JP6413924B2 - 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。 - Google Patents
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このように発生源が多様で広く分布していることから、その対策が課題となっている。また、前記有害元素は陰イオンを形成するため、多くの重金属において行われるような、pHを上げることで難水溶性の水酸化物を形成させて不溶化することができず、除去や不溶化が難しい。
本発明におけるシュベルトマナイトに陰イオンが取り込まれる場合は、イオン交換が主なメカニズムであると考えられるが、静電気的に表面に濃縮される場合も考えられるので、これらの現象も特に区別せず収着という言葉を用いて説明する。
Fe8O8OH8-2x(SO4)x〔1≦x≦1.75〕 (1)
この化合物は自然界にも存在し、自然界に存在するヒ素を取り込み不溶化されることが佐藤らによって非特許文献1に報告され、ヒ素等の収着剤、不溶化剤として注目されている。また、その収着性能は、他の収着剤と比べて高いことが知られている。本発明者らが、確認したところ、陰イオン交換体として良く知られているハイドロタルサイトと比較して、塩素イオン、硫酸イオンなどの陰イオンが共存している場合でも、これらの共存イオンの影響が極めて少ないことも判った。
しかしながら、シュベルトマナイトは一般に安定性が低く、放置すると、より結晶性の高いゲータイトに変化し、ヒ素等を収着する能力が大きく低下することが知られている。このためヒ素濃度が低い場合には、構造が安定になるのに十分なヒ素を収着する前に、ゲータイトに変化してヒ素化合物収着量が減少することが懸念される。
しかしながら、50℃で相対湿度98%の環境に放置した場合、安定性向上効果は1週間程度しか持続せず、2週間でほぼゲータイトに変化してしまい、ヒ素収着特性も未処理のシュベルトマナイトがゲータイト化した場合と同程度まで低下することが判った。このように、特許文献1に記載の方法でケイ酸を収着させることにより、シュベルトマナイトは安定化できるものの、そのヒ素収着性は比較的早期に低下してしまうという問題があることが判った。
一方、ケイ酸収着量が特定の範囲を超えて増えると、結晶構造が安定になるにもかかわらず、有害陰イオンの収着性能が低下し、収着性能の安定性が損なわれることも見出した。
また、このようなケイ酸収着量を達成するためには、モル数換算でケイ酸をシュベルトマナイトの1.5倍以上用いれば、低い収着量で飽和することなく、より多くのケイ酸が収着され、ケイ酸収着量が多いほど湿熱条件下に放置した後の粉末X線回折パターンの安定性も増すことを見出した。
また、同じくモル数換算でケイ酸をシュベルトマナイトの12倍を超えて用いると、ケイ酸イオン収着量は増加するが、亜ヒ酸イオン収着性が損なわれやすくなることを見出した。
一方、ケイ酸収着量がこの範囲より少ない0.5mmol/g未満では、先に説明したように十分な安定化効果が得られず、2.5mmol/gを超えると、湿熱条件に放置後も粉末X線回折パターンの変化がほとんどなく構造の安定性が確保されるにもかかわらず、亜ヒ酸イオン収着性能が著しく損なわれることを見出した。
すなわち、本発明者らは、特定のケイ酸収着条件により、従来のケイ酸収着量より高いケイ酸収着量を得ることができることを見出し、さらにその高いケイ酸収着量の内、特定のケイ酸収着量の範囲においてのみ、より高い安定性とヒ素化合物収着性を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
その合成方法は複数知られており、いずれの方法も特に制限なく使用できる。例えば文献1(Schwertmann, U, and Cornell ,R, M. (1991h)"on Oxides in the Laboratoiy. VCH, Weinheim, 137pp)および文献2(井上厚行・八田珠郎「粘土科学」第45 巻 第4 号250-265 (2006))は加温した硫酸ナトリウム水溶液に硝酸鉄水溶液を加えて、シュベルトマナイトを析出させる方法である。この方法では、鉄源として塩化鉄など3価の鉄塩を使用することもできる。
また、文献3(特開2010−52975号公報)は、硫酸鉄水溶液を加温しておき、炭酸水素ナトリウムなどの弱アルカリ性塩を加えてpHを調整してシュベルトマナイトを析出させる方法である。
さらに、自然界におけるシュベルトマナイトの形成過程を模して、硫酸イオンと2価の鉄の共存下で鉄酸化細菌を培養することでシュベルトマナイトを得ることができることが知られている。
なお、特許文献1において、シュベルトマナイトの化学式Fe8O8OH8-2X(SO4)x〔1≦x≦1.75〕に対し、x=1.75とし結晶水を16.5個含む式量1116.705と仮定して計算しており、本明細書においても、この式量を計算に用いている。また、本発明者らが実際に合成したシュベルトマナイトの元素分析を行った結果、合成して得たシュベルトマナイトのxの値は1.75であった。
このことから、ケイ酸イオン濃度を上げていくと、その初期はシュベルトマナイトの構造中の硫酸イオンとケイ酸イオンのイオン交換によってケイ酸イオンが収着され、硫酸イオンがほぼ全量脱着した後は、シュベルトマナイトの周囲にケイ酸イオンが収着されるものと考えられる。
陰イオン性有害物質として、ヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素の何れかが含まれている陰イオン性有害物質に特に適用可能である。
以下、ヒ素を含む陰イオン性有害物質である亜ヒ酸イオンとヒ酸イオンを例に、本発明における安定化されたシュベルトマナイトの収着作用について説明する。
例えば、シュベルトマナイト重量/ケイ酸溶液重量の混合比率が、100/1000でケイ酸のモル数がシュベルトマナイトモル数の12倍である場合、シュベルトマナイト100gを処理するのに、約1mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液1kgが必要となるが、1mol/Lのケイ酸水溶液はゲル化しやすいためケイ酸処理工程で不良が発生しやすくなる。これを避けるためには、ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は0.5mol/L以下で行えるように計画するのが好ましい。
これらの中でも、特に効果がある陰イオン性有害物質としては、ヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素を含むものが挙げられる。なお、ヒ素を含む陰イオンには亜ヒ酸イオンとヒ酸イオンが存在することは前記のとおりである。
汚染水からの有害物質の収着除去剤として使用する場合、公知の方法を適用することができる。例えば、ろ過塔などに本発明の収着剤を充填し、有害物質を含む廃水をろ過塔に供給して、有害物質を収着剤に収着する方法などが挙げられる。
また、汚染水に本発明の収着剤を加えて撹拌し、固液分離する方法を使用することもでき、必要に応じて凝集剤を併用してもよい。
例えば、汚染土壌と本発明の不溶化剤との混合は、地盤改良工事に用いられる混合機を用いて行なうことができ、汚染土壌を原位置で改良する機械と、地上で改良する機械のいずれも使用できる。いずれの場合も、本願発明の安定化シュベルトマナイトは固形物の状態、あるいは水を添加したスラリー状態で、汚染土壌と混合することができる。また、汚染土壌の下に敷き詰めて、汚染物質が周辺へ拡散しないようにする、吸着層工法などの吸着層に使用することもできる。
<合成例1>
2Lのビーカーに水0.8Lを入れ、硝酸鉄(III)九水和物93.7g(0.23mol)と硫酸ナトリウム28.4g(0.20mol)を加え、温水浴で加熱しながら撹拌して均一に溶解させ、この水溶液を約60℃に保持した。撹拌と保温を続けながら、炭酸ナトリウムを少量ずつ加え、水溶液のpHが2.7になったところで、炭酸ナトリウムの添加を止め、15分間撹拌と保温を続けてから撹拌を停止し、ビーカーを温水浴から取り出して、室温付近まで冷却した。生成物が分散した反応混合物を定性ろ紙をセットしたブフナー漏斗を使ってろ過し、余分なイオン等を除去するために、得られた固形分に1Lの水を加えて撹拌し、ろ過する工程を3回繰り返して行い、ろ紙上の固形分を50℃で一晩真空乾燥した。得られた黄褐色の乾燥固体は25.6gであった。これを乳鉢ですりつぶして粉末とし、一部を比較用サンプルとして収着試験等に用い、残りをケイ酸収着工程に使用した。この粉末を粉末X線回折で分析したところ、図6に示した典型的なシュベルトマナイトの回折パターンが得られ、シュベルトマナイトが得られたことを確認した。
ケイ酸ナトリウム源としてJIS K1408において3号に規定されたケイ酸ナトリウム水溶液(愛知珪曹工業株式会社製、珪酸ソーダ3号、SiO2換算で29%含有)1.82g、支持電解質として、硝酸ナトリウム0.016gを水に溶かして全体を1.1Lとし、撹拌溶解してSiO2換算で8mmol/Lのケイ酸イオン処理用水溶液とした。この水溶液1Lと合成例1で得たシュベルトマナイト5gを1Lのポリ瓶に仕込んで蓋をして、振とう機にセットして室温下80回/分で24時間振とうした。次に内容物をろ過して固液分離した。このろ液はケイ酸収着量と硫酸脱着量を求めるために用いた。ろ紙上に捕集した固体を500mlの水に入れて撹拌後、ろ過するという洗浄工程を3回繰り返した。得られた固体を50℃で真空乾燥し、ケイ酸を収着させたシュベルトマナイトを得た。残った未使用の処理用水溶液と前記処理後のろ液をそれぞれ孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して、液中のケイ素濃度を分析し、その差からケイ酸イオンの収着量を計算したところ、用いた未処理シュベルトマナイト1gあたりのケイ酸イオン収着量はケイ素として0.51mmol/gであった。また、処理後のろ液中の硫酸イオン濃度を分析し、シュベルトマナイトからの硫酸イオン脱着量を計算したところ0.45mmol/gであった。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。得られた結果を他の実施例比較例と共に表2にまとめた。ケイ酸処理直後の粉末X線回折パターンはシュベルトマナイトのパターンを示した。湿熱放置後に取り出して乾燥したサンプルについて測定した粉末X線パターンの変化の状況については表4にまとめた。
これらの結果より、湿熱放置14日目までは、ケイ酸イオン処理をしていない比較例1や特許文献1において飽和するとされたケイ酸イオン収着量に近い比較例2に比べて、湿熱環境下における構造の安定性と高い亜ヒ酸イオン収着性を示すことが判った。
SiO2換算濃度で10、15、20、25、30、40mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、ケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを得、ケイ酸イオン収着量と硫酸イオン脱着量を求め、表2にまとめた。ケイ酸イオン処理直後の粉末X線回折パターンから、ケイ酸イオン処理後、何れもシュベルトマナイトの構造を維持していることが判った。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、保管から取り出して50℃で一晩真空乾燥したサンプルについて、粉末X線回折パターンの測定およびヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。得られた結果を他の実施例および比較例と共に表2にまとめた。何れも比較例に比べて高い亜ヒ酸収着性能を30日以上持続した。この内、実施例2〜6は、60日後も比較的高い亜ヒ酸収着性を維持しており、従来の方法に比べて高い安定性を示した。さらに実施例3〜5では60日後の亜ヒ酸収着性低下幅が極めて小さく、著しい安定性が得られることが判った。湿熱放置後に取り出して乾燥したサンプルについて測定した粉末X線パターンの変化の状況については表4にまとめた。
実施例3については、フッ化物イオン、亜セレン酸イオン、セレン酸イオン、二クロム酸イオンの収着性能評価も行い、これらに対する収着性能の安定性を表3にまとめ、比較例1と比較した結果、いずれの有害イオンに対してもケイ酸収着による安定性向上効果が認められた。
SiO2換算濃度で10mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液1Lに対し、シュベルトマナイトを1g添加したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、ケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを得、ケイ酸イオン収着量と硫酸イオン脱着量を求めた。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定およびヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。ケイ酸イオン収着量、硫酸イオン脱着量、およびヒ素化合物収着試験の結果を表2に記載した。比較例に比べて高い安定性が得られることが判った。
合成例1で得られた未処理のシュベルトマナイト3gと実施例4で得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイト7gを混合したものを実施例9とした。得られた混合物を以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
未処理シュベルトマナイトを使っているため、亜ヒ酸収着性能は初期に比べて30日後までは低下するが、30日後、60日後も未処理シュベルトマナイトのみの比較例1と比べると高い収着性能を維持した。
また、ヒ酸収着性能は高いまま安定であり、ケイ酸イオン処理をしていないシュベルトマナイトを配合したことで、実施例4の特長である、亜ヒ酸収着性の非常に高い安定性を維持しつつ、ケイ酸イオン処理によるヒ酸収着性の低下を補うことができたことを確認した。
合成例1で得られた未処理のシュベルトマナイトを50mlポリ瓶に入れ、蓋をしないまま、50℃相対湿度98%の恒温室内に30日間放置して取り出し、50℃で一晩真空乾燥したものの粉末X線回折パターンを測定したところ、ゲータイト化しており、その亜ヒ酸およびヒ酸収着性能は、比較例1の湿熱放置30日後と同様であった。このゲータイト化粉末2.5gと実施例4で得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイト7.5gを混合したものを実施例10とした。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。初期の亜ヒ酸イオン収着性は他の実施例に比べてやや低いが、未処理品が劣化した場合に比べると十分高く、湿熱放置後の収着性があまり変化せず、60日の長期間ほとんど変化せず、非常に安定であるという特長を示した。ヒ酸イオン収着性も同様に高い安定性を示し、ゲータイト化粉末を配合したことで、実施例4の特長である、亜ヒ酸収着性の非常に高い安定性を維持しつつ、ケイ酸処理によるヒ酸収着性の低下を補うことができたことを確認した。
合成例1で合成したシュベルトマナイトをそのまま用いて、以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定、および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
ヒ酸イオンに対する収着性能は高く、湿熱放置後も安定であるが、亜ヒ酸イオンの収着性能は1週間で約40%低下した。
SiO2換算濃度で6mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、比較例2とした。これらを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定、および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
比較例2は特許文献1に近い量のケイ酸イオン導入量であり、湿熱放置7日目までは未処理品である比較例1に比べて、亜ヒ酸収着性能が高く、ケイ酸イオン導入効果が認められたが、14日後には、比較例1と同程度まで低下し、実施例と比べて、ケイ酸導入による安定化向上効果はわずかであった。
SiO2換算濃度で50、100、200および500mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、それぞれ比較例3〜6とした。これらを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
これらの比較例は、湿熱放置前からヒ酸収着性がほとんどなかった。また、亜ヒ酸収着性に関し、湿熱放置30日後は、未処理品の30日後と比べても低くなり、ケイ酸収着量が多すぎると、ケイ酸処理していないものと比べても、安定性がより悪化することが判った。これらのサンプルについて粉末X線回折パターンを調べたところ、湿熱放置後もほとんど変化がなく、60日後でさえ、ゲータイトのパターンは見られなかった。このことから、ケイ酸イオン収着量が多すぎる場合、亜ヒ酸イオン収着性能の劣化はゲータイト化などの結晶構造変化によるものではなく、別の要因であると言える。
図2に示したように、ケイ酸イオン収着量増加に伴い硫酸イオン脱着量が増加していき、硫酸脱着量は未処理のシュベルトマナイトが含有している硫酸イオン量近くの数値で飽和するのに対し、ケイ酸イオン収着量は増加し続けることが判る。SiO2濃度50mmol/L以上で処理した場合は、硫酸イオン脱着量が飽和の領域に入っているにもかかわらず、ケイ酸イオン収着量の増加が続いていることから、ケイ酸イオンはシュベルトマナイトのトンネル構造内ではなく、外側に存在していると思われる。ケイ酸イオン収着量が多すぎる場合に湿熱条件下で亜ヒ酸収着性能が低下する原因は定かではないが、ケイ酸イオンが酸の存在下で縮合することができることから、シュベルトマナイト周辺では外側に収着したケイ酸イオンの一部がゲル化してシュベルトマナイト内への亜ヒ酸イオンの浸入を抑制していることが考えられる。
SiO2換算濃度で1mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用し、この水溶液1Lに対し合成例1で得たシュベルトマナイトを1g添加したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、比較例7とした。ケイ酸イオン収着量は同様の処理条件でケイ酸イオン処理を行った特許文献1と同様に0.4mmol/g近くであった。これらを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行い、その結果を表2に記載した。湿熱環境下に放置したときのX線回折パターンは表4に結果を簡単にまとめた。比較例2と同様の経過をたどり、7日後はシュベルトマナイトとゲータイトのパターンが重複しており、14日後にはゲータイトのパターンのみとなった。
比較例7は、同程度のケイ酸イオン収着量であった比較例2と同様、湿熱放置7日目までは未処理品に比べて亜ヒ酸収着性能が高く、ケイ酸導入効果が認められたが、14日後には、比較例1と同程度まで低下し、実施例に比べて耐久性は低かった。
一方、シュベルトマナイトはヒ酸イオン収着性に関しては安定性が高いため、亜ヒ酸収着性に対する安定性を高めたシュベルトマナイトのヒ酸収着性能が不足する場合は、ケイ酸イオン収着量が少ないか、ケイ酸イオン処理をしていないシュベルトマナイトを併用することでこれを補えば、亜ヒ酸、ヒ酸の両イオンに対し極めて安定な収着性能を得ることも可能である。実施例9,10はこれを実施したものである。
図7は比較例1のサンプルを50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽で7日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。ケイ酸を収着させていない場合は、7日間でゲータイトに変化していることが判った。表4においてこのようなパターンが得られた場合に×とした。
しかし、この条件で14日間放置後に測定した粉末X線回折パターンである図9は、ほぼゲータイト化したことを示していた。このように、比較例2ではケイ酸イオン収着による効果は見られるものの、短時間で結晶構造が変化しその効果が失われることが判った。
30日後の図11ではほぼ完全にゲータイト化しているが、14日後の図10は比較例2がほぼゲータイト化した条件でも、完全にはゲータイト化しておらず、安定性が増したことが判った。
60日後の図13ではほぼ完全にゲータイト化しているが、30日後の図12は低角度側でわずかに変化があるが、シュベルトマナイトの構造をほぼ保っていることが判り、より安定性が増したことが判った。
この結果と亜ヒ酸イオン収着試験結果を比較すると、図3において湿熱放置後の亜ヒ酸収着性がピークを迎えるまでのケイ酸イオン収着量範囲では、特許文献1に記載されたように、結晶構造の安定性が向上するほど亜ヒ酸収着の安定性も向上すると言えるが、このピーク以降では、構造が安定であるにもかかわらず、亜ヒ酸収着の安定性が低下しており、その原因は定かではないが、結晶構造がゲータイトに変化するというメカニズムにはよらないものであると言える。
未使用のケイ酸処理溶液、およびケイ酸収着操作後のろ液を必要に応じ超純水で希釈し、ICP発光分析装置(Spectro社製、ARCOS SOP)を用いて測定し、ケイ素標準液で作製した検量線を基に、ケイ素の定量を行った。
また、これらの溶液を別途サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製社製カラムDionex IonPac AS19を取りつけたイオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、Dionex ICS3000)により測定して、硫酸イオンを定量した。
各種条件でケイ酸イオン処理したシュベルトマナイトおよびケイ酸イオン処理を行っていないシュベルトマナイト1gを容量50mlの広口ポリ瓶に量り採り、蓋をせずに50℃、相対湿度98%に設定した恒温恒湿器内に所定時間放置した。恒温恒湿器から取り出したサンプルを50℃で一晩真空乾燥し、粉末X線回折パターンの測定、およびヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。また、一部のサンプルはセレン酸イオン、亜セレン酸イオン、フッ化物イオン、二クロム酸イオンの収着特性についても評価を行った。
表1に示すA〜Fの有害物質をそれぞれ含む試験液を作成した。100mlのポリプロピレン製瓶に各収着剤サンプル0.1gを量りとり、前記試験液50mlを入れた。この内、試験液Bのみ試験液50mLに対し、各サンプルを0.05gとした。これらのポリ瓶を、水浴を備えた振とう機にセットし、40℃で24時間振とうした。振とう終了後、収着剤と試験液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾別し、ろ液中の有害物質濃度をICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP7600)で測定した。フッ素については、イオンクロマトグラフィー(カラム;IonPacTM AS12A(DIONEX社製、φ4mm×200mm)で測定した。各サンプルの乾燥単位重量当たりの有害物質の収着量(mmol/g)として計算し、その結果を表2および表3に記載した。
Claims (7)
- ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンを収着させる安定化されたシュベルトマナイトの製造方法であり、
前記製造方法がケイ酸イオン溶液とシュベルトマナイトを混合して、シュベルトマナイトにケイ酸イオンを収着させる際に、ケイ酸イオン溶液中のケイ酸イオンのモル数をシュベルトマナイトのモル数の1.5倍から12倍とすることを特徴とする、
安定化されたシュベルトマナイトの製造方法。 - ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.8から2.0mmol/gの割合でケイ酸イオンを収着させることを特徴とする請求項1に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載の方法で製造された安定化されたシュベルトマナイトを、陰イオン性有害物質を含む液体もしくは固体に接触させて、陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法。
- 陰イオン性有害物質がヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素の何れかを含むことを特徴とする、請求項3に記載の陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法。
- ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり1.0から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンが収着された安定化されたシュベルトマナイトを用いることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の陰イオン性有害物質が亜ヒ酸イオンである収着除去または不溶化する方法。
- ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.0mmol/gの割合でケイ酸イオンが収着された安定化されたシュベルトマナイトを用いることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の陰イオン性有害物質がヒ酸イオンである収着除去または不溶化する方法。
- ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり1.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸が収着された安定化されたシュベルトマナイトをAとし、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たりのケイ酸収着量が1.2mmol/g以下のシュベルトマナイトをBとし、ケイ酸イオンを含まないシュベルトマナイトをCとし、BとCがそれぞれ湿熱条件下で一部もしくは完全にゲータイト化したものをそれぞれB’、C’とした場合に、Aに対しB、C、B’、C’のいずれか一つもしくは複数を、併用することを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の陰イオン性有害物質を収着除去または不溶化する方法。
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