JP6424348B2 - 背広原型の作成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、背広原型の作成方法に関する。
従来、洋服の上着の仕立てについては、縫製用のパーツの裁断に工夫をこらして仕立てた洋服(上着)の着用が行いやすいようにしたり、着用状態での運動が行いやすいように工夫されている。
例えば、特許第4779085号発明では、衿部・左右袖部を一体的に裁断して形成した上パターンと、前身頃及び後身頃を一体的に裁断して形成した下パターンを基本として各パターンの衿部の接合ラインと左前身頃の接合ラインとを適当に接合して衣服を形成することにより、衣服の軽量化をはかり、かつ、着用者の動作を限定せず、動きやすく、かつ、作業性、安全性に優れた着心地のよい衣服を提供できるようにしている。
また、特許第4537553号発明では、前身頃と後身頃の上部に連接する腕部材を前腕部材、後腕部材、下腕部材に分けて袖を少なくとも3枚の部材で作り、各腕部材の形状を一定方向に湾曲したり、前身頃と後身頃に取付けられる側縁部とを鋭角に交差した状態として鋭角の交差部分が襠部となって縫製状態で運動に必要なゆとりを形成している。
このように裁断することによって袖部分を肘を軽く曲げて腕を斜め下前方に出した状態の曲線に近い立体形状を形成し、腕の前後左右の運動に対して着用感が良好な上着としている。
特許第4779085号公報 特許第4537553号公報
ところが、かかる縫製パターンや袖部分の分解パターンによる上着の縫製では、確かに着心地や、運動のしやすさにおいては優れているものの、背広やジャケット等の上着に関して最も重要視されるスタイルの点で難点を有している。
すなわち、着用状態での着用者の体型的諸条件、例えば身長や、背の前後傾(猫背、反身)や、左右の肩の上下バランス等の諸条件に合致し、着用者の体型的特徴にフィットする背広を縫製することができない。
また、一般の背広では、背広本体を背中部分の背中心線から左右に分けて形成した左半身パーツと右半身パーツを背中部分で縫い合わせて背広をつくるものである。そして、各半身パーツは前身頃と後見頃を組合わせて構成される。その際に、両肩幅間の長さや、丈の長さや、バストの長さや、ウエストの長さや、袖の長さ等を計測して標準的な着用者の体型に可及的に合致するような既製の左右半身パーツをつくり、或いは、複数に分類した体型毎の標準型背広のための左右半身パーツを製作し、或いは、特定の人からの注文により計測した数値を基にして特定着用者の体型に合致した仕立て仕用の左右半身パーツをつくり、これらの左右半身パーツを基にして背広を製作している。
しかし、このような背広の製作において計測する上半身の部位は、背丈やバストラインや肩幅や袖長さ等のように伝統的に古来より特定された部位に限定されていた。
このように、従来の背広仕立てにおいては、着用者の肩の傾斜や肩長さや背中の前傾、反身等のように最も体型にフィットするために必要な身体部位の計測を考慮するものではなく、かつ、かかる必須部位の計測結果と他の部位の計測結果との相関関係を考慮してパターンの裁断を行う技術もなかった。
そのため、着用者の種々の体型に最もフィットするような計測を行い、それをもとにしてパターンの裁断を行って背広を簡便に製作する技術が求められていた。
例えば、旧来の背広仕立の計測において、仮に着用者の体型の計測部位を増加させて細部にわたる計測を行ったとしても、その計測結果を左右半身パーツの各部位の裁断に実現するためには、もっとも体型にフィットする各計測間の相関関係が必要であり、かかる一定の相関関係考慮することなく単に計測の数値だけをもとにしてパターンの裁断を行ったとしても適確な背広原型は出来上がらない。
この発明では、着用者の体型の計測部位の基点となる地点を胸囲などの計測数値から仮決定した地点とし、これに体前後における地上高等を修正係数として加味し、その地点に着用者の種々の体型、特に人によってそれぞれ異なる反身、前屈(猫背)や肩線の角度、長さ等の変位の要素を更に加味して正しい計測部位の基点を割り出し、その正しい基点をもとにして体型の各部位の計測値を出し背広の縫製に反映させることによって、左右半身パーツを簡便にかつ、各種体型の着用者にフィットさせることのできるスタイルの背広原型の作成方法を提供するものである。
この発明は、上着本体を背中部分の背中心線より左右に分けて形成した左半身パーツ及び右半身パーツと、左右半身パーツの中央上部に上方を一部切欠して形成した略楕円形状の左右袖孔部と、左半身パーツ本体の前端縁部に形成した衿部と、袖孔部の前方の胸幅部と、袖孔部の下方の脇幅部と、袖孔部の後方の背幅部とにより構成し、左右袖孔部の一部切欠端部同志および各左右半身パーツの背縫線同志をそれぞれ接合縫製することにより形成する背広原型において、着用者の本来の背中心線上端とすべき背基点から、胸囲の長さの1/2に(0.15〜0.20)を乗じて算出した長さあるいは首周りの長さに(10〜15)を加算し、その合計を(5〜7)で除して算出した長さだけ前方へ移動し、更に移動した点から移動長さの1/4の長さだけ上方に垂直に移動して特定した点を左右肩後の仮想基点とし、前身頃前端縁から袖孔部の前端縁に至る長さの0.5〜0.6倍の位置の垂直線と、左右肩後の仮想基点からの絶対水平線との交点によって特定した点を左右肩前の仮想基点とし、他方、後身頃の背中の背基点から左右肩前後の仮想基点までの間に形成される湾曲状の首筋ライン上に、後身頃の背中の背基点と左右肩後の仮想基点と標準体型着用者の標準的な左右肩後に特定した左肩後測定基点とを設定すると共に、湾曲状の首筋ラインは背広原形の衿の左右ラインに一致する背基点から左右肩後の仮想基点間の湾曲ラインとし、しかも、背基点から左右肩後の仮想基点までの首筋ライン上の長さと背基点から標準体型着用者の正しい標準的な左肩後測定基点までの首筋ライン上の長さの差を求め、その差を修正差数とすると共に、首筋ライン上の標準的な左右肩後に特定した左肩後測定基点から着用者の身体の背側を通る地上面までの長さと着用者の胸側を通る地上面までの長さとを計測し、各計測数の一方に前記修正差数を加算し他方の計測数から前記修正差数を減算することにより地上面からの修正長さを求めその修正長さの一致する首筋ライン上の地点を左右肩後基点とし、左右肩後基点を基にして修正した正しい左右肩前基点、あるいは首筋ライン中途の左肩後測定基点から一定の調整角度をもって袖孔の切欠前端部と結んだ線を左右の前肩稜線とし、修正した正しい左右肩後基点、あるいは首筋ラインの中途の基準地点からそれぞれの肩の傾斜角度をもって袖孔の切欠後端部と結んだ線を左右の後肩稜線とし、前肩稜線と後肩稜線とを接合縫製することにより構成したことを特徴とする背広原型の作成方法を提供するものである。
この発明によれば、通常の背広を作成するために必要とされる背広原型において、両肩部分に左右肩前後の仮想基点を一定の手法により特定し、この基点に着用者特有の体型を考慮して正しい基点を特定し、それを中心に肩傾斜や襟までの長さなどの背広に必要な各種寸法を算出し、背広原型、いわゆる型紙を作成するものであり、具体的には、左肩後の仮想基点の位置を、着用者の胸囲或は首回りの長さを修正することにより特定し、次いで、着用者の本来の背中心線上端とすべき背基点と左肩後の仮想基点との間の湾曲状の首筋ラインの長さによって、首筋ライン中途部の標準的な特定の左肩後測定基点から地上面までの胸側及び背中側を通る長さを増減修正して正しい左肩後基点を特定し、この正しい左肩後基点から正しい左肩前基点を特定し、なで肩やいかり型、猫背や反身などの着用者に固有の体型にフィットする服を制作することができると共に、かかる計測や背広の原型を表す型紙の制作も容易となり、人それぞれの体型に的確にフィットした背広原型を高度の熟練技を必要とせずに制作することができる効果がある。
かかる背広原型で制作した背広衣服は着用者に体型に的確にフィットし、しかも活動しやすい肩となっているため、着用時に首後部近辺や肩の前後に不要な皺を生起することなく左右腕の動きになじんでスマートな背広の着用姿勢を提供することができる効果がある。
特に、基点からの長さを基準にして首筋ラインに沿った左右肩前後基点を仮に特定し、その後地上面からの長さを測定してこの測定値を修正しながら正しい左右肩前後基点を特定し、この正しい左右肩前後基点を背広原型に必要な各種寸法の基準点としたため、背広の左右肩が背基点を中心として「やじろべえ」の原理を用いたバランスのとれた形態となり着用者のいかなる体型にもフィットすることができる効果がある。
本発明方法における背広原型の左半身パーツを示す展開図。 本発明方法における背広原型の右半身パーツを示す展開図。 本発明方法における背広原型の縫製後の立体的な側面図。 本発明方法における背広原型の縫製後の立体的な斜視図。 本発明方法における背広原型により制作した背広衣服の斜視図。 本発明方法における背広原型における左肩後基点の周辺を示す一部拡大図。 本発明方法における背広原型における左肩後基点の周辺を示す一部拡大図。 着用者の仮の左肩前後基点N,Mと地上面GLとの長さの測定状態を示す説明図。 基点設定メジャーの説明図。 高さ測定メジャーの説明図。 着用者の首にループ状の基点設定メジャーを吊下した説明図。 本発明方法における測定器の斜視図。 本発明方法における測定器の平面図。 本発明方法における測定器の平面図。 本発明方法における測定器を使用した状態の説明図。 本発明方法における測定器を使用した状態の説明図。 本発明方法における測定器を使用した状態の説明図。 本発明方法における測定器を使用した着用者の仮の左肩前後基点N,Mと地上面GLとの長さの測定状態を示す説明図。 着用者の胸幅や背幅の体型に合わせて左肩前後基点N,Mの位置を微調整する説明図。 本発明方法における背広原型を作成するプロセスを示すステップ説明図。
本発明の背広原型Xの実施例は、図1及び図2に示すように、基本的には、上着本体100を背中における着用者の本来の背中心線101´より左右に分けて形成した左半身パーツ1及び右半身パーツ2と、左右半身パーツ1,2の中央上部に上方を一部切欠して形成した略楕円形状の袖孔部3と、左半身パーツ1の前身頃前端縁部4を折り曲げ形成した衿部5と、袖孔部3の前方の胸幅部b3と、袖孔部3の下方の脇幅部b2と、袖孔部3の後方の背幅部b1とにより構成し、袖孔部3の切欠端部S同志および各左右半身パーツ1,2の背中心線101同志をそれぞれ接合縫製することにより形成している。
そして、特にかかる左右半身パーツ1,2の肩の部分に、各種の測定数値を修正しながら正しい左右肩前基点Nと左右肩後基点Mをそれぞれ特定すると共に、左右肩前基点N、あるいは首筋ラインの中途の基準地点から肩の傾斜角度θをもって袖孔部3の切欠前端部35と結んだ線を前肩稜線6とし、左右肩後基点M、あるいは首筋ラインの中途の基準地点から肩の傾斜角度θ´をもって袖孔部3の切欠後端部36と結んだ線を後肩稜線7とする。
そして、背広原型Xを作成するに際しては前肩稜線6と後肩稜線7とを接合縫製することにより立体的な背広原型X(図4に示す)が完成する。
なお、左右半身パーツ1,2は基本的に前身頃イと後身頃ロとにより構成されており、図1に示す左半身パーツ1によって説明すると、袖孔部3の後縁部を境にして、その前方を前身頃とし、その後方を後身頃とし、実際の裁断時には前後身頃イ、ロはそれぞれ別々に裁断してその後所定線で縫合して一体とする。
前身頃イと後身頃ロとの縫合線としては、「前肩稜線6と後肩稜線7」及び「縫い代y4」であり、これらの縫合により、前後身頃イ、ロが一体となり、左半身パーツ1が形成される。
以下は、本発明背広原型Xの構成中の左半身パーツ1に関する背広原型Xについて、型紙U作成の実施例を説明する。
(1)左肩後の仮想基点M´の特定(ステップS1,S2)
まず最初に左肩後の仮想基点M´の特定(ステップS1,S2)を行う。
左肩後の仮想基点M´は、背中部分の背中心線101上端に位置する点を背上端Oとし、「胸囲の長さの1/2(=P)に(0.177±0.005)を乗じ更に0.1を乗じた長さ」だけ外方に移動した点を背基点O´とし、背基点O´から「胸囲の長さの1/2Pに(0.177±0.005)を乗じた長さL1」だけ前方へ移動し、更に「移動点mから移動長さの1/4の長さL2」だけ上方に垂直に移動して特定した点である(ステップS1,S2)。
なお、仮の型紙Uにおいて、左肩前の仮想基点M´を特定する計測方法を説明したが、このように着用者の胸囲の長さPを基準とする以外にも着用者の首回りの長さPPを基準にする方法もある。
すなわち、「首回りの長さPPに「13」を加算し、その合計を6で除した数字」をL1とし、L1のm点からL1の4分の1の長さL2だけ上方に垂直に移動して、特定した点を左肩後の仮想基点M´とすることもできる。
すなわち、L1=(PP+13)÷6、L2=L1×1/4とする(ステップS1,S
2)。
左肩前の仮想基点N´は、前身頃前端縁部4から袖孔部3の前端縁の脇幅点Dに至る長さL3(F〜D)の(0.56±0.05)倍の位置の垂直点gの垂直線Gと、左右肩後の仮想基点M´からの絶対水平線vとの交点によって特定した点である。
以上、詳説したのは左半身パーツ1の各ラインに関するものであるが、右半身パーツ2についても全く同様であり、略左右対称に形成される(図2参照)。
(2)背基点O´の特定
背基点O´の位置は人体の骨格に対応させると、第7頚椎と第1胸椎の境の中央部分の点の位置とする。
この背基点O´を上記の人体骨格点に対応させ、この点を中心に肩の角度を測定し、実施例の左右肩後の仮想基点M´,M´、左右肩前の仮想基点N´,N´を決定し、後述する各種測定値や修正値により実際の正しい基点M,Nを決定して左右半身パーツ1,2をつくることにより、着用者が背広を着用して最も負担を感じない人それぞれの体型にフィットした背広原型ができるものである。
なお、第7頚椎とは、7個の椎骨のうちの1つであり、触感で後へ突出した長い棘突起により確認することができ、別称で隆椎とも言われている。この棘突起の下方に更に第1胸椎の棘突起が存在する。
頚部の動きによって上の棘突起(第7頚椎)は動くが、下の棘突起(第1胸椎)は不動である。
このように頚部の動きを行うことにより動く棘突起と動かない棘突起とを指で確認して、第7頚椎の位置と第1胸椎の位置を人体外部より特定することができる。
ここで、背中心線101の上端の背上端Oを用いるのではなく、着用者の本来の背中心線101´の背基点O´をすべての寸法の基点としたのは着用者が背広を着用した場合に、背中部分は左右湾曲面となっているため、湾曲面形成のためのゆとり部分を取る必要があり、そのため着用者本来の背基点O´をゆとり部分考慮の上で定めている。背上端Oと背基点O´との間は、L1×0.1(1/10)の長さとする。
(3)正しい左肩前後基点N,Mの特定の方法
(a)上記の方法で決定した左右肩後の仮想基点M´,M´、左右肩前の仮想基点N´,N´の位置は、着用者が反身、屈身などの特殊な体型のない標準、模範的な体型における位置であり、従って、この位置に着用者の個々の体型に合致した修正を施し正しい左肩前後基点N,Mの特定を行わなければならない。
そこで、着用者にとって最も着心地良好な背広の各種寸法の基準となる本来の「正しい左右肩後基点Mと左右肩前基点N」を決定するために、本実施例では着用者の身体の測定を行い仮想基点M´,M´及び仮想基点N´,N´を決定し、同時に標準的な基点としての「仮の左右肩後測定基点M−mと左右肩前測定基点N−n」を設定し、これらの各基点を基にして各種の修正要因を付加して「正しい左右肩後基点Mと左右肩前基点N」を導くという方法を採用した。
そのために、基点設定メジャー30と高さ測定メジャー40との二種類の器具を準備する。
(b)基点設定メジャー30は、図9に示すようにループ状の紐体31で構成し、ループ状の紐体31を仮想二等分したループ状の紐体31の中央位置には基点用重錘32を垂設し、紐体31の仮想二等分した他方の点、すなわち、該重錘32と正反対側に位置する地点を基準ポイントKPとしており、しかも、ループ状の紐体31においては中央の一方の点、すなわち、基準ポイントKPを中心として左右にmm或はcm等の長さを示す表示目盛33が表記されている。
高さ測定メジャー40は、図10に示すように長尺紐体41の一端に高さ用重錘42を連設し、該重錘42の底面からの長さを示すために長尺紐体41にmm或はcm等の長さを示す高さ表示目盛43を表記している。
高さ用重錘42は、後述するように地上面から仮の左右肩前後基点N,Mまでの長さを計測する際に長尺紐体41の張力を生起し、正確な長さ寸法を取得するためのものであり、土木工事の測量に使用する落下重錘と同様の機能を果す。
高さ測定メジャー40は、高さ用重錘42を用いることにより長尺紐体41の張力を利用して地上面(GL)から左右肩前後地点N,Mまでの長さを計測する器具であるが、後述するようにより簡便に、かつ正確に計測できるように電子機器を用いた地上高計測装置120を使用することができる。
上記のように構成された基点設定メジャー30と高さ測定メジャー40を用いた測定数値は、図11、図8に示すように用いられて「仮の左右肩前後地点N´,M´」を基本として着用者の体型にフィットする「正しい左右肩後基点Mと左右肩前基点N」の位置に修正するために使用されるものであり、そして最終的に左右肩後基点Mと左右肩前基点Nの正しい位置の型紙Uが作成される。
なお、基点設定メジャー30や高さ測定メジャー40で着用者の身体の測定を行う場合は、既着の背広は脱いでYシャツYa着用の状態でメジャー測定を行う。この理は前述した測定器Zによる肩の線の傾斜を測定する場合や後述する地上高計測装置120を使用して左右肩前後基点N,Mから地上面GLまでの距離を測定する場合も同様でありYシャツYa着用状態で測定機器を使用する。
(c)以下に、「仮の左右肩前後地点N´,M´」を基点設定メジャー30や高さ測定メジャー40を使用することにより着用者の特殊体型に合致した「正しい左右肩前後地点N,M」に修正する手順を説明する。
まず最初に、着用者の首にループ状の基点設定メジャー30を吊下する。この際、基点用重錘32が胸元に位置する状態とする。
この状態は、ループ状の紐体31が首から胸元にかけて配置吊下された状態であり、いわば背広の衿の左右ラインをループ状の紐体31の左右ライン34,34がなぞったV字形の紐体31軌跡が形成されたことになる。
この状態において、紐体31の背基点ポイントGPは、着用者の背基点O´の位置、すなわち骨格の第7頚椎と第1胸椎の境中央部の位置と一致している。
(d)次いで、首に吊下した紐体31において、この背基点O´に位置した背基点ポイントGPから左側方(ここでは左半身パーツ1作成のため)に向かって基準体型の「仮の基準寸法の9cmの離隔位置を仮の左右肩後測定基点M−m、左右肩前測定基点N−nとして設定する(当然に左右肩後測定基点M−mと左右肩前測定基点N−nは、互いに一致した一点として仮に定められている)(ステップS4)。
なお、仮の基準寸法の9cmは、平均的、標準的な着用者の仮の標準寸法である。
(e)そこで、着用者の左右肩後の仮想基点M´の仮位置を型紙U上で設定するために、段落番号[0023]に記載の様に着用者の本来の背中心線101´の背基点O´から胸囲の長さの1/2Pに(0.177±0.005)を乗じた長さL1を算出し、その分だけ前方へ移動し、更に移動点mから移動長さの1/4の長さL2だけ上方に垂直に移動し、その点を左右肩後の仮想基点M´とする。
すなわち、着用者の胸囲の長さの1/2Pを測定することにより必然的に左右肩後の仮想基点M´の位置は仮型紙上で特定されたことになり、これを基にして仮型紙上で背基点O´と左右肩後の仮想基点M´間の湾曲線の首筋ラインWNの長さrcm(換言すれば、着用者の首に吊下した基点設定メジャー30における基準ポイントKPから左側方向へ移動する仮想基点M´の位置までの長さ)を算出する(ステップS3)。
この首筋ラインWNの長さrcmの位置が着用者に対する実測による左右肩後の仮想基点M´及び左右肩前の仮想基点N´の位置である。
この基点M´,基点N´の位置は反身や猫背のない理想的な直立不動の標準体型を有する着用者の場合の計算上の位置であるため、着用者の体型の特殊性によりこの基点M´,基点N´の位置を着用者本人に適合した正しい左右肩前後基点N,Mに修正する作業を行わねばならない。この修正作業を以下に説明する。
すなわち、型紙Uにおいて、左肩後の仮想基点M´の位置を、段落番号[0023]で説明したように、背基点O´から、実測した着用者の胸囲の長さの1/2Pに(0.177±0.005)を乗じた長さL1だけ前方へ移動し、更に、移動点mから移動長さの1/4の長さL2だけ上方に垂直に移動した点、あるいは、首周りから測定して特定した点として仮決定している。特に背基点O´と左肩後の仮想基点M´との間を結んだ曲線を首筋ラインWNとした場合、この湾曲線の首筋ラインWNは、首に吊下した基点設定メジャー30の紐体31の襟ラインと一致した形状となるため、とりあえず、「背基点O´から首筋ラインWNの仮の基準寸法9cmの位置」を標準的着用者の左肩における仮の標準的な左肩後測定基点M−mの位置とした(ステップS4)。
他方、型紙Uにおける計算上の首筋ラインWNの長さrcmは、着用者の胸囲実測から上記の計算(段落番号[0023]の計算)により導いた計算上の客観的な長さであり、従って本来、反身や猫背のない完全な標準的体型の着用者の場合には、この湾曲長さrcmがループ状の紐体31における背基点O´からの本来の正しい左肩後基点Mに至る長さであると言える。
しかし、当然にこの正しい基点までの長さの設定は着用者の反身、猫背などの特殊性を考慮した位置とはなっていないため正しい左肩後基点Mの位置と異なっている
従って、着用者の反身、猫背などの特殊性を考慮して着用者の体型のどの地点が正しい左肩前後基点N,Mであるかを決定する必要がある。
そこで、型紙U上で本来の正しい左肩後基点Mの位置を決定するために、紐体31の基準寸法9cmの位置に設定した仮の標準的な左肩後測定基点M−mの位置において地上面(GL)から着用者の背中側と胸面側で長さを測定する(ステップS6)。
地上面(GL)から仮の左右肩後測定基点M−m及び仮の左右肩前測定基点N−nまでの長さを高さ測定メジャー40により測定するが、これは次のようにして行われる。すなわち、地上面(GL)から仮の左右肩後測定基点M−mまでの長さαは着用者の背中側(後側)において測定し、地上面(GL)から仮の左右肩前測定基点N−nまでの長さβは着用者の胸面側(前側)において測定する(ステップS6)。
なお、高さ測定メジャー40の代わりに前述の地上高計測装置120を用いて、地上面(GL)から仮の左右肩後測定基点M−mまでの長さαと、仮の左右肩前測定基点N−nまでの長さβを計測することができるものであり、地上高計測装置120の構造は次のように構成されている。
地上面(GL)から仮の左右肩後測定基点M−mまでの長さαは、着用者の背中側(後側)に沿った長さを測定し、地上面(GL)から仮の左右方前測定基点N−nまでの長さβは、着用者の胸面側(前側)に沿った長さを測定するものであるが、そのためには前述した着用者の肩の傾斜角度測定に用いる弯曲フレーム100aを利用する。
すなわち、測定器Zにより肩稜線の傾斜角度を測定するに際に弯曲フレーム100aを着用者の後首筋Kに定置し、弯曲フレーム100aの自由端部を、仮の左右肩前後測定基点(N−n,M−m)に合わせて定置して左右傾斜板104,105の搖動角度により肩稜線の角度を測定するものであるから、かかる弯曲フレーム100aの首筋装着状態において、弯曲フレーム100aの左右自由端部位置100a´,100a´´、すなわち仮の左右肩前後測定基点(N−n,M−m)位置から地上面(GL)までの背・胸部に沿った長さα,βを測定するために電子機器を用いた地上高計測装置120を用いることができる。
地上高計測装置120は、弯曲フレーム100aの左右自由端部に、上半部測定メジャー121の上端を連設し、該メジャー121の下端に反射機能付垂錘122を設けて構成している。
上半部測定メジャー121は着用者の背、胸部に沿うように可撓姓素材により構成し、かかる可撓性の上半部測定メジャー121は下端が略胸側或は背中側の途中に至る短尺の長さとしており、仮の左右肩前後測定基点(N−n,M−m)から下方に吊下される。
反射機能付垂錘122は垂錘ケース123下端面に赤外線や超音波等を反射する発信部124−1とこれらの反射を受信する受信部124−2とが設けられている。
従って、予め上半部測定メジャー121の長さを短尺に設定、例えば1mに設定しておけば、この該メジャー121を仮の左右肩前後測定基点(N−n,M−m)から着用者の胸部や背中部に沿って吊下しやすく、次いで該メジャー121の下端の反射機能付垂錘122から発信された赤外線等の地上面(GL)からの反射時間を測定することにより反射機能付垂錘122から地上面(GL)までの距離が測定されることになり、この距離に上半部測定メジャー121長さを加算した長さが、着用者の仮の左右肩前後測定基点(N−n,M−m)から着用者の胸側或は背中側に沿って地上面に至る長さα或はβということになる。
すなわち、短尺の上半部測定メジャー121により簡便にかつ、容易、正確に仮の左右肩前後測定基点(N−n,M−m)から着用者の胸側や背中側に沿った地上面(GL)までの長さを測定することができる。
ここで、着用者が前屈姿勢の体型(いわゆる猫背型)の場合は、α>βとなる。
GL〜M−m=α、GL〜N−n=βとすれば、αとβの差は、仮の標準寸法の9cmで仮定した仮の左右肩後測定基点M−m、仮の左右肩前測定基点N−nの位置修正(すなわち、正しい基点M、基点Nへの修正)の要因として用いる。
次いで、その差(αとβとの差)を求め、このαとβの差を仮の仮想基点M´の位置修正に用いる(ステップS7)。
そのためには、予めステップS6のα,βの測定のに仮の基準寸法9cmと計算上の首筋ラインWNの長さとの差(LX)すなわち、修正差数(仮に首筋ラインWNの長さが8.5cmであるとすると9cm−8.5cm=0.5cm)を求める(ステップS5)。
そしてこの修正差数の0.5cmの差(LX)を計算上の左右肩前後の仮想基点M’,N’の変動要因として用いる。(ステップS7)。
すなわち、背中側の測定値であるから屈身の着用者の場合は、αに0.5cmのLXを加算し、βから0.5cmのLXを減算し、新たなα’β’数値を計算上の左右肩前後の仮想基点M´、N´に加味して、その結果、反身、猫背などの特殊性を有する着用者の実寸を基にした正しい左肩後基点M、左肩前基点Nの位置を決定することができる。
正しい左肩後基点Mが特定されれば、左肩前基点Nの位置特定は段落番号[0024]に説明したように、前身頃前端縁部4から袖孔部3の前端縁の脇幅点Dに至る長さL3(F〜D)の(0.56±0.05)位の位置の垂直点gの垂直線Gと、すでに一特定が行われた左肩後基点Mからの絶対水平線vとの交点によって特定される。
従って、型紙Uでは、仮の左肩後測定基点M−mの地上高(α)に修正を加えてα’とし、その分だけ後身頃の上部が上方に伸長した形状或は体型により下方に短縮した形状となり、これと同様に仮の左肩前測定基点N−nの地上高(α)に修正を加えて、修正分だけ前身頃イの上部が上下方に伸縮した形状となる。そこではじめて、正しい左肩前後基点N,Mが特定されたことになる。
なお肩の傾斜角度θ,θ´を出すためには、予め設定した基準寸法9cmの点の仮の測定基点M−m,N−nから肩の傾斜角度を計測する。すなわち、左肩前測定基点N−nから一定の調整角度、すなわち肩の傾斜角度θをもって袖孔部3の切欠前端部と結んだ線を左の前肩稜線6とし、左肩後基点Mから一定の調整角度、すなわち肩の傾斜角度θ´をもって袖孔部3の切欠後端部と結んだ線を左右の後肩稜線7としている(ステップS8)。
かかる肩の傾斜角度の測定時期は本実施例では図20のステップS8のタイミングで説明したが、例えば図20のステップS4とステップS5の間で測定しても良い。すなわち、基準寸法9cmの点を仮の測定基点M−m,N−nとして設定した後に肩の傾斜角度θ,θ´を測定しても良い。
ここで、左肩前測定基点N−nから一定の傾斜角度θの前肩稜線6と左肩後測定基点M−mから一定の傾斜角度θ´の後肩稜線7は通常の標準角度では23度の調整角度とするが、実際は着用者の肩の線を分度器等の測定器で計測することにより決定する。
ここで、図12〜図14に示すように、着用者の肩の線を分度器等の測定器で計測するに際しては、簡易に、かつ正確に計測できる測定器Zを発明者は考案した。
すなわち、図12〜図14に示すように、まず着用者の後首まわりに沿って装着載置可能な弯曲フレーム100aを設け、弯曲フレーム100aの両端100a´,100a´´は、仮特定した左肩後の仮想基点M´及び左肩前の仮想基点N´の合致した位置と、同じく仮特定した右肩後の仮想基点M´及び右肩前の仮想基点N´の合致した位置とにそれぞれ対応するように構成する。
仮の左右肩前後の仮想基点N´,M´点はその位置が着用者の骨格や肩幅等によって左右に変位するものであるため、弯曲フレーム100aは左右に伸縮自在の構造としており、例えば左半弯曲部101aと右半弯曲部102aとは別体とし、一方の弯曲部101a又は102a基端中に他方の弯曲部101a又は102aを基端が差し込み自在な伸縮機構としている。
なお、弯曲フレーム100aの断面形状は、着用者の後首まわりに沿って載置可能なように下端面は図14に示すA部側面視のようにやや傾斜変曲面wxとして後首まわりに可及的に密着した形状とする。
また、弯曲フレーム100aの左右端部には肩稜線の傾斜角を測定するための左右傾斜板104,105を搖動自在に連設している。
すなわち、弯曲フレーム100aの左右端部に左右傾斜板104,105の基端を枢軸106を介して枢支している。
左右傾斜板104,105は枢軸106を中心として搖動するためにその搖動による絶対的な傾斜角を測定するために、枢軸106の部分に絶対水平位置からの傾斜角度を測定するための測定目盛107を付している。
なお、測定目盛107には水平レベラー(図示せず)を付設しており、水平レベラー103により絶対水平位置を検出するように構成し、この絶対水平位置から換算して傾斜角度を検知する。
また、左右傾斜板104,105の傾斜角を測定するためには、上記の測定目盛107のかわりにデジタル表示部を設け、左右傾斜板104,105の搖動を電気的に検知して傾斜角度をデジタル表示部に表示するように構成することもできる。この場合は、弯曲フレーム100a内に電源部や制御部やレベラー機構を内蔵しておき、左右傾斜板104,105の搖動を電気的に検出し、左右傾斜板104,105の傾斜角度を表示するように構成するものである。
使用に際しては、図15〜図18に示すように、弯曲フレーム100aを着用者の後首筋Kに定置して、該フレーム100aの左右端部を左右肩後基点M,Mと左右肩前基点N,Nとの合致点に合わせて位置せしめ、次いで左右肩後基点M,Mと左右肩前基点N,Nの位置から左右肩稜線上に左右傾斜板104,105を載置し、枢軸106を中心として傾動する左右傾斜板104,105の傾斜角を測定目盛107や電気的検出方法により測定する。
(4)バストラインB、ウエストラインW,ヒップラインH、裾ラインJについて
左半身パーツ1は、上端縁から一定の距離にバストラインB、ウエストラインW、ヒップラインH及び裾ラインJを形成している。
バストラインBは、着用者の本来の背中心線101´の背基点O´から、胸囲の長さの1/2Pに約0.45を乗じた長さだけ下方に位置したバスト点Cからの横線にゆとりとして示している(O´〜C=P×0.45)。
ここで胸囲の長さの1/2Pは、実際の測定した胸囲の1/2P´に(6cm±2)cmを加算した数値である(P=P´cm±(6cm±2))。
なお、O´〜Cの縦長さを背丈Kとする。
実際には、O´〜Cの背丈Kの線に横幅のゆとりy1を設けるため、胸囲の長さの1/2Pに約0.15と約0.1を乗じた地点に背基点O´を背中心線101から拡幅している(O〜O´=P×0.15×0.1)。
同様にバストラインBのバスト点Cからも2cmのゆとりy2を形成している。
バストラインBのバスト点Cからゆとりy1をとったC´(バストゆとり点)から、胸囲の長さの1/2Pに約0.38を乗じた長さの地点、すなわち袖孔部3の後端縁に至る点を背幅点Eとする(C´〜E=P×約0.38)。
なお、C´〜Eの横幅を背幅部b1とする。
バストラインBにおける袖孔部3の後端縁位置の背幅点Eから胸囲の長さの1/2Pに約0.25を乗じた長さの点、すなわち袖孔部3の前端縁に至る点を脇幅点Dとし、D〜Eの横幅を脇幅部b2とする。
なお、E〜Dには、前身頃と後身頃との接合部分の縫い代y4の幅員(5mm)及び前身頃の袖孔部3下方の脇ダーツy3の幅員(15mm)を含む(E〜D=P×0.25+20mm)。
上着本体100の前身頃イの前端縁のボタン位置をボタン点Fとし、胸囲の長さの1/2Pに約0.37を乗じた長さがD〜Fの横幅となり、これを胸幅部b3とする(D〜F=P×約0.37)。
バストラインBにおいて、D〜Fの中間でD〜Fの長さに約0.56を乗じた長さの点を垂直点gとし、垂直点gの垂直線G上端が左肩前基点Nとなる。
ウエストラインWは、バストラインBとヒップラインHとの中間点、すなわち、(B〜H)×1/2のウエスト点Iの横線である。ヒップラインHは、着丈、すなわち背基点O´から裾ラインJまでの長さに約0.184を乗じた長さのヒップQ点における横線である。
なお、図中、y5は、衿下方のゆとりを示す前ダーツである。
また、Rは、胸ポケットを示す。
5´は、衿部5の上端部に連設して縫合した首衿部であり、前後肩稜線6,7以外の背幅部b1の上端部(5”)に連設縫合される。
また、裾ラインJは、前身頃の裾ラインJ1を約1.5cm前下りとし、着用時に裾ラインJが全体的に水平に見えて背広全体の見栄えを良好とする。
左右半身パーツ1,2を縫合して背広原型Xを製作する場合、好みで着用者の体形にピッタリとフィットするように構成するか、ゆったりと構成するかは、胸囲の長さPの数値で調整する。
すなわち、上記実施例では、P=P´+(6±2)として説明したが、(P=P´+4)から(P=P´+9)の範囲で調整することができ、Pがこのように調整されると、Pに関係するO〜C、O〜O´、C´〜E、E〜D、D〜F、M、Nの数値や位置が変化していく。
(5)寸法表(ステップS9)
実際に左半身パーツ1を作成するためには、着用者の体型の寸法の測定を行わねばならない。
図7に示すのは、測定寸法の記入用の寸法表10であり、次のような欄が設けられている。
すなわち、測定日時欄11、着用者の名前欄12、反身か屈身かの区別とその寸法を記載する体型欄13、
左右肩前基点Nからの肩の傾斜角度を記入する欄14、左右肩後基点Mからの肩の傾斜角度を記入する欄15、
左右肩前基点Nからの傾斜角度と左右肩後基点Mからの傾斜角度との和に1/2を乗じた平均角度を記入する欄16、
左右肩前基点Nを特定するために(F〜D)の長さLと(0.56±0.05)を乗じた数字を記入するN点寸法欄17、
左右肩後基点Mを特定するために胸囲の長さPの1/2に(0.177±0.005)を乗じた数字L1およびL1に1/4を乗じた数字L2を記入するためのM点寸法欄18、
背基点O´から胸囲の長さの1/2Pに0.45を乗じた長さだけ下方に位置したCまでの長さを記入する背丈寸法欄19、
実際の胸囲P´にゆとりとしての余裕寸法を加算した数値を記入する胸囲寸法欄20、
実際に測定したバストラインBにおける胸幅部b3の寸法を記入する胸幅欄21、
バストラインBにおける脇幅部b2の寸法を記入する脇幅欄22、
バストラインBにおける背幅部b1の寸法を記入する背幅欄23、
ウエストラインWにおける寸法を記入するウエスト寸法欄24、
ウエストラインWにおける前身頃イの幅寸法を記入するウエスト前幅欄25、
ウエストラインWにおける後身頃ロの幅寸法を記入するウエスト後幅欄26、
実際に測定したヒップラインHにおける寸法を記入するヒップ前幅欄27、
ヒップラインHにおける前身頃イの幅を記入するヒップ前幅欄28、
ヒップラインHにおける後身頃ロの幅を記入するヒップ後幅欄29
等の各欄が寸法表10に設けられている。
以上のように本発明の実施例では正しい左肩前後基点N,M、右肩前後基点N,Mが反身、屈身、いかり肩、なで肩等各種の体型に合致した最適位置に決定されるために左右両肩部分が背基点O´を中心に左右釣り合った「やじろべえ」(スイング作用)のバランスをとることができ、外観的な見た目も、また着用者の活動に関してもスマートで無理のない背広を提供することができる。
すなわち、「やじろべえ」は、中心点を設定して左右の重さで釣り合いがとれるように構成しており、中心点をバランス点として左右揺動しながらも左右のいずれにも傾斜転倒しないバランスを保持する。
背広は、左右肩前後基点N,Mからの肩の傾斜角度θ、θ´と、地上面(GL)から左右肩前後基点N,Mまでの背中側の長さα及び地上面(GL)から左右前後基点N,Mまでの胸側の長さβとが、それぞれ背広着用者の体型に合致したときに背基点O´を中心とした「やじろべえ」と同じ左右バランス機能が生じる。そして、外観的にも着心地的にも最も着用者にフィットした背広となる(ステップS11,12)。
また、上記した寸法採取により正しい左右肩前後基点N,Mを設定してこの左右肩前後基点N,Mを基準として各種の寸法調整をすることにより各種体型に適合した型紙の作成し、着心地の良い背広を作成することができる。しかし、上記した左右肩前後基点N,M設定に基づき猫背、反身等に合致した体型の型紙は作成できるが、特定の特殊体型の着用者には適合できない部分がある。
すなわち、着用者の背中部分や胸部分の幅員や隆起の大小がある場合、換言すれば、胸の張った人や胸の縮こまった人の場合には、必然的に前身頃イと後身頃ロの幅員が標準寸法の着用者のそれと異なることに注目しなければならない。
そこで、着用者の胸幅や背幅の体型に合わせて左右肩前後基点N,Mの位置を微調整するものであり、前身頃イ、後身頃ロの長さが同じ状態でも左右肩前後基点N,Mを平行移動すれば前身頃イ、後身頃ロに上下運動が生起する。
すなわち、図19に示す型紙の寸法図において左右肩前後基点N,Mをεの長さ(例えば5mm)だけ平行移動して微調整した新たな左右肩前後基点N−1,M−1とを基準点として各種の寸法を採取して型紙を作成する。
例えば、左右肩前基点Nを図19に示すように左方向に5mm移動させ新たな左右肩前基点N−1を基点とすると、前身頃イの面積はその分広くなり、前身頃イに上方運動が生起する。
左右肩後基点Mを図19に示すように右方向へ5mm移動させ新たな左右肩後基点M−1とすると、後身頃ロの面積はその分広くなり、前身頃イに上方運動が生起する。
また、左右肩前基点Nを図19に示すように右方向に5mm移動させ新たな左右肩前基点N−1とすると、前身頃イの面積はその分狭くなり前身頃イに下方運動が生起する。
左右肩後基点Mを図19に示すように左方向へ5mm移動させ新たな左右肩後基点M−1とすると、後身頃ロの面積はその分狭くなり、後身頃ロに下方運動が生起する。
このように左右肩前後基点N,Mをεの長さだけ移動して微調整し、新たな左右肩前後基点N−1,M−1を基準点とすることにより胸幅、背中幅の調整を行うことで上下運動が起き「やじろべえ」(スイング作用)で重要な背基点O´を定めることができ、更に体型にフィットした着心地のよい背広を提供することができる。
なお、この「やじろべえ」(スイング作用)は肩の左右方のみならず、肩の前後方にも生起するものであり、肩を中心に左右横方向、前後方向で背基点O´を中心のスイング作用の状態で背広原型を仕立てるため、着用者の体型にフィットした着心地のよい背広とすることができる。
100 上着本体
101 背中心線
101´ 本来の背中心線
1 左半身パーツ
2 右半身パーツ
3 袖孔部
35 切欠前端部
36 切欠後端部
4 前身頃前端縁部
5 衿部
6 前肩稜線
7 後肩稜線
10 寸法表

U 型紙
b1 背幅部
b2 脇幅部
b3 胸幅部

N´,N´ 左右肩前の仮想基点
M´,M´ 左右肩後の仮想基点
N,N 左右肩前基点
M,M 左右肩後基点
P 胸囲の長
O 背上端
O´ 背基点
A 背広原型
m 移動点
g 垂直点
r 湾曲長さ
GL 地上面
θ 前傾斜角度
θ´ 後傾斜角度
v 絶対水平線
S 切欠
30 基点設定メジャー
31 ループ状紐体
32 重錘
KP 基準ポイント
33 表示目盛
GP 背基点ポイント
40 高さ測定メジャー
41 長尺紐体
42 高さ用重錘
43 表示目盛
WN 首筋ライン
α 地上面GLから左右肩後測定基点M−mまでの長さ
β 地上面GLから左右肩前測定基点N−nまでの長さ

Claims (1)

  1. 上着本体を背中部分の背中心線より左右に分けて形成した左半身パーツ及び右半身パーツと、左右半身パーツの中央上部に上方を一部切欠して形成した略楕円形状の左右袖孔部と、左半身パーツ本体の前端縁部に形成した衿部と、袖孔部の前方の胸幅部と、袖孔部の下方の脇幅部と、袖孔部の後方の背幅部とにより構成し、左右袖孔部の一部切欠端部同志および各左右半身パーツの背縫線同志をそれぞれ接合縫製することにより形成する背広原型において、着用者の本来の背中心線上端とすべき背基点から、胸囲の長さの1/2に(0.15〜0.20)を乗じて算出した長さあるいは首周りの長さに(10〜15)を加算し、その合計を(5〜7)で除して算出した長さだけ前方へ移動し、更に移動した点から移動長さの1/4の長さだけ上方に垂直に移動して特定した点を左右肩後の仮想基点とし、前身頃前端縁から袖孔部の前端縁に至る長さの0.5〜0.6倍の位置の垂直線と、左右肩後の仮想基点からの絶対水平線との交点によって特定した点を左右肩前の仮想基点とし、
    他方、後身頃の背中の背基点から左右肩前後の仮想基点までの間に形成される
    湾曲状の首筋ライン上に、後身頃の背中の背基点と左右肩後の仮想基点と
    標準体型着用者の正しい標準的な左右肩後に特定した左肩後測定基点とを設定すると共に、
    湾曲状の首筋ラインは背広原形の衿の左右ラインに一致する背基点から左右肩後の仮想基点間の湾曲ラインとし、
    しかも、背基点から左右肩後の仮想基点までの首筋ライン上の長さと背基点から標準体型着用者の正しい標準的な左肩後測定基点までの首筋ライン上の長さの差を求め、その差を修正差数とすると共に、
    首筋ライン上の標準的な左右肩後に特定した左肩後測定基点から着用者の身体の背側を通る地上面までの長さと着用者の胸側を通る地上面までの長さとを計測し、各計測数の一方に前記修正差数を加算し他方の計測数から前記修正差数を減算することにより地上面からの修正長さを求めその修正長さの一致する首筋ライン上の地点を左右肩後基点とし、
    左右肩後基点を基にして修正した正しい左右肩前基点、あるいは首筋ライン中途の左肩後測定基点から一定の調整角度をもって袖孔の切欠前端部と結んだ線を左右の前肩稜線とし、修正した正しい左右肩後基点、あるいは首筋ラインの中途の基準地点からそれぞれの肩の傾斜角度をもって袖孔の切欠後端部と結んだ線を左右の後肩稜線とし、前肩稜線と後肩稜線とを接合縫製することにより構成したことを特徴とする背広原型の作成方法。
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