JP6432688B2 - イオン移動度分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、イオンをその移動度に応じて分離して検出する又は分離して後段の質量分析部等へと送るイオン移動度分析装置に関する。
試料分子から生成した分子イオンを電場の作用により媒質気体(又は液体)中で移動させるとき、該イオンは電場の強さやその分子の大きさなどで決まる移動度に比例した速度で移動する。イオン移動度分析法(Ion Mobility Spectrometry=IMS)は、試料分子の分析のためにこの移動度を利用した測定法である。図10は従来の一般的なイオン移動度分析装置の概略構成図である(特許文献1など参照)。
このイオン移動度分析装置は、液体試料中の成分分子をイオン化するエレクトロスプレーイオン化(ESI)法などによるイオン源1と、その内部に、脱溶媒領域4及びドリフト領域5が形成される円筒形状のドリフトセル100と、ドリフト領域5中を移動してきたイオンを検出する検出器3と、を備える。また、イオン源1において生成されたイオンをごく短い時間幅に限定してパルス的に脱溶媒領域4からドリフト領域5へと送り込むために、該ドリフト領域5の入口にシャッタゲート102を備える。ドリフトセル100内は大気圧雰囲気又は100[Pa]程度の低真空雰囲気である。ドリフトセル100内にはイオン光軸Cに沿ってリング状電極101が多数配置され、それらリング状電極101にそれぞれ印加される直流電圧によって、脱溶媒領域4及びドリフト領域5にはイオン移動方向(図10ではZ軸方向)に下り電位勾配を示す、つまりイオンを加速する一様電場が形成される。また、ドリフトセル100内には、この電場による加速方向とは逆方向に、中性の拡散ガスの流れが形成されている。
上記イオン移動度分析装置の概略動作は次のとおりである。
イオン源1において試料から生成された各種イオンは脱溶媒領域4中を進み、シャッタゲート102で一旦堰き止められる。そして、シャッタゲート102が短時間だけ開放されると、イオンはパケット状にドリフト領域5中に導入される。なお、脱溶媒領域4はイオン源1において溶媒が十分に気化しなかった帯電液滴中の溶媒の気化を促進させることで、イオンの生成を促す領域である。ドリフト領域5中に導入されたイオンは向かって来る拡散ガスと衝突しながら、加速電場の作用によって進む。イオンはその大きさ、立体構造、電荷などに依存するイオン移動度によってZ軸方向に空間的に分離され、異なるイオン移動度を持つイオンは時間差を有して検出器3に到達する。ドリフト領域5中の電場が一様である場合には、イオンがドリフト領域5を通過するのに要するドリフト時間から、イオン−拡散ガス間の衝突断面積を見積もることが可能である。
なお、上記のようにイオン移動度に応じてイオンを分離したあとに直接イオンを検出するのではなく、それらイオンを四重極マスフィルタ等の質量分離器に導入し、イオンをさらに質量電荷比に応じて分離したあとに検出する構成が採られることもある。こうした装置は、イオン移動度−質量分析装置(IMS−MS)として知られている。
上述したような従来のイオン移動度分析装置においてシャッタゲート102としては一般に、ブラッドバリーニールソン(Bradbury-Nielson)型ゲート又はティンダールポウェル(Tyndall-Powell)型ゲートのいずれかが使用されている(非特許文献1参照)。図11はこれら二種類のゲートの構成を示す概略図である。
図11(a)に示すように、ゲートを正面から見た状態では、いずれの型のシャッタゲートも、互いに異なる電圧V1、V2が印加可能である導電性ワイヤ102A、102Bが交互に張設されたグリッド状の構造である。一方、導電性ワイヤ102A、102Bの並びを上から見ると、図11(b)に示すように、ティンダールポウェル型ゲートでは、電圧V1が印加される複数本の導電性ワイヤ102Aが配置される面と電圧V2が印加される複数本の導電性ワイヤ102Bが配置される面とはZ軸方向に所定間隔離して設けられている。一方、図11(c)に示すように、ブラッドバリーニールソン型ゲートでは、導電性ワイヤ102Aと導電性ワイヤ102Bとは一面上で交互に配置されている。
いずれの型のシャッタゲートでも、イオンの通過を確実に阻止するには、異なる電圧が印加され得る導電性ワイヤの間隔を狭くしておく必要がある。ところが、それら導電性ワイヤに互いに異なる電圧が印加されるとき、両者の間にはクーロン力が作用して互いに引き合う。そのため、導電性ワイヤが長いと大きく撓み、異なる電圧が印加されている導電性ワイヤ同士が接触して短絡を生じるおそれがある。また、短絡に至らないまでも、隣接する導電性ワイヤの間隔が開口面内で不均一になると、該開口面内での電場の乱れが生じ、イオンを阻止する期間にイオンが漏出する等の問題が起こる可能性がある。こうしたことを避けるには導電性ワイヤの長さを制限しておけばよいが、そうするとシャッタゲートの開口面積が小さくなり、イオンの透過効率が低下するという問題がある。
また、従来のイオン移動度分析装置では、イオンを移動させる加速電場をドリフトセル100内に形成するために、多数のリング状電極101を積み重ねた構造体、通常はリング状電極と碍子等から成るリング状の絶縁スペーサとを交互に積み重ねた構造体が利用されている。イオン移動度分析装置における分析精度や分解能を高めるには、加速電場の一様性、即ちイオン光軸C上での電位勾配の直線性を高くする必要がある。そのためには、隣接するリング状電極101の間隔をできるだけ狭め、またドリフト領域5をできるだけ長くする必要がある。しかしながら、そうすると、リング状電極、絶縁スペーサといった部品の数が増えコストが高くなる。また、組立工数が増加するとともに、組立作業により高い熟練度が要求されるため、これらもコスト増加の要因となる。
一方、イオン光軸C上で直線性の高い電位勾配を有する電場を形成するために、その内周面に抵抗被膜層を形成した円筒状ガラス管をドリフトセルとして用いたイオン移動度分析装置が知られている(特許文献2、3参照)。この装置では、ドリフトセル内周面の抵抗体被膜層の両端間に所定の電圧を印加することで、ドリフトセル内にイオンを加速する電場を形成することができる。
しかしながら、このイオン移動度分析装置において、分解能や最高感度等の性能のばらつきを抑えるには円筒形状であるガラス管の内周面に形成する抵抗被膜層の厚さの均一性を高める必要があるものの、均一の厚さで抵抗被膜層を形成するのは技術的に難度が高い。そのため、こうしたドリフトセルは部品点数は少ないものの、そのコストはかなり高いものとなる。
また、ドリフト領域でイオンを良好にドリフトさせるには拡散ガスの流れを層流に保つことが望ましいが、上記のような従来のイオン移動度分析装置に用いられているドリフトセルの構造では拡散ガス流を層流に保つことは難しい。
さらにまた、ESIイオン源などの大気圧イオン源を用いたイオン移動度分析装置では、イオン源とドリフトセル内部とのガス圧の差が小さい(又は殆ど無い)ために、大気圧イオン化質量分析装置と異なり、イオン源で生成されたイオンを圧力差を利用して次段へと取り込むことが難しい。それどころか、ドリフトセル内にはイオンの進行方向と対向するように拡散ガス流が形成されているため、このガス流に逆らってイオンをドリフトセル内に導入する必要があり、例えば特許文献1に記載の装置では、ESIスプレーによる噴霧流がドリフトセルの入口側開口に向くように該スプレーが設置されている。こうした構成では確かに、生成されたイオンが拡散ガス流に抗してドリフトセル内に入り易くなるものの、溶媒が十分には気化していない液滴もドリフトセル内に飛び込むため、ドリフトセル内が汚染され易くなる。その結果、放電等が生じ易くなって分析が不安定になったり、電場の乱れが生じて分析精度や分解能が低下したりするおそれがある。
特開2005−174619号公報 米国特許第7081618号明細書 米国特許第8084732号明細書
エイスマン(G.A. Eiceman)、ほか2名、「イオン・モビリティ・スペクトロメトリー、サード・エディション(Ion Mobility Spectrometry, Third Edition)」、CRC Press、2013年12月10日発行
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的は、シャッタゲートの開口面積を広く確保しながら該シャッタゲートの導電性ワイヤの撓みを軽減し、導電性ワイヤの短絡やシャッタゲートの開口面付近に形成される電場の乱れなどを防止することができるイオン移動度分析装置を提供することにある。
また本発明の他の目的は、ドリフトセルのコスト削減を図りつつ、高い分析精度や分解能を確保することができるイオン移動度分析装置を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、ドリフトセル内を流れる拡散ガス流をより層流に近い状態とすることで分析精度や分解能を向上させることができるイオン移動度分析装置を提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、大気圧イオン源からドリフトセル内への液滴の飛び込みを低減して該ドリフト内の汚染を抑えつつ、試料成分由来のイオンを効率良くドリフトセル内に送り込むことで高感度な分析が可能なイオン移動度分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明に係る第1の態様は、試料成分由来のイオンをドリフト領域に導入し、該ドリフト領域中を移動させることでイオン移動度に応じてイオンを分離したあとに分離されたイオンを検出する又はさらに後段の分析・検出部へと送るイオン移動度分析装置において、
a)その少なくとも一部が前記ドリフト領域となる、矩形柱状に貫通する内部空間が形成された絶縁性部材であり、該内部空間の軸に直交する矩形状の断面の長辺と短辺との比が1よりも大きいハウジングと、
b)イオンを移動させるための電場を前記ハウジングの内部空間に形成するために該内部空間の軸に沿って複数配設された電極であり、該軸方向に所定の厚さを有する矩形環状であって矩形状開口の長辺と短辺との比が1よりも大きい電極と、
c)前記ハウジングの内部空間の少なくとも一部であるドリフト領域にイオンをパルス的に導入するために該ハウジングの内部空間に配設され、長辺と短辺との比が1よりも大きい矩形状開口を有する矩形環状の枠体とその矩形状開口の短辺に平行に張設された複数本の導電性ワイヤとを含むシャッタゲートと、
を備えることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る第2の態様は、試料成分由来のイオンをドリフト領域に導入し、該ドリフト領域中を移動させることでイオン移動度に応じてイオンを分離したあとに分離されたイオンを検出する又はさらに後段の分析・検出部へと送るイオン移動度分析装置において、
a)その少なくとも一部が前記ドリフト領域となる、矩形柱状に貫通する内部空間が形成された絶縁性部材であり、該内部空間の軸に直交する矩形状の断面の長辺と短辺との比が1よりも大きいハウジングと、
b)イオンを移動させるための電場を前記ハウジングの内部空間に形成するために、少なくとも前記矩形柱状に貫通する内部空間の矩形状の断面の長辺を含む対向する二つの面の表面に形成された抵抗層と、
c)前記ハウジングの内部空間の少なくとも一部であるドリフト領域にイオンをパルス的に導入するために該ハウジングの内部空間に配設され、長辺と短辺との比が1よりも大きい矩形状開口を有する矩形環状の枠体とその矩形状開口の短辺に平行に張設された複数本の導電性ワイヤとを含むシャッタゲートと、
を備えることを特徴としている。
本発明に係る第1の態様と第2の態様とでは、ハウジングの内部空間にイオンを移動させるための電場を形成するための電極の構成が相違するものの、ハウジング自体やシャッタゲートの構成は同じである。即ち、本発明に係るイオン移動度分析装置では、電場によってイオンが移動するドリフト領域の断面形状は、従来一般的である円形状ではなく略矩形状である。また、そのドリフト領域の断面形状に合わせて、シャッタゲートは、長辺と短辺との比(以下、適宜「アスペクト比」という)が1よりも大きい矩形状開口に、導電性ワイヤがその矩形状開口の短辺に平行に多数張設された構成である。なお、シャッタゲートは、ブラッドバリーニールソン型ゲート又はティンダールポウェル型ゲートのいずれでもよい。
シャッタゲートは上記のような構成であるため、例えばアスペクト比が1である正方形状の開口に導電性ワイヤが張設された構成と比較して、開口面積を同じにしたときの導電性ワイヤの長さが短くなる。シャッタゲートの開口面積が同じであれば、基本的にはイオン透過率は同じである。一方、導電性ワイヤが短いほうが、電圧印加によって生じるクーロン力の作用による撓みは小さい。そのため、互いに異なる電圧が印加される隣接する導電性ワイヤ同士が接触して短絡することを防止することができるとともに、隣接する導電性ワイヤの間隔の変動も小さくなるのでその導電性ワイヤに印加される電圧によって生成される電場の乱れも小さくなり、イオン透過率の低下を回避することができる。
また本発明に係るイオン移動度分析装置では、上述したように、電場によってイオンが移動するドリフト領域の断面形状は、従来一般的である円形状ではなく略矩形状である。通常、ドリフト領域にはイオンの移動方向と反対方向、つまりハウジングにおいてイオン出口側開口となる内部空間の一方の開放端面からイオン入口側開口となる他方の開放端面に向かって拡散ガスの流れが形成される。管路中のガス流はレイノルズ数が低いほど層流になり易いことが知られているが、レイノルズ数は、管路の断面積が同じであればその断面形状が矩形又は正方形であるほうが円形である場合もよりも低くなる。したがって、ドリフト領域の断面形状が円形状である従来の装置に比べて本発明に係るイオン移動度分析装置では、拡散ガス流が層流になり易い。それによって、ドリフト領域中を移動するイオンは軸に平行な方向に、つまりはイオン移動度に応じてイオンを分離するうえで理想的な方向に進み易く、高い分析精度や分解能を得ることができる。
なお、本発明に係る第1の態様のイオン移動度分析装置では、前記ハウジングの長辺と短辺との比、前記電極の矩形状開口の長辺と短辺との比、及び前記シャッタゲートの矩形状開口の長辺と短辺との比がいずれも1よりも大きいが、後述する理由により、それらはいずれも1.5以上であることが好ましい。また、本発明に係る第2の態様のイオン移動度分析装置では、前記ハウジングの長辺と短辺との比、及び前記シャッタゲートの矩形状開口の長辺と短辺との比がいずれも1よりも大きいが、第1の態様と同様に、それらはいずれも1.5以上であることが好ましい。
また本発明に係るイオン移動度分析装置では、好ましくは、前記ハウジングは外形が直方体状であり、その内部空間の軸の方向に延伸する直線を含む平面で該ハウジングを切断した形状である二つの部材からなる構成とするとよい。
例えば、ハウジングを構成する二つの部材は、内部空間の軸を含み、その内部空間の矩形状である断面の長辺に平行な平面で該ハウジングを切断した形状とするとよい。この場合には、二つの部材はそれぞれ、上記内部空間の矩形状断面の短辺の略1/2の深さでその長辺の長さが底の幅である、断面が略矩形状に凹んだ溝を有し、その溝同士を突き合わせるように二つの部材を貼り合わせることでハウジングが形成される。こうした構成では、ハウジングの内部空間を形成している両開放端面以外の壁面が軸の周りの閉じた面ではなくなる。
そのため、本発明に係るイオン移動度分析装置の第1の態様においてこうした構成を採る場合、ハウジングを構成する一方の部材の溝の所定位置に複数の電極やシャッタゲートをそれぞれ嵌め込み、それに他方の部材を被せるようにして両部材を貼り合わせることで、内部空間に電極やシャッタゲートが配置されたハウジングを形成することができる。なお、内部空間の壁面となる溝の内側に、電極やシャッタゲートを嵌め込むための浅い溝を形成しておくことで、電極やシャッタゲートを確実に固定することができる。
こうした構成によれば、従来のようにリング状電極とリング状の絶縁スペーサとを交互に積み重ねた構造体を用いる場合に比べて、部品点数が少なくて済み組立工数も削減されるのでコストを引き下げることができる。
また本発明に係るイオン移動度分析装置の第2の態様において上記構成を採る場合には、抵抗層が形成し易くなり、その抵抗層の厚さの均一性を高めることが容易になる。それによって、イオンを移動させる電場の一様性が向上し、分析精度及び分解能を向上させることができる。
なお、本発明に係るイオン移動度分析装置の第2の態様では、抵抗層は少なくとも矩形柱状に貫通する内部空間の矩形状の断面の長辺を含む対向する二つの面の表面に形成されていればよいが、矩形状の断面の短辺を含む対向する二つの面の表面にも、つまりは内部空間に面する四つの壁面の全ての表面に、形成されていることが好ましい。
上述したように本発明に係るイオン移動度分析装置では、ドリフト領域の断面形状がアスペクト比が1よりも大きい扁平な矩形状であるから、例えばその中心軸付近の狭い範囲にイオンが導入されたのでは矩形状断面の長辺方向に広いドリフト領域を活かすことができない。そこで、本発明に係るイオン移動度分析装置において、好ましくは、前記ハウジングの内部空間の一方の開放端面の外側に配置された、矩形状である前記開放端面の長辺の延伸方向に沿った複数箇所で試料成分をイオン化するイオン源、をさらに備える構成とするとよい。
例えば上記イオン源は、
前記開放端面の中心軸に略直交する方向で且つ矩形状である該開放端面の長辺の延伸方向に試料溶液を噴霧する試料噴霧部と、
前記開放端面の長辺の延伸方向に複数配設された、前記試料噴霧部からの噴霧流中の試料成分をイオン化するイオン化促進部と、
を具備する構成とすることができる。
大気圧化学イオン化を行う場合には、前記イオン化促進部は、大気圧化学イオン化を行うためのバッファイオンを生成する放電電極である。また、大気圧光イオン化を行う場合には、前記イオン化促進部は、大気圧光イオン化を行うための光を照射する光照射部である。
一方、エレクトロスプレーイオン化を行う場合、上記イオン源は、前記開放端面の長辺の延伸方向に複数配設され、該開放端面の中心軸に略直交する方向で且つ矩形状である該開放端面の短辺の延伸方向にそれぞれ帯電させた試料溶液を噴霧する静電噴霧部を具備する構成とすることができる。
これらイオン源ではいずれも、イオン入口側開口となる開放端面の長辺の延伸方向に沿った複数箇所で試料成分由来のイオンが生成されるので、より多くのイオンをハウジングの内部空間、つまりはドリフト領域に送り込むことができる。それによって、分析感度と分析の再現性を向上させることができる。また、試料溶液の噴霧流はイオン入口側開口となる開放端面には直接飛び込まないので、ハウジングの内部空間に面する壁面に試料液滴が付着することによる汚染を軽減することができる。それによって、そうした汚染に起因する不所望の放電を防止することができるとともに、電場の乱れによる分析精度や分解能の低下を抑えることができる。
本発明に係るイオン移動度分析装置によれば、シャッタゲートの開口面積を広く確保して高いイオン透過効率を実現しながら、該シャッタゲートの導電性ワイヤを短くして撓みを抑えることができる。それによって、導電性ワイヤ同士が接触して短絡が生じことを防止できる。また、導電性ワイヤに印加される電圧により形成される電場の乱れが軽減されるので、イオンを阻止したい場合にイオンの漏出を防止し、高い分析精度及び分解能を実現することができる。
本発明の第1実施例であるイオン移動度分析装置に用いられるドリフトセルの斜視構成図。 第1実施例のイオン移動度分析装置の要部の構成図。 第1実施例のイオン移動度分析装置において加速電場を形成するための電極の平面図。 第1実施例のイオン移動度分析装置におけるシャッタゲートの斜視構成図。 第1実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン源の概略構成図。 第1実施例のイオン移動度分析装置のイオン源に用いられている複数の放電電極の位置と総エミッション電流との関係を測定するための測定系回路図(a)及び測定結果(b)。 他のイオン源の概略構成図。 本発明の第2実施例であるイオン移動度分析装置に用いられるドリフトセルの斜視構成図。 第2実施例のイオン移動度分析装置の要部の構成図。 従来のイオン移動度分析装置の要部の構成図。 従来のイオン移動度分析装置に用いられるブラッドバリーニールソン型ゲート及びティンダールポウェル型ゲートの概略構成図。
[第1実施例]
以下、本発明の第1実施例であるイオン移動度分析装置について、添付図面を参照して説明する。
図2は第1実施例のイオン移動度分析装置の要部の構成図、図1は第1実施例のイオン移動度分析装置に用いられるドリフトセルの斜視構成図、図3は第1実施例のイオン移動度分析装置において加速電場を形成するための電極の平面図、図4は第1実施例のイオン移動度分析装置におけるシャッタゲートの斜視構成図、図5は第1実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン源の概略構成図である。
本実施例のイオン移動度分析装置において、内部に脱溶媒領域4及びドリフト領域5を形成するためのドリフトセル2は、外形が略扁平直方体形状であって略矩形柱状に貫通する内部空間を有する碍子から成るハウジング20と、所定厚さの矩形環状である複数の電極21と、矩形環状である枠体に導電性ワイヤが張設されたシャッタゲート22と、を含む。図1等に示すように、便宜上、略扁平直方体形状であるハウジング20の各辺は互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の各方向に延伸しているものとし、該ハウジングにあって略矩形柱状に貫通する内部空間はZ軸方向に延伸しているものとする。この場合、その内部空間の中心軸はイオン光軸Cと一致している。
ハウジング20は、内部空間の中心軸を含むX−Z平面で該ハウジング20を切断した形状の二つの部材、即ち、上側ハウジング部材20Aと下側ハウジング部材20Bとから成る。上側ハウジング部材20A及び下側ハウジング部材20Bにはそれぞれ、Y軸方向の深さ(高さ)がLy1/2、X軸方向の幅がLx1であってZ軸方向に延伸する断面略矩形状溝201が形成されており、その溝201を突き合わせて上側ハウジング部材20Aと下側ハウジング部材20Bとを貼り合わせることで、上述した断面略矩形状である内部空間が形成される。つまり、該内部空間の中心軸に直交する略矩形状断面の長辺の長さはLx1、短辺の長さはLy1である。両辺の長さの比(アスペクト比)Lx1/Ly1は1よりも大きい所定の値に定められている。
電極21は図10に示した従来の装置におけるリング状電極に代わるものであって、図3に示すように、X軸方向の長辺の長さがLx2、Y軸方向の短辺の長さがLy2である矩形状開口210を有する。この矩形状開口210の両辺の長さの比(アスペクト比)Lx2/Ly2も1よりも大きい所定の値に定められている。
シャッタゲート22は、図11(b)に示したようなティンダールポウェル型ゲートであり、図4に示すように、碍子等の絶縁体である矩形環状のスペーサ22Cを二枚のグリッド電極22A、22Bで挟み込んだ構造体である。グリッド電極22A、22Bはいずれも、碍子等の絶縁体である矩形環状の枠体221の矩形状開口に、Y軸方向に延伸する導電性ワイヤ222が所定間隔Tで多数張設されたものである。ただし、グリッド電極22Aにおける導電性ワイヤ222とグリッド電極22Bにおける導電性ワイヤ222とではその位置がX軸方向にT/2ずらされており、それによって、シャッタゲート22の開口面を正面から見たとき、グリッド電極22A、22Bの導電性ワイヤ222はX軸方向に交互に間隔T/2で並んだ状態となる。ここでは、シャッタゲート22の矩形状開口の長辺及び短辺の長さは電極21の矩形状開口210の長辺及び短辺の長さとそれぞれ同じであるが、必ずしも同じである必要はない。ただし、シャッタゲート22の矩形状開口の長辺と短辺との長さの比も1より大である。
上側ハウジング部材20A及び下側ハウジング部材20Bの断面略矩形状溝201の内側の所定位置には、電極21及びシャッタゲート22を嵌め込むための浅い溝202が形成されており、電極21やシャッタゲート22の外形寸法はこの溝202にちょうど嵌合するように、ハウジング20の内部空間の断面寸法よりも一回り大きくなっている。これによって、図1に示すように、複数の電極21及びシャッタゲート22を、下側ハウジング部材20Bの断面略矩形状溝201に形成されている溝202にそれぞれ嵌め込み、上側ハウジング部材20Aを被せることにより、複数の電極21及びシャッタゲート22はハウジング20の内部空間のそれぞれ所定の位置に確実に固定される。
このようにして本実施例のイオン移動度分析装置では、比較的簡単にドリフトセル2を組み立てることができ、図10に示したような従来の装置に比べて、組立工数はかなり少なくて済む。また、ドリフトセル2を構成する部材の数が少なくなるので、その点でもコスト的に有利である。
本実施例のイオン移動度分析装置では、ハウジング20の内部空間の一方の開放端面(図1、図2では左側の開放端面)がイオンが導入される入口側開口203であり、他方の開放端面(図1、図2では右側の開放端面)が分離後のイオンが出射する出口側開口204である。図2に示すように、ハウジング20の内部空間にあって入口側開口203とシャッタゲート22との間が脱溶媒領域4、シャッタゲート22と出口側開口204との間がドリフト領域5となる。この入口側開口203の外側にはイオン源1が配置され、イオン源1で生成された試料成分由来のイオンが入口側開口203から脱溶媒領域4に導入される。一方、出口側開口204の外側には検出器3が配置され、出口側開口204を経て出射したイオンは検出器3に到達して検出される。
制御部7により制御される電圧発生部6はドリフト電圧発生部61とゲート電圧発生部62とを含み、各電極21及びシャッタゲート22を構成する二枚のグリッド電極22A、22Bにそれぞれ所定の電圧を印加する。複数の電極21に印加される直流電圧によって、脱溶媒領域4及びドリフト領域5には入口側開口203を通して入射したイオンを加速する電場が形成される。また、シャッタゲート22は、到来するイオンを一旦堰き止め、所定のタイミングで短時間だけイオンを通過させてドリフト領域5に送り込むように、開閉駆動される。さらにまた、図示しないガス供給機構により、出口側開口204から入口側開口203に向かって緩やかな拡散ガスの流れが形成される。
本実施例のイオン移動度分析装置の特徴の一つは、上述したように、イオンをドリフト領域5に導入するためのシャッタゲート22の開口のアスペクト比が1よりも大きい矩形状であって、その開口の短辺に平行な方向に延伸するように導電性ワイヤ222が張設されていることである。こうした構成を採ることで、次のような利点がある。
いま一例として、X軸方向、Y軸方向共に長さがLcである正方形状の開口を有するシャッタゲートと、短辺がLa、長辺がLb=2La、つまり長辺の長さが短辺の長さの2倍である矩形状の開口を有するシャッタゲートと、を比較する。イオン透過の条件を揃えるために両シャッタゲートの開口面積を同一にする。正方形型シャッタゲートでLc=20mmであるとすると、矩形型シャッタゲートではLa=14mm、Lb=28mmとなる。
シャッタゲートの開口に張設される導電性ワイヤが単純梁であって等分布荷重であるとすると、該ワイヤの最大撓みδMAXは次の(1)式で表されることが知られている。
δMAX=(5・w・L4)/(384・E・I) …(1)
ここで、wは等分布荷重、Lは梁(ワイヤ)の長さ、Eはヤング率、Iは断面2次モーメントである。
(1)式より、梁が同じ形状、材質である場合、長いほうが撓みは大きくなることが分かる。上記の開口のサイズで計算すると、正方形型シャッタゲートにおけるワイヤの撓みは長方形型シャッタゲートにおけるワイヤの撓みよりも約4倍大きくなる。換言すれば、上記実施例で用いているような矩形型のシャッタゲートでは、開口面積が同一である正方形型シャッタゲートに比べて導電性ワイヤの撓みは格段に小さくなるので、電圧差がある隣接する導電性ワイヤ同士が接触することを防止することができる。また、通常、電場や拡散ガス流の影響のために全てのワイヤが均一に撓むことはあり得ず、一部のワイヤが大きく撓み、他のワイヤの撓みが小さい場合には、イオンを通過させるべく電場が切り替わる際に電場の乱れが生じ、イオンの透過率が減少するおそれがある。これに対し、矩形型のシャッタゲートではワイヤの撓み量自体が小さいので、イオンを通過させたりその通過を阻止したりする際の電場の乱れが小さく、イオンを通過させる際のイオン透過率を改善するとともに、イオンを阻止する際のイオンの漏出を抑えることができる。それによって、分析感度と分解能の向上が図れる。
また本実施例のイオン移動度分析装置では、拡散ガスが流される脱溶媒領域4及びドリフト領域5が断面略矩形状であるため、図10に示した従来装置のように拡散ガスの流路断面略円形状である場合に比べて、拡散ガス流が層流になり易い。この点について説明する。
一般に、配管中の流体の流れに関する指標値であるレイノルズ数Reは次の(2)式で表される。
e=Q・DH/(ν・A) …(2)
ここで、Qは体積流量、DHは水力直径、νは動粘性係数、Aは配管の断面積である。配管の断面が矩形状である場合、水力直径は次の(3)式で表される。
H=4・A/P …(3)
ここでPは潤辺(配管断面において流体が周囲の壁や底と接する長さ)である。
いま一例として、断面が一辺の長さaの正方形状である配管(角筒)と、断面が半径rの円状である配管(円筒)と、を考える。それら二つの配管の断面積が同一であるとすると、r=a/√π、となるので、円筒の水力直径はDH=2a/√π、角筒の水力直径はDH=a、となる。このことから、断面積が同じである場合、円筒のレイノルズ数は角筒のレイノルズ数よりも2/√π≒1.13倍大きくなることが分かる。短辺の長さがa、長辺の長さがb=2aである矩形状断面の角筒の場合には、断面積が同一であれば、円筒のレイノズル数は角筒のレイノルズ数の約1.2倍になる。即ち、角筒の場合には、アスペクト比が大きくなるほどつまりは扁平形状になるほど、レイノルズ数が減少することが分かる。
よく知られているように、レイノルズ数が低いほど層流は保たれ易くなり、ドリフト領域5において拡散ガスの層流が保たれると、該ガスの乱流によるイオン軌道の乱れが抑えられる。その結果、ドリフト領域5に導入されたイオンはX軸−Y軸面内であまり拡散することなく、電場による加速の作用と拡散ガスとの衝突という二つの要因によってその軌道が定まるようになる。それによって、本実施例のイオン移動度分析装置では、従来装置に比べて分析感度や分解能の向上が期待できる。
シャッタゲート22の開口のアスペクト比、電極21の矩形状開口210のアスペクト比、及び、ハウジング20の内部空間の断面のアスペクト比、をそれぞれ1よりも大きい値に定めることで、上述した効果を得ることができるが、好ましくは、それらアスペクト比を1.5以上とするとよい。それによって、シャッタゲート22の開口に張設した導電性ワイヤの撓みを従来装置の1/2以下に抑えることができ、製造上のばらつきや分析条件の相違などによって(1)式中のw、L、Eといったパラメータが変動したとしても、隣接する導電性ワイヤ同士の接触を確実に防止することができる。また、レイノルズ数の減少も十分に大きくイオン透過率の改善効果も大きい。
次に、本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン源1の構成を説明する。このイオン源1は大気圧化学イオン化(APCI)法によるイオン源であり、図5に示すように、入口側開口203の中心軸(この例ではイオン光軸Cと一致している)に対し直交する方向で且つ該入口側開口203の長手方向(X軸方向)に試料成分を含む試料溶液を噴霧するスプレー11と、X軸方向に複数(この例では3個)並べられたコロナ放電を発生させるための針状の放電電極12A、12B、12Cと、を含む。本実施例のイオン移動度分析装置の前段に液体クロマトグラフ(LC)が接続される場合、LCのカラムから溶出する試料溶液が連続的にスプレー11に供給され、スプレー11は例えばネブライズガスの助けを受けて試料溶液を噴霧する。その噴霧の方向は入口側開口203の開口面と略平行であるので、噴霧流が直接、入口側開口203に飛び込むことはない。それによって、ハウジング20の内部空間に面する壁面の汚染を抑えることができる。
複数の放電電極12A、12B、12Cには図示しない高電圧電源から同時に高電圧が印加され、それによって放電電極12A、12B、12Cの先端付近にはコロナ放電が生じる。例えばネブライズガス等のバッファガス分子はコロナ放電によってイオン化され、そのバッファイオンが噴霧流中の試料液滴から飛び出した試料成分と反応して試料成分由来のイオンが発生する。発生したイオンは入口側開口203からその外側に広がっている電場の作用で入口側開口203の方向に誘引され、入口側開口203を経て脱溶媒領域4に入り込む。このとき、バッファイオンは各放電電極12A、12B、12Cの先端付近、つまりはX軸方向に沿った複数の箇所で発生するので、試料成分由来のイオンもX軸方向の広い範囲で発生する。これは入口側開口203の広がり方向と一致しているので、生成された試料成分由来のイオンを高い効率で以て取込み、脱溶媒領域4へと送り込むことができる。
図6(a)は二本の放電電極の位置(間隔)と総エミッション電流との関係を測定するための測定系回路図、図6(b)はその測定結果を示すグラフである。
総エミッション電流が大きいほどバッファイオンの生成量は増加するが、図6の結果から、二本の放電電極の間隔に応じて総エミッション電流は変化するから、入口側開口203の広さに応じて放電電極の本数と間隔とを実験的に適当に定めるとよい。
上述したように本実施例のイオン移動度分析装置におけるイオン源1では、イオンを取り込むための入口側開口203への噴霧流の飛び込みを軽減してハウジング20の内部空間に面する壁面等の汚染を抑えながら、試料成分由来のイオンをより多く脱溶媒領域4を経てドリフト領域5に送り込むことができ、分析の感度及び再現性を向上させることができる。特に、断面略矩形状の脱溶媒領域4やドリフト領域5の長辺方向、つまり開口が広がっている方向の広い範囲でイオンを脱溶媒領域4に送り込むことができるので、断面略矩形状である脱溶媒領域4やドリフト領域5を有効に利用してイオンを移動度に応じて分離することができる。
[第2実施例]
次に、本発明に第2実施例であるイオン移動度分析装置について、添付図面を参照して説明する。
図9は第2実施例のイオン移動度分析装置の要部の構成図、図8は第2実施例のイオン移動度分析装置に用いられるドリフトセル2Bの斜視構成図である。
この第2実施例のイオン移動度分析装置では、上記第1実施例においてイオンをドリフトさせる電場を形成する電極21に代えて、ハウジング200を構成する上側ハウジング部材200A及び下側ハウジング部材200Bにそれぞれ形成されている断面略矩形状溝201の底面に、一定膜厚の抵抗膜層205が形成されている。また、入口側開口203と出口側開口204とに臨む抵抗膜層205の両端部には、該抵抗膜層205と接触するように金属等の導電体から成る電極層206が形成されている。ハウジング200の内部空間の略矩形状断面のアスペクト比が1よりも大きい所定の値であることは第1実施例と同様である(厳密に言えば、抵抗膜層205の膜厚の分だけ内部空間のアスペクト比は変化するが、この膜厚は無視できる程度に小さい)。なお、上記抵抗膜層205の抵抗体材料は適宜の抵抗率を有するものであれば特に限定されない。また、両ハウジング部材200A、200Bの表面に抵抗膜層205を形成する成膜手法も特に限定されない。
シャッタゲート22は第1実施例と同様の構成であって、同様に断面略矩形状溝201に嵌め込まれている。図9に示すように、上側ハウジング部材200Aと下側ハウジング部材200Bとが張り合わされた状態では、ハウジング200の内部空間に面する上面と下面とに入口側開口203から出口側開口204まで連続的に抵抗膜層205が形成されている。電圧発生部6は、抵抗膜層205の両端の一対の電極層206の間に、所定の電圧を印加する。これによって、ハウジング200の内部空間にはその中心軸に沿って直線状の電位勾配を有する加速電場が形成され、この加速電場の作用によって、脱溶媒領域4及びドリフト領域5中をイオンは移動する。
特許文献2、3に記載の装置のように、円筒管の内周面に均一膜厚の抵抗膜層を形成するのは技術的に難しいが、本実施例の装置では、幅広の溝の平面的な底面に均一膜厚の抵抗膜層を形成すればよく、これは比較的容易である。また、抵抗膜層の膜厚の均一性も確保し易い。そのため、比較的低いコストでドリフトセル2Bを作製することができ、装置全体のコスト削減にも有利である。
なお、図8、図9に示した例では、断面略矩形状溝201の底面のみに抵抗膜層が形成されており、該溝201の内側面、つまりはハウジング20の内部空間のY軸−Z軸方向に広がる面には抵抗膜層が形成されていないが、この面にも抵抗膜層を形成するようにしてもよいことは当然である。そうした抵抗膜層の追加はコスト的には不利であるが、電場の一様性を高めるのに有益である。
また、上記第1実施例と同様の理由により、シャッタゲート22の開口のアスペクト比、及び、ハウジング200の内部空間の断面のアスペクト比は、好ましくは1.5以上とするとよい。
上記第1実施例では、イオン源1としてAPCI法によるイオン源を用いていたが、それ以外の大気圧イオン化法によるイオン源を用いることもできる。例えば大気圧光イオン化(APPI)法によるイオン源を用いる場合には、図5に示した構成において放電電極12A〜12Cに代えて、スプレー11から噴出した噴霧流に所定波長の光を照射する光照射部を複数設置すればよい。
またESI法によるイオン源を用いる場合には、図7に示すように、入口側開口203の中心軸に直交する方向で且つ該入口側開口203の短辺と同じ方向(Y軸方向)に帯電させた試料液滴を噴霧するESIスプレーをX軸方向に沿って複数設置する。この場合には、各ESIスプレーからの噴霧流中及びその周囲で試料成分由来のイオンが主として生成されるから、図5に示した構成と同様に、入口側開口203の長辺方向の異なる複数の位置でイオンが生成される。それによって、より多くのイオンを入口側開口203から脱溶媒領域4に取り込むことができ、高い分析感度と再現性を達成することができる。
また上記実施例では、シャッタゲート22としてティンダールポウェル型ゲートを用いていたが、全ての導電性ワイヤが同一平面上に配置されるブラッドバリーニールソン型ゲートでもよいことは明らかである。
また上記実施例では、ドリフトセル2(2B)を構成するハウジング20(200)が、ほぼ同形状の上側ハウジング部材20A(200A)と下側ハウジング部材20B(200B)の二つから成るものであったが、例えば上側ハウジング部材20A(200A)が断面略矩形状溝を有さない単なる蓋状の部材であってもよい。また、上側ハウジング部材20A(200A)や下側ハウジング部材20B(200B)はそれぞれ一体成形された部材である必要はなく、複数の部材を貼り合わせる等して作製されたものであってもよい。特に、第2実施例の構成のように、ハウジング部材の一部表面に抵抗膜層を形成する場合には、その抵抗膜層を形成する時点では単なる平面状部材であるほうが、均一膜厚の抵抗膜層を形成し易い。
さらにまた、上記実施例は本発明の一例に過ぎず、上記実施例や上記各種変形例に限らず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…イオン源
11…スプレー
12A、12B、12C…放電電極
2、2B…ドリフトセル
20、200…ハウジング
20A、200A…上側ハウジング部材
20B、200B…下側ハウジング部材
201…断面略矩形状溝
202…溝
203…入口側開口
204…出口側開口
205…抵抗膜層
206…電極層
21…電極
210…矩形状開口
22…シャッタゲート
22A、22B…グリッド電極
22C…スペーサ
221…枠体
222…導電性ワイヤ
3…検出器
4…脱溶媒領域
5…ドリフト領域
6…電圧発生部
61…ドリフト電圧発生部
62…ゲート電圧発生部
7…制御部
C…イオン光軸

Claims (8)

  1. 試料成分由来のイオンをドリフト領域に導入し、該ドリフト領域中を移動させることでイオン移動度に応じてイオンを分離したあとに分離されたイオンを検出する又はさらに後段の分析・検出部へと送るイオン移動度分析装置において、
    a)その少なくとも一部が前記ドリフト領域となる、矩形柱状に貫通する内部空間が形成された絶縁性部材であり、該内部空間の軸に直交する矩形状の断面の長辺と短辺との比が1よりも大きいハウジングと、
    b)イオンを移動させるための電場を前記ハウジングの内部空間に形成するために該内部空間の軸に沿って複数配設された電極であり、該軸方向に所定の厚さを有する矩形環状であって矩形状開口の長辺と短辺との比が1よりも大きい電極と、
    c)前記ハウジングの内部空間の少なくとも一部であるドリフト領域にイオンをパルス的に導入するために該ハウジングの内部空間に配設され、長辺と短辺との比が1よりも大きい矩形状開口を有する矩形環状の枠体とその矩形状開口の短辺に平行に張設された複数本の導電性ワイヤとを含むシャッタゲートと、
    を備えることを特徴とするイオン移動度分析装置。
  2. 請求項1に記載のイオン移動度分析装置であって、
    前記ハウジングの長辺と短辺との比、前記電極の矩形状開口の長辺と短辺との比、及び前記シャッタゲートの矩形状開口の長辺と短辺との比がいずれも1.5以上であることを特徴とするイオン移動度分析装置。
  3. 試料成分由来のイオンをドリフト領域に導入し、該ドリフト領域中を移動させることでイオン移動度に応じてイオンを分離したあとに分離されたイオンを検出する又はさらに後段の分析・検出部へと送るイオン移動度分析装置において、
    a)その少なくとも一部が前記ドリフト領域となる、矩形柱状に貫通する内部空間が形成された絶縁性部材であり、該内部空間の軸に直交する矩形状の断面の長辺と短辺との比が1よりも大きいハウジングと、
    b)イオンを移動させるための電場を前記ハウジングの内部空間に形成するために、少なくとも前記矩形柱状に貫通する内部空間の矩形状の断面の長辺を含む対向する二つの面の表面に形成された抵抗層と、
    c)前記ハウジングの内部空間の少なくとも一部であるドリフト領域にイオンをパルス的に導入するために該ハウジングの内部空間に配設され、長辺と短辺との比が1よりも大きい矩形状開口を有する矩形環状の枠体とその矩形状開口の短辺に平行に張設された複数本の導電性ワイヤとを含むシャッタゲートと、
    を備えることを特徴とするイオン移動度分析装置。
  4. 請求項3に記載のイオン移動度分析装置であって、
    前記ハウジングの長辺と短辺との比、及び前記シャッタゲートの矩形状開口の長辺と短辺との比がいずれも1.5以上であることを特徴とするイオン移動度分析装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン移動度分析装置であって、
    前記ハウジングは外形が直方体状であり、その内部空間の軸の方向に延伸する直線を含む平面で切断された二つの部材からなることを特徴とするイオン移動度分析装置。
  6. 請求項1又は3に記載のイオン移動度分析装置であって、
    前記ハウジングの内部空間の一方の開放端面の外側に配置された、矩形状である前記開放端面の長辺の延伸方向に沿った複数箇所で試料成分をイオン化するイオン源をさらに備えることを特徴とするイオン移動度分析装置。
  7. 請求項6に記載のイオン移動度分析装置であって、
    前記イオン源は、
    前記開放端面の中心軸に略直交する方向で且つ矩形状である該開放端面の長辺の延伸方向に試料溶液を噴霧する試料噴霧部と、
    前記開放端面の長辺の延伸方向に複数配設された、前記試料噴霧部からの噴霧流中の試料成分をイオン化するイオン化促進部と、
    を具備することを特徴とするイオン移動度分析装置。
  8. 請求項7に記載のイオン移動度分析装置であって、
    前記イオン化促進部は、大気圧化学イオン化を行うためのバッファイオンを生成する放電電極、又は、大気圧光イオン化を行うための光を照射する光照射部であることを特徴とするイオン移動度分析装置。
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