以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態のループアンテナアレイは、磁界アンテナの一種であるループアンテナを複数備えるものである。
ループアンテナアレイが形成する低周波磁界(およそ10MHz以下の磁界)は、人体または周囲環境との相互作用が電界と比べて著しく低いという特徴を有する。したがって、明瞭な通信エリアの境界を形成するための通信媒体に適している。ループアンテナアレイを用いて、通信エリアの境界で磁界強度が急激に減衰するようなシャープな磁界強度の分布を形成できれば、通信エリアを限定した無線通信システムの信頼性を高めることができる。
一般的に磁界エリアの形成に使用されている磁界アンテナは、巻数が1のループアンテナである。
図1は、巻数が1のループアンテナの一例を示す図である。例えば、ループアンテナの+端子は交流電源Eの信号端子に接続され、−端子は交流電源EのGND端子に接続される。これにより、ループアンテナには交流の電流が流れる。
図2は、ループアンテナからz軸方向に離れた距離(z[cm])と磁界強度[dBμV/m]の関係を示す図である。
図2にシングルループとして示す特性は、巻数が1のループアンテナが形成する磁界強度の特性であり、磁界強度の減衰率は、60dB/decである。磁界強度の減衰率は、通信エリアの境界の明瞭さを表す指標であり、磁界強度の減衰率が高いほど、通信エリアの境界は明瞭と言える。
図3は、巻数が1のループアンテナが形成する磁界強度の分布を示す図であり、横軸は図1のx軸方向、縦軸は図1のz軸方向を示す。磁界強度の等高線は、5dB(詳しくは、5dBμV/m)の間隔(5dB/div)で記載されている。
図3に示すように磁界強度の等高線は曲線状である。つまり、磁界エリアの形状が曲面になってしまう。このため、巻数が1のループアンテナでは、直線的かつ明瞭な通信エリアの境界を形成することが困難である。
直線的かつ明瞭な通信エリアの境界を形成するには、例えば、図2に示す100dB/decの磁界強度の減衰率が必要である。
図4は、100dB/decの磁界強度の減衰率を得るためのループアンテナアレイの一例を示す図である。
このような磁界強度の減衰率は、図4に示すように4つのループアンテナ1、2A、2B、3を備えるループアンテナアレイにより得ることができる。ループアンテナ1、2A、2B、3は直線上に配置され、中央に配置された2つのループアンテナ2A、2Bには同じ向きの電流が流れ、両端に配置された2つのループアンテナ1、3には、中央に配置されたループアンテナ2A、2Bとは逆向きの電流が流れる。
1つのループアンテナは磁気双極子とみなせる。双極子であるループアンテナ1と2Aには等量かつ逆向きの電流が流れるので、ループアンテナ1と2Aは全体として4重極子とみなせる。また同様に、ループアンテナ2Bと3も全体として4重極子とみなせる。このような考えを推し進めると、図4のループアンテナアレイは、2つの4重極子を逆向きに並べているので、8重極子とみなすことができる。
図2にクワッドループとして示す特性は、図4に示すループアンテナアレイの特性であり、磁界強度の減衰率は、100dB/decである。
図5は、このような4つのループアンテナが形成する磁界強度の分布を示す図である。磁界強度の等高線は、5dBの間隔(5dB/div)で記載されている。
図5は、図3の分布と比べ、磁界強度の等高線の一部が直線的になっている。すなわち、直線的かつ明瞭な磁界エリアが形成されていることがわかる。よって、図4のループアンテナアレイにより、直線的かつ明瞭な通信エリアの境界を形成できる。
しかし、図4のループアンテナアレイの構成では、4つものループアンテナが必要になるため、ループアンテナアレイが複雑かつ高価になるという問題がある。
[第1の実施の形態]
図6は、第1の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図である。
図6に示すように、第1の実施の形態のループアンテナアレイは、両端に配置されたループアンテナ1、3と、中央に配置されたループアンテナ2とを備える。各ループアンテナ1〜3の中心は、例えば同一直線上に配置され、ループアンテナ1、2の中心間の距離と、ループアンテナ2、3の中心間の距離は同一となっている。つまり、隣接するループアンテナの中心間の距離は同一となっている。
各ループアンテナ1〜3は、導体をループ状に形成したものであり、例えば、図示しない平面基板の同一面、すなわち同一平面(図のxy平面)上に形成される。後述のループアンテナアレイも同様に同一平面上に形成することができる。
各ループアンテナ1〜3は、例えば、同一形状であり、形状は円である。なお、形状は、同一でなくてもよく、形状は円以外でもよい。これは後述のループアンテナアレイでも同様である。
各ループアンテナ1〜3の巻数は同一であり、例えば、巻数は1である。なお、巻数は2以上でもよい。
例えば、両端に配置されたループアンテナ1、3に囲まれた領域の面積は同一であり、中央に配置されたループアンテナ2に囲まれた領域の面積は、両端に配置された各ループアンテナ1、3に囲まれた領域の面積の2倍である。
ループアンテナ1〜3は、例えば、連続した導線LNで形成される。導線LNの一方端である+端子は、交流電源Eの信号端子に接続され、導線LNの他方端である−端子は、交流電源EのGND端子に接続される。このように全てのループアンテナ1〜3が連続した導線で形成されているので、1つの交流電源Eにより全てのループアンテナに電流を供給できる。なお、電流の大きさは任意であり、必要な通信エリアの大きさなどに応じて設定すればよい。
例えば、ループアンテナ1、2間の導線LNは交差し、ループアンテナ2、3間の導線LNは交差し、これにより、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の向きと、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の向きとが逆となっている。
つまり、交流電源Eの信号端子がプラス電圧のタイミングでは、各ループアンテナ1〜3を貫通する方向、つまりz軸方向に見て、ループアンテナ1、3に時計回りの電流が流れ、ループアンテナ2には反時計回りの電流が流れる。逆に、交流電源Eの信号端子がマイナス電圧のタイミングでは、ループアンテナ1、3に反時計回りの電流が流れ、ループアンテナ2には時計回りの電流が流れる。
なお、全てのループアンテナ1〜3が、連続した導線LNで形成されているので、各ループアンテナ1〜3に流れる電流の大きさは同一である。
一般に、ループアンテナが遠方に生成する磁界強度の振幅は、磁気双極子モーメントベクトル(以下、磁気モーメントという)の大きさ(絶対値)mに比例する。mは次式で与えられる。
m=N・I・S
Nはループアンテナの巻数、Iはループアンテナに流れる電流の大きさ、Sはループアンテナに囲まれた領域の面積であり、mの方向は、電流の回転方向に対して右ネジの方向である。
第1の実施の形態では、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の向きと、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の向きとが逆で、各ループアンテナ1〜3に流れる電流の大きさが同一であり、各ループアンテナ1〜3の巻数が同一であり、中央に配置されたループアンテナ2に囲まれた領域の面積が、両端に配置された各ループアンテナ1、3に囲まれた領域の面積の2倍である。よって、中央に配置されたループアンテナ2の磁気モーメントの大きさmは、両端に配置された各ループアンテナ1、3の磁気モーメントの大きさmの2倍である。中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の向きと、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の向きとが逆なので、中央に配置されたループアンテナ2の磁気モーメントの方向と、両端に配置された各ループアンテナ1、3の磁気モーメントの方向は逆である。つまり、方向を考慮すると、各ループアンテナ1〜3の磁気モーメントの総和はゼロとなる。このように、ループアンテナアレイ全体の磁気モーメントの総和をゼロにすることにより、遠方での磁界強度を小さくすることができる。言い換えると、遠方での磁界を急激に減衰させることができる。
第1の実施の形態のループアンテナアレイは、図4に示すループアンテナアレイのループアンテナ2A、2Bをループアンテナ2に置き換えたものと考えることができる。つまり、第1の実施の形態のループアンテナアレイは、図4のループアンテナアレイ、つまり2つの4重極子を逆向きに並べた8重極子と同等であり、図4のループアンテナアレイの効果と同等の効果が得られる。
図2にトリプルループとして示す特性は、第1の実施の形態のループアンテナアレイが形成する磁界強度の特性であり、磁界強度の減衰率は、100dB/decである。つまり、その磁界強度の減衰率は、クワッドループとして示す、図4のループアンテナアレイの磁界強度の減衰率と同等である。つまり、図4のループアンテナアレイと同様に、明瞭な通信エリアの境界を形成できる。
図7は、第1の実施の形態のループアンテナアレイが形成する磁界強度の分布を示す図であり、横軸は図6のx軸方向、縦軸は図6のz軸方向を示す。磁界強度の等高線は、5dBの間隔(5dB/div)で記載されている。図5に示す磁界強度の分布と比較すると、第1の実施の形態のループアンテナアレイが形成する磁界強度の分布は、図5に示す磁界強度の分布とほぼ同等であり、磁界強度の等高線の一部は直線的になっている。
図4に示すループアンテナアレイのアンテナ数は4であるが、図6に示す第1の実施の形態のループアンテナアレイのアンテナ数は3である。
アンテナ数が少ないながらも、第1の実施の形態のループアンテナアレイは、図4に示すループアンテナアレイと同様に、明瞭な通信エリアの境界を形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。すなわち、巻数が1のループアンテナでは形成できない明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。
以上のように、第1の実施の形態のループアンテナアレイによれば、巻数が1のループアンテナでは形成できない明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。
なお、磁界強度の分布の形状は、ループアンテナの形状には依存しない。よって、ループアンテナの形状は、例えば、円形、正方形、長方形、楕円形、扇形、三角形、半円形、螺旋形、弦巻線形のいずれかであってもよい。ループアンテナの形状は、電流を流した際に磁気モーメントが形成されるものであればよい。これは後述のループアンテナアレイでも同様である。
例えば、図8に示すように、円形(例えば、ループアンテナ1)、正方形(例えば、ループアンテナ2)、長方形(例えば、ループアンテナ3)を混在させたループアンテナアレイとしてもよい。すなわち、3つのループアンテナ1〜3は全て同じ形状であっても、異なる形状であってもよい。
(第1の実施の形態の変形例1)
また、全てのループアンテナを、連続した導線で形成しなくてもよい。これは後述のループアンテナアレイでも同様である。例えば、第1の実施の形態において、ループアンテナ1〜3は、連続した導線LNで形成しなくてもよい。例えば、図9(a)に示すように、各ループアンテナ1、2、3に+端子と−端子を設ける。そして、ループアンテナ1、3の+端子とループアンテナ2の−端子を交流電源Eの信号端子に接続し、ループアンテナ1、3の−端子とループアンテナ2の+端子を交流電源EのGND端子に接続する。これにより、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の向きと、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の向きとが逆になる。そして、磁気モーメントの総和はゼロになる。
(第1の実施の形態の変形例2)
または、図9(b)に示すように、各ループアンテナ1、2、3に+端子と−端子を設けるとともに、2つの交流電源E1、E2を設ける。そして、ループアンテナ1、3の+端子と−端子をそれぞれ交流電源E1の信号端子とGND端子に接続し、ループアンテナ2の+端子と−端子をそれぞれ交流電源E2の信号端子とGND端子に接続する。そして、交流電源E1の信号端子がプラス電圧のとき、交流電源E2の信号端子がマイナス電圧となるように同期をとる。これにより、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の向きと、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の向きとが逆になる。そして、磁気モーメントの総和はゼロになる。
(第1の実施の形態の変形例3)
図10は、第1の実施の形態における磁界強度の減衰率とz軸方向の規格化距離の関係を示す図である。縦軸は、磁界強度の減衰率[dB/dec]であり、横軸は、図6のz軸方向の規格化距離z/aである。
zは、図6の中央に配置されたループアンテナ2の中心からz軸方向に離れた位置までの距離(所定の距離)であり、aは、中央に配置されたループアンテナ2の中心から両端に配置された各ループアンテナ1、3の中心との距離である。すなわち、上記所定の距離をzとする。aは、隣り合うループアンテナの中心間の距離である。z/aをここでは規格化距離という。
図10に示すように、z/aが小さいと、すなわち、ループアンテナアレイの近傍では、図1のループアンテナと同様に、60dB/dec程度の磁界強度の減衰率しか得られない。z/aが大きくなると、すなわち、ループアンテナアレイの中心から遠ざかるにつれて、磁界強度の減衰率が増加し、やがては100dB/decに漸近する。
図10に示すように、z/a≧2.50の範囲で、90dB/dec以上の磁界強度の減衰率が得られる。また、z/a≧1.06の範囲で、70dB/dec以上の磁界強度の減衰率が得られる。よって、90dB/dec以上、70dB/dec以上の要求がある場合は、それぞれz/a≧2.50、z/a≧1.06となるようにaを設定すべきで
ある。
図1のループアンテナを2個備えるループアンテナアレイ(ダブルループ)では、磁界強度の減衰率は80dB/decに漸近することが知られている。すなわち、ダブルループでは、磁界強度の減衰率を80dB/decより高くできない。
この80dB/decの磁界強度の減衰率は、第1の実施の形態のループアンテナアレイでは、z/a=1.56の場合に得られる。つまり、少なくともz/a≧1.6となるようにaを設定すれば、ダブルループで得られる磁界強度の減衰率の最大値、つまり80dB/dec以上の磁界強度の減衰率を得ることができる。
よって、第1の実施の形態において、中央に配置されたループアンテナ2の中心から所定の距離z、離れた位置で80dB/dec以上の磁界強度の減衰率が必要な場合において、z/a≧1.6となるようにaを設定すればよい。これにより、上記位置で80dB/dec以上の磁界強度の減衰率が得られる。すなわち、より明瞭な通信エリアの境界を形成できる。
なお、後述のループアンテナアレイにおいても、80dB/dec以上の磁界強度の減衰率が必要な場合は、この関係(z/a≧1.6)が成立するようにaを設定するのが好ましい。
[第2の実施の形態]
図11(a)は、第2の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図であり、図11(b)は、第2の実施の形態の比較例であるループアンテナアレイの一例を示す図である。
第1の実施の形態では、中央に配置されたループアンテナ2に囲まれた領域の面積を、両端に配置された各ループアンテナ1、2に囲まれた領域の面積の2倍とすることで、磁気モーメントの総和をゼロとした。
一方、図11(a)に示す第2の実施の形態のループアンテナアレイでは、中央に配置されたループアンテナ2の巻数を、両端に配置された各ループアンテナ1、3の巻数の和とすることで、磁気モーメントの総和をゼロとする。
中央に配置されたループアンテナ2の巻数は例えば2であり、両端に配置された各ループアンテナ1、3の巻数は1である。なお、中央に配置されたループアンテナ2の巻数が、両端に配置された各ループアンテナ1、3の巻数の和であれば、巻数は上記の値に限らない。
このように、第2の実施の形態では、各ループアンテナ1〜3に囲まれた領域の面積が同一であり、各ループアンテナ1〜3に流れる電流の大きさが同一であり、中央に配置されたループアンテナ2の巻数が、両端に配置された各ループアンテナ1、3の巻数の和となっている。その結果、磁気モーメントの総和はゼロになる。
各ループアンテナの形状は、例えば、正方形であるが、別の形状でもよい。また、各ループアンテナ1〜3に囲まれた領域の面積が同一であれば、面積の値は任意である。
また、各ループアンテナ1〜3に流れる電流の大きさが同一であれば、電流の大きさは任意である。
第2の実施の形態のループアンテナアレイは、図11(b)に示すループアンテナアレイのループアンテナ2A、2Bをループアンテナ2に置き換えたものと考えることができる。図11(b)に示すループアンテナアレイのアンテナ数は4であるが、図11(a)に示す第2の実施の形態のループアンテナアレイのアンテナ数は3である。
アンテナ数が少ないながらも、第2の実施の形態では、磁気モーメントの総和はゼロであり、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。よって、巻数が1のループアンテナでは形成できない明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。
[第3の実施の形態]
図12(a)は、第3の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図であり、図12(b)は、第3の実施の形態の変形例であるループアンテナアレイの一例を示す図である。
第1の実施の形態では、中央に配置されたループアンテナ2に囲まれた領域の面積を、両端に配置された各ループアンテナ1、2に囲まれた領域の面積の2倍とすることで、磁気モーメントの総和をゼロとした。
一方、図12(a)に示す第3の実施の形態のループアンテナアレイでは、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の大きさを、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の大きさの2倍とすることで、磁気モーメントの総和をゼロとする。
図12(a)に示すように、第3の実施の形態では、例えば、各ループアンテナ1、2、3に+端子と−端子を設けるとともに、2つの交流電源E1、E2を設ける。ループアンテナ1、3の+端子と−端子をそれぞれ交流電源E1の信号端子とGND端子に接続し、ループアンテナ2の+端子と−端子をそれぞれ交流電源E2の信号端子とGND端子に接続する。そして、交流電源E1の信号端子がプラス電圧のとき、交流電源E2の信号端子がマイナス電圧となるように同期をとる。これにより、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の向きと、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の向きとが逆になる。
例えば、ループアンテナ2に大きさIの電流が流れると、各ループアンテナ1、3には大きさ0.5Iの電流が流れる。これにより、磁気モーメントの総和はゼロになる。
すなわち、第3の実施の形態では、各ループアンテナ1〜3の巻数が同一であり、各ループアンテナ1〜3に囲まれた領域の面積が同一であり、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の大きさが、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の大きさの2倍である。
なお、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の大きさが、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の大きさの2倍であれば、電流の大きさは任意である。
また、各ループアンテナ1〜3に囲まれた領域の面積とが同一であれば、面積の値は任意である。
また、各ループアンテナ1〜3の巻数が同一であれば、巻数は任意である。
第3の実施の形態のループアンテナアレイによれば、磁気モーメントの総和はゼロであり、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、巻数が1のループアンテナでは形成できない明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。
(第3の実施の形態の変形例)
なお、図12(b)に示すように、ループアンテナ1、3は、例えば、連続した導線で形成してもよい。導線の一方端である+端子は、交流電源E1の信号端子に接続され、導線の他方端である−端子は、交流電源EのGND端子に接続される。
[第4の実施の形態]
図13は、第4の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図である。
第3の実施の形態では、交流電源E1が、両端に配置されたループアンテナ1、3に電流を供給し、交流電源E2が、中央に配置されたループアンテナ2に電流を供給する。
一方、第4の実施の形態では、交流電源Eが、中央に配置されたループアンテナ2に電流を供給し、ループアンテナ2を流れた電流が分岐して、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる。
例えば、各ループアンテナ1、2、3に+端子と−端子を設けるとともに、交流電源Eを設ける。そして、交流電源Eの信号端子にループアンテナ2の+端子を接続し、ループアンテナ2の−端子をループアンテナ1、3の+端子に接続する。そして、ループアンテナ1、3の−端子を交流電源EのGND端子に接続する。
例えば、ループアンテナ2に大きさIの電流が流れると、この電流が各ループアンテナ1、3に分岐し、各ループアンテナ1、3には大きさ0.5Iの電流が流れる。すなわち、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流の大きさが両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れる電流の大きさの2倍となる。
第4の実施の形態では、磁気モーメントの総和はゼロであり、第2の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、巻数が1のループアンテナでは形成できない明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。
また、中央に配置されたループアンテナ2に流れる電流が分岐して、両端に配置された各ループアンテナ1、3に流れることで、1つの交流電源Eからループアンテナに電流を供給できる。
[第5の実施の形態]
図14(a)は、第5の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図であり、図14(b)は、第5の実施の形態の比較例であるループアンテナアレイの一例を示す図である。
図14(a)に示すように、第5の実施の形態のループアンテナアレイは、第2の実施の形態のループアンテナアレイ(3個のループアンテナ1〜3)を2個備える。
すなわち、第5の実施の形態のループアンテナアレイは、第2の実施の形態のループアンテナアレイを2の1乗個備える。nを1以上の整数とすれば、ループアンテナアレイの数は、2のn乗個であり、n=1である。例えば、各ループアンテナは同一線上に配置される。
各ループアンテナは、例えば、連続した導線LNで形成される。導線LNの一方端である+端子は、交流電源Eの信号端子に接続され、導線LNの他方端である−端子は、交流電源EのGND端子に接続される。全てのループアンテナが連続した導線LNで形成されているので、1つの交流電源Eによりループアンテナに電流を供給できる。
ここで、2の(n−1)乗個(n=1)のループアンテナアレイのまとまり、すなわち2の0乗個(1個)のループアンテナアレイを単位ループアンテナアレイとする。例えば、図の左側のループアンテナアレイ(ループアンテナ1〜3)を第1の単位ループアンテナアレイA1、図の右側のループアンテナアレイ(ループアンテナ1〜3)を第2の単位ループアンテナアレイA2という。第1、第2の単位ループアンテナアレイが逆でもよい。
第1の単位ループアンテナアレイA1において、その一方端に配置されたループアンテナ(例えば左端のループアンテナ1)に流れる電流の方向と、第2の単位ループアンテナアレイA2において、一方端と同じ位置(同じ左端)に配置されたループアンテナ1に流れる電流の方向とが互いに逆である。第5の実施の形態でも磁気モーメントの総和はゼロとなる。
第5の実施の形態のループアンテナアレイは、図6のループアンテナアレイのような8重極子を逆向きに並べた16重極子と同等であり、その磁界強度の減衰率は8重極子により得られる100dB/decを超え、120dB/decとなる。
すなわち、第5の実施の形態のループアンテナアレイによれば、第1〜第4の実施の形態のループアンテナアレイが形成する通信エリアの境界よりも明瞭な通信エリアの境界を形成できる。
第5の実施の形態のループアンテナアレイは、図14(b)に示すループアンテナアレイのループアンテナ2A、2Bをループアンテナ2に置き換えたものと考えることができる。
図14(b)に示すループアンテナアレイのアンテナ数は8であるが、図14(a)に示す第5の実施の形態のループアンテナアレイのアンテナ数は6である。
アンテナ数が少ないながらも、第5の実施の形態では、磁気モーメントの総和はゼロであり、図14(b)に示すループアンテナアレイと同様の作用効果が得られる。よって、明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。
[第6の実施の形態]
図15(a)は、第6の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図であり、図15(b)は、第6の実施の形態の比較例であるループアンテナアレイの一例を示す図である。
図15(a)に示すように、第6の実施の形態のループアンテナアレイは、第2の実施の形態のループアンテナアレイ(3個のループアンテナ)を4個備える。
すなわち、第6の実施の形態のループアンテナアレイは、第2の実施の形態のループアンテナアレイを2の2乗個備える。nを1以上の整数とすれば、ループアンテナアレイの数は、2のn乗個であり、n=2である。例えば、各ループアンテナは同一線上に配置される。
また、第6の実施の形態のループアンテナアレイは、第5の実施の形態のループアンテナアレイ(6個のループアンテナ)を2個備えるとも言える。
各ループアンテナは、例えば、連続した導線LNで形成される。導線LNの一方端である+端子は、交流電源Eの信号端子に接続され、導線LNの他方端である−端子は、交流電源EのGND端子に接続される。全てのループアンテナが連続した導線LNで形成されているので、1つの交流電源Eによりループアンテナに電流を流すことができる。
第5の実施の形態と同様に、2の(n−1)乗個(第6の実施の形態では、n=2)のループアンテナアレイのまとまり、すなわち2の1乗個(2個)のループアンテナアレイを単位ループアンテナアレイとする。例えば、図の左側のループアンテナアレイ(6個のループアンテナ)を第1の単位ループアンテナアレイB1、図の右側のループアンテナアレイ(6個のループアンテナ)を第2の単位ループアンテナアレイB2という。第1、第2の単位ループアンテナアレイが逆でもよい。
第1の単位ループアンテナアレイB1において、その一方端のループアンテナ(例えば左端のループアンテナ1)に流れる電流の方向と、第2の単位ループアンテナアレイB2において、一方端と同じ位置(同じ左端)に配置されたループアンテナ1に流れる電流の方向とが互いに逆である。第6の実施の形態でも磁気モーメントの総和はゼロとなる。
第6の実施の形態のループアンテナアレイは、第5の実施の形態のループアンテナアレイと同等16重極子を逆向きに並べた32重極子と同等であり、その磁界強度の減衰率は第5の実施の形態の磁界強度の減衰率120dB/decを超え、140dB/decとなる。
すなわち、第6の実施の形態のループアンテナアレイによれば、第5の実施の形態のループアンテナアレイが形成する通信エリアの境界よりも明瞭な通信エリアの境界を形成できる。
第6の実施の形態のループアンテナアレイは、図15(b)に示すループアンテナアレイのループアンテナ2A、2Bをループアンテナ2に置き換えたものと考えることができる。
図15(b)に示すループアンテナアレイのアンテナ数は16であるが、図15(a)に示す第6の実施の形態のループアンテナアレイのアンテナ数は12である。
アンテナ数が少ないながらも、第6の実施の形態では、磁気モーメントの総和はゼロであり、図15(b)に示すループアンテナアレイと同様の作用効果が得られる。よって、明瞭な通信エリアの境界を比較的少ない数のループアンテナにより形成できる。また、直線的な通信エリアの境界を形成できる。
なお、第5の実施の形態ではn=1、第6の実施の形態ではn=2としたが、nを3以上の整数としてもよい。この場合でも、ループアンテナアレイを2のn乗個設け、2の(n−1)乗個のループアンテナアレイのまとまりを単位ループアンテナアレイとした場合、第1の単位ループアンテナアレイにおいて一方端に配置されたループアンテナに流れる電流の方向と、第2の単位ループアンテナアレイにおいて、一方側と同じ位置に配置されたループアンテナに流れる電流の方向とが互いに逆であればよい。
[第7の実施の形態]
図16は、第7の実施の形態のループアンテナアレイの一例を示す図である。
第7の実施の形態のループアンテナアレイは、第6の実施の形態のループアンテナアレイにおいて、電流の向きが同じである2つの隣り合うループアンテナに代えて、その電流の向きと同じ向きの電流が流れ、かつ、隣り合う各ループアンテナの磁気モーメントの2倍の磁気モーメントを有する1つのループアンテナを設けたものである。
例えば、図15(a)において、単位ループアンテナアレイB1の右端のループアンテナ3と、単位ループアンテナアレイB2の左端のループアンテナ1は隣り合い、しかも、電流の向きが同じである。
第7の実施の形態のループアンテナアレイは、これらループアンテナ1、3に代えて、図16に示すように、同じ向きの電流が流れ、かつ、各ループアンテナ1、3の磁気モーメントの2倍の磁気モーメントを有する1つのループアンテナ21を備える。
例えば、図16に示すように、ループアンテナ21の巻数は、各ループアンテナ1、3の巻数の和であり、各ループアンテナ1、3、21に囲まれた領域の面積は同一であり、各ループアンテナ1、3、21に流れる電流の大きさは同一である。
これにより、ループアンテナ21の磁気モーメントは、ループアンテナ1、3の磁気モーメントの和となる。第7の実施の形態でも磁気モーメントの総和はゼロとなる。
第7の実施の形態のループアンテナアレイは、16重極子を逆向きに並べた32重極子と同等であり、その磁界強度の減衰率は第5の実施の形態における磁界強度の減衰率より高くなる。
すなわち、第7の実施の形態のループアンテナアレイによれば、第5の実施の形態のループアンテナアレイが形成する通信エリアの境界よりも明瞭な通信エリアの境界を形成できる。
また、ループアンテナ1、3をループアンテナ21に置き換えたので、ループアンテナの数を少なくできる。
なお、このようなループアンテナの置き換えは、n=2に対応する第6の実施の形態のループアンテナアレイにおいてだけでなく、nが3以上の実施の形態で行ってもよい。
また、第5〜第7の実施の形態において、各ループアンテナは、例えば、連続した導線で形成せず、図9などのように導線を分けてもよい。
また、各ループアンテナ1〜3に流れる電流の大きさを同一とし、各ループアンテナ1〜3の巻数を同一とし、ループアンテナ2に囲まれた領域の面積を、各ループアンテナ1、3に囲まれた領域の面積の2倍としてもよい。
また、ループアンテナ2に流れる電流の大きさを、各ループアンテナ1、3に流れる電流の大きさの2倍とし、各ループアンテナ1〜3の巻数を同一とし、各ループアンテナ1〜3に囲まれた領域の面積を同一としてもよい。
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。