JP6428282B2 - プレス成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プレス装置を用いて鋼板からプレス成形品を製造する方法に関し、特に、高強度のプレス成形品の製造方法に関する。
自動車の車体は各種のプレス成形品を含む。プレス成形品は、プレス装置を用いて製造される。プレス装置はパンチとダイとブランクホルダを備える。ダイに対するパンチの相対的な移動により、鋼板がダイに押し込まれる。これに伴って鋼板に絞り成形、曲げ成形等が施され、プレス成形品が製造される。
近年、自動車には、プレス成形品の高強度化が推進されている。このため、プレス成形品の素材として、強度の高い鋼板が用いられる。しかし、鋼板は、一般に、強度が高くなるほど延性が低下し、加工性も低下する。このため、強度の高い鋼板にプレス成形が施されると、引張の加工度の大きい部分(以下、「大加工部分」ともいう)で板厚が薄くなったり、破断が生じたりする。大加工部分は、例えば、パンチの肩と接触する部分(以下、「パンチ肩部」ともいう)、ダイの肩と接触する部分(以下、「ダイ肩部」ともいう)等が相当する。
従来より、強度の高い鋼板を用いたプレス成形において、プレス成形品の品質確保を図る技術が種々提案されている。例えば、特開2004−190050号公報(特許文献1)は、鋼板を温間でプレス成形する技術を開示する。この技術では、鋼板を100〜400℃に加熱して鋼板の全伸び量を高めつつ、鋼板中にオーステナイトが存在する状態でプレス成形を行う、としている。しかし、典型的なプレス成形でみられる絞り成形の性能には、大加工部分の加工硬化率、r寸法等が大きく影響する。このため、温間に加熱された鋼板の全伸びが高められても、絞り成形性が向上しない状況が起こる。
特開2012−148282号公報(特許文献2)は、高強度鋼板をプレス成形する際、深絞り成形の後期に張出し成形を行う技術を開示する。この技術では、プレス成形時の鋼板の温度を100〜350℃とし、鋼板中にオーステナイトが存在する状態でプレス成形を行う、としている。しかし、100〜350℃のすべての温度域が、万能に絞り成形性の向上をもたらすわけではない。
また、上記の特許文献2は、パンチの肩の金型温度とダイの肩の金型温度に著しく差を持たせた状態、すなわち、パンチの金型温度を低温にし、ダイの金型温度を高温にした状態で、温間に加熱された鋼板をプレス成形する技術も開示する。この技術では、プレス成形の際、鋼板の大加工部分であるパンチ肩部が低温のパンチとの接触によって硬化し、パンチ肩部の変形抵抗が高まる。これにより、パンチ肩部で板厚減少及び破断が抑制される。しかし、パンチとダイの各金型温度を異なる温度に制御する必要がある。このため、プレス装置の構造が複雑になる。
特開2004−190050号公報 特開2012−148282号公報
日本金属学会,講座・現代の金属学材料編 第4巻 鉄鋼材料,1985年
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、温間に加熱されてオーステナイトが存在する強度の高い鋼板からプレス成形品を製造する技術に関し、下記の特性を有するプレス成形品の製造方法を提供することである:
・引張の加工度の大きい部分で板厚減少及び破断を抑制すること;
・プレス装置の構造が複雑にならないこと。
本発明の一実施形態によるプレス成形品の製造方法は、パンチとダイとブランクホルダを備えたプレス装置を用い、鋼板からプレス成形品を製造する方法である。
当該プレス成形品の製造方法は、鋼板準備工程と、鋼板加熱工程と、成形工程と、を含む。
鋼板準備工程は、前記鋼板として、成形開始時のオーステナイト体積分率が10%以上である鋼板を準備する。
鋼板加熱工程は、準備した前記鋼板を100℃以上、750℃以下の範囲内の所定温度Tに加熱する。
成形工程は、前記所定温度Tに加熱された前記鋼板を前記プレス装置によって成形し、前記プレス成形品を得る。
ここで、前記所定温度Tは、下記のステップ(a)〜(e)により求められる温度である。
ステップ(a)は、室温で前記鋼板を前記プレス成形品に成形したときに板厚減少率が最大となる部位における相当塑性ひずみεtmaxを導出する。
ステップ(b)は、前記相当塑性ひずみεtmaxから特定ひずみ区間「0.8×εtmax〜εtmax」を算出する。
ステップ(c)は、前記鋼板に固有の応力ひずみ曲線を複数の温度ごとに導出する。
ステップ(d)は、前記各応力ひずみ曲線における応力増分の変化の割合が前記特定ひずみ区間で0を超えるか否かを判定する。
ステップ(e)は、前記特定ひずみ区間で前記応力増分の変化の割合が0を超える前記応力ひずみ曲線をすべて選定し、選定した前記各応力ひずみ曲線に対応する温度のいずれかを前記所定温度Tとして決定する。
そして、前記成形工程では、成形開始時における前記パンチの温度Tp、前記ダイの温度Td、及び前記ブランクホルダの温度TbをT±50℃の範囲内とする。
本発明のプレス成形品の製造方法は、温間に加熱されてオーステナイトが存在する強度の高い鋼板からプレス成形品を製造する方法であって、下記の顕著な効果を有する:
・引張の加工度の大きい部分で板厚減少及び破断を抑制できること;
・プレス装置の構造が複雑にならないこと。
図1は、ひずみεtmaxを実験によって導出する場合に用いられるプレス装置の一例を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1に示すプレス装置によって成形されたプレス成形品、及びひずみεtmaxを導出するための板厚測定の領域を示す図である。 図3は、図1に示すプレス装置によって成形されたプレス成形品について、図2に示す測定領域での相当塑性ひずみ(板厚減少率)の分布を示す図である。 図4は、ひずみεtmaxを数値解析によって導出する場合のプレス成形品モデルの解析結果の一例を模式的に示す斜視図である。 図5は、同一鋼種について温度ごとの応力ひずみ曲線の一例を示す図である。 図6は、同一鋼種について温度ごとの応力ひずみ曲線の他の一例を示す図である。
本発明者らは、上記目的を達成するため、温間に加熱されてオーステナイトが存在する強度の高い鋼板からプレス成形品を製造することを前提にして、種々の解析及び試験を行い、鋭意検討を重ねた。その結果、下記の知見を得た。
成形対象のプレス成形品の実形状、及び鋼板の温度ごとに固有の材料特性を踏まえ、成形開始時の鋼板の加熱温度を適切に設定すれば、プレス成形の際、オーステナイトのマルテンサイト変態が大加工部分(例:パンチ肩部)で有効に発現し、これにより大加工部分が硬化し、大加工部分の変形抵抗が高まる。その際、前記特許文献2の技術のように、パンチとダイに著しい温度差を持たせることなく、パンチとダイとブランクホルダの金型温度の温度差を小さくする。したがって、大加工部分で板厚減少及び破断を抑制することができる。しかも、パンチとダイとブランクホルダの各金型温度を異なる温度に制御する必要がなく、プレス装置の構造が複雑にならない。
本発明のプレス成形品の製造方法は、上記の知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明の一実施形態によるプレス成形品の製造方法は、パンチとダイとブランクホルダを備えたプレス装置を用い、鋼板からプレス成形品を製造する方法である。
本実施形態の製造方法は、鋼板準備工程と、鋼板加熱工程と、成形工程と、を含む。鋼板準備工程は、鋼板として、成形開始時のオーステナイト体積分率が10%以上である鋼板を準備する。鋼板加熱工程は、準備した鋼板を100℃以上、750℃以下の範囲内の所定温度Tに加熱する。成形工程は、所定温度Tに加熱された鋼板をプレス装置によって成形し、プレス成形品を得る。
ここで、前記所定温度Tは、例えば、下記のステップ(a)〜(e)により求められる温度である。ステップ(a)は、室温で鋼板をプレス成形品に成形したときに板厚減少率が最大となる部位における相当塑性ひずみεtmaxを導出する。ステップ(b)は、相当塑性ひずみεtmaxから特定ひずみ区間「0.8×εtmax〜εtmax」を算出する。ステップ(c)は、鋼板に固有の応力ひずみ曲線を複数の温度ごとに導出する。ステップ(d)は、各応力ひずみ曲線における応力増分の変化の割合が特定ひずみ区間で0を超えるか否かを判定する。ステップ(e)は、特定ひずみ区間で応力増分の変化の割合が0を超える応力ひずみ曲線をすべて選定し、選定した各応力ひずみ曲線に対応する温度のいずれかを所定温度Tとして決定する。
そして、成形工程では、成形開始時におけるパンチの温度Tp、ダイの温度Td、及びブランクホルダの温度TbをT±50℃の範囲内とする。
本実施形態の製造方法において、前記所定温度Tは、鋼板に固有のマルテンサイト変態開始温度Ms[℃]に基づき、下記式(1)の条件を満足する範囲内の温度とすることができる。好ましくは、式(1)に代え、下記式(2)を用いる。
(Ms+α)−50≦T≦(Ms+α)+50 …(1)
(Ms+α)−25≦T≦(Ms+α)+25 …(2)
式(1)及び(2)中のαは、プレス成形速度v[mm/sec]に基づき、下記式(i)より求められる。
α=25×log(v)+182 …(i)
本実施形態の製造方法において、成形工程では、成形開始時におけるパンチの温度Tp、ダイの温度Td、及びブランクホルダの温度TbをT±25℃の範囲内とするが好ましい。
以下に、本実施形態のプレス成形品の製造方法を詳述する。上記のとおり、本実施形態の製造方法は、プレス装置を用い、鋼板からプレス成形品を製造する方法である。本実施形態の製造方法は、鋼板準備工程と、鋼板加熱工程と、成形工程と、を含む。
[プレス装置]
プレス装置は、パンチとダイとブランクホルダを備える。パンチとダイは上下に対となる雄雌の金型である。パンチは、ダイに対して相対的にプレス方向に移動し、鋼板をダイに押し込む。これにより、プレス成形品が成形される。通常、ブランクホルダは、パンチを包囲するように配置され、ダイとの間で鋼板を挟み、鋼板の異常な変形を抑える。
プレス装置は、パンチ、ダイ及びブランクホルダを個別に加熱する機構(例:電熱線ヒータ、ガスヒータ)を有する。ただし、各金型は、別個異なる温度に制御されるわけではなく、すべて同じ温度に制御される。したがって、プレス装置の構造が複雑にならない。
[鋼板準備工程]
鋼板準備工程では、鋼板として、強度の高い鋼板を準備する。本実施形態で対象とする鋼板の材料は、高張力鋼(ハイテン)、ホットスタンピング用鋼(HS用鋼)等が該当する。高張力鋼としては、60kg(590MPa)級ハイテン、100kg(980MPa)級ハイテン、120kg(1180MPa)級ハイテン等が例示される。ホットスタンピング用鋼としては、150kg(1470MPa)HS用鋼、180kg(1760MPa)HS用鋼等が例示される。いずれの鋼板も、特に冷間(室温)では難加工性の材料である。また、いずれの鋼板も、成形前に、100℃以上、750℃以下の範囲内の所定温度Tに加熱され、成形開始時のオーステナイト体積分率が10%以上である。
なお、オーステナイト系ステンレス鋼の鋼板は、本実施形態の鋼板の対象ではない。オーステナイト系ステンレス鋼の鋼板は、冷間でのプレス成形であっても加工性に優れるため、大加工部分で板厚減少及び破断が問題視されないからである。すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼の鋼板は、成形前に、100℃以上に加熱されないからである。
[鋼板加熱工程]
鋼板加熱工程では、上記の鋼板準備工程で準備した鋼板を、成形前に、100℃以上、750℃以下の範囲内の所定温度Tに加熱する。所定温度Tは、例えば、詳細は後述するステップ(a)〜(e)により求められる温度である。
[成形工程]
成形工程では、上記の鋼板加熱工程で所定温度Tに加熱された鋼板を上記のプレス装置によって成形し、プレス成形品を得る。その際、成形開始時におけるパンチの温度Tp、ダイの温度Td、ブランクホルダの温度TbをT±50℃の範囲内とする。好ましくは、それらの金型温度Tp、Td及びTbをT±25℃の範囲内とする。より好ましくは、それらの金型温度Tp、Td及びTbを同じにする。
[所定温度Tの求め方]
所定温度Tは、下記のステップ(a)〜(e)を経ることによって求めることができる。
[ステップ(a)]
ステップ(a)では、室温で鋼板をプレス成形品に成形したときに板厚減少率が最大となる部位における相当塑性ひずみεtmaxを導出する。このひずみεtmaxは実験又は数値解析により導出することができる。
[実験によるひずみεtmaxの導出]
図1は、ひずみεtmaxを実験によって導出する場合に用いられるプレス装置の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すプレス装置によって成形されたプレス成形品、及びひずみεtmaxを導出するための板厚測定の領域を示す図である。
実験では、板厚がt0の鋼板を準備し、プレス装置によってプレス成形品を成形する(例えば、図1参照)。ここで成形対象とするプレス成形品は、実形状のものとする。ここで用いる鋼板は、実適用と同じ材料及び板厚の鋼板とする。ここでのプレス成形は室温で行う。すなわち、鋼板は加熱しないし、パンチ、ダイ及びブランクホルダのいずれも加熱しない。
実験で得られたプレス成形品における各部位の板厚tを測定する(例えば、図2参照)。鋼板の板厚t0とプレス成形品における各部位の板厚tに基づき、各部位の相当塑性ひずみとして、板厚ひずみである板厚減少率εtを算出する。板厚減少率εtは、「−ln(t/t0)」から求められる。板厚減少率εtが大きいほど、プレス成形品の板厚tが薄くなっていることを意味する。すなわち、板厚減少率εtは、引張の加工度の指標となり、破断の起こりやすさの指標となる。なお、負の値の板厚減少率εtは、プレス成形品の板厚tが鋼板の板厚t0よりも厚くなっていることを意味する。得られた板厚減少率εtの分布から、最大の板厚減少率(相当塑性ひずみ)εtmaxを把握する。このように実験により、板厚減少率が最大となる部位における相当塑性ひずみεtmaxを導出することができる。
図3は、図1に示すプレス装置によって成形されたプレス成形品について、図2に示す測定領域での相当塑性ひずみ(板厚減少率)の分布を示す図である。図1〜図3に示す例では、パンチ肩部の近傍部位で板厚減少率εが最大となり、最大の板厚減少率(相当塑性ひずみ)εtmaxが0.26となる。
[数値解析によるひずみεtmaxの導出]
図4は、ひずみεtmaxを数値解析によって導出する場合のプレス成形品モデルの解析結果の一例を模式的に示す斜視図である。図4に示すプレス成形品モデルは、前記図1に示すプレス装置を用いて前記図2に示すプレス成形品の成形する状況を模擬したものである。図4には、1/4対象モデルを示す。
数値解析では、実適用の鋼板、パンチ、ダイ及びブランクホルダの表面モデルを作製する。作製した鋼板及び金型の各モデルを用い、プレス成形品の成形に相当する条件で変形解析を行う。ここでの鋼板モデルは、実適用と同じ材料及び板厚の鋼板モデルとする。ここでの変形解析の温度条件は室温とする。すなわち、鋼板及び金型の各モデルの条件は室温とする。また、解析時の材料特性はプレス成形速度域に合わせて取得し、ひずみ速度依存性を考慮していないモデルを用い、プレス成形速度は3m/secとした。
解析結果であるプレス成形品モデルにおいて、実験による場合と同様に、各部位の相当塑性ひずみとして、板厚ひずみである板厚減少率εtを算出する(例えば、図4参照)。得られた板厚減少率εtの分布から、最大の板厚減少率(相当塑性ひずみ)εtmaxを把握する。このように数値解析により、板厚減少率が最大となる部位における相当塑性ひずみεtmaxを導出することができる。図4に示す例では、パンチ肩部の近傍部位(図4中、円で囲った部分)で板厚減少率εが最大となり、最大の板厚減少率εtmaxが0.26となる。なお、図4には、板厚減少率の絶対値での大きさが濃淡で示される。例えば、図4中の薄い領域は、板厚減少率の絶対値が大きいこと、すなわち加工度が大きいことを示す。
[ステップ(b)]
ステップ(b)では、上記のステップ(a)で導出した最大の板厚減少率(相当塑性ひずみ)εtmaxから特定ひずみ区間「0.8×εtmax〜εtmax」を算出する。
[ステップ(c)]
ステップ(c)では、鋼板に固有の応力ひずみ曲線を複数の温度ごとに導出する。鋼板は、実適用と同じ材料(例:ハイテン、HS用鋼等)とする。複数の温度は、鋼板加熱工程で採用される加熱温度の範囲(100℃以上、750℃以下)の一部を少なくとも含むように、適宜選択される。温度の選択数は、特に限定しないが、例えば、100℃から50℃ピッチで3つ程度とすることができる。応力ひずみ曲線は、JIS Z2201及びJIS Z2241の規定に準拠し、JIS5号試験片を用いた引張試験により導出する。
図5は、同一鋼種について温度ごとの応力ひずみ曲線の一例を示す図である。図5に示す例では、下記の表1に化学組成を示す100kg級ハイテンを対象とした。温度は、100℃、150℃及び200℃を選択し、比較のために室温(25℃)も選択した。図5に示すように、応力ひずみ曲線は、同一鋼種であっても温度ごとに異なる。図5に示す例では、プレス成形速度は0.05mm/secとした。
図6は、同一鋼種について温度ごとの応力ひずみ曲線の他の一例を示す図である。図6に示す例では、前記図5に示す場合と同様に、下記の表1に化学組成を示す100kg級ハイテンを対象とした。ただし、前記図5に示す例では、成形速度は0.05mm/secとしたのに対し、図6に示す例では、成形速度は60mm/secとした。温度は、200℃、250℃及び300℃を選択し、比較のために室温(25℃)も選択した。図6に示す場合にも、応力ひずみ曲線は、同一鋼種であっても温度ごとに異なる。したがって、図5及び図6より、応力ひずみ曲線は成形速度によっても異なることが分かる。
このような応力ひずみ曲線の温度ごとの相違は、鋼種ごとに固有のものである。
Figure 0006428282
[ステップ(d)]
ステップ(d)では、上記のステップ(c)で導出した各応力ひずみ曲線における応力増分の変化の割合(d2σ/dε2)が、上記のステップ(b)で算出した特定ひずみ区間で0を超えるか否かを判定する。
例えば、図1〜図4に示す例に基づく図5に示す例では、最大の板厚減少率(相当塑性ひずみ)εtmaxが0.26であるので、特定ひずみ区間「0.8×εtmax〜εtmax」は0.208〜0.26になる。図5に示す例(成形速度が0.05mm/sec)の場合、室温及び100℃の応力ひずみ曲線は、特定ひずみ区間の全範囲でd2σ/dε2が0以下であり、0を超えない。一方、150℃及び200℃の応力ひずみ曲線は、特定ひずみ区間の一部でd2σ/dε2が0を超える。
図6に示す例(成形速度が60mm/sec)の場合、室温及び200℃の応力ひずみ曲線は、特定ひずみ区間の全範囲でd2σ/dε2が0以下であり、0を超えない。一方、250℃及び300℃の応力ひずみ曲線は、特定ひずみ区間の一部でd2σ/dε2が0を超える。
要するに、図5及び図6に示す例のいずれの場合であっても、特定ひずみ区間において、低温では、0を超えるd2σ/dε2が存在しない一方、高温では、0を超えるd2σ/dε2が発現する。特定ひずみ区間でのd2σ/dε2を判定するにあたり、判定対象の応力ひずみ曲線としては、実際のプレス成形条件と同じ成形速度条件に基づいて導出した応力ひずみ曲線を用いることが好ましい。
[ステップ(e)]
ステップ(e)では、特定ひずみ区間でd2σ/dε2が0を超える応力ひずみ曲線をすべて選定し、選定した各応力ひずみ曲線に対応する温度のいずれかを所定温度Tとして決定する。これにより、所定温度Tに加熱された鋼板をプレス成形する際、パンチとダイに著しい温度差を持たせなくても、大加工部分、すなわち板厚減少率εtが大きい部位(例:パンチ肩部)で、オーステナイトのマルテンサイト変態が有効に発現するようになる。その結果、大加工部分が硬化し、大加工部分の変形抵抗が高まることから、大加工部分で板厚減少及び破断を抑制することができる。所定温度Tは、特定ひずみ区間でd2σ/dε2が0を超える応力ひずみ曲線に対応する温度である限り、特に限定しない。ただし、その中でも、d2σ/dε2が極大となる温度を選定することが好ましい。成形性向上の効果が最大となるからである。
もっとも、ステップ(a)〜(e)を経て求めた所定温度Tは、上記のとおり、プレス成形時にマルテンサイト変態の発現に影響を及ぼす。このため、所定温度Tは、鋼板の材料に固有のマルテンサイト変態開始点温度Ms[℃]から直接算出し、決定することができる。その際、マルテンサイト変態の発現には、成形速度v[mm/sec]も影響するため、成形速度vも踏まえて、所定温度Tを決定することが好ましい。
具体的には、所定温度Tは、マルテンサイト変態開始温度Ms[℃]に基づき、下記式(1)の条件を満足する範囲内の温度とすることができる。好ましくは、式(1)に代え、下記式(2)を用いる。
(Ms+α)−50≦T≦(Ms+α)+50 …(1)
(Ms+α)−25≦T≦(Ms+α)+25 …(2)
ここで、Msは、下記の式(A)から求められる(非特許文献1参照)。
Ms[℃]=550−361C−39Mn−35V−20Cr−17Ni−10Cu−5(Mo+W)+15Co+30Al …(A)
式(A)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
上記式(1)及び式(2)中の「Ms+α」のαは定数である。この定数αは、種々の鋼種・成形条件での調査結果から、プレス成形速度v[mm/sec]に基づき、下記の式(i)より算定される。ここで、成形速度vは、パンチがブランクに接触し、実際に成形が開始されてから終了するまでの平均成形速度である。
α=25×log(v)+182 …(i)
本実施形態のプレス成形品の製造方法による効果を確認するため、下記の数値解析試験を実施した。鋼板の材料を種々変更し、材料ごとにプレス成形条件を種々変更した。鋼板の材料としては、鋼種A:100kg級ハイテン、鋼種B:60kg級ハイテン、鋼種C:120kg級ハイテン、及び鋼種D:50kgHS用鋼を選択した。下記の表2に各材料の特性を示す。成形速度は、60mm/secとした。
Figure 0006428282
プレス成形条件としては、成形開始時の鋼板の温度、すなわち鋼板の加熱温度を変更した。また、パンチ、ダイ及びブランクホルダの温度を変更した。評価は、プレス成形による限界成形高さで行った。下記の表3に、プレス成形条件と、大加工部分で破断の発生しない限界成形高さを示す。なお、下記表3中の参考例2、5、8及び11について、たとえば参考例2の鋼板温度の欄に示される「0〜230」は、鋼板内に0℃から230℃までの温度分布が生じていることを示している。
Figure 0006428282
表3に示す結果から、下記のことが示される。本発明で規定する条件のいずれも満たす本発明例1、4、7及び10は、それぞれ、同一鋼種の比較例3、6、9及び12と比較し、プレス成形による限界成形高さが顕著に高かった。これは、比較例3、6、9及び12が、本発明で規定する条件のうち、パンチ、ダイ及びブランクホルダの温度が同じであるものの、鋼板の温度が所定温度Tに達していないか(比較例3、6及び9)、又は各金型の温度と鋼板の温度が著しく相違することによる(比較例11)。
なお、参考例2、5、8及び11の限界成形高さは、それぞれ、本発明例1、4、7及び10と同等であった。これは、参考例2、5、8及び11が、パンチとダイに著しい温度差を持たせことによる。参考例2、5、8及び11の場合、パンチとダイの各金型温度を異なる温度に制御する必要があるため、プレス装置の構造が複雑になる。
本発明のプレス成形品の製造方法は、高強度化が求められる自動車用のプレス成形品の製造に有効に利用できる。

Claims (4)

  1. パンチとダイとブランクホルダを備えたプレス装置を用い、鋼板からプレス成形品を製造する方法であって、
    当該プレス成形品の製造方法は、
    前記鋼板として、成形開始時のオーステナイト体積分率が10%以上である鋼板を準備
    する鋼板準備工程と、
    準備した前記鋼板を100℃以上、750℃以下の範囲内の下記所定温度Tに加熱する
    鋼板加熱工程と、
    前記所定温度Tに加熱された前記鋼板を前記プレス装置によって所定の成形速度で成形し、前記プレス成形品を得る成形工程とを含み、
    前記成形工程では、成形開始時における前記パンチの温度Tp、前記ダイの温度Td、及び前記ブランクホルダの温度TbをT±50℃の範囲内とする、プレス成形品の製造方法。
    ここで、前記所定温度Tは、下記のステップにより求められる温度である:
    室温で前記鋼板を前記プレス成形品に成形したときに板厚減少率が最大となる部位における相当塑性ひずみεtmaxを導出するステップ;
    前記相当塑性ひずみεtmaxから特定ひずみ区間「0.8×εtmax〜εtmax」を算出するステップ;
    前記所定の成形速度で成形したときの前記鋼板に固有の応力ひずみ曲線を複数の温度ごとに導出するステップ;
    前記各応力ひずみ曲線における応力増分の変化の割合が前記特定ひずみ区間で0を超えるか否かを判定するステップ;及び
    前記特定ひずみ区間で前記応力増分の変化の割合が0を超える前記応力ひずみ曲線をすべて選定し、選定した前記各応力ひずみ曲線に対応する温度のいずれかを前記所定温度T
    として決定するステップ。
  2. パンチとダイとブランクホルダを備えたプレス装置を用い、鋼板からプレス成形品を製造する方法であって、
    当該プレス成形品の製造方法は、
    前記鋼板として、成形開始時のオーステナイト体積分率が10%以上である鋼板を準備する鋼板準備工程と、
    準備した前記鋼板を100℃以上、750℃以下の範囲内の下記所定温度Tに加熱する鋼板加熱工程と、
    前記所定温度Tに加熱された前記鋼板を前記プレス装置によって成形し、前記プレス成形品を得る成形工程とを含み、
    前記成形工程では、成形開始時における前記パンチの温度Tp、前記ダイの温度Td、及び前記ブランクホルダの温度TbをT±50℃の範囲内とする、プレス成形品の製造方法。
    ここで、前記所定温度Tは、前記鋼板に固有のマルテンサイト変態開始温度Ms[℃]に基づき、下記式(1)の条件を満足する範囲内の温度とする、プレス成形品の製造方法。
    (Ms+α)−50≦T≦(Ms+α)+50 …(1)
    式(1)中のαは、プレス成形速度v[mm/sec]に基づき、下記式(i)より求められる。
    α=25×log(v)+182 …(i)
  3. 請求項2に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記式(1)に代え、下記式(2)を用いる、プレス成形品の製造方法。
    (Ms+α)−25≦T≦(Ms+α)+25 …(2)
    式(2)中のαは、プレス成形速度v[mm/sec]に基づき、下記式(i)より求められる。
    α=25×log(v)+182 …(i)
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記成形工程では、成形開始時における前記パンチの温度Tp、前記ダイの温度Td、及び前記ブランクホルダの温度TbをT±25℃の範囲内とする、プレス成形品の製造方法。
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