I(xi+1,yi+1)との差分の絶対値の合計値よって輝度分布を評価する。
[式4]
鉛直相当方向の評価値=Σ[{I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)}2]
[式5]
鉛直相当方向の評価値=Σ|I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)|
なお、上記式5に限らず、下記式6のように、閾値t2を用いて隣接する輝度値の属性bを二値化して、当該二値化した属性bを全ての注目点Paについて総和してもよい。
[式6]
鉛直相当方向の評価値=Σb(xi,yi)
但し、|I(xi,yi)−I(xi+1,yi+1)|>t2のとき、
b(xi,yi)=1
上記以外のとき、
b(xi,yi)=0
注目点Paiの輝度値と参照点Priの輝度値との輝度差の絶対値が閾値t2よりも大きい場合、当該注目点Pa(xi,yi)の属性b(xi,yi)は‘1’となる。それ以外の関係である場合には、注目点Paiの属性b(xi,yi)は‘0’となる。この閾値t2は、注目線Laが同じ立体物上にないことを判定するために実験等によって予め設定されている。そして、立体物検出部33aは、注目線La上の全注目点Paについての属性bを総和して、鉛直相当方向の評価値を求めることで、エッジ線が立体物に起因するものであり、立体物が存在するか否かを判定する。
さらに、立体物検出部33aは、第1実施形態と同様に、自車両V1の移動速度に対する立体物の相対移動速度に基づいて、立体物が検出対象物である他車両V2か否かを判断する。すなわち、立体物検出部33aは、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上であるか否かを判断し、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上である場合に、立体物を他車両V2として検出する。
また、立体物検出部33aは、第1実施形態と同様に、降雨などにより路面に水膜が形成されているか否かを判断し、路面に水膜が形成されている場合には、路面の水面に映り込んだ立体物の虚像を検出対象物として誤検出しないように、判定基準速度tvの値を制御する。すなわち、立体物検出部33aは、路面に水膜が形成されている場合には、図11に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、判定基準速度tvを高い値に設定する。
また、第1実施形態と同様に、立体物検出部33aは、図12に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、判定基準速度tvを基準値に戻すまでの抑制時間を長い時間に設定する。さらに、立体物検出部33aは、第1実施形態と同様に、高輝度光源を検出した場合には、図13または図14に示すように、撮像画像の輝度が低い場合でも、高輝度光源を検出していない場合と比べて、判定基準速度tvを高い値に設定する。
次に、図23を参照して、第2実施形態に係る立体物検出処理について説明する。図23は、第2実施形態に係る立体物検出処理を示すフローチャートである。なお、図23においては、便宜上、検出領域A1を対象とする処理について説明するが、検出領域A2についても同様の処理が実行される。
また、以下に説明する立体物検出処理は、第1実施形態と同様に、図16に示す判定基準速度設定処理と並行して行われる。これにより、後述するように、図23に示す立体物検出処理のステップS316において、図16に示す判定基準速度設定処理において設定された判定基準速度tvを用いて判断が行われることとなる。
まず、ステップS301では、カメラ10により、画角a及び取付位置によって特定された所定領域の撮像が行われ、計算機30aにより、カメラ10により撮像された撮像画像Pの画像データが取得される。次に視点変換部31は、ステップS302において、取得した画像データについて視点変換を行い、鳥瞰視画像データを生成する。
次に輝度差算出部37は、ステップS303において、検出領域A1上に注目線Laを設定する。このとき、輝度差算出部37は、実空間上において鉛直方向に伸びる線に相当する線を注目線Laとして設定する。次に輝度差算出部37は、ステップS304において、検出領域A1上に参照線Lrを設定する。このとき、輝度差算出部37は、実空間上において鉛直方向に伸びる線分に該当し、且つ、注目線Laと実空間上において所定距離離れた線を参照線Lrとして設定する。
次に輝度差算出部37は、ステップS305において、注目線La上に複数の注目点Paを設定する。この際に、輝度差算出部37は、エッジ線検出部38によるエッジ検出時に問題とならない程度の数の注目点Paを設定する。また、輝度差算出部37は、ステップS306において、実空間上において注目点Paと参照点Prとが略同じ高さとなるように、参照点Prを設定する。これにより、注目点Paと参照点Prとが略水平方向に並ぶこととなり、実空間上において鉛直方向に伸びるエッジ線を検出しやすくなる。
次に輝度差算出部37は、ステップS307において、実空間上において同じ高さとなる注目点Paと参照点Prとの輝度差を算出する。そして、エッジ線検出部38は、輝度差算出部37により算出された輝度差に基づいて、上記式1に従って、各注目点Paの属性sを算出する。なお、本実施形態では、立体物のエッジを検出するためのエッジ閾値tを用いて、各注目点Paの属性sが算出される。
次にエッジ線検出部38は、ステップS308において、上記式2に従って、各注目点Paの属性sの連続性cを算出する。そして、エッジ線検出部38は、ステップS309において、上記式3に従って、連続性cの総和を正規化した値が閾値θより大きいか否かを判定する。そして、正規化した値が閾値θよりも大きいと判断した場合(ステップS309=Yes)、エッジ線検出部38は、ステップS310において、当該注目線Laをエッジ線として検出する。そして、処理はステップS311に移行する。正規化した値が閾値θより大きくないと判断した場合(ステップS309=No)、エッジ線検出部38は、当該注目線Laをエッジ線として検出せず、処理はステップS311に移行する。
ステップS311において、計算機30aは、検出領域A1上に設定可能な注目線Laの全てについて上記のステップS303〜ステップS310の処理を実行したか否かを判断する。全ての注目線Laについて上記処理をしていないと判断した場合(ステップS311=No)、ステップS303に処理を戻して、新たに注目線Laを設定して、ステップS311までの処理を繰り返す。一方、全ての注目線Laについて上記処理をしたと判断した場合(ステップS311=Yes)、処理はステップS312に移行する。
ステップS312において、立体物検出部33aは、ステップS310において検出された各エッジ線について、当該エッジ線に沿った輝度変化を算出する。立体物検出部33aは、上記式4,5,6の何れかの式に従って、エッジ線の輝度変化を算出する。次に立体物検出部33aは、ステップS313において、エッジ線のうち、輝度変化が所定の閾値tb以上のエッジ線を除外する。すなわち、輝度変化の大きいエッジ線は正しいエッジ線ではないと判定し、エッジ線を立体物の検出には使用しない。これは、上述したように、検出領域A1に含まれる路面上の文字や路肩の雑草等がエッジ線として検出されてしまうことを抑制するためである。したがって、所定の閾値tbとは、予め実験等によって求められた、路面上の文字や路肩の雑草等によって発生する輝度変化に基づいて設定された値となる。一方、立体物検出部33aは、エッジ線のうち、輝度変化が所定の閾値tb未満であるエッジ線を、立体物のエッジ線と判断し、これにより、隣接車線に存在する立体物を検出する。
次いで、ステップS314では、立体物検出部33aにより、エッジ線の量が、所定の閾値β以上であるか否かの判断が行われる。ここで、閾値βは、予め実験等によって求めておいて設定された値であり、たとえば、検出対象の立体物として四輪車を設定した場合に、当該閾値βは、予め実験等によって検出領域A1内において出現した四輪車のエッジ線の数に基づいて設定される。エッジ線の量が閾値β以上であると判定された場合(ステップS314=Yes)、立体物検出部33aは、検出領域A1内に立体物が存在するものと判断し、ステップS315に進む。一方、エッジ線の量が閾値β以上ではないと判定された場合(ステップS314=No)、立体物検出部33aは、検出領域A1内に立体物が存在しないものと判断し、ステップS318に進み、検出領域A1内に他車両V2が存在しないと判定される。
ステップS315では、自車両V1の移動速度に対する立体物の相対移動速度の算出が行われる。たとえば、立体物検出部33は、異なる時刻で撮像された2つの撮像画像から立体物が移動した相対距離とその時間とを求めることで、立体物の相対移動速度を算出することができる。
そして、ステップS316では、立体物検出部33により、ステップS315で算出した立体物の相対移動速度と判定基準速度tvとが比較される。なお、このステップS316において用いる判定基準速度tvは、図16に示す判定基準速度設定処理において設定された判定基準速度tvである。そして、比較の結果、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上であると判断された場合には、ステップS317に進み、立体物検出部33により、立体物は自車両V1に接近する他車両V2として判断される。一方、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv未満であると判断された場合には、ステップS318に進み、立体物は自車両V1に接近する他車両V2ではないと判断される。
以上のように、第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、検出領域A1,A2において被写体のエッジを検出し、該エッジに基づいて他車両V2を検出する場合にも、自車両V1に接近する他車両V2を適切に検出することができる。
《第3実施形態》
続いて、第3実施形態に係る立体物検出装置1について説明する。第3実施形態に係る立体物検出装置1は、図1および図3に示すように、第1実施形態に係る立体物検出装置1と同様の構成を有するものであり、自車両V1の旋回時に、旋回方向内側の検出領域における判定基準速度tvを、旋回方向外側の検出領域における判定基準速度tvよりも高い値に設定すること以外は、第1実施形態に係る立体物検出装置1と同様に動作する。
すなわち、第3実施形態において、立体物検出部33は、図示しない車輪速センサおよび操舵角センサからの検出情報に基づいて、自車両V1の旋回半径および旋回方向を含む自車両V1の旋回状態を検出する。そして、立体物検出部33は、当該検出結果に応じて、自車両V1が旋回状態であるか否かを判定する。なお、自車両V1の旋回状態の検出方法は特に限定されず、たとえば、図示しないナビゲーション装置からの道路情報やカメラ10から取得した撮像画像を解析し、自車両V1がカーブを走行しているか否かを判断することで、自車両V1の旋回状態を検出する構成としてもよい。
そして、立体物検出部33は、自車両V1の旋回状態を加味して、判定基準速度tvを設定する。ここで、図24は、自車両V1がランナバウト(環状交差点、Roundabout)を旋回している場面を示す図である。路面に水膜が形成されている場合には、旋回方向外側の検出領域A2および旋回方向内側の検出領域A1において、路面上の水面に映り込んだ立体物や光源の虚像が立体物として誤検出される場合がある。また、カメラ10から見た場合に、自車両V1が旋回している場合の立体物の角速度は、旋回方向内側の方が旋回方向外側よりも遅くなる傾向があるため、水面に映り込んだ立体物や光源の虚像の相対移動速度は、旋回方向内側の検出領域A2の方が、旋回方向外側の検出領域A1よりも速くなる傾向にある。その結果、自車両V1が旋回している場合には、特に、旋回方向内側の検出領域A2の水面に映り込んだ立体物や光源の虚像が、自車両V1に接近する他車両V2として誤検出され易くなってしまう。
そこで、本実施形態において、立体物検出部33は、このような誤検出を抑制するために、図25(A)に示すように、カーブの半径Rを加味して、旋回方向内側の検出領域A2における判定基準速度tvを設定する。なお、図25(A)は、撮像画像の輝度と、旋回方向内側の検出領域においける判定基準速度tvとの関係を示すグラフであり、カーブの半径Rに基づく補正係数を用いて判定基準速度tvを設定した場合の一例を示す図である。また、図25(B)は、カーブの半径Rと判定基準速度tvに対する補正係数との関係の一例を示す図である。なお、図25(A)では、補正係数を用いずに撮像画像の輝度に基づいて設定される判定基準速度を二点鎖線で示し、補正係数を用いて設定された判定基準速度を実線で示している。
すなわち、立体物検出部33は、自車両V1が旋回状態であると判断した場合には、図25(B)に示すように、自車両V1の旋回半径Rに基づいて、判定基準速度tvを補正するための補正係数を算出する。たとえば、図25(A)に示す例において、立体物検出部33は、自車両V1の旋回半径Rが200m以下である場合には、補正係数を0.5として算出し、自車両V1の旋回半径Rが1000m以上である場合には、補正係数を1として算出する。また、立体物検出部33は、自車両V1の旋回半径Rが200mよりも大きく1000mよりも小さい場合には、0.5から1の範囲において、自車両V1の旋回半径Rが大きいほど補正係数を大きい値で算出する。
そして、立体物検出部33は、図25(A)に示すように、算出した補正係数に基づいて、自車両V1の旋回方向内側の検出領域における判定基準速度tvを補正する。たとえば、図24に示す例において、自車両V1の旋回半径Rが200mであり、撮像画像の輝度がtl1である場合には、撮像画像の輝度t1lに基づいた判定基準速度tv1に、旋回半径Rに応じた補正係数0.5を乗じた値を、自車両V1の旋回方向内側の検出領域A1における判定基準速度tv’’として算出する。たとえば、この場合に、tv1の値が「−10Km/h」である場合には、立体物検出部33は、「−10Km/h」に補正係数0.5を乗じた「−5Km/h」を、自車両V1の旋回方向内側の検出領域A1における判定基準速度tvとして設定することができる。
このように、第3実施形態では、自車両V1が旋回状態であると判断した場合には、図25(B)に示すように、自車両V1の旋回半径Rに基づいて、判定基準速度tvを補正するための補正係数を算出し、算出した補正係数に基づいて、自車両V1の旋回方向内側の検出領域における判定基準速度tvを補正する。これにより、自車両V1が旋回しているために、旋回方向内側の検出領域A2の水面に映り込んだ立体物や光源の虚像が、自車両V1に接近する他車両V2として誤検出され易い場合でも、水面に映り込んだ立体物や光源の虚像を検出対象物として誤検出してしまうことを有効に抑制することができる。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
たとえば、上述した実施形態においては、図11に示すように、撮像画像の輝度に応じて、判定基準速度tvを変更する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、判定基準速度tvに代えて、または、判定基準速度tvに加えて、差分閾値thまたはエッジ閾値tを変更する構成としてもよい。すなわち、撮像画像の輝度が高いほど、差分閾値thやエッジ閾値tの値が高くなるように立体物の検出条件を変更することで、立体物の検出を抑制する構成とすることができる。さらに、閾値α、閾値βについても、差分閾値thやエッジ閾値tと同様に、撮像画像の輝度が高いほど、閾値α、閾値βの値が高くなるように立体物の検出条件を変更することで、立体物の検出を抑制する構成とすることができる。また、閾値θ、閾値tbについても同様である。
また、この場合に、図13または図14に示すように、撮影画像の輝度が低い場合において、高輝度光源が検出された場合には、高輝度光源が検出されない場合と比べて、差分閾値th、エッジ閾値t、閾値α、閾値βの値を高く設定する構成としてもよい。また、同様に、図12に示すように、撮像画像の輝度が高いほど、差分閾値th、エッジ閾値t、閾値α、閾値βの値を高く設定する抑制時間を長くすることができる。このように、撮影画像の輝度に基づいて、差分閾値th、エッジ閾値t、閾値α、閾値βの値を制御することで、水面に映り込んだ立体物や光源の虚像が自車両V1に接近する他車両V2として誤検出されてしまうことを有効に抑制することができる。
さらに、上述した実施形態では、図11に示すように、撮像画像の輝度に応じて、判定基準速度tvを設定する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、撮像画像の輝度に応じて、各画素から出力される画素値または輝度値を変更する構成としてもよい。たとえば、撮像画像の輝度が高いほど、立体物検出に用いるための各画素から出力される画素値または輝度値を低くなるように立体物の検出条件を変更することで、立体物の検出を抑制する構成とすることができる。
また、上述した実施形態では、路面に水膜が形成されており、撮像画像の輝度が高い場合に、水面に映り込んだ立体物の虚像を自車両に接近する他車両V2として誤検出しないように、検出対象物である他車両V2の検出を抑制する構成を例示したが、この構成には、検出対象物である他車両V2の検出を禁止する構成も含めることができる。
さらに、上述した実施形態では、撮像画像の輝度に基づいて、自車両V1周辺の明るさを検出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、自車両V1の存在する地点と現在時刻に基づいて、自車両Vの周囲の明るさを推測してもよい。このとき、日没時刻、日出時刻を参照して、正確な自車両Vの周囲の明るさを推測してもよい。さらに、天気情報を参照して、自車両Vの周囲の明るさを推測してもよい。
また、上述した実施形態に加えて、撮像画像を取得する度に、取得した撮影画像の輝度を検出し、撮像画像の輝度の分散が所定値以下である場合のみに、判定基準速度などの検出条件を変更する構成としてもよい。すなわち、自車両周囲の明るさが頻繁に変わる状況においては、路面の水面に映り込んだ立体物の虚像の誤検出を抑制することよりも、他車両V2の検出を優先する構成とすることができる。
また、上述した実施形態に加えて、立体物検出部33は、検出された立体物の相対速度のばらつきが所定のばらつき評価値域以内であるときに、立体物が他車両V2であると判断する構成としてもよい。すなわち、立体物検出部33は、各フレームの撮像画像から算出された立体物の相対速度の標準偏差などのばらつきの評価値が所定のばらつき評価値域以内である場合に、立体物の相対移動速度が判定基準速度tv以上であるか否かを判断する構成としてもよい。
なお、カメラ10のレンズ11に異物が付着している場合には、この異物に対応する画像に基づいて立体物が誤検出される場合がある。しかし、レンズ11の異物に起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきは、実際に存在する立体物に起因して検出される立体物(実像)のばらつきに比べて小さくなる。また、道路の路肩に配置されている草木などの自然物や建造物の影などに起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきは、実際に存在する立体物に起因して検出される立体物(実像)のばらつきに比べて大きい。そこで、立体物検出部33は、この特性に基づいて、所定のばらつき評価値域を定義することができる。すなわち、ばらつき評価値域の下限値RLは、レンズ11に付着した異物に起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきの代表値(平均値、中央値、最頻値など)よりも大きい値とし、一方、ばらつき評価値域の下限値RUは、道路の路肩側に配される草木などの自然物や建造物の影などに起因して誤検出される立体物(虚像)の相対速度のばらつきの代表値(平均値、中央値、最頻値など)よりも小さい値とすることができる。これにより、ばらつき評価値域の幅RWは、ばらつき評価値域の下限値RLからばらつき評価値域の下限値RUの間となる。
なお、上述した実施形態のカメラ10は本発明の撮像手段に、視点変換部31は本発明の画像変換手段に、位置合わせ部32、立体物検出部33,33a、輝度差算出部37、およびエッジ線検出部38は本発明の立体物検出手段および検出条件変更手段に、輝度検出部34は本発明の明るさ検出手段に、路面状態推測部35は本発明の路面状態推測手段に、光源検出部36は本発明の光源検出手段にそれぞれ相当する。