(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、車両等に搭載され、車両の旋回による角速度を導出する角速度算出装置に関する。角速度算出装置は、角速度センサからの出力電圧に対して、オフセット値と感度係数とを使用しながら、角速度を導出する。角速度センサの感度係数を導出するための式(3)において、Voffsetが温度変化等の影響により安定しないことによって、サンプル数を増やすと、感度係数の誤差が増大する可能性がある。また、角速度センサの感度係数を導出するための式(3)において、方位変化量Δθが、GPS衛星から取得したGPS方位から求められる場合、GPS衛星からの電波の受信状況によりGPS方位の精度が悪化することがあり、感度係数に含まれる誤差が大きくなる。
また、式(3)において、方位変化量Δθが、地図データにもとづいて求められる場合、地図データにもとづく道路方位と車両の走行方位とが完全に一致するとは限らないので、感度係数に含まれる誤差が大きくなる可能性がある。さらに、角速度センサの感度係数を導出するための式(3)において、鉛直軸に対する角速度センサの検出軸の傾きに含まれる道路傾斜角が、GPS衛星から取得したGPS高度変化量から求められる場合、GPS衛星からの電波の受信状況によりGPS方位の精度が悪化することがあり、感度係数に含まれる誤差が大きくなる。
これらの場合、角速度の導出精度を向上させるために、感度係数に含まれる誤差の低減が要求される。そのため、本実施例に係る角速度算出装置は、逐次導出した角速度センサの感度の過去の値と現在の値に対して重み付け平均を実行する際に、忘却係数を変更させながら使用する。具体的に説明すると、角速度算出装置は、所定の期間における角速度センサから計算した方位変化とGPSから計算した方位変化との相関係数を算出し、その相関係数をもとに忘却係数を変更する。相関係数が大きくなるほど、角速度センサ、GPSという異なる手段から計算した方位変化が近くなり、方位変化の測定精度が高くなっている。そのため、このような場合には、角速度センサの感度の現在の値の影響が大きくなるように重み付け平均が計算される。一方、相関係数が小さくなると、方位変化の測定精度が低くなっているので、角速度センサの感度の現在の値の影響が小さくなるように重み付け平均が計算される。
図1は、本発明の実施例1に係る角速度算出装置100の構成を示す。角速度算出装置100は、測定部10、パラメータ演算部12、角速度変換部14、制御部38を含む。また、測定部10は、GPS測位部20、有効性判定部22、取付角検出部24、傾斜角検出部26、角速度センサ28を含み、パラメータ演算部12は、オフセット値演算部30、感度係数演算部32、相関係数演算部34、測位データ記憶部36を含む。さらに信号として、GPS測位データ200、取付角度202、傾斜角度204、出力信号206、オフセット値208、感度係数210、相関係数212、記憶データ214が含まれる。角速度算出装置100は、所定の取付角度の傾きで車両に設置されている。
GPS測位部20は、図示しないGPS衛星からの信号を受信して、GPS測位データ200を算出する。GPS測位データ200には、経緯度、車両の高度であるGPS高度、移動速度であるGPS速度、車両の方位であるGPS方位、PDOP(Position Dilution Precision)、捕捉衛星数等が含まれる。ここで、PDOPは、GPS測位データ200におけるGPS衛星位置の誤差が受信点位置にどのように反映されるかの指標であり、測位誤差に相当する。なお、GPS測位データ200には、これら以外の値が含まれていてもよい。また、GPS測位データ200の算出は、公知の技術によってなされればよいので、ここでは説明を省略する。また、GPS測位部20は、GPS測位データ200をサンプリング間隔ごとに、つまり周期的に算出する。GPS測位部20は、GPS測位データ200を有効性判定部22へ逐次出力する。
有効性判定部22は、GPS測位部20からのGPS測位データ200を逐次入力する。有効性判定部22は、GPS測位データ200から、GPS測位データ200それぞれの有効性を判定する。例えば、有効性判定部22は、PDOPの値が第1のしきい値以下であり、かつGPS速度が第2のしきい値以上である場合に、それらに対応したGPS方位が有効であると判定する。また、有効性判定部22は、上記の条件が満たされない場合に、対応したGPS方位が無効であると判定する。これは、一般的にPDOPの値が大きい場合やGPS速度が小さい場合に、GPS方位の精度が低くなる傾向があるからである。さらに具体的に説明すると、PDOPの値が6以下であり、かつGPS速度が20km/h以上である場合に、有効性判定部22は、GPS方位の有効性をフラグで表す。
また、有効性判定部22は、GPS速度が第3のしきい値以上である場合に、当該GPS速度が有効であると判定する。ここで、第3のしきい値は、第2のしきい値と同じでもよい。さらに、有効性判定部22は、所定の期間でのGPS高度の差が、第4のしきい値以下である場合に、当該GPS高度が有効であると判定する。このような処理の結果、有効性判定部22は、GPS測位データ200に含まれたGPS方位等の各値に対して、有効あるいは無効が示されたフラグを付加する(以下、フラグが付加されたGPS測位データ200もまた「GPS測位データ200」という)。有効性判定部22は、取付角検出部24、傾斜角検出部26、オフセット値演算部30、感度係数演算部32、測位データ記憶部36へGPS測位データ200を逐次出力する。
取付角検出部24は、例えば、図示しない加速度センサ等であり、有効性判定部22からのGPS測位データ200を逐次入力し、車両が水平状態での鉛直軸に対する角速度センサの検出軸の傾きを取付角度202として算出する。取付角検出部24は、入力したGPS測位データ200のGPS高度に変化が微小であるときに車両が水平状態であると判断し、このとき、車両が停止から発進したときに検出される加速度にもとづいて取付角度202を算出する。なお、加速度センサ装置には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。取付角検出部24は、検出した取付角度202を傾斜角検出部26へ出力する。
傾斜角検出部26は、有効性判定部22からのGPS測位データ200、特にGPS測位データ200に含まれたGPS高度と、取付角検出部24からの取付角度202とを逐次入力する。傾斜角検出部26は、逐次入力したGPS高度をもとに、サンプリング間隔における車両の平均傾斜角度(以下、「傾斜角度204」という)を検出する。具体的に説明すると、傾斜角検出部26は、連続したGPS高度の差異を逐次計算してから、計算結果を平均した後に、平均値をサンプリング間隔で除算することによって、車両の傾斜角度を導出する。ここで、連続したGPS高度の間隔が、サンプリング間隔に相当する。傾斜角検出部26は、算出した車両の傾斜角度に取付角度202を加算し、傾斜角度204としてオフセット値演算部30、感度係数演算部32、測位データ記憶部36へ逐次出力する。
角速度センサ28は、例えば、振動ジャイロ等のジャイロ装置に相当し、車両の進行方向の変化を車両の相対的な角度変化として検出する。つまり、角速度センサ28は、車両の旋回角速度を検出する。検出された角速度は、例えば、0V〜5Vのアナログ信号として出力される。その際、時計回りの旋回に対応した正の角速度は5V側への2.5Vからの偏差電圧として出力され、反時計回りの旋回に対応した負の角速度は0V側への2.5Vからの偏差電圧として出力される。また、2.5Vは、角速度のオフセット値、つまり零点であり、温度等の影響を受けドリフトする。
また、2.5Vからの角速度の偏差程度である感度係数(mV/deg/sec)は、水平な状態において許容誤差内に収まる所定の値として定められている。この許容誤差原因は、ジャイロ装置の個体差や経年変化、温度による影響等である。ジャイロ装置の電圧値は、図示しないAD(Analog to Digital)変換装置によって、例えば、サンプリング間隔100msecでAD変換され、その結果のデジタル信号が出力される。当該デジタル信号は、前述の出力電圧に相当し、以下では、出力信号206という用語を使用する。なお、ジャイロ装置として、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。角速度センサ28は、オフセット値演算部30、感度係数演算部32、測位データ記憶部36、角速度変換部14へ出力信号206を出力する。
オフセット値演算部30は、有効性判定部22からのGPS測位データ200、傾斜角検出部26からの傾斜角度204、角速度センサ28からの出力信号206を入力する。また、オフセット値演算部30は、感度係数演算部32から感度係数210も入力する。オフセット値演算部30は、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206、感度係数210とをもとに、角速度センサ28のオフセット値(以下、「オフセット値208」という)を算出する。なお、オフセット値演算部30での処理の詳細は後述する。オフセット値演算部30は、オフセット値208を角速度変換部14、感度係数演算部32、相関係数演算部34へ出力する。
感度係数演算部32は、有効性判定部22からのGPS測位データ200、傾斜角検出部26からの傾斜角度204、角速度センサ28からの出力信号206を入力する。また、感度係数演算部32は、オフセット値演算部30からのオフセット値208、相関係数演算部34からの相関係数212も入力する。感度係数演算部32は、所定期間、例えば10秒間にわたって入力された、GPS測位データ200、出力信号206、傾斜角度204、オフセット値208とをもとに、角速度センサ28の感度係数(以下、前述の「感度係数210」という)を算出する。なお、感度係数演算部32での処理の詳細、特に相関係数212を使用した処理の詳細は後述する。感度係数演算部32は、感度係数210を角速度変換部14、オフセット値演算部30へ出力する。
測位データ記憶部36は、メモリ上のリングバッファ等で構成され、有効性判定部22からのGPS測位データ200、傾斜角検出部26からの傾斜角度204、角速度センサ28からの出力信号206を逐次入力する。測位データ記憶部36は、有効性判定部22において有効であると判定されたGPS測位データ200を取得し、所定期間、例えば感度係数演算部32が感度係数210を算出する期間において連続して有効であった場合、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206を記憶データ214として記憶し、記憶データの有効性フラグを有効とする。また、有効なGPS測位データが入力されるごとに、記憶データ214を更新する。測位データ記憶部36は、入力されたGPS測位データ200が無効であった場合、記憶データ214をクリアし、有効性フラグを無効とする。測位データ記憶部36は、記憶した記憶データ214に有効性フラグを付加し、相関係数演算部34へ出力する。
相関係数演算部34は、オフセット値演算部30からのオフセット値208、測位データ記憶部36からの記憶データ214を逐次入力する。相関係数演算部34は、記憶データ214に付加された有効性フラグが有効であった場合、出力信号206の積算値とオフセット値208との差分を傾斜角度204の余弦値で除算した値と、GPS測位データ200に含まれるGPS方位変化量とについて、所定期間、例えば感度係数演算部32が感度係数210を算出する期間において、相関係数212を算出する。なお、相関係数演算部34での処理の詳細は後述する。相関係数演算部34は、相関係数212を感度係数演算部32へ出力する。
角速度変換部14は、角速度センサ28からの出力信号206、傾斜角検出部26からの傾斜角度204、オフセット値演算部30からのオフセット値208、感度係数演算部32からの感度係数210を入力する。角速度変換部14は、出力信号206、傾斜角度204、オフセット値208、感度係数210をもとに、前述の式(1)を計算することによって、車両の角速度ωを算出する。制御部38は、角速度算出装置100全体の動作を制御する。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
図2は、オフセット値演算部30の構成を示す。オフセット値演算部30は、状態推定部40、状態別オフセット値導出部42、オフセット値フィルタ処理部44を含む。また、状態推定部40は、停止推定部50、直進走行推定部52、非直進走行推定部54を含み、状態別オフセット値導出部42は、停止時オフセット値導出部56、直進走行時オフセット値導出部58、非直進走行時オフセット値導出部60を含む。さらに信号として、仮オフセット値216、走行状態情報218が含まれる。
状態推定部40は、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206を入力する。状態推定部40は、停止推定部50、直進走行推定部52、非直進走行推定部54において、車両の走行状態を推定する。ここでは、車両の走行状態として、車両が停止あるいは直進している状態であるか、残りの状態、つまり非直進走行している状態であるかを推定する。また、状態推定部40は、判定結果を走行状態情報218としてオフセット値フィルタ処理部44へ出力する。
停止推定部50は、図示しない有効性判定部22において有効であると判定されたGPS測位データ200を取得する。また、停止推定部50は、GPS測位データ200からGPS速度を抽出し、GPS速度が「0」であるかを確認する。一方、停止推定部50は、所定期間内における出力信号206の分散値を計算し、分散値と第5のしきい値とを比較する。停止推定部50は、GPS速度が0であり、かつ分散値が第5のしきい値よりも小さい場合に、車両が停止状態であると判定する。前述のごとく、GPS速度が小さい場合、その精度は低くなる傾向があるが、停止推定部50は、出力信号206の分散値を併せて使用することによって停止と判断する。ここで、所定期間は、例えば、GPS速度のサンプリング間隔である1secとされる。所定期間において、出力信号206の分散値が小さいときは、車両の揺れ等がない安定した状態であると推定される。停止推定部50は、停止状態ではないと判定した場合、その旨を非直進走行推定部54へ出力する。
直進走行推定部52は、図示しない有効性判定部22において有効であると判定されたGPS測位データ200を取得する。また、直進走行推定部52は、GPS測位データ200からGPS方位を抽出し、GPS方位の所定期間にわたる変化量(以下、「GPS方位変化量」という)を導出する。さらに、直進走行推定部52は、GPS方位変化量が「0」であるかを確認する。また、直進走行推定部52は、所定期間における出力信号206の分散値を計算し、分散値と第6のしきい値とを比較する。なお、第6のしきい値は、第5のしきい値と同一であってもよい。ここで、所定期間は、例えば、GPS方位変化量が連続して0であるような期間に設定される。
直進走行推定部52は、GPS方位変化量が0であり、かつ分散値が第6のしきい値よりも小さい場合に、車両が直進走行状態であると判定する。所定期間において、出力信号206の分散値が小さいときは、微妙な蛇行等の影響がない直進走行状態であると推定される。なお、ドライバの運転状況や道路形状によるが、例えば、市街地等において、直進走行状態の検出頻度は、一般的に、停止推定部50による停止状態の判定よりも少なく、その期間は数秒間程度である。直進走行推定部52は、直進走行状態ではないと判定した場合、その旨を非直進走行推定部54へ出力する。ここで、停止推定部50において停止状態と判定され、直進走行推定部52において直進走行状態であると判定された場合、停止推定部50の判定結果が優先される。非直進走行推定部54は、停止推定部50から、停止状態ではない旨を入力し、かつ直進走行推定部52から、直進走行状態ではない旨を入力した場合、車両が非直進走行状態であると判定する。
状態別オフセット値導出部42は、GPS測位データ200、出力信号206、傾斜角度204、感度係数210を入力する。状態別オフセット値導出部42は、状態推定部40において推定した車両の走行状態に応じて、角速度センサ28の仮オフセット値216を逐次導出する。ここで、停止推定部50において停止状態と判定された場合、停止時オフセット値導出部56が出力信号206をもとに仮オフセット値216を逐次導出する。また、直進走行推定部52において直進走行状態と判定された場合、直進走行時オフセット値導出部58が出力信号206をもとに仮オフセット値216を逐次導出する。
また、直進走行時オフセット値導出部58において非直進走行状態と判定された場合、非直進走行時オフセット値導出部60がGPS測位データ200、出力信号206、傾斜角度204、感度係数210をもとに仮オフセット値216を逐次導出する。つまり、車両の走行状態に応じて停止時オフセット値導出部56から非直進走行時オフセット値導出部60は、GPS測位データ200、出力信号206等の組合せを変更しながら、走行状態情報218を導出する。
停止時オフセット値導出部56は、停止状態と判定された場合に、出力信号206をもとに、角速度センサ28の仮オフセット値216を逐次導出する。具体的に説明すると、停止時オフセット値導出部56は、停止時に車両の旋回角速度が「0」になることを利用し、出力信号206の平均値を走行状態情報218として算出する。直進走行時オフセット値導出部58は、直進走行状態と判定された場合に、出力信号206をもとに、角速度センサ28の仮オフセット値216を逐次導出する。具体的に説明すると、ここでも車両の旋回角速度が0であるので、直進走行時オフセット値導出部58は、出力信号206の平均値を走行状態情報218として算出する。
非直進走行時オフセット値導出部60は、非直進走行状態であると判定された場合に、GPS測位データ200中のGPS方位量、傾斜角度204、出力信号206、感度係数210とをもとに、例えば、GPS方位のサンプリング間隔における仮オフセット値216を逐次導出する。ここで、仮オフセット値216は、次のように導出される。
Goffset=1/n・ΣGout−Δθ・Gsensitivity・cos(α) ・・・(4)
ここで、nは、GPS方位のサンプリング間隔における出力信号206のサンプル数であり、ΣGout(mV)は、GPS方位のサンプリング間隔における出力信号206の合計値である。また、Δθ(deg)は、GPS方位変化量であり、Gsensitivity(mV/deg/sec)は、感度係数210であり、α(deg)は、角速度センサの傾斜角度204である。なお、Goutは、式(1)のVoutに対応し、Gsensitivityは、式(1)のSに対応する。
感度係数210は、通常、図示しない感度係数演算部32から入力されるが、角速度算出装置100の起動直後などのような状態において、感度係数210が未だ算出されていないこともありえる。そのような場合、非直進走行時オフセット値導出部60は、図示しないジャイロ装置の仕様によって決定される感度係数210を初期値として使用する。また、非直進走行時オフセット値導出部60は、前回の走行終了時に感度係数演算部32からの感度係数210を記憶しておき、初期値として使用してもよい。
オフセット値フィルタ処理部44は、状態別オフセット値導出部42において逐次導出した仮オフセット値216を入力する。オフセット値フィルタ処理部44は、仮オフセット値216に対して統計処理を実行することによって、角速度センサ28のオフセット値208を導出する。なお、オフセット値208は、Goffsetと示され、これは、式(1)のVoffsetに対応する。以下では、図3を使用しながら、オフセット値フィルタ処理部44での処理を説明する。
図3は、オフセット値フィルタ処理部44の構成を示す。オフセット値フィルタ処理部44は、αi乗算部70、加算部72、1−αi乗算部74、忘却係数制御部76を含む。図示のごとく、オフセット値フィルタ処理部44は、IIR(Infinite Impulse Responce)フィルタを含むように構成されており、IIRフィルタによってローパスフィルタを構成する。αi乗算部70は、仮オフセット値216に忘却係数「αi」を乗算する。ここで、「i」は、1あるいは2である。そのため、忘却係数「αi」は、α1、α2の総称である。なお、α1およびα2については後述する。αi乗算部70は、乗算結果を加算部72へ出力する。
加算部72は、αi乗算部70からの乗算結果と、1−αi乗算部74からの乗算結果とを逐次加算する。加算部72は、加算結果をオフセット値208として逐次出力する。1−αi乗算部74は、オフセット値208に係数「1−αi」を乗算する。なお、係数「1−αi」のうちの「αi」は、αi乗算部70でのαiと同様であるので、ここでは説明を省略する。1−αi乗算部74は、加算部72へ乗算結果をフィードバックする。忘却係数制御部76は、走行状態情報218を入力する。また、忘却係数制御部76は、走行状態情報218にて示された状態に応じて、忘却係数「αi」の値を決定する。さらに、忘却係数制御部76は、決定した忘却係数「αi」をαi乗算部70および1−αi乗算部74へ設定する。
図4は、忘却係数制御部76において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、走行状態欄300、忘却係数欄302が含まれる。走行状態欄300には、走行状態情報218にて示される各状態が含まれる。忘却係数欄302には、各状態に対応した忘却係数「αi」を記憶する。つまり、停止状態と直進走行状態に対して忘却係数「α1」が対応づけられ、非直進走行状態に対して忘却係数「α2」が対応づけられる。例えば、α1>α2である。図3に戻る。忘却係数制御部76は、図4のテーブルを参照しながら、走行状態情報218にて示された状態から忘却係数「α1」あるいは「α2」を選択する。このように、忘却係数制御部76は、車両の走行状態に応じて、フィルタ処理の際の忘却係数を変更する。
図5は、感度係数演算部32の構成を示す。感度係数演算部32は、感度係数導出部90、感度係数フィルタ部92、忘却係数制御部94を含む。感度係数導出部90は、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206、相関係数212を入力する。また、感度係数演算部32は、オフセット値208も入力する。また、感度係数導出部90は、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206、相関係数212、オフセット値208とをもとに、角速度センサ28の仮の感度係数を逐次導出する。
具体的に説明すると、感度係数導出部90は、GPS測位データ200においてGPS方位が有効であると示されている場合、次のように、GPS方位のサンプリング間隔における角速度センサ28の仮の感度係数を算出する。
Gsensitivity=((1/n・ΣGout−Goffset)/cos(α))/Δθ ・・・(5)
ここで、Goffsetは、図示しないオフセット値演算部30から入力されるが、角速度算出装置100の起動直後などのような状態において、オフセット値208が未だ算出されていないこともありえる。式(5)には、Δθによる除算が含まれるので、Δθが所定値以上であるときに感度係数を算出する。Δθの値が所定値以下であるときは、感度係数導出部90は、直前に補正した感度係数を出力する。
感度係数フィルタ部92は、感度係数導出部90において逐次導出した仮の感度係数を入力する。感度係数フィルタ部92は、仮の感度係数に対して統計処理を実行することによって、角速度センサ28の感度係数210を導出する。感度係数210は、角速度センサ28から出力された出力信号206を補正するための値といえる。感度係数フィルタ部92は、図3に示されたオフセット値フィルタ処理部44と同様に、IIRフィルタにて構成されており、IIRフィルタは、ローパスフィルタを構成し、忘却係数制御部94からの指示をもとに、IIRフィルタでの忘却係数を設定する。
忘却係数制御部94は、相関係数212に応じて、感度係数フィルタ部92での忘却係数を変更する。また、忘却係数制御部94は、変更した忘却係数の使用を感度係数フィルタ部92へ指示する。図6は、忘却係数制御部94において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、条件欄400、忘却係数欄402が示される。条件欄400には、忘却係数を決定するための相関係数212の条件として、「x以上」、「x未満」が示されている。忘却係数欄402には、条件欄400での各条件に対応した忘却係数の値が示される。具体的には、「x以上」の場合に対して、忘却係数α10が設定されており、「x未満」の場合に対して、忘却係数α11が規定されている。また、α11<α10の関係が規定されている。
ここでは、図7を用いて相関係数演算部34が算出する相関係数を説明する。図7は、相関係数演算部34において計算される相関係数の概要を示し、これは、相関係数演算部34に入力された出力信号206とオフセット値208との差分を傾斜角度204の余弦値で除算した値と、GPS測位データ200に含まれるGPS方位変化量のグラフを示す。相関係数演算部34は、次のように、出力信号206の積算値とオフセット値208との差分を傾斜角度204の余弦値で除算することによって、D
Gyroを導出する。
感度係数算出式である(式5)の右辺は、角速度センサ出力変化量とGPS方位変化量の比を表しており、D
Gyroは角速度センサ出力変化量に相当する。相関係数演算部34は、次のように、角速度センサ出力変化量D
GyroとGPS方位変化量Δθとの間の相関係数Cを導出する。
感度係数210は、一般的に個体差や経年劣化の影響を受けるが、短期的には値の変化は少ない。したがって、相関係数Cが大きいということは、換言すると、(式5)右辺の各変数の導出精度が良好で、誤差が少ないといえる。つまり、図7において、DGyroとΔθとの関連が高い場合には、各変数の導出精度が良好であり、DGyroとΔθとの関連が低い場合には、各変数の導出精度が悪化している。相関係数演算部34は、相関係数Cを相関係数212として、感度係数演算部32へ出力する。なお、前述のごとく、感度係数フィルタ部92において、相関係数212がx以上の場合は感度係数210の導出精度が高いので、x未満の場合よりも、新たに導出された仮の感度係数の重み付けを大きくした平均化処理がなされる。
以上の構成による角速度算出装置100の動作を説明する。図8は、角速度算出装置100による忘却係数の導出手順を示すフローチャートである。相関係数演算部34は、測位データ記憶部36から記憶データ214が入力された場合(S10のY)、所定期間のGPS方位変化量と、角速度センサ出力変化量とを算出する(S12)。相関係数演算部34は、測位データ記憶部36から記憶データ214が入力されない場合(S10のN)、待機する。相関係数演算部34は、算出したGPS方位変化量と角速度センサ出力変化量との相関係数を演算し(S14)、忘却係数制御部94へ出力する。忘却係数制御部94は、相関係数がしきい値以上であった場合(S16のY)、感度係数フィルタ部92へ忘却係数α10を設定し、相関係数がしきい値未満であった場合(S16のN)、感度係数フィルタ部92へ忘却係数α11を設定する。
本発明の実施例によれば、相関係数をもとに忘却係数を変化させるので、GPSの受信状態に適合したフィルタ処理によって感度係数を導出できる。また、GPSの受信状態に適合したフィルタ処理が実現されるので、感度係数の導出精度を向上できる。また、角速度センサ出力変化量とGPS方位変化量との相関係数を算出し、その相関係数にもとづいて忘却係数を制御するので、GPS方位変化量から求められるΔθや、車両の平均傾斜角度αに含まれる誤差の影響を軽減でき、感度係数の導出精度を向上できる。また、相関係数に応じて忘却係数を設定するので、式(5)におけるGPS方位変化量から求められるΔθや、車両の平均傾斜角度αに含まれる誤差を低減できる。
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2も、実施例1と同様に、角速度センサからの出力電圧に対して、オフセット値と感度係数とを使用しながら、角速度を導出する角速度算出装置に関する。角速度センサのオフセット値を導出するための式(2)において、方位変化量Δθが、GPS衛星から取得したGPS方位から求められる場合、GPS衛星からの電波の受信状況によりGPS方位の精度が悪化することがあり、オフセット値に含まれる誤差が大きくなる。
また、式(2)において、方位変化量Δθが、地図データにもとづいて求められる場合、地図データにもとづく道路方位と車両の走行方位とが完全に一致するとは限らないので、オフセット値に含まれる誤差が大きくなる可能性がある。さらに、角速度センサのオフセット値を導出するための式(2)において、鉛直軸に対する角速度センサの検出軸の傾きに含まれる道路傾斜角が、GPS衛星から取得したGPS高度変化量から求められる場合、GPS衛星からの電波の受信状況によりGPS方位の精度が悪化することがあり、オフセット値に含まれる誤差が大きくなる。
これらの場合、角速度の導出精度を向上させるために、オフセット値に含まれる誤差の低減が要求される。そのため、本実施例に係る角速度算出装置は、逐次導出した角速度センサのオフセット値の過去の値と現在の値に対して重み付け平均を実行する際に、忘却係数を変更させながら使用する。具体的に説明すると、角速度算出装置は、所定の期間における角速度センサから計算した方位変化とGPSから計算した方位変化との相関係数を算出し、その相関係数をもとに忘却係数を変更する。
図9は、本発明の実施例2に係る角速度算出装置100の構成を示す。角速度算出装置100は、図1と同様の部材によって構成されているが、相関係数演算部34が相関係数212をオフセット値演算部30へ出力している点が異なる。以下では、これまでとの差異を中心に説明する。
オフセット値演算部30は、有効性判定部22からのGPS測位データ200、傾斜角検出部26からの傾斜角度204、角速度センサ28からの出力信号206、相関係数演算部34からの相関係数212を入力する。また、オフセット値演算部30は、感度係数演算部32から感度係数210も入力する。オフセット値演算部30は、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206、感度係数210、相関係数212とをもとに、角速度センサ28のオフセット値(以下、「オフセット値208」という)を算出する。なお、オフセット値演算部30での処理の詳細は後述する。オフセット値演算部30は、オフセット値208を角速度変換部14、感度係数演算部32、相関係数演算部34へ出力する。
相関係数演算部34は、オフセット値演算部30からのオフセット値208、測位データ記憶部36からの記憶データ214を逐次入力する。相関係数演算部34は、記憶データ214に付加された有効性フラグが有効であった場合、出力信号206を傾斜角度204の余弦値で除算した値と、GPS測位データ200に含まれるGPS方位変化量とについて、所定期間、例えば感度係数演算部32が感度係数210を算出する期間において、相関係数212を算出する。なお、相関係数演算部34での処理の詳細は後述する。相関係数演算部34は、オフセット値演算部30、感度係数演算部32へ相関係数212を出力する。
図10は、オフセット値演算部30の構成を示す。オフセット値演算部30は、図2と同様の部材によって構成されているが、オフセット値フィルタ処理部44に相関係数212が入力されている点が異なる。以下では、これまでとの差異を中心に説明する。オフセット値フィルタ処理部44は、状態別オフセット値導出部42において逐次導出した仮オフセット値216を入力する。オフセット値フィルタ処理部44は、仮オフセット値216に対して統計処理を実行することによって、角速度センサ28のオフセット値208を導出する。その際、オフセット値フィルタ処理部44は、相関係数212に応じて統計処理の際の忘却係数を変更する。以下では、図11を使用しながら、オフセット値フィルタ処理部44での処理を説明する。
図11は、オフセット値フィルタ処理部44の構成を示す。オフセット値フィルタ処理部44は、図3と同様の部材によって構成されているが、忘却係数制御部76に相関係数212が入力されている点が異なる。以下では、これまでとの差異を中心に説明する。忘却係数制御部76は、相関係数212、走行状態情報218を入力する。また、忘却係数制御部76は、走行状態情報218にて示された状態と相関係数212に応じて、忘却係数「αi」の値を決定する。さらに、忘却係数制御部76は、決定した忘却係数「αi」をαi乗算部70および1−αi乗算部74へ設定する。
図12は、忘却係数制御部76において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、走行状態欄500、条件欄502、忘却係数欄504が含まれる。走行状態欄500には、走行状態情報218にて示される各状態が含まれる。条件欄502には、忘却係数を決定するための相関係数212の条件として、「x以上」、「x未満」が示されている。忘却係数欄504には、各状態に対応した忘却係数「αi」を記憶する。つまり、停止状態と直進走行状態に対して忘却係数「α1」が対応づけられる。また、非直進走行状態に対しては条件欄502に対応して、「x以上」であれば「α21」が、「x未満」であれば「α22」が対応づけられる。このように、忘却係数制御部76は、図12のテーブルを参照しながら、走行状態情報218にて示された状態から忘却係数「α1」あるいは「α2」を選択する。そのため、忘却係数制御部76は、車両の走行状態に応じて、フィルタ処理の際の忘却係数を変更する。
ここでは、図13を用いて相関係数演算部34が算出する相関係数を説明する。図13は、相関係数演算部34において計算される相関係数の概要を示し、これは、相関係数演算部34に入力された出力信号206を傾斜角度204の余弦値で除算した値と、GPS測位データ200に含まれるGPS方位変化量のグラフを示す。相関係数演算部34は、次のように出力信号206の積算値を傾斜角度204の余弦値で除算することによって、D'
Gyroを導出する。
D'
Gyroも角速度センサ出力変化量に相当する。相関係数演算部34は、次のように、角速度センサ出力変化量D'
GyroとGPS方位変化量Δθとの間の相関係数Cを導出する。
ここで、角速度センサ出力変化量D'Gyroは角速度センサ出力変化量DGyroからGoffsetの項を除いた値であり、相関係数Cの算出期間においてGoffsetが変化しなければ、方位変化量Δθとのそれぞれとの相関係数は一致する。したがって、前述のように、相関係数Cが大きい場合、式(4)右辺の「1/n・ΣGout」および「Δθ」、「cos(α)」の精度が良好であるといえる。相関係数演算部34は、相関係数Cを相関係数212として、オフセット値演算部30、感度係数演算部32へ出力する。なお、感度係数演算部32へ出力される相関係数212は、式(7)によって計算されたものであってもよい。
本発明の実施例によれば、相関係数をもとに忘却係数を変化させるので、GPSの受信状態に適合したフィルタ処理によってオフセット値を導出できる。また、GPSの受信状態に適合したフィルタ処理が実現されるので、オフセット値の導出精度を向上できる。また、角速度センサ出力変化量とGPS方位変化量との相関係数を算出し、その相関係数にもとづいて忘却係数を制御するので、GPS方位変化量から求められるΔθや、車両の平均傾斜角度αに含まれる誤差の影響を軽減でき、オフセット値の導出精度を向上できる。また、相関係数に応じて忘却係数を設定するので、式(5)におけるGPS方位変化量から求められるΔθや、車両の平均傾斜角度αに含まれる誤差を低減できる。
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3は、これまでの角速度算出装置において導出した角速度を使用して方位を推定する方位推定装置に関する。角速度センサのオフセットおよび感度係数を補正しても、わずかな誤差が累積し、自立航法による位置に含まれる誤差が顕著になる場合がある。このため、GPSの衛星捕捉状況が悪い地域等を走行するとき、長期間にわたって自立航法の合成比率が大きくなるので、推定した位置に誤差が含まれることがある。
この場合、GPSの衛星捕捉状況が良好になったときに、GPSから算出される位置の合成比率を大きくし、推定した位置の誤差を短期間で補正する必要がある。そのため、本実施例に係る方位推定装置は、GPSから算出した方位と角速度センサから算出した角速度とを合成する場合において、所定の期間における角速度センサから計算した方位変化とGPSから計算した方位変化との相関係数を算出し、その相関係数にもとづいて合成の比率を変更する。
図14は、本発明の実施例3に係る方位推定装置150の構成を示す。方位推定装置150は、角速度算出装置100と、推測航法位置演算部16を含む。推測航法位置演算部16は、GPS有効度判断部112、合成比率決定部114、推測方位導出部116を含む。また、信号として、GPS測位データ200、傾斜角度204、出力信号206、相関係数212、角速度220、GPS有効度222、合成比率224を含む。角速度算出装置100は、図1あるいは図9と同様に構成されるので、ここでは、説明を省略する。なお、パラメータ演算部12に含まれた相関係数演算部34は、相関係数212を推測航法位置演算部16にも出力する。
推測航法位置演算部16は、角速度算出装置100からGPS測位データ200、相関係数212、角速度220とを入力し、推測航法方位を導出する。GPS有効度判断部112は、測定部10からGPS測位データ200を入力し、GPS測位データ200に含まれるHDOP値、受信衛星数、速度に対しそれぞれ複数のしきい値を設け、それぞれの値に応じてGPS有効度222を段階的に判断する。GPS有効度判断部112において設けられるしきい値は、有効性判定部22において設けられるしきい値と同一であってもよく、異なっていてもよい。
図15は、GPS有効度判断部112において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。条件欄600には、GPS有効度を判断するためのHDOP値、GPS速度、GPS受信衛星数の条件が示される。ここでは、「HDOP値がしきい値C1未満」かつ「GPS速度がしきい値C2以上」かつ「GPS受信衛星数がしきい値C3以上」であれば、GPS測位データ200の精度が高いと判断し、GPS有効度欄602に「高」が示されている。また、「HDOP値がしきい値C1以上」または「GPS速度が0より大きく、かつ、しきい値C2未満」または「GPS受信衛星数がしきい値C4以上、かつ、しきい値C3未満」であれば、GPS測位データ200の精度が低いと判断し、GPS有効度欄602に「低」が示されている。さらに、「GPS受信衛星数がしきい値C4未満」であれば、HDOP値やGPS速度が無効値であると判断し、GPS有効度欄に「無効」が示されている。図14に戻る。GPS有効度判断部112は、判断の結果をGPS有効度222として合成比率決定部114へ出力する。
合成比率決定部114は、パラメータ演算部12からの相関係数212、GPS有効度判断部112からのGPS有効度222を入力し、相関係数212とGPS有効度222とをもとに、GPS測位データ200に含まれるGPS方位変化量と角速度220とを合成する際の比率(以下、「合成比率」ともいう)を決定する。図16は、合成比率決定部114において記憶されるテーブルのデータ構造を示す。GPS有効度222が「高」である場合、相関係数212がしきい値C5以上であれば、合成比率は「GPS方位変化量100%、角速度0%」とされ、相関係数212がしきい値C5未満であれば、合成比率は「GPS方位変化量50%、角速度50%」とされる。GPS有効度222が「低」である場合、相関係数212がしきい値C5以上であれば、合成比率は「GPS方位変化量80%、角速度20%」とされ、相関係数212がしきい値C5未満であれば、合成比率は「GPS方位変化量30%、角速度70%」とされる。
GPS有効度222が「無効ではない」である場合、相関係数212がしきい値C5以上であれば、合成比率は「GPS方位変化量60%、角速度40%」とされ、相関係数212がしきい値C5未満であれば、合成比率は「GPS方位変化量20%、角速度80%」とされる。GPS有効度222が「無効」である場合、相関係数212がしきい値C5未満であれば、合成比率は「GPS方位変化量0%、角速度100%」とされる。つまり、合成比率決定部114は、GPS有効度222が高くなるほど、GPS方位変化量の比率を高くし、角速度の比率を低くする。また、合成比率決定部114は、相関係数212が高くなるほど、GPS方位変化量の比率を高くし、角速度の比率を低くする。図14に戻る。合成比率決定部114は、決定した合成比率224を推測方位導出部116へ出力する。
推測方位導出部116は、測定部10からのGPS測位データ200、合成比率決定部114からの合成比率224、角速度変換部14からの角速度220とを入力する。推測方位導出部116は、合成比率224をもとに、GPS測位データ200に含まれたGPS方位変化量と、仮オフセット値216とを合成することによって、方位変化量を導出する。例えば、北向きの方位を0度/360度と表現すると、入力したGPS測位データ200から算出したGPS方位変化量が10(度/秒)、角速度220が9(度/秒)、合成比率224が「GPS方位変化量80%、角速度20%」であった場合、推測方位導出部116は、方位変化量を10×0.8+9×0.2=9.8(度/秒)のように算出する。さらに、推測方位導出部116は、算出した方位変化量を前回導出した推測方位へ加算することによって、推測方位を更新する。
なお、推測方位導出部116は、合成比率224が「GPS方位変化量100%、角速度0%」であった場合、つまり合成比率が、GPS方位変化量のみの使用を示していた場合、更新前の推測方位として、GPS測位データ200に含まれた方位を使用してもよい。これは、更新前の推測方位をGPS方位で置換することに相当する。このようにすることで、GPS測位精度が悪い、合成比率224が「GPS方位変化量0%、角速度100%」の期間が長く自立航法の誤差が蓄積された状態でも、GPS測位状態がよくなった時点において短期間で推測方位の精度を向上することができる。
本発明の実施例によれば、GPS方位から算出した方位変化量と角速度センサから算出した角速度との相関係数にもとづいて方位変化量と角速度とを合成する際の比率を調節するので、測定精度に応じた方位変化量を導出できる。また、合成比率をもとに、推測航法方位を補正する度合いを変化させるので、位置の推定期間を短縮できる。また、合成比率をもとに、推測航法方位を補正する度合いを変化させるので、位置の推定精度を向上できる。また、合成比率がGPS方位変化量のみの使用を示していた場合、更新前の推測方位として、測位データに含まれた方位を使用するので、累積していた誤差を短期間のうちに低減できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例1から3において、相関係数演算部34は、相関係数を計算する際の計算期間を固定している。しかしながらこれに限らず例えば、相関係数演算部34は、角速度の変化量に応じて、相関係数を計算する際の計算期間を調節してもよい。ここで、角速度の変化量は、出力信号206から導出されてもよく、GPS測位データ200に含まれたGPS方位変化量Δθから導出されてもよい。これにより、角速度の変化量が小さい場合には、計算期間が長くされ、角速度の変化量が大きい場合には、計算期間が短くされる。本変形例によれば、角速度の変化量に応じた相関係数を導出できる。
本発明の実施例1から3において、状態推定部40は、車両の走行状態判定として、GPS測位データ200に含まれたGPS速度を使用して、停止状態を判定している。しかしながらこれに限らず例えば、状態推定部40は、図示しないパルス検出部からの車両の車速パルス信号を入力し、車速パルスをもとに停止状態を判定してもよい。ここで、パルス検出部は、図示しない速度センサに接続されており、速度センサは、ドライブシャフトの回転に対応して回転するスピードメータケーブルの中間に設置され、ドライブシャフトの回転に伴った車速パルス信号を出力する。本変形例によれば、さまざまな手段によって車両の速度を測定できる。
本発明の実施例1から3において、有効性判定部22は、GPS測位データ200の有効性を判定するために、PDOPを使用している。しかしながらこれに限らず例えば、有効性判定部22は、GDOP(Geometric Dilution Of Precision)、HDOP(Horizontal Dilution Of Precision)等や、これらの組合せを使用してもよい。本変形例によれば、さまざまなパラメータを判定に使用できる。
本発明の実施例1から3において、オフセット値フィルタ処理部44や感度係数フィルタ部92は、IIRフィルタを含むように形成されている。しかしながらこれに限らず例えば、オフセット値フィルタ処理部44や感度係数フィルタ部92は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを含むように形成されていてもよい。その際、忘却係数は、タップ係数として設定される。本変形例によれば、フィルタ構成の自由度を向上できる。
本発明の実施例1から3において、忘却係数制御部76は、停止状態に対する忘却係数と、直進走行状態に対する忘却係数とに対して、同一の値を規定する。しかしながらこれに限らず例えば、忘却係数制御部76は、これらに対して異なった値を設定してもよい。これは、3つの状態のそれぞれに対して異なった処理がなされているといえる。本変形例によれば、走行状態として3つの状態に対して、3つの忘却係数を用意するので、各状態に適合したフィルタ処理を実現できる。