JP6394404B2 - 鋼管の防食方法ならびに鋼管杭および鋼管矢板 - Google Patents

鋼管の防食方法ならびに鋼管杭および鋼管矢板 Download PDF

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Description

本発明は、鋼管の防食方法ならびに鋼管杭および鋼管矢板に関する。
屋外で長期間使用される鋼材は、厳しい腐食環境に曝されることがある。このような鋼材の例として、鋼管杭および鋼管矢板が挙げられる。鋼管杭は、例えば地中または海底に打ち込まれ、構造物の基礎として用いられる。鋼管矢板は、鋼管本体と鋼管本体の側面に設けられた継手とを有する。複数の鋼管矢板を継手同士で連結することにより、矢板壁が形成される。鋼管矢板は、矢板壁を形成するように地中に打ち込まれることにより、主に河川、海岸、および港湾の護岸に用いられる。
これらの鋼材は、打ち込まれる際に、例えば地中または海底の、土砂、泥または瓦礫と直接激しく接触するため、表面に傷がつきやすい。よって、鋼材の表面には、著しい腐食が発生しやすい。特に、地中は非常に過酷な腐食環境であるため、鋼材の腐食が著しく、鋼材の寿命も短くなる。
そのため、屋外で使用される鋼材については、長期間、効果が持続可能であり、かつ効果的な防食対策が望まれている。
鋼材の防食方法として、従来から、特許文献1に開示されるように、鋼材の表面にポリオレフィン、ポリウレタン等の樹脂から成る防食被膜を形成する方法が採用されている。また、特許文献2に開示されるように、防食被膜の形成に加えて、鋼材に電流を流す電気防食(カソード防食)を併用する方法も一般的に行われている。防食被膜の形成と電気防食とを併用することにより、鋼材表面の防食被膜が形成されていない部分においても、防食効果が得られる。
特開2002−60962号公報 特開2006−29065号公報
しかし、表面に防食被膜を形成した鋼材では、例えば鋼材を地中に打ち込む際に、防食被膜が土砂、泥または瓦礫と接触して剥離し、十分な防食効果が得られないことがある。
一方、電気防食を土壌中に配置された鋼材に適用する場合には、土壌の電気抵抗は非常に大きい、すなわち土壌の電気伝導性が非常に低いため、鋼材に大きな防食電流を流す必要がある。そのため、電気防食は、土壌中に配置される鋼材に対しては適切な防食方法とはいえない。しかも、鋼材を配置する地点の近隣に鉄道等に使用される通信設備が設置されている場合には、鋼管に流す防食電流により当該通信設備に障害が生じるおそれがある。また、鋼材を配置する地点の周辺に水道管、ガス管等の埋設管が配置されている場合には、防食電流に起因する迷走電流による腐食、いわゆる電食がこれらの埋設管に生じ、重大な被害が生じるおそれがある。さらに、電気防食では常に防食電流を供給するため、外部電源方式を採用した場合にはコストが非常にかかる。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、少なくとも一部が土壌中に埋設された鋼管について、周辺の施設に影響を及ぼすことなく十分な防食効果が得られる防食方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、鋼管と土壌とが接する部分において、土壌中の酸素濃度を減少させることにより鋼管の腐食を抑制できることを見出した。
本発明は、この知見に基づいてなされたものであり、下記の鋼管の防食方法、ならびに鋼管杭および鋼管矢板を要旨とする。
(1)上端開口が上方に向かって開口する一方、下端開口が土壌中に位置するように、少なくとも一部が土壌中に埋設された鋼管の防食方法であって、
前記上端開口から前記鋼管内に不活性ガスを吹き込むことにより、前記不活性ガスを前記鋼管内から前記土壌中に供給する鋼管の防食方法。
鋼管の上端開口から鋼管内に不活性ガスを吹き込んで、鋼管内から土壌中に不活性ガスを供給することにより、鋼管と土壌とが接する部分に不活性ガスを供給することができる。これにより、鋼管と土壌とが接する部分の酸素濃度を減少させることができ、鋼管の腐食を抑制することができる。また、鋼管に防食電流を流す必要がないため、周辺の施設に影響を及ぼすことがない。
(2)前記鋼管は、側面に、前記不活性ガスを前記鋼管内から前記土壌中に供給するための複数の貫通孔を有する上記(1)に記載の鋼管の防食方法。
鋼管の腐食を抑制したい部分に貫通孔を設けることにより、鋼管の上端開口から吹き込んだ不活性ガスを、当該腐食を抑制したい部分に集中的に供給することができる。これにより、効率よく鋼管の防食を図ることができる。
(3)前記貫通孔は、前記土壌中に存在する地下水よりも上方に位置するように前記鋼管に設けられている上記(2)に記載の鋼管の防食方法。
鋼管は、地下水よりも上方の部分の方が、土壌中の地下水に接する部分に比べて腐食しやすい。そのため、貫通孔を地下水よりも上方に設けることにより、鋼管の腐食しやすい部分に不活性ガスを集中的に供給することができる。これにより、効率よく鋼管の防食を図ることができる。
(4)上記(1)から(3)までのいずれか一つに記載の鋼管の防食方法によって防食される鋼管杭。
この鋼管杭は、上記の鋼管の防食方法で防食されるため、耐久性に優れる。
(5)鋼管からなる本体と、前記本体の側面上に設けられた継手とを備え、
前記鋼管からなる本体が、上記(1)から(3)までのいずれか一つに記載の鋼管の防食方法で防食される鋼管矢板。
この鋼管矢板は、本体が上記の鋼管の防食方法で防食されるため、耐久性に優れる。
本発明によれば、周辺の施設に影響を及ぼすことなく、土壌中に埋設された鋼管の防食が可能である。
図1は、側面に複数の貫通孔を有し、かつ本発明に係る防食方法が適用される鋼管杭の斜視図である。 図2は、側面に貫通孔を有さず、かつ本発明に係る防食方法が適用される鋼管杭の斜視図である。 図3は、側面における鋼管の軸線方向の2箇所にそれぞれ複数の貫通孔を有し、かつ本発明に係る防食方法が適用される鋼管杭の斜視図である。 図4は、本体に複数の貫通孔が設けられ、かつ本発明に係る防食方法の対象とされる鋼管矢板の斜視図である。 図5は、下端開口が地下水含有層中に位置するように鋼管杭が埋設された状態を模式的に示す図である。 図6は、下端開口が地下水含有層よりも上に位置するように鋼管杭が埋設された状態を模式的に示す図である。 図7は、鋼管杭が曝される土壌内の環境を説明するため、土壌中に鋼管杭を埋設した状態を模式的に示す図である。 図8は、試験装置の模式図であり、図7における領域AおよびBを模擬した状態を示す。 図9は、試験装置の模式図であり、図7における領域Cを模擬した状態を示す。 図10は、試験装置の模式図であり、図7における領域Dを模擬した状態を示す。 図11は、条件A、B、CおよびDでの鋼材の平均腐食深さの経時変化を示す図である。 図12は、条件A、B、CおよびDの平均腐食速度を示す図である。 図13は、条件E、F、GおよびHでの平均腐食深さの経時変化を示す図である。
本発明に係る鋼管の防食方法が適用される鋼管には、例えば鋼管杭および鋼管矢板が含まれる。以下で、鋼管杭および鋼管矢板の構成について説明する。
〈鋼管杭の構成〉
鋼管杭1は、上端開口1aと下端開口1bとを有する鋼管からなる。鋼管杭1は、側面に複数の貫通孔1cを有する。本実施形態では貫通孔1cは8個設けられている。ただし、貫通孔1cの数は8個に限られない。
詳しくは後述するように、鋼管杭1には、鋼管杭1が土壌中に打ち込まれた状態で、上端開口1aから内部に不活性ガスが吹き込まれる。鋼管杭1の内部に吹き込まれた不活性ガスは、少なくとも複数の貫通孔1cから土壌に供給される。
複数の貫通孔1cは、鋼管杭1の軸線方向の同じ位置に周方向に等間隔に設けられている。これにより、不活性ガスを土壌中に均等に供給し、鋼管杭1の側面全体で均等に腐食を抑制することができる。
各貫通孔1cは、鋼管杭1が土壌に打ち込まれた際に、地下水よりも上方に位置するように鋼管杭1の側面に設けられている。これにより、地下水に接する部分に比べて腐食しやすい、地下水よりも上方の部分に不活性ガスを集中的に供給することができる。なお、貫通孔1cは、鋼管杭1において、腐食を防止したい位置に設けるのが好ましい。こうすることで、鋼管杭1の腐食を効果的に防止できる。
なお、鋼管杭は、図2に示すように、側面に貫通孔が形成されていない構成であってもよい。この場合、鋼管杭101の上端開口101aから吹き込まれた不活性ガスは、下端開口101bから土壌に供給される。
また、図3に示すように、複数の貫通孔201cが、鋼管杭201の軸線方向の異なる位置(図3の例では2箇所)に設けられていてもよい。複数の貫通孔を、図1に示すように鋼管杭1の同じ高さ位置に設けた場合、その高さ位置において鋼管杭の強度が低下する。そのため、鋼管杭の強度を確保する必要がある場合には、複数の貫通孔を、複数の高さ位置に分配して配置するのが好ましい。しかも、鋼管杭201の軸線方向の異なる位置に貫通孔201cを設けることにより、土壌中の広範囲に不活性ガスを供給することができる。
図3の例についてさらに詳しく説明すると、貫通孔201cを設ける鋼管杭201の軸線方向の位置は、一点鎖線で示す位置Xおよび位置Yの2箇所であり、貫通孔201cは、各位置に4個ずつ設けられている。図3中の位置Xに設けられた貫通孔201cは、鋼管杭201の側面の周方向において、位置Yに設けられた貫通孔201c同士の中間に位置している。なお、貫通孔201cを設ける鋼管杭201の軸線方向の位置は2箇所に限らず、各位置に設ける貫通孔201cの個数は4個に限らない。貫通孔201cを設ける鋼管杭201の軸線方向の位置を2箇所以上とする場合、各位置に設ける貫通孔201cの個数は、3個または4個が好ましい。
〈鋼管矢板の構成〉
鋼管矢板30は、図4に示すように、鋼管からなる本体31と本体31の側面上に配置された一対の継手32とを備える。本体31は、上端開口31aと下端開口31bとを有する鋼管からなる。本体31は、側面に複数の貫通孔31cを有する。鋼管矢板30の貫通孔31cの配置は、鋼管杭1の貫通孔1cと同様である。なお、鋼管矢板30は、本体31の側面に貫通孔のないものであってもよいし、本体31の軸線方向の異なる位置に貫通孔31cを設けたものであってもよい。
各継手32は、長手方向に切れ目32aが設けられた鋼管からなる。一対の継手32は、本体31に対して並列に、且つ本体31を挟むように配置されている。すなわち、一対の継手32は、それらの軸線方向が本体31の軸線方向と同じ方向になるように配置されている。また、一対の継手32は、本体31に対して溶接によって固定されている。
鋼管矢板30は、複数の鋼管矢板30の継手32同士を連結することにより矢板壁を構成する。
〈鋼管の防食方法〉
次に、本発明の実施形態に係る鋼管の防食方法を説明する。以下では、図5を参照して、鋼管杭1の場合の防食方法について説明する。図5は、図1に示す鋼管杭1を、上端開口1aが地表2aから露出し、且つ下端開口1bが地下水含有層3中に位置するように土壌中に打ち込んだ状態を示す。
ここで、地下水とは、土壌中において土壌粒子同士の間隙が水で占められている領域内に含まれる水をいう。また、土壌中において、土壌粒子同士の間隙が水で占められている領域の土壌と該土壌中に含まれる水とを合わせて「地下水含有層」という。そのため、「地下水よりも上方」とは、「地下水含有層よりも上方」であることを意味する。なお、土壌中において、地下水が含まれていない層は「地下水非含有層」という。図5は、地下水非含有層2は、地下水含有層3の上部に位置する状態を示す。
図5に示す状態で、図示しないガス供給装置を用いて、鋼管杭1の上端開口1aから鋼管杭1内にチューブ等を介して不活性ガス4を吹き込む。この際、上端開口1aにおいて不活性ガスを吹き込む部分以外を密閉し、上端開口1aから不活性ガス4が漏れないようにすることが好ましい。このように鋼管杭1の上端開口1aから鋼管杭1内に不活性ガス4を吹き込むことにより、鋼管杭1の側面に形成された貫通孔1cから地下水非含有層2中に不活性ガス4が供給されるとともに、下端開口1bからも地下水含有層3を介して地下水含有層3の上部の地下水非含有層2中に不活性ガス4が供給される(図5中の実線矢印参照)。
貫通孔1cから地下水非含有層2中に供給された不活性ガス4は、地下水非含有層2中を鋼管杭1の外側面に接しながら拡散する。一方、下端開口1bから地下水含有層3中に供給された不活性ガス4は、地下水含有層3中を鋼管杭1の外側面に接しながら上昇するとともに、地下水含有層3の上部の地下水非含有層2中も鋼管杭1の外側面に接しながら上昇して、広範囲に拡散する。
このように、貫通孔1cおよび下端開口1bから土壌の地下水非含有層2中に不活性ガス4を供給することにより、鋼管杭1と土壌とが接する部分の酸素濃度を減少させて、鋼管杭1の腐食を抑制することができる。
また、鋼管杭1において、腐食を抑制したい部分に貫通孔1cを設けることにより、腐食を抑制したい部分に集中的に不活性ガス4を供給することができる。そのため、貫通孔を有しない鋼管杭1を使用した場合と比べて鋼管杭1の腐食を効果的に抑制することができる。
さらに、貫通孔1cを、地下水含有層3よりも上方に位置するように設けることにより、地下水含有層3よりも腐食が進行しやすい、地下水含有層3よりも上方の地下水非含有層2において、鋼管杭1の腐食を効果的に抑制できる。
以上、本発明の鋼管の防食方法を、鋼管杭に適用する場合について説明したが、鋼管矢板についても同様に適用できる。図4に示す鋼管矢板30に本発明の鋼管の防食方法を適用する場合、本体31の上端開口31aから本体31内に不活性ガスを吹き込み、下端開口31bおよび貫通孔31cから不活性ガスを土壌中に供給する。鋼管矢板30の本体31の貫通孔31cおよび下端開口31bから土壌中に供給された不活性ガスは、継手32の周辺にも拡散するため、本体31だけでなく継手32の腐食も抑制することができる。
なお、図5では、不活性ガス4を、貫通孔1cおよび下端開口1bから土壌中に供給している状態を示しているが、上端開口1aに対する不活性ガス4の吹き込み圧力を調整することによって、土壌中への不活性ガス4の供給経路を貫通孔1cのみとすることができる。例えば、地下水含有層3中に不活性ガス4を供給しない場合には、上端開口1aに対する不活性ガス4の吹き込み圧力を所定値よりも下げて、貫通孔1cのみから不活性ガス4を供給すればよい。これにより、鋼管杭1の腐食を防止したい位置に適切に不活性ガス4を供給することができ、腐食を効果的に抑制することができる。
不活性ガス4としては、窒素ガスまたはアルゴンガスを使用することができる。これらの他にも、ヘリウムガス、ネオンガス等の希ガスを使用することができる。不活性ガス4は、鋼管杭1に対して常時供給する必要はなく、断続的に供給すればよい。不活性ガス4を断続的に供給する場合、一定の周期で供給することが好ましい。
図2に示すように、側面に貫通孔を有しない鋼管杭101の場合には、上端開口101aに供給された不活性ガス4は、鋼管杭101の下端開口101bから、地下水含有層3を介して地下水非含有層2中に供給される。
また、図3に示すように鋼管杭の軸線方向の異なる位置に貫通孔201cを有する鋼管杭201の場合には、上端開口201aに供給された不活性ガス4は、下端開口201bから地下水含有層3を介して土壌中に供給されるとともに、貫通孔201cから土壌中の広範囲に供給される。
なお、図6に示すように、鋼管杭1の下端開口1bが地下水含有層3中に位置しない場合には、鋼管杭1の上端開口1aから鋼管杭1内に不活性ガス4を吹き込むことにより、貫通孔1cおよび下端開口1bから土壌中に不活性ガス4が供給される。
〈腐食試験〉
1.試験の概要
本発明者らは、土壌中に埋設された鋼管杭が曝される環境を模擬した棒鋼の腐食促進試験を室内で行った。腐食試験は第1腐食試験および第2腐食試験の2つを行った。
ここで、鋼管杭が曝される土壌中の環境について説明する。図7は、土壌中に鋼管杭を埋設した状態を模式的に示す図である。図7では、鋼管杭1は、上端開口1a側が地表2aから露出している以外は、土壌中に埋設されており、下端開口1bは土壌中の地下水含有層3中に位置している。土壌中において、地下水含有層3の上部の層は、地下水が含まれていない層(地下水非含有層2)である。土壌中における代表的な環境として、図7に示すように、地表側からA、B、CおよびDの4つの領域の環境が挙げられる。
領域Aは、地下水非含有層2のうち、地表2aの近傍に位置する領域である。領域Aは、地表2aからの酸素供給量が比較的多く、土壌の含水比が領域Bに比べて少ない環境である。領域Bは、地下水非含有層2のうち、地表2aと地下水含有層3との中間に位置する領域である。領域Bは、地表2aからの酸素供給量は比較的多く、土壌の含水比は領域Aに比べて多いが領域Cに比べて少ない環境である。領域Cは、地下水含有層3のうち、地下水非含有層2との境界部分に位置する領域である。領域Cは、地表2aからの酸素供給量は領域Dよりも多いが領域Aおよび領域Bと比べて少なく、土壌の含水比は飽和している環境である。領域Dは、地下水含有層3において領域Cよりも下方に位置する領域である。領域Dは、地表2aからの酸素供給量がほとんどなく、土壌の含水比が飽和している環境である。
2.第1腐食試験
2−1.試験条件
第1腐食試験では、領域A、B、CおよびDの腐食環境を模擬することとした。試験条件について図8、9および10を参照して説明する。以下では、領域A、B、CおよびDを模擬した状態の試験条件を、それぞれ条件A、B、CおよびDという。
この試験では、恒温恒湿槽11、および恒温恒湿槽11内に配置した土槽12を用いた。土槽12は、ゴム栓14aが着脱可能な孔13aと通気孔13bが設けられた蓋13を有する。以下の土槽12および土壌15の準備は窒素雰囲気のグローブボックス内で行い、準備完了後、土槽12を恒温恒湿槽11内に配置した。
図8に示す試験では、条件AおよびBを模擬するように、土槽12内には日本国内で採取した天然の土壌15を入れた。土壌15の含水比は、条件Aでは5%、条件Bでは25%とし、試験中は恒温恒湿槽11により一定に保った。条件Aおよび条件Bの土壌15は、所定量の乾燥土壌と水とを混合し、攪拌することにより得た。土壌の含水比は、下記(1)式で定義される。
R=W/S×100 …(1)
ただし、R:含水比(%)、W:土壌中の水分の重量(g)、S:乾燥状態の土壌の重量(g)である。
図9に示す試験では条件Cを、図10に示す試験では条件Dをそれぞれ模擬した。図9および図10に示すように、土槽12内に土壌15を入れ、さらに水位が土壌15の表面よりも高い位置となるように水16を入れた。すなわち、条件CおよびDでの土壌15の水分の飽和度は100%であり、含水比に換算すると60%であった。
試験片は、JIS G 3101(2004)で規定される一般構造用圧延鋼材(SS400)の棒鋼17とした。棒鋼17は、直径10mm、長さ50mmであり、接続棒18を介してゴム栓14aに接続される構成とした。
条件A、B、CおよびDのいずれにおいても、土槽12の開口部を孔13aおよび通気孔13bが開いた状態の蓋13で閉じた。続いて棒鋼17を蓋13に設けられた孔13aから挿入し、土壌15中に埋没させた後、通気孔13bをゴム栓14a(図8および9ではゴム栓14aは図示していない。)で閉じた。これにより、土槽12の内部を窒素雰囲気で密閉した。ゴム栓14a、14bは、それぞれ孔13a、通気孔13bの周縁部に固定した。各条件とも、土壌15中に埋没させた棒鋼17は3本とした。
以上の作業の後、土槽12を恒温恒湿槽11内に配置した。条件A、BおよびCでは、土槽12を恒温恒湿槽11内に配置した後、ゴム栓を外して通気孔13bを開放し、この時点を試験開始時点とした。また、条件Dでは、土槽12を恒温恒湿槽11内に配置した時点を試験開始時点とし、その後も通気孔13bは閉じたままとした。恒温恒湿槽11は、条件A、BおよびCでは内部に空気を吹き込むことにより、条件Dでは内部に窒素ガスを吹き込むことにより、それぞれ恒温恒湿状態を維持し、いずれも内部の温度は40℃とした。条件A、B、CおよびDの試験条件を表1にまとめた。
試験開始後21日、92日および184日に、条件A、B、CおよびDの土槽12から棒鋼17を取り出し、腐食生成物を除去した後に各棒鋼17の重量を測定した。測定した各棒鋼17の重量と、試験開始前にあらかじめ測定した各棒鋼17の重量とから重量減少量を算出し、平均腐食深さを算出した。平均腐食深さd(mm)は、重量減少量ΔW(g)と、試験開始前に測定した棒鋼17の表面積S(mm)と、棒鋼17の密度ρ(g/cm)とから下記(2)式を用いて算出した。
d=10×ΔW/(ρ×S) …(2)
2−2.試験結果
図11は、条件A、B、CおよびDでの平均腐食深さの経時変化を示す図である。図12は、条件A、B、CおよびDの平均腐食速度を示す図である。平均腐食速度とは、平均腐食深さ(mm)を曝露期間(年)で割った値である。1年は365日とした。図11および図12には、条件A、B、CおよびDのデータに加えて、一般土での鋼の腐食深さおよび腐食速度についてのデータ(図11および図12中の「一般土」)も示した。一般土での腐食速度は、一般に鋼管杭の設計指針として用いられている値(0.02mm/年)を用いた(一般社団法人 鋼管杭・鋼矢板技術協会編、「鋼管杭−その設計と施工−」、第12版、一般社団法人 鋼管杭・鋼矢板技術協会、2009年、p.549)。また、一般土での腐食深さは、この腐食速度の値から算出した。第1腐食試験で使用した土壌は、一般土よりもpHが小さいため、条件を揃えた場合、一般土よりも第1腐食試験で使用した土壌の方が鋼材の腐食量は大きくなると考えられる。
図11および図12から分かるように、地下水位よりも上部を模擬した条件AおよびBでは一般土よりも腐食深さおよび腐食速度が大きく、地下水位以下の部分を模擬した条件CおよびDでは一般土と同程度の腐食速度であった。また、条件Aでは、試験開始後21日では一般土よりも腐食深さおよび腐食速度が大きかったものの、腐食速度は大気中での腐食と同様に経時的に減少した。条件Bでは、試験開始後21日における腐食深さおよび腐食速度が条件Aよりも大きく、この傾向は試験開始後92日および184日においても同様であった。
3.第2腐食試験
本発明者らは、以上の第1腐食試験の結果から、最も腐食速度の大きい含水比が25%の条件で腐食を抑制できれば、含水比が25%以外の条件でも腐食を抑制できると考えた。そこで、含水比が25%の条件での腐食量について検討するため、以下の第2腐食試験を行った。第2腐食試験では、図8に示す第1腐食試験に用いた試験装置と同様の試験装置を4つ用いた。各試験装置ではそれぞれ異なる試験条件とした。これらの試験条件を、それぞれ条件E、F、GおよびHという。
3−1.試験条件
第2腐食試験でも、第1腐食試験と同様に、土槽12および土壌15の準備は窒素雰囲気のグローブボックス内で行った。また、土壌15中に棒鋼17を埋没させ、土槽12を恒温恒湿槽11内に配置するまでの条件も第1腐食試験と同様とし、恒温恒湿槽11内で通気孔13bを開放した時点を試験開始時点とした。条件E、F、GおよびHは、いずれも土槽12内に入れる土壌15の含水比は25%とし、試験中は恒温恒湿槽11により一定に保った。
第2腐食試験では、各条件で恒温恒湿槽11内部の雰囲気中の酸素濃度および窒素濃度を調整し、これにより土槽12の上部の空間の酸素濃度を変化させた。条件Eでは、土槽12の上部の空間および恒温恒湿槽11内部は大気雰囲気とした。土槽12の上部の空間および恒温恒湿槽11内部の雰囲気中の酸素濃度は、大気雰囲気である条件Eが最も高く、次いで条件F、条件Gの順で低くなり、条件Hが最も低かった。恒温恒湿槽11内部の温度は40℃に保持した。
試験開始後21日、92日および184日に、土槽12から棒鋼17を取り出し、腐食生成物を除去した後に各棒鋼17の重量減少量を測定し、平均腐食深さを算出した。図13は、条件E、F、GおよびHでの平均腐食深さの経時変化を示す図である。図13から、いずれの条件ともほぼ一定の腐食速度で腐食が進行していることが分かる。また、土槽の上部の空間および恒温恒湿槽内部の雰囲気中の酸素濃度が低いほど平均腐食深さが小さいことが分かる。すなわち、第2腐食試験の結果から、土壌の含水比が25%であっても、雰囲気中の酸素濃度を減少させることにより鋼材の腐食を抑制でき、酸素濃度が小さいほど鋼材の腐食が抑制されることが分かる。
以上の第1腐食試験および第2腐食試験の結果より、土壌中において、鋼管と土壌とが接する部分における雰囲気を不活性ガス雰囲気とし、雰囲気中の酸素濃度を減少させることが、効果的な鋼管の防食方法であることが分かる。
本発明による鋼管の防食方法は、電気防食では周辺の施設に影響を及ぼす可能性がある場所に埋設される鋼管に利用可能である。
1 鋼管杭
1a 上端開口
1b 下端開口
1c 貫通孔
2a 地表
3 地下水含有層
4 不活性ガス
15 土壌
16 水
30 鋼管矢板
31 本体
31a 上端開口
31b 下端開口
31c 貫通孔
32 継手

Claims (3)

  1. 上端開口が上方に向かって開口する一方、下端開口が土壌中に位置するように、少なくとも一部が土壌中に埋設された鋼管の防食方法であって、
    前記上端開口から前記鋼管内に不活性ガスを吹き込むことにより、前記不活性ガスを前記鋼管内から前記土壌中に供給する鋼管の防食方法。
  2. 前記鋼管は、側面に、前記不活性ガスを前記鋼管内から前記土壌中に供給するための複数の貫通孔を有する請求項1に記載の鋼管の防食方法。
  3. 前記貫通孔は、前記土壌中に存在する地下水よりも上方に位置するように前記鋼管に設けられている請求項2に記載の鋼管の防食方法。
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