JP6413924B2 - 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。 - Google Patents

安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。 Download PDF

Info

Publication number
JP6413924B2
JP6413924B2 JP2015102462A JP2015102462A JP6413924B2 JP 6413924 B2 JP6413924 B2 JP 6413924B2 JP 2015102462 A JP2015102462 A JP 2015102462A JP 2015102462 A JP2015102462 A JP 2015102462A JP 6413924 B2 JP6413924 B2 JP 6413924B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sorption
schwertmannite
silicate
ion
ions
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015102462A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016216299A (ja
Inventor
平岡 秀樹
秀樹 平岡
洋典 沓名
洋典 沓名
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toagosei Co Ltd
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toagosei Co Ltd filed Critical Toagosei Co Ltd
Priority to JP2015102462A priority Critical patent/JP6413924B2/ja
Publication of JP2016216299A publication Critical patent/JP2016216299A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6413924B2 publication Critical patent/JP6413924B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Treatment Of Liquids With Adsorbents In General (AREA)
  • Compounds Of Iron (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)

Description

本発明は、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン、フッ化物イオン等の有害な陰イオンを収着することが知られているシュベルトマナイトの安定性を改良した安定化されたシュベルトマナイト、その製造方法、および安定化されたシュベルトマナイトを使用する陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法に関するものである。
ヒ素、セレン、フッ素、クロムなどの元素は、過剰に摂取すれば人体や動植物にとって有害であるため、工場等からの排出が厳しく制限されている。これらの元素は、自然界にも広く分布しており、土壌、岩石、地下水、温泉水等に含まれる場合も多い。また、鉱山やトンネル工事等で発生する岩石や土壌などの掘削屑に含まれる場合もあり、このような掘削屑に雨水などが接することで、河川や地下水に溶け出す場合がある。また、原子力発電の副生成物として発生する放射性ヨウ素のように放射線による有害性が問題になる元素も存在する。
このように発生源が多様で広く分布していることから、その対策が課題となっている。また、前記有害元素は陰イオンを形成するため、多くの重金属において行われるような、pHを上げることで難水溶性の水酸化物を形成させて不溶化することができず、除去や不溶化が難しい。
なお、科学用語としての吸着は、固液界面等の2相の界面に特定成分が濃縮される現象を指すが、本発明におけるシュベルトマナイトには、有害イオンのような特定の物質が、界面だけでなく固体内部にも取り込まれるので、このような現象も含め、有害イオンを捕捉して、放出しにくくなるという意味の言葉として本発明では収着という用語を用いる。
本発明におけるシュベルトマナイトに陰イオンが取り込まれる場合は、イオン交換が主なメカニズムであると考えられるが、静電気的に表面に濃縮される場合も考えられるので、これらの現象も特に区別せず収着という言葉を用いて説明する。
シュベルトマナイトは鉄と硫酸を含む低結晶性の化合物で、下記構造式1で表される。その構造は一つの硫酸イオンを8個の鉄が環状に取り囲んだ単位が積み重なって構成され、鉄が筒状の構造となっており、その筒の内部に硫酸イオンが存在する。
Fe88OH8-2x(SO4)x〔1≦x≦1.75〕 (1)
この化合物は自然界にも存在し、自然界に存在するヒ素を取り込み不溶化されることが佐藤らによって非特許文献1に報告され、ヒ素等の収着剤、不溶化剤として注目されている。また、その収着性能は、他の収着剤と比べて高いことが知られている。本発明者らが、確認したところ、陰イオン交換体として良く知られているハイドロタルサイトと比較して、塩素イオン、硫酸イオンなどの陰イオンが共存している場合でも、これらの共存イオンの影響が極めて少ないことも判った。
シュベルトマナイトは、構造内に含まれる硫酸イオンが三価のヒ素を含有する亜ヒ酸イオンや五価のヒ素を含むヒ酸イオンと置き換わることにより、構造がより安定となるため、その効果によりヒ素化合物を収着するといわれている。このためヒ素濃度が高い条件やヒ素が連続的に供給される条件では、シュベルトマナイトがヒ素を取り込んで安定化する。
しかしながら、シュベルトマナイトは一般に安定性が低く、放置すると、より結晶性の高いゲータイトに変化し、ヒ素等を収着する能力が大きく低下することが知られている。このためヒ素濃度が低い場合には、構造が安定になるのに十分なヒ素を収着する前に、ゲータイトに変化してヒ素化合物収着量が減少することが懸念される。
これを改善する方法として、特許文献1においてシュベルトマナイトの構造内の硫酸イオンの一部をケイ酸イオンで置換することが提案されている。特許文献1では、ケイ酸ナトリウムを溶かした水溶液1リットルにシュベルトマナイト1gの割合で加えて、室温下で24時間振とう後、固液分離して、ケイ酸を収着させたシュベルトマナイトを得ている。この方法において、ケイ酸濃度が0.6mmol/l以上では、シュベルトマナイトに対するケイ酸収着量が約0.4mmol/gで飽和することが明記されている。さらに、これらの安定化シュベルトマナイトを50℃の飽和水蒸気雰囲気下に放置した後の粉末X線回折パターンから、未処理のシュベルトマナイトに比べてゲータイト化率が少なくなり安定化されたことを確かめている。
本発明者らが、特許文献1と同様に、シュベルトマナイトにケイ酸を収着させてみたところ、同様にケイ酸収着量が約0.4mmol/gのシュベルトマナイトを得ることができ、未処理のシュベルトマナイトに比べて安定性が向上することを確認できた。
しかしながら、50℃で相対湿度98%の環境に放置した場合、安定性向上効果は1週間程度しか持続せず、2週間でほぼゲータイトに変化してしまい、ヒ素収着特性も未処理のシュベルトマナイトがゲータイト化した場合と同程度まで低下することが判った。このように、特許文献1に記載の方法でケイ酸を収着させることにより、シュベルトマナイトは安定化できるものの、そのヒ素収着性は比較的早期に低下してしまうという問題があることが判った。
また、特許文献2では同様に硫酸イオンをリン酸イオンで置換して安定化することが提案されているが、リン酸自体が水質汚濁防止法において規制対象となっており、リン資源の枯渇の問題も懸念される状況では、使用量が非常に多くなると想定される収着剤や不溶化剤に用いるには問題がある。
前記特許文献1および特許文献2に記載されたとおり、シュベルトマナイトの構造内に含まれる硫酸イオンの一部をケイ酸イオンやリン酸イオンで置き換えれば、安定性が向上するが、特許文献1に記載の条件では安定性が十分ではなく、また、特許文献2において安定化のために用いるリン酸は、その使用自体が好ましくない。
特許第3859001号公報 特許第3828887号公報
K Fukushi, M Sasaki, T Sato, N Yanase, H Amano and H Ikeda, Applied Geochemistry, 18(8), 1267-1278, 2003.
本発明は、上記の状況を鑑み、先に提案されている方法では効果が十分とは言えなかったシュベルトマナイトの安定性を更に高めるために、従来飽和するとされていたケイ酸収着量を超えてケイ酸を収着させ、安定性をより高めることができたシュベルトマナイト、その製造方法、および安定化されたシュベルトマナイトを用いたヒ素などの陰イオン性有害物質の収着除去または不溶化する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、シュベルトマナイトのケイ酸処理条件を限定することで、前記特許文献1で飽和するとされたケイ酸収着量を超えて収着させることができ、安定性が顕著に高まることを見出した。
一方、ケイ酸収着量が特定の範囲を超えて増えると、結晶構造が安定になるにもかかわらず、有害陰イオンの収着性能が低下し、収着性能の安定性が損なわれることも見出した。
また、このようなケイ酸収着量を達成するためには、モル数換算でケイ酸をシュベルトマナイトの1.5倍以上用いれば、低い収着量で飽和することなく、より多くのケイ酸が収着され、ケイ酸収着量が多いほど湿熱条件下に放置した後の粉末X線回折パターンの安定性も増すことを見出した。
また、同じくモル数換算でケイ酸をシュベルトマナイトの12倍を超えて用いると、ケイ酸イオン収着量は増加するが、亜ヒ酸イオン収着性が損なわれやすくなることを見出した。
さらに詳細に検討したところ、シュベルトマナイトの単位重量当たりのケイ酸収着量には好ましい範囲が存在し、0.5から2.5mmol/gの範囲とすると、特許文献1で上限とされた量のケイ酸を収着させたシュベルトマナイトに比べて、湿熱条件下に放置後の亜ヒ酸イオン収着性が安定になることが判った。
一方、ケイ酸収着量がこの範囲より少ない0.5mmol/g未満では、先に説明したように十分な安定化効果が得られず、2.5mmol/gを超えると、湿熱条件に放置後も粉末X線回折パターンの変化がほとんどなく構造の安定性が確保されるにもかかわらず、亜ヒ酸イオン収着性能が著しく損なわれることを見出した。
すなわち、本発明者らは、特定のケイ酸収着条件により、従来のケイ酸収着量より高いケイ酸収着量を得ることができることを見出し、さらにその高いケイ酸収着量の内、特定のケイ酸収着量の範囲においてのみ、より高い安定性とヒ素化合物収着性を両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の請求項1に記載の安定化されたシュベルトマナイトは、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンが収着した安定化されたシュベルトマナイトである。
請求項2に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法は、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンを収着させることを特徴とする請求項1に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法である。
請求項3に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法は、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.8から2.0mmol/gの割合でケイ酸イオンを収着させることを特徴とする請求項2に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法である。
請求項4に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法は、ケイ酸イオン溶液とシュベルトマナイトを混合して、シュベルトマナイトにケイ酸イオンを収着させる際に、ケイ酸イオン溶液中のケイ酸イオンのモル数をシュベルトマナイトのモル数の1.5倍から12倍とすることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の安定化シュベルトマナイトの製造方法である。
請求項5に記載の陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法は、請求項2〜4のいずれかに記載の方法で製造された安定化シュベルトマナイトを、陰イオン性有害物質を含む液体もしくは固体に接触させて、陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法である。
請求項6に記載の陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法は、陰イオン性有害物質がヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素の何れかを含むことを特徴とする、請求項5に記載の陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法である。
請求項7に記載の亜ヒ酸イオンを収着除去もしくは不溶化する方法は、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり1.0から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンを含有する安定化されたシュベルトマナイトを用いることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の亜ヒ酸イオンを収着除去または不溶化する方法である。
請求項8に記載のヒ酸イオンを収着除去もしくは不溶化する方法は、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.0mmol/gの割合でケイ酸イオンを含有する安定化されたシュベルトマナイトを用いることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のヒ酸イオンを収着除去または不溶化する方法である。
請求項9に記載の陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法は、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり1.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸を含有する安定化されたシュベルトマナイトをAとし、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たりのケイ酸含有量が1.2mmol/g以下のシュベルトマナイトをBとし、ケイ酸イオンを含まないシュベルトマナイトをCとし、BとCがそれぞれ湿熱条件下で一部もしくは完全にゲータイト化したものをそれぞれB’、C’とした場合に、Aに対しB、C、B’、C’のいずれか一つもしくは複数を、併用することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の陰イオン性有害物質を収着除去または不溶化する方法である。
本発明における安定化されたシュベルトマナイトは、ヒ素等を含む有害イオンの収着性に優れ、かつ従来知られていた方法より、極めて優れた収着性能安定性を有しており、汚染水、汚染土壌、土木工事で発生するズリや掘削土砂、処分場に埋め立てる焼却灰、産業廃棄物などに含まれる有害物質の収着除去材や不溶化剤として優れているため、有害物質を処理する材料として極めて有用である。
合成例1で得られたシュベルトマナイトにケイ酸イオンを収着させた時の、シュベルトマナイトに対するケイ酸添加倍数とケイ酸イオン収着量の関係を示す。 合成例1で得られたシュベルトマナイトにケイ酸を収着させた際の、硫酸イオン脱着量とケイ酸イオン収着量の関係を示す。 合成例1で得られたシュベルトマナイトのケイ酸イオン収着量に対する亜ヒ酸イオン収着量の関係を示す。 合成例1で得られたシュベルトマナイトのケイ酸イオン量収着量に対するヒ酸イオン収着量の関係を示す。 合成例1で得られたシュベルトマナイトをケイ酸で処理した際の、硫酸イオン脱着量とヒ酸イオン収着量の関係を示す。 比較例1のシュベルトマナイトを湿熱放置する前に測定した粉末X線回析パターンを示す。 比較例1のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で7日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 比較例2のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で7日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 比較例2のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で14日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 実施例1のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で14日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 実施例1のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で30日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 実施例2のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で30日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 実施例2のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で60日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 実施例3のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で60日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。 比較例3のシュベルトマナイトを湿熱放置する前に測定した粉末X線回析パターンを示す。 比較例3のシュベルトマナイトを50℃相対温度98%の恒温恒湿槽で60日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回析パターンを示す。
本発明におけるシュベルトマナイトは、天然に存在するものでも人工的に合成したものでも良いが、天然に存在するものは既にヒ素などの有害物を含んでいる場合が多いため、実用的には合成したものを用いるのが良い。
その合成方法は複数知られており、いずれの方法も特に制限なく使用できる。例えば文献1(Schwertmann, U, and Cornell ,R, M. (1991h)"on Oxides in the Laboratoiy. VCH, Weinheim, 137pp)および文献2(井上厚行・八田珠郎「粘土科学」第45 巻 第4 号250-265 (2006))は加温した硫酸ナトリウム水溶液に硝酸鉄水溶液を加えて、シュベルトマナイトを析出させる方法である。この方法では、鉄源として塩化鉄など3価の鉄塩を使用することもできる。
また、文献3(特開2010−52975号公報)は、硫酸鉄水溶液を加温しておき、炭酸水素ナトリウムなどの弱アルカリ性塩を加えてpHを調整してシュベルトマナイトを析出させる方法である。
さらに、自然界におけるシュベルトマナイトの形成過程を模して、硫酸イオンと2価の鉄の共存下で鉄酸化細菌を培養することでシュベルトマナイトを得ることができることが知られている。
本発明においてシュベルトマナイトを安定化させるのに用いるケイ酸イオン源としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどの塩が好ましく利用できる。ケイ酸ナトリウム(別名ケイ酸ソーダ、水ガラス)は、[Na2O・nSiO2・mH2O]の式で表され、工業的にはn=0.5〜4のものが製造されており、粉末などの固体や水溶液として流通している。ケイ酸カリウムも同様である。これらは特に制限なく使用できる。
シュベルトマナイトにケイ酸イオンを収着させる工程は、ケイ酸塩水溶液にシュベルトマナイトを加えて撹拌し、ろ過や遠心分離等の方法で固液分離を行い、必要に応じて数回水洗し、最後に乾燥するというものである。ケイ酸の収着は室温でも容易に進行する為、特に加熱等の必要はない。室温で数時間から1日撹拌すれば、ケイ酸の収着はほぼ終了する。2日以上かけてもケイ酸収着量はほとんど変化がない。
前記収着工程において、ケイ酸とシュベルトマナイトのモル比は非常に重要である。前記特許文献1では、ケイ酸イオン濃度(SiO2換算)で0.2〜1.0mmolの水溶液1リットルに対し、シュベルトマナイト1g(0.895mmol)の割合で加えて24時間振とうしてケイ酸イオンを収着させている。その結果、ケイ酸イオン濃度0.6mmol以上ではケイ酸イオンの最大収着量が約0.4mmol/gとなって飽和したことが記載されている。この場合、使用したケイ酸イオンは、シュベルトマナイトの式量1116.705に対しモル比で0.22〜1.11倍である。
なお、特許文献1において、シュベルトマナイトの化学式Fe88OH8-2X(SO4)x〔1≦x≦1.75〕に対し、x=1.75とし結晶水を16.5個含む式量1116.705と仮定して計算しており、本明細書においても、この式量を計算に用いている。また、本発明者らが実際に合成したシュベルトマナイトの元素分析を行った結果、合成して得たシュベルトマナイトのxの値は1.75であった。
本発明者らが検討した結果、ケイ酸イオンをシュベルトマナイトに対し、モル比で1.5倍以上とすると、ケイ酸収着量が0.4mmol/gを超えて増加することが判った。また、この工程で脱着される硫酸イオンの量を測定し、ケイ酸イオン収着量と比較したところ、ケイ酸イオン量が増すにしたがって硫酸イオン脱着量が直線的に増加し、シュベルトマナイト中に含まれるほぼ全量の硫酸イオンが脱着されるまでは直線的に増加することがわかった。また、ケイ酸イオン濃度をさらに上げていくと、硫酸イオンがほぼ全量脱着された後も、ケイ酸イオン収着量が増加することが判った。
このことから、ケイ酸イオン濃度を上げていくと、その初期はシュベルトマナイトの構造中の硫酸イオンとケイ酸イオンのイオン交換によってケイ酸イオンが収着され、硫酸イオンがほぼ全量脱着した後は、シュベルトマナイトの周囲にケイ酸イオンが収着されるものと考えられる。
ケイ酸イオンにより安定化されたシュベルトマナイトは、陰イオン性有害物質を含む液体または固体に接触させることにより、陰イオン性有害物質を収着除去または不溶化する機能がある。
陰イオン性有害物質として、ヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素の何れかが含まれている陰イオン性有害物質に特に適用可能である。
以下、ヒ素を含む陰イオン性有害物質である亜ヒ酸イオンとヒ酸イオンを例に、本発明における安定化されたシュベルトマナイトの収着作用について説明する。
前記方法で、ケイ酸イオン収着量を変えたシュベルトマナイトを50℃、相対湿度98%の湿熱環境下に放置した後に、50℃で一晩真空乾燥し、粉末X線回折パターンの変化と亜ヒ酸イオンおよびヒ酸イオンの収着性能の変化を調べた。
粉末X線回折パターンを比較した結果、ケイ酸イオン収着量が増すほど、湿熱環境下における構造の安定性が増す様子が確認できた。すなわち、前記特許文献1において飽和するとされたケイ酸収着量である0.4mmol/gの場合に比べて著しい安定化効果を得ることができた。
また、その際、湿熱環境下におけるゲータイト化によって収着しにくくなるのは主に亜ヒ酸イオンであり、ヒ酸イオンの収着性能はあまり低下しないことが判った。一方、ケイ酸イオン収着工程において、硫酸イオンがほぼ全量脱着されてから、更にケイ酸イオンを収着させたサンプルでは、上記湿熱条件に放置前後で粉末X線パターンの変化がないにもかかわらず、亜ヒ酸イオンの収着性能が低下することが判った。また、硫酸イオンが全量脱着されるとヒ酸イオンがほとんど収着されなくなることも判った。湿熱放置後の粉末X線回折パターンに変化がなくても、ケイ酸イオン収着量が特定の量を超えて多くなった場合に、亜ヒ酸イオンの収着性能が低下する原因は定かではないが、シュベルトマナイトの周辺に過剰に収着したケイ酸イオンが縮合して、シュベルトマナイトのトンネル構造内のイオン交換を阻害するようになる可能性がある。すなわち、ケイ酸イオンを収着させるほど構造は安定化するものの、ケイ酸イオンが必要以上に収着されることで、むしろ収着性能が不安定になる結果、ケイ酸イオンの収着量には適切な範囲がある。
シュベルトマナイトにケイ酸イオンを適正量収着させることで、湿熱環境下におけるゲータイト化が抑制され、その結果、亜ヒ酸収着性能の低下が抑制されるが、ケイ酸イオンの収着量が適正量を超えた場合は、ゲータイト化とは別の要因で、湿熱環境下における亜ヒ酸イオンの収着性能が低下する。また、ヒ酸イオンの収着については、湿熱環境下においてシュベルトマナイトがゲータイト化しても収着量には大きな差がないものの、硫酸イオンとのイオン交換が主な収着メカニズムであることから、シュベルトマナイトの構造を安定化させるために、硫酸イオンがケイ酸イオンと置き換わると、ヒ酸イオンの収着量が低下する。しかしながら、亜ヒ酸イオンに比べてヒ酸イオンの方が同量のシュベルトマナイトに多く収着されるため、ケイ酸収着量を適切な量に制御することで、ヒ酸イオン、亜ヒ酸イオンの両イオンを収着し、かつ湿熱条件下において構造が安定なシュベルトマナイトを得ることもできる。
前記のように、シュベルトマナイトを湿熱環境下に放置した場合に、収着性が低下するのは主に亜ヒ酸イオンであるが、安定化処理をしていないシュベルトマナイトを湿熱環境下に放置しておくと、亜ヒ酸イオン収着性は初期の約60%まで低下し、それ以上はほとんど下がらない。このため、ケイ酸イオン処理により亜ヒ酸収着性能の安定性が増したと言えるのは、初期の収着性能の60%まで低下する期間が未処理の場合と比べてより長いものである。そのような意味では特許文献1において、ケイ酸イオン収着量が飽和するとされた、上限値であるケイ酸イオン収着量0.4mmol/gでも安定性は増すが、50℃、相対湿度98%の条件に放置して、1週間後までは効果が見られたが、2週間後には初期の約60%まで低下し、その後1ヶ月間、2ヶ月間経過しても同程度で推移した。すなわち、この条件で2週間以上放置して、初期の60%より高い亜ヒ酸イオン収着性能が維持されれば、従来知られている条件で最も安定する場合より安定性が増したといえる。
このように、従来知られていた方法に対し、より長期間にわたって亜ヒ酸イオン収着性を高く維持できるケイ酸収着範囲は、シュベルトマナイトに対し、収着されるケイ酸イオンが0.5〜2.5mmol/gである。より好ましい範囲として、0.8〜2.0mmol/gでは、50℃、相対湿度98%の条件で1か月放置後の亜ヒ酸イオン収着性能が初期の70%以上維持され、更に2か月以上にわたり、初期の60%を超える亜ヒ酸イオン収着性能が得られる。さらに好ましい範囲として、1.0〜1.8mmol/gでは、前期湿熱環境で1か月間放置後の亜ヒ酸収着性能は、初期の80%以上を維持することができ、極めて安定となる。
ヒ酸イオンに関しては、前記のようにシュベルトマナイトがゲータイトに変化しても収着されやすさには大きな変化がないものの、シュベルトマナイトの構造を安定化するためにケイ酸イオンを収着させると、ケイ酸イオン収着量が多くなるほどヒ酸イオン収着性能が低下し、硫酸イオンがほぼ全量失われると、ヒ酸イオン収着性能はほぼ失われることが判った。また、ケイ酸イオン処理をしていないシュベルトマナイトで亜ヒ酸イオンとの収着されやすさを比較すると、ヒ酸イオンの方が2倍以上収着されることが判った。このように、シュベルトマナイトは、亜ヒ酸イオンに比べてヒ酸イオンを多く収着できることから、ケイ酸イオンを導入してシュベルトマナイトを安定化させる際、硫酸イオンを残すことで、安定性と収着性を両立させることができる。このため、ヒ酸イオンを収着する場合や亜ヒ酸イオンとヒ酸イオンの両方に対応する場合についても、好ましいケイ酸イオン収着範囲がある。
シュベルトマナイトにケイ酸イオンを収着させて、ヒ酸イオン収着に用いる場合はシュベルトマナイト1gあたりのケイ酸イオン収着量を0.5〜2.0mmol/gとするのがよい。2.0mmol/gより多くなると、ヒ酸イオン収着性能が不十分となりヒ酸イオン収着性能としては好ましくない。
ヒ素はいくつかの価数を取ることができるが、水質や土壌汚染で問題になるものは、主に三価で亜ヒ酸イオンを形成している場合と、五価でヒ酸イオンを形成している場合の2種類である。これらは、嫌気性条件では亜ヒ酸になりやすく、好気性条件ではヒ酸イオンになりやすい。このように酸素濃度や細菌などにより価数が変化しやすいため、多くの場合、三価と五価は共存している。このため、ヒ素収着剤も必要に応じて両イオンに対応する必要がある。また、場合によっては酸化雰囲気や還元雰囲気中で、いずれか一方の価数がほとんどであることもある。
本発明において、好ましいケイ酸収着範囲としては、シュベルトマナイトに対し、ケイ酸が0.5〜2.5mmol/gであるが、上記のように、ヒ素は三価である亜ヒ酸と五価であるヒ酸が様々な比率で存在するため、亜ヒ酸とヒ酸を共に収着させる必要がある場合が多い。そのような場合は、二通りの方法で対応することができる。一つ目は、シュベルトマナイト1gあたりのケイ酸収着量を0.5〜2.0mmol/gとして、両イオンを収着可能にする方法であり、二つ目の方法として、ケイ酸を1.5〜2.5mmol/g収着したことによって亜ヒ酸収着性に対する安定性が極めて高くなった代わりに、五価のヒ素収着性能が低くなったシュベルトマナイトと、亜ヒ酸収着性に関する安定性は劣るがヒ酸に対する収着量と安定性が高いシュベルトマナイト、すなわちケイ酸収着量が少ないもしくは、ケイ酸を収着させていないシュベルトマナイトを組み合わせて、両イオンに対応させることもできる。このような組み合わせでは、両イオンに対する収着性がより長期間維持できるだけでなく、初期の収着性能が高いため好ましい。
本発明において、好ましいケイ酸収着量を得るためには、シュベルトマナイトとケイ酸の比率を変えて調整するとよい。その場合、シュベルトマナイトの構造式で示される最小単位の1.5〜12モル倍のケイ酸イオンを含む溶液にシュベルトマナイトを浸漬するのが好ましい。この範囲よりケイ酸量が少ないとシュベルトマナイトを十分に安定化させることができず、この範囲よりケイ酸量が多いとケイ酸が収着しすぎて有害イオン収着性能と安定性が低下するため、何れも好ましくない。
本発明において、シュベルトマナイトにケイ酸を収着する際、シュベルトマナイト質量/ケイ酸溶液質量の混合比率は、1/1000〜100/1000程度とするのが好ましい、より好ましくは2/1000〜50/1000である。シュベルトマナイトが処理液に対して少なすぎると、処理の効率が低く、廃液が多くなるため好ましくない。一方、シュベルトマナイトが処理溶液に対して多すぎると、撹拌が困難となるため不均一となりやすく、また固体/液体比率が高い場合は、処理液中のケイ酸濃度を高くする必要があるが、ケイ酸溶液の粘度が高くなるため、処理が不均一となりやすいだけでなく、ケイ酸がゲル化しやすくなるため、シュベルトマナイトを分離することができなくなり好ましくない。
例えば、シュベルトマナイト重量/ケイ酸溶液重量の混合比率が、100/1000でケイ酸のモル数がシュベルトマナイトモル数の12倍である場合、シュベルトマナイト100gを処理するのに、約1mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液1kgが必要となるが、1mol/Lのケイ酸水溶液はゲル化しやすいためケイ酸処理工程で不良が発生しやすくなる。これを避けるためには、ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は0.5mol/L以下で行えるように計画するのが好ましい。
前記、ケイ酸を収着させる工程を経たシュベルトマナイトスラリーは、ろ過、遠心分離、デカンテーション等の固液分離操作を行い、好ましくは水洗を行ってから、乾燥して使用するか、水に分散させたスラリーとして使用することができる。シュベルトマナイトは水の存在下でゲータイト化しやすいが、ケイ酸を収着して安定化されているため、スラリーとしても使用可能時間が長くなり、扱いやすい。
本発明の安定化シュベルトマナイトを有害金属等の収着剤や不溶化剤として使用する際の対象となる有害物質としては、フッ化物イオン、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン、セレン酸イオン、亜セレン酸イオン、クロム酸イオン、二クロム酸イオンなどシュベルトマナイトに収着されることが判明しているものの他に、ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、特に効果がある陰イオン性有害物質としては、ヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素を含むものが挙げられる。なお、ヒ素を含む陰イオンには亜ヒ酸イオンとヒ酸イオンが存在することは前記のとおりである。
本発明の安定化シュベルトマナイトは、産業廃水、地下水、温泉水などの有害物質を含有する汚染水からの有害物質の収着除去剤、汚染土壌、土木工事などで発生する掘削土、掘削ズリ、焼却灰、産業廃棄物等に含まれる前記陰イオン性有害物質の収着剤、不溶化剤などに使用可能である。
汚染水からの有害物質の収着除去剤として使用する場合、公知の方法を適用することができる。例えば、ろ過塔などに本発明の収着剤を充填し、有害物質を含む廃水をろ過塔に供給して、有害物質を収着剤に収着する方法などが挙げられる。
また、汚染水に本発明の収着剤を加えて撹拌し、固液分離する方法を使用することもでき、必要に応じて凝集剤を併用してもよい。
また、汚染土壌などに含まれる有害物質の不溶化剤として使用する場合、公知の方法を適用することができる。
例えば、汚染土壌と本発明の不溶化剤との混合は、地盤改良工事に用いられる混合機を用いて行なうことができ、汚染土壌を原位置で改良する機械と、地上で改良する機械のいずれも使用できる。いずれの場合も、本願発明の安定化シュベルトマナイトは固形物の状態、あるいは水を添加したスラリー状態で、汚染土壌と混合することができる。また、汚染土壌の下に敷き詰めて、汚染物質が周辺へ拡散しないようにする、吸着層工法などの吸着層に使用することもできる。
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明する。
<合成例1>
2Lのビーカーに水0.8Lを入れ、硝酸鉄(III)九水和物93.7g(0.23mol)と硫酸ナトリウム28.4g(0.20mol)を加え、温水浴で加熱しながら撹拌して均一に溶解させ、この水溶液を約60℃に保持した。撹拌と保温を続けながら、炭酸ナトリウムを少量ずつ加え、水溶液のpHが2.7になったところで、炭酸ナトリウムの添加を止め、15分間撹拌と保温を続けてから撹拌を停止し、ビーカーを温水浴から取り出して、室温付近まで冷却した。生成物が分散した反応混合物を定性ろ紙をセットしたブフナー漏斗を使ってろ過し、余分なイオン等を除去するために、得られた固形分に1Lの水を加えて撹拌し、ろ過する工程を3回繰り返して行い、ろ紙上の固形分を50℃で一晩真空乾燥した。得られた黄褐色の乾燥固体は25.6gであった。これを乳鉢ですりつぶして粉末とし、一部を比較用サンプルとして収着試験等に用い、残りをケイ酸収着工程に使用した。この粉末を粉末X線回折で分析したところ、図6に示した典型的なシュベルトマナイトの回折パターンが得られ、シュベルトマナイトが得られたことを確認した。
<実施例1>
ケイ酸ナトリウム源としてJIS K1408において3号に規定されたケイ酸ナトリウム水溶液(愛知珪曹工業株式会社製、珪酸ソーダ3号、SiO2換算で29%含有)1.82g、支持電解質として、硝酸ナトリウム0.016gを水に溶かして全体を1.1Lとし、撹拌溶解してSiO2換算で8mmol/Lのケイ酸イオン処理用水溶液とした。この水溶液1Lと合成例1で得たシュベルトマナイト5gを1Lのポリ瓶に仕込んで蓋をして、振とう機にセットして室温下80回/分で24時間振とうした。次に内容物をろ過して固液分離した。このろ液はケイ酸収着量と硫酸脱着量を求めるために用いた。ろ紙上に捕集した固体を500mlの水に入れて撹拌後、ろ過するという洗浄工程を3回繰り返した。得られた固体を50℃で真空乾燥し、ケイ酸を収着させたシュベルトマナイトを得た。残った未使用の処理用水溶液と前記処理後のろ液をそれぞれ孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ過して、液中のケイ素濃度を分析し、その差からケイ酸イオンの収着量を計算したところ、用いた未処理シュベルトマナイト1gあたりのケイ酸イオン収着量はケイ素として0.51mmol/gであった。また、処理後のろ液中の硫酸イオン濃度を分析し、シュベルトマナイトからの硫酸イオン脱着量を計算したところ0.45mmol/gであった。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。得られた結果を他の実施例比較例と共に表2にまとめた。ケイ酸処理直後の粉末X線回折パターンはシュベルトマナイトのパターンを示した。湿熱放置後に取り出して乾燥したサンプルについて測定した粉末X線パターンの変化の状況については表4にまとめた。
これらの結果より、湿熱放置14日目までは、ケイ酸イオン処理をしていない比較例1や特許文献1において飽和するとされたケイ酸イオン収着量に近い比較例2に比べて、湿熱環境下における構造の安定性と高い亜ヒ酸イオン収着性を示すことが判った。
<実施例2>〜<実施例7>
SiO2換算濃度で10、15、20、25、30、40mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、ケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを得、ケイ酸イオン収着量と硫酸イオン脱着量を求め、表2にまとめた。ケイ酸イオン処理直後の粉末X線回折パターンから、ケイ酸イオン処理後、何れもシュベルトマナイトの構造を維持していることが判った。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、保管から取り出して50℃で一晩真空乾燥したサンプルについて、粉末X線回折パターンの測定およびヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。得られた結果を他の実施例および比較例と共に表2にまとめた。何れも比較例に比べて高い亜ヒ酸収着性能を30日以上持続した。この内、実施例2〜6は、60日後も比較的高い亜ヒ酸収着性を維持しており、従来の方法に比べて高い安定性を示した。さらに実施例3〜5では60日後の亜ヒ酸収着性低下幅が極めて小さく、著しい安定性が得られることが判った。湿熱放置後に取り出して乾燥したサンプルについて測定した粉末X線パターンの変化の状況については表4にまとめた。
実施例3については、フッ化物イオン、亜セレン酸イオン、セレン酸イオン、二クロム酸イオンの収着性能評価も行い、これらに対する収着性能の安定性を表3にまとめ、比較例1と比較した結果、いずれの有害イオンに対してもケイ酸収着による安定性向上効果が認められた。
<実施例8>
SiO2換算濃度で10mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液1Lに対し、シュベルトマナイトを1g添加したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、ケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを得、ケイ酸イオン収着量と硫酸イオン脱着量を求めた。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定およびヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。ケイ酸イオン収着量、硫酸イオン脱着量、およびヒ素化合物収着試験の結果を表2に記載した。比較例に比べて高い安定性が得られることが判った。
<実施例9>
合成例1で得られた未処理のシュベルトマナイト3gと実施例4で得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイト7gを混合したものを実施例9とした。得られた混合物を以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
未処理シュベルトマナイトを使っているため、亜ヒ酸収着性能は初期に比べて30日後までは低下するが、30日後、60日後も未処理シュベルトマナイトのみの比較例1と比べると高い収着性能を維持した。
また、ヒ酸収着性能は高いまま安定であり、ケイ酸イオン処理をしていないシュベルトマナイトを配合したことで、実施例4の特長である、亜ヒ酸収着性の非常に高い安定性を維持しつつ、ケイ酸イオン処理によるヒ酸収着性の低下を補うことができたことを確認した。
<実施例10>
合成例1で得られた未処理のシュベルトマナイトを50mlポリ瓶に入れ、蓋をしないまま、50℃相対湿度98%の恒温室内に30日間放置して取り出し、50℃で一晩真空乾燥したものの粉末X線回折パターンを測定したところ、ゲータイト化しており、その亜ヒ酸およびヒ酸収着性能は、比較例1の湿熱放置30日後と同様であった。このゲータイト化粉末2.5gと実施例4で得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイト7.5gを混合したものを実施例10とした。
得られたケイ酸イオン処理シュベルトマナイトを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。初期の亜ヒ酸イオン収着性は他の実施例に比べてやや低いが、未処理品が劣化した場合に比べると十分高く、湿熱放置後の収着性があまり変化せず、60日の長期間ほとんど変化せず、非常に安定であるという特長を示した。ヒ酸イオン収着性も同様に高い安定性を示し、ゲータイト化粉末を配合したことで、実施例4の特長である、亜ヒ酸収着性の非常に高い安定性を維持しつつ、ケイ酸処理によるヒ酸収着性の低下を補うことができたことを確認した。
<比較例1>
合成例1で合成したシュベルトマナイトをそのまま用いて、以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定、および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
ヒ酸イオンに対する収着性能は高く、湿熱放置後も安定であるが、亜ヒ酸イオンの収着性能は1週間で約40%低下した。
<比較例2>
SiO2換算濃度で6mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、比較例2とした。これらを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定、および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
比較例2は特許文献1に近い量のケイ酸イオン導入量であり、湿熱放置7日目までは未処理品である比較例1に比べて、亜ヒ酸収着性能が高く、ケイ酸イオン導入効果が認められたが、14日後には、比較例1と同程度まで低下し、実施例と比べて、ケイ酸導入による安定化向上効果はわずかであった。
<比較例3〜6>
SiO2換算濃度で50、100、200および500mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、それぞれ比較例3〜6とした。これらを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行った結果を表2に記載した。
これらの比較例は、湿熱放置前からヒ酸収着性がほとんどなかった。また、亜ヒ酸収着性に関し、湿熱放置30日後は、未処理品の30日後と比べても低くなり、ケイ酸収着量が多すぎると、ケイ酸処理していないものと比べても、安定性がより悪化することが判った。これらのサンプルについて粉末X線回折パターンを調べたところ、湿熱放置後もほとんど変化がなく、60日後でさえ、ゲータイトのパターンは見られなかった。このことから、ケイ酸イオン収着量が多すぎる場合、亜ヒ酸イオン収着性能の劣化はゲータイト化などの結晶構造変化によるものではなく、別の要因であると言える。
図2に示したように、ケイ酸イオン収着量増加に伴い硫酸イオン脱着量が増加していき、硫酸脱着量は未処理のシュベルトマナイトが含有している硫酸イオン量近くの数値で飽和するのに対し、ケイ酸イオン収着量は増加し続けることが判る。SiO2濃度50mmol/L以上で処理した場合は、硫酸イオン脱着量が飽和の領域に入っているにもかかわらず、ケイ酸イオン収着量の増加が続いていることから、ケイ酸イオンはシュベルトマナイトのトンネル構造内ではなく、外側に存在していると思われる。ケイ酸イオン収着量が多すぎる場合に湿熱条件下で亜ヒ酸収着性能が低下する原因は定かではないが、ケイ酸イオンが酸の存在下で縮合することができることから、シュベルトマナイト周辺では外側に収着したケイ酸イオンの一部がゲル化してシュベルトマナイト内への亜ヒ酸イオンの浸入を抑制していることが考えられる。
<比較例7>
SiO2換算濃度で1mmol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液を使用し、この水溶液1Lに対し合成例1で得たシュベルトマナイトを1g添加したこと以外は、実施例1と同様にシュベルトマナイトのケイ酸イオン処理を実施して、比較例7とした。ケイ酸イオン収着量は同様の処理条件でケイ酸イオン処理を行った特許文献1と同様に0.4mmol/g近くであった。これらを以下に説明する方法で湿熱環境に保管し、粉末X線回折パターンの測定および亜ヒ酸イオン、ヒ酸イオン収着性能の評価を行い、その結果を表2に記載した。湿熱環境下に放置したときのX線回折パターンは表4に結果を簡単にまとめた。比較例2と同様の経過をたどり、7日後はシュベルトマナイトとゲータイトのパターンが重複しており、14日後にはゲータイトのパターンのみとなった。
比較例7は、同程度のケイ酸イオン収着量であった比較例2と同様、湿熱放置7日目までは未処理品に比べて亜ヒ酸収着性能が高く、ケイ酸導入効果が認められたが、14日後には、比較例1と同程度まで低下し、実施例に比べて耐久性は低かった。
表3は、実施例3と比較例1のシュベルトマナイトを用いて、ヒ素化合物以外の有害陰イオンについて収着性能とその安定性を比較した結果である。評価に用いた陰イオンのいずれに対しても、実施例3、比較例1共に収着性能を有していることが判る。その安定性について比較すると、ヒ素化合物に対する場合と同様に、ケイ酸処理したシュベルトマナイトの方が高い安定性を有していることが判り、ヒ素化合物以外の有害陰イオンに対しても安定化効果があることが判った。
図1は合成例1で得たシュベルトマナイトをケイ酸ナトリウム水溶液で処理したときに、用いたケイ酸イオンのモル数をシュベルトマナイトのモル数で割って算出したケイ酸イオンのモル倍数を横軸、処理前のシュベルトマナイト1gあたりのケイ酸イオン収着量を縦軸としてプロットしたものである。これによれば、仕込み時のケイ酸イオンがシュベルトマナイトに対して多くなるほど、ケイ酸イオン収着量が増加することを示している。また、シュベルトマナイトと処理液の比率が変わってもその傾向は変わらなかった。したがって、特許文献1で調べられたような狭い濃度範囲ではケイ酸イオン収着量があまり変わらないように見えたかもしれないが、広い濃度範囲で検証してみると、同じ固液比でケイ酸イオン濃度が高くなれば、飽和することなくケイ酸イオン収着量は増加すると言える。ここでいう固液比はケイ酸で処理する際、処理前のシュベルトマナイトとケイ酸塩溶液の比率である。
図2は、合成例1のシュベルトマナイトへ、様々な条件でケイ酸イオンを収着させた工程で、収着したケイ酸イオン量と脱着した硫酸イオン量の関係をプロットしたものである。これによると、シュベルトマナイトに対するケイ酸イオン収着量が2mmol/g付近までは、硫酸イオン脱着量が直線的に増加していることが判る。ケイ酸イオンが約2mmol/gを超えると、硫酸イオン脱着量は、約1.4mmol/gで、ほぼ一定となって飽和しているが、飽和するレベルは前期構造式1のx=1.75の時のシュベルトマナイト中の硫酸イオン量1.56mmol/gに近く、x=1.75は硫酸含有量が最大である場合であることを考えると、シュベルトマナイト中の硫酸イオンがほぼ全量脱着されるまでイオン交換反応が進行すると言える。また、この図では、硫酸脱着量が飽和するまでが、直線的であり、その傾きから2価の硫酸イオン1個に対し平均1.4個程度のケイ酸イオンが収着しているが、一般にケイ酸は4個の官能基数に対し1〜2個しかイオン解離せず、この内1価が多いことを鑑みても、この直線部分は、ケイ酸イオンと硫酸イオンのイオン交換反応が支配的であると考えられる。イオン交換反応ができなくなれば、シュベルトマナイトのトンネル構造内にはケイ酸イオンが入る余地はないため、外側に収着することによってケイ酸イオン収着量が増加すると思われる。
図3は、シュベルトマナイトに収着されたケイ酸イオン量に対し、亜ヒ酸イオン収着量をプロットしたものであり、本発明を説明するのに最も特徴的な結果である。これらのデータは湿熱放置する前、および50℃相対湿度98%の条件で30日間と60日間湿熱放置した後のシュベルトマナイトについて測定したものである。これによれば、特定範囲のケイ酸収着量において、極めて特異的に亜ヒ酸収着量に対する安定性が高くなることが判る。その範囲はケイ酸収着量で0.5〜2.5mmol/gであり、特許文献1においてケイ酸イオン収着量が飽和するとされた約0.4mmol/gよりも高いところに存在する。また、0.8〜2.0mmol/gの間で、安定性向上効果はより顕著である。更に1.0〜1.75mmol/g周辺では、亜ヒ酸収着性能が湿熱放置後もあまり低下せず、極めて安定になることが判る。
図4は、シュベルトマナイトに収着されたケイ酸イオン量に対し、ヒ酸イオン収着量をプロットしたものである。ヒ酸イオンの収着挙動は図3に示した亜ヒ酸の場合とは大きく異なり、ケイ酸イオン収着量が増加するのに伴って収着量が減少し、ケイ酸イオン収着量約2.8mmol/gで、ヒ酸は収着されなくなった。このようにケイ酸イオン収着量に伴ってヒ酸収着量は低下するが、ケイ酸イオン収着前のヒ酸収着能力は、亜ヒ酸に比べて約2倍と高く、ケイ酸イオンをある程度収着しても、十分高い能力を発揮できる。具体的にはケイ酸イオン収着量0.5〜2.0mmol/gの範囲であれば、亜ヒ酸イオン収着に対する安定性向上効果を得ながら、ヒ酸にも対応可能な安定化シュベルトマナイトを得ることができる。また、ヒ酸イオン収着性は湿熱放置の期間によらず、大きく低下しないという特長がある。
図5はシュベルトマナイトをケイ酸イオンで処理した際の硫酸イオン脱着量に対して、ケイ酸イオン処理したシュベルトマナイトのヒ酸イオン収着量をプロットしたものである。これによれば、硫酸イオン脱着量とヒ酸イオン収着量は、ほぼ直線的な関係があり、硫酸イオンがほぼすべて脱着されるとヒ酸イオン収着性が失われることが判る。このことから、ヒ酸イオンはシュベルトマナイト中の硫酸イオンとイオン交換しており、ケイ酸イオンとは交換されないことが判る。
一方、シュベルトマナイトはヒ酸イオン収着性に関しては安定性が高いため、亜ヒ酸収着性に対する安定性を高めたシュベルトマナイトのヒ酸収着性能が不足する場合は、ケイ酸イオン収着量が少ないか、ケイ酸イオン処理をしていないシュベルトマナイトを併用することでこれを補えば、亜ヒ酸、ヒ酸の両イオンに対し極めて安定な収着性能を得ることも可能である。実施例9,10はこれを実施したものである。
図6は比較例1のシュベルトマナイトを湿熱放置する前に測定した粉末X線回折パターンである。典型的なシュベルトマナイトのパターンを示している。表4においてこのようなパターンが得られた場合に○とした。
図7は比較例1のサンプルを50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽で7日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。ケイ酸を収着させていない場合は、7日間でゲータイトに変化していることが判った。表4においてこのようなパターンが得られた場合に×とした。
図8は比較例2のサンプルを50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽で7日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。典型的なシュベルトマナイトの回折パターンと比べると、ゲータイトに特徴的な回折ピークが重なり合っているが完全にはゲータイト化しておらずケイ酸による耐久性向上効果が認められた。表4においてこのようなパターンが得られた場合に△とした。
しかし、この条件で14日間放置後に測定した粉末X線回折パターンである図9は、ほぼゲータイト化したことを示していた。このように、比較例2ではケイ酸イオン収着による効果は見られるものの、短時間で結晶構造が変化しその効果が失われることが判った。
図10および図11は、実施例1のサンプルを50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽でそれぞれ14日間および30日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。
30日後の図11ではほぼ完全にゲータイト化しているが、14日後の図10は比較例2がほぼゲータイト化した条件でも、完全にはゲータイト化しておらず、安定性が増したことが判った。
図12および図13は、実施例2のサンプルを50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽でそれぞれ30日間および60日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。
60日後の図13ではほぼ完全にゲータイト化しているが、30日後の図12は低角度側でわずかに変化があるが、シュベルトマナイトの構造をほぼ保っていることが判り、より安定性が増したことが判った。
図14は実施例3のサンプルを50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽で60日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。実施例3では60日間湿熱環境に放置してもシュベルトマナイトの構造を保っており極めて安定であることが判った。
図15および図16は比較例3のサンプルの湿熱放置前、および50℃相対湿度98%の恒温恒湿槽で60日間放置した後に真空乾燥してから測定した粉末X線回折パターンである。60日間湿熱環境に放置してもパターンに変化がなく、結晶構造は極めて安定であった。しかしながら、亜ヒ酸収着性能は大きく低下しており、ゲータイト化以外の理由で性能が低下したと言える。
表4は各実施例および各比較例のサンプルを前記湿熱条件に放置した後に測定した粉末X線回折パターンについて、変化の有無を簡単にまとめたものである。表中、湿熱放置前のパターンとほとんど変わらないものは○、ゲータイトのパターンが重複しているものを△、ほぼゲータイト化したものを×で示した。
この結果と亜ヒ酸イオン収着試験結果を比較すると、図3において湿熱放置後の亜ヒ酸収着性がピークを迎えるまでのケイ酸イオン収着量範囲では、特許文献1に記載されたように、結晶構造の安定性が向上するほど亜ヒ酸収着の安定性も向上すると言えるが、このピーク以降では、構造が安定であるにもかかわらず、亜ヒ酸収着の安定性が低下しており、その原因は定かではないが、結晶構造がゲータイトに変化するというメカニズムにはよらないものであると言える。
評価方法(ケイ酸イオン収着量と硫酸イオン脱着量の評価)
未使用のケイ酸処理溶液、およびケイ酸収着操作後のろ液を必要に応じ超純水で希釈し、ICP発光分析装置(Spectro社製、ARCOS SOP)を用いて測定し、ケイ素標準液で作製した検量線を基に、ケイ素の定量を行った。
また、これらの溶液を別途サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製社製カラムDionex IonPac AS19を取りつけたイオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、Dionex ICS3000)により測定して、硫酸イオンを定量した。
評価方法(強制劣化)
各種条件でケイ酸イオン処理したシュベルトマナイトおよびケイ酸イオン処理を行っていないシュベルトマナイト1gを容量50mlの広口ポリ瓶に量り採り、蓋をせずに50℃、相対湿度98%に設定した恒温恒湿器内に所定時間放置した。恒温恒湿器から取り出したサンプルを50℃で一晩真空乾燥し、粉末X線回折パターンの測定、およびヒ酸イオン、亜ヒ酸イオン収着性能の評価を行った。また、一部のサンプルはセレン酸イオン、亜セレン酸イオン、フッ化物イオン、二クロム酸イオンの収着特性についても評価を行った。
粉末X線回折パターンの測定はブルカー・エイエックスエス株式会社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、X線源としてCuKα線を使って、2θが10〜80°の範囲を測定した。
収着試験
表1に示すA〜Fの有害物質をそれぞれ含む試験液を作成した。100mlのポリプロピレン製瓶に各収着剤サンプル0.1gを量りとり、前記試験液50mlを入れた。この内、試験液Bのみ試験液50mLに対し、各サンプルを0.05gとした。これらのポリ瓶を、水浴を備えた振とう機にセットし、40℃で24時間振とうした。振とう終了後、収着剤と試験液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾別し、ろ液中の有害物質濃度をICP−AES(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 iCAP7600)で測定した。フッ素については、イオンクロマトグラフィー(カラム;IonPacTM AS12A(DIONEX社製、φ4mm×200mm)で測定した。各サンプルの乾燥単位重量当たりの有害物質の収着量(mmol/g)として計算し、その結果を表2および表3に記載した。
Figure 0006413924
Figure 0006413924
Figure 0006413924
Figure 0006413924

Claims (7)

  1. ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンを収着させる安定化されたシュベルトマナイトの製造方法であり、
    前記製造方法がケイ酸イオン溶液とシュベルトマナイトを混合して、シュベルトマナイトにケイ酸イオンを収着させる際に、ケイ酸イオン溶液中のケイ酸イオンのモル数をシュベルトマナイトのモル数の1.5倍から12倍とすることを特徴とする、
    安定化されたシュベルトマナイトの製造方法。
  2. ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.8から2.0mmol/gの割合でケイ酸イオンを収着させることを特徴とする請求項に記載の安定化されたシュベルトマナイトの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の方法で製造された安定化されたシュベルトマナイトを、陰イオン性有害物質を含む液体もしくは固体に接触させて、陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法。
  4. 陰イオン性有害物質がヒ素、セレン、フッ素、クロムおよびヨウ素の何れかを含むことを特徴とする、請求項に記載の陰イオン性有害物質を収着除去もしくは不溶化する方法。
  5. ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり1.0から2.5mmol/gの割合でケイ酸イオンが収着された安定化されたシュベルトマナイトを用いることを特徴とする、請求項または請求項に記載の陰イオン性有害物質が亜ヒ酸イオンである収着除去または不溶化する方法。
  6. ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり0.5から2.0mmol/gの割合でケイ酸イオンが収着された安定化されたシュベルトマナイトを用いることを特徴とする、請求項または請求項に記載の陰イオン性有害物質がヒ酸イオンである収着除去または不溶化する方法。
  7. ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たり1.5から2.5mmol/gの割合でケイ酸が収着された安定化されたシュベルトマナイトをAとし、ケイ酸イオン収着前のシュベルトマナイト単位質量当たりのケイ酸収着量が1.2mmol/g以下のシュベルトマナイトをBとし、ケイ酸イオンを含まないシュベルトマナイトをCとし、BとCがそれぞれ湿熱条件下で一部もしくは完全にゲータイト化したものをそれぞれB’、C’とした場合に、Aに対しB、C、B’、C’のいずれか一つもしくは複数を、併用することを特徴とする、請求項または請求項に記載の陰イオン性有害物質を収着除去または不溶化する方法。
JP2015102462A 2015-05-20 2015-05-20 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。 Active JP6413924B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015102462A JP6413924B2 (ja) 2015-05-20 2015-05-20 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015102462A JP6413924B2 (ja) 2015-05-20 2015-05-20 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016216299A JP2016216299A (ja) 2016-12-22
JP6413924B2 true JP6413924B2 (ja) 2018-10-31

Family

ID=57579766

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015102462A Active JP6413924B2 (ja) 2015-05-20 2015-05-20 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6413924B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7176014B2 (ja) 2019-02-14 2022-11-21 日本曹達株式会社 吸着材粒子
CN112718793B (zh) * 2020-12-15 2022-03-11 紫金矿业集团股份有限公司 一种含亚砷酸盐的含砷物料直接玻璃化固砷方法
CN113248003A (zh) * 2021-05-25 2021-08-13 渤海大学 一种施氏矿物催化异相光芬顿反应降解环糊精溶液中氯丹的方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3828887B2 (ja) * 2003-02-05 2006-10-04 株式会社ソフィア 新規化合物、シュベルトマナイトの安定化方法、汚染水若しくは汚染土の浄化方法、リン酸の吸着方法
JP3859001B2 (ja) * 2003-06-13 2006-12-20 有限会社金沢大学ティ・エル・オー 安定性に優れたヒ素収着物質及びそれを用いた汚染水等の浄化方法
JP2006326405A (ja) * 2005-05-23 2006-12-07 Toyo Giken Kk 浄水フィルター

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016216299A (ja) 2016-12-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Wu et al. Arsenic sorption by red mud-modified biochar produced from rice straw
Zhang et al. Effective, rapid and selective adsorption of radioactive Sr2+ from aqueous solution by a novel metal sulfide adsorbent
AU2012213202B2 (en) Composite adsorbent material containing a porous carbon matrix
Zamparas et al. A novel bentonite-humic acid composite material Bephos™ for removal of phosphate and ammonium from eutrophic waters
US7491335B2 (en) Removal of arsenic from water with oxidized metal coated pumice
US11351518B2 (en) Cesium adsorbent and method of preparing the same
JP6413924B2 (ja) 安定化されたシュベルトマナイト、およびその製造方法。
US8070959B2 (en) Chalcogenide compounds with a clay-like cation-exchange capacity and methods of use
Chen et al. Phosphate removal by polystyrene anion exchanger (PsAX)-supporting Fe-loaded nanocomposites: Effects of PsAX functional groups and ferric (hydr) oxide crystallinity
Meng et al. Efficient adsorption of the Cd (II) and As (V) using novel adsorbent ferrihydrite/manganese dioxide composites
Deng et al. Adsorption of hexavalent chromium onto kaolin clay based adsorbent
Zhou et al. Enhanced arsenite immobilization via ternary layered double hydroxides and application to paddy soil remediation
Yang et al. Inhibition of oxyanions on redox-driven transformation of layered manganese oxides
JP2007125536A (ja) 有害成分の固定化薬剤および固定化方法
JP2011240325A (ja) 排水中の重金属イオンおよびリン酸イオンの除去剤とそれを使用した重金属イオンおよびリン酸イオンの除去方法
KR101344236B1 (ko) 철 슬러지를 이용한 유해성 이온 제거용 흡착제 및 이의 제조방법
Fukushi et al. Superior removal of selenite by periclase during transformation to brucite under high-pH conditions
Tashauoei et al. Removal of hexavalent chromium (VI) from aqueous solutions using surface modified nanozeolite A
De Resende et al. Mechanisms of mercury removal from aqueous solution by high-fixation hydroxyapatite sorbents
JP6551171B2 (ja) 安定化されたシュベルトマナイトの製造方法
Ge et al. Cu/Fe bimetallic modified fly ash: an economical adsorbent for enhanced phosphorus removal from aqueous solutions
JP5548956B2 (ja) ヒ素収着材及びヒ素汚染物質の浄化方法
Chitrakar et al. Cesium adsorption by synthetic todorokite-type manganese oxides
JP6769161B2 (ja) 安定化されたシュベルトマナイトの製造方法
Janashvili et al. Natural zeolite clinoptilolite as adsorbent for cleaning waters from arsenic ions

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170908

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180424

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180427

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180622

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180904

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180917

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6413924

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250