本発明は以上の点に鑑みなされたものであって、上述した如き従来技術の欠点を解消し、高精度でテストを行うことが可能なヘッドライトテスター及びその正対方法を提供することを目的とする。更に、本発明の別の目的とするところは、ヘッドライトからの投射光を光学系を介して受光して画像処理を行うことによって迅速且つ高精度でテストを行うことが可能なヘッドライトテスター及びその正対方法を提供することを目的とする。
本発明のヘッドライトテスター及び本発明のヘッドライトテスターの正対方法は、種々の形態を取り得るものであるが、ヘッドライトの画像を処理することによってヘッドライトに対してヘッドライトテスターを正対させる独特の正対手段及び工程を具備していることを基本的な特徴としている。従って、ヘッドライトテスターとしては、ヘッドライトの画像を処理するために正対用撮像装置を有していることが基本的構成である。正対用撮像装置としては、カラーカメラ又はモノクロカメラのいずれかを使用することが可能であり、更に、カメラの撮像素子としてはCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサのいずれかを使用することが可能である。以下に説明する1好適実施形態においては、コスト及び処理速度の観点から、該正対用撮像装置としてはモノクロカメラを使用し且つその撮像素子としてはCMOSイメージセンサを使用しているが、本発明はこの様な特定の実施形態のみに制限されるべきものではない。
更に、本発明のヘッドライトテスターは、ヘッドライトからの投射光の光軸(照射方向)、光度、エルボー点(明暗分岐線)の内の少なくとも一つを決定するために、ヘッドライトからの投射光を受光する光学系、該投射光の配光パターンを投影させるスクリーン、該スクリーン上の配光パターンを撮像する測定用撮像装置、該測定用撮像装置からの画像データを受け取って画像処理を行い該投射光の光軸、光度、及びエルボー点の内の少なくとも一つを決定する画像処理装置、を有している場合がある。該測定用撮像装置としては、カラーカメラ又はモノクロカメラのいずれかを使用することが可能であり、更に、カメラの撮像素子としてはCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサのいずれかを使用することが可能である。以下に説明する1好適実施形態においては、該測定用撮像装置としてはカラーカメラを使用し且つその撮像素子としてはCCDイメージセンサを使用しているが、本発明はこの様な特定の実施形態のみに制限されるべきものではない。
先ず、本発明のヘッドライトテスターにおいて測定用カラーカメラが使用されている場合の種々の態様について以下に説明する。
I.光源種別の判定
本発明の1側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光の配光パターンが投影されるスクリーン、該スクリーン上の該配光パターンを撮像する測定用カラーカメラ、該測定用カラーカメラからのRGBデータを受け取ってRGBデータの内の少なくとも2つのデータ間の関係に基づいて該ヘッドライトの光源種別を判定する光源種別判定手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、RGBデータの内の選択した2つのデータの間の比に基づいて光源種別の判定を行う。更に別の好適実施形態によれば、該2つのデータの間の差に基づいて光源種別の判定を行う。更に別の実施形態によれば、該2つのデータの比及び差の両方に基づいて光源種別の判定を行う。1実施例によれば、該2つのデータがG及びRデータであり、該比はG/Rであり、且つ該差は|G−R|である。
1好適実施形態によれば、光源種別の判定は、暖色系光源(代表例としてはハロゲン)と寒色系光源(代表例としてはHID)との判定である。
II.光軸の決定
本発明の別の側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光の配光パターンが投影されるスクリーン、該スクリーン上の該配光パターンを撮像する測定用カラーカメラ、該測定用カラーカメラの選択した複数個の画素の各々に対してrgb係数を決定するrgb係数決定手段、該測定用カラーカメラからRGBデータを受け取って該rgb係数決定手段によって決定された対応する画素に対するrgb係数を適用して該対応する画素に対する輝度を決定する輝度決定手段、該輝度の内で最高輝度を判別し該最高輝度の上下左右方向の位置を該ヘッドライトの光軸として決定する光軸決定手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、該光学系が主レンズを有している。更に好適には、該主レンズがフレネルレンズである。1好適実施例においては、該測定用カラーカメラが所定の画素数を有するカラーイメージセンサを有しており、該カラーイメージセンサの各画素に対するRGBデータが出力される。好適には、該カラーイメージセンサが単板式であり、そのRGBカラーフィルタが所謂バイヤー配列を有しており、該測定用カラーカメラは補間処理を行って各画素に対する夫々のRGBデータを算出して出力する。別の好適実施例においては、該カラーイメージセンサは多板式であり、該測定用カラーカメラは各画素から直接的にRGBデータを出力する。1実施例においては、該カラーイメージセンサはCCDカラーイメージセンサである。
1好適実施形態によれば、該輝度はCIE・XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zにより定義されるXYZ座標系におけるY座標として決定され、即ちY=r×R+g×G+b×Bとして決定され、尚、R、G、Bは測定用カラーカメラから出力されるRGBデータであり、r、g、bはRGBデータの夫々の重み付けとしての係数である。
rgb係数を決定する場合には、それが適用される色空間を決定することが必要である。xy色度図においてはsRGB,adobeRGB,NTSC_RGB等の幾つかの色空間(所謂カラートライアングル)があるが、1実施例においては、NTSC_RGB色空間を使用する。
ところで、rgb係数(Y係数とも略称する)は、光源であるヘッドライトの色温度(K:ケルビン)に依存して変化する。色温度とは光の色を数値で表したものであって、光度(cd)とは異なるものであり、色温度が高くなるに従い黄色→白色→青色と順次光源の色合いが変化する。即ち、色温度が変化すると光のスペクトル分布も変化し、その結果rgb係数も変化することとなる。従って、輝度Yを決定する場合に使用するrgb係数は、ヘッドライトの色温度に対応するものであることが必要である。色温度が既知である場合(色温度測定器による測定等)には、その測定した色温度に対応するrgb係数を使用することが可能であるが、色温度が不知である場合には、ヘッドライトの色温度を推定して近似させることが必要となる。
更に好適には、光学系を介しての色収差等の影響によるカラーイメージセンサの各画素におけるバラツキを補正してrgb係数を決定する。一般的に、カラーイメージセンサの中央付近から外側へ離れるにつれてそのバラツキは顕著になる傾向がある。1実施例において、該rgb係数は、CIE標準光源の色温度に基づいて決定された少なくとも1個の基準rgb係数と、該基準rgb係数を修正した少なくとも1個の補正rgb係数と、を包含している。1実施例においては、このバラツキを吸収するために、カラーイメージセンサの各画素毎にrgb係数を決定する。別の実施例においては、カラーイメージセンサの全画素を所定数の画素からなるゾーン毎に分割し、各ゾーン内の画素に対しては共通のrgb係数を適用する。
最高輝度を判別する場合には、バランス方式又は2値化重心方式を適用することが可能である。バランス方式では、1実施例においては、3度30分方式を適用する。
1実施例においては、該光軸決定手段は、最高輝度(例えば、バランス点)位置補正テーブルを有しており、最高輝度として抽出された画素の位置に対して予め定められた最高輝度位置補正用のhv位置補正データを適用し最終的な最高輝度の位置を決定する。尚、hは水平(左右)方向の位置補正データで、vは垂直(上下)方向の位置補正データである。
1好適実施形態においては、更に、光源種別判定手段が設けられており、判定された光源種別に応じて適用すべきrgb係数を決定する。
1好適実施形態においては、該rgb係数決定手段は、所定の光度又は色温度別にrgb係数を計算した複数個のテーブルを有しており、測定又は計算した光度又は色温度に従ってテーブルを選択し使用すべきrgb係数を決定する。
好適には、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該光軸決定手段は、該ヘッドライトテスター内において該測定用カラーカメラに接続されている画像処理装置内に設けられている。1実施形態において、該画像処理装置は、少なくとも、CPUとメモリとを有するコンピュータシステムから構成されており、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該光軸決定手段は、本ヘッドライトテスターの動作を制御するプログラムの一部として該メモリ内に格納されている。
III.光度の決定(その1)
本発明の更に別の側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光の配光パターンが投影されるスクリーン、該スクリーン上の該配光パターンを撮像する測定用カラーカメラ、該測定用カラーカメラの選択した複数個の画素の各々に対してrgb係数を決定するrgb係数決定手段、該測定用カラーカメラからRGBデータを受け取って該rgb係数決定手段によって決定された対応する画素に対するrgb係数を適用して該対応する画素に対する輝度を決定する輝度決定手段、該複数個の画素の夫々に対応する複数個の輝度の内で最高輝度を判別し該最高輝度から該ヘッドライトの光度を決定する第1光度決定手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、該光学系が主レンズを有している。更に好適には、該主レンズがフレネルレンズである。1好適実施例においては、該測定用カラーカメラが所定の画素数を有するカラーイメージセンサを有しており、該カラーイメージセンサの各画素に対するRGBデータが出力される。好適には、該カラーイメージセンサが単板式であり、そのRGBカラーフィルタが所謂バイヤー配列を有しており、該測定用カラーカメラは補間処理を行って各画素に対する夫々のRGBデータを算出して出力する。別の好適実施例においては、該カラーイメージセンサは多板式であり、該測定用カラーカメラは各画素から直接的にRGBデータを出力する。1実施例においては、該カラーイメージセンサはCCDカラーイメージセンサである。
1好適実施形態によれば、該輝度はCIE・XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zにより定義されるXYZ座標系におけるY座標として決定され、即ちY=r×R+g×G+b×Bとして決定され、尚、R、G、Bは測定用カラーカメラから出力されるRGBデータであり、r、g、bはRGBデータの夫々の重み付けとしての係数である。
rgb係数を決定する場合には、それが適用される色空間を決定することが必要である。xy色度図においてはsRGB,adobeRGB,NTSC_RGB等の幾つかの色空間(所謂カラートライアングル)があるが、1実施例においては、NTSC_RGB色空間を使用する。
ところで、rgb係数(Y係数とも略称する)は、光源であるヘッドライトの色温度(K:ケルビン)に依存して変化する。色温度とは光の色を数値で表したものであって、光度(cd)とは異なるものであり、色温度が高くなるに従い黄色→白色→青色と順次光源の色合いが変化する。即ち、色温度が変化すると光のスペクトル分布も変化し、その結果rgb係数も変化することとなる。従って、輝度Yを決定する場合に使用するrgb係数は、ヘッドライトの色温度に対応するものであることが必要である。色温度が既知である場合(色温度測定器による測定等)には、その測定した色温度に対応するrgb係数を使用することが可能であるが、色温度が不知である場合には、ヘッドライトの色温度を推定して近似させることが必要となる。
更に好適には、光学系を介しての色収差等の影響によるカラーイメージセンサの各画素におけるバラツキを補正してrgb係数を決定する。一般的に、カラーイメージセンサの中央付近から外側へ離れるにつれてそのバラツキは顕著になる傾向がある。1実施例において、該rgb係数は、CIE標準光源の色温度に基づいて決定された少なくとも1個の基準rgb係数と、該基準rgb係数を修正した少なくとも1個の補正rgb係数と、を包含している。1実施例においては、このバラツキを吸収するために、カラーイメージセンサの各画素毎にrgb係数を決定する。別の実施例においては、カラーイメージセンサの全画素を所定数の画素からなるゾーン毎に分割し、各ゾーン内の画素に対しては共通のrgb係数を適用する。
1実施形態において、最高輝度を有する画素を判別する場合には、バランス方式又は2値化重心方式を適用することが可能である。バランス方式では、1実施例においては、3度30分方式を適用する。
1実施形態において、該第1光度決定手段は、既知の光度を有する基準光源(例えば、標準のヘッドライト又は基準球)の光度と該輝度決定手段によって決定された輝度との間に予め定めた条件に基づいて光度を決定する。1実施例においては、既知の光度を有する基準の光源(例えば、標準のヘッドライト又は基準球)を使用してその基準の光源(例えば、標準のヘッドライト又は基準球)の投射光の輝度を測定し、光度と輝度との関係を予め設定しておく。
1好適実施形態においては、更に、光源種別判定手段が設けられており、判定された光源種別に応じて適用すべきrgb係数を決定する。
1好適実施形態においては、該rgb係数決定手段は、所定の光度又は色温度別にrgb係数を計算した複数個のテーブルを有しており、測定又は計算した光度又は色温度に従ってテーブルを選択し使用すべきrgb係数を決定する。
好適には、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該第1光度決定手段は、該ヘッドライトテスター内において該測定用カラーカメラに接続されている画像処理装置内に設けられている。1実施形態において、該画像処理装置は、少なくとも、CPUとメモリとを有するコンピュータシステムから構成されており、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該第1光度決定手段は、本ヘッドライトテスターの動作を制御するプログラムの一部として該メモリ内に格納されている。
IV.光度の決定(その2)
本発明の更に別の側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光の配光パターンが投影されるスクリーン、該スクリーン上の該配光パターンを撮像する測定用カラーカメラ、該測定用カラーカメラの選択した複数個の画素の各々に対してrgb係数を決定するrgb係数決定手段、該測定用カメラからRGBデータを受け取って該rgb係数決定手段によって決定された対応する画素に対するrgb係数を適用して該対応する画素に対する輝度を決定する輝度決定手段、該配光パターンにおいて該ヘッドライトの中心から所定の位置における輝度を判別し該判別した輝度から該ヘッドライトの光度を決定する第2光度決定手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、該光学系が主レンズを有している。更に好適には、該主レンズがフレネルレンズである。1好適実施例においては、該測定用カラーカメラが所定の画素数を有するカラーイメージセンサを有しており、該カラーイメージセンサの各画素に対するRGBデータが出力される。好適には、該カラーイメージセンサが単板式であり、そのRGBカラーフィルタが所謂バイヤー配列を有しており、該測定用カラーカメラは補間処理を行って各画素に対する夫々のRGBデータを算出して出力する。別の好適実施例においては、該カラーイメージセンサは多板式であり、該測定用カラーカメラは各画素から直接的にRGBデータを出力する。1実施例においては、該カラーイメージセンサはCCDカラーイメージセンサである。
1好適実施形態によれば、該輝度はCIE・XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zにより定義されるXYZ座標系におけるY座標として決定され、即ちY=r×R+g×G+b×Bとして決定され、尚、R、G、Bは測定用カラーカメラから出力されるRGBデータであり、r、g、bはRGBデータの夫々の重み付けとしての係数である。
rgb係数を決定する場合には、それが適用される色空間を決定することが必要である。xy色度図においてはsRGB,adobeRGB,NTSC_RGB等の幾つかの色空間(所謂カラートライアングル)があるが、1実施例においては、NTSC_RGB色空間を使用する。
ところで、rgb係数(Y係数とも略称する)は、光源であるヘッドライトの色温度(K:ケルビン)に依存して変化する。色温度とは光の色を数値で表したものであって、光度(cd)とは異なるものであり、色温度が高くなるに従い黄色→白色→青色と順次光源の色合いが変化する。即ち、色温度が変化すると光のスペクトル分布も変化し、その結果rgb係数も変化することとなる。従って、輝度Yを決定する場合に使用するrgb係数は、ヘッドライトの色温度に対応するものであることが必要である。色温度が既知である場合(色温度測定器による測定等)には、その測定した色温度に対応するrgb係数を使用することが可能であるが、色温度が不知である場合には、ヘッドライトの色温度を推定して近似させることが必要となる。
更に好適には、光学系を介しての色収差等の影響によるカラーイメージセンサの各画素におけるバラツキを補正してrgb係数を決定する。一般的に、カラーイメージセンサの中央付近から外側へ離れるにつれてそのバラツキは顕著になる傾向がある。1実施例において、該rgb係数は、CIE標準光源の色温度に基づいて決定された少なくとも1個の基準rgb係数と、該基準rgb係数を修正した少なくとも1個の補正rgb係数と、を包含している。1実施例においては、このバラツキを吸収するために、カラーイメージセンサの各画素毎にrgb係数を決定する。別の実施例においては、カラーイメージセンサの全画素を所定数の画素からなるゾーン毎に分割し、各ゾーン内の画素に対しては共通のrgb係数を適用する。
1実施形態において、該第2光度決定手段は、ヘッドライトの光度と該輝度決定手段によって決定された輝度との間に予め定めた条件に基づいて光度を決定する。1実施例においては、既知の光度を有する基準の光源(例えば、標準のヘッドライト又は基準球)を使用してその基準の光源(例えば、標準のヘッドライト又は基準球)の投射光の輝度を測定し、光度と輝度との関係を予め設定しておく。該ヘッドライトの中心から所定の位置とは、1実施例においては、該ヘッドライトがすれ違いモードにある場合の所謂路面照射点であって、ランプ中心から左1.3度且つ下0.6度の点(ヘッドライト高さが1m以下の場合)又は左1.3度且つ下0.9度の点(ヘッドライト高さが1mを超える場合)である。
1好適実施形態においては、更に、光源種別判定手段が設けられており、判定された光源種別に応じて適用すべきrgb係数を決定する。
1好適実施形態においては、該rgb係数決定手段は、所定の光度又は色温度別にrgb係数を計算した複数個のテーブルを有しており、測定又は計算した光度又は色温度に従ってテーブルを選択し使用すべきrgb係数を決定する。
好適には、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該第2光度決定手段は、該ヘッドライトテスター内において該測定用カラーカメラに接続されている画像処理装置内に設けられている。1実施形態において、該画像処理装置は、少なくとも、CPUとメモリとを有するコンピュータシステムから構成されており、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該第2光度決定手段は、本ヘッドライトテスターの動作を制御するプログラムの一部として該メモリ内に格納されている。
V.エルボー点の決定
本発明の更に別の側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光の配光パターンが投影されるスクリーン、該スクリーン上の該配光パターンを撮像する測定用カラーカメラ、該測定用カラーカメラの選択した複数個の画素の各々に対してrgb係数を決定するrgb係数決定手段、該測定用カラーカメラからRGBデータを受け取って該rgb係数決定手段によって決定された対応する画素に対するrgb係数を適用して該対応する画素に対する輝度を決定する輝度決定手段、該複数個の画素に対する輝度を互いに比較して少なくとも一本の水平カットラインと該水平カットラインに対して所定の角度を有する少なくとも一本の斜めカットラインとを判別しそれらのカットラインの交点としてエルボー点を決定するエルボー点決定手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、該光学系が主レンズを有している。更に好適には、該主レンズがフレネルレンズである。1好適実施例においては、該測定用カラーカメラが所定の画素数を有するカラーイメージセンサを有しており、該カラーイメージセンサの各画素に対するRGBデータが出力される。好適には、該カラーイメージセンサが単板式であり、そのRGBカラーフィルタが所謂バイヤー配列を有しており、該測定用カラーカメラは補間処理を行って各画素に対する夫々のRGBデータを算出して出力する。別の好適実施例においては、該カラーイメージセンサは多板式であり、該測定用カラーカメラは各画素から直接的にRGBデータを出力する。1実施例においては、該カラーイメージセンサはCCDカラーイメージセンサである。
1好適実施形態によれば、該輝度はCIE・XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zにより定義されるXYZ座標系におけるY座標として決定され、即ちY=r×R+g×G+b×Bとして決定され、尚、R、G、Bは測定用カラーカメラから出力されるRGBデータであり、r、g、bはRGBデータの夫々の重み付けとしての係数である。
rgb係数を決定する場合には、それが適用される色空間を決定することが必要である。xy色度図においてはsRGB,adobeRGB,NTSC_RGB等の幾つかの色空間(所謂カラートライアングル)があるが、1実施例においては、NTSC_RGB色空間を使用する。
ところで、rgb係数(Y係数とも略称する)は、光源であるヘッドライトの色温度(K:ケルビン)に依存して変化する。色温度とは光の色を数値で表したものであって、光度(cd)とは異なるものであり、色温度が高くなるに従い黄色→白色→青色と順次光源の色合いが変化する。即ち、色温度が変化すると光のスペクトル分布も変化し、その結果rgb係数も変化することとなる。従って、輝度Yを決定する場合に使用するrgb係数は、ヘッドライトの色温度に対応するものであることが必要である。色温度が既知である場合(色温度測定器による測定等)には、その測定した色温度に対応するrgb係数を使用することが可能であるが、色温度が不知である場合には、ヘッドライトの色温度を推定して近似させることが必要となる。
更に好適には、光学系を介しての色収差等の影響によるカラーイメージセンサの各画素におけるバラツキを補正してrgb係数を決定する。一般的に、カラーイメージセンサの中央付近から外側へ離れるにつれてそのバラツキは顕著になる傾向がある。1実施例において、該rgb係数は、CIE標準光源の色温度に基づいて決定された少なくとも1個の基準rgb係数と、該基準rgb係数を修正した少なくとも1個の補正rgb係数と、を包含している。1実施例においては、このバラツキを吸収するために、カラーイメージセンサの各画素毎にrgb係数を決定する。別の実施例においては、カラーイメージセンサの全画素を所定数の画素からなるゾーン毎に分割し、各ゾーン内の画素に対しては共通のrgb係数を適用する。
1実施例において、該エルボー点決定手段は、該カラーイメージセンサの選択した画素に対するエルボー点補正用のhv位置補正テーブルを有しており、該水平及び傾斜カットラインに対して又はそれらの交点として決定されたエルボー点位置に対してhv位置補正を適用する。好適には、該hv位置補正データはカラーイメージセンサの各ゾーン毎に共通に適用される。尚、hは水平(左右)方向の位置補正データで、vは垂直(上下)方向の位置補正データである。
1好適実施形態においては、更に、光源種別判定手段が設けられており、判定された光源種別に応じて適用すべきrgb係数を決定する。
1好適実施形態においては、該rgb係数決定手段は、所定の光度又は色温度別にrgb係数を計算した複数個のテーブルを有しており、測定又は計算した光度又は色温度に従ってテーブルを選択し使用すべきrgb係数を決定する。
好適には、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該エルボー点決定手段は、該ヘッドライトテスター内において該測定用カラーカメラに接続されている画像処理装置内に設けられている。1実施形態において、該画像処理装置は、少なくとも、CPUとメモリとを有するコンピュータシステムから構成されており、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該エルボー点決定手段は、本ヘッドライトテスターの動作を制御するプログラムの一部として該メモリ内に格納されている。
VI.明暗分岐線の探索
本発明の更に別の側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光の配光パターンが投影されるスクリーン、該スクリーン上の該配光パターンを撮像する測定用カラーカメラ、該測定用カラーカメラの選択した複数個の画素の各々に対してrgb係数を決定するrgb係数決定手段、該測定用カラーカメラからRGBデータを受け取って該rgb係数決定手段によって決定された対応する画素に対するrgb係数を適用して該対応する画素に対する輝度を決定する輝度決定手段、該複数個の画素に対する輝度を互いに比較して該配光パターンにおける明るい部分と暗い部分との境界である明暗分岐線を決定する明暗分岐線決定手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、該光学系が主レンズを有している。更に好適には、該主レンズがフレネルレンズである。1好適実施例においては、該測定用カラーカメラが所定の画素数を有するカラーイメージセンサを有しており、該カラーイメージセンサの各画素に対するRGBデータが出力される。好適には、該カラーイメージセンサが単板式であり、そのRGBカラーフィルタが所謂バイヤー配列を有しており、該測定用カラーカメラは補間処理を行って各画素に対する夫々のRGBデータを算出して出力する。別の好適実施例においては、該カラーイメージセンサは多板式であり、該測定用カラーカメラは各画素から直接的にRGBデータを出力する。1実施例においては、該カラーイメージセンサはCCDカラーイメージセンサである。
1好適実施形態によれば、該輝度はCIE・XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zにより定義されるXYZ座標系におけるY座標として決定され、即ちY=r×R+g×G+b×Bとして決定され、尚、R、G、Bは測定用カラーカメラから出力されるRGBデータであり、r、g、bはRGBデータの夫々の重み付けとしての係数である。
rgb係数を決定する場合には、それが適用される色空間を決定することが必要である。xy色度図においてはsRGB,adobeRGB,NTSC_RGB等の幾つかの色空間(所謂カラートライアングル)があるが、1実施例においては、NTSC_RGB色空間を使用する。
ところで、rgb係数(Y係数とも略称する)は、光源であるヘッドライトの色温度(K:ケルビン)に依存して変化する。色温度とは光の色を数値で表したものであって、光度(cd)とは異なるものであり、色温度が高くなるに従い黄色→白色→青色と順次光源の色合いが変化する。即ち、色温度が変化すると光のスペクトル分布も変化し、その結果rgb係数も変化することとなる。従って、輝度Yを決定する場合に使用するrgb係数は、ヘッドライトの色温度に対応するものであることが必要である。色温度が既知である場合(色温度測定器による測定等)には、その測定した色温度に対応するrgb係数を使用することが可能であるが、色温度が不知である場合には、ヘッドライトの色温度を推定して近似させることが必要となる。
更に好適には、光学系を介しての色収差等の影響によるカラーイメージセンサの各画素におけるバラツキを補正してrgb係数を決定する。一般的に、カラーイメージセンサの中央付近から外側へ離れるにつれてそのバラツキは顕著になる傾向がある。1実施例において、該rgb係数は、CIE標準光源の色温度に基づいて決定された少なくとも1個の基準rgb係数と、該基準rgb係数を修正した少なくとも1個の補正rgb係数と、を包含している。1実施例においては、このバラツキを吸収するために、カラーイメージセンサの各画素毎にrgb係数を決定する。別の実施例においては、カラーイメージセンサの全画素を所定数の画素からなるゾーン毎に分割し、各ゾーン内の画素に対しては共通のrgb係数を適用する。
1好適実施形態においては、更に、光源種別判定手段が設けられており、判定された光源種別に応じて適用すべきrgb係数を決定する。
1好適実施形態においては、該rgb係数決定手段は、所定の光度又は色温度別にrgb係数を計算した複数個の第1テーブルを有しており、測定又は計算した光度又は色温度に従って適切な第1テーブルを選択し使用すべきrgb係数を決定する。
更に、1実施形態においては、該rgb係数決定手段は、配光パターンにおける明暗分岐線の探索を行う場合に使用すべき複数個の特別のrgb係数を含む明暗分岐線探索用rgb係数テーブルを所定の光度別又は色温度別に包含している。1実施例においては、該明暗分岐線探索用rgb係数は、r係数、g係数と比較してb係数を相対的に増加させて配光パターンにおける青色成分に注視して明暗分岐線の探索を行う。1実施例においては、該明暗分岐線探索用rgb係数は、一つの係数のみ(好適には、一番安定しているg係数)を残し他の2つの係数(好適にはr係数及びb係数)をゼロに設定し、該一つの係数のみを使用して明暗分岐線の探索を行う。別の1実施形態においては、該rgb係数決定手段は、該第1テーブルの夫々のrgb係数に同一の乗数αを乗算して明暗分岐線探索用rgb係数を決定する。尚、この乗数αは1より大きく且つ4以下の値である。
1好適実施形態においては、該輝度決定手段は、RGBデータをガンマ処理するか又は自然対数処理した後に該処理したRGBデータを使用して輝度Yを決定するか又は輝度Yを決定した後に該輝度Yについてガンマ処理するか又は自然対数処理する。1実施例において、該明暗分岐線決定手段は、差の差方式を使用して明暗分割線を決定する。
好適には、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該明暗分岐線決定手段は、該ヘッドライトテスター内において該測定用カラーカメラに接続されている画像処理装置内に設けられている。1実施形態において、該画像処理装置は、少なくとも、CPUとメモリとを有するコンピュータシステムから構成されており、該rgb係数決定手段、該輝度決定手段、該エルボー点決定手段は、本ヘッドライトテスターの動作を制御するプログラムの一部として該メモリ内に格納されている。
次に、本発明の独特の正対機構を具備するヘッドライトテスター又は独特の正対工程を具備する正対方法について説明するが、この様なヘッドライトテスター又は正対方法は上に説明した測定用カラーカメラを具備する構成に必ずしも限定されるべきものではなく、測定用モノクロカメラを具備する構成にも適用可能なものであることを注意すべきである。
VII.正対
正対とは、基本的には、ヘッドライトのランプ中心(バルブ中心)に対してヘッドライトテスターの主レンズの光軸(中心)を整合(一致)させることである。
本発明の一つの側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受け取る光学系、該光学系を介して該投射光を受光して該ヘッドライトの画像を撮像する正対用撮像装置、該正対用撮像装置から該ヘッドライトの画像データを受け取る画像処理装置であって、該画像データを二値化データへ変換させる二値化手段と、該ヘッドライトのランプ中心周りに他の画像部分と離隔された整形画像を形成するために該二値化データに対してモルフォロジー処理を行うモルフォロジー処理手段と、該整形画像の中心を決定する中心決定手段と、を具備している画像処理装置、該画像処理装置から供給される該整形画像の中心の情報に基づいて該ヘッドライトに対して正対させるための移動制御を行う移動制御手段、を有するヘッドライトテスターが提供される。
1好適実施形態によれば、該光学系が主レンズを有している。更に好適には、該主レンズがフレネルレンズである。
1実施形態において、該画像処理装置は、少なくとも、CPUとメモリとを有するコンピュータシステムから構成されており、該二値化手段、該モルフォロジー処理手段、該中心決定手段は、本ヘッドライトテスターの動作を制御するプログラムの一部として該メモリ内に格納されている。1実施例においては、該モルフォロジー処理がクロージング処理(膨張(ダイレーション)を行った後に膨張と同じ回数だけ収縮(エロージョン)を行う処理)であり、好適には、該クロージング処理をランプ中心付近において所望の整形画像が得られるまで複数回行う。更に、好適には、該整形画像が実質的に正方形又は矩形の形状となるようにクロージング処理を行う。1実施例においては、該ランプ中心はバルブ中心である。
1実施形態においては、該移動制御手段は、該整形画像の中心の情報に基づいて該ヘッドライトに対して正対させる場合に、該ヘッドライトテスターの光軸の位置と該整形画像の中心の位置との差が所定の許容範囲内に入った場合に実質的に正対されたものとして該ヘッドライトテスターの移動を停止する。その場合に発生している位置の差は該画像処理装置において確定することが可能であるから、その後の画像処理を行う場合に、該位置の差を前提としてデジタル的に補正を行う。
1実施形態においては、該正対用撮像装置は、該ヘッドライトの投射光を受光して該ヘッドライトの画像を撮像する場合に、ランプ中心周りにその周囲よりも暗い領域が存在するような画像を撮像することが可能な性能を有している。好適には、該正対用撮像装置は、該ヘッドライトの投射光を受光してヘッドライトの画像を撮像する場合に、該画像内において白飛び又は黒潰れなどの現象が発生することがないダイナミックレンジを有している。1実施例においては、該正対用撮像装置はハイダイナミックレンジ(HDR)機能を具備しており、該HDR機能を使用してヘッドライトの画像を撮像する。
1実施形態においては、該ヘッドライトテスターは、更に、該画像処理装置に接続している測定用カラーカメラを有しており、該画像処理装置は、該測定用カラーカメラからの情報と該正対用撮像装置からの情報とを相互利用して所望の機能を達成する。例えば、該画像処理装置は、更に、該測定用カラーカメラからのRGBデータに基づいてヘッドライトの光源種別(ハロゲン、HID、LED)を判定する光源種別判定手段とを有しており、該画像処理装置は、その光源種別情報を利用して該ヘッドライトの光源タイプ(レンズカット、マルチリフレクタ)を判別する。レンズカットの場合には、ヘッドライトの撮像画像中に比較的細くピッチの比較的小さな複数個の縦縞を有しており、一方、マルチリフレクタの場合には、ヘッドライトの撮像画像中に比較的太く比較的ピッチの大きな複数個の縦縞を有している。光源種別がハロゲンの場合には、レンズカットか又はマルチリフレクタかのいずれかであり、一方、光源種別がHIDの場合には、プロジェクターかマルチリフレクタからのいずれかである。従って、画像処理装置は、光源種別情報に基づいてハロゲンかHIDかの識別を行うことが可能であり、更に、撮像画像中の縦縞の太さ及びピッチを調べることによってレンズカットかマルチリフレクタかの判別を行うことが可能である。
本発明の別の側面によれば、ヘッドライトからの投射光を受光して該ヘッドライトの画像を撮像し、該画像を二値化し、二値化した画像に対してモルフォロジー処理を行って該ヘッドライトのランプ中心周りに他の画像部分と離隔された整形画像を形成し、該整形画像の中心を決定し、ヘッドライトテスターの光軸を該中心に整合させるべく該ヘッドライトテスターを移動させる、ことを包含しているヘッドライトテスターの正対方法、が提供される。
1実施例においては、該撮像された画像はモノクロ画像であり、好適には正対用撮像装置のハイダイナミックレンジ(HDR)機能を使用して撮像する。1実施例においては、該画像は、ヘッドライトのランプ中心周りにその周囲部分よりも一層暗い画像部分を包含している。好適には、該暗い画像部分はランプのバルブの位置に対応しており、該ランプ中心は実質的にバルブ中心に一致している。1実施例においては、該モルフォロジー処理はクロージング処理であって、該整形画像が所望の寸法形状となるまで又は該整形画像が消失するまで該クロージング処理を繰り返し行う。消失するまでクロージング処理を行う場合には、少なくとも一つ前の処理で得られた画像を格納しておき、消失した場合に、その一つ前の処理で得られた画像を最終の整形画像として使用する。クロージング処理とは、膨張(ダイレーション)を行った後に膨張と同じ回数だけ収縮(エロージョン)を行う処理である。1実施例においては、該整形画像が実質的に正方形又は矩形の形状となるまでクロージング処理を繰り返し行う。1実施例においては、該整形画像の中心が該ヘッドライトのバルブ中心と実質的に一致しており、該中心を正対中心として決定する。1実施例において、該光軸とは、該ヘッドライトテスターの主レンズの中心(光軸)であり、好適には、該主レンズはフレネルレンズである。
1実施形態においては、該ヘッドライトテスターを移動させてヘッドライトテスターの光軸を該整形画像の中心に整合させる場合に、該光軸の位置と該整形画像の中心の位置との差が所定の許容範囲内に入った場合に実質的に整合されたものとして移動を停止する。これはヘッドライトテスターの動作の迅速性及び装置の複雑化の回避の観点に鑑みて本発明に組み込まれている特徴である。即ち、ヘッドライトテスターの移動は、通常、機械的機構を介して行われるものであるが、機械的機構には必ずクリアランスが存在しており、その様なクリアランスを可及的に小さくして所望の整合状態を得るためには極めて正確な機械的機構が必要となる。更に、所望の整合状態を得るためには、整合状態を何回もチェックしながらヘッドライトテスターを上下左右に往復移動させることが必要となる場合があり、動作が遅滞化することとなる。この様な問題点を解消するために、本発明のこの実施形態においては、該光軸の位置と該整形画像の中心の位置との差が所定の許容範囲に入った場合に実質的に整合されたものとしている。そして、その場合に発生している位置の差は画像処理装置において確定することが可能であるから、その後の画像処理を行う場合に、該位置の差を前提としてデジタル的に補正を行う。
本発明の1側面によれば、ヘッドライトの投射光をカラー画像処理することによってヘッドライトの光軸(照射方向)、光度、エルボー点位置の少なくとも一つを正確且つ迅速に決定することが可能である。更に、すれ違い灯ヘッドライトの配光パターンにおける明暗分岐線を正確且つ迅速に決定することが可能である。
本発明によれば、ヘッドライトに対して迅速且つ高精度でヘッドライトテスターを正対させることが可能である。
図1は、本発明の1実施例に基づいて構成されたヘッドライトテスター10の概略正面図を示している。ヘッドライトテスター10は、概略的に、検査すべき自動車等の車両のヘッドライトからの投射光を受光する受光部11と、受光部11を上下左右に移動自在に支持している基台12と、基台12上に直立されたスタンド部14と、スタンド部14の上部に配置された表示部(モニター)15とを有している。基台12の底部には複数個の転動体12aが設けられており、これらの転動体12aは床面13上に敷設されている図1において左右に延在している一対のレール(不図示)上に沿って移動可能である。図示例においては、スタンド部14は垂直方向に延在しているガイド棒14bが取り付けられており、更に、ガイド棒14bに沿って上下方向に移動自在にブラケット14cが設けられている。又、ブラケット14cはガイド棒14b周りに手動的に回転自在に設けられており、所望の回転位置においてガイド棒14bに対して固定させることが可能である。受光部11はブラケット14c上に取り付けられているので、受光部11はガイド棒14bに沿って上下方向に且つガイド棒14bの中心軸周りに移動制御可能である。受光部11にはファインダー(望遠鏡)11aが取り付けられており、検査すべきヘッドライトの向きと整合させるべく受光部11をガイド棒14b周りに回転させることが可能である。更に、スタンド部14内には受光部11の上下方向の移動を制御する第1駆動制御部と、基台12の左右方向の移動を制御する第2駆動制御部とが設けられている。スタンド部14には、更に、複数個のスイッチを包含しているコンソールパネル14aが設けられており、オペレータはこのコンソールパネル14aを介してデータを入力してヘッドライトテスター10の動作を制御することが可能である。表示部15は、種々の検査状態や検査結果を表示することが可能なLCDディスプレイ等を有している。
図示例においては、受光部11の上にデータ処理装置21が設けられており、後述する如く、受光部11によって受光された検査すべきヘッドライトからの投射光を画像処理するための種々の回路要素がデータ処理装置21内に設けられている。尚、データ処理装置21は、本図示例においては、受光部11の上に設けられているが、データ処理装置21は、必ずしも、受光部11の上に設けることが必要なものではなく、ヘッドライトテスター10のその他の箇所、例えば、スタンド部14内に設けることも可能であり、更に、無線接続を使用する場合には、ヘッドライトテスター10とは離れた位置に設けることも可能である。データ処理装置21は、受光部11内に設けられている後述する撮像装置(カメラ)からのデータを有線又は無線などにより受け取ることが可能なように接続されていることが必要であるに過ぎない。
図2(A)乃至(D)は、受光部11の内部構成の幾つかの実施形態を概略的に示している。図2(A)に示されている実施例から明らかな如く、受光部11はハウジングとしての機能を具備しており、その前面には主レンズ17が設けられており、主レンズ17は、検査すべきヘッドライトLからの投射光を受光するように位置されている。即ち、ヘッドライトのテストを行う場合には、検査すべきヘッドライトLと主レンズ17との間の距離を所定の試験距離D(通常は、1m)に設定することが必要である。従って、通常は、検査すべきヘッドライトLを装着した自動車などの車両を自走させてヘッドライトテスター10の主レンズ17の前方で試験距離Dの位置にヘッドライトLを位置させる。一方、ヘッドライトテスター10を前後方向にも移動自在に設けて、ヘッドライトテスター10を検査すべきヘッドライトLに対して所定の試験距離Dの位置に設定する構成とすることも可能であることは勿論である。
主レンズ17は、通常、フレネルレンズであり、受光部11の大きさ、特にその長さを極力最小とさせるために使用されている。即ち、ヘッドライトのテストは、本来は、ヘッドライトの10m前方に位置させた外部スクリーン(10mスクリーン)上にヘッドライトからの投射光を投射させて目視により行うものであるが、ヘッドライトテスターにおいては、フレネルレンズを含む光学系を使用することによって、10mスクリーン上の配光パターンを受光部11内部のスクリーン19上に再現させる構成となっている。この10mスクリーンの再現については後に更に詳細に説明する。図2(A)に示されている如く、受光部11内には、主レンズ17の光軸上に一対の第1及び第2ハーフミラー22,18が設けられている。従って、ヘッドライトLからの投射光を主レンズ17を通過した後に、第1ハーフミラー22によってその一部が透過されると共にその残部は上方へ反射される。第1ハーフミラー22からの透過光は第2ハーフミラー18を透過して内部スクリーンとしての測定用スクリーン19上に投射光の配光画像が形成される。後述するように、測定用スクリーン19と主レンズ17との間の距離は前述した10m再現に基づいて決定されるものである。
第2ハーフミラー18の垂直上方には測定用撮像装置としての測定用カメラ20が設けられており、測定用カメラ20は第2ハーフミラー18で反射される測定用スクリーン19上の投射光の配光画像を撮像する。測定用カメラ20はカラーカメラか又はモノクロカメラとすることが可能であり、カラーカメラである場合には、測定用スクリーン19上の配光画像をカラー画像として撮像する。測定用カメラ20は受光部11の上部に設けられているデータ処理装置21に接続されており、測定用カメラ20からのデータはデータ処理装置21に供給される。一方、第1ハーフミラー22の垂直上方には第3ミラー23が設けられており、第1ハーフミラーからの反射光を反射させて正対用撮像装置としての正対用カメラ24へ入力させる。正対用カメラ24はカラーカメラとすることも可能であるが、モノクロカメラとすることも可能である。正対用カメラ24も受光部11に取り付けられており、更に、データ処理装置21と接続されており、正対用カメラ24からのデータもデータ処理装置21に供給される。尚、正対用カメラ24は、ヘッドライトLに対してヘッドライトテスター10、より特定的には受光部11の主レンズ17の中心17a、を正対させるために使用されるものであるから、正対用カメラ24は、ヘッドライトL自身の画像を撮像する位置関係に配置されており、後に詳述する如く、投射光の配光画像を撮像する測定用カメラ20とは配置条件が異なっている。
図2(B)は受光部11の別の実施例の構成を示している。図2(B)の実施例の構成は図2(A)の実施例の構成と基本的に同じであるが、図2(A)の実施例における構成から第1ハーフミラー22と、第3ミラー23と、正対用カメラ24とを取り除いたものと同じである。従って、図2(B)の受光部11はスクリーン19上に投射されるヘッドライトLからの配光画像のみを処理するものであって、受光部11では正対機能を司るものではない。正対動作は受光部11とは別の要素を使用して行うことが必要である。
図2(C)は受光部11の更に別の実施例の構成を示しており、この場合には、図2(A)の実施例の構成から測定用カメラ20及びそれと関連する第2ハーフミラー18及びスクリーン19を削除している。従って、図2(C)の受光部11は正対用カメラ24によってヘッドライトLに対する正対動作のみを司るものであって、ヘッドライトLの投射光の配光パターンを撮像するものではない。図2(D)は受光部11の更に別の実施例の構成を示しており、それは図2(C)の実施例の構成において正対用カメラ24と第3ミラー23との受光部長手軸方向における配置関係を反転させたものである。従って、第3ミラーの角度配置も第1ハーフミラー22からの反射光を正対用カメラ24へ反射させることが可能な状態に変更されている。この場合にも、受光部11は正対用カメラ24によるヘッドライトLに対する正対動作のみを司るものである。
図3は、データ処理装置21と関連部品との接続関係を示したブロック図である。データ処理装置21は画像処理装置30と制御部31とを有しており、画像処理装置30は配光画像を撮像する測定用カメラ20から画像データを受け取り、一方、正対用カメラ24からのヘッドライトLの撮像データを受け取る。画像処理装置30は、例えば、CPUやメモリ等からなるコンピュータシステムから構成されており、メモリは、本ヘッドライトテスター10の動作を制御するプログラム等を格納しているROMや、該プログラムに従って処理中の種々のデータを一時的に格納するRAM等を包含している。画像処理装置30は表示部(モニター)15と接続されており、プログラムに従って処理された結果及び/又は種々の設定条件等を表示部15に表示させる。更に、画像処理装置30は制御部31に接続されており、制御部31はオペレータの入力を受け取る種々のスイッチ等を包含しているコンソール(制御部)14aに接続されると共に、受光部11を上下左右に移動させる駆動装置及び受光部11の上下左右方向の位置制御を規制するリミター等を包含している上下左右駆動装置及び検知器14dと接続している。
図4は、受光部11内で10m再現を行う場合の関係式を示しており、それは交通安全公害研究所(現在の交通安全環境研究所)から公表されているものである。即ち、ヘッドライトのテストは、本来的には、ヘッドライトの前方10mに位置された外部スクリーン(10mスクリーン)上に投射光を照射して、該10mスクリーン上における配光パターンに基づいて目視により行うこととなっている。ヘッドライトテスターはこの様なヘッドライトのテストを実効的に行うために10m再現構成を採用している。即ち、図4に示されている如く、ヘッドライトLの前方10mの位置Aに外部スクリーン(10mスクリーン)が配置されておりそこにヘッドライトLからの投射光が照射されて該外部スクリーン(10mスクリーン)上にはヘッドライトLの投射光の配光パターンが目視により確認できるものとする。そこで、ヘッドライトテスターにおいて10m再現を行う場合には、ヘッドライトLの1m前方に受光部11の主レンズ17を配置させ、主レンズ17の焦点距離fによって、主レンズ17に入射されるヘッドライトLの投射光は主レンズ17から距離xにおける位置Bに配置されている内部スクリーン19上に投射光の配光パターンが映し出されることとなる。この時に、外部スクリーン(10mスクリーン)A上の大きさaは内部スクリーンB上においては大きさyとなる。この様に主レンズ17の焦点距離を適切に選択することによって、主レンズ17と位置Bにおける内部スクリーン19との間の距離xを適切に決定することが可能となる。即ち、主レンズ17と内部スクリーン19とを受光部11内に配置させることが可能となり、ヘッドライトテスターにおいて10m再現を実現することが可能となる。
図4に関連して図5も参照して説明すると、測定用カメラ20は受光部11内の位置Bにおける内部スクリーン19上に映し出されるヘッドライトLからの投射光の配光パターンを撮像するものである。測定用カメラ20はレンズ20aと半導体イメージセンサ20bとを有しており、レンズ20aは内部スクリーン19から距離z(ワークディスタンス)の位置に位置されている。従って、内部スクリーン19上の投射光の配光パターンはレンズ20aを介して半導体イメージセンサ20b上に結像されることとなり、これにより、測定用カメラ20によって内部スクリーン19上の配光画像を撮像することが可能である。半導体イメージセンサ20bとしては、CCD又はCMOSを使用することが可能である。
図4と図5の関係を図6にまとめて示してある。即ち、図6に示されているように、ヘッドライトテストにおいて本来的に予定されている大型の10mスクリーン25は、主レンズ17の焦点距離fによって受光部11内の小型の内部スクリーン19に再現されており、内部スクリーン19上のカラー配光画像は測定用カメラ20のレンズ20aを介して半導体イメージセンサ20b上に結像される。ここで、xは10m相関距離(主レンズ17と内部スクリーン19との間の距離)であり、zは内部スクリーン19と測定用カメラ20又はそのイメージセンサ20bとの間のワークディスタンスである。
測定用カメラ20内の半導体イメージセンサ20bは好適にはCCDから構成されており、公知の如く、複数個の画素からなる2次元配列を有している。測定用カメラ20がカラーカメラである場合には、イメージセンサ20bは単板式又は多板式とすることが可能であり、単板式の場合には、2次元マトリクスの形状に配列された複数個の画素の各々の上に3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の内のいずれか一つのカラーフィルタが配設されている。この場合のカラーフィルタの配列は所謂ベイヤー配列とすることが一般的であるが、本発明はそのような特定の配列のみに制限されるべきものではない。この様なカラーフィルターの配列の場合には、各画素からは対応したフィルターに従う色成分の光量に応じた電荷が画素データとして得られるに過ぎない。従って、測定用カメラ20では、得られた画素データをA/D変換した後に、所定数の周辺の画素のデータを基に色補間処理を行って、各画素において欠如する他の残りの2つの原色成分のデータを発生する。この様にして半導体イメージセンサ20bとして単板式を使用した場合には、測定用カメラ20は、上述した如き色補間処理を行うことによって、各画素に対するデジタルのRGB夫々のデータ(レベルが0〜255の範囲内のデジタルデータ又はアナログデータ)を発生し出力する。一方、半導体イメージセンサ20bが多板式である場合には、各画素から直接的にRGBの夫々のデータが得られるので、測定用カメラ20は、夫々のRGBデータをRGBデータ(レベルが0〜255の範囲内のデジタルデータ又はアナログデータ)として出力する。
1実施例においては、イメージセンサ20bとして、640個(横)×480個(縦)からなる2次元配列の画素からなる測定領域を有するCCDイメージセンサを使用している。
次に、測定用カメラ20としてカラーカメラを使用した場合の種々の実施態様について詳細に説明する。
本発明に基づいて、カラー画像処理を行うことによってヘッドライトの光源種別判定を自動的に行う構成について特に図7を参照して説明する。図7は、本発明者等の鋭意研究の結果得られた多数のハロゲンランプとHIDランプとについてのRGB相対強度比率を測定した結果をまとめたものである。この結果を、例えば、G/Rを横軸にとり|G−R|を縦軸にとってプロットすると、ハロゲンランプとHIDランプの夫々の領域が明確に区別されることが明らかである。従って、図7に示されているRGBの相対強度比率をテーブル等の形態で画像処理装置30内に格納しておけば、検査すべきヘッドライトLがハロゲンランプ(暖色系ランプ)であるか、又はHIDランプ(寒色系ランプ)であるかを本ヘッドライトテスター10によって自動的に判別することが可能である。
図7に示されている条件を画像処理装置30のメモリ内にテーブルとして格納する場合には多数の形態を取ることが可能であり、少なくとも以下の3つのテーブルの具体例を構成することが可能である。
(1)G/Rのみをパラメータとする場合
0.0≦G/R≦1.19 → ハロゲンランプ
1.20≦G/R≦1.79 → HIDランプ
(2)|G−R|のみをパラメータとする場合
1.0≦|G−R|<30 → ハロゲンランプ
30≦|G−R|≦80 → HIDランプ
(3)G/Rと|G−R|との両方をパラメータとする場合
0.0≦G/R≦1.19且つ1.0≦|G−R|<30 → ハロゲンランプ
1.20≦G/R≦1.79且つ1.0≦|G−R|≦80 → HIDランプ
本ヘッドライトテスター10において、検査すべきヘッドライトLの種別判定を行う動作について説明すると、先ず、検査すべきヘッドライトLからの投射光を受光部11の内部スクリーン19上に投射させる。内部スクリーン19上の配光パターンは測定用カメラ20のイメージセンサ20b上に結像され、イメージセンサ20bの夫々の画素に対してRGBデータが該配光パターンに従って測定用カメラ20から発生される。そして、配光パターン内の最高輝度値Yを抽出し、その最高輝度値Yが所定の範囲(例えば、195以上220以下の範囲)内に入ることを確保する。
尚、各画素に対しての輝度値とRGBデータとの関係は次式で表される。
Y=r×R+g×G+b×B
尚、RGBは各画素のRGBの夫々のデジタルデータ(0乃至255)であり、rgbはRGBの夫々の重み付けとしての係数(rgb係数をまとめてY係数とも呼称される)。
1実施例においては、測定用カメラ20はデフォルト値として、色温度3170Kにおいて以下のrgb係数値を有している。
r=0.4111
g=0.5461
b=0.0428
従って、これらのrgb係数値及びRGBデータを使用して、各画素の輝度値Yを計算することが可能である。そして、その場合に、抽出された最高輝度値Yが前記所定の範囲内に入ることを確保するということは、測定用カメラ20はシャッター速度を調整することが可能であり、そのシャッター速度を適切な値に設定するためである。即ち、先ずシャッター速度を下限値に設定すると、多くの画素からのRGBデータは飽和値(255)となるので、各画素からのRGBデータが255以下となるようにシャッター速度を順次上げていく。この場合に、初めは荒く、即ち所定数の画素毎に、飛ばしながら処理し、目標値に近づいたらより細かく処理を行う。そして、抽出された最高輝度値Yが前記所定の範囲内に収まることを確保する。
以上の処理によって抽出された最高輝度値Yに対応する画素におけるRGBデータに基づいて前述したG/R及び|G−R|等の相対強度比率を計算することが可能である。別の実施形態においては、そのようにして抽出された最高輝度値Yに対応する画素の周辺の所定数の画素(例えば、10×10個の画素)に基づいて上記相対強度比率を計算することも可能である。
更に、上述した如く、各画素の輝度値Yを計算する場合には、各画素のRGBデータを使用して計算することが可能であるが、別の実施形態としては、そのようにして計算された各画素の輝度値Yに基づいて、周辺画素(例えば、3×3個の画素)の夫々の輝度値Yとの平均値を中心画素の輝度値Yとして置換させることも可能である。
上述した如くに計算された相対強度比率に基づいて、検査中のヘッドライトLがハロゲンランプ(暖色系ランプ)であるか、又はHIDランプ(寒色系ランプ)であるかの種別の判定を自動的に行うことが可能である。
ところで、上述した実施例においては、ヘッドライト光源種別判定のパラメータとして、G/Rと|G−R|との2つのパラメータを使用しているが、測定用カメラ20からはRGBの3つのデータが出力されるものであるから、これらの3つのRGBデータの内の任意の2つを選択して比率及び/又は差などのパラメータを構成してヘッドライト光源種別判定のパラメータとして使用することが可能であることは勿論である。更に、上述した実施例においては、光源種別としては、ハロゲンランプとHIDランプとを採用しているが、その他の光源としてはLEDランプもあるので、LEDランプに対しても本発明を適用可能であることは勿論である。更に、ヘッドライトLがハロゲンランプである場合の色温度は約2500〜4000Kであり、一方HIDランプである場合の色温度は約4000〜6000であると言われているので、ヘッドライトLの色温度を測定することによりこれらの光源の種別の判定を行うことも可能である。
次に、本発明の別の側面に基づいて、本ヘッドライトテスターにより、光軸、光度、又はエルボー点の測定を行う場合について夫々説明する。いずれの測定を行う場合においても、先ず、本ヘッドライトテスター10の測定用カラー撮像装置である測定用カメラ20によってヘッドライトLからの投射光の配光パターンを撮像し、その配光パターンに従って測定用カメラ20が各画素毎のRGBデータを画像処理装置30へ供給し輝度Yを計算することが必要である。1実施例においては、測定用カメラが0〜255のデジタル値としてRGBデータを画像処理装置30へ供給する。別の実施例において、測定用カメラから出力されるRGBデータがアナログ値である場合には、画像処理装置30においてそのアナログRGBデータを256階調(8ビット)である0(最低輝度)〜255(最高輝度)のデジタルRGBデータへ変換する。そして、画像処理装置30は、このデジタルRGBデータを処理して測定用カメラ20のカラーイメージセンサ20bの各画素に対する輝度Yを計算する。この場合に、輝度Yとは、CIE・XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zにより定義されるXYZ座標におけるY座標に対応しており、本明細書においては、
Y=r×R+g×G+b×B (1)
によって定義されるものとする。尚、r,g,bの夫々の係数はR,G,Bが夫々単独で強度100%、即ち値1、の場合のY値である。
従って、輝度Yを計算するためには、RGBデータの夫々の重み付けとしての係数r、g、bの値が確定されていなければならない。これらの係数r、g、bの値を確定させるためにはRGBからXYZへの変換式を導出することが必要である。
ここで、RGBからXYZへの変換式を次式で表されるものとする。
この変換行列Mを以下の如くに設定する。
尚、ここで、xR、yR、zRは原色Rの色度座標(xR=XR/(XR+YR+ZR)など)、xG、yG、zGは原色Gの色度座標、xB、yB、zBは原色Bの色度座標であり、CR、CG,CBは未定の定数である。
そして、RGB値は[0,1]に正規化されており且つ白色がXW、YW、ZWで表されるとすると上式(2)は次の如くになる。
白色YW=1であり、XW=xWYW/yW=xW/yWであり且つZW=zWYW/yW=zW/yWであるから、上式(4)は次の3つの連立方程式となる。
xW/yW=CRxR+CGxG+CBxB
1=CByR+CGyG+CByB (5)
zW/yW=CRzR+CGzG+CBzB
式(5)の3つの連立方程式において、RGB色空間(例えば、sRGB,adobeRGB、NTSC_RGB等)を指定することによって原色RGBの色度座標(xR、yR、xG,yG,xB、yB)が決まり(尚、定義上、zR=1−(xR+yR)、zG=1−(xG+yG)、zB=1−(xB+yB)である)、更に、光源を指定することによって白色点の色度座標(xW、yW)が特定されるので(尚、定義上、zw=1−(xw+yw)である)、3つの不定の定数CR、CG、CBについて解くことが可能である。
そして、上式(3)からYは、
Y=CRyR×R+CGyG×G+CByB×B (6)
となるので、前述した輝度Yの定義式(1)における係数r、g、bは以下の如くに決定される。
r=CRyR、g=CGyG、b=CByB (7)
上述した如く、RGB色空間(例えば、sRGB,adobeRGB、NTSC_RGB等)を特定することによって原色RGBの色度座標が特定され且つ光源を特定することによって白色点の色度座標が特定され、その結果、輝度Yの定義式(1)におけるr、g、b係数が特定されることとなる。
一方、図8に示されるように、CIE(国際照明委員会)は多数の標準光源を標準イルミナント(A,B,C,D,E,F等)として規定しており、夫々の標準光源の白色点(white point)を色度座標(x,y)として規定している。尚、図8においては、これらの白色点について1931年に規定された2°視野のものと1964年に規定された10°視野のものとが記載されている。以下の実施例においては、1931年に規定された2°視野の白色点の色度座標(x2,y2)を使用する。更に、以下の実施例においては、RGB色空間としてNTSC_RGBを特定するものとすると、NTSC_RGB色空間における原色R,G,B夫々の色度座標は図9に示される値を有している。
そこで、図9に示されているNTSC_RGB色空間のx、y色度座標と、図8に示されている各標準光源A乃至F12の夫々の白色点のx、y色度座標とを使用して、夫々の標準光源に対するr、g、b係数を計算すると図10の表の如くになる。尚、図10の表においては、各標準光源に対する色温度(K)も記載されているが、これは図8の表中におけるCCT(K)、即ち相関色温度、からコピーしたものである。尚、本明細書においては、相関色温度を単に色温度として上位概念的に記載することとする。
図10の表は、r、g、b係数が色温度(K)の関数として変化していることを表しているので、近似式の当て嵌めを行うことが可能であり、二次式を使用した場合の例を図11に示してある。この様な近似式は図11に示した二次式に限らずそれ以上の次数の多項式又は一次式とすることも可能であり、更には、その他の適切な形式の近似式を当て嵌めることも可能であることは勿論である。1実施例においては、この様な近似式を使用して色温度を変化させてr、g、b係数の値を決定し、色温度とrgb係数との関係をテーブルとして画像処理装置30内に格納することが可能である。以上の結果から、光源の色温度が分かれば、その色温度に対応するrgb係数を特定することが可能であり、その光源からの投射光を画像処理することにより得られるデジタルRGBデータに基づいて各画素に対する輝度Yを上式(1)に従って決定することが可能である。
従って、図1に示した本ヘッドライトテスター10において、測定すべき光源としてのヘッドライトLからの投射光の色温度を測定することが可能な機器を設けて、測定した色温度を画像処理装置30へ直接的に供給することが可能である場合には、そのように測定された色温度に基づいてr、g、b係数の値を直接的に決定することが可能である。又は別の実施例としては、別体の色温度を測定することが可能な機器を使用してオペレータが測定すべきヘッドライトLからの投射光の色温度を測定し、その色温度測定値を操作部14aを介してオペレータが入力させる構成とすることも可能である。この場合には、オペレータが別途色温度を測定して入力するという付加的な労力が必要となるが、色温度測定器を本ヘッドライトテスター10に装着する構成とすること無しに、普及型の色温度測定器を使用して対処することが可能であるという利点がある。一方、色温度測定器によって測定された色温度を使用しない場合には、先ず、色温度を推定して処理し、その後推定した色温度が所要の許容範囲内のものであることを確保すべく対策することが必要となる。
上述した如く、測定用カメラ20のカラーイメージセンサ20bの各画素に対して輝度Yが計算されるので、これらの計算された輝度Yの中で最高の輝度を見つけ出すことによって、ヘッドライトLの光軸(照射方向)を決定することが可能であり、次いで、その最高輝度に対応する光度(hcd)を決定することが可能である。一方、これらの計算された輝度Yを使用して、配光パターン内の所定の位置にある所謂路面照射点における光度を決定することも可能である。又、これらの計算された輝度Yを互いに比較することによって配光パターン内の水平カットラインと斜めカットラインとを探索し、それらのカットラインの交点としてエルボー点の位置を決定することが可能である。これらの各処理について以下詳説する。
1.走行灯の光軸(照射方向)の決定
上述したように、光源としてのヘッドライトLの色温度が分かれば、それに対応するrgb係数をrgb係数決定手段によって決定することが可能であり、各画素に対する輝度Yを輝度決定手段によって計算することが可能である。その結果、画像処理装置30のメモリ内には計算された各画素に対する輝度Yが例えばそのRAM内に一時的に格納されている。尚、これらのrgb係数決定手段及び輝度決定手段は、本ヘッドライトテスター10の画像処理装置30内に画像処理プログラムの一部として例えばROM内に格納されている。該画像処理プログラムは、更に、その一部として、光軸決定手段を含んでおり、該光軸決定手段は、該RAM内に一時的に格納されている各画素に対する輝度Yの中で最高(最大)の輝度を見つけ出し、その最高輝度の上下左右方向の位置をヘッドライトLからの投射光の光軸(照射方向)として決定する。
該光軸決定手段が最高輝度YMAXを見つけ出す場合には、該RAM内に一時的に格納されている複数個の輝度Yを所定の方向にスキャンして、例えば、隣接する一対の画素間において一層大きな輝度Yのものが生き残るように順次処理する等して行うことが可能であり、その他の最大値を見つけ出すための既知の任意のアルゴリズムを適用することも可能である。図12Aは、受光部11内の測定用スクリーン19上に投射された配光パターン33を複数個の等光度楕円で模式的に示しており、測定用カメラ20はこの配光パターン33を撮像してRGBデータを出力し、画像処理装置30が画像処理プログラムに従ってこれらのRGBデータを処理する。図12Aの配光パターン33では、そのほぼ中心に最高輝度YMAXが存在しており、この最高輝度YMAXの存在する位置を光軸(照射方向)として決定することが可能である。一方、図12Bは配光パターン33の中心近くに複数個の最高輝度YMAXが存在しているか、又は最高輝度YMAXは1個であるが、それが中心付近において絶えず位置を変動させている場合を示している。図12Bのような場合には、例えば、そのような複数個の最高光度YMAXの夫々の位置を平均した位置を光軸(照射方向)として決定することが可能である。
図13は走行灯の配光パターン33の最高輝度YMAXの位置を決定する別のアプローチであるバランス方式の原理を示している。図13の実施例はバランス方式として3度30分方式を適用した場合である。ところで、図12の配光パターン33に示されているように、走行灯の配光パターン33は、その輝度分布は上下左右ともほぼなだらかな変化をしている。そこで、バランス方式によれば、図13Aに示されているように、左右に3度づつ離れた2点の輝度が同じYHである夫々の位置の中心を左右の中心OHとし、且つ上下に30分づつ離れた2点の輝度が同じYVである夫々の位置の中心を上下の中心OVとする。そして、これらの左右の中心OHと上下の中心OVとによって決定される中心位置における輝度を最大輝度YMAXとする。
次に、図14を参照して、バランス方式として3度30分方式を適用した場合の具体的手順について詳述する。図14Aはバランス方式のフローチャート35を示しており、図14Bはフローチャート35に対応するステップの測定用スクリーン19上の配光パターン33を示している。即ち、図14Aのフローチャート35においては、バランス点測定手順が開始されると、図14Aのステップ35a及び図14Bのステップ36aにおいて、配光パターン33の最高輝度YMAXの位置を抽出しその位置を注目位置として設定する。次いで、図14Aのステップ35b及び図14Bのステップ36b1−36b2において、現在の注目位置から左右各3度の位置における夫々の輝度Yを比較し(ステップ36b1)、これら左右の位置における輝度Yがバランスする位置を左右の現在の注目位置として更新する(ステップ36b2)。次いで、図14Aのステップ35c及び図14Bのステップ36c1−36c2において、更新された現在の注目位置の上下各30分の位置における夫々の輝度Yを比較し(ステップ36c1)、これらの上下の位置における輝度Yがバランスする位置を上下の新たな注目位置として更新する(ステップ36c2)。次に、ステップ35dにおいて、繰り返し回数であるカウントに1を加算し、次いで、ステップ35eにおいて、そのカウントが所定の繰り返し最大数(例えば、50)を超えているか否かを判別し、超えていない場合には、再度、ステップ35bにリターンしてバランス処理を継続する。一方、カウントが所定の繰り返し最大数を超えている場合には、ステップ35fへ移行し、更新された左右方向及び上下方向における現在の注目位置をヘッドライトLの投射光の光軸(照射方向)として決定する。更に、別の実施例においては、更新された注目位置と更新前の注目位置との間の差が所定の許容範囲内に入った場合に繰り返し処理を終了する。
図15は最高輝度YMAXを抽出する更に別の手法である2値化重心法を示している。2値化重心法によれば、図15に示されているように、測定用スクリーン19上の配光パターン33に対して得られた画素毎の輝度Y(0〜255)に対して或るスレッシュホールド輝度YTを設定してYT以上の輝度のみを切り取る2値化処理を行う。この場合に、1例としては、図15に示されているように、YTとしてYMAX(=255)の50%であるYT(=127)に設定し、それ以上の輝度のみを切り取る。ちなみに、50%での2値化を行う場合には、その50%の境界33aが3度30分方式を適用したバランス方式において左右方向各3度でのバランスを得るための左右の画素位置33d1,33d2とほぼ一致することとなる。次いで、切り取られた境界33aの断面図形に関して断面一次モーメントを算出し、その図形の中心としての重心33b’の位置を決定する。尚、図15の例においては、上下方向の輝度レベルの断面は水平軸Hに関して対称であると仮定しているので、重心33b’の位置は水平軸H上に存在している。仮に、上下方向の輝度レベルの断面が水平軸Hに関して対称的ではない場合には、上下方向Vに関しても境界33aの断面図形に関して断面一次モーメントを算出して上下方向における重心33b’の位置を確定することが必要である。尚、図15の図示例においては、決定された重心33b’の位置33bは、真の最高輝度YMAXの位置33eと比較して僅かに左側にずれているが、バランス方式によって左右各3度の中心として決定される位置33cと比較して、より真の最高光度YMAXの位置33eに一層近いものとなっている。これは、図15に示されているような配光パターン33が左右方向において非対称である場合には、バランス方式よりも2値化重心方式の方が一層真の最高光度YMAXの位置に近い位置が得られることを示している。
2.走行灯の光度の決定
次に、以上の如くして決定された最高輝度YMAXからヘッドライトLの光度を決定する手順について説明する。尚、ヘッドライトLの光度の単位としては、一般的には、カンデラ(cd)が使用されているが、ヘッドライトテスター業界においては、それを100倍したヘクトカンデラ(hcd)(即ち、1hcd=100cd)を光度の単位として使用するのが通常であるから、本明細書においても、特に断りがない限り、ヘッドライトの光度の単位としてはhcd又はHCDを使用することとする。
ところで、輝度Yとは、ヘッドライトLの投射光から得られたRGBデータを画像処理装置30がカラー画像処理して得られた無次元の数値に過ぎず、輝度と光度との間には通常は特別の関係は存在していないので、輝度Yから光度(hcd)を決定する場合には、何らかの方法で輝度と光度との関係付けがなされていなければならない。本発明の1実施例においては、光度が既知である基準となる光源(例えば、標準のヘッドライト又は基準球)を使用して事前に光度と輝度との関係を確立しており、その手法について以下に詳述する。尚、当業界においては、ヘッドライトテスターの校正又は試験を行うために使用される基準球なるものが存在している。基準球とは、一般社団法人日本自動車機械工具協会が基準適合性試験用としてランプメーカーに依頼して製作されたランプであって、特に、ヘッドライトテスター自身を試験するために製作された高精度のランプである。基準球はガラス製のランプで、配光はレンズカットにより、光源はハロゲンランプであり、走行灯用とすれ違い灯用の2種類がある。基準球は規則によって検査すべき50〜12,000hcdの範囲の光度を発生することが可能である。
図16は、そのような基準球を使用して、該基準球からの投射光を測定用カメラ20のカラーイメージセンサ20bで受光して測定用カメラ20からRGBデータを画像処理装置30へ送り、画像処理装置30から輝度Yを出力した結果の一部を示している。図16に示されているように、使用した基準球はその光度(hcd)を10〜1250にわたり最初は5hcd毎に次いで10hcd毎に変化させている。測定用カメラ20はそのシャッタースピード(SP)を変化させることが可能であり、ここではSP=0〜64の間で変化させている。図16に示されるように、基準球の光度が高くなるにつれて、シャッタースピードSPが遅い場合には、輝度Yは255となり最高輝度以上(即ち、オーバーフロー状態)であることを示している。シャッタースピードSPを上げていくと、有効な輝度値が得られ始める。この例においては、或るスレッシュホールドを設定して必要以上の輝度値を計算することを回避するために、スレッシュホールド以下の輝度値はカットして0としてある。図16において、四角で囲ってある数値が基準球の設定光度(hcd)に対して各シャッタースピードSPにおいて得られた有効な輝度Yである。図16の下段に示されている表は、上段の表の一部を拡大したものである。
図16の下段の表から明らかなように、各シャッタースピードSPの値に対して得られている輝度Yは基準球の光度hcdが増加するに従って増加している。従って、図16に示されている輝度Yの値は各シャッタースピードSPに対する勾配を表しており、各シャッタースピードSPに対してのこれらの輝度Yの値によって定義される勾配を計算することが可能である。図17(A)は、図16の下段に示されている拡大表示部分において示されているシャッタースピードSP=0からSP=34の範囲に対して計算された勾配の値を示した表である。次に、これらの勾配の値をシャッタースピードSPの関数としてみなして近似式を得たものが図17(B)に示してある。図17(B)に示されている近似式は1例としての指数関数であるが、これは任意の適宜の形式のその他の関数を当て嵌めることが可能であることは当然である。この様にして得られた近似式から夫々のシャッタースピードSPに対して計算された値を係数Aとして図17(A)の表に示されている。係数Aは、言わば、勾配を平滑化したものといえる。
次に、図18は、図16下段の拡大表示した表の一部(シャッタースピードSPが0〜10までと基準球の光度hcdが10〜60までの範囲)をコピーしたものであり、更に、図17(A)に示したシャッタースピードSPが0〜10に対して得られた係数Aの値を示している。ところで、図18の表において、係数Aは各シャッタースピードSPに対する勾配を表しており、更に、各シャッタースピードSPに対しては、その勾配を定義する輝度の値が対応する光度hcdにわたって示されている。従って、各シャッタースピードSPにおいての輝度と光度との関係を対応する勾配(係数A)を使用して一次式で近似すると次式のようになる。
Y=A×光度+B (8)
そこで、各シャッタースピードSPに対して、例えば1例として、図18の表に示されている有効な最大の輝度の値(例えば、SP=1の場合には「242」)を使用して上記一次近似式の係数Bを計算することが可能である。そのようにして計算されたB係数の値が図18の表に示されている。
以上のことから、輝度Yが得られた時の測定用カメラ20のシャッタースピードSPが分かれば、それに対応するA係数及びB係数は図18の表から得られるので、そのシャッタースピードSPを使用して得られた輝度Yに対しては次式によって対応する光度hcdを計算することが可能である。
光度=(Y−B)/A (9)
以上の如くにして、走行灯の最高輝度YMAXからそれに対応するヘッドライトLの走行灯としての光度(hcd)を決定することが可能である。尚、輝度と光度との関係を確立する態様は上述した実施例に制限されるべきものではなく、その他の方法によって適宜関連付けを行うことが可能であることは勿論である。
3.すれ違い灯の光度の決定
前述した如く、ヘッドライトLが走行灯の場合には、測定用カメラ20から得られるRGBデータを使用して選択した画素の各々に対して輝度Yを計算し、次いで、それらの輝度Yの内で最高輝度YMAXを探索し、その最高輝度YMAXを光度(hcd)へ変換することが必要であった。一方、すれ違い灯の場合には、光度を測定すべき位置は規則(道路運送車両法等)によって「路面照射点」として予め決められている。即ち、図19に示した如く、すれ違い灯の光度を測定すべき路面照射点36とは、ヘッドライトLの中心を通る垂線Vから左側1.3度で且つ該中心を通る水平線Hの下側0.6度(ヘッドライトLの高さが1m以下)の点36a又は0.9度(ヘッドライトLの高さが1m超)の点36bである。尚、図19における垂直線V及び水平線Hは、車両の中心軸線延長上で、左右夫々のヘッドライトLの中心の10m前方での垂直線及び水平線を示すものである。これらの角度は、ヘッドライトLより10m前方に投影した場合の角度を表している。図19に示されているすれ違い灯の配光パターン33にはカットライン37(水平カットライン37aと斜めカットライン37b)とエルボー点38とが存在している。
この様に、すれ違い灯の光度の測定においては、測定すべき位置が不変的に規定されているので、図19の配光パターン33が測定用カメラ20によって撮像され、RGBデータが画像処理装置30へ供給されると、路面照射点36の位置に対応する画素の輝度Yから前述した式(9)を使用してヘッドライトLの光度(hcd)を決定することが可能である。
4.すれ違い灯のエルボー点の検出
上述した如く、測定用カメラ20のカラーイメージセンサ20bの各画素に対して輝度Yが計算されるので、図19に示されているように、これらの計算された輝度Yを互いに比較することによって配光パターン33内の水平カットライン37aと斜めカットライン37bとを探索し、それらのカットラインの交点としてエルボー点38の位置を決定することが可能である。本発明の1実施形態においては、差の差方式を使用してカットラインを抽出しており、差の差方式の原理について図20(A)〜(C)を参照して以下に説明する。
図20(A)には、CCDカラーイメージセンサ20b上に撮像されたすれ違い灯としてのヘッドライトLからの投射光の配光パターン33が示されている。複数個の等光度線で模式的に示されている配光パターン33は明るい部分であり、配光パターン33の右上側には水平カットライン37aが示されており、配光パターン33の左上側には斜めカットライン37bが示されている。水平カットライン37aと斜めカットライン37bとの交点はエルボー点38を構成している。カットライン37はその下側の配光パターン33の明るい部分とその上側の暗い部分との境界を構成する明暗分岐線となっている。図20(A)の右側部分には、カットライン37を含む配光パターン33の輝度(光度)分布の断面が示されており、カットライン37は明るい配光パターン33から暗い部分への急峻な勾配部分の内で輝度勾配線の最大輝度勾配点に存在している。差の差方式とは、原理的には、この輝度勾配線の最大輝度勾配点を画像処理によって見つけ出す技術である。
即ち、図20(B)は互いに所定距離離隔(図示例においては0.44°ピッチ)されており且つ垂直に配列された3個の測定点e1〜e3が示されている。各測定点はイメージセンサ20bの各画素に対応している。夫々の測定点e1,e2,e3における輝度値を夫々Y1,Y2,Y3とすると、差の差方式では、
(Y1+Y3)−2Y2=0 (10)
を満足する測定点e2の位置をカットライン37の位置であるとして判別する。この差の差方式の式はY1−Y2=Y2−Y3と書き直すことが可能であり、これは、図20(A)における輝度勾配線において変曲点を構成している最大勾配点であることを意味している。図示例の如く0.44°ピッチで測定点が配列されている場合には、イメージセンサ20bの画素40にわたり約0.1°毎に順次下方へ移動して垂直スキャン39aを行って水平カットライン37aの位置を探し出すことが可能である。そして、一つの画素列についてスキャンが終了すると、横方向に所定距離ずれて別の画素列について同じように垂直スキャン39aを行ってその画素列における水平カットライン37aの位置を決定し、次いで以下同様にして予め設定した範囲にわたって全てのスキャンを行うことによって水平カットライン37aの位置を決定することが可能である。即ち、垂直スキャン39aを繰り返し行って差の差方式の式を満足する測定点e2の多数の点を探し出しそれらの点を結んで点列としての水平カットライン37aとする。
一方、斜めカットライン37bを探し出すためには、図20(C)に示した如く、これら3つの測定点e1〜e3を互いに水平方向にずらして配置させる。図示例の場合には、4画素分下方で1画素分左横にずれて配置されているが、これは、斜めカットライン37bは水平カットライン37aに対して15度傾斜されていることが基本的であることを考慮に入れた配置である。この場合のスキャン方向は斜めスキャン39bとなり、斜めカットライン37bに対してほぼ直交方向にスキャンすることとなる。斜めスキャン39bの場合においても、3個の測定点e1〜e3の間に差の差方式の式を適用して、差の差方式の式が満足される画素40の位置をその斜めスキャン39bにおける斜めカットライン37bの位置として決定する。
以上の如くにして、水平カットライン37aと斜めカットライン37bとが決定されると、それらのカットラインの交点を見つけ出すことが可能であり、そのような交点をエルボー点38として決定することが可能である。
尚、上述した実施例においては、3つの測定点間のピッチを0.44°としているが、これは単なる一例に過ぎず、例えば0.23°ピッチ(UTAC対応)又は使用するカラーイメージセンサ20bの画素配列に依存してその他の任意のピッチを選択することが可能であることは勿論である。以上の如く、カラーイメージセンサ20bの複数個の画素40の夫々の輝度Yを互いに比較する画像処理を行うことによってヘッドライトLからの投射光における水平カットライン37a及び斜めカットライン37bを探し出し、それらのカットラインの交点としてエルボー点38を決定することが可能である。
以上説明した如く、CCDカラーイメージセンサ20bを有する測定用カメラ20を使用してヘッドライトLからの投射光を処理してRGBデータを出力させ、これらのRGBデータを画像処理装置30において光源の色温度を基礎として画像処理することによって、光軸、光度、エルボー点等を決定することが可能である。しかしながら、ヘッドライトLの投射光は10m前方の10mスクリーン上に照射されるものではなく、ヘッドライトテスター10内のレンズ17を含む光学系を介して内部の測定用スクリーン19上に照射されるものであるから、ヘッドライトテスター10の設計条件によっては、特に光学系により色収差等の悪影響を受ける場合がある。本発明は、このような色収差等に起因する光学系による悪影響を除去する技術も包含していることを特徴としている。
ところで、前述した基準球を光源として使用して光度に50hcd、400hcd、1200hcdと順次段階的に設定し、且つその照射方向を0−0(左右方向角度0−上下方向角度0)に設定して、本ヘッドライトテスター10の測定用カメラ20でその配光パターンを撮像してビットマップデータを得、該ビットマップデータからRGBの夫々のデータ値を採取してプロットしたものが図21(走行灯基準球の場合)及び図22(すれ違い灯基準球の場合)である。これらの図において、横軸位置とは配光パターンの中央付近における水平方向の位置であり、縦軸位置とは配光パターンの中央付近における垂直方向の位置である。更に、これらの図において、レベルとはRGB夫々のデータ値であり夫々0〜255の範囲内の値を取る。尚、注意すべきであるが、これらの図において、基準球の光度を50hcdから1200hcdへ増加させているにも拘わらずに、RGBの夫々のデータ値(レベル)は殆ど同じ程度になっているが、これは、表示上の制限から、光度を増加させるに従い測定用カメラのシャッタースピードを上げているからである。従って、RGBのデータ値そのものの絶対的評価は無意味である。
図21の走行灯基準球の場合には、50hcdでは比較的光度が低く、配光も赤みがかっており、Rのデータ値と比較してG及びBのデータ値は一層低くなっている。400hcdにおいては、RGBの夫々のデータ値はほぼ同じとなっており、ヘッドライトとしても平均的な配光分布を示している。1200hcdにおいては、光度が高いので配光は白っぽくなり、Rのデータ値と比較してG及びBのデータ値が逆転して一層大きくなっている。図22のすれ違い灯基準球の場合も、光度を50hcdから100hcd、120hcdと順に増加するに従い、比較的僅かではあるが、RGBの夫々のデータ値の大きさが逆転する傾向が見られている。すれ違い灯基準球の場合には、光度を変化させる幅が一層狭いので、RGBの夫々のデータ値の間にそれほど顕著な差は見られていない。RGBデータの夫々の大きさの逆転現象はイメージセンサ20bの中央部よりも周辺部において一層顕著となっており、これは光学系を介して投射光を測定していることが原因と考えられる。従って、使用する光学系の影響が大きい場合には、特に周辺部においては何らかの補正を行うことが適切である場合が有り得る。
5.rgb係数の補正
上述した如く、本発明の1側面によれば、光源としてのヘッドライトLの色温度に基づいてrgb係数の夫々の値を決定することが可能であり、その結果、式(1)を使用して輝度Y及びそれに対応する光度を決定することが可能である。しかしながら、ヘッドライトテスター10においては、10m再現を実現するために、主レンズ17を含む光学系を介してヘッドライトLからの投射光をカラーカメラである測定用カメラ20によって撮像している。従って、該投射光は光学系を通過することにより色収差等の影響を受けることとなり、該光学系の構成によってその影響を無視することができない場合もある。特に、主レンズ17としてフレネルレンズを使用している場合には、その様な色収差等の影響が一層顕著となる可能性がある。
その様な状況に対処するために、本発明の1側面によれば、ヘッドライトLの色温度に基づいて決定(選択)された基準rgb係数(即ち、CIE標準光源に基づいて決定されているrgb係数)をイメージセンサの全ての画素に対して共通的に適用するのではなく、少なくとも1個の画素に対しては少なくとも1個のr、g、又はb係数を修正した補正rgb係数を適用している。例えば、前述した如く、RGB夫々のデータの変動はイメージセンサの中央部においては比較的少ないが周辺部において一層顕著となっているので、本発明の1実施形態においては、イメージセンサの中央部の各画素に対しては、ヘッドライトLの色温度に基づいて決定(選択)された基準rgb係数を適用し、周辺部の各画素に対しては、基準rgb係数を適宜補正した補正rgb係数を適用する。しかしながら、特にフレネルレンズを使用した場合のように特に光学系による影響が大きく、中央部においても、色収差等の影響が無視できない場合があるので、本発明の別の実施形態においては、イメージセンサの位置に拘らずに、少なくとも1個の画素又は殆どの画素に対して補正rgb係数を適用する。更に、本発明の別の実施形態においては、rgb係数を個々の画素毎に適用する代わりに、イメージセンサの測定範囲内の全画素を複数個の画素から構成されるゾーンに分割し、rgb係数を各ゾーン内の複数個の画素に対しては共通的に適用する。従って、例えば、イメージセンサの中央部における1個又はそれ以上のゾーンに対しては基準rgb係数を適用しそれ以外のゾーンに対しては補正rgb係数を適用する。この場合に、夫々互いに異なる複数個の補正rgb係数を用意しておき、その内の一つの補正rgb係数を一つのゾーンにおける複数個の画素に共通的に適用することが可能である。この場合に、基準rgb係数と複数個の補正rgb係数とをテーブルの形態で画像処理装置30内に格納させておくことが望ましい。更に、基準rgb係数は光源としてのヘッドライトLの色温度に依存して変化するので、基準rgb係数と複数個のrgb補正係数とのテーブルは予め選択した色温度毎又はそれに対応する光度毎に用意して画像処理装置30内に格納させておくことが望ましい。
次に、上述したrgb補正係数の作成方法について説明する。
図23(A)及び(B)は前述した基準球51からの投射光の光度(hcd)を測定するシステムを示しており、該システムは、基本的に、基準球取り付け装置50と、それから10m前方に配置されており照度計58を具備している10mスクリーン25と、を包含している。基準球取り付け装置50は、基準球51を着脱自在に取り付けることが可能な取り付けブラケット52aを有しており、取り付けブラケット52aは回転台テーブル52に固定されている。回転台テーブル52は回転自在に回転台54に軸支されており、回転台テーブル54は回転台前後移動ベース56上に設けられている。更に、左右回転ハンドル及び角度目盛53が回転台テーブル52に取り付けられており、且つ上下回転ハンドル及び角度目盛55が回転台54に取り付けられている。図23にはその具体的な構成は示されていないが、回転台テーブル52を上下に移動させて所望の高さに固定させることが可能である。
基準球取り付け装置50は、回転台前後移動ベース56によって前後移動させて、基準球51の回転中心51aの位置が10mスクリーン25から10mの位置に設定されてその位置に固定される。10mスクリーン25にはそれと同一面状に照度計58が設けられている。この照度計58は特殊のものであって、前掲した特開2013−2969号公報の図1に示されている照度計1と同じ構造及び機能を有しており、従って、その名称は照度計であるが、実際には、ヘッドライトの光度を測定するために、その測定値としてはヘッドライトLの光度(hcd)として換算されたカンデラ(又はヘクトカンデラ)値が出力される。この様なシステム構成によって、基準球51からの投射光を照度計58で受光して光度(hcd)を測定することが可能である。その場合に、照度計58は10mスクリーン25に固定されているが、左右回転ハンドル及び角度目盛53を操作することによって基準球51の投射方向を左右方向に変化させることが可能である。更に、上下回転ハンドル及び角度目盛55を操作することによって基準球51の投射方向を上下方向に変化させることが可能である。基準球取り付け装置50は極めて高精度で製作されているので、基準球51の上下及び左右方向における変化は極めて高精度で行うことが可能である。
次に、図24も参照して、図23に示したシステムによって基準球51の光度を測定する態様について説明する。10mスクリーン25の或る選択した位置とヘッドライトテスター10の受光部11内のスクリーン19の対応する位置及びイメージセンサ20bの対応する画素との間の位置関係は図6に示した如くに一義的に決定することが可能である。従って、例えば、図24に示されているように基準球51の投射方向が10mスクリーン25上の下20、左35cm/10mの特定の位置に向いている場合には、その位置に対応するイメージセンサ20bの画素を特定することが可能である。即ち、基本的には、イメージセンサ20bの各画素の位置は10mスクリーン25上において対応する位置を特定することが可能である。従って、基準球51の色温度に対応する基準rgb係数を使用してイメージセンサ20bの各画素に対して基準球51の光度を決定することが可能であり、一方、照度計58を使用してイメージセンサ20bの各画素の位置に対する10mスクリーン25上の位置における光度を決定することが可能である。これらのイメージセンサ20bを介して決定された光度値と照度計58によって決定された光度値とを比較し、それらが実質的に一致する場合には、それらの画素に対しては基準rgb係数を適用することとし、それらが実質的に一致しない場合には、照度計58で得られた光度値に実質的に一致する光度値が画像処理装置30から得られるようにそれらに対応する画素に対して基準rgb係数を修正して新たに補正rgb係数を決定する。
この様な補正rgb係数を決定する場合に、1実施例においては、個々の画素毎に細かく補正rgb係数を決定し、別の実施例においては、イメージセンサ20bの測定範囲内における全画素を所定の複数個毎のゾーンに分割し、ゾーン毎に補正rgb係数を決定する。ゾーン分割実施例においては、一つのゾーン内に属する複数個の画素に対してはそのゾーンに対して決定された基準rgb係数又は補正rgb係数を共通に適用する。そして、補正rgb係数を決定する場合には、基準rgb係数を使用して得られた光度と照度計51を介して得られた光度との差をゼロとするように基準rgb係数の値を調整するが、その調整方法には幾つかの態様がある。即ち、1実施例においては、基準rgb係数の全ての値を調整して補正rgb係数とするものであり、別の実施例においては、基準rgb係数の内の少なくとも1つをゼロに設定し残りのものの値を適宜調整して補正rgb係数とするものである。そして、基準rgb係数の値を調整する場合に、1実施例においては、全ての基準rgb係数の夫々の係数を互いに独立的に調整するものであり、別の実施例においては、基準rgb係数の夫々の値に対して共通的に同一の値を乗算して調整するものである。更に、基準rgb係数はヘッドライトLの色温度に依存して変化するものであるから、所定の色温度又はそれに対応する光度毎(例えば、50,75,100,150,400,500,700,1000,1100,1200hcd毎)に基準rgb係数が存在しており、それらの基準rgb係数に対しても同じように補正rgb係数を決定し、光度毎に基準rgb係数と補正rgb係数とからなるテーブルを作成して画像処理装置30内に格納しておくことが可能である。この様なテーブルを作成した場合には、ヘッドライトLの光度が必ずしも特定のテーブルの光度に対応するものではない場合があるが、その場合には、最も近い2つの光度のテーブルの間を内挿して所望の値を得ることが可能である。
6.ゾーン分割
1実施例においては、個々の画素毎に補正rgb係数を決定するものであるが、処理効率の観点から、別の実施例においては、イメージセンサの全画素を所定数毎のゾーンに分割し、夫々のゾーン毎に共通の補正rgb係数を決定することも可能である。そして、ゾーン分割を行う場合に、全てのゾーンが同数の画素数を有する場合と、少なくとも一つのゾーンが異なる画素数を有する場合とがある。本発明においてはいずれのゾーン分割を適用することも可能であるが、ここでは、1実施例として、全てのゾーンが同一の画素数を有する場合について説明する。
図25に示した実施例においては、イメージセンサ20bは横×縦が640×480個の画素40からなる測定領域を有している。そして、これらの画素全体を20×20個の画素からなるゾーン41に分割し、横×縦が32×24個のゾーン41に分割している。各ゾーン41内にはRGBの夫々の画素40が所謂バイヤー配列で配置されている。図25においては、中央付近の幾つかのゾーン41に対してブロック番号3〜6が割り当てられている(例えば、(12,9)のゾーンに対してはブロック番号4が割り当てられている)。各ブロック番号は対応するrgb係数を格納しているテーブル内のブロックを指し示している。図26はその様なrgb係数のテーブルの1例を示している。例えば、図26において、ブロック番号5が指し示すrgb係数はr=0.4315、g=0.5369、b=0.0317である。従って、例えば、図25におけるゾーン(12,11)にはブロック番号5が割り当てられているので、そのゾーンに対してはr=0.4315、g=0.5369、b=0.0317のrgb係数の値が適用される。
この様に、図25に示されている如く、各ゾーン41に対してはブロック番号が割り当てられているので、ゾーン41とブロック番号との対応表が画像処理装置30内に格納されており、更に、図26に示されるようなブロック番号とrgb係数との対応表も画像処理装置30内に格納されている。従って、特定の画素40に対しての輝度Y(光度)を計算する場合には、先ず、その画素40がどのゾーン41に属しているかを判別して対応するブロック番号を決定し、そのブロック番号が指し示すrgb係数を使用して計算を行うこととなる。図25においては、全てのゾーン41ではなく中央付近の選択したゾーン41に対してのみブロック番号が割り当てられているが、全てのゾーン41に対して同様にブロック番号を割り当てることも可能である。別の実施例としては、図25のイメージセンサ20bの測定範囲の全てを使う必要がない場合もあり、その様な場合には、図25に示されている如く、測定範囲の中にオプションとしてそれより小さな有効範囲を画定し、その有効範囲に属するゾーン41に対してのみブロック番号を割り当てる構成とすることも可能である。
ところで、図25及び26に示した実施例は光度が400hcdの場合のrgb係数であって、ブロック番号5は400hcdの場合の基準rgb係数に対応している。従って、図25のイメージセンサ20bの中央付近の多くのゾーン41には基準rgb係数を指し示すブロック番号5が割り当てられている。図26に示されているように、ブロック番号5以外のブロック番号が指し示すrgb係数は基準rgb係数と値が異なっており、それらは補正rgb係数であることが分かる。これらの補正rgb係数は前述したrgb係数の補正の手続きによって適宜決定されたものである。ブロック番号0〜4及び6〜8においては、補正rgb係数は夫々0以外の係数値を有しているが、ブロック番号9〜11においては、補正rgb係数の内で補正r係数と補正b係数とはそれらの値が0であり、補正g係数のみが0以外の値を有している。そしてブロック番号12−14では全ての補正rgb係数が0に設定されており、そのブロック番号が割り当てられたゾーン41では輝度Yの計算を行わないこととなる。
前述した如く、図26のブロック番号とrgb係数との対応表は光源光度が400hcdに対して調整されたものである。ところで、光度と色温度とは直接的に関連するものではないが、一般的には、光度が増加すると色温度も増加する傾向があると言える。そこで、図23に示したシステムを使用して、照度計58の代わりに色温度測定装置(分光放射計等で色温度を直接測定可能な装置)を使用して、基準球51の光度を50hcdから段階的に1200hcdまで変化させた場合の基準球51からの投射光の色温度を測定し、その結果を図27(A)に示してある。図27(B)は図27(A)の結果に対して近似式の1例を当て嵌めたものである。この結果から、一般的に、光源の光度が増加すると光源からの放射光の色温度も増加しているといえる。従って、図25で示したようなゾーン41とブロック番号との対応表及び図26で示したようなブロック番号とrgb係数との対応表は、少なくとも測定すべきヘッドライトLの予想される光度範囲にわたって夫々の光度(色温度)毎に用意しておき画像処理装置30内に格納しておくことが必要である。
図28は図25と同様のイメージセンサ20bにおける全画素640×480を20×20の画素からなるゾーン41に均等にゾーン分割した構成を示している。図28においては、イメージセンサ20bの640×480の画像からなる測定範囲の内側に矩形状の有効範囲42を画定して、その有効範囲42の外側の全てのゾーン41に対してブロック番号0を割り当てている。一方、有効範囲42内のゾーン41に対しては夫々ブロック番号2〜7が割り当てられている。これらのブロック番号とrgb係数との対応表は図29に示されているが、図29の対応表はその表現形式が異なっているが内容的には図26の対応表と同一である。図28におけるゾーン41に割り当てられているブロック番号0は、図29に示されている如く、それらのrgb係数の値はr=0.4111、g=0.5461、b=0.0428である。図29において、ブロック番号5が指し示すrgb係数の値は光源光度が400hcdの場合の基準rgb係数であり、従って図29のブロック番号対rgb係数対応表は光源の光度が400hcdの場合のものであることが理解される。更に、図29に示されている如く、ブロック番号5以外のブロック番号が指し示すrgb係数は補正rgb係数であって、特に、ブロック番号2〜4及び6〜8の指し示す補正rgb係数の値は基準rgb係数の夫々の値に所定の定数を乗算して求められていることが理解される。図29の対応表は図28の夫々のゾーン41に適用されるべきものであるので、図29のゾーン41とブロック番号との対応表も光源光度が400hcdに対してのものである。
以上の如くに、補正rgb係数を適用することによって、ヘッドライトテスター10における光学系(特に主レンズとしてのフレネルレンズ)による色収差等に起因するバラツキを修正して適切にヘッドライトLの光度を高精度で決定することが可能である。更に、ゾーン分割処理を適用することにより処理を迅速化させることが可能となる。
7.最高輝度位置の補正
走行灯の配光パターン33における最高輝度YMAXの位置(h,v)は例えば3度30分バランス方式等によって決定することが可能であることについては前に説明した。尚、h及びvは、夫々、スクリーン19上の水平方向及び垂直方向の位置座標である。ところで、図23に示したシステムにおいて、基準球51として走行灯用の基準球を使用し、基準球51を選択した水平角度位置に設定して垂直方向に投射方向を段階的に変位させて、図23のシステムにおける10mスクリーン25の代わりに基準球51の1m前方に位置させたヘッドライトテスター10によって最高輝度YMAXの位置を決定したところ、バラツキが発生する場合があることが判明した。図30に示されているように、例えば、基準球51を左35cm(即ち、h=−35)の角度位置に設定して、基準球51を上10cm(即ち、v=10)から一定間隔(図示例においては1cm毎)毎に下側の方向へ下35cm(即ち、v=−35)まで角度を変位させ、夫々の角度位置においてヘッドライトテスター10を使用して最大輝度YMAXの位置を測定した。その場合に、基準球51を同じ水平角度位置において上から下へ角度変位させただけであるから、夫々の垂直方向vの角度位置において得られるYMAXの(h,v)の位置座標は同じh座標上に存在することが予定される。しかしながら、ヘッドライトテスター10の中にはこの様なYMAXの特にh座標に僅かではあるが多少のバラツキが存在する場合があることが判明した。h座標のみならずv座標においてもバラツキが発生する可能性もある。これも、ヘッドライトテスター10における光学系(特に、フレネルレンズ)による色収差等の影響によるものと思われる。
そこで、この様なバラツキを補正するために、図23のシステムにおいて上述した如くに基準球51として走行灯用の基準球を使用し、基準球51を夫々の水平角度位置に設定して垂直方向に角度変位させて夫々の垂直位置において図23のシステムにおける10mスクリーン25の代わりに基準球51の1m前方に位置させたヘッドライトテスター10によって最大輝度YMAXの位置を測定し、水平方向の有意のバラツキが存在するか否かのチェックを行った。その結果、この様な最高輝度位置の補正が必要とされるヘッドライトテスター10に対しては、図31に示したブロック番号と位置補正値との対応表を作成し画像処理装置30内に格納している。尚、図31の対応表は図25に示したゾーン41とブロック番号との対応表に適用されるべきものである。図31に示されている実施例においては、高さ方向の位置補正はゼロ(v=0)であるが、水平方向の位置補正が幾つか存在していることが分かる。尚、別の実施例においては、水平方向の位置補正のみならず垂直方向の位置補正が必要となる場合もある。
図32は、図28と同様のゾーンとブロック番号との対応表の1例を示しているが、400hcdの走行灯のバランス点の位置(h、v)を補正するためのものである。図33は、図32の各ブロック番号に割り当てられている水平方向位置オフセット値h(cm)及び垂直方向位置オフセット値v(cm)を指し示しているテーブルである。従って、例えば、図32における水平方向画素範囲(300−319)と垂直方向画素範囲(120−139)のゾーンに対してはブロック番号5が割り当てられており、このブロック番号5に対応する位置補正量は、水平方向位置オフセット値h=0及び垂直方向位置オフセットv=0である。即ち、図32のゾーンにブロック番号5が割り当てられている場合には、そのゾーンに属する20×20個の画素に対しての位置の補正は行わないことになる。図32の実施例においては、その有効範囲内のゾーンの殆どにはブロック番号5が割り当てられており、残りのゾーンに対して割り当てられているブロック番号は4及び6のみであるから、位置補正の量は比較的僅かであることが理解される。
8.エルボー点位置の補正
図23に示したシステムにおいて、基準球51としてすれ違い灯用の基準球を使用し、図24及び30に示されている如くに、基準球51を選択した水平(左右)角度位置(図24及び30においては、10mスクリーン上の対応する水平位置h(cm)として示してある)にセットし、その選択した水平角度位置を維持したままで、基準球51を垂直(上下)角度方向に角度(図24及び30においては、10mスクリーン上の対応する垂直位置v(cm)として示してある)を段階的に変化(図30においては1cm毎)させ、図23に示されている10mスクリーンの代わりに基準球51の前方1mに位置させた本ヘッドライトテスター10を使用して夫々の垂直位置vにおいてのエルボー点の位置を測定した。選択した水平位置hとしては、左35cm、左20cm、左10cm、中央(左右0)、右10cm、右20cm、右35cmを夫々使用した。その様にして得られた結果を図34にグラフとして示してある。
ところで、図23に示したシステムにおける基準球取り付け装置50は極めて高精度に構成されており、基準球51の水平方向及び垂直方向の角度変位は極めて高精度で行うことが可能である。すれ違い灯用の基準球は水平カットラインと斜めカットライン及びそれらのカットラインの交点としてのエルボー点を有する配光パターンを投射する。従って、基準球51としてすれ違い灯用の基準球を基準球取り付け装置50に取り付けて、該基準球を選択した水平角度位置において垂直方向に段階的に角度変化させた場合には、その水平角度位置において垂直方向に一直線に位置を変化するエルボー点の点列が得られるはずである。
しかしながら、図34のグラフに測定結果が示されているように、上記いずれの水平位置hにおいても、垂直(上下)方向に基準球51を段階的に角度変位させた場合には、測定されたエルボー点の水平方向位置hは左右のバラツキを有している。図35は、基準球51を10mスクリーン上において左10cm(即ち、−10cm)の水平角度位置hに設定し、基準球51を上20cm(即ち、v=20)から一定間隔毎に下側の方向へ下35cm(即ち、v=−35)まで段階的に且つ直線的に角度を変位させて、エルボー点の位置(h、v)を基準球51の1m前方に位置させた本ヘッドライトテスター10で測定した場合の垂直(上下)方向の位置ずれ及び水平(左右)方向の位置ずれを示したグラフである。このグラフから、本ヘッドライトテスター10によって測定されたエルボー点の位置は水平(左右)方向のみならず垂直(上下)方向にもバラツキがあることが分かる。測定されたエルボー点の水平(左右)方向位置hとしては、本来は、h=−10cmの位置に一定に維持されるべきであるが、h=−10とh=−20との間で変動している。更に、測定されたエルボー点の垂直(上下)位置vにおいても一本の直線上に整列しておらず、僅かではあるが多少のバラツキがあることが示されている。
ヘッドライトテスター10を使用してエルボー点のh、v位置を測定した場合にこの様なバラツキが発生する原因としては、ヘッドライトテスター10において10m再現を確立するために光学系を使用しているために色収差等の影響によるものと思われる。特に、光学系の主レンズ17としてフレネルレンズを使用した場合には、フレネルレンズの構造上の特殊性からその影響は一層顕著なものとなると考えられる。
従って、本ヘッドライトテスター10においてエルボー点の位置h、vを測定する場合には、上述した水平方向及び垂直方向のバラツキを補正することが重要となる。そのために、本発明においては、図23に示したシステムを使用してすれ違い灯用の基準球を基準球51としてセットし、基準球51を水平方向の選択した角度位置hに設定して基準球51を垂直方向に段階的に角度位置vを変化させて10mスクリーン25上のエルボー点のあるべき位置(h,v)を基準球取り付け装置50の角度目盛から決定し、一方、同じ設定状態において、ヘッドライトテスター10によって測定したエルボー点の位置(h,v)と比較して、それらに差異がある場合には位置補正量を決定している。そのようにして決定された位置補正テーブルを図36に(A)〜(C)として示してある。図36において、(A)はブロック番号と水平補正との対応を示しており、(B)はブロック番号とカットライン補正との対応を示しており、且つ(C)はブロック番号と高さ補正との対応を示している。尚、図37に概略図で示した如く、図36における(A)の水平補正とは、水平カットラインの測定位置に対する水平方向の位置補正h及び垂直方向の位置補正vであり、(B)のカットライン補正とは、斜めカットラインの測定位置に対する水平方向の位置補正h及び垂直方向の位置補正vであり、更に、(C)の高さ補正とは水平カットラインの上側にある第2水平カットラインの測定位置に対する水平方向の位置補正h及び垂直方向の位置補正vである。尚、(C)の高さ補正とは、実際には、ヘッドライトLの配光がZビーム配光である場合に適用される補正量である。図36に示した夫々の補正テーブルに示されているブロック番号がイメージセンサ20bのどの画素40(又はゾーン41)に適用されるかを示した対応表(不図示)も、例えば図25に示した形態で、用意されており画像処理装置30内に格納されている。
9.明暗分岐線の探索
(1)暗視野重視
図38は人間の目の感度を示した視感度図であって、555nmに最高感度を有する明視野感度と507nmに最高感度を有する暗視野感度とがあることは良く知られている。本来的なヘッドライトのテストにおいては、暗室内においてヘッドライトの前方10mに位置されている10mスクリーン上に投射された配光パターンを検査員が目視により明暗分岐線を探索するものである。その場合には、検査員は明視野よりも暗視野の感度で明暗分岐線の探索を行うものと考えられる。従って、この様な状況を本ヘッドライトテスター10においても実現するためには、配光パターン内の明暗分岐線の探索を行う場合に、配光パターンから測定用カラーカメラ20によって得られるRGBデータの内で、Rデータ及びBデータと比較してBデータを相対的に強調させて輝度Yを決定すれば良い。
例えば、HIDヘッドランプ(色温度=4500K)からの投射光の配光パターンを本ヘッドライトテスター10の測定用カラーカメラ20で撮像すると、測定用カラーカメラ20からは以下のようなデジタルのRGBデータが出力される。尚、測定用カラーカメラのデフォルトの色温度は3140Kである。
R=181
G=230
B=240
色温度3140Kに対する基準rgb係数(CIE標準光源の色温度に基づいて決定)は、r=0.4111、g=0.5461、b=0.0428であるから、これらの基準rgb係数を使用して輝度Yを計算すると以下の通りである。
Y=0.4111×181+0.5461×230+0.0428×240
=210
一方、色温度4500Kに対する基準rgb係数は、r=0.37186、g=0.55918、b=0.06896であるから、これらの基準rgb係数を使用して輝度Yを計算すると以下の通りである。
Y=0.37186×181+0.55918×230+0.06896×240
=212
これらの違いは、色温度が高くなるに従ってBの影響が一層強くなっていることを示している。本発明の1実施例においては、RGBデータの内でBの影響を相対的に強くするものであるから、例えば、上の例において、r=0.2、g=0.6、b=0.2のようにrgb係数を決定する。その場合の輝度を計算すると以下の通りである。
Y=0.2×181+0.6×230+0.2×240
=222
この様にしてBの影響を相対的に大きくした輝度Yが得られる。そして、そのようにして得られる複数個の輝度Yを、例えば、図20に示されている差の差方式により、互いに比較して明暗分岐線を探索することが可能である。この様にして得られる明暗分岐線は人間の目視(暗視野感度)によって得られるものに近いものとなる。上の例では、r+g+b=1でありY係数1を維持しているが、r係数とg係数とb係数との間において相対的にb係数の割合を増加させることにより青成分の影響が輝度Yに強く反映されるようにしている。この様にして決定された明暗分岐線探索用の特別のrgb係数は画像処理装置30内に格納しており、配光パターン33内の明暗分岐線の探索を行う場合にのみ本ヘッドライトテスター10において使用される。尚、別の例においては、Y係数1を維持すること無しに、b係数をr係数及びg係数に対して相対的に割合を増加させる。
(2)補正係数はg係数のみ
この実施例においては、基準rgb係数(CIE標準光源の色温度によって決定)と補正rgb係数とを使用するが、補正rgb係数の内でr係数とb係数とは0とし、補正g係数のみによって補正を行うものであり、その1例を図39に示してある。図39の例は400hcdの光度に対するものであり、その他の光度に対しては同様の対応表が作成されて、共に画像処理装置33内に格納されている。図21及び22のグラフにも示されている如く、RGBデータの内でGが一番安定している。特に、配光パターンの中央付近はRGBデータが比較的安定しているが、その周辺部に行くに従ってRとBとは変動が大きくなっている。従って、中央付近においては、基準rgb係数を適用するが、周辺部においては、r係数とb係数とは0とし、g係数のみを有効な補正係数としてその数値を設定する。即ち、図23に示されているシステムを使用して、すれ違い灯基準球を基準球51として取り付け、それを上下左右に角度変位させながら、その光度を照度計58で測定し、その結果を本ヘッドライトテスター10において同様に測定した結果と照らし合わせて同じ光度値が得られるように補正g係数を決定したものである。この様にして決定された明暗分岐線探索用の特別のrgb係数は画像処理装置30内に格納しており、配光パターン33内の明暗分岐線の探索を行う場合にのみ本ヘッドライトテスター10において使用される。
図39の対応表に示されているブロック番号は、例えば、同じ400hcdの光度に対してのブロック番号とゾーン41との対応表を示した図25に対して適用することが可能である。図39の対応表に示されている如く、この場合には、Y係数1、即ちr+g+b=1、の条件を破っている。
(3)乗数αによる比例的設定
図40(A)はすれ違いヘッドライトLからの投射光の配光パターン33を測定用カラーカメラ20で撮像し、Y係数1、即ちr+g+b=1、の条件を満足するrgb係数を使用して輝度Yを計算した状態を示している。図40(A)の配光パターン33に対して本ヘッドライトテスター10においてY係数1、即ちr+g+b=1、の条件を満足するrgb係数を使用して輝度Yを計算し、そのようにして得られる複数個の輝度Yに対して差の差=0を適用して明暗分岐線を探索したところ、図40(B)に示す如く、カットラインの立ち上がりが沈んでしまう場合があることが判明した。これは、配光パターン33における暗い部分と明るい部分との境界としてのカットラインがあまり明瞭ではなく、明るい部分の中心の輝度が高いためにそちらの方に引きずられているためであると思われる。この様に、Y係数1のままでは、明暗分岐線を正確に探索することができない場合があることが判明した。
そこで、Y係数1の理論的条件に拘らずに、基準rgb係数に対して乗数αを乗算して明暗分岐線探索用の特別の補正rgb係数を決定し、それらの補正rgb係数を使用して輝度Yを計算し、差の差=0として明暗分岐線を探索したところ迅速且つ正確に明暗分岐線を探索することができることが分かった。種々試行錯誤の結果、乗数αの値としては、1より大きく且つ4以下であることが適切であることが判明した。例えば、図41(A)は、すれ違いヘッドライトLからの投射光の配光パターン33を測定用カラーカメラ20で撮像し、Y係数4、即ちα=4、の条件を満足するrgb係数を使用して輝度Yを計算した状態を示している。α=4であるということは、α×r、α×g、α×b、の如くに各rgb係数に乗数αを乗算するということである。そのようにして得られる複数個の輝度Yに対して差の差=0を適用して明暗分岐線を探索したところ、図41(B)に示す如く、カットラインの立ち上がりが目で見たとおりになることが判明した。乗数αが4を超えて増加させた場合には、差の差=0で処理して得られる明暗分岐線が実際のカットラインの上側に浮いた状態となり、乗数αの値が大きすぎることを意味している。
従って、画像処理装置30内に所望の値の乗数αを格納しておき、本ヘッドライトテスター10によってすれ違い灯の配光パターン33において明暗分岐線の探索を行う場合に、rgb各係数に乗数αを乗算して明暗分岐線の探索に使用すべき特別のrgb係数を決定すれば良い。
(4)ガンマ補正
以上の3つの方法は、明暗分岐線探索モードにおいて、rgb係数を修正して明暗分岐線の探索を行うものであるが、本実施例は、ガンマ補正によって配光パターン画像の明るさを調節するものであり、その場合には明暗分岐線探索用の特別のrgb係数を使用するものではない。即ち、本ヘッドライトテスター10においてガンマ補正を適用する場合には、カラー画像データとしてのRGBデータそのものに適用する場合と、グレースケールデータとしての輝度Yに対して適用する場合とがある。
RGBデータそのものに適用する場合は以下の通りである。
ROUT=255×(RIN/255)1/γ
GOUT=255×(GIN/255)1/γ
BOUT=255×(BIN/255)1/γ
尚、γ=1.5である。RIN、GIN、BINはガンマ補正処理前のRGBデータであり、ROUT、GOUT、BOUTはガンマ処理後のRGBデータである。この様にしてガンマ補正を適用したRGBデータを使用して輝度Yを計算し、それらの輝度Yに対して差の差=0を適用して明暗分岐線を探索することが可能である。
一方、輝度Yに適用する場合は以下の通りである。
YOUT=255×(YIN/255)1/γ
尚、γ=1.5である。YINは所定のrgb係数を使用して計算された輝度Yであり、YOUTはYINに対してガンマ補正処理を行ったものである。従って、YOUTに対して差の差=0を適用して明暗分割線を探索することが可能である。
この様なガンマ補正を行って明暗分割線探索を行うことは、特に、ヘッドライトLがハロゲンランプである場合に有効である。
(5)自然対数補正
この場合にも、カラーデータであるRGBデータそのものに適用する場合と、グレースケールデータである輝度Yに対して適用する場合とがある。先ず、RGBデータに適用する場合は以下の通りである。
ROUT=255×(ln RIN/ln 255)
GOUT=255×(ln GIN/ln 255)
BOUT=255×(ln BIN/ln 255)
尚、RIN、GIN、BINは自然対数補正処理前のRGBデータであり、ROUT、GOUT、BOUTは自然対数補正処理後のRGBデータである。
この様にして自然対数補正を適用したRGBデータを使用して輝度Yを計算し、それらの輝度Yに対して差の差=0を適用して明暗分岐線を探索することが可能である。
一方、輝度Yに適用する場合は以下の通りである。
YOUT=255×(ln YIN/ln 255)
尚、YINは所定のrgb係数を使用して計算された輝度Yであり、YOUTはYINに対して自然対数補正処理を行ったものである。従って、YOUTに対して差の差=0を適用して明暗分割線を探索することが可能である。
この様な自然対数補正を行って明暗分割線探索を行うことは、特に、ヘッドライトLがハロゲンランプ以外のランプである場合に有効である。
10.測定原理及び手順
本発明の原理によれば、CIE標準光源の色温度に基づいてrgb係数を決定し、ヘッドライトの投射光をカラー画像処理してRGBデータを決定し、該RGBデータと該rgb係数とを使用して輝度Yを決定している。色温度とは光源の色を表現するものであって、その色と同じ色に見える黒体の温度を利用したものであり、光源の明るさを示す指標ではない。本発明においては、ヘッドライトも光源であるから、ヘッドライトの投射光をカラーカメラで撮像してその配光パターンをカラー画像処理する場合に使用されるrgb係数をヘッドライトの色温度に依存して決定すべきことに着目したものである。そして、何らかの方法でヘッドライトの色温度を直接に決定することが可能である場合には、その色温度に対応するrgb係数を決定(選択)すれば良い。一方、ヘッドライトの色温度を直接に決定することができない場合には、ヘッドライトの光度(色温度)を推定し、その推定した光度(色温度)をヘッドライトの真の色温度に近づければ良い。例えば、推定した光度(色温度)を使用して仮のrgb係数を決定し、これらの仮のrgb係数を使用して仮の輝度を決定し、該仮の輝度から仮の光度(色温度)を決定し、該仮の光度(色温度)が推定した色温度よりもヘッドライトの真の色温度に一層近いものとさせる。そして、その仮の光度(色温度)が最初に推定した光度(色温度)から許容差を越えている場合には、その仮の光度(色温度)に対応する新たなrgb係数を決定し、以下同様に処理すれば良い。
そして、上の如くに決定された輝度Yの中で最大輝度YMAXを探し出すことによって、その最大輝度YMAXの位置をヘッドライトの光軸(照射方向)として決定することが可能である。これはヘッドライトが走行灯モードにある場合の投射光の照射方向を決定することに対応している。更に、この最大輝度YMAXを予め定められた輝度・光度変換式に従って光度(hcd)へ変換させることが可能である。これはヘッドライトが走行灯モードにある場合のヘッドライトの光度(hcd)を決定することに対応している。
一方、上の如くに決定された輝度Yの中で所定の位置(路面照射点等)に対応する輝度Yを決定し、その輝度Yを光度へ変換させることも可能である。これはヘッドライトがすれ違いモードにある場合の路面照射点における光度を決定することに対応している。
更に、上の如くに決定された輝度Yを互いに比較して明暗分割線としての水平カットラインと斜めカットラインとを探し出し、これらの水平及び斜めカットラインの交点としてエルボー点を決定することが可能である。
配光パターンから得られた輝度Yを互いに比較して明暗分岐線を探索する場合に、明暗分割線探索用の特別のrgb係数を使用して輝度Yを計算し、それらの輝度Yに対して差の差=0を適用して明暗分岐線を探索することが可能である。1実施例においては、その様な特別のrgb係数は、b係数を他の係数と相対的に増加させて青成分を強調させて目視による明暗分割線の探索に近いものとさせる。別の実施例においては、r係数とb係数とを0に設定し、照度計と照らし合わせて設定されたg係数のみを使用して特別のrgb係数として輝度Yを計算することが可能である。更に別の実施例においては、rgb係数に同一の乗数α(1<α≦4)を乗算して特別のrgb係数を決定し、該特別のrgb係数を使用して輝度Yを計算することが可能である。更に別の実施例においては、特別のrgb係数を使用すること無しに、RGBデータ又は輝度Yに対してガンマ補正又は自然対数補正を行って、その結果得られる輝度Yに対して明暗分岐線の探索を行うことが可能である。
次に、本発明においてヘッドライトのテストを行う手順の幾つかの実施例について説明する。
先ず、ヘッドライトからの投射光の配光パターンをヘッドライトテスターの測定用カラーカメラで撮像できる位置へヘッドライトとヘッドライトテスターとを相対的に移動させる。ヘッドライトテスターの画像処理装置が該配光パターンにおける最高輝度を抽出し、該最高輝度が所定の範囲内に入るように測定用カラーカメラのシャッタースピードを上げたり下げたりして調節する。シャッタースピードが適切な値に設定されると、測定用カラーカメラを使用して画像処理装置がヘッドライトの光源種別の判定を行う。光源種別としては、代表的に、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDランプがある。ハロゲンランプは暖色系ランプとも言われ、一方HIDランプは寒色系ランプとも言われる。特に、暖色系ランプと寒色系ランプとでは色温度が異なっており、暖色系ランプ用の基本rgb係数と寒色系ランプ用の基本rgb係数とが用意されている。基本rgb係数とはその光源種別において代表的で基本となるrgb係数であって、例えば、暖色系光源種別の場合には、400hcdの光度に対するrgb係数である。従って、光源種別が判別されることによって、たとえヘッドライトの色温度を直接決定することができない場合であっても、その光源種別の基本rgb係数を仮のrgb係数として使用することが可能となる。例えば、テストすべきヘッドライトが暖色系ランプである場合には、そのヘッドライトの光度を暫定的400hcdに設定するが、そのことはヘッドライトの色温度を400hcdに対応する色温度に推定していることと同じである。寒色系ランプ及びLEDランプについても予め基本rgb係数を決定しておき画像処理装置内に格納しておく。
光源種別を判別した後に、ヘッドライトのランプ種別(プロジェクター、レンズカット、マルチリフレクタ)を行うが、これは好適には正対用カメラによって行う。更に、正対用カメラを使用して画像処理装置がヘッドライトの中心をヘッドライトテスターの光軸と一致させる。この動作は通常正対動作と呼ばれている。
正対が完了すると、走行灯モードかすれ違い灯モードかの測定モードの違いにより処理が分かれる。走行灯モードの場合には、ヘッドライトの色温度を直接的に決定することが可能であるか否かによって以下の如くに直説法と繰り返し法との2つの実施形態がある。
A.走行灯モード
(1)直説法
先ず、ヘッドライトLの色温度を直接的に決定することが可能である場合には直説法が採用される。何故ならば、ヘッドライトLの色温度が決定されれば、そのヘッドライトLからの投射光に対して適用すべきrgb係数を直接決定(選択)することが可能だからである。例えば、1実施例においては、ヘッドライトテスター10に色温度測定器が設けられており、テストすべきヘッドライトLからの投射光を検知してヘッドライトの色温度を決定し、その決定された色温度の情報を画像処理装置30へ供給する。別の実施例においては、市販の普及型の色温度測定器をオペレータが操作してヘッドライトの色温度を測定し、その色温度情報をヘッドライトテスター10へオペレータが入力する。測定用カラーカメラ20がヘッドライトLからの投射光の配光パターン33を撮像してRGBデータを画像処理装置30へ供給し、画像処理装置30はRGBデータとrgb係数とを使用してカラーイメージセンサ20bの画素40に対する輝度Yを計算する。
尚、ヘッドライトテスター10が使用する光学系(特に、フレネルレンズ)の影響によって、カラーイメージセンサ20bの測定範囲内においてRGBデータのバラツキに基づく光度の変動を無視できない場合がある。この様な場合には、CIE標準光源の色温度に基づいて決定されたrgb係数を基準rgb係数とし、該基準rgb係数を適用する測定範囲内の位置を特定し、一方この様なバラツキを吸収するように基準rgb係数を修正した補正rgb係数を決定し、該補正rgb係数を適用する測定範囲内の位置を特定する。これらの基準rgb係数及び補正rgb係数及びそれら係数と測定範囲内の適用位置との対応表を画像処理装置30内に格納しておく。更に、1実施例においては、測定範囲内の全ての画素40に対してこの様な対応表を作成するものであるが、別の実施例においては、測定範囲内の全画素40を複数個の画素40からなるゾーン41に分割し、各ゾーン41に対しては共通の対応表を適用する。夫々のゾーン41は同一数の画素数を有するものであっても、異なる数の画素数を有するものであっても良い。
画像処理装置30は、上述した如くに計算された輝度Yの中で最高輝度YMAXを探し出す。次いで、画像処理装置30はその最高輝度YMAXの位置をヘッドライトLの光軸(照射方向)として決定する。更に、画像処理装置30は、予め定められている輝度Y(無次元)と光度(hcd)との間の変換式にしたがって、最高輝度YMAXを光度(hcd)へ変換する。この様にして直説法によってヘッドライトLの光軸(照射方向)と光度(hcd)とが決定される。
(2)繰り返し法
次に、ヘッドライトLの色温度を直接的に決定することが不可能である場合には繰り返し法が採用される。この場合には、前述した光源種別の判定結果を利用して、予め光源種別毎に特定されている基本rgb係数を仮のrgb係数として使用する。例えば、光源種別の判定が暖色系(ハロゲンランプ)であった場合には、画像処理装置は、仮のrgb係数として400hcdのrgb係数を仮のrgb係数として使用する。測定用カラーカメラ20がヘッドライトLからの投射光の配光パターン33を撮像してRGBデータを画像処理装置30へ供給し、画像処理装置30はRGBデータと仮のrgb係数とを使用してカラーイメージセンサ20bの画素40に対する仮の輝度Yを計算する。
尚、ヘッドライトテスター10が使用する光学系(特に、フレネルレンズ)の影響によって、カラーイメージセンサ20bの測定範囲内においてRGBデータのバラツキに基づく光度の変動を無視できない場合がある。この様な場合には、該基本rgb係数を基準rgb係数とし、該基準rgb係数を適用する測定範囲内の位置を特定し、一方この様なバラツキを吸収するように基準rgb係数を修正した補正rgb係数を決定し、該補正rgb係数を適用する測定範囲内の位置を特定する。これらの基準rgb係数及び補正rgb係数及びそれら係数と測定範囲内の適用位置との対応表を画像処理装置30内に格納しておく。更に、1実施例においては、測定範囲内の全ての画素40に対してこの様な対応表を作成するものであるが、別の実施例においては、測定範囲内の全画素40を複数個の画素40からなるゾーン41に分割し、各ゾーン41に対しては共通の対応表を適用する。夫々のゾーン41は同一数の画素数を有するものであっても、異なる数の画素数を有するものであっても良い。
画像処理装置30は、上述した如くに計算された仮の輝度Yの中で仮の最高輝度YMAXを探し出す。次いで、画像処理装置30は、予め定められている輝度Y(無次元)と光度(hcd)との間の変換式にしたがって、仮の最高輝度YMAXを仮の光度(hcd)へ変換する。
次いで、この様にして得られた仮の光度が許容差を越えて光源種別判定結果に基づいて推定した400hcdとは異なっている場合には、画像処理装置30は、この様にして決定された仮の光度(hcd)に基づいて新たなrgb係数(好適には、基準rgb係数と補正rgb係数との結合)を選択し、測定用カラーカメラ20から供給される配光パターン33のRGBデータと該新たなrgb係数とを使用してカラーイメージセンサ20bの画素40に対する新たな輝度Yを計算する。画像処理装置30は、これらの新たな輝度の中で最大の新たな最高輝度YMAXを検出し、更に、前記変換式に従って新たな最高輝度YMAXを新たな、好適には、最終の、光度(hcd)へ変換させる。尚、必要であれば、この新たな光度に基づいて再度新たなrgb係数を選択して所望の精度を有する最終の光度が得られるまで又は所定の繰り返し数まで処理を繰り返すことも可能である。そして、最終の光度に対する最高輝度YMAXの位置に対して画像処理装置30が最高輝度(例えば、バランス点)位置補正テーブルを適用してヘッドライトLの光軸(照射方向)を決定する。
B.すれ違い灯モード
すれ違い灯モードが選択されている場合には、光度(hcd)の決定には上述した(1)直説法、(2)繰り返し法のいずれも適用可能であるが、すれ違い灯モードではRGBデータのバラツキは実質的に無視可能であるので補正rgb係数を使うことは必要ではない場合もある。又、すれ違い灯モードにおいては、光度を測定する箇所は最高輝度点ではなく予めランプ中心に対して規定された路面照射点と呼ばれる点である。即ち、ランプ高さが1m以下の場合の路面照射点とはランプ中心から左1.3度で下0.6度の位置であり、ランプ高さが1m超の場合には、ランプ中心から左1.3度で下0.9度の位置である。従って、これらの固定されている位置においてRGBデータとrgb係数とから輝度Yを計算し、上記変換式に従って光度(hcd)へ変換させれば良い。
一方、すれ違い灯モードにおいては、エルボー点の位置を検出することが必要である。従って、画像処理装置30は、rgb係数とRGBデータとからカラーイメージセンサ20bの測定範囲内における各画素に対しての輝度Yを計算し、それらを互いに比較処理して明暗分岐線としての水平カットラインと斜めカットラインとを探し出す。比較処理を行う1実施例は差の差方式である。更に、エルボー点の位置検出においては、ヘッドライトテスター10の光学系(フレネルレンズ17)による影響が比較的大きいので、検出されたエルボー点の位置を補正するために位置補正テーブルを適用する。
エルボー点の検出を行う場合には、先ず、カットラインを確定するために、本発明方法においては、明暗分岐線探索モードに入り配光パターンにおける明るい部分と暗い部分との境界である明暗分岐線の探索を行う。明暗分岐線の探索を行う場合に、1実施形態においては、rgb係数を明暗分岐線探索用の特別のrgb係数へ変換させ、該特別のrgb係数を使用して配光パターンにおける輝度Yを計算し、それらの輝度を比較して明暗分岐線の探索を行う。その場合に、差の差=0を輝度Yに適用して明暗分割線の探索を行うことが可能である。更に、別の実施形態においては、rgb係数を明暗分割線探索用の特別のrgb係数へ変換すること無しに、RGBデータ又は輝度Yに対してガンマ補正又は自然対数補正を行い、その様に補正されたRGBデータから得られた輝度又は補正された輝度を互いに比較して明暗分岐線の探索を行う。その場合に、差の差=0を輝度Yに適用して明暗分岐線の探索を行うことが可能である。
以上、本発明における測定用カメラ20としてカラーカメラを使用した場合の種々の実施態様について詳細に説明した。次に、本発明においてヘッドライトテスターの正対を行う構成及び方法について詳細に説明する。尚、本発明における正対用カメラ24としては、カラーカメラかモノクロカメラかのいずれかを使用することが可能なものであるが、1好適実施例においては、CMOSイメージセンサを具備しているモノクロカメラを使用する。
11.正対
(1)測定用カメラと正対用カメラの情報の相互利用
本発明のこの側面における1実施形態おいては、ヘッドライトテスター10は、測定用カメラ20のみならず正対用カメラ24も具備している。これらのカメラは画像処理装置30へ接続されており、測定用カメラ20は測定用スクリーン19上へ投射されたヘッドライトLの配光パターに関する情報を供給し、一方、正対用カメラ24はヘッドライトLの画像を撮像してその画像に関する情報を供給する。従って、画像処理装置30は、配光パターン情報とヘッドライト画像情報とを相互利用させて総合的に向上された画像処理を行うことが可能である。例えば、ヘッドライトテスター10が正対動作を終了した時点において、ヘッドライトテスターの光軸(主レンズ17の中心17a)がヘッドライトLのランプ中心(例えば、バルブ中心)から所定許容範囲内においてずれている場合には、そのような位置ずれは、画像処理装置30が、正対カメラ24によって撮像されたヘッドライト画像情報から特定することが可能である。そして、画像処理装置30は、測定用カメラ20によって撮像された配光パターン33に関する情報を処理する場合に、その様な位置ずれ情報を補正値として使用することにより測定精度を向上させることが可能である。
更に、画像処理装置30は、正対用カメラ24からのヘッドライト画像情報を受け取ることによって、その画像が円形である場合には、そのヘッドライトLがプロジェクターランプであることを特定することが可能である。更に、ハロゲンランプにはレンズカットとマルチリフレクタとがあり、一方、HIDランプにはプロジェクタとマルチリフレクタとがあり、レンズカットとマルチリフレクタとではランプ画像において複数個の縦縞の大きさ及びピッチにおいて顕著な差異がある。従って、画像処理装置30が、測定用カメラ20からの配光パターン情報を処理することによって前述した如くRGBデータの内の2つのデータ間の差及び比に基づいて、ハロゲンランプかHIDランプかを識別することが可能であり、この識別情報と正対カメラ24からのヘッドライト画像における縦縞情報とに基づいてマルチリフレクタかレンズカットかの識別を行うことが可能である。
更に、画像処理装置30が、正対用カメラ24からのヘッドライト画像に基づいてその画像形状がほぼ円形である場合には、ヘッドライトLがプロジェクタであることを特定することが可能であり、画像処理装置30が測定用カメラ20からの配光パターン情報を処理する場合に、プロジェクタランプの配光がどのようにできるかを推定することが可能であり、明暗分岐においての斜めカットラインの角度を推定することが可能であり、明暗分岐線を特定する処理が容易化される。
この様に、測定用カメラ20からの配光パターン情報と正対用カメラ24からのヘッドライト画像情報とを相互利用することによって、画像処理装置30は、迅速且つ高精度でヘッドライトのテストを実施することが可能となる。
(2)ランプ中心(正対中心)
種々の種別の多数のヘッドライトLを正対用カメラ24でその画像を撮像して検討したところ、ヘッドライトLのランプ中心には、ヘッドライトLの種別やタイプに拘らずに、その周辺に対して或る特徴を有する暗部が存在することが分かってきた。その1例を図42に示してあり、これらは正対用カメラ(モノクロCMOSイメージセンサ)24でHDR機能を使用して撮像した種々のヘッドライトの撮像画像であって、(A)はレンズカット、(B)はマルチリフレクター、(C)は別のマルチリフレクター、(D)はプロジェクター、(E)は更に別のマルチリフレクターである。尚、図42の夫々の撮像画像中に存在する半径が同じ円は基準円として撮像画像中に入れてあるものであって、例えば、画像処理装置30が、この基準円を参考にして(D)のプロジェクターランプの判別を行う場合に使用することが可能である。正対用カメラ24によってこのようなヘッドライトLのランプ画像を撮像するためには、白飛びや黒潰れ等が発生しないように比較的広いダイナミックレンジを有することが必要であり、そのために、1実施例においては、正対用カメラ24が具備しているハイダイナミックレンジ(HDR)機能を利用して撮像している。ランプ中心に暗部部分が存在する理由としては、ヘッドライトLのランプ内のバルブには「キャップ」と呼称されるカバーが取り付けられていたり、又はバルブそのものの先端部分が黒く着色されていたりしているからであり、更に、バルブからの光を直接この様に遮蔽するものではない場合であっても、例えば、マルチリフレクタータイプの如く、後方からの反射光が明るいために、バルブ中心付近が相対的に暗く見えることとなるからである。尚、例えば、図42の(A)レンズカットと(B)マルチリフレクターとでは、ランプ画像内における複数本の縦縞の太さ及びピッチが明らかに異なっていることが理解でき、例えばFFT処理などを適用することによって画像処理装置30がそれらの識別をすることが可能である。
この様にランプ種別やタイプに拘らずに殆どのヘッドライトLのランプ中心には特徴のある暗部部分が存在しているので、その様な暗部部分を適切に画像処理することができればヘッドライトLのランプ中心(バルブ中心)を正対中心として決定することができる筈である。その様な観点から種々の画像処理技術について検討したところ、モルフォロジー演算処理、特にその内のクロージング処理(膨張(ダイレーション)を行った後に膨張と同じ回数だけ収縮(エロージョン)を行う処理)を複数回適用することによってランプ中心の暗部部分を所定の整形画像に整形することができ、その整形画像の中心をランプ中心(バルブ中心)として正対中心として特定することが可能であることが判明した。
次に、本発明の1実施例に基づいて、この様なクロージング処理を複数回適用して所望の整形画像を得るプロセスについて説明する。
図43は、正対用カメラ24によって撮像されたヘッドライトLのランプ画像を示している。次に、図44は、図43のランプ画像に対して二値化処理を施して得られた二値化画像を示している。次に、図45は、図44の二値化画像に対して1回目のクロージング処理を施した結果を示している。以下図46乃至図57は順次クロージング処理を繰り返し施した夫々の結果を示しており、図57は13回目のクロージング処理の結果を示してている。図57に示されているように、本実施例においては、ランプ中心付近に存在していた暗部部分に対応して実質的に矩形状の整形画像が形成されていることが分かる。従って、画像処理装置30はこの矩形状の整形画像の中心を決定することが可能であり、その様にして決定される中心を正対中心として設定することが可能である。
この様に最終的に得られる整形画像の形状は、特に、クロージング処理において使用する構造化要素の構成に依存する場合があり、従って、所定の形状とは上述した矩形状のみならず正方形やその他の形状とさせることも可能である。更に、上述した実施例においては、クロージング処理を13回繰り返して適用しているが、所定の形状又は所定の寸法の整形画像が得られるまでクロージング処理を繰り返す構成とすることも可能である。又、上述した実施例においては、モルフォロジー演算処理としてクロージング処理を使用しているが、その他のモルフォロジー処理を適用することが可能であることも勿論である。
以上の如くに、本発明のこの実施形態によれば、ヘッドライトLのランプ種別及びタイプに拘らずに一様に画像処理装置30がヘッドライトLのランプ中心(バルブ中心)を正対中心として決定することが可能である。次いで、画像処理装置30は、制御部31を介して上下左右駆動装置及び検出器14dへ移動制御信号を供給し、ヘッドライトテスター10はヘッドライトLと相対的に移動されて正対状態とされる。
(3)正対位置ずれとその補正
ところで、ヘッドライトテスター10を上下左右方向に移動制御する詳細な構成は図示していないが、その様な構成は、通常、モータ等の駆動源や、歯車又はベルト等の機械的動力伝達機構、リミター等の位置制御用の検知器を包含している。そして、その様な構成においては要素間におけるクリアランスが存在しているために、ヘッドライトテスター10の移動制御を高精度で行うためには、これらの種々の要素が高精度のものであることが必要であり、更に、ヘッドライトテスター10を正対状態に位置決めさせるためには、ヘッドライトテスター10を上下又は左右に数回往復移動させて位置決めさせることが必要となる場合があり動作が遅滞化する場合もある。
従って、本発明のこの実施形態においては、ヘッドライトLに対してヘッドライトテスター10を移動させて正対を行う場合に、ヘッドライトLのランプ中心(バルブ中心)60aの位置とヘッドライトテスター10の光軸中心(主レンズ中心17a)の位置とが予め定めた許容範囲内に入った場合にそれらの中心が実質的に整合され且つ実質的に正対が完了したものとする。この場合には、ランプ中心60aの位置とヘッドライトテスター10の光軸中心の位置との間に位置ずれが発生しているが、それは許容範囲内のものであることが確保されており、更に、その位置ずれ情報は画像処理装置30が確定することが可能なものである。従って、画像処理装置30は、その後の処理において、この様な位置ずれが存在することを前提として適宜補正を行うことが可能である。この場合には、ヘッドライトテスター10を厳密に正対位置に一致させることが必要ではないので、システム構成及び処理が簡素化され且つ動作が高速化されることとなる。
即ち、図58に示されている実施例においては、10mmの位置ずれは許容範囲内のずれであるとして、正対が完了した場合に、ヘッドライトLのランプ中心60aに対して本ヘッドライトテスター10、即ち受光部11、の光軸(フレネルレンズ17の中心17a)が10mmだけ右側にずれた状態を示している。従って、受光部11に取り付けられている測定用カメラ20はヘッドライトLのランプ中心60aに対して右側へ10mmだけ位置がずれている。そのために、測定用スクリーン19上に投射される配光パターン33もランプ中心60aに対して10mmだけ右側へずれている。尚、図58において、正対用カメラ24によって撮像されたランプ画像60及び測定用スクリーン上に映し出された配光パターン33は見やすくするために夫々90度手前に回転させて図示してある。一方、10mスクリーン25の水平線Hと垂直線Vとの交点とヘッドライトLのランプ中心60aとは整合しており、10mスクリーン25上の配光パターン33には位置ずれは存在していない。
図59は正対中の正対用カメラ24によるランプ画像60の変位状態を示している。即ち、この場合の実施例についての正対動作を以下に説明する。ヘッドライトテスター10が格納位置より測定開始指令を受けて動作を開始し、予め設定されている測定順序に従って左又は右ヘッドライトLの測定位置へ移動し、別途設けられている横行用エンコーダ(不図示)による距離設定等による停止位置設置か又はリミットスイッチ(不図示)との係合などによって停止する。
画像処理装置30は、正対用カメラ24の視野範囲内にランプ画像が映っていれば、そこから予め設定された視野範囲の中での正対設定位置まで設定された方法により測定したランプ中心位置が重なる位置まで受光部11を上下左右に移動させる。もしも、正対用カメラ24の視野範囲内にランプ画像が映っていない場合には、手動ボタンを押して手動モードとし、ランプ画像が正対用カメラ24に撮像される位置までオペレータが手作業により移動させ、追尾させる。
正対設定位置に到達したら、画像処理装置30は、受光部11のフレネルレンズ17の中心17aに対応する上下左右0−0位置までの相対的位置の差を計算し、その画素数だけ受光部11のフレネルレンズ中心17aへ移動させる(予測正対制御モードと呼ばれる)。予測正対制御モードで受光部11がランプ中心60aの近傍で停止した場合には、画像処理装置30は、再度、ランプ画像60の中心60aの位置を同一の方法で再度測定する。予測正対制御で停止した位置とランプ中心位置との間に誤差がある場合には、前記正対設定位置はランプ中心60aから横方向に離れた位置であるために、正対設定位置においては正対用カメラ24はヘッドライトLを斜め方向から撮像しており、そのために図60に示したような本来のランプ中心位置から見たランプ画像60の一部が欠如しており(図59の右上の正対設定位置におけるランプ画像60参照)、そのためにランプ中心60aを正しく捕らえていなかったためである。
予測正対制御で停止した場合に、受光部11のフレネルレンズ中心17aがランプ中心60aから多少ずれた位置にある場合には、正対用カメラ24からのランプ画像情報によって画像処理装置30はそのずれ量を決定することが可能である。従って、その状態においてヘッドライトテスター10を測定モードとして画像処理装置30が測定用カメラ20からの配光パターン情報を処理したとして、画像処理装置30は上記ずれ量を承知しているので、そのずれ量に基づいて適宜補正を行うことが可能である。例えば、図58及び59に図示されている如く、そのずれ量が右側10mmである場合には、測定用スクリーン19上に撮像されている配光パターン33も右側に10mmずれていることとなる。従って、この右側10mmのずれ量だけ補正を行うことによって正対誤差を解消させることが可能となる。一方、予備正対制御終了後に右10mmだけのずれ量が存在していた場合には、そのずれ量だけ再度受光部11を左側へ移動させて受光部11のフレネルレンズ中心17aの位置を真のランプ中心60bの位置と一致させることも可能である。
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施の態様に制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変更が可能であることは勿論である。