図2を参照しながら、まつげエクステ1000をまつげ50に取り付ける様子を説明する。まつげエクステ1000は、一本一本、施術者65がピンセット(具体的には、まつげエクステ用ツィーザー)60を使いながら、施術される人(ユーザー)55のまつげ50に装着されていく。施術される人55は、額にタオル59をのせられたり、眼51の周りに、テープ57、58を貼り付けられることが多い。そして、顔を上向きにした状態で、約1時間のまつげエクステ施術が行われる。
テープ57、58は、ピンセット(まつげエクステ用ツィーザー)60の先端が施術される人55の皮膚に当たらないように保護するものである。上まつげの上側(眼51から見て外側)(または、下まつげの下側(眼51から見て外側))にテープ57(又は58)を貼り付けるが、まつげ50の内側の粘膜部には、テープ57(又は58)は貼り付けることはしない。
まつげエクステの施術の際において、施術される人(ユーザー)55には、目を閉じてもらうように伝えているので、通常、目に異物が入ることは考えられない。しかしながら、テープ57、58で引っ張りすぎたり、あるいは、施術前のテープ貼り付け時にはしっかり目を閉じているが、施術中に寝てしまって、施術中に目を薄く開いてしまうことがある。薄目があいたとしても、そこに異物が入る可能性は少ない。したがって、まつげエクステの施術時に生じる不都合(トラブル、違和感)は、施術される人(ユーザー)55のアレルギーなどの特有の体質(または体調の悪化による皮膚障害)によるものとの結論付けあるいは推論付けを行っていたのが実情である。
まつげエクステの施術によって、何らかの症状を訴えてくる人は、3000人に1人くらいであり(0.03%程度)、アレルギー反応による人、体調不良によるもの、自身の目の病気に起因するものを除くと、施術中に目を薄くあけてしまっていることで不具合が生じている可能性はさらに低くなる(おそらく0.01%未満)。そして、仮に薄目があいたとしても、施術中に、眼51に混入する可能性がある具体的な異物が思いつかないことから、薄目があいてしまうことのトラブル防止措置は特に施さなくてもよいように思えた。
しかしながら、本願発明者は、まつげエクステ業界のより安全性アップおよびより信用性アップを測るために、接着剤が原因であることの可能性を調査した。まつげエクステの施術では、通常、シアノアクリレート系接着剤を使用する。シアノアクリレート系接着剤は、硬化する際に「蒸気」と呼ばれるポリマーがでるので、その蒸気(ポリマー蒸気)の影響を実験で確認することにした。
図3は、シアノアクリレート系接着剤の蒸気(ポリマー蒸気)の影響を調べる測定キット(検査キット)を示している。図3に示した測定キットは、施術される人(ユーザー)の顔に相当するフェイスシート200と、フェイスシート200に形成された開口部220を備えている。開口部220は、施術される人(ユーザー)が薄目をあけた状態を想定しており、図3では、実験の効果が出やすいように、薄目よりも大きめにまぶたが開いた状態にカットして開口部220を形成した。
また、薄目状態の開口部220を覆うように、つけまつげ(210、212)をセットした。図3に示したつけまつげは、人間のまつげに相当する人工まつげ部分212と、各々の人工まつげ部分212を支持する支持部210とから構成されている。つけまつげ(210、212)は、樹脂製であり、開口部220のほぼ全面を覆うようなものを用いている。
ここで、フェイスシート200は、ゼラチン230が充填された容器(カップ)240の上に配置されている。ゼラチン230は、ドライアイ状態の眼球をイメージしたものであり、そのゼラチン230の上に、開口部220を有するフェイスシート200が配置されている。
この図3に示した構成において、つけまつげの人工まつげ部分212の一本一本に、接着剤を塗布したまつげエクステを装着する実験を行った。使用した接着剤は、シアノアクリレート系接着剤であり、まつげエクステの施術は約1時間行った。
その結果を図4に示す。図4に示すように、まつげエクステの施術を約1時間行うと、フェイスシート200の開口部220の下方に位置するゼラチン230の表面に、ポリマーの薄膜(皮膜)250が形成されることがわかった。このポリマーの薄膜250は、図5に示すように、綿棒260で擦っても、ゼラチン230の表面から取れずに付着していた。
実際には涙で覆われている人の眼球の表面とゼラチン230の表面との厳密な対比はできない部分もあるが、ゼラチン230の表面をドライアイ状態の眼球の一つの指標とすると、図5に示した実験例から、シアノアクリレート系接着剤の蒸気(ポリマー蒸気)が、どのくらいゼラチン230の表面に付着したか、そして、その付着の強さはどうかを確認することで、その使用する接着剤の揮発成分(および揮発成分中のポリマー蒸気)の影響を確認することができる。
本願発明者は、図4および図5に示されたような実験結果の状態を見て、シアノアクリレート系接着剤の蒸気(ポリマー蒸気)を極力まで低減しようという結論に達し、本発明を想到するに至った。もちろん、ゼラチン230の表面と眼球表面とは異なるとともに、シアノアクリレート系接着剤の蒸気が、薄目をあけた隙間から眼球表面に達しても、何の症状も起きない人が大多数かもしれないが、まつげエクステの安全性を少しでも向上させる上で施術技術を、より進歩させようと決意したことにより、本発明を創出した。なお、ポリマー蒸気自体は透明であるので、図3に示した測定キット(検査キット)で実験を行わないかぎり、このポリマー蒸気の付着の影響を見つけることはできなかった。
さらに説明すると、まつげエクステの施術には約1時間近くかかることが多いが、その間、薄目が開いていると眼の水分は失われ乾燥がちになる。眼や粘膜にポリマー(ポリマー蒸気)がたくさん付着したまま擦ると、眼に傷が付く可能性が高まる。また、眼における水分不足の人、すなわち、ドライアイ傾向の人は、結膜炎や角膜炎といったものになりやすい。これらのドライアイ傾向の人、まつげエクステ施術中にポリマーが眼に入る、擦ると傷が付く、目元には雑菌が繁殖しやすいという条件が揃うと、目元の病気が発生する可能性が高まることが予測される。
この目元の病気を回避する方法として、(1)目の病気の人には施術しない、(2)施術中はしっかり目を閉じてもらう、(3)目薬を点眼してから施術する、(4)コンタクトレンズで保護する、(5)テープでしっかり保護する、などがある。しかしながら、それらのことが徹底できないこと、あるいは、不完全なことがある。
一番良いのは、施術される者の「目を開けないようにする」ことが重要である。しかし、施術する者、施術される者の両方で、「目を開けないようにする」を完全に守るようにすることを徹底するよりも、仮に目が開いてしまっても、トラブルが生じにくい状態で施術することの方が技術的には意味がある。特に、現代人(若い人)で、アイメイク好きの人が、まつげエクステが好きであり、そして、まつげエクステでトラブルが生じやすい体質であることを踏まえると、なおさら、「目を開けないようにする」ことに特化するよりも、技術的な対策を講じることに価値がある。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合がある。
また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
<実施形態1>
図6(a)から(c)を参照しながら、本発明の実施形態に係るまつげエクステンション100の取付け方法について説明する。図6(a)から(c)は、本実施形態のまつげエクステンション100をまつげ50に取り付ける方法を説明する図である。本実施形態におけるまつげエクステンション100は、使用者のまつげの長さを延長する人工まつげである。なお、本実施形態では、まつげエクステンション(または、エクステンション用まつげ)を「まつげエクステ」と称する。
図6(a)に示すように、本実施形態のまつげエクステ100は、先端部11と末端部15とを有する人工まつげ本体部10から構成されている。本実施形態の構成では、人工まつげ本体部10は、樹脂から構成されている。具体的には、本実施形態の人工まつげ本体部10は、化学繊維から構成されている。
本実施形態の人工まつげ本体部10を構成する樹脂(化学繊維)としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、アクリル、塩化ビニール、ナイロンを挙げることができる。この例の人工まつげ本体部10は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から構成されているが、他の樹脂材料から構成されていてもよい。
また、人工まつげ本体部10は、黒色の他、着色された材料から構成されていてもよい。人工まつげ本体部10は、例えば、ダークブラウン、パープル、ブルー、ピンク、シルバー、グリーン、ライトオレンジ、ライトゴールド、レッド、ワインレッド、ホワイト、イエローなどの色にすることができ、それによって、カラーエクステンションを実現することが可能である。着色剤(または染色剤)は、天然染料や合成染料の他、蛍光染料などである。
また、本実施形態の人工まつげ本体部10は、樹脂以外に、天然素材のものを使用してもよい。例えば、人工まつげ本体部10は、獣毛(例えば、ミンクの毛)であるが、他の獣毛を用いても構わない。なお、樹脂由来のまつげエクステ以外のものとしては、ここで挙げた獣毛の他、動物由来の材料(典型的には、人毛、シルクなど)、植物由来の材料(典型的には綿)を使用することも可能である。また、タンパク質を含んだ化学繊維から構成された人工まつげ本体部10を用いることも可能である。
本実施形態の人工まつげ本体部10は、まつげ型の形状を有している。具体的には、人工まつげ本体部10の末端部15の径(ここでは、直径)は、先端部11の径(直径)よりも太い。人工まつげ本体部10は、かるく湾曲しており、先端部11のトップは尖っている。本実施形態の人工まつげ本体部10の長さは、例えば5mm〜20mmであり、末端部15の端面の直径(または厚さ)は例えば0.07mm〜0.3mmである。本実施形態のまつげエクステ100では、末端部15に接着剤(グルー)が付けられる。そして、まつげエクステ100は、接着剤によって、使用者のまつげに接着されて固定される。
なお、本実施形態の人工まつげ本体部10の形状は、図6(a)に示したものに限定されるものではなく、人工まつげ本体部10は平べったい形状であっても構わない。または、人工まつげ本体部10の末端部15が丸く変形していてもよい。さらには、人工まつげ本体部10の表面を削っても構わない。
次に、図6(b)及び(c)も加えて、本実施形態のまつげエクステ100をまつげ50に取り付ける方法を引き続き説明する。
まず、図6(a)に示すように、本実施形態のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)の一部をピンセット60で掴み、そして末端部15に接着剤17を塗布する。そして、施術される人(ユーザー)のまつげ50又はまぶた55の周辺に、接着剤17から揮発する揮発成分19を吸引する吸引器具20を配置しておく。先に、吸引器具20を配置しておいてから、人工まつげ本体部10に接着剤17を塗布してもよいし、あるいは、人工まつげ本体部10に接着剤17を塗布した後に、吸引器具20を配置しても構わない。
本実施形態の接着剤17は、シアノアクリレート系接着剤である。シアノアクリレート系接着剤は、メチル系(メチルシアノアクリレート)、エチル系(エチルシアノアクリレート)、ブチル系(ブチルシアノアクリレート)、オクチル系(オクチルシアノアクリレート)、メトキシ系(メトキシエチルシアノアクリレート)、エトキシ系(エトキシエチルシアノアクリレート)などの種類に分類可能で瞬間接着剤として使用できる。それらを所定割合でブレンドしたものも使用可能である。
まつげエクステ業界においては、初心者用グルーとして、メトキシエチル系、エトキシエチル系、硬化速度が遅めのブチル系を挙げることができる。これらのグルーは、低刺激で、硬化速度が遅く、粘性があるタイプのグルーである。一方、プロ用グルーとしては、エチル系、メチル系を挙げることができる。これらのグルーは、刺激があり、硬化速度が速く、液状のタイプのグルーである。
エチルシアノアクリレートは、プロ用グルーのほとんどがこれを主成分としている。メチルシアノアクリレートは、エチルシアノアクリレートと性質・効能がほぼ同じである。ブチルシアノアクリレートは、医療用の接着剤として使用されているもので、ホルムアルデヒドなどの有害成分がエチル系、メチル系に比べて少なく、低刺激である。エチル系とブチル系をかけあわせたものも存在する。オクチルシアノアクリレートも、医療用の接着剤として使用されているものである。メトキシエチルシアノアクリレートは、ブチル系よりも揮発性が少なくより低刺激である。エトキシエチルシアノアクリレートは、ブチル系よりも低刺激で(刺激がほぼなく)、接着剤特有の臭いによる刺激もほぼないという超低刺激である。なお、エチル系を5〜6割含有させて、それとともに他の系統の成分を混ぜ合わせて、低刺激かつ遅乾性のグルーに調整することも可能である。
まつげエクステ用の接着剤では、ほとんど、シアノアクリレート系の瞬間接着剤が使用されているが、ゼラチン−アルデヒド系接着剤、フィブリングルー系接着剤を挙げることができる。なお、これ以外の接着剤の使用を禁止するものではない。シアノアクリレート系接着剤であっても、それ以外の接着剤であっても、接着剤は、いわゆる揮発性有機化合物であるので、揮発性有機化合物が含まれている接着剤であれば、本発明に係る実施形態の手法の適用の範囲内となる。
図6に示した吸引器具20は、吸引口部位21と、吸引口部位21に接続された吸引本体部22とから構成されている。本実施形態の吸引器具20は、矢印25に示すように、接着剤17から揮発する揮発成分19を吸引することができる。本実施形態の構成では、揮発成分19の吸引する流速(25)を大きくするために、先端に開口部を有する円錐状の吸引口部位21を吸引本体部22の前方側に取り付けている。つまり、吸引本体部22の開口部の径(直径)よりも、吸引口部位21の径(直径)を小さくして、吸い込む力(25)を向上させるようにしている。なお、このような略円錐状(断面が台形状のもの)の吸引口部位21に限らず、他の形状の吸引口部位21(例えば、略角錐状のもの)を用いてもよい。また、吸引口部位21を用いずに、吸引本体部22で、接着剤17から揮発する揮発成分19を吸引するような構成にしてもよい。
吸引本体部22の内部は、吸引口部位21から吸引した空気(25)が流れる空間部が存在している。吸引された吸気は、最終的には、吸引本体部22の外部に排出される。本実施形態の吸引器具20は、吸引本体部22の内部にモーター(吸引モーター)が内蔵された構造を有していてもよいし、吸引本体部22の外部にモーター(吸引モーター)が配置された構造であってもよい。また、吸引モータが内蔵された吸引装置(比較的大型の装置)からホース(又はチューブ)を延ばして、吸引本体部22に連結した構成で、吸引本体部22(または吸引口部位21)で吸引してもよい。吸引器具20は、電池(一次電池、または、二次電池)を備えた内蔵型電源にしてもよいし、または、吸引器具20からコードを延ばしてコンセントに接続する外部電力供給タイプにしてもよい。また、コンセントに接続できるとともに、それを二次電池の充電用にもできる、ハイブリッド方式の電源にしても構わない。
本実施形態の吸引器具20の吸引力は、接着剤17からの揮発成分19を吸引できる範囲のものであれば特に制限されるものではない。さらには、接着剤17に対して本実施形態の吸引器具20が配置される距離によって所望とされる吸引力は異なってくるものであるが、典型的には、本実施形態の吸引器具20の吸引力は、少なくとも1.25ワットを有することが好ましい(例えば、単3乾電池2本分くらいのもの)。また、本実施形態の吸引器具20の吸引力の上限は特に設定されないが、吸引力が強ければ強いほど、遠くの位置から揮発成分19を効果的に吸い込むことができる。つまりは、眼から距離を離すほど強い吸引力が必要となる。また、吸引器具20吸引力は、近づければ強くなるので、モータの出力(ワット数)だけに依存するわけではない。加えて、吸引口部位21(例えば、ノズル)の形状を細くしたら、吸引力を上げることができる。
また、本実施形態の吸引器具20は、吸引器具20を支持する支持部材(固定部材)によって、眼(又はまぶた55)の周囲に固定することが可能である。そうすることで、眼の周囲に漂う揮発成分19を吸引器具20によって吸引することができる。あるいは、本実施形態の吸引器具20を、人の手で保持して、人工まつげ本体部10に塗布された接着剤17に近づけるようにして、接着剤17から生じる揮発成分19を吸引するようにしてもよい。
次に、図6(b)に示すように、本実施形態の吸引器具20の吸引動作(矢印25)を実行しながら、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する。具体的には、人工まつげ本体部10の根本部15に塗布された接着剤17がまつげ50に接触するように、人工まつげ本体部10をまつげ50に当てる。接着剤17は比較的短時間に硬化して、1本の人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)と1本のまつげ50との接着が完了する。そして、この装着工程を繰り返すことで、人工まつげ本体部10の1本ずつを、各まつげ50に装着していく。
人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する際には、吸引器具20が動作しているので、接着剤17の揮発成分(ポリマー蒸気)19が、眼球の方に向かうことを防止することができる。したがって、眼球にポリマー蒸気が付着することもなく、目の病気の発生を防止することができる。なお、吸引器具20は、人工まつげ本体部10とともに移動する接着剤17の近くに配置する場合の他、眼球付近(または、まぶた55の付近)に配置してもよい。
人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に密着させて装着させた後は、図6(c)に示すように、ピンセット60を外して、まつげエクステ100の取り付けが完了する。この作業を各まつげ50について行う。吸引器具20は、必要なすべてのまつげ50への装着が終わるまで、接着剤17または眼球付近で連続動作させ続けてもよいし、まつげ50への取付けのたびに、配置および撤去を繰り返して実行してもよい。
図7は、上まつげ50のそれぞれにまつげエクステ100を取り付けた様子を示している。図7に示すように、数多くのまつげ50にまつげエクステ100が取り付けられる。したがって、数多くのまつげ50にまつげエクステ100を取り付ける関係上、約1時間程度の施術時間がかかるが、その間、被施術者が薄目をあけていた場合、接着剤17のポリマー蒸気が眼に入ってしまう可能性が高くなってしまう。
ここで、本実施形態のまつげエクステの取付け方法によれば、人工まつげ本体部10に接着剤17を塗布した後、吸引器具20の吸引動作(25)を実行しながら、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する。したがって、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19は、吸引器具20に吸引されることになるので、仮に、施術される人(被施術者)が薄目を開けていたとしても、そのポリマー蒸気(19)が被施術者の眼に入ることはない。その結果、まつげエクステ施術中において生じる眼への違和感の発生確率(例えば、3000施術中に1件未満、または、1万の施術に1件以下)をさらに低下させることができる。
本実施形態の吸引器具20の構造は、吸引した空気(25)における揮発成分(19)中のポリマーを除去するフィルターを備えたものにすることができる。吸引器具20に当該フィルターをセットする場合、吸引器具20の吸引本体部22の内部にセットできる構造にしてもよいし、吸引本体部22の外部であって排気経路(排気ホースなど)の一部にセットできる構造であってもよい。このようなフィルターは、蒸気ポリマー(空気中を漂うポリマー)を吸着できる機能を有するものであれば特に制限されないが、例えば、抗菌フィルター、除菌フィルター、集塵フィルター、防臭フィルターなどを用いることができる。あるいは、フィルターとしては、カテキン、キトサン、シリカ、活性炭などのいずれかを含む材料、それらを繊維に含めた材料を使用することができる。また、フィルターとして、アルデヒド用キャッチャー剤(例えば、大塚化学株式会社製の「ケムキャッチ」)を含む材料、または、ホルムアルデヒド吸着・分解シート(例えば、アイシン精機株式会社製)を使用することができる。吸引器具20で吸引した空気(25)をフィルターで吸着してから排出できる構造の場合、接着剤17から揮発したポリマー(ポリマー蒸気由来のポリマー)を当該フィルターで除去することができるので、まつげエクステ施術室の環境を良くすることができる。
また、本実施形態の吸引器具20は、単体で準備して使用する他、まつげエクステ100を施術するための施術器具セット(まつげエクステ施術セット)の一部として準備して使用することができる。まつげエクステ100は、まつげエクステ用サロンで施術されることが多いが、そのようなサロンに対して、複数サイズまたは複数種類のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)をまつげエクステ施術セットの形で販売することがあるが、そこに吸引器具20をオプションで含めることができる。そのセットには、人工まつげ本体部10を掴むピンセット(60)を含めることも可能である。また、そのようなセットは、まつげエクステ用サロンだけでなく、個人ユーザーに販売しても構わない。
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態に係るまつげエクステ100の他の取付け方法(実施形態2)について説明する。
上述した実施形態1の取付け方法では、吸引器具20の吸引動作をしながら、人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に装着した。一方、本実施形態2では、吸引器具20ではなく、接着剤17から揮発する揮発成分19を吹き飛ばす送風器具を配置するようにしている。なお、他の構成については、上述した実施形態1の構成と共通するものが多いので、説明を簡単にするために省略する。以下、図6(a)から(c)における吸引器具20のところを、送風器具に置き換えて、本発明の実施形態2について説明を続ける。
本実施形態2の取付け方法では、図6(a)及び(b)を参考として理解できるように、接着剤17から揮発する揮発成分19を吹き飛ばす送風器具を配置し、そして、送風器具の送風動作を実行しながら、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に装着する。さらに説明すると、図6(a)及び(b)における吸引器具20のところに送風器具が位置し、吸引動作(25)ではなく、送風動作を実行することで、接着剤17からのポリマー蒸気(19)が眼に入らないようにしている。先に、送風器具を配置しておいてから、人工まつげ本体部10に接着剤17を塗布してもよいし、あるいは、人工まつげ本体部10に接着剤17を塗布した後に、送風器具を配置しても構わない。
送風器具は、接着剤17からのポリマー蒸気(19)が眼に入らないように送風動作ができるものであれば特に限定はされない。例えば、図6(a)及び(b)に示した形状構造を有するもので、送風本体部(22)から空気を噴射できる送風器具を使用することができる。また、送風本体部(22)に送風口部位(21)を取り付けた構造を有する送風器具を使用することも可能である。送風本体部(22)の中に送風用モータを配置してもよいし、送風本体部(22)の外に送風用モータを配置して、そこで発生させた風をホース(管部材)を介して送風本体部(22)に送るようにしても構わない。
送風器具は、扇風機のような回転送風装置を用いてもよく、それ以外の機構を用いた送風装置であっても構わない。また、送風器具は、接着剤17からのポリマー蒸気(19)が眼に入らないように送風できる位置に配置する。典型的には、眼の周辺に配置して、眼の上に(まぶたの上に)エアカーテンができるように送風を行って、薄目を開けた眼球にポリマー蒸気(19)が侵入しないようにする。あるいは、接着剤17の近くに送風器具を配置して、送風の下流側に(風下に)眼球が位置しないように送風動作を行う。
まず、図6(a)に示すように、本実施形態のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)の一部をピンセット60で掴み、そして末端部15に接着剤17を塗布する。そして、施術される人(ユーザー)のまつげ50又はまぶた55の周辺に、接着剤17から揮発する揮発成分19を吸引する吸引器具20を配置しておく。
人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に密着させて装着させた後は、図6(c)に示すように、ピンセット60を外して、まつげエクステ100の取り付けが完了する。この作業を各まつげ50について行う。送風器具は、必要なすべてのまつげ50への装着が終わるまで、接着剤17または眼球付近で連続動作させ続けてもよいし、まつげ50への取付けのたびに、配置および撤去を繰り返して実行してもよい。
また、本実施形態2のまつげエクステ取付け方法によれば、人工まつげ本体部10に接着剤17を塗布した後、送風器具の送風動作を実行しながら、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する。したがって、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19は、送風器具によって吹き飛ばされるので、仮に、施術される人(被施術者)が薄目を開けていたとしても、そのポリマー蒸気が被施術者の眼に入ることはない。
上記実施形態1の取付け方法の場合、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19を吸引器具20で吸引して、その空気は、被施術者から離れたところに排出したり、フィルターで濾過したりできるので、本実施形態2のものと比べると、より効果的であるが、本実施形態2の取付け方法でも、そのポリマー蒸気を被施術者の眼に入れないという点の効果は十分達成することができる。本実施形態2の手法は、吸引するよりも、風の流れを作って、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19を眼から遠ざけてしまう方が有利な場合に効果が高い。
<実施形態3>
次に、図8(a)から(c)を参照しながら、本発明の実施形態に係るまつげエクステ100の他の取付け方法(実施形態3)について説明する。図8(a)から(c)は、本実施形態3のまつげエクステ100をまつげ50に取り付ける方法を説明する図である。
上述した実施形態1の取付け方法では、吸引器具20の吸引動作をしながら、人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に装着した。また、上記の実施形態2では、送風器具の送風動作を行いながら、人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に装着した。一方、本実施形態3では、吸引器具20(または送風器具)ではなく、接着剤から揮発する揮発成分を吸着する吸着材23を用いて、ポリマー蒸気が被施術者の眼に入ることを抑制する。なお、他の構成については、上述した実施形態1の構成と共通するものが多いので、説明を簡単にするために省略する。
まず、図8(a)に示すように、本実施形態のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)の一部をピンセット60で掴み、そして末端部15に接着剤17を塗布する。そして、接着剤17から揮発する揮発成分19を吸着する吸着材23を、まつげエクステ100が取付けされる人(被施術者)の眼の周囲に配置する。図示した例では、施術される人(ユーザー)のまぶた55又はその周辺に、吸着材23を付着させている。
本実施形態の吸着材23は、揮発成分19を吸着するクリーム、または、揮発成分19を吸着するゲルである。より具体的には、シアノアクリレート系接着剤から発生するポリマー蒸気を吸着するクリームまたはゲルである。クリームまたはゲルは、その表面で、ポリマー蒸気(または、揮発性有機化合物(VOC))を好適に吸着することができる。また、クリーム、ゲルでなく、表面積増大による物理吸着を利用した吸着材23を用いることも可能である。そのような吸着材としては、揮発成分を吸着する多孔質部材(例えば、ゼオライトなど)を挙げることができる。さらに、本実施形態の吸着材23としては、ホルムアルデヒド吸着・分解シート(例えば、アイシン精機株式会社製)、ホルムアルデヒド吸着・分解剤(酸化チタン(光触媒)とフッ素樹脂とを含有する材料)、ホルム吸着ビーズ(例えば、日本デオドール株式会社製)、アルデヒド用キャッチャー剤(例えば、大塚化学株式会社製の「ケムキャッチ」)などを挙げることができる。なお、具体的な材料選定にあたっては、当業者が適宜好適なものを採用すればよい。
次に、図8(b)に示すように、吸着材23が配置された状態において、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する。この場合、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19は、矢印25に示すように吸着材23に吸着されるため、被施術者の眼には入らないようにすることができる。
人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に密着させて装着させた後は、図8(c)に示すように、ピンセット60を外して、まつげエクステ100の取り付けが完了する。この作業を各まつげ50について行う。吸着材23は、必要なすべてのまつげ50への装着が終わるまで配置しておけばよく、最後に、吸着材23の除去を実行したらよい。
本実施形態の吸着材23は、クリーム(またはゲル)を被施術者の皮膚に直接塗る他、ガーゼやタオルなどの布部材またはシート部材にクリーム(またはゲル)を付与して、その状態で被施術者の目の周辺(まぶたなど)に配置することができる。図8(a)及び(b)に示した例では、まぶた55の上に吸着材23を配置したが、目の下(下まつげの下)に吸着材23を配置してもよく、あるいは、目の周りを囲むように配置してもよい。また、多孔質物質からなる吸着材23は、空気が通過可能な容器またはシートに入れられて、それを目の周り、あるいは、接着剤17の付近に配置することができる。
本実施形態3の取付け方法によれば、接着剤17から揮発する揮発成分(ポリマー蒸気)19を吸着する吸着材23を眼の周囲に配置した状態で、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する。接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19は吸着材23に吸着されるので(矢印25)、仮に、施術される人(被施術者)が薄目を開けていたとしても、そのポリマー蒸気19が被施術者の眼に入ることを抑制できる。
なお、本実施形態3の手法を、上述した実施形態1または実施形態2の手法と組み合わせて使用することも可能である。
<実施形態4>
次に、図9(a)から(c)を参照しながら、本発明の実施形態に係るまつげエクステ100の他の取付け方法(実施形態4)について説明する。図9(a)から(c)は、本実施形態3のまつげエクステ100をまつげ50に取り付ける方法を説明する図である。
上述した実施形態1の取付け方法では、吸引器具20の吸引動作をしながら、人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に装着した。本実施形態4の手法では、伸縮型テープでまつげの内側の粘膜部から眼球まで保護した状態で、まつげエクステ100をまつげ10に装着する。これにより、ポリマー蒸気が被施術者の眼に入ることを抑制できる。なお、他の構成については、上述した実施形態1の構成と共通するものが多いので、説明を簡単にするために省略する。
まず、図9(a)に示すように、本実施形態のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)の一部をピンセット60で掴み、そして末端部15に接着剤17を塗布する。そして、その前段階として、接着剤17から揮発する揮発成分19が眼球に向かうのを保護するように、伸縮型テープ27で、被施術者のまつげ50の内側の粘膜部から眼球まで保護する。なお、人工まつげ本体部10に接着剤を塗布した後に、伸縮型テープ27で被施術者の保護をすることも可能であるが、施術プロセス的にはスムーズではなく実用的ではない。
ここで、図2に示すように、まつげエクステ施術の際にテープを使う場合、テープの貼付は、通常は、次の3つの目的でなされる。(1)下まつげと上まつげがくっつかないようにする、(2)まぶた周辺を保護する(グルー、ピンセット等から)、(3)施術しやすい状況を作る。
そして、テープ貼付の最重要注意点は、次の3つである。(A)眼球に触れることのないようにする、(B)粘膜に触れることのないようにする、(C)薄目を開けることがないようにする。つまり、通常のテープ貼付は、上記の(1)〜(3)の目的を達成するために、注意点として(A)〜(C)を挙げている。ここでも述べているが、テープ貼付においては、眼球に触れることがないようにし、かつ、粘膜に触れることがないように注意して実行される。
一方、本実施形態4の手法では、被施術者が薄目をあけてしまった場合でも、揮発成分19が眼球に向かうのを保護することを目的としているので、通常のテープ貼付と異なり、被施術者のまつげ50の内側の粘膜部から眼球まできちんと保護する。具体的には、まつげ50の内側の粘膜及び/又はその隣接部(すなわち、まつげ内側の粘膜部)に、きちんと、伸縮型テープ27を貼り付ける。このようにすれば、ポリマー蒸気が眼球に到達しないように確実に保護することができる。
本実施形態の伸縮型テープ27は、被施術者のまつげ50の内側の粘膜部から眼球まで覆って保護することができれば特に限定されるものではないが、例えば、伸縮性のあるシリコーン材料に、粘着剤として、粘着性の強いシリコーンを用いたものを使用することができる。
次に、図9(b)に示すように、伸縮型テープ27で保護した状態にて、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげに装着する。この例において、伸縮型テープ27によって眼球は保護されているので、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19は被施術者の眼に入ることはない。
人工まつげ本体部10(まつげエクステ100)をまつげ50に密着させて装着させた後は、図9(c)に示すように、ピンセット60を外して、まつげエクステ100の取り付けが完了する。この作業を各まつげ50について行う。伸縮型テープ27は、必要なすべてのまつげ50への装着が終わるまで配置しておけばよく、最後に、伸縮型テープ27の除去を実行したらよい。
本実施形態4の取付け方法によれば、伸縮型テープ27でまつげ50の内側の粘膜部から眼球まで保護した状態において、接着剤17が塗布された人工まつげ本体部10をまつげ50に装着する。したがって、接着剤17から揮発した成分(ポリマー蒸気)19は伸縮型テープ27で遮断されるため、被施術者が薄目を開けていたとしても、そのポリマー蒸気19が被施術者の眼に入ることはない。
なお、本実施形態4の手法を、上述した実施形態1(または実施形態2)、および/または実施形態3の手法と組み合わせて使用することも可能である。
<実施形態5>
上述の実施形態1〜4においては、まつげエクステの取付け方法を説明したが、さらに、本発明においては、まつげエクステの取付けの際における接着剤から発生する揮発ポリマー(ポリマー蒸気)を検査する方法を提供することができる。以下、図10から図12を参照しながら、まつげエクステ施術時における揮発ポリマー(ポリマー蒸気)の検査方法について説明する。
図10は、本実施形態5における揮発ポリマーの検査を行うための測定キット(検査キット)70の構成を示す平面図である。また、図11は、本実施形態の測定キット(検査キット)70の構成を示す断面図である。そして、図12は、本実施形態の検査を説明するためのフローチャートである。
本実施形態の測定キット70は、まつげエクステ(100)の取付けの際における接着剤(17)から発生する揮発ポリマー(19)を測定(検査)できる装置(器具)である。測定キット70は、図10および図11に示すように、薄目を開けた形状の開口部75を有するシート部材72と、シート部材72の開口部75を覆う人工まつげ構造物73(73a、73b)とから構成されている。
また、図11に示すように、シート部材72の下には、揮発ポリマー(ポリマー蒸気)を付着させる付着部76が配置されている。付着部76は、容器78の中にセットされている。より具体的には、容器78中の付着部76は、シート部材72の開口部75の下方に配置されており、開口部75を通過した揮発ポリマーを付着することができる。さらに説明すると、シート部材72の開口部75を通過した揮発ポリマーは、付着部76の表面76aに付着し、その量(または付着の様子)で、揮発ポリマーの検査を行うことができる。
シート部材72の開口部75は、薄目を開けた形状を規定しているが、実験をする上で揮発ポリマーの検査をより感度良く行う上で、薄目よりも大きめの開口部75にしても構わない。開口部75の境界線は、曲線にて規定してもよいし、直線を幾つか組み合わせてもよい(あるいは、曲線と直線を組み合わせても構わない)。開口部75の寸法は、次のものに限定されるものではないが、目の横方向(顔の水平方向)の長さは、例えば3cm〜5cmである。また、目の開き具合を規定する長さ(顔の垂直方向の長さ)は、例えば3mm〜10mmである。
シート部材72の材質は、特に制限されるものではなく、樹脂、紙、金属など適切なものを使用することができる。シート部材72の厚さは、例えば0.01mm〜0.1mmであるが、それに限定されるものではない。なお、シート部材72ですが、可撓性である必要はなく、マネキンの表面のように比較的固い材質のものでもよいし、いわゆるお面の部材でも構わない。
シート部材72の表面側(顔表面側)には、開口部75を覆うように、人工まつげ構造物73(73a、73b)が配置されている。人工まつげ構造物73は、所謂つけまつげであり、まつげ部分に相当するまつげ部分73bと、そのまつげ部分73bの根本を固定して支持する支持部73aとから構成されている。本実施形態の人工まつげ構造物73は、樹脂製であるが、それに限らず他の材料(例えば、天然材料)を使用してもよい。また、薄目を規定する開口部75を覆うまつげ部分に対応していればよいので、人工まつげ構造物73は、所謂つけまつげの製品を配置するだけでなく、他の構造物(まつげに相当する部材)を配置できればそれで十分である。
図11に示した例の付着部76は、ゼラチンから構成されている。ゼラチンは、水分を多く含み眼球の表面に似ているとともに、入手しやすさから好適に使用できる。付着部76は、ゼラチンに限らず、他の材料から構成することができ、樹脂材料、ゼリー状材料、天然材料・食品材料(人間と同じたんぱく質であるゆで卵や、コラーゲン、ヨウカン、寒天、コンニャク、葛など)、その他、当業者が適切と判断する材料を使用することが可能である。付着部76を収納する容器78は、プラスチック、陶器(セラミック)、金属、ガラスなどの材料から構成することができる。
次に、図12も参照しながら、本実施形態の検査方法について説明する。まず、ポリマー蒸気(揮発ポリマー)を測定する測定キット70をセットする(工程S10)。測定キット(検査キット)70は、図10及び図11に示すようにセットする。
次に、人工まつげ構造物73であるつけまつげのまつげ部分73aに、まつげエクステ100(人工まつげ本体部10)を接着する(工程S20)。まつげエクステ100の接着は、図1に示した通りである。具体的には、接着剤を用いて人工まつげ本体部10の1本1本を各まつげ50に装着していく。また、本実施形態の取付け方法を用いて検証を行う場合には、図6、図8などに示した通りである。
引き続いて、まつげエクステ100の取付けが必要な全てのまつげ50に、まつげエクステ100の接着を行って装着を完了させる(工程S25)。この取付作業は、おおよそ1時間程度である。その間、まつげエクステ100(人工まつげ本体部10)に塗布された接着剤(17)からポリマー蒸気(揮発ポリマー)19が、測定キット70の開口部75を通って付着部76の表面76aに付着していく。なお、ポリマー蒸気19は透明であるので、肉眼では開口部75を通過している様子を確認することは難しい。
次に、付着部76を構成するゼラチンの表面76aに堆積しているポリマー(ポリマー薄膜)を目視する(工程S30)。具体的には、図4に示した状態のものを観測する。典型的には、観測者の目視で、ポリマー蒸気19がどれくらい眼球に付着するかの測定(目算)を行うことができる。また、それによって、まつげエクステ施術時におけるポリマー蒸気19の影響を判定することができる(工程S40)。なお、ここでの判定とは、人間が目視してポリマー蒸気19が眼球に侵入しそうかを予測・推定することをいう。また、測定とは、目視にて、ポリマー蒸気19の付着量を読みとることをいい、必ずしも数値化(質量、体積、面積など)する必要はない。
このチェック(工程S40)によって、接着剤17の種類ごと(または接着剤の製造メーカの製品ごと)に、まつげエクステを施術した際におけるポリマー蒸気の影響を、実際に被施術者に施術を行う前に確認することができる。また、同一の接着剤17を使った場合でも、施術者ごとに、ポリマー蒸気の影響がどう変化するかをみることで、施術者のスキルを判定することができる。
測定キット70の付着部76に付着したポリマー蒸気(揮発ポリマー)をチェックする工程(S40)では、観測者(検査員)の目視で判定する他、画像処理で行う方法もある。例えば、測定キット70の付着部76に付着したポリマー蒸気をカメラ(撮像素子)で撮像し、次いで、当該カメラで撮像した画像データを画像解析することで、観測者の目視でなく、ハードウエア・ソフトウエアによって判定することが可能である。なお、カメラで撮像しやすいように、水分が多い状態の物質(基板)や白い材料の部材(基板)ではなく、堆積するポリマーを撮像しやすい部材(例えば、基板)を用いることが好ましい。
そのようなコンピュータ(ハードウエア・ソフトウエア)による判定は、次のようにすればよい。まず、ポリマー蒸気がまだ付着してない状態の付着部76の表面76aをカメラで撮像し、その状態を基準の画像データとして記録しておく。そして、上述した本実施形態5の検査方法を実行した後、付着部76の表面76aをカメラで撮像し、その画像データを、基準の画像データと対比する。検査実行後の画像データを、基準の画像データと比較することで(例えば、輝度の差)、所定の数値以上(例えば、輝度の差の値)であれば、ポリマー蒸気が付着していると判定することができる。
ポリマー蒸気の付着を正確に判定するには、付着部76の表面76aの画像が一定かつ理想的な状態(光による表面の輝度ムラがない状態)になるように、光学系・照明系を調整することが求められるが、その調整が良好にできるのであれば、観測者の目視による誤差が減るとともに、数値化が容易であるので、便利である。
その場合におけるカメラは、例えば、CCDイメージセンサ、または、CMOSイメージセンサなどである。一定距離でカメラの撮像を行うために、カメラを移動可能なカメラ移動装置に接続して、毎回、所定の距離で撮像できるように構成してもよい。画像解析を実行する装置は、コンピュータであり、例えば、市販のパーソナル・コンピュータを用いて実行しても構わない。画像解析を実行するコンピュータは、半導体集積回路からなる制御装置(例えばMPU(マイクロ・プロセッシング・ユニット)またはCPU(セントラル・プロセッシング・ユニット))を備えており、その他に、画像データを記憶する記憶装置を備えている。記憶装置は、例えば、ハードディスク(HDD)、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスクなどである。さらには、入力装置(キーボード、マウス、タッチパネルなど)および出力装置(ディスプレイなど)を組み合わせることができる。なお、制御装置、記憶装置、入力装置、出力装置は、汎用のPC(パーソナル・コンピュータ)のものを適用しようすればよい。
画像解析を実行するコンピュータで判定処理をする場合には、画像解析のためのプログラムを記憶装置に格納しておく。画像解析のための画像解析プログラムは、例えば、カメラで撮像した画像データから、輝度データを算出するためのプログラムである。そして、制御装置および記憶装置に格納された画像解析プログラムを協働して動作させることにより、汎用のPCを画像解析装置にすることができ、それによって、判定処理を実行することができる。コンピュータの構成および画像解析プログラムの内容については、当業者が適宜好適なものを採用すればよい。なお、汎用PCと、インターネット回線と、インターネットに接続されたサーバーを用いて、一つのPCで完結させるのでなく、インターネットを利用して遠隔にて画像処理の動作を実行することも可能である。
また、本実施形態の測定キット(検査キット)70は、図13に示す構成にすることも可能である。図13に示した測定キット70は、質量メータ79bに接続されている。具体的には、質量メータ79bに接続された容器(トレイ)79に、付着部77が配置されており、検査前と検査後の付着部77の質量の差で、ポリマー蒸気の影響を判定する。この場合、質量でポリマー蒸気の付着量を簡便に算出できるので、便利である。もちろん、目視と併用して、付着の状態などを観察することが好ましい。
本実施形態の検査手法によれば、測定キット70の人工まつげ構造物73の人工まつげ部分73bに人工まつげ本体部10を装着した後、測定キット70の付着部76に付着した揮発ポリマー(ポリマー蒸気)19をチェックする。これにより、接着剤17からのポリマー蒸気が、薄目を開けた形状の開口部75をどれくらい通過したかを確認することができる。その結果、施術時において接着剤17から発生しているポリマー(ポリマー蒸気)の程度、および/または、施術者のスキルを、測定キット70を用いて、施術される人に実際に施術する前に確認・測定することができる。
加えて、本実施形態の測定キット(検査キット)70は、ポリマー蒸気19の影響だけでなく、まつげエクステ100の取付けの際に眼に侵入する異物を検査するキットとしても使用することができる。特に、初心者の施術者の場合、眼に異物を落としてしまう危険性があり、それを実際の被施術者に行う前に、この検査キット70で、異物侵入の有無の検査を実践でき、かつ、施術スキルを判定できることの技術的な意義は大きい。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。特に、上記実施形態1から5に開示したそれぞれの構成や特徴などは、適宜組み合わせて使用することができる。
また、本実施形態のまつげエクステ100(人工まつげ本体部10)は、抗菌まつげエクステを使用することが可能である。抗菌まつげエクステを使用すれば、目元に雑菌が繁殖しやすい状態を解消ないし緩和することができる。そのような抗菌のまつげエクステ100は、抗菌材料(例えば、銀イオン(Ag+)、または、金属イオンを含む無機抗菌材料、有機抗菌材料)を人工まつげ本体部10に混練したもの、あるいは、抗菌材料を人工まつげ本体部10の表面に塗布したもの、抗菌材料を人工まつげ本体部10の表面から含浸させたもの等を挙げることができる。なお、銀イオン(Ag+)は、原子としての銀(Ag)から電子が外れた陽イオンとして存在している銀イオンのことであり、大きさは銀原子とほぼ同じで200ピコメートル程度のいわゆる原子の大きさである。銀イオンは、銀ナノ粒子の状態で存在させることができ、銀ナノ粒子は、銀をナノメートルのオーダーにした粒子(粒径1000nm以下)である。
さらに、図7に示した例では、上まつげ50にまつげエクステ100を装着したが、下まつげにエクステ100を装着しても構わない。なお、図6に示した人工まつげ本体部10などでは、断面が円形であるものを示したが、それに限らず、楕円形(または実質的に楕円形または長円形)のものであっても構わない。加えて、人工まつげ本体部10の断面を多面形(六角形、八角形など)にすることも可能であるし、断面を星形(六角形の星形、八角形の星形)にすることも可能である。