JP6401540B2 - ブレーキの制御システム、粘着係数算出方法、最大ブレーキ力算出方法及びコンピュータプログラム - Google Patents

ブレーキの制御システム、粘着係数算出方法、最大ブレーキ力算出方法及びコンピュータプログラム Download PDF

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本発明は、鉄道車両のブレーキを制御するための制御システム、その制御システムに用いられる粘着係数算出方法、その粘着係数算出方法を利用した最大ブレーキ力算出方法及びその粘着係数算出方法に基づくコンピュータプログラムに関する。
近年、新幹線鉄道(全国新幹線整備法第二条で定義されている新幹線鉄道)の新規路線の開業に伴い、並行する在来の幹線路線が、その路線を運営していた旅客鉄道会社から第三セクター鉄道に承継されている。このような第三セクター鉄道の路線は、承継前に運転されていた特急列車用の高規格な軌道や電気設備等を有するため、在来線としての高速運転が可能である。一方、第三セクター鉄道では、従来の在来線用の鉄道車両と比べて軽量で小型な鉄道車両を導入して短編成で運行することにより、列車1編成当たりの輸送量を減らす代わりに運行コストを下げ、高頻度の運行を維持する取り組みがされる。したがって、第三セクター鉄道等において、軽量な鉄道車両(軽量車両)が短編成で高速運転される可能性がある。
軽量車両は、車輪がレールを上から押えつける力、すなわち輪重が小さいので、レールと車輪との間の摩擦力が小さく、滑走が生じ易い。レールと車輪との間の摩擦力は、粘着力と呼ばれる。滑走とは、ブレーキ時に、車輪に及ぼすブレーキ力が車輪とレールとの間の粘着力より大きい場合に生じる車輪とレールとの間の滑りである(非特許文献1の番号13037参照)。滑走を生じない限界の車輪に及ぼすブレーキ力と輪重との比を粘着係数という(非特許文献1の番号13017参照)。車輪とレールとの間に介在物が入ることにより、粘着係数が変動する。この介在物のうち、雨によって車輪とレールとの間にもたらされる水膜は、粘着係数を減少させる要素として知られている。水膜によって粘着係数が減少すると、滑走が生じ易くなる。
水膜介在時のレールと車輪との間の粘着係数に関して、弾性流体潤滑(EHL)理論に基づいたモデル化が知られている(非特許文献2参照)。さらに、このモデルに基づき、車両の走行速度(車両速度)と、レールと車輪間の水膜厚さと、粘着係数との相関が明らかにされている(非特許文献3参照)。この相関では、水膜厚さが減少すると、粘着係数が増加し、車両速度が増加すると、粘着係数が減少する。
レール面に付着した水膜は、車両通過時に車輪によって除去される。このため、先頭の第1輪(第1軸の車輪)の前方における水膜よりも、後続の第2輪(第2軸の車輪)の前方における水膜は、厚さが減少する。このような軸毎に水膜厚さが減少していく状況において、粘着係数も軸毎に変化し、後続の車輪ほど乾燥時の粘着係数に近付いていくと考えられる。
このような軸毎の粘着係数に関する現象は、広く知られており、例えば、新幹線鉄道における実際の営業車両について得られた、編成内における軸別の滑走頻度のデータが報告されている(非特許文献4参照)。この滑走頻度データによれば、先頭に近い軸の車輪の滑走頻度が高い。
このような滑走頻度のデータに基づき、編成内の車両単位で異なるブレーキ力配分を行う方法が構築された(非特許文献5参照)。このようなブレーキ力配分方法は、実際に新幹線車両に採用され、例えば、1編成の1号車から16号車において(東海道新幹線の「700系新幹線電車」)、1号車及び16号車のブレーキ力を編成全体の平均値の40%と最小にし、2号車及び15号車のブレーキ力を95%とし、その他の号車のブレーキ力を、非電動車である8号車及び9号車を除き、100%よりも大きくしている。
このブレーキ力配分方法(非特許文献5参照)は、車両単位で異なるブレーキ力を配分するため、編成に十分な車両数がある場合にのみ用いることができる。一方、第三セクター鉄道で運転される軽量車両は、普通、1編成当たりの車両数が高々2両程度である。したがって、車両単位でブレーキ力を配分する方法は、このような短編成で運転される鉄道車両には適用できない。
また、このブレーキ力配分方法(非特許文献5参照)では、新幹線車両の滑走頻度のデータ(非特許文献4参照)に基づいてブレーキ力が設定される。一方、第三セクター鉄道の軽量車両は、新幹線車両と比較して車両重量が大幅に小さいことから、粘着力も小さく、編成内における軸別の滑走頻度は、新幹線車両について得られたデータとは大幅に異なると考えられる。したがって、このような新幹線車両のブレーキ力配分方法を軽量車両に適用することは困難である。
鉄道車両において、軸毎に独立したブレーキ力が与えられる制御システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような制御システムは、軸毎に異なるブレーキ力を配分することにより、短編成の鉄道車両への適用が考えられる。特許文献1に記載の制御システムでは、ブレーキ指令を各車両の軸数で均等化し、各軸に予め決められる係数を乗じて各軸のブレーキ力指令値を決定している。予め決められる係数では、車両速度と粘着係数の相関(非特許文献3参照)が考慮されないため、特許文献1に記載の制御システムを軽量車両の高速運転に適用することは困難である。
鉄道車両において、車輪毎の粘着係数を測定した先行研究として、営業車のブレーキ情報から軸毎に粘着係数を測定する方法が提案されている(非特許文献6参照)。この方法は、ブレーキ情報から粘着係数を測定するので、測定したものと同じ輪重及び軌道条件下では有効であるが、全ての鉄道車両に適用するには至っていない。
このように、粘着係数の軸別変化に関する先行研究では、軽量車両のような輪重が小さい条件を含む、全ての鉄道車両を対象として軸別の粘着係数変化を予測する理論は、未だ構築されていない。
特開2004−312918号公報
JIS E4001:2011 「鉄道車両−用語」 大山忠夫、陳樺、石田誠著 「鉄道のレールと車輪間のEHL」、トライポロジスト、Vol.49、No.4、pp.316−322 2004年 陳樺、伴巧、石田誠、中原綱光著 「湿潤条件下の車輪とレール間の粘着係数に影響を及ぼす因子」、鉄道総研報告、Vol.26、No.2、pp.45−50 2012年 大山忠夫著 「高速鉄道車両の車輪とレール間の粘着力におよぼす接触条件の影響と粘着力向上に関する研究」、東北大学博士論文 1986年 上野雅之、菊野敏著 「東海道新幹線車両のブレーキ粘着技術:列車編成としての粘着係数の把握と解析手法について」、JREA、Vol.47、No.5、pp.69−74 2004年 嵯峨信一、津留崎淳、石原鋼、川村淳也著 「営業車のモニタ情報を用いた編成粘着特性の把握」、第16回鉄道技術連合シンポジウム講演論文集、pp.105−108 2009年
本発明は、上記問題を解決するものであり、短編成の軽量車両の高速運転に適用可能な、滑走を防止するためのブレーキの制御システムを提供することを目的とする。
本発明の制御システムは、複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するためのものであって、ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の値を出力するブレーキ力演算部と、前記必要ブレーキ力の値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数が予め記憶された記憶部を有し、ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を前記記憶部から読み出し、各軸の前記粘着係数及び前記輪重に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出し、各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ力の値を調整することを特徴とする。
本発明の制御システムは、複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するためのものであって、ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の1軸当たりの平均値を出力するブレーキ力演算部と、前記平均値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数が予め記憶された記憶部を有し、ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を前記記憶部から読み出し、各軸の前記粘着係数及び前記輪重に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出し、各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ負担率を調整することを特徴としてもよい。
本発明の制御システムは、複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するためのものであって、ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の値を出力するブレーキ力演算部と、前記必要ブレーキ力の値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力が予め記憶された記憶部を有し、ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の最大ブレーキ力を前記記憶部から読み出し、各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ力の値を調整することを特徴としてもよい。
本発明の制御システムは、複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するためのものであって、ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の1軸当たりの平均値を出力するブレーキ力演算部と、前記平均値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力が予め記憶された記憶部を有し、ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の最大ブレーキ力を前記記憶部から読み出し、各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ負担率を調整することを特徴としてもよい。
この制御システムにおいて、前記ブレーキ力調整部は、空車重量の値が予め記憶され、車両重量の空車重量に対する増加量が入力され、前記空車重量の値及び増加量に基づいて、前記輪重を算出することが好ましい。
この制御システムにおいて、前記ブレーキ力調整部は、車両重量の値が入力され、前記車両重量の値に基づいて、前記輪重を算出してもよい。
本発明の粘着係数算出方法は、複数の輪軸を有する鉄道車両における車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を算出する方法であって、レールと車輪との間に水膜が存在する場合における入口部水膜厚さに対する最小水膜厚さの比である水膜減少率が与えられ、車両速度と輪重との各々の組み合わせに対して、前記車両速度及び輪重に基づいて第1輪の最小水膜厚さを算出する工程と、第1輪の前記最小水膜厚さと、前記水膜減少率とに基づいて、第2輪以降の最小水膜厚さを順次算出する工程と、算出した各車輪の前記最小水膜厚さに基づいて、各軸の粘着係数を算出する工程とを有することを特徴とする。
本発明の最大ブレーキ力算出方法は、複数の輪軸を有する鉄道車両における車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出する方法であって、車両速度と輪重との各々の組み合わせに対して、請求項7に記載の粘着係数算出方法によって各軸の粘着係数を算出する工程と、前記輪重及び各軸の前記粘着数に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出する工程とを有することを特徴とする。
本発明のコンピュータプログラムは、複数の輪軸を有する鉄道車両における車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数をコンピュータに算出させるものであって、レールと車輪との間に水膜が存在する場合における入口部水膜厚さに対する最小水膜厚さの比である水膜減少率が与えられ、車両速度と輪重との各々の組み合わせに対して、前記車両速度及び輪重に基づいて第1輪の最小水膜厚さを算出するステップと、第1輪の前記最小水膜厚さと、前記水膜減少率とに基づいて、第2輪以降の最小水膜厚さを順次算出するステップと、算出した各車輪の前記最小水膜厚さに基づいて、各軸の粘着係数を算出するステップとを、コンピュータに実行させることを特徴とする。
本発明の制御システムによれば、各軸のブレーキ力が制御されるので、短編成の鉄道車両に適用可能である。また、ブレーキ初速度と車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数に基づいて各軸のブレーキ力の値が調整されるので、輪重の小さい軽量車両の高速運転に適用可能である。各軸のブレーキ力の値が、滑走しない最大ブレーキ力を超えないように調整されるので、滑走が防止される。各軸のブレーキ力の総和が車両の必要ブレーキ力より小さくならないように各軸のブレーキ力の値が調整されるので、ブレーキ力の調整によってブレーキ距離が増大することが防がれる。この制御システムは、滑走防止のための条件が最も厳しい短編成の軽量車両の高速運転に適用可能であるので、鉄道車両の編成長、運転速度及び車両重量にかかわらず幅広く適用可能である。
本発明の一実施形態に係る制御システムのブロック構成図。 水膜介在時におけるレール上の車輪の側面図。 本発明の粘着係数算出方法における粘着係数算出のフローチャート。 続行状態にある車輪と水膜との関係を示す側面図。 水膜介在時におけるレールと車輪との接触面を拡大した断面図。 同方法における第1輪の最小水膜厚さ算出のフローチャート。 同方法で算出された粘着係数(摩擦係数)軸別変化の速度依存例を示すグラフ 同方法で算出された粘着係数(摩擦係数)軸別変化の車両重量依存例を示すグラフ 同方法で算出された粘着係数(摩擦係数)軸別変化の水膜減少率依存例を示すグラフ
本発明の一実施形態に係る制御システムを図1乃至図6を参照して説明する。図1に示されるように、制御システム1は、複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力Fを制御するためのシステムである。この制御システム1の出力によって、ブレーキ装置が制御される。ブレーキ装置とは、車両を減速し、一定の速度に抑え、停止し、又はある位置に保持するために用いる一連の装置である(非特許文献1の番号71001参照)。
なお、ブレーキ力Fと車輪の半径との積は制動トルクTであり、車輪の半径が一定であるので、ブレーキ力Fを制御することと、制動トルクTを制御することは、実質的に同じである。すなわち、制御システム1は、複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸の制動トルクTを制御するためのシステムであるとも言える。
制御システム1は、ブレーキ力演算部2と、ブレーキ力調整部3とを有する。ブレーキ力演算部2は、ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の値を出力する。ブレーキ力調整部3は、ブレーキ力演算部2から必要ブレーキ力の値が入力され、各軸のブレーキ力Fの値(F,F,F,…)を出力する。
ブレーキ力演算部2は、ブレーキ指令と、空車重量の値と、応荷重信号とが入力される。ブレーキ指令は、運転士の操縦又は車載の保安装置によって指定されるブレーキノッチの値としてブレーキ力演算部2に入力される。応荷重信号は、車両重量が空車重量より重くなってもブレーキ時の減速度が変わらないようにブレーキ力を補正するための信号であり、車載の応荷重装置によって生成される。本実施形態では、応荷重信号は、空車重量に対する車両重量の増加量である。ブレーキ力演算部2は、ブレーキノッチの値と、空車重量の値と、応荷重信号とに応じた必要ブレーキ力の値を出力する。
従来の軽量車両では、車両の必要ブレーキ力が各軸に均等分配されていた。本実施形態の制御システム1は、ブレーキ力調整部3によって各軸のブレーキ力Fの値(F,F,F,…)を調整する。
ブレーキ力調整部3は、記憶部4を有する。記憶部4は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数が予め記憶される。予めとは、当該車両が列車として運転されるより前である。ブレーキ力調整部3は、ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力される。ブレーキ力調整部3は、入力されたブレーキ初速度と車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を記憶部4から読み出す。ブレーキ力調整部3は、各軸の粘着係数及び車両の輪重に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力Fμを算出する。ブレーキ力調整部3は、各軸のブレーキ力F(F,F,F,…)が最大ブレーキ力Fμ(Fμ1,Fμ2,Fμ3,…)を超えず(F≦Fμi(i=1,2,3,…))、かつ、各軸のブレーキ力の総和ΣF(i=1,2,3,…)が当該車両の必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ力Fの値(F,F,F,…)を調整する。
各構成をさらに詳述する。鉄道車両は、1両に複数の輪軸を有する。輪軸は、車輪と車軸とを組み立てたものである(非特許文献1の番号22001参照)。制御システム1が制御する軸数は、制御システム1を搭載する鉄道車両に応じて決められる。例えば、制御システム1が搭載された鉄道車両が1車両に4軸の輪軸を有し、1編成1両で運転される場合、制御システム1が制御する軸数は、4軸である。鉄道車両が1編成2両で運転される場合、制御システム1が制御する軸数は、例えば、全軸を制御すれば、8軸となる。
制御システム1は、例えば、プログラマブルコントローラを有し、ブレーキ力演算部2及びブレーキ力調整部3は、制御システム1の機能部分である。記憶部4は、例えば、不揮発性の半導体メモリである。本実施形態では、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数は、記憶部4に表形式データとして記憶され、粘着係数表と呼ばれる。粘着係数表は、例えば、行方向のパラメータが輪重、列方向のパラメータが車両速度、行及び列で指定されるデータが特定軸の粘着係数であり、このような行列(マトリックス)を各軸に有する。なお、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を、ブレーキ初速度と輪重とをパラメータとする近似式として記憶部4に記憶してもよい。
本実施形態では、ブレーキ力調整部3は、空車重量の値が予め記憶される。車両重量の空車重量に対する増加量が、車載の応荷重装置から応荷重信号としてブレーキ力調整部3に入力される。ブレーキ力調整部3は、空車重量の値及び車両重量の空車重量に対する増加量に基づいて、当該車両の輪重を算出する。各輪軸は2枚の車輪を有するので、例えば、1車両が4軸の輪軸を有する場合、輪重は、車両重量/8=(空車重量+増加量)/8である。
なお、車両重量の値が制御システム1の外部で把握される場合、その車両重量の値をブレーキ力調整部3に入力してもよい。この場合、ブレーキ力調整部3は、車両重量の値が入力され、車両重量に基づいて、当該車両の輪重を算出する。また、輪重の値が制御システム1の外部で把握される場合、その輪重の値をブレーキ力調整部3に入力してもよい。
記憶部4に記憶される所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数は、本発明の粘着係数算出方法によって算出される。この粘着係数算出方法で用いられる各パラメータを表1に示す。
Figure 0006401540
図2に示すように、レール5と車輪6が接触し、レール5と車輪6との間に水膜7が介在する場合、車輪6の後方における水膜は、車輪6の前方における水膜よりも、厚さが減少する。車輪6の前方における水膜厚さを入口部水膜厚さH、車輪の後方における水膜厚さを最小水膜厚さHminという。車輪6とレール5との接触面での水膜厚さは最小水膜厚さHminと等しい。なお、大文字Hで表される水膜厚さは、長さの単位[m]で表される水膜厚さhを無次元化した無次元化水膜厚さである(表1参照)。
本発明の粘着係数算出方法において、先ず、図3(フローチャート)に示されるように、第1輪の最小水膜厚さH minを算出する(ステップS101)。第1輪は、制御対象の先頭車輪である。第1輪の最小水膜厚さH minは、車両速度及び輪重に基づいて算出する。その詳細な算出方法は、後述する。
次に、第2輪の最小水膜厚さH minを算出する(ステップS102でi=2)。入口部水膜厚さHに対する最小水膜厚さHminの比である水膜減少率aが与えられている(Hmin=a・H)。水膜減少率aは、実験によって求められる。第2輪の最小水膜厚さH minは、第2輪の入口部水膜厚さHと水膜減少率aとの積になる(H min=a・H)。図4に示されるように、第2輪62は第1輪61の後続の車輪6であるので、第2輪62の入口部水膜厚さHは、第1輪61の最小水膜厚さH minと等しい(H=H min)。したがって、第2輪62の最小水膜厚さH minは、次式のように、第1輪61の最小水膜厚さH minと水膜減少率aとの積になる。
min=a・H min
同様に、制御対象の最後の車輪(第n輪)までの各輪の最小水膜厚さH min(i=3,…,n)を次式により算出する(図3のステップS102でi=3〜n)。
min=a・Hi−1 min (i=3,…,n)
このように、水膜減少率aを導入することによって第2輪以降の最小水膜厚さH min(i≧2)を算出することは、本願発明者の発案である。
なお、水膜減少率aを各輪(i輪)毎に変えてもよい(a:a,a,…)。各輪の水膜減少率aは、実験によって求められる。第2輪以降の各輪の最小水膜厚さH min(i≧2)は、各輪の水膜減少率aを用いると、次式により算出される。
min=a・Hi−1 min (i=2,…,n)
最後に、算出した各輪の最小水膜厚さHminに基づいて、各軸の粘着係数を算出する(ステップS103)。その算出方法は、後述する。
大山らによると、レール5及び車輪6は、それぞれ表面粗さを有し、図5に示すように、接触面を拡大すると、細かい突起の先端部分が互いに接触し、それ以外の部分には空隙ができていると考えられる(非特許文献2参照)。レール5と車輪6との間に水膜7が介在する場合、この空隙が水で満たされることにより、輪重Wを突起部の接触にかかる力Wと水膜圧力による力Wが分担して受けることになる。このとき,摩擦係数μは、乾燥時の摩擦係数μと水のせん断応力係数μを用いて数式1で表される。
Figure 0006401540
大山らのモデル(非特許文献2参照)では、入口部水膜厚さHと最小水膜厚さHminとの関係にGrubinの流体厚膜式(D. Dowson, G. R. Higginson: Elasto-Hydro-dynamic Lubrication, Pergamon Press (1966))を適用している。しかしながら、Grubinの流体厚膜式が適用できるのは、入口部水膜厚さHが十分に厚い場合、すなわち第1輪のみであり、第2輪以降については、車輪前方で既に水膜厚さが減少しているので、適用できない。
本発明の粘着係数算出方法では、図5に示されるモデルに基づくが、最小水膜厚さHminの算出にGrubinの流体厚膜式を用いない。
本発明の粘着係数算出方法における第1輪の最小水膜厚さの算出(図3のステップS101)について、詳細に説明する。図6(フローチャート)に示されるように、輪重から無次元化輪重Wを算出する(ステップS201)。輪重をW、車輪の左右方向の曲率半径をRとすると、単位長さあたりの輪重wは、w=W/Rにより算出される。無次元化輪重Wは、W=w/ERで算出される(表1参照)。この式で、Eは等価ヤング率、Rは車輪半径である(表1参照)。
次に、車両速度uから無次元化速度Uを算出する(ステップS202)。無次元化速度Uは、U=ηu/ERで算出される(表1参照)。この式で、ηは0℃、1気圧における水の粘度である(表1参照)。
次に、最小水膜厚さHminの初期値を設定する(ステップS203)。Hminの初期値は、例えば、0.3μmを無次元化した値であり、この値に限定されない。
次に、突起部同士が受ける無次元化荷重W(図5参照)を算出する(図6のステップS204)。この無次元化荷重Wは、Patir, Chengが求めた無次元化式(Nadir Patir, H. S. Cheng: Effect of surface roughness orientation on the central film thickness in E.H.D. contacts, Elastohydrodynamics and Related Topics, pp.15-21 (1978))により、数式2及び数式3で算出する。
Figure 0006401540
Figure 0006401540
数式2で、Hは、水膜厚さhを表面粗さσで割ったもので、無次元化水膜厚さHとの間には、数式4の関係がある。
Figure 0006401540
ここで、数式4における無次元化水膜厚さHは、無次元化された最小水膜厚さHminである。
数式2で、Kは、粗さ方向性パラメータであり、本発明の粘着係数算出方法では、大山らが計算で用いた数式5を引用して使用する(非特許文献2参照)。
Figure 0006401540
数式2で、Pは、Hertz最大圧力である(表1参照)。
数式3で、Xinは、車輪6とレール5の接触が開始する位置、Xoutは、車輪6とレール5の接触が離れる位置である(図2参照)。
次に、水膜が受ける荷重W(図5参照)を算出する(図6のステップS205)。この無次元化荷重Wは、Herrebrughの等粘度条件式(K. Herrebrugh: Solving the Incompressible and Isothermal Problem in Elastohydrodynamic Lubrication through an Integral Equation, Transactions ASME, Ser.F, Vol.90, No.1, pp.262-270 (1968))により、数式6で算出する。
Figure 0006401540
数式6で、Uは、無次元化速度である(ステップS202で算出済み)。
なお、数式6の代わりに、輪重と水膜厚さとの関係を表す式としてより一般的なDowson-Higginsonの式(D. Dowson, G. R. Higginson: Elasto-Hydro-dynamic Lubrication, Pergamon Press (1966))により、数式7で算出してもよい。
Figure 0006401540
数式7で、Gは、G=αEで表される材料パラメータである。αは流体の圧力に対する粘度の係数、Eはヤング率である。
流体の粘度は、本来、温度と圧力双方の影響を受けて変化することが知られているが、Herrebrughは、対象を水に限定して圧力の変化を無視した等粘度条件式として数式6を表した。大山らは、水介在時の車輪とレールとの間の摩擦係数計算において、数式6と数式7の双方を用いた場合の結果を比較し、双方で差が見られなかったとしている。このため、本発明の粘着係数算出方法において、水介在時の計算に限って、数式7より簡便な数式6を用いることとした。
次に、(W+W)をWと比較し(図6のステップS206)、その差が所定の誤差εを超えていれば(ステップS206でNo)、最小水膜厚さHminを変化させ(ステップS207)、突起部同士が受ける無次元化荷重Wの算出に戻る(ステップS204)。最小水膜厚さHminを変化のさせ方は、(W+W)の変化状況に応じて行われる。(W+W)とWとを比較において、その差が所定の誤差ε以内であれば(ステップS206でYes)、その時の最小水膜厚さHminを第1輪の最小水膜厚さH minとする(ステップS208)。
第2輪以降の最小水膜厚さH min(i=2〜n)は、上記のように算出した第1輪の水膜厚さH minを用い、前述したように、水膜減少率aを用いて順次算出される(図3のステップS102)。
各車輪の最小水膜厚さH min(i=1〜n)に基づく各軸の粘着係数(摩擦係数)の算出について説明する(ステップS103)。
先ず、第i輪の最小水膜厚さH minを数式4に代入して第i輪のHを算出する。
次に、数式2、数式3、及び数式5によりWを算出する。
数式6によりWを算出する。
数式1にWとWを代入し、第i輪の摩擦係数μを算出する。第i軸の粘着係数μは、第i輪の摩擦係数と同じである。なお、数式1において、乾燥時摩擦係数μ及び水のせん断応力係数μは、既知の係数である(表1参照)。
このような計算を各軸に第1軸から第n軸まで行い、車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数μを算出する。実際の計算は、コンピュータプログラムをコンピュータに実行させることによって行われる。
このように算出された車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数μは、記憶部4に記憶される(図1参照)。
ブレーキ力調整部3は、入力されたブレーキ初速度と車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数μを記憶部4から読み出す。すなわち、ブレーキ力調整部3は、車両速度がブレーキ初速度であるときの車両速度と車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数μを記憶部4から読み出すことになる。
ブレーキ力調整部3は、各軸の粘着係数μ(μ:μ,μ,…,μ)及び車両の輪重Wに基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力Fμ(Fμi:Fμ1,Fμ2,…,Fμn)を次式により算出する。
μi=2μ (i=1,2,…,n)
この最大ブレーキ力Fμi算出方法は、粘着係数μ算出方法を利用している。なお、制御システム1において、所定範囲の車両速度と輪重Wとの組み合わせに対する各軸の粘着係数μを記憶部4に予め記憶することに代えて、所定範囲の車両速度と輪重Wとの組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力Fμiを記憶部4に予め記憶してもよい。この場合、所定範囲の車両速度と輪重Wとの組み合わせに対する各軸の最大ブレーキ力Fμiは、記憶部4に表形式データとして記憶される。この表形式データは、例えば、行方向のパラメータが輪重W、列方向のパラメータが車両速度、行及び列で指定されるデータが特定軸の滑走しない最大ブレーキ力Fμiであり、このような行列(マトリックス)を各軸(i軸、i=1〜n)に有する。なお、所定範囲の車両速度と輪重Wとの組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力Fμiを、ブレーキ初速度と輪重Wとをパラメータとする近似式として記憶部4に記憶してもよい。
ブレーキ力調整部3による各軸(第1軸〜第n軸)のブレーキ力Fの調整について説明する。調整前のブレーキ力は、車両の必要ブレーキ力が各軸に均等分配された値Fである。
ブレーキ力調整部3は、例えば、以下のように、第1軸から順に各軸(第i軸)のブレーキ力Fを調整する。
水膜介在時において先頭に近い輪軸では、粘着係数μが小さくなり、滑走しない最大ブレーキ力Fμiが小さくなる。調整前のブレーキ力Fが滑走しない最大ブレーキ力Fμi以上であるとき、滑走を防止するため、次式のように、調整後のブレーキ力Fを滑走しない最大ブレーキ力Fμiに制限する。
μi≦F ⇒ F=Fμi
先頭輪軸から後続の輪軸になるに従って粘着係数μは乾燥時の粘着係数に漸近していくので、後ろの方の輪軸(m<i≦n)では、滑走しない最大ブレーキ力Fμiが調整前のブレーキ力Fより大きくなる(Fμi>F)。そこで、先頭に近い輪軸(i≦m)で調整後のブレーキ力Fを制限した代わりに、それ以外の軸(軸数n−m)で、次式のように、調整後のブレーキ力Fを調整前のブレーキ力Fより大きくし、不足分(Σ[j=1,…,m](F−Fμj))を補償する。
μi>F ⇒ F=F+(Σ[j=1,…,m](F−Fμj))/(n−m)
m: Fμi≦Fの軸数
ただし、F>Fμiとなった場合は、F=Fμiとし、それによる不足分はさらに後の輪軸に分配する。
なお、ブレーキ力Fを制御することと、制動トルクTを制御することは、実質的に同じであるので、第i軸のブレーキ力Fの代わりに、第i軸の制動トルクTを同様に調整してもよい。
また、第i軸のブレーキ負担率は、F/Fであるので、各軸のブレーキ力Fを調整することは、ブレーキ力演算部2が調整前のブレーキ力F(車両の必要ブレーキ力の1軸当たりの平均値)を出力して、ブレーキ力調整部3が各軸のブレーキ負担率F/Fを調整することと実質的に同じである。
以上、本実施形態に係る制御システム1によれば、各軸のブレーキ力Fが制御されるので、短編成の鉄道車両に適用可能である。また、ブレーキ初速度と車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数μに基づいて各軸のブレーキ力の値Fが調整されるので、輪重の小さい軽量車両の高速運転に適用可能である。各軸のブレーキ力の値Fが、滑走しない最大ブレーキ力Fμiを超えないように調整されるので、滑走が防止される。各軸のブレーキ力の総和(Σ[i=1,…,n]F)が車両の必要ブレーキ力(n・F)より小さくならないように各軸のブレーキ力の値Fが調整されるので、ブレーキ力の調整によってブレーキ距離が増大することが防がれる。
鉄道車両における滑走の防止は、編成が長いほうが容易であり、車両重量が大きいほうが容易であり、車両速度が低いほうが容易である。この制御システム1は、滑走防止のための条件が最も厳しい短編成の軽量車両の高速運転に適用可能であるので、鉄道車両の編成長、運転速度及び車両重量にかかわらず幅広く適用可能である。
制動中は、車両速度がブレーキ初速度から次第に低下する。車両速度の低下によって、最小水膜厚さが減少し(数式6参照)、その結果、粘着係数は増加する。このような、制動中の粘着係数の増加は、滑走が生じ難くなる方向への変化である。したがって、ブレーキ初速度に基づいてブレーキ力の値を調整することにより、制動中に車両速度が低下しても滑走が防がれる。ブレーキ力の調整に用いる粘着係数を、制動中の車両速度の変化に追従してリアルタイムに変えるよりも、ブレーキ初速度に基づいて時間変化させないほうが、制御システム1における処理が簡略化されるので、制御システム1の信頼性が向上する。ブレーキの制御において、信頼性は極めて重要である。
制御システム1に用いられる粘着係数算出方法によれば、水膜減少率aを導入したことにより、第2輪以降の最小水膜厚さH min(i≧2)を算出することができるので、各軸の粘着係数μを算出することができる。この粘着係数算出方法は、計算条件に輪重が含まれており、軽量車両のような輪重が小さい条件を含む、全ての鉄道車両を対象として軸別の粘着係数変化を算出することができる。
本発明の粘着係数算出方法の実施例として、鉄道車両における各軸の粘着係数(レールと車輪との間の摩擦係数)を算出した。鉄道車両は、2両編成とした。1両の車両は、4軸の輪軸を有するので、当該編成は、4×2=8軸の輪軸を有する。計算に用いたパラメータを表2に示す。
Figure 0006401540
先ず、車両速度と粘着係数(摩擦係数)の軸別変化との関係を調べた。車両速度は、20km/h(5.56m/s)〜160km/h(44.44m/s)まで20km/h刻みの8条件とした。
計算結果を図7に示す。図7によれば、先頭軸における粘着係数が、車両速度が増加するに従って減少し、車両速度が小さくなるに従って乾燥時の粘着係数として設定したμ=0.3に漸近している。輪軸毎の変化に注目すると、先頭輪軸から後続の輪軸になるに従って粘着係数は、乾燥時の粘着係数に漸近していき、2両目最後尾の8番目輪軸においてはほぼ乾燥時の粘着係数μ=0.3と同じ値に収束している。
次に、車両重量と粘着係数(摩擦係数)の軸別変化との関係を調べた。車両重量は、10t(トン)〜80tまで10t刻みの8条件とした。車両速度は、120km/hとした。
計算結果を図8に示す。図8によれば、車両重量が小さくなるに従って、第1輪における粘着係数が小さくなっている。車両重量が減少すると、車輪を上からレールに押さえつける輪重が減少するため、同じ速度条件下においても車輪が水膜で浮き上がってしまい、結果として粘着係数の減少が起こっているためと考えられる。輪軸毎の変化に注目すると、後続の輪軸になるに従って乾燥時の粘着係数μ=0.3と同じ値に収束している。
水膜減少率aは、実験等により設定される。実施例1及び実施例2では、水膜減少率aを粘着係数の軸別変化を調べるための仮の値として1/2とした(表2参照)。実施例3では、水膜減少率aに関するパラメータスタディを行った。水膜減少率aとして、a=1/2の他に、1/3、1/4、1/5、1/8の計5条件を設定した。輪重は36750N、車両速度は120km/h(33.33m/s)とした(表2参照)。
計算結果を図9に示す。図9によれば、全ての水膜減少率aにおいて、先頭輪軸の粘着係数が等しく、後続の輪軸になるに従って粘着係数は乾燥時の粘着係数μ=0.3と同じ値に収束している。水膜減少率aの違いに注目すると、水膜減少率aが小さいほど、乾燥時の粘着係数への収束が早くなっている。水膜減少率aが小さいほど、前側車輪に対する後側車輪の水膜厚さが小さくなるため、続行状態の車輪において水膜厚さが早く0に収束し、その結果、粘着係数も早くμ=0.3に収束していると考えられる。
実施例1〜実施例3の計算結果によれば、大山らのモデル(非特許文献2参照)に対して、水膜減少率aを導入した水膜厚さの軸別変化モデルを適用することにより、粘着係数の軸別変化をモデル化できることが示された。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。本発明の制御システム1は、高速運転される短編成の軽量車両の鉄道車両におけるブレーキ力の制御に限定されず、一般的な車両重量を有する鉄道車両の低〜高速運転に対して幅広く適用される。また、制御システム1を新幹線車両に適用してもよい。
1 制御システム
2 ブレーキ力演算部
3 ブレーキ力調整部
4 記憶部
6 車輪
7 水膜
a 水膜減少率
F ブレーキ力
min 最小水膜厚さ(無次元化された最小水膜厚さ)
μ 粘着係数(摩擦係数)

Claims (9)

  1. 複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するための制御システムであって、
    ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の値を出力するブレーキ力演算部と、
    前記必要ブレーキ力の値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、
    前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数が予め記憶された記憶部を有し、
    ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、
    入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を前記記憶部から読み出し、
    各軸の前記粘着係数及び前記輪重に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出し、
    各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ力の値を調整することを特徴とする制御システム。
  2. 複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するための制御システムであって、
    ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の1軸当たりの平均値を出力するブレーキ力演算部と、
    前記平均値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、
    前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数が予め記憶された記憶部を有し、
    ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、
    入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を前記記憶部から読み出し、
    各軸の前記粘着係数及び前記輪重に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出し、
    各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ負担率を調整することを特徴とする制御システム。
  3. 複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するための制御システムであって、
    ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の値を出力するブレーキ力演算部と、
    前記必要ブレーキ力の値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、
    前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力が予め記憶された記憶部を有し、
    ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、
    入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の最大ブレーキ力を前記記憶部から読み出し、
    各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ力の値を調整することを特徴とする制御システム。
  4. 複数の輪軸を有する鉄道車両における各軸のブレーキ力を制御するための制御システムであって、
    ブレーキ指令が入力され、当該車両の必要ブレーキ力の1軸当たりの平均値を出力するブレーキ力演算部と、
    前記平均値が入力され、各軸のブレーキ力の値を出力するブレーキ力調整部とを備え、
    前記ブレーキ力調整部は、所定範囲の車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力が予め記憶された記憶部を有し、
    ブレーキ指令が入力された時の車両速度であるブレーキ初速度が入力され、
    入力された前記ブレーキ初速度と当該車両の輪重との組み合わせに対する各軸の最大ブレーキ力を前記記憶部から読み出し、
    各軸のブレーキ力が前記最大ブレーキ力を超えず、かつ、各軸のブレーキ力の総和が当該車両の前記必要ブレーキ力より小さくならないように、各軸のブレーキ負担率を調整することを特徴とする制御システム。
  5. 前記ブレーキ力調整部は、空車重量の値が予め記憶され、車両重量の空車重量に対する増加量が入力され、前記空車重量の値及び増加量に基づいて、前記輪重を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の制御システム。
  6. 前記ブレーキ力調整部は、車両重量の値が入力され、前記車両重量の値に基づいて、前記輪重を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の制御システム。
  7. 複数の輪軸を有する鉄道車両における車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数を算出する粘着係数算出方法であって、
    レールと車輪との間に水膜が存在する場合における入口部水膜厚さに対する最小水膜厚さの比である水膜減少率が与えられ、
    車両速度と輪重との各々の組み合わせに対して、
    前記車両速度及び輪重に基づいて第1輪の最小水膜厚さを算出する工程と、
    第1輪の前記最小水膜厚さと、前記水膜減少率とに基づいて、第2輪以降の最小水膜厚さを順次算出する工程と、
    算出した各車輪の前記最小水膜厚さに基づいて、各軸の粘着係数を算出する工程とを有することを特徴とする粘着係数算出方法。
  8. 複数の輪軸を有する鉄道車両における車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出する最大ブレーキ力算出方法であって、
    車両速度と輪重との各々の組み合わせに対して、
    請求項7に記載の粘着係数算出方法によって各軸の粘着係数を算出する工程と、
    前記輪重及び各軸の前記粘着数に基づいて、各軸の滑走しない最大ブレーキ力を算出する工程とを有することを特徴とする最大ブレーキ力算出方法。
  9. 複数の輪軸を有する鉄道車両における車両速度と輪重との組み合わせに対する各軸の粘着係数をコンピュータに算出させるコンピュータプログラムであって、
    レールと車輪との間に水膜が存在する場合における入口部水膜厚さに対する最小水膜厚さの比である水膜減少率が与えられ、
    車両速度と輪重との各々の組み合わせに対して、
    前記車両速度及び輪重に基づいて第1輪の最小水膜厚さを算出するステップと、
    第1輪の前記最小水膜厚さと、前記水膜減少率とに基づいて、第2輪以降の最小水膜厚さを順次算出するステップと、
    算出した各車輪の前記最小水膜厚さに基づいて、各軸の粘着係数を算出するステップとを、コンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
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