本開示の実施形態における培養装置1を、図面を参照しつつ説明する。
培養装置1は、図1及び図2に示すように、細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養室4を内部に配置した内箱22によって形成する略箱状の断熱箱本体2と、培養室4の湿度を制御するための加湿水を貯溜し培養室4の底部に配置される加湿皿15と、断熱箱本体2を貫通し一端が培養室4の内部に配置され、他端が断熱箱本体2の外部に配置される伝熱結露部材(以下、伝熱部材とも記す)35と、を備えて構成される。
伝熱結露部材35は、断熱箱本体2の側面又は背面に貫通するように取り付けられ、培養室4の内部に配置される先端結露部31(連絡部30)が、貫通部分から離間した第1位置(曲折部34)で下方へ向かって屈曲し、かつ、前記一端が加湿皿15の内部へ向かって傾斜し、水平方向において先端結露部31の最下端が加湿皿2の縁部より加湿皿2の内側に配置される構成である。
また培養装置1は、左開き式の扉(詳しくは外扉7と内扉3)を備えるものであり、前面に開口2Aを有する断熱箱本体2は、細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養室4を内部に形成する略箱状をなしている。
培養装置1は、金属製の外箱21と、外箱21の内側に配置される断熱材24と、その内側に空気層(所謂エアージャケット)25を存して配置される金属例えばステンレス製の前面開口の内箱22と、を備えて構成されている。これによって、断熱箱本体2内に内箱22によって前面開口の培養室4が形成され、培養室4内が細胞や微生物等の試料の培養を行う領域となる。内箱22の左右両側面、天面、底面及び背面には、培養室4を加熱するための加熱ヒータ37が配置される。
また断熱箱本体2の一側部(図2では左側)には、培養室4の前面開口2Aからの熱進入を防止する外扉としての断熱扉7が開閉自在に取り付けられており、断熱扉7の裏側面の周縁部には磁石入りのガスケット8が環状に配置されている。断熱扉7を閉じたときガスケット8が断熱箱本体2の前面開口2Aの周縁部に密着することにより、断熱扉7によって気密的に前面開口2Aが閉塞され、培養室4の前面開口2Aからの外気進入を防止する。
培養室4は、前面開口のステンレス製の内箱22によって区画形成されており、内箱22の左右両側面、天面及び背面は、断熱箱本体2と空気層(所謂エアージャケット)25を存して断熱箱本体2内に配置されている。内箱22の前面開口は内扉としての透明扉3によって開閉される構成であり、実質的に内箱22と透明扉3とで囲まれる空間により培養室4が形成される。透明扉3は、その左側をヒンジにより内箱22に開閉自在に支持されている。内箱22の前面開口周縁部には環状配置した弾性シール部材2Bを備えており、透明内扉3を閉じたとき透明内扉3の裏側面が弾性シール部材2Bに密着して、培養室4の前面開口が閉塞される。
培養室4は、複数の棚5により上下に(ここでは4枚の棚で5つに)区画されている。培養装置1は、例えば、CO2インキュベータであれば、CO2の濃度を5%程度に設定・維持するケースが多く、CO2の濃度制御により扉の閉塞後にCO2ガスを培養室4内に供給するようにしている。
培養室4には、その背面及び底面に沿ってそれぞれCO2等を含む空気の気体通路Kを形成するために、内箱22の背壁及び底壁と間隔を存して背面ダクト11A及び底面ダクト11Bからなるダクト11が配置されている。培養装置1は、背面ダクト11Aの上部に形成された吸込口12から培養室4内のCO2等を含む気体を吸い込み、底面ダクト11Bの前部及び側面に設けられた吹出口13から培養室4内に空気を吹き出すようにして空気の強制循環を行う。
ダクト11内(ここでは上部)には、このCO2等を含む気体の強制循環のために循環用送風機14が配置されている。この送風機14は、ファン14Aとモータ14Bと軸14Cとで構成されており、モータ14Bは後述する断熱箱本体2の外側背面の機械室19に配置され、軸14Cはこの機械室19のモータ14Bから断熱箱本体2の背面を貫通してCO2等の気体通路Kまで延びてファン14Aに接続されている。
また、培養室4の底面で且つ底面ダクト11Bと内箱22の底壁と間の底面ダクト11B内には、加湿用の水(即ち加湿水)16を貯溜する上面開口の加湿皿(加湿部)15が配置される。加湿皿15は、内箱22の底面外側に配置されたヒータ37により加熱されて水を蒸発させる。
尚、加湿皿15をダクト11内で且つ培養室4の底部に配置することにより、循環用送風機14及びダクト11にて形成される培養室4へのCO2等の気体通路Kに加湿されたガスを効率よく循環させることが可能となる。
断熱箱本体2の外箱21の背面には、循環用送風機14の駆動手段たるモータ14Bや、培養室4にCO2ガスを供給するためのガス供給手段17、培養室4の温度(庫内温度)を測定するための庫内温度センサ110、制御装置(制御部)100等の電装部品を収容する電装ボックス38等を配置するための機械室19が、外箱21の背面を覆う背面カバー26によって形成される。
ガス供給手段17は、ガス供給管17Aと、開閉弁17Bと、フィルタ17C等で構成され、ガス供給管17Aの先端部分は、気体通路Kに臨むようになっている。
培養装置1は、培養室4内を流通する気体及び加湿皿15内の加湿水16を殺菌するために、気体通路K内に紫外線ランプ27を配置している。
培養装置1は、断熱箱本体2に設けられている操作入力受付部(不図示)から、培養装置1の起動及び停止の指示や、培養室4の目標温度(例えば37℃)、目標湿度(例えば93%RH)、CO2ガスの目標濃度(例えば5%)等の指示入力を受け付ける。そして制御装置100は、培養室4の温度や湿度、CO2濃度が上記目標値になるように制御を行う。
次に、伝熱結露部材35について説明する。
図2〜図9に示すように、培養装置1の所定の箇所には、一端の先端結露部31と他端の熱排出部32が連絡部30を介して一体化された伝熱結露部材(結露部)35が装着されている。伝熱結露部材35は、作動液が封入されたヒートパイプ、アルミニウム等の良熱伝導材で構成した所定長さの丸棒、或いはアルミニウム等の良熱伝導材で構成した所定長さの平板のいずれであってもよい。
以下に記載する実施形態では、アルミニウムやステンレス等の良熱伝導材で構成した所定長さの丸棒を伝熱結露部材35として採用した場合について記載する。
伝熱結露部材35は、断熱箱本体2の背面を貫通するように断熱箱本体2に装着され、この背面の貫通方向に延伸する。また伝熱結露部材35は、断熱箱本体2内の培養室4に呈される第1部位と、断熱箱本体2の外部に呈される第2部位と、を有しており、熱排出部32が断熱箱本体2の外部に配置され、連絡部30が断熱箱本体2及び内箱22を貫通し、先端結露部31が断熱箱本体2内部のダクト11A内の気体通路Kに配置されるように装着されている。熱排出部32は、培養装置1の周囲からの外力によって損傷を受けないように、培養装置1の背面側の機械室19内に配置されている。
連絡部30が断熱箱本体2及び内箱22を貫通する部分は、少なくとも金属製の外箱21とステンレス製の内箱22との間に断熱性シール材36が配置されている。このように断熱性シール材36を介在させたので、気体通路Kを流れる気体が外部に漏洩せず、培養室4が悪影響を受けなくなり、かつ連絡部30と内箱22との接触部に結露が生じることを防止できる。また、外箱21と内箱22の熱影響を抑制できる。
また図9に示すように、伝熱結露部材35には、断熱箱本体2の外部において、外箱21と接触しつつ伝熱結露部材35を下方から支持するように保持部材130が装着されている。保持部材130は、取り付けネジ44によって伝熱結露部材35に固定されている。伝熱結露部材35に保持部材130を装着することによって、伝熱結露部材35のぐらつきを防ぎ、培養室4の気密性をより確実に維持することができる。
また熱排出部32には電子冷却装置(冷却部)40が装着されている(図1参照)。電子冷却装置40は熱排出部32を冷却する。熱排出部32を冷却することにより、その冷却効果が連絡部30を通って先端結露部31に伝達され、先端結露部31、特に曲折部34の近傍を所定の露点温度に保って先端結露部31の表面に結露を生じさせる。ここで、電子冷却装置40で冷却された冷却効果の伝達は先端結露部31の先端に向かって減衰していくため、培養室4に呈される第1部位において曲折部34の近傍が最も低温となる。
熱排出部32への取り付けの容易さ、小型化、温度制御のし易さ等を達成するために、本開示では、電子冷却装置40として、ペルチェ効果によって熱排出部32を冷却するペルチェ素子と称する電子冷却素子41と、それの放熱を行うためのヒートシンク42を備えている。
ペルチェ素子と称する電子冷却素子41は、PN接合の複数の半導体素子で冷却・加熱部を構成するものであり、一方向にN型半導体とP型半導体が交互配列された状態で、隣り合うN型半導体とP型半導体の一端側が熱良導板で連結されて吸熱部(冷却側)を構成し、他端側が熱良導板で連結されて放熱部(加熱側)を構成する関係によって、全体としてN型半導体とP型半導体が直列状態に接続された構成である。
ヒートシンク42は、板状ベース部42Aの上面に間隔を存して複数の放熱フィン42Bが板状ベース部42Aと一体形成されたアルミニウム製の部材である。
図7〜図9に示すように、電子冷却素子41は、吸熱部(冷却側)が伝熱結露部材35の熱排出部32の上面に熱伝導状態に取り付けられている。このために、伝熱結露部材35の熱排出部32は上面に平坦な取り付け面を形成しており、この取り付け面に放熱用グリスを介して、または薄い熱伝導ゴムシート等の熱伝導性部材を介して電子冷却素子41の冷却側が配置される。
一方、電子冷却素子41の放熱部(加熱側)には、放熱用グリスを介して、または薄い熱伝導ゴムシート等の熱伝導性部材を介して放熱器として作用するヒートシンク42の板状ベース部42Aが配置される。この状態で、図7〜図9に示すように、伝熱結露部材35の熱排出部32の下側から熱排出部32を貫通して、ヒートシンク42の板状ベース部42Aに対して取り付けネジ44を締め付け結合する。これによって、伝熱結露部材35の熱排出部32、電子冷却素子41、及びヒートシンク42が熱伝導状態に一体化される。
伝熱結露部材35の先端結露部31を露点温度に保って先端結露部31の表面に結露を生じさせるために、電子冷却素子41によって熱排出部32を冷却する。熱排出部32は、電装ボックス38内の発熱部品から発生する熱影響が少ない位置となるように、電装ボックス38の側方に配置されている。
また図7〜図9に示すように、伝熱結露部材35は、断熱箱本体2の外部に呈される第2部位から、伝熱結露部材35の延伸方向に沿って温度センサ装着穴(穿設穴)140が穿設されている。
そしてこの温度センサ装着穴140には、結露部温度センサ120が挿入される。より詳しくは、温度センサ装着穴140の最奥部に、結露部温度センサ120のサーミスタ121が位置するように装着される。このような態様により、伝熱結露部材35の温度をより正確に測定することが可能となる。また結露部温度センサ120を培養室4に曝さなくてよいので、培養室4の清掃負担を軽減することが可能となる。
さらに本実施形態においては、温度センサ装着穴140は、伝熱結露部材35の曲折部34に最奥部が形成されるように穿設されている。このため、結露部温度センサ120は、培養室4に呈される第1部位の中で最も低温となる曲折部34の温度をより正確に測定することが可能である。
結露部温度センサ120のサーミスタ121は、リード線122によって制御装置100と接続されており、制御装置100は、曲折部34の温度が所定の目標温度になるように電子冷却素子(冷却部)41を制御することで、培養室4の湿度を制御する。
以下に、本実施形態に係る制御装置100が行う培養室4の湿度制御について説明する。
制御装置100は、庫内温度センサ110及び結露部温度センサ120の測定値に基づき、電子冷却素子(冷却部)41を制御して、伝熱結露部材(結露部)35の温度を所定温度にすることで、培養室4内の湿度を制御する。
制御装置100が有する機能構成を図10に示す。図10には、制御装置100が備える各種の機能の内、培養室4内の湿度を制御するための機能についてのみを記す。
制御装置100は、露点温度算出部101と、結露部温度制御部102と、を備えて構成される。
露点温度算出部101は、培養室4の温度(例えば37℃)と、培養室4の目標湿度(例えば93%RH)を取得する。そして露点温度算出部101は、培養室4内の温度から求まる培養室4内の飽和水蒸気圧または飽和水蒸気量と、培養室4内の目標湿度と、に基づいて、伝熱結露部材(結露部)35の目標温度(露点温度)を算出する(詳しくは後述する)。
そして結露部温度制御部102は、伝熱結露部材35の温度が上記目標温度(露点温度)になるように電子冷却素子(冷却部)41を制御する。
次に、本実施形態に係る制御装置100が、伝熱結露部材(結露部)35の目標温度(露点温度)を算出し、伝熱結露部材(結露部)35の温度が目標温度になるように電子冷却素子41を制御することによって、培養室4の内部を目標湿度に制御する際の様子を、図11及び図12を参照しながら説明する。
図11は、空気の温度(℃)と飽和水蒸気圧(hPa)との関係を表すグラフであり、Tetensの式として知られている。
まず制御装置100はヒータ37をオンし、加湿皿15内に貯留する水を蒸発させることによって培養室4内を加湿する(S1000)。
次に制御装置100は、培養室4の温度(t1)と目標湿度(h%RH)を取得する(S1010)。そして制御装置100は、培養室4内の空気の温度がt1である時の飽和水蒸気圧x1(hPa)を算出し、そして、培養室4の湿度が目標湿度(h%RH)になるときの水蒸気圧x2(x2=x1×h/100)を算出する(S1020)。
そして制御装置100は、x2(hPa)で空気中の水蒸気が飽和するときの温度t2(℃)を、伝熱結露部材(結露部)35の目標温度(露点温度)として算出する(S1030)。
そして制御装置100は、結露部温度センサ120による測定値と、上記目標温度(露点温度)と、の差が小さくなるように、PID制御等を行って電子冷却素子41を継続的に駆動することで、伝熱結露部材35の温度を上記目標温度に近づける(S1040)。
制御装置100が上記のような制御を行うことによって、伝熱結露部材35の培養室4に呈される第1部位において結露が生じ、培養室4内の湿度が目標湿度になるように制御される。
このような態様により、本実施形態に係る培養装置1は、培養室4内の湿度をより高精度に制御することができる。
なお上記の説明では、庫内温度センサ110の測定値と目標湿度とを用いて、伝熱結露部材35の目標温度(露点温度)を算出する場合について説明したが、培養装置1は、操作入力受付部(不図示)に入力された培養室4の目標温度(例えば37℃)になるように培養室4内の温度制御を行っており、培養室4の温度はこの目標温度にほぼ等しい状態に維持されているため、庫内温度センサ110の測定値を用いずに、操作入力受付部(不図示)に入力された培養室4の目標温度と目標湿度とに基づき、伝熱結露部材35の目標温度を算出するようにしてもよい。このような態様により、伝熱結露部材35の目標温度を算出する処理を簡単化することが可能となる。
また、図5に示すように、伝熱結露部材35の連絡部30は、外箱21と内箱22に接触しない状態で、外箱21の貫通孔21P、断熱性シール材36、及び内箱22の貫通孔22Pを貫通する。断熱性シール材36は疎水性の高い部材が好ましく、ポリアセタール樹脂がその一つである。また、疎水性の材質として、疎水性のゴム、フッ素系樹脂等の採用でもよい。断熱性シール材36は、その基盤部36Cの背面が貫通孔21Pを塞ぐ状態で外箱21の背壁の内側面に当接し、断熱材24を貫通する。そして断熱性シール材36は、主体部36Aを挟んで基盤部36Cとは反対側に配置される先端シール部36Bが、内箱22の貫通孔22Pを貫通して気体通路K内に延出している。
伝熱結露部材35は、図示の如く、断熱性シール材36の基盤部36Cと主体部36Aと先端シール部36Bとを貫通して保持されている。この断熱性シール材36によって、気体通路Kを流れる気体が伝熱結露部材35の配置部分から漏洩せず、培養室4が気体の漏洩による悪影響を受けなくなり、且つ、伝熱結露部材35の連絡部30を介して内箱22に結露することを防止でき、伝熱結露部材35に対する外箱21と内箱22の熱影響を抑制できる。
先端結露部31に結露した水分が下方に流下して加湿皿15に入るようにするために、伝熱結露部材35は、ダクト11A内の気体通路Kに呈される第1部位が曲折部34で下方に曲折され、曲折部34から先端結露部31に到る伝熱結露部材35の部分が下向きに構成してある。また加湿皿15も、伝熱結露部材35に付着した水が落下する位置に上面開口部が位置するように配置されている。なお、伝熱結露部材35の先端結露部31は、対応するダクト11Aと平行になるようにして下向きにすることで、ダクト11の奥行幅をコンパクトに構成したが、この角度に限定するものではない。
また、断熱性シール材36のダクト11内に延出する部分に結露した水分、即ち、気体通路Kに露出した先端シール部36Bに結露した水分が、下方に流下して加湿皿15に入るようにするために、先端シール部36Bは、その上下面は勿論のこと左右面も含めた周囲面が、前方に向けて斜め下向きの傾斜面を形成して、加湿皿15の内側の真上に、延出している。そして加湿皿15も、先端シール部36Bに付着した水が落下する位置に上面開口部が位置するように配置されている。
また、先端結露部31の先端は、加湿皿15の内部へ向かって傾斜し、水平方向において先端結露部31の最下端が加湿皿15の縁部より加湿皿15の内側に、言い変えると結露した水分が重力によって下方に流下した時に確実に加湿皿15の内側に入る位置に配置されている。すなわち、先端結露部31の先端は、断熱箱本体2の背面から遠ざかるように傾斜している。そのため、先端結露部31を断熱箱本体2の背面近傍まで近づけたとしても、先端結露部31の最下端は断熱箱本体2の背面と一定の距離を確保することができる。
これによって、曲折部34から先端結露部31の先端に到る伝熱結露部材35の部分によく結露し、結露した水分が重力によって下方に流下して飛散することなく加湿皿15に入る。また、気体通路Kに露出した断熱性シール材36の先端シール部36Bに結露した場合でも、その結露水は、重力によってその傾斜に沿って下方に流下し、加湿皿15に直接落下するか、先端結露部31を伝って加湿皿15に落下するため、飛散することなく加湿皿15に入る。
なお上記実施形態では、伝熱結露部材35に培養室4内の水蒸気を結露させる場合について説明したが、図13〜図15に示すように、伝熱結露部材35を用いない構成も可能である。
例えば図13に示す例では、ステンレス製の内箱22の空気層25の側に電子冷却装置40を装着して、電子冷却装置40を装着した部分の内箱22の温度を上述した目標温度(露点温度)に冷却することで、内箱(結露部)22に結露を生じさせる。
この場合、結露により生じた水滴は内箱22の壁面を伝って流下する。そのため、内箱(断熱箱)の底部に、水を貯留可能な凹部150を形成するようにする。
そして、この凹部(加湿部)150に貯留した水をヒータ37で加湿することで、培養室4内を加湿する。このような態様により、培養装置1の部品点数を削減でき、コストダウンを図ることも可能である。また培養室4の内部の形状を単純化でき、水蒸気に曝される部品の数を減らせるので、清掃負担も軽減できる。
あるいは図14に示すような態様も可能である。図14に示す例は、ステンレス製の内箱22の空気層25の側に電子冷却装置40を装着して、電子冷却装置40を装着した部分の内箱22の温度を上述した目標温度(露点温度)に冷却することで、内箱(結露部)22に結露を生じさせる点では図13に示す例と同様であるが、内箱22の結露部として機能させる部分の壁面を、他の部分の壁面よりも、培養室4の内側に近づく方向に突出させ、しかも突出させた部分の周囲を、培養室4の内側に近いほど下方に位置するような斜め下向きの傾斜面として形成している。そして結露部として機能する突出した部分の壁面が加湿皿(加湿部)15の上部開口面の上方に位置するようにしている。このため、結露により生じた水滴を加湿皿15の内部に落下させることができる。
また図14に示す態様でも、加湿皿15に貯留した水をヒータ37で加湿することで、培養室4内を加湿するようにできる。このような態様により、培養装置1の部品点数を削減でき、コストダウンを図ることも可能である。また培養室4の内部に曝される部品の数を減らせるとともに、培養室4内の形状も単純化できるので、清掃負担も軽減できる。
あるいは図15に示すような態様も可能である。図15に示す例は、内箱(断熱箱)22の底部に、水を貯留可能な凹部150を形成するとともに、前記凹部150に貯留する水の水面よりも高くなる部分を有するような凸部(結露部)160を凹部150内に形成した構成である。
そして内箱22の一部である凸部160の外側(空気層25の側)に電子冷却装置40を装着して、凸部160の温度を上述した目標温度(露点温度)に冷却することで、凸部(結露部)22に結露を生じさせる。
この場合、結露により生じた水滴は凸部160の周囲の壁面を伝って凹部(加湿部)150に流下する。
そして、この凹部150に貯留した水をヒータ(図15には不図示)37で加湿することで、培養室4内を加湿する。このような態様により、培養装置1の部品点数を削減でき、コストダウンを図ることも可能である。また培養室4の内部に曝される部品の数を減らせるとともに、培養室4内の形状も単純化できるので、清掃負担も軽減できる。
また、伝熱結露部材35をヒートパイプ35を用いて構成することも可能である。図16には伝熱結露部材35の一種であるヒートパイプ35の構成を示しており、ヒートパイプ35は、棒状の密閉容器内に少量の液体(作動液)を真空封入し、内壁に毛細管構造(ウイック)33を備えたものであり、先端結露部31で作動液が蒸発(蒸発潜熱の吸収)し、蒸発した蒸気は熱排出部32の方向に移動する。蒸気は熱排出部32で凝縮して蒸発潜熱を放出する。そして凝縮した液は毛細管現象で先端結露部31へ還流する。このような一連の相変化が連続的に生じ、先端結露部31における熱が熱排出部32に素早く移動するようになっている。
このようにヒートパイプ35により伝熱結露部材35を構成した場合は、熱排出部32に電子冷却素子41を装着して冷却するが、熱排出部32自体が先端結露部31を冷却する冷却部としても機能する。
なお、伝熱結露部材35における熱移動を素早くするためには、ヒートパイプ35が好適であるが、培養装置1のように、極めて短時間の熱移動を要求されなくても差し支えない場合は、伝熱結露部材35は、アルミニウムや銀等の金属性良熱伝導材で構成した所定長さの丸棒、或いはアルミニウムや銀等の良熱伝導材で構成した所定長さの平板のいずれであってもよい。アルミニウムの場合は、その表面に抗菌性皮膜を抗菌メッキまたは抗菌アルマイト等によって形成することにより、雑菌の繁殖防止効果を得る。伝熱結露部材35の銅材を採用することも考えられるが、銅は緑青が発生する虞があるため、この緑青が表面に現れないようにメッキを施す等の処置が必要である。
また図16には示していないが、伝熱結露部材35としてヒートパイプ35を用いる場合も、ヒートパイプ35は断熱箱本体2内の培養室4に呈される第1部位と、断熱箱本体2内の外部に呈される第2部位とを有しており、第1部位の曲折部34において先端を下方に向けるように屈曲させるとよい。また第2部位には、ヒートパイプ35の延伸方向に沿って温度センサ装着穴(穿設穴)140が穿設されており、この温度センサ装着穴140には、結露部温度センサ120が装着されている。
以上、本実施形態に係る培養装置1及び湿度制御方法について説明したが、本実施形態に係る培養装置1及び湿度制御方法によれば、湿度センサの誤差の影響を受けずに、培養室4内の湿度をより高精度に制御することが可能となる。
また本実施形態に係る培養装置1は、断熱箱本体2のいずれかの面(一例として正面奥側の面)を貫通するように伝熱結露部材35が装着されている。このような態様により、断熱箱本体2の外部から伝熱結露部材35を介して培養室4の湿度を制御することが可能になる。
また本実施形態に係る伝熱結露部材35は、断熱箱本体2の何れかの側面(一例として正面奥側の面)を貫通するように断熱箱本体2に装着される金属棒であり、断熱箱本体2内に呈される第1部位は、上記貫通箇所から離間した第1位置で先端部を下方を向けるように屈曲してなる。
このような態様により、伝熱結露部材35に付着した水を断熱箱本体2の壁面から離間させた位置に落下させることができるので、落下地点に上面に開口部を有した回収容器を配置することで、確実に水滴を回収することが可能となる。
また本実施形態に係る伝熱結露部材35は、断熱箱本体2の外部に呈される第2部位から、伝熱結露部材35の延伸方向に沿って穿設された穿設穴を有してなり、伝熱結露部材35の温度を測定する温度センサが、この穿設穴の最奥部に装着されるように構成されている。
このような態様により、伝熱結露部材35の温度をより正確に測定することが可能となる。また温度センサを培養室4に曝す必要がないので、培養室4の清掃を容易にでき、培養装置1の維持負担を軽減することができる。
さらに本実施形態に係る伝熱結露部材35の上記穿設穴は、伝熱結露部材35が屈曲する上述した第1位置に最奥部が形成されるように穿設されている。
このような態様により、結露部温度センサ120は、培養室4において最も低温になる部分又はその近傍である第1位置の温度を測定することが可能となる。これにより、結露部温度制御部102は、第1位置の近傍を所定の露点温度に保つことが可能となるため、培養室4内の湿度をより高精度に制御することが可能となる。
なお上記実施形態では、ヒータ37を用いることにより加湿皿15あるいは凹部150内の水を蒸発させて培養室4を加湿する場合について説明したが、例えば、超音波を出力可能な超音波振動子を用いて加湿皿15あるいは凹部150に貯留する水を霧化させるようにしてもよい。この場合、ヒータ37の代わりに超音波振動子を用いてもよいし、あるいはヒータ37と併用して超音波振動子を用いてもよい。このような態様により、培養室4内を効果的に加湿することが可能となる。
あるいは、ヒータ37や超音波振動子を用いずに、加湿皿15や凹部150内の水が自然に蒸発する作用により培養室4を加湿するようにしてもよい。このような態様により、培養装置1の部品点数を減らし、コスト削減を図ることが可能となる。
また上記実施形態では、図11を参照しながら、制御装置100が伝熱結露部材35の目標温度を算出する際に培養室4内の水蒸気圧を用いる場合を例示したが、飽和水蒸気圧は飽和水蒸気量に換算可能であるので、培養室4内の水蒸気量を用いてもよい。
また上記実施形態では、電子冷却装置40を用いて伝熱結露部材35を冷却する場合について説明したが、伝熱結露部材35の冷却手段は電子冷却装置40に限られず、どのような手段であってもよい。例えば上述したヒートパイプを用いてもよいし、熱排出部32の熱を大気へ自然放出することにより冷却してもよい。各種の冷却装置を用いることで伝熱結露部材35を冷却してもよく、例えば、ファンを用いて熱排出部32に風を当てることで伝熱結露部材35を冷却してもよいし、熱排出部32に冷却水に浸すように構成することにより伝熱結露部材35を冷却してもよい。
また上記実施形態では、伝熱結露部材35の形状として円筒形の丸棒である場合について説明したが、平板状であってもよい。平板状にした場合には、伝熱結露部材35の表面積を丸棒よりも拡大できるので、伝熱結露部材35の表面で単位時間あたりに結露する水蒸気の量を増大できるので、より効率的に培養室4内の湿度の制御を行うことが可能となる。
さらに、上記したように、本実施形態に係る培養装置1によれば、連絡部30が内箱22を貫通する部分は、ステンレス製の内箱22との間に断熱性シール材36を介して連絡部30が配置されているので、気体通路Kを流れる気体が伝熱結露部材35の配置部分から漏洩せず、培養室4が気体の漏洩による悪影響を受けなくなり、且つ、伝熱結露部材35の連絡部30を介して内箱22に結露することを防止でき、伝熱結露部材35に対する外箱21と内箱22の熱影響を抑制できる。
伝熱結露部材35の熱排出部32には、上記同様に電子冷却素子41の吸熱部(冷却部)が熱伝導状態に取り付けられている。このため、上記同様の制御によって、先端結露部31の表面に結露を生じさせ、その結露水を加湿皿15へ導入して、再び加湿用に利用できるものとなる。
上記の開示技術では、伝熱結露部材35の熱排出部32の放熱促進を電子冷却素子41によって行っている場合は、電子冷却素子41の駆動電圧を可変することにより、先端結露部31の表面に結露を生じさせる温度状態に制御できる。
なお本開示で使用する伝熱結露部材35の大きさ、形状、寸法、個数などは培養装置1の容量、形状、大きさ、培養物などによって異なる。
本実施形態に係る培養装置1は、細胞や微生物等の試料の培養を行うための培養室4を内部に形成する略箱状の断熱箱本体2と、前記培養室4の湿度を制御するための加湿水を貯溜し前記培養室4の底部に配置される加湿皿15と、前記断熱箱本体2を貫通し一端が前記培養室4の内部に配置され他端が前記断熱箱本体2の外部に配置される伝熱結露部材35と、を備え、伝熱結露部材35は、培養室4の内部に配置される先端結露部31に繋がる連結部30が断熱箱本体2の側面又は背面から下方へ向かって屈曲し、かつ、前記一端が加湿皿15の内部へ向かって傾斜し、水平方向において先端結露部31の最下端が加湿皿2の縁部より加湿皿2の内側に配置される構成である。
これにより、連絡部30及び先端結露部31に結露した水分を下方に流下させて加湿皿15に入れ、加湿水16として繰り返し使用できるので、培養室4の壁内面への結露を防止して培養物に対する悪影響を抑制することができる。
また培養装置1は、先端結露部31の先端が加湿皿15の内側に向かって傾斜している。すなわち、先端結露部31の先端は、断熱箱本体2の背面から遠ざかるように傾斜している。そのため、先端結露部31を断熱箱本体2の背面近傍まで近づけたとしても、結露した水分を確実に加湿皿15内に流下させることができる。
また、断熱箱本体2の背面との間に培養室4内の気体を対流させる気体通路を形成するダクト11(背面ダクト11A)を、備え、先端結露部31は、水平方向において断熱箱本体2の背面とダクト11との間の位置に配置される。
これにより、ダクトを背面に近づけることができ、培養室4の広さを確保することができる。
また本実施形態に係る培養装置1において、断熱箱本体2は、前記培養室4を形成する略箱状の内箱22と、前記内箱22の外周を囲む略箱状の外箱21と、を有し、前記伝熱結露部材35における前記内箱22を貫通する部分と前記内箱22との間には断熱性かつ疎水性を有する断熱性シール材36が配置される。
これにより、断熱性シール材36の疎水性により、断熱性シール材36の部分に結露しても、その結露水は速やかに流下させることができる。更に、断熱性シール材36の断熱性により、伝熱結露部材35を介して内箱22に結露することを防止でき、伝熱結露部材35に対する内箱22の熱影響を抑制できる。
また本実施形態に係る培養装置1は、断熱性シール材36は、前記培養室4内に延出する先端シール部36Bが前記伝熱結露部材35の一端側へ向かって下方へ傾斜し、先端シール部36Bの周囲に付着する結露水を前記加湿皿15へ導入させる。
これにより、断熱性シール材36の培養室4内に延出する先端シール部36Bに結露しても、飛散することなく速やかに加湿皿15へ導入させることができるため、培養室4の壁面への結露を防止して培養物に対する悪影響を抑制することができ、加湿皿15へ導入された水を加湿水16として繰り返し使用することもできる。
また本実施形態に係る培養装置1は、伝熱結露部材35における前記外箱21と前記内箱22との間に配置される部分は、断熱性を有する断熱性シール材36Aで覆われている。
これにより、伝熱結露部材35における前記外箱21と前記内箱22との間に配置される部分は、内箱22及び外箱21からの温度影響が抑制され、培養室4内に延出する部分への結露効果を十分に得ることができる。
また本実施形態に係る培養装置1において、伝熱結露部材35は、前記断熱箱本体2の外部に配置される熱排出部32にペルチェ効果によって前記伝熱結露部材35を冷却可能な電子冷却素子41が設けられ、かつ、前記電子冷却素子41によって冷却されることにより前記先端結露部31の表面に結露させた水分を下方に配置された前記加湿皿15に導入させる。
これにより、電子冷却素子41の駆動電圧を可変することにより、先端結露部31の表面に結露を生じさせる温度状態に制御できる効果がある。
なお上記実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含む。