JP6415420B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、適度な硬さを有するとともに、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができるゲル状組成物を、肌面側の表面に含む吸収性物品に関する。また、本発明は、上述のゲル状組成物を表面に有する不織布に関する。
生理用ナプキン、パンティーライナー、おむつ等の吸収性物品では、長年積み重ねられてきた技術開発により吸収性能等の基本的性能が向上し、以前と比較して、経血や尿などの排泄物を吸収した後に、漏れ等が生じることが少なくなってきており、現在は、更なる高機能化、例えば、肌着に近い着用感を有すること、柔軟性及びクッション性に優れることなどが求められている。
例えば、特許文献1には、表面シートの外表面の少なくとも一部に、20℃で半固体又は固体であり部分的に着用者の肌へ移動可能である有効量のローションコーティングを含む吸収性物品が開示されている。さらに、特許文献1によれば、前記ローションコーティングは、(i)10〜95%が、20℃で可塑性又は流動性コンシステンシーを有し、石油ベースのエモリエント剤、脂肪酸エステルエモリエント剤、アルキルエトキシレートエモリエント剤、及びこれらの混合物から選択された1つを含む、実質的に水分を含まないエモリエント剤であり、(ii)5〜90%が、エモリエント剤を表面シートの外表面上に固定することを可能とする固定化物質であって、少なくとも35℃、好ましくは少なくとも40℃の融点を有し、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14−C22脂肪アルコール、C12−C22脂肪酸、C12−C22脂肪アルコールエトキシレート、及びそれらの混合物から選ばれる前記固定化物質であるとされている。
この特許文献1に開示された吸収性物品は、35℃以上の融点を有する固定化物質が、ローションコーティング内において室温(25℃)で結晶化し、前記ローションコーティングの粘度を増大させることにより、前記ローションコーティングを不動化させる作用を有するものであるが、このようにローションコーティングを高粘度化してしまうと、エモリエント効果を奏する有効成分がその内部に閉じ込められてしまい、特に、ローションコーティングに掛かる負荷が小さいような場合には、十分な量の油剤が放出されず、満足のいくエモリエント効果が得られない虞があった。また、このような高粘度のローションコーティングは、吸収性物品の表面シートに適用される材料(すなわち、肌に直接接触する材料)としては硬さが硬いため、着用感にも劣る虞があった。
一方、特許文献2には、ゲルの硬さや伸びなどに関して遅延弾性を示すゲル状組成物が開示されている。この特許文献2に開示された組成物は、数平均分子量が13万以上の高分子量のトリブロック型スチレン系熱可塑性エラストマーと、数平均分子量が10万以下の低分子量のトリブロック型スチレン系熱可塑性エラストマーと、軟化剤とからなるゲルエラストマーであり、高分子量のトリブロック型スチレン系エラストマーが多量の軟化剤を吸収保持することにより組成物の柔軟性が確保されつつ、低分子量のトリブロック型スチレン系エラストマーを含有することにより遅延弾性が付与されているものであるが、このような組成物においても、ゲル表面のべたつきや含有成分の放出性という点に関しては、未だ不十分なものであった。
特表平10−509896号公報 特開2001−151980号公報
そこで、本発明は、適度な硬さを有するとともに、軽い負荷でも油剤が容易に放出されることにより、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができるゲル状組成物を表面に含む吸収性物品を提供することを目的とする。また、本発明は、適度な硬さを有するとともに、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができるゲル状組成物を表面に有する不織布を提供することも目的とする。
本発明の一態様(態様1)に係る吸収性物品は、着用者の肌面と当接する表面にゲル状組成物を含む吸収性物品であって、前記ゲル状組成物は、重量平均分子量が10万以上18万未満であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と、重量平均分子量が18万以上30万以下であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)とを、(A1)/(A2)=95/5〜50/50の質量比で含む、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対し、37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sである脂肪族炭化水素油(B)を500〜4800質量部と、20℃で液体である炭素数8〜22の脂肪酸トリグリセリド(C)を60〜1000質量部とを含有するものである。
この態様1の吸収性物品は、着用者の肌面と当接する表面に含まれるゲル状組成物が、上記特定の組成で構成されているため、適度な硬さを有するとともに、軽い負荷でも油剤が容易に放出されることにより、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができる。したがって、態様1の吸収性物品は、吸収性物品として優れた着用感及びエモリエント効果を得ることができる。
本発明の別の態様(態様2)の吸収性物品は、上記態様1の吸収性物品において、前記ブロック共重合体が、分子鎖中にスチレン系ハードセグメントからなるブロック成分を2つ以上有するものである。
この態様2の吸収性物品は、上述のゲル状組成物に含まれる前記ブロック共重合体が、分子鎖中にスチレン系ハードセグメントからなるブロック成分を2つ以上有するものであるため、より適度な硬さのゲルが得られやすく、また、油剤の放出性も良好なものとなる。
本発明の更に別の態様(態様3)の吸収性物品は、上記態様2の吸収性物品において、前記ブロック共重合体の分子鎖における少なくとも両末端のブロック成分が、前記スチレン系ハードセグメントからなるブロック成分である。
この態様3の吸収性物品は、上述のゲル状組成物に含まれる前記ブロック共重合体が、当該ブロック共重合体の分子鎖における少なくとも両末端のブロック成分が、前記スチレン系ハードセグメントからなるブロック成分であるため、更に適度な硬さのゲルが得られやすく、また、油剤の放出性も更に良好なものとなる。
本発明の更に別の態様(態様4)の吸収性物品は、上記態様1〜3のいずれか一つの吸収性物品において、前記脂肪族炭化水素油(B)が、水添ポリイソブテンである。
この態様4の吸収性物品は、上述のゲル状組成物に含まれる前記脂肪族炭化水素油(B)が、水添ポリイソブテンであるため、ゲルから放出された油剤によるべたつきが生じにくく、上述のエモリエント効果をより効果的に発揮することができる。
本発明の更に別の態様(態様5)の吸収性物品は、上記態様1〜4のいずれか一つの吸収性物品において、前記脂肪酸トリグリセリド(C)が、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)とを、(c1)/(c2)=95/5〜50/50の質量比で含有するものである。
この態様5の吸収性物品は、上述のゲル状組成物に含まれる前記脂肪酸トリグリセリド(C)が、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)とを所定の質量比で含有するものであるため、より適度な硬さのゲルを得ることができ、且つ、より優れたエモリエント効果を発揮することができる。
本発明の別の態様(態様6)の吸収性物品は、上記態様1〜5のいずれか一つの吸収性物品において、当該吸収性物品は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体と、を備え、前記着用者の肌面と当接する表面が、前記表面シートの肌面側の表面である。
この態様6の吸収性物品は、上記特定の組成で構成されたゲル状組成物が、着用者の肌面に最も接触しやすい表面シートの肌面側の表面に含まれているため、上述のゲル状組成物による効果を、より確実に発揮することができる。
本発明の更に別の態様(態様7)の吸収性物品は、上記態様6の吸収性物品において、前記ゲル状組成物が、前記表面シートの肌面側の表面に、平面視にて畝状又はドット状に配置されている。
この態様7の吸収性物品は、上述のゲル状組成物が、平面視にて畝状又はドット状に配置されて、前記表面シートの肌面側の表面に、疎水性を有する前記ゲル状組成物の配置領域と、前記ゲル状組成物の非配置領域とが形成されているため、前記ゲル状組成物の配置領域における疎水性による排他作用と、前記ゲル状組成物の非配置領域における表面シート内部の親水性による吸水作用との相乗作用によって、前記表面シートの肌面側の表面上に供給された尿などの液状排泄物が、前記ゲル状組成物の非配置領域を介して、前記表面シートの内部に引き込まれやすい状態を形成することができる。それにより、本態様6の吸収性物品は、上述のゲルの硬さやエモリエント効果に係る効果だけでなく、吸収性物品として優れた液浸透性及び液捌け性を得ることができる。
本発明の更に別の態様(態様8)の吸収性物品は、上記態様1〜7のいずれか一つの吸収性物品において、当該吸収性物品が、生理用ナプキン、パンティーライナー、おむつ又は尿取りパッドである。
この態様8の吸収性物品は、当該吸収性物品が生理用ナプキン、パンティーライナー、おむつ又は尿取りパッドであり、刺激に対して特に敏感な部分の肌面に適用されるものであるため、上述のゲル状組成物によって奏される効果を、より好適に享受することができる。
本発明の更に別の態様(態様9)は、表面にゲル状組成物を有する不織布であって、前記ゲル状組成物は、重量平均分子量が10万以上18万未満であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と、重量平均分子量が18万以上30万以下であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)とを、(A1)/(A2)=95/5〜50/50の質量比で含む、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対し、37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sである脂肪族炭化水素油(B)を500〜4800質量部と、20℃で液体である炭素数8〜22の脂肪酸トリグリセリド(C)を60〜1000質量部とを含有するものである。
この態様9の不織布は、表面に含まれるゲル状組成物が、上記特定の組成で構成されているため、適度な硬さを有するとともに、軽い負荷でも油剤が容易に放出されることにより、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができる。したがって、態様8の不織布は、当該不織布又は当該不織布を用いた製品に、快適な使用感や着用感、エモリエント効果を提供することができる。
本発明によれば、適度な硬さを有するとともに、軽い負荷でも油剤が容易に放出されることにより、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができるゲル状組成物を表面に含む吸収性物品、及び当該ゲル状組成物を表面に有する不織布を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1を示す平面図である。 図2は、本発明の別の実施形態に係る生理用ナプキン1’を示す平面図である。
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、吸収性物品、不織布等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
本明細書において用いられる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「幅方向W」は、「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向(短手方向)」を指し、「長手方向L」は、「平面視における縦長の対象物の長さの長い方向」を指し、「厚さ方向」は、「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指し、これらの幅方向W、長手方向L及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。さらに、本明細書では、「縦長の対象物(例えば、吸収性物品、不織布等)の幅方向Wにおいて、長手方向Lに延びる幅方向中央軸線に対して相対的に近位側」を「幅方向の内方側」といい、「前記縦長の対象物の幅方向Wにおいて、前記幅方向中央軸線に対して相対的に遠位側」を「幅方向の外方側」という。
また、本明細書では、特に断りのない限り、吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側」を「肌面側」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側」を「非肌面側」という。
図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1(吸収性物品)を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る生理用ナプキン1は、平面視にて、全体の外形形状が長手方向Lに長い縦長の形状を有していて、さらに、前記長手方向Lにおける中央部分の外縁が、幅方向Wの外方側に向かって略台形状に突出した形状を有している。さらに、この生理用ナプキン1は、図1に示すように、幅方向の両端部においてそれぞれ長手方向Lに沿って延在するサイドシート4と、前記幅方向の両端部においてそれぞれ長手方向Lに延びる外縁に沿って延在するエンボス部5と、を備えている。
また、生理用ナプキン1は、厚さ方向において、肌面側に位置する液透過性の表面シート2と、非肌面側に位置する液不透過性の裏面シート(図示せず)と、これら各シートの間に位置する吸収体3と、を備えていて、さらに、前記表面シート2は、その肌面側の表面において、長手方向Lに沿って延びる複数本の畝状のゲル状組成物6を含んでいる。
以下、本発明の吸収性物品に用いられるゲル状組成物について、更に詳細に説明する。
[ゲル状組成物]
本発明において、前記ゲル状組成物は、重量平均分子量が10万以上18万未満であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と、重量平均分子量が18万以上30万以下であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)とを、(A1)/(A2)=95/5〜50/50の質量比で含み、且つ分子量の分散度(Mw/Mn)が1.25〜1.60である、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対し、37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sである脂肪族炭化水素油(B)を500〜4800質量部と、20℃で液体である炭素数8〜22の脂肪酸トリグリセリド(C)を60〜1000質量部とを含有するものである。このような特定の組成で構成されたゲル状組成物は、適度な硬さを有するとともに、軽い負荷でも油剤が容易に放出されることにより、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができるため、このようなゲル状組成物が、吸収性物品の着用者の肌面と当接する表面に含まれていると、吸収性物品として優れた着用感及びエモリエント効果を得ることができる。
前記ゲル状組成物に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)は、スチレン系ハードセグメントとソフトセグメントとを含むトリブロック以上のブロック共重合体であるが、さらに、適度な硬さのゲルが得られやすい点及び油剤の放出性が良好となる点から、好ましくはスチレン系ハードセグメントからなるブロック成分を分子鎖中に2つ以上有するブロック共重合体であり、更に好ましくは分子鎖における少なくとも両末端のブロック成分が、前記スチレン系ハードセグメントからなるブロック成分であるブロック共重合体である。前記スチレン系ハードセグメントとしては、特に制限されないが、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(o−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−メチルスチレン)などのスチレン系ポリマーが挙げられる。また、前記ソフトセグメントとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのオレフィン系ポリマーが挙げられる。なお、本明細書においては、スチレン系ハードセグメントからなるブロック成分を「スチレン系ブロック成分」、オレフィン系ソフトセグメントからなるブロック成分を「オレフィン系ブロック成分」と記すことがある。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)として用いる共重合体は、トリブロック以上のスチレン系ブロック共重合体であれば、特に制限されないが、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、及びこれら2種以上の組み合わせなどが挙げられる。これらの中でも、表面シートに適用した後のゲルの硬さや伸び等の点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)又はこれら2種以上の組み合わせが好ましい。前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)としてジブロック共重合体を用いた場合は、スチレン系ハードセグメントの相互作用(π−πスタッキング)が弱くなるため、前記ゲルの硬さや弾力性が十分に得られない(すなわち、柔らかくなり過ぎる)虞がある。なお、前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、前記スチレン系ハードセグメントの相互作用により形成される複数の凝集ドメインと、該複数の凝集ドメインを連結するオレフィン系ソフトセグメントとによって網目状のネットワーク構造が形成されるため、弾性体としての機能を発現するものと考えられる。また、このような網目状のネットワーク構造は、後述する油剤(すなわち、脂肪族炭化水素油(B)及び脂肪酸トリグリセリド(C))等を、適度に放出させつつ、保持する機能を有するものと考えられる。
前記ブロック共重合体は、好ましくは10〜50質量%のスチレン系ブロック成分と約50〜90質量%のオレフィン系ブロック成分、更に好ましくは15〜40質量%のスチレン系ブロック成分と60〜85質量%のオレフィン系ブロック成分を含む。スチレン系ブロック成分の量が10質量%を下回ると、前記凝集ドメインを形成するスチレン系ブロック成分の量が少なくなるので、前記スチレン系熱可塑性エラストマーが上述の網目状のネットワーク構造を形成しにくくなる。一方、スチレン系ブロック成分の量が50質量%を超えると、前記油剤等を保持するオレフィン系ブロック成分の量が少なくなるので、保持できる油剤等の量が少なくなり、また、前記スチレン系ハードセグメントにより形成される凝集ドメインの量が多くなるので、表面シートに適用した後のゲルが硬くなり、吸収性物品の着用感が劣る虞がある。
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)は、重量平均分子量の異なる2種類のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)の混合物からなる。
前記2種類のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)のうち、重量平均分子量の低い方のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)(以下、「低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)」と記すことがある。)は、重量平均分子量が10万以上18万未満の範囲内であり、好ましくは10万〜15万の範囲内である。この重量平均分子量が10万未満であると、表面シートに適用した後のゲルの硬さが低下する(すなわち、ゲルが柔らかくなり過ぎる)。また、前記2種類のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)のうち、重量平均分子量の高い方のスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)(以下、「高分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)」と記すことがある。)は、重量平均分子量が18万以上30万以下の範囲内であり、好ましくは22万〜28万の範囲内である。この重量平均分子量が30万を超えると、前記ゲルの硬さが低下したり(すなわち、ゲルが柔らかくなり過ぎたり)、べたつきが生じたりする虞がある。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)は、分散度(すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))が1.25〜1.60の範囲内であることが好ましい。分散度がこのような範囲内にあると、ゲルが適度な硬さになりやすい上、油剤が適度な量で放出されやすくなる。
前記2種類のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)及び前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)の各重量平均分子量(Mw)と、前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)の分散度(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を移動相として、以下の条件でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により求めることができる。
[GPC測定条件]
装置 :GPC−8220 (東ソー(株)製)
カラム :Shodex LF−804 (昭和電工(株)製)
温度 :40℃
溶媒 :THF
流量 :1.0mL/分
試料濃度:0.05〜0.6質量%
注入量 :0.1mL
検出 :RI(示差屈折計)
上述したように、本発明において、前記ゲル状組成物は、重量平均分子量の異なる2種類のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)の混合物を含有するが、その配合量は、低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と高分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)の質量比で、(A1)/(A2)=95/5〜50/50の範囲内であり、好ましくは90/10〜60/40、更に好ましくは80/20〜70/30である。前記質量比において、低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)の配合比率が95を超えると、表面シートに適用した後のゲルの硬さが不十分となり、該配合比率が50未満であると、前記ゲルから放出される油剤の放出量が低下する虞がある。
本発明において、前記ゲル状組成物は、37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sである脂肪族炭化水素油(B)を更に含む。前記脂肪族炭化水素油(B)は、炭素と水素からなる脂肪族の化合物であれば特に限定されず、飽和脂肪族炭化水素油及び不飽和脂肪族炭化水素油のいずれであってもよい。
飽和脂肪族炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、α−オレフィンオリゴマー、スクワランなどが挙げられる。また、不飽和脂肪族炭化水素油としては、例えば、スクワレン、ポリブテンなどが挙げられる。これらの中でも、水添ポリイソブテンは、放出された油剤によるべたつきも生じにくく、上述のエモリエント効果をより効果的に発揮することができるため、前記脂肪族炭化水素油(B)として特に好ましく用いることができる。
前記脂肪族炭化水素油(B)は、37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sの範囲内であり、好ましくは10〜30mm2/sの範囲内、更に好ましくは10〜20mm2/sの範囲内である。この動粘度が5mm2/s未満であると、脂肪族炭化水素油(B)がゲル状組成物の製造時に揮発しやすくなるため、表面シートに適用した後のゲルの物性にバラツキが生じる虞がある。一方、この動粘度が50mm2/sを超えると、表面シートに適用した後のゲルが硬くなり、油剤の放出量が低下する。なお、脂肪族炭化水素油(B)の動粘度は、JIS K 2283:2000の「5.動粘度試験方法」に従って、キャノンフェンスケ粘度計を用いて、37.8℃の試験温度で測定することにより得ることができる。
前記脂肪族炭化水素油(B)の配合量は、前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対して、500〜4800質量部の範囲内であり、好ましくは800〜3000質量部の範囲内、更に好ましくは1000〜1500質量部の範囲内である。この配合量が500質量部未満であると、表面シートに適用した後のゲルが硬くなる。一方、この配合量が4800質量部を超えると、前記ゲルが柔らかくなり過ぎて、前記ゲルの形状を維持することが難しくなる。
本発明において、前記ゲル状組成物は、20℃(すなわち、常温)で液体であり、炭素数8〜22の脂肪酸トリグリセリド(C)を更に含む。本発明に用いる脂肪酸トリグリセリドは、例えば、グリセリンと一種又は複数種の脂肪酸とを無触媒下で脱水合成反応させたり、或いは、グリセリンと一種又は複数種の脂肪酸のアルコールエステルとをエステル交換反応させたりすることにより、得ることができる。
本発明に用い得る脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸等の飽和脂肪酸を用いた、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)が挙げられる。具体的な市販品の例としては、例えば、日油(株)製のパナセート(商品名)、花王(株)製のココナード(商品名)、日清オイリオ(株)のODOなどが挙げられる。
さらに、本発明に用い得る脂肪酸トリグリセリドとしては、オレイン酸のトリグリセリド等の炭素数14〜22の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)が挙げられる。具体的な市販品の例としては、例えば、オリーブ油、大豆油、椿油、ヒマワリ油、菜種油、ゴマ油、コーン油、綿実油、紅花油、ホホバ油、ヒマワリ油などが挙げられる。これらの中でも、オレイン酸トリグリセリドを70質量%以上の割合で含有している、オリーブ油、椿油及びヒマワリ油が特に好ましい。
前記脂肪酸トリグリセリド(C)の配合量は、前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対して、60〜1000質量部の範囲内であり、好ましくは80〜900の範囲内、更に好ましくは100〜700質量部の範囲内である。この配合量が60質量部未満であると、油剤の放出量が低下し、一方、1000質量部を超えると、油剤の放出量が多くなり過ぎて、べたつきを生じる場合がある。
また、本発明では、前記脂肪酸トリグリセリド(C)として、上述の炭素数の異なる2種類の脂肪酸トリグリセリド(c1,c2)の混合物を用いることが好ましい。これらの具体的な配合量としては、ゲルの硬さやエモリエント効果が向上するという点から、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)と炭素数14〜28の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)とを、(c1)/(c2)=95/5〜50/50の範囲内の質量比で含有することが好ましい。前記脂肪酸トリグリセリド(C)が、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)とを上述の範囲内の質量比で含有するものであると、より適度な硬さのゲルを得ることができ、且つ、より優れたエモリエント効果を発揮することができる。
本発明において、前記ゲル状組成物は、本発明の効果を更に向上させるために、前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)、前記脂肪族炭化水素油(B)及び前記脂肪酸トリグリセリド(C)に加えて、シリコーンオイル(D)を更に含有していてもよい。このシリコーンオイル(D)の配合量は、前記スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対して、5〜60質量部の範囲内であることが好ましい。シリコーンオイル(D)の配合量がこのような範囲内にあると、ゲル状組成物中における油剤の含有量が少ない場合でも適度な量の油剤を放出することができるため、べたつきを生じることなく更に優れたエモリエント効果を発揮することができる。
なお、本発明において、前記ゲル状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、一般の化粧料やローション等に使用される他の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、顔料、香料などが挙げられる。
本発明に用いる前記ゲル状組成物は、上述した各種成分を同時に或いは任意の順に加えて溶融混合することにより、製造することができる。溶融混合の手段は、特に限定されず、任意の公知の手段を採用することができる。そのような手段としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー、配合釜などの混合装置を用いた手段が挙げられる。
本発明に用いる前記ゲル状組成物は、硬さと伸びに優れるとともに、油剤の適度な放出性(徐放性)を有するため、各種塗工装置又は成形装置への付着を抑制しつつ、塗工ないし任意の成形(例えば、押出成形、射出成形、ディッピング成形等)を行うことができる。さらに、前記ゲル状組成物は、高分子量のスチレン系熱可塑性エラストマーよりも、低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマーを多く配合しているため、100℃前後の温度条件においても適度な流動性を呈することから、不織布や紙、布帛、オレフィン系樹脂、PET樹脂などの各種基材に対して、塗布や成形等による積層や一体化などを容易に行うことができる。
上述のような特定の組成によって構成されたゲル状組成物は、吸収性物品の着用者の肌面と当接する表面に配置される。本発明において、前記着用者の肌面と当接する表面は、着用者が本発明の吸収性物品を着用したときに、着用者の肌面に実際に当接する表面のほか、着用者の動作や体圧が掛かったときに当接し得る表面を含む。そのような表面としては、上述の表面シートの肌面側の表面のほか、例えば、サイドシート(上述の実施形態に係る生理用ナプキン1のサイドシート4を参照)や立体ギャザーシート等の肌面側の表面などが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1では、前記ゲル状組成物6は、表面シート2の肌面側の表面に配置されている。このように前記ゲル状組成物が着用者の肌面に最も接触しやすい表面シートの肌面側の表面に配置されていると、上述のゲル状組成物による効果を、より確実に発揮することができる。
また、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1では、前記ゲル状組成物6は、表面シート2の肌面側の表面において、平面視にて前記生理用ナプキン1の長手方向Lに沿って連続的に延在し、且つ、幅方向Wに所定間隔を空けて並ぶ複数本の畝状の形態で配置されている(図1を参照)。なお、本発明の吸収性物品においては、ゲル状組成物の配置形態はこれに限定されず、例えば、前記ゲル状組成物は、前記吸収性物品の長手方向Lの全域に(すなわち、長手方向Lの両端部に亘って)、非連続的(間欠的)に配置されていてもよく、前記吸収性物品の長手方向Lにおける一部の領域に、連続的又は非連続的に配置されていてもよい。
図2は、本発明の別の実施形態に係る生理用ナプキン1’(吸収性物品)を示す平面図である。なお、図2において、図1に示す生理用ナプキン1と同一の部材(例えば、表面シート2、吸収体3等)については、同一の符号を付している。この実施形態に係る生理用ナプキン1’においては、ゲル状組成物6’が、前記表面シート2の肌面側の表面において、平面視にて千鳥状に並ぶ複数のドット状の形態で配置されている。
上述の各実施形態のように、ゲル状組成物が、平面視にて畝状又はドット状に配置されていると、表面シートの肌面側の表面において、疎水性を有する前記ゲル状組成物の配置領域と、前記ゲル状組成物の非配置領域とが形成されるため、前記ゲル状組成物の配置領域における疎水性による水(尿などの液状排泄物)への排他作用と、前記ゲル状組成物の非配置領域における表面シート内部の親水性による吸水作用との相乗作用によって、前記表面シートの肌面側の表面上に供給された尿などの液状排泄物が、前記ゲル状組成物の非配置領域を介して、前記表面シートの内部に引き込まれやすい状態を形成することができる。それにより、ゲル状組成物が上述の各実施形態のように配置された吸収性物品においては、上述のゲルの硬さやエモリエント効果に係る効果だけでなく、吸収性物品として優れた液浸透性及び液捌け性を発揮することができる。
前記ゲル状組成物は、表面シートと吸収体とが平面視にて重複する領域(すなわち、厚さ方向に重複する領域)において、該領域の1〜50%の面積率で配置されていることが好ましく、該領域の3〜40%の面積率で配置されていることが更に好ましく、該領域の5〜30%の面積率で配置されていることが特に好ましい。ゲル状組成物が、前記領域の1%未満の面積率で配置されていると、表面シート上におけるゲル状組成物の量が少量過ぎるため、当該ゲル状組成物によって奏される効果が十分に発揮できない。一方、前記ゲル状組成物が、前記領域の50%を超える面積率で配置されていると、当該ゲル状組成物が配置されている表面シート上の領域は液状排泄物を吸収しないため、表面シートにおいて液状排泄物を吸収することのできる領域が少なくなり過ぎて、吸収性物品の吸収性能が低下する虞がある。
また、本発明において、表面シートは、上述のゲル状組成物を好ましくは1〜30g/m2、更に好ましくは2〜20g/m2、特に好ましくは3〜10g/m2の含有量で含む。なお、本明細書において、前記ゲル状組成物の含有量は、次の測定方法に従って求めることができる。
[表面シートに含まれるゲル状組成物の含有量の測定方法]
(1)ゲル状組成物が配置された表面シートの測定対象となる所定範囲を、例えば、カッターの替え刃等の鋭利な刃物を用いて、その厚さを変化させないように切り出し、含有量測定用のサンプルを得る。
(2)切り出したサンプルの面積:SA(m2)及び質量:SM0(g)を測定する。
(3)測定後のサンプルを、芳香族系溶媒(例えば、キシレン等)などのゲル状組成物が可溶な溶媒中に浸し、少なくとも3分間攪拌して、前記ゲル状組成物を溶媒中に溶出させる。
(4)予め質量を測定したろ紙を用いて前記溶媒中のサンプルをろ過した後、そのままろ紙上において、サンプルを溶媒で十分に洗浄する。洗浄後のサンプルをろ紙ごと100℃のオーブン内で十分に乾燥させる。
(5)乾燥後のろ紙及びサンプルの質量を測定し、その値から予め測定したろ紙の質量を差し引くことにより、乾燥後のサンプルの質量:SM1(g)を算出する。
(6)ゲル状組成物の含有量GBS(g/m2)を、次式(1)により算出する。
Figure 0006415420
なお、前記ゲル状組成物の含有量は、測定誤差を少なくするために、サンプルの総面積が100cm2を超えるように複数の吸収性物品から複数のサンプルを切り出して、それぞれのサンプルについて上記(2)〜(6)の測定作業を行い、それぞれの測定作業から得られた含有量GBSの平均値を採用する。
本発明において、上述のゲル状組成物を吸収性物品の表面(例えば、表面シートの肌面側の表面等)に配置する方法は、特に限定されず、任意の公知の塗工方法を採用することができる。例えば、前記ゲル状組成物は、吐出ノズルを備えた押出装置;スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーター等の非接触式のコーター;接触式のコーターなどの塗工装置を用いて、吸収性物品の表面に塗工することができる。
また、前記ゲル状組成物は、不織布などの表面シートの素材を製造する際に塗工しても、或いは吸収性物品の製造ラインにおいて前記表面シート上に塗工してもよいが、設備投資を抑制する観点から、前記ゲル状組成物は、吸収性物品の製造ラインにおいて前記表面シート上に塗工することが好ましく、特に、油剤等の脱落による汚染を抑制するという点から、前記製造ラインの下流工程(例えば、製品を個別に梱包する工程の直前など)において前記表面シート上に塗工することが好ましい。
以下、本発明の吸収性物品を構成する各種部材について、更に詳細に説明する。
[表面シート]
本発明の吸収性物品において、液透過性の表面シートは、例えば、不織布、織布などのシート状の繊維構造体を用いることができる。前記表面シートとして不織布又は織布を用いる場合、該不織布又は織布を構成する繊維としては、例えば、天然繊維、化学繊維等が挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン等のセルロース繊維;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース;熱可塑性疎水性化学繊維;親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維などが挙げられる。さらに、前記熱可塑性疎水性化学繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる繊維、PE及びPPのグラフト重合体からなる繊維などが挙げられる。
前記不織布の例としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)などが挙げられる。
また、前記不織布又は織布は、親水化処理されていることが好ましい。この親水化処理の方法としては、特に限定されないが、不織布又は織布の表面に親水化剤をコーティングする方法、不織布又は織布を構成する繊維の表面に親水化剤をコーティングする方法、不織布又は織布を構成する繊維の原料である合成樹脂に親水化剤を含有させる方法などが挙げられる。
[裏面シート]
本発明の吸収性物品において、液不透過性の裏面シートは、PE、PP等を含むフィルム、通気性を有する樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性を有する樹脂フィルムを貼り合わせた積層体、SMS等の複層不織布などを用いることができる。吸収性物品の柔軟性等を考慮すると、例えば、坪量が約15〜約30g/m2の低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムなどが好ましい。
また、本発明においては、吸収性物品が、表面シートと吸収体との間及び/又は裏面シートと吸収体との間に、面方向(特に、長手方向L)に液拡散性を有する中間シートを含むことができる。このような中間シートとしては、上述の表面シートを構成するシート状の繊維構造体と同様のものを用いることができる。
[吸収体]
本発明の吸収性物品において、吸収体は、特に制限されず、当分野において公知の任意の吸収体を用いることができる。本発明の吸収性物品に用い得る吸収体の例としては、吸収性材料によって構成される吸収コアを、親水性を有するコアラップシートで覆ったものなどが挙げられる。前記吸収コアを構成する吸収性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン等のセルロース;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース;親水化処理された熱可塑性疎水性化学繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物、及びこれら2種以上の任意の組み合わせなどが挙げられる。
また、前記コアラップシートとしては、人体から排出される体液等の液状排泄物が透過できる程度の液透過性を有し、且つ、該シートに内包される吸収コアの吸収性材料が透過しない程度のバリアー性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ティッシュや不織布、織布などのシート状の繊維構造体が挙げられる。
本発明の吸収性物品に用い得る吸収体の他の例としては、吸収性繊維及び/又は吸収性ポリマーによって構成された吸収性シートなどが挙げられ、その厚さは、特に限定されないが、0.3〜5.0mmの範囲内であることが好ましい。このような吸収性シートとしては、生理用ナプキン等の一般的な吸収性物品に用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。
本発明は、上述した実施形態の生理用ナプキンのほかに、例えば、パンティーライナー、おむつ又は(軽)失禁パッド等の様々な吸収性物品に適用することができる。このような生理用ナプキン、パンティーライナー、おむつ又は尿取りパッド等の吸収性物品は、刺激に対して特に敏感な部分の肌面に適用されるものであるため、上述のゲル状組成物によって奏される効果を、より好適に享受することができる。
また、本発明は、上述の吸収性物品のほかに、不織布にも適用することができる。本発明における不織布は、該不織布又は該不織布を用いた製品の使用者の肌と直接接触し得る領域の少なくとも一部に、上記特定の組成で構成されたゲル状組成物を有している。
上記特定の組成で構成されたゲル状組成物は、適度な硬さを有するとともに、軽い負荷でも油剤が容易に放出されることにより、べたつきを生じることなく優れたエモリエント効果を発揮することができるものであるため、このようなゲル状組成物を表面に有する本発明の不織布は、当該不織布又は当該不織布を用いた製品に、快適な使用感や着用感、エモリエント効果を提供することができる。
このような不織布においても、上述のゲル状組成物は、使用者の肌と直接接触し得る領域の少なくとも一部に、上述の生理用ナプキンの実施形態と同様の形態(すなわち、畝状又はドット状)で配置することができる。なお、前記不織布を用いた製品としては、例えば、マスク、ウェットティッシュ等が挙げられる。
以下、本発明の実施例及び比較例を例示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、このような実施例のみに限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例の吸収性物品におけるゲル状組成物を製造するにあたっては、各種配合成分として、それぞれ以下の市販品を用いた。
1)スチレン系熱可塑性エラストマー(A1,A2)
a)低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)
・セプトン8004(Mwが11万のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、クラレ(株)製)
b)低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1’)
・クレイトンG1652(Mwが8万のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、クレイトンポリマー社製)
c)高分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)
・クレイトンG1654(Mwが20万のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、クレイトンポリマー社製)
・セプトン2005(Mwが26万のスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、クラレ(株)製)
2)油剤
a)脂肪族炭化水素油(B)
・パールリームEX(37.8℃における動粘度が10mm2/sの水添ポリイソブテン、日油(株)製)
・パールリーム6(37.8℃における動粘度が20mm2/sの水添ポリイソブテン、日油(株)製)
b)脂肪族炭化水素油(B’)
・流動パラフィン(37.8℃における動粘度が75mm/sの流動パラフィン、(株)MORESCO製)
c)脂肪酸トリグリセリド(C)
・パナセート810S(カプリン酸、カプリル酸の脂肪酸トリグリセリド、日油(株)製)
・オリーブ油リファインド(オリーブ油、DSP五協&フードケミカル(株)製)
・菜種白鮫油(菜種油、昭和産業(株)製)
d)その他エステル油(C’)
・サラスコ816T(2−エチルヘキサン酸セチル、日清オイリオグループ(株)製)
3)その他の油剤(D)
・SH200−100cs(25℃における動粘度が100mm2/sのジメチルポリシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製)
1.ゲル状組成物の製造
上記の各種配合成分を、下記の表1に示す各配合量でセパラブルフラスコに仕込み、内容物を撹拌しながら130℃で5時間溶融混合した後、冷却して、ゲル状組成物No.1−1〜1−9及び2−1〜2−6を得た。得られた各ゲル状組成物の特性を、以下の各種試験方法により評価した。なお、各ゲル状組成物の組成及び物性(重量平均分子量及び分散度)については表1に示し、各種試験方法による評価結果については表2に示す。
2.ゲル状組成物の評価
[物性試験]
(1)硬さ
上記のようにして得られたゲル状組成物を用いて、直径40mm、厚さ8mmの円柱状ゲルからなる試験片を作製した。この試験片を、直径120mmのステンレス製圧縮治具が取り付けられた小型卓上試験機EzTest((株)島津製作所製)にセットし、前記試験片を速度5mm/分で4mm圧縮したときの試験力(N)を測定した。測定した値を次の基準により評価した。なお、測定結果及び評価結果は、以下の表2に示す。
○: 10N以上、40N以下
×: 10N未満又は40Nを超える
(2)放出性
得られたゲル状組成物を用いて、直径40mm、厚さ8mmの円柱状ゲルからなる試験片を作製した。作製した試験片の上面に、予め質量(W1)を測定しておいた市販のティッシュペーパー(2枚1組)を載せ、該ティッシュペーパーの上から10gの荷重をかけて室温(23℃)で24時間放置した後、前記ティッシュペーパーを取り外して、その質量(W2)を測定した。そして、予め測定しておいたティッシュペーパーの質量(W1)と、24時間放置した後に測定したティッシュペーパーの質量(W2)とから、下式(2)に基づいて、ティッシュペーパーの質量増加率(%)を算出し、さらに、該質量増加率(%)を放出量として、以下の基準により評価した。なお、測定結果及び評価結果は、以下の表2に示す。
Figure 0006415420
○: 質量増加率(放出量)が2%以上10%以下
×: 質量増加率(放出量)が2%未満又は10%を超える
Figure 0006415420
3.吸収性物品の製造
上記のようにして得られたゲル状組成物No.1−1〜1−9及び2−1〜2−6を、市販の生理用ナプキンの表面シートの肌面側の表面に、長手方向に延びる複数本の畝状に塗工することにより、実施例1〜9及び比較例1〜6の吸収性物品(生理用ナプキン)を得た。
4.吸収性物品の評価
[官能試験]
上記のようにして得られた実施例1〜9及び比較例1〜6の吸収性物品を23℃で一晩放置した後、前記吸収性物品における表面シートの肌面側の表面を指で左右に10往復させたときの触感について、「柔らかさ」及び「べたつき」の観点から評価した。また、前記表面シートの肌面側の表面(すなわち、ゲル状組成物が塗工された表面)を手の甲に付着させて15分間放置した後、肌の状態を確認し、「エモリエント効果」を評価した。これらの評価は、10人の被験者に実施してもらい、以下の各評価基準に従ってアンケートを行った。このアンケートの結果は、10人の合計点により評価した。
なお、上述のエモリエント効果の評価にあたっては、被験者に対して、エモリエント効果が、「油性の膜の働きで肌からの水分の蒸散が抑えられることにより、皮膚を柔らかくする作用」を意味することを事前に説明した。
(i)柔らかさ
3点: 弾力があり、柔らかい
2点: 弾力があるが、硬い
1点: 弾力がなく硬い、又は弾力がなく柔らかい
(ii)べたつき
3点: 油剤で指がべたつかない
2点: 油剤で指がべたつく
1点: 指が濡れない
(iii)エモリエント効果
3点: エモリエント効果が感じられる
2点: エモリエント効果があまり感じられない
1点: エモリエント効果がまったく感じられない
上記(i)〜(iii)の各官能試験のそれぞれの合計点を、以下の基準により判定した。なお、各官能試験の合計点及び評価結果は、以下の表2に示す(なお、表中の括弧内の数字が各官能試験の合計点を示す)。
<合計点の評価>
◎: 合計点が26点以上
○: 合計点が21点以上、26点未満
△: 合計点が15点以上、21点未満
×: 合計点が15点未満
Figure 0006415420
表2に示すように実施例1〜9の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.1−1〜1−9の物性試験及び官能試験のすべての評価において良好な結果を示した。特に、実施例8の吸収性物品については、用いたゲル状組成物No.1−8が、油剤の放出性に優れており、吸収性物品の官能評価においても、エモリエント効果について高い評価結果が得られた。また、実施例9の吸収性物品については、用いたゲル状組成物No.1−9中の脂肪酸トリグリセリド(C)の配合量が少ないにも拘わらず、油剤の放出性に優れており、吸収性物品の官能評価においても、エモリエント効果について高い評価結果が得られた。
一方、比較例1の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.2−1がスチレン系熱可塑性エラストマーとして低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)のみを含有していたため、ゲルの硬さが硬く、吸収性物品の官能評価においても、柔らかさ及びエモリエント効果について不十分な評価結果が得られた。
また、比較例2の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.2−2において、脂肪族炭化水素油(B)の粘度が5〜50mm/sの範囲外であり、脂肪酸トリグリセリド(C)を含有していなかったため、ゲルの硬さが硬くなり、油剤の放出量も少なくなり過ぎる結果となり、吸収性物品の官能評価においても、ゲルの硬さが硬く、エモリエント効果も感じられなかった。
比較例3の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.2−3において、低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と高分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)との質量比が(A1)/(A2)=95/5〜50/50の範囲外であったため、ゲルの硬さが柔らか過ぎる結果となり、吸収性物品の官能評価においても、柔らかさ、べたつき及びエモリエント効果のすべてについて不十分な評価結果が得られた。
比較例4の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.2−4における低分子量のスチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A1’)の重量平均分子量が10万以上18万未満の範囲外であったため、ゲルの硬さが柔らかくなり過ぎ、また、油剤の放出量も多くなり過ぎる結果となり、吸収性物品の官能評価においても、べたつきが感じられた。
比較例5の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.2−5が脂肪酸トリグリセリド(C)の代わりにエステル油を含有していたため、油剤の放出性が悪く、吸収性物品の官能評価においても、エモリエント効果が感じられなかった。
さらに、比較例6の吸収性物品は、用いたゲル状組成物No.2−6が脂肪酸トリグリセリド(C)を含んでいなかったため(すなわち、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)及び脂肪族炭化水素油(B)以外の成分は含有していなかったため)、油剤の放出性が見られず、吸収性物品の官能評価においても、エモリエント効果が感じられなかった。
1 生理用ナプキン
2 表面シート
3 吸収体
4 サイドシート
5 エンボス部
6 ゲル状組成物

Claims (8)

  1. 着用者の肌面と当接する表面にゲル状組成物を含む吸収性物品であって、
    前記ゲル状組成物は、重量平均分子量が10万以上18万未満であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と、重量平均分子量が18万以上30万以下であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)とを、(A1)/(A2)=95/5〜50/50の質量比で含む、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対し、
    37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sである脂肪族炭化水素油(B)を500〜4800質量部と、20℃で液体である炭素数8〜22の脂肪酸トリグリセリド(C)を60〜1000質量部とを含有し、
    前記脂肪酸トリグリセリド(C)は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)とを、(c1)/(c2)=95/5〜50/50の質量比で含有する、前記吸収性物品。
  2. 前記ブロック共重合体が、分子鎖中にスチレン系ハードセグメントからなるブロック成分を2つ以上有する、請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記ブロック共重合体の分子鎖における少なくとも両末端のブロック成分が、前記スチレン系ハードセグメントからなるブロック成分である、請求項2に記載の吸収性物品。
  4. 前記脂肪族炭化水素油(B)が、水添ポリイソブテンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  5. 前記吸収性物品は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体と、を備え、
    前記着用者の肌面と当接する表面が、前記表面シートの肌面側の表面である、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  6. 前記ゲル状組成物が、前記表面シートの肌面側の表面に、平面視にて畝状又はドット状に配置されている、請求項に記載の吸収性物品。
  7. 前記吸収性物品が、生理用ナプキン、パンティーライナー、おむつ又は尿取りパッドである、請求項1〜のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  8. 表面にゲル状組成物を有する不織布であって、
    前記ゲル状組成物は、重量平均分子量が10万以上18万未満であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A1)と、重量平均分子量が18万以上30万以下であり、且つトリブロック以上のブロック共重合体からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(A2)とを、(A1)/(A2)=95/5〜50/50の質量比で含む、スチレン系熱可塑性エラストマー混合物(A)100質量部に対し、
    37.8℃における動粘度が5〜50mm2/sである脂肪族炭化水素油(B)を500〜4800質量部と、20℃で液体である炭素数8〜22の脂肪酸トリグリセリド(C)を60〜1000質量部とを含有し、
    前記脂肪酸トリグリセリド(C)は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸トリグリセリド(c1)と、炭素数14〜22の不飽和脂肪酸トリグリセリド(c2)とを、(c1)/(c2)=95/5〜50/50の質量比で含有する、前記不織布。
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