JP6377212B1 - レーザー治療器における半導体レーザーの石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物 - Google Patents

レーザー治療器における半導体レーザーの石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物 Download PDF

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【課題】レーザー光により石英ファイバーの先端面にカーボンを確実に付着させることができ、口腔内においても安全に使用することができる、石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物を提供する。【解決手段】石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物は、カーボン粉末と、粉末状無機物と、液状のつなぎ剤とを含み、混練して成形又は乾燥する。【選択図】図2

Description

本発明は、レーザー治療器における半導体レーザーの石英ファイバーの先端面を発熱させることを目的としてその先端面にカーボンを付着させるための先端面付着用カーボン固形物に関する。
主として、800nm〜970nm波長の半導体レーザーは、レーザー光を石英ファイバーを通してその先端から放射させる。半導体レーザーのかかるレーザー光は、組織透過性が高いが、接触した局所表面に限局した物理化学的な作用は弱いため、レーザー光を照射しただけでは、局所の切開、切除、蒸散などの外科処置は不可能である。そこで、これを可能にするために、石英ファイバーの先端面にカーボンを付着させ、カーボンにレーザー光の光エネルギーを吸収させて発熱させることが考えられた。カーボンの付着は、石英ファイバーの先端面にコルクなどを当てて、例えば1.4ワット(ワットはレーザー光の強さ)のレーザー光を短時間(例えば3秒間)照射し、コルクを焼却して炭化させることによって行なわれる。しかし、この方法では、その作業を数回、例えば4回繰り返さないと石英ファイバーの先端面に十分な量のカーボンの付着は得られない。また石英ファイバーの先端面に対するカーボンの付着が弱く、脱落しやすく、そのため、外科処置を円滑に行うに十分な発熱を得ることはできず、切開速度を遅くするので、レーザー光の出力を上げるといった装置側・施術者による工夫をすることで外科処置を可能としてきた。半導体レーザーは手早く、低出力で安全な切開に不向きの治療器であると認識している施術者も少なくない。
本発明者は、これらの欠点を解消することを目的として種々研究を重ねた結果、安全性に優れ、カーボンが石英ファイバーの先端面に容易にかつ強固に付着することを確認して本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、レーザー治療器における半導体レーザーの石英ファイバーの先端面にカーボンを強固に付着させることができる、石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物を提供することにある。
本発明の上記の目的は、カーボン粉末と、粉末状無機物と、液状のつなぎ剤と、を含む組成物を混練し、成形又は乾燥してなる、石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物を提供することによって達成される。
本発明による先端面付着用カーボン固形物を構成する成分重量割合は、好ましくは、カーボン粉末:3.23〜33.3重量%、粉末状無機物:25.0〜47.6重量%、液状のつなぎ剤:33.3〜64.5重量%であるのかよい。
カーボン粉末は、好ましくは、活性炭、備長炭、竹炭、植物炭末色素、木炭、又は骨炭色素である。粉末状無機物及び液状のつなぎ剤の例は実施形態の中で列挙する。
[発明の作用]
本発明による先端面付着用カーボン固形物を石英ファイバーの先端面に当てて、1.4ワットのレーザー光を短時間(例えば、3秒間)照射することにより所望の発熱を得るのに十分な量のカーボンを石英ファイバーの先端面に付着させることができることが確認された。その理由は、カーボンと一緒に配合された粉末状無機物が、レーザー光エネルギーを吸収したことによるカーボンの発熱(推定900〜2500℃)によって溶けて接着剤として石英ファイバーの端面に密着し、冷えて固まったときにカーボンを内包する。そのため、カーボンが石英ファイバーの先端面に強固に付着し、石英ファイバーの早い動きにもカーボンは脱落することなく耐え、高温を維持するために2ワットという低出力で切開可能な発熱が得られる。
レーザー治療器の全体を概略的に示す図である。 石英ファイバーの先端面に本発明による先端面付着用カーボン固形物を当てている様子を示す図である。 石英ファイバーの先端面にカーボンを付着させた状態を拡大して示す図である。 広がりのある光の強度測定を示すグラフである。 一回付着後の出力変化と広がりのある光の強度の関係を示すグラフである。
図1は、レーザー治療器における半導体レーザーのレーザー発信器1から延びる石英ファイバー2を概略的に示し、その先端部分には、術者が把持するためのハンドピース3が取付けられている。石英ファイバー2は、その周りに被覆を有し、先端部は剥き出しにされており、剥き出しになった石英ファイバー2の先端4は約1センチ突出している。石英ファイバーのコア直径は、200〜600マイクロメートルである。図2は、カーボンの付着に先立って、石英ファイバー2の先端面5に本発明による先端面付着用カーボン固形物7を当てている様子を拡大して示している。図3は、石英ファイバー2の先端面5にカーボン6を付着させた様子を拡大して示している。かかるカーボン6の付着は、次のようにして行われる。まず、図2に示すように、ファイバーの突出した先端4の先端面5に、本発明によって提供される先端面付着用カーボン固形物7を当てて、1.4ワットのレーザー光を照射する。すると、先端面付着用カーボン固形物7の成分であるカーボン6が、レーザー光エネルギーを吸収して発熱を起こし(推定900〜2500℃)、その熱により、先端面付着用カーボン固形物7中の粉末状無機物が溶融し、石英ファイバーの先端面5にカーボン6を強固に付着させる。
本発明による先端面付着用カーボン固形物7は、カーボン粉末と、粉末状無機物と、液状のつなぎ剤とを含む組成物を混練して、成形又は乾燥することによって得られる。カーボン粉末としては、活性炭、備長炭、竹炭、植物炭末色素、木炭、または骨炭色素を使用することができる。粉末状無機物としては、下記のものを使用することができる。
ケイ酸塩鉱物(ゼオライト、タルク、酸性白土、活性白土、カオリン)、ケイ素化合物(二酸化ケイ素)、アルミニウム化合物(酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、塩化アルミニウム)、チタン化合物(酸化チタン、二酸化チタン)、カルシウム化合物(塩化カルシウム、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム)、カリウム化合物(塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、乳酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム)、鉄化合物(三二酸化鉄、乳酸鉄、硫酸第一鉄)、マグネシウム化合物(酸化マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウムナトリウム、水酸化アルミナマグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、リン酸一水素マグネシウム、塩化マグネシウム)、亜鉛化合物(硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化亜鉛、グルコンサン亜鉛)、銅化合物(硫酸銅)、ビスマス化合物(炭酸ビスマス、酸化ビスマス)、バリウム化合物(硫酸バリウム)、ストロンチウム化合物(塩化ストロンチウム)、銀化合物(銀箔)。
なお、上記の無機物のうち代表的なものの溶融温度を示せば次の通りである。
二酸化ケイ素1610〜1710℃、酸化アルミニウム2055℃、酸化チタン1855℃、塩化カルシウム175℃、塩化カリウム776℃、三二酸化鉄1550℃、酸化マグネシウム2800℃、硫酸亜鉛100℃、ビスマス271℃、バリウム726℃、塩化ストロンチウム873℃、銀961℃、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)900℃。
つなぎ剤としては、経口的に無害のものが推奨され、そのため、医薬品、食品などの添加物の用途に使用されるような、下記のものを使用することができる。
増粘安定剤やゲル化剤(ペクチン、プロピレングリコール、セルロース末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギナン、デンプン、コーンスターチ、タピオカ、ゼラチン、寒天)、糖類(糖蜜、白糖、黒蜜、ハチミツ、水あめ)植物性油脂(シアバター)、ワックス・ロウ類(パラフィンワックス、ミツロウ・カルナウバロウ等の植物ワックス)、油脂性基材(ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素)、親水性基材(ポリエチレングリコール、マクロゴール、グリセリン)、結合剤(ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー)。
上記成分の内下記のものは形状が粉末であるから、液状のつなぎ剤とするためには、水を添加、或いは水を添加し加熱する必要がある。増粘安定剤やゲル化剤の内ペクチン、セルロース末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギナン、デンプン、コーンスターチ、タピオカ、ゼラチン、寒天、結合剤の内ポリビニルアルコール。
上記成分の内下記のものは、液体で流動性があるから、加熱することで柔らかくなり一種類で液状のつなぎ剤となる。増粘安定剤やゲル化剤の内プロピレングリコール、糖類の内糖蜜、黒蜜、ハチミツ、水あめ、植物性油脂のシアバター、ワックス・ロウ類の内ミツロウ・カルナウバロウ等植物ワックス、油脂性基材の内ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素、親水性基材の内ポリエチレングリコール、マクロゴール、グリセリン。
つなぎ剤としてハチミツや糖蜜を使用する場合には、防腐・防黴の目的で、プロピレングリコールを組み合わせるのが望ましい。
ワックス・ロウ類の内パラフィンワックスを使用する場合には、固形であるから、流動パラフィンを加え加温して溶解し、室温で液状のつなぎ剤とする。また、結合剤の内カルボキシビニルポリマーを使用する場合には、水との親和性が強く、不均一な組成物となるので、グリコール類(グリセリン、プロピレングリコールなど)と予め練和した組成物を得てから水を加えて均一に溶解して液状のつなぎ剤とするのが望ましい。
本発明の先端面付着用カーボン固形物を構成する成分の混合割合は、好ましくは、カーボン粉末:3.23〜33.3重量%、粉末状無機物:25.0〜47.6重量%、液状のつなぎ剤:33.3〜64.5重量%である。数例の具体的な成分の混合割合(重量及び重量%)は表1に示す通りである。カーボン粉末は、表1に示す割合以下では所望の熱を維持しないこと、また粉末状無機物は、表1に示す割合以下では安定して石英ファイバーを構成する石英と接着しないことが実験の結果わかった。液状のつなぎ剤は少なすぎると先端に付着させにくい。また上記成分のそれぞれはこの割合以上でもうまくいかなかった。
Figure 0006377212
表1に示す混合割合を異にした4種類の本発明による先端面付着用カーボン固形物に石英ファイバーの先端面を当て1.4ワットのレーザー光を照射してカーボンを付着させた後、レーザー光を2ワットに設定して、照射した。すると、カーボンがレーザー光を吸収し、発熱して、広がりのある光を発生する。この広がりのある光の強さをカーボン付着の指標とした。広がりのある光の強さを測定するに当たって、光強度測定器のセンサーを石英ファイバーと平行に設置し、広がりのある光だけを選択的に測定できるようにし、石英ファイバーとセンサーとの距離を0.5cmずつ離して測定した。その結果は図4のグラフに示す通りである。
このグラフからわかるように、いずれの混合割合の、本発明による先端面付着用カーボン固形物も、広がりのある光は強く、これは、本発明による先端面付着用カーボン固形物が優れていたことの証左である。なおグラフ中ノーマルは、石英ファイバーの先端面にカーボンの付着がないために、レーザー光は殆ど広がらない。一方、本発明による先端面付着用カーボン固形物では、3cm離れても0.02ワット以上の光強度が得られている。
図5は、カーボンを石英ファイバーの先端に一回付着させた後の出力変化と広がりのある光強度との関係を示すグラフである。石英ファイバーの先端に付着させたカーボンの発熱により発する広がりのある光の強度が0.2ワット以上であれば、目視で光を確認でき、切開に十分な発熱が得られていることを示している。通常治療時は、3ワット〜6ワットで切開を行なうが、本発明による場合は、2ワットという低出力で切開可能な発熱が得られることがわかった。
本発明による先端面付着用カーボン固形物を用い、上記の手法で石英ファイバーの先端面にカーボンを付着させるときには、付着が強固であるから、石英ファイバーの早い動きにもカーボンが脱落することなく耐え、高温を維持するため低出力で切開を可能にする。加えて、粉末状無機物、液状のつなぎ剤が食品・医薬品添加物であるから、人体への悪影響がなく、安全である。
1 半導体レーザー治療装置におけるレーザー発信器
2 石英ファイバー
3 ハンドピース
4 石英ファイバー先端
5 石英ファイバー先端面
6 カーボン
7 先端面付着用カーボン固形物

Claims (2)

  1. 半導体レーザーの石英ファイバーの先端面にカーボンを付着させるのに用いられるものであって、カーボン粉末と、粉末状無機物と、液状のつなぎ剤と、を含む組成物を混練して成形又は乾燥させてなる、石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物。
  2. 前記カーボン固形物を構成する成分混合割合は、カーボン粉末:3.23〜33.3重量%、粉末状無機物:25.0〜47.6重量%、液状のつなぎ剤:33.3〜64.5重量%から成る、請求項1に記載の石英ファイバーの先端面付着用カーボン固形物。
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