JP6421288B1 - サイフォン管 - Google Patents
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Abstract
Description
簡単な操作でサイフォン管内に液体を吸引することで、特別な取出し口を持たない容器をポットのように使用でき、可搬性と操作性に優れた液体取出し器具である。
また、容器内流路から液体取り出し口までの流路を含む器具全体をサイフォン管と呼ぶ。 サイフォン状態の成立に関わる流路部分についてはこれと区別してサイフォンパイプと呼ぶ。容器内部分から、容器外にあるサイフォン管の最低位部分まで気密に接続された流路部分を指す。
使用時に円筒型のキャップで密閉するメインテナンス口を設けた場合の課題を、図1から図3を参照して説明する。
901は上昇流路、902は下降流路、903はメインテナンス口、906は円筒型密閉キャップ904のストッパーであり、頂上部品905として一体に成形されている。
上昇流路901から下降流路902への連通は曲率一定であるが、ストッパー906と密閉キャップ904底面のなす流路の突起910により、液体の流れに乱れが生じる。転向部において円運動している液体は、外周方向の突起910に遠心力で入り込みやすい。伴って内周側の壁面からの剥離911が発生する。液体が流路内周に戻るのは転向部通過後の下流であり、結果として残留エア912が排出されず内壁に貼り付いて残る。
図1は液体取り出しのため傾けた状態だが、平置状態のポンプ吸引でもこの流れは発生し、残留エアの多い圧力サイフォン状態につながる。
ここからコーヒードリップを行なうとする。最初の一滴を、狙いすまして落としたい。慎重に傾けていくが、図2の状態では多少傾けても残留エア913のためお湯は出ない。
コーヒードリップの場合に限らず、慎重に液体を取り出したい局面においてこの動きは、致命的に使いづらい。毎度ではないにしろ、ひとたび発生すればかなりストレスフルな事態である。
または同じく特許文献1に触れられているように下降流路の内径を小さくする方法もある。だが流路抵抗が増えてしまい、通常使用における液体取出しの最大流速を必要以上に制限してしまう。
この構成では密閉キャップ801のストッパー803を図1の場合と異なる位置に設ける必要がでる。さらに密閉キャップ801の装着方向を決めるキー構造804も必要となり、頂上部品802と密閉キャップ801が大きく、また複雑になる。
この構成では、頂上部品805と806を接続する固定機構808が必要になる。また頂上部品805、806が例えば金属など柔軟性のない材質の場合パッキン807を要し、部品数が増える。
チューブ809を座屈させずに略180度湾曲させるため、少なくとも湾曲の内面側半周はチューブ断面形状をサポートするガイド810が必要である。チューブ809自身も肉厚にする必要があり、構造はシンプルながら頂上部のサイズがあらゆる方向に大きくなる。
図7において、上昇流路の断面は、下降流路の断面とは入射のオフセット分だけ図の奥行き方向にずれたものだが、わかりやすさのため同一面に描いている。
円断面の上昇流路701は、図8に一点鎖線で示した円断面の下降流路702の中心線の片側のみに入射する。本例では液体の進行方向右、図7の奥半分、図8の右半分、図9の上半分に断面積を減ずることなく連通する。図1と同様のメインテナンス口703を備え、頂上部品704として一体に成形されている。図1同様の円筒型密閉キャップ904との2部品で頂上部を構成する。
図7から図9各図に矢印で示したように、上昇流路701を大きな乱れなく直線的に流れて来た液体は、入射のオフセットにより渦流をなして下降流路702を下る。この場合は上面視で反時計方向に旋回する渦となる。
渦流の回転で遠心力を持った液体は、下降流路のどの内壁とも剥離することなく流れる。残留エアはこの場合、下降流路の内壁から離されてポンプ吸引力もしくは液体の取出し流により下流へ流される。こうして残留エアの排出性能が向上する。
本例では上昇流路701が上昇傾向を持ったまま下降流路702に入射している。これにより清掃時メインテナンス口703から両流路701、702へのアクセスがすこぶる良い。メインテナンス性を考慮しつつ、上昇流路701を水平程度にまで方向を変えてから入射させても良い。
また両流路701、702とも円断面として説明したが、特に上昇流路701の断面は他の形で構わない。下降流路702についても、渦流を阻害しない範囲で断面形状には自由度がある。
先行例の課題で説明した現象が必ず毎回起きるわけではない理由にも、様々な要因によって生じる左右差が関係している可能性がある。容器やサイフォン管の姿勢や揺れによる液流の微妙な到達タイミング差や流速差が考えられる。
これらに加えてコリオリの力が関与している可能性も排除できない。本例の渦は反時計回りとしたが、時計回り版を南半球仕様としてコリオリの力を最大限生かす設計もあり得る。
特許文献2が液体の渦を利用する水洗便器に関するものであり、溜水部の洗浄水に旋回を付与する。
便器の洗浄もサイフォン現象を利用する技術である。ただ溜水部での旋回の目的はサイフォン発生時の水頭差の増大と、サイフォン発生に要する洗浄水の節約である。サイフォン頂点からのエア排出効果はほぼない。本発明で言えば上昇流路701内で渦流を生ずることと同等である。上述した微妙な左右差を生む可能性はあるが、流路形状によっては転向部で向きの変わった内壁からの剥離流を発生する要因にもなり得る。
特許文献3、4は空気に渦流を発生して意図する気流の集中・発散を図る方法を提示してくれる。だがどちらも周囲と境界のない解放系での話であり、サイフォン管内部の流体に適用するには必要以上に複雑である。
サイフォン管頂上部において、上部上昇流路11が上部下降流路12に入射するオフセット形状は、図7から図9に示したものと同一である。図11以降すべての断面図において、頂上部に示した点線から右の断面は、点線の左の断面とは入射のオフセット分だけ図の奥行き方向にずれたものだが、わかりやすさのため同一面に描いている。
上部上昇流路11の曲がり部分は、図7で示したよりもやや深く曲げてある。下端に接続する下部上昇流路15の下端をできるだけカップ1の側壁近くに配置するためである。同様に、下部上昇流路15の下端をカップ1内の底面近くに配置するように、上部上昇流路11と下部上昇流路15の接続部を摺動して調整してある。これにより、傾けたカップ1内の液体0をほぼ最後まで取り出せる。
上部下降流路12と中間下降流路16の接続部も同様に摺動して、カップ1を平置した時にボトム部品17が接地しない範囲でできるだけ低い位置に来るように調整してある。液体0が減ってカップ1を平置する時、液面101または103が下部下降流路18の下端より低くなるとサイフォンパイプにエアが入ってサイフォンブレークし、傾けても液体0を取り出せなくなる。できるだけ少ない残液量までサイフォンブレークさせないための調整である。
ボトム部品17は、主に下部取出し流路19部分を変形して取出し流路19、22、25の角度をユーザーの好みに合わせる。下部取出し流路19はこの柔軟性を確保するため、断面積は確保しつつ高さの低い平板状の流路としてある。そのため図10で見る奥行き方向の流路幅が広めになっている。下部取出し流路19の流路高の低さは下部下降流路18の下端位置を低く配置することにもつながる。つまり残液量の減少による上述のサイフォンブレークを遅らせる流路形状でもある。
さらに下部取出し流路19は下部下降流路18の下端高さから下流に向けて急傾斜で立ち上がる形状を持つ。これにより、流れて来た残留エアを滞留させず下流に送り出すと共に、清掃時のメインテナンス口20からのアクセスを良好にする。
ボトム部品17の取付け時の変形はここでは元に戻って、ポンプ22を真上に向ける。上部取出し管25は、ポンプ22の内筒24から抜いて、逆さにして内筒24に差し込んで収納をコンパクトにしている。上部取出し管25は、内筒24との接続部から先端に向けて徐々に径が細くなる形状をしており、内筒24に少し強めに逆差しすると脱落防止にもなる。
フレーム28は取付け具26との位置決めループを外して下向きになり、上部取出し管25の姿勢を決めるフレーム28の先端部はここでは下の方から顔を出している。
下部上昇流路15と中間下降流路16それぞれの、頂上部品10との接続を摺動し、収納サイズを縮めれば、はみ出さずにカップ1に収納できる。
図13は、本発明の実施例1によるサイフォン管を、カップ1よりも深いカップ131で使用する断面図である。
下部上昇流路15、中間下降流路16がそれぞれに、カップ131の深さに合わせて頂上部品10から引き出されてボトム部品17と下部上昇流路15下端の位置を最適にしている。
ボトム部品17の変形量はやや小さくなり、ポンプ22の立ち上がり傾斜が急になる。ポンプ22の内筒24を外筒23からカップ1の時よりも引き出してカップ131の縁の高さに上部取出し管25の先端を開口する。
おおまかに言うと、図11を縦に引き伸ばした配置に近い。
フレーム28を伸縮可能とすれば、図11とほぼ相似形の断面になる取り付けも可能であるが、図が煩雑になるため本実施例では採用しない。
図14は、本発明の実施例1によるサイフォン管を、カップ1よりも厚手のカップ141で使用する断面図である。
カップ141の厚みのため、頂上部品10の取り付け位置が高くなり、取付け具26とカップ押さえ27の広がりが大きくなる。上部上昇流路11の曲がりはやや広げられ図7に近い状態になる。
中間下降流路16は、高くなった頂上部品10の位置に合わせて上部下降流路12から引き出されてボトム部品17の位置を最適にしている。
下部上昇流路15は、頂上部品10が高くなった寸法とカップ141が底厚になった寸法の差分だけ、上部上昇流路11からの露出寸法を調整する。
フレーム28は図11と同じ位置にあり、ボトム部品17の位置を図11と同じに調整すれば、上部取出し管25、ポンプ22も図11の位置のままである。
ボトム部品17は変形しない状態で、ポンプ22、上部取出し管25を真上に向けて保持する。
前述のようにカップ1への取り付けは、カップ押さえ27上部とフレーム28の位置決めループをつまんで取付け具26を広げて行なう。フレーム28の位置決めループと先端部は一体であり、この時点でフレーム28の先端部は使用状態同様、前方に立ち上がっている。
この時点でサイフォン管内の液面102は、例えば図示の下部上昇流路15内、カップ1内の液面101と同じ高さにある。
柔軟な上部取出し管25の任意の部分をつまんで流路の閉塞部分29をつくり、そのまま上部取出し管25を引き上げる。上部取出し管25を接続したポンプ22の内筒24が外筒23から引き出され、負圧を生じてカップ1内の液体0が吸引される。
ポンプ22は密閉型でないため、引き上げスピードが遅すぎた場合など充分に吸引できない場合がある。その時は一度上記の閉塞部分29を開放して手を放せば内筒24が外筒23内にストンと戻るので、上記を繰り返す。
図18には、完全サイフォンにはならなかった場合の液面の例104、105、106を示した。残留エアの排出性能に優れるサイフォン管なので、この程度の大きな泡があっても液体取出しに進んで問題ない。
ポンプ吸引時につまんでいた上部取出し管25を前方に倒し、フレーム28のループ部で好みの姿勢にセットする。
フレーム28は1本出しの片持ち構造で、ユーザーは上部取出し管25を持ち直す必要なく矢印のようにフレーム28に絡めるような動作でセットできる。
図18からやや移動した管内の液面例107、108、109を図20に示した。大きな泡が残った圧力サイフォン状態である。
カップ1ごと傾けて、上部取出し管25の開口を液面113より低くし、さらにもう少し傾けると取出し流110が流れ出す。圧力サイフォンの残留エアは、本発明の排出効果により流路内壁から引き剥がされ。頂上部から次々流れ下る泡111となる。下部下降流路18を抜けた泡112は速やかに取出し管から排出される。
この結果サイフォン管内は完全サイフォン状態となる。これ以降の液体取り出しは上部取出し管25の開口と液面113の高さ関係のみで開始・停止・速度調整も自在になる。
上昇流路と下降流路を伸縮可能としたことで、容器からはみ出さずに収納できると同時に、深い容器・厚手の容器へも最適に取り付けられる。
サイフォン管頂上部の少なくとも一部は、流路が見える材質または窓のような構造をもつことが望ましい。サイフォンの状態を確認しつつ適切に使用する助けになる。頂上部品を透明シリコンとする、密閉キャップを透明部材とする、などの方法がある。
頂上部品とボトム部品は柔軟として説明したが、焼きものなど柔軟性のない材質として構成変更もできる。上昇流路の曲がり部分と取出し管下部の変形部分のみ柔軟もしくは可動部品として近隣部品と気密に接続する。
スライド自在のポンプを採用したため、液体取り出し時にポンプ自身の長さも変えて姿勢を規定できる。取出し管開口部の位置や角度をユーザーの好みで自由に決められる、通常のポットやドリッパーにはない特徴である。
ここまで、容器を右に置いて左手でポンプ吸引とセッティングを行なう配置を前提に、片持ちのフレームが取出し管の奥側にある構成で説明した。左手で容器を持って液体を取り出す方が自然な用途、または左利きのユーザー向けに、フレームを流路基準で対称にするバリエーションを設けても良い。
本構成のポンプは、弁構造など複雑な要素をいっさい持たないシンプルなもので、部品点数も少なくスライドも軽い。吸引した液体が勢いでこぼれるなどの心配がないため、吸引を繰り返して徐々にサイフォン状態を完成する使い方もできる。その使い方を前提に、ポンプ容量を小さくしてさらに小型化を図ることもできる。最低限、上昇流路の容量を少し上回るだけの吸引能力があれば実用できる。
上記の説明ではわかりやすさのため、残留エアがある状態で液体の取り出しを開始した。図21の排気手順は湯こぼしのような別容器に短時間、液体を流して行なう。実際には、ポンプ吸引の段階で完全サイフォン状態にするのが望ましい。そうすれば別容器がない、または液体を無駄にしたくないなどの場合でもストレスなく使用できる。本発明によりポンプ吸引で容易に完全サイフォン状態を得られる。それでも面倒・うまくできないなどの場合は取出し口から口で吸う方法もある。吸いすぎると飲んでしまうので注意する。
ポンプの内筒と外筒の間隙から微量の液体がにじむことがあるが、実用に問題ない。危険な液体の取り扱いには他の密閉型ポンプを採用する。
本実施例のサイフォン管はポンプのシンプルさも手伝って、コンパクトにたたんで容易に持ち歩ける可搬性を備える。コーヒー用途で言えば、例えば特許文献5に挙げたドリップ用器具と共に、最小サイズで持ち歩けるドリップセットを提案できる。
1、131、141はカップ、
15、11は上昇流路、
10は頂上部品、
13、20はメインテナンス口、
12、16、18は下降流路、
17はボトム部品、
22はポンプ、
19、22、25は取り出し管
である。
Claims (2)
- 容器の縁に装着して容器内の液体を取り出すサイフォン管であって、
一端が前記容器内の液体中に配置され、前記容器の縁より高い位置に至る上昇流路と、
該上昇流路に連通し、他端が前記容器内の液面高さよりも低い前記容器外の位置に至る下降流路と
からなるサイフォンパイプと、
該サイフォンパイプの他端と連通し、前記容器内の液面高さよりも高い位置に取り出し口を有する取出し管と、
前記サイフォンパイプ内に負圧を発生するポンプ手段と
を有し、
該ポンプ手段で前記サイフォンパイプ内に液体を導入してサイフォン状態を発生後、
前記容器ごと傾けて液体を取り出すサイフォン管において、
前記取出し管が、
径寸法が近く狭い間隙で重なる外筒と内筒からなる、密閉されないスライド構造と、
前記内筒と気密に接続され、任意の部分をつまんで流路を閉塞する柔軟な上部取出し管と
を有して前記ポンプ手段をなし、
前記上昇流路の中心線が、前記下降流路の中心線と交差せずオフセットを持って入射し、
前記下降流路へ向かう液体に渦流を発生することを特徴とするサイフォン管。 - 請求項1のサイフォン管において、
前記下降流路の断面が円形であり、
前記上昇流路が、前記下降流路の中心線と交差せず片側のみに入射する
ことを特徴とするサイフォン管。
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- 2018-05-13 JP JP2018092650A patent/JP6421288B1/ja active Active
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