以下、本発明に係るコネクタにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における「基端」は、穿刺針を保持する保持孔側方向を指し、「先端」は、穿刺針の鋭敏な穿刺側(導出孔の出口側)方向を指すものとする。
図1は、第1実施形態に係るコネクタ100の概略断面斜視図である。このコネクタ100は、針保持体102と、管体104とを有し、針保持体102に対して管体104が連結又は着脱される。
針保持体102は、図2に示すように、穿刺針106を保持した針保持部材110を有する。針保持部材110は、第1流路112が形成された中空体であり、略円筒形状をなす。第1流路112の基端には、直径方向内方に陥没するような形状の環状凹部114が形成されている。この環状凹部114には、C字型ストッパ部材116が装着される。
また、針保持体102の先端側は閉塞壁で閉塞されており、穿刺針106は、この閉塞壁に貫通形成された針保持孔118に堅牢に挿入されている。勿論、穿刺針106の軸方向に沿って貫通する導出孔は、第1流路112に連通する。さらに、閉塞壁の先端側端面には、環状凸部120が先端側に向かって突出形成されている。
図1〜図3に示すように、穿刺針106の軸線L1は、針保持部材110の軸線L2から偏倚した位置に設定される。すなわち、穿刺針106は、針保持部材110の軸線L2上に位置していない。また、穿刺針106は、前記環状凸部120の内側に配置される。
針保持部材110の外側壁において、閉塞壁の近傍には、5個の第1カム部122が直径方向外方に若干突出するように、且つ幅広に設けられる(図3参照)。第1カム部122の上端面は、一方の端部が基端側に向かって陥没し、且つ他方の端部が先端側に向かって隆起するように湾曲している。すなわち、第1カム部122の標高は漸次的に変化する。第1カム部122の陥没した一方の端部は、隆起した他方の端部に臨む。
針保持部材110の等径且つ長尺な胴部には、カム部材124が胴部に沿って変位可能に装着される。カム部材124には環状段部が形成されており、該環状段部内には、前記第1カム部122に当接する第2カム部126が設けられている。第2カム部126の上端面も第1カム部122と同様に、一方の端部が基端側に向かって陥没し、且つ他方の端部が先端側に向かって隆起するように湾曲している。第2カム部126の陥没した一方の端部は、隆起した他方の端部に臨む。
さらに、カム部材124の先端側端面には、先端側に指向する複数個の係合ピン128が突出形成されている。これら係合ピン128は、先端キャップ130の基端側端面に設けられた有底の係合穴132に係合する。
前記先端キャップ130は、図4に示すように、基端側が開口し且つ先端側に先端壁が設けられて略円筒形状をなす中空体からなる。該先端キャップ130の内壁には、先端側から基端側に指向して延在し、その途中が終端部である5本の柱状部134が形成されている。このため、隣接する柱状部134、134同士の間にカム溝136が形成される。柱状部134が5本であることから、カム溝136の個数は5本である。第1カム部122、第2カム部126及びカム溝136により、回転機構が構成される。
針保持体102に対して管体104が連結されていない状態(図2参照)においては、第1カム部122とカム溝136の位相は一致していない。このため、第1カム部122の上端面の一部が先端キャップ130の基端側端面に当接する。従って、先端キャップ130が針保持部材110に対して相対的に基端側に後退することはない。
また、先端キャップ130の外壁には、2本の係合突起140が形成される。
先端キャップ130の先端壁には、係止孔142が貫通形成される。この係止孔142には、先端キャップ130の内部に挿入されたゴム製蛇腹体144の先端に設けられた被係止部146が堅牢に挿入される。これにより、ゴム製蛇腹体144が先端キャップ130に保持される。ゴム製蛇腹体144は、穿刺針106を覆って保護する。
ここで、ゴム製蛇腹体144は、基端側が開口した中空体からなる。該ゴム製蛇腹体144内には、基端側から前記環状凸部120が挿入される。環状凸部120の外壁がゴム製蛇腹体144の内壁に当接することにより、ゴム製蛇腹体144が位置ズレを起こすことが回避されている。
針保持部材110の胴部、カム部材124及び先端キャップ130は、略円筒形状をなすカバー部材150内に収容される。勿論、針保持部材110に保持された穿刺針106と、先端キャップ130内に挿入されたゴム製蛇腹体144も併せてカバー部材150内に収容される。
カバー部材150の基端側には、基端壁が設けられる。該基端壁には挿通孔152が貫通形成されており、該挿通孔152から、針保持部材110の基端側端部が露出している。そして、露出した環状凹部114に装着された前記C字型ストッパ部材116が、基端壁の外壁に当接する。これにより、針保持部材110がカバー部材150内に過度に進入することが防止される。
カバー部材150の内壁には、2本の摺動溝154が軸方向に沿って延在するように形成されている。摺動溝154の各々には、先端キャップ130の前記係合突起140が摺動可能に係合している。また、カバー部材150には、先端側から基端側に向かい、その軸線方向略中腹部まで延在する2個のガイド孔156が形成される。ガイド孔156は、カバー部材150の側壁の一部を円弧状に、内壁から外壁に至るまで切り欠いたような形状をなす。このため、先端キャップ130の一部はガイド孔156内で露呈している。
一方、管体104は、図1及び図5に示すように、第2流路160が形成された円筒部材162と、この円筒部材162の基端側端部に外嵌された押圧部材164とを有する。円筒部材162の外壁に周回形成された環状係合部166が、押圧部材164の内壁に形成された環状被係合部168に係合することにより、円筒部材162からの押圧部材164の抜け止めがなされている。
押圧部材164には、直径方向外方に向かって突出した2個の円弧状突部170が設けられている(図5参照)。管体104が針保持体102に連結されるとき、円弧状突部170は、前記ガイド孔156(図1及び図2参照)に進入する。
押圧部材164と円筒部材162との間には、ゴム製の弁体172が介在する。換言すれば、弁体172は、押圧部材164と円筒部材162とで挟持され、これにより、管体104内で位置決め固定されるとともに、第2流路160を閉塞している。
弁体172の幅狭な基端側突起は、管体104の閉塞壁に形成された挿入孔174に挿入される。すなわち、弁体172の一部は、挿入孔174内で露呈している。
このように構成されるコネクタ100において、針保持体102を管体104に連結し、その後に引き抜く一連の動作につき説明する。
連結される前の針保持体102では、カム部材124が針保持体102の先端側に位置し(図2参照)、その第2カム部126が、針保持体102の第1カム部122に当接する。また、先端キャップ130がカバー部材150内の先端部側端部に位置するとともに、ゴム製蛇腹体144が穿刺針106を覆っている。
この状態の針保持体102に対し、管体104を連結する。すなわち、管体104を構成する押圧部材164の基端側端面を先端キャップ130の先端側端面に当接させ、さらに、管体104を針保持体102側に押圧する。その結果、管体104が相対的に基端側に前進する。このとき、押圧部材164の外壁に形成された円弧状突部170が、カバー部材150のガイド孔156に挿入される。従って、管体104は、ガイド孔156に案内されながら変位する。
管体104が前進することに伴い、該管体104が当接した先端キャップ130が押圧されて基端側に後退する(図1参照)。この際、先端キャップ130の係合突起140が、該係合突起140が係合した摺動溝154内を摺動する。これにより、先端キャップ130が案内されながら変位する。
先端キャップ130が基端側に後退すると、これに追従してカム部材124も基端側に後退する。カム部材124が、係合ピン128及び係合穴132を介して先端キャップ130に連結されているからである。従って、第1カム部122が第2カム部126の拘束から解放される。その一方で、針保持部材110は変位しない。換言すれば、針保持体102は、先端キャップ130及びカム部材124に対して相対的に先端側に変位することになる。
ここで、先端キャップ130の平坦な基端側端面に当接した第1カム部122の上端面は、上記したように湾曲形成されている。従って、この相対的変位の際、第1カム部122の、先端キャップ130の基端側端面に対する当接部位が、標高が高い他方の端部側から、標高が低い一方の端部側に向かって漸次的に変化する。このように、第1カム部122上で先端キャップ130の基端側端面に対する当接部位が変化することに伴い、針保持部材110が若干回転する。
針保持部材110の軸線L2と、穿刺針106の軸線L1とが一致していないので、穿刺針106は、軸線L2を中心として周回するように回動する。さらに、第1カム部122と、先端キャップ130の内壁に形成されたカム溝136との位相が合致し、第1カム部122がカム溝136に進入する。
先端キャップ130が基端側に後退することに伴い、ゴム製蛇腹体144が圧縮される。従って、穿刺針106の先端は、ゴム製蛇腹体144の被係止部146を貫通して突出する。被係止部146から突出した先端は、押圧部材164の挿入孔174に露呈した弁体172に穿刺される。
管体104がさらに押し込まれると、穿刺針106の先端が弁体172を貫通し、円筒部材162に形成された第2流路160内に露出する。これにより、針保持体102を構成する針保持部材110の第1流路112と、管体104を構成する円筒部材162の第2流路160とが、穿刺針106の導出孔を介して連通する。
針保持部材110及び円筒部材162の各々には、図示しないチューブが接続される。従って、例えば、第1容器から、チューブ、コネクタ100内の第1流路112、導出孔及び第2流路160、チューブを介して、第2容器に薬剤を移液することが可能となる。又は、第1容器から患者に薬剤を投与するようにしてもよい。
移液又は投与が終了した後、管体104を針保持部材110から引き抜く。これにより、穿刺針106が弁体172から離脱する。この際にも、円弧状突部170がガイド孔156に沿って変位することによって管体104が案内される。
管体104が後退すると、ゴム製蛇腹体144が、自身の弾性によって伸張する。この伸張に追従し、先端キャップ130が、摺動溝154に対する係合突起140の係合によって案内されながら先端側に前進するとともに、該先端キャップ130に連結されたカム部材124が先端側に前進する。また、穿刺針106がゴム製蛇腹体144の被係止部146から離脱する。
先端キャップ130が先端側に前進することに伴い、第1カム部122がカム溝136から離脱する。従って、第1カム部122がカム溝136の拘束から解放される。その一方で、第1カム部122に対し、カム部材124の第2カム部126が当接する。
第2カム部126の上端面は、第1カム部122の上端面と同様に形成されている。従って、上記と同様の理由から、針保持部材110が若干回転する。針保持部材110の軸線L2と、穿刺針106の軸線L1とが一致していないので、穿刺針106は、軸線L2を中心として周回するように回動する。
針保持体102に対して管体104を再連結するときには、上記に準じた動作が営まれる。従って、初回の穿刺時と次回の穿刺時において、弁体172に対する穿刺針106の貫通位置が相違する。すなわち、穿刺針106を弁体172に穿刺する度に、貫通位置を相違させることができる。これにより、弁体172に傷が生じることを回避することができる。
このため、薬剤が傷内に残留することや、薬剤が漏洩することを回避することもできる。しかも、コアリングが発生し難くなる。
次に、第2実施形態に係るコネクタ200につき、図6〜図8を参照して説明する。なお、図1〜図5に示される構成要素に対応する構成要素には、基本的には同一の名称を付し、その詳細な説明を省略する。
図6は、針保持体202に対して管体204が連結されたコネクタ200の概略断面斜視図であり、図7は、該コネクタ200を構成する針保持体202の概略断面斜視図である。針保持体202は、穿刺針206を保持した針保持部材208と、該針保持部材208を保持した回転板210(回転機構)とを有する。
略円盤形状をなす回転板210の中心には、その厚み方向に沿って貫通孔212が形成される。また、回転板210の外壁には、該外壁を周回するように、頂面が平坦面であるギザ部214が形成されている。
針保持部材208は、第1流路216が形成された中空体からなり、その基端側端部は、回転板210に形成された前記貫通孔212に堅牢に挿入されている。従って、針保持部材208は、回転板210が回転動作することに追従して回転動作する。穿刺針206の導出孔が第1流路216に連通することは勿論である。
針保持孔217に保持された穿刺針206の軸線L1は、針保持部材208の軸線L2から偏倚した位置に設定される。すなわち、穿刺針206は、針保持部材208の軸線L2上に位置していない。また、穿刺針206は、針保持部材208の環状凸部218の内側に配置される。
針保持部材208の先端側には、穿刺針206を覆って保護するゴム製蛇腹体220が連設される。該ゴム製蛇腹体220の内部には、針保持部材208の環状凸部218が、開口を介して挿入される。環状凸部218の外壁は、ゴム製蛇腹体220の内壁に当接する。これにより、ゴム製蛇腹体220が位置ズレを起こすことが回避される。また、ゴム製蛇腹体220の先端には被係止部222が設けられる。
第2実施形態において、先端キャップ224は、その内壁が、ゴム製蛇腹体220の形状に対応する形状をなす円筒体からなる。すなわち、ゴム製蛇腹体220の先端側端部は、先端キャップ224内に挿入されるとともに、その一部が先端キャップ224内に掛止される。
先端キャップ224の先端壁には、係止孔226が貫通形成される。この係止孔226に、ゴム製蛇腹体220の被係止部222が堅牢に挿入される。これにより、ゴム製蛇腹体220が先端キャップ224に保持される。
針保持体202は、さらに、カバー部材230を有する。このカバー部材230は、略円盤形状の基部232と、該基部232の中心から先端側に突出した円筒形状の被覆部234とを有する。基部232の基端側端面は、回転板210の先端側端面に対向する。
一方、被覆部234は、針保持部材208の長尺な胴部を覆う。被覆部234の側壁には、図示しない2個の第1係止突起が突出形成される。第1係止突起には、先端キャップ224の基端側に設けられた第1係止フック238が係止される。
カバー部材230は、さらに、前記基部232の外周縁部近傍から先端側に突出した2個の円弧壁部240を有する。円弧壁部240同士が互いに離間しているため、該円弧壁部240同士の間に2個のガイド孔242が形成される。
一方の管体204は、図6及び図8に示すように、第2流路244が形成された円筒部材246と、この円筒部材246の基端側端部に外嵌された押圧部材248とを有する。円筒部材246の外壁に突出形成された第2係止突起250に対し、押圧部材248の先端側端部に形成された第2係止フック252が係止されることにより、押圧部材248の円筒部材246からの抜け止めがなされている。
押圧部材248には、直径方向外方に向かって突出した2個の円弧状突部254が設けられている。また、押圧部材248の閉塞壁に形成された挿入孔256には、弁体258の幅狭な基端側突起が挿入される。
このように構成されるコネクタ200において、針保持体202を管体204に連結し、その後に引き抜く一連の動作につき説明する。
連結される前の針保持体202では、先端キャップ224がカバー部材230内の先端部側端部に位置するとともに、ゴム製蛇腹体220が穿刺針206を覆っている。この状態の針保持体202に対し、管体204を連結する。
すなわち、管体204を構成する押圧部材248の基端側端面を先端キャップ224の先端側端面に当接させ、さらに、管体204を針保持体202側に押圧する。その結果、管体204が相対的に基端側に前進する。このとき、押圧部材248の外壁に形成された円弧状突部254が、カバー部材230のガイド孔242に挿入される。従って、管体204は、ガイド孔242に案内されながら変位する。
管体204が前進することに伴い、該管体204が当接した先端キャップ224が押圧されて基端側に後退する(図6参照)。この際、先端キャップ224がガイド孔242に案内されるとともに、第1係止フック238が前記第1係止突起から離脱する。
先端キャップ224が基端側に後退すると、これに追従してゴム製蛇腹体220が圧縮される。従って、穿刺針206の先端は、ゴム製蛇腹体220の被係止部222を貫通して突出する。被係止部222から突出した穿刺針206の先端は、押圧部材248の挿入孔256に露呈した弁体258に穿刺される。
管体204がさらに押し込まれると、穿刺針206の先端が弁体258を貫通し、円筒部材246に形成された第2流路244内に露出する。これにより、針保持体202を構成する針保持部材208の第1流路216と、管体204を構成する円筒部材246の第2流路244とが、穿刺針206の導出孔を介して連通する。
以降は、第1実施形態と同様にして、薬剤の移液又は患者への投与が行われる。その後、管体204を針保持部材208から引き抜くと、穿刺針206が弁体258から離脱する。この際にも、円弧状突部254がガイド孔242に沿って変位することによって管体204が案内される。
管体204が後退すると、ゴム製蛇腹体220が伸張する。この伸張に伴い、先端キャップ224が先端側に前進するとともに、穿刺針206がゴム製蛇腹体220の被係止部222から離脱する。
次に、ユーザ(患者本人を含む)は、回転板210を、例えば、指で操作して所定角度回転させる。回転板210の側壁にギザ部214が形成されているので、指がギザ部214に掛かる。このため、回転操作を行うことが容易となる。
回転板210が回転すると、該回転板210に保持された針保持部材208が追従回転する。ここで、針保持部材208の軸線L2と、該針保持部材208に保持された穿刺針206の軸線L1とは一致していない。従って、穿刺針206は、軸線L2を中心として周回するように回動する。
このように穿刺針206を移動した状態で、針保持体202に対して管体204を再連結すると、この際の穿刺位置が、前回の穿刺位置と相違する。すなわち、第2実施形態においても、初回の穿刺時と次回の穿刺時において、弁体258に対する穿刺針206の貫通位置を相違させることができる。従って、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、第3実施形態に係るコネクタ300につき、図9〜図13を参照して説明する。なお、図1〜図8に示される構成要素に対応する構成要素には、基本的には同一の名称を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は、第3実施形態に係るコネクタ300の概略断面斜視図である。このコネクタ300は、針保持体302と、管体304とを有し、針保持体302に対して管体304が連結されることで構成される。
針保持体302は、図10に示すように、中空体からなり穿刺針306を保持した針保持部材308と、穿刺針306を被覆する中空の筒体310と、前記針保持部材308の一部及び前記筒体310を収容した第1カバー部材312とを有する。
針保持部材308は、閉塞壁によって基端側が閉塞され、且つ先端側が開口された中空体である。穿刺針306は、この閉塞壁に貫通形成された針保持孔314に堅牢に挿入されている。穿刺針306の軸線L1は、針保持部材308の軸線L2から偏倚した位置に設定される。すなわち、穿刺針306は、針保持部材308の軸線L2上に位置していない。
図11に示すように、針保持部材308の内壁には、先端側から基端側に指向して延在する5本の柱状部316が形成されている。このため、隣接する柱状部316、316同士の間に合計5本のカム溝318が形成される。カム溝318の先端側開口は、後述する第1カム部320がカム溝318内に進入可能となるように拡開している。また、針保持部材308の内部には、第1バネ部材321が収納される。穿刺針306は、第1バネ部材321の内部を通る。
図10に示すように、第1バネ部材321の基端側端部は閉塞壁に着座し、先端側端部は筒体310の基端側端面に着座する。従って、筒体310は、第1バネ部材321によって先端側に弾発付勢される。
筒体310の内部には、穿刺針306が挿入される。管体304が連結されていない状態では、穿刺針306は筒体310の内部に収容され、外部には露出しない。また、筒体310の外壁において、基端側端部には、5個の第1カム部320が直径方向外方に突出するように設けられている。
筒体310の先端には、ホルダ322を介して弁体323が保持されている。
第1カバー部材312は、図12に示すように、両端が開口した中空体からなり、基端側は、先端側に比して内径が小さく設定された小孔径部位となっている。この小孔径部位の先端側には、第2カム部324が設けられている。また、内径が大きな大孔径部位の側壁には、内壁から外壁に向かって貫通した掛止孔326が形成される。
第1カバー部材312には、掛止孔326の近傍にボタン部328が設けられる。ボタン部328の周囲にはスリットが形成されており、このため、ボタン部328を押圧すると、該ボタン部328が第1カバー部材312の内壁側に容易に撓む。
一方、管体304は、図9及び図13に示すように、第2流路330が形成された円筒部材332と、この円筒部材332の基端側端部に配設された押圧部材334と、円筒部材332の一部及び押圧部材334を収容した第2カバー部材336とを有する。
この中の押圧部材334は両端が開口した中空体からなり、その内部に、弁体340が挿入されている。弁体340の小径な基端側突起は、押圧部材334の小径孔内に挿入され、その基端側端面は、該押圧部材334の基端側端面と面一となっている。
押圧部材334の外壁には、基端側に第3カム部342が形成されるとともに、先端側に第4カム部344が形成される。第3カム部342は、二等辺三角形に近似し得るカムが連なったような形状をなす。一方、第4カム部344は、底辺と、緩慢な一辺及び急峻な一辺とを有するカムが連なったような形状である。
円筒部材332の基端側端部の外壁には、第4カム部344の形状に対応する形状の第5カム部346が形成される。また、円筒部材332の内部には、内径が小さく設定されることで形成された環状段部としてのバネ台座(図示せず)が形成されている。円筒部材332内に挿入された第2バネ部材348の先端側端部はこのバネ台座に着座し、基端側端部は、押圧部材334の先端側端面に着座する。従って、押圧部材334は、第2バネ部材348により、基端側に向かって弾発付勢される。
また、円筒部材332の外壁には、2個の柱状係合部350が直径方向外方に向かうように突出形成されている。柱状係合部350同士の間には、円筒部材332の外壁を周回するように形成された帯状突起352が介在する。
第2カバー部材336は、両端が開口した円筒形状をなし、その基端側の内壁には、第6カム部354が形成される。該第6カム部354の形状は、第3カム部342の形状に対応する。さらに、先端側の内壁には2本の係合溝360が形成されるとともに、係合溝360同士の間に、第2カバー部材336の内壁を周回するように形成された帯状陥没362が介在する。係合溝360には柱状係合部350が摺動可能に係合し、帯状陥没362には帯状突起352が係合する。
また、第2カバー部材336の外壁には、2本の掛止突起364が直径方向外方に向かって突出形成されている。
このように構成されるコネクタ300において、針保持体302を管体304に連結し、その後に引き抜く一連の動作につき説明する。
連結される前の針保持体302では、第1バネ部材321が筒体310を先端側に向かって弾発付勢しているので、筒体310が針保持体302の先端側に位置する(図10参照)。また、第1カム部320が、第1カバー部材312の第2カム部324に噛合している。さらに、筒体310が穿刺針306を覆っている。なお、この時点では、第1カム部320の位相と、カム溝318の位相とは一致していない。
一方、連結される前の管体304では、第2バネ部材348が押圧部材334及び弁体340を基端側に向かって弾発付勢している。この時点では、押圧部材334の第3カム部342が第2カバー部材336の第6カム部354に噛合している。また、第4カム部344の位相と、第5カム部346の位相とは一致していない。
この状態の針保持体302及び管体304を互いに連結する。すなわち、管体304を構成する押圧部材334の基端側端面を筒体310の先端側端面に当接させ、さらに、管体304を針保持体302側に押圧する。この際、第2カバー部材336の外壁は、第1カバー部材312の内壁に摺接する。
その結果、第1バネ部材321が圧縮されるとともに筒体310が基端側に後退する。同時に、第1カム部320が第2カム部324から離脱する。第1カム部320は、カム溝318の先端側開口が拡開されていることから、位相が相違するカム溝318内に容易に進入する。従って、第1カム部320の位相とカム溝318の位相が一致するとともに、筒体310、ホルダ322及び弁体323が若干回転する。
第1バネ部材321が圧縮されて筒体310が基端側に後退する最中、押圧部材334の前進速度が低下するとともに、第3カム部342が第6カム部354から離脱する。その一方で、第4カム部344が第5カム部346に案内される。第4カム部344及び第5カム部346が上記したような形状であるので、第4カム部344と第5カム部346との位相が一致して両者が噛合する過程で、押圧部材334が若干回転する。この回転により、弁体340が追従回転する。
同時に、第2バネ部材348が圧縮される。なお、第2カバー部材336の前進は、掛止突起364が掛止孔326に進入して掛止されることで停止する。
以上の過程において、穿刺針306の先端が弁体323及び弁体340を貫通して円筒部材332内の第2流路330に突出する。これにより、穿刺針306の導出孔が円筒部材332の第2流路330と連通する。
以降は、第1実施形態及び第2実施形態と同様にして、薬剤の移液又は患者への投与が行われる。その後、ユーザがボタン部328を第1カバー部材312の内壁側に押圧すると、掛止突起364が内方に向かって撓む。掛止突起364の頂面には傾斜が設けられているので、この状態で第2カバー部材336を先端側に後退させることによって、掛止突起364を掛止孔326から容易に離脱させることができる。この状態で管体304を針保持部材308から引き抜くと、穿刺針306が弁体340から離脱する。
針保持部材308では、第1バネ部材321の弾発作用によって筒体310が先端側に付勢される。その結果、第1カム部320がカム溝318から離脱し、第2カム部324に噛合する。また、筒体310が穿刺針306に対して相対的に先端側に前進するので、穿刺針306が弁体323から離脱する。
一方、管体304においては、第2バネ部材348の弾発作用によって押圧部材334及び弁体340が基端側に付勢される。その結果、押圧部材334及び弁体340が円筒部材332から若干離間するとともに、第4カム部344が第5カム部346から離脱する。また、第3カム部342が第6カム部354に噛合する。
針保持体302に対して管体304を再連結するときには、上記に準じた動作が営まれる。この際にも筒体310、弁体323及び弁体340が上記の通り回転する。
ここで、針保持部材308の軸線L2は、穿刺針306の軸線L1と一致していない。一方、軸線L2は筒体310の軸線に一致する。従って、初回の穿刺時と次回の穿刺時において、弁体323及び弁体340に対する穿刺針306の貫通位置が相違する。すなわち、穿刺針306を弁体340に穿刺する度に、弁体323及び弁体340に対する貫通位置を相違させることができる。これにより、弁体323及び弁体340に傷が生じることを回避することができる。従って、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、第4実施形態に係るコネクタ400につき、図14〜図16を参照して説明する。なお、図1〜図13に示される構成要素に対応する構成要素には、基本的には同一の名称を付し、その詳細な説明を省略する。
図14は、針保持体402に対して管体404が連結されたコネクタ400の概略断面斜視図であり、図15は、該コネクタ400を構成する針保持体402の概略断面斜視図である。針保持体402は、穿刺針406を保持した針保持部材408と、ゴム製蛇腹体410と、第1先端キャップ412と、第1カバー部材414とを有する。
針保持部材408は、第1流路420が形成された中空体からなり、その大径な基端側端部は開口している。また、基端側端部には、該基端側端部を周回する帯状突起422が形成されている。一方、先端側端部の外壁には、基端側から先端側に向かうに従って縮径するテーパー部423が設けられる。
穿刺針406は、針保持部材408における先端側の閉塞壁に形成された保持孔424に保持される。ここで、穿刺針406の軸線L1は、針保持部材408の軸線L2から偏倚した位置に設定される。すなわち、穿刺針406は、針保持部材408の軸線L2上に位置していない。また、穿刺針406は、針保持部材408の環状凸部426の内側に配置される。なお、穿刺針406の導出孔が第1流路420に連通することは勿論である。
針保持部材408の先端側には、穿刺針406を覆って保護するゴム製蛇腹体410が連設される。該ゴム製蛇腹体410の内部には、針保持部材408の環状凸部426が、開口を介して挿入される。環状凸部426の外壁は、ゴム製蛇腹体410の内壁に当接する。これにより、ゴム製蛇腹体410が位置ズレを起こすことが回避される。また、ゴム製蛇腹体410の先端には被係止部430が設けられる。
第4実施形態における第1先端キャップ412は円筒体からなり、その基端側端部には、先端側に向かって折曲された第1係止フック432が設けられている。この第1係止フック432が、前記テーパー部423の基端側に掛止されることで、第1先端キャップ412が針保持部材408に連結されている。すなわち、針保持部材408のテーパー部423よりも先端側は、第1先端キャップ412内に挿入される。
第1先端キャップ412の内壁は、ゴム製蛇腹体410の形状に対応する形状となっている。ゴム製蛇腹体410の先端側端部は、第1先端キャップ412内に挿入されるとともに、その一部が、第1先端キャップ412内に掛止される。
第1先端キャップ412の先端壁には、係止孔434が貫通形成される。この係止孔434に、ゴム製蛇腹体410の被係止部430が堅牢に挿入される。これにより、ゴム製蛇腹体410が第1先端キャップ412に保持される。
第1カバー部材414の先端側端部には、先端側から基端側に向かう2個の第1ガイド孔436が形成される。第1ガイド孔436は、第1カバー部材414の内壁から外壁を切り欠いた形状をなす。第1先端キャップ412の先端側端部は、第1ガイド孔436内に露出する。
また、第1カバー部材414の基端側端部の内壁には、帯状陥没438が形成される。該帯状陥没438には、針保持部材408の基端側端部に形成された帯状突起422が係合する。
一方の管体404は、図14及び図16に示すように、第2流路440が形成された管部材442と、この管部材442の基端側端部に外嵌された第2先端キャップ444とを有する。管部材442の外壁の基端側端部には、基端側から先端側に向かって拡径するテーパー状拡径部445が形成される。一方、大径な先端側端部には、2個の柱状係合部446が直径方向外方に向かうように突出形成されるとともに、柱状係合部446同士の間に、管部材442の外壁を周回するように帯状突起(図示せず)が形成される。
第2先端キャップ444は両端が開口した中空体からなり、その内部に、ゴム製の弁体450が挿入されている。弁体450の幅狭な基端側突起は、第2先端キャップ444の小径孔内に挿入され、その基端側端面は、該第2先端キャップ444の基端側端面と面一となっている。
第2先端キャップ444の先端側端部には、先端側に向かって一旦延在し、且つ基端側に折り返された2個の掛止爪452が設けられる。これらの掛止爪452がテーパー状拡径部445の先端面に掛止されることにより、第2先端キャップ444が管部材442に連結される。
管体404は、さらに、第2カバー部材454を有する。第2カバー部材454は第1カバー部材414よりも短尺であり、その基端側端部から先端側基端に向かう大部分に、2個の第2ガイド孔456が形成される。第2ガイド孔456は、第2カバー部材454の内壁から外壁を切り欠いた形状をなす。第2先端キャップ444の先端側端部は、第2ガイド孔456内に露出する。
第2カバー部材454の先端側端部の内壁には、2個の係合凹部458が形成される。各係合凹部458には、前記柱状係合部446が係合する。また、係合凹部458同士の間に形成された図示しない帯状陥没には、前記帯状突起が係合する。
このように構成されるコネクタ400において、針保持体402を管体404に連結し、その後に引き抜く一連の動作につき説明する。
連結される前の針保持体402では、第1先端キャップ412が第1カバー部材414内の先端部側端部に位置するとともに、ゴム製蛇腹体410が穿刺針406を覆っている。この状態の針保持体402に対し、管体404を連結する。
すなわち、管体404を構成する第2先端キャップ444の基端側端面を第1先端キャップ412の先端側端面に当接させ、さらに、管体404を針保持体402側に押圧する。その結果、管体404が相対的に基端側に前進する。このとき、第1カバー部材414の第1ガイド孔436と、第2カバー部材454の第2ガイド孔456とが噛合する。従って、管体404は第1ガイド孔436及び第2ガイド孔456の案内作用下に変位する。
管体404が前進することに伴い、第2先端キャップ444が当接した第1先端キャップ412が押圧されて基端側に後退する(図14参照)。この際、第1先端キャップ412の第1係止フック432が、針保持部材408のテーパー部423から離脱する。
第1先端キャップ412が基端側に後退すると、これに追従してゴム製蛇腹体410が圧縮される。従って、穿刺針406の先端は、ゴム製蛇腹体410の被係止部430を貫通して突出する。被係止部430から突出した先端は、第2先端キャップ444の挿入孔に露呈した弁体450を貫通して、管部材442に形成された第2流路440内に露出する。これにより、針保持体402を構成する針保持部材408の第1流路420と、管体404を構成する管部材442の第2流路440とが、穿刺針406の導出孔を介して連通する。
以降は、第1実施形態と同様にして、薬剤の移液又は患者への投与が行われる。その後、管体404を針保持部材408から引き抜くと、穿刺針406が弁体450から離脱する。
管体404が後退すると、ゴム製蛇腹体410が伸張する。この伸張に伴い、第1先端キャップ412が先端側に前進するとともに、穿刺針406がゴム製蛇腹体410の被係止部430から離脱する。
次に、ユーザ(患者本人を含む)は、第2先端キャップ444を、例えば、指で操作して所定角度回転させる。第2先端キャップ444の側壁にギザ部460が形成されているので、指がギザ部460に掛かる。このため、回転操作を行うことが容易となる。第2先端キャップ444が回転すると、該第2先端キャップ444に保持された弁体450が追従回転する。
併せて、第1先端キャップ412を回転するようにしてもよい。この際にも、指で操作すればよい。第1先端キャップ412の側壁にもギザ部462が形成されているので、回転操作を容易に行うことができる。この回転操作に追従し、ゴム製蛇腹体410が回転する。
このように、弁体450及びゴム製蛇腹体410を回転させた状態で、針保持体402に対して管体404を再連結すると、この際の穿刺位置が、前回の穿刺位置と相違する。すなわち、第4実施形態においても、初回の穿刺時と次回の穿刺時において、弁体450に対する穿刺針406の貫通位置を相違させることができる。従って、第1実施形態〜第3実施形態と同様の効果を得ることができる。