JP6375802B2 - 植物の育成方法及び植物育成装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献2の栽培方法では、栽培環境を過重力状態とするための特別な設備が必要であるとともに、栽培スペースが限定されるため、生産性の観点において問題がある。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発明において、前記植物が繊維の採取が可能な植物であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記繊維の採取が可能な植物がケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー及び亜麻の少なくとも一種であることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の発明において、前記植物が野菜であることを要旨とする。
起潮力の変動に応じて、前記育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段と、を備え、
前記生育環境には、光条件が含まれ、
前記起潮力把握手段として、相対的重力加速度を算出する相対的重力加速度算出手段を用い、
前記生育環境制御手段として、算出された相対的重力加速度に応じて、育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段を用いることを要旨とする。
請求項10に記載の発明は、請求項7乃至9の何れか一項において、前記植物が繊維の採取が可能な植物であることを要旨とする。
請求項11記載の発明は、請求項10において、前記繊維の採取が可能な植物がケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー及び亜麻の少なくとも一種であることを要旨とする。
請求項12に記載の発明は、請求項7乃至9の何れか一項において、前記植物が野菜であることを要旨とする。
また、光条件を含む生育環境を制御する場合には、植物の代謝を効率的に変化させることができる。特に、植物の成長を効率的に促進させ、栽培期間を短縮したり、バイオマスの増産や、植物における成分の改良を行うことができる。
更に、起潮力の指標として、相対的重力加速度を用いる場合には、特別な設備を必要とせず、起潮力の把握が容易であり、植物の代謝を効率的に変化させることができる。
また、標準重力加速度を基準とした際に、相対的重力加速度がプラスからマイナスに変わる時間帯において、植物を暗条件にて成長させる場合には、相対的重力加速度の変化による植物成長率の高まりと、光合成により蓄えられたエネルギーを成長に利用する能力が高まる暗期とが重なることにより、植物の成長をより効率的に促進させ、栽培期間を短縮することができる。更には、バイオマスの増産や、成分の改良を行うことができる。
更に、標準重力加速度を基準とした際に、相対的重力加速度がマイナスからプラスに変わる時間帯において、植物を暗条件にて成長させる場合には、植物の代謝を効率的に変化させることができる。特に、植物における成分の改良を行うことができる。
また、光条件を含む生育環境を制御する場合には、植物の代謝を効率的に変化させることができる。特に、植物の成長を効率的に促進させ、栽培期間を十分に短縮したり、バイオマスの増産や、成分の改良を行うことができる。
更に、起潮力把握手段として、相対的重力加速度を算出する相対的重力加速度算出手段を用い、生育環境制御手段として、算出された相対的重力加速度に応じて、育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段を用いる場合には、起潮力の把握が容易であり、植物の代謝を効率的に変化させることができる。
また、標準重力加速度を基準とした際に、相対的重力加速度がプラスからマイナスに変わる時間帯において、植物を暗条件にて成長させる場合には、相対的重力加速度の変化による植物成長率の高まりと、光合成により蓄えられたエネルギーを成長に利用する能力が高まる暗期とが重なることにより、植物の成長をより効率的に促進させ、栽培期間を短縮することができる。更には、バイオマスの増産や、植物における成分の改良を行うことができる。
更に、標準重力加速度を基準とした際に、相対的重力加速度がマイナスからプラスに変わる時間帯において、植物を暗条件にて成長させる場合には、植物の代謝を効率的に変化させることができる。特に、植物における成分の改良を行うことができる。
[1]植物の育成方法
本発明の植物の育成方法は、起潮力を把握し、起潮力の変動に応じて、植物の生育環境を制御することを特徴とする。
特に、本発明の育成方法では、起潮力の指標として、相対的重力加速度を用いることが好ましい。即ち、相対的重力加速度を把握し、相対的重力加速度に応じて、植物の生育環境を制御するものとすることが好ましい。
この相対的重力加速度は、一般に公開されている潮汐力予測プログラムを利用することにより算出することができる。具体的には、潮汐力予測プログラムに、栽培拠点の位置(緯度及び経度)、年月日、及び時刻の各情報を入力することにより、目的地点における相対的重力加速度、及びその経時変化を算出することができる。
また、上記潮汐力予測プログラムとしては、例えば、潮汐予測システム「GOTIC2」(http://www.miz.nao.ac.jp/staffs/nao99/)等を用いることができる。
特に、本発明における植物の育成方法では、上記起潮力に応じて、光条件を含む生育環境を制御することが好ましく、上記相対的重力加速度に応じて、光条件を含む生育環境を制御することがより好ましい。
具体的には、例えば、標準重力加速度を基準とした際に、相対的重力加速度がプラスからマイナスに変わる時間帯において、植物を暗条件にて成長させる形態等が挙げられる。より具体的には、相対的重力加速度がプラスからマイナスに変わる時間帯を、明暗サイクルにおける暗期に割り当てて、植物を成長させる形態等が挙げられる。
この際、植物を暗条件において成長させる時間は特に限定されないが、少なくとも相対的重力加速度がプラスからマイナスに変化した直後から、0.1〜12時間(特に0.5〜8時間、更には0.5〜4時間)は暗条件で成長させることが好ましい。
この際、植物を暗条件において成長させる時間は特に限定されないが、少なくとも相対的重力加速度がマイナスからプラスに変化した直後から、0.1〜12時間(特に0.5〜8時間、更には0.5〜4時間)は暗条件で成長させることが好ましい。
尚、本発明においては、0〜1500ルクスの照度範囲を暗所(暗条件)とし、1500ルクスを超える範囲の照度範囲を明所(明条件)とする。この暗条件は、陽性植物の光補償点における光強度を参考としたものである(参考文献;Taiz and Zeiger,Plant Physiology Third Edition、発行年;2002年、該当頁;178頁)。
上記植物としては、例えば、被子植物、裸子植物、シダ植物、コケ植物及び真菌植物等が挙げられる。
上記被子植物としては、双子葉類であってもよいし、単子葉類であってもよい。被子植物のなかでも、繊維の採取が可能なものや、野菜(果菜類、葉菜類、茎菜類、根菜類、花菜類)が好ましい。繊維の採取が可能なものとしては、具体的には、例えば、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻(フラックス)、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、クラウア、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、綿花、カポック等が挙げられる。更には、ポプラ、ブナ、カバ、柳、楓等の広葉樹が挙げられる。これらのなかでも、靭皮植物、即ち、ケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー、亜麻が特に好ましい。
更に、上記シダ植物としては、野菜が好ましい。具体的には、シダ目[ウラボシ科(例えば、わらび等)、ゼンマイ科(例えば、ぜんまい等)]、トクサ目[トクサ科(例えば、つくし等)]等に属するものが挙げられる。
また、上記真菌植物としては、野菜が好ましい。具体的には、キクラゲ目[キクラゲ科(例えば、きくらげ等)]、ハラタケ目[キシメジ科(例えば、えのきたけ、しいたけ、まつたけ等)、ハラタケ科(例えば、マッシュルーム等)、モエギタケ科(例えば、なめこ等)]等に属するものが挙げられる。
本発明の植物育成装置は、植物を生育するための育成空間を備えるものであって、起潮力を把握する起潮力把握手段と、起潮力の変動に応じて、育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段と、を備えている。
上記相対的重力加速度算出手段では、植物の栽培拠点の位置(緯度及び経度)、年月日、及び時刻の各情報が入力された際に、目的地点における相対的重力加速度、及びその経時変化が算出される。尚、相対的重力加速度は、上述のように、一般に公開されている潮汐力予測プログラムを利用することができる。
特に、本発明における植物育成装置では、上記起潮力把握手段として、相対的重力加速度を算出する相対的重力加速度算出手段を用い、上記生育環境制御手段として、算出された相対的重力加速度に応じて、育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段を用いることが好ましい。
また、本発明における植物育成装置では、上記相対的重力加速度に応じて、光条件を含む生育環境が制御されることが好ましい。
更には、相対的重力加速度に応じた光条件の制御としては、標準重力加速度を基準とした際に、相対的重力加速度がマイナスからプラスに変わる時間帯において、植物を暗条件にて成長させる形態が挙げられる。より具体的には、相対的重力加速度がマイナスからプラスに変わる時間帯を、明暗サイクルにおける暗期に割り当てて、植物を成長させる形態が挙げられる。
[1]植物育成装置(実施例1)
実施例1の植物育成装置は、図1に示すように、制御部1と、照明装置3と、育成空間5と、を備えている。
制御部1は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。尚、制御部1は、相対的重力加速度を算出する相対的重力加速度算出手段、及び算出された相対的重力加速度に応じて、育成空間5における生育環境を制御する生育環境制御手段として機能する。
照明装置3は、LED、電球、エレクトロルミネセンス(EL)等を光源とするものである。そして、制御部1は、この照明装置3のオン・オフや、照度を調整することができる。
また、照明装置3は太陽光等の自然光を利用するものであってもよく、その場合には、遮光や減光が可能なカーテン、ブラインド、シャッター、戸等を備えており、それらの開閉などを制御することで照度を調整することができる。
(2−1)実験例1〜4
実施例1の植物育成装置を用いてケナフを24時間育成した。栽培温度は室温(25℃)とし、光条件は明条件16時間(4〜20時)及び暗条件8時間(20〜4時)の明暗サイクルで行った。
この際、育成空間における播種後約3週間経過したケナフを育成に用い、ケナフ茎丈を3時間ごとに計測し、その3時間での茎の平均成長率[Variation of stem elongation rate(SER)]を算出し、その結果を図3に示した。但し、この測定は、4度行い[2011年2月14日の7〜22時、同年2月23日の9〜22時、同年2月24日の7〜22時、同年3月8日の12時〜翌日(3月9日)の6時]、各測定日のn数は34(合計n数;136)とした。
また、図面上部の横棒グラフは明暗条件を示しており、白色部が明条件、黒色部が暗条件である。
実施例1の植物育成装置を用いてケナフを8日間連続して育成した[尚、2011年12月7日の10時〜翌日(12月8日)の10時までの24時間を第1日目とする]。栽培温度は室温(25℃)とし、光条件は明条件16時間(4〜20時)及び暗条件8時間(20〜4時)の明暗サイクルで行った。
この際、育成空間における播種後約3週間経過したケナフを育成に用い、ケナフ茎丈を24時間ごとに計測し、その24時間での茎の平均成長率[Variation of stem elongation rate(SER)]を算出し、その結果を図4に示した。但し、n数は34である。
実験例6(ハツカダイコンの育成)、及び実験例7(ミニチンゲンサイの育成)
十分に吸水した濾紙上にハツカダイコン及びミニチンゲンサイの各種子を置き、保湿状態にて蛍光灯の光照射下で数日間かけて発芽させた。次いで、ハツカダイコン及びミニチンゲンサイのそれぞれにおいて、子葉が展開した1cm程度の植物体の重さを量り、同程度の大きさのものを30個体ずつ選んで市販の野菜用培養土(株式会社大創産業製、商品名「野菜の土」)を入れた培養ポットに移植した。
そして、移植後、照度50,000ルクス、湿度50%、温度25℃に設定した人工気象室(エスペック株式会社製、型番「TGH−3−P」)内に移して栽培実験を行った。尚、植物体直上における照度の実測値は約25,000ルクスである。
また、この栽培実験では、暗条件(暗期)、つまり消灯時間を起潮力の挙動に同調させて行う同調栽培と、上記挙動には同調させず、明条件16時間(8〜24時)及び暗条件8時間(24〜8時)の明暗サイクル下にて栽培を行う非同調栽培とを行った。
ここで、起潮力と暗期の同調栽培実験では、起潮力の指標となる相対重力加速度が栽培拠点(愛知県刈谷市)においてプラスからマイナスに転じる時間帯を、上記潮汐予測システム「GOTIC2」により算出し、その時間帯(相対重力加速度がプラスからマイナスに転じる点を中心に前後4時間)に暗期8時間を同調させた。尚、満潮時や干潮時における相対重力加速度は、その都度異なり、相対重力加速度がプラスからマイナスに転じる点が約1日に2回生じることがある。その場合には、上記プラスからマイナスに転じる点を含む、干潮時から次回の満潮時までの範囲を比較した際に、相対重力加速度の値の変化量が大きな範囲内において上記暗期を設けるように調整した。従って、暗期は8時間で一定であるものの、起潮力は24時間周期ではないために、1日における明期は約16時間となり一定ではない。
そして、栽培後の各植物体については、培養土を洗い落とした後、新鮮重量(各30体の平均値)と乾燥重量(各30体の平均値)を測定し、その結果を表1に示した。尚、表1には、栽培期間中における、特定の時間帯(相対重力加速度がプラスからマイナスに転じ転じる点を中心に前後4時間)に重なる暗期の総合時間を併記した。
更に、図7には、非同調栽培により育成されたハツカダイコン(図面左)と、同調栽培により育成されたハツカダイコン(図面右)とを並べた比較図を示した。更に、図8には、非同調栽培により育成されたミニチンゲンサイ(図面左)と、同調栽培により育成されたミニチンゲンサイ(図面右)とを並べた比較図を示した。
以上のことから、起潮力の変動に応じて、植物の生育環境(光条件)を制御することにより、植物の代謝を変化させることができ、特に、植物の成長を促進させたり、バイオマスを増加させたりできることが確認できた。
実験例8(レタスの育成)
十分に吸水した水耕栽培用のウレタンベースに、植物工場で一般的に栽培されているレタス(「フリルアイス」、雪印種苗株式会社)の種子を置き、25℃、暗所下で2日間発芽誘導を行った。発芽後、同程度に生育した個体のみを選び、水耕栽培用トレイに12株ずつ移植した。これらを照度約18,000ルクス、湿度50%、温度25℃に設定した3台のグロースチャンバー(株式会社日本医化器械製作所製、型番「LPH−410SPCS」)内に移して以下の栽培実験を行った。尚、水耕栽培はエスペックミック社製の小型水耕栽培装置を用い、水耕液には溶液栽培用肥料の「大塚ハウス1号」、「大塚ハウス2号」(OTAアグリオ株式会社製)の混合A処方に従って調製したものを用いた。水耕液は1週間に1〜2回交換した。
この栽培実験では、3台のグロースチャンバーのうち2台を、暗条件(暗期)、つまり消灯時間を起潮力の挙動に同調させて行う同調栽培とし、残りの1台を、上記挙動には同調させず、明条件16時間(6〜22時)及び暗条件8時間(22〜6時)の明暗サイクル下にて栽培を行う非同調栽培とした。尚、2つの同調栽培のうち、一方は、実験例7の同調栽培と同様にして、起潮力の指標となる相対重力加速度が栽培拠点(愛知県刈谷市)においてプラスからマイナスに転じる時間帯を、上記潮汐予測システム「GOTIC2」により算出し、その時間帯に暗期8時間を同調させて栽培を行った。また、残りの他方は、同システムにより、相対重力加速度がマイナスからプラスに転じる時間帯を算出し、その時間帯に暗期8時間を同調させて栽培を行った。
そして、最終的に、各栽培実験において、それぞれ、直径約20cmに成長した6個体を収穫し、下記のようにして成分分析(I)及び(II)を行った。そして、成分分析(I)の結果を表2に示し、成分分析(II)の結果を表3に示した。また、表2及び表3には、栽培期間中における、特定の時間帯(a)(相対重力加速度がプラスからマイナスに転じる点を中心に前後4時間)に重なる暗期の総合時間、及び特定の時間帯(b)(相対重力加速度がマイナスからプラスに転じる点を中心に前後4時間)に重なる暗期の総合時間を、それぞれ、併記した。
尚、試験区1(非同調)は、非同調栽培実験の結果を示している。また、試験区2[同調(プラス→マイナス)]は、相対重力加速度がプラスからマイナスに転じる時間帯に、暗期8時間を同調させた同調栽培の結果を示している。更に、試験区3[同調(マイナス→プラス)]は、相対重力加速度がマイナスからプラスに転じる時間帯に、暗期8時間を同調させた同調栽培の結果を示している。
収穫された3個体(試験区1−1〜1−3、2−1〜2−3、3−1〜3−3)を用いて、エネルギー(kcal/100g)、水分(g/100g)、タンパク質(g/100g)、脂質(g/100g)、炭水化物(g/100g)、及び、灰分(ミネラル)(g/100g)に関する栄養分析を行い、その平均値も算出した。
尚、各成分の分析方法は以下の通りである。
エネルギー;計算法
水分;減圧加熱乾燥法
タンパク質;ケルダール法
脂質;酸分解法
炭水化物;計算法
灰分;直接灰化法
収穫された3個体(試験区1−4〜1−6、2−4〜2−6、3−4〜3−6)を用いて、各種ミネラル[ナトリウム(mg/100g)、カリウム(mg/100g)、カルシウム(mg/100g)、マグネシウム(mg/100g)、リン(mg/100g)、鉄(mg/100g)、亜鉛(mg/100g)、及び、マンガン(mg/100g)]に関する栄養分析を行い、その平均値も算出した。
尚、これらの各成分の分析には、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法を用いた。
以上のことから、起潮力の変動に応じて、植物の生育環境(光条件)を制御することにより、植物の代謝を変化させることができ、特に、成分を改良することができることが確認できた。また、この成分の改良により、栄養成分の含有量の調整や、味の改良についても期待することができる。
実験例9(チンゲンサイの育成)
チンゲンサイ(「極早生ミニ30日チンゲンサイ」、アタリヤ農園)の種子を水道水で湿らせたペーパータオルの上に置くことにより吸水させた後、粒状培養土(「花と野菜の粒状培養土」、LIFELEX)を入れた培養ポット(縦3cm×横3cm×深さ3cm)に1粒ずつ播種した。これをグロースチャンバー(「LPH−410SPC」、日本医化器械製作所)内で温度25℃、湿度65%、照度約15,000ルクス条件のもと、1週間かけて発芽させた。
その後、子葉が展開し、更に本葉が2枚展開した3cm程度の個体のうち、外観が同程度(葉数や大きさ)のものを40個体選抜した。そして、これらの選抜個体を、新しい粒状培養土を入れた培養ポット(縦5cm×横5cm×深さ5cm)に移植した。この際、10個体ずつ4つのトレイに移植し、これらを2つの試験区用に分けた。
また、この栽培実験は、同調開始日を2014年7月3日(水)15:00とし、上述の発芽誘導時と同様に、温度25℃、湿度65%及び照度約15,000ルクスの条件で行った。そして、暗期同調開始から22日目の2014年7月24日(火)13:00に各々の試験区からトレイを出し、チンゲンサイの地上部のみを採取した。
尚、この栽培期間における起潮力の変化(相対重力加速度の変化を指標)は図9に示す通りである。また、この栽培期間における暗期の積算時間は168時間、明期の積算時間は334時間であり、各試験区にて同じである。
また、試験区A[暗期同調(マイナス→プラス)]において育成したチンゲンサイ(実験例9−A−1〜実験例9−A−20)の外観図を図10に、試験区B[暗期同調(プラス→マイナス)]において育成したチンゲンサイ(実験例9−B−1〜実験例9−B−20)の外観図を図11に示した。尚、図10においては、最上段の左から右の順に実験例9−A−1〜9−A−4、第2段目の左から右の順に実験例9−A−5〜9−A−8、第3段目の左から右の順に実験例9−A−9〜9−A−12、第4段目の左から右の順に実験例9−A−13〜9−A−16、第5段目の左から右の順に実験例9−A−17〜9−A−20である。また、この図10における順序と同様に、図11において実験例9−B−1〜実験例9−B−20が並んでいる。
更に、試験区Aで育成されたチンゲンサイ(実験例9−A−13)の葉の外観図を図12に、試験区Bで育成されたチンゲンサイ(実験例9−B−14)の葉の外観図を図13に示した。尚、図12及び図13においては、上段の左から右の順に第1葉〜第4葉であり、中段の左から右の順に第5葉〜第9葉であり、下段の左から右の順に第10葉〜第13葉である。
また、チンゲンサイの葉をそれぞれ分解してみたところ、葉の枚数は各試験区において約13枚であり、差異は無いと考えられる(表4参照)。
一方、葉の形態を比較すると、実験例9−A−1〜9−A−20のチンゲンサイの方が、実験例9−B−1〜9−B−20のチンゲンサイよりも、葉の緑色(特に葉軸の緑色)がより濃くなっていることが確認できた。
更に、図12、図13及び表5からも明らかなように、葉軸部の大きさに明かな差異があった。各試験区における5枚の本葉(第5葉〜第9葉)の葉軸部の平均長を算出したところ、試験区Aの実験例9−A−1〜9−A−20のチンゲンサイでは28.9mmであった。これに対して、試験区Bの実験例9−B−1〜9−B−20のチンゲンサイでは46.8mmであり、試験区Aでの結果の約1.6倍であった。また、各試験区における各個体の最長葉軸の平均を算出したところ、試験区Aの実験例9−A−1〜9−A−20のチンゲンサイでは32.3mmであった。これに対して、試験区Bの実験例9−B−1〜9−B−20のチンゲンサイでは55.1mmであり、試験区Aでの結果の約1.7倍であった。
実験例10(ハツカダイコンの育成)
ハツカダイコン(「赤丸はつか大根」、アタリヤ農園)の種子を水道水で湿らせたペーパータオルの上に置くことにより吸水させた後、粒状培養土(「花と野菜の粒状培養土」、LIFELEX)を入れた培養ポット(縦3cm×横3cm×深さ3cm)に1粒ずつ播種した。これをグロースチャンバー(「LPH−410SPC」、日本医化器械製作所)内で温度25℃、湿度65%、照度約15,000ルクス条件のもと、1週間かけて発芽させた。
その後、子葉が展開し、更に本葉が2枚展開した3cm程度の個体のうち、外観が同程度(葉数や大きさ)のものを18個体選抜した。そして、これらの選抜個体を、新しい粒状培養土を入れた培養ポット(縦5cm×横5cm×深さ5cm)に移植した。この際、9個体ずつ2つのトレイに移植し、これらを2つの試験区用に分けた。
また、この栽培実験は、同調開始日を2014年7月3日(水)15:00とし、上述の発芽誘導時と同様に、温度25℃、湿度65%及び照度約15,000ルクスの条件で行った。そして、暗期同調開始から22日目の2014年7月24日(火)13:00に各々の試験区からトレイを出し、ハツカダイコンを採取した。
尚、この栽培期間における起潮力の変化(相対重力加速度の変化を指標)は図9に示す通りである。また、この栽培期間における暗期の積算時間は168時間、明期の積算時間は334時間であり、各試験区にて同じである。
また、ハツカダイコンの大きさ(全体の平均重量)の違いは、図14及び図15における外観図の比較からも明らかなように、地上部での大きさの違いが大きく(実験例10−A−1〜10−A−9における地上部の平均重量;2.923g、実験例10−B−1〜10−B−9における地上部の平均重量;5.212g、B/A:1.783)、地下部には地上部ほどの差異は確認できなかった(実験例10−A−1〜10−A−9における地下部の平均重量;11.683g、実験例10−B−1〜10−B−9における地下部の平均重量;13.573g、B/A:1.162)。
Claims (12)
- 起潮力を把握し、前記起潮力の変動に応じて、植物の生育環境を制御し、
前記生育環境には、光条件が含まれ、
前記起潮力の指標として、相対的重力加速度を用いることを特徴とする植物の育成方法。 - 標準重力加速度を基準とした際に、前記相対的重力加速度がプラスからマイナスに変わる時間帯において、前記植物を明暗サイクルにおける暗期に割り当て、暗条件にて成長させる請求項1に記載の植物の育成方法。
- 標準重力加速度を基準とした際に、前記相対的重力加速度がマイナスからプラスに変わる時間帯において、前記植物を明暗サイクルにおける暗期に割り当て、暗条件にて成長させる請求項1に記載の植物の育成方法。
- 前記植物が繊維の採取が可能な植物である請求項1乃至3の何れか一項に記載の植物の育成方法。
- 前記繊維の採取が可能な植物がケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー及び亜麻の少なくとも一種である請求項4に記載の植物の育成方法。
- 前記植物が野菜である請求項1乃至3の何れか一項に記載の植物の育成方法。
- 植物を生育するための育成空間を備えた植物育成装置であって、
起潮力を把握する起潮力把握手段と、
起潮力の変動に応じて、前記育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段と、を備え、
前記生育環境には、光条件が含まれ、
前記起潮力把握手段として、相対的重力加速度を算出する相対的重力加速度算出手段を用い、
前記生育環境制御手段として、算出された相対的重力加速度に応じて、育成空間内の生育環境を制御する生育環境制御手段を用いることを特徴とする植物育成装置。 - 標準重力加速度を基準とした際に、前記相対的重力加速度がプラスからマイナスに変わる時間帯において、明暗サイクルにおける暗期に割り当て、前記植物を暗条件にて成長させる請求項7に記載の植物育成装置。
- 標準重力加速度を基準とした際に、前記相対的重力加速度がマイナスからプラスに変わる時間帯において、明暗サイクルにおける暗期に割り当て、前記植物を暗条件にて成長させる請求項7に記載の植物育成装置。
- 前記植物が繊維の採取が可能な植物である請求項7乃至9の何れか一項に記載の植物育成装置。
- 前記繊維の採取が可能な植物がケナフ、ヘンプ、ジュート麻、ラミー及び亜麻の少なくとも一種である請求項10に記載の植物育成装置。
- 前記植物が野菜である請求項7乃至9の何れか一項に記載の植物育成装置。
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