JP6374201B2 - 細胞培養プレートの製造方法 - Google Patents
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Description
発明者らは、射出成型法によるアプローチによって、特許文献1よりも高い平坦性を実現する手法を発見した。
「ウェル形成面」は、細胞培養プレートにおいて、複数のウェルが配置される面であり、「表面」または「裏面」のいずれかが存在する。表面は、細胞を培養するときに上側になる面であり、裏面は、表面に対向する面である。以降の説明では、表面または裏面のいずれでもよい場合には、「ウェル形成面」と記載し、二つの面を区別する場合には、「表面」または「裏面」と記載する。また、以下の説明では、細胞培養プレートのウェル形成面以外の面を、「側面」または「側壁」と記載する。
「4象限」は、交点で直交する直線によりウェル形成面を4領域に等分した4つの領域であり、第1象限から第4象限からなる。
「ウェル形成面の中心」は、直交する直線によりウェル形成面を四等分したときに、二つの直線が交わる点をいう。ウェル形成面の中心は、成形品の型となる金型の中心でもあり、細胞培養プレートの中心でもある。
以下、図面を参照して実施形態を詳述する。
図1に実施形態1の金型の一例を示す。本実施形態で用いる金型1は、成形品形成部11とランナー・ゲート部12とを少なくとも備える。説明を容易にするため、図1に示す金型1は、本実施形態の説明に必要な構成を示し、他の構成については省略している。
成形品形成部11は、溶解した樹脂を充填し、細胞培養プレートの成形品(製品)が製作されるキャビティに相当する。キャビティに溶解した樹脂(材料)が充填されると、細胞培養プレートの成形品(製品)が作製される。
ランナー・ゲート部12は、ランナーとゲートからなり、ゲートの形状としてピンゲート(ピンポイントゲート)が採用され、先端にピンゲートが形成されたランナーにより構成される。ランナー・ゲート部12は、溶解した樹脂を成形品形成部11へ供給する。図1では、ランナーとピンゲートとを区別して明示していないが、ピンゲートはランナー・ゲート部12が成形品形成部11と連結する4つの部分に配置される。
なお、本実施形態では、ピンゲートは、成形品に大きな残留歪みを与えるほど圧力が直接伝達しないものであればよく、一般的なピンゲート方式を適用することができる。ピンゲート方式についての詳細な説明を省略する。
加えて、図1に示すランナー・ゲート部12は、ピンゲートが成形品の裏側(裏面)から樹脂を供給するように配置される。本実施形態では、金型の裏側になる面に複数のピンゲートを配置する態様を説明するが、成形品の表側(表面)にピンゲートを配置する場合を排除するものではない。
また、実際には、ランナー・ゲート部12は、先端に向けて段階的に細くなっていく。しかし、本実施形態ではゲート位置が重要であるため、ランナー及びゲートそれぞれについての詳細な形状を表現していない。
成形品において複数のウェルが配置されるウェル形成面へ、少なくとも4つのピンゲートを配置する位置を調整する工程。この工程では、ウェル形成面の中心を原点として4象限に分割したときに、すくなくとも4つのピンゲートを、各象限で等価な位置に配置するように調整する。
少なくとも4つのピンゲートを介して樹脂を供給する工程。
供給された樹脂を成形品へ成形する工程。
図2は従来の細胞培養プレートを成形する金型の一例を示す図である。金型9は、成形品形成部91とサイドゲート部92とを備える。
成形品形成部91は、図1の成形品形成部11と同様である。
サイドゲート部92は、ゲート形式としてサイドゲートを採用し、溶解した樹脂を成形品形成部91へ供給する。図2では、樹脂が供給されるランナーを明示していないが、サイドゲート部92に連結可能な位置から樹脂が供給されるように構成されればよい。
例えば、特許文献1は、射出成形によりプレートを製造しているが、ゲート方式について開示していない。本実施形態では、より高い平坦性を有する細胞培養プレートを得るために、樹脂の充填位置を製品の裏面とし、ゲート方式を多点ピンゲート方式とした。
加えて、本実施形態では、金型1内で成形品が成形され、金型1が開くと同時にゲート切断が可能であり、成形工程の簡略化が図れる。さらに加えて、ゲートの形状をピンゲートとすることにより、金型をコンパクトに設計することが可能であり、成形品製造に当たり、使用する樹脂量の削減も図ることができる。
加えて、本願発明の一実施形態は、各ウェルが貫通孔である場合に特に有利な効果を奏し、その影響が大きい。その理由は、各ウェルに底がある場合(ウェルが穴の形状の場合)、反りが少なくなるからである。言い換えると、各ウェルの底に、ウェルと同じ樹脂で平面が形成されることになり、ウェルプレート全体が一つの平板になるため、ウェルプレート全体の反りが生じにくくなる。例えば、ウェルプレートは、実際には200μm程度の反り量が生じる。そのため、底がついているウェルプレートの場合、裏面が一様な平面であることから、この程度の反り量はウェルプレート全体への影響が小さくなる。一方、底がないウェルプレートの場合、ウェルプレートの表面及び裏面とも一様な平面となることなく、複数の開口部を有する面となる。そのため、表側または裏側のいずれかが平面であるウェルプレートに比べ、反りが生じやすくなる。
加えて、ウェルが貫通孔であり、かつ、マイクロウェルにパターンがある場合、ウェルプレートの裏面にマイクロウェルを貼る場合、ウェルプレートに反りがあると、精度よく接着するためには、接着方法などに制限が出てくると予測される。
これらの理由からもウェルプレートの反りが少ない方が好ましい。
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、従来の方法に比べより高い平坦性を備える細胞培養プレートを製造することができる。
実施形態1では、ランナー・ゲート部12が4つのピンゲートを備える態様を説明したが、ピンゲートを5つ以上備える場合であってもよい。例えば、ウェル形成面に配置する多点ピンゲートの数を2点、5点、8点、9点としても同様の高平坦性が得られる。この場合にも、各象限に配置されるピンゲートが、ウェル形成面の中心から等価な位置に配置される。例えば、奇数のピンゲートを配置する場合には、一つのピンゲートがウェル形成面の中心に配置される。
各象限においてピンゲートが等価となるように配置することによって、実施形態1と応用の効果を生じさせることが可能となる。
なお、上記各実施形態では、24穴ウェルプレートを一例として説明したが、ウェルの数はこれに限られるわけではない。ウェル数が多い場合にも反りの低減が可能になり細胞培養プレートの平坦性を向上させることができる。
樹脂の流動を解析するシミュレーションにより、本発明の一実施形態を考察した。
1.予測実反り最大値の試験
(1)試験条件
ピンゲートを配置する位置の違いにより、反りがどのように異なるかを樹脂流動解析の手法を用いて試験した。樹脂流動解析として、Autodesk Simulation Moldflow Insight 2013(オートデスク株式会社)を用いて実施した。本解析では、樹脂の充填・保圧及び反り解析手法を用いた。解析要素は3Dソリッド要素とした。樹脂は、東洋スチロール株式会社製ポリスチレンMT5Dとし、樹脂温度は220℃、金型温度は60℃とした。
細胞培養プレートは24穴ウェルプレートとし、ピンゲートを配置する位置の異なるモデルを用意した。ピンゲートを配置する位置を図3に示した。
図3に、細胞培養プレートに配置するピンゲートの位置を示す。ピンゲートは、各象限について等価な位置に配置するため、図3の右側に第1象限の配置を代表して示す。ピンゲートをテスト番号(Test No.)0から20に配置して試験を行う。第2象限から第4象限についても、第1象限と等価な位置に配置した。一つの象限のピンゲートの配置位置が特定すると、他の象限についてもピンゲートを等価な位置に配置するため、一意に決まることになる。
試験は、各象限において、テスト番号にピンゲートを配置した金型を用いる場合のシミュレーションを実施し、細胞培養プレートの実反り最大値を予測した。
製造する細胞培養プレートの大きさは、長辺が127mm、短辺が85mmとした。
図4に、細胞培養プレートの予測実反り最大値を示すグラフを示す。図4の横軸にピンゲートを配置した位置を示すテスト番号を示し、縦軸に、長辺及び短辺の予測実反り最大値(マイクロメートル:μm)を示す。図4に示すように、テスト番号8,12,19において、予測実反り最大値が他の測定位置に比べ小さいと判定できる。また、テスト番号15,17が次に予測実反り最大値が小さいと判定できる。これらはいずれもウェル形成面の中心に比較的近い位置であるといえる。
次に、隣接するウェルの間のテスト番号8,7、15について、Z軸方向反り量と、長辺方向と短辺方向との関係を測定した結果を示す。テスト番号8,7、15はいずれも隣接するウェルの間であり、ウェル間の距離が他に比べ小さい位置に配置されている。
図5に、細胞培養プレートの長辺方向とZ軸方向との反り量の関係を示すグラフ、図6に、細胞培養プレートの短辺方向とZ軸方向との反り量の関係を示すグラフを示す。
図5の横軸は、細胞培養プレートの長辺の長さ0〜120mmであり、60mmの位置が細胞培養プレートの中心(ウェル形成面の中心)となる。図6の横軸は、短辺の長さ0〜60mmであり、30mmの位置が細胞培養プレートの中心(ウェル形成面の中心)となる。
この結果を、各象限の長辺及び短辺に対する割合で示すと以下の計算により算出できる。
各象限の長辺の長さは、原点から細胞培養プレート短辺までの距離である。従って、127mmを2で割った63.5mm(127/2=63.5)となる。
各象限の短辺の長さは、原点から細胞培養プレート長辺までの距離である。従って、85mmを2で割った42.5mm(85/2=42.5)となる。
上述した座標の割合を算出すると、各象限の長辺に対して、5〜63%(3/63.5〜40/63.5)、各象限の短辺に対して、7〜89%(3/42.5〜38/42.5)の範囲にピンゲートを配置すると、反りを低減することが可能になる。
シミュレーション結果によると、4つのピンゲートを、ウェル形成面の中心に近い位置に配置すると反り量が小さくなる結果が得られた。中でも隣接する二つのウェルの間にピンゲートを配置すると、反り量が小さい結果が出ている。反り量の観点から、テスト番号8、19が好ましいと考えられる。
ゲート方式の違いによる平坦性の検討として、Autodesk Simulation Moldflow Insight 2013(オートデスク株式会社)を用いた樹脂流動解析を実施した。本解析では、樹脂の充填・保圧及び反り解析手法を用いた。解析要素は3Dソリッド要素とした。樹脂は、東洋スチロール株式会社製ポリスチレンMT5Dとし、樹脂温度は220℃、金型温度は60℃とした。
ゲート方式の異なる金型を設計し、上述した条件の基に解析した。金型の解析モデルを図8〜13に示す。成形品の細胞培養プレートは、24穴ウェルプレートとし、ウェルが貫通孔であるものを用いた。また、細胞培養プレートの大きさは、長辺が127mm、短辺が85mmとした。成形品の細胞培養プレートの形状は実施例、比較例ともに同じものとした。ゲート方式についてピンゲート方式の4ケース、サイドゲート方式の2ケースを検討し、それぞれの反りについて比較した。
11、11a〜11d、91、91a、91b 成形品形成部
12、12a〜12d ランナー・ゲート部
92、92a、92b サイドゲート
Claims (4)
- 複数のウェルが配置される平面を4象限に分割したときの各象限で等価な位置に、複数のピンゲートのうち少なくとも4つが配置された金型を用いて、平坦性が80μm未満である細胞培養プレートを製造するところ、
前記各象限において1つ又は2つのピンゲートが、前記平面の中心から、前記各象限の長辺に対して5%から63%、かつ、前記各象限の短辺に対して7%から89%の範囲に配置される、
細胞培養プレートの製造方法。 - 前記複数のウェルが貫通孔である請求項1記載の細胞培養プレートの製造方法。
- 前記金型において、ピンゲートが前記複数のウェルが配置される前記平面の中心に配置されておらず、
前記金型を用いて射出成型した後に、前記複数のウェルに対してマイクロウェルを有するシートを貼り合わせて前記複数のウェルの底を形成する、
請求項2記載の細胞培養プレートの製造方法。 - 前記各象限が、配置される前記複数のウェルの面積を等しくする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の細胞培養プレートの製造方法。
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