以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に本実施形態に係る排気装置50を備えたエンジン1を示す。このエンジン1は、図1の紙面に垂直な方向に、1番気筒乃至4番気筒が順に隣接して直列に配置された、直列4気筒ガソリンエンジンであって、自動車等の車両に配置されている。以下、1番気筒乃至4番気筒が並ぶ方向を気筒列方向という。
エンジン1は、シリンダブロック1a、シリンダブロック1aの上側に連結されるシリンダヘッド1b、シリンダブロック1aの下側に連結されるオイルパン1c及びエンジン1から回転動力を出力するクランク軸1d等によって構成されている。
シリンダブロック1aには、クランク軸方向と垂直な方向に延びる4つの気筒2が形成されている。各気筒2内には、コネクティングロッド3を介してクランク軸1dと連結されたピストン4が、気筒2の内周面に対して摺動自在に収容されている。また、シリンダブロック1aの気筒2と、ピストン4と、シリンダヘッド1bとによって燃焼室5が気筒2毎に区画されている。
各気筒2の上部には、気筒2内に新気を導入するための吸気口10と気筒2内から既燃ガスである排気ガスを排出するための排気口20とが各々2つずつ(図1では1つずつ記載)形成されている。これら吸気口10及び排気口20は、シリンダヘッド1b内にそれぞれ形成された、吸気ポート11及び排気ポート21を通じてシリンダヘッド1bの外部とそれぞれ連通している。また、シリンダヘッド1bには、吸気口10及び排気口20をそれぞれ開閉させるための吸気バルブ12及び排気バルブ22がそれぞれ設けられている。
吸気バルブ12及び排気バルブ22は、それぞれバルブ本体12a,22aとバルブステム12b,22bとで構成されている。バルブ本体12a,22aは、吸気ポート11及び排気ポート22から燃焼室5に向かうにつれて拡径した略円錐型の部材であり、バルブ本体12a,22aの吸気ポート11側及び排気ポート21側の頂点にバルブステム12b,22bがそれぞれ接続されている。シリンダヘッド1bにおける、吸気ポート11の上壁部及び排気ポート21の上壁部21a(図4参照)には、吸気側バルブステム貫通孔13(図3参照)及び排気側バルブステム貫通孔23(図3参照)がそれぞれ設けられており、バルブステム12b、22bにおけるバルブ本体12a,22aと反対側の端部は、これら吸気側バルブステム貫通孔13及び排気側バルブステム貫通孔23を通って、それぞれ上方に向かって延びている。シリンダヘッド1dの上部には、吸気バルブ12及び排気バルブ22を開閉駆動させるための、動弁機構14,24がそれぞれ設けられている。
動弁機構14,24は、クランクシャフト1dの回転に応じて回転するカムシャフト(図示省略)の回動力を、カム(図示省略)を介して吸気バルブ12及び排気バルブ22に伝達するためのものである。図示は省略するが、クランクシャフト1d及びカムシャフトには、それぞれタイミングチェーンスプロケットが取り付けられており、各タイミングチェーンスプロケットにタイミングチェーンが掛け回されている。これにより、該タイミングチェーンを介して、クランクシャフト1dの回転がカムシャフトに伝達されて、クランクシャフト1dの回転に応じてカムシャフトが回転する。
シリンダヘッド1b内における排気ポート21の周辺には、シリンダヘッド1bを含めてエンジン1を冷却するためのウォータジャケット30が設けられている。ウォータジャケット30内はエンジン1を冷却するための冷却水(以下、エンジン冷却水という)が流通しており、気筒2から排気口20を通って排気ポート21内に流入した排気ガスの熱は、排気ポート21の上壁部21a(図4参照)を介して上記エンジン冷却水に伝達される。これにより、排気ポート21内で排気ガスが冷却される。詳しくは後述するが、排気ガスの熱によって、温められたエンジン冷却水は、エンジン1が搭載された車両に設けられかつ該車両の車室内を暖房する暖房装置70(図5参照)の熱源として利用される。
エンジン1の一方の側部には、吸気ポート11に連通する吸気通路15を構成する複数の通路及び部材が接続されており、エンジン1の他方の側部には、燃焼室5から排気ガスを車両外部に排出するための排気通路26を構成する複数の通路及び部材が接続されている。尚、排気通路26は、排気装置50の一部を構成している。
吸気通路15は、各気筒2へ空気(新気)を導入するための通路であり、エアクリーナ18と、気筒2への空気の供給を調整するためのスロットル弁16と、サージタンク17とを有している。車両外部から取り入れられた空気はエアクリーナ18で洗浄されて、スロットル弁16によって導入量が調整された後、サージタンク17を介して各気筒2の吸気ポート12に導入されて、吸気口10から気筒2の燃焼室5へ供給される。
排気通路26は、各気筒2から排出され排気ポート21内を通過した排気ガスを集合させる排気マニホールド52と、排気マニホールド52の排気下流側の端部に接続される排気浄化装置としての直キャタリスト53と、直キャタリスト53の排気下流側の端部に接続され、排気ガスを車両外部に排出させるための下流側排気管部54とを有している。
排気マニホールド52は、図示を省略するが、各気筒2にそれぞれ連通する排気分岐管部と、各排気分岐管部が集合してなる集合排気管部とを有しており、該集合排気管部の排気下流側の端部に直キャタリスト53が接続されている。
直キャタリスト53は、1つのケース内に収容された排気浄化触媒53aを有している。すなわち、排気ガスは、排気浄化触媒53aによって浄化された後に下流側排気管部54を流通して車両外部に排出されるようになっている。
本実施形態の排気装置50は、気筒2から排出される排気ガスとは別に、排気ポート21内にガスを供給するためのガス供給手段60を備えている。上記ガスは、各気筒2から排出された排気ガスの一部からなるものであり、該ガス供給手段60によって、上記ガスが全排気ポート21内に供給されるようになっている。以下、図1〜図4を参照しながらガス供給手段60の構成について詳細に説明する。
ガス供給手段60は、図1に示すように、排気ポート21内にガスを供給するためのガス供給路61と、排気マニホールド52と連通した第1の連通路63と、下流側排気管部54と連通した第2の連通路64と、ガス供給路61、第1の連通路63及び第2の連通路64に接続され、ガス供給路61と第1の連通路63との連通状態、又は、ガス供給路61と第2の連通路64との連通状態を切り換えるためのガス流路切換弁65(切換弁)と、第1の連通路63又は第2の連通路64を通じて導入された排気ガスを上記ガスとして噴射するためのポンプ66と、各排気ポート21内に供給される上記ガスの量(すなわち、供給量)を調整するための流量調整弁68と、を備えている。第1の連通路63からは、排気マニホールド52内を流通する排気ガス(以下、キャタ前排気ガスという)の一部がガス供給路61に導入されるようになっている。一方で、第2の連通路64からは、直キャタリスト53を通過した後の排気ガス(以下、キャタ後排気ガスという)の一部がガス供給路61に導入されるようになっている。
ガス供給路61は、シリンダヘッド1b内に形成された供給路である。図2に示すように、ガス供給路61は、少なくとも1つの共通供給路70と複数(本実施形態では8つ)の分岐供給路71とによって構成されている。共通供給路70の上流側には、上流側から順に、ガス流路切換弁65、ポンプ66及び流量調整弁68が配設されている。共通供給路70は、ガス流路切換弁65とポンプ66との間に設けられた第1の共通供給路70aと、ポンプ66と流量調整弁68との間に設けられた第2の共通供給路70bと、流量調整弁68よりも下流側に設けられた第3の共通供給路70cとを有している。図示を省略しているが、第3の共通供給路70cはシリンダヘッド1b内を気筒列方向に延びている。分岐供給路71は、第3の共通供給路70cにおける、各気筒5の各排気ポート21に対応する位置から、各排気ポート21に向かってそれぞれ分岐している。各分岐供給路71は、ガス供給口61a(図3参照)から排気ポート21内に臨んでいる。
尚、図2では、ガス供給手段60は、第3の共通供給路70cの気筒列方向の一端部から、第3の共通供給路70c内に上記ガスが供給されるように構成されているが、第3の共通供給路70cにおける気筒列方向の中央部分、すなわち、全気筒2のうちの気筒列方向内側に位置する2つの気筒2の間の位置に対応する部分から、第3の共通供給路70c内に上記ガスが供給されるように構成されていてもよい。このように構成すると、各分岐供給路71に略均等に上記ガスが行き渡るため、各排気ポート21内に略均等に上記ガスを供給することができる。
詳しくは後述するが、ガス供給路61における分岐供給路71は、ガス供給口61aから排気ポート21内に供給されたガスが、排気ポート21側の上壁面21bに沿って流れるように、排気ポート21内を流通する排気ガスの流れに対する上記ガスの噴射角度が、所定の角度をなすように形成されている。
図3に示すように、ガス供給口61aは、排気側バルブステム貫通孔23の近傍に設けられている。詳しくは、ガス供給口61aは、排気側バルブステム貫通孔23の近傍かつ排気ポート21の上壁面21bにおける排気側バルブステム貫通孔23よりも排気上流側の部分に形成されている。詳しくは後述するが、ガス供給口61aを上記の位置に形成することによって、排気ポート21内を流通する排気ガスの熱が、排気ポート21の上壁部21aを介してウォータジャケット30内のエンジン冷却水に伝達されて、排気ポート21内で排気ガスの温度が低下するのを効果的に抑制することができる。
第1の連通路63は、その一端部が、排気マニホールド52の排気流れ方向両端部(各排気ポート21と接続された部分及び直キャタリスト53と接続された部分)以外の部分に接続されることで、上記排気マニホールド52内と連通している。第1の連通路63の排気マニホールド52側の端部は、排気マニホールド52における上記排気分岐管部に接続されていてもよく、上記集合排気管部に接続されていてもよい。上記排気分岐管部に接続する場合には、第1の連通路63は、各排気分岐管部のそれぞれに連通する分岐通路と各分岐通路を集合させる集合通路とにより構成されていることが望ましい。
第2の連通路64は、その一端部が、下流側排気管部54の両端部以外の部分に接続されることで、上記下流側排気管部54内と連通している。
ガス流路切換弁65には、ガス供給路61における、排気ポート21と反対側の端部、すなわち、共通供給路70の上流側の端部と、第1の連通路63の他端部(排気マニホールド52と反対側の端部)と、第2の連通路64の他端部(下流側排気管部54と反対側の端部)と、が接続されている。
ガス流路切換弁65は、後述するパワートレインコントロールモジュール(以下、Powertrain Control Moduleを省略してPCM100という)と電気的に接続されている。ガス流路切換弁65は、PCM100の制御により、ガス供給路61と第1の連通路63とを連通させる第1の連通状態と、ガス供給路61と第2の連通路64とを連通させる第2の連通状態と、ガス供給路61を第1及び第2の連通路63,64のどちらにも連通させない非連通状態とに変位する。つまり、ガス供給路61と第1の連通路63、及び、ガス供給路61と第2の連通路64とは、ガス流路切換弁65を介して互いに連通されるようになっている。
ガス流路切換弁65が第1の連通状態のときには、ガス供給路61には、第1の連通路63を介して、キャタ前排気ガスの一部が流入し、該キャタ前排気ガスがガスとして排気ポート21内に供給される。また、ガス流路切換弁65が第2の連通状態のときには、ガス供給路61には、第2の連通路64を介して、キャタ後排気ガスの一部が流入し、該キャタ後排気ガスが上記ガスとして排気ポート21内に供給される。さらに、ガス流路切換弁65が非連通状態のときには、ガス供給路61には、上記ガスとなる排気ガスがガス供給路61に供給されず、排気ポート21内にはガスが供給されないようになる。
ポンプ66は、第2の共通供給路70bに上記ガスを噴射するタイミングを調整することで、上記ガスを排気ポート21内に供給するタイミングを調整するためのポンプである。詳しくは、ポンプ66は、全気筒2の排気行程において、上記ガスが、全排気ポート21内に供給されるように、上記ガスを排気ポート21内に供給するタイミングを調整している。ポンプ66は、例えば、排気バルブ22を開閉させるカムとは別に設けられたカム(図示省略)の回転によって駆動されるものであり、カム駆動の場合、上記カムは上記タイミングチェーン等を介して、クランク軸1dと同期して回転するようになっている。尚、ポンプ66は、電動式のポンプであってもよく、電動式のポンプである場合は、後述するPCM100によって、上記ガスを排気ポート21内に供給するタイミングが制御される。
ポンプ66から第2の共通供給路70bに噴射された上記ガスは、流量調整弁68によって流量を調整されてから、第3の共通供給路70cに流入し、分岐供給路71を通って、ガス供給口61aから全排気ポート21内に供給される。流量調整弁68は、図示を省略するが開度を調整可能な弁体によって構成されており、該弁体の開度が高いほど、排気ポート21内への上記ガスの供給量が増大するようになっている。流量調整弁68の開度は、後述するPCM100によって制御されるようになっている。
ここで、上記ガスが、全排気ポート21内に供給されるまでの流れについて説明する。先ず、第1の連通路63からガス流路切換弁65まで、上記ガスとしてのキャタ前排気ガスが流通するともに、第2の連通路64からガス流路切換弁65まで、上記ガスとしてのキャタ後排気ガスが流通する。上記ガス流路切換弁65では、第1の共通供給路70aに導入される上記ガスが選択される。例えば、ガス流路切換弁65が第1の連通状態であるときには、第1の共通供給路70aと第1の連通路63が連通されているため、第1の共通供給路70aに上記ガスとしてキャタ前排気ガスが導入される。第1の共通供給路70aに導入された上記ガスは、ポンプ66によって各気筒5の排気行程に合わせて第2の共通供給路70bに噴射される。第2の共通供給路70bに噴射された上記ガスは、流量調整弁68によって流量を調整されてから、第3の共通供給路70cに導入される。第3の共通供給路70cと各分岐供給路71との間にはバルブ等は設けられていないため、第3の共通供給路70cに導入された上記ガスは、全分岐供給路71から全排気ポート21内に略同時に供給される。すなわち、第3の共通供給路70cに導入された上記ガスは、全分岐供給路71に分散されて各排気ポート21内に供給される。
エンジン1が搭載される車両には、該車両の乗員の暖房要求により、エンジン冷却水を熱源として利用して車両の車室内を暖房する暖房装置70(図5参照)が設けられている。この暖房装置70は、空調装置として組み込まれたものであってもよい。この暖房装置70は、車室内へ吹き出される空気とエンジン冷却水との熱交換を行うヒータコアと、車両の乗員が操作して暖房装置70を作動させるための暖房スイッチ71(図5参照)を有している。
ガス供給手段60の作動を含めた各装置の作動は、制御手段としてのPCM100によって包括的に制御されている。PCM100は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。
PCM100には、図5に示すように、各種センサ101〜106からの検出情報が入力される。例えば、PCM100には、吸気通路15内に吸入される吸気流量を検出するエアフローセンサ101と、クランクシャフト1dの回転角度を検出するクランク角センサ102と、車両の乗員によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ103と、エンジン1を備えた車両の車速を検出する車速センサ104と、変速機(図示省略)におけるギヤの段階を検出するギヤ段センサ105と、直キャタリスト53内の排気浄化触媒53aの温度(以下、触媒温度という)を検出することで、排気浄化触媒53aの暖機状態を検出する触媒暖機状態検出手段としての触媒温度センサ106等の検出結果が入力される。また、PCM100には、暖房スイッチ71の操作情報の信号が入力されるようになっている。尚、触媒温度センサ106に代えてエンジン負荷等から触媒温度を推定するようにしてもよい。この場合は、PCM100が触媒暖機状態検出手段として構成される。
PCM100は、クランク角センサ101の検出信号に基づいてエンジン回転数を検出する。また、PCM100は、アクセル開度センサ102の検出信号に基づいてエンジン負荷を検出する。尚、PCM100は、車速センサ103の検出信号とギヤ段センサ104との検出信号に基づいて、エンジントルクを算出し、該エンジントルクからエンジン負荷を演算するように構成されていてもよい。これにより、PCM100はエンジン負荷検出手段を構成する。
PCM100は、各センサ(エアフローセンサ101、クランク角センサ102、アクセル開度センサ103、車速センサ104、ギヤ段センサ105、触媒温度センサ106等)からの検出信号に基づいて種々の演算を行い、エンジン1の運転状態及び車両の運転状態を判定する。PCM100は、該判定した運転状態に応じて、ガス流路切換弁65へ制御信号を出力して、ガス供給路61と第1及び第2の連通路63,64との連通状態を切り換える。また、PCM100は、流量調整弁68の開度を調整して、排気ポート21内へのガスの供給量を調整する。このことから、PCM100は、切換弁制御部を構成する。
また、PCM100は、車両の乗員が暖房スイッチ71を押したときに、車両の乗員からの暖房要求を検出し、暖房装置70を作動させる。このことから、PCM100は暖房要求検出手段を構成する。
ここで、排気装置50の直キャタリスト53内の排気浄化触媒53aは、その温度が活性化温度まで上昇しなければ、十分な排気浄化性能を発揮しない。そのため、エンジン1のエミッション性を向上させるためには、早期に触媒温度を上昇させて、排気浄化触媒53aを活性化状態にする必要がある。
一般的に、排気浄化触媒53aは、排気ポート21内及び排気マニホールド52内を通過した排気ガスが直キャタリスト53内に導入されることで、該排気ガスの熱によって温められる。しかしながら、排気ポート21の周囲にはウォータジャケット30が設けられているため、排気ガスが排気ポート21内を流通する時には、該排気ガスの熱がウォータジャケット30内を流れるエンジン冷却水に奪われてしまう。
全気筒2の排気行程では、図4に示すように、排気バルブ22が燃焼室5に導入され、燃焼室5内の排気ガスは、バルブ本体22aと排気口20との間の隙間から排気ポート21内に流入する。このとき、排気ガスは、バルブ本体22aの表面に沿って排気ポート21内に流れ込む。排気ポート21内に流れ込んだ排気ガスは、排気ポート21の上壁面21bに沿って排気ポート21内を流通する。そのため、排気ポート21内を流通する排気ガスの熱は、特に、シリンダヘッド1bにおける、排気ポート21の上壁部21aを介して、ウォータジャケット30内のエンジン冷却水に伝達されやすい。
そこで、本実施形態では、全気筒2の排気行程において、ガス供給路61から全排気ポート21内に上記ガスを供給するようにしている。
排気ポート21内に上記ガスが供給された時には、図4に示すように、排気ポート21の上壁面21bに上記ガスの層(以下、ガス層という)が形成される(図4では、ガス層の境界を仮想線で示している)。また、ポンプ66によって、全気筒2の排気行程において上記ガスが全排気ポート21内に供給されれば、全気筒2の排気行程において、排気ガスが気筒2から排気口20を通って排気ポート21内に流入する時には、上記上壁面21bに上記ガス層が形成されている。つまり、図4に示すように、排気ポート21内を流通する排気ガスと上記上壁面21bとの間に、上記ガス層が介在するようになる。
このように、排気ポート21内を流通する排気ガスと排気ポート21の上壁面21bとの間に、上記ガス層が介在することによって、排気ポート21内において、排気ガスは上記上壁面21bと直接接触しなくなる。これにより、排気ガスの熱が、排気ポート21の上壁部21aを介してウォータジャケット30内のエンジン冷却水に伝達されにくくなる。つまり、上記ガス層が遮熱層としての役割を果たすようになる。この結果、排気ポート21内での排気ガスの温度低下が抑制され、排気ガスの熱を直キャタリスト53内の排気浄化触媒53aに良好に伝えることができるようになる。
本実施形態では、ガスによる遮熱効率を向上させるために、ガス供給口61aは、バルブ本体22aの表面に沿って排気ポート21内に流れ込んだ排気ガスが、排気ポート21内で集合する位置において、上記排気ガスと排気ポート21の上壁面21bとの間に上記ガス層が形成されるように、上記ガスを供給することができる位置に形成されている。具体的には、排気側バルブステム貫通孔23の近傍かつ排気ポート21の上壁面21bにおけるバルブステム貫通孔23よりも排気上流側の部分、さらに具体的には、排気側バルブステム貫通孔23を中心とする半径15mmの領域内かつ排気ポート21の上壁面21bにおける排気側バルブステム貫通孔23よりも排気上流側の部分に形成されている。
すなわち、バルブ本体22aは、排気ポート22から燃焼室5に向かうにつれて拡径した略円錐型の部材であるため、バルブ本体22aの表面に沿って排気ポート21内に流れ込んだ排気ガスは、バルブステム22bの近傍に集合する。そのため、ガス供給口61aを、排気側バルブステム貫通孔23の近傍に形成することによって、排気ポート21内において排気ガスが集合する位置に、上記ガスを供給しやすくなる。また、ガス供給口61aを、排気ポート21の上壁面21bにおける排気側バルブステム貫通孔23よりも排気上流側の部分に形成することによって、ガス供給口61aを、上記上壁面21bにおける排気側バルブステム貫通孔23よりも下流側に形成するよりも、上記上壁面21bの広範囲に上記ガス層を形成することができる。これにより、上記ガスによる遮熱効果を向上させることができる。
また、本実施形態では、ガス供給路61は、排気ポート21内への上記ガスの供給によって、排気ガスの熱が、エンジン冷却水へ伝達されるのを効率的に防止するために、上記排気ポート内を流通する排気ガスと並進する方向に上記ガスが噴射されるように、気筒列方向から見たときの、排気ポート21内を流通する排気ガスの流れに対する上記ガスの噴射角度が、適切な噴射角度となるように形成されている。具体的には、上記排気ガスの流れに対する上記ガスの噴射角度が、該ガスが排気ポート21内に供給された際に、供給されたガスが上記上壁面21bに沿って流れるとともに、上記上壁面21bに適切な厚みの上記ガス層が形成されるような噴射角度となるように形成されている。
図6は、排気ポート21内を流通する排気ガスの流れに対する上記ガスの噴射角度と上記ガスによる排気ガスの遮熱率との関係を、シミュレーションにより算出したグラフである。
図6に示すグラフの縦軸である遮熱率は、燃焼室5内の排気ガスの熱量をqnとし、排気ポート21内を通過した後、排気マニホールド52内に流入した排気ガスの熱量をqcとして、以下の式で放熱割合をガス供給有りのとき及びガス供給無しのときの両方で求め、それらの放熱割合を比較したものである。
放熱割合=(qn−qc)/qn
遮熱率(%)=〔1−(ガス供給有りの放熱割合/ガス供給無しの放熱割合)〕×100
また、図6に示すグラフの横軸であるガスの噴射角度は、排気ポート21内を流通する排気ガスの流れに対して直交する方向を90度として、そこから、上記ガスの噴射方向が、上記排気ガスの流れと同じ方向となる側が鋭角側となっている。すなわち、上記噴射角度が0度のときには、上記ガスが、上記排気ガスの流れと同じ方向に噴射される一方、上記噴射角度が180度のときには、上記ガスが、上記排気ガスの流れとは逆方向に噴射されるようになる。尚、本実施形態では、図4に示すように、ガス供給路61(厳密には、分岐供給路71)の下側にはウォータジャケット30があり、上記噴射角度が、上記排気ガスの流れに対して10度未満の角度になるようにガス供給路61を形成すると、ガス供給路61とウォータジャケット30とが重複してしまうため、製造が不可能であることから、今回のシミュレーションでは10度未満の角度範囲については計算していない。また、本実施形態では、上述したように、ガス供給口61aを、排気ポート21の上壁部21aにおける排気側バルブステム貫通孔23よりも排気上流側の部分に形成していることから、上記噴射角度が、上記排気ガスの流れに対して120度を超える角度となるようにガス供給路61を形成すると、ガス供給路61と排気側バルブステム貫通孔23とが重複してしまうため、今回のシミュレーションでは120度を超える角度範囲についても計算していない。
図6を参照すると、上記ガスの噴射角度が30度のときに上記遮熱率が最大となり、その前後の噴射角度では上記遮熱率が低下することが分かる。これは、30度よりも小さい噴射角度では、排気ポート21内に供給された上記ガスが、排気ポート21内から排気マニホールド52へと流れ出てしまい、排気ポート21の上壁面21bに形成されるガス層の厚みが薄くなるためである。一方、30度よりも大きい噴射角度では、ガスが上記上壁面21bに沿って流れず、上記ガス層が形成されにくくなるためである。
図6に示す結果から、上記遮熱率が50%を超える噴射角度の範囲を求めると、10度以上50度以下の範囲となる。そこで、本実施形態では、気筒列方向から見た、排気ポート21内を流通する排気ガスの流れに対する上記ガスの噴射角度における鋭角側の角度が、10度以上50度以下となるように、ガス供給路61を形成している。尚、流量調整弁68の開度を大きくして、上記ガスの供給量を増大させることにより、排気ポート21の上壁面21bに形成されるガス層の厚みを厚くすることができるため、上記ガスの噴射角度が30度よりも小さい範囲については、流量調整弁68の開度を大きくすることによって、上記遮熱率を増大させることが可能である。
さらに、本実施形態では、上記ガスによる遮熱効率を向上させるために、流量調整弁68の開度を制御して、上記ガスの供給量を制御している。
図7は、排気ポート21内を流通する排気ガスの流量に対する上記ガスの供給量の比率(以下、ガス流量比という)と遮熱率との関係を示す。図7の縦軸に示す遮熱率は、上述した計算式によって求められた遮熱率である。図7の横軸は、1つの排気ポート21あたりにおける、排気ポート21内を流通する排気ガスの流量に対するガスの供給量の比率である。
図7に示すように、上記遮熱率は、ガス流量比に依存して変化して、適切なガス流量比でもってガスを供給したときに、最大となる。これは、ガス流量比が最適値よりも高いとき及び低いときには、排気ポート21内を流通する排気ガスと排気ポート21の上壁面21bとの間に、適切な厚みの上記ガス層が形成されず、上記排気ガスの熱が、排気ポート21の周囲に形成されたウォータジャケット30内のエンジン冷却水に伝達されてしまうためである。
そこで、本実施形態では、基本的には、最も高い上記遮熱率となるガス流量比になるように、流量調整弁68の開度を制御して、上記ガスの供給量を制御している。このとき、最適なガス流量比は、ガス供給口61aの径によって異なる。例えば、ガス供給口61aの径が7mmのときには、ガス流量比が18%のときに上記遮熱率が最大となり、ガス供給口61aの径が5mmのときには、ガス流量比が15%のときに上記遮熱率が最大となる。そのため、ガス供給口61aの径に基づいて、ガス流量比を設定している。尚、上記ガスとして用いる排気ガス(キャタ前排気ガス及びキャタ後排気ガス)の温度が低いときには、上記ガスの供給量を減少させて、ガス流量比を小さくするようにしてもよく、逆に上記ガスとして用いる排気ガスの温度が高いときには、上記ガスの供給量を増大させて、ガス流量比を大きくするようにしてもよい。
また、本実施形態では、PCM100は、排気浄化触媒53aの暖機状態に基づいて、すなわち、触媒温度センサ106によって検出される検出触媒温度に基づいて、ガス供給路61と第1及び第2の連通路63,64との連通状態を切り換えるように、ガス流路切換弁65を制御している。
すなわち、排気ガスの温度と上記ガスの温度との差が大きすぎると、詳しくは、上記ガスの温度が排気ガスの温度に対して低すぎると、排気ガスの熱が上記ガスに奪われてしまい、かえって、触媒温度が上昇しにくくなる可能性がある。そこで、排気浄化触媒53aの暖機状態を表す上記検出触媒温度に基づいて、ガス供給路61の連通状態を切り換えて、適切な温度のガスが排気ポート21内に供給されるようにしている。
具体的には、PCM100は、上記検出触媒温度が所定温度以下であるときには、ガス流路切換弁65を上記第1の連通状態に切り換えて、ガス供給路61を第1の連通路63と連通させる一方、上記検出触媒温度が所定温度よりも高い温度であるときには、ガス流路切換弁65を上記第2の連通状態に切り換えて、ガス供給路61を第2の連通路64と連通させる。尚、上記所定温度は、排気浄化触媒53aの活性化温度の下限温度と同等の温度である。
すなわち、上記検出触媒温度が所定温度以下であるときには、直キャタリスト53に導入された排気ガスは、排気浄化触媒53aに熱を奪われるため、キャタ後排気ガスの温度は、排気ポート21内を流通する排気ガスの温度よりも低くなる。そのため、上記検出触媒温度が所定温度以下であるときに、下流側排気管部54と連通した第2の連通路64とガス供給路61とを連通させると、排気ポート21内には、上記ガスとして、排気ポート21内を流通する排気ガスと比べて、温度が低いキャタ後排気ガスが供給されてしまう。排気ポート21内に、上記キャタ後排気ガスが供給されると、排気ポート21内を流通する排気ガスを上記キャタ後排気ガスで冷却してしまい、排気浄化触媒53aの暖機効率を低下させてしまう。
一方で、第1の連通路63は、排気マニホールド52と連通しているため、第1の連通路63とガス供給路61とを連通させると、キャタ前排気ガスが上記ガスとして排気ポート21内に供給される。キャタ前排気ガスの温度は、排気ポート21内を流通する排気ガスの温度と略同じ(厳密には、僅かに低い)ため、該排気ガスが上記ガスで冷却されることがなく、たとえ冷却されるとしても、排気ポート21内を流通する排気ガスとキャタ前排気ガスとの温度差は小さいため、エンジン冷却水によって冷却されるよりも温度が下がりにくい。そのため、キャタ前排気ガスを上記ガスとして排気ポート21内に供給することで、排気ポート21内を流通する排気ガスと排気ポート21の上壁面21bとの間に上記ガス層が形成されて、排気ポート21内での排気ガスの温度低下が抑えられる。これにより、触媒温度を早期に活性化温度まで上昇させることができるため、排気浄化触媒53aを早期に活性化状態にすることができる。尚、排気浄化触媒53aの暖機効率を向上させるには、第1の連通路63を、排気マニホールド52における排気上流側の部分、特に、上記排気分岐管部における排気ポート21との接続部の近傍部分と連通させることが好ましい。
そして、検出触媒温度が所定温度よりも高い温度になったときには、ガス供給路61を第2の連通路64と連通させる。すなわち、排気浄化触媒53aが活性化状態となった後は、直キャタリスト53に導入される排気ガスは排気浄化触媒53aの反応熱によって温められるため、キャタ後排気ガスの温度と排気ポート21内を流通する排気ガスの温度との差が小さくなる。そのため、キャタ後排気ガスを上記ガスとして排気ポート21内に供給することによって、排気ポート21内での排気ガスの温度低下がより抑えられるようになる。
しかしながら、排気浄化触媒53aの活性化温度には上限値があるため、触媒温度を上記上限値よりも高くしてしまうと、排気浄化触媒53aの排気浄化性能が低下してしまう。このような現象は、特に、高速走行時や登板時などエンジン負荷が高負荷状態であり、直キャタリスト53に高温の排気ガスが導入されやすいときに発生しやすい。
そこで、PCM100は、アクセル開度やエンジントルクに基づいて算出される検出負荷が、所定負荷以上のエンジン負荷であるときには、ガス流路切換弁65を、上記非連通状態にするように制御して、排気ポート21内への上記ガスの供給を停止させる。これにより、排気ポート21内を流通する排気ガスの熱が、エンジン冷却水に伝達されて、該排気ガスは、排気ポート21内を通過する間に冷却されるため、上記排気ガスによって、触媒温度が活性化温度の上限値よりも高くなることを防止することができる。尚、上記所定負荷は、排気浄化触媒53aの活性化温度の上限値以上の温度の排気ガスが、排気ポート21から排出される可能性があるエンジン負荷である。
また、PCM100は、車両の乗員から暖房要求を検出したときには、触媒温度やエンジン負荷によらず、ガス流路切換弁65を、上記非連通状態に切り換えて、排気ポート21内への上記ガスの供給を停止させる。
本実施形態では、暖房装置70は、エンジン冷却水を熱源として利用して車両の車室内を暖房するものであるため、車両の乗員からの暖房要求に応答するためには、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換を積極的に行う必要がある。また、暖房は、人命に関わる可能性があるため、排気浄化触媒53aの暖機等よりも優先される。
そのため、車両の乗員から暖房要求を検出したときには、検出触媒温度の高さや検出負荷の大きさに関わらず、ガス流路切換弁65を、上記非連通状態に切り換えて、排気ポート21内への上記ガスの供給を停止させることによって、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換を積極的に行わせ、車両の乗員からの暖房要求に即座に応答できるようにしている。
次に、図8を参照しながら、ガス流路切換弁65を切り換える際のPCM100による処理動作について説明する。
最初のステップS101で、各種センサからの検出信号を読み込み、次のステップS102で、暖房要求があるか否かを判定する。該判定は、暖房スイッチ71が押されたか否かに基づいて行う。暖房要求があるYESのときには、ステップS103に進む一方、暖房要求のないNOのときには、ステップS104に進む。
上記ステップS103では、ガス流路切換弁65を上記非連通状態にして、排気ポート21内への上記ガスの供給を停止させる。これにより、排気ポート21の上壁面21bに上記ガス層が形成されなくなり、排気ポート21内を流通する排気ガスからエンジン冷却水への熱交換を積極的に行われるため、車両の乗員の暖房要求に即座に応答することができる。ステップS103の後は再びS101に戻る。
一方。上記ステップS104では、触媒温度が所定温度以下であるか否かについて判定する。該判定は、触媒温度センサ106の検出される検出触媒温度に基づいて行う。該検出触媒温度が所定温度以下であるYESのときには、ステップS105に進む一方、該検出触媒温度が所定温度よりも高い温度であるNOのときには、ステップS106に進む。
上記ステップS105では、排気浄化触媒53aの暖機が完了していないと判断して、ガス流路切換弁65を上記第1の連通状態にして、ガス供給路61と第1の連通路63とを連通させる。これにより、上記ガスとして、キャタ前排気ガスを供給可能になり、排気浄化触媒53aの暖機を促進させることができる。ステップS105の後はリターンする。
一方、上記ステップS106では、エンジン負荷が所定負荷よりも小さい負荷であるか否かについて判定する。該判定は、アクセル開度センサ103の検出結果等から算出される検出負荷に基づいて行う。検出負荷が所定負荷よりも小さいエンジン負荷であるYESのときには、ステップS107に進む一方、検出負荷が所定負荷以上のエンジン負荷であるNOのときには、ステップS108に進む。
上記ステップS107では、ガス流路切換弁65を上記第2の連通状態にして、ガス供給路61と第2の連通路64とを連通させる。これにより、上記ガスとして、キャタ後排気ガスを供給可能になり、排気浄化触媒53aの暖機状態が適切に維持されるようになる。ステップS107の後はリターンする。
一方、上記ステップS108では、ガス流路切換弁65を非連通状態に切り換えて、上記ガスの供給を停止させる。これにより、排気ポート21の上壁面21bに上記ガス層が形成されなくなり、排気ポート21内を流通する排気ガスの熱が、排気ポート21の上壁部21aを介してエンジン冷却水に伝達されることで、上記排気ガスが冷却されるため、排気浄化触媒53aに、活性化温度の上限値に到達するような高温の排気ガスが供給されないようになる。ステップS108の後はリターンする。
上述のフローチャートに従って、ガス流路切換弁65が上記第1の連通状態又は上記第2の連通状態に切り換えられた後には、各排気ポート21内へ上記ガスが供給される。
したがって、本実施形態では、シリンダヘッド1dにおける、排気ポート21の上壁部21aに形成された、排気バルブ22のバルブステム22bが貫通する排気側バルブステム貫通孔23、又は、該排気側バルブステム貫通孔23又は排気側バルブステム貫通孔23の近傍から排気ポート21内に臨み、気筒2から排出される排気ガスとは別に、排気ポート21内にガスを供給するためのガス供給路61を有し、全気筒3の排気行程において、ガス供給路61から全排気ポート21内へ上記ガスを供給可能なガス供給手段60を備え、ガス供給路61は、ガス供給路61から排気ポート21内に供給された上記ガスが排気ポート21の上壁面21bに沿って流れるように形成されているため、排気ガスが気筒3から排気口20を通って排気ポート21内に流入する時には、上記上壁面21bに上記ガスによる遮熱層(つまり、ガス層)が形成され、排気ポート21内を流通する排気ガスと上記上壁面21bとの間に上記遮熱層が介在するようになる。これにより、排気ガスの熱が上記上壁部21aから、ウォータジャケット30内のエンジン冷却水に伝達されるのを抑制することができる。この結果、排気ポート21内での排気ガスの温度低下を抑制し、排気ガスの熱を直キャタリスト53内の排気浄化触媒53aに良好に伝えることができるようになる。
図9には、実施形態1に係る排気装置50の変形例として、ガス供給口61aの形状を変更した排気装置50を示す。上述の実施形態1では、図3に示すように、ガス供給口61aの形状は円形であったが、この変形例では、ガス供給口61aの形状が、排気ポート21の周方向に広がった、平面視で弧状をなすようにしている。ガス供給口61aを変形例のような形状とすることによって、上記ガスが、排気ポート21内において広範囲に供給されるようになり、排気ポート21の上壁面21b全体に、上記ガスによる遮熱層を形成することができる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図10は、実施形態2に係る排気装置50を備えたエンジン1を示す。
実施形態1では、直キャタリスト53を通過した排気ガスが、そのまま車両外部に排出されるようになっていたが、実施形態2では、下流側排気管部54に、排気ガスの熱を回収するための排熱回収装置55が設けられており、直キャタリスト53を通過した排気ガスは、排熱回収装置55によって熱を回収されてから(つまり、冷却されてから)、車両外部に排出されるようになっている。排熱回収装置55は、下流側排気管部54における第2の連通路64との接続部分よりも下流側の部分に設けられている。排熱回収装置55内には、エンジン冷却水が流通する冷却水経路(図示省略)が設けられており、排熱回収装置55に流入した排気ガスは、上記冷却水経路を流れるエンジン冷却水によって冷却されることで、その熱を回収される。尚、排熱回収装置55内を流れかつ排気ガスと熱交換をしたエンジン冷却水は、暖房装置70における熱源として利用される。
また、実施形態1では、ガス供給路61と連通可能な連通路として、第1の連通路63及び第2の連通路64が設けられていたが、実施形態2では、さらに第3の連通路67が設けられている。第3の連通路67は、その一端部が、下流側排気管部54における、排熱回収装置55よりも下流側の部分に接続されている一方、他端部が、ガス流路切換弁65に接続されている。これにより、第3の連通路67は、下流側排気管部54における、排熱回収装置55よりも下流側の部分と連通している。
さらに、実施形態2では、ガス流路切換弁65は、上記第1の連通状態及び上記第2の連通状態に加えて、ガス供給路61と第3の連通路67とを連通させる第3の連通状態、並びに、ガス供給路61を第1の連通路63、第2の連通路64及び第3の連通路67のいずれにも連通させない非連通状態とに変位可能に構成されている。
第3の連通路67が、下流側排気管部54における排熱回収装置55よりも下流側の部分と連通していることにより、ガス供給路61には、第3の連通路67から、排熱回収装置55を通過した後の排気ガス、すなわち、エンジン冷却水によって冷却された後の排気ガス(以下、冷却後排気ガスという)が導入される。これにより、ガス供給路61は、上記ガスとして、冷却後排気ガスを排気ポート21内に供給することができるようになる。
実施形態2では、排熱回収装置55が設けられ、該排熱回収装置55内で、排気ガスの熱がエンジン冷却水に伝達されるため、車両の乗員から暖房要求があった場合であっても、排気ポート21の上壁部21aに形成されたウォータジャケット30内のエンジン冷却水に、積極的に排気ガスの熱を伝達させる必要がない。そのため、実施形態2では、車両の乗員から暖房要求があった時に、ガス流路切換弁65を上記非連通状態にして、排気ポート21内へのガスの供給を停止させるような制御は行わず、車両の乗員から暖房要求があった場合であっても、排気ポート21内にガスを供給する。
また、実施形態2では、上述したように、ガス流路切換弁65を第3の連通状態にして、ガス供給路61と第3の連通路67とを連通させることによって、上記ガスとして、冷却後排気ガスを、排気ポート21内に供給することができる。冷却後排気ガスを排気ポート21内に供給すれば、排気ポート21内を流通する排気ガスを、上記ガス(冷却後排気ガス)によって冷却することができる。そのため、実施形態2では、排気ポート21内を流通する排気ガスを冷却する必要があるとき、詳しくは、触媒温度が、活性化温度の上限値を超える可能性があるとき、具体的には、エンジン負荷が、予め設定された基準負荷以上のエンジン負荷であるときには、ガス流路切換弁65を上記第3の連通状態にして、排気ポート21内に冷却後排気ガスを供給し、排気ポート21内を流通する排気ガスを冷却後排気ガスによって冷却する。尚、上記基準負荷は、排気浄化触媒53aの活性化温度の上限値以上の温度の排気ガスが、排気ポート21から排出される可能性があるエンジン負荷である。
図11には、実施形態2において、ガス流路切換弁65を切り換える際のPCM100による処理動作を表すフローチャートを示す。以下、この処理動作について説明する。
最初のステップS201で、各種センサからの検出信号を読み込み、次のステップS202で、触媒温度が所定温度以下であるか否かについて判定する。該判定は、触媒温度センサ106の検出される検出触媒温度に基づいて行う。検出触媒温度が所定温度以下であるYESのときには、ステップS203に進む一方、検出触媒温度が所定温度よりも高い温度であるNOのときには、ステップS204に進む。
上記ステップS203では、排気浄化触媒53aの暖機が完了していないと判断して、ガス流路切換弁65を上記第1の連通状態にして、ガス供給路61と第1の連通路63とを連通させる。これにより、上記ガスとして、排気マニホールド52内を流通する排気ガスを供給可能になる。ステップS203の後はリターンする。
一方、上記ステップS204では、エンジン負荷が上記基準負荷よりも小さい負荷であるか否かについて判定する。該判定は、アクセル開度センサ103の検出結果等から算出される検出負荷に基づいて行う。検出負荷が上記基準負荷よりも小さいエンジン負荷であるYESのときには、ステップS205に進む一方、検出負荷が上記基準負荷以上のエンジン負荷であるNOのときには、ステップS206に進む。
上記ステップS205では、ガス流路切換弁65を上記第2の連通状態に変位させて、ガス供給路61と第2の連通路64とを連通させる。これにより、上記ガスとして、直キャタリスト53を通過した排気ガスを供給可能になる。ステップS205の後はリターンする。
一方、上記ステップS206では、ガス流路切換弁65を上記第3の連通状態に変位させて、ガス供給路61と第3の連通路67とを連通させる。これにより、上記ガスとして、冷却後排気ガスを供給可能になり、排気ポート21内を流通する排気ガスを、冷却後排気ガスによって冷却することができる。ステップS206の後はリターンする。
上述のフローチャートに従って、ガス流路切換弁65が上記第1の連通状態、上記第2の連通状態又は上記第3の連通状態に切り換えられた後には、各排気ポート21内へ上記ガスが供給される。
したがって、実施形態2の構成でも、実施形態1と同様の効果を得ることができる。また、排熱回収装置55を設けたことによって、エンジン1が作動している間は、エンジン冷却水に排気ガスの熱を伝達し続けることができるため、暖房装置70の熱源を確保することができ、車両の乗員の暖房要求への応答性が向上される。
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、ガス供給手段60は、全気筒2の排気行程において、全排気ポート21内に上記ガスが供給されるように構成されていたが、これに限らず、排気行程にある気筒2に対応した排気ポート21だけに上記ガスが供給されるように構成されていてもよい。この場合、例えば、各分岐供給路71に開閉式のバルブをそれぞれ設けて、排気行程にある気筒2に対応した分岐供給路71の上記バルブのみを開くようにすることで、上述のような構成とすることができる。
また、上述の実施形態では、ガス供給口61aを、排気ポート21の上壁面21bにおける排気側バルブステム貫通孔23よりも排気上流側の部分に形成していたが、これに限らず、バルブステム貫通孔23を中心とする半径15mmの領域内であれば、排気ポート21の上壁面21bにおけるバルブステム貫通孔23よりも排気下流側の部分に形成してもよく、バルブステム貫通孔23の位置に設けるようにしてもよい。この場合は、シリンダヘッド1b内のレイアウトによる規制(ウォータジャケット30との重複など)が上述の実施形態とは異なるため、ガスの噴射角度を、上述の噴射角度とは異なる角度範囲とする必要がある。
さらに、上述の実施形態では、ポンプ66によって上記ガスを供給するタイミングを制御していたが、これに限らず、ポンプ66による上記ガスの噴射に代えて、排気脈動や排気バルブ22が燃焼室5に向かって開く際に発生する負圧を利用して、上記ガスを排気ポート21内に供給するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、流量調整弁68によって上記ガスの供給量を調整していたが、これに限らず。流量調整弁68に代えて、上記ガスの供給量を制御可能なポンプを用いて、該ポンプを制御することで上記ガスの供給量を調整するようにしてもよい。この場合、PCM100は、流量調整弁68に代えて、上記ポンプを制御する。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。