以下、本発明の一実施形態および各種変形例を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は適宜変更され得る。なお、図1から図14、図16から図20および図22から図38には、ヘッド部30のヘッド本体部30Bdがガイド部16に沿って移動する移動方向(図1の右方向)を+X方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。
<(1)立体造形装置の概略構成>
図1は、一実施形態に係る立体造形システム100の概略構成を示す図である。立体造形システム100は、造形用の材料(造形用材料とも言う)を主に液体または流体の状態で供給して硬化させることで層を順次に形成して、複数の層が積層された任意の造形物を製造する。
図1で示されるように、立体造形システム100は、データ作成装置1および立体造形装置2を備えている。
データ作成装置1は、3次元形状の造形物(立体造形物とも言う)を示すデータ(3Dデータとも言う)を取得して、該3Dデータ上で立体造形物を薄切りにして複数の薄い断面体に係る断面データを生成し、立体造形装置2に対して送信する。データ作成装置1は、例えば、パーソナルコンピュータ等であれば良く、3Dデータは、例えば、CADデータ等であれば良い。着色のためのカラー情報としては、例えば、色情報を持つ3Dデータや2次元のカラーデータが立体形状に合うように位置決めされたり、立体形状に合わせた変形が施されたりしたものが使用される。
立体造形装置2は、制御部10、テーブル部20およびヘッド部30を備えている。
制御部10は、データ作成装置1から断面データを得て、該断面データに応じて、テーブル部20およびヘッド部30の動作を制御する。
テーブル部20は、保持部21、ロッド部22および駆動部23を備えている。
保持部21は、例えば、上面が平滑な板状の部分(プレート部とも言う)である。本実施形態では、保持部21の上面上にヘッド部30から供給される造形用材料が積層されることで、立体造形物3D1が形成される。このため、保持部21は、立体造形物3D1の形成過程において、造形用材料等によって構成される複数の層からなる積層体LP1を支持するとともに、形成された立体造形物3D1を支持する。
ロッド部22は、駆動部23の駆動に応じて、保持部21を上下方向(本実施形態では、±Z方向)に移動させる部分である。ロッド部22としては、例えば、保持部21の下面に連結される棒状の部材等が採用され得る。
駆動部23は、ロッド部22を上下方向に移動させる部分である。本実施形態では、駆動部23によって保持部21が上下方向に移動されることで、ヘッド部30と保持部21との上下方向における相対的な位置が変更される。例えば、保持部21上に造形用材料の層が形成される毎に、保持部21がヘッド部30から離れる方向に移動する。
ヘッド部30は、ヘッド本体部30Bdおよび駆動部15を有している。ヘッド本体部30Bdには、駆動部15が設けられており、駆動部15は、例えば、第1ガイド部16に係合あるいは嵌合している。第1ガイド部16は、例えば、水平方向(本実施形態では、±X方向)に延びる棒状の部材である。そして、ヘッド部30は、例えば、ヘッド本体部30Bdに対して設けられた駆動部15が発する駆動力に応じて、第1ガイド部16の長手方向に沿って移動する。これにより、ヘッド部30が、主走査方向としての±X方向に走査される。
図2は、ヘッド部30の走査態様を例示する上面図である。図2で示されるように、第1ガイド部16は、例えば、該第1ガイド部16の長手方向の一端部に設けられた駆動部16aと、該第1ガイド部16の長手方向の他端部に設けられた駆動部16bを有している。なお、本実施形態では、一端部は、−X側の端部であり、他端部は、+X側の端部である。例えば、駆動部16aは、第2ガイド部17aに係合あるいは嵌合しており、駆動部16bは、第3ガイド部17bに係合あるいは嵌合している。第2および第3ガイド部17a,17bは、例えば、相互に平行な方向(本実施形態では、±Y方向)に延びる棒状の部材である。そして、ヘッド部30は、例えば、駆動部16a,16bが発する駆動力に応じて、第2および第3ガイド部17a,17bの長手方向に沿って移動する。これにより、ヘッド部30が、主走査方向に直交する副走査方向としての±Y方向に走査される。
すなわち、例えば、駆動部15,16a,16bによって、ヘッド部30が、主走査方向としての±X方向に沿った一往復の移動と、副走査方向としての±Y方向に沿った若干のシフトとを繰り返すことで、保持部21の上方において2次元的に走査され得る。
図1に示すようにヘッド本体部30Bdは、供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14を備えている。
ここで、ヘッド部30の2次元的な走査によって、成形部12は、積層体LP1の上面に対して離間した状態で、該上面に沿って主走査方向(第1方向とも言う)および該第1方向と交差する副走査方向(第2方向とも言う)に、該上面に対して相対的に移動する。これにより、成形部12を多数設ける必要性がなくなり、成形部12の数が低減され得る。このため、立体造形装置2の装置構成の簡略化ならびに小型化が図られ得る。
また、ヘッド部30の2次元的な走査によって、供給部11は、積層体LP1の上面に対して離間した状態で、該上面に沿って主走査方向(第3方向とも言う)および該第3方向と交差する副走査方向(第4方向とも言う)に、該上面に対して相対的に移動する。これにより、供給部11を多数設ける必要性がなくなり、供給部11の数が低減され得る。このため、立体造形装置2の装置構成の簡略化ならびに小型化が図られ得る。
そして、ここでは、積層体LP1の上面に対して離間した状態で該上面に沿って相対的に移動する移動体としての同一のヘッド本体部30Bdに、供給部11および成形部12が設けられている。これにより、供給部11および成形部12を移動させる機構の簡略化が図られ、立体造形装置2の装置構成の更なる簡略化ならびに小型化が図られ得る。
供給部11は、造形用材料を供給することで該造形用材料によって形成される層を順次に積層させる。ここで、造形用材料としては、例えば、紫外線の照射に応じて硬化する樹脂(紫外線硬化性樹脂とも言う)および熱の付与に応じて硬化する樹脂(熱硬化性樹脂とも言う)等が採用され得る。供給部11は、例えば、造形用材料を液体または流体の状態で、保持部21上に供給する。供給部11では、例えば、インクジェット方式等の供給方式によって、造形用材料が、保持部21上の適切な位置に吐出される。
ここで、積層体LP1を構成している造形用材料は、例えば、液体あるいは流体の状態を維持した状態で積層される。インクジェット方式の供給方式が採用される場合、例えば、供給部11に設けられる造形用材料を吐出する孔(吐出孔とも言う)は、1つであっても良いし、2以上であっても良い。なお、供給部11が多数の吐出孔を有する場合には、ヘッド部30の主走査方向における一回の走査によって、例えば、30〜50mmの幅で造形用材料の層が形成される構成等が考えられる。
また、造形用材料として、例えば、ABS(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)樹脂あるいはポリ乳酸(PLA)樹脂等といった熱可塑性樹脂が採用されても良い。これらの樹脂は、熱せられた状態では流動性を有するが、常温に保持されると直ぐに硬化するタイプ(常温硬化タイプとも言う)の材料である。このような造形用材料が採用される場合、供給部11において、熱可塑性樹脂は、熱で溶融され、極細のノズルから射出されることで保持部21上に積層される。なお、常温硬化タイプの造形用材料は、例えば、100〜300℃程度まで加熱されることで、流動性を有する状態となる。
ここで、例えば、造形用材料として熱可塑性樹脂が採用される場合、供給部11が、ワイヤー状の熱可塑性樹脂(樹脂ワイヤーとも言う)がリールに巻かれたユニットを保持する手段と、樹脂ワイヤーを熱溶融させるためのヘッドにチューブ等の内側を通して該樹脂ワイヤーを安定的に供給する手段と、樹脂ワイヤーを吐出ヘッドに押し出すために樹脂ワイヤーをギア等で駆動させる手段とを備える構成が考えられる。そして、熱可塑性樹脂をそれぞれ吐出する複数のヘッドを備えたユニットを備え、立体造形物の断面データに基づく該ユニットの1回の移動において、複数本の樹脂ワイヤーの駆動が個別に制御されつつ、熱可塑性樹脂が広い幅で積層される構成が考えられる。このような構成によれば、造形用材料の積層に要する時間の短縮が図られ得る。
なお、ヘッド部30の2次元的な走査態様は、図2で示されるようなヘッド部30の走査態様に限られない。例えば、制御部10が断面データに基づいて造形用材料が積層される領域を判断し、造形用材料が積層されない領域に対応するヘッド部30の走査量を減少させる走査態様が考えられる。この場合、ヘッド部30の走査量の減少によって、積層時間の短縮が図られ得る。
また、造形用材料は、樹脂だけに限られない。例えば、立体造形物の強度を上昇させたい場合には、樹脂に各種材料が混合された造形用材料が採用されても良い。例えば、樹脂に混合される材料が、金属粉等の無機材料であれば、立体造形物の硬さが上昇し得る。また、例えば、樹脂に混合される材料が、ファイバー状の繊維であれば、立体造形物の靱性が上昇し得る。ここで、ファイバー状の繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維を含む樹脂繊維、ナノセルロースファイバー等を含む植物由来の繊維等が含まれ得る。
成形部12は、3Dデータに基づき、供給部11によって積層された造形用材料の複数の層によって構成される積層体LP1の端部T1(図3)に接触することなく、該端部T1を成形する。成形部12による端部T1の成形方法には、例えば、成形部12によって造形用材料の層が形成された際に積層体LP1の端部T1に形成される段差部SP1の凸部Pp1(図3)を減少あるいは消滅させる成形方法、および該段差部SP1の凹部D1(図3)を埋める成形方法がある。そして、凸部Pp1を減少あるいは消滅させる成形方法には、主に2タイプの成形方法(第1,2成形方法)があり、凹部D1を埋める成型方法には、主に1タイプの成形方法(第3成形方法)がある。
硬化部13は、供給部11によって積層される各層を硬化させる。ここで、硬化部13は、各層を硬化させるためのエネルギーを各層に付与する部分(エネルギー付与部とも言う)である。例えば、造形用材料が紫外線硬化性樹脂(UV硬化樹脂)である場合には、硬化部13は、造形用材料によって構成される層に紫外線を照射する。また、例えば、造形用材料が熱硬化性樹脂である場合には、硬化部13は、造形用材料によって構成される層に熱を付与する。なお、例えば、造形用材料が、常温硬化タイプの材料である場合には、硬化部13は省略されても良い。また、造形用材料として、マイクロ波または電子ビーム等を吸収し易い成分を含んだ材料を混合させたものが採用されれば、例えば、エネルギー付与部として、積層された造形用材料の各層に対してマイクロ波または電子ビーム等を照射して、各層を硬化させる構成が採用されても良い。
色付与部14は、成形部12によって積層体LP1の端部T1が成形された後に、積層体LP1の表面に着色する。これにより、良好な寸法精度と表面品質とを有する色彩を有する立体造形物3D1が迅速に造形され得る。色付与部14は、例えば、インクジェット方式等によって、着色用の材料(着色用材料とも言う)としてのインクを吐出することで、積層体LP1の表面を着色する。
ところで、供給部11において造形用材料を吐出する吐出口、および色付与部14において着色用材料を吐出する吐出口等と言った材料を吐出する吐出口では、材料の凝固等によって目詰まりを起こす虞がある。そこで、材料を吐出する吐出口の目詰まりを防止する防止部が設けられても良い。これにより、例えば、積層体LP1を形成する工程の間、着色のための吐出口をインクの硬化から保護することで、安定した着色が実現され得る。
例えば、造形用材料がUV硬化樹脂であり、着色用材料が紫外光の照射に応じて硬化するUVインキである場合は、造形用材料が積層される工程において、色付与部14の吐出口を覆うように、紫外光を遮光する遮光部材が非接触で配置される態様が考えられる。このとき、積層される造形用材料の各層に硬化部13から照射される紫外光が、色付与部14の吐出口に照射されず、色付与部14の吐出口の目詰まりが防止される。ここで、防止部の具体例としては、図1で示されるように、ヘッド部30に対して、回転軸14pを中心として回動自在に設けられた遮光板14s等が考えられる。この場合、遮光板14sの回動によって、色付与部14の吐出口の前面に遮光板14sが配置された状態と、色付与部14の吐出口の前面から遮光板14sが退避された状態との間で切り換えられる。また、防止部としての遮光板14sが、回動ではなく平行移動等によるスライドによって、吐出口の前面に配置された状態と、該吐出口の前面から退避された状態との間で切り換えられる態様が採用されても良い。
また、例えば、着色用材料が、色料が溶剤中に溶解および分散したインク、ならびに水溶性のインク等である場合は、例えば、色付与部14の吐出口の前面に、防止部としての非接触の密閉カバーが配置されたり、内部に溶剤や水蒸気を供給する手段が設けられたカバーが配置されたりしても良い。なお、色付与部14の吐出口から着色用材料が吐出される際には、例えば、これらのカバーが着色用材料の吐出に支障がない位置まで自動的に移動される機構を有していれば良い。
また、ヘッド部30から造形用材料および着色用材料等の各種材料をそれぞれ吐出する吐出口のクリーニングを行う部分(浄化部とも言う)C100が設けられても良い。これにより、例えば、造形用材料あるいは着色用材料を吐出する吐出口を、材料の吐出前にクリーニングしておくことで、目詰まりによる材料の吐出不良および吐出口付近に飛散した不要な材料の造形物への落下を減らすことにより、立体造形物の品質が安定され得る。
例えば、浄化部C100において、吐出口に対し、材料の吐出によるクリーニング(吐出クリーニングとも言う)、ワイプ材によるクリーニング(ワイプクリーニングとも言う)、およびスプレーによるクリーニング(スプレークリーニングとも言う)のうちの少なくとも1つのクリーニングを行う態様が考えられる。
吐出クリーニングについては、例えば、吐出口の前面に漏斗付きの廃液タンクを配置し、吐出口からの吐出される材料を漏斗で受けて、該材料を廃液タンクに貯留する態様が考えられる。ワイプクリーニングについては、例えば、布、紙および不織布等で構成されるワイプ材によって吐出口が拭われる態様が考えられる。なお、ワイプ材は、乾燥していても良いし、洗浄液で湿らされていても良い。スプレークリーニングについては、吐出口から吐出される材料に応じた洗浄液がミストおよびベーパー等の少なくとも1つの状態で吐出口に吹き付けられる態様が考えられる。なお、スプレークリーニングについては、スプレークリーニングが施された後に、例えば、ワイプクリーニングが施されることで、スプレークリーニング後に洗浄液が吐出口に付着している状態が解消され得る。
上記構成を有する立体造形装置2では、次のステップA,Bが順次に行われる工程が繰り返し行われる。これにより、例えば、順次に積層される各層の厚さが増しても、立体造形物3D1の製造速度を向上させても、非接触で積層体LP1の端部T1が成形されるため、立体造形物3D1の良好な寸法精度および表面品質と製造速度の向上とが両立し得る。
[ステップA]供給部11によって、造形用材料が供給されることで、造形用材料によって形成される層が順次に積層される(供給ステップとも言う)。
[ステップB]成形部12によって、供給ステップにおいて積層された造形用材料の複数の層によって構成される積層体LP1の端部T1に接触することなく、該端部T1が成形される(成形ステップとも言う)。該成形ステップでは、例えば、供給ステップにおいて積層される各層における上部の外周部に形成されている凸部Pp1の少なくとも一部が崩されることで積層体LP1の端部T1が成形される。この場合、立体造形物3D1の表面上における多数の段差部SP1が目立たなくなる。このため、立体造形物3D1の表面品質の向上が図られ得る。
ところで、通常の供給ステップでは、ヘッド部30の二次元的な走査が複数回行われることで、造形用材料が繰り返し供給される。これに対し、色付与部14による積層体LP1の着色は、例えば、複数の層からなる数ミリ程度の厚さの積層体LP1に対して行われる。このため、造形用材料の積層に要する時間は、着色に要する時間より長くなってしまう。そこで、供給部11と色付与部14とが、一体的に移動するヘッド部30に搭載されずに、別々に移動可能なヘッド部に搭載されれば、供給部11を搭載したヘッド部の軽量化による走査速度の向上が図られ得る。そして、その結果、造形用材料の積層に要する時間が短縮され得る。なお、このような構成が採用される場合には、供給部11が搭載されたヘッド部と、色付与部14が搭載されたヘッド部とが、移動時に相互に干渉しないように、少なくとも一方のヘッド部が適宜上下方向に移動するように構成されれば良い。
また、段差部SP1のうちの成形部12によって成形される領域(成形領域とも言う)については、例えば、造形のもととなる3Dデータに基づき、手動および自動の何れか1つ以上の方法で作成される。このとき、立体造形物の目的に応じて、段差部SP1を部分的に残したい場合は、該段差部SP1のうちの選択的に成形しない領域を示すデータ(領域データとも言う)が作成されても良い。
<(2)成形部による成形方法>
<(2−1)第1成形方法>
第1成形方法は、例えば、造形用材料が、紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂等と言ったエネルギーの付与に応じて硬化する材料である場合に、風圧、音波および熱の何れか1つ以上の手段の組み合わせによって、段差部SP1の凸部Pp1を減少または変形させる方法である。
ここで、凸部Pp1は、供給部11によって積層される各層の上部の外周部に形成される。そして、成形部12によって凸部Pp1の少なくとも一部が崩されることで、積層体LP1の端部T1が成形される。これにより、立体造形物3D1の表面上における多数の段差部SP1が目立たなくなる。このため、立体造形物3D1の表面品質の向上が図られ得る。
図3から図5は、成形部12における第1成形方法について模式的に示す図である。
図3には、積層体LP1が供給部11によって形成された状態が示されている。積層体LP1は、立体造形物3D1を成す複数の層のうちの一部の層に対応するものであり、例えば、数層あるいは数層〜10層程度が積層されたものである。図3では、積層体LP1が造形用材料の複数の層L1,L2によって構成されている例が示されている。そして、この状態では、例えば、積層体LP1の外周部(端部T1)に、積層体LP1の2つの層L1,L2の境界部分の近傍に凹部D1を含む段差部SP1が形成されている。そして、積層体LP1の各層L1,L2の上部(+Z側の部分)の外周部に、凸部Pp1が形成されている。
図4には、成形部12によって凸部Pp1が崩される直前の積層体LP1の一例が模式的に示されている。図5には、成形部12によって凸部Pp1の少なくとも一部が崩された後の積層体LP1の一例が模式的に示されている。具体的には、図5には、積層体LP1の端部T1が成形されることで、該端部T1が、層L1の斜面部Sf1および層L2の斜面部Sf2で構成される成形後の斜面部Sf0となる様子が示されている。なお、図5には、崩される前の凸部Pp1の外縁が二点鎖線で描かれている。
第1成形方法が採用される場合、供給部11によって形成される各層の凸部Pp1が成形部12によって崩された後に、該各層が硬化部13によって硬化される。つまり、硬化前に、各層の凸部Pp1が崩される。このため、段差部SP1を減少あるいは消滅させた後に、例えば、発光ダイオード(LED)等で構成される紫外線(UV)ランプまたは赤外線(IR)ランプあるいはヒーター等の安価な構成によって、積層体LP1を一括して硬化させることができる。その結果、立体造形物3D1の良好な寸法精度および表面品質の向上が容易に実現され得る。
<(2−1−1)風圧(気体の吹き付け)による成形>
図4および図5で示されるように、成形部12が、例えば、凸部Pp1に気体を吹き付けることで風圧によって凸部Pp1の少なくとも一部を崩す部分(気体供給部とも言う)12nを有する構成が採用され得る。この場合、気体の局所的な吹きつけに応じて、凸部Pp1に外力が作用し、非接触で凸部Pp1の少なくとも一部が容易に崩される。これにより、立体造形物3D1の寸法精度および表面品質が更に向上し得る。ここで使用され得る気体としては、例えば、空気および不活性ガス等が挙げられる。凸部Pp1のうちの気体が吹き付けられる領域としては、例えば、凸部Pp1の+Z側の上面部分における選択的な領域(選択的領域とも言う)Ar1が採用され得る。選択的領域Ar1は、例えば、積層体LP1を構成する各層の上面側の部分(層上部とも言う)と、該層上部の水平方向に位置する周囲の空間との境界部分を成す。換言すれば、選択的領域Ar1は、層上部の端部およびその近傍の部分に位置する。
また、供給部11によって形成された各層の凸部Pp1の少なくとも一部が成形部12によって崩される前に、該各層の上部における凸部Pp1以外の少なくとも該凸部Pp1の近傍の部分(予備硬化対象部とも言う)FL1(図6)が硬化部13によって硬化されても良い。ここでは、例えば、予備硬化対象部FL1に対して、紫外線または赤外線等の光の照射あるいは熱等の付与が選択的に行われる。
このような構成が採用される場合、図6で示されるように、凸部Pp1の上面部分における選択的領域Ar1に気体が吹き付けられる際に、各層における選択的領域Ar1以外の領域の形状が崩れ難い。つまり、各層において、気体の吹きつけによって崩される部分と、崩されない部分との境界部分の形状が安定する。このため、積層体LP1の端部T1における必要以上の成形が抑制され、立体造形物3D1の寸法精度および表面品質が更に向上し得る。
なお、例えば、造形用材料がゲル状等の高粘度のものであれば、予備硬化対象部FL1の選択的な硬化が施されなくても、気体が吹き付けによって各層における選択的領域Ar1以外の領域の形状が崩され難い。ここでは、例えば、1層毎に予備硬化対象部FL1が硬化され、数層が積層される毎に、気体の吹き付けによって、凸部Pp1の少なくとも一部が崩される態様が考えられる。
ここで、予備硬化対象部FL1に光または熱を選択的に照射するために、硬化部13が、積層体LP1の全体を硬化させる部分と予備硬化対象部FL1を硬化させる部分とを、共通の構成で実現する態様、あるいは別の構成で実現する態様の何れが採用されても良い。そして、硬化部13に、例えば、微小なミラーが1次元的あるいは2次元的に配列されたもの(例えば、DMD:Digital Micromirror Device等)が配置された構成が採用され得る。また、硬化部13に、微小な回折格子が1次元的または2次元的に配列されたもの(例えば、GLV[登録商標]:Grating Light Value)が配置される構成が採用されても良い。また、例えば、ガルバノミラー等で光線を偏向させる構成が採用されても良いし、結晶構造を有する光学素子に対する電圧の印加に応じて該光学素子の屈折率が変化することで光線が偏向される構成が採用されても良い。
ところで、成形部12の気体供給部12nから供給される気体が選択的領域Ar1に付与する圧力および該圧力の分布は、例えば、凸部Pp1のうちの崩される領域の大きさ、形状および粘度等に合わせて調整される。なお、ここで、例えば、造形用材料が熱硬化性の材料でない場合には、気体供給部12nから供給される気体の温度が、積層体LP1の端部T1を構成している造形用材料の表面温度よりも高ければ、造形用材料の粘度が低下して、凸部Pp1が崩れ易くなる。つまり、成形部12による積層体LP1の端部T1の成形が容易となり得る。
図7は、気体供給部12nの一構成例を示す図である。気体供給部12nとしては、例えば、1次元的あるいは2次元的に配列された複数の気体供給管N1〜N5を有する構造が採用され得る。気体供給管N1〜N5は、例えば、気体を供給するパイプ状の構成を有する。図7には、長手方向(Z方向)が略平行となるようにY方向に一列に配列された5本の気体供給管N1〜N5を有する気体供給部12nが例示されている。該気体供給部12nでは、各気体供給管N1〜N5からの気体の吐出の有無あるいは気体の吐出量が制御され得る。例えば、各気体供給管N1〜N5に気体が供給され、各気体供給管N1〜N5に設けられた流量制御部VL1によって、各気体供給管N1〜N5の吐出孔から吐出される気体の有無あるいは気体の吐出量がそれぞれ制御され得る。ここで、流量制御部VL1のタイプとしては、例えば、ソレノイドまたはピエゾ素子による駆動力に応じて開閉するタイプ、あるいは吐出孔以外の領域に気体を逃がすタイプが挙げられる。
図8は、図7で示された気体供給部12nから供給される気体の圧力分布の一例を示す図である。図8では、気体の圧力の高低を示す曲線が、太い実線で示されている。また、図8では、曲線が下方向(本願明細書では−Z方向)にある程、圧力が高く、逆に曲線が上方向(本願明細書では+Z方向に)にある程、圧力が小さい状態が示す。図8で示される圧力分布は、気体供給管N1〜N5からそれぞれ吐出される気体の圧力が直接的に反映されたものとなっており、位置によって圧力が連続的ではなく急激変化している。
また、図9は、気体供給部12nの複数の気体供給管N1〜N5の吐出孔に対して1つの気体混合部SN1が設けられている態様を例示する図である。図10は、気体混合部SN1の一構成例を示す断面図である。気体混合部SN1は、例えば、複数の気体供給管N1〜N5が配列されるY方向に延びるスリット状の空間が−Z方向に延在し、−Z側の下端部にスリット状の開口部を有する。このような気体混合部SN1の存在により、各気体供給管N1〜N5から吐出される気体が、気体混合部SN1内である程度混合される。これにより、各気体供給管N1〜N5から吐出される気体の圧力分布が連続的に変化するようになる。
図11は、図9で示された気体供給部12nから供給される気体の圧力分布の一例を示す図である。図11では、図8と同様に、気体の圧力の高低を示す曲線が、太い実線で示されており、曲線が下方向(本願明細書では−Z方向)にある程、圧力が高く、逆に曲線が上方向(本願明細書では+Z方向に)にある程、圧力が小さい状態を示す。図11で示される圧力分布は、気体供給管N1〜N5からそれぞれ吐出される気体の圧力が気体混合部SN1である程度混合されたものとなっており、位置によって圧力が連続的に変化している。
図12は、各気体供給管N1〜N5における流量制御の一態様を示す図である。ここでは、気体供給管N1を例にとって説明する。気体供給管N1は、上流部En1から下流部Ex1に至る内部空間Sc1に設けられた流量制御部VL1を有している。流量制御部VL1は、1つの弁座部S1と複数の弁体部St1〜St3とを備えている。弁座部S1は、気体供給管N1の内壁に設けられ、±Z方向に貫通する複数の貫通孔H1〜H3を有している。複数の弁体部St1〜St3は、複数の貫通孔H1〜H3の上流側に配置され、±Z方向に移動することで、複数の貫通孔H1〜H3をそれぞれ開閉する。
このような構成を有する気体供給管N1では、複数の貫通孔H1〜H3の開閉によって、気体の流量が制御される。これにより、気体供給管N1から吐出される気体の圧力が調整され得る。また、上流部En1および下流部Ex1に気体の圧力を計測する圧力計測部Pr1,Pr2がそれぞれ設けられ、各貫通孔H1〜H3の開閉時間が調整されることで、気体供給管N1における気体の流量が調整されても良い。なお、図12で示される気体供給管N1の内部空間Sc1には、弁座部S1の下流側に、複数の貫通孔H1〜H3から吐出される気体の圧力が均一化されるチャンバー部CB1が設けられている。
図13は、各気体供給管N1〜N5における流量制御の他の一態様を示す図である。ここでも、気体供給管N1を例にとって説明する。図13で示される気体供給管N1は、図12で示された気体供給管N1がベースとされて、流量制御部VL1の構造が変更されたものである。ここでは、流量制御部VL1は、1つの弁座部S2と1つの弁体部St4とを備えている。弁座部S2は、気体供給管N1の内壁に設けられ、±Z方向に貫通する1つの貫通孔H4を有している。弁体部St4は、貫通孔H4の上流側に配置され、±Z方向に移動することで、貫通孔H4の上流側における開口の面積を調整する。
このような構成を有する気体供給管N1では、貫通孔H4の上流側における開口の面積が調整されることで、気体の流量が制御され、気体供給管N1から吐出される気体の圧力が調整され得る。また、上流部En1および下流部Ex1に気体の圧力を計測する圧力計測部Pr1,Pr2がそれぞれ設けられ、貫通孔H4の上流側における開口の面積が調整されることで、気体供給管N1における気体の流量が調整されても良い。
ところで、図14で示されるように、例えば、気体供給部12nが、供給部11によって積層される各層の上面に対して傾斜する方向(傾斜方向とも言う)から凸部Pp1に気体を吹き付ける構成が採用されても良い。ここでは、気体供給部12nが上部から下部にかけて凸部Pp1の水平方向の外縁側に傾斜される態様が採用され得る。換言すれば、気体供給部12nから気体が吐出される方向が凸部Pp1の少なくとも一部を崩したい方向に近づくように、気体供給部12nが傾斜される態様が考えられる。これにより、各層の上面に沿った方向において各層の凸部Pp1およびその近傍の部分における造形用材料の流動性が高められる。このため、非接触で凸部Pp1の少なくとも一部が容易に崩され得る。なお、積層体LP1においては、実際は種々異なる方向に凸部Pp1が突出している。このため、気体供給部12nにおいて傾斜方向が変更可能である態様、あるいは傾斜方向が異なる複数の気体供給部12nが存在する態様が考えられる。
なお、気体供給部12nからの気体の吐出の有無は、瞬間的に切り替えることが難しい場合が多いと考えられる。この場合、例えば、崩す対象としての凸部Pp1の選択的領域Ar1以外の部分には、気体供給部12nから吐出される気体の圧力が極力小さくなるように制御される態様が採用される。
<(2−1−2)音波の照射による成形>
図4および図5で示されるように、成形部12が、例えば、凸部Pp1に音波を照射することで凸部Pp1の少なくとも一部を崩す音波照射部12sを有する構成が採用され得る。つまり、気体供給部12nの代わりに音波照射部12sが採用されても良い。この場合、音波の局所的な照射に応じて、凸部Pp1の選択的領域Ar1に波が生じ、非接触で凸部Pp1の少なくとも一部が容易に崩される。このため、立体造形物3D1の寸法精度および表面品質が更に向上し得る。ここでは、例えば、凸部Pp1の+Z側の上面部分における選択的領域Ar1に音波が照射される。
上述した選択的領域Ar1に気体を吹き付ける構成では、積層体LP1の窪んだ部分の選択的領域Ar1に気体が吹き付けられると、気体の流れが淀んでしまい、凸部Pp1を適切に崩すことが容易でないケースが考えられる。これに対して、選択的領域Ar1に音波が照射される構成では、積層体LP1の窪んだ部分に存在する凸部Pp1も適切に崩すことが容易に可能である。なお、例えば、成形部12が、気体供給部12nおよび音波照射部12sの両方を有し、崩す対象としての凸部Pp1が存在する位置に応じて、音波の照射と気体の吹き付けとが選択的に行われても良い。
また、音波照射部12sによって、崩す対象としての凸部Pp1が存在する位置に応じて、照射される音波の波長が変更される態様が考えられる。これにより、凸部Pp1を崩したい程度に応じて、適切な波長の音波が採用され得る。また、積層体LP1のうちの選択的領域Ar1以外の部分に音波が照射されないように、例えば、音波照射部12sにおいて、必要以外の音波の広がりを抑制するために、逆相の音波の放射によって音波を打ち消し合う構成が採用されても良い。これにより、音波を選択的領域Ar1に対して局所的に照射することが可能となる。このとき、マイク等の音を感知するセンサー(音感センサーとも言う)によって音波を検知して、その検知結果に応じて、逆相の音波が設定される構成が採用されても良い。このようなフィードバック制御の代わりに、シミュレーションで得られた結果に基づいて、音波の打ち消し合い等が行われる構成が採用されても良い。
また、音波照射部12sが複数の音源を有しており、複数の音源から発せられる音波が重なり合う特定の部分(特定部分とも言う)で、音波の強度が強められる態様が採用されても良い。また、広い波長領域の音波が存在する場合、音感センサーによって周波数毎に音波を検出し、周波数毎に音波を相殺することで、音波の周波数毎の強度が調整される構成が採用されても良い。
図15は、音波照射部12sの一構成例を模式的に示す図である。図15で示されるように、例えば、音波照射部12sが、筒状体(ホーンとも言う)Hr1〜Hr3および音源Sp1〜Sp3を有している。筒状体Hr1〜Hr3は、一端が閉じており、該一端から他端に向けて内部空間が徐々に狭くなり、他端に開口部IJ1〜IJ3が存在している構成を有している。音源Sp1〜Sp3は、筒状体Hr1〜Hr3の一端側にそれぞれ設けられている。そして、音源Sp1〜Sp3から発せられる音波が、筒状体Hr1〜Hr3における他端の開口部IJ1〜IJ3から射出され得る。この場合、開口部IJ1〜IJ3が微小であれば、音波が微小な選択的領域Ar1に容易に照射され得る。
なお、上記筒状体Hr1〜Hr3のそれぞれの間に、隣の筒状体Hr1〜Hr3および音源Sp1〜Sp3による振動を吸収する素材(防振材とも言う)Ab1が配されていれば、選択的領域Ar1に照射される音波にノイズが混じり難い。その結果、音波の照射による凸部Pp1の崩れが適切に調整され得る。ここで、防振材Ab1としては、例えば、αゲルおよびウレタン等が挙げられる。また、ここで、筒状体Hr1〜Hr3の形状が適正化されることで、開口部IJ1〜IJ3における音波の減衰が抑制される構成が採用されても良い。なお、例えば、音波照射部12sに、種々の波長の音波をそれぞれ発生させるマルチチャンネル型の小型スピーカーユニットが採用されれば、波長毎に音波の強度が適切に調整され得る。
<(2−1−3)熱の付与による成形>
図4および図5で示されるように、成形部12が、例えば、凸部Pp1への熱の付与によって凸部Pp1の流動性を高めることで、該凸部Pp1の少なくとも一部を崩す熱付与部12hを有する構成が採用され得る。つまり、気体供給部12nおよび音波照射部12sの代わりに熱付与部12hが採用されても良い。
このような構成では、造形用材料が熱硬化性の材料でなければ、造形用材料の粘度が局所的に低減され、液体の表面が平滑になろうとする機能(レベリング機能とも言う)によって、凸部Pp1の少なくとも一部が崩れる。その結果、非接触で凸部Pp1の少なくとも一部が容易に崩されるため、立体造形物3D1の寸法精度および表面品質が更に向上し得る。
ここでは、例えば、凸部Pp1の+Z側の上面部分における選択的領域Ar1に熱付与部12hによって熱が付与される。具体的には、例えば、赤外線レーザーあるいは発光ダイオード(LED)等によって選択的領域Ar1に光が照射されることで、選択的領域Ar1に熱が付与される。ここでは、例えば、GLV等の光学素子が用いられることで、選択的領域Ar1上に光が局所的に照射され得る。
なお、例えば、成形部12が、気体供給部12n、音波照射部12sおよび熱付与部12hの何れか1つ以上の部分を有し、気体供給部12n、音波照射部12sおよび熱付与部12hのうちの少なくとも1つあるいは1つ以上の組み合わせによって、凸部Pp1の少なくとも一部が崩される態様が考えられる。
ここで、予備硬化対象部FL1の硬化によって、積層体LP1の端部T1における必要以上の成形が抑制される態様の代わりに、例えば、次のような成形の態様が採用されても良い。凸部Pp1の選択的な細かい領域に、赤外線レーザーまたはLEDからの赤外光等が光学的な手段によって照射されて熱エネルギーが付与されることで、積層体LP1のうちの気体の吹き付けおよび音波の照射が施される広い領域のうちの細かい領域が精度良く崩され得る。この場合、例えば、ある程度の幅を持ったスリット状の開口部から気体を射出することで、積層体LP1に気体が吹き付けられつつ、積層体LP1の表面のうちの吹き付けられる気体の圧力が高い領域に、選択的に熱エネルギーが付与される態様が考えられる。これにより、端部T1のうち、所望のパターンで、凸部Pp1が残された部分と、凸部の少なくとも一部が崩された部分とが形成され得る。
さらに、気体が吹き付けられた部分の周囲における気流の乱れを低減するために、積層体LP1に対する気体の吹き付けに応じて気体が拡がる部分に、気体が吸引される機構が設けられても良い。例えば、上方の斜め方向から積層体LP1に対して気体が吹き付けられ、積層体LP1の上面の法線(+Z方向)を挟む反対側で気体が吸引されつつ、凸部Pp1の選択的な細かい領域に、赤外線レーザーまたはLEDからの赤外光等の照射によって熱エネルギーが付与される構成が考えられる。また、例えば、断面データだけでなく、3Dデータに基づいて、形成したい立体造形物の形状に合わせて、気体を射出する開口部と、気体を吸引する吸引口部と、赤外光等の熱エネルギーを照射する照射ユニットとが、多関節のロボット等によって、3次元空間において自在に移動させることが可能な構成が採用されれば、積層体LP1を精度良く成形することが可能となる。
<(2−2)第2成形方法>
第2成形方法は、例えば、造形用材料が常温硬化タイプの材料である場合に、段差部SP1の凸部Pp1を熱溶融によって減少または消滅させる方法である。
この方法では、供給部11によって積層された各層が硬化することで1以上の硬化層が形成される。そして、成形部12によって、各硬化層の上部の外周部に形成されている凸部Pp1の少なくとも一部に熱が付与されることで、該凸部Pp1の少なくとも一部が溶融されて崩される。これにより、立体造形物3D1の表面上における多数の段差部SP1が目立たなくなる。このため、立体造形物3D1の表面品質の向上が図られ得る。また、例えば、造形用材料として供給後に直ぐに硬化する常温硬化タイプの材料が用いられることで、立体造形物3D1の製造速度が向上し得る。
ここでは、まず、図3で示されるように、常温硬化タイプの造形用材料が熱せられることで、流動性を有する状態とされ、極細のノズル等から射出されることで1以上の層が積層および硬化された1以上の硬化層が形成される。常温硬化タイプの造形用材料には、上述したように、例えば、ABS樹脂あるいはポリ乳酸(PLA)樹脂等といった熱可塑性樹脂が含まれ得る。
次に、図4および図5で示されるように、成形部12の熱付与部12hによって選択的領域Ar1に熱が付与されることで凸部Pp1の少なくとも一部が崩される。例えば、赤外線レーザーあるいは発光ダイオード(LED)等によって選択的領域Ar1に光が照射されることで、選択的領域Ar1に熱が付与される。ここで、熱付与部12hでは、選択的領域Ar1に対して局所的に熱を付与するために、例えば、微小なミラーが1次元的または2次元的に配列されたDMDが配置された構成が採用され得る。また、微小な回折格子が1次元的または2次元的に配列されたGLVが配置される構成が採用されても良い。また、例えば、ガルバノミラー等で光線を偏向させる構成が採用されても良いし、結晶構造を有する光学素子に対する電圧の印加に応じて該光学素子の屈折率が変化することで光線が偏向される構成が採用されても良い。
<(2−3)第3成形方法>
第3成形方法は、例えば、積層体LP1における段差部SP1の凹部D1を充填材料で埋める方法である。
この方法では、成形部12の充填用材料供給部12zによって、充填用材料が供給されて、供給部11によって積層された2以上の層の外周部に形成されている段差部SP1の凹部D1の少なくとも一部が充填用材料で埋められて積層体LP1の端部T1が整形される。これにより、例えば、段差部SP1の凹部D1が埋められることで、凹凸が減少あるいは消滅して凹部D1が目立たなくなる。このため、立体造形物3D1の表面品質の向上が図られ得る。
第3成形方法が採用される場合、例えば、供給部11によって形成された2以上の層が硬化部13によって硬化された後に、凹部D1の少なくとも一部が埋められる。なお、充填用材料が、2以上の層を成す造形用材料と同種の機能によって硬化するものであれば、硬化部13によって2以上の層が硬化される前に、凹部D1の少なくとも一部が埋められても良い。
図16は、段差部SP1の凹部D1に充填用材料B1が充填される一態様を示す図である。図16には、積層体LP1が造形用材料の複数の層L1〜L3によって構成され、上下に隣接する層L1〜L3の境界部分の近傍に凹部D1を含む段差部SP1が形成されており、該凹部D1が充填用材料で埋められている様子が示されている。図16で示されるように、例えば、充填用材料供給部12zから供給される充填用材料B1によって凹部D1が埋められて、凹凸が減少あるいは消滅して斜面部Sf0が形成される。
ここで、充填用材料供給部12zでは、例えば、インクジェット方式等の供給方法によって、造形用材料が液体または流体の状態で、凹部D1内の適切な位置に向けて吐出される。充填用材料B1としては、種々のものが採用可能であるが、積層体LP1を成す造形用材料と同様な材料であれば、段差部SP1をより目立たなくさせることが可能であり、例えば、樹脂等を主成分とするものが採用され得る。
また、充填用材料B1が、光を散乱させる材料(光散乱材料とも言う)であれば、段差部SP1が容易に目立たなくなるため、立体造形物3D1の表面品質の向上が容易に図られ得る。光散乱材料としては、例えば、光を散乱させるための小片が分散された透明な材料、および白色のインク等が採用され得る。小片としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素(シリカ)、樹脂(ポリマー)およびカルシウム等の光を散乱する粒子、ならびにガラス繊維、光ファイバーおよびパルプ等の光を散乱する繊維等が挙げられる。
なお、立体造形物3D1の表面上に白色のインクで下地の層が形成されれば、立体造形物3D1の表面が綺麗に着色され得る。この場合、色付与部14によって、着色の前のタイミングにおいて、積層体LP1のうちの着色の対象となる領域に白色層が形成される態様が考えられる。但し、白色のインクは高価であるため、光を散乱させるための小片が分散された透明な材料を凹部D1内に充填させた後に、白インクの薄い層が形成されれば、立体造形物3D1の製造コストの低減と表面の良好な着色とが実現され得る。
<(3)色付与部による色彩の付与>
色付与部14によって、成形部12によって形成された斜面部Sf0に色彩が付与される。
図17から図19は、斜面部Sf0に対する着色方法を説明するための図である。図17には、層L1〜L3の端部T1が成形されて、層L1の斜面部Sf1、層L2の斜面部Sf2および層L3の傾斜部Sf3で構成される斜面部Sf0が形成されている様子が示されている。ここで、例えば、図18で示されるように、斜面部Sf0上に、色付与部14によって白色のインクの層(白色インク層とも言う)WL1が形成される。そして、図19で示されるように、白色インク層WL1上に、種々のインクが塗布されて色彩を有する層(色彩層とも言う)CL1が形成される。
但し、上述したように、成形部12によって積層体LP1の端部T1が成形されることで形成された斜面部Sf0には、立体造形物3D1の造形のためにデータ作成装置1で生成された断面データに対応しない領域が存在する。このため、例えば、データ作成装置1において、図20の破線で示されるように、立体造形物3D1を構成する各層よりも薄くなるように、3Dデータ上で立体造形物が薄切りにされて複数の断面データが生成され、斜面部Sf0上の色彩データが得られる。例えば、各層の厚さである0.5mmよりも薄い0.05mmの厚さで、3Dデータ上において立体造形物が薄切りにされる態様が考えられる。これにより、立体造形物3D1を構成する複数層の上面間の領域についても色彩データが得られる。その結果、制御部10の制御に応じて、得られた色彩データに基づいて斜面部Sf0に対して適切な色彩が付与され得る。
ところで、色彩データに応じて単純に斜面部Sf0が着色されると、隣り合う着色領域間で重複する部分(重複部分とも言う)が生じ、該重複部分において必要以上に濃い色彩が付与されてしまう。そこで、図21で示されるように、隣り合う着色領域間で重複する重複部分については、予め色彩の濃度を低減することで、重複部分における適切な色彩の付与が実現され得る。
なお、図17から図20では、成形部12によって凸部Pp1の少なくとも一部が崩されて形成された斜面部Sf0に色彩が付与される態様を例示して説明したが、これに限られない。例えば、図22で示されるように、成形部12によって凹部D1が充填用材料B1によって埋められた上に、色付与部14によって、白色インク層WL1および色彩層CL1が順に積層されても良い。
<(4)まとめ>
以上のように、本実施形態に係る立体造形装置2では、供給部11によって造形用材料が供給されることで該造形用材料によって形成される層が順次に積層される。そして、ここで積層された造形用材料の複数の層によって構成される積層体LP1の端部T1に接触することなく、該端部T1が成形される。これにより、例えば、順次に積層される各層を厚くして製造速度を向上させても、非接触で積層体LP1の端部T1が成形される。このため、立体造形物3D1の良好な寸法精度および表面品質と製造速度の向上とが両立し得る。
<(5)変形例>
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記一実施形態では、保持部21上に直接的に造形用材料の層が積層されることで立体造形物3D1が形成されたが、これに限られない。例えば、保持部21A上に基材BM1が保持され、該基体BM1上に造形用材料によって構成される複数の層が積層されることで、基体BM1と該基体BM1上に形成された立体造形物3D1との複合体が形成されても良い。基材BM1としては、例えば、ポスター、地図およびシール等が挙げられる。これにより、例えば、一部の特定の図柄等が盛り上がったポスターまたは地図等が実現され得る。特定の図柄には、例えば、山等を示す図柄が含まれる。
図23は、一変形例に係る立体造形システム100Aの概略構成を示す図である。立体造形システム100Aは、一実施形態に係る立体造形システム100がベースとされて、立体造形装置2が立体造形装置2Aに変更されたものである。具体的には、立体造形装置2Aは、立体造形装置2がベースとされて、テーブル部20が構成の異なるテーブル部20Aに変更され、センサー部40が付加されたものである。
テーブル部20Aは、保持部21A、ロッド部22a,22bおよび駆動部23a,23bを備えている。
保持部21Aは、基材BM1を保持する部分(基材保持部とも言う)であり、例えば、上面が平滑なプレート状の部分である。保持部21Aにおける基材BM1の保持方法については、例えば、挟持部による挟持あるいは吸引孔による吸引等が考えられる。保持部21Aは、基材BM1を保持することで、基材BM1上に形成される積層体LP1および立体造形物3D1を間接的に保持する。ロッド部22a,22bは、駆動部23a,23bの駆動に応じて、保持部21Aを上下方向に移動させる。駆動部23a,23bは、ロッド部22a,22bを上下方向に移動させる部分である。本実施形態では、駆動部23a,23bによって保持部21Aが上下方向に移動されることで、保持部21A上に保持された基材BM1とヘッド部30との上下方向における相対的な位置が変更される。例えば、基材BM1上に造形用材料の層が形成される毎に、保持部21Aおよび基材BM1がヘッド部30Aから離れる方向に移動する。
そして、供給部11によって、基材BM1上に造形用材料が供給されることで、造形用材料によって形成される層が基材BM1上に順次に積層される。ここでは、上記一実施形態と同様に、成形部12によって非接触で積層体LP1の端部T1が成形されるため、基材BM1上に造形される立体造形物3D1について良好な寸法精度および表面品質と製造速度の向上とが両立し得る。また、立体造形物の形成後に湿式のエッチング等で立体造形物の表面品質を向上させる構成が考えられるが、この構成と比較して、本変形例に係る立体造形装置2Aが採用されれば、基材BM1の品質に大きな悪影響を及ぼさない。具体的には、例えば、基材BM1が紙製等の湿気に弱い材料で構成される場合であっても、上記一実施形態における成形部12による端部T1の成形によれば、基材BM1の品質が低下し難い。
センサー部40は、基材BM1上における立体造形物が造形される対象となる領域(造形対象領域とも言う)を特定するための情報を認識する部分(造形領域認識部とも言う)である。該センサー部40において基材BM1上における造形対象領域が認識されると、該センサー部40による認識結果に応じて、認識された造形対象領域上に造形用材料が供給部11によって供給される。これにより、造形用材料によって形成される層が造形対象領域上に順次に積層される。その結果、基材BM1上の所望の造形対象領域に良好な寸法精度と表面品質とを有する立体造形物3D1が迅速に造形され得る。
センサー部40は、例えば、デジタルカメラ等を搭載し、図24で示されるように、例えば、複数のマークMK1〜MK4が予め設けられた基材BM1の表面を撮影し、その撮影画像を対象とした画像処理によって、複数のマークMK1〜MK4の位置を認識する。このとき、複数のマークMK1〜MK4の位置が、仮想空間における3Dデータに係る断面データ上でも規定されていれば、実空間における造形対象領域LR1,LR2を特定するための情報としての座標情報等が認識され得る。なお、ここでは、センサー部40によって複数のマークMK1〜MK4の位置が認識されたが、これに限られない。例えば、センサー部40と制御部10との協働によって複数のマークMK1〜MK4の位置が認識されても良い。なお、図24では、十字状のマークMK1〜MK4が示されたが、これに限られず、マークMK1〜MK4は、例えば、バツ印(「×」)、丸印(「○」)、二重丸印(「◎」)および白抜きの十字印等の他の形態を有するものであっても良い。
また、造形対象領域LR1,LR2を特定するための情報は、例えば、2次元および3次元の領域を特定するための情報として認識され得る。具体的には、複数の角度から捉えられた2次元画像からの計算による認識、およびレーザースキャナによる認識等の少なくとも1以上の組み合わせによって、2次元および3次元の造形対象領域LR1,LR2の領域を特定するための情報が認識されれば、基材BM1が平面的であっても立体的であっても、所望の領域に対する造形用材料の積層および着色が可能となる。また、ここで、測定によって取得された2次元や3次元の領域を特定する情報(測定データとも言う)に基づき、既に造形された領域のうち、設計段階における2次元や3次元のデータ(設計データとも言う)と整合しない領域が存在していることが分かる場合がある。この場合は、設計データが造形物の測定データに合うように変形加工されることで、造形物に対する位置精度および形状精度がより高い着色が可能となる。
また、センサー部40によって、基材BM1上に既に描かれた図柄を捉えた撮影データと、3Dデータに係る断面データとが照合されることで、基材BM1上における造形対象領域LR1,LR2を特定するための情報が認識される態様が採用されても良い。
なお、本変形例では、例えば、基材BM1上において立体造形物3D1が形成されている領域(3次元領域とも言う)および該立体造形物3D1が形成されていない平面的な領域(2次元領域とも言う)の双方に色付与部14によって付与され得る。
また、上記一実施形態では、同一のヘッド部30に供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14が設けられていたが、これに限られない。供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14は、別々のヘッドに設けられても良いが、供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14のうちの2以上の出来るだけ多くの部分が同一のヘッド部30に搭載されていれば、装置の複雑化が抑制され得る。また、立体造形物3D1上への着色が不要である場合には、色付与部14が設けられていなくても良い。さらに、例えば、常温硬化タイプの造形用材料が採用される場合には、硬化部13は設けられていなくても良い。
また、上記一実施形態では、供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14が、1つの立体造形装置2に搭載されていたが、これに限られない。例えば、造形用材料を供給することで該造形用材料によって形成される層が順次に積層された積層体LP1の端部T1に接触することなく、該端部T1を成形する成形部12を少なくとも備える立体造形用の成形装置が採用されても良い。これにより、例えば、他の装置における積層体LP1の形成において、順次に積層される各層を厚くして製造速度を向上させても、非接触で積層体LP1の端部T1が成形される。このため、立体造形物の良好な寸法精度および表面品質と製造速度の向上とが両立し得る。また、例えば、供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14が2以上の装置に別々に搭載されていても良い。すなわち、立体造形システム100が、立体造形物を形成するための2以上の装置で構成されていても良い。
ところで、例えば、他の装置で着色された平面および立体造形物が形成された基材に対して、立体造形物の形成、および該立体造形物への着色が施される態様が考えられる。例えば、積層体LP1上における着色の対象となる領域(着色対象領域とも言う)を特定するための情報を認識する部分(着色領域認識部とも言う)が設けられれば良い。このとき、色付与部14によって、着色領域認識部による認識結果に応じて着色対象領域上に着色用材料が提供されることで、着色用材料によって構成される領域が形成され得る。これにより、立体造形装置2で形成された造形物にも、他の装置で形成された造形物にも、必要な着色対象領域に精度良く着色され得る。
具体的には、例えば、立体造形システム100の立体造形装置2において、基材BM1と、断面データおよび3Dデータとの位置合わせを行うための物理的な手段が設けられても良い。ここで、物理的な手段としては、例えば、ピン等が挙げられ、該物理的な手段の移動および当接によって、立体造形物の形成および着色の対象となる領域が認識される態様が考えられる。この場合、例えば、長時間を要する造形用材料が積層される工程が別装置で行われることで、造形ならびに着色までが行われた立体造形物の完成品を製造するための生産性が向上し得る。
ここで、例えば、携帯通信端末機器のカバー(端末カバーとも言う)等と言った立体物に対して、注文に応じて異なる立体の造形ならびに着色を行う場合を想定する。この場合、注文を管理する情報(注文管理情報とも言う)と、立体造形物の3Dデータおよび断面データならびに色彩データとが整合するように、情報を識別するためのFRタグ等と言った情報を識別するための素子(情報識別素子ても言う)を端末カバーの非印刷面に貼り付けておき、FRIDのリーダーによって情報識別素子から認識される情報に基づいて、立体造形および着色が行われる態様が考えられる。この態様によれば、情報識別素子を用いた情報の管理によって、作業ミスの低減が可能となり、立体造形物の形成および着色後の商品の識別ならびに管理が容易となる。
具体的には、例えば、一度に複数の端末カバーが並べられ、3Dデータおよび断面データに基づいて、異なった立体造形物の形成および着色が行われる場合に、以下のステップa〜eが順次に行われる態様が考えられる。
[ステップa]各端末カバーに立体の造形および着色に応じた情報識別素子が貼付される。
[ステップb]立体の造形および着色を行う立体造形装置に複数の携帯カバーが並べられた状態で固定される。このとき、携帯カバーの固定方法としては、例えば、治具および真空吸着等を用いた機械的な固定等が考えられる。
[ステップc]リーダーを介して制御部10によって、各端末カバーに貼付された情報識別素子から情報が認識されることで、立体造形物の3Dデータおよび断面データならびに色彩データが取得され、カメラやレーザースキャナ等によって、造形および着色の対象となる2次元領域および3次元領域が認識される。
[ステップd]ステップcで得られた情報から、造形用材料が積層される領域の情報、積層体の端部が成形される領域、積層体のうちの着色が行われる領域が算出され、造形および着色に係るデータが準備される。
[ステップe]ステップdで準備されたデータに基づいて、複数の携帯カバーが、一体の造形および着色の対象物として造形および着色が施されることで、造形および着色を行うためのヘッドの無駄な移動量が低減され、作業時間の短縮が図られ得る。
また、上記一実施形態では、立体造形物3D1を成す複数の層のうちの一部の層に対応する積層体LP1について、成形部12によって端部T1が成形されたが、これに限られない。例えば、立体造形物3D1を成す全ての層に対応する積層体LP1について、成形部12によって端部T1が成形する態様が採用されても良い。具体的には、常温硬化タイプの造形用材料が採用される場合には、立体造形物3D1に対応する積層体LP1が形成された後に成形部12によって端部T1が成形される態様が採用され得る。但し、立体造形物3D1を成す複数の層のうちの一部の層に対応する積層体LP1毎に端部T1が成形される態様が採用されれば、積層体LP1の高さ方向の凹凸に応じた成形部12の制御が容易となり得る。
また、上記一実施形態では、テーブル部20,20Aの保持部21,21Aが上下方向に移動することで、テーブル部20,20Aとヘッド部30との距離が調整されたが、これに限られない。例えば、テーブル部20,20Aが固定され、ヘッド部30が上下方向に移動しても良いし、テーブル部20,20Aとヘッド部30の双方が上下方向に移動しても良い。
また、上記一実施形態では、ヘッド部30が、保持部21の上方において2次元的に走査されたが、これに限られない。例えば、立体造形物3D1の幅が小さいか、あるいはヘッド部30において幅広く供給部11、成形部12、硬化部13および色付与部14が設けられている場合には、ヘッド部30が一方向にのみ走査される態様(一次元走査とも言う)が採用されても良い。
また、上記一実施形態に係る立体造形システム100および上記一変形例に係る立体造形システム100Aでは、造形用材料が硬化されることで、上方に行くに従って狭まっている形状(例えば、上に凸のテーパー状)を有する立体造形物が形成された。しかしながら、これに限られない。例えば、造形用材料が、立体造形物を構成するための第1造形用材料(モデル材とも言う)と、立体造形物の形成後に除去が可能な第2造形用材料(サポート材とも言う)とを含んでいても良い。この場合、モデル材の積層によって形成された積層体のうちの下方に行くに従って狭まっている形状(例えば、下に凸の逆テーパー状)の部分が、サポート材による下方から支持によって形成され得る。なお、サポート材は、例えば、立体造形物の形成後であって着色後に除去されるものであっても良い。
このような構成では、例えば、サポート材の積層によって該サポート材の積層体が形成され、該積層体の端部が成形された後に、サポート材で構成される積層体の間隙にモデル材が供給されることで、立体造形物が形成される態様が考えられる。このような態様が採用されても、逆テーパー状の部分を有する立体造形物の良好な寸法精度および表面品質と製造速度の向上とが両立し得る。
ここで、サポート材としては、例えば、水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等の除去可能な材料が採用され得る。サポート材を除去する手法としては、例えば、水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄等の動力洗浄および電磁波の照射等による溶解、あるいは熱膨張の差を利用した分離等の手法が採用され得る。
図25は、他の一変形例に係る立体造形システム100Bの概略的な構成を模式的に示す図である。立体造形システム100Bは、上記一変形例に係る立体造形システム100Aがベースとされて、立体造形装置2が立体造形装置2Bに変更されたものである。立体造形装置2Bは、上記一変形例に係るヘッド部30が、ヘッド部30Bに変更されたものであり、該ヘッド部30Bは、上記ヘッド部30のうちの供給部11が、第1供給部11aと第2供給部11bとを有する供給部11Bに変更されたものである。第1供給部11aは、モデル材を供給する。第2供給部11bは、サポート材を供給する。
図26から図35は、立体造形システム100Bによって逆テーパー状の部分を含む立体造形物が形成される工程を模式的に示す図である。
まず、図26で示されるように、第2供給部11bによって、サポート材が供給されることで該サポート材によって形成される層Ls1〜Ls3が1層以上積層される。このとき、サポート材によって形成される層が2層以上順次に積層されても良い。
次に、図27で示されるように、成形部12によって、第2供給部11bによって積層されたサポート材の複数の層によって構成される積層体LPs1の端部Ts1における段差部SPs1が、端部Ts1に接触されることなく成形される。ここでは、例えば、上記第1〜3成型方法が採用され得る。例えば、図26および図27には、段差部SPs1の凸部Pa1が崩されて、該端部Ts1が、層Ls1〜Ls3の斜面部Ss1〜Ss3で構成される成形後の斜面部Ss0となる様子が例示されている。
次に、図28で示されるように、サポート材で構成される積層体LPs1のうちの該積層体LPs1の間隙Rs0に面した表面上であって、立体造形物の表面が形成される領域のうちの着色が必要な選択的な領域に、着色用材料が色付与部14によって付与されることで、着色層CL1が形成される。
次に、図29で示されるように、立体造形物の表面において着色層CL1の発色が良好となるように、着色層CL1上に白色インクが塗布されて、白色層WL1が形成される。白色インクは、例えば、色付与部14によって形成され得る。つまり、色付与部14が、該付与部14による着色の後のタイミングにおいて、積層体LPs1上のうちの着色の対象となる領域に白色層WL1が形成される。
次に、図30で示されるように、積層体LPs1の間隙Rs0を埋めるように、第1供給部11aによってモデル材が供給されることで、モデル材の層L03,L02,L01が順次に積層された積層体LP0が形成される。
次に、図31で示されるように、モデル材の層L01の上に、第1供給部11aによってモデル材が供給されることで、モデル材の層L01の上にモデル材の層L1,L2,L3が積層された積層体LP1が形成される。
次に、図32で示されるように、成形部12によって、積層体LP1の端部T1が成形される。ここでは、上記第1〜3成形方法が採用され得る。
次に、図33で示されるように、積層体LP1の表面上に白インクが塗布されて、白色層WL1が形成される。白色インクは、例えば、色付与部14によって形成され得る。つまり、色付与部14が、該付与部14による着色の前のタイミングにおいて、積層体LP1上のうちの着色の対象となる領域に白色層WL1が形成される。
次に、図34で示されるように、積層体LP1上に形成された白色層WL1上に、着色用材料が色付与部14によって付与されることで、着色層CL1が形成される。
そして、図35で示されるように、サポート材からなる積層体LPs1が除去されることで、色付きの立体造形物3D1sの形成が完了される。これにより、逆テーパー状の部分まで滑らかな表面が形成され、さらに良好な着色が実現され得る。
なお、ここでは、色付与部14によって、該色付与部14による着色の前および後の両方のタイミングにおいて、積層体LPs1,LP1上のうちの着色の対象となる領域に白色層WL1が形成されたが、これに限られない。上記一実施形態のように、着色の前のタイミングにおいて、白色層WL1が形成されても良いし、逆テーパー状の部分のみに白色層WL1が形成される場合には、着色の後のタイミングにおいて白色層WL1が形成されても良い。すなわち、色付与部14によって、該色付与部14による着色の前および後の少なくとも一方のタイミングにおいて、積層体LPs1,LP1上のうちの着色の対象となる領域に白色層WL1が形成されても良い。これにより、彩度、明度、コントラスト等と言った色品質の高い着色領域が形成され得る。
また、上記一実施形態および各種変形例では、積層体LP1の端部T1の成形方法として、該端部T1に形成される段差部SP1の凸部Pp1を減少または消滅させる成形方法、ならびに該段差部SP1の凹部D1を埋める成形方法が採用されたが、これに限られない。端部T1の成形方法として、例えば、成形部12によって、端部T1が成形された後に、該端部T1に凹凸加工が施されても良い。これにより、端部T1が適宜変形され、成形後の端面T1における表面品質が調整され得る。ここで、凹凸加工は、凸部Pp1の減少または消滅あるいは凹部D1の埋没等によって形成された領域に、さらに凹部および凸部の少なくとも一方が形成される加工である。そして、凹凸加工としては、例えば、平滑な面に複数の凹部を規則的または不規則的に設ける加工、あるいは平滑面に革の表面のような模様を設ける加工等が採用され得る。
ここで、凹凸加工を実現するための方法について具体例を挙げて説明する。ここでは、気体の吹き付けとレーザー光の照射との組み合わせによって凹凸加工が実現される例を挙げて説明する。なお、例えば、積層体LP1を構成する造形用材料の融点が低い場合には、レーザー光の照射のみでも凹凸加工が実現され得る。
図36および図37は、一変形例に係る積層体LP1の端部T1の成形方法を説明するための図である。図36で示されるように、レーザーLz0から発せられるレーザー光が、素子Mr0によって積層体LP1の端部T1の所望の領域に対して照射される。ここで、レーザーLz0としては、例えば、赤外線のレーザー光を発するものが挙げられる。また、素子Mr0としては、例えば、DMD、GLV、結晶光学素子、ガルバノミラーおよびポリゴンミラー等が挙げられる。そして、このとき、所望の領域に、気体供給部Ai0のスリット状の開口から吐出される気体が吹き付けられる。これにより、一旦、端部T1の凸部Pp1が崩されて、図37で示されるように、層L1の斜面部Sf1、層L2の斜面部Sf2、および層L3の斜面部Sf3で構成される成形後の斜面部Sf0が形成される。ここで、吹き付けられる気体は、エアナイフ状の形態を有する。また、ここでは、端部T1の所望の領域にレーザー光が照射される時間あるいはレーザー光の強度が調整されることで、凸部Pp1が崩される量が調整され得る。その後、図37で示されるように、図36と同様な構成を有する装置によって、斜面部Sf0の所望の領域にレーザー光が照射されつつ、気体が吹き付けられることで、例えば、規則的あるいは不規則的に配された複数の穴部が形成される。
図38は、他の一変形例に係る積層体LP1の端部T1の成形方法を説明するための図である。ここでは、端部T1の凸部Pp1が崩される成形と、さらなる端部T1の変形とが略同時に行われる形態について説明する。図38で示されるように、レーザーLz0から発せられるレーザー光が、インテグレーターIg0によって、進行方向に垂直な断面がある程度の面積を有する平行光であるレーザー光(面レーザー光とも言う)に変換され、素子部Dm0によって積層体LP1の端部T1の所望の領域に対して照射される。また、該所望の領域に、気体供給部Ai0のスリット状の開口から吐出される気体が吹き付けられる。このとき、素子部Dm0の第1領域Dm1によってレーザー光が端部T1の所望の領域に照射されることで、端部T1の凸部Pp1が崩された直後に、素子部Dm0の第2領域Dm2によってレーザー光が端部T1の所望の領域に照射されることで、例えば、規則的あるいは不規則的に配された複数の穴部が形成される。なお、素子部Dm0としては、DMD等と言った2次元に複数の素子が配列されたもの、および2以上のガルバノミラーで構成されたもの等が採用され得る。
また、上記一実施形態では、単に造形用材料が積層されたが、これに限られない。例えば、造形用材料が積層される際に、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよび鉄等の金属を適宜含むような電磁波等に影響する材料の適切なパターンが、携帯通信端末機器のカバーの表面の最適化された領域に形成されても良い。これにより、携帯通信端末機器の装飾的な機能を有する部分の存在によって、電波を受け易くなる機能、あるいは電磁波の影響を抑制する機能を実現することが可能である。その結果、例えば、通信の安定性、あるいは医療機関の設備内等での使用の許容性等と言った各種性能が付与され得るため、携帯通信端末機器のカバーの価値が向上し得る。
また、上記一実施形態では、造形用材料として、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等が単純に採用されたが、これに限られない。例えば、硬化後の硬度に係る成分の比率が異なる複数種類の造形用材料が採用されても良い。具体的には、例えば、供給部11に、造形用材料の硬化後の硬度に係る該造形用材料の成分の比率を変更する部分(変更部とも言う)が更に含まれていれば、供給部11から複数種類の造形用材料の供給が可能となる。変更部では、例えば、複数種類の組成の材料を供給して混合することで造形用材料の成分の比率が変更され得る。このような構成が採用されれば、例えば、造形用材料の積層時または半硬化状態での積層後における選択的な領域において、例えば、単位面積あたりの硬化剤の量を網点のように変化させることで硬化剤を含む造形用材料の成分比率が変更され得る。このため、硬化後の硬度が異なる複数の材料が別々の供給部から供給されずとも、部分的に固さが異なる造形物が作成され得る。これにより、多数種類の材料および多数の供給部が準備されなくとも、硬度が異なる立体造形物が実現され得る。
また、上記一実施形態では、造形用材料として、例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等が採用されたが、これに限られない。例えば、立体造形物のうち、大まかな部分が熱可塑性樹脂によって形成され、細かい部分が紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成される態様も考えられる。なお、このとき、熱可塑性樹脂で形成される大まかな部分の段差部が紫外線硬化性の白色インク等で埋められる態様が採用され得る。この場合、例えば、材料コストが低い熱可塑性樹脂の使用により、立体造形物の製造コストが低減され得る。
また、上記一実施形態および各種変形例において、例えば、ヘッド部30,30Aが、該ヘッド部30,30Aと分離された別の駆動部によってワイヤーやベルト等を介して駆動されても良い。
なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。