以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を説明するための血圧測定装置の圧脈波検出部100の構成を示す外観図である。本実施形態の血圧測定装置は、図示しないベルトにより、血圧測定対象となる動脈(図1の例では橈骨動脈T)が内部に存在する生体部位(図1の例では利用者の手首)に装着可能である。
図2は、図1に示す圧脈波検出部100の拡大図である。図3は、図1に示す装着状態での圧脈波検出部100を利用者の指先側から見た図である。図4は、図1に示す装着状態での圧脈波検出部100を手首との接触部位側から見た図である。図1〜図4は、圧脈波検出部100を模式的に示したものであり、各部の寸法や配置等を限定するものではない。
圧脈波検出部100は、空気袋2を内蔵する筐体1と、空気袋2に固定された平面状の部材である平板部3と、平板部3に対して2軸回転機構5aにより2つの軸の各々を中心に回転可能に支持された回動部5と、回動部5の平板部3側とは反対側の平面に設けられたセンサ部6とを備える。
空気袋2は、図1に示すように、血圧測定装置が手首に装着された状態で、センサ部6の押圧面6bを生体部位(手首)の皮膚下の動脈に対して押圧する押圧部として機能する。押圧部は、センサ部6の押圧面6bを動脈に対して押圧できる機構であれば何でもよく、空気袋を用いたものには限定されない。
空気袋2は、図示しないポンプにより、内部の空気量が制御されることで、空気袋2に固定された平板部3を平板部3の表面(回動部5側の平面)に垂直な方向に移動させる。
図1に示す装着状態では、圧脈波検出部100に含まれるセンサ部6の押圧面6bが利用者の手首の皮膚に接触する。この状態で空気袋2に注入される空気量が増えることで、空気袋2の内圧が増加し、センサ部6は手首下の橈骨動脈Tに向けて押圧される。以下、センサ部6による橈骨動脈Tへの押圧力は、空気袋2の内圧と等価であるとして説明する。
図4に示すように、押圧面6bには、図1に示す装着状態において、装着部位に存在する橈骨動脈Tの伸びる方向Aと交差(図1の例では直交)する方向B(一方向)に並ぶ複数個の圧力検出素子としての圧力センサ6aが形成されている。また、押圧面6bには、方向Bに並ぶ複数個の圧力センサ7aが形成されている。各圧力センサ6aと、この圧力センサ6aと方向Bでの位置が同じ圧力センサ7aとがペアを構成し、押圧面6bには、このペアが方向Bに複数配列された構成となっている。圧脈波検出部100に含まれる圧力センサ(複数個の圧力センサ6aと複数個の圧力センサ7a)は圧力検出部を構成する。
押圧面6bは、単結晶シリコン等から成る半導体基板の表面であり、圧力センサ6a,7aは、この半導体基板表面に形成された感圧ダイオード等で構成される。
圧力センサ6a(7a)は、その配列方向が橈骨動脈Tと交差(略直交)するように橈骨動脈Tに対して押圧されることにより、橈骨動脈Tから発生して皮膚に伝達される圧力振動波、すなわち圧脈波を検出する。
各圧力センサ6a(7a)の配列方向の間隔は、橈骨動脈T上に必要かつ充分な数が配置されるように充分小さくされている。各圧力センサ6a(7a)の配列長さは、橈骨動脈Tの径寸法より必要かつ充分に大きくされている。
図4に示すように、2軸回転機構5aは、空気袋2による平板部3の押圧方向に直交する2つの回転軸X,Yの各々を中心に回動部5を回転させるための機構である。
2軸回転機構5aは、平板部3の表面上に設定された互いに直交する2つの回転軸X,Yを有し、回転軸X,Yは、それぞれ、後述する回転駆動部10によって回転駆動される。
回転軸Yは、押圧面6bに形成された複数の圧力センサ6a(7a)の配列方向に伸びる第一の軸である。回転軸Yは、図4の平面視において、複数の圧力センサ6aからなる素子列と、複数の圧力センサ7aからなる素子列との間(図4の例では中間)に設定されている。
回転軸Xは、押圧面6bに形成された複数の圧力センサ6a(7a)の配列方向と直交する方向に伸びる第二の軸である。回転軸Xは、図4の例では、複数の圧力センサ6aからなる素子列と複数の圧力センサ7aからなる素子列をそれぞれ均等に2分割する直線上に設定されている。
回動部5が回転軸Xを中心に回転することで、押圧面6bは、回転軸Xの軸周りに回転する。また、回動部5が回転軸Yを中心に回転することで、押圧面6bは、回転軸Yの軸周りに回転する。
図5は、血圧測定装置の圧脈波検出部100以外の部分のブロック構成を示す図である。
血圧測定装置は、圧脈波検出部100と、回転駆動部10と、空気袋駆動部11と、装置全体を統括制御する制御部12と、表示部13と、操作部14と、メモリ15と、を備える。
回転駆動部10は、圧脈波検出部100の2軸回転機構5aの各回転軸X,Yに接続されたアクチュエータである。回転駆動部10は、制御部12の指示にしたがい各回転軸X,Yを回転駆動して、押圧面6bを回転軸Xの軸周りに回転させたり、押圧面6bを回転軸Yの軸周りに回転させたりする。
空気袋駆動部11は、制御部12の指示のもと、空気袋2に注入する空気量(空気袋2の内圧)を制御する。
表示部13は、測定された血圧値等の各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶等により構成される。
操作部14は、制御部12に対する指示信号を入力するためのインターフェースであり、血圧測定を含む各種動作の開始を指示するためのボタン等により構成される。
メモリ15は、制御部12に所定の動作をさせるためのプログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)、ワークメモリとしてのRAM(Randam Access Memory)、及び、測定した血圧データ等の各種情報を記憶するフラッシュメモリ等を含む。
制御部12は、メモリ15のROMに記憶されたプログラムを実行することにより、押圧制御部、第一の血圧算出部、回転制御部、第二の血圧算出部、校正用データ生成部、判定部、及び処理部として機能する。
押圧制御部は、空気袋駆動部11を制御して空気袋2内の空気量を調整することで、押圧面6bによる手首への押圧力を制御する。
第一の血圧算出部は、押圧面6bを橈骨動脈Tに押圧した状態で、押圧面6bに形成された圧力センサ6a,7aにより検出される圧脈波に基づいて、橈骨動脈T内の第一の血圧値を算出する。
具体的には、第一の血圧算出部は、空気袋駆動部11によって橈骨動脈Tへの押圧力が変化(増加又は減少)させられていく過程で圧力センサ6a,7aにより検出される圧脈波に基づいて、橈骨動脈T内の第一の血圧値を算出する。
校正データ生成部は、第一の血圧算出部により算出された第一の血圧値を用いて校正用データを生成する。
回転制御部は、空気袋駆動部11によって橈骨動脈Tへの押圧力が増加させられていく過程で圧力センサ6a,7aにより検出された圧脈波に基づいて、回転駆動部10による押圧面6bの回転の要否を判定する。そして、回転制御部は、回転が必要と判定したときに、回転駆動部10に押圧面6bを回転させる。
第二の血圧算出部は、橈骨動脈Tの一部を平坦に変形させるための最適押圧力で押圧面6bが橈骨動脈Tに押圧された状態で、圧力センサ6a,7aにより1拍毎に検出される圧脈波を校正用データによって校正することで、橈骨動脈T内の第二の血圧値を算出する。
判定部は、校正用データによる校正対象となる圧脈波の検出条件と、校正用データの生成に用いた圧脈波の検出条件とが一致するか否かを判定する。
処理部は、判定部による判定結果に応じた処理を行う。
以下、本実施形態の血圧測定装置の動作について説明する。本実施形態の血圧測定装置は、1拍毎に血圧値(SBP(Systolic Blood pressure)、いわゆる最高血圧と、DBP(Diastolic Blood pressure)、いわゆる最低血圧を測定して表示部13に表示する連続血圧測定モードを有する。
図6は、本実施形態の血圧測定装置の連続血圧測定モードにおける校正用データ生成までの動作を説明するためのフローチャートである。
なお、圧脈波検出部100の回動部5は、血圧測定指示がなされる前の初期状態では、回転量が例えばゼロに設定され、押圧面6bが平板部3と平行になっているものとする。
ここでは、回転量をゼロとした状態を初期状態とするが、これに限らない。例えば、血圧測定装置が手首に装着された状態で、その手首の形状に応じて、押圧面6bが皮膚に均等に接触するように、回転駆動部10が押圧面6bを回転させた状態を初期状態としてもよい。
血圧測定指示があると、制御部12は、空気袋駆動部11を制御して空気袋2への空気の注入を開始し、押圧面6bによる橈骨動脈Tへの押圧力を増加させる(ステップS1)。
押圧力の増加過程において、制御部12は、橈骨動脈Tの閉塞が開始されるのに十分な時間が経過した後の任意のタイミング(例えば周期的なタイミング)で、それまでに各圧力センサ6aにより検出されてメモリ15に記憶された圧脈波(圧脈波情報I1とする)のうち、検出時刻が新しい順に複数の圧脈波情報I1を取得する。また、制御部12は、上記任意のタイミングで、それまでに各圧力センサ7aにより検出されてメモリ15に記憶された圧脈波(圧脈波情報I2とする)のうち、検出時刻が新しい順に複数の圧脈波情報I2を取得する(ステップS1A)。
制御部12は、ステップS1Aで取得した複数の圧脈波情報I1のうち、時刻t1に検出された各圧力センサ6aの圧脈波の例えば振幅の平均値Ave1を算出し、時刻t1よりも後の時刻t2に検出された各圧力センサ6aの圧脈波の振幅の平均値Ave2を算出する。また、制御部12は、ステップS1Aで取得した複数の圧脈波情報I2のうち、時刻t1に検出された各圧力センサ7aの圧脈波の振幅の平均値Ave3を算出し、時刻t2に検出された各圧力センサ7aの圧脈波の振幅の平均値Ave4を算出する。そして、制御部12は、同じ時刻に対して算出した平均値の比((Ave1/Ave3)と(Ave2/Ave4))を算出する。
制御部12は、複数のタイミングについて算出した比の変化に基づいて、回転駆動部10による回動部5の回転を行うべきか否かを判定する。つまり、制御部12は、押圧力の増加過程における複数タイミングで圧力センサ6a,7aにより検出された圧脈波に基づいて、回動部5を回転させるか否かを判定する(ステップS1B)。
例えば、複数のタイミングについて算出した比が単調増加している場合には、圧力センサ7aからなる素子列は橈骨動脈Tを閉塞する方向に向かっているが、圧力センサ6aからなる素子列は橈骨動脈Tを閉塞する方向に向かっていないと判定できる。このため、制御部12は、回動部5の回転は必要と判定する。
また、複数のタイミングについて算出した比が単調減少している場合には、圧力センサ6aからなる素子列は橈骨動脈Tを閉塞する方向に向かっているが、圧力センサ7aからなる素子列は橈骨動脈Tを閉塞する方向に向かっていないと判定できる。このため、制御部12は、回動部5の回転は必要と判定する。
また、複数のタイミングについて算出した比がほとんど変化していない場合には、2つの素子列が同じように橈骨動脈Tの圧脈波を検出していると判定できる。このため、制御部12は、回動部5の回転は不要と判定する。
また、複数のタイミングについて算出した比が増減を繰り返している場合には、2つの素子列が橈骨動脈Tを十分に押圧できているか、一方の素子列だけが橈骨動脈Tを十分に押圧できていないのかの判定ができない。このため、制御部12は、回動部5の回転は不要と判定する。
このように、制御部12は、複数のタイミングについて算出した比の変動に基づいて回転の要否を判定する。なお、この比の代わりに、平均値Ave1(Ave2)と平均値Ave3(Ave4)の差分(符号を考慮した値)を用いてもよい。
図7(a)は、圧力センサ7aからなる素子列によって橈骨動脈Tが閉塞されているが、圧力センサ6aからなる素子列によっては橈骨動脈Tが閉塞されていない状態の例を示す図である。図7(a)の状態では、圧力センサ6aからなる素子列と橈骨動脈Tの距離が、圧力センサ7aからなる素子列と橈骨動脈Tの距離よりも大きくなっている。
各圧力センサ6aにより検出された圧脈波の振幅平均値を6Aとし、各圧力センサ7aにより検出された圧脈波の振幅平均値を7Aとすると、図7の状態では、6Aと7Aの比である(6A/7A)は1よりも十分に大きくなる。この状態では、圧力センサ6aからなる素子列を橈骨動脈Tに近づければ、(6A/7A)は1に近づく。
そこで、制御部12は、ステップS1Bにおいて回動部5の回転軸Y周りの回転が必要と判定したときは、最新時刻における(6A/7A)の値に応じて回動部5の回転軸Y周りの回転制御を行う(ステップS1C)。
具体的には、制御部12は、(6A/7A)の値と回動部5の回転量との関係を示すデータテーブル(製品出荷前に実験的に求めてメモリ15に記憶しておく)を参照し、(6A/7A)の値に対応する回転量を読みだして、読みだした回転量を設定する。
また、制御部12は、平均値6Aと平均値7Aのどちらが大きいかを判定し、平均値6Aが大きい場合には、圧力センサ6aからなる素子列と橈骨動脈Tとの距離を縮めるべく、回転軸Y周りの回動部5の回転方向を図7において反時計回りに設定する。
制御部12は、平均値7Aが大きい場合には、圧力センサ7aからなる素子列と橈骨動脈Tとの距離を縮めるべく、回転軸Y周りの回動部5の回転方向を図7において時計回りに設定する。
制御部12は、このようにして設定した回転方向及び回転量によって回動部5を回転させる。これにより、図7(b)のように、押圧面6bと橈骨動脈Tとを平行にすることができ、2つの素子列の各々によって橈骨動脈Tを閉塞した状態を得ることができる。
制御部12は、ステップS1Cの後と、ステップS1Bにおいて回動部5の回転が不要と判定したときは、ステップS2に処理を移行する。ステップS2において、制御部12は、橈骨動脈Tが閉塞されるのに十分な圧力(必要押圧力)に押圧力が到達したか否かを判定する。制御部12は、押圧力が必要押圧力に到達した場合(ステップS2:YES)に、空気袋駆動部11を制御して空気袋2への空気の注入を停止させる(ステップS3)。制御部12は、押圧力が必要押圧力に達していない場合はステップS1Aに処理を戻す。
ステップS3の後、制御部12は、ステップS1〜ステップS3の間において各圧力センサ6aにより同時刻に検出された圧脈波の振幅と、その各圧力センサ6aの押圧面6b上における位置との関係を示す振幅分布曲線、いわゆるトノグラムを求める。また、制御部12は、各圧力センサ7aにより同時刻に検出された圧脈波の振幅と、その各圧力センサ7aの押圧面6b上における位置との関係を示すトノグラムを求める。
制御部12は、圧力センサ6aからなる素子列に対して生成したトノグラムを、この素子列の識別情報、圧脈波の検出時刻、及びこの検出時刻における空気袋2による押圧方向への押圧力(空気袋2の内圧)と対応付けてメモリ15に記憶する。
同様に、制御部12は、圧力センサ7aからなる素子列に対して生成したトノグラムを、この素子列の識別情報、圧脈波の検出時刻、及びこの検出時刻における空気袋2による押圧方向への押圧力と対応付けてメモリ15に記憶する。
そして、制御部12は、メモリ15に記憶したトノグラムのデータを用いて、押圧面6bの手首への押圧中における橈骨動脈Tの方向Bへの移動量を算出する(ステップS6)。
図8(a),(b)は、センサ部6による手首への押圧力を変化させていったときに、センサ部6の各圧力センサ6aにより検出される圧脈波の振幅値の一例を示した図である。図8(a),(b)において、横軸は各圧力センサ6aの方向Bでの位置を示し、縦軸は押圧力を示す。
図8(a),(b)では、各位置にある圧力センサ6aにより検出された圧脈波の振幅を、その大きさによって色分けしている。
符号A1は、振幅が閾値TH1以上となっている部分である。符号A2は、振幅が閾値TH2以上閾値TH1未満となっている部分である。符号A3は、振幅が閾値TH3以上閾値TH2未満となっている部分である。符号A4は、振幅が閾値TH4以上閾値TH3未満となっている部分である。符号A5は、振幅が閾値TH4未満となっている部分である。なお、閾値TH1>閾値TH2>閾値TH3>閾値TH4である。
図8(a)は、押圧力が増加していく過程で、閾値TH1以上の振幅の圧脈波を検出している圧力センサ6aの位置がほぼ変化しない例を示している。これに対し、図8(b)は、押圧力が増加していく過程で、閾値TH1以上の振幅の圧脈波を検出している圧力センサ6aの位置が左にずれていく例を示している。
図9は、圧脈波検出部100を手首に当てて、空気袋2によりセンサ部6を手首に向けて押圧していく状態を示す図である。図9において、符号TBは橈骨を示し、符号Kは腱を示す。
図9(a)に示すようにセンサ部6を手首に押圧していくと、図9(b)に示すように、橈骨動脈Tが方向Bに移動してしまうことがある。
図9(b)のように、押圧中に橈骨動脈Tが方向Bに移動してしまうと、押圧中の圧脈波の振幅値の分布は図8(b)のようになる。つまり、閾値TH1以上の振幅値が初めて検出された押圧力における当該振幅値を検出した圧力センサ6aの位置と、閾値TH1以上の振幅値が最後に検出された押圧力における当該振幅値を検出した圧力センサ6aの位置とには大きなずれが生じることになる。
図8(a)の例では、閾値TH1以上の振幅値が初めて検出された押圧力における当該振幅値を検出した圧力センサ6aの位置と、閾値TH1以上の振幅値が最後に検出された押圧力における当該振幅値を検出した圧力センサ6aの位置とには大きなずれは生じていない。つまり、押圧力を増加させていく過程において、橈骨動脈Tが方向Bにほぼ移動することなく閉塞されていっていることが分かる。
このように、押圧力が変化する過程におけるトノグラムの変化をみることで、橈骨動脈Tについて、方向Bでの位置変化を検出することができる。図9(b)に示す状態のまま、押圧力を増加させて橈骨動脈Tを閉塞すると、腱K等の生体組織の影響を受けて、正確なトノグラムを取得できない可能性が生じる。
そこで、制御部12は、押圧力とトノグラムの関係を示す図8のデータから、閾値TH1以上の振幅値が初めて検出された押圧力における当該振幅値を検出した圧力センサ6aの位置と、閾値TH1以上の振幅値が最後に検出された押圧力における当該振幅値を検出した圧力センサ6aの位置との差(つまり橈骨動脈Tの方向Bへの移動量)をステップS6にて算出し、算出した差が閾値THa以上か否かを判定する(ステップS7)。
2つの位置の差が閾値THa以上であれば(ステップS7:YES)、制御部12は、ステップS8において図8(b)の矢印で示したベクトルを求める。2つの位置の差が閾値THa未満であれば(ステップS7:NO)、ステップS9の処理が行われる。
メモリ15には、図8に示したベクトルの向き及び大きさと、回動部5を回転軸X周りにどの方向にどの程度回転させるべきかを示す情報とを、予め実験的に求めて対応付けて記憶しておく。
そして、制御部12は、求めたベクトルの大きさ及び向きに対応する回転方向及び回転量の情報をメモリ15から取得し、取得した情報を回転駆動部10に送信する。そして、回転駆動部10は、受信した情報にしたがって、図9(c)に示したように回動部5を回転させる(ステップS8)。
以上のように、血圧測定指示があると、制御部12は、空気袋2による押圧力の増加過程における複数タイミングで各圧力センサ6a,7aにより検出された圧脈波に基づいて、回動部5を回転させる必要があるか否かをステップS1B及びステップS7にて判定する。そして、制御部12は、回動部5を回転させる必要がある場合(ステップS1B:YES,ステップS7:YES)には、各圧力センサ6a,7aにより検出された圧脈波に基づいて、回動部5を回転させる。
ステップS8に続くステップS9では、制御部12が、空気袋駆動部11を制御して、空気袋2内の空気を排出させ、橈骨動脈Tへの押圧力の減少を開始する。
制御部12は、ステップS9で押圧力の減少を開始し、押圧力を最小値まで減少させた後、全ての圧力センサ6a,7aの中から最適圧力センサを決定する。制御部12は、例えば、押圧力の減少過程において最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサを最適圧力センサとして決定する。
橈骨動脈Tが平坦になった部分の真上に位置する圧力センサによって検出される圧脈波は、橈骨動脈Tの壁の張力の影響がなく、最も振幅が大きくなる。また、この圧脈波は橈骨動脈T内の血圧値との相関が最も高い。このような理由により、最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサを最適圧力センサとして決定する。
なお、最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサが複数ある場合もあり、その場合には、この複数の圧力センサを最適圧力センサとして扱い、この複数の圧力センサの各々で検出された圧脈波の例えば平均を、この最適圧力センサにより検出される圧脈波として扱えばよい。
そして、制御部12は、押圧力の減少過程でその最適圧力センサにより検出された圧脈波から脈波包絡線データを生成する(ステップS10)。
脈波包絡線データとは、センサ部6による橈骨動脈Tへの押圧力(空気袋2の内圧)と、その押圧力で最適圧力センサが橈骨動脈Tに押圧された状態で最適圧力センサにより検出される圧脈波の振幅とを対応付けたデータである。
図10は、橈骨動脈Tへの押圧力の変化と、最適圧力センサにより検出される圧脈波の変化の一例を示した図である。図10において、符号Pで示す直線が押圧力を示し、符号Mで示す波形が圧脈波を示している。図10の下段には、1つの圧脈波の拡大図を図示している。
図10に示したように、圧脈波において、立ち上がり点での圧力を最小値Mminといい、立ち下がり点での圧力を最大値Mmaxという。圧脈波の振幅は、最大値Mmaxから最小値Mminを引いた値を言う。最大値Mmaxと最小値Mminは、それぞれ、圧脈波の形状を特定する情報の1つである。
図10に示したように、押圧力が減少を開始して橈骨動脈Tの閉塞状態が解除されると、最適圧力センサにより検出される圧脈波は振幅が急激に大きくなり、その後、押圧力の減少に伴って図に示したように変化していく。制御部12は、ステップS10において、図10に示す押圧力と圧脈波の関係から、図11に示すような脈波包絡線データを生成する。
制御部12は、図11に示す脈波包絡線データを生成すると、生成した脈波包絡線データからSBPとDBPを算出する(ステップS11)。
例えば、制御部12は、図11に示す脈波包絡線において、押圧力が減少を開始してから圧脈波振幅が急激に上昇を開始したときの押圧力、すなわち、押圧力が減少を開始してから最適圧力センサにより検出される圧脈波振幅が動脈閉塞状態ではなくなったと判断できる閾値THbを初めて超えた時点での押圧力をSBPとして決定する。または、制御部12は、脈波包絡線データにおいて隣接する2つの振幅値の差分を算出し、この差分が閾値を超えた時点での押圧力をSBPとして決定する。
更に、制御部12は、図11に示す脈波包絡線において、圧脈波振幅の最大値を脈圧(PP)とし、求めたSBP及びPPと、SBP−DBP=PPの関係式により、DBPを算出する。
ステップS11の後、制御部12は、ステップS9の減圧過程で決定した最適圧力センサにより検出された各圧脈波のいずれか(例えば、最大振幅となった圧脈波)の最大値Mmax及び最小値Mminと、ステップS11で算出したSBP及びDBPと、を用いて、後述する連続血圧測定時に用いる校正用データを生成してメモリ15に記憶する(ステップS12)。
aを一次関数の傾き、bを一次関数の切片とすると、
SBP=a×Mmax+b ・・・(1)
DBP=a×Mmin+b ・・・(2)
の関係が成り立つ。
制御部12は、式(1)と式(2)に、ステップS11で求めたSBP及びDBPと、図11の脈波包絡線における振幅が最大となった圧脈波の最大値Mmax及び最小値Mminとを代入して、傾きaと切片bを算出する。そして、算出した係数a,bと、式(1),(2)とを校正用データとしてメモリ15に記憶する。
図12は、本実施形態の血圧測定装置の連続血圧測定モードにおける連続血圧測定動作を説明するためのフローチャートである。
図6に示したフローで校正用データを生成した後、制御部12は、空気袋駆動部11を制御し、空気袋2の内圧を上昇させて、押圧面6bによる橈骨動脈Tへの押圧力を増加させる(ステップS21)。
次に、制御部12は、各圧力センサ6a,7aのうち、押圧力の増加過程において最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサを最適圧力センサとして決定する。また、制御部12は、この最大振幅の圧脈波が検出された時点での空気袋2の内圧を最適押圧力として決定する(ステップS22)。
次に、制御部12は、空気袋2の内圧を解放して初期状態に戻し(ステップS23)、その後、空気袋2の内圧をステップS22で決定した最適押圧力まで上昇させて、この最適押圧力を保持する(ステップS24)。
次に、制御部12は、最適押圧力で押圧面6bが橈骨動脈Tに押圧された状態で、ステップS22で決定した最適圧力センサにより検出される圧脈波を取得する(ステップS25)。
そして、制御部12は、取得した1つの圧脈波を、図6のステップS12で生成した校正用データを用いて校正して、SBPとDBPを算出する(ステップS26)。
具体的には、制御部12は、ステップS25で取得した圧脈波の最大値Mmaxと、ステップS12で算出した係数a,bを上述した式(1)に代入してSBPを算出し、ステップS25で取得した圧脈波の圧力最小値Mminと、ステップS12で算出した係数a,bを上述した式(2)に代入してDBPを算出する。制御部12は、算出されたSBPとDBPを例えば表示部13に表示させて利用者に通知する。
制御部12は、連続血圧測定の終了指示があれば(ステップS27:YES)処理を終了し、終了指示がなければ(ステップS27:NO)、ステップS25に処理を戻す。
以上のように、制御部12は、押圧力の減少過程においてセンサ部6により検出される圧脈波に基づいて算出した第一の血圧値を用いて校正用データを生成する。つまり、制御部12は、最適押圧力でセンサ部6を押圧保持している状態で検出される圧脈波とは無関係に、押圧力を変化させる過程で得た圧脈波を主体にして血圧を算出することができる。このため、空気袋2の内圧増加、空気袋2の内圧解放、及び空気袋2の内圧を最適圧力まで増加、といった3つの工程を経ることなく血圧算出が可能である。
本実施形態の血圧測定装置は、任意のタイミングで血圧を測定して利用者に提示するモードを設けることもできる。このモードに設定されたときには、制御部12が図6のステップS1〜ステップS11までの処理を行うことで、利用者に煩わしい思いをさせることなく、短時間で血圧を測定して提示することが可能となる。
また、本実施形態の血圧測定装置によれば、圧力センサにより検出される圧脈波を校正するためのデータ生成を、手首に装着可能なほどに小型化された装置だけで行うことができる。このため、複数の利用者で血圧測定装置を共用する場合でも、利用者毎の校正用データの生成が容易となる。したがって、複数の利用者で装置を共用する場合でも各利用者が簡単に装置の利用を開始することができる。
なお、図6のフローチャートにおいてステップS1Bの判定が一度もYESにならず、、かつ、ステップS7の判定がNOになったとき、すなわち、押圧力の増加過程及びこの増加過程の終了後に、回動部5の回転が行われなかった場合には、制御部12が以下の動作を行う構成としてもよい。
制御部12は、ステップS1〜ステップS3の押圧力の増加過程で各圧力センサ6a,7aにより検出された圧脈波に基づき、圧力センサ6a,7aの中から最適圧力センサ(例えば最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサ)を決定する。そして、制御部12は、押圧力の増加過程でその最適圧力センサにより検出された圧脈波から脈波包絡線データを生成する。制御部12は、この生成した脈波包絡線データからSBPとDBPを算出する。
例えば、制御部12は、脈波包絡線において、押圧力が増加を開始してから圧脈波振幅が急激に減少を開始したときの押圧力、すなわち、押圧力が増加を開始してから最適圧力センサにより検出される圧脈波振幅が閾値THb以下になった時点での押圧力をSBPとして決定する。DBPの算出方法はステップS11と同様である。
DBP算出後、制御部12は、ステップS12と同様の方法で、連続血圧測定時に用いる校正用データを生成すればよい。すなわち、押圧力の増加過程で決定した最適圧力センサにより検出された圧脈波のうち、例えば振幅が最大となった圧脈波の最大値Mmax及び最小値Mminと、算出したSBP及びDBPと、関係式(1),(2)とを用いて、校正用データを生成し、メモリ15に記憶する。
この場合、制御部12は、図6のステップS1〜ステップS3における押圧力の増加過程で、最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサを最適圧力センサとして決定している。このため、制御部12は、校正用データを生成した後は、ステップS21〜ステップS23の処理は行わずに、この最大振幅の圧脈波が検出された時点での空気袋2の内圧を最適押圧力として決定し、ステップS24において空気袋2の内圧を最適押圧力に制御し、その後は、図12のステップS25以降の処理を行う。
このように、橈骨動脈Tの押圧力を増加させていく過程で検出された圧脈波から脈波包絡線データを生成し、この脈波包絡線データからSBPとDBPを算出することも可能である。
ステップS1Bの判定が一度もYESにならず、かつ、ステップS7の判定がNOになるのは、橈骨動脈Tの押圧が理想に近い形で行われている場合に相当する。このため、この場合には、押圧力の増加過程で取得済みの圧脈波を用いてSBPとDBPを算出することで、血圧算出に要する時間を短縮することができる。
また、押圧力の増加過程で得た圧脈波から校正用の血圧を算出した場合には、連続血圧測定を行う場合に改めて最適圧力センサと最適押圧力を決める必要がない。このため、1拍目の血圧測定完了までの時間を短縮することができる。また、消費電力を削減することもできる。
また、上述したように、任意のタイミングで血圧測定を行うモードを装置に設ける場合、橈骨動脈Tの位置に大きな変化がなく、回動部5の回転が不要と制御部12が判定した場合(ステップS1Bの判定が一度もNOにならず、かつ、ステップS7:NOの場合)には、圧力センサの生体部位への押圧力の増加工程と、押圧力の解放工程との2つの工程だけで血圧測定を終了させることができる。このため、利用者に煩わしい思いをさせることなく、短時間で血圧を測定して提示することが可能になる。
図12のフローチャートでは、ステップS22において改めて最適圧力センサと最適押圧力の決定を行っている。しかし、図6のステップS9で開始される押圧力の減少過程で各圧力センサ6a,7aにより検出される圧脈波に基づいて、制御部12が最適圧力センサと最適押圧力を決定しておき、ここで決定した内容を連続血圧測定時の圧脈波検出条件として設定してもよい。
つまり、図12のステップS21〜ステップS23を省略し、制御部12は、ステップS24において、ステップS9以降の押圧力の減少過程で決定しておいた最適押圧力を設定する。制御部12は、この最適押圧力でセンサ部6が橈骨動脈Tに押圧された状態で、ステップS9以降の押圧力の減少過程で決定しておいた最適圧力センサから検出される圧脈波をステップS25において取得する。
このようにすることでも、1拍目の血圧測定完了までの時間を短縮することができる。また、消費電力を削減することができる。
図6及び図12で説明した動作では、ステップS12の処理が終了した後に、回動部5の回転状態を維持したまま、ステップS21に移行するものとしている。この変形例として、ステップS12の後に回動部5を初期状態に戻し、その後、ステップS21の代わりに、図6のステップS1〜ステップS8の処理を行い、その後、ステップS22の処理を行うようにしてもよい。
以上の説明では、脈波包絡線データを、センサ部6による橈骨動脈Tへの押圧力と、その押圧力でセンサ部6が橈骨動脈Tに押圧された状態で最適圧力センサにより検出される圧脈波の振幅とを対応付けたデータとしたが、これに限らない。
例えば、最適圧力センサにより検出される圧脈波の振幅と、その圧脈波の圧力最大値(図10のMmax)とを対応付けたデータを脈波包絡線データとしてもよい。または、最適圧力センサにより検出される圧脈波の振幅と、その圧脈波の圧力最小値(図10のMmin)とを対応付けたデータを脈波包絡線データとしてもよい。或いは、最適圧力センサにより検出される圧脈波の振幅と、その圧脈波の圧力最大値及び圧力最小値の平均値とを対応付けたデータを脈波包絡線データとしてもよい。圧脈波の圧力最大値及び圧力最小値の平均値は、この圧脈波の形状を特定する情報の1つである。
つまり、脈波包絡線データは、押圧面6bによる橈骨動脈Tへの押圧力を変化させていく過程で最適圧力センサにより検出される圧脈波の振幅値と、当該圧脈波の形状を特定する情報のうち振幅値を除く情報(例えば、Mmax、Mmin、又はこれらの平均)とを対応付けたデータであってもよい。
なお、脈波包絡線データの横軸の情報が上述したいずれの場合であっても、図6のステップS12において校正用データ生成に用いる圧脈波の情報(式(1),(2)に代入するMmaxとMmin)は、振幅が最大となっている圧脈波の情報には限定されない。
例えば、脈波包絡線における振幅がある程度の大きさ以上の部分のうち略平坦になっている部分を検出し、この部分に対応する圧脈波の情報を、校正用データ生成のために用いてもよい。
また、本実施形態では、回動部5が回転軸Xと回転軸Yの各々を中心に回転可能な構成としたが、回動部5は、回転軸Xと回転軸Yのいずれか一方を中心に回転可能な構成であってもよい。
回動部5が回転軸Xのみを中心に回転可能な構成である場合、制御部12は、図6のフローチャートにおいてステップS1A〜ステップS1Cの処理は省略し、ステップS1の後にステップS2の処理を行えばよい。このような構成及び動作としても、ステップS6〜ステップS8の処理があることで、精度の高い血圧算出が可能となる。
なお、回動部5が回転軸Xのみを中心に回転可能な構成の場合は、圧力センサ6aからなる素子列と圧力センサ7aからなる素子列のいずれかを省略した構成としてもよい。2つの素子列があると、動脈を閉塞できる確率が上がるため好ましいが、1つの素子列だけであっても、橈骨動脈Tの動きに追従した回転軸X周りでの回転制御を行うことで血圧算出精度を向上させることが可能である。
回動部5が回転軸Yのみを中心に回転可能な構成である場合、制御部12は、図6のフローチャートにおいてステップS6〜S8の処理は省略し、ステップS3の後にステップS9の処理を行えばよい。このような構成及び動作としても、ステップS1A〜ステップS1Cの処理があることで、例えば、その後の押圧力の減少過程において最適圧力センサの決定に必要な情報量を増やすことができ、最適圧力センサをより精度よく決定することができる。
圧脈波検出部100は、1つの押圧面に、複数の圧力センサ6aからなる素子列と、複数の圧力センサ7aからなる素子列を形成する構成としたが、押圧面を分割し、各分割面に素子列を形成した構成であってもよい。
押圧面を分割する構成によれば、圧脈波検出部100の設計自由度が上がるため、押圧面の皮膚への接触状態を良好にするための構造設計等が容易となり、装着性向上等が期待できる。一方で、図2の構成では、押圧力を均等に動脈に伝えやすくなり、血圧測定精度向上が期待できる。
図4の例では、回転軸Yが、複数の圧力センサ6aからなる素子列と、複数の圧力センサ7aからなる素子列との間に設定されているものとしたが、これに限らない。例えば、回転軸Yが、複数の圧力センサ6aからなる素子列と、複数の圧力センサ7aからなる素子列よりも外側に設定されていてもよい。
具体的には、図4において、複数の圧力センサ6aからなる素子列よりも左側に回転軸Yがあってもよい。または、図4において、複数の圧力センサ7aからなる素子列よりも右側に回転軸Yがあってもよい。
同様に、図4の例では、回転軸Xが、2つの素子列の各々を半分に分割する位置にあるが、これに限らない。例えば、回転軸Xは、各素子列上の任意の位置にあればよい。また、各素子列と交差しない位置(センサ部6の上側又は下側)に設定されていてもよい。
圧脈波検出部100は、押圧面6bが回転軸X,Y周りに回転可能となっているが、図13の圧脈波検出部100Aに示すように、センサ部6が平板部3に直接固定された構成としてもよい。
図14は、圧脈波検出部100を圧脈波検出部100Aに変更した血圧測定装置の校正用データ生成までの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
血圧測定指示があると、制御部12は、空気袋駆動部11を制御して空気袋2への空気の注入を開始させて、押圧面6bによる橈骨動脈Tへの押圧力を増加させる(ステップS31)。
次に、制御部12は、各圧力センサ6a,7aにより検出されたn拍目(nは1以上の自然数。初期値は1)の圧脈波を取得する(ステップS32)。
次に、制御部12は、取得したn拍目の圧脈波に基づいて全ての圧力センサ6a,7aの中から最適圧力センサを決定する(ステップS33)。例えば、ステップS32で取得した圧脈波のうちの最大振幅となる圧脈波を検出した圧力センサを最適圧力センサとして決定する。
ここでも、最大振幅の圧脈波を検出した圧力センサが複数ある場合があり、その場合には、この複数の圧力センサを最適圧力センサとして扱えばよい。そして、この複数の圧力センサの各々で検出された圧脈波の例えば平均を、この最適圧力センサにより検出される圧脈波として扱えばよい。
また、ステップS32で取得した圧脈波のうちの最大振幅となる圧脈波を検出した圧力センサが1つであっても、この圧力センサと、この圧力センサの近傍(例えば両隣)にある圧力センサを含めて最適圧力センサとして扱ってもよい。この場合も、複数の圧力センサの各々で検出された圧脈波の例えば平均を、この最適圧力センサにより検出される圧脈波として扱えばよい。
次に、制御部12は、nの値と、決定した最適圧力センサの識別IDと、この最適圧力センサにより検出されたn拍目の圧脈波と、この圧脈波が検出された時点での押圧力(空気袋2の内圧)と、を対応付けてメモリ15に記憶する(ステップS34)。圧力センサの識別IDは、その圧力センサの属する素子列と、その素子列におけるどの位置にある圧力センサであるかとを特定する情報である。
次に、制御部12は、橈骨動脈Tの閉塞に必要な必要押圧力に押圧力が達したかを判定し、押圧力が必要押圧力に達していなければ(ステップS35:NO)、nを(n+1)に更新して(ステップS36)、ステップS32に処理を戻す。
制御部12は、押圧力が必要押圧力に達していれば(ステップS35:YES)、メモリ15に記憶した情報に基づいて、n拍の各々に対応する最適圧力センサにより検出された圧脈波の振幅と、この圧脈波の検出時における空気袋2の内圧との関係を示す脈波包絡線データを生成する(ステップS37)。
次に、制御部12は、生成した脈波包絡線データからステップS11と同様の方法でSBP,DBPを算出する(ステップS38)。
次に、制御部12は、算出したSBP,DBPと、ステップS37で生成した脈波包絡線データにおいて最大振幅となっている圧脈波の最大値Mmaxと最小値Mminと式(1),(2)とから、係数a,bを算出し、式(1),(2)と係数a,bを校正用データとして生成してメモリ15に記憶する(ステップS39)。
制御部12は、ステップS39の後、空気袋2の内圧を解放したのち、図12のステップS21以降の処理を行って、1拍毎に第二の血圧値を算出する。
または、制御部12は、ステップS39の後、メモリ15に記憶したn拍分の最適圧力センサの識別IDのうち、最大振幅の圧脈波を検出した最適圧力センサを、連続血圧測定用の最適圧力センサとして決定し、この連続血圧測定用の最適圧力センサにより検出された圧脈波の検出時の押圧力を連続血圧測定用の最適押圧力として決定する。
そして、制御部12は、空気袋2の内圧を上記連続血圧測定用の最適押圧力となるよう設定した状態で、上記連続血圧測定用の最適圧力センサにより検出される圧脈波を、ステップS39で生成した校正用データを用いて校正して、1拍毎に血圧を測定する。
なお、図14の動作例では、押圧力を増加させる過程で圧力センサにより検出される圧脈波に基づいて校正用データ生成のための血圧値を算出するものとした。しかし、前述しているように、橈骨動脈Tが十分に閉塞されるまで押圧力を増加させた後、押圧力を減少させる過程で圧力センサにより検出される圧脈波に基づいて脈波包絡線データを生成し、この脈波包絡線データから校正用データ生成のための血圧値を算出することも可能である。
このように、圧脈波検出部100を圧脈波検出部100Aに変更した血圧測定装置によれば、押圧力を増加又は減少させる過程で圧力センサにより検出される圧脈波に基づいて血圧を算出することができ、利用者の負担を減らしつつ、短時間での血圧測定を行うことができる。
また、図14の動作によれば、押圧力の増加又は減少過程において、異なるタイミング毎に、全ての圧力センサ6a,7aの中から脈波振幅が最大となる圧力センサが最適圧力センサとして決定される。このため、押圧力の増加又は減少過程において橈骨動脈Tが方向Bに移動しても、この移動に追従して最適圧力センサが変化する。したがって、橈骨動脈Tの動きに追従した精度の高い血圧算出を行うことができる。このような効果を、圧脈波検出部100Aでは、回動部5及び2軸回転機構5aを用いることなく実現できる。このため、血圧測定装置をより小型にすることができる。
圧脈波検出部100Aは、圧脈波検出部100と同様に、2つの素子列の一方を削除した構成としてもよい。また、2つの素子列を別々の押圧面に形成した構成としてもよい。
図15は、図5に示した血圧測定装置のブロック構成の変形例を示す図である。図15に示す血圧測定装置は、高さ検出部16と体動検出部17を追加した点を除いては、図5と同じ構成である。
高さ検出部16は、血圧測定装置が装着される生体部位の基準位置に対する高さを検出する。高さ検出部16は例えば加速度センサや気圧センサにより構成され、基準位置は例えば高度0mの位置となっている。
体動検出部17は、血圧測定装置が装着される生体部位の動きを検出する。体動検出部17は、例えば、3軸加速度センサ、3軸角速度センサ、及び3軸地磁気センサを組み合わせて生体部位の動きを詳細に検出する。体動検出部17は、動きの検出精度に応じて適当なセンサを用いればよい。
図15に示す血圧測定装置の校正用データ生成までの動作は、図6に示したのとほぼ同じである。図6と異なるのは、制御部12が、ステップS11においてSBP,DBPを算出した後、以下の3つの情報をメモリ15に記憶する点である。
3つの情報は、ステップS10で生成された脈波包絡線データの生成に用いた圧脈波が検出された期間において高さ検出部16により検出された高さ(校正用データ生成に用いた圧脈波の検出時における装置装着部位の高さ)の情報と、ステップS10で生成された脈波包絡線データの生成に用いた圧脈波が検出された期間において体動検出部17により検出された動き(校正用データ生成に用いた圧脈波の検出時における装置装着部位の動き)の情報と、ステップS10で生成された脈波包絡線データの生成に用いた圧脈波を検出した最適圧力センサ(校正用データ生成に用いた圧脈波の出力元の圧力センサ)の識別IDである。
図16は、図15に示す血圧測定装置の連続血圧測定時の動作(校正用データ生成後の動作)を説明するためのフローチャートである。
制御部12は、図6のステップS9以降に決定した最適押圧力となるように空気袋駆動部11を制御し、空気袋2の内圧を最適押圧力まで増加させて保持する(ステップS41)。
次に、制御部12は、各圧力センサ6a,7aのうち、最大振幅の圧脈波を検出している圧力センサを最適圧力センサとして決定する。(ステップS42)。
次に、制御部12は、図6のステップS11において記憶した最適圧力センサの識別IDと、ステップS42で決定した最適圧力センサの識別IDとを比較し、両者が一致すれば(ステップS44:YES)、ステップS46の処理を行い、両者が一致しなければ(ステップS44:NO)、ステップS42に処理を戻す。
ステップS46において、最適圧力センサにより圧脈波が検出されると、制御部12はこれを取得する。次に、制御部12は、図6のステップS11において記憶した高さと、ステップS46で取得した圧脈波の検出時点で高さ検出部16により検出された高さとを比較する。制御部12は、両者が一致する場合(ステップS47:YES)には、ステップS48の処理を行い、両者が一致しない場合(ステップS47:NO)には、ステップS50の処理を行う。
ステップS48において、制御部12は、図6のステップS11において記憶した動きの情報と、ステップS46で取得した圧脈波の検出時点で体動検出部17により検出された動きの情報とを比較する。制御部12は、両者が一致する場合(ステップS48:YES)には、ステップS49の処理を行い、両者が一致しない場合(ステップS48:NO)には、ステップS50の処理を行う。
なお、2つの高さが一致するとは、2つの高さが実質的に同じであることを意味し、この高さの差が閾値THc以下である場合をいう。また、2つの動きが一致するとは、2つの動き量が実質的に同じことを意味し、この動き量の差が閾値THd以下である場合をいう。閾値THcと閾値THdは、ステップS49において算出する血圧値に求められる測定精度に応じて適宜設定すればよい。
ステップS49において、制御部12は、ステップS46で取得した1つの圧脈波を、図6のステップS12で生成した校正用データを用いて校正して、SBPとDBPを算出する。
続くステップS50において、制御部12は、連続血圧測定の終了指示があれば処理を終了し、終了指示がなければ、ステップS42に処理を戻す。
以上のように、図15の血圧測定装置は、校正対象となる圧脈波の検出条件と、校正用データ生成に用いた圧脈波の検出条件とが一致する場合にのみ、校正対象となる圧脈波を校正してSBP,DBPの算出を行う。
ここで、校正用データ生成に用いた圧脈波の検出条件とは、上記の3つの情報を含む。また、校正対象となる圧脈波の検出条件とは、校正対象となる圧脈波を検出する最適圧力センサの識別IDと、校正対象となる圧脈波を検出した時点での装置装着部位の高さと、校正対象となる圧脈波を検出した時点での装置装着部位の動きと、を含む。
このように、校正用データ生成に用いた圧脈波の検出条件と、連続血圧測定時の圧脈波の検出条件が一致するときのみ、校正対象となる圧脈波の校正を行って血圧算出を行うことで、校正精度を高めることができ、血圧測定精度を向上させることができる。
なお、ここでは、比較する検出条件として3つの条件(圧力センサ識別ID、高さ、動き)を挙げたが、検出条件としては、この3つの条件のうちの少なくとも1つを含んでいればよい。
また、上記条件の1つである校正用データ生成に用いた圧脈波の検出時における装置装着部位の高さの情報は、校正用データ生成に用いた各圧脈波の検出時において高さ検出部16により検出された高さの代表値(例えば平均値)とする。
同様に、校正用データ生成に用いた圧脈波の検出時における装置装着部位の動きの情報は、校正用データ生成に用いた各圧脈波の検出時において体動検出部17により検出された動きの代表値(例えば平均値)とする。
また、図15に示す血圧測定装置の圧脈波検出部100を図13の圧脈波検出部100Aに変更してもよい。この場合の校正用データ生成までの動作は、図14に示したものとほぼ同じである。この場合は、制御部12が、ステップS38においてSBP,DBPを算出した後、ステップS37で生成した脈波包絡線データにおける各圧脈波の検出時点において高さ検出部16により検出された高さの情報(高さの平均)と、ステップS37で生成した脈波包絡線データにおける各圧脈波の検出時点において体動検出部17により検出された動きの情報(動きの平均)と、ステップS37で生成した脈波包絡線データにおける各圧脈波のうち最大振幅となっている圧脈波を検出した最適圧力センサの識別IDと、この最大振幅の圧脈波が検出されたときの押圧力とを、校正用データ生成に用いた圧脈波の検出条件としてメモリ15に記憶しておけばよい。
そして、図16のステップS41において、制御部12は、空気袋2の内圧を、ステップS38において記憶した押圧力に保持すればよい。
図17は、図15に示した血圧測定装置の連続血圧測定時の動作の変形例を示すフローチャートである。図17において図16と同じ処理には同一符号を付して説明を省略する。
ステップS47の判定がNOのとき、制御部12は、ステップS42で決定した最適圧力センサにより検出された圧脈波を校正用データによって校正して、SBP,DBPを算出する(ステップS51)。
次に、制御部12は、図6のステップS11又は図14のステップS38において記憶した高さと、ステップS46で取得した圧脈波の検出時点で高さ検出部16により検出される高さとの差に応じて、ステップS51で算出したSBP,DBPを補正し(ステップS52)、その後、ステップS50の処理を行う。
連続血圧測定時には、最適圧力センサにより検出される圧脈波が校正されて血圧が算出される。このため、校正用データを生成したときとステップS46で取得した圧脈波の検出時とで、装置装着部位の高さが異なる場合は、高さの差によって校正後の血圧に誤差が含まれる可能性がある。
図15に示す血圧測定装置では、校正用データを生成するときの手首の高さを心臓の高さに合わせた状態で行うものとする。2つの動脈間に高さの差ΔH(cm)があると、単位長さあたりの水頭圧(=0.8mmHg/cm)にΔHを乗じて得られる圧力差が2つの動脈間に現れる。
このため、ステップS52において、制御部12は、校正用データを生成したときの装置装着部位の高さと、連続血圧測定時に最適圧力センサにより圧脈波が検出されたときの装置装着部位の高さとの差ΔHに水頭圧を乗じた値を、ステップS51で算出されたSBP,DBPに加算又は減算することで、血圧補正を行う。
以上のように、連続血圧測定時に、校正データ生成時と異なる高さで圧脈波が検出された場合には、この圧脈波を校正して得た血圧値を、校正データ生成時の手首高さと当該圧脈波検出時の手首高さの差に応じて補正することで、精度の高い血圧測定が可能となる。
なお、図15〜図17で説明した変形例においても、圧脈波検出部100に設ける素子列を1つとしてもよい。また、2つの押圧面にそれぞれ素子列が形成された構成であってもよい。
図16,17のフローチャートでは、ステップS44の判定がNOのときには血圧測定を行わないものとした。この変形例として、ステップS44の判定がNOのとき、又は、ステップS44の判定がNOになることが所定回数繰り返された場合には、図6のステップS1に処理を戻す、つまり、校正データ生成(ステップS1〜ステップS12の処理)をやり直す構成としてもよい。本実施形態の血圧測定装置は、校正用データの生成を簡単に行うことができるため、校正用データ生成をやり直すことで、精度の高い連続血圧測定が可能になる。
また、同様に、図16のフローチャートにおいて、ステップS47の判定がNOのとき又は、ステップS47の判定がNOになることが所定回数繰り返された場合には、図6のステップS1に処理を戻してもよい。また、図16,17のフローチャートにおいて、ステップS48の判定がNOのとき、又は、ステップS48の判定がNOになることが所定回数繰り返された場合には、図6のステップS1に処理を戻してもよい。
本実施形態の制御部12が行う図6,図12,図14,図16,図17に示した各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、当該プログラムをコンピュータが読取可能な一時的でない(non−transitory)記録媒体に記録される。
このような「コンピュータ読取可能な記録媒体」は、たとえば、CD−ROM(Compact Disc−ROM)等の光学媒体や、メモリカード等の磁気記録媒体等を含む。また、このようなプログラムを、ネットワークを介したダウンロードによって提供することもできる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
開示された血圧測定装置は、一方向に並ぶ複数の圧力検出素子からなる少なくとも1つの素子列が形成された押圧面と、前記一方向が生体の皮膚下の動脈の伸びる方向と交差する状態で前記動脈に前記押圧面を押圧する押圧部と、前記押圧部による押圧力を制御する押圧制御部と、前記押圧部の押圧方向に直交する2つの軸であって前記一方向に伸びる第一の軸と前記一方向と直交する第二の軸の少なくとも一方の周りに前記押圧面を回転駆動する回転駆動部と、前記押圧制御部の制御によって前記押圧力が増加する過程の複数タイミングにおいて前記素子列により検出された圧脈波に基づいて、前記回転駆動部による前記押圧面の回転を制御する回転制御部と、前記押圧力が増加する過程、又は、前記押圧力が増加する過程の後の前記押圧制御部の制御によって前記押圧力が減少する過程、で前記素子列により検出される圧脈波に基づいて前記動脈内の血圧値を算出する血圧算出部と、を備えるものである。
開示された血圧測定装置は、前記血圧算出部は、前記押圧力が増加する過程の後の前記押圧制御部の制御によって前記押圧力が減少する過程で前記素子列により検出される圧脈波に基づいて前記動脈内の血圧値を算出するものである。
開示された血圧測定装置は、前記回転制御部は、前記複数タイミングにおいて前記素子列により検出された圧脈波と、当該圧脈波の検出時における前記押圧力との関係を示すデータを用いて、前記押圧力が増加する過程における前記動脈の前記一方向への移動量を算出し、前記移動量にしたがって前記押圧面の前記第二の軸周りの回転方向及び回転量を制御するものである。
開示された血圧測定装置は、前記回転制御部によって前記押圧面の回転が行われなかった場合に、前記血圧算出部は、前記押圧力が増加する過程で前記素子列により検出された圧脈波に基づいて前記動脈内の血圧値を算出するものである。