JP6373458B2 - 粘着剤組成物、粘着剤層、および粘着シート - Google Patents

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Description

本発明は、粘着剤組成物および、当該粘着剤組成物を有する粘着剤層および粘着シートに関する。
粘着シートは、被着体に強固に接着することで、被着体同士を接着し、あるいは被着体に物品を固定する目的で使用される。この際、接着初期より粘着力が高いと貼り直しが困難となるため、初期は粘着力が弱い一方、家電、モバイル機器等の部材を固定する点からは、経時で粘着力が上昇し、高い粘着力が得られる粘着テープが求められている。
従来、このような粘着力の変化を満たすために、加熱や紫外線照射などの手法により粘着シートの粘着力を変化させる手法が用いられていた(特許文献1〜3参照)。
また、粘着シートを被着体から剥離したときに、被着体が汚染されにくいことや、糊残り少ないことが求められている。
特開平11−302610 特開平11−302614 特開2011−127054
加熱やUV照射などの手法により粘着シートの粘着力を変化させる手法では、このような処理が悪影響を及ぼす被着体に対しては、適用することができないという問題があった。また、添加剤等を用いて粘着剤と被着体との界面に凝集力の弱い層を一時的に形成させることで粘着力を下げる手法もあるが、そのような手法では粘着力が低い状態で剥離した後には被着体に糊残りや添加剤の付着等の汚染が発生してしまい、被着体に悪影響を及ぼす場合や被着体の再利用が困難になる等の問題が発生する。このため、従来の粘着剤では、初期において粘着力が弱いことで得られる、種々の被着体に対するリワーク性、経時での接着性向上、および低汚染性の両立が実現されていなかった。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被着体に対するリワーク性、経時での接着性向上および低汚染性を両立した粘着剤の提供にある。
本発明のある態様は、粘着剤組成物である。当該粘着剤組成物は、ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、官能基当量が1000g/mol以上15000g/mol未満であるポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーおよびホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマーをモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満である重合体(B)0.1〜20質量部と、を含むことを特徴とする。
上記態様の粘着剤組成物において、前記ポリマー(A)がアクリル系ポリマーであってもよい。前記重合体(B)が、モノマー成分としてホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマーを10質量%から80質量%含む重合体であってもよい。
また、前記ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーが、下記一般式(1)または(2)で表されるモノマー群から選ばれる1種または2種以上のモノマーであってもよい。
[式(1)(2)中、Rは水素またはメチルであり、Rはメチルまたは1価の有機基であり、mおよびnは0以上の整数である]
本発明の他の態様は粘着剤層である。当該粘着剤層は、上述したいずれかの態様の粘着剤組成物からなる。
本発明のさらに他の態様は粘着シートである。当該粘着シートは、上述した態様の粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成してなる。
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
本発明によれば、被着体に対するリワーク性、経時での接着性向上および低汚染性を両立することができる。
実施の形態に係る粘着剤組成物は、ポリマー(A)および重合体(B)を含む。
以下、実施の形態に係る粘着剤組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
[ポリマー(A)]
ポリマー(A)は、ガラス転移温度が0℃未満のポリマーである。ポリマー(A)は、ガラス転移温度が0℃未満であれば特に限定されず、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー等の粘着剤として一般的に用いられる各種ポリマーを用いることができる。特に重合体(B)が(メタ)アクリル系重合体の場合には、(メタ)アクリル系重合体と相溶し易く透明性が高いアクリル系ポリマーが好適である。
ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃未満、好ましくは、−10℃未満であり、より好ましくは−40℃未満であり、通常−80℃以上である。ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃以上であると、ポリマーが流動しにくく、経時での粘着力上昇に劣る場合がある。
ガラス転移温度は、文献、カタログ等に記載された公称値であるか、あるいは、下記式(X)(Fox式)に基づいて計算された値である。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+・・・+Wn/Tg (X)
[式(X)中、Tgはポリマー(A)のガラス転移温度(単位:K)、Tg(i=1、2、・・・n)はモノマーiがホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(単位:K)、W(i=1、2、・・・n)はモノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す。]
上記式(X)は、ポリマー(A)が、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
なお、本明細書において、「ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度」とは、「当該モノマーの単独重合体のガラス転移温度」を意味し、あるモノマー(「モノマーX」と称する場合がある)のみをモノマー成分として形成される重合体のガラス転移温度(Tg)を意味する。具体的には、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc,1989年)に数値が挙げられている。なお、前記文献に記載されていない単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、以下の測定方法により得られる値をいう。すなわち、温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマーX100質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部及び重合溶媒として酢酸エチル200質量部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33質量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。そして、この試験サンプルをアルミニウム製のオープンセルに約1〜2mg秤量し、温度変調DSC(商品名「Q−2000」 ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、50ml/minの窒素雰囲気下で昇温速度5℃/minにて、ホモポリマーのReversing Heat Flow(比熱成分)挙動を得る。JIS−K−7121を参考にして、得られたReversing Heat Flowの低温側のベースラインと高温側のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をホモポリマーとした時のガラス転移温度(Tg)とする。
また、ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、たとえば、3万〜500万程度である。重量平均分子量(Mw)が3万未満であると、粘着剤の凝集力が不足して、接着信頼性に劣る場合がある。一方、重量平均分子量(Mw)が500万を超えると、粘着剤の流動性が低くなり、経時での粘着力上昇に劣る場合がある。
[アクリル系ポリマー]
以下にポリマー(A)の好適な具体例であるアクリル系ポリマーについて詳述する。
アクリル系ポリマーは、たとえば、炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として50質量%以上含有するポリマーである。また、アクリル系ポリマーは、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが単独で、または2種以上が組み合わされた構成とすることができる。アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、放射線硬化重合等の、アクリル系ポリマーの合成手法として一般的に用いられる各種の重合方法を適用して該ポリマーを得ることができる。
炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して50質量%〜99.9質量%、好ましくは60質量%〜98質量%、より好ましくは70質量%〜95質量%である。
炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C2−14アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C2−10アルキルエステル]等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタクリル酸アルキルエステルをいい、「(メタ)・・・」は全て同様の意味である。
なお、アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な、他のモノマー成分(共重合性モノマー)を含んでいてもよい。したがって、アクリル系ポリマーは、主成分としての(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共に、共重合性モノマーを含んでいてもよい。共重合性モノマーとしては、極性基を有するモノマーを好適に使用することができる。
共重合性モノマーの具体的な例としては、
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等のヒドロキシル基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;
スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン等の(N−置換)アミド系モノマー;
N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシヘキサメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルへキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルイソオキサゾール、N−ビニルチアゾール、N−ビニルイソチアゾール、N−ビニルピリダジン等の窒素含有複素環系モノマー;
N−ビニルカルボン酸アミド類;
N−ビニルカプロラクタム等のラクタム系モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ含有モノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;
イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
ビニルトルエン、スチレン等の芳香族ビニル化合物;
エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィンまたはジエン類;
ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;
塩化ビニル;
ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有モノマー;
シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有モノマー;
アクリロイルモルホリン;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル;
等が挙げられる。なお、これらの共重合性モノマーは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記態様の粘着剤組成物において、前記アクリル系ポリマーは、モノマー単位として、下記一般式(M1)で表されるN−ビニル環状アミド、ヒドロキシル基含有モノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーを含有することが好ましい。特に、N―ビニル環状アミドからなる群より選ばれるモノマーを用いることが好ましい。
一般式(M1)式中、Rは、2価の有機基である。
N−ビニル環状アミドの具体例としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等が挙げられる。特に好ましくはN−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタムである。N−ビニル環状アミドからなる群より選ばれるモノマーの使用量は特に制限はされないが、通常、前記アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、共重合性モノマーを0.01質量%〜40質量%、好ましくは0.1質量%〜30質量%、さらに好ましくは0.5質量%〜20質量%含有することができる。
ヒドロキシル基含有モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等を好適に使用することができる。ヒドロキシ基含有モノマーの使用量としては、特に制限されないが、通常、前記アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、共重合性モノマー40質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%含有することができる。
共重合性モノマーを0.01質量%以上含有することで、アクリル系粘着剤組成物で形成された粘着剤層を有する粘着シートの凝集力の低下を防ぐことができる。また、共重合性モノマーの含有量を40質量%以下とすることで、凝集力が高くなり過ぎることを防ぎ、常温(25℃)でのタック感を向上させることができる。
本実施の形態においては、金属製の被着体や、金属製の被膜が形成されている被着体(例えば導電性の被膜(ITO)が形成されているタッチパネル等)に用いる場合、アクリル系ポリマー中にはカルボキシル基を有さないことが望ましい。また腐食性の観点からは、カルボキシル基以外の酸性官能基についても実質的に含まないことが望ましい。従って本実施の形態のアクリル系ポリマーを構成するモノマー構成単位としては、カルボキシル基やカルボキシル基以外の酸性官能基を有するモノマーを実質的に含まないこともあり得る。
前記酸性官能基とは、活性水素を有する官能基をいう。前記酸性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。酸性官能基を「実質的に含まない」とは、不可避的に混入する場合を除いて能動的に配合しないことを指す。具体的には、前記アクリル系ポリマーを構成する構成単位全量における、酸性官能基を有するモノマーの割合(質量%)が、1質量%未満であり、好ましくは0.5質量%未満であることを意味する。
また、アクリル系ポリマーには、形成する粘着剤組成物の凝集力を調整するために必要に応じて多官能性モノマーを含有してもよい。
多官能性モノマーとしては、たとえば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。多官能性モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
多官能性モノマーの使用量としては、その分子量や官能基数等により異なるが、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して、0.01質量%〜3.0質量%、好ましくは0.02質量%〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.03質量%〜1.0質量%となるように添加する。
多官能性モノマーの使用量が、アクリル系ポリマーを調製するためのモノマー成分全量に対して3.0質量%を超えると、たとえば、粘着剤組成物の凝集力が高くなりすぎ、初期の粘着力抑制効果が低下する場合がある。一方、0.01質量%未満であると、たとえば、粘着剤組成物の凝集力が低下し、経時での粘着力上昇が不十分な場合がある。
アクリル系ポリマーの調製に際して、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)等の重合開始剤を用いた熱や紫外線による硬化反応を利用して、アクリル系ポリマーを容易に形成することができる。特に、粘着特性が向上する利点等から、光重合を好適に用いることができる。重合開始剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
熱重合開始剤としては、たとえば、アゾ系重合開始剤(たとえば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等);過酸化物系重合開始剤(たとえば、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルマレエート、過酸化ラウロイル等);レドックス系重合開始剤等が挙げられる。
熱重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、たとえば、アクリル系ポリマーを調製するモノマー成分100質量部に対して0.01質量部〜5質量部、好ましくは0.05質量部〜3質量部の範囲内の量で配合される。
光重合開始剤としては、特に制限されないが、たとえば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。
具体的には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[商品名:イルガキュア651、BASF社製]、アニソイン等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、たとえば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名:イルガキュア184、BASF社製]、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン[商品名:イルガキュア2959、BASF社製]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン[商品名:ダロキュア1173、BASF社製]、メトキシアセトフェノン等が挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、たとえば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、たとえば、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、たとえば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。
また、ベンゾイン系光重合開始剤には、たとえば、ベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、たとえば、ベンジル等が含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、たとえば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。ケタール系光重合開始剤には、たとえば、ベンジルジメチルケタール等が含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、たとえば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、たとえば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−t−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2−メトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジエトキシベンゾイル)(1−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジブトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)(2−メチルプロパン−1−イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)(2,4−ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2−フェニルエチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジイソプロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−4−メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,5−ジエチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,3,5,6−テトラメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキシド、2,6−ジメチトキシベンゾイル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−n−ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジブトキシフェニルホスフィンオキシド、1,10−ビス[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド]デカン、トリ(2−メチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、などが挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、たとえば、アクリル系ポリマーを調製するモノマー成分100質量部に対して0.01質量部〜5質量部、好ましくは0.05質量部〜3質量部の範囲内の量で配合される。
ここで、光重合開始剤の使用量が0.01質量部より少ないと、重合反応が不十分になる場合がある。光重合開始剤の使用量が5質量部を超えると、光重合開始剤が紫外線を吸収することにより、紫外線が粘着剤層内部まで届かなくなる場合がある。この場合、重合率の低下を生じたり、生成するポリマーの分子量が小さくなってしまう。そして、これにより、形成される粘着剤層の凝集力が低くなり、経時での粘着力上昇が不十分になる場合がある。なお、光重合性開始剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施の形態において、ポリマー(A)は、前記モノマー成分と重合開始剤を配合した混合物に紫外線(UV)を照射して、モノマー成分を一部重合させた部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)として調製することもできる。アクリル系ポリマーシロップに、後述する重合体(B)を配合して粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を所定の被塗布体に塗布し、紫外線を照射させて重合を完結させることもできる。すなわちアクリル系ポリマーシロップはポリマー(A)の前駆体であって、アクリル系ポリマーシロップに重合体(B)を配合したものも、本実施の形態の粘着剤組成物に相当する。
[重合体(B)]
重合体(B)は、官能基当量が1000g/mol以上15000g/mol未満であるポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)およびホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)をモノマー単位として含む。
重合体(B)を構成するポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)としては、特に限定されず、任意のポリオルガノシロキサン骨格含有モノマーを用いることができる。ポリオルガノシロキサン骨格含有モノマーはその構造に由来する極性の低さのために、被着体表面への重合体(B)の偏在を積極的に促進させ、貼り合わせ初期の軽剥離性を発現する。
ポリオルガノシロキサン骨格含有モノマーの具体例としては、たとえば、下記一般式(1)または(2)で表される、ポリオルガノシロキサン骨格含有モノマーを用いることができる。より具体的には、信越化学工業株式会社製の片末端反応性シリコーンオイルとして、X−22−174ASX、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475、などが挙げられ、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
[式(1)(2)中、Rは水素またはメチルであり、Rはメチルまたは1価の有機基であり、mおよびnは0以上の整数である]
重合体(B)を構成するポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)の官能基当量は1000g/mol以上15000g/mol未満である。ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)の官能基当量が1000g/mol未満であると、軽剥離性が発現せず、貼り合わせ初期に粘着力が低下しない場合がある。また、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーの官能基当量が15000g/mol以上であると、ポリマー(A)との相溶性が著しく悪化し、被着体との貼り合わせ初期に粘着力が低下しない場合や、経時での粘着力の上昇性に劣る場合がある。
ここで、「官能基当量」とは、官能基1個当たりに結合している主骨格(例えばポリジメチルシロキサン)の質量を意味する。標記単位g/molに関しては、官能基1molと換算している。ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーの官能基当量は、例えば、核磁気共鳴測定装置(NMR)により得られるH−NMR(プロトンNMR)のスペクトル強度から算出される。
H−NMRで、シロキサン構造のケイ素にCを介して結合するH(例えばSi−(CHのH)のスペクトル強度と、官能基のC−CHのH、SHのH、又はC=CHのHのスペクトル強度の比を求める。
シロキサン構造のSi−(CHのHのスペクトル強度と、官能基のC=CHのHのスペクトル強度比を求めた場合を例にとって説明すると、スペクトル強度比から、測定試料に含まれるシロキサン構造のSi−(CHの個数と、官能基のC=CHの個数の比が分かる。
シロキサン構造の化学式と官能基の化学式は予め分かっているため、シロキサン構造のSi−(CHの個数と、官能基のC=CHの個数の比から、測定試料に含まれる、Si−(CH結合を有するシロキサン構造の個数Aと、官能基の個数Bとの比(A/B)が分かる。
Si−(CH結合を有するシロキサン構造(ここではジメチルシロキサン)の1個当たりの分子量は分かっているため、その1個当たりの分子量に、上記シロキサン構造の個数Aと官能基の個数との比(A/B)を乗じた値が、官能基1個当たりの、Si−(CH結合を有するシロキサン構造の質量、即ち、主骨格の質量となり、その質量にアボガドロ数を乗じた値が官能基当量(g/mol)となる。
なお、官能基当量が異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーを用いる場合、その官能基当量は算術平均した値を用いることができる。すなわち、下記式により計算することが出来る。
モノマー混合物の官能基当量(g/mol)=(モノマー1の官能基当量×モノマー1の配合量+モノマー2の官能基当量×モノマー2の配合量+・・・+モノマーnの官能基当量×モノマーnの配合量)/(モノマー1の配合量+モノマー2の配合量+・・・+モノマーnの配合量)
官能基当量が1000g/mol以上15000g/mol未満であるポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)の含有量は、重合体(B)の全モノマー成分に対して5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。当該含有量が、5質量%未満の場合には、貼り合わせ初期に接着力が低下しない場合がある。一方、当該含有量が、50質量%より多い場合には、貼り合わせ初期に粘着力が低下しない場合や、経時での粘着力の上昇性に劣る場合がある。
重合体(B)を構成するホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)としては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、イソボルニルメタクリレート(Tg:173℃)、イソボルニルアクリレート(Tg:97℃)、メチルメタクリレート(Tg:105℃)、1―アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、1―アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)等の(メタ)アクリル系モノマーを挙げることができる。モノマー(B2)は、そのホモポリマーのガラス転移温度が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
重合体(B)は、上記(メタ)アクリル系モノマーと以下に挙げるモノマー(ただし、ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上)との共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg:119℃)、ジエチルアクリルアミド(Tg:81℃)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、イソプロピルアクリルアミド(Tg:134℃)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(Tg:98℃)等のアミド基含有ビニルモノマー;
N−ビニル−2−カプロラクタム等のN−ビニルカプロラクタム等のラクタム系モノマー等が挙げられる。
ホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)の含有量は、重合体(B)の全モノマー成分に対して10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。当該含有量が、10質量%未満の場合には、貼り合わせ初期に粘着力が低下しない場合がある。一方、当該含有量が、80質量%より多い場合には、経時での粘着力の上昇性に劣る場合がある。
重合体(B)にホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系モノマーを含むことで、貼り合わせ初期の粘着力の抑制と経時で粘着力の上昇を図ることができる。なお、重合体(B)は、ホモポリマーのガラス転移温度が80℃未満の(メタ)アクリル系モノマーを含んでもよい。ホモポリマーのガラス転移温度が80℃未満の(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、ブチルメタクリレート(Tg:20℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(Tg:−10℃)などが挙げられる。
重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマーおよびホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系モノマーの他に、脂環式構造を有する(メタ)アクリル系モノマー、ポリオキシアルキレン骨格を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、共重合性モノマーからなる群より選ばれる1以上のモノマーとの共重合体であってもよい。
このような(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例としては、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステル;
テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリル酸エステル;
等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、重合体(B)は、前記(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分(共重合性モノマー)を共重合させて得ることも可能である。例えば、重合体(B)は、エポキシ基またはイソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されていてもよい。このような官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基を挙げることができ、重合体(B)を製造する際にこうした官能基を有するモノマーを使用(共重合)してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとしては、
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩等の塩;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)オキシアルキレンのジ(メタ)アクリル酸エステルモノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステルモノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニルモノマー;
フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステルのような含フッ素ビニルモノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物系モノマー;
2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリンのようなアミド基含有ビニルモノマー;
N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシヘキサメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;
N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルへキシルイタコンイミド、N−シクロへキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;
N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルモルホリン、N−ビニルピラゾール、N−ビニルイソオキサゾール、N−ビニルチアゾール、N−ビニルイソチアゾール、N−ビニルピリダジン等の窒素含有複素環系モノマー;
N−ビニルカルボン酸アミド類;
N−ビニルカプロラクタム等のラクタム系モノマー;
(メタ)アクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のイミド基含有モノマー;
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル等の水酸基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素原子含有(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;
イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィンまたはジエン類;
ビニルアルキルエーテル等のビニルエーテル類;
塩化ビニル;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等を挙げることができる。これらのモノマーは、単独であるいは組み合わせて前記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
重合体(B)において、前記ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)およびホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上の(メタ)アクリル系モノマー(B2)以外の他のモノマー成分の含有量は、重合体(B)の全モノマー成分に対して0質量%以上85質量%以下であることが好ましく、0質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上55質量%以下であることがさらに好ましい。
重合体(B)の重量平均分子量は10000以上100000未満であり、12000以上50000未満であることが好ましく、15000以上30000未満であることがより好ましい。重合体(B)の重量平均分子量が100000以上であると、貼り合わせ初期の接着力が低下しなくなる。また、重量平均分子量が10000未満であると、低分子量となるため粘着シートの粘着力が経時で上昇しない場合がある。
ポリマー(A)や重合体(B)の重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算して求めることができる。具体的には後述する実施例において記載する方法、条件に準じて測定される。
重合体(B)は、たとえば、上述したモノマーを、溶液重合法やバルク重合法、乳化重合法、懸濁重合、塊状重合等により重合することで作製することができる。
重合体(B)の分子量を調整するためにその重合中に連鎖移動剤を用いることができる。使用する連鎖移動剤の例としては、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−チオグリセロール等のメルカプト基を有する化合物;チオグリコール酸、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル等のチオグリコール酸エステル類;α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
連鎖移動剤の使用量としては、特に制限されないが、通常、モノマー100質量部に対して、連鎖移動剤を0.05質量部〜20質量部、好ましくは、0.1質量部〜15質量部、さらに好ましくは0.2質量部〜10質量部含有する。このように連鎖移動剤の添加量を調整することで、好適な分子量の(メタ)アクリル系重合体(B)を得ることができる。なお、連鎖移動剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
[粘着剤組成物]
粘着剤組成物は、上述したポリマー(A)、および重合体(Bを必須成分として含有する。重合体(B)の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であるが、好ましくは0.3質量部〜17質量部であり、より好ましくは0.4質量部〜15質量部であり、さらに好ましくは、0.5質量部〜12質量部である。本重合体(B)を20質量部を超えて添加すると、本実施の形態に係る粘着剤組成物で形成した粘着剤層の経時後の粘着力の低下を引き起こす。また、重合体(B)の添加量が0.1質量部より少ない場合は、被着体貼り合せ時の粘着力抑制効果が弱く、リワークができない不具合が生じる場合がある。
粘着剤組成物は、上述したポリマー(A)、および重合体(B)以外に、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を任意成分として含有し得る。かかる任意成分としては、粘着付与樹脂、架橋剤、触媒、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、酸化防止剤、レベリング剤、安定剤、防腐剤、帯電防止剤等が例示される。このような添加剤は、従来公知のものを常法により使用することができる。
後述する粘着剤層の凝集力を調整するには、上述の各種モノマー以外に、架橋剤を用いることも可能である。架橋剤は、通常用いる架橋剤を使用することができ、たとえば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。特に、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤を好適に使用することができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
具体的には、イソシアネート系架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、および、これらとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体を挙げることができる。あるいは、1分子中に少なくとも1つ以上のイソシアネート基と、1つ以上の不飽和結合を有する化合物、具体的には、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどもイソシアネート系架橋剤として使用することができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンおよび1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
架橋剤の含有量は、ポリマー(A)100質量部に対し、0.01質量部〜15質量部含有されていることが好ましく、0.5質量部〜10質量部含有されていることがより好ましい。含有量が0.01質量部未満である場合、粘着剤組成物の凝集力が小さくなって、接着信頼性に劣る場合がある。一方、含有量が15質量部を超える場合、粘着剤組成物の凝集力が大きく、流動性が低下し、経時の粘着力上昇が劣る場合がある。
ここに開示される粘着剤組成物には、さらに、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるための架橋触媒を含有させることができる。かかる架橋触媒として、例えばスズ系触媒(特にジラウリン酸ジオクチルスズ)を好ましく用いることができる。架橋触媒(例えばジラウリン酸ジオクチルスズ等のスズ系触媒)の使用量は特に制限されないが、例えば、ポリマー(A)100質量部に対して凡そ0.0001質量部〜1質量部とすることができる。
粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂の他、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる
ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水添化などにより変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンや、その他の化学的に修飾されたロジンなど)の他、各種のロジン誘導体などが挙げられる。
前記ロジン誘導体としては、例えば、
ロジン類(未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体など)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;
未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなどの変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水添ロジンエステル、部分水添ロジンエステルなど)などのロジンエステル系樹脂;
未変性ロジンや変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;
ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;
未変性ロジン、変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジンなど)、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;
未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩などが挙げられる。
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂や、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性など)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂など)などが挙げられる。
フェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂など)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラックなどが挙げられる。
炭化水素系粘着付与樹脂(石油系粘着付与樹脂)としては、例えば、
脂肪族系炭化水素樹脂[炭素数4〜5のオレフィンやジエン(ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1等のオレフィン;ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等のジエンなど)などの脂肪族炭化水素の重合体など]、
脂肪族系環状炭化水素樹脂[いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテンなど)の重合体又はその水素添加物、下記の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂など]、
芳香族系炭化水素樹脂[炭素数が8〜10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデンなど)の重合体など]、
脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体など)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂などが挙げられる。
好ましく使用され得る重合ロジンエステルの市販品としては、荒川化学工業株式会社製の商品名「ペンセルD−125」、「ペンセルD−135」、「ペンセルD−160」、「ペンセルKK」、「ペンセルC」等が例示されるが、これらに限定されない。
好ましく使用され得るテルペンフェノール系樹脂の市販品としては、ヤスハラケミカル株式会社製の商品名「YSポリスターS−145」、「YSポリスターG−125」、「YSポリスターN125」、「YSポリスターU−115」、荒川化学工業株式会社製の商品名「タマノル803L」、「タマノル901」、住友ベークライト株式会社製の商品名「スミライトレジンPR−12603」等が例示されるが、これらに限定されない。
[粘着剤層および粘着シート]
続いて、上述の組成を有する粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートの構造について説明する。
粘着剤層は、粘着剤組成物の硬化層であり得る。すなわち、該粘着剤層は、粘着剤組成物を適当な支持体に付与(たとえば、塗布・塗工)した後、硬化処理を適宜施すことにより形成され得る。二種以上の硬化処理(乾燥、架橋、重合等)を行う場合、これらは、同時に、または多段階に行うことができる。部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、最終的な共重合反応が行われる(部分重合物を更なる共重合反応に供して完全重合物を形成する)。たとえば、光硬化性の粘着剤組成物であれば、光照射が実施される。必要に応じて、架橋、乾燥等の硬化処理が実施されてもよい。たとえば、光硬化性粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に光硬化を行うとよい。完全重合物を用いた粘着剤組成物では、典型的には、上記硬化処理として、必要に応じて乾燥(加熱乾燥)、架橋等の処理が実施される。
粘着剤組成物の塗付・塗工は、たとえば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。なお、支持体に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成してもよく、剥離ライナー上に形成した粘着剤層を支持体に転写してもよい。
粘着剤層は、その溶剤不溶成分率が55.0質量%〜99.0質量%、好ましくは60.0質量%〜95.0質量%であることが望ましい。溶剤不溶成分率が55.0質量%未満であると凝集力が不十分となり、接着信頼性に劣る場合があり、また溶剤不溶成分率が99.0質量%を超えると凝集力が高くなりすぎ、経時での粘着力の上昇が不十分になる場合がある。なお溶剤不溶成分率の評価方法は、後述する。
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、通常は、たとえば3μm〜200μm、好ましくは5μm〜150μmとすることにより、良好な接着性が実現され得る。粘着剤層の厚さが3μm未満では、経時の粘着力上昇が劣る場合があり、一方粘着剤層の厚さが200μmを超えると貼り合せ直後の粘着力の抑制効果が不十分になる場合がある。
本実施形態に係る粘着シートは、粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える。粘着シートは、かかる粘着剤層を支持体の少なくとも片面に固定的に、すなわち当該支持体から粘着剤層を分離する意図なく、設けたものである。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベル等と称されるものが包含され得る。またその使用用途に応じ、適宜な形状に切断、打ち抜き加工等されたものであってもよい。なお、粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されず、たとえば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
上記支持体としては、たとえば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポレオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム;
ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等のフォーム基材;
クラフト紙、クレープ紙、和紙等の紙;
綿布、スフ布等の布;
ポリエステル不織布、ビニロン不織布等の不織布;
アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;
等を、粘着テープの用途に応じて適宜選択して用いることができる。
また、支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理をすることもできる。支持体の厚みは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね5μm〜200μm(典型的には10μm〜100μm)程度である。
上記支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。
本実施形態の粘着シートには必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤層表面に剥離ライナーを貼り合わせることが可能である。
剥離ライナーを構成する材料としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
前記剥離ライナーの厚みは、通常5μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記剥離ライナーには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。
粘着シートは、被着体に貼り合せた直後は、粘着力が小さくリワークが可能で、経時で粘着力が上昇し、接着信頼性が高いという特性を有する。粘着シートの貼り合せ直後(室温30分後)では、引張速度300mm/分、剥離角度が180°で剥離した時の180°引き剥がし粘着力試験により評価することができる。180°引き剥がし粘着力試験は、後述する実施例において記載する方法、条件に準じて測定される。
また粘着シートの経時後の粘着力は、引張速度300mm/分、剥離角度が180°で剥離した時の180°引き剥がし粘着力試験により評価することができる。180°引き剥がし粘着力試験は、後述する実施例において記載する方法、条件に準じて測定される。
さらに粘着シートは、剥離時の汚染(以下、汚染性という)が少ないという特性を有する。粘着シートの汚染性は、後述する実施例において記載する方法、条件に準じて評価される。
本実施の形態の粘着シートは、貼り付け初期はリワーク可能な程度に粘着力が低く、その後は被着体に強固に接着し、さらに剥離時の汚染が少ないという特徴を有する。このため、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどの画像表示装置に用いられる光学フィルムの接着などの光学用途以外にも、モバイル機器やその他の電気電子機器等における部材の接合材として、あるいは自動車や家電製品等における各種部材の接合材として好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、これら実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
((A)成分としてのアクリル系ポリマーシロップ1(2EHA/NVP=86/14)の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)86質量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)14質量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF社製)0.05質量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF社製)0.05質量部を4つ口フラスコに投入した。そして、混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、重合率約8質量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
((A)成分としてのアクリル系ポリマーシロップ2(2EHA/AA=94/6)の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)94質量部、アクリル酸(AA)6質量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF社製)0.05質量部、および光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF社製)0.05質量部を4つ口フラスコに投入した。そして、混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、重合率約8質量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
((B)成分としての(メタ)アクリル系重合体1(MMA/BMA/2EHMA/X−22−174ASX/X−22−174DX=40/20/20/17/3)の調製)
トルエン100質量部、メチルメタクリレート(MMA)40質量部、ブチルメタクリレート(BMA)20質量部、2−エチルヘキシルメタクリレート(2−EHMA)20質量部、官能基当量が900g/molのポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー(商品名:X−22−174ASX、信越化学工業株式会社製)17質量部、官能基当量が4600g/molのポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー(商品名:X−22−174DX、信越化学工業株式会社製)3質量部および連鎖移動剤としてチオグリコール酸メチル0.51質量部を撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに投入した。そして、70℃にて窒素雰囲気下で1時間撹拌した後、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を投入し、70℃で2時間反応させた後に、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を投入し、続いて80℃で5時間反応させた。得られた(メタ)アクリル系重合体1の重量平均分子量は22800であった。
(その他の(B)成分としての(メタ)アクリル系重合体)
(メタ)アクリル系重合体2〜11の各重合体については、モノマー組成、溶剤の種類、連鎖移動剤の質量部を表1に記載の要領で添加したこと以外、(メタ)アクリル系重合体1と同様にして作製した。
表1に記載の略語等は以下のとおりである。
・MMA:メチルメタクリレート Tg105℃
・BMA:ブチルメタクリレート Tg20℃
・2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート Tg−10℃
・X−22−174ASX: ポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー 官能基当量が900g/mol 信越化学工業社製
・X−22−174DX: ポリオルガノシロキサン骨格含有メタクリレートモノマー 信越化学工業社製 官能基当量が4600g/mol
・KF−96−100cs: ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンオイル(直鎖シリコーン)、動粘度100mm2/s(25℃) 信越化学工業社製
・KF−96−10万cs: ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンオイル(直鎖シリコーン)、動粘度100,000mm2/s(25℃) 信越化学工業社製
<分子量の測定>
重合体の重量平均分子量は、GPC装置(東ソー社製、HLC−8220GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りであり、標準ポリスチレン換算により分子量を求めた。
・サンプル濃度:0.2wt%(テトラヒドロフラン(THF)溶液)
・サンプル注入量:10μl
・溶離液:THF
・流速:0.6ml/min
・測定温度:40℃
・カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(1本)
・検出器:示差屈折計(RI)
(実施例1)
(粘着剤組成物の調製)
上述したアクリル系ポリマーシロップ1の100質量部に、上述した(メタ)アクリル系重合体1を5質量部、および架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.1質量部を添加した後、これらを均一に混合して粘着剤組成物を調製した。
(粘着剤層の作製)
片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRF、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理面に、上述した粘着剤組成物を最終的な厚みが50μmになるように塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布された粘着剤組成物の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRE、三菱樹脂株式会社製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして被覆した。これにより、粘着剤組成物の塗布層(粘着剤層)を酸素から遮断した。このようにして得られた塗布層に、ケミカルライトランプ(株式会社東芝製)を用いて照度5mW/cm(約350nmに最大感度をもつトプコンUVR−T1で測定)の紫外線を360秒間照射して重合させ、粘着剤層シートを得た。粘着剤層シートの両面に設けられたポリエステルフィルムは、剥離ライナーとして機能する。
(実施例2〜20、比較例1〜17)
実施例2〜20、比較例1〜17の各粘着剤層シートは、表1に記載のポリマー(A)100質量部に、表2に記載の重合体(B)と添加量を用いたこと以外は実施例1と同様に粘着剤組成物を調整し、実施例1と同様の方法により作製された。
(実施例21)
((A)成分としてのアクリル系ポリマー1の溶液重合による調製)
アクリル酸5質量部、2−エチルヘキシルアクリレート95質量部、及び重合溶媒として酢酸エチル200質量部を撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに投入した。そして、60℃にて窒素雰囲気下で2時間撹拌した後、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を投入し、60℃で6時間反応を行った。得られたポリマーの重量平均分子量は110万であった。
(粘着剤組成物の調製)
上述のアクリル系ポリマー(A)溶液(35質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈した溶液500質量部(アクリル系ポリマー(A)100質量部)に、(メタ)アクリル系重合体2を3質量部、および架橋剤としてコロネートL(日本ポリウレタン工業社製、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物)1質量部、架橋触媒としてジラウリン酸ジオクチルスズの酢酸エチル溶液(1質量%)3質量部を加えて、25℃下で約5分間混合撹拌を行って粘着剤組成物(1)を調製した。
(粘着シートの作製)
上記粘着剤組成物(1)を、片面をシリコーンで処理した厚み38μmのポリエステルフィルム(商品名:ダイアホイルMRF、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理面に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。
(実施例22、23、29〜32、比較例18)
実施例22、23、29〜32、比較例18の各粘着剤層シートは、表1に記載のポリマー(A)100質量部に、表3に記載の重合体(B)と添加量を用いたこと以外は実施例21と同様に粘着剤組成物を調整し、実施例21と同様の方法により作製された。なお、実施例29においては、粘着付与樹脂として20部数の商品名「スミライトレジンPR−12603N」(住友ベークライト株式会社製)が用いられている。また、実施例30においては、粘着付与樹脂として20部数の商品名「ペンセルD−125」(荒川化学工業株式会社製)が用いられている。また、実施例31においては、粘着付与樹脂として20部数の商品名「タマノル803L」(荒川化学工業株式会社製)が用いられている。また、実施例32においては、粘着付与樹脂として20部数の商品名「YSポリスターN125」(ヤスハラケミカル株式会社製)が用いられている。
(実施例24〜28、比較例19)
((A)成分としてのアクリル系ポリマー2の溶液重合による調製)
アクリル酸5質量部、n−ブチルアクリレート100質量部、及び重合溶媒としてトルエン200質量部を撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに投入した。そして、60℃にて窒素雰囲気下で2時間撹拌した後、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を投入し、60℃で6時間反応を行った。得られたポリマーの重量平均分子量は40万であった。このアクリル系ポリマー2を用いて、上述の実施例21と同様の方法によって、粘着剤組成物(1)を調製し、粘着シートを作製した。
(溶剤不溶成分率の測定)
溶剤不溶成分率(ゲル分率)は、粘着剤組成物を、0.1gサンプリングして精秤(浸漬前の質量)し、これを約50mlの酢酸エチル中に室温(20〜25℃)で1週間浸漬したのち、溶剤(酢酸エチル)不溶分を取り出し、該溶剤不溶分を130℃で2時間乾燥した後、秤量(浸漬・乾燥後の質量)して、溶剤不溶成分率算出式「溶剤不溶成分率(質量%)=[(浸漬・乾燥後の質量)/(浸漬前の質量)]×100」を用いて、算出した。溶剤不溶成分率の測定結果を表2、表3に示す。
(試験方法)
[180°引き剥がし粘着力試験]
各実施例、および各比較例に係る粘着剤層シートの一方の剥離ライナー(ポリエステルフィルム)を剥がし、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せ、それを25mm幅に切断したものを試験片とした。また、イソプロピルアルコールにて清浄化した厚さ1.2mmのガラス板(松浪硝子工業株式会社製)とABS板と、トルエンにて清浄化したSUS板(430BA)を用意した。そして、粘着剤層シートの他方の剥離ライナー(ポリエステルフィルム)を剥がし、2kgローラーを往復させてSUS(430BA板)、ABS板、ガラス板に粘着剤層シートの粘着面を貼り付けた。
SUS(430BA板)、ABS板、ガラス板に粘着剤層シートを貼り付けた後、23℃の環境下で30分間放置した(初期条件)。また、SUS(430BA板)、ABS板、ガラス板に粘着剤層シートを貼り付けた後、40℃の環境下で48時間経過させた後に、23℃の環境下で30分間放置した(常態条件)。そして、初期条件、常態条件のそれぞれの粘着剤層シートについて、粘着剤層シートの他端を300mm/分の速度で180度の剥離方向へ剥離し、その時の被着体に対する粘着力(抵抗力)(単位:N/25mm)を測定した。3種すべての被着体において、初期条件の粘着力が7.0未満であり、常態条件での粘着力が初期条件の粘着力の2倍以上ある場合を良好(○)とし、初期条件の粘着力が7.0以上、または常態条件での粘着力が初期条件の2倍未満である場合を粘着力不良(×)とした。180°引き剥がし粘着力の測定結果を表4、表5に示す。
[汚染性]
各実施例、および各比較例に係る粘着剤層シートの一方の剥離ライナー(ポリエステルフィルム)を剥がし、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合せ、それを25mm幅に切断したものを試験片とした。また、トルエンにて清浄化した厚さ0.42mmのSUS板(430BA)を用意した。そして、粘着剤層シートの他方の剥離ライナー(ポリエステルフィルム)を剥がし、2kgローラーを往復させてSUS(430BA板)に粘着剤層シートの粘着面を貼り付けた。その後、23℃、相対湿度50%雰囲気下で30分間放置した後、剥離速度300mm/minで180度剥離後の被着体表面の様子を観察し、全く汚染が確認されなかった場合を良好(○)とし、汚染が確認された場合を不良(×)とした。汚染性の評価結果を表4、表5に示す。
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。

Claims (6)

  1. ガラス転移温度が0℃未満のポリマー(A)100質量部と、
    官能基当量が1000g/mol以上4600g/mol以下であるポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)およびホモポリマーのガラス転移温度が40℃以上のモノマー(B2)をモノマー単位として含み、重量平均分子量が10000以上100000未満である重合体(B)0.1〜20質量部と、
    を含み、
    前記ポリマー(A)がアクリル系ポリマーであり、
    前記モノマー(B2)が(メタ)アクリル系モノマーであり、
    前記重合体(B)が、
    前記モノマー(B1)を10質量%から20質量%、
    前記モノマー(B2)を30質量%から50質量%
    含む重合体であることを特徴とする粘着剤組成物。
  2. 前記アクリル系ポリマーには多官能性モノマーが使用されている、請求項1に記載の粘着剤組成物。
  3. 前記ポリオルガノシロキサン骨格を有するモノマー(B1)が、下記一般式(1)または(2)で表されるモノマー群から選ばれる1種または2種以上のモノマーである、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
    [式(1)(2)中、Rは水素またはメチルであり、Rはメチルまたは1価の有機基であり、mおよびnは0以上の整数である]
  4. さらに架橋剤を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層。
  6. 請求項に記載の粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成してなる粘着シート。
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