JP6401527B2 - 樹脂成形品の分子配向評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂成形品の分子配向評価方法に関し、より詳細には、赤外光を用いて樹脂成形品の分子配向の向き及び/又は分子配向度の大小を評価する方法に関する。
樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度は、その製造条件決定、物性制御の上で重要なファクターである。例えば、延伸や紡糸条件(フィルム、繊維)や射出温度、射出速度、金型形状といった樹脂成形品の製造条件の選定や、機械強度、光学特性など、種々の製品の性能制御のために分子配向の向きや分子配向度の評価や調整が必要となる。
樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度の大小を評価するため、それらについて測定する方法が種々知られている。例えば、X線結晶解析、赤外分光法(透過法)、赤外分光法(ATR法)、赤外分光法(拡散反射法)及びラマン分光法などを用いた方法が知られている。これらの中で、X線結晶解析、赤外分光法(ATR法)、及び赤外分光法(拡散反射法)は、測定に際し、測定対象の樹脂成形品を所定のサイズにカッティングしたり、X線やATRプリズムの接触による測定履歴の残存が生じたりする。そのため、例えば、生産ラインにおける製品の分子配向の向きや分子配向度の測定など、非破壊・非接触での測定が要求される場合、上記方法は採用することができない。
一方、X線結晶解析、赤外分光法(ATR法)、赤外分光法(拡散反射法)及びラマン分光法は、原理上、測定対象の樹脂成形品の表面近傍における分子配向の向きや分子配向度を測定するものである。そのため、得られる測定値は表層部分における分子配向の向きや分子配向度を反映したものであり、肉厚方向全体の分子配向の向きや分子配向度(平均値)の測定をしたい場合、特に肉厚が厚い樹脂成形品の肉厚方向全体の分子配向の向きや分子配向度を非破壊にて測定したい場合には上記測定方法は採用することができない。
赤外光を利用した測定法のうち、透過法による赤外分光法は、測定に際し樹脂成形品を破壊することも、別部材が接触することもなく、さらに樹脂成形品を透過した赤外光を測定することから、樹脂成形品の肉厚方向全体の分子配向の向きや分子配向度(平均値)を非破壊かつ非接触で測定し得ると考えられる。赤外分光法(透過法)により実際に樹脂の分子配向度を評価した例は多々あり、例えば熱可塑性液晶樹脂に対して、赤外分光法を活用して分子配向度を測定した報告例がある(非特許文献1参照)。この報告例では、熱可塑性液晶樹脂の成形品から削り出した10μmの肉厚の薄膜に関して、赤外分光法を活用した分子配向度の測定方法が開示されている。さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂の肉厚10μmの薄いフィルムに関して、赤外分光法を活用し、表層部分の分子配向の度合いを求める方法が開示されている(特許文献1参照)。また、ポリアミド6に関して、500nmの直径の繊維に関して赤外分光法による分子配向度が評価されている(非特許文献2参照)。これらの赤外分光法(透過法)を活用した例では、波数領域1800cm−1以下の赤外吸収スペクトルを解析して分子配向度の算出を行っているが、その波数領域においては物質の分子構造や分子配向を反映した強い吸収バンドが検出される。そのため、その波数領域の赤外線は吸収強度が大きく、試料の肉厚が大きくなると分析することが困難となり、上記の例の肉厚を超える試料については、例えば、非特許文献1や特許文献2に開示されているように、赤外分光法の中でもATR法によって測定されている。特許文献2では、樹脂の肉厚25μmの厚いポリエチレンフタレートフィルムに関して、ATR法を活用した分子配向度(配向パラメータ)の測定方法が開示されている。ATR法では、表面近傍における分子配向度の測定であり、肉厚方向全体の分子配向度(平均値)は、評価できていない。
特開2000−309077号公報 特開2002−160721号公報
A. KAITO, M. and K. NAKAYAMA,「Orientation profiles in the strand of thermotropic liquid-crystalline polymer studied by polarized Fourier-transform infrared microspectroscopy」Macromolecules, 1991, 24, 3244- 3249 K.H. Lee, K.W. Kim, A. Pesapane, H. Y. Kim, andJ. F. Rabolt, 「Polarized FT-IR Study of Macroscopically Oriented Electrospun Nylon-6 Nanofibers」, Macromolecules 2008, 41, 1494-1498
本発明の目的は、厚肉の樹脂成形品であっても肉厚方向全体の分子配向の向きや分子配向度を、非破壊かつ非接触で評価することができる樹脂成形品の分子配向度評価方法、及び該分子配向度評価方法を使用した樹脂成形品(群)の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS樹脂」とも呼ぶ。)に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下「PAS樹脂」とも呼ぶ)などの熱可塑性樹脂には、分子配向の向きや分子配向度を現す赤外光の吸収バンドが複数存在することを見出し、分子配向の向きや分子配向度の評価に関してそれらのうち4500〜2000cm−1の波数領域に着目すれば従来の諸問題を解決できることをさらに見出した。すなわち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の分子配向の向き及び/又は分子配向度の評価方法であって、
偏光方向が異なる複数の偏光赤外光を用い、透過法による赤外分光法により、前記樹脂成形品の赤外光の吸収を前記複数の偏光赤外光のそれぞれについて測定し、前記赤外光の吸収の波数領域4500〜2000cm−1の範囲における、前記複数の偏光赤外光に対応するそれぞれの赤外吸光度に基づいて前記樹脂成形品の前記肉厚部位の分子配向の向き及び/又は分子配向度の大小を評価することを特徴とする樹脂成形品の分子配向評価方法。
(2)分子配向の向きを評価する際に、ある偏光方向の偏光赤外光の赤外吸光度を基準とし、その基準の赤外吸光度に対する、0〜90°までの各偏光方向の偏光赤外光の赤外吸光度の比の値をプロットしたプロット図を作成したとき、極大又は極小を把握可能な複数の偏光赤外光について測定を行う前記(1)に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
(3)前記複数の偏光赤外光の、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対する偏光方向の角度を、(A)分子配向の向きを評価する際は0〜90°のうちの複数の角度とし、(B)分子配向度の大小を評価する際は0〜90°のうちの少なくとも2つの角度とする前記(1)又は(2)に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
(4)前記樹脂成形品における、複数の偏光赤外光に対応するそれぞれの赤外光の吸収を解析し、分子軸に対して0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動による吸収、又は分子軸に対して45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を帰属した後、分子配向の向きを評価する場合には下記(A)を、分子配向度を評価する場合には下記(B)を実行する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
(A)帰属した前記吸収のうちのいずれかについて、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対して0°〜90°のうち複数の角度で赤外光を偏光させた際の、極大の吸光度又は極小の吸光度を示した角度に基づき分子配向の向きを求める。
(B)樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対して0°〜90°のうち少なくとも2つの角度で偏光させた赤外光間の吸光度比を算出し、該強度比に基づいて分子配向度の大小を評価する。
(5)前記樹脂成形品の肉厚が0.025〜4mmである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
(6)前記樹脂成形品の樹脂成分が、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、及び液晶樹脂からなる群から選択される1種である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
(7)熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂成形品の分子配向評価方法による分子配向の向き及び分子配向度の評価を行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
(8)前記樹脂成形品が、押出し又は延伸処理により長尺状に成形された樹脂成形品であり、前記分子配向の向き及び分子配向度の評価を行う工程において、前記樹脂成形品の長手方向に位置する複数箇所の分子配向の向き及び分子配向度の評価を連続的に行うことを特徴とする前記(7)に記載の樹脂成形品の製造方法。
(9)熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の多数を製造する樹脂成形品群の製造方法であって、
前記樹脂成形品群のうちの各樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂成形品の分子配向評価方法による分子配向の向き及び分子配向度の評価を連続的に行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品群の製造方法。
本発明によれば、厚肉の樹脂成形品であっても肉厚方向全体の分子配向の向き及び分子配向度を、非破壊かつ非接触で評価することができる樹脂成形品の分子配向の向き及び分子配向度評価方法、及び該分子配向の向き及び分子配向度評価方法を使用した樹脂成形品(群)の製造方法を提供することができる。
実施例1において、樹脂成形品の樹脂流動方向に平行な向き及び垂直な向きに赤外光を偏光させて測定した、4500〜2000cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線は成形品の樹脂流動方向に平行な向きに、破線は垂直な向きに赤外光を偏光させた際のスペクトルを示す。 図1において、2300〜2000cm−1の領域を拡大した図である。実線は成形品の樹脂流動方向に平行な向きに、破線は垂直な向きに赤外光を偏光させた際のスペクトルを示す。 図1において、4400〜3500cm−1の領域を拡大した図である。実線は成形品の樹脂流動方向に平行な向きに、破線は垂直な向きに赤外光を偏光させた際のスペクトルを示す。 実施例1において測定した、成形品の樹脂流動方向に平行な向きに赤外光を偏光させた際を0°とし、2123cm−1と3955cm−1について、各角度で測定した際のバンド強度を0°のバンド強度で除した値と80°のバンド強度で除した値をそれぞれプロットした図である。 実施例2において測定した、2250〜2050cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線は成形品の樹脂流動方向に平行な向きに、破線は垂直な向きに赤外光を偏光させた際のスペクトルを示す。 実施例3において測定した、2400〜2000cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線は成形品の樹脂流動方向に平行な向きに、破線は垂直な向きに赤外光を偏光させた際のスペクトルを示す。 実施例3において測定した成形品の樹脂流動方向に平行な向きに、赤外光を偏光させた際を0°とし、2276cm−1と2212cm−1について各角度で測定した際のバンド強度を0°のバンド強度で除した値をプロットした図である。 実施例1において用いた試験片の樹脂流動方向と測定点とを示す図(上図)、及び当該測定点における2つの偏光赤外光の偏光方向を示す図(下図)である。 実施例2において用いた試験片の樹脂流動方向と測定点とを示す図(上図)、及び当該測定点における2つの偏光赤外光の偏光方向を示す図(下図)である。 実施例3において用いた試験片の樹脂流動方向と測定点とを示す図(左図)、及び当該測定点における2つの偏光赤外光の偏光方向を示す図(右図)である。
<樹脂成形品の分子配向度評価方法>
本発明の樹脂成形品の分子配向度評価方法は、熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の分子配向の向き及び/又は分子配向度の評価方法であって、偏光方向が異なる複数の偏光赤外光を用い、透過法による赤外分光法により、前記樹脂成形品の赤外光の吸収を前記複数の偏光赤外光のそれぞれについて測定し、前記赤外光の吸収の波数領域4500〜2000cm−1の範囲における、前記複数の偏光赤外光に対応するそれぞれの赤外吸光度に基づいて前記樹脂成形品の前記肉厚部位の分子配向の向き及び/又は分子配向度の大小を評価することを特徴としている。
本発明においては、例えば、フーリエ変換型や波長分散型の赤外分光光度計、或いは赤外光の吸収を測定できる光源と検出器の組み合わせを用い、透過法による赤外分光法により、測定対象の樹脂成形品に対して偏光赤外の赤外吸光度を測定し、波数領域4500〜2000cm−1の赤外光の吸収に基づいて樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度の大小を評価するものである。このような波数領域4500〜2000cm−1の赤外光は、従来の1800cm−1以下の波数領域と比較して吸収強度が小さい。そのため、測定対象の樹脂成形品の肉厚が、従来の波数領域では分析不可能な程度においても、分析が困難となるほど吸収バンドが大きくなることはない。従って、透過法の利点である、測定対象の樹脂成形品に対し非接触かつ非破壊で評価を行うことができるとともに、厚肉の成形品でも評価することができる。また、評価対象の樹脂成形品の面内において、評価する位置を自由に選択することも可能である。さらに、赤外分光法であるが故、分子配向の向きや分子配向度以外に、樹脂肉厚、混合物の濃度などの情報も同時測定が可能である。
一方、本発明で採用した波数領域は、バンド強度が非常に小さく検出が難しい。そのため、従来は、本発明に係る波数領域では、分子配向を反映するバンドの帰属が成されてこなかった。しかし、例えば、mmオーダーの肉厚を有する射出成形品は、肉厚や分子配向の向き、分子配向度などバンド形状に影響を与える因子が高度に制御されたものであり、基準試料となりうる。本発明では、所定の肉厚の試料を基準に用いることで、バンド帰属に必要な情報を得るための上記の課題を克服した。
本発明において、測定対象の樹脂成形品の樹脂成分たる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶樹脂(以下、「LCP樹脂」とも言う。)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。特に、ポリアリーレンサルファイド樹脂、LCP樹脂は、より好適に分子配向度を評価することができる。
本発明では、従来においては評価が困難であった、例えば0.02mm以上、0.025mm以上、0.03mm以上、0.05mm以上、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上、3mm以上といった肉厚(上限は4mm)の部位を有する樹脂成形品の当該肉厚部位に対しても分子配向の向きや分子配向度の評価が可能である。すなわち、本発明においては、分子配向の向きや分子配向度を評価する樹脂成形品として肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有するものを対象としている。特に、本発明は、従来においては困難であった肉厚方向全体の分子配向の向きや分子配向度の評価が可能であるという観点から、肉厚が厚いほど本発明の真価が発揮される。
肉厚が0.02mm以上4mm以下の範囲であれば、赤外線透過率の低下により評価が困難となる問題が生じにくいが、例えば、PPS樹脂の場合は、0.025mm以上4mm以下、LCP樹脂の場合は、0.02mm以上1mm以下の肉厚に調整することが好ましい。また、樹脂成形品の形状としては特に限定されず、フィルム状、平板状などが挙げられる。中でも、特にフィルムやシートといった、連続で製造される形状の場合、本発明は、連続的に評価することにより品質管理などに適用し得る点で有利である。
本発明においては、透過法による赤外分光法による測定が可能な測定機器を用いる。測定機器としては、上述の通りフーリエ変換型や波長分散型の赤外分光光度計、或いは赤外光の吸収を測定できる光源と検出器の組み合わせを用いる。赤外分光光度計、或いは光源と検出器の組み合わせとしては、特に制限されず、赤外線の波数4500〜2000cm−1の領域で、分子配向の向きや分子配向度の評価に使う波数の吸収を測定可能なものであればよい。赤外光の偏光に用いる偏光子も、偏光させた赤外光の吸光度測定用に使われる一般的なものでよい。
本発明において、分子配向の向きや分子配向度を評価するための赤外線の波数領域は4500〜2000cm−1の領域としているが、この範囲内であれば4500〜2300cm−1の領域としてもよいし、2300〜2000cm−1の領域としてもよい。すなわち、本発明者らは、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂には分子配向の向きや分子配向度を現す吸収バンドが複数存在することを見出したのであるが、そのうち結合音や倍音の領域のバンドから分子配向度を評価する。
次いで、本発明の樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度の評価方法における手順について説明する。
まず、フーリエ変換型や波長分散型の赤外分光光度計、或いは赤外光の吸収を測定できる光源と検出器の組み合わせを用い、透過法により、測定対象の樹脂成形品の波数領域4500〜2000cm−1における、偏光方向が異なる複数の偏光赤外光の赤外光の吸収を測定する。本発明においては、赤外分光法の中でも透過法を採用しているため、測定は、非破壊、非接触で行うことができ、樹脂成形品を傷つけることがない。従って、例えばフィルム製造装置などで本発明の方法を使用することによって、生産ラインにおいて、最終製品として出荷する製品の製造工程において、分子配向の向きや分子配向度をオンラインでモニターするといった使用方法が可能である。オンラインで連続的に分子配向度の評価を行い、分子配向度の評価結果に基づき製造条件を調節することで品質管理が可能である。なお、「連続的に」とは、分子配向の向きや分子配向度の評価をし続けることを意味するのではなく、生産ライン等を流れる多数の樹脂成形品のそれぞれに対する分子配向の向きや分子配向度の評価を一連の流れの中で順次行うこと、あるいは単一の樹脂成形品の場合、当該樹脂成形品内の複数箇所のそれぞれに対する分子配向の向きや分子配向度の評価を一連の流れの中で順次行うことを意味する。「単一の樹脂成形品」は、文字通り「樹脂成形品1個」という意味であるが、捲回され得る長尺状のものをも含む。つまり、長尺状のものはいずれ切断される場合を考慮するなら、「樹脂成形品1個」の集合体とも捉えることもできるが、本発明においては長尺状であって切断前の樹脂成形品は「単一の樹脂成形品」として扱う。
本発明においては、上記の通り、偏光方向が異なる複数の偏光赤外光の赤外光の吸収を測定するのであるが、効率良く評価を行う観点から、当該複数の偏光赤外光の、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対する偏光方向の角度としては、(A)分子配向の向きを評価する際は0〜90°のうちの複数の角度とし、(B)分子配向度の大小を評価する際は0〜90°のうちの少なくとも2つの角度とすることが好ましい。
なお、(A)の場合の複数の角度の数としては、ある偏光方向の偏光赤外光の赤外吸光度(吸収強度)を基準とし、その基準の赤外吸光度に対する、0〜90°までの各角度における赤外吸光度の比の値をプロットしたプロット図を作成したとき(図4、図7参照)、極大又は極小を把握可能な数とすることが好ましい。つまり、その数分だけ、偏光赤外光の測定をすることが好ましい。
次に、上述の偏光赤外光の波数領域4500〜2000cm−1の赤外光の吸収において、樹脂の分子軸に対して0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動による吸収、又は分子軸に対して45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を帰属する。それぞれの吸収バンドの帰属方法は特に限定されないが、例えば、樹脂成形時の流動方向や延伸方向が既知である場合、樹脂成形品の流動方向や延伸方向を基準として、その基準に対し、平行(0°)、及び垂直(90°)を含む各角度に偏光させた際の赤外光の吸収を測定し、当該赤外光の吸収において、0°か90°のいずれで吸光度の極大、或いは極小を示したかを調べることで帰属を行うことができる。
前記吸収の帰属後においては、(A)分子配向の向きを評価する場合、及び(B)分子配向度を評価する場合のそれぞれで操作が異なる。以下に(A)及び(B)のそれぞれの操作について説明する。
(A)分子配向の向きを評価する場合、帰属した前記吸収のうちのいずれかについて、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対して0°〜90°のうち複数の角度で赤外光を偏光させた際の、極大の吸光度又は極小の吸光度を示した角度に基づき分子配向の向きを求める。具体的には、分子軸に対し0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を用いる場合、この吸収に由来する吸収強度が0°〜90°のうちで極大になる角度が分子配向の向きになる。極大が見つからず、極小になる角度が見つかった場合、この極小を示した角度に対し、90°ずれた値が分子配向の向きになる。極大も極小も見つからなかった場合、最大値を示した角度が分子配向の向きになる。分子軸に対し45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を用いる場合、この吸収に由来する吸収強度が0°〜90°の偏光角度のうちで極小になる角度が分子配向の向きになる。極小が見つからず、極大になる角度が見つかった場合、この極大を示した角度に対し、90°ずれた値が分子配向の向きになる。極大も極小も見つからなかった場合、最小値を示した角度が分子配向の向きになる。
一方、(B)分子配向度を評価する場合、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対して0°〜90°のうち少なくとも2つの角度で偏光させた赤外光間の吸光度比を算出し、該吸光度比に基づいて分子配向度の大小を評価する。具体的には、分子軸に対し0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を用いる場合も、45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を用いる場合も、複数の偏光赤外光の偏光方向の角度(偏光子の角度)を0〜90°のうちの少なくとも2つの角度とし、それら角度での吸光度の比を算出することで評価する。この2つの角度は、0°及び90°を用いることが評価をより容易なものにするが、他の角度で評価することも可能であり、角度選定は制限されない。吸光度の比は、以下のように、バンド高さ又はバンド面積に基づき強度比(I/I’)を算出する。成形時の樹脂流動方向や延伸方向など基準となる方向等、或いは調べたい成形品の方向に対し、評価に用いる吸収バンドが、例えば、分子軸に対し0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動に由来する吸収バンドを用い、さらに、赤外光の偏光角度の1つを0°として吸収強度I’を測定した場合、もう1つの任意の偏光角度での吸収強度Iから算出されるI/I’は、分子配向度が大きいほど小さくなる。分子軸に対し0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動に由来する吸収バンドを用い、さらに、赤外光の偏光角度の1つを90°として吸収強度I’を測定した場合、もう1つの任意の偏光角度での吸収強度Iから算出されるI/I’は、分子配向度が大きいほど大きくなる。分子軸に対し45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動に由来する吸収バンドを用い、さらに、赤外光の偏光角度の1つを0°として吸収強度I’を測定した場合、もう1つの任意の偏光角度での吸収強度Iから算出されるI/I’は、分子配向度が大きいほど大きくなる。分子軸に対し45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動に由来する吸収バンドを用い、さらに、赤外光の偏光角度の1つを90°として吸収強度I’を測定した場合、もう1つの任意の偏光角度での吸収強度Iから算出されるI/I’は、分子配向度が大きいほど小さくなる。すなわち、この吸光度比の大小は、分子配向度の大小を示し、これに基づき試料間の分子配向度の比較が可能となる。また、赤外光の偏光角度の1つを0°や90°でない角度を用いて吸収強度I’を測定した場合、もう1つの任意の偏光角度での吸収強度Iから算出されるI/I’は、両角度の組み合わせに従って、分子配向度が大きいほど、大きくなる場合と小さくなる場合の両方をとりうるが、この場合も、I/I’は、分子配向度の大小を直接反映しており、この値から分子配向度の比較が可能となる。なお、以上の2つの角度における吸光度の比は、1つの波数に対する赤外光の吸収についてのものであるが、結晶性樹脂の場合に、結晶部由来バンドと非晶部由来バンドのそれぞれについて同様の評価を行うことで、結晶部と非晶部について個別に評価することも可能であり、結晶か非晶か以外の観点でも複数成分について個別に評価することが可能である。
また、前記バンド強度比の算出に用いるバンド高さ又はバンド面積は、測定機器(赤外分光光度計や検出器)の標準的計測機能として備わっているものを使用して求めることができる。
<樹脂成形品(群)の製造方法>
本発明の樹脂成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の製造方法であって、前記樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、既述の本発明の樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度評価方法による分子配向の向きや分子配向度評価を行う工程を含むことを特徴としている。
本発明の樹脂成形品の製造方法においては、既述の本発明の樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度評価方法による分子配向の向きや分子配向度評価を行う工程を含むが、既述の通り、当該工程では、樹脂成形品に対し非接触かつ非破壊で分子配向の向きや分子配向度の評価を行うことができる。従って、樹脂成形品に傷すらも発生させることがないため、本発明の製造方法により得られた樹脂成形品は、分子配向の向きや分子配向度の評価を行いながらも、そのままの状態で市場に出荷することが可能である。つまり、分子配向の向きや分子配向度の評価を行った製品そのものを市場に出荷することが可能であり、分子配向の向きや分子配向度に基づく品質管理を容易に行うことができる。なお、樹脂成形品における分子配向の向きや分子配向度の評価箇所は一箇所としても複数箇所としてもよい。
本発明の製造方法により製造する樹脂成形品の形状としては特に制限はないが、例えば、押出し又は延伸処理により長尺状に成形された樹脂成形品の場合、分子配向の向きや分子配向度評価を行う工程において、樹脂成形品の長手方向に位置する複数箇所の分子配向の向きや分子配向度の評価を連続的に行うことができる。例えば、分子配向の向きや分子配向度の測定機器(赤外分光光度計、或いは赤外光の吸収を測定できる光源と検出器の組み合わせ)に対して当該長尺状の樹脂成形品をその長手方向に相対移動させ、所定間隔ごとに連続的に分子配向の向きや分子配向度を評価することで、複数箇所の分子配向の向きや分子配向度の評価を効率良く短時間で行うことができる。また、長尺状の樹脂成形品の場合は切断して複数の樹脂成形品とすることができるが、その場合、当該複数の樹脂成形品のいずれも分子配向の向きや分子配向度が評価されるように、切断前の長尺状の段階で分子配向の向きや分子配向度を評価する位置を設定することが好ましい。
なお、長尺状の樹脂成形品は、例えば、数十センチ〜数十メートルの長尺状とすることができ、必要以上に長い場合には捲回してロール状とすることができる。また、「連続的に」とは、既述の通りである。
一方、多数の樹脂成形品を製造するための本発明の樹脂成形品群の製造方法は、熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の多数を製造する樹脂成形品群の製造方法であって、前記樹脂成形品群のうちの各樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、既述の本発明の樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度評価方法による分子配向の向きや分子配向度評価を連続的に行う工程を含むことを特徴としている。
本発明の樹脂成形品群の製造方法は、樹脂成形品を多数製造する場合において、成形後の各樹脂成形品の分子配向の向きや分子配向度の評価に対して本発明の分子配向の向きや分子配向度評価方法を使用するものである。既述の通り、本発明の方法においては、樹脂成形品に対し非接触かつ非破壊で分子配向の向きや分子配向度の評価を行うことができる。従って、樹脂成形品に傷すらも発生させることがないため、本発明の製造方法により得られた樹脂成形品は、分子配向の向きや分子配向度の評価を行いながらも、そのままの状態で市場に出荷することが可能である。従って、例えば生産ラインにおいて、最終製品として出荷する製品の製造工程において、市場に出荷する樹脂成形品自体の分子配向の向きや分子配向度の評価をオンラインで連続的に行うことができる。また、例えば、分子配向度をオンラインでモニターすることで品質管理を容易に行うことができる。なお、各樹脂成形品における分子配向の向きや分子配向度を評価する箇所は一箇所としても複数箇所としてもよい。また、「連続的に」とは、既述の通りである。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、実施例では、熱可塑性樹脂として、以下の材料を使用した。
(1)実施例1〜2:ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)(ポリプラスチックス(株)製、無充填系PPS樹脂組成物、「ジュラファイド(登録商標)0220A9」)
(2)実施例3:液晶樹脂(LCP樹脂)芳香族ポリエステル液晶樹脂1
なお、上記の芳香族ポリエステル液晶樹脂1は、次のようにして合成されたものである。
(芳香族ポリエステル液晶樹脂1の合成方法)
攪拌機、留出管、ガス導入管、排出孔等を備えた反応器を用い、p-ヒドロキシ安息香酸345質量部(73mol%)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸175質量部(27mol%)、酢酸カリウム0.02質量部、及び無水酢酸350質量部を反応器内に仕込み、この反応器内を十分に窒素で置換した後、常圧下で150℃まで温度を上げ、攪拌を開始した。150℃で30分攪拌し、更に徐々に温度を上昇させ、副生する酢酸を留去した。温度が300℃に達したところで徐々に反応器内を減圧し、5Torr(即ち、665Pa)の圧力で1時間攪拌を続け、目標の攪拌トルクに達した時点で、反応器下部の排出孔を開け、窒素圧を使って生成した樹脂をストランド状に押し出して取り出した。取り出されたストランドをペレタイザーで粒子状に成形した。この全芳香族ポリエステル液晶樹脂の融点は280℃、300℃での溶融粘度は50.1Pa・sであった。
[実施例1]
射出成形にて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で厚み4mmtのISOダンベル試験片を作製した。
このダンベル試験片の中心部に対し、フーリエ変換型赤外分光光度計((株)パーキンエルマージャパン製、spectrum one)を用い、透過法により赤外吸収スペクトルを測定した。赤外光の偏光子として、Specac製のKRS-5を使用し、偏光方向が異なる2つの偏光赤外光を用いて測定した。具体的には、成形時の樹脂流動方向に平行な方向と垂直な方向を含む各角度に赤外光を偏光させ測定した。図8に、測定に用いたダンベル試験片10の樹脂流動方向、測定点、及び当該測定点における偏光赤外光の偏光方向を示す。樹脂成形品について得られた赤外吸収スペクトルを図1に示す。図1は、波数4500〜2000cm−1の領域のスペクトルを示しており、図1において、2300〜2000cm−1の領域を拡大し、上記平行及び垂直の2方向の偏光について得られた赤外吸収スペクトルを示したのが図2である。図2において、2123cm−1のバンドは、成形時の樹脂流動方向に平行に偏光させた際に吸収強度が極大になるバンドである。また、図1において、4400〜3500cm−1の領域を拡大し、上記平行及び垂直の2方向の偏光について得られた赤外吸収スペクトルを示したのが図3である。図3において、3955cm−1のバンドは、成形時の樹脂流動方向に垂直に偏光させた際に吸収強度が極大になるバンドである。これらのバンドに関し、平行0°の吸収に対する180°までの各吸収強度の比及び80°の吸収に対する180°までの各吸収強度の比を算出し示したのが図4である。樹脂の流動方向が既知である成形品で、樹脂の流動方向によって決まる射出成形品の分子配向の方向(分子軸)に対し、平行0°の吸収に対する0°から90°の各偏光角度の吸収強度比が、角度が大きくなるにつれ、徐々に大きく、或いは小さくなり、垂直90°に偏光させたときの赤外光の吸光度が極大か極小になり、また、90°〜180°にかけてこの強度比が、もとに戻る特徴が得られたことから、分子配向の向きを正しく評価できていることが分かる。また、80°の偏光の吸収に対する比を算出した場合も、0°との吸収強度比、90°との吸収強度比が極大か極小を示しており、分子配向の向きを正しく評価できていることが分かる。この80°の偏光を基準とした場合のように、「0°又は90°」以外を基準偏光角度とする際は、選択したもう1つの偏光角度によって、「強度比が大きいこと」が、配向度が大きいことを意味することもあれば、配向度が小さいことを示すこともある。こういった場合、本実施例に示されるような標準的な成形品を用いて、図4に示されるような偏光角度と強度比の関係を、予め調べることで、配向度の評価に用いることが可能である。
[実施例2]
シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形により、ポリフェニレンサルファイド樹脂の15mm×127mm×0.8mmt(すなわち、寸法が幅15mm×長さ127mm×肉厚0.8mm)の試験片で、両端から充填された樹脂が中央の位置で会合して、ウェルドを設けた試験片を作製した。すなわち端点から63.5mmがウェルドとなる。この試験片のウェルドと、ここから1cmずつ両脇に離れた点の赤外吸収スペクトルを測定した。図9に、測定に用いた試験片12の樹脂流動方向、測定点、及び当該測定点における偏光赤外光の偏光方向を示す。2250〜2050cm−1の領域を拡大し、上記平行及び垂直の2方向の偏光について得られた赤外吸収スペクトルを示したのが図5である。2123cm−1のバンドに対し、垂直偏光の吸収強度を平行偏光の吸収強度で除した値を表1に示した。ウェルド部では、90°偏光における吸光度と0°偏光における吸光度の比が1に近くなるのに対し、ウェルドから10mm離れた箇所では、よりこの比が小さくなっていることが分かる。ウェルド部に至る前の場所では、樹脂流動方向が一定のため分子配向度が大きくなるが、ウェルド部では樹脂の流動が乱れるために、分子配向度が小さくなる。本測定では、この分子配向度の違いの特徴が捉えられている。
Figure 0006401527
[実施例3]
シリンダー温度290 ℃、金型温度80 ℃の条件で射出成形により、液晶樹脂の80mm×80mm×1mmt(すなわち、寸法が幅80mm×長さ80mm×肉厚1mm)の平板状成形品を作製し、この成形品の中心部分(幅40mm、長さ40mmの位置)について実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルの測定を行った。図10に、測定に用いた成形品14の樹脂流動方向、測定点、及び当該測定点における偏光赤外光の偏光方向を示す。図6は、平行0°及び90°の赤外吸収スペクトルを示している。得られた赤外吸収スペクトルのうち、平行と示した2212cm−1の吸収バンドと帰属し、樹脂流動方向に関し平行0°偏光において極大になる吸収バンドで、垂直と示した2276cm−1の吸収バンドを、樹脂流動方向に関し垂直90°偏光において極大になる吸収バンドと帰属した。そして、それぞれについて、平行偏光(0°)の吸収強度に対する180°までの吸収強度の比の値を各角度で算出した。図7は、この強度比をプロットしたものである。樹脂の流動方向や延伸方向によって決まる分子軸に対し、平行か垂直のいずれかに偏光させたときの赤外光の吸光度が極大になる特徴が得られたことから、液晶樹脂でも分子配向の向きと分子配向度を評価できていることが分かる。
10 試験片
12 試験片
14 成形品

Claims (8)

  1. ポリアリーレンサルファイド樹脂又は液晶樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の分子配向の向き及び/又は分子配向度の大小の評価方法であって、
    偏光方向が異なる複数の偏光赤外光を用い、透過法による赤外分光法により、前記樹脂成形品の赤外光の吸収を前記複数の偏光赤外光のそれぞれについて測定し、前記赤外光の吸収の波数領域2300〜2000cm−1の範囲における、前記複数の偏光赤外光に対応するそれぞれの赤外吸光度に基づいて前記樹脂成形品の前記肉厚部位の分子配向の向き及び/又は分子配向度の大小を評価することを特徴とする樹脂成形品の分子配向評価方法。
  2. 分子配向の向きを評価する際に、ある偏光方向の偏光赤外光の赤外吸光度を基準とし、その基準の赤外吸光度に対する、0〜90°までの各偏光方向の偏光赤外光の赤外吸光度の比の値をプロットしたプロット図を作成したとき、極大又は極小を把握可能な複数の偏光赤外光について測定を行う請求項1に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
  3. 前記複数の偏光赤外光の、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対する偏光方向の角度を、(A)分子配向の向きを評価する際は0〜90°のうちの複数の角度とし、(B)分子配向度の大小を評価する際は0〜90°のうちの少なくとも2つの角度とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
  4. 前記樹脂成形品における、複数の偏光赤外光に対応するそれぞれの赤外光の吸収を解析し、分子軸に対して0°以上45°未満又は135°超180°以下に双極子モーメントを有する分子振動による吸収、又は分子軸に対して45°超135°未満に双極子モーメントを有する分子振動による吸収を帰属した後、分子配向の向きを評価する場合には下記(A)を、分子配向度を評価する場合には下記(B)を実行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
    (A)帰属した前記吸収のうちのいずれかについて、樹脂成形品の評価したい任意の一方向に対して0°〜90°のうち複数の角度で赤外光を偏光させた際の、極大の吸光度又は極小の吸光度を示した角度に基づき分子配向の向きを求める。
    (B)脂成形品の評価したい任意の一方向に対して0°〜90°のうち少なくとも2つの角度で偏光させた赤外光間の吸光度比を算出し、該強度比に基づいて分子配向度の大小を評価する。
  5. 前記樹脂成形品の肉厚が0.025〜4mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法。
  6. ポリアリーレンサルファイド樹脂又は液晶樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の製造方法であって、
    前記樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法による分子配向の向き及び分子配向度の評価を行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  7. 前記樹脂成形品が、押出し又は延伸処理により長尺状に成形された樹脂成形品であり、前記分子配向の向き及び分子配向度の評価を行う工程において、前記樹脂成形品の長手方向に位置する複数箇所の分子配向の向き及び分子配向度の評価を連続的に行うことを特徴とする請求項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  8. ポリアリーレンサルファイド樹脂又は液晶樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上4mm以下の部位を有する樹脂成形品の多数を製造する樹脂成形品群の製造方法であって、
    前記樹脂成形品群のうちの各樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂成形品の分子配向評価方法による分子配向の向き及び分子配向度の評価を連続的に行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品群の製造方法。
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