JP6369020B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の状態を制御する制御装置に関する。
車両の制御装置に関する技術として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、比例ソレノイドのコイルに印可する電流、もしくは磁気流体バルブのコイルに印可する電流を増減させ、減衰力可変ショックアブソーバの減衰力を制御する技術が開示されている。このとき、コイルの温度が高いほど供給する電流の上限値を制限することで、コイルの電力消費と温度上昇を抑制している。尚、本明細書では、通電される巻き線(ソレノイドやコイル)のことを総称してコイルと記載する。
特開2009−23377号公報
しかしながら、コイルの温度が高くなると、コイルの抵抗もしくはインピーダンス(以下、本明細書では総称してインピーダンスと記載する。)が大きくなり、電流指令に対する電流応答が低下するため、減衰力制御の制御性が十分に得られないという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、減衰力可変ショックアブソーバのコイル温度によらず安定した制御性を確保可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、車両のばね上挙動の変化を抑制する減衰力制御量を演算し、減衰力可変ショックアブソーバのコイルに流れる電流に応じた減衰力を出力するにあたり、コイルへの指令電流とコイルの実電流と予め設定されたゲインとに基づいてコイルに対する電流制御量を出力するサーボ制御を行うとき、コイルの実電流値と減衰力可変ショックアブソーバのストローク速度とオイル粘性と外部への放出熱量に基づいて減衰力可変ショックアブソーバの熱収支を演算し、該熱収支に基づいてコイルの温度を推定し、コイル温度が大きいほどサーボ制御のゲインを大きくすることとした。
よって、コイル温度は、全ての熱外乱の結果系として考えられるコイルインピーダンスと密接に関係することから、コイル温度が大きいほどゲインを大きくすることで、減衰力制御の制御性を向上できる。また、熱収支モデルに基づいてコイル温度を推定するため、全ての熱外乱を考慮した上で精度の高いコイル温度を推定できる。
実施例1の車両の制御装置を表すシステム概略図である。 実施例1の車両の制御装置の制御構成を表す制御ブロック図である。 実施例1の車輪速フィードバック制御系の構成を表す概念図である。 実施例1の走行状態推定部の構成を表す制御ブロック図である。 実施例1のストローク速度演算部における制御内容を表す制御ブロック図である。 実施例1の基準車輪速演算部の構成を表すブロック図である。 車体振動モデルを表す概略図である。 実施例1のブレーキピッチ制御を表す制御ブロック図である。 車輪速センサにより検出された車輪速周波数特性と、実施例では搭載していないストロークセンサのストローク周波数特性とを同時に書き表した図である。 実施例1のばね上制振制御における周波数感応制御を表す制御ブロック図である。 各周波数領域における人間感覚特性を表す相関図である。 実施例1の周波数感応制御によるフワ領域の振動混入比率と減衰力との関係を表す特性図である。 ある走行条件において車輪速センサにより検出された車輪速周波数特性を表した図である。 実施例1のロールレイト抑制制御の構成を表す制御ブロック図である。 実施例1のロールレイト抑制制御の包絡波形形成処理を表すタイムチャートである。 実施例1のばね下制振制御の制御構成を表すブロック図である。 実施例1の減衰力制御部の制御構成を表す制御ブロック図である。 実施例1の飽和度とS/A3への指令電流値との関係を表す図である。 実施例1のスタンダードモードにおける減衰係数調停処理を表すフローチャートである。 実施例1のスポーツモードにおける減衰係数調停処理を表すフローチャートである。 実施例1のコンフォートモードにおける減衰係数調停処理を表すフローチャートである。 実施例1のハイウェイモードにおける減衰係数調停処理を表すフローチャートである。 うねり路面及び凹凸路面を走行する際の減衰係数変化を表すタイムチャートである。 実施例1の減衰係数調停部において走行状態に基づくモード選択処理を表すフローチャートである。 実施例1のストローク速度に対する制御力の関係を表す特性図である。 コンベ車両のストローク速度の周波数に対するゲイン及びストローク速度振幅の関係を表す特性図である。 実施例1の飽和度制限マップである。 他の実施例における飽和度制限マップである。 実施例1の指令電流値に基づくサーボ制御部の構成を表す制御ブロック図である。 指令電流が変更された場合の実電流変化を表すタイムチャートである。 コイル温度とインピーダンスとの関係を表す特性図である。 異なるコイル温度に対する電流応答性を表すタイムチャートである。 実施例1のピッチレイト発生時における減衰力制御量とブレーキ姿勢制御量との関係を表すタイムチャートである。
〔実施例1〕
図1は実施例1の車両の制御装置を表すシステム概略図である。車両には、動力源であるエンジン1と、各輪に摩擦力による制動トルクを発生させるブレーキ20(以下、個別の輪に対応するブレーキを表示するときには右前輪ブレーキ:20FR、左前輪ブレーキ:20FL、右後輪ブレーキ:20RR、左後輪ブレーキ:20RLと記載する。)と、各輪と車体との間に設けられ減衰力を可変に制御可能なショックアブソーバ3(以下、S/Aと記載する。個別の輪に対応するS/Aを表示するときには右前輪S/A:3FR、左前輪S/A:3FL、右後輪S/A:3RR、左後輪S/A:3RLと記載する。)と、を有する。
エンジン1は、エンジン1から出力されるトルクを制御するエンジンコントローラ(以下、エンジン制御部とも言う。動力源制御手段に相当)1aを有し、エンジンコントローラ1aは、エンジン1のスロットルバルブ開度や、燃料噴射量、点火タイミング等を制御することで、所望のエンジン運転状態(エンジン回転数やエンジン出力トルク)を制御する。また、ブレーキ20は、各輪のブレーキ液圧を走行状態に応じて制御可能なブレーキコントロールユニット2から供給される液圧に基づいて制動トルクを発生する。ブレーキコントロールユニット2は、ブレーキ20の発生する制動トルクを制御するブレーキコントローラ(以下、ブレーキ制御部とも言う)2aを有し、運転者のブレーキペダル操作によって発生するマスタシリンダ圧、もしくは内蔵されたモータ駆動ポンプにより発生するポンプ圧を液圧源とし、複数の電磁弁の開閉動作によって各輪のブレーキ20に所望の液圧を発生させる。
S/A3は、車両のばね下(アクスルや車輪等)とばね上(車体等)との間に設けられたコイルスプリングの弾性運動を減衰する減衰力発生装置であり、アクチュエータの作動により減衰力を可変に構成されている。S/A3は、流体が封入されたシリンダと、このシリンダ内をストロークするピストンと、このピストンの上下に形成された流体室の間の流体移動を制御するオリフィスとを有する。更に、このピストンにはコイルZ1が設けられ、コイルZ1への通電量に応じたオリフィス径が形成可能とされている。S/A3のアクチュエータ作動時には、必要なオリフィス系に応じた指令電流値が選択される。これにより、オリフィス径に応じた減衰力を発生することができる。例えば、通電量が多くなるとオリフィス径が小さくなり、ピストンの移動は制限されやすいため減衰力が高くなり、通電量が少なくなるとオリフィス径が大きくなり、ピストンの移動は制限されにくいため、減衰力は小さくなる。
尚、オリフィス径の選択以外にも、例えば磁性流体や磁気粘性流体を作動液としてコイルに印可する電流により減衰力を設定してもよく、特に限定しない。S/A3は、S/A3の減衰力を制御するS/Aコントローラ3a(減衰力制御手段に相当)を有し、S/Aアクチュエータによりオリフィス径を動作させて減衰力を制御する。
また、各輪の車輪速を検出する車輪速センサ5(以下、個別の輪に対応する車輪速を表示するときには右前輪車輪速:5FR、左前輪車輪速:5FL、右後輪車輪速:5RR、左後輪車輪速:5RLと記載する。)と、車両の重心点に作用する前後加速度、ヨーレイト及び横加速度を検出する一体型センサ6と、運転者のステアリング操作量である操舵角を検出する舵角センサ7と、車速を検出する車速センサ8と、エンジントルクを検出するエンジントルクセンサ9と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ10と、マスタシリンダ圧を検出するマスタ圧センサ11と、ブレーキペダル操作が行なわれるとオン状態信号を出力するブレーキスイッチ12と、アクセルペダル開度を検出するアクセル開度センサ13と、を有する。これら各種センサの信号は、必要に応じてエンジンコントローラ1a,ブレーキコントローラ2a及びS/Aコントローラ3aに入力される。尚、一体型センサ6の配置は車両の重心位置でもよいし、それ以外の場所であっても、重心位置における各種値が推定可能な構成であればよく、特に限定しない。また、一体型である必要は無く、個別にヨーレイト、前後加速度及び横加速度を検出する構成としてもよい。
(車両の制御装置の全体構成)
実施例1の車両の制御装置にあっては、ばね上に生じる振動状態を制御するために、3つのアクチュエータを使用する。このとき、それぞれの制御がばね上状態を制御するため、相互干渉が問題となる。また、エンジン1によって制御可能な要素と、ブレーキ20によって制御可能な要素と、S/A3によって制御可能な要素はそれぞれ異なり、これらをどのように組み合わせて制御するべきかが問題となる。
例えば、ブレーキ20はバウンス運動とピッチ運動の制御が可能であるが、両方を行なうと減速感が強く運転者に違和感を与えやすい。また、S/A3はロール運動とバウンス運動とピッチ運動の全てを制御可能であるが、S/A3によって全ての制御を広い範囲で行う場合、S/A3の製造コストの上昇を招き、また、減衰力が高くなる傾向があることから路面側からの高周波振動が入力されやすく、やはり運転者に違和感を与えやすい。言い換えると、ブレーキ20による制御は高周波振動の悪化を招くことは無いが減速感の増大を招き、S/A3による制御は減速感を招くことは無いが高周波振動の入力を招くというトレードオフが存在する。
そこで、実施例1の車両の制御装置にあっては、これらの課題を総合的に判断し、それぞれの制御特性として有利な点を活かしつつ、相互の弱点を補完しあう制御構成を実現することで、安価でありながらも制振能力に優れた車両の制御装置を実現するために、主に、以下に列挙する点を考慮して全体の制御システムを構築した。
(1)エンジン1及びブレーキ20による制御を並行して行うことで、S/A3による制御量を抑制する。
(2)ブレーキ20の制御対象運動をピッチ運動に限定することで、ブレーキ20による制御での減速感を解消する。
(3)エンジン1及びブレーキ20による制御量を実際に出力可能な制御量よりも制限して出力することで、S/A3での負担を低減しつつ、エンジン1やブレーキ20の制御に伴って生じる違和感を抑制する。
(4)全てのアクチュエータによりスカイフック制御を行う。このとき、一般にスカイフック制御に必要とされるストロークセンサやばね上上下加速度センサ等を使用することなく、全ての車両に搭載されている車輪速センサを利用して安価な構成でスカイフック制御を実現する。
(5)S/A3によるばね上制御を行なう際、スカイフック制御のようなベクトル制御では対応が困難な高周波振動の入力に対し、新たにスカラー制御(周波数感応制御)を導入する。
(6)走行状態に応じて、S/A3が実現する制御状態を適宜選択することで、走行状況に応じた適切な制御状態を提供する。
以上が、実施例において構成した全体の制御システムの概要である。以下、これらを実現する個別の内容について、順次説明する。
図2は実施例1の車両の制御装置の制御構成を表す制御ブロック図である。実施例1では、コントローラとして、エンジンコントローラ1aと、ブレーキコントローラ2aと、S/Aコントローラ3aとの3つで構成され、それぞれのコントローラにおいて、車輪速フィードバック制御系を構成している。
尚、実施例1では、コントローラとして、3つのコントローラを備えた構成を示したが、各コントローラを全て一つの統合コントローラから構成してもよく特に限定しない。実施例1において3つのコントローラを備えた構成としたのは、既存の車両におけるエンジンコントローラとブレーキコントローラをそのまま流用してエンジン制御部1a及びブレーキ制御部2aとし、別途S/Aコントローラ3aを搭載することで実施例1の車両の制御装置を実現することを想定したものである。
(エンジンコントローラの構成)
エンジンコントローラ1aは、主に車輪速センサ5により検出された車輪速に基づいて、後述するばね上制振制御部101aのスカイフック制御に使用する各輪のストローク速度、バウンスレイト、ロールレイト及びピッチレイトを推定する第1走行状態推定部100と、エンジントルク指令であるエンジン姿勢制御量を演算するエンジン姿勢制御部101と、演算されたエンジン姿勢制御量に基づいてエンジン1の運転状態を制御するエンジン制御部102とを有する。尚、第1走行状態推定部100の推定処理内容については後述する。
エンジン姿勢制御部101は、スカイフック制御によりバウンス運動及びピッチ運動を抑制するばね上制御量を演算するばね上制振制御部101aと、前輪と後輪の接地荷重変動を抑制する接地荷重変動抑制制御量を演算する接地荷重制御部101bと、舵角センサ7や車速センサ8からの信号に基づいて運転者の達成したい車両挙動に対応するヨー応答制御量を演算するエンジン側ドライバ入力制御部101cとを有する。エンジン姿勢制御部101は、これら各制御部により演算された制御量が最小となるエンジン姿勢制御量を最適制御(LQR)により演算し、エンジン制御部102に対して最終的なエンジン姿勢制御量を出力する。このように、エンジン1によってバウンス運動及びピッチ運動を抑制することで、S/A3では、減衰力制御量を低減できるため、高周波振動の悪化を回避できる。また、S/A3はロール運動の抑制に注力できるため、効果的にロール運動を抑制することができる。
(ブレーキコントローラの構成)
ブレーキコントローラ2aは、車輪速センサ5により検出された車輪速に基づいて、各輪のストローク速度及びピッチレイト等を推定する第2走行状態推定部200と、推定されたストローク速度及びピッチレイトに基づいてスカイフック制御に基づくブレーキ姿勢制御量を演算するスカイフック制御部201(詳細については後述する。)と、演算されたブレーキ姿勢制御量に基づいてブレーキ20の制動トルクを制御するブレーキ制御部202とを有する。尚、実施例1では、第1走行状態推定部100及び第2走行状態推定部200における推定処理として同じ推定処理を採用しているが、車輪速から推定する処理であれば他の推定処理を用いてもよい。このように、ブレーキ20によってピッチ運動を抑制することで、S/A3では、減衰力制御量を低減できるため、高周波振動の悪化を回避できる。また、S/A3はロール運動の抑制に注力できるため、効果的にロール運動を抑制することができる。
(S/Aコントローラの構成)
S/Aコントローラ3aは、運転者の操作(ステアリング操作、アクセル操作及びブレーキペダル操作等)に基づいて所望の車両姿勢を達成するドライバ入力制御を行うドライバ入力制御部31と、各種センサの検出値(主に車輪速センサ5の車輪速センサ値)に基づいて走行状態を推定する第3走行状態推定部32と、推定された走行状態に基づいてばね上の振動状態を制御するばね上制振制御部33と、推定された走行状態に基づいてばね下の振動状態を制御するばね下制振制御部34と、ドライバ入力制御部31から出力されたショックアブソーバ姿勢制御量と、ばね上制振制御部33から出力されたばね上制振制御量と、ばね下制振制御部34から出力されたばね下制振制御量とに基づいて、S/A3に設定すべき減衰力を決定し、S/Aの減衰力制御を行う減衰力制御部35とを有する。尚、実施例1では、第1走行状態推定部100,第2走行状態推定部200及び第3走行状態推定部32における推定処理として同じ推定処理を採用しているが、車輪速から推定する処理であれば他の推定処理を用いてもよく特に限定しない。
ここで、実施例1では、全てのアクチュエータにおいて車輪速センサ5を用いたフィードバック制御系を構成することとした。図3は実施例1の車輪速フィードバック制御系の構成を表す概念図である。エンジン1、ブレーキ20及びS/A3は、それぞれ個別にエンジンフィードバック制御系、ブレーキフィードバック制御系、S/Aフィードバック制御系を構成している。このとき、それぞれのアクチュエータが相互に作動状態を監視することなく個別に作動した場合、制御干渉が問題となる。しかし、各アクチュエータの制御による影響は、それぞれ車輪速変動として出現するため、車輪速フィードバック制御系を構成することで、結果として各アクチュエータの影響を相互に監視することとなり、制御干渉を回避するものである。例えば、エンジン1によってあるばね上振動が抑制されると、それに伴う車輪速変動が生じる。他のアクチュエータは、エンジン1において行われた制御内容について感知していなくても、その影響が反映された車輪速に基づいてブレーキ20やS/A3が制御を行うことになる。すなわち、車輪速という共通の値を用いてフィードバック制御系を構成しているため、制御的に相互監視を働かせることなく個別に制御したとしても、結果的に相互に監視した上での制御(以下、この制御を強調制御と記載する。)が行われ、車両姿勢を安定化方向に収束できるのである。以下、各フィードバック制御系について順次説明する。
(走行状態推定部について)
まず、各フィードバック制御系に設けられた共通する構成である第1,第2,第3走行状態推定部について説明する。実施例1では、第1走行状態推定部100,第2走行状態推定部200及び第3走行状態推定部32における推定処理として同じ推定処理を採用している。よって、各推定部内における処理は共通であるため、代表して第3走行状態推定部32における推定処理を説明する。尚、これら各走行状態推定部は、車輪速を用いた状態推定であれば別々の推定モデルを備えていてもよく、特に限定しない。
図4は実施例1の第3走行状態推定部の構成を表す制御ブロック図である。実施例1の第3走行状態推定部32では、基本的に車輪速センサ5により検出された車輪速に基づいて、後述するばね上制振制御部33のスカイフック制御に使用する各輪のストローク速度、バウンスレイト、ロールレイト及びピッチレイトを算出する。まず、各輪の車輪速センサ5の値がストローク速度演算部321に入力され、ストローク速度演算部321において演算された各輪のストローク速度からばね上速度を演算する。
図5は実施例1のストローク速度演算部における制御内容を表す制御ブロック図である。ストローク速度演算部321は、輪ごとに個別に設けられており、図5に示す制御ブロック図は、ある輪に着目した制御ブロック図である。ストローク速度演算部321内には、車輪速センサ5の値と、舵角センサ7により検出された前輪舵角δfと、後輪舵角δr(後輪操舵装置を備えた場合は実後輪舵角を、それ以外の場合は適宜0でよい。)と、車体横速度と、一体型センサ6により検出された実ヨーレイトとに基づいて基準となる車輪速を演算する基準車輪速演算部300と、演算された基準車輪速に基づいてタイヤ回転振動周波数を演算するタイヤ回転振動周波数演算部321aと、基準車輪速と車輪速センサ値との偏差(車輪速変動)を演算する偏差演算部321bと、偏差演算部321bにより演算された偏差をサスペンションストローク量に変換するGEO変換部321cと、変換されたストローク量をストローク速度に校正するストローク速度校正部321dと、ストローク速度校正部321dにより校正された値にタイヤ回転振動周波数演算部321aにより演算された周波数に応じたバンドエリミネーションフィルタを作用させてタイヤ回転一次振動成分を除去し、最終的なストローク速度を算出する信号処理部321eとを有する。
〔基準車輪速演算部について〕
ここで、基準車輪速演算部300について説明する。図6は実施例1の基準車輪速演算部の構成を表すブロック図である。基準車輪速とは、各車輪速のうち、種々の外乱が除去された値を指すものである。言い換えると、車輪速センサ値と基準車輪速との差分は、車体のバウンス挙動、ロール挙動、ピッチ挙動又はばね下上下振動によって発生したストロークに応じて変動した成分と関連がある値であり、実施例では、この差分に基づいてストローク速度を推定する。
平面運動成分抽出部301では、車輪速センサ値を入力として車体プランビューモデルに基づいて各輪の基準車輪速となる第1車輪速V0を演算する。ここで、車輪速センサ5により検出された車輪速センサ値をω(rad/s)、舵角センサ7により検出された前輪実舵角をδf(rad)、後輪実舵角をδr(rad)、車体横速度をVx、一体型センサ6により検出されたヨーレイトをγ(rad/s)、算出される基準車輪速ω0から推定される車体速をV(m/s)、算出すべき基準車輪速をVFL、VFR、VRL、VRR、前輪のトレッドをTf、後輪のトレッドをTr、車両重心位置から前輪までの距離をLf、車両重心位置から後輪までの距離をLrとする。以上を用いて、車体プランビューモデルは以下のように表される。
(式1)
VFL=(V−Tf/2・γ)cosδf+(Vx+Lf・γ)sinδf
VFR=(V+Tf/2・γ)cosδf+(Vx+Lf・γ)sinδf
VRL=(V−Tr/2・γ)cosδr+(Vx−Lr・γ)sinδr
VRR=(V+Tr/2・γ)cosδr+(Vx−Lr・γ)sinδr
尚、車両に横滑りが発生してない通常走行時を仮定すると、車体横速度Vxは0を入力すればよい。これをそれぞれの式においてVを基準とする値に書き換えると以下のように表される。この書き換えにあたり、Vをそれぞれの車輪に対応する値としてV0FL、V0FR、V0RL、V0RR(第1車輪速に相当)と記載する。
(式2)
V0FL={VFL−Lf・γsinδf}/cosδf+Tf/2・γ
V0FR={VFR−Lf・γsinδf}/cosδf−Tf/2・γ
V0RL={VRL+Lr・γsinδr}/cosδr+Tr/2・γ
V0RR={VRR+Lf・γsinδf}/cosδr−Tr/2・γ
ロール外乱除去部302では、第1車輪速V0を入力として車体フロントビューモデルに基づいて前後輪の基準車輪速となる第2車輪速V0F、V0Rを演算する。車体フロントビューモデルとは、車両を前方から見たときに、車両重心点を通る鉛直線上のロール回転中心周りに発生するロール運動によって生じる車輪速差を除去するものであり、以下の式で表される。
V0F=(V0FL+V0FR)/2
V0R=(V0RL+V0RR)/2
これにより、ロールに基づく外乱を除去した第2車輪速V0F、V0Rが得られる。
ピッチ外乱除去部303では、第2車輪速V0F、V0Rを入力として車体サイドビューモデルに基づいて全輪の基準車輪速となる第三車輪速VbFL、VbFR、VbRL、VbRRを演算する。ここで、車体サイドビューモデルとは、車両を横方向から見たときに、車両重心点を通る鉛直線上のピッチ回転中心周りに発生するピッチ運動によって生じる車輪速差を除去するものであり、以下の式で表される。
(式3)
VbFL=VbFR=VbRL=VbRR={Lr/(Lf+Lr)}V0F+{Lf/(Lf+Lr)}V0R
基準車輪速再配分部304では、(式1)に示す車体プランビューモデルのVにVbFL(=VbFR=VbRL=VbRR)をそれぞれ代入し、最終的な各輪の基準車輪速VFL、VFR、VRL、VRRを算出し、それぞれタイヤ半径r0で除算して基準車輪速ω0を算出する。
上述の処理により、各輪における基準車輪速ω0が算出されると、この基準車輪速ω0と車輪速センサ値との偏差が演算され、この偏差がサスペンションストロークに伴う車輪速変動であることから、ストローク速度Vz_sに変換される。基本的に、サスペンションは、各輪を保持する際、上下方向にのみストロークするのではなく、ストロークに伴って車輪回転中心が前後に移動すると共に、車輪速センサ5を搭載したアクスル自身も傾きを持ち、車輪との回転角差を生じる。この前後移動に伴って車輪速が変化するため、基準車輪速と車輪速センサ値との偏差がこのストロークに伴う変動として抽出できるのである。尚、どの程度の変動が生じるかはサスペンションジオメトリに応じて適宜設定すればよい。
ストローク速度演算部321において、上述の処理により各輪におけるストローク速度Vz_sFL、Vz_sFR、Vz_sRL、Vz_sRRが算出されると、ばね上速度演算部322においてスカイフック制御用のバウンスレイト、ロールレイト及びピッチレイトが演算される。
(推定モデルについて)
スカイフック制御とは、S/A3のストローク速度とばね上速度の関係に基づいて減衰力を設定し、ばね上を姿勢制御することでフラットな走行状態を達成するものである。ここで、スカイフック制御によってばね上の姿勢制御を達成するには、ばね上速度をフィードバックする必要がある。今、車輪速センサ5から検出可能な値はストローク速度であり、ばね上に上下加速度センサ等を備えていないことから、ばね上速度は推定モデルを用いて推定する必要がある。以下、推定モデルの課題及び採用すべきモデル構成について説明する。
図7は車体振動モデルを表す概略図である。図7(a)は、減衰力が一定のS/Aを備えた車両(以下、コンベ車両と記載する。)のモデルであり、図7(b)は、減衰力可変のS/Aを備え、スカイフック制御を行う場合のモデルである。図7中、Msはばね上の質量を表し、Muはばね下の質量を表し、Ksはコイルスプリングの弾性係数を表し、CsはS/Aの減衰係数を表し、Kuはばね下(タイヤ)の弾性係数を表し、Cuはばね下(タイヤ)の減衰係数を表し、Cvは可変とされた減衰係数を表す。また、z2はばね上の位置を表し、z1はばね下の位置を表し、z0は路面位置を表す。
図7(a)に示すコンベ車両モデルを用いた場合、ばね上に対する運動方程式は以下のように表される。なお、z1の1回微分(即ち速度)をdz1で、2回微分(即ち加速度)をddz1で表す。
(推定式1)
Ms・ddz2=−Ks(z2−z1)−Cs(dz2−dz1)
この関係式をラプラス変換して整理すると下記のように表される。
(推定式2)
dz2=−(1/Ms)・(1/s2)・(Cs・s+Ks)(dz2−dz1)
ここで、dz2−dz1はストローク速度(Vz_sFL、Vz_sFR、Vz_sRL、Vz_sRR)であることから、ばね上速度はストローク速度から算出できる。しかし、スカイフック制御によって減衰力が変更されると、推定精度が著しく低下するため、コンベ車両モデルでは大きな姿勢制御力(減衰力変更)を与えられないという問題が生じる。
そこで、図7(b)に示すようなスカイフック制御による車両モデルを用いることが考えられる。減衰力を変更するとは、基本的にサスペンションストロークに伴ってS/A3のピストン移動速度を制限する力を変更することである。ピストンを積極的に望ましい方向に移動することはできないセミアクティブなS/A3を用いるため、セミアクティブスカイフックモデルを採用し、ばね上速度を求めると、下記のように表される。
(推定式3)
dz2=−(1/Ms)・(1/s2)・{(Cs+Cv)・s+Ks}(dz2−dz1)
ただし、
dz2・(dz2−dz1)≧0のとき Cv=Csky・{dz2/(dz2−dz1)}
dz2・(dz2−dz1)<0のとき Cv=0
すなわち、Cvは不連続な値となる。
今、簡単なフィルタを用いてばね上速度の推定を行いたいと考えた場合、セミアクティブスカイフックモデルでは、本モデルをフィルタとして見た場合、各変数はフィルタ係数に相当し、擬似微分項{(Cs+Cv)・s+Ks}に不連続な可変減衰係数Cvが含まれるため、フィルタ応答が不安定となり、適切な推定精度が得られない。特に、フィルタ応答が不安定となると、位相がずれてしまう。ばね上速度の位相と符号との対応関係が崩れると、スカイフック制御を達成することはできない。そこで、セミアクティブなS/A3を用いる場合であっても、ばね上速度とストローク速度の符号関係に依存せず、安定的なCskyを直接用いることが可能なアクティブスカイフックモデルを用いてばね上速度を推定することとした。アクティブスカイフックモデルを採用し、ばね上速度を求めると、下記のように表される。
(推定式4)
dz2=−(1/s)・{1/(s+Csky/Ms)}・{(Cs/Ms)s+(Ks/Ms)}(dz2−dz1)
この場合、擬似微分項{(Cs/Ms)s+(Ks/Ms)}には不連続性が生じず、{1/(s+Csky/Ms)}の項はローパスフィルタで構成できる。よって、フィルタ応答が安定し、適切な推定精度を得ることができる。尚、ここで、アクティブスカイフックモデルを採用しても、実際にはセミアクティブ制御しかできないことから、制御可能領域が半分となる。よって、推定されるばね上速度の大きさはばね上共振以下の周波数帯で実際よりも小さくなるが、スカイフック制御において最も重要なのは位相であり、位相と符号との対応関係が維持できればスカイフック制御は達成され、ばね上速度の大きさは他の係数等によって調整可能であることから問題はない。
以上の関係によって、各輪のストローク速度が分かれば、ばね上速度を推定できることが理解できる。次に、実際の車両は1輪ではなく4輪であるため、これら各輪のストローク速度を用いてばね上の状態を、ロールレイト、ピッチレイト及びバウンスレイトにモード分解して推定することを検討する。今、4輪のストローク速度から上記3つの成分を算出する場合、対応する成分が一つ足りず、解が不定となるため、対角輪の動きを表すワープレイトを導入することとした。ストローク量のバウンス項をxsB、ロール項をxsR、ピッチ項をxsP、ワープ項をxsWとし、Vz_sFL、Vz_sFR、Vz_sRL、Vz_sRRに対応するストローク量をz_sFL、z_sFR、z_sRL、z_sRRとすると、以下の式が成り立つ。
(式4)
Figure 0006369020
以上の関係式から、xsB、xsR、xsP、xsWの微分dxsB等は以下の式で表される。
dxsB=1/4(Vz_sFL+Vz_sFR+Vz_sRL+Vz_sRR)
dxsR=1/4(Vz_sFL−Vz_sFR+Vz_sRL−Vz_sRR)
dxsP=1/4(−Vz_sFL−Vz_sFR+Vz_sRL+Vz_sRR)
dxsW=1/4(−Vz_sFL+Vz_sFR+Vz_sRL−Vz_sRR)
ここで、ばね上速度とストローク速度との関係は上記推定式4より得られているため、推定式4のうち、−(1/s)・{1/(s+Csky/Ms)}・{(Cs/Ms)s+(Ks/Ms)}部分をGと記載し、それぞれCsky,Cs及びKsのバウンス項、ロール項、ピッチ項に応じたモーダルパラメータ(CskyB,CskyR,CskyP,CsB,CsR,CsP,KsB,KsR,KsP)を考慮した値をGB,GR,GPとし、各バウンスレイトをdB、ロールレイトをdR、ピッチレイトをdPとすると、dB、dR、dPは以下の値として算出できる。
dB=GB・dxsB
dR=GR・dxsR
dP=GP・dxsP
以上から、各輪のストローク速度に基づいて、実際の車両におけるばね上の状態推定が達成できる。
(ばね上制振制御部)
次に、ばね上制振制御部101a,スカイフック制御部201及びばね上制振制御部33において実行されるスカイフック制御構成について説明する。スカイフック制御では、上述のように車輪速に基づいて推定されたばね上状態を目標ばね上状態となるように制御する。言い換えると、車輪速変化はばね上状態に対応して変化するものであり、バウンス,ロール,ピッチといったばね上状態を目標ばね上状態に制御する場合、検出された車輪速の変化が目標ばね上状態に対応する車輪速変化となるように制御するものである。
〔スカイフック制御部の構成〕
実施例1の車両の制御装置にあっては、ばね上姿勢制御を達成するアクチュエータとして、エンジン1と、ブレーキ20と、S/A3の三つを備えている。このうち、エンジンコントローラ1aにおけるばね上制振制御部101aでは、バウンスレイトとピッチレイトの2つを制御対象とし、ブレーキコントローラ2aにおけるスカイフック制御部201においてはピッチレイトを制御対象とし、S/Aコントローラ3aにおけるスカイフック制御部33aでは、バウンスレイト、ロールレイト、ピッチレイトの3つを制御対象とする。
バウンス方向のスカイフック制御量は、
FB=CskyB・dB
ロール方向のスカイフック制御量は、
FR=CskyR・dR
ピッチ方向のスカイフック制御量は、
FP=CskyP・dP
となる。
(バウンス方向のスカイフック制御量FB)
バウンス方向のスカイフック制御量FBは、ばね上制振制御部101aにおいてエンジン姿勢制御量の一部として演算される。また、スカイフック制御部33aにおいてS/A姿勢制御量の一部として演算される。
(ロール方向のスカイフック制御量FR)
ロール方向のスカイフック制御量FRは、スカイフック制御部33aにおいてS/A姿勢制御量の一部として演算される。
(ピッチ方向のスカイフック制御量FP)
ピッチ方向のスカイフック制御量FPは、ばね上制振制御部101aにおいてエンジン姿勢制御量の一部として演算される。また、スカイフック制御部201においてブレーキ姿勢制御量として演算される。また、スカイフック制御部33aにおいてS/A姿勢制御量の一部として演算される。
エンジン姿勢制御部101は、運転者に違和感を与えないためにエンジン姿勢制御量に応じたエンジントルク制御量を制限する制限値が設定されている。これにより、エンジントルク制御量を前後加速度に換算したときに所定前後加速度範囲内となるように制限している。よって、FBやFPに基づいてエンジン姿勢制御量(エンジントルク制御量)を演算し、制限値以上の値が演算された場合には、制限値によって達成可能なバウンスレイトやピッチレイトのスカイフック制御量としてエンジン姿勢制御量を出力する。エンジン制御部102では、制限値に対応するエンジン姿勢制御量に基づいてエンジントルク制御量が演算され、エンジン1に対して出力する。尚、エンジン姿勢制御量は、プラス側の駆動トルクに加えて、エンジンブレーキによるマイナス側の制動トルクも出力可能であることから、エンジントルク制御量が制限値により制限された範囲内において、アクティブ制御が実行される。
スカイフック制御部201には、エンジン1と同様に運転者に違和感を与えないために制動トルク制御量を制限する制限値が設定されている(尚、制限値の詳細については後述する。)。これにより、制動トルク制御量を前後加速度に換算したときに所定前後加速度範囲内(乗員の違和感、アクチュエータの寿命等から求まる制限値)となるように制限している。よって、FPに基づいてブレーキ姿勢制御量を演算し、制限値以上の値が演算された場合には、制限値によって達成可能なピッチレイト抑制量(以下、ブレーキ姿勢制御量と記載する。)をブレーキ制御部202に出力する。ブレーキ制御部202では、制限値に対応するブレーキ姿勢制御量に基づいて制動トルク制御量(もしくは減速度)が演算され、ブレーキ20に対して出力される。
〔ブレーキピッチ制御〕
ここで、ブレーキピッチ制御について説明する。一般に、ブレーキ20については、バウンスとピッチの両方を制御可能であることから、両方を行うことが好ましいとも言える。しかし、ブレーキ20によるバウンス制御は4輪同時に制動力を発生させるため、制御優先度が低い方向にも関わらず、制御効果が得にくい割には減速感が強く、運転者にとって違和感となる傾向があった。そこで、ブレーキ20についてはピッチ制御に特化した構成とした。図8は実施例1のブレーキピッチ制御を表す制御ブロック図である。車体の質量をm、前輪の制動力をBFf、後輪の制動力をBFr、車両重心点と路面との間の高さをHcg、車両の加速度をa、ピッチモーメントをMp、ピッチレイトをVpとすると、以下の関係式が成立する。
BFf+BFr=m・a
m・a・Hcg=Mp
Mp=(BFf+BFr)・Hcg
ここで、ピッチレイトVpが正、つまり前輪側が沈み込んでいるときには制動力を与えてしまうと、より前輪側が沈み込み、ピッチ運動を助長してしまうため、この場合は制動力を付与しない。一方、ピッチレイトVpが負、つまり前輪側が浮き上がっているときには制動ピッチモーメントが制動力を与えて前輪側の浮き上がりを抑制する。これにより、運転者の視界を確保し、前方を見やすくすることで、安心感、フラット感の向上に寄与する。以上から、
Vp>0(前輪沈み込み)のとき Mp=0
Vp≦0(前輪浮き上がり)のとき Mp=CskyP・Vp
の制御量を与えるものである。これにより、車体のフロント側の浮き上がり時のみ制動トルクを発生させるため、浮き上がりと沈み込み両方に制動トルクを発生する場合に比べて、発生する減速度を小さくすることができる。また、アクチュエータ作動頻度も半分で済むため、低コストなアクチュエータを採用できる。
以上の関係に基づいて、ブレーキ姿勢制御量演算部334内は、以下の制御ブロックから構成される。不感帯処理符号判定部3341では、入力されたピッチレイトVpの符号を判定し、正のときは制御不要であるため減速感低減処理部3342に0を出力し、負のときは制御可能と判断して減速感低減処理部3342にピッチレイト信号を出力する。
〔減速感低減処理〕
次に、減速感低減処理について説明する。この処理は、ブレーキ姿勢制御量演算部334内で行なわれる上記制限値による制限に対応する処理である。2乗処理部3342aでは、ピッチレイト信号を2乗処理する。これにより符号を反転させると共に、制御力の立ち上がりを滑らかにする。ピッチレイト2乗減衰モーメント演算部3342bでは、2乗処理されたピッチレイトに2乗処理を考慮したピッチ項のスカイフックゲインCskyPを乗算してピッチモーメントMpを演算する。目標減速度算出部3342cでは、ピッチモーメントMpを質量m及び車両重心点と路面との間の高さHcgにより除算して目標減速度を演算する。
ジャーク閾値制限部3342dでは、算出された目標減速度の変化率、すなわちジャークが予め設定された減速ジャーク閾値と抜きジャーク閾値の範囲内であるか否か、及び目標減速度が前後加速度制限値の範囲内であるか否かを判断し、いずれかの閾値を越える場合は、目標減速度をジャーク閾値の範囲内となる値に補正し、また、目標減速度が制限値を超える場合は、制限値内に設定する。これにより、運転者に違和感を与えないように減速度を発生させることができる。
目標ピッチモーメント変換部3343では、ジャーク閾値制限部3342dにおいて制限された目標減速度に質量mと高さHcgとを乗算して目標ピッチモーメントを算出し、ブレーキ制御部2aに対して出力する。
〔周波数感応制御部〕
次に、ばね上制振制御部内における周波数感応制御処理について説明する。実施例1では、基本的に車輪速センサ5の検出値に基づいてばね上速度を推定し、それに基づくスカイフック制御を行うことでばね上制振制御を達成する。しかしながら、車輪速センサ5では十分に推定精度が担保出来ないと考えられる場合や、走行状況や運転者の意図によっては積極的に快適な走行状態(車体フラット感よりも柔らかな乗り心地)を担保したい場合もある。このような場合には、スカイフック制御のようにストローク速度とばね上速度の符号の関係(位相等)が重要となるベクトル制御では僅かな位相ずれによって適正な制御が困難となる場合があることから、振動特性のスカラー量に応じたばね上制振制御である周波数感応制御を導入することとした。
図9は車輪速センサにより検出された車輪速周波数特性と、実施例では搭載していないストロークセンサのストローク周波数特性とを同時に書き表した図である。ここで、周波数特性とは、周波数に対する振幅の大きさをスカラー量として縦軸に取った特性である。車輪速センサ5の周波数成分とストロークセンサの周波数成分とを見比べると、ばね上共振周波数成分からばね下共振周波数成分にかけて概ね同じようなスカラー量を取ることが理解できる。そこで、車輪速センサ5の検出値のうち、この周波数特性に基づいて減衰力を設定することとした。ここで、ばね上共振周波数成分が存在する領域を、乗員の体全体が振れることで乗員が空中に放り投げらたような感覚、更に言い換えると、乗員に作用する重力加速度が減少したような感覚をもたらす周波数領域としてフワ領域(0.5〜3Hz)とし、ばね上共振周波数成分とばね下共振周波数成分との間の領域を、重力加速度が減少するような感覚ではないが、乗馬で速足(trot)を行う際に人体が小刻みに跳ね上がるような感覚、更に言い換えると、体全体が追従可能な上下動をもたらす周波数領域としてヒョコ領域(3〜6Hz)とし、ばね下共振周波数成分が存在する領域を、人体の質量が追従するまでの上下動ではないが、乗員の太ももといった体の一部に対して小刻みな振動が伝達されるような周波数領域としてブル領域(6〜23Hz)と定義する。
図10は実施例1のばね上制振制御における周波数感応制御を表す制御ブロック図である。バンドエリミネーションフィルタ350では、車輪速センサ値のうち、本制御に使用する振動成分以外のノイズをカットする。所定周波数領域分割部351では、フワ領域、ヒョコ領域及びブル領域のそれぞれの周波数帯に分割する。ヒルベルト変換処理部352では、分割された各周波数帯をヒルベルト変換し、周波数の振幅に基づくスカラー量(具体的には、振幅と周波数帯により算出される面積)に変換する。
車両振動系重み設定部353では、フワ領域、ヒョコ領域及びブル領域の各周波数帯の振動が実際に車両に伝播される重みを設定する。人間感覚重み設定部354では、フワ領域、ヒョコ領域及びブル領域の各周波数帯の振動が乗員に伝播される重みを設定する。
ここで、人間感覚重みの設定について説明する。図11は周波数に対する人間感覚特性を表す相関図である。図11に示すように、低周波数領域であるフワ領域にあっては、比較的周波数に対して乗員の感度が低く、高周波数領域に移行するに従って徐々に感度が増大していく。尚、ブル領域以上の高周波領域は乗員に伝達されにくくなっていく。以上から、フワ領域の人間感覚重みWfを0.17に設定し、ヒョコ領域の人間感覚重みWhをWfより大きな0.34に設定し、ブル領域の人間感覚重みWbをWf及びWhより更に大きな0.38に設定する。これにより、各周波数帯のスカラー量と実際に乗員に伝播される振動との相関をより高めることができる。尚、これら二つの重み係数は、車両コンセプトや、乗員の好みにより適宜変更してもよい。
重み決定手段355では、各周波数帯の重みのうち、それぞれの周波数帯の重みが占める割合を算出する。フワ領域の重みをa、ヒョコ領域の重みをb、ブル領域の重みをcとすると、フワ領域の重み係数は(a/(a+b+c))であり、ヒョコ領域の重み係数は(b/(a+b+c))であり、ブル領域の重み係数は(c/(a+b+c))である。
スカラー量演算部356では、ヒルベルト変換処理部352により算出された各周波数帯のスカラー量に重み決定手段355において算出された重みを乗算し、最終的なスカラー量を出力する。ここまでの処理は、各輪の車輪速センサ値に対して行なわれる。
最大値選択部357では、4輪においてそれぞれ演算された最終的なスカラー量のうち最大値を選択する。尚、下部における0.01は、後の処理において最大値の合計を分母とすることから、分母が0になることを回避するために設定したものである。比率演算部358では、各周波数帯のスカラー量最大値の合計を分母とし、フワ領域に相当する周波数帯のスカラー量最大値を分子として比率を演算する。言い換えると、全振動成分に含まれるフワ領域の混入比率(以下、単に比率と記載する。)を演算するものである。ばね上共振フィルタ359では、算出された比率に対してばね上共振周波数の1.2Hz程度のフィルタ処理を行い、算出された比率からフワ領域を表すばね上共振周波数帯の成分を抽出する。言い換えると、フワ領域は1.2Hz程度に存在することから、この領域の比率も1.2Hz程度で変化すると考えられるからである。そして、最終的に抽出された比率を減衰力制御部35に対して出力し、比率に応じた周波数感応減衰力制御量を出力する。
図12は実施例1の周波数感応制御によるフワ領域の振動混入比率と減衰力との関係を表す特性図である。図12に示すように、フワ領域の比率が大きいときには減衰力を高く設定することで、ばね上共振の振動レベルを低減する。このとき、減衰力を高く設定しても、ヒョコ領域やブル領域の比率は小さいため、乗員に高周波振動やヒョコヒョコと動くような振動を伝達することはない。一方、フワ領域の比率が小さいときには減衰力を低く設定することで、ばね上共振以上の振動伝達特性が減少し、高周波振動が抑制され、滑らかな乗り心地が得られる。
ここで、周波数感応制御とスカイフック制御とを対比した場合における周波数感応制御の利点について説明する。図13はある走行条件において車輪速センサ5により検出された車輪速周波数特性を表した図である。これは、特に石畳のような小さな凹凸が連続するような路面を走行した場合に表れる特性である。このような特性を示す路面を走行中にスカイフック制御を行うと、スカイフック制御では振幅のピークの値で減衰力を決定するため、仮に高周波振動の入力に対して位相の推定が悪化すると、誤ったタイミングで非常に高い減衰力を設定してしまい、高周波振動が悪化するという問題がある。
これに対し、周波数感応制御のようにベクトルではなくスカラー量に基づいて制御する場合、図13に示すような路面にあってはフワ領域の比率が小さいことから低い減衰力が設定されることになる。これにより、ブル領域の振動の振幅が大きい場合であっても十分に振動伝達特性が減少するため、高周波振動の悪化を回避することができるものである。以上から、例え高価なセンサ等を備えてスカイフック制御を行ったとしても位相推定精度が悪化することで制御が困難な領域では、スカラー量に基づく周波数感応制御によって高周波振動を抑制できるものである。
(S/A側ドライバ入力制御部について)
次に、S/A側ドライバ入力制御部について説明する。S/A側ドライバ入力制御部31では、舵角センサ7や車速センサ8からの信号に基づいて運転者の達成したい車両挙動に対応するドライバ入力減衰力制御量を演算し、減衰力制御部35に対して出力する。例えば、運転者が旋回中において、車両のノーズ側が浮き上がると、運転者の視界が路面から外れやすくなることから、この場合にはノーズ浮き上がりを防止するように4輪の減衰力をドライバ入力減衰力制御量として出力する。また、旋回時に発生するロールを抑制するドライバ入力減衰力制御量を出力する。
(S/A側ドライバ入力制御によるロール制御について)
ここで、S/A側ドライバ入力制御によって行われるロール抑制制御について説明する。図14は実施例1のロールレイト抑制制御の構成を表す制御ブロック図である。横加速度推定部31b1では、舵角センサ7により検出された前輪舵角δfと、車速センサ8により検出された車速VSPに基づいて横加速度Ygを推定する。この横加速度Ygには、車体プランビューモデルに基づいて以下の式より算出される。
Yg=(VSP2/(1+A・VSP2))・δf
ここで、Aは所定値である。
90°位相進み成分作成部31b2では、推定された横加速度Ygを微分して横加速度微分値dYgを出力する。第1加算部31b4では横加速度Ygと横加速度微分値dYgとを加算する。90°位相遅れ成分作成部31b3では、推定された横加速度Ygの位相を90°遅らせた成分F(Yg)を出力する。第2加算部31b5では、第1加算部31b4において加算された値にF(Yg)を加算する。ヒルベルト変換部31b6では、加算された値の包絡波形に基づくスカラー量を演算する。ゲイン乗算部31b7では、包絡波形に基づくスカラー量にゲインを乗算し、ロールレイト抑制制御用のドライバ入力姿勢制御量を演算し、減衰力制御部35に対して出力する。
図15は実施例1のロールレイト抑制制御の包絡波形形成処理を表すタイムチャートである。時刻t1において、運転者が操舵を開始すると、ロールレイトが徐々に発生し始める。このとき、90°位相進み成分を加算して包絡波形を形成し、包絡波形に基づくスカラー量に基づいてドライバ入力姿勢制御量を演算することで、操舵初期におけるロールレイトの発生を抑制することができる。次に、時刻t2において、運転者が保舵状態となると、90°位相進み成分は無くなり、今度は位相遅れ成分F(Yg)が加算される。このとき、定常旋回状態でロールレイト自体の変化はさほどない場合であっても、一旦ロールした後に、ロールの揺り返しに相当するロールレイト共振成分が発生する。仮に、位相遅れ成分F(Yg)が加算されていないと、時刻t2から時刻t3における減衰力は小さな値に設定されてしまい、ロールレイト共振成分による車両挙動の不安定化を招くおそれがある。このロールレイト共振成分を抑制するために90°位相遅れ成分F(Yg)を付与するものである。
時刻t3において、運転者が保舵状態から直進走行状態に移行すると、横加速度Ygは小さくなり、ロールレイトも小さな値に収束する。ここでも90°位相遅れ成分F(Yg)の作用によってしっかりと減衰力を確保しているため、ロールレイト共振成分による不安定化を回避することができる。
(ばね下制振制御部)
次に、ばね下制振制御部の構成について説明する。図7(a)のコンベ車両において説明したように、タイヤも弾性係数と減衰係数を有することから共振周波数帯が存在する。ただし、タイヤの質量はばね上の質量に比べて小さく、弾性係数も高いため、ばね上共振よりも高周波数側に存在する。このばね下共振成分により、ばね下においてタイヤがバタバタ動いてしまい、接地性が悪化するおそれがある。また、ばね下でのバタつきは乗員に不快感を与えるおそれもある。そこで、ばね下共振によるバタつきを抑制するために、ばね下共振成分に応じた減衰力を設定するものである。
図16は実施例1のばね下制振制御の制御構成を表すブロック図である。ばね下共振成分抽出部341では、走行状態推定部32内の偏差演算部321bから出力された車輪速変動にバンドパスフィルタを作用させてばね下共振成分を抽出する。ばね下共振成分は車輪速周波数成分のうち概ね10〜20Hzの領域から抽出される。包絡波形成形部342では、抽出されたばね下共振成分をスカラー化し、EnvelopeFilterを用いて包絡波形を成形する。ゲイン乗算部343では、スカラー化されたばね下共振成分にゲインを乗算し、ばね下制振減衰力制御量を算出し、減衰力制御部35に対して出力する。尚、実施例1では、走行状態推定部32内の偏差演算部321bから出力された車輪速変動にバンドパスフィルタを作用させてばね下共振成分を抽出することとしたが、車輪速センサ検出値にバンドパスフィルタを作用させてばね下共振成分を抽出する、もしくは、走行状態推定部32において、ばね上速度に併せてばね下速度を推定演算し、ばね下共振成分を抽出するようにしてもよい。
(減衰力制御部の構成について)
次に、減衰力制御部35の構成について説明する。図17は実施例1の減衰力制御部の制御構成を表す制御ブロック図である。飽和度変換部35aでは、ドライバ入力制御部31から出力されたドライバ入力減衰力制御量と、スカイフック制御部33aから出力されたS/A姿勢制御量と、周波数感応制御部33bから出力された周波数感応減衰力制御量と、ばね下制振制御部34から出力されたばね下制振減衰力制御量と、走行状態推定部32により演算されたストローク速度が入力され、これらの値を等価粘性減衰係数に変換する。そして、ストローク速度と、等価粘性減衰係数Ceと、このストローク速度における減衰係数最大値Cemax及び最小値Ceminとに基づいて飽和度DDS(%)を以下の式により算出する。
DDS=((Ce−Cemin)/(Cemax−Cemin))×100
以下、飽和度を導入する理由について説明する。図18は実施例1の飽和度とS/A3への指令電流値との関係を表す図である。図18の左上に示す減衰力特性は、ストローク速度に対する減衰力の関係を表す特性図であり、これを減衰係数特性に変換すると、中央上に示す特性となる。減衰係数はストローク速度に依存するため、電流値を決める際に精度を向上させるためには、非常に多くのデータを記憶領域に保存しておく必要があり、データ量によっては十分な精度を確保しにくい。
ここで、各ストローク速度における減衰係数最大値Cemaxと減衰係数最小値Ceminとを用いて要求された等価粘性減衰係数Ceを、上記飽和度を用いて表記することとする。すると、図18の左下に示すように飽和度特性として表記できる。この飽和度特性を、飽和度DDSを横軸としてストローク速度軸方向から見てみると、それぞれの飽和度に対する指令電流値が非常に狭い範囲に分布していることが理解できる。すなわち、飽和度と指令電流値との間にはストローク速度に依存しない関係を持つことが分かる。よって、ストローク速度方向に対して指令電流値の平均を取り、この平均指令電流値を用いると、図18の右下に示すような飽和度−電流特性が得られるのである。この場合、平面上の相関であるため3次元空間のデータ量に比べて圧倒的に少ないデータ処理で精度を高めることができる。以上の理由から、実施例1では減衰係数を算出後、飽和度に換算することで制御精度の向上を図っている。
飽和度調停部35bでは、飽和度変換部35aにおいて変換された飽和度(以下、それぞれの飽和度をドライバ入力飽和度k1、S/A姿勢飽和度k2、周波数感応飽和度k3、ばね下制振飽和度k4と記載する。)のうち、どの飽和度に基づいて制御するのかを調停し、調停された飽和度を、ストローク速度に基づいて予め設定された飽和度制限マップにより制限し、制限された飽和度を最終的な飽和度を出力する。制御信号変換部35cでは、飽和度に対応するS/A3制御信号(指令電流値)に変換し、S/A3に対して出力する。S/A3では、所望の減衰力となるように指令電流値に基づくサーボ制御処理が実行される。尚、サーボ制御処理の詳細については後述する。
〔飽和度調停部〕
次に、飽和度調停部35bの調停内容について説明する。実施例1の車両の制御装置にあっては、4つの制御モードを有する。第1に一般的な市街地などを走行しつつ適度な旋回状態が得られる状態を想定したスタンダードモード、第2にワインディングロードなどを積極的に走行しつつ安定した旋回状態が得られる状態を想定したスポーツモード、第3に低車速発進時など、乗り心地を優先して走行する状態を想定したコンフォートモード、第4に直線状態の多い高速道路等を高車速で走行する状態を想定したハイウェイモードである。
スタンダードモードでは、スカイフック制御部33aによるスカイフック制御を行いつつ、ばね下制振制御部34によるばね下制振制御を優先する制御を実施する。
スポーツモードでは、ドライバ入力制御部31によるドライバ入力制御を優先しつつ、スカイフック制御部33aによるスカイフック制御とばね下制振制御部34によるばね下制振制御とを実施する。
コンフォートモードでは、周波数感応制御部33bによる周波数感応制御を行いつつ、ばね下制振制御部34によるばね下制振制御を優先する制御を実施する。
ハイウェイモードでは、ドライバ入力制御部31によるドライバ入力制御を優先しつつ、スカイフック制御部33aによるスカイフック制御にばね下制振制御部34によるばね下制振制御の制御量を加算する制御を実施する。
以下、これら各モードにおける飽和度の調停について説明する。
(スタンダードモードにおける調停)
図19は実施例1のスタンダードモードにおける飽和度調停処理を表すフローチャートである。
ステップS1では、S/A姿勢飽和度k2がばね下制振飽和度k4より大きいか否かを判断し、大きいときはステップS4に進んで飽和度としてk2を設定する。
ステップS2では、周波数感応制御部33bにおいて説明したフワ領域、ヒョコ領域及びブル領域のスカラー量に基づいて、ブル領域のスカラー量比率を演算する。
ステップS3では、ブル領域の比率が所定値以上か否かを判断し、所定値以上の場合は高周波振動による乗り心地悪化が懸念されることからステップS4に進み、飽和度として低い値であるk2を設定する。一方、ブル領域の比率が上記所定値未満の場合は飽和度を高く設定しても高周波振動による乗り心地悪化の心配が少ないことからステップS5に進んでk4を設定する。
上述のように、スタンダードモードでは、原則としてばね下の共振を抑制するばね下制振制御を優先する。ただし、ばね下制振制御が要求する減衰力よりスカイフック制御が要求する減衰力が低く、かつ、ブル領域の比率が大きいときには、スカイフック制御の減衰力を設定し、ばね下制振制御の要求を満たすことに伴う高周波振動特性の悪化を回避する。これにより、走行状態に応じて最適な減衰特性を得ることができ、車体のフラット感を達成しつつ、高周波振動に対する乗り心地悪化を同時に回避できる。
(スポーツモードにおける調停)
図20は実施例1のスポーツモードにおける減衰係数調停処理を表すフローチャートである。
ステップS11では、ドライバ入力制御により設定された4輪のドライバ入力飽和度k1に基づいて4輪減衰力配分率を演算する。右前輪のドライバ入力飽和度をk1fr、左前輪のドライバ入力飽和度をk1fl、右後輪のドライバ入力飽和度をk1rr、左後輪のドライバ入力飽和度をk1rl、各輪の減衰力配分率をxfr、xfl、xrr、xrlとすると、
xfr=k1fr/(k1fr+k1fl+k1rr+k1rl)
xfl=k1fl/(k1fr+k1fl+k1rr+k1rl)
xrr=k1rr/(k1fr+k1fl+k1rr+k1rl)
xrl=k1rl/(k1fr+k1fl+k1rr+k1rl)
により算出される。
ステップS12では、減衰力配分率xが所定範囲内(αより大きくβより小さい)か否かを判断し、所定範囲内の場合は各輪に対する配分はほぼ均等であると判断してステップS13に進み、いずれか1つでも所定範囲外の場合はステップS16に進む。
ステップS13では、ばね下制振飽和度k4がドライバ入力飽和度k1より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合はステップS15に進み、第1飽和度kとしてk4を設定する。一方、ばね下制振飽和度k4がドライバ入力飽和度k1以下であると判断した場合はステップS14に進み、第1飽和度kとしてk1を設定する。
ステップS16では、ばね下制振飽和度k4がS/A3の設定可能な最大値maxか否かを判断し、最大値maxと判断した場合はステップS17に進み、それ以外の場合はステップS18に進む。
ステップS17では、4輪のドライバ入力飽和度k1の最大値がばね下制振飽和度k4となり、かつ、減衰力配分率を満たす飽和度を第1飽和度kとして演算する。言い換えると、減衰力配分率を満たしつつ飽和度が最も高くなる値を演算する。
ステップS18では、4輪のドライバ入力減衰係数k1がいずれもk4以上となる範囲で減衰力配分率を満たす飽和度を第1飽和度kとして演算する。言い換えると、ドライバ入力制御によって設定される減衰力配分率を満たし、かつ、ばね下制振制御側の要求をも満たす値を演算する。
ステップS19では、上記各ステップにより設定された第1飽和度kがスカイフック制御により設定されるS/A姿勢飽和度k2より小さいか否かを判断し、小さいと判断された場合はスカイフック制御側の要求する飽和度のほうが大きいためステップS20に進んでk2を設定する。一方、kがk2以上であると判断された場合はステップS21に進んでkを設定する。
上述のように、スポーツモードでは、原則としてばね下の共振を抑制するばね下制振制御を優先する。ただし、ドライバ入力制御側から要求される減衰力配分率は、車体姿勢と密接に関連し、特にロールモードによるドライバの視線変化との関連も深いことから、ドライバ入力制御側から要求された飽和度そのものではなく、減衰力配分率の確保を最優先事項とする。また、減衰力配分率が保たれた状態で車体姿勢に姿勢変化をもたらす動きについてはスカイフック制御をセレクトハイで選択することで、安定した車体姿勢を維持することができる。
(コンフォードモードにおける調停)
図21は実施例1のコンフォートモードにおける飽和度調停処理を表すフローチャートである。
ステップS30では、周波数感応飽和度k3がばね下制振飽和度k4より大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合はステップS32に進んで周波数感応飽和度k3を設定する。一方、周波数感応飽和度k3がばね下制振飽和度k4以下であると判断した場合はステップS32に進んでばね下制振飽和度k4を設定する。
上述のように、コンフォートモードでは、基本的にばね下の共振を抑制するばね下共振制御を優先する。もともとばね上制振制御として周波数感応制御を行い、これにより路面状況に応じた最適な飽和度を設定しているため、乗り心地を確保した制御を達成でき、ばね下がばたつくことによる接地感不足をばね下制振制御で回避することができる。尚、コンフォートモードにおいても、スタンダードモードと同様に、周波数スカラー量のブル比率に応じて減衰係数を切り替えるように構成してもよい。これにより、スーパーコンフォートモードとして更に乗り心地を確保することができる。
(ハイウェイモードにおける調停)
図22は実施例1のハイウェイモードにおける飽和度調停処理を表すフローチャートである。尚、ステップS11からS18までは、スポーツモードにおける調停処理と同じであるため、説明を省略する。
ステップS40では、ステップS18までで調停された第1飽和度kにスカイフック制御によるS/A姿勢飽和度k2を加算して出力する。
上述のように、ハイウェイモードでは、調停された第1飽和度kにS/A姿勢飽和度k2を加算した値を用いて飽和度を調停する。ここで、図を用いて作用を説明する。図23はうねり路面及び凹凸路面を走行する際の飽和度変化を表すタイムチャートである。例えば高車速走行時にわずかな路面のうねり等の影響で車体がゆらゆらと動くような動きを抑制しようとした場合、スカイフック制御のみで達成しようとすると、僅かな車輪速変動を検知する必要があることから、スカイフック制御ゲインをかなり高く設定する必要がある。この場合、ゆらゆらと動くような動きを抑制することはできるが、路面の凹凸などが発生した場合、制御ゲインが大き過ぎて過剰な減衰力制御を行うおそれがある。これにより、乗り心地の悪化や車体姿勢の悪化が懸念される。
これに対し、ハイウェイモードのように第1飽和度kを常時設定しているため、ある程度の減衰力は常時確保されることになり、スカイフック制御による飽和度が小さくても車体がゆらゆらと動くような動きを抑制できる。また、スカイフック制御ゲインを上昇させる必要がないため、路面凹凸に対しても通常の制御ゲインにより適切に対処できる。加えて、第1飽和度kが設定された状態でスカイフック制御が行われるため、セミアクティブ制御領域内において、飽和度制限とは異なり、飽和度の減少工程の動作が可能となり、高速走行時において安定した車両姿勢を確保することができる。
(モード選択処理)
次に、上記各走行モードを選択するモード選択処理について説明する。図24は実施例1の飽和度調停部において走行状態に基づくモード選択処理を表すフローチャートである。
ステップS50では、舵角センサ7の値に基づいて直進走行状態か否かを判断し、直進走行状態と判断された場合にはステップS51に進み、旋回状態と判断された場合にはステップS54に進む。
ステップS51では、車速センサ8の値に基づいて高車速状態を表す所定車速VSP1以上か否かを判断し、VSP1以上と判断された場合にはステップS52に進んでスタンダードモードを選択する。一方、VSP1未満と判断された場合にはステップS53に進んでコンフォートモードを選択する。
ステップS54では、車速センサ8の値に基づいて高車速状態を表す所定車速VSP1以上か否かを判断し、VSP1以上と判断された場合にはステップS55に進んでハイウェイモードを選択する。一方、VSP1未満と判断された場合にはステップS56に進んでスポーツモードを選択する。
すなわち、直進走行状態において、高車速走行する場合にはスタンダードモードを選択することで、スカイフック制御による車体姿勢の安定化を図り、かつ、ヒョコやブルといった高周波振動を抑制することで乗り心地を確保し、更に、ばね下の共振を抑制することができる。また、低車速走行する場合にはコンフォートモードを選択することで、ヒョコやブルといった振動の乗員への入力を極力抑えながら、ばね下の共振を抑制することができる。
一方、旋回走行状態において、高車速走行する場合にはハイウェイモードを選択することで、減衰係数を加算した値によって制御されるため、基本的に高い減衰力が得られる。これにより、高車速であってもドライバ入力制御によって旋回時の車体姿勢を積極的に確保しつつ、ばね下共振を抑制することができる。また、低車速走行する場合にはスポーツモードを選択することで、ドライバ入力制御によって旋回時の車体姿勢を積極的に確保しつつ、スカイフック制御が適宜行われながら、ばね下共振を抑制することができ、安定した車両姿勢で走行できる。
尚、モード選択処理については、実施例1では走行状態を検知して自動的に切り替える制御例を示したが、例えば運転者が操作可能な切換スイッチ等を設け、これにより走行モードを選択するように制御してもよい。これにより、運転者の走行意図に応じた乗り心地や旋回性能が得られる。
(飽和度制限処理について)
飽和度調停部35bは、調停された飽和度をストローク速度に応じて抑制する飽和度制限部35b1を有する。この飽和度制限処理が行われた飽和度が制御信号変換部35cに出力される。ここで、飽和度制限処理について説明する。図25は実施例1のストローク速度に対する制御力の関係を表す特性図である。横軸をストローク速度とし、縦軸を制御力とし、S/A3の減衰力特性として最も低減衰力側減衰特性をSoft、最も高減衰力側減衰特性をHardとして記載している。S/A3はこのSoftとHardに挟まれた領域(減衰力可変領域)内で減衰特性を変更することで減衰力を制御する。尚、制御力とは減衰力に比例する値であり、減衰力を大きくすれば、それだけ姿勢制御を行う制御力が大きくなり、減衰力が小さければ、それだけ姿勢制御を行う制御力が小さくなる。
ここで、S/A3は、S/A3内のピストンに設けられたオリフィスのオリフィス径を変更することで減衰力を変更するパッシブ機能を有するのみであり、積極的にピストンをストロークさせるようなアクティブ機能を有するものではない。よって、図25の特性図に示すように、第1象限(I)と第3象限(III)は、ストローク速度を抑制する方向に減衰力を作用させ得る領域であるからS/A3が制御可能な領域であり、第2象限(II)と第4象限(IV)は、ストローク速度を発生させる方向に力を出力する必要がある領域であるからS/A3による制御不可の領域となる。
一方、エンジン姿勢制御量による制御の場合、上述したようにエンジン駆動トルクを出力することと、エンジンブレーキによる制動トルクの両方を出力可能である。よって、図25の特性図に示すように、制御可能な範囲は小さいものの、ストローク速度が0付近を中心に全ての象限においてばね上姿勢を制御可能である。以下、エンジン駆動トルクによる制御と減衰力とがどのような関係にあるかについて説明する。
車両重心点から前輪車軸までの長さをL1、後輪車軸までの長さをL2、前輪トレッドをTrdf、後輪トレッドをTrdrとし、各輪に作用する減衰力をf(FL輪をf1,FR輪をf2,RL輪をf3,RR輪をf4)、バウンス要求力をFZ、ロール要求モーメントをMR、ピッチ要求モーメントをMPとすると、
(式5)
Figure 0006369020
よって、駆動力によるピッチモーメントを各輪の発生力に換算すると、以下の関係式が成立する。
(式6)
Figure 0006369020
エンジントルク制御量には制限値が設定されていることを考慮して、1輪の減衰力−ストローク速度線図上に上記関係をプロットすると、低ストローク速度域ΔS1(例えば、0.05m/s以下)においてアクティブ制御ループを描く。
ここで、図25の低ストローク速度領域ΔS1に着目すると、単にS/A3のみを備えた構成であれば、スカイフック制御則によって要求された減衰力を設定することが好ましいとも言える。しかし、低ストローク速度域ΔS1は、体全体が追従可能な上下動をもたらす周波数域である3〜6Hz、及び人体の質量が追従するまでの上下動ではないが、乗員の太ももといった体の一部に対して小刻みな振動が伝達されるような周波数域である6〜23Hzに対応する周波数成分が、比較的多く含まれるストローク速度領域であることが発明者の鋭意研究の結果、判明した。
図26はコンベ車両のストローク速度の周波数に対するゲイン及びストローク速度振幅の関係を表す特性図である。図26(a)の縦軸は路面上下方向位置Z0に対するばね上上下方向位置Z2のゲインを表し、減衰力がソフト、ハード、ソフトとハードの中間であるミッドの3つの減衰特性におけるゲインを示す。図26(b)の縦軸はストローク速度の振幅の大きさを表す。まず、図26(a)のゲインを見ると、減衰特性に関わらず1Hz近辺にばね上共振周波数を有し、15Hz近辺にばね下共振周波数を有する。
次に、車両を種々の路面条件において走行させた場合、ストローク速度の周波数成分は、図26(b)のように分布することが新たに理解された。例えば3Hzから6Hzの間の周波数領域においては、共振周波数におけるストローク速度振幅よりも小さなストローク速度振幅を示している。すなわち、3Hz以下のフワ領域にあっては、ストローク速度振幅が0.3m/s程度の比較的大きな領域に出現するのに対し、3〜6Hzのヒョコ領域では、ストローク速度振幅が0.05m/s程度の低ストローク速度域ΔS1に出現する。
基本的に、周波数領域に関わらずばね上挙動をスカイフック制御により制御する場合、S/A3にあっては、減衰力をSoftからHardの全減衰力可変領域を使用して制御することが好ましいとも言える。しかし、この低ストローク速度域ΔS1において減衰力を大きくすると、車体側への振動伝達効率が上昇してしまい、3〜23Hzに対応する高周波振動特性の悪化を招くという問題がある。加えて、この周波数領域には、人体共振周波数も含まれるため、乗員の乗り心地が悪化するおそれがある。また、低ストローク速度域では、ストローク速度の振幅が小さいため、スカイフック制御において十分な精度を確保できないおそれもある。
更に、例えば、あるストローク速度でS/A3が縮みながらばね上が下降している状態から、ばね上が上昇状態に推移、すなわち、第1象限(I)から第2象限(II)に推移する場合を想定する。S/A3はパッシブ機能を有するのみであるため、スカイフック制御則により大きな減衰力を設定している状態から、制御量として0すなわち小さな減衰力に切り換える要求が出力される。このとき、S/A3において蓄積されたスプリング力が、小さな減衰力に変更されることで一気に解放され、ストローク速度が伸び方向に反転し、これにより再度第1象限(I)に推移し、といった動作を繰り返す状態が起こり得る。すなわち、極めて短時間内に減衰係数(例えばオリフィス径)が大きく変化することにより自励振動を引き起こし、異音の原因となるおそれがあるだけでなく、この自励振動がばね下共振を誘発するおそれもあり、接地性の悪化や乗り心地悪化を招くおそれがある。
そこで、実施例1では、飽和度を、ストローク速度が低いときは、ストローク速度が高いときに比べて小さくすることとした。これにより、低ストローク速度において減衰力を小さくすることで高周波振動特性の悪化を抑制するものである。
図27は実施例1の飽和度制限マップである。この制限は、ストローク速度に対して飽和度の制限値を図27に示す特性に設定する。具体的には、第1速度である0.05m/s以下では飽和度が0%(第1飽和度)であり、第1速度よりも大きな第2速度である0.3m/s以上では飽和度が第1飽和度より高い100%(第2飽和度)であり、0.05m/sと0.3m/sとの間では、飽和度が0%と100%との間で遷移する遷移飽和度である。
第1速度を表す0.05m/s以下の低ストローク速度域ΔS1では飽和度に規定された減衰力可変領域が、最もSoft特性となる減衰特性に近くなるように設定(低減衰力側減衰特性にオフセットした領域に設定)される。言い換えると、飽和度に規定された減衰力可変領域が高減衰力側減衰特性を除いた領域に設定される。これにより、車体側への振動伝達効率を低減でき、乗り心地を確保できる。次に、ストローク速度が上昇すると、遷移飽和度が設定され、徐々に最もHard特性となる減衰特性近くまで制御可能領域を増大する。これにより、車体側への振動伝達を抑制しつつ、ばね上挙動の安定化を図ることができる。更に、ストローク速度が上昇すると、第2飽和度として100%が設定されるため、S/A3の性能を十分に発揮してばね上挙動の安定化を図ることができる。尚、他の手法として、例えば、ストローク速度が低ストローク速度域ΔS1のときは、最も減衰力として小さくなるSoft設定の最大径オリフィスに固定する、もしくは、次に径の大きなオリフィスとの間で選択制御することで達成してもよい。
このように、低ストローク速度域ΔS1で減衰力を小さく制限しても、この低ストローク速度域ΔS1は、エンジン姿勢制御によるアクティブ制御によってばね上状態の安定化を図ることが可能な領域である。よって、S/A3による減衰力制御量を低減させたとしても、車両全体として安定したばね上姿勢制御を達成できる。尚、実施例1の場合、低減衰力側にオフセットした領域に飽和度を設定したため、低い減衰力を発生する構成となり、ヒョコ領域における振動の入力に対する乗員への振動伝達率を低減でき、乗り心地性能を向上できる。
また、実施例1の場合、エンジン姿勢制御量の演算は、車輪速に基づいて独自に実施され、S/A姿勢制御量の演算も、車輪速に基づいて独自に実施される。よって、それぞれが独自にばね上姿勢制御を行ったとしても、車輪速を介して制御するため、結果として互いに協調して制御することとなり、スカイフック制御量を制限してS/A姿勢制御量を低減した場合、必要なばね上姿勢制御はエンジン姿勢制御によって適宜行われるため、特に相互に監視することなく相互干渉を引き起こすこともなく、安定したばね上姿勢制御を実現できる。この関係は、上述したブレーキ姿勢制御量との関係においても同様に言える。
尚、実施例1では、図27に示すように低ストローク速度域において飽和度制限値を0%に設定し、基本的にSoft特性に固定した状態としたが、不安定なスカイフック制御を回避するという観点から言えば、Soft特性に固定する場合に限らず、飽和度として小さな値を設定し、選択可能な減衰係数を制限することとしてもよいし、Soft特性への固定に限らず、例えば、Soft特性よりも若干Hard特性側にオフセットした領域に飽和度を制限することとしてもよい。
図28は他の実施例における飽和度制限マップである。このように、低ストローク速度域にあっては、飽和度の選択可能領域を低減衰力側減衰係数にオフセットした所定の領域に設定することで、低ストローク速度域にあっても、ある程度の減衰力を確保し、乗り心地は多少犠牲となったとしてもばね上挙動の更なる安定化を図ることとしてもよい。このように、飽和度の制限については、種々のパターンが想定されるが特に限定しない。
また、実施例1では調停された飽和度を予め設定された飽和度制限マップにより制限する構成としたが、スカイフック制御部33a内において制限された減衰係数を算出するような構成とし、この制限された減衰係数から飽和度を算出することで制限された飽和度を算出する構成としてもよい。この場合、飽和度としては特定の減衰係数に相当する値が算出されるのみであり、飽和度制限マップのように減衰力可変領域を表すものとは異なるが、実質的には同じである。
(飽和度制限の解除処理)
次に、飽和度制限の解除について説明する。上述したように、ストローク速度が低い領域では飽和度を制限することで車両挙動の安定化及び乗り心地性能の向上を図っている。しかし、車両が旋回する場合には初期減衰力を確保する必要がある。特に、ばね上のロール挙動はS/A3によって最も効率よく安定化できるものであり、ストローク速度が低い場面であってもしっかりとした減衰力を確保することで過度のロール発生を抑制する必要がある。そこで、旋回時、すなわち旋回が予測される場面であるロールレイト発生時には、上記飽和度の制限を解除することとした。よって、飽和度制限部35b1は、ロールレイト検出部35b2により検出されたロールレイトに基づいて飽和度の制限を解除する。これにより、旋回初期に減衰力を高めることができ、過度のロール発生を抑制することができる。
尚、実施例ではロールレイトを検出するにあたり、例えば車速と舵角との関係からロールレイトの発生を予測してもよい。また、車両前方をカメラ等で撮影している車両にあっては路面形状から旋回が予測できるため、旋回が発生する前であって旋回が予測可能な段階において飽和度の制限を解除する構成としてもよい。
(減衰力可変ショックアブソーバのサーボ制御処理)
次に、減衰力可変ショックアブソーバS/A3において行われるサーボ制御処理について説明する。図29は実施例1の指令電流値に基づくサーボ制御部の構成を表す制御ブロック図である。サーボ制御部35c1は、コイルZ1のインピーダンスRestmや最大電流値Imaxを推定する推定部Y1と、制御信号変換部35cにおいて変換された指令電流値Icmdと、電流センサZ2により検出されたコイルZ1に通電している実電流値Ireと、推定されたインピーダンスRestmに基づいてデューティ比を演算し、デューティ制御を行うサーボ制御部Y2とを有する。サーボ制御部Y2からデューティ比に応じたスイッチングが行われると、電源BATの電圧Vbatが作用したコイルZ1にデューティ比に応じた電流が流れ、この実電流に応じた減衰力が発生する。
推定部Y1には、コイルZ1の温度を推定し、推定された温度からインピーダンスを推定するインピーダンス推定部Y1aと、電源BATの電圧と推定されたインピーダンスとから最大電流制限値を演算する最大電流推定部Y1bとを有する。インピーダンス推定部Y1aには、減衰力可変ショックアブソーバS/A3の熱収支モデルが備えられ、
dU=dQ+dW
の関係に基づいてコイル温度が推定される。ここで、dUはS/A3の内部エネルギー変化、dQはストローク速度、オイル粘性、実電流値から推定される発熱量、dWは外部への放出熱量である。
尚、この熱収支モデルで推定する際、ストローク速度は、図5の制御ブロック図に示すように、車輪速に基づいて推定された値を用いるため、別途ストロークセンサ等を用いることなく、既存の車輪速センサ5を用いてストローク速度を検出できるため、コストアップを招くことが無い。尚、上述のように熱収支モデルに基づいてコイル温度を推定するため、全ての熱外乱を考慮した上で精度の高いコイル温度を推定できる。
図31はコイル温度とインピーダンスとの関係を表す特性図である。この特性図に示すように、コイル温度が所定温度まではほぼ一定であるが、所定温度以上の領域では、ほぼ線形にコイル温度が上昇するほどインピーダンスが増大する関係を有する。この特性図に基づいてコイル温度からコイルZ1のインピーダンスRestmを推定する。
最大電流推定部Y1bでは、電源BATの電圧Vbatと、推定されたインピーダンスRestmとから以下の式により最大電流値Imaxを算出する。
Imax=Vbat/Restm
この最大電流値Imaxは、現在のコイルZ1の発熱状態等に基づくインピーダンスRestmと、電源BATの状態(他の負荷が駆動している場合や劣化による電圧低下等)に基づく実電圧とに基づいて算出される値である。言い換えると、コイルZ1には、どのようなデューティ比を出力したとしてもImax以上の電流を流すことができない。よって、この場合には、指令電流値が最大電流値Imaxよりも大きいときは、最大電流制限値としてIcmdmaxを設定する。
サーボ制御部35c1では、指令電流値Icmdと実電流値Ireとに基づいて以下の関係を用いてデューティ比Dutyを決定する。
フィードフォワード成分
DutyFF=kFF×Icmd
フィードバック成分
DutyFB=kFB1×(Icmd−Ire)+kFB2×∫(Icmd−Ire)dt
Duty=DutyFF+DutyFB
ここで、kFFはフィードフォワードゲイン、kFB1はフィードバック比例ゲイン、kFB2はフィードバック積分ゲインである。これら各種ゲインは、推定されたインピーダンスRestmが大きいほどゲインが大きくなるように補正される。
(ゲイン補正について)
図30は指令電流が変更された場合の実電流変化を表すタイムチャートである。指令電流Icmdが変更されると、指令電流に応じたフィードフォワード成分と、指令電流Icndと実電流Ireとの偏差に応じたフィードバック成分とに基づくデューティ比Dutyが設定される。このとき、予め設定されたゲインを固定とした場合、通常のコイル温度であればインピーダンスRが大きくなることもないため、点線P1で示すように良好な追従性を確保できる。しかしながら、コイル温度が上昇し、インピーダンスRestmが大きくなると、同じDutyであってもゲイン不足により指令電流値Icmd通りの実電流Ireが得られるまでに時間がかかり、十分な応答性を確保できないという問題がある。この問題は、特にドライバ入力制御のように運転者の操舵に対してロール抑制制御のときに、車体がロールする前に応答よく減衰力を高める要求から遅れてしまう際に、運転者に違和感を与えやすいことは、飽和度制限の解除処理において説明した通りである。そこで、サーボ制御部Y2では、インピーダンスRestmに応じて各種ゲインを補正することとした。
図32は異なるコイル温度に対する電流応答性を表すタイムチャートである。図32中の点線が常温、一点鎖線が低温、二点鎖線が高温のときの電流変化を表す。いずれの温度の場合であっても、指令電流値Icmdの変化に対する追従性を確保できていることが分かる。尚、ゲインの補正により最終的に収束する電流値が指令電流値Icmdから若干ずれる場合があるものの、いずれも誤差範囲である。
(最大電流制限値について)
図30の一点鎖線P2は指令電流値Icmdに対して実電流Ireが追従してこない場合を表すタイムチャートである。上述したように、最大電流値Imaxが指令電流値Icmdよりも低い場合、どのようにDutyを大きく設定したとしても、指令電流値Icmdを得ることができない場合や、追従までにかなり時間がかかる場合がある。これは、コイル温度の上昇に伴うインピーダンスRestmの上昇や、電源BATの電圧低下によって生じうる。この場合、所望の減衰力を得ることができない時間が長く、ある程度の減衰力を出していたとしても、十分な姿勢制御を達成できない。そこで、指令電流値Icmdを最大電流値Imaxに置換して最大電流制限値Icmdmaxを設定することとした。
これにより、減衰力制御部35による制御量を積極的に制限することで、車輪速の変動成分を増大させ、エンジンフィードバック制御系やブレーキフィードバック制御系によってエンジン姿勢制御量やブレーキ姿勢制御量を増大させるようにした。このように、目標減衰力が得られないことが事前に把握できる場合には、減衰力制御量を制限しつつ、他のアクチュエータによる制御を積極的に作動させることで、応答性の不十分な減衰力制御を継続する場合に比べて、ばね上挙動をより安定させることができる。また、減衰力制御量を抑制し、エンジン姿勢制御量やブレーキ姿勢制御を用いるため、S/A3の減衰力が高くなることに伴う高周波振動の悪化を回避することができ、乗り心地を向上できる。
尚、実施例1では、最大電流制限値Icmdmaxとして最大電流値Imaxを設定することとしたが、最大電流値Imaxよりも低い所定の電流値を最大電流制限値Icmdmaxとして設定することで、より積極的にエンジン姿勢制御量やブレーキ姿勢制御量を使用してもよい。
図33はピッチレイト発生時の減衰力制御量とブレーキ姿勢制御量との関係を表すタイムチャートである。最大電流制限値Icmdmaxに制限していない場合、実電流Ireは上昇するものの、追従しきれずに十分な制御量を確保できていない。また、ブレーキ姿勢制御量の発生も遅れるため、十分にピッチレイトを抑制できていない。これに対し、指令電流値Icmdを最大電流制限値Icmdmaxに制限した場合、早い段階から車輪速変動を発生させてブレーキ姿勢制御量を確保できるため、ピッチレイトを抑制できる。
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を奏する。
(1)車両のばね上挙動の変化を抑制する減衰力制御量を演算するスカイフック制御部33a(減衰力制御量演算手段)と、コイルZ1に流れる電流に応じた減衰力を出力するS/A3(減衰力可変ショックアブソーバ)と、減衰力制御量に基づいてコイルZ1に流す指令電流値Icmdを出力する制御信号変換部35c(指令電流演算手段)と、コイルZ1の実電流を検出する電流センサZ2(電流検出手段)と、指令電流値Icmdと実電流値Ireと予め設定されたゲインとに基づいてコイルZ1に対するデューティ比Duty(電流制御量)を出力するサーボ制御部Y2(サーボ制御手段)と、S/A3のストローク速度を検出する第3走行状態推定部32(ストローク速度検出手段)と、実電流値Ireとストローク速度とに基づいてS/A3の熱収支を演算し、該熱収支に基づいてコイルZ1の温度を推定するインピーダンス推定部Y1(コイル温度推定手段)と、コイル温度が大きいほどゲインを大きくするサーボ制御部Y2(ゲイン補正手段)と、を備えた。
コイル温度は、全ての熱外乱の結果系として考えられるコイルインピーダンスと密接に関係することから、コイル温度が大きいほどゲインを大きくすることで、減衰力制御の制御性を向上できる。また、熱収支モデルに基づいてコイル温度を推定するため、全ての熱外乱を考慮した上で精度の高いコイル温度を推定できる。
(2)操舵角を検出する舵角センサ7(舵角検出手段)を有し、スカイフック制御部33aは、操舵角に基づいて運転者の達成したい車両挙動に対応するドライバ入力減衰力制御量を演算する。
このように、ドライバ入力に対し先行して車両挙動を抑制するような制御の場合、応答性の問題が特に顕著となる。そこで、ドライバ入力制御に対してゲイン補償を行うことで、よりばね上挙動を安定化できる。
(3)車輪速を検出する車輪速センサ5(車輪速検出手段)を有し、第3走行状態推定部32は、車輪速に基づいてS/A3のストローク速度を検出する。
よって、別途ストロークセンサ等を用いることなく、既存の車輪速センサ5を用いてストローク速度を検出できるため、コストアップを招くことなく、精度の高い温度推定が実現できる。
1 エンジン
1a エンジンコントローラ(エンジン制御部)
2 ブレーキコントロールユニット
2a ブレーキコントローラ(ブレーキ制御部)
3 S/A(減衰力可変ショックアブソーバ)
3a S/Aコントローラ
5 車輪速センサ
6 一体型センサ
7 舵角センサ
8 車速センサ
20 ブレーキ
31 ドライバ入力制御部
32 走行状態推定部
33 ばね上制振制御部
33a スカイフック制御部
33b 周波数感応制御部
34 ばね下制振制御部
35 減衰力制御部
331 第1目標姿勢制御量演算部
332 エンジン姿勢制御量演算部
333 第2目標姿勢制御量演算部
334 ブレーキ姿勢制御量演算部
335 第3目標姿勢制御量演算部
336 ショックアブソーバ姿勢制御量演算部

Claims (3)

  1. 車両のばね上挙動の変化を抑制する減衰力制御量を演算する減衰力制御量演算手段と、
    コイルに流れる電流に応じた減衰力を出力する減衰力可変ショックアブソーバと、
    前記減衰力制御量に基づいて前記コイルに流す指令電流値を出力する指令電流演算手段と、
    前記コイルの実電流値を検出する電流検出手段と、
    前記指令電流値と前記実電流値と前記指令電流値に応じたフィードフォワードゲイン及び前記指令電流値と実電流値との偏差に応じたフィードバックゲインとに基づいて前記コイルに対する電流制御量を出力するサーボ制御手段と、
    前記減衰力可変ショックアブソーバのストローク速度を検出するストローク速度検出手段と、
    前記実電流値と前記ストローク速度とオイル粘性と外部への放出熱量とに基づいて前記減衰力可変ショックアブソーバの熱収支を演算し、該熱収支に基づいて前記コイルの温度を推定するコイル温度推定手段と、
    前記コイル温度が大きいほど前記フィードフォワードゲイン及びフィードバックゲインを大きくするゲイン補正手段と、
    を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 車両のばね上挙動の変化を抑制する減衰力制御量を演算する減衰力制御量演算手段と、
    コイルに流れる電流に応じた減衰力を出力する減衰力可変ショックアブソーバと、
    前記減衰力制御量に基づいて前記コイルに流す指令電流値を出力する指令電流演算手段と、
    前記コイルの実電流値を検出する電流検出手段と、
    前記指令電流値と前記実電流値と予め設定されたゲインとに基づいて前記コイルに対する電流制御量を出力するサーボ制御手段と、
    車輪速を検出する車輪速検出手段と、
    前記車輪速に基づいて前記減衰力可変ショックアブソーバのストローク速度を検出するストローク速度検出手段と
    前記実電流値と前記ストローク速度とオイル粘性と外部への放出熱量とに基づいて前記減衰力可変ショックアブソーバの熱収支を演算し、該熱収支に基づいて前記コイルの温度を推定するコイル温度推定手段と
    前記コイル温度が大きいほど前記ゲインを大きくするゲイン補正手段と、
    を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の車両の制御装置において、
    操舵角を検出する舵角検出手段を有し、
    前記減衰力制御量演算手段は、操舵角に基づいて運転者の達成したい車両挙動に対応するドライバ入力減衰力制御量を演算することを特徴とする車両の制御装置。
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