JP6421194B2 - 放射線治療計画装置、放射線治療計画方法および放射線治療システム - Google Patents

放射線治療計画装置、放射線治療計画方法および放射線治療システム Download PDF

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Description

本発明は、放射線治療計画装置、放射線治療計画方法および放射線治療装置に関する。
放射線を用いる治療において、標的となる腫瘍細胞への線量集中性が高い陽子線や炭素線に代表される粒子線(荷電粒子ビーム)を利用した粒子線治療装置の需要が高まっている。
粒子線治療装置においても、腫瘍領域に対してできるだけ正確に、集中するように指定した線量を照射することが求められる。粒子線治療においては線量を集中させる方法として、スキャニング法の利用が広がりつつある。これは細い粒子ビームを、平面内の任意の位置に導くことで、腫瘍内部を塗りつぶすように照射し、腫瘍領域にのみ高い線量を付与するという方法である。スキャニング法の場合、コリメータ等の患者固有の器具は基本的に必要がなく、様々な分布を形成できる利点がある。
放射線治療計画装置はCT画像等から得られる患者体内の情報を基に、患者体内での線量分布を数値計算によりシミュレートする装置である。操作者は治療計画装置の計算結果を参照しながら、粒子線を照射する方向やビームエネルギー,照射位置,照射量等の照射条件を決定する。以下にその一般的な過程を簡単に述べる。スキャニング照射には、スポットスキャニング方式とラスター方式とがあるが、ここではスポットスキャニング方式を前提として説明する。
操作者は、はじめに放射線を照射すべき標的領域を入力する。必要があれば、放射線の照射量を極力低く抑えるべき重要臓器の位置も同様に入力し登録する。
次に、操作者は、登録した各々の領域について目標とすべき線量値となる処方線量を設定する。
続いて、処方線量を満足する線量分布を実現する照射条件を決定する。操作者は、妥当と考える線量分布が得られるまで、治療計画装置を用いて決定すべき照射条件に関するパラメータを調整する。これらのパラメータを効率よく決定するために、処方線量からのずれを数値化した目的関数を用いる方法が広く採用されている。
治療計画装置における陽子線の線量分布計算手法の一つとして、簡易モンテカルロ法がある(非特許文献1)。簡易モンテカルロ法は、通常のモンテカルロ法と同様にビーム粒子一つ一つに関して輸送計算するため、不均質媒質中での高精度な線量分布計算が可能である。
輸送計算では粒子の軌跡が細かなステップに分結され、各ステップでは多重クーロン散乱による進行方向の微小変化が与えられる。多重クーロン散乱の散乱角はガウス分布の乱数でモデル化され、その標準偏差はHighlandの式等を用いてステップ毎に算出される。
ここで、非特許文献2には、スキャニング照射法の線量計算において、十分な計算精度を確保するには、核反応などによって大角度散乱した粒子に起因する線量成分を考慮する必要があることが記載されている。
Ryosuke KOHNO, et al. "Simplified Monte Carlo Dose Calculation for Therapeutic Proton Beams" Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41(2002) pp.L 294-L297 Yupeng Li, et al. "Beyond Gaussians: a study of single−spot modeling for scanning proton dose calculation" Phys. Med. Biol. 57 (2012) 983-997
スキャニング照射法の放射線治療において、高速かつ高精度な線量計算が可能な放射線治療計画装置が望まれている。
ここで、スキャニング照射法の線量分布計算に、上述した簡易モンテカルロ法を適用することが考えられる。非特許文献2が示すように、スキャニング照射法の線量計算において十分な精度を得るには、ビームの中心から離れた領域の線量を再現しなくてはならない。従って、散乱角がガウス分布で近似される多重クーロン散乱に加え、原子核との弾性散乱・非弾性散乱等によって粒子がより大角度方向に散乱する現象を考慮する必要がある。
しかしながら、上述した簡易モンテカルロ法では、このような大角度散乱現象を取り入れるとかえって線量計算精度の低下を招く可能性があった。ビーム進行方向に対する粒子数の保存が成立しなくなるためである。大角度散乱は粒子のエネルギーを局所的に損失させるため、大角度散乱しなかった粒子と比較して粒子の飛程が短くなる。従って、線量計算に取り入れるとビーム進行方向に従って粒子数は減少する。
通常のモンテカルロ法をスキャニング照射法の線量分布計算に適用することも考えられるが、上述したように、通常のモンテカルロ法は線量計算の速度が低く、簡易モンテカルロ法に比較して、計算時間が1オーダー程度長くなる。
よって、通常のモンテカルロ法をスキャニング照射法の線量分布計算に適用した場合には、高速な線量計算は困難である。
本発明の目的は、スキャニング照射法の放射線治療において、高速かつ高精度な線量計算が可能な放射線治療計画装置、放射線治療計画方法および放射線治療システムを実現することである。
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
積分線量分布テーブルを参照することにより粒子への付与線量を算出する簡易モンテカルロ法を用いた放射線治療計画装置であって、放射線を照射する被照射体の標的領域及び処方線量が入力される入力部と、放射線の被照射体への進行距離と放射線の減少率との関係を示す放射線減少率テーブルが格納されたメモリと、
上記標的領域及び上記処方線量に基づいて、上記積分線量分布テーブルと、上記減少率と、を用いて線量分布を算出する演算処理部とを備え、上記演算処理が算出し、補正した線量分布を上記メモリに格納する。
また、積分線量分布テーブルを参照することにより粒子への付与線量を算出する簡易モンテカルロ法を用いた放射線治療計画装置の線量分布算出方法であって、
演算処理装置が、入力部から入力された、放射線を照射する被放射線体の標的領域及び処方線量に基づいて、上記積分線量分布テーブルと、メモリに格納された放射線減少率テーブルが示す放射線の被照射体への進行距離に対する放射線の減少率と、を用いて線量分布を算出し、算出し、補正した線量分布を上記メモリに格納する。
また、放射線を被照射体の標的領域に照射する放射線治療装置と、積分線量分布テーブルを参照することにより粒子への付与線量を算出する簡易モンテカルロ法を用いて上記放射線治療装置の放射線照射線量分布を算出し、放射線治療の計画を行う放射線治療計画装置と、を備える放射線治療システムであって、
上記放射線治療計画装置は、放射線を照射する被照射体の標的領域及び処方線量が入力される入力部と、放射線の被照射体への進行距離と放射線の減少率との関係を示す放射線減少率テーブルが格納されたメモリと、上記標的領域及び上記処方線量に基づいて、上記積分線量分布テーブルと、上記減少率と、を用いて線量分布を算出する演算処理部と、上記演算処理が算出し、処方箋量を得るための照射条件に関するパラメータを上記放射線治療装置に転送するデータサーバとを有する。
本発明によれば、スキャニング照射法の放射線治療において、高速かつ高精度な線量計算が可能な放射線治療計画装置、放射線治療計画方法および放射線治療システムを実現することができる。
放射線治療計画立案の処理動作の流れを表す図である。 スポットスキャニング方式による照射量の探索手法の流れを示す図である。 本発明の一実施例である放射線治療計画装置が行う動作を示す図である。 粒子線照射装置と放射線治療計画装置とが接続された粒子線治療システムの全体構成を示す図である。 CT画面上での標的領域等の画面図を示す図である。 本発明の一実施例である放射線治療計画装置における線量計算手順であり、簡易モンテカルロ法による線量計算の流れを説明する図である。 散乱による粒子の進行方向変化を説明する図である。 積分深部線量テーブルの一例を示す図である。 粒子数減少率テーブルの一例を示す図である。 粒子数減少率テーブルを作成する際のボクセル配置を説明する図である。 本発明の一実施例における放射線治療計画装置で計算した陽子線の横方向線量分布を示すグラフである。 図11に示した陽子線の横方向線量分布を得たボクセルの概略図である。 簡易モンテカルロ法で計算した積分深部線量分布を示すグラフであり粒子数低減率テーブルによる補正がない場合の図である。 本発明の一実施例における、粒子低減率テーブルにより補正した簡易モンテカルロ法で計算した積分深部線量分布を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
本発明の一実施例を主に図1〜図5を参照して説明する。本発明の一実施例は、スキャニング照射法による放射線治療(粒子線治療)の治療計画を立案する放射線治療計画装置である。
図1は放射線治療計画立案の処理動作の流れを表す図であり、図2はスポットスキャニング方式による被照射体への照射量の探索手法の流れを示す図である。また、図3は本発明の一実施例である放射線治療計画装置が行う動作を示す図であり、図4は、粒子線照射装置と放射線治療計画装置とが接続された粒子線治療システムの全体構成を示す図である。また、図5はCT画面上での標的領域等の画面を示す図である。
スポットスキャニング方式とは、ある点に規定量のビームを照射後、一度ビームを停止し、次の照射すべき点に移動した後に再び照射を開始する方式である。なお、スキャニング照射には、スポットスキャニング方式の他に、ラスター方式がある。このラスター方式は、照射位置の移動中にもビームを停止しない方式である。本発明はラスター方式にも適用可能である。また、リッジフィルタや飛程変調ホイールと散乱体を組み合わせた散乱体照射法にも適用可能である。
図4に示すように、放射線治療計画装置は、表示装置401と、入力装置402と、演算処理装置403と、メモリ404と、データサーバ405とを備えている。データサーバ405は粒子線照射装置406に接続されている。
演算処理装置403により演算された線量分布等がデータサーバ405から粒子線照射装置406に転送される。演算処理装置403は、最適化計算部4030と、線量計算部4031と、制御部4032とを備える。
また、メモリ404は、粒子数減少率テーブル4014と、積分線量分布テーブル4042とを備えている。
また、粒子線照射装置406は、陽子線を生成し初期加速する入射部4061と、陽子線を加速する加速部4062と、陽子線を成形し、照射を制御する照射制御部4063とを備える。
操作者は、表示装置401の領域入力画面で、入力装置402に相当するマウス等の機器を用いて、被照射体のCT画像のスライスごとに指定すべき領域を入力する。各スライスで入力が終わると、操作者は入力した領域を登録する。登録することで、操作者が入力した領域は、3次元の位置情報としてメモリ404内に保存される。
被照射体への照射線量を極力抑えるべき重要臓器が標的領域の近傍に存在するなど、他に評価、制御を必要とする領域がある場合、操作者はそれら重要臓器等の位置も同様に登録する。
図5は、操作者が表示装置401においてCT画像のあるスライス上で標的領域501、重要臓器502、503を入力した状態を例として示している。
図1に示した動作と、その動作に対応する、図2、図3に示した装置の処理とを説明する。
操作者は、入力した領域501、502、503の放射線治療計画装置への登録指示操作を行う(ステップ101)。この結果、これらの領域は治療計画装置に登録され、メモリ404に保存される(図3のステップ301)。
続いて、操作者は登録された標的領域に対して照射条件を決定する(図1のステップ102)。すなわち、標的領域と重要臓器の位置に基づき、照射門数や照射方向を決める。すべてを操作者が決めるのではなく、装置が自動的に決められるものもある。
本発明の一実施例のように、粒子線治療でスキャニング照射法を採用した場合は、多数のビームの照射位置を定めなければならず、各々のビームのエネルギーや照射間隔も設定すべき項目となりうる。
操作者は、登録された各領域への処方線量を定める。処方線量は標的領域であれば、その領域内が受けるべき線量の最小値、最大値を入力することも多いが、ここでは標的領域501に照射すべき線量値を一つ指定する。一方、重要臓器に対しては許容線量を設定することが多い。この例では、重要臓器502、503ともに許容線量を指定する。
以上のように設定した照射方向や処方線量は治療計画装置のメモリ404に保存される(図3のステップ302)。
放射線治療計画装置は、通常、処方線量とのずれを数値化した目的関数を定義し(図3のステップ303)、これを反復計算により最小化することで残されたパラメータを算出する(図3のステップ304)。
ステップ304においては、演算処理装置403の線量計算部4031が、本発明の一実施例における簡易モンテカルロ法(後述する)を用いた線量分布計算を行い、その結果データをメモリ404に格納する。そして、反復計算毎に、メモリ404に格納した線量分布結果データを読み出し、目的関数を用いてパラメータを算出する。反復計算及びメモリ404からのデータの読み出しは、制御部4032の指令により行われる。目的関数の定義及び計算の実行は、演算処理装置403の最適化計算部403で行う。
本発明の一実施例のようにスポットスキャニング照射法を採用した場合、目的関数を用いて算出するパラメータとして各スポットへの照射量(スポット照射量)がある。
ここで、目的関数を用いたパラメータの探索手法の一例として、図2を用いて説明する。目的関数を用いたパラメータの探索手法では、操作者が設定した処方線量や、重要臓器の情報から制約条件が設定される(図2のステップ201)。続いて、放射線治療計画装置は、標的領域内、重要臓器内のそれぞれに線量を計算する点をm個およびn個設定し、制約条件を基に目的関数を作成する(図2のステップ202)。
標的領域内のm個の点での線量値を要素とするベクトルをd(1)とすると、d(1)とスポット照射量を要素とするベクトルxとの関係は、次式(1)で表せる。
Figure 0006421194
上記式(1)において、行列Aは、各スポットへ照射したビームからの標的領域内の計算点に与える線量(線量行列)を表し、照射方向やCT画像による体内情報を基に計算される。
同様に、重要臓器内のn個の点での線量値を要素とするベクトルをd(2)とすると、d(2)=Bxと表すことができる。Bは行列Aと同様な行列である。
ステップ201における制約条件として、標的領域に対応するm個の点に対して目標とする線量値ρ、重要臓器に対応するn個の点に対して許容線量値lが設定された場合、目的関数F(x)は、次式(2)のように設定される。
Figure 0006421194
上記式(2)において、W (1)、W (2)は、それぞれの点に対応するウエイトであって、処方線量と共に操作者によって入力される値である。
上記式(2)の第一項は標的領域に相当する部分となり、m個の点での線量値が目標として設定された処方線量値ρに近いほど目的関数F(x)は小さくなる。上記式(2)の第二項は重要臓器に関する項であり、許容線量lを越えない線量であればよい。上記式(2)のθ(d (2)−l)は階段関数であり、d (2)<lの場合は0、それ以外の場合は1となる。
放射線治療計画装置は、上記式(2)の目的関数F(x)を生成後、反復計算の終了条件を満たすまで反復計算を繰り返すことで、目的関数F(x)が最も小さくなるxを探索する(図2のステップ203)。
終了条件に達すると(図2のステップ203、204)、放射線治療計画装置は反復計算を終了する(図2のステップ204、205)。
前述したように、終了条件には、計算時間や計算回数、目的関数の変化量などの指標が設定される。
図3の動作フローにおいて、放射線治療計画装置は、反復計算の結果最終的に求められたスポット照射量に基づき線量分布を計算し、その結果を表示装置401に表示する(図3のステップ305)。このステップ305の線量分布の計算も、本発明の一実施例における簡易モンテカルロ法(後述する)を用いて行われる。線量計算部4031では、被検体の標的領域への付与線量を算出するが、これは、後述する積分線量分布テーブルから参照される値に、粒子減少率テーブルの逆数を乗じることで付与線量を算出する。これにより、粒子数の減少に伴う影響を補正することができる。
上記動作は図1のステップ103の照射量探索に対応する。反復計算の結果得られた線量分布が、処方線量として指定した条件を満たしていると操作者が判断すれば、その条件は確定され、操作者の指示によりメモリ404に保存される(図1のステップ104、105)。
一方、図1のステップ104において、条件を満たしていないと操作者が判断した場合、例えば処方された線量と大きく異なる領域が確認される場合には、ステップ102に戻り、照射条件を変更し、計画を立て直す必要がある。
次に、図6を用いて、本発明の一実施例である放射線治療計画装置における線量計算手順を説明する。これは、演算処理装置403の線量計算部4031が実行する処理である。
本発明の一実施例においては、線量計算を、簡易モンテカルロ法を用いて実行するのであるが、予めビーム進行方向における粒子数の減少率(放射線の減少率)を算出しテーブル化する。この粒子数減少率テーブル(放射線減少率テーブル)4041を用いることにより、簡易モンテカルロ法により、大角度散乱を考慮した高速で高精度な線量計算を実行することができる。
以下に、線量計算手順を詳細に説明する。
図6において、まず、放射線治療計画装置は、仮想空間上にボクセルVを配置する(ステップ601)。ボクセルVは線量計算を実施するCT画像上の位置xでの密度ρ、平均原子番号Z、平均質量数A、線量Dを要素として備えている。線量Dの初期値は0である。
次に、放射線治療計画装置は、仮想空間上にビーム粒子を発生させる。粒子は位置X、進行方向dX、水中残飛程R、エネルギーE、発生地点からの水等価進行距離Lの要素を持つ。発生時には、あらかじめ設定された照射条件や粒子線治療施設特有の性質に基づき、初期値X、dX、R、Eが与えられる。また、水等価信仰距離Lの初期値Lは0である(ステップ602)。
現在位置Xkの粒子を含むボクセルをVkとし、以下に粒子の輸送計算の手順を説明する。
粒子治療計画装置は粒子の進行方向dXkと現在位置Xkを用いて、粒子の次の到達位置Xk+1と、次の到達位置Xk+1での水等価進行距離Lk+1を、次式(3)、(4)を用いて計算する(ステップ603)。
k+1= Xk+dL×dXk (3)
k+1= Lk+dL×WED (4)
上記式(3)、(4)において、dLはXkとXk+1との空間的距離(ステップ長)である。また、dLは、ボクセルVk中における粒子の平均自由工程(ボクセルVkの密度ρ、平均原子番号Z、平均質量数Aと、粒子のエネルギーEkに依存)に基づいて決定することができる。WEDはボクセルの水等価厚比である。dLを固定値とする場合もあるが、本発明の一実施例では説明を簡略化するため粒子がボクセル境界に到達するまでの距離とする。
次に、放射線治療計画装置は、多重クーロン散乱による粒子の進行方向変化を計算する。放射線治療計画装置は、中心値0rad、標準偏差θ0のガウス分布状乱数を発生させ、図7に示すθ方向の散乱角θ’を算出する。ここで、標準偏差θ0はボクセルVkの平均原子番号Z、平均質量数A、密度ρ、及び粒子のエネルギーE、ステップ長dLに基づいて放射線治療計画装置が算出する。
さらに、±2πradの一様乱数を発生させ、φ方向の散乱角φ’を算出する。さらに、進行方向dXkと算出したθ’及びφ’から、多重クーロン散乱後の粒子の進行方向dXk’を計算する(ステップ604)。
次に、放射線治療計画装置は、あらかじめメモリ404に登録された反応断面積データに基づき、原子核との弾性散乱等に起因する粒子の大角度散乱の確率を計算する。さらに、乱数を発生させて、大角度散乱による粒子の進行方向変化計算の必要性を判定する(ステップ605)。必要無しの判定の場合、線量計算手順はステップ608に移行する。
ステップ605において、大角度散乱計算が必要有の判定の場合、放射線治療計画装置は、大角度散乱による粒子の進行方向変化を計算する処理に移行する。弾性散乱のケースでは、まず、放射線治療計画装置は、ボクセルVkの平均原子番号Z、平均質量数A、水等価厚比ρと、粒子のエネルギーEkに基づき、大角度散乱に起因する粒子のエネルギー損失量dEの確率分布を求め、乱数を発生させて粒子のエネルギー損失量dEを決定する。さらに、放射線治療計画装置は決定したエネルギー損失量dEから運動学に基づいてθ方向の散乱角θを算出する。さらに、±2πradの一様乱数を発生し、φ方向の散乱角φを算出する。さらに、進行方向dXk’と算出したθ及びφから、粒子の次の到達位置Xk+1での粒子の進行方向dXk+1を計算する(ステップ606)。
本発明による一実施例の放射線治療計画装置は、エネルギー損失量dEを算出した後に散乱角θを求める計算モデルを用いたが、ボクセルVkの平均原子番号Z、平均質量数A、水等価厚比ρと、粒子のエネルギーEkに基づき散乱角θの確率分布を求め、さらに、乱数を発生させて粒子の散乱角を決定し、最後に運動学に基づいてエネルギー損失量dEを算出するモデルを用いても同様の効果が得られる。
また、非弾性散乱のケースでは、放射線治療計画装置はボクセルVkの平均原子番号Z、平均質量数A、密度ρと、粒子のエネルギーEkを用いて、散乱の終状態を計算し、粒子の次の到達位置Xk+1での粒子の進行方向dXk+1及び散乱によるエネルギー損失量dEを求める。
次に、治療計画装置は、Ek’=Ek−dEより、粒子の新しいエネルギーEk’を計算する。また、エネルギーEと残飛程Rが1対1の関係にあることを利用し、エネルギーEk’から新しい残飛程Rk’を計算する(ステップ607)。
次に、放射線治療計画装置はボクセルVkの線量Dkを計算する。放射線治療計画装置は、あらかじめ登録された積分線量分布テーブルと粒子数減少率テーブルから、粒子の水等価進行距離Lkを引数としてそれぞれ積分線量値IDDkと粒子数減少率Ckを取り出す。
さらに、線量DkにIDDk×Ck×dL×WEDを加算する(ステップ608)。図8は、積分深部線量テーブル4042の一例を示す図であり、図9は、粒子数減少率テーブル4041の一例を示す図である。図8の縦軸は、積分線量を示し、横軸は水等価進行距離を示す。また、図9の縦軸は、粒子数の減少率を示し、横軸は水等価進行距離を示す。
次に、放射線治療計画装置は、式、Rk+1=Rk+1’−dL×WEDから次の到達位置Xk+1での粒子の残飛程Rk+1を計算する。さらに、また、エネルギーEと残飛程Rとが1対1の関係にあることを利用し、残飛程Rk+1から次の到達位置Xk+1でのエネルギーEk+1を計算する(ステップ609)。
次に、放射線治療計画装置は粒子の計算の終了を判定する。本実施例では、残飛程Rk+1が0以下の場合か、粒子の位置Xk+1が全ボクセルの外側にある場合は、その粒子の計算を終了する(ステップ610)。条件を満たさない場合は、さらに次の到達位置Xk+2に向けて同様のステップで輸送計算を実施する。
あらかじめ設定された全ての粒子に関して計算が終了すると、放射線治療計画装置は各ボクセルの線量Dをメモリ404に保存し、線量計算を終了する(ステップ611、612)。さらに、線量分布として表示装置501に表示する。粒子が一度も通過しなかったボクセルの線量は0となる。
図10は、粒子数減少率テーブルを作成する際のボクセル配置を説明する図である。図10に示すように、粒子数減少率テーブルは、一様な媒質(例えば、水)で構成されたボクセル407にエミッタンスゼロのニードルビームを照射した条件で計算される。ボクセル407はビーム進行方向と垂直な方向に十分な大きさを備えており、ビーム進行方向に配置される。
また、粒子数減少率テーブル4041の作成時には、上記輸送計算のステップ608(図6)において、IDDk×Ck×dL×WEDの代わりに各ボクセルの線量DにdLを加算する。計算終了後、得られた線量Dを全計算粒子数で除すると、水等価進行距離Lに関する粒子数減少率テーブル4041が得られる。
図11は、本発明の一実施例における放射線治療計画装置で計算した陽子線の横方向線量分布を示すグラフであり、図12は図11に示した陽子線の横方向線量分布を得たボクセル407の概略図である。図11の縦軸は線量を示し、横軸は横方向の位置を示す。図11に示すように、大角度散乱に起因した遠方成分が再現されている。
また、図13は簡易モンテカルロ法で計算した積分深部線量分布を示すグラフであり、粒子数低減率テーブル4041による補正がない場合である。図14は、本発明の一実施例における、粒子低減率テーブル4041により補正した簡易モンテカルロ法で計算した積分深部線量分布を示すグラフである。図13、図14において、丸印は計算結果を示し、実線は放射線治療計画装置に登録した積分線量分布テーブル4042のデータを示す。図13に示したグラフと図14に示したグラフとを比較すると、図14に示すように、粒子数減少率テーブル4041を用いて積分深部線量テーブル4042から参照した値を補正することで、線量の減少が抑制されていることが理解できる。
つまり、本発明の一実施例によれば、簡易モンテカルロ法により算出した深部線量分布データに、粒子減少率分布データの逆数を乗じて、照射線量を決定することにより、高精度な線量計算が可能となる。
本発明によれば、理論式や経験式を用いて計算で求める通常のモンテカルロ法と比較し、高速な線量計算が可能となる。つまり、ステップ毎の付与線量は治療計画装置に記録されたビームの積分深部線量分布(Integrated depth dose, IDD)を参照することから、理論式や経験式を用いて計算で求める通常のモンテカルロ法と比較し、高速な線量計算が可能となる。簡易モンテカルロ法においてこのような計算手法が成立する理由は、水等価厚空間上のビーム進行方向に対し粒子数を保存しているためである。なお、ビームの積分深部線量は大型の平行平板電離箱を用いた測定等で取得し、治療計画装置に事前登録される。
つまり、本発明によれば、スキャニング照射法の治療計画装置において、簡易モンテカルロ法を用いた高速且つ高精度な線量計算が可能な放射線治療計画装置を実現することができる。
また、本発明によれば、スキャニング照射法の治療計画方法において、簡易モンテカルロ法を用いた高速且つ高精度な線量計算が可能な放射線治療計画方法を実現することができる。
さらに、本発明の放射線治療計画装置を、図4に示すように、粒子線照射装置に接続または組み込めば、高速且つ高精度な線量計算による粒子線照射が可能になる。
したがって、本発明によれば、高速且つ高精度な線量計算による粒子線照射が可能であり、スループットを向上可能な粒子線治療システムを実現することができる。
なお、上述した例は、本発明を放射線治療計画装置、放射線治療計画方法、粒子線治療システムに適用した例であるが、粒子線に限らず、他の放射線治療計画装置、放射線治療計画方法、放射線治療システムにも適用することができる。
401・・・表示装置、 402・・・入力装置、 403・・・の演算処理装置、 404・・・メモリ、 405・・・データサーバ、 4030・・・最適化計算部、 4031・・・線量計算部、4032・・・制御部、 4041・・・粒子数逓減率テーブル、 4042・・・積分線量分布テーブル、 4061・・・入射部、 4062・・・加速部、 4063・・・照射制御部

Claims (15)

  1. 積分線量分布テーブルを参照することにより粒子への付与線量を算出する簡易モンテカルロ法を用いた放射線治療計画装置であって、
    放射線を照射する被照射体の標的領域及び処方線量が入力される入力部と、
    放射線の被照射体への進行距離と放射線の減少率との関係を示す放射線減少率テーブルが格納されたメモリと、
    上記標的領域及び上記処方線量に基づいて、上記積分線量分布テーブルと、上記減少率と、を用いて線量分布を算出する演算処理部と、
    を備え、上記演算処理が算出し、補正した線量分布を上記メモリに格納することを特徴とする放射線治療計画装置。
  2. 請求項1に記載の放射線治療計画装置において、
    上記演算処理部は、上記線量分布を算出する線量計算部と、目的関数を使用し、上記線量計算部が算出した線量分布と上記処方線量との相違を最小とする照射条件を算出する最適化計算部と、上記線量計算部及び最適化計算部の動作を制御する制御部とを有することを特徴とする放射線治療計画装置。
  3. 請求項1に記載の放射線治療計画装置において、
    上記放射線は粒子線であることを特徴とする放射線治療計画装置。
  4. 請求項1に記載の放射線治療計画装置において、
    上記演算処理部は、上記積分線量分布テーブルから参照した値に、上記減少率の逆数を乗じて上記付与線量を算出することを特徴とする放射線治療計画装置。
  5. 請求項1に記載の放射線治療計画装置において、
    上記演算処理部は、
    上記粒子が大角度散乱の場合に、上記付与線量の計算に上記減少率を用い、
    上記粒子が大角度散乱でない場合に、上記付与線量の計算に上記減少率を用いないことを特徴とする放射線治療計画装置。
  6. 積分線量分布テーブルを参照することにより粒子への付与線量を算出する簡易モンテカルロ法を用いた放射線治療計画装置の線量分布算出方法であって、
    演算処理装置が、
    入力部から入力された、放射線を照射する被放射線体の標的領域及び処方線量に基づいて、上記積分線量分布テーブルと、メモリに格納された放射線減少率テーブルが示す放射線の被照射体への進行距離に対する放射線の減少率と、を用いて線量分布を算出し、
    算出し、補正した線量分布を上記メモリに格納することを特徴とする放射線治療計画装置の線量分布算出方法。
  7. 請求項6に記載の放射線治療計画装置の線量分布算出方法において、
    上記演算処理装置は、目的関数を使用し上記算出した線量分布と上記処方線量との相違を最小とする照射条件を算出することを特徴とする放射線治療計画装置の線量分布算出方法。
  8. 請求項6に記載の放射線治療計画装置の線量分布算出方法において、
    上記放射線は粒子線であることを特徴とする放射線治療計画装置の線量分布算出方法。
  9. 請求項6に記載の放射線治療計画装置の線量分布算出方法において、
    上記演算処理装置は、上記積分線量分布テーブルから参照した値に、上記減少率の逆数を乗じて上記付与線量を算出することを特徴とする放射線治療計画装置の線量分布算出方法。
  10. 請求項6に記載の放射線治療計画装置の線量分布算出方法において、
    上記演算処理装置は、上記粒子が大角度散乱の場合に、上記付与線量の計算に上記減少率を用い、
    上記粒子が大角度散乱でない場合に、上記付与線量の計算に上記減少率を用いないことを特徴とする放射線治療計画装置の線量分布算出方法。
  11. 放射線を被照射体の標的領域に照射する放射線治療装置と、
    積分線量分布テーブルを参照することにより粒子への付与線量を算出する簡易モンテカルロ法を用いて上記放射線治療装置の放射線照射線量分布を算出し、放射線治療の計画を行う放射線治療計画装置と、
    を備える放射線治療システムであって、
    上記放射線治療計画装置は、
    放射線を照射する被照射体の標的領域及び処方線量が入力される入力部と、
    放射線の被照射体への進行距離と放射線の減少率との関係を示す放射線減少率テーブルが格納されたメモリと、
    上記標的領域及び上記処方線量に基づいて、上記積分線量分布テーブルと、上記減少率と、を用いて線量分布を算出する演算処理部と、
    上記演算処理が算出し、処方箋量を得るための照射条件に関するパラメータを上記放射線治療装置に転送するデータサーバと、
    を有することを特徴とする放射線治療システム。
  12. 請求項11に記載の放射線治療システムにおいて、
    上記放射線治療計画装置の上記演算処理部は、上記線量分布を算出する線量計算部と、目的関数を使用し、上記線量計算部が算出した線量分布と上記処方線量との相違を最小とする照射条件を算出する最適化計算部と、上記線量計算部及び最適化計算部の動作を制御する制御部とを有することを特徴とする放射線治療システム。
  13. 請求項11に記載の放射線治療システムにおいて、
    上記放射線は粒子線であることを特徴とする放射線治療システム。
  14. 請求項11に記載の放射線治療システムにおいて、
    上記演算処理部は、上記積分線量分布テーブルから参照した値に、上記減少率の逆数を乗じて上記付与線量を算出することを特徴とする放射線治療システム。
  15. 請求項11に記載の放射線治療システムにおいて、
    上記演算処理部は、
    上記粒子が大角度散乱の場合に、上記付与線量の計算に上記減少率を用い、
    上記粒子が大角度散乱でない場合に、上記付与線量の計算に上記減少率を用いないことを特徴とする放射線治療システム。
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